小説「マージナル・オペレーション 空白の一年[下] 」感想・ネタバレ

小説「マージナル・オペレーション 空白の一年[下] 」感想・ネタバレ

どんな本?

『マージナル・オペレーション 空白の一年』は、現代の紛争地域を舞台にしたサバイバルストーリーである。本作は、シリーズの外伝として、アラタという指揮官と彼が率いる子供たちが、日本に向かうまでの1年間の出来事を描いている。

物語は、アフガニスタンやイラクといった紛争地域を背景に進行し、アラタたちは過酷な状況下で生き抜くために奮闘する。彼らはシベリア共和国やタリバンといった敵対勢力の襲撃を避けながら、砂漠や山岳地帯を進み、時には敵と戦いながらも、少しずつ目的地に近づいていく。

この作品の魅力は、リアルな戦争描写と、キャラクターたちの人間ドラマにある。特に、指揮官であるアラタが子供たちを守りながら、戦いの中で自分たちの道を切り開いていく姿が描かれている。また、ジブリールという少女兵の視点から物語が進むことで、彼女の成長や葛藤が強く感じられ、読者は彼女の視点を通して戦争の残酷さや厳しさを実感できる。

『マージナル・オペレーション 空白の一年』は、単なる戦争物語ではなく、人間の絆や生きるための決断をテーマにしており、戦争のリアルな側面と人間ドラマが交錯する作品である。戦争やサバイバルの物語が好きな方にとっては、非常に興味深い一冊となるだろう。

読んだ本のタイトル

マージナル・オペレーション 空白の一年[下]
著者:芝村 裕吏 氏
イラスト:しずま よしのり 氏

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あらすじ・内容

シリーズ開始より10余年。芝村裕吏×しずまよしのり『マージナル・オペレーション 空白の一年[下」』が遂に電子書籍として登場!

私がいて、あの人がいる。

赤い日本(ルビ:シベリア・ラーダ)による襲撃をかわしつつ、イラン――かつてのペルシャを目指すアラタたち。
国境を越え、アフガニスタンに入った一行が見たのは、無人機が遊弋(ルビ:ゆうよく)する荒廃した戦場だった――。
補給もままならぬ過酷な旅路に、子供たちは次々と病に倒れ、どこに行ってもシベリアによる監視の目が光る。果たして、砂漠の果てに安息の地はあるのか。そして、シベリアはなぜアラタに固執するのか……。
芝村裕吏×しずまよしのりのタッグが贈る大ヒットシリーズ、“新田の血”が時空を繋ぐ番外編、ここに完結――!

マージナル・オペレーション 空白の一年[下]

感想

ジブリールの愛が重いw
アラタ!!逃げろぉぉぉ!!!www
あ、回り込まれたw

『マージナル・オペレーション 空白の一年[下]』は、ジブリールの視点から描かており。
時期は、アラタと子供たちが母国を脱出し、日本に向かうまでの1年間を描いた物語であった。

この外伝では、ジブリールの内面が丁寧に描かれており、彼女がアラタへの強い愛情と憧れを抱きつつ、旅の中で成長していく姿が印象的であった。

物語はアフガニスタンやイラクを舞台に、現実の地域や状況がリアルに描かれており、戦争の残酷さやその中で生き抜くための厳しい選択が強調されていた。
タリバンやシベリア共和国との対立を通じて、アラタたちは次々と困難に直面し、その中での彼らの成長や絆が描かれていた。
特に、ジブリールのアラタに対する想いが物語の軸となっており、彼女がアラタに認められたい一心で奮闘する姿には胸を打たれるものがある。

一方で、シベリア共和国の謎めいた存在や、その意図がはっきりしない点については、シリーズの他の作品『遙か凍土のカナン』を読んでいないと分かりにくい部分らしい。
電子書籍化してないから読む機会は無いかもしれないが、漫画化されてるので其方を手を出すつもりである。

関連作品を読むことで、さらに物語の背景やキャラクターの動機を理解できると思われるが、この作品単体では少し消化不良な感も否めない。

それでも、キャラクターたちの個性が際立っており、ジブリールやハキム、ハサンといったキャラクターたちが持つそれぞれのバックグラウンドや物語の中での成長が、物語をより深みのあるものにしていた。
彼らの行動や選択は共感できるものであり、その人間味が物語全体にリアリティを与えている。

