どんな本？
タイトルにあるように【～ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番（内政と防衛戦）が俺のお仕事です～】これ以上の説明は要らないかもしれない。
読んだ本のタイトル
#魔王と勇者の戦いの裏で4 ~ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番（内政と防衛戦）が俺のお仕事です~
英語タイトル：Reincarnated Into a Game as the Hero’s Friend: Running the Kingdom Behind the Scenes
著者:#涼樹悠樹 氏
イラスト:#山椒魚 氏
Bookliveで購入BOOK☆WALKERで購入
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あらすじ・内容
転生したゲーム世界で死亡する未来を回避するため、前世の知識をフル活用するヴェルナー。マゼルの家族を魔物から守った後、なぜか伯爵家で面倒をみることに。さらにマゼルの妹・リリーもメイドとして働く事になったようで……？
一方、魔王軍襲撃後の内政処理をこなしているヴェルナーのもとに王都で不審な動きをした者がいるとの情報が入ってくる。いち早く状況を理解したヴェルナーは、敵の正体を突き止めるため大胆な作戦に打って出る!!
そして新たな職務の準備を進めるうち、不可解な点にヴェルナーは気が付き――？
伝説の裏側で奮闘するモブキャラによる本格戦記ファンタジー、第四幕。
プロローグ
ヴェルナーはフィノイ大神殿の防衛戦を終え、王都へ帰還する途中で騎士団の首脳陣を集めた。彼は各々に王都での軍事行動の準備を指示し、自身は伯爵家邸での指揮を取ることとした。王城の父にも報告がされ、万一の連絡断絶に備え、ノイラートの実家を第三指揮所とする計画が立てられている。ヴェルナーは王都近郊でフィノイからの部隊と合流し、フュルスト伯爵への礼を述べた後、王都へ向けた行軍を続け、王城で凱旋式に参加した。
一章：王都多事 ― 排除と交渉 ―
ヴェルナーは王都に凱旋後、伯爵邸でリリーに出迎えられる。彼女が伯爵邸で働いている理由は父の厚意によるものであり、彼女の存在に驚く。彼は自分の執務室でフレンセンと議論し、商業方面への関与を望まず、様々な提案書や報告書の内容を確認した。一方、王都の一角では「青刻亭」が衛兵隊とクレッチマー男爵に囲まれ、内密の指示のもと魔族排除が行われた。壮絶な戦闘の後、魔物は撃退され、王城方面の動向が見守られることになった。
二章：企む者たち ― 陰謀と対応 ―
ヴェルナーは書類業務を担当し、父の代わりに軍務関連の事務処理を行う。彼は死傷者への一時金支給や功績ある騎士への報酬処理などを優先する。また、商人との取引書類検証や領内の税収確保も彼の重要な業務である。王太子の前で新たな武器の実演を行い、その革新性と実用性が認められる。最終的に、彼は子爵に正式に任じられ、王室直属の代官として新たな地位と責任を負うことになる。
三章：新たな問題 ― 謎と疑問 ―
セイファート将爵との昼食会でヴェルナーはアンハイム地方の代官に任命され、地方での防衛戦を担うことになる。彼は王都の防衛体制強化も提案し、将爵からの支援を受けて地方赴任の準備を進める。また、ヘルミーネ嬢からフュルスト伯爵家の事情の変更を聞き、父にこれを伝える決意をする。
エピローグ
ヴェルナーは自然災害が記録されていない現象について考察し、その原因を探る。彼は自然科学の軽視と魔物の脅威が前面に出るこの世界の特異性に疑問を持つ。さらに、古代王国の知識が失われた理由や、現代の教育の偏りについても探求する。ヴェルナーはこれらの問題についてさらなる調査が必要であると結論づけるが、現状は魔軍対策が優先され、これらの問題を先送りにすることを認識する。
感想
本書では、ヴェルナーが前世の記憶を活かして転生したゲーム世界で生き残るための奮闘を描いている。
彼はフィノイ大神殿の防衛戦を終えた後、王都に戻り、伯爵家で騎士達の指揮をとる。
彼の前には、魔王軍の潜入者が王都内にいるという新たな問題が浮上する。
