小説「マージナル・オペレーション [F]」感想・ネタバレ

小説「マージナル・オペレーション [F]」感想・ネタバレ

どんな本?

『マージナル・オペレーション [F]』は、傭兵アラタを主人公に描くシリーズの短編集である。この作品は、過去に語られなかったエピソードや、その後の出来事を補完する形で進んでおり、アラタを取り巻く人々の視点から彼の行動や心情が描かれている。アラタは「子供使い」として、子供兵たちを指揮し、過酷な戦場で生き抜く姿が印象的である。

物語は、戦闘や戦略を通して社会の不条理や人間の弱さ、そして強さを浮き彫りにしている。登場人物たちはそれぞれ独自の背景を持ち、アラタとの関わりを通じて成長したり、心の葛藤を抱える姿が描かれる。短編集であるため、各話ごとに異なる視点や国が舞台となり、様々なエピソードが展開されるが、全体を通じてアラタの強い責任感と子供たちへの愛情が感じられる。

特に、シリーズのファンであれば、これまでの物語で語られなかった裏側や、その後のアラタの動向を知ることができる点で魅力的な作品である。また、初めて読む人にも、戦場という厳しい環境下で生きる人々の人間模様に引き込まれること間違いないだろう。

読んだ本のタイトル

マージナル・オペレーション [F]
著者:芝村 裕吏 氏
イラスト:しずま よしのり 氏

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あらすじ・内容

英雄譚(オペレーション)は、終わらない──。
芝村裕吏×しずまよしのりのタッグが贈る大ヒットシリーズ『マージナル・オペレーション』の未収録エピソードや、その後を綴った短編5篇、シリーズ開始十余年にして待望の電子版登場!

マージナル・オペレーション [F]

感想

第1話
「マフィアの日」は、マフィアと呼ばれる梶田がタイで過ごす一日を描いた話である。
雨の中、占い師との会話や、守和氏との意見の相違が描かれているが、子供たちの未来を思いながらも厳しい現実に立ち向かう梶田の葛藤が印象的だった。
特に、子供たちを傭兵として売るという現実に対して彼が抱く不満や悩みが深く描かれていた。梶田がどれほどの責任を負っているかが垣間見える話であった。

第2話
「父について」では、ハサンの視点から語られるアラタの姿が印象的であった。
彼がアラタをどのように神聖視し、またどのようにして部隊を導くかが詳細に描かれており、アラタのリーダーシップや指揮能力の高さが語られていた。
特に、戦場での判断力や部下への思いやりが強調されており、アラタがただの戦士ではなく、子供たちにとっての守護者であることが伝わってくる。
また、アラタの息子としての葛藤も描かれており、彼自身がどのように成長していくのかが楽しみであった。

第3話
「赤毛の君」は、一風変わったラノベ作家の視点から物語が進む。
物語の中で、アラタたちと出会うが、その視点が普段の戦場の緊張感とは異なる日常的な場面であり、物語に新鮮さをもたらしている。
作家と編集者のやりとりはコミカルでありながらも、ジニたちとの出会いが物語に深みを与えていた。
物語全体の中では異色の話ではあるが、アラタたちが日本ではどう見られているかを知る上で重要なエピソードであった。

第4話
「ミャンマー取材手記」は、アラタが子供たちを率いる理由や、彼が戦場でどのように振る舞っているかをジャーナリスト、イーヴァの視点で描いている。
戦場での冷静な態度や、アメリカの正義に対する疑問が深く掘り下げられており、戦争の現実と向き合う厳しさが伝わってくる。
ジャーナリスト、イーヴァがアラタを取材しながら、自身の価値観が揺らぐ様子が描かれており、彼女の葛藤が印象的であった。

