どんな本?
『マージナル・オペレーション 01』は、30歳のニートであるアラタが、民間軍事会社に就職し、戦場でその才能を開花させていく物語である。
アラタは東京での平凡な生活を捨て、中央アジアの過酷な環境で戦争の現実と向き合うことになった。
最初はゲーム感覚で指示を出していたアラタだが、彼の決断が現実の悲劇を引き起こすと知り、自分の責任と向き合うことになる。
村の壊滅や仲間たちとの絆を通じて、アラタは自分の役割を自覚し、子供たちと共に新たな未来を切り開こうと決意する。
読んだ本のタイトル
マージナル・オペレーション 01
著者:芝村 裕吏 氏
イラスト:しずま よしのり 氏
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あらすじ・内容
30歳のルーキー、戦場に立つ!
30歳のニート、アラタが選んだ新しい仕事(オペレーション)、それは民間軍事会社──つまり、傭兵だった。住み慣れたTOKYOを遠く離れた中央アジアの地で、秘められていた軍事的才能を開花させていくアラタ。しかし、点数稼ぎを優先させた判断で、ひとつの村を滅ぼしてしまう。
モニターの向こう側で生身の人間が血を流す本物の戦場で、傷を乗り越えたアラタが下した決断とは──?
『ガンパレード・マーチ』の芝村裕吏が贈る、新たな戦いの叙事詩(マーチ)が、今はじまる!
感想
『マージナル・オペレーション 01』は、ニートだったアラタが戦場で成長していく姿を描いた作品である。
物語の前半は、アラタがゲームのような感覚で戦場の指揮を執るシーンが続くが、次第に現実の戦争の厳しさを知り、自らの選択が多くの人々に影響を与えることを理解するようになる。
印刷会社の倒産後に偶然見つけた民間軍事会社に就職したアラタの、戦場での成長過程がとても興味深い。
物語の中盤からは、アラタの成長とともに緊張感が増し、彼の葛藤や決断が深い印象を与えてくれる。
最後に子供たちを連れて日本に帰る場面では、アラタの新たな決意が感じられるが。
彼には戦闘指揮しか出来ない自身を不甲斐なく思いながら、子供達を戦場で指揮して生活費を稼ぎ、子供達が平和な場所で平和に暮らせるようにと、戦場で子供達を戦わせる矛盾が興味深い。
この物語は、まるで中二病の夢想を英雄譚に仕上げたような内容であった。
軍事的才能というものは、平和な環境では発揮されないものだが、アラタはその才能を戦場で開花させる。
日本では就職がうまくいかず、ゲームに明け暮れていたアラタが、戦場でそのスキルを活かすという展開は夢物語のようだが、物語の展開は非常に早く、文書が上手いのか、それとも相性が良いのか物語に引き込む力が強い。
短いセンテンスで次々と物語が進むため、気がつけば一気に読み終わってしまうほど面白い作品であった。
特に、戦場での緊張感や切迫感がリアルに伝わってくる描写は、筆者の非凡な才能を感じさせる。
これが初の長編小説だというのだから、筆者の今後の作品にも大いに期待が持てる。
30歳のニート、アラタが民間軍事会社に就職し、戦場で自らの才能を開花させていくという内容は、一見すると荒唐無稽な設定に思える。
しかし、物語の中で語られるアラタの成長や葛藤は非常にリアルで、説得力がある。
簡潔な文章ながらも、脳裏に情景を想像させる力があり、物語に引き込まれていく。
また、キャラクターのジブリールも非常に魅力的で、続編での彼女との関係がどうなるのかが気になるところである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
備忘録
砲撃の音が間延びして響き、村外れの遠く離れた場所で爆発が起こっていた。会社にいた頃には一度も見たことがなかったが、これが迫撃砲というものであるらしい。簡易な砲として発明されて以来、今でも多用されているらしい。かつて、日本でも過激派が皇居に向かって撃ったという噂があった。