『マージナル・オペレーション 空白の一年[下]』は、過酷な状況下での人間の成長と絆を描いた感動的な作品であり、コレを読んでから本編3巻を読んだら面白かったかもしれない。
この後、アラタたちの旅がどのように続くのか、シベリア共和国の狙いがどのように明かされるのかは、”本編”の続きと”改”で今後の展開にするのか再確認したい。
本書は、シリーズのファンのみならず、戦争や人間ドラマに興味がある読者にとっても楽しめる内容となっている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

プロローグ

宝石掘りの一件で街との関係が悪化したため、あの人たちは急いでその場所を離れることになった。あの人は「逃げることは空間という資源を利用する一つの方法である」と述べ、逃げることに対して否定的な見方をしていなかった。

準備を整え、彼らはアフガニスタンとタジキスタンの国境付近から南西へ移動を始めた。あの人は常に子供たちの食事や生活を考えており、力を求めていたが、それは「妻と髭」が必要だと考える者もいた。あの人は、道中で安全を確保するために、空中を飛ぶ無人偵察機に対して子供たちに「アメリカの保護に入りたい」と書かれた横断幕を掲げさせ、攻撃を避けるための手段を講じた。

結果として、無人偵察機はしばらく頭上を旋回した後、飛び去った。彼らはとりあえず、紙に書かれたメッセージを使って危機を回避することができた。

一章 熱

数日間、アメリカの無人偵察機が飛来することもなく、順調に進んでいた。アフガニスタンの治安状況から考えれば、これは意外なほどの平穏であった。1日の行軍距離は約200kmで、旅の半ばまでたどり着いた。

夜は道端で休むことにし、灯火を禁止して耳の良いメーリムとジニ、深夜からはハサンとイブンが見張りをしていた。車内は多くの人で暖かく、食事はアメリカ軍のレーションであった。レーションの味は不評だったが、ジニやメーリムはジュースを好んでいた。

オマルは燃料に余裕があることを指摘し、次の中継点で補給せずに進むことを提案した。水も十分にあり、あの人は燃料や水の状態を確認してから、次の街に寄らずに進むことを決断した。

シベリア製の車は頑丈で故障はなかったが、乗り心地が悪く、長時間の移動には不向きであった。そのため、早くこの車での移動を終わらせ、確実に休める場所を目指すことにした。全員がその方針に賛同し、計画を進めることとなった。

翌朝、衛生のため少し移動し、朝食をとることにした。夜間に子供たちが用を足した場所が近くにあり、臭いがすることがあったためである。朝食後、移動を開始したが、砂まみれの環境でジニが風呂に入りたいと歌い出し、あの人も一緒に歌っていた。

しかし、旅の途中でメーリムが熱を出した。彼女は小柄で体が弱く、あの人はとても心配していた。彼は自分の判断を後悔し、もっと医療用品を持ってくるべきだったと悔やんでいた。皆はあの人の異常なまでの心配に戸惑いながらも、メーリムの回復を祈っていた。

さらに悪いことに、イブンも体調を崩し熱を出した。二人の病気が伝染病である可能性も考えられたが、症状は熱だけであった。あの人はアメリカ軍の助けを求め、解熱剤と抗生物質を手に入れた。メーリムとイブンは薬のおかげで回復し、他の子供たちも無事であった。

その後も水や燃料が不足する中、荒れた道を進み続けた。途中で焼けたトラックの列を見つけたが、あの人は急いでその場を離れるよう指示した。道中でアメリカの無人偵察機が上空を飛び、彼らの動きを見張っているようだった。物資が少なくなってきたため、あの人は次の目的地で補給を計画していた。

二章 アンドフポイ

一行はいつの間にか荒野からカラクム砂漠に入っていた。道中、蜃気楼ではない緑が見えたとき、一行は喜びに沸いた。水や燃料の補給がギリギリだったため、町に到着すると燃料や水、食料を購入するために兵士に話しかけることにした。兵士たちはアメリカ軍ではなく、彼らはフランス軍であることが判明した。

