小説「魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~」感想・ネタバレ

小説「魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~」感想・ネタバレ

どんな本?

『魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~』は、ファンタジージャンルの小説である。物語は、かつて魔王が生み出した魔物たちを説き伏せ、従えたとされる伝説の魔女リングリーンの末裔であるリーンを中心に展開する。リーンは魔物を従える能力を持ち、その力ゆえに様々な事件に巻き込まれる。彼女に命を助けられた冒険者ハクラは、護衛としてリーンと共に旅をすることになる。旅の中で、魔物だけでなく人間にも原因がある事件に直面し、物語が進行する。  

主要キャラクター
• リーン:伝説の魔女リングリーンの末裔であり、魔物を従える能力を持つ少女。自信家でわがままな性格だが、どこか放っておけない魅力を持つ。
• ハクラ:「魔女狩り」の異名を持つ冒険者。リーンに命を助けられたことをきっかけに、彼女の護衛として共に旅をすることになる。

物語の特徴

本作は、魔物と人間の関係性や、善悪の境界をテーマに描かれている。リーンとハクラの旅路を通じて、魔物と人間の間にある偏見や誤解が解きほぐされていく様子が描かれ、読者に深い考察を促す。また、リーンの個性的なキャラクターと、彼女とハクラの掛け合いが物語にユーモアと温かみを加えている。

出版情報
• 出版社:株式会社ドリコム
• レーベル:DREノベルス
• 発売日:2024年12月10日
• ISBN:978-4-434-34612-5
• 関連メディア展開:特になし

本作は、第2回ドリコムメディア大賞で大賞を受賞しており、その独自の世界観と魅力的なキャラクターで高い評価を得ている。  

読んだ本のタイトル

魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~
著者:天都ダム 氏
イラスト:しらび 氏

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あらすじ・内容

悪いのは、人か魔物か
〝伝説の魔女〟と共に歩む、面倒で素敵な旅路へようこそ――
かつて黒き竜が生み出した魔物たちを説き伏せ、従えたと呼ばれる魔女リングリーン。その末裔リーンも同じく魔物を従わせる能力を持っていた。そんな彼女に命を助けられた、魔女狩りの異名を持つ冒険者ハクラはある事情から護衛として雇われ、一緒に旅をすることになる。
特別な力を持つ彼女に舞い込んでくるのは、どれも厄介な魔物が関わる事件ばかりなのだが、実は魔物ではなく人間側にも原因があって……。
「人間って、ほんとにわかんない」
自信家でわがままで、だけどどこか放っておけない小悪魔な魔女と歩んでいく普通じゃない物語が始まろうとしていた。

魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~

感想

主な出来事は以下の通り。

出会いと冒険の始まり
リーンは深い森の中で魔物ヒドラの痕跡を追っていた。ヒドラは二頭の亜竜で、猛毒と火炎のブレスを操る恐ろしい存在であった。
森の中で焦げた痕跡と共に、右腕を失った青年の遺体を発見するが、その青年は完全には死んでおらず、かすかに動いていた。
リーンは彼を救うことを決意し、治療を施した。
目覚めた青年ハクラは、自分が仲間を逃がすために囮となったことを思い出し。
彼の右腕には青色のスライムが取り付いており、それが彼の治療を助けていた。
リーンは自分が伝説の魔女リングリーンの直系であり、魔物を従える力を持つことを明かした。

エスマの街と新たな同行者
ヒドラ討伐後、リーンとハクラはエスマの街に戻る。
ハクラはギルドに顔を出すが、既に死亡登録されており、仲間たちは彼の生存を信じずに去っていた。
リーンはハクラに慰めの言葉をかけるが、彼には響かず、二人は口論となる。
リーンはハクラに今後の冒険依頼を共に遂行することを提案し、最終的にヒドラ討伐の報酬を全額渡すことで合意に至る。
ギルドでハクラは旧知の少年ジーレと再会し、彼にナイフを餞別として渡す。
ジーレは冒険者としての第一歩を踏み出したばかりで、これから待ち受ける試練にまだ気付いていなかった。