その解決のため、ヴェルナーは敵の正体を突き止め、魔族を排除する大胆な作戦に打って出た。
ヴェルナーは内政処理にも力を注ぎ、前世の知識を生かした新たな武器や政策を提案し、王都の防衛を強化。
また、マゼルの妹、リリーはヴェルナーの専属のメイドとして働くことになる。
そして、政務に従事するヴェルナーを手伝うリリーの隠れた才能が判明する。
ヴェルナーは貴族、魔族とのさまざまな陰謀に立ち向かいながら、未知の敵と戦い、王都を守る姿を描いており、彼の政治的な才能や戦略的な思考が光るが、トップの国王、宰相からはまだまだ荒削りだと言われている。
最終的には王都内に潜入していた魔族を一掃することに成功し、平和が一時的にもたらされるが、これからの更なる試練への伏線もちりばめられていた。
ヴェルナーの内政に対する才能と前世の知識を駆使する点が非常に印象的であった。
特に彼の提案する新たな武器や政策が、どのようにして王都の安全を確保するのか、そのプロセスが丁寧に描かれていて、読んでいて思わず引き込まれた。
また、ヒロイン候補のリリーがただのメイドではなく、彼女自身の隠れた才能が徐々に明らかになる過程も新鮮で魅力的だった。
内政を軸にした話でありながら、それが決して退屈することなく、むしろ政治や戦略が緻密に絡み合うことで、ドラマティックな展開が生まれている点が素晴らしく。
これらの要素が組み合わさることで、単なる戦いだけではない、深いストーリーテリングが成されている。
また、本作の終盤で提示される「この世界は、魔王とはなんだ？」という問いは、今後のシリーズに大きなキーポイントになるかもしれない。
次巻が待ち遠しく、ヴェルナーのこれからの活躍と、彼が直面するであろう新たな試病に対する解決策がどのように描かれるのか楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
魔王と勇者の戦いの裏で魔王と勇者の戦いの裏で
その他フィクション
備忘録
プロローグ
ヴェルナーはフィノイ大神殿の防衛戦を終えた後、王都に戻る途中で騎士団の首脳陣を集め、王都における軍事行動の準備について指示を出した。
王都には魔族が潜り込んでおり、騎士団と衛兵が対応することが確定していた。
彼はマックスには王城での父の護衛を、オーゲンにはツェアフェルトの家騎士団とその家族の安全対策を、バルケイには伯爵家に仕える者たちの手配をそれぞれ指示した。
さらにノイラートとシュンツェルにはアーネートさんの養護施設の警備を任せ、自身は伯爵家邸での指揮を取ることとした。
これらの指示はすべて王城の父にも報告され、万一の連絡断絶に備え、ノイラートの実家を第三指揮所とする計画も立てられている。
ヴェルナーは王都近郊でフィノイからの部隊と合流し、フュルスト伯爵への礼を述べた後、王都に向けた行軍を続けた。
彼はフィノイ大神殿解放後の凱旋式で、完全武装状態で王城まで進んだ。
主役はグリュンディング公爵と騎士団であり、ヴェルナーは一般の騎士として参加した。
凱旋式の際、国王は将兵を集め、戦勝式典を後日に執り行うと発表し、騎士団に解散許可を出した。
その後、ヴェルナーは騎士団の動きを監視し、伯爵邸での警備を行うことになる。彼は騎士たちとともに伯爵邸に戻り、館のセキュリティを確認しつつ、守りを固める。
伯爵家の邸宅は防御施設としても機能しており、緊急事態に備えて建てられたことを説明した。
一章（王都多事 ～排除と交渉 ～）
ヴェルナーは王都に凱旋しており、王城での閲兵に参加した後、伯爵邸でリリーに出迎えられた。
リリーが伯爵邸で働いていることに驚き、その理由については伯爵である父の厚意によるものとされている。
彼は、貴族の家で働くことが実際には厳格な身元保証や責任の所在が問われる場であり、通常は貴族家出身者や身元が保証された者が優先的に採用されると説明している。
さらに、客間女中としてのメイドは、来客対応やパーティーでの給仕など、貴族家での重要な役割を担うことが多いため、外見だけでなくマナーや知識も求められる職であるとされている。
ヴェルナーは伯爵邸でリリーに出迎えられ、彼女の存在に驚いたものの、その場で感想を述べるのは控えた。
