小説「マージナル・オペレーション [F3]」感想・ネタバレ

小説「マージナル・オペレーション [F3]」感想・ネタバレ

どんな本?

『マージナル・オペレーション [F3]』は、シリーズ10周年を迎えた作品で、戦争後の世界を舞台に、複数のキャラクターの視点から描かれる短編集である。この本では、戦争の後遺症や新たな戦争の予兆に直面する登場人物たちが、それぞれの成長や葛藤を抱えながら日常を過ごしている。

物語は4つの章に分かれており、タイで子供兵たちを教育する元僧侶シュワ、アラタの息子のように育ったシン、アラタに仕える少女メーリム、そして元ニートでありながら子供たちのリーダーとして活躍するアラタの視点から描かれる。それぞれのキャラクターが戦争の影響を感じつつも、新たな道を模索する姿が印象的である。

この作品では、戦争の記憶と平和な日常の間で揺れ動くキャラクターたちの心理描写が見事に描かれ、アラタを中心に繋がり合う物語が展開される。また、ロシアのウクライナ侵攻や国際情勢の緊張感も反映されており、現代の問題を投影しながら未来を見据える内容となっている。

シリーズファンはもちろん、初めてこの作品に触れる人にも、登場人物たちの成長と葛藤が深く描かれているため、戦争後の世界を考えるきっかけを与える一冊である。

読んだ本のタイトル

マージナル・オペレーション [F3]
著者:芝村 裕吏 氏
イラスト:しずま よしのり 氏

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あらすじ・内容

シリーズ開始より10周年──「伝説」の後も人生は続く。
タイで少年兵たちを「教育」する元僧侶・シュワ。
「アラタの子」のひとりで、「父」に深く共感する少年・シン。
「最初の24人」のうちのひとり、メーリムが見たアラタと女性たち。
そして、元ニートと守護天使……。
芝村裕吏×しずまよしのりが贈る大ヒットシリーズ、全編書き下ろしの短編集第3弾。

マージナル・オペレーション [F3]

感想

『マージナル・オペレーション [F3]』は、戦後のミャンマーでの子供たちの生活や、新たな戦争の予兆を描いた短編集である。
それぞれ異なる視点から物語が進み、アラタを中心に展開される4つの章が、彼らの葛藤や成長を生き生きと描いている。

シュワの章

シュワはタイで少年兵たちを教育する元僧侶として、過去のテロリスト時代やアラタとの出会いを振り返りながらも、現在は子供たちのために平穏な日々を送っている。
彼の章では、戦争と平和の間で揺れる複雑な感情が描かれており、特にバンコクでの平和な風景が、彼の過去との対比として際立っている。
シュワは、子供たちの教育に力を注ぐ一方で、アラタとの再会や新しい事業への挑戦など、未来に向けた決意を見せる。平和を望みつつも、戦争の影がまだ消えていないことに対する葛藤が印象的である。

シンの章

シンは、アラタの影響を強く受けた少年で、父リョータのように善良でありたいと願っている。
彼の章では、父親とのやり取りを通じて、街の治安維持や避難民の支援に取り組む姿が描かれている。
シンは、自分の役割と責任を果たそうとしつつも、父との間に生じる葛藤や、自分自身の将来に対する迷いを抱えている。
特に、父から学んだことを元に街を守るために奮闘する姿が感動的であり、彼の成長と自立が物語の中心となっている。

メーリムの章

メーリムは、アラタの初期の24人の一人であり、彼女の章では、アラタや他の女性たちとの関わりが描かれている。
過去に戦場で育った経験や、養父への思いが彼女の人格形成に大きな影響を与えている。
メーリムはジブリールやジニとの交流を通じて、自分の感情と向き合い、またアラタへの感謝や愛情を再確認する。
特に、彼女がアラタに謝罪し和解する場面が心に残り、過去のトラウマと現在の生活の間で成長していく姿が印象的である。

アラタの章

アラタの章では、彼がミャンマーで子供たちの生活を守りながら、新たな戦争の兆しに直面する様子が描かれている。
ロシアがウクライナに侵攻し、戦争の火種が再び広がる中で、アラタは自らの使命に対する迷いと決断を迫られる。
彼の章では、ホリーやジブリールとの関係が進展し、特にホリーがアラタの妻のような存在として描かれている。
アラタは、子供たちのために尽力しながらも、今後の戦いに備えた準備を進めており、彼のリーダーとしての成長が強調されている。

