小説「魔王軍最強の魔術師は人間だった 2 」感想・ネタバレ

小説「魔王軍最強の魔術師は人間だった 2 」感想・ネタバレ

どんな本?

アイクは魔王軍最強の「不死旅団」を率いる幹部であり、人間の都市ゼノビアとの交易を目的に派遣される。
彼は副団長に昇進し、新たな任務に挑むことになる。
ゼノビアは人間の都市であり、交易を成功させるためには正体を隠す必要がある。
アイクはサティと共に人間の姿で目的地へ向かうが、その道中で盗賊に襲われる女性、ユリアと遭遇する。
彼女を助けたことで、アイクはゼノビアの重要人物と接触する機会を得る。

『魔王軍最強の魔術師は人間だった』は、羽田遼亮 氏によって書かれたライトノベルで、KUMA 氏がイラストを担当。
この作品は「小説家になろう」から始まり、大人気な魔界転生ファンタジーとなった。

物語は、魔王軍第七軍団に所属する不死旅団の団長、アイクを中心に展開する。
アイクは「魔王軍の懐刀」と呼ばれるほどの魔術師ですが、彼の正体は人間で、しかも日本人の転生者だった。
彼は大魔術師ロンベルクに気まぐれで拾われ、彼の知識と魔術を受け継。
普段は人間であることがバレないよう、仮面とローブを身につけている。

また、この作品は2024年夏にTVアニメ化される。

読んだ本のタイトル

#魔王軍最強の魔術師は人間だった2巻
著者:#羽田遼亮 氏
イラスト:#KUMA  氏

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あらすじ・内容

魔王軍最強の「不死旅団」を率いるアイクは、軍団長・セフィーロから南方にあるゼノビアという都市へ行くよう命じられる。目的はゼノビアが盟主を務める『通商連合』との交易。ゼノビアは人間の街。アイクは怪しまれないようサティと共に人間の姿で目的地へと向かうが、その道中、盗賊に襲われるある女性と遭遇する――。人間なのに、なぜか魔王軍幹部として働く主人公が活躍する、「小説家になろう」発、大人気魔界転生ファンタジー。

魔王軍最強の魔術師は人間だった 2

第一章 ドワーフの王ギュンター

アイクはドワーフの王ギュンターを救出するため、イスマスの王都に潜入する。
彼はリリスと共に変装し、監獄に囚われているギュンターを解放する計画を実行する。
アイクはギュンターと協力し、ドワーフの技術力を借りて火縄銃の量産を目指すことにする。
ギュンターとの交渉に成功し、彼はアイクの提案を受け入れ、ドワーフと魔王軍の間に同盟が結ばれる。
アイクはこの成果を持ち帰り、セフィーロや他の軍団長たちに報告する。

第二章 アーセナムの奇跡

アイクはアーセナムを救援するために動く。
彼は街の住民や他の旅団長たちと協力し、街を防衛する計画を立てる。
ドワーフの技術とアイクの知略を駆使し、アーセナムの防衛は成功する。
彼はセフィーロと再会し、その後、魔王軍内での評価がさらに高まる。
アイクの行動は魔王様からも称賛され、新たに設立される第八軍団の団長に任命されることが決まる。
彼の目標である人間と魔族の共存に向けた第一歩がここで示される。

第三章 南方の通商連合

アイクは通商連合との交易を成功させるために、ゼノビアへ向かう。
道中で盗賊に襲われたユリアを助けたことで、彼女の父であるエルトリア・オクターブとの会談の機会を得る。
アイクはエルトリアとの交渉で成功し、魔王軍とゼノビアの間に秘密裏の交易を結ぶことになる。
さらに、ユリアとの関係が進展し、彼女からの強い求愛を受けるが、アイクは仕事を優先し、結婚を先延ばしにする決断をする。

第四章 アレスタ救援、そして――

アイクはアレスタを救援するために急行する。彼は新兵器である焙烙玉を駆使し、セフィーロ率いる第七軍団を救うことに成功する。
戦闘後、魔王様から第八軍団の団長に任命されることが正式に発表される。
アイクは人間と魔族の共存を目指し、新設された第八軍団を率いて新たな挑戦に挑むことになる。彼の行動は魔王軍内での地位を固め、彼の目標に向けた大きな一歩となる。