彼は自分の執務室に入り、フレンセンに挨拶されると、机の上に積まれた様々な書類について尋ねた。
書類には提案書や要望書、報告書などが含まれており、フレンセンはそれらの内容について説明した。
ヴェルナーは商業方面への関与を望まないことを明らかにし、また他の職場でも同様の手順書作成を希望する声について疑問を投げかけた。
その後、彼はノルベルトを呼び出し、ツェアフェルト家の現状と今後の方針について議論した。
ヴェルナーは伯爵邸での警戒を続けながら、非常時の準備を整えることに決めた。
ヴェルナーが邸内で決意を固めている時、王都の一角で『青刻亭』という傭兵団の定宿が密やかに囲まれていた。
表からは王都衛兵隊、裏からはクレッチマー男爵が率いる隊が囲んでいた。
男爵は勇猛な武人で、王太子からの内密の指示を受けて魔族に対する部隊指揮を任されていた。
男爵は青刻亭の周囲の安全を確認した後、衛兵隊の使者に指示を出し、青刻亭内の状況について詳細を聞いた。
魔族の数はおよそ十三体であり、青刻亭以外にも市内の他の宿に同数の魔族が潜んでいると判明した。
男爵は戦意を示しつつも、直接的な踏み込みは衛兵隊の役目と理解していた。
一方で、戦闘が始まると男爵は部下と共に迅速に動き、逃げる魔族を追い詰めた。戦いは激しく、建物内外で短時間ながら密度の濃い戦闘が行われた。最終的に魔物はすべて撃退され、戦いは終結した。
男爵はその戦いに満足しており、部下たちと共に王城方面を見つめながら今後の動向を見守っていた。
同時刻に『酒飲みの風』でも壮絶な戦闘が発生していた。
ドホナーニ男爵は魔物暴走の際に負傷し、自身の療養と家臣の再育成に注力していたが、王太子ヒュベルトゥスの意向で王都に待機しており、今回の戦闘に参加していた。
男爵は魔物との戦いで顔に大きな傷を負っており、これを消すことなく家臣への投資を優先していた。
王太子は話のわかる武断派貴族をフィノイに送りたくないと考えていたため、個人武勇に自信のある男爵も王都に残っていた。
男爵は衛兵に任せるべき立場ながら、自ら最精鋭の兵を率いて『酒飲みの風』に突入した。
男爵は戦闘を主導し、魔除け薬を用いながら敵を追い詰めた。
敵は人狼の姿をしており、兵士たちは一斉に攻撃を加え、数体の魔物が斃された。
突入した兵士たちは狭い場所での戦いに注意を払いながら、敵の抵抗を抑え込んだ。
この間、ミューエ伯爵は王都郊外で部隊を展開させ、城外で遊撃兵力として活動していた。
彼は動物から嫌われる体質であり、馬に乗ることができず、主に拠点防衛や政治的な活動に従事していた。
伯爵は魔物の逃亡を防ぎながら戦闘を指揮し、全ての魔物を殲滅した。
王都の大会議室では、王太子を始めとする大臣たちが会議を行い、魔物の掃討状況について報告を受けていた。
王太子はフィノイ防衛戦でのヴェルナーの功績を称賛しており、その装備や魔法薬の提供が現在の成功に繋がっていると評価していた。
ヴェルナーの先見の明が評価される一方で、魔物の反撃に対する警戒も強化されていた。
フィノイ防衛の凱旋式と王都内での魔物排除作戦が同時に行われた日、ヴェルナーの父が伯爵邸に帰還したのは深夜であった。
王都の衛兵隊は質が高く、市民への被害は最小限に抑えられた。ヴェルナーはこれに一安心し、父といろいろな話をする必要があると考えていた。
マックスからは王城での問題発生も伝えられたが、詳細は明かされなかった。夜は行動が制限されるため、ヴェルナーはマックスに休息を命じ、自身も自室に戻り、フレンセンからハルティング一家の状況を聞いた。
ヴェルナーは父との再会とともに、王城での公的な用事があることを父から告げられ、王太子との会話の準備を始めた。
ヴェルナーの父が国内の状況について説明を行い、その後伯爵家での養護施設の状況に言及した。
フィノイ防衛戦で損害を受けた貴族家から解雇された人間が養護施設の教育職を引き受けるケースがあることが語られた。
解雇された者の中には平民出身者も含まれており、教育を担当する人材が見つかったという。
また、ヴェルナーの父は養護施設の教育が伯爵家の人材育成に役立つことを目指しており、下心を持つ者の雇用は拒否している。