コボルド退治の依頼とライデア村の異変
二人はコボルド退治の依頼を受け、ライデア村へ向かう。
村は長年コボルドと平和に共存してきたが、突然コボルドが人間を襲うようになった。
リーンは人と魔物のバランスを保つため、全滅を避ける方針を取る。
村で出会った少女テトナは、コボルドのルドルフを守ろうとする。
リーンはコボルドの食性が変わった原因を突き止め、村人たちを納得させる方法を模索する。

リビングデッドとの戦いとレストン村の惨劇
レストン村ではリビングデッドが出没し、村人たちは恐怖に包まれていた。
リーンとハクラは依頼を受けて村へ向かい、リビングデッドと戦う。
村ではクラウナが婚約者アレンの不在に不安を抱えていたが、アレンはリビングデッドとなって村を襲撃していた。
クラウナはアレンを止めようとするが、逆に襲われてリビングデッドとなる。
最終的にリーンの助けを借りてクラウナは村人たちを静め、村全体が静寂に包まれた。

総括

コボルド退治の話は非常に厳しい現実を描いていた。
人間と魔物の共存というテーマが深く掘り下げられ、単なる討伐ではなく問題の本質を見抜く力が求められることに感銘を受けた。
アンデッドの話は最初は混乱したが、物語の終盤で全てが繋がり納得することができた。

魔物を従える力を持つリーンと、かつて魔女狩りを行っていたハクラの関係は複雑でありながらも、物語を通じて互いに信頼を築いていく様子が印象的であった。
リーンのひねくれた性格や食いしん坊な一面は、彼女の強さと魅力を際立たせており、ハクラとの掛け合いは物語にユーモアを加えていた。

リーンとハクラの冒険は、ただの戦闘や討伐に留まらず、人間と魔物の関係や、過去の出来事が絡み合う複雑な背景を描いていた。
特に、レストン村のリビングデッドの話は悲しくも美しく、読後に深い余韻を残した。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

プロローグ  出会うということ

魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~

森の奥での探索とヒドラ討伐の痕跡


晴天下にもかかわらず、深い森の中は木漏れ日さえ届かないほどであった。リーンは家宝の杖で生い茂る草木を払いながら進み、魔物ヒドラの痕跡を追っていた。ヒドラは二頭を持つ亜竜で、猛毒と火炎のブレスを操る難敵である。以前、四人の冒険者パーティが討伐に挑んだが、一人が囮となり、三人が逃げ帰る結果となった。その後、リーンと同行者は森の中で焦げた痕跡と血まみれの青年の遺体を発見した。青年は右腕を失い、傍らには首を失ったヒドラの死骸が横たわっていた。

死闘の後と青年の救出

青年がヒドラと相打ちになったことが明らかになると、リーンは彼の遺体を調べ始めた。しかし、その青年は完全に死んでおらず、かすかに動いた。リーンは面倒そうにしながらも彼を助ける決意をし、毒と火傷に侵された体を治療することにした。青年は目覚めた後、自分がヒドラ討伐のために仲間を逃がし、自ら囮となったことを思い出した。彼は右腕を失ったことに気付き、絶望的な状況の中、青色のスライムが自分の腕に取り付いていることに気付く。

謎のスライムとリーンの正体

そのスライムは青年に話しかけ、彼の腕の治療をしていることを伝えた。青年は驚きつつも、リーンとスライムの正体について疑念を深める。リーンは自分を「リングリーンの直系」であると名乗り、魔物を従える力を持つことを明かした。リングリーンは伝説の魔女であり、魔物を説き伏せたことで知られる。青年ハクラは最初は信じなかったが、リーンの力を目の当たりにし、その存在を認めざるを得なかった。

新たな脅威とリーンの力の証明

突如として現れた双頭狼の群れが二人を取り囲むが、リーンは全く動じることなく群れのリーダーに接近した。驚くべきことに、双頭狼たちはリーンに従順に従い、攻撃の意志を見せなかった。リーンは魔物たちと意思疎通を図り、彼らを退けることに成功した。ハクラはリーンの力と魔物への支配力を目の当たりにし、彼女の正体と能力に驚愕した。

二人の関係の始まり

リーンはハクラに助けたことへの感謝を要求し、彼は渋々感謝の言葉を述べた。リーンはその様子を楽しみながらも、自身の魅力と力を誇示した。こうして、ハクラとリーンの奇妙な関係が始まり、彼らの冒険が新たな局面を迎えることとなった。