感想

本書は、アイクの成長と彼を取り巻くキャラクターたちとの関係性が鮮明に描かれている作品である。
アイクが魔王軍の副団長として新たな任務に挑む姿は、読者に強い印象を与える。
特にドワーフの王ギュンターとの同盟や、ゼノビアとの交易交渉は、アイクの知略と戦略が光るシーンであり、彼のリーダーシップが際立っている。

アイクの人間としての優しさと、公平さを持ったリーダーシップは、彼の部下たちからの信頼を得る要因となっている。
また、ユリアとの恋愛要素が物語に彩りを添え、彼女の一途な愛情が物語に深みを加えている。
彼女のキャラクターは魅力的であり、アイクとの関係がどう進展していくのかが非常に興味深い。

さらに、アイクが新設された第八軍団の団長に任命され、人間と魔族の共存を目指す姿勢が示されることは、今後の展開に対する期待を高める要素である。
アイクの目指す共存の理想がどのように実現されていくのか、そしてそれがどのように物語に影響を与えるのかが楽しみである。

全体として、この作品はアイクの成長と彼を取り巻くキャラクターたちの描写が魅力的であり、読者を飽きさせないストーリー展開が続く。
ファンタジーと戦略、そして人間関係の描写がバランス良く織り交ぜられた本作は、次巻への期待を抱かせる内容であり、読者を引き込む力を持っている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

第一章  ドワーフの王ギュンター

数日前まで第七軍団旅団長であったアイクは、副団長に昇進し、部下からもそのように呼ばれるようになる。
変わったことは少なく、主な違いは軍団会議でセフィーロの隣に座れるようになったことと、他の旅団長たちから一目置かれるようになったことである。
敵対していた人狼旅団のベイオもアイクの実力を認めるようになり、アイクはこれを組織にとって有益だと考える。
アイクの目標は、魔族と人間が共存する世界を創ることであり、そのためには大陸を魔族が支配する必要があると認識している。
彼自身が人間であることを自覚し、限られた寿命の中で急いで目標を達成しようとしている。
執務室でジロンから諸王同盟の成立を聞かされるが、アイクはこれを予測しており、特に驚かない。
戦局を変えるために火縄銃の量産をセフィーロに委ねている。

セフィーロは魔王軍の領内に居城を持つ第七軍団の軍団長であり、彼女は悪戯好きでしばしばアイクを呼び出しては実験台に使ったり、無意味な話を長々と聞かせたりする。
アイクが幼い頃からセフィーロに面倒を見てもらっているため、彼女の行動には耐えざるを得ない。
最近の会話で、セフィーロは火縄銃の量産が不可能であると結論付けた。
彼女によれば、模倣品は所詮模倣品であり、実用に耐えないためである。

アイクはこの世界にネジが存在しないことに気付く。
前世の記憶を持つアイクにとっては当たり前の技術であるネジの知識が、この世界では貴重なものとなる。
アイクはネジの作り方に心当たりがあるため、量産の手法を知る可能性があることをセフィーロに提案する。
具体的には、ドワーフの王ギュンターに協力を求めることを提案する。
ギュンターはかつてドワーフの国ウィルヘイムの王であり、現在は人間たちによって幽閉されている。
アイクはドワーフの技術力を信じ、ギュンターの解放と協力を得るための戦略を立てることを決意する。

軍議が終わり、部隊長たちが会議室から出て行く中、リリスとシガンだけが席を立たない。
リリスはシガンにアイクの策について尋ね、シガンはその知謀を認める。
リリスはアイクが既に他の軍団に調略を重ねていたことに驚く。
アイクの策は、各軍団長に裁量を与え、競争意識を利用することで、人間の都市を攻略させるものだった。
その間、リリスたちはイスマス王国を横断し、主力が手薄な状態を利用する計画である。
シガンは目的がイスマスの王都からドワーフの王を救出することであり、国土を荒らすことではないと指摘する。
シガンはアイクの将器を認め、竜人族の一員として、彼がどう戦い、どう生きるかを見届けることができることに感謝する。

軍議が終わり、リリスとシガンが会議室に残り、アイクの策を評価する。
アイクは魔王軍の一部として第二軍団長漆黒の翼のゲルムーアに偽情報を提供し、アレスタに攻め込ませる。
この策略により、ゲルムーアの軍団がアレスタで必死に抵抗されると予測され、同時に諸王同盟の介入が期待される。
第二軍団の敗北は、人間の都市が本気になった場合には避けられないと考えられている。
シガンはこの戦略を高く評価し、アイクの底知れない戦略に感銘を受ける。
シガンは竜人族出身であり、長い経験を持ち、アイクの将来を楽しみにしている。