一行は老人に案内され、老人たちの集まりに参加した。そこでは水煙草を吸う老人たちと会話をし、情報を得た。あの人は老人たちとの商談に成功し、必要な物資を手に入れた。また、老人の家に泊まることになったが、ジブリールはあの人の護衛として同行した。

老人たちはこの地の状況やイランの現状について話し、あの人はそれに興味を示した。あの人は子供たちの健康状態を心配し、連れてくるべきではなかったかもしれないと反省していたが、老人は彼の判断を支持した。

翌日、一行は車の掃除と消毒を行いながら、欧州の兵士たちに見守られていた。モスクの駐車場での活動を通じて、一行は現地での生活に適応しつつあった。

三章 無人の戦場

夜、あの人とオマルはルートの選定を行った。護衛として私も同行した。ハサンはイブンとともに小さい子供たちの世話をしていた。

あの人が得た情報によれば、これから南下する幹線道路には、アメリカの無人車両が警備をしており、怪しい車両には警告し、進もうとすると攻撃してくるという。この状況下で、私たちは幹線道路を避けることができなかった。

私は無人車両の存在について不気味だと感じ、誤認攻撃の可能性を指摘したが、あの人は「機械は誤認のリスクが少ない」として、無人車両の使用を支持する姿勢を見せた。彼は、人間が行うよりも誤認のリスクが低いこと、機械が人間のように感情で判断しないことを挙げ、機械の利点を強調していた。

オマルは地図を手にして、あの人に話しかけた。彼は避けられる戦闘は避けたいと述べ、武器を捨てる覚悟を決めていた。彼の提案は、街で支援活動を行っているNGOを通じて駐留している外国軍に便乗し、安全なルートでイランへ向かうというものであった。

オマルは武器を手放すことに不満を抱いていたが、あの人は「必要なら武器を捨てるべきだ」として、武器を破棄する決断を下した。この選択により、国際部隊に便乗することが可能となり、無人車両との戦闘を避けることができた。

この一連の行動を見て、私はあの人の判断力と柔軟さに感銘を受けた。彼の冷静な対応と非凡な判断力は、私たちを安全に導く大きな力となった。

翌日、あの人はノルウェー軍の駐屯地に挨拶に向かった。護衛として私も同行したが、武器はナイフ2本のみであったため、不安を感じていた。ノルウェー軍の基地は砂漠の上に建てられており、仮設ながらもしっかりした建物で構成されていた。案内と通訳を兼ねた兵士が一人ついてきて、簡単な部隊の紹介を受けた。

ノルウェー軍は180人の歩兵部隊で、あまり武装していないと説明された。指揮官のオーレ・ドンス中尉は、アフガニスタンでの任務に誇りを持っているようで、あの人に握手をしながら自己紹介をした。その場にはジャーナリストもいて、ノルウェー軍の活動を報告するために同行していた。

あの人と中尉の会話中、写真撮影が行われ、あの人は笑顔で対応した。彼はこの撮影が宣伝になることを理解し、快く応じていたようだった。その後、会見が終わり、あの人と私が基地を後にした際、あの人はジニの方がこうした場面に向いているかもしれないと考えを述べたが、ジニが余計なことを口走る可能性を懸念していた。

二日後、私たちは移動を開始した。久しぶりの移動に皆は体重が増えており、あの人もそのことに苦笑していた。先頭には装甲車「パトリア」が配置され、私たちは車列の真ん中に入って進んでいた。道中、トラックの揺れが激しく、私たちはクッション代わりに袋を使いながら耐えていた。

途中で車列が攻撃を受け、路肩爆弾の影響で装甲車が破壊された。あの人は冷静に指示を出し、私たちは車から降りて伏せるように指示された。その後、無人偵察機が飛来し、爆弾を投下して襲撃者を撃退した。私たちは恐怖を感じながらも無事であった。

その後、あの人は今回の戦闘について私たちに説明した。彼はノルウェー軍の防御態勢におごりがあったと指摘し、もっと警戒すべきであったと述べた。また、敵の攻撃についