どんな本?
『マージナル・オペレーション 』は、30歳のニートであるアラタが、民間軍事会社に就職し、戦場でその才能を開花させていく物語である。
アラタは東京での平凡な生活を捨て、中央アジアの過酷な環境で戦争の現実と向き合うことになった。
最初はゲーム感覚で指示を出していたアラタだが、彼の決断が現実の悲劇を引き起こすと知り、自分の責任と向き合うことになる。
村の壊滅や仲間たちとの絆を通じて、アラタは自分の役割を自覚し、子供たちと共に新たな未来を切り開こうと決意する。
読んだ本のタイトル
マージナル・オペレーション 05
著者:芝村 裕吏 氏
イラスト:しずま よしのり 氏
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あらすじ・内容
ミャンマー北部にて中国に対して抗戦を続けるアラタと子供たち。
しかし、その善戦にもかかわらず、これまで支援を行ってきた西側諸国はアラタたちを切り捨て、ミャンマー国軍も中国に寝返ってしまう。
四面楚歌の状況の中、大攻勢を開始する人民解放軍。アラタの「オペレーション」は、戦況を覆すことができるのか……?
芝村裕吏×しずまよしのりが贈る戦場のサーガ、「正編」クライマックス!
感想
本編最終巻の『05』は、アラタと彼の率いる子供たちがミャンマー北部で中国軍と戦う姿を描いた作品である。
物語は、西側諸国の支援を失い、さらにミャンマー軍にも裏切られるという絶望的な状況から始まった。
敵の空爆、ゲリラ戦の中で、アラタは子供たちを守り抜くために冷静な指揮を執り続けるが、その背後には深い苦悩と葛藤が存在していた。
この巻では、戦場のリアルさが非常に詳細に描かれており、地雷の設置や夜間の奇襲など、戦術的な戦闘シーンが多かった。
また、アラタが感じる無力感や、戦争の現実に対する強い憤りも伝わって来た。
彼は戦場での冷静な判断力を保ちながらも、子供たちの未来を守りたいという強い願いを持っており、その人間性が非常に深く掘り下げられている。
ジブリールやホリーといった登場人物との関係性も、この作品の大きな見どころであった。
特に、ジブリールのアラタに対する想いが徐々に強くなる中で、二人の関係がどう進展していくのかが興味深い。
彼女の成長とアラタの内面的な変化が織り交ぜられており、戦争という過酷な状況下での人間ドラマが一層深みを持って描かれている。
また、アラタの戦術と彼の指揮のもとでの作戦行動が非常に緻密であり、敵に対して一歩も引かない姿勢が印象的であった。
彼の知略と部下たちとの信頼関係が試される場面が多く、その緊張感を最後まで楽しむことができた。
全体として、『マージナル・オペレーション 05』は戦争の中での人間関係の複雑さや、過酷な状況での人間の成長を描いた非常に深い作品であった。
戦場のリアリティと人間ドラマが見事に融合しており、読者を物語の中に引き込む力を持っている。
戦いの終わりが見えない中で、アラタたちがどのようにして戦い抜くのか、続編への期待が高まる一冊であった。
本編とは関係ないが。
何で、続編のタイトルを「改」としたのだろうか?