第一章  生きるということ

生きる為に喰う

失意の帰還と仲間の離別


リーンとハクラは、ヒドラ討伐後にエスマの街へ戻った。ハクラがギルドに顔を出すと、彼は既に死亡登録されており、その取り消し手続きが行われた。しかし、仲間たちは彼の生存を信じず、既に街を発っていた。ヒドラ相手に殿を務めたハクラの勇気は称賛されるべきものであったが、残された彼は深い喪失感に包まれていた。

リーンの慰めと皮肉な再会

ハクラの落胆を前に、普段は他人に気を使わないリーンが慰めの言葉をかけた。しかしその言葉はハクラには響かず、二人の会話は次第に口論へと発展した。リーンが奢ると言い出した金は、ヒドラ討伐の報酬から得たものであり、ハクラはそれを快く思わなかった。リーンはハクラを助け、介護した対価として報酬を得たと主張し、その合理性を強調した。

新たな同行者としての提案

リーンはハクラに対し、今後の《冒険依頼》を共に遂行するよう提案した。港町へ向かうまでの臨時パーティとして同行することを持ちかけ、報酬の分配についても交渉を開始した。最初は強引な条件であったが、最終的にはリーンがヒドラ討伐の報酬を全額渡すことで合意に至った。ハクラは不本意ながらもリーンの提案を受け入れることとなった。

ギルドでの新たな出会い

二人が再びギルドを訪れると、ハクラは旧知の少年ジーレと再会した。ジーレは冒険者としての第一歩を踏み出したばかりであり、《秘輝石》を右手に埋め込んでいた。ハクラは彼に餞別としてナイフを渡し、冒険者としての未来を祝福した。しかし、その祝福には、これから待ち受ける苦痛と試練への同情も込められていた。

冒険者としての苦悩と現実

冒険者になるためには《秘輝石》を体に埋め込む必要があり、それに伴う激痛は想像を絶するものであった。ジーレはその現実をまだ知らず、無邪気に喜んでいた。ハクラとリーンは、これからジーレが経験するであろう苦しみを思い、複雑な心境に包まれた。冒険者たちの祝福は単なる励ましではなく、同じ苦痛を共有する者たちの哀れみの表れでもあった。

リーンの存在と二人の旅の始まり

リーンの存在はハクラにとって複雑なものであった。彼女の美貌と魔物を従える力は周囲の注目を集めたが、その性格は癖が強く、しばしばハクラを苛立たせた。それでも、二人は互いの力を必要とし、次なる《冒険依頼》に向けて共に歩み始めた。リーンの瞳の輝きは、ハクラにとって抗えない魅力であり、それが彼の心を徐々に動かしていくのであった。

魔導銀の剣と金欠の現実

ハクラは行きつけの武器屋で偶然見つけた魔導銀製の剣を購入した。その剣は両刃ながら左右非対称という理由で割引されており、相場の三割引きで手に入った。彼の戦い方には最適な刀身の長さであり、今後の安全のためには必要な投資と考えた。しかし、その結果として現金はほとんど残らず、防具も厚手のマントと服だけの簡素な装備に甘んじることになった。

コボルド退治の《冒険依頼》

リーンはギルドで《冒険依頼》を吟味し、最終的にコボルド退治の依頼を選んだ。ハクラはその選択に激しく反発したが、リーンはコボルドが通常の個体と異なり、人間を襲うという情報を持っていた。コボルドは一般的に臆病で人間を避ける性質を持つが、この依頼ではその行動が異常であったため、何らかの異変が起きている可能性が示唆された。

ライデア村への道中

ハクラとリーンは馬車でライデア村へ向かった。道中、リーンの食欲とハクラの皮肉なやり取りが続き、御者も二人の掛け合いを楽しんでいた。ライデア村は果樹園で有名な場所で、特に甘果実が特産品であった。リーンは依頼の報酬に加え、地元の料理や果実酒に強い興味を示していた。