その迫撃砲は盛大に放たれ続け、戦場の音楽のように響いていた。これだけ撃てば、いずれ村にも命中し始めるのではないかと考えた。古代もこうした間抜けな戦争音楽を聞きながら戦っていたのだろうか。だが、今となってはどうでもよいことである。考えるべきことは後で考えればいいのだ。
彼は耳当てをつけ、自分なりの威厳を込めて言った。「戦争を終わらせる方法について何度も考えた。今のところうまくいっている。最後までうまくいくように、落ち着いていこう」。周囲の少年少女たちはそれぞれの表情でうなずいた。その瞳だけは裏切りたくなかったのだ。
彼が威厳を込めようとしたのは、まさにそのためだけだった。フォーメーションを指示しながら、少し前のことを思い出していた。それは、まだ東京にいて何も持たなかった頃のことであった。
第1章 日本にいた頃
アラタは失業したことから、再びニートと呼ばれたくない一心で民間軍事会社に勤めることを決意した。アラタはかつてニートであった。彼は高校卒業後、大学に進む余裕もなく、情報系の専門学校に通った。ラノベやゲーム、マンガが趣味であったが、これを仕事にする才能もなく、消去法でゲーム制作を学ぶ道を選んだ。
しかし、専門学校を卒業した頃にはゲーム業界が斜陽であることに気づき、就職先を見つけることができなかった。その結果、アラタはニートとなり、何もせずに数年間を過ごした。その後、彼は再び仕事を探し始め、小さなデザイン会社に就職したが、会社は倒産してしまった。
再び仕事を探している最中に、アラタは外資系の民間軍事会社の求人を見つけた。給料は高かったが、命の危険が伴うリスクもあった。アラタはそのリスクを受け入れ、この仕事に応募した。彼は命を賭ける決意をし、ラノベやPC、マンガなどの趣味を維持するための契約を結び、新たな挑戦に踏み出したのである。
適正テスト
アラタは、民間軍事会社の適正テストのために国内のオフィスビルに集められた。そこには、同じような境遇の十数名が集まっていた。彼らは皆、食べていくための仕事を選んだ結果としてここに集まっていた。
会議室で、欧米出身のアンドリューという人物が現れ、契約の解除が可能であること、そしてこれからの仕事が単なるビジネスであり、崇高な使命ではないと説明した。その後、テストとして青いボタンを押すよう指示された。ボタンを押すと、ある国の死刑執行所の銃が作動するという設定だったが、アラタは迷わずボタンを押した。
他の参加者の中にはボタンを押すことに躊躇する者もいたが、アラタは特に深く考えることなく行動した。彼は、仕事を得るためには何でもする覚悟であり、仕事をしないことの方がつらいと感じていた。結局、アラタはそのテストに合格し、正式に契約を結んで東京を離れることとなった。彼の背後で話しかけていた騒がしい男は、最終的には姿を消していた。
サングラス
アラタは、民間軍事会社の指示に従い、民間航空のエコノミークラスで中央アジアへ向かうことになった。具体的な国名はまだ知らされていなかった。彼は荷物をまとめて品川のオフィスに行き、航空券を受け取った。そのオフィスは落ち着いた雰囲気で、民間軍事会社のものとは思えないような場所であった。
オフィスで再びアンドリューに会った時、彼はサングラスをしていなかった。アンドリューは、アラタにはこの仕事の適性があると言い、航空券を手渡した。アラタは、サングラスをしていない理由について尋ねると、アンドリューは「目は情報の宝庫であるため、判断されないようにするため」と説明した。
アラタは空港へ向かうバスに乗る途中、アンドリューに「よいビジネスを」と声をかけられた。彼は心の中で「自分にはこれまで一度もよいビジネスなんてなかったし、これからもそうだろう」と思いながら、バスの中でこの業界には何かに関心がない方が向いているのではないかと考えていた。
第2章 売春宿の英語修行