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
備忘録
1章 空爆
アラタは爆撃を受けた直後、土埃で鼻が詰まる中、土に埋もれたタブレット端末を掘り出して無事を確認した。宿舎のキッチンと思われる場所から炎が上がり、アラタは森の中へ避難するよう子供たちに指示を出した。彼は、文字を使った通信を試みるも、識字率が低い現状に直面し、教育の重要性を改めて感じた。
爆撃は中国軍の報復のようで、アラタは戦況の早い展開に驚きを感じながら、冷静に指揮を執り続けた。最初の報告では、7人の子供が死亡したことが確認され、アラタは悲しみと同時に強い憤りを感じていた。彼は負傷者の確認や無人地雷の可能性を考慮しながら、子供たちに冷静な行動を求めた。
避難中の指示として、食料の確保を最優先とし、武器は後回しにするように伝えた。イブンが発電機を持ってくることを提案し、それに応じたが、子供たちの命を第一に考える方針を変えなかった。一方、グエンという少年は、敵の接近を警戒しつつ、アラタの指示に納得できない様子を見せた。アラタは、自分が悪人であることを自認しつつも、子供たちを無駄に死なせない決意を固めていた。
その後、宿舎の上空を戦闘機が飛び去るのを見送りながら、アラタは対空兵器があればもっと子供たちを守れたかもしれないと悔やんだ。彼は自分の無力さに憤りを感じつつ、戦争の現実と向き合い、もっと幅広い視野で戦略を考える必要があると感じていた。
アラタは、敵の航空攻撃に備えて家財や武器を密林に移動させていた。攻撃による被害は、死亡7人、負傷20人であった。手早く埋葬を済ませ、思わず涙を流したが、思考を止めず次の手を考え続けた。中国軍の空爆が再開される中、アラタは敵の動きを予測しながら対策を考えていた。
彼はミャンマー軍と中国軍が全面戦争に突入する可能性を考慮し、その場合には自分たちの部隊が無意味になることを認識していた。そのため、子供たちの生活を守るために新たな仕事を探す必要があると感じた。しかし、数千人の子供たちを連れて移動するには費用がかかり、簡単にはいかなかった。
アラタは子供たちの安全を確保するために努力し続けたが、周囲の大人たちや子供たちの反応に困惑していた。ジブリールが彼の感情を察して慰めようとする一方で、他の仲間たちもそれぞれの思いを抱えていた。ホリーとの会話では、戦争の現実と自分の無力さに向き合いながらも、彼は子供たちの未来を守るために戦い続ける決意を新たにした。
その後、アラタは偵察チームを送り出し、敵の動きを監視しつつ、地雷を用いた作戦を展開した。戦況が厳しい中で、彼は次の手を模索し続け、子供たちの安全を最優先に考えながら行動した。スポンサーとの交渉や武器の調達に努め、戦争を続けるための方策を模索していた。
昼頃に目を覚ましたアラタは、テーブルに突っ伏して寝ていたことに気づき、ホリーに声をかけられて起きた。ホリーは彼に食事を持ってきて、二人で会話をした。アラタはホリーに、自分が夢を持てない代わりに子供たちの夢を叶えることを目標にしていると話したが、ホリーは彼を「不能」と批判し、立ち去った。
その後、アラタは偵察チームが地雷を設置した状況を確認しに行った。基地の再建や物資の調達などの問題に直面しながらも、子供たちの士気はまだ高いことに安心した。夕方には、地雷を仕掛けた偵察チームが順次帰還し、敵の動きを見極めるために再び配置に着いた。
夜間の偵察では、敵の車列が地雷に何度も引っかかり損傷を受ける様子が確認された。アラタは慎重に敵の動きを観察しつつ、最小限の被害で攻撃を成功させるための作戦を指示した。敵の装甲車が地雷にかかったことで、アラタは攻撃命令を出し、子供たちは敵を撃退した。降伏した敵兵は逃がし、奪った物資は弾薬のみだった。