さらに、ハルティング一家がなぜ伯爵家にいるのかという話になったとき、ヴェルナーの父はこれが王太子の要請によるものであると明かした。
この配置が政治的および外交的配慮から行われたことが語られ、ゲームのシナリオとは異なり、現実の政治状況がこれに深く関与していることが示された。
父はこの状況をヴェルナーに伝え、宮廷貴族としての覚悟を持つよう助言した。
その上で、魔物に苦しむ国であれば、勇者であるマゼルの存在をどう活用するかが国の重要な考慮事項になること、そしてマゼルを縛りつけることなく彼の信頼を得る戦略が必要であることが強調された。
フュルスト伯爵バスティアンは、出兵中の事後処理に関する書類作業を行っており、その間娘のヘルミーネは王都内の魔軍排除作戦とそれに伴う対応に奔走していた。
バスティアンは、魔軍が人間のふりをして王都に潜入する事態に対し、単なる一度きりの行動とは考えにくいと懸念を表明する。
ヘルミーネとバスティアンは、今後の対策として、失った戦力の補充を重要視しているが、単純な人数の増加では不十分であると認識している。
一方、ヴェルナーは試作品のチェックを行い、それがうまくいかないためにイライラしている中、リリーがお茶を持ってくる。
リリーはヴェルナーの部屋の散らかり具合に一瞬動揺するが、ヴェルナーが試作品の図を描くのを手伝うことになる。リリーは意外にも絵が上手く、ヴェルナーはリリーの才能に驚く。
リリーは文字の読み書きができ、基本的な計算も可能であるため、ヴェルナーは彼女が貴重な人材であることを認識する。
ヴェルナーはリリーに模型を作るよう頼み、これが物の動きを視覚的に示す手段として役立つと考えた。
リリーが優れた画力を持っていることを知り、彼女の助けを借りて試作品の改善を図る。
また、ヴェルナーはリリーに正当な報酬を支払うことを約束するが、リリーは当初それを断る。
しかし、ヴェルナーはこれが正式な業務であると説明し、報酬を支払うことに固執する。
その後、王太子殿下のもとでのヴェルナーの活動について詳細が語られる。
ヴェルナーは王太子から直接、アーレアの事件での功績を認められ、感謝される。
さらに、黒い宝石の問題と魔将についての危険が議論され、これが王城における新たな脅威となっていることが明らかになる。
ヴェルナーはこの問題についての重要性を理解し、その対策についても考慮を始める。
ヴェルナーは王太子殿下に対し、新しい武器や道具の開発についての構想を報告し、その後、トライオット地方やゲザリウスに関する状況について話を交わす。
この議論は後日に時間を設けて行うことが決定される。
また、アーレア村の村長に関する問題が話題となり、王太子殿下は村長からの弁解の書状が届いたことを明かすが、実際には読んでいないことを告げる。
この間、ヴェルナーは王太子殿下に魔術師隊の研究所の建物がゲザリウスによって破壊された事実を伝え、その後、治療施設でフォグトと会い、魔石の暴走について議論する。
この議論から、戦術や技術の開発に関して新たな進展が期待される。
その後、ヴェルナーは近衛団長とゴレツカ副団長との面会を経て、王城内部の魔軍排除作戦についての話を聞く。
王城での日常と、その後の予定に関しても軽く触れ、ヴェルナーが持つ複数の責任と役割についての考察が続く。
ヴェルナーは冒険者ギルドを訪れ、受付で仕事を依頼する。
彼は地理や人心の情報を集めるため、冒険者たちに地形調査を依頼し、政治的に色が付くことを避けたいと考えている。
また、クナープ侯との関係を念頭に置きつつ、王都に潜む魔将の危険性を警戒している。
その後、商業ギルドに寄る予定を見送り、ヴェルナーは情報屋ギルドに向かう。
裏街で情報屋のベルトと出会い、ピュックラーを含む特定の人物の情報を求める。
ベルトに先払いで報酬を渡し、信用を得ることを試みる。
彼のアプローチは、通常の貴族とは異なることから、一定の信用を獲得する。
エルドゥアン卿がビットヘフト家の代官の問題について説明し、ヴェルナーとその家族に謝罪した。
この家の家騎士団長であるハイナー卿は、問題を引き起こした村長の息子であり、かつての村の代官との関係が微妙であったことが語られる。
エルドゥアン卿は、村長と代官に厳しい処罰を下すと述べ、ハルティング家をビットヘフト家で預かると提案する。