アラタは、中央アジアのウズベキスタンにある訓練キャンプに到着し、3か月間の訓練を受けることになった。キャンプでは、日本語のみで行われる訓練を通じて、青いボタンを押す訓練や、状況に応じた行動を学ぶ訓練などが行われた。アラタはボタンを押す技術を磨き、他の参加者と共に機械的に任務をこなすようになった。
初めての休暇の際、アラタは同期のキシモトから聞いた性的サービス施設を訪れた。そこでは、言葉が通じない中でシャウイーという女性と出会い、彼女との会話を通じて独自の文化やルールを知った。施設にはドアがなく、安全対策としてそのような措置が取られていることを知り、アラタは驚いた。彼はプライベートな空間を求めて施設を訪れたが、最終的にはシャウイーと話すだけで何もせずに帰ることとなった。
訓練と休暇を通じて、アラタは新しい環境と経験に順応しながら、訓練に必要なスキルを習得していった。彼の関心は戦争の業務ではなく、日々の訓練を乗り切ることに集中していた。
アラタは訓練キャンプでの出来事をキシモトに話すと、キシモトは「ぼったくられた」と指摘した。キシモトはアラタと同じく東京から来た同期で、英語ができるため情報を共有する貴重な存在であった。しかし、キシモトが突然姿を消し、その理由について会社からの説明は一切なかった。様々な噂が飛び交ったが、真相は不明のままであった。このような出来事が続く中、アラタたちは親しい人間関係を築くことが無意味だと感じ始め、必要最低限の会話しか交わさなくなっていった。
キャンプではインターネットや電話が使えない環境に加え、長時間の労働による眼精疲労や肩こりに悩まされることもあった。アラタはネットが使えないことに不満を抱きながらも、次第にその生活に慣れていった。肩こりにはジムでのトレーニングや蒸しタオルを使うなどして対策を講じていた。
ある日、アラタは英語を学びたいと考え、再びシャウイーのいる施設を訪れた。シャウイーに英語の教材や健康商品の入手を頼み込み、彼女から英語の授業を受けることになった。シャウイーが高等教育を受けているらしいと気づいたアラタは、彼女からの英語の授業を通じて、さらに新たな知識を得る機会を得た。
アラタは売春宿でシャウイーから英語を学び、実用的な英語力を身につけていった。シャウイーの教え方は買い物や日常会話で役立つ内容が多く、アラタにとって非常に実践的であった。一方、会社での英語の授業は仕事に特化した無味乾燥なもので、暗記が中心だったが、アラタは記憶力が良かったため、それにも対応できた。
アラタは「オペレーターのオペレーター」という職に就き、戦術単位の操作を担当していた。新しい地形での訓練が始まり、彼の仕事はますます複雑化したが、彼は効率的に点数を稼ぐ方法を模索し続けた。
ある日、アラタは地図上で敵が村を拠点にしていると推測し、その村を攻撃することで敵の奇襲を防ぐ作戦を考えた。彼の作戦は成功し、最高得点を記録したが、その日のダリアンの表情が厳しかったことが印象に残った。
アラタは格納庫での訓練で、実戦で使用される兵器や装備に初めて直接触れた。その際、以前の作戦での指揮に対して感謝されるが、それが現実の戦闘であったことを知り、ショックを受けた。村への攻撃や民間人への誤射の可能性に悩み、精神的に動揺した彼は一時的に休養を取ることにした。
休養の間、シャウイーのもとを訪れ、彼女に支えられることで少しずつ立ち直り、再び訓練に戻ることを決意した。しかし、実戦がどこから始まっていたのか、アラタは混乱し、真実を知りたいと考えた。チャーリーとの会話から、自分が本物の戦場に送られていたことを理解し、今後の運命に不安を抱くようになった。訓練が終わる頃には、自分がどのような戦場に送られるかもわからない状況で、彼の心中は複雑であった。
アラタは、訓練キャンプで過ごす中で非戦闘員を殺した可能性に悩み、自分の趣味に対する興味を失った。彼の生活は無意味に感じられ、売春宿での時間を唯一の慰めとするようになった。訓練が終わり、アラタは新たな赴任先に向かう準備をしながら、答えを求めてこのキャンプを離れることを決意した。