アラタは略奪行為が子供たちに悪影響を与えることを懸念し、今後の方針として略奪を禁止することを考えた。戦闘が終わった後も、敵のトラックは燃え続けていた。
翌日、敵の対応が変わった。トラックなどの車列は道の脇を走るようになり、装甲車も護衛に加えられ、さらに装甲車のみでのパトロールも行うようになった。アラタは、今回の敵がより慎重かつ頭が良いことに満足しつつも、ジブリールたちに先回りさせて地雷を設置させた。その結果、敵は再び地雷に引っかかった。アラタは地雷の消耗を懸念し、タイに向かう前に二日間の作戦を実施した後、ジブリールたちを撤収させることにした。
ミャンマーと隣接するタイへ移動するため、アラタは地雷の設置を終えたジブリールたちの帰還を待っていた。彼はコーヒーを飲みながらホリーと戦況について話し、ミャンマーが降伏しない理由や戦争の引き延ばしに関する自責の念を吐露していた。
ジブリールが戻ってきたが、機嫌が悪く、アラタは彼女の態度に困惑した。彼はタイへの護衛について話をしようとするが、ジブリールの態度が硬化し、話は進まなかった。その場を取り繕うため、イブンとジニがアラタを押し込んでタイへの出発を促し、彼ら全員でタイへ向かうことにした。オマルもその様子を理解し、彼らを見送った。
2章 キシモト
アラタとジブリール、イブン、ジニの4人はジムニーに乗り込み、タイへの移動を開始した。車内は狭く、運転が不安定で、みんな揺れに耐えながら進んでいた。道中、アラタはイブンとジニに戦争への考えを語り、子供たちの未来について思いを巡らせていた。
タイに到着後、彼らは宿を確保し、翌日の計画を立てた。ジブリールはアラタへの感情を抱きながらも、素直になれずにいた。アラタもまた、ジブリールの気持ちに戸惑いながら、自身の行動や戦争の未来について考えを深めていた。彼は夜、宿での休息を取ろうとしたが、ジブリールの気持ちが気になり、なかなか眠れなかった。
アラタは朝、スーツに着替え病院に向かった。彼はソフィの見舞いに行く際、いつも緊張していた。病室に入ると、ソフィは窓の外ではなくアラタを見ていた。彼女との会話でアラタは、自身の仕事の危険性について考えさせられた。ソフィはアラタに仕事を辞めるよう懇願し、アラタは一瞬自分の選択に疑念を抱いたが、彼の仕事がソフィの治療費を賄っていることを思い出した。
病院を出ると、ジブリールたちが外で待っていた。彼らは病院周辺で不審者を見かけたと言い、アラタは警戒を強めることを決めた。その後、アラタたちはタイ支社長のシュワさんを訪ねた。シュワさんは元僧兵であり、彼の助言はアラタにとって大切なものであった。シュワさんは彼らの活動を支援し、さらにソフィの安全を確保するために手を尽くした。
夕食後、アラタたちはバンコクの街を歩き、その賑やかで明るい夜の雰囲気を楽しんだ。アラタは基地で使用するためのLEDライトを購入し、仲間たちと共にホテルに戻った。彼は仲間たちの安全とソフィの治療、そして自身の役割について考えを巡らせながら夜を過ごした。
アラタは夜のバンコクの屋台を歩きながら、ライトを買い、子供たちと共に楽しんでいた。翌朝、スポンサーであるリさんと朝食を取りながら中国軍との戦況について話し合った。リさんからはミャンマー軍が彼らの戦術を真似するだろうと聞かされたが、アラタはミャンマー政府の動向に不安を感じていた。
その後、アラタは部屋に戻り、ジブリールと会話をした。ジブリールはアラタの様子に気づき、彼を気遣って涙を流した。アラタはジブリールを慰めるために抱きしめたが、それが彼女の感情をさらに揺さぶった。ジブリールはアラタに対し、自分がもっと成長し彼を支えたいと訴えた。アラタは彼女を抱きしめることで彼女の気持ちに応えたが、その行動がもたらす影響について考え込むことになった。
アラタは会議に出席し、スポンサーたちと戦況について話し合った。会議では中国との小競り合いが本格的な紛争に発展していることが議題となった。アラタは、ミャンマー軍の動きを促すためにもう少し戦力が必要だと提案し、スポンサーから資金の増額を得ることに成功した。