全体を通して、各章が同時進行で進み、それぞれの物語が繋がり合いながら、戦後の平和と新たな戦争の狭間で生きるキャラクターたちの葛藤が丁寧に描かれている。
戦争の影響を受けつつも、日常の中で成長していく子供たちの姿に、読者は強く共感することだろう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

感想 『マージナル・オペレーション [F3]』は、戦後のミャンマーでの子供たちの生活や、新たな戦争の予兆を描いた短編集である。それぞれ異なる視点から物語が進み、アラタを中心に展開される4つの章が、彼らの葛藤や成長を生き生きと描いている。 シュワの章 シュワはタイで少年兵たちを教育する元僧侶として、過去のテロリスト時代やアラタとの出会いを振り返りながらも、現在は子供たちのために平穏な日々を送っている。彼の章では、戦争と平和の間で揺れる複雑な感情が描かれており、特にバンコクでの平和な風景が、彼の過去との対比として際立っている。シュワは、子供たちの教育に力を注ぐ一方で、アラタとの再会や新しい事業への挑戦など、未来に向けた決意を見せる。平和を望みつつも、戦争の影がまだ消えていないことに対する葛藤が印象的である。 シンの章 シンは、アラタの影響を強く受けた少年で、父リョータのように善良でありたいと願っている。彼の章では、父親とのやり取りを通じて、街の治安維持や避難民の支援に取り組む姿が描かれている。シンは、自分の役割と責任を果たそうとしつつも、父との間に生じる葛藤や、自分自身の将来に対する迷いを抱えている。特に、父から学んだことを元に街を守るために奮闘する姿が感動的であり、彼の成長と自立が物語の中心となっている。 メーリムの章 メーリムは、アラタの初期の24人の一人であり、彼女の章では、アラタや他の女性たちとの関わりが描かれている。過去に戦場で育った経験や、養父への思いが彼女の人格形成に大きな影響を与えている。メーリムはジブリールやジニとの交流を通じて、自分の感情と向き合い、またアラタへの感謝や愛情を再確認する。特に、彼女がアラタに謝罪し和解する場面が心に残り、過去のトラウマと現在の生活の間で成長していく姿が印象的である。 アラタの章 アラタの章では、彼がミャンマーで子供たちの生活を守りながら、新たな戦争の兆しに直面する様子が描かれている。ロシアがウクライナに侵攻し、戦争の火種が再び広がる中で、アラタは自らの使命に対する迷いと決断を迫られる。彼の章では、ホリーやジブリールとの関係が進展し、特にホリーがアラタの妻のような存在として描かれている。アラタは、子供たちのために尽力しながらも、今後の戦いに備えた準備を進めており、彼のリーダーとしての成長が強調されている。 全体を通して、各章が同時進行で進み、それぞれの物語が繋がり合いながら、戦後の平和と新たな戦争の狭間で生きるキャラクターたちの葛藤が丁寧に描かれている。戦争の影響を受けつつも、日常の中で成長していく子供たちの姿に、読者は強く共感することだろう。 最後までお読み頂きありがとうございます。gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 小説「マージナル・オペレーション [F3]」感想・ネタバレBookliveで購入gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 小説「マージナル・オペレーション [F3]」感想・ネタバレBOOK☆WALKERで購入gifbanner?sid=3589474&pid=890540720 小説「マージナル・オペレーション [F3]」感想・ネタバレ

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

シュワの章

イントロダクション  バンコクの飯

バンコクののどかさは、過去の戦争やクーデターを忘れさせるほどであった。シュワはかつて妻子を失い、仏教に救いを求めた後、テロリストとなったが、アラタとの出会いをきっかけにタイへ渡った。現在は子供兵の訓練所で所長を務め、穏やかな日々を過ごしていたが、過去を振り返ることが少なくなかった。

ある日、元部下であるカジタから飲みに誘われたシュワは、喜んで合流した。カジタと一緒に屋台で食事を楽しむ中、彼らの会話はのんびりとした雰囲気の裏で、戦争の記憶や未来の不安に戻っていった。バンコクの平和を感じつつも、シュワはその平和が本物なのか、戦争の影が完全に消えたわけではないと感じ、複雑な心境を抱いていた。