ライデア村の異変と依頼内容

村に到着した二人は村長のデゴウから話を聞いた。村は長年コボルドと平和に共存してきたが、半月前からコボルドが突然人間を襲うようになったという。討伐隊が編成されたものの、三人が消息不明となり、一人は目の前で殺される惨劇が起きた。村長はコボルドとの共存を望んでいたが、村の安全のためには討伐を決断せざるを得なかった。

ハクラとリーンの小競り合い

依頼の詳細を確認した後、ハクラとリーンは再び口論を始めた。リーンはハクラの戦闘力を認めつつも、自分の《冒険者階級》を秘密にしようとしたが、最終的には「EX」と明かした。これはギルドが分類不能とする特別な階級であり、リーンが魔物使いであることを示唆していた。二人のやり取りは次第にエスカレートし、ハクラはリーンの頭を鷲掴みにしてしまうが、最終的には和解した。

不穏な影と新たな展開

村でのやり取りが一段落した後、ハクラは自分たちの行動を物陰からじっと見つめる視線に気付かなかった。その存在は、後の厄介な問題の前触れであり、この時点で対処していれば避けられたかもしれない事態を予感させた。

森の中の探索と魔素の影響

村人が利用するため、森の主な道は整備されていた。ヒドラが住んでいた危険な場所と比べれば、快適な環境であった。魔素の薄さも影響しており、強い魔物は寄り付かない。これは、高山病のように環境が合わないと生存が難しくなるためである。したがって、村や街は魔素の薄い場所に作られる傾向にあり、コボルドのような弱い魔物はその中間地帯に生息していた。しかし、人間を襲うコボルドは珍しく、その存在が疑問視されていた。

コボルドの食性と生態

コボルドは雑食で、肉も果物も食べるが、生まれて初めて食べたものがその個体の主食となる。これは「刷り込み」に似た現象である。果物を最初に食べた個体は果物を主食とし、肉を消化できなくなる場合もある。この特性のため、通常は人間を襲うことはない。しかし、もしコボルドの食性が変わり、人間を主食とする個体が生まれれば、その食性は子孫に引き継がれることになる。これが問題の核心であり、人間を襲うコボルドの存在は、この食性の変化を示唆していた。

甘果実の収穫とコボルドの誘導

リーンは甘果実を収穫するために森の木を蹴り、果実を地面に落とした。この行動は一見無謀に見えたが、実際にはコボルドを誘き出すための策略であった。果実の匂いに引き寄せられたコボルドが現れ、それを追跡することで巣の場所を特定する計画である。しかし、ハクラは依頼通りにコボルドを即座に退治しようとしたが、リーンはバランスを保つためにコボルドを観察し、必要以上の殺生を避ける方針を取っていた。

コボルドの巣と大モグラの登場

巣を見つけた後、リーンはコボルドを直接巣から追い出す代わりに、大モグラの力を借りた。魔物使いとしての能力を駆使し、大モグラを操ってコボルドの巣を掘り返させた。恐怖に怯えたコボルドは巣から飛び出し、その様子を見たハクラはリーンのやり方に疑問を抱いた。コボルドを直接制御することも可能であったが、リーンはこの方法を選び、結果としてコボルドに恩を売る形になった。

テトナとの出会いとルドルフの保護

逃げ出したコボルドを捕まえた直後、テトナという少女が現れ、コボルドをルドルフと呼んで守ろうとした。テトナはルドルフが悪いコボルドではないと必死に訴え、ハクラの厳しい態度に涙を流した。彼女の父親はコボルドに殺されていたが、それでもルドルフを友達として守る意志を示した。この状況にリーンは同情し、ルドルフを守りつつ問題を解決することを誓った。

依頼の目的とリーンの方針

ハクラは依頼の目的がコボルド退治であることを再確認し、合理的に全てのコボルドを駆除することが最善と主張した。しかし、リーンは人と魔物のバランスを取ることが重要であるとし、全滅を避ける方針を貫いた。村人たちを納得させるためには、コボルドの食性が変わった証拠を示す必要があった。リーンはその証拠がすぐに現れると予測し、ハクラに協力を求めた。

新たな展開への予兆

リーンの説明の通り、コボルドの異常な食性変化には何らかの原因が存在していることが示唆された。話の最後には、新たな気配と足音が森に響き、さらなる展開の到来を予感させる形で物語は続いていった。