出発の日、アラタは他の請負人たちと共に米軍の基地へ向かい、輸送機で新しい任務地に向かった。移動中、彼は自分の過去やこれからのことを考えながら、これまでの経験がもたらした影響に思いを馳せていた。
第3章 なんとかスタンとエルフ
アラタは新たな赴任先に到着し、山に囲まれた基地での生活を始めた。基地は山の中にあり、アクセスも悪く、電波も通じにくかった。到着後、アラタは歓迎パーティーに参加し、そこで耳を尖らせた女性や他の仲間たちと交流した。
アラタの任務は、基地の周囲の輸送路の確保と維持であった。これは訓練キャンプで行っていた作業に似ており、アラタはその類似性に戸惑いながらも任務をこなした。彼は「トイレ交代要員」として使われ、ランソンからさまざまな質問を受けながら仕事を続けた。アラタは、この基地での生活が自分の期待とは違っていたが、それでも与えられた役割を果たしていく決意を新たにしていた。
アラタは中央アジアの山岳地帯にある新しい基地に配属された。彼は輸送機で移動し、到着後は基地の規模が小さく規律も緩やかであることに気づいた。アラタの任務は交通路の確保と維持であり、訓練キャンプで行ったことと似ていると感じた。
基地ではランソンという上官の指導の下、アラタはトイレ交代要員として働きながら、パトロールや護衛の任務に当たった。彼はまた、エルフのような耳を持つ女性と出会い、彼女の話を聞いて驚いた。彼女は耳の改造と学生ローンで多重債務に陥り、この職業に就いたという。
基地での生活は単調で、アラタは仕事に集中しようとするが、訓練キャンプでの経験が頭から離れず、不安な気持ちが続いていた。ランソンの質問に答えながらも、自分の役割や任務について深く考え込む日々を送っていた。
アラタは新しい基地での任務中、敵からの襲撃を受けた。任務は交通路の確保であり、敵を撃退することよりも、被害を抑えることが重要であった。アラタは、仲間のトイレ交代のために管制を引き継いでいたが、交代直後に敵の襲撃が始まった。彼は冷静に指示を出し、敵の狙いが味方の捕獲であると判断して救援部隊を急行させた。結果として、味方の被害はなく、無事に撤退することができた。
しかし、ランソンからは、アラタの指揮がリスクを伴うものであったと指摘された。ランソンは彼に一週間に10時間の自主訓練を命じ、軍人としての訓練を続けるよう指示した。アラタはジムで身体を鍛えることにしたが、基地での生活は単調であり、戦争の現実と向き合う日々が続いていた。
また、アラタは基地でエルフのような耳を持つソフィアという女性に出会った。ソフィアはアメリカ人で、肉体改造に熱心であるが、彼女の言動や態度はアラタにとって異質であった。二人の会話はしばしば文化の違いや価値観の違いを反映しており、アラタは彼女との交流を通じて、自分の立場や戦争についての考えを深めることになった。
アラタは、山の斜面にある基地で勤務していた。基地は電波の通りを良くするために見晴らしが良い位置にあったが、整備はおざなりであり、建物も仮設的なものであった。基地では敵の攻撃が主に昼間に行われていたが、夜勤は比較的楽な仕事であった。
アラタは、日常的にパトロールを行う戦術単位を管制し、輸送路の安全確保を任務としていた。ある日、アラタが以前管制した戦術単位の指揮官から感謝の言葉を受け、彼の人間性に触れる機会があった。その指揮官は、アラタの管制によって部下の命が救われたことに感謝していた。
また、アラタは同僚から「クレイジー」と評されることが多く、その意味をソフィアに尋ねると、それは彼が優秀であることの証だと言われた。ソフィアの指摘は、彼の自己評価と異なっていたが、アラタはそれを受け入れた。