ジロンが持ってきた鎧一式を着用したアイクは、鷹の紋章が付いたその鎧で完全に人間の貴族のように見える。 
リリスもこれに賛嘆し、アイクを褒め称える。
目的は、イスマスの王都に敗残兵に紛れて潜入し、ドワーフの王を救出することにある。
シガンやジロンを連れて行く選択肢は排除され、アイクは人間の兵士に変装したリリスを選択する。
リリスはフルプレートの鎧を身に着け、尻尾を隠すためにフルフェイスの兜を被せられる。
アイクとリリスは、この変装を利用して王都に潜入し、目標を達成しようとする。

イスマスの王都は荘厳であり、立派に整備された石畳や、王宮に続く道沿いに建つ商館や貴族の館が印象的である。
アイクとリリスは、ドワーフの王ギュンターの救出が目的で王都を訪れる。
彼を味方につけることで、ドワーフたちも支援してくれると考えられるため、その価値は計り知れない。
しかし、監獄は王都の端に位置し、その設備はひどくみすぼらしい。
この粗末な扱いは、人間の亜人に対するものとしては一般的であることをリリスは指摘する。

監獄の門番は若く、アイクは貴族の紋章がある鎧を利用して自信満々に接触する。
偽の命令書を使い、ギュンターを移送するという嘘をつくが、門番はそれを確認しようとする。
その際、リリスが門番を殴り、二人は監獄に侵入する。

最終的に、監獄の最深部でギュンターを発見し、アイクは自身が魔王軍の一員であることを明かす。
ギュンターは彼らの言葉を信じ、協力することを決意する。
アイクは魔法でギュンターの鎖を外し、彼らはイヴァリースへの帰還を急ぐ。
この混乱に乗じて、敵の追撃を避けながらの脱出を試みる。

ローザリアを横断し、イスマスを急襲してドワーフの王ギュンターを救出する計画は成功したが、彼との交渉が残っていた。
アイクはイヴァリースに戻り、ギュンターを客人として応接間に迎えた。サティが紅茶を出し、ギュンターは代わりに蒸留酒を要求した。
アイクは、魔族らしくギュンターを人質に取る方法も考えたが、人を恐怖で働かせるのは不可能であるとし、その方法を採用しなかった。

ギュンターは、アイクが示した礼節に応じ、自身がもはや王ではなく、ただの老いぼれであると述べた。
リリスが火縄銃について尋ねると、ギュンターはその製作に興味を示し、量産可能であるかを議論したが、ネジの量産が困難であると認めた。
アイクは、ギュンターに火縄銃の量産を依頼し、その対価としてドワーフの国再建を進言すると提案した。
ギュンターはこの提案を受け入れ、アイクと握手を交わすことで、魔王軍とドワーフ族の間に密かな同盟が結ばれた。

ギュンターは、アイクとの交渉後、長年の監禁からの解放と、王国再興の可能性に興奮と希望を抱いた。
彼はドワーフたちが日々労働し、夕刻には家族や友人と共に酒を酌み交わす光景を思い描きながら、その再現を望んだ。
アイクの提案により、ギュンターは彼の剛胆さと知識に賭け、各地に散らばるドワーフの職人たちへ手紙を書き、再会を願った。

一方、アイクの側では、激動の出来事が一段落した後、メイドのサティとの日常が続いた。
サティはアイクの留守中、家の掃除をして時間を潰していたが、アイクは彼女に文字を教えることを決意。
教育を受けたことのないサティは、本を愛していたが、文字が読めなかった。
彼女に文字を教え、読書を通じて彼女が新たな楽しみを見つけられるよう支援することにした。
サティは迅速に学び、書くことも覚え、感謝の気持ちを文字に表した。
アイクはこれを機に、サティがより多くの本を楽しむことができるよう支援を続けることを決意した。

第二章  アーセナムの奇跡

イヴァリースの執務室から街を見下ろすと、ドワーフの職人たちが次々と城門をくぐり、町に入ってくる様子が見える。
彼らは商売道具を背負っており、ギュンターの呼びかけに応じて集まってきたようだ。
また、ドワーフ以外の人々も集まり始めており、これを機に新たな産業が生まれそうな雰囲気がある。
このことから、人が集まることで街が豊かになり、様々な産業が育っていく過程をアイクとサティは窓から眺めている。