その後、アラタはタブレットを通じて中国軍が補給線への攻撃に対して空爆を強化していることを確認した。彼はシュワさんから提供された新しい車を受け取り、ミャンマーに戻る準備を進めた。その過程で、病院での不審者の存在を知り、警戒を強化した。
また、アラタはランソンの紹介で武器商人のケイマンと接触し、対空ミサイルや地雷の購入を決めた。ケイマンは中国軍がゲリラ戦に不慣れであることを指摘し、アラタにさらなるゲリラ戦術を勧めた。アラタは武器の購入と戦略の再考を進め、ミャンマーでの戦闘を続ける決意を新たにした。
アラタは商談を終え、新しい車でミャンマーへ向かい、基地に到着した。道中、車の運転に不慣れであったが、子供たちは順応が早く、ランクルの操作もすぐに慣れていた。基地に到着した後、彼は偵察チームと共に地雷を効果的に設置し、敵の補給線を妨害する作戦を進めた。
夜間の敵のパトロールに対しても先回りして地雷を仕掛け、車両を破壊し、敵の動きを封じることに成功した。アラタは、その過程で敵のパニックを誘い、戦況を有利に進めていた。彼は作戦後、司令室で休息を取る準備をしながら、自身の感情や仲間との関係についても考えていた。
3章 四面楚歌
アラタは基地での指揮を続けていた。早朝、彼は地雷を使用して敵の補給線を妨害する作戦を進めた。ホリーから避難している村人たちに必要な物資のリストを受け取り、その支援を決意した。しかし、彼の親切さがホリーを苛立たせる結果となった。
その後、偵察チームから航空機の接近が報告され、基地への空爆が始まった。連続する爆撃の中で、アラタはジブリールとともに避難し、被害を抑えるための指示を出した。空爆後、基地周辺は大きな損害を受け、木々が燃えて煙が立ち上る中、アラタは再び状況を立て直す必要を感じていた。
四時過ぎにドイツ製のトラックが到着し、ケイマンは予定通りに商品を届けた。空爆の時間を避けての到着で、タイミングは良かった。彼は商品をリスト通りに納品し、追加注文についても柔軟に対応した。さらに、無償の薬を提供しようとしたが、アラタはそれを警戒して廃棄した。
その後、アラタとオマルは武器庫で新しい武器の管理を始め、戦争の現実感が増してきたことを実感した。ランソンもアラタの考えを理解し、彼を褒めた。これにより、アラタはやる気を新たにした。ホリーも基地に戻り、アラタとジブリールと共に三人で食事をした後、一緒に休むこととなった。アラタはこの奇妙な状況に戸惑いながらも、眠りについた。
アラタは朝、ジブリールたちを夜戦装備で出撃させ、偵察チームを派遣した。トリオを組んで進発し、個々の体調を見ながら慎重に指揮を執った。途中、村人が元基地周辺で魚を養殖しているのを発見し、それを偽装工作と見なした敵が再び空爆を行うと予想した。オマルと共に、防空部隊を組織し、ミサイルで敵の航空機を撃墜する計画を立てた。実際の空爆で一部の航空機を撃墜したが、全てのミサイルを使い切ることは避けた。
その後、敵の補給線を攻撃するために地雷と狙撃を駆使し、戦果を挙げた。敵の反撃も予想しており、夜間戦闘でジブリールの部隊を活用した。結果的に、敵の小部隊を包囲して撃退することに成功し、アラタは状況に応じた柔軟な指揮を続けた。彼はミャンマー基地の司令官からの突然の連絡に戸惑いつつも、今後の戦いに向けて準備を進めていた。
翌朝、敵は遺体回収のため迫撃砲で森を攻撃し始めた。アラタはジブリールたちの部隊を敵の背後に回り込ませて強襲し、混乱に乗じて敵の迫撃砲を破壊した。さらに敵を森に追い込み、地雷と待ち伏せで対処し、一時間の戦闘で敵を全滅させたが、こちらも7名の戦死者を出した。アラタはこの戦闘での過ちを反省し、今後はより慎重な対応を決意した。
また、敵が村に空爆を行い、無人の村に被害が出たが、アラタはこれを偽装攻撃として利用し、敵に錯覚を起こさせる計画を立てた。敵の補給線を攻撃し、効率的に敵の兵力を削る戦術を実行した。敵の大軍が迫ってくる状況で、アラタは適切な撤退を指示し、次なる戦いに備えた。
その後、敵がヘリで補給を行うという情報を得て、アラタたちは対空攻撃を実施し、複数のヘリを撃墜することに成功した。しかし、敵がヘリを本格的に使用し始める可能性を考慮し、今後の対応を考える必要があると感じた。
アラタは朝、電話の呼び出し音で目を覚ました。電話の相手は、日本の諜報機関のイトウという女性で、彼女は斉藤という仲間が日本に帰りたいと泣きながら訴えたことを伝えた。彼女はまた、アラタの活動が中国軍を本気にさせ、ミャンマー軍を警戒させた結果、ミャンマー軍が停戦交渉を始めたことを報告した。アラタの支援は限られ、彼が日本に戻ることも提案されたが、アラタは子供たちのためにその提案を断った。
アラタは戦争の続行に伴う子供たちの安全を心配しながらも、戦争を終わらせつつ再就職を目指す決意を固めた。彼はチラシやパソコンを活用した情報戦略も考慮し、ミャンマー軍と中国軍に対抗するための新たな戦術を練り始めた。最終的に、彼はミャンマー軍との交渉を優先し、彼らを沈黙させることが最初の目標であると考えた。
ジブリールたちが戻る前に、7つの遺体が先に帰還し、丁寧に埋葬された。アラタは次はうまくやろうと決意を新たにした。ミャンマー軍を脱落させるために基地を先制攻撃することを考えたが、他にも戦略が必要だと感じた。
そこで、アラタはオマルをミャンマー軍の近くに対空部隊として派遣し、ハサンを敵の補給線攻撃の指揮官に任命した。ハサンは敵のパトロール隊を見つけ、効率的に対処することで作戦を遂行した。
一方、アラタはミャンマー軍が中国と密かに和平交渉を進めていることを知り、スポンサーの撤退に伴い、自分たちの存在意義が危機にさらされていることを理解した。彼は今後1ヶ月ほど戦争を続けることを決め、戦争を継続することで安全な再就職と銃の放棄を目指すことを子供たちに説明した。最後に、ミャンマー軍を味方につけ、中国軍の侵攻を止めるという戦略を共有し、皆で再就職することを目標に掲げた。
翌朝、アラタたちは本格的な戦争準備に入った。これまでの補給線を叩く戦法とは異なり、正規軍との正面衝突を見据えた準備であった。数で圧倒的に不利ではあるが、情報システム「Iイルミネーター」と広大な森の地形を利用して戦う方針を立てた。
ランソンの指導で、水や土、樹木を利用した偵察用陣地を設置し、そこに警戒トリオを配置して敵の動きを監視した。戦いを控えたため、敵は大軍で攻めてくる可能性が高まった。
数日後、ケイマンがラジオ機材を届けに現れ、中国軍とミャンマー軍の関係が悪化していることを伝えた。アラタは戦争の終わらせ方の難しさについて話し、ラジオ放送を通じてミャンマー軍内部の良識派に訴えかける作戦を進めた。放送は成功し、避難民が増え続け、二週間で千名近くが集まった。
その後、ワ族とカラトラ族の代表がアラタを訪ね、彼の活動に共感を示し、支援を申し出た。アラタは子供たちの教育に悪影響を及ぼすことを避けるため、戦争の早期終結を目指していたが、彼らの支援を受け入れつつ、戦争の継続を決意した。
ホリーの放送も効果を上げ、ミャンマー軍からの脱走兵や武装した若者が次々と加わり、ワ族がこれを引き取った。中国軍は広報活動でアラタを罵倒し、賞金をかけたが、森での掃討作戦を開始することで戦いの次の段階へと移った。
4章 マージナル・オペレーション
中国軍が森に進入し始めたとの報告を受け、アラタは即座に作戦行動を開始した。彼は雨季が始まる前に敵が攻撃を仕掛けてくると予想していたが、その動きは遅れていた。敵軍の森での作戦が困難であることを理解していたからだと考えられる。