さらに、アラタは新しい輸送任務の警備計画の立案を命じられた。彼は従来のパトロールを基に、警備の範囲を縮小して密度を上げる計画を提案し、地域の村との友好関係を築くことも考慮に入れて計画を立てた。この提案は、彼自身の過去の反省から来るものであり、彼の成長を示していた。
アラタが提出した警備計画のレポートについて、上司のランソンは「現実的で迅速な立案だった」と評価した。ランソンは、アラタの提案に基づいて村との友好関係を築くための訪問を企画し、アラタもその訪問に参加することとなった。アラタにとってこれは予想外の展開であり、驚きを隠せなかった。
ランソンは、元グリーンベレーの出身であり、その背景から住民との友好関係を重視していた。グリーンベレーは単なる戦闘部隊ではなく、現地住民の軍事訓練や支援を行うことで、住民自身が抑圧から解放されることを目指す部隊であると説明された。
一方、アラタはソフィアとの会話で、自分が我が社に適応していることを認めつつも、ソフィアの理想主義的な視点との違いを感じた。ソフィアは我が社の文化に馴染めず孤立しているが、アラタは現状に合わせて行動していた。ソフィアはアラタがマチズモ(男性中心主義)に染まっていると批判したが、アラタは必要に応じて現実に適応しているだけだと説明した。
さらに、アラタはランソンの暇つぶしに付き合わされることが多く、戦術的な質問を繰り返されていた。アラタはその質問に答えながら、情報収集のために忍耐強く対応していた。彼は、自分の行動が単なる「仕方ない」ではなく、自ら選んだものであると感じていた。
アラタはソフィアや他の同僚と一緒に食事をとる機会があった。そこで彼は、決断の速さについて尋ねられ、自分の方法を説明した。それはまず仮の最良案を決め、それを基準に他の案と比較し、最良案を選び続けるというものであった。ソフィアはその割り切り方を評価しつつも、アラタの態度に皮肉を感じていた。
後日、アラタは村を訪れることになった。彼はスーツとネクタイを着用し、ムスリムの黒人指揮官オマルと共に行動した。オマルは村の出身者が多い部隊の指揮官で、村への訪問に同行することで現地との友好関係を築こうとしていた。アラタは現地の人々との交流が以前から行われていたことを知り、自分の間抜けさに気づきつつも、それを受け入れて前向きに行動しようとしていた。
第4章 村と天使
アラタは、護衛の兵士たちと共に山道を歩いて村へ向かった。道中で、背の低い兵士が彼に話しかけ、「イヌワシの君」と呼ばれる理由を語った。彼はアラタを空から地形を見下ろすイヌワシのように状況を把握する存在として尊敬していたのである。
アラタは村への道を歩きながら、装甲車やロボットカー「ドンキー」の利便性を考えつつ、護衛任務の重要性についても思いを巡らせた。オマルという指揮官と一緒に行動する中で、オマルの誠実さと指揮能力に感心し、彼の言葉を受けて自身の指揮が優れていることを知り、驚きを感じていた。
アラタは、自身の能力を過小評価していたが、オマルの評価を通じて少しずつ自信を持ち始めていた。彼はオマルとの交流を通じて、自分が思っていたよりも有能であることに気づき、これからの道のりに新たな希望を見出していた。
アラタは、基地から派遣されて村を訪れた。村は谷底に位置し、水源があるため、人々は平らな場所に住んでいた。村に着いたアラタは、村人たちが畑を作り、生活している様子を見て、日本の風景を思い出して微笑んだ。
村での滞在中、アラタは部族長や村人たちと友好関係を築くために会話を重ねた。部族長はアラタの訪問を歓迎し、友好の証として再訪を促した。その際、アラタはかつてオマルの分隊を助けたことが称賛され、勇者と評価された。
しかし、アラタは村で若い兵士たちが戦争に参加していることに衝撃を受けた。特に、年齢の若い少女兵士に対しては強い違和感と悲しみを感じた。アラタは、自身が軍事行動に加担している現状に疑問を抱き、会社を辞める決意を固めた。彼は自分の行動が無意識の悪意となり、世界の問題を助長していると感じ、これ以上の関与を避けることを望んだのである。