中国内戦

シュワはバンコクでのんびりとした日常を送っていたが、過去の戦争やアラタとの関わりが彼の心に残っていた。アラタは普通の日本人に見えたが、軍事の才能を持ち、野心もなく、ただ子供たちを食べさせ教育を与えることだけを望んでいた。しかし、彼の才能により世界中で戦争を引き起こし、ミャンマーや中国を巻き込んだ内戦が続いていた。シュワはアラタを子供たちのために戦い続ける男と捉えつつも、その連鎖が終わらないことに危機感を抱いていた。

シュワは事務所で警備計画を見直していたところ、カジタが訪れた。彼は楽器ケースに入れたMP5サブマシンガンを持ち、シュワと共に警備の準備を進めた。シュワはカジタに狙撃地点のパトロールを任せ、日常の業務に戻る。そんな中、少女ガクジュが赤ん坊を拾ってきたことを報告し、シュワは子供たちが増える現実に対応していた。

その後、アラタが子供たちにお菓子を配るために現れ、シュワは彼の行動に驚きつつも手伝った。アラタは子供たちに対する愛情を見せる一方で、子供たちに銃を持たせることへの苦悩も明かした。シュワはアラタが子供たちを平和な道へ導こうとしている姿勢に感心し、彼の計画に協力することを決意した。

その後、イブンとジブリールが勉強を嫌がってシュワに抗議しに来たが、シュワは彼らに勉強の重要性を説き、アラタもその問題に頭を悩ませていた。シュワは、アラタが子供たちに甘すぎると指摘しつつも、彼自身も勉強を避けた経験があることを認め、子供たちに対して厳しくなるようアドバイスした。

この物語は、戦争の影響で子供たちを保護する施設を運営するシュワが、アラタとの関わりを通じて平和を模索しつつ、日々の問題に対処していく姿を描いていた。

新事業

シュワは翌朝、机に厚さ約4cmの手書きの提案書を見つけた。メラニーが集めた新事業のアイデアであり、プリンターのトナー不足により手書きで作成されたものだった。シュワはこれをアラタに渡し、アラタは興味深くその内容を調べ始めた。

アラタは提案書を見ながら「鉄」が共通の要素であることに気付き、鉄の需要を高めれば利益を生むのではないかと考えた。鉄の価格は安定していたが、需要が低迷しているため、鉄を使う事業を保護することで地域の安定を図り、生産活動を回復させることが可能だと主張した。

シュワはアラタの提案に一定の理解を示しつつも、バングラデシュとの交渉が必要であることを指摘した。バングラデシュには船の墓場があり、そこから鉄を調達できる可能性があったが、アラタはまだ具体的な交渉を行っていなかった。シュワはアラタに慎重に行動するよう助言し、バングラデシュとの関係を崩さないように注意を促した。

また、シュワはアラタに日本政府と協議することを提案し、特にイトウに相談するよう勧めた。アラタは面倒に感じつつも、シュワの助言を受け入れることにした。

帰った後の話

アラタはミャンマーに戻るため、翌晩車を運転して帰った。道中、ジブリールが車内で文句を言い続けていたかもしれないが、彼は疲れても頑張っていた。イブンは残り、涙目で勉強に励んでいた。歴史を嫌い、人類の過去を否定するような言葉も漏らしていたが、彼も元気そうだった。

シュワはカジタと一緒に飲みに出かけ、アラタの護衛を無事に終えたことを振り返った。賊や狙撃手もなく、アラタに尾行がついている様子もなかった。二人で薄いビールを飲みながら、ソフィとアラタの関係について話した。カジタはソフィア嬢がアラタと幸せになってほしいと思っていたが、シュワは恋愛の難しさを感じていた。

その時、通りでどよめきが起こり、二人は何が起きたのかを探った。カジタがスマホで調べると、ロシアがウクライナに侵攻し、欧州で戦争が勃発したことが判明した。シュワは戦争の連鎖を痛感し、月を見上げて思った。「世界は混沌だぞ、アラタ。お前はどう生きる?」

第2話 シンの章

密林からきた警察、自称だけどね

シンは、善良で少し変わった父リョータを尊敬していた。リョータの影響で、シンは「善良でありたい」と願い、治安維持活動に従事していた。父からジムニーと部下を与えられ、日々パトロールをしていた。