第5話
「チッタゴンにて」は、アラタが新たな事業を模索する中で、チッタゴンの船解体業に目をつける物語であった。
ジブリールとのやりとりや、アラタの内面的な葛藤が描かれており、彼がどれだけ子供たちの将来を考えているかがよく伝わってきた。
また、戦場とは違うビジネスの世界での彼の苦労や、ジブリールとの関係が温かく描かれており、いつも殺伐としている物語の中でほっと一息つけるようなエピソードであった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

第1話 マフィアの日

ある日本人男性は、タイという国での生活の一コマを振り返っていた。
彼は雨の中を歩きながら、熱湯のように感じる雨や、世間の言葉の乱れについて考え、マフィアと呼ばれる自分の状況に対して複雑な感情を抱いていた。
タイでは占い師が多く、ある占い師に声をかけられ、彼女の横で雨宿りをしながら会話を交わした。
占い師は、冗談交じりに彼の恋愛運を占い、さりげなく商売を閉めると立ち去った。

その後、男性は寺院へ向かい、敬虔な仏教国であるタイの独特な文化に触れながら、自分自身の修行不足を感じていた。
彼は寺院で瞑想をしつつ、麻薬中毒者たちが集まる現状に驚きながらも、冷静に自分を保とうとしていた。
また、彼はバイクに乗り、バンコク市内を走る中で、タイ特有の風景や人々の親しみやすさ、食文化についても思いを巡らせていた。

彼は性犯罪被害者を専門に支援する病院を訪れ、そこで出会った金髪の若い女性とのやりとりを思い返す。
その女性は心に傷を抱えながらも、彼に少しずつ心を開き、明日訪れる誰かを待っている様子を見せていた。
男性はその状況に戸惑いながらも、何か力になれればと願っていた。

最終的に、男性は瞑想を続けながら、日々の努力と修行が自分の道を開く鍵であると信じ、雑念を払い、静かに自分自身と向き合っていた。

夜、バイクを走らせていた。
街には人が増え、皆笑顔を浮かべていた。
タイでは、夜にこそ本当の笑顔が見られるように感じられた。彼は還俗した師匠に会いに行くため、スラム近くの建物へ向かった。
師匠は、子供たちを傭兵として売り出す商売をしており、彼にはその行いがどうしても納得できなかった。

庭にバイクを停め、彼は戦場に送られる予定の子供たちと少し触れ合った。
子供たちをバイクに乗せて庭を回ると、少しだけ笑顔を見せた。
師匠が出てきて彼を呼び、子供たちと遊ぶことを褒めた後、家に入るよう誘った。

師匠の家には外国人の妻と赤ん坊がいた。
食事を共にしながら、師匠は彼に子供たちを売る理由を話した。
師匠は、自分の子供も将来的にはボスのところに預けたいと言い、その理由として、罪の重さを知らずに生きることが危険だと語った。

彼は師匠の考えに納得できず、子供を使って金を稼ぐ行為を嫌悪したが、それでも食事を子供たちに分け与えた。
その後、バイクで帰宅し、シャワーを浴びて心を落ち着けようとしたものの、怒りは収まらなかった。
答えの出ない思考に苛立ちながら、彼は趣味であるゲームに集中し、記事を投稿して気持ちを静め、眠りについた。

朝、彼は雨を気にしながら外に出た。タイの天気予報はあまり信頼されず、人々は占いに頼ることが多かった。
彼がバイクに乗ると、子供たちが「マフィア」と呼びながら集まってきた。
昨日、師匠こと守和さんとの喧嘩を思い出し、憂鬱になりながらも、今日の仕事に向かった。

バンコクはいつものように渋滞しており、彼はバイクを押しながら進んだ。
途中で、辻の占い師に再会し、会話を交わした。
彼女は「今日は病院に行かない方がいい」と警告し、不吉なことが起きると予言したが、彼はそれを無視して病院へ向かった。

病院周辺を見回り、狙撃地点となりそうなビルを調べた後、彼はサブマシンガンを手に、備えを整えた。
途中でボスからの呼び出しがあり、ボスと合流することになった。
ボスは防弾車で現れ、彼と一緒に病院に入った。