アラタとその仲間たちは、村からの帰り道で敵の襲撃を受けた。暗くなる前に基地に戻ることを目指していたが、突如として狙撃を受けた。アラタはイヌワシの君に押し倒されて一命を取り留め、その後、オマルたちと共に岩陰に隠れて状況を確認した。
敵は狙撃でアラタたちを足止めしようとしていた。アラタは、援護が到着するまで二時間かかることを知り、それまでにどうにかしなければならないと判断した。アラタは戦況を分析し、敵の狙いは捕虜を取ることであり、狙撃で動きを封じる間に別働隊が迂回してくる可能性が高いと考えた。
オマルの指揮のもと、アラタたちは敵の包囲を避けるため、谷底に向かって撤退を決めた。途中で敵の攻撃を避けつつ、物資を捨てて迅速に移動することを優先し、生還を目指したのである。
アラタと彼の部隊は村からの帰路で敵の狙撃を受け、緊急避難を強いられた。オマルは部下をまとめ、無事に撤退を進めた。アラタはジブリールらと共に、敵の追撃を避けるため、ジンの住処と呼ばれる遺跡へ向かった。
遺跡での待機中、敵が接近しないことを確認したアラタたちは救援部隊の到着を待つことにした。翌日、アラタは筋肉痛に苦しみながらもソフィアと会話し、彼女が自身の安全を考えて防戦指示を出していたことに気づいた。彼はソフィアへの感謝を表し、彼女との友好を深めた。
アラタは基地の仮設トイレに向かう途中、ジブリールに「ソフィアが悪いジンの化身だ」と警告された。彼はそれを軽く流しつつ、仕事に戻り、ランソンと今後の敵の動きを予測した。
アメリカ軍の大規模輸送作戦が進行していたが、敵の動きはなかった。アラタは体力を鍛えながらも辞職を考えていた。祭りのために再び村を訪れたアラタは、夜に始まる新月の祭りを楽しみにしていた。祭りが始まると、ジブリールが美しい民族衣装で現れ、アラタは驚いた。
祭りが盛り上がる中、オマルが基地が攻撃を受けていると報告し、アラタはジブリールに祭りを楽しむよう伝えて急いで行動を開始した。
アラタとオマルは村の祭りから離れて、基地が攻撃を受けていることについて深刻に話し合った。アラタは敵の攻撃が本気であると判断し、基地への奇襲が目的であると推測した。彼はソフィアやランソンの安否を心配しつつ、オマルから無線機を借りて基地と連絡を取り、撤退の指示を出すことを決意した。
基地の状況は悪化しており、アラタはランソンに撤退を提案した。ソフィアも無事を祈りつつ、戦い続ける意思を示した。しかし、その後、ジブリールの父と族長がアラタに接触し、彼らが敵側であることが明らかになった。アラタはジブリールの父から捕虜ではなく客人として協力を求められ、オマルとともに大人しくするなら安全を約束された。アラタは一旦状況を受け入れることにした。
第5章 虜囚の生活
祭りの翌日から2日間、アラタがいる村の周辺で空爆があったが、村には被害はなかった。アラタは村で軟禁状態にあったが、村内をある程度自由に動けるようになり、日々を穏やかに過ごしていた。彼は日本に帰ることを考えながらも、村の生活にある程度満足していた。
ジブリールという少女がアラタの監視役となっており、二人は村の畑や風景を見ながら会話を重ねていた。ジブリールはアラタにこの場所を好きかどうか尋ね、アラタは日本の風景に似ていることから好きだと答えた。
アラタはまた、自分が捕虜としての価値が低いと考え、ジブリールの父が村に対して抱いている思いを理解しようと努めた。ジブリールの父は、ジブリールが村の男と結ばれることがないと考えており、アラタに彼女との結婚を勧めた。アラタは驚きつつも、その提案について考える時間が欲しいと答えた。
アラタはジブリールの父から「時間がない」と言われたことに疑問を抱きながら散歩をしていた。彼は自分の行動がジブリールたちに悪影響を与えたかもしれないという後悔に苛まれていた。散歩中に考え込み、村の外へ出ようとしたが、ジブリールに引き止められた。ジブリールは村を離れることになると告げた。