シンは父のように善良であることを誇りに感じていたが、街での銃撃戦や新集落の生活環境に心を痛めていた。特に、新参者と早期に逃げてきた人々の間で生活水準に差が出ていることに気付き、改善しようと父に提言し、パトロールを強化していた。

シンはパトロール中、フィリピン出身のトニーと共に屋台村を巡りながら、互いの文化や考え方の違いについて語り合った。賄賂に対する考え方や、ジブリール姫への苦手意識など、軽い会話を交わしつつ、シンは自分の役割と父の影響を感じながら活動を続けていた。

シンにとって父リョータの存在は大きく、その指導の下で平和と秩序を保つために努力し続けていた。

基地とヤマネコ

シンは、キャンプに戻り、イヌワシと呼ばれる父リョータにパトロールの報告を行った。彼は街の銃撃戦の様子を伝え、街の治安を守るべきだと進言した。リョータは子供たちが巻き込まれるのを懸念しながらも、シンの提案に心を動かされ、街の治安維持作戦を進めることを決めた。

その後、シンは仲間たちと共に避難民を助ける準備をし、父が操る「小さな丸い友」たちが街へ進入して治安を維持する様子を見守った。父は子供たちを守るため、非情なまでに迅速かつ効果的な行動を取り、街を平和に取り戻すために尽力した。

シンは自分の進言が引き金となり、仲間たちを危険に晒してしまったことに罪悪感を覚えながらも、父の判断を信じ、彼自身もできる限りの手助けをしようと行動を続けた。

交通安全の仕事

シンは、街から逃げてくる人々と合流した。彼らは疲れた様子ではあったが、比較的元気そうであった。シンは、父であるリョータから交通整理の指示を受け、混乱する街の状況を整理しようとした。住民は戦争が始まると誤解し、街全体が避難を始めていた。

その後、ジニや姫様(ジブリール)などの援軍が到着し、シンは交通整理を続けた。道中、銃声が聞こえたが、原因は事故で、銃が暴発しただけであった。夕方には街の人々も少しずつ家に戻り始め、夜の間は小さな丸い友に任せてシンたちは帰還した。

シンは、避難していた人々が街に戻るという知らせを受け、父にその是非を尋ねた。父は「良いことにしなければならない」と答え、シンに学びの機会を与えた。街には半数の約5000人が戻っており、その背景には街への愛着や治安の回復が関係していた。シンは交通整理を手伝いながら、街の再建が進む中で、住民の中にはトラブルや無法地帯の影響で戻りたがらない人もいることを理解した。

また、シンは姫様と父との会話から、税金を取らないことが人口移動に影響していることを学び、政治や経済の複雑さを考え始めた。父はこの問題に対応するため、ホリーやその仲間たちと調整を進めるつもりであったが、人手が不足していることも話題に上った。

シンは、水浴びをしながら世の中の複雑さに思いを巡らせ、最近の生活では戦闘よりも交通整理のような仕事が増えていることに気づいた。彼は自らの将来について考え、役人として新たな道を歩むことを決意した。しかし、父がこの国に長くとどまるかどうかについて疑問が生じ、次に父にそのことを確認しようと考えた。

シンは、街に戻る人々の先導を任され、信頼できる古参メンバーと共に仕事を行うことになった。仲間のグエンと会話を交わしながら、彼が信頼されていることに納得しつつ、賄賂などを取らない潔癖な人間が選ばれていることに気づいた。一方で、金のシンシアは厳格すぎる態度で住民に接し、姫様とジニに制止される場面があった。

シンは、自分の行動に遅れがあることに気づき、もっと積極的に動くべきだと感じたが、考え過ぎが原因であることに悩んでいた。帰還後、シンは父に相談しようと考えをまとめていると、シンシアが謝罪に来た。シンシアは自分の行動について悩んでいたが、シンは宗教的な考え方や、父に助言を求めるべきだと提案した。

シンはシンシアの不安や悩みを受け止めつつ、父に相談することの重要性を伝えたが、シンシアはそれに躊躇していた。シンはお互いを理解し合うために対話が必要だと感じ、シンシアとの会話を続けた。