異様なコボルドたちとの遭遇
眼前に現れたコボルドたちは、目が血走り、牙を剥き出しにし、舌を垂らしていた。痩せ細った体とは裏腹に鋭い爪を持ち、亜種の小悪鬼と見紛うほどの異様な姿だった。三匹は粗末な剣や斧で武装しており、明らかに村人から奪った物と思われた。テトナは怯えながら一体を指差し、かつて行方不明になった村人の可能性を示唆した。

コボルドの襲撃と迅速な対処
コボルドたちは突如武器を構え、リーンに向かって突進した。だが、リーンと仲間たちは迅速に反撃し、二匹のコボルドを瞬時に斬殺し、一匹を両手足を切断して生け捕りにした。リーンは生け捕ったコボルドから情報を引き出す意図を示し、仲間たちはその冷静な対応に軽口を交わした。

リーンの尋問とルドルフの異常な反応
リーンは魔物の言葉を用いて、四肢を失ったコボルドに尋問を開始した。コボルドは痛みと混乱で吠え続けたが、ルドルフも異様に唸り声を上げ、テトナが必死に抑えた。リーンは冷静にコボルドの巣の場所を聞き出し、最後にその頭を杖で砕いて絶命させた。

テトナとルドルフの過去
テトナはルドルフとの過去を語り始めた。三年前、村の入り口で泣いていたルドルフを助け、甘果実を与えたことで親交が始まった。ルドルフの両親も村に現れ、親しみを見せていたが、次第にコボルドとの関係は村人たちの間で疑念を生じさせていた。テトナはルドルフが人を襲うはずがないと強く信じていた。

村長との対立
森を進む中、テトナの祖父である村長が現れ、テトナがルドルフと共にいることに激怒した。村長はルドルフを即座に殺すよう要求し、冒険者たちに依頼の遂行を強要した。テトナは涙ながらにルドルフの無実を訴え、ハクラもその状況に葛藤しつつも剣を抜こうとはしなかった。

リーンが真実を明かす
リーンは村人たちがコボルドの食糧である甘果実を乱獲したことが、今回の惨劇の原因であると指摘した。果実の減少により、コボルドたちは縄張り争いを始め、敗北した群れは飢餓の末に共食いを始めたという。リーンはその証拠としてコボルドの巣に村人たちを案内した。

コボルドの巣での惨劇
巣の中には妊娠したコボルドが横たわっており、出産と同時に生まれた子供たちが母親を貪り始めた。テトナはその光景に絶句し、ルドルフも哀しげにその様子を見守っていた。リーンはコボルドたちが共食いによって種族としての未来を失ったことを説明し、もはや共存は不可能であると断言した。

村長の絶望と結論
村長は自らの過ちを認め、信じていた隣人であるコボルドを失った悲しみに沈んだ。リーンの冷静な説明と目の前の現実に、村人たちは共存がもはや不可能であることを理解した。ハクラたちは依頼の遂行と村人たちの感情の狭間で、複雑な感情を抱きながらその場を後にした。

コボルドとの邂逅と葛藤

テトナは震えながら、〝人喰い〟の子供たちを見つめていた。彼女はルドルフに縋りながら、自分たちの行動が原因だったのかと自問する。しかし、もし村人たちが何も手を出さなければ、コボルドたちは隣人のままでいられたはずである。やがて子供たちはテトナとルドルフに近づき、彼らを餌と認識していた。ルドルフは成体であり、本来ならば赤子のコボルドに負けることはなかったが、ルドルフの仲間が犠牲になったことで、彼もまた〝人喰い〟たちを憎んでいた。ルドルフは牙を剥き出しにし、テトナを突き放して戦おうとするが、主人公は彼を制止した。

冒険者の葛藤と村の真実

主人公はコボルド退治を自分の仕事だと宣言し、ルドルフを引き下がらせる。村人たちはコボルドに敬意を払っていたが、その行為はコボルドには通じず、悲劇を引き起こしてしまった。村長は自らの短慮を認めたが、村人たちにその事実を受け入れさせることは困難であった。感情が理屈を超えており、村長は全てのコボルドを駆除することを依頼する。リーンは激しく反発し、主人公もその意図に疑問を抱いた。結局、主人公はルドルフを殺さずに済む方法を模索する決意をする。

ルドルフの決断と冒険者の選択

ルドルフはテトナのために自らの命を差し出そうとするが、リーンはそれがバランスを崩す行為だと指摘する。全員が痛みを負った結果、均衡が保たれているはずだが、それに納得できない者たちが更なる犠牲を求めていた。主人公は剣を抜き放つも、それを投げ捨て、村長に対してルドルフを殺さずに済む方法を探すべきだと訴える。村長はその言葉に動揺し、最終的にルドルフを守ることを決意する。

コボルドたちとの共闘と〝人喰い〟の殲滅

その後、村に迫る〝人喰い〟コボルドたちに対抗するため、ルドルフの仲間たちと協力して戦うことになる。リーンが指揮を執り、コボルドたちは見事な連携で〝人喰い〟たちを圧倒する。最終的に群れの長であるハイコボルドも倒され、村とコボルドたちの関係は新たな形で再構築された。村人たちはコボルドたちが味方であることを理解し、共存の道を模索するようになる。

冒険の終わりと新たな日常

冒険の後、村では盛大な宴会が開かれ、村人とコボルドたちは共に祝い合った。リーンは主人公に感謝の意を示し、二人の絆はさらに深まった。テトナはルドルフと友達でいられることに喜びを感じ、村長も真実を村人たちに伝えることを決意した。主人公はこの冒険を通じて、単なる退治ではなく、バランスを取ることの大切さを学び、次の冒険に向けて新たな一歩を踏み出すこととなった。

第二章  死ぬということ

リビングデッドの脅威

村の異変と冒険者への依頼
レストン村の周辺にリビングデッドが出没し、村人たちは恐怖に包まれていた。村の防衛は石を投げて追い払う程度で済むコボルド対策程度であり、この異常事態に対応できる力を持つ者は皆無だった。村長たちは会議を経て冒険者に助けを求めることを決断し、エスマのギルドへ急報を送った。エスマのギルド職員エリフェルは、魔物使いの娘リーンと彼女の護衛ハクラにこの依頼を押し付けた。通常、アンデッドの処理は教会の役割であるが、エスマの教会は人員不足で対応できなかったため、冒険者に回されたのだった。

ギルドでのやり取りとリーンの反発
リーンはアンデッド退治が教会の仕事であると主張し依頼を拒否しようとしたが、エリフェルは冷静に対応し、他に適任者がいないことを説明した。リーンは嫌々ながらも報酬の高さに引かれ、最終的に依頼を受けることを決断した。一方、ハクラの過去が明らかになり、彼がかつて魔女狩りを行っていたことがリーンの不信感を煽った。リーンはハクラに対して距離を置き、険悪な空気が漂う中で二人は出発した。

レストン村の日常と不安
一方、レストン村ではクラウナが日常の中で不安を抱えていた。村の女性たちは井戸端会議で噂話に花を咲かせていたが、クラウナの心はアレンの不在とリビングデッドの存在に囚われていた。アレンは村の安全を確保するためエスマに向かっていたが、戻ってこないことにクラウナは焦燥感を募らせていた。村の跳ね橋を外すことでリビングデッドの侵入を防げると信じていたが、その安心感は脆弱なものであった。

ハクラとリーンの確執と和解
森を進む途中、ハクラとリーンの間には険悪な空気が続いていた。リーンはハクラの過去の魔女狩りに対して不信感を抱き、ハクラはそれを弁解しようとした。最終的にハクラはリーンに対して、自分が彼女に興味を持った理由を告白した。それは、リーンが「善良な魔女」の存在を証明する存在であると信じたからであった。リーンはその言葉に驚きつつも、二人の関係は少しずつ和らいでいった。

リビングデッドの正体と対処法
旅の途中でリーンはリビングデッドの正体について語り始めた。リビングデッドは単なる死体ではなく、寄生キノコの一種であると説明し、その繁殖方法や弱点について詳しく語った。リビングデッドは湿度を好み、乾燥や高温には弱いこと、また菌糸が広がることで新たな死体を動かすことができることが明かされた。この知識により、ハクラは以前自分が行ったリビングデッドの処理法が不適切であったことを知る。