しかし、ツェアフェルト家がハルティング家を預かることになっていたことが明らかにされ、ヴェルナーの父はエルドゥアン卿の提案を拒否した。
エルドゥアン卿は最終的に何もできずに撤退し、ハルティング家はヴェルナーの管理下に留まることになる。
インゴとクラウディアは、客が帰った後、ヴェルナーの性格や立場について話を交わす。ヴェルナーは貴族の中でも珍しい存在であり、出世や評価に対して淡白な人物とされる。彼は兄がいないために伯爵家の次期当主となるが、その無欲な性格は貴族家の当主としては不適切であるとされる。彼の低い自己評価や野心のなさは、他人からの評価とのずれを生じさせている。
ヴェルナーは他人のためなら努力を惜しまないが、自身に対しては要求が少ない。
彼のこの性格は芸術家のパトロンには向いていないとインゴは評する。
また、ヴェルナーは自身が武人として評価されることが少なく、文官系の家としての低い評価に苦しんでいる。
インゴは、ヴェルナーが自身で本気になるための理由を見つけることが必要であると考えている。
この状況を改善するために、インゴはリリーを利用する提案を受け入れ、ヴェルナーに必要な経験を積ませることを選んだ。
彼はヴェルナーが他人に利用されるリスクを考慮しながらも、その変化を望んでいる。
二章（企む者たち ～陰謀と対応 ～）
ヴェルナーは王城で書類業務を担当しており、典礼大臣である父は神殿関係者と儀式に関する準備で忙しい。
そのため、ヴェルナーは父の代わりに軍務関連の事務処理を行っている。
フィノイでの戦いに関する書類整理も含め、複数の事務作業を進めなければならない。
また、ヴェルナーはマックスを補佐に、書類整理と優先業務を効率よく進める方法を模索している。
その中で、死傷者への一時金の支給や功績ある騎士への報酬処理が重要視されている。
商人との取引における書類検証や価格交渉も彼の担当事項であり、時には書類の正確さや価格設定の公正さを確認することが求められる。
さらに、ヴェルナーは領内の管理や税収の確保など、伯爵領から送られてくる書類の確認にも時間を割いている。
前世とは違い、通信手段が限られているため、書類の処理には時間的な遅れが生じており、効率的な管理が求められる。
これらの業務は、国務と領務とに分かれ、王城での業務と館での業務とで異なるが、ヴェルナーはどちらもこなさなければならない。
この二重の責任は彼にとって大きな負担となっているが、それでも彼は必要とされる業務をこなし、領内の安全や発展のために尽力している。
ヴェルナーは王太子殿下やグリュンディング公爵、セイファート将爵、父などの国家の重鎮の前で武器の実験披露を行った。
彼は弓に関しては初心者であるが、小型の複合弓を試作し、その威力と使いやすさを披露した。
この弓は魔物の素材を用いており、長弓と同等かそれ以上の威力を持つが、操作には相応の技術が要求される。
公爵と王太子殿下はその小型化と機能に注目し、ヴェルナーの試みを評価した。
さらに、ヴェルナーは魔物の素材を用いた大型の弩弓も紹介し、これが戦場での運用を想定して設計されていることを説明した。
その弩弓は金属球を発射し、矢よりも大きな威力で目標を打ち抜く能力がある。
ヴェルナーの提案は、既存の戦術に新たな選択肢を加えるものであり、その革新性と実用性が認められた。
この日の実験には多くの見学者がおり、ヴェルナーの提案に対する興味と期待が高まっている。
また、彼の弓騎兵に対する洞察も注目され、その運用の可能性についてさらに議論が進められた。
ヴェルナーは王太子殿下の前で武器の実演を行い、量産を希望した。
その技術を騎士団や王城守備隊にも応用したいと述べたが、父と他の重鎮たちはその提案に対し異なる反応を示した。
ヴェルナー自身は、弓兵の訓練に自信がなく、現実的な運用に悩んでいる。
このため、彼は自身の提案した武器が兵士にとって直接的な利益をもたらすか確信していなかった。
セイファート将爵はヴェルナーの野心の欠如を指摘したが、ヴェルナーは自身が贅沢な生活を望んでいないわけではないと感じた。
王太子殿下はヴェルナーの技術提供を受け入れ、関連する職人の手配を公爵と相談することを決定した。