その後、アラタとオマルは族長に呼ばれ、村で傭兵として働かないかと提案された。族長は、アメリカ軍の支援を受けた政府軍が来るため、それに対抗するための雇用であると説明した。アラタは族長に、彼らの戦略と目指すべき決着について質問した。族長は過去にアメリカ軍によって村が襲撃されたことを語り、それが今の状況を引き起こしたと説明した。アラタとオマルはその話に驚き、アラタは吐き気を感じながらもその現実に向き合おうとしていた。
翌日、アラタとオマルは監視の兵と共に、かつて村があった場所へ向かった。途中、アラタは強い眠気に襲われ、何度も意識を失いかけたが、オマルに助けられて進んだ。オマルはアラタの反応に驚き、彼が村の虐殺の話に動揺していることに気づいた。
廃村に到着したアラタは、過去に見た地形図と目の前の光景が重なるのを感じた。村の建物には弾痕や手榴弾の痕跡が残っており、アラタはその光景に心を痛めた。彼は監視の兵に許可を得て、村の外周を回りながら、かつての虐殺の現場であった集団墓地にたどり着いた。そこで、アラタは自分の行動がもたらした結果に対して深い後悔の念を抱き、涙を流した。
第6章 僕なりの戦争の終わらせ方
村に戻ったアラタは、これ以上の被害を防ぐために族長と話し合い、村のために働くことを決意した。オマルもアラタに同意し、共に部隊を編成することになった。アラタは、ジブリールを含む子供たちが離散したり売られたりするのを防ぐため、子供たちを中核とした戦術単位を作り直した。この行動により、子供たちの存在価値を高め、彼らが村の防衛に必要不可欠であることを証明した。
また、アラタは敵の二度目の報復攻撃に備え、戦術地図の作成に取り組んだ。村に地図がなかったため、旧ソ連軍の地図を基にしながら、村の防衛計画を立てた。彼は族長やジブリールの父と何度も話し合い、戦争の意図と終結の方法について説得を続けた。アラタの目的は、被害を最小限に抑えつつ、戦争を有利に終わらせることであった。族長との交渉の結果、アラタの計画は支持され、彼は戦争の始め方と終わらせ方についての具体的な案を提示することとなった。
アラタは村の防衛のために、子供たちを哨戒網に配置し、非武装で敵の接近を監視させた。哨戒網に敵の車列が引っかかった際、アラタはすぐに哨戒網を撤収し、子供たちを戦士として配置する準備を整えた。村の人々は事前に避難させ、子供たちはそれぞれの持ち場に戻った。
敵が村に近づくと、アラタの指示で仕掛けられた地雷が車列を攻撃し、混乱を引き起こした。続けて機関銃と狙撃で敵の進行を妨害し、敵に被害を与えた後、迅速に撤退を指示した。アラタの作戦は、敵の注意を引きつけることに成功しつつ、被害を最小限に抑えた。彼は戦闘終了後、兵士たちを迅速に撤退させることで、無用な犠牲を避けるよう努めた。
アラタは、敵が村に近づく中、村の大人たちを敵の背後に回らせて防衛計画を進めた。彼は戦争を避けるため、戦闘を挑まないよう指示しつつ、子供たちを守ることを最優先に考えた。村に迫る敵の声がソフィであることに気づき、アラタは一瞬迷ったが、子供たちを守るためには計画通り行動することを決意した。
敵の砲撃が村を襲う中、アラタは村を放棄し、撤退を開始する。戦争を終わらせるための計画として、アラタは敵に政治的勝利を与え、自分たちの被害を最小限に抑える戦略を取った。彼は、戦争の本質を理解し、現実的な落としどころを見つけようとしたのである。
戦いが終わった後、アラタは子供たちを連れて日本へ戻ることを決めた。飛行機で日本に到着し、新たな生活を始めるための準備を始めた。アラタは、日本で民間軍事会社を設立しようと考え、過去の経験を活かして新たな道を歩む決意を固めた。彼は日本への進出を開始し、新しい生活を子供たちと共に築いていくことを目指した。
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