質問の答え

シンは数日間、忙しい父との会話の機会を待っていたが、ようやく父がタイから帰ってきたため、質問をすることができた。シンはまず、住民を帰還させた際の人選について尋ね、父は大声での恫喝に負けないことと、大人の言うことを鵜呑みにしない性格を重視したと説明した。次に、シンは自分が役人になるべきかどうか迷っていると話し、父は驚きつつも、シンの将来に期待を示しつつ、もっと勉強してから進路を決めるべきだと助言した。

父はシンを褒め、シンの態度を称賛しながらも、急いで役人になる決断を下す必要はないと諭した。シンは父の言葉に納得し、自分がもっと大きな可能性を秘めているかもしれないという父の期待を感じ取った。

シンは父との話を終え、外に出たところでシンシアと姫様に出会った。二人は短い睨み合いをした後、姫様が先にシンと話すことになった。姫様は、シンが父と進路について話していたことを知り、自分やイブンが進路の相談で反対されたことを思い出しながら、シンも同様に反対されたのではないかと尋ねた。しかし、シンは父が反対することはなく、皆に良い可能性を見いだしているだけだと説明した。

その後、シンはシンシアと話すことになり、彼女が友達を求めていると感じたシンは、彼女の手を取って友達を作る手助けをすると提案した。シンシアは戸惑いながらも、シンの言葉を受け入れ、共に歩き出した。シンは、人生において勉強や努力を怠らず、成長し続けることが大切だと考えていた。

メーリムの章

メーリムの記憶

メーリムは、自分が現在の環境に慣れ、故郷のことをほとんど覚えていなかった。彼女は11歳で、これまで数々の危険に直面しながらも生き延びてきたが、特に強く訴えることはなく、ただ人生を受け入れていた。大人たちに対しては少し冷めた見方をしており、自分の扱いが小さなメーリムのままであることに不満を感じつつも、それを甘んじて受け入れていた。

メーリムはタジキスタンの寒い谷で生まれたが、故郷に特別な愛着はなく、アメリカ軍の下で兵士として働かされていた幼少期を振り返っていた。彼女はそこで出会った養父の存在を非常に大切に思っていた。養父は善良な人物であり、自分たちの面倒を見続けてくれたが、裕福ではなかったため、メーリムたちは戦場で働かざるを得なかった。彼女は養父を母のように感じており、その優しさを心から尊敬していた。

ある日、養父が市場に連れて行ってくれることになり、メーリムはそれを楽しみにしつつも、ジブリールの期待に応じた振る舞いに少し苛立ちを感じていた。彼女は養父に対して深い信頼を抱いており、どんなことでも彼に尋ねられると思っていた。

市場と果物

メーリムは、ミャンマーの暑さと湿度に慣れつつも、市場に行く話を聞いたことで、母親や故郷の谷を思い出し、心が乱れていた。朝食をとりながら周囲が市場に向けて浮かれている様子を見ても、自分は特に楽しみにはしていなかった。しかし、ジブリールとの会話で市場のことを考え始め、シンの運転する車で市場に向かった。

市場に着くと、露店が並び、アラタが皆に買い物を楽しむように促したが、ジブリールが他の子供たちを黙らせる場面もあった。メーリムはジニと一緒に露店を見て回り、猿が売られている店に驚きながらも、ジニの助けで買い物を楽しむことができた。途中、グエンがタバコを買いだめしようとしている場面に遭遇し、彼を止めた。

メーリムは、美しいカーペットや布に惹かれながらも、過去の記憶や母親への思いが蘇り、悲しみに囚われてしまった。その後、ホリーが現れ、メーリムを優しく抱きしめ、泣く彼女を慰めてくれた。ホリーはアラタの心配にも対応し、メーリムを落ち着かせた。

ホリーという人

メーリムは、ホリーと買い物を終えた後、彼女との会話を通じて感情を整理していた。ホリーは、メーリムが泣いていたことに対して優しく対応し、昔自分も子供だったことを話して、メーリムを落ち着かせようとした。メーリムはホリーとのやり取りを通じて心が少し楽になったが、未だに泣いてしまったことを引きずっていた。

数日後、ジニがメーリムに、アラタが彼女の泣いたことを気にしていたと話した。メーリムは、それが恥ずかしいと感じて不安になったが、ジニからアラタは彼女をからかうことはないと言われ、少し安心した。しかし、恥ずかしさから感情が高ぶり、ジニに対して「大っ嫌い」と言ってしまい、後悔しながらその場を逃げ出した。