村の防御と新たな懸念
レストン村が川に囲まれているため、リビングデッドは村に侵入できないと信じられていた。しかし、リーンはリビングデッドが水を越えられないというのは誤解であり、むしろ湿潤な環境を好むことを指摘した。この情報により、ハクラとリーンは村の安全が完全ではないことを認識し、急いでレストン村に向かうことを決意した。

未知の危機への準備
二人はリビングデッドの脅威に備えつつ、村の安否を確認するための準備を進めた。リビングデッドが村に侵入できる可能性がある以上、迅速な対応が求められた。ハクラとリーンは、村の安全を守るため、そして自分たちの契約を果たすために、足を速めてレストン村へと向かった。

レストン村の異変

リビングデッドの出現と村の混乱
レストン村の周辺に現れた〝奴〟、すなわちリビングデッドは、村人たちにとって大きな脅威となっていた。川を越えられないはずの〝奴〟は村に侵入できないと信じられていたが、その存在は村人の不安を煽った。男たちが矢を射かけても効果はなく、〝奴〟は遠くからじっと村を見つめ続けていた。この異常な状況に、村長たちはエスマのギルドに冒険者を依頼する決断を下した。

冒険者リーンの登場
クラウナが水汲みをしている最中、突如現れたのは鮮やかな金髪と緑の瞳を持つ少女リーンであった。彼女はギルドの依頼を受け、レストン村にリビングデッド退治のためにやってきた冒険者だった。村長からクラウナに話を聞くよう指示され、リーンはクラウナの家まで水桶を運びながら共に歩いた。村に厳戒態勢が敷かれている中での突然の来訪者にクラウナは戸惑いながらも、リーンが信頼できる存在であることを理解した。

アレンの不在とクラウナの不安
クラウナはリーンに、婚約者アレンがエスマへ依頼に行ったまま戻っていないことを相談した。リーンはアレンが無事であり、遅れて到着することを伝えたが、それでもクラウナの不安は拭えなかった。村の伝統に従い、アレンは牛革の手袋を作る修行中であり、それを完成させるまでは正式な婚姻は認められていなかった。クラウナはアレンとの思い出や、村の規則についてリーンに語り、少しずつ心を開いていった。

村人たちの警戒と異常事態
リーンがクラウナと共に村を案内していると、村人たちはリーンに対して冷たい態度を取った。特に井戸端会議に集まる奥方たちは、リーンの存在に違和感を覚えつつも表面上は普段通りの会話を続けていた。しかし、牧場で異変が発生した。牛たちが一斉に鳴き始め、リーンに向かって突進しようとしたが、リーンの一言で静まり返った。この異様な光景にクラウナは驚きながらも、リーンの能力を信じるようになった。

記憶の喪失と村の崩壊
翌朝、クラウナは再びリビングデッドの存在を確認しようとしたが、村の様子はどこかおかしかった。村人たちの言動が歪み、会話が成り立たなくなっていた。クラウナは記憶が曖昧になり、リーンとの出会いや村の出来事が混乱していくのを感じた。やがて、リビングデッドが川を越えて村の中に現れ、村人たちを襲い始めた。クラウナは逃げ惑いながらも、村全体がリビングデッドに侵食されていることに気付いた。

リーンの真実とクラウナの絶望
クラウナはリーンに助けを求めたが、リーンは涙ながらに謝罪し、自らの無力さを語った。リーンはクラウナが異変の中心であることを示唆し、杖を地面に突いて何かの力を解放した。その瞬間、クラウナの視界は暗くなり、村のすべてが崩壊していく光景を目の当たりにした。牧場では腐敗した牛たちが鳴き声を上げ、村の住人たちは皆リビングデッドと化していた。クラウナは恐怖と絶望の中で、アレンの不在を痛感し、自分が置かれた現実に打ちのめされた。

リビングデッドとの遭遇

森の中での戦闘

ハクラとリーンがレストンへ向かう途中、森の中でリビングデッドと遭遇した。リーンの警告により、ハクラは敵の奇襲を間一髪で回避し、剣を抜いて応戦した。リビングデッドは槍を使いこなすほどの戦闘技術を保持しており、生前の冒険者であったことが伺えた。ハクラはその攻撃を巧みに避け、槍を両断、続けて相手の手足を切断することで戦闘を終結させた。