一方で、ジロンから鉄砲の弾の量産に関する問題が持ち上がる。
しかし、アイクはジロンに塔を作るよう指示し、その上から鉛を流し、空中で冷え固まることによって自然と球形になる様子を見せる。
この現象に街の人々は驚嘆し、アイクの評判はさらに高まる。
そして、公式の手順で呼び出されるということは、軍団規模の重要な問題が発生した可能性があるため、アイクはセフィーロの居城に向かうことになる。

バレンツェレの転移の間で、第七軍団の旅団長たちが集まり、混雑していた。
アイクは新参者であるため、他の魔族とはあまり親しくなく、同様に獣属の魔族であるクシャナと会話を交わす。
セフィーロの呼びかけで旅団長たちは集められ、軍議が開かれた。
その目的は、ローザリアとの戦いでの不利な状況に対処するためである。
セフィーロは第二軍団の失敗など、いくつかの軍団が苦戦している現状を報告し、特にアーセナムの包囲状況が焦点となる。

アイクは、アーセナムへの救援を提案し、これには多くの旅団長が反対する。
しかし、セフィーロがアイクの提案を支持し、救援作戦が決定される。
アイクはその実行に向けて自信を持っているが、その具体的な戦術や武器の詳細は語られない。
セフィーロはアイクを信じ、彼に全権を委ねることを決定し、アイクはセフィーロの支持と信頼に応えるために全力を尽くすことを誓う。
会議後、アイクは一週間後にイヴァリースで戦の準備を始めるために戻る。

イヴァリースに戻ったアイクは、最初に食料備蓄の確認を行った。
この街は農業都市であり、通常は食料を余分に生産し輸出している。
しかし、急に多くの兵が集まるとは予想外だったため、備蓄が足りるかどうか心配されたが、調査の結果、食料は足りることがわかった。
サティはこれをアイクの導入した農法の成果と評価した。
サティは多くの魔族が集まることを歓迎し、自らも戦支度に積極的に参加することを表明した。
彼女は食事の準備に自信を持っており、特に米の美味しい食べ方を提案した。
アイクはその夜の夕食にチャーハンを要求し、サティに作り方を教えた。
また、イヴァリースは活気に満ち、商人たちが商売を行っており、魔王軍に対する彼らの商魂を評価する場面もあった。アイクは、人間や他の亜人との和平的な共存を目指しているが、完全な平和は非現実的だと考えている。
彼は一時的な平和でも達成できれば、それで満足するという姿勢を見せた。

イヴァリースの街に第七軍団の旅団長たちが集まっている。
街の城門はかつて破壊されたが、修復されており、その姿に驚く旅団長たちもいる。
アイクは輪番制と人間に対する適切な報酬の支払いを秘訣として説明する。
集まった旅団長たちは、魔族が支配する都市でありながら、既存の館を利用していることにも驚いているが、アイクは街への投資を優先していることを示している。

セフィーロの軍議では、アイクに全権が委任され、アーセナム救援の作戦を進行することとなる。
戦の仕方に詳しい旅団長たちも参加しており、特に人狼のベイオは自信を見せつつも、アイクの計画に協力的な態度を見せる。
アイクは作戦の成功に自信を持ち、もし失敗した場合には自らの地位を返上すると公言する。
この覚悟が部下たちに伝わり、軍議はアイクの指揮のもとに進行されることが決まる。

アーセナム救援の帰路で、普段おしゃべりなベイオは無言だった。
彼の自尊心が傷ついたためだとクシャナは察して言及しなかった。
しかしベイオは素直に感想を述べ、「アイクの奴はすげえな」と他人を称賛した。
これはクシャナにとって初めてのことだった。
クシャナは、アイクが人間側に生まれていたら、魔王軍が追い詰められていた可能性を指摘し、アイクが魔族として生まれたことを感謝した。
ベイオも同意し、彼の自身の経験を通じて人間に対する見方が変わってきたことを認めた。
アイクの影響力と将来の可能性についてクシャナは深く考え、アイクが歴史に名を残すことを予感した。

第三章  南方の通商連合

第七軍団がアーセナムを攻略した後、ローザリアの王都リーザスへの進攻は計画されていたが、その計画はすぐに取り消された。
諸王同盟の先発隊であった敵軍は、ローザリアの王都に集結する数万の軍勢の一部に過ぎなかったため、第七軍団の団長セフィーロは撤退を命じた。
その命令に従い、自身はイヴァリースにある自分の館へ帰還し、サティが用意した紅茶とクッキーを楽しんだ。
戦場のストレスから解放され、コーヒーを求める独り言をつぶやいたが、それにサティが反応した。
コーヒーが南方で流通しているというセフィーロの情報を受けて、魔王の代理としてゼノビアに通商連合との条約交渉を行うことが決定した。
セフィーロは部下の成長を促すためにも自分で行動することを提案し、魔王軍の財政と食糧事情を考慮した戦略的な任務を与えられた。