ボスが天使(ソフィ)と呼ばれる女性に会いに行くために病室に向かうと、彼は警戒を強めた。
突然、敵の襲撃が始まり、看護師に変装した敵が手榴弾を投げ込んできた。
爆発に巻き込まれた彼は、負傷しながらもサブマシンガンで応戦し、ボスと天使(ソフィ)を守った。

彼は銃撃戦を続けながら、敵の次の攻撃に備えていたが、サブマシンガンの弾が切れるその瞬間が、勝負の分かれ目になると感じていた。

彼は敵の襲撃に備え、ベッドを盾にするよう指示し、猟銃を構えて応戦した。
サブマシンガンの弾を交換しながらショットガンを使用するのは厳しい状況であったが、彼は冷静に対処し、味方の支援によって何とか敵の攻撃を制圧した。

その後、占い師であった敵と遭遇し、至近距離で撃退した。
ジブリールという少女が階段から現れ、他の敵も倒したと報告した。
二人はイルミネーターを通じてボスと会話し、無事に状況が収束したことを確認した。

彼は負傷しながらも、ボスとジブリールを守ることに成功し、病院で簡単な治療を受けた。
治療後、ボスと天使たちが待っており、天使はボスに対してイルミネーターを再び使いたいと懇願したが、ボスは療養中であることを理由にこれを拒んだ。
ジブリールの背中を押しながら、彼はボスに対して人を悲しませないように助言し、バイクに乗って去っていった。
世の中の難しさを感じながらも、彼はアクセルを開けた。

第2話 父について

彼は戦闘に向いていると自覚していた。待機することや困難な道を進むことも得意で、射撃の腕もそこそこだったが、父親は彼に戦争以外の道を選ばせたがっていた。父親との口論の後、彼は自分の能力や生き方について考えたが、父親を説得することは難しかった。

彼の父アラタは、高名な戦士であったが、射撃が下手で、感情的になることも多かった。それでも指揮能力が高く、皆から尊敬されていた。彼自身はアラタの息子として、戦闘力を磨いて家名を高めたいと考えていたが、父との血の繋がりがないことに不満を感じていた。

彼はまた、ジブリールという少女を守ることを秘密の使命としていた。ジブリールは過去に辛い経験を持ち、いつも俯いて生きていたが、彼は彼女が父にとっても大切な存在であると感じていた。

彼自身もまた、辛い過去を持っていた。彼の故郷では、アメリカ軍に協力するために、余剰な子供たちが差し出されるという状況があり、彼もその一人として扱われた。そこで彼は多くの困難に直面し、生き残るために戦わなければならなかった。

過去の出来事やジブリールとの関わりを通じて、彼は父との絆や、今後の生き方について思いを巡らせるようになった。

彼は、弾が尽き戦闘中にも関わらず、遠くの山を眺めながら死を覚悟していた。仲間の援護射撃により何とか安全な場所まで移動できたが、その状況は今まで経験したことのないものだった。父であるアラタの命令で仲間たちは弾を惜しまずに撃ち続け、援軍が到着するまでの時間を稼いだ。父は命令や規律を超え、子供たちに「弾より価値がある」と行動で示していた。

その後、アラタの名前や素性について子供たちの間で話題になり、彼は異国の勇敢な指揮官として知られるようになった。ジブリールはアラタに対して特別な感情を抱き始め、彼を「イヌワシ」に例えながら想像を膨らませていた。

中央アジアの山岳地帯での戦闘時、彼らの部隊は父アラタの指揮のもと活動していた。父の指揮は他の大人たちの助けを必要とせず、地図や無線指示だけで戦況を把握し、的確な命令を下していた。彼の判断で弾薬が豊富に補給され、訓練も進み、部隊の死亡率は減少し、任務の成功率が上がった。彼は弾薬の供給を通じて部隊を守り、子供たちは父の行動を支持するようになった。