リーンの試みとリビングデッドの正気回復
戦闘後、リーンはリビングデッドに近づき、杖を使って正気を取り戻す試みを行った。リビングデッドは唸り声を上げながらも、次第に意識を取り戻し、クラウナという名前を口にした。ハクラはこの現象に驚きながらも、リーンの説明を聞き、リビングデッドが生前の自我を部分的に保持していることを理解した。

アレンの帰還と村の惨劇

アレンの変貌と村の混乱

数日後、エスマから戻ってきたアレンは、村人たちを無差別に襲撃していた。クラウナは必死にアレンを止めようとしたが、村人たちは彼を魔物として認識し、武器を手に立ち向かった。元冒険者であるアレンの戦闘技術は圧倒的であり、次々と村人たちを倒していった。

クラウナの絶望と変化
クラウナはアレンの元へ駆け寄り、彼の正気を取り戻そうと試みたが、逆にアレンに襲われてしまった。アレンの牙がクラウナの首に食い込み、その瞬間、クラウナもまたリビングデッドへと変貌してしまった。彼女の意識は朦朧としながらも、自分が死者であることを徐々に受け入れていった。

レストン村の全滅とリーンの介入

リーンとの再会と真実の告白

目覚めたクラウナの前にはリーンが立っていた。リーンはレストン村が全滅し、村人全員がリビングデッドとなったことを告げた。リーンはクラウナに、村人たちの動きを止める役目を託し、彼女が唯一の鍵であることを説明した。リーンはアレンから預かった革細工のお守りをクラウナに手渡し、アレンの最後の言葉を伝えた。

リビングデッドの終焉
クラウナは村人たちに向かって「眠れ」と命じ、リビングデッドたちは次々と倒れていった。村全体が静寂に包まれる中、クラウナはアレンのもとへ向かう決意を固めた。リーンは腐敗したクラウナの手を取り、共に歩き出した。

エピローグ

アレン・エスマとクラウナ・レストン、永久に眠る

アレンとクラウナの埋葬
レストン村から一時間ほど離れた川辺で、ハクラとリーンはアレンとクラウナの遺体を埋葬した。二人は黙祷を捧げた後、アレンの遺した言葉や村の惨劇について話し合いを始めた。

リビングデッド化の経緯
アレンはレストンからエスマへ向かう途中で野犬のリビングデッドに襲われ、死亡後に感染してしまった。ギルドに《秘輝石》を返上していたため、抵抗は困難だったと推測される。リビングデッドとなったアレンはクラウナへの執着から村に戻り、彼女と村人たちを襲撃した。

クラウナの統率力の理由
クラウナがリビングデッドたちを止められた理由について、リーンは菌糸の感染経路を説明した。同一の菌糸から生まれたリビングデッドは感染源に近い個体に統率されるため、アレンから感染したクラウナが村のリーダーとなったのである。

疑念の浮上

アレンの死に対する疑問
ハクラはアレンの死に納得がいかず、優れた冒険者であった彼が簡単に屍犬に倒されたことに疑問を抱いた。また、アレンが所持していたクラウナへの手袋が片方しかなかったことも不審点として指摘した。

魔女の関与の可能性
ハクラはこの事件に魔女が関与している可能性を示唆し、アレンが意図的に殺害されリビングデッドにされた可能性を考えた。リーンはこれを否定できず、事件の真相解明が未完であることを認めた。

終わらぬ事件

ハクラの決意

ハクラはアレンの死とレストン村の滅亡が偶然ではないと考え、事件の背後にいる可能性のある存在を許さないと誓った。彼はこの事件がまだ終わっていないことを強く主張した。

クラウナの再会

死後の再会

クラウナは川辺でアレンと再会した。二人は互いへの愛を確認し、たとえ死んでもその絆が揺るがないことを誓い合った。この再会はクラウナにとって救いとなり、彼女の心を満たした。

その他フィクション

e9ca32232aa7c4eb96b8bd1ff309e79e 小説「魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~」感想・ネタバレ
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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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