この会話の中で、ルーウェン王太孫殿下がフィノイの戦いについて尋ねた。
ヴェルナーはその戦いで敵を手玉に取ったわけではなく、敵の願望に応じた罠を用意したことを説明した。
ヴェルナーとルーウェンの間で、王族としての適切な対応をめぐる会話が交わされ、王太孫殿下はそれについて学びたいと願い出た。
ジュディスがフュルスト伯爵邸を訪れ、タイロンとミーネ兄妹が迎えた。
ジュディスはトイテンベルク伯爵家を離れ、同家の財産の一部を持参金として受け取り、新たな婚姻を模索していると説明した。
これに対し、タイロンはジュディスの行動に批判的であったが、ミーネは事実を受け入れるしかなかった。
ジュディスはトイテンベルク伯爵家の弱体化を指摘し、自身が家を離れたのは家族への負担を減らすためだと主張した。
兄妹の間にはこれからのフュルスト家の対策について話し合う必要があると感じられた。
ツェアフェルト家には最近、評価されたヴェルナーの評判を聞きつけた商人やギルドの有力者、貴族の関係者が頻繁に訪れていた。
ある日、宝石商のラフェドが訪れ、ヴェルナーおよびその父に向けて目録と実物の贈り物を持参し、今後の取引の協力を願う挨拶を行った。
ラフェドはまた、リリーに兄の勇者マゼルがポイダ砂漠の遺跡で行方不明となったことを伝え、詳細を話すためにリリーを市場側に呼び出した。
これに応じたリリーは、ラフェドの要請に従い、夕闇時に家族と共に指定された場所へ向かった。
しかし、ラフェドは内心で、この動きが他国の策略であることを自覚していた。
ラフェドと御者は夜闇に乗じて倉庫街まで馬車を移動させ、フード付きの人影が十人以上現れて武器を構える。
ラフェドは勇者の家族に対して、レスラトガの王宮への案内を告げるが、突如、騒動が起きる。
ヴェルナーが現れ、リリーの返還を要求し、騒ぎに介入する。
同時に、王都の貴族街では、ツェアフェルト邸を狙った襲撃者たちがミューエ伯爵の指揮の下で矢の雨にさらされ、反撃に遭う。ツェアフェルト邸とシュトローマー伯爵邸の間で魔族が一掃される。
また、ビットヘフト伯爵は王太子ヒュベルトゥスの命により、バッヘム伯爵邸を攻撃し、そこでの動きを監視し、制圧する。
この行動は勇者の家族に関連する企みに基づいていた可能性がある。
この日、王都内の諸事件により、バッヘム伯爵家は一族が罪人として拘束され、レスラトガの関係者も監視される事態に至る。
ラフェドが驚愕し、ヴェルナーが先回りしていたことを明かす。
ヴェルナーは状況を把握しており、リリーの身柄の安全を確保していた。
レスラトガの介入にも対応しており、戦略的に飛行靴を使用していた。
ヴェルナーはリリーが囮となることに慌てるも、彼女自らがその役割を引き受けていた。
戦略的に全ての可能性を考慮し、リリーとその家族の保護を優先していた。
リリーが母親役を演じたアネットからのクレームに対処しなければならず、周囲にはリリーの正体を隠していた。
しかし、ラフェドが強気に出たため、ヴェルナーは彼を制圧する。
リリーとの対話で彼女が無事であることを確認し、ゴレツカ副団長からは今後も期待されている。
ヴェルナーはリリーを護るため、さらなる戦いの準備を進める。
ヴェルナーと彼の仲間たちは魔物との戦いに挑む。
彼らが直面したのは、大きな棍棒を持つ豚男、鬣犬男、そして泥男といった異種の魔物である。
これらの魔物はエギビゴルという魔軍四天王の一人の配下とされている。
戦闘では、ヴェルナーと彼のチームが戦略的に配置を取り、魔物たちを効果的に撃退する。
特に、飛べるガーゴイルのような敵に対しては、ヴェルナーがその高い機動力に対応し、見事に迎撃する。
戦いの中で、ヴェルナーたちは魔物を倒すことに成功し、リリーを含めたチームの安全を確保する。
結果として、彼らは撤退を決断し、王都に向かうことを選択する。
この行動は、内通者や未知の敵からの更なる攻撃を避けるためのものである。
ヴェルナーたちは王都で王太子と会い、無事を報告する。
この報告は、戦いでの出来事だけでなく、魔物の種類や戦略的な撤収についても含まれている。
最終的に、彼らは政治的な配慮を考慮して、リリーの安全を最優先に行動していたことが明らかになる。