彼らは父の姿を初めて見たとき、期待していた勇敢な指揮官とは異なり、場違いな風貌に失望したが、彼の指揮能力に変わりはなかった。特に狙撃戦での指示は驚異的で、敵を退け、部隊を安全に導いた。父は見た目と違い、恐怖に震えながらも勇敢に指揮を執る人物だった。

ジブリールは父に恋心を抱いていたが、父と耳長の金髪の女性との関係に悩んでいた。彼はジブリールを励ましたものの、彼女の苦しみは深かった。父は戦争から彼を遠ざけようとし続けたが、彼は父と共に地獄に堕ちる覚悟をしていた。

第3話 赤毛の君

土屋ツカサというラノベ作家が、秋葉原での買い物後に浅草橋への電車に乗っていた時、憂鬱な気分に襲われていた。彼は無駄遣いをしてしまったことを悔やみ、自分の中年オタクとしての生活に限界を感じていた。そんな中、知り合いの編集者である平林さんと電車内で偶然出会い、ぎこちない会話を続けた。

その後、彼らは電車内で赤毛と褐色の肌を持つ外国人の女の子を見かけ、平林さんが彼女に話しかけたが、彼女は「仕事をしている」と答えたことに二人は驚いた。土屋は平林さんと共に、子供の労働問題に対して何かすべきか悩み、最終的に警察に連絡することを考えた。

その後、女の子が代々木駅で降りたため、二人は彼女を追った。しかし、追いかけた先で彼らは外国人の子供たちに囲まれ、クロスボウを向けられるという危険な状況に陥った。女の子は興味深そうに二人を見つめており、土屋は事態の深刻さに気づいた。

土屋ツカサと平林は、電車内で赤毛の少女ジニを追いかけ、結果として彼女たちの一団に捕らえられてしまった。彼らはクロスボウで脅されながら拘束され、取り調べを受けた。ジニは、アラタというリーダーの指示の下で行動しているようだったが、平林の正義感により子どもたちの働かされている状況に疑念を抱いていた。

ジニは土屋と平林に興味を持ち、平林に好意的な態度を見せたが、彼らの状況は依然として不安定だった。最終的に、伊藤という男が登場し、二人を解放することを約束したが、彼の存在や意図には疑問が残った。土屋は一瞬の自由を感じたが、結局ジニやアラタの正体や目的について不安が募り、平林も内心では不安を抱えていた。

土屋ツカサは、翌日自分の口座に謎の50万円が振り込まれたことに戸惑った。振込先の水道工事業者に確認するも、相手は知らぬ存ぜぬの態度であった。土屋はこれが口止め料だと考え、事実を黙ってブルーレイを購入した。

その後、新宿や大久保で銃撃事件が発生し、土屋はジニが関わっているのではないかと案じたが、答えは出なかった。

三週間後、土屋は再び電車内で平林と再会した。平林は、子供が生まれたらジニのように眼鏡を指で押してもらいたいと語り、土屋は不公平な世の中を実感しながらも応じた。平林はさらに、作家の芝村に小説のシリーズ執筆を依頼することになったと告げ、土屋は彼の考えに半ば呆れつつも、彼があの事件に関わった少女の未来を気にしていることを理解した。

第4話 ミャンマー取材手記

中国の領土拡張には明確なパターンがあり、まずは大量の移民を送り込み、次に中国化を進め、最後にその地域を自国の領土と主張して圧力をかける手法である。この手法により、チベットやワ州、さらには台湾までもが飲み込まれようとしていた。また、アメリカが中国との経済関係を強化したことで、世界の力関係が変化し、混迷が進んでいった。