メーリムは、自分がジニに酷いことを言ってしまったことに悩んでいた。そんな時、ホリーが現れ、彼女もアラタとささいなことで喧嘩をしていたと話した。メーリムはアラタに謝りに行く決意をし、ホリーも一緒に向かった。

アラタと会うと、メーリムは自分の心配をしてくれていた彼に謝罪し、和解した。ホリーもアラタに怒りつつもメーリムに対しては優しく接し、彼女を抱きしめた。アラタは、メーリムが戦場に出ることを避けようとしており、ホリーもそれに同意していた。

その後、アラタとホリーはメーリムが頭が良いと感じ、彼女を良い学校に通わせることを提案したが、メーリムはそれを望んでいなかった。彼女はただ、みんなと一緒にいたいだけだと伝えた。アラタはそれを受け入れ、彼女に無理強いはしないと約束し、必要であれば少し難しい勉強をしてみることを提案した。

ジニに謝る

メーリムはジニに謝るために躊躇しながらも宿舎に戻ったが、その夜ジニが帰ってこなかった。メーリムは不安を抱えながらジブリールと共にジニを心配していた。ジブリールからの連絡で、ジニがアラタとホリーの元にいることが分かり、翌朝メーリムはジブリールと共にアラタの元へ向かった。

アラタの家に着いたメーリムは、ジニを見つけるとすぐに謝罪し、ジニも抱きついて涙を流した。お互いに心の内を明かし、二人は和解した。ジブリールはアラタに抱きついて騒ぎを起こしたが、ホリーがその場をまとめた。

メーリムはジニと仲直りし、ジニがアラタに対して傷ついていたことを知り、自分の行動を反省していた。朝食時にはホリーやジブリールも一緒で、アラタが少し居心地悪そうに見えた。ジニが泣いている時にジブリールの小さな友が来たことが話題に上り、メーリムはアラタが小さな友を使って二人を気にかけていたのだと気づいた。

宿舎に戻る途中、ジニはアラタを夫にしたいという思いを打ち明け、メーリムは驚いたが、ジニがアラタに娘のように扱われることに胸の痛みを感じていることを理解した。ジブリールも同じようにアラタに娘ではなく女性として認めてもらいたいと無茶をしていることが推測され、メーリムは今後アラタに対して言い聞かせようと決心した。

また、ホリーがアラタの妻であり、新しい妻を迎えるにはホリーの許可が必要だと考えた。メーリムは、ホリーとジニが母になり、自分が娘になるという未来を楽しそうに想像し、ジニに「きっとなれるよ」と励ました。

アラタの章

他人事から始まる日

アラタはミャンマーで平和な日々を過ごしていた。仕事は順調で、生活にも困らず、子供たちの成長を見守りながら幸せを感じていた。そんな中、突然の緊急警報で目を覚まし、戦術ネットワークを確認するも異常はなかった。しかし、日本の自衛隊が警戒レベルを引き上げたことを知り、何かが起きたことを察した。イトウからの連絡で、ロシアがウクライナを攻撃したとの情報がもたらされ、アラタは驚きつつも、遠い話のように感じたが、日本がロシアの隣国であることを思い出した。

イトウと戦争について話し合いながら、アラタは戦争の理不尽さについて考え、戦争が再び拡大する可能性を懸念した。しかし、具体的に何ができるわけでもなく、眠りにつこうと努力した。戦争の悲惨さを知りつつも、また戦争が起きてしまう現実に複雑な思いを抱えながら、翌日に備えて考えを止めようとした。

各勢力の活性化

アラタは翌日、警戒心を持って戦いの準備を整えた。自衛隊が警戒を強めていたため、自身も同様に準備を進めるのが自然だと考えた。ヨーロッパでの戦争が再度広がる可能性は低いと感じていたが、万一に備えて対策を取ることが重要であると判断した。特に、不測の事態に対応するため、子供たちの訓練を増やすことを決めた。まめたんの補充は見込めず、既存の装備もいつまで使えるかわからないため、修理部品を手に入れることを希望していた。