作戦を開始したアラタは、ジブリールや他の子供たちを使って巧妙な嫌がらせを行った。森を利用しながら地雷や狙撃を駆使し、中国軍の進行を阻む戦法であった。敵が森に深く進入するにつれて、地雷原や狙撃の罠にかかり混乱し、兵力を削られていった。
一方、カラトラ族の長老と連絡を取り合い、補給線への攻撃を指示した。補給線の攻撃は成功し、中国軍に大きな混乱をもたらした。このことで、敵は補給線の防衛を強化せざるを得なくなり、戦力の分散を余儀なくされた。
アラタたちは、この状況を利用してさらなる戦術を練り、敵の混乱を引き続き誘導しようと計画していた。戦闘はまだ続いており、森での持久戦に向けた準備が進んでいた。
中国軍が夜間に森での行動を開始したとの報告を受け、アラタは警戒態勢を強化した。敵は焦りから夜間にもかかわらず進軍を始めたが、夜戦装備が不足しているため、彼らの動きは不安定であった。アラタは先回りした部隊に地雷を仕掛けさせ、狙撃によって敵の動きを制圧した。
さらに、グレネードランチャーを使用して敵に大きな損害を与えた。この戦闘ではアラタ側の被害は最小限に抑えられたが、敵の焦りが次第に増していることが明らかであった。アラタは敵の戦略を見極めつつ、敵の焦りを利用して優位に立とうとした。
一方で、アラタは部下たちとの関係に悩んでいた。特にジブリールの感情に対してどう対処すべきかを考えていた。戦闘の合間にアラタは自ら前線へと出向き、戦況を把握しつつ、カラトラ族の長老との連携を強化した。
敵のヘリ部隊の出現により、状況はさらに複雑化したが、アラタは冷静に対処し、ジブリールたちと合流することを決意した。敵指揮官との直接対決の中で、アラタは自らを囮にしつつ、部下たちに指示を出し続けた。敵指揮官はアラタを討つことで戦局を有利に進めようとしたが、アラタはその意図を見抜き、巧妙に立ち回った。戦闘は続いていたが、アラタの知略と部下たちとの信頼が試される局面であった。
中国軍が夜間に森を進軍し始めたが、彼らは疲労困憊であり、撤退する意図が見えた。アラタは敵の動きを観察し、無理に戦闘を続ける必要はないと判断して、自軍にも撤退を命じた。グエンが追撃を提案したが、イブンがそれを否定し、戦闘を控えるよう指示した。
中国軍は地雷原を空爆したが、無駄な行動であり、最終的に全面撤退を決断した。彼らの補給線が脅かされていたため、これ以上の戦闘は不利と判断したのである。アラタはこの状況を冷静に見極め、戦争をデザインするという彼の真の目的に向けて行動を開始した。
基地に戻ったアラタは、ジブリールを抱えながらホリーに手を振り、戦闘が終わったことを告げた。ホリーはすぐにラジオ放送を始め、中国軍の敗北を伝え、ミャンマー軍に反撃を呼びかけた。また、アラタはミャンマー軍に対して、自分たちの雇用についての提案をメールで送信し、その返事を待った。
エピローグ あの頃は遥か遠く
中国軍は守りを固め、広大な森での戦闘を回避することに決めたようだった。一方、ミャンマー軍は兵力を動員し、中国軍と対峙する構えを見せ、アラタたちを雇うことを選んだ。アラタはワ族とミャンマー政府との交渉を仲介し、ワ族は条件付きで多少の自治権を得ることとなった。
戦闘が直接的に行われなくなった後も、中国軍とアラタたちはネットや放送を使った宣伝戦を続け、戦争はだらだらと続いた。中国軍はアラタの身元情報を利用して日本を非難したが、日本政府はそれを否定し、アラタの存在を架空のものだと発表した。
その間、アラタは村で比較的平穏な日々を過ごしていたが、ホリーは政治的な活動に忙しく、多忙な日々を送っていた。ジブリールはアラタに甘える一方で、結婚を望むような素振りを見せ、アラタは彼女に優しく対応していた。
戦争が長期化し、直接的な戦闘が減少する中で、それぞれが新たな生活を見つけ、次の一歩を考えるようになっていた。
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