ヴェルナーが参加する国事会議は重要な決定が行われる場であり、彼は発言することなく傍観者の位置にいた。
会議ではグリュンディング公爵が新たにザースデン鉱山の採掘権を授与されるなどの褒賞が行われた。
これは他の貴族への示唆として、バッヘム伯の処罰を暗示するものであった。
さらに、インゴ・ファティ・ツェアフェルトには紋章の飾り枠が追加されるなどの名誉が与えられた。
紋章については、この世界では家柄の証明としての意味合いが強く、家によって異なるデザインが存在する。
特に高位の貴族では紋章に飾り枠が付されることでその家の地位が示される。
しかしヴェルナーにとってこれは特に価値を感じるものではなく、彼には単なる迷惑に感じられた。
続いて、処罰が必要な貴族家が発表され、その中でクナープ侯が侯爵家の名誉を失う形で処罰されることが決定された。
彼は過去の行動に対する責任を認め、新たな領地での再建が命じられた。
これは彼にとって非常に厳しい処罰であったが、同時に旧クナープ侯爵領が王家直轄地として防御体制の構築に利用されることになった。
最終的に、多数の貴族が王都の公共事業に資金提供する形で処罰を免れることになり、これにより王都の修繕が進められることになった。
これは王都の市民にとっても好意的な結果となり、市街戦による不安を和らげる効果があった。
ヴェルナー自身も突然の任命を受け、子爵に正式に任じられるとともに王室直属の代官としての任務を命じられた。
これにより彼は新たな地位と責任を負うことになる。
三章（新たな問題 ～謎と疑問 ～）
セイファート将爵との昼食会で、ヴェルナーは自身の新たな役割について話を交わしている。
彼は独立子爵としてアンハイム地方の代官に任命され、その地はトライオットと隣接する国境地域である。
昇進は彼の功績に対する報酬であると同時に、王都からの事実上の左遷でもあり、他の貴族家からの不満を和らげるための措置でもある。
この代官職は、前世で言えば毎月百万円単位の自由に使える予算を受け取ることに等しいが、アンハイム地方の戦略的重要性から、ヴェルナーは王都からの援軍を待つ間、防衛戦を担うことが期待されている。
彼の任務は、単に領地を守るだけでなく、王都にとって戦略的な利点を提供するためのものだ。
彼の成功は王都に呼び戻される機会を与え、失敗しても「若さゆえの失敗」として許される可能性がある。
ヴェルナーの立場は複雑で、将爵は彼が持つ競争意識や他貴族からの嫉妬に対処する必要があると指摘している。
また、ヴェルナーの家族であるツェアフェルトの騎士団は、彼の地方赴任中は伯爵の統率下に戻される。
これは、家騎士団の規律を保ち、他の貴族家からの騎士引き抜きに対抗する措置である。
セイファート将爵との会話は、ヴェルナーがこれから直面する政治的および軍事的課題に対する理解を深め、彼がその役割をどのように果たすかを模索する機会を提供している。
ヴェルナーは国の都合と彼自身の目標をどう調和させるかに苦心しつつ、与えられた任務に最善を尽くすことを決意している。
ヴェルナーはセイファート将爵との会話を通じて、自身の新たな任務であるアンハイム地方の代官としての役割を確認している。
彼は代官としての補佐役を強く要望しており、地方役人が年齢の若い彼の指示を素直に聞かない可能性を懸念しているためである。
さらに、兵士の教育と指導に熟練した人物を求めているが、これは彼自身が直接指導する自信がないためであり、より効果的な防衛戦準備のためには専門の教官が必要だと感じている。
この要求に対して、将爵は文官系の人材と教官役の提供を約束しており、ヴェルナーの地方での任務を支援することに同意している。
また、ヴェルナーは王都の防衛体制強化も提案しており、魔族の攻撃から都市を守るための追加措置を講じることが望まれている。
ヴェルナーはこれらの要望を将爵に直接伝え、将爵からの支援を受けて地方赴任の準備を進めている。
この会話から、ヴェルナーが代官としての職務を効果的に遂行するためには、王都からのさらなる支援とガイダンスが不可欠であることが強調されている。
ヴェルナーがヘルミーネ嬢に執務室で呼び止められる場面から始まる。