アイクが南方に赴くことが決定し、リリスはその同伴を志願するが、留守番を命じられる。
アイクはリリスにイヴァリースの治安維持を任せるため、街の悪事に手を出す者がいれば取り押さえるように指示する。
ジロンには街の統治を任せることにし、自身は外交ミッションでゼノビアに向かう。
リリスは不満を表明するが、アイクは通商連合の盟主との交渉が重要であることを説明し、リリスとジロンにイヴァリースの管理を託す。
その後、旅支度を始めるが、サティが同行することについてリリスから疑問が投げかけられる。
アイクは、人間と魔族が上手くやっている実例が交渉に役立つと説明し、リリスは渋々納得する。最終的にアイクはゼノビアへ向けて出発する。

馬で戦場に近づくと、隊商と盗賊の戦闘が既に始まっていた。
隊商の護衛は意外にも善戦していたが、一人が倒れる場面を目撃し、援護が必要だと判断した。
そこで、魔法を使って盗賊を撃退し始める。
《衝撃》の魔法で盗賊を吹き飛ばし、《障壁》の魔法で護衛を守る。
護衛隊長はアイクの魔法の力に驚き、感謝の言葉を述べる。
アイクは隊長に《付与魔法》をかけ、さらに戦闘力を高める。これにより、隊長は盗賊の重武装を容易に切り裂く。
盗賊たちは次々と戦闘不能となり、逃走を開始する。
アイクは逃げる盗賊の頭目を《束縛》の魔法で捕らえる。

その後、アイクは治療魔法で護衛たちを手当てし、盗賊たちも治療するが、彼らを縛った状態で行う。
この行動に護衛たちは非難の声を上げるが、アイクは盗賊も救う決断を下す。
そんな中、ユリア・オクターブと名乗る美しい少女が感謝の言葉を述べる。
彼女はゼノビアの盟主エルトリア・オクターブの娘であると明かす。
アイクは偽名を使い、イスマス出身の魔術師「ライク」と名乗り、ゼノビアへの同行を決める。

サティを呼び寄せ、ユリアの勧めで馬車に乗り込んだ。サティは馬車に初めて乗ることに興奮していた。
ユリアがサティの経験について質問すると、サティは答えに困るが、そこを俺が割って入り、イスマスの貴族階級出身だが裕福ではなく、サティは屋敷で女中として働いていたことを説明する。
ユリアも自らがゼノビアを出るのは初めてであること、お見合いがうまくいかなかったことを明かす。
ユリアの縁談相手に対する苛立ちから、舞踏会でその相手の足を踏んだという逸話も語られる。

彼女の直接的な態度に驚きつつ、ユリアはライクに対しても直接的に感情を表現し、彼との婚約を望むことを明かす。
これに対して、サティは戸惑いながらもユリアの行動に異を唱える。
しかしユリアは即座に愛の時間について問いかけ、ライクへの懸想を隠さない。
ライクはその場を取り繕い、お茶を濁すように、もう少し時間をかけて互いに知り合ってから決めるべきだと提案する。
ユリアはその提案に同意し、ゼノビアでのさらなる交流を楽しみにする。

結果的に、ライクはユリアの熱烈な提案に困惑しつつも、目的地であるゼノビアに向かう道中、彼女の妄想に付き合うことになる。

ゼノビアの支配者の娘であるユリアは、イスマスの魔術師ライクに一目惚れした。
彼女はこれまで幾人もの男性と縁談話を持ち、その中の誰にも心を動かされることはなかったが、ライクとの出会いに心を奪われた。
彼の正義感と優しさが、ユリアにとっては特別であり、彼と結婚することを望むようになる。
しかし、相談するべき相手がいない中で、侍女に相談し、彼女からはライクとの関係を進めるためにどんな手段も使って良いとの助言を受ける。
戦争と恋には全ての手段が許されるとの言葉に影響を受け、ユリアはライクとの結婚を強く決意し、そのための計画を進めることにする。

ゼノビアの街に到着したライクとサティは、オクターブ家に招かれ、娘のユリアを救った恩人として厚遇される。
オクターブ家の執事であるハンスは、感謝の意を表しながらも、エルトリアとの公式な面会はなかなか設定されなかった。
南方特有の豊かな食事と歓待を受けながらも、ライクはその豪華なもてなしに困惑し、面会の機会を求めていた。
結局、ユリアが介入して、ライクはエルトリアとの会談を果たす。エルトリアは通商連合の代表であり、商人としての鋭い洞察力を持っていた。
会談では、ライクが人間であることや、魔王軍との関連を認識していたエルトリアが、彼に対し政略結婚を提案する。
ライクはその提案に慎重な態度を示し、魔王軍の一員としての立場を強調する。
エルトリアはその提案に確信を持っており、ライクにユリアとの結婚を進めるよう強く求める。

エルトリアの執務室を後にしたライクは、執事のハンスと話し合い、提案された結婚の条件は保留とし、エルトリアとの約束の一部として海賊退治を承諾する。
ハンスは結婚を推し進めようとするが、ライクは身を固めるには時期尚早だと説明する。
また、外交の詭弁を利用して結婚を遅らせることを考えており、結婚を「婚約」の形で取り扱う提案に感謝する。

海賊退治に関して、ライクとハンスは詳細な計画を立てる。
ハンスはこれまでの失敗を踏まえて提案を行い、ライクは金銀を積んだ商船を偽装し、海賊を誘い出す作戦を提案する。
さらに、この計画においては通常の戦力のみを用い、傭兵を大量に募ることは避けるという方針を示す。
最終的には、より大きな餌を使うことを示唆し、ハンスと共に具体的な作戦について議論する。

ライクはサティをユリアの身代わりとして利用する作戦を立てる。
サティにはユリアに似せた衣装を着せ、彼女が貴族の令嬢に見えるように整える。
サティは最初から似ていると感じられていたが、衣装とカツラを着用することで完全にユリアに変身する。
ユリアの侍女たちもサティの変身に驚くが、これが彼女にしかできない重要な役割であることを認識している。
海賊対策としての彼女の使用にはライクも罪悪感を覚えつつ、彼女の安全を最優先に考えている。
サティは彼の助けとなることを望み、海賊退治の危険な計画に自ら志願する。

ライクは船上での戦闘には不慣れであるため、船長に戦闘の指揮を任せることにする。
彼は戦の準備を続ける船員たちの中で、ハンスに海戦の戦術について尋ね、魔術が主に使われることを学ぶ。
敵の攻撃に対して、ライクは《防壁》の魔法を使用して船を守りつつ、敵の石つぶてを撃退する。
海賊カロッサの船が攻撃してくると、ライクは魔法で直接敵の船に転移し、カロッサと対峙する。
カロッサは見た目が典型的な海賊でありながら、優れた魔術師兼指揮官でもある。ライクは全魔力を杖に付与し、決定的な一撃でカロッサを圧倒する。
カロッサが倒れると、その部下たちは武器を捨てて降伏する。
ライクは勝利を確定させ、帰路につくことを決めるが、同時に捕まった海賊の処遇について悩む。
ハンスは恩赦を提案し、ライクはそれを検討する。
ゼノビアに戻ることを決めたライクは、サティが祈り続けているのを見つけ、勝利を彼女に報告する。

ゼノビア港に戻ったライクを、ユリアが港で出迎える。
彼はエルトリアの館に向かい、エルトリアから赤髭のカロッサの捕獲に対する感謝の抱擁を受ける。
エルトリアはカロッサに終身刑を宣告し、その他の海賊たちには懲役を言い渡すことを決定する。
ライクはエルトリアと通商条約の交渉を始め、エルトリアは魔王軍との取引に前向きであることを明らかにする。
彼女は魔王軍の勝利を確信しており、戦後の利益を見越して交易を提案する。

交易の内容に関して、ライクは武器を提供することを提案し、エルトリアは特に大砲に興味を示す。
彼女は通商連合の中で魔王軍との秘密取引を行うことに同意し、ライクとの間で密かな取引の詳細を話し合う。
二人は商人の個人取引を装いながら食料を横流しする計画を立てる。

最後に、エルトリアはライクとユリアの婚約発表パーティーを提案し、これを機に条約の成立を祝うことを決める。
ライクはパーティーに参加することを承諾し、魔王軍の使者としての礼節を示す。

ライクは、舞踏会の準備を整えるサティからパーティージョークについて尋ねられる。
サティによると、パーティーでは主に政治、経済、戦争について話されるが、陰口が多いとのことである。
その後、ライクとユリアの婚約を祝う目的で舞踏会が開催されるが、ライクは自分が注目の的になることを嫌がる。
彼は人々からの注目や質問攻めにうんざりしつつも、舞踏会に参加することになる。
舞踏会でライクはダンスが踊れないことを懸念するが、ユリアがリードすることになる。

会場で、彼はユリアからの愛情を再確認し、彼女の母親エルトリアからは戦争が長引く可能性に対する皮肉を受ける。
その中でセフィーロから救援要請のメッセージが届き、ライクは急遽会場を離れることになる。
エルトリアは彼の武運を祈りながら、転移の間の使用を許可する。ライクはこの世界が住みやすくなることを願いつつ、任務を遂行するために去っていく。

【エルトリア・オクターブの日記】

エルトリア・オクターブは、娘ユリアを助けたアイクを初めて面会した際、その好青年ぶりに感心し、彼が恐ろしい才能を持っていると感じた。
アイクが魔王軍の使者であることは問題ではなく、彼が解決した海賊カロッサの討伐問題など、その才能を証明する事例が多い。
アイクが提供した大砲は、オクターブ商会にとって非常に価値のあるものだが、その秘薬「火薬」の製法は教えてもらえなかった。
アイクが商人だった場合、大きな競争相手になっていたかもしれないとエルトリアは考えている。

エルトリアは、アイクに娘を嫁がせたいと本気で考えており、彼を非常に評価している。
彼女は自身もまだ魅力的であると自負しているが、娘ユリアの性格には少し難があると自覚している。
アイクが次にゼノビアに来るまでに、ユリアをより女らしく教育するか、もしくは最悪の場合、自分が彼に嫁ぐことも考えている。
エルトリアは夫を愛しているが、アイクには特別な魅力を感じており、彼との再会を心待ちにしている。

第四章  アレスタ救援、そして――

イヴァリースにある転移の間に到着したアイクは、ジロンを呼び出し、現在の状況について尋ねた。
ジロンは慌てて現れ、第七軍団の団長セフィーロが窮地に陥っていることを伝えた。セフィーロはアレスタという街を侵略中であり、以前攻略に失敗した都市である。
彼が窮地にあるという事実にアイクは驚いた。
突然、魔王様が現れ、面白い部下を飼っているとアイクに告げた。
ジロンは、彼女が魔王様だとは信じられず、魔王様の存在を疑ったが、アイクはジロンを転移させ、魔王様に謝罪した。

魔王様は、アイクの交渉の成功を褒めた後、セフィーロの状況について説明した。
アレスタの攻略は成功したものの、それが罠であり、魔王軍が包囲されている状態だった。
セフィーロが救援を必要としており、アイクには救援かセフィーロを見捨てるかの選択肢が与えられた。
アイクはセフィーロを見捨てることができず、救援を選ぶことを決めた。
その後、サティがギュンターを連れてきて、ドワーフの戦士たちも戦いに加わることを提案し、アイクは感謝の意を示した。

不死旅団が力強い援軍を得た後、街の代表者たちが集まり、アイクに協力を申し出た。
商人ギルドの長、冒険者ギルドの長、各宗派の長、さらにパン屋の女将までが集い、アイクが統治する街が豊かになったことや信仰の自由が認められるようになったことを理由に、感謝の意を表した。
ドワーフの王ギュンターも街の発展を称賛し、アイクはこれに応え、街の人々を信じることにした。
その後、アイクは街の住民に戦時中の降伏を指示し、街を去ることになった。
彼らは去り際にアイクに武運を祈り、魔王様はアイクの人望を評価した。

魔王様は人間と魔族の共存を目指しており、アイクがこの街で実現している状況を評価した。
彼女はアイクに人間と共に戦うことを提案し、これが魔王軍内で反発を生むことも予見しながら、平和な世界を見たいという願いを表明した。
アイクはこの提案に同意し、魔王様の計画に協力することを誓った。