その後、アラタはホリーと戦争についての会話を交わした。ホリーは多国籍軍がミャンマーの問題に対して消極的であることに達観しており、軍の権力掌握が問題だと指摘した。アラタも同意しつつ、ミャンマー軍の解体が進んでいない現状に憂慮していた。多国籍軍が中国を解体に追い込んだことで満足し、ミャンマーを放置している状況に対して、ホリーはアラタがミャンマーを征服することを冗談交じりに提案した。

やがて、ミャンマー軍が動き出し、多国籍軍を追い出して首都を奪還した。アラタは、この動きが予想よりも早いと感じたが、同時にモン族やシャン族が独立を宣言し、ミャンマーは分裂状態に陥った。アラタは自分の影響力が及ぶシャン州での状況に複雑な気持ちを抱きつつ、今後の展開に備える必要を感じた。

この時点で、アラタは日本人としてシャン州の代表者との接触を予測し、日本政府に忠誠を誓う立場であることを強調しながらも、状況がますます複雑化することを懸念していた。

残党どもとのと戦い

アラタは、予想通り三日後に自称シャン国の特使が代表者に会いに来たという知らせを受けたが、その状況にあまり興味がなかったため、他の人に任せようとした。最初にイトウ氏に任せようとしたが、日本との対話を隠しカードとして温存する方が良いと指摘されたため、次にホリーに頼んだ。ホリーは面倒に感じつつも、デートを条件に引き受けた。

その後、アラタはパトロールに出ていたシンシアから発砲を受けたとの報告を受けた。さらに複数の場所で銃撃が発生しており、敵の嫌がらせであると推測した。反撃部隊を編成して対処にあたったが、敵はすぐに撤退していた。アラタはこの状況に苛立ちを感じつつも、攻撃の意図が嫌がらせであることを理解した。

ホリーが戻り、特使からの要請は「退去してほしい」とのことであったが、アラタはその要求に納得がいかず、詳細をイトウ氏と共有した。アラタは、自身が死んだことにしていたため、敵が自分たちを軽視しているのではないかと悟ったが、実際には子供たちやまめたんが依然として戦力であることに変わりはなかった。

アラタは、敵が武力を持ってまともに戦う自信がないと判断し、シンが提案していた街の治安維持を兼ねた占領を決断した。彼は、街を占領しつつ、敵の出方を見守り、必要な時には武力を誇示する方針を固めた。そしてまめたんを使って街を順次制圧し、敵の嫌がらせを防ぐために治安維持に取り組んだ。

最終的に、アラタは占領した街の管理をホリーに任せ、シャン族の自称政府との交渉を進める準備を整えたが、彼自身が積極的に政治的な決断を下すのは難しいと感じていた。

戦いの始末

数日が経過し、アラタは街の占領が想像以上に大きな効果をもたらしたことを実感した。嫌がらせは完全に止まり、敵は沈黙していた。アラタは今後の展開を見据え、ヨーロッパの戦争がこの地に飛び火する可能性を真剣に考え始めた。特に日本政府がこの地を見捨てるリスクがあることを憂慮していた。

アラタは、この地域の政治的な安定を確保する必要性を感じていたが、政治に関心がなく、誰にその役割を委任するか悩んでいた。ジニの助言を受け、結局ホリーに政治的な役割を押し付けることにしたが、ホリーへの感謝を示すために買い物に連れていこうと考えた。しかし、この計画がジニや他の子供たちにも知られ、最終的には数千人の子供たちを連れて行くという大規模なものになりそうだった。

ホリーの助言で、アラタは商人たちを呼び寄せて、子供たちが買い物できる場を設けることにした。これにより、地元経済との結びつきを強め、地域の安定を図る計画であった。ホリーの政治的な手腕と協力しながら、地域の商人たちと関係を築くことで、敵対勢力の動きを抑制しようとした。

さらに、アラタは武器商人のケイマン氏からの訪問を受け、ロシアの工作員がこの地に介入しているという情報を得た。彼は、ロシアがウクライナへの侵攻に集中している中で、この地域を混乱させるために小規模な襲撃を行っていることを知った。ケイマン氏は、アラタに敵の情報を提供し、さらにシベリアからの提案で関係修復を図ろうとする動きも明かした。アラタはその情報を受け取ったが、今後の対応に慎重な姿勢を示した。

世界情勢が不安定な中、アラタは自分と子供たちの安全を確保するために多くの手札を持つ必要があることを理解し、引き続き地域の安定を図るために行動することを決意した。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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