ヘルミーネ嬢は、フィノイの戦場に関連するフュルスト伯爵家の事情が変わったことを伝えに来ており、謝罪の姿勢を見せる。
この事情の変更には、ヘルミーネ嬢の兄が関与しており、彼女は家族の決定に苦悩している様子である。
ヴェルナーはこの問題を父に伝えると決める。
一方で、ヴェルナーは王宮内で他の貴族とも交流があり、公爵との対話で避難民問題について語られる。
避難民が増えることで王都の負担が大きくなっており、魔物からの安全確保や食糧の供給が課題となっている。
ヴェルナーはこの問題に対処するための提案を公爵に提出することになり、それには王都周辺の街道整備や魔物肉の活用などが含まれている。
公爵はヴェルナーの提案に理解を示し、王都の防衛と避難民対策のための計画を立てることで合意される。
ヴェルナーはアンハイム赴任前の夜にノルベルトを呼び、タイロン卿の交友関係について調査を依頼する。
特にタイロン卿が第二王女ラウラに想いを寄せているとの情報について不自然さを感じており、その違和感を解明するために調査を行うことを決める。
タイロン卿がラウラに長年想いを寄せ続けていることの不自然さを指摘し、この違和感について深く掘り下げるようノルベルトに指示する。
この一連の動きは、ヴェルナーが公爵に提出する街道整備の提案書作成と並行して進行する。
提案書の作成は彼にとって手間がかかる作業であり、日々の業務に加えてこの調査と提案書の作成に追われることになる。
ヴェルナーがアンハイムに赴任する前夜、伯爵邸での出来事が語られている。
彼の赴任前にはお茶会の招待状が来なくなり、父親からは勇者の家族を預かりたいと提案する貴族が現れたことが伝えられる。
この貴族の提案は王家によって狙われていた可能性がある。
翌日、役人から王太子殿下たちへの報告があり、ヴァイン王国が外交的に有利な状況にあることが明らかにされる。
また、隣国レスラトガでも王子たちの後継者争いが進行中であり、第二王子の側近が魔族であることが判明し、これがヴァイン王国にとっても利用可能な情報となる。
ヴェルナーはこの情報を踏まえて、外交的な手段を考慮中であることが示される。
ヴェルナーがアンハイム地方の地形や地理的な特徴に関する報告会を開催した。
斥候たちからの報告を受け、彼らとともに将来の赴任地の詳細を確認していた。
報告会には、彼の同行予定の仲間たちも参加し、活発に質問や確認を行いながら、互いに情報をサポートしていた。
報告会では、具体的な地理的特徴を理解するため、リリーが最終的に図を描くことになった。
しかし、中世風の世界では等高線図がなく、地形の認識が難しいため、カラーで高低差を示す方法が採用された。
ヴェルナーとその仲間たちは、聴取した地形情報をもとに、物理的な模型を作成し、それを元にした議論を進めていた。
このプロセスは疲労を伴うものであり、報告を終えた後、全員が疲れ果ててしまった。それでも、リリーはお茶を淹れて皆を労わり、ヴェルナーは感謝の意を表していた。
最終的には、リリーが描いた図を基に、地形に関する全体的な理解を深めることができた。
エピローグ
ヴェルナーは、現在生きているこの世界で大規模自然災害が記録されていないことに気づく。
彼はこの異常な現象について考察し、その原因を探ろうとする。
この世界では自然災害よりも魔物の脅威が前面に出ており、自然を理解し対処する自然科学が軽視されていることに疑問を抱く。
さらに、古代王国の知識が失われた理由や、魔王と魔物が自然災害の代わりになっている可能性について考えを巡らせる。
ヴェルナーは、この世界で自然科学がない理由、古代王国時代には存在していた自然科学の知識がどのように失われたのか、そして現代の教育がなぜそのように偏っているのかを探求する。
彼は、この世界の自然災害が少ない現象が、魔物の存在とどのように関連しているかを理解しようとする。
最終的にヴェルナーは、これらの疑問を解決するためのさらなる調査が必要であると結論づける。
しかし、現在は魔軍対策が優先であり、これらの問題を先送りにしなければならない状況であることを認識している。
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