ジロンやリリスはアイクの人間と共闘する計画に反対の声を上げたが、シガンはアイクを支持する。
アイクは、魔王様と自らの目指す人間との共存の理念を部下たちに説明し、未知数のリスクを認める。
そんな中、サティが慌てて報告すると、外には多くの傭兵と義勇兵が集まっていたことが明らかになる。
アイクはこの新たな力を信じ、不安を抱えつつも人間たちに武器を渡す決断を下す。
リリスは依然として警戒心を持ち、人間たちを最前線に配置する提案をするが、アイクはそれを拒否し、人間たちを信じる道を選ぶ。魔王様は戦場に同行するが、戦闘には介入せず、アイクの戦いを見守ると述べる。
そして、もしもの時には逃げることも厭わないという自身の逃げ足の速さを半ば自嘲しながら話す。
アイクは魔王様の同行を受け入れ、共にセフィーロを救うために出発する。

アレスタの街を囲む人間の軍隊は、アイクにとって大きな脅威であることが明らかだった。彼らは多くの攻城兵器を用い、整然とした隊列で街を攻めており、その指揮官のエ・ルドレは非常に有能であるとリリスは指摘する。魔王様と共に観察していたアイクは、敵の強さと戦術を評価しつつ、自軍の部隊との戦力差を認識する。

魔王様との対話を通じて、アイクは戦闘の挑戦に直面していることを認め、秘策を準備するが、その詳細を明かさず、魔王様には戦いを観戦してもらうことを提案する。
戦場では、ドワーフや新たに加わった人間の兵士が戦っており、特に人間には火縄銃が配布されていた。
これはアイクの独断であり、他の部隊長からは反対されていたが、実戦での効果が期待される。

リリス率いる魔族部隊が敵の主力である赤竜騎士団に苦戦している中、アイクは飛行部隊の投入を決断する。
これは大規模な賭けであり、ジロンはアイクの命令に従いながらも、そのリスクを心配する。
アイクはドワーフの職人が作った焙烙玉を飛行部隊に持たせ、空中から投下させる計画を進める。
この突然の攻撃により敵の弓兵部隊は混乱し、アイクはガーゴイルたちに前進を命じる。
この戦術により、アイクの部隊は一時的に優位に立つことができたが、戦況全体の転換には至っていない。

合図として《電撃》の魔法を打ち上げた結果、ガーゴイルたちは敵の弓兵を飛び越え、攻城兵器めがけて突進し、ピンポイントで焙烙玉を落とし、敵の攻城兵器を破壊した。
これにより、セフィーロ率いる第七軍団は攻城兵器を恐れる必要がなくなった。
セフィーロは敵が混乱した隙を見逃さず、アレスタの城門を開いて反撃を開始した。

城門からはベイオ率いる人狼部隊が飛び出し、敵兵に襲い掛かった。
同時に、マンティコアのクシャナ率いる牙獣旅団も冷酷かつ計算高く戦った。
一方、セフィーロ直属の魔術師部隊『黒禍の坩堝』は、魔法攻撃で敵を圧倒し、勝利が確実となった。

エ・ルドレ率いる敵軍は最終的に撤退し、戦後にはエ・ルドレから敬意を表す手紙が届いた。
エ・ルドレは再戦を予告し、ジロンは返信するかを尋ねたが、アイクはそれをジロンに任せ、セフィーロの様子を見に行くことに決めた。
アイクはセフィーロとの再会を楽しみにしつつ、馬を走らせた。

アレスタの街で第七軍団の旅団長たちと再会したアイクに対して、各旅団長が感謝の言葉を述べた。
特に人狼のベイオは、遠回しに感謝を示し、その後に自分の活躍も認めた。
一方で、マンティコアのクシャナからは、文字通りの命の恩人として、後で腐肉を送るとの感謝の意が示された。
セフィーロは、アイクの活躍に感謝する一方で、助けられたことが少し気に入らない様子だった。

その後、魔王様が現れ、アイクを含む各旅団長に対して労をねぎらい、特にセフィーロの粘り強さと戦略が勝利に繋がったことを称賛した。
セフィーロは自らのミスを認めつつも、部下の旅団長たちの努力を高く評価し、それが生存に繋がったと説明した。

魔王様はアイクの功績を特に称賛し、彼を新たに設立される第八軍団の団長に任命することを宣言した。
この決定は、他の旅団長たちにも喜ばれ、アイクに対する支持が確認された。
新軍団の設立については、セフィーロから人材不足を指摘されたが、魔王様は人間や他の種族を含めた混成軍団を作る計画を示した。

アイクはこの新しい役割を担うことになり、彼の昇進は多くの旅団長たちから祝福された。
彼はイヴァリースに戻ると、参謀ジロンやリリス、シガンからの祝福を受けることを楽しみにしていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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