そのような状況下で、ジャーナリストであるイーヴァ・クロダは、ミャンマーで「子供使い」と呼ばれる傭兵指導者のインタビューを行うことになった。彼女は、友人の人脈を頼りに伝説的な人物への接触を果たし、インタビューに臨んだ。しかし、出会ったのは若い父親風の人物で、最初は本物かどうか疑問を抱いたが、話を進めるうちに彼が「子供使い」であると認識した。

インタビューの中で、彼は戦争が儲からないと語りながらも、子供たちを率いる理由を述べた。彼の子供兵たちとのやり取りは、まるで家族のようであり、戦場での彼の自然な振る舞いが目立っていた。

一方で、イーヴァはアメリカの正義に疑問を抱き始め、彼の言葉からアメリカの欺瞞に気づいていった。最終的に彼女は、自らの信じてきた価値観が揺らぐ中で、新たなジャーナリストとしての道を模索する決意を固めた。

第5話 チッタゴンにて

チッタゴンはバングラデシュの海沿いに位置し、船舶業界で有名な場所である。アラタは現在の戦争事業が成功し、資金が増えたことから、新しい事業として船の解体業を検討していた。チッタゴンの船の墓場は、朽ちた船が多く存在する場所で、彼はそこで解体業の可能性を探るため、現地を訪れた。

同行者のジブリールは若いが、護衛として彼と行動を共にしていた。道中、アラタは自身の感覚の麻痺について考え、特に金銭感覚や規模感が変わってしまったことに気づいていた。しかし、子供たちを養い育てるという使命感は失っていなかった。ジブリールとの会話の中でも、彼の思いやりや責任感が強く表れていた。

チッタゴンで解体業者のチャン氏と面会した際、鉄の価格低迷や事業の非合法性といった問題が浮上したが、アラタは合法的な方法で事業を展開しようと考えていた。会談を終えた後、彼は宿を探し、次の行動へと進んでいった。

アラタはチッタゴンの海が見えるホテルに滞在していた。ホテルの部屋は二間続きで、ジブリールと共に過ごしていた。ジブリールは部屋のドアを楽しげに開け閉めし、無邪気な姿を見せていたが、アラタは彼女の成長を感じつつ、心を落ち着けて過ごしていた。

ボーイが何度も部屋を訪れ、チップをせびるなど忙しい様子だったが、アラタは丁寧に対応し、ジブリールと一緒に戦争墓地を訪れることを決めた。戦争墓地は第二次世界大戦で亡くなった日本兵が埋葬されており、アラタは自分の指揮下で亡くなった子供たちの墓を建てたいと考えていたが、現状では生きる者を優先せざるを得ないことを許してほしいと心の中で思っていた。

ジブリールとの会話を通じて、彼女は故郷を捨て、アラタのそばが新たな故郷だと語っていた。アラタは彼女の成長を感じ、感謝の気持ちを込めて花束をプレゼントした。ジブリールはその花束を大切にし、感動していた。ホテルに戻った後、ジブリールは花束を抱いて隣室からやってきて、アラタの護衛として一緒に過ごす決意を示した。

アラタは自分の未来について考え、解体業の事業を進めることを決意していたが、その先に何が待つのかをまだ模索していた。ジブリールとの夜は安心感があり、アラタは静かに眠りについた。

夜が明け、アラタはベッドに散らばった花びらを見て、「花を散らせてしまったな」と呟いたが、ジブリールはその意味に気づかず、花びらを集めて新たな小さな花束を作っていた。二人は宿を引き払い、車で次の目的地に向かった。ジブリールは作った花束を大切に抱え、車内にはエアコンが効いていた。

道中、アラタはジブリールに自分の計画を打ち明けた。新事業として合法的に解体事業を取得し、その後、鉄の価格を上げるために中国の鉄鉱山や製鉄所を攻撃する考えであった。これにより事業を黒字化しようという計画だったが、アラタは自分の言葉に少し後ろめたさを感じながらも、今まで通り「金のために戦う」ことを再確認した。

アラタはジブリールの反応を見ることができず、運転に集中してそのまま道を進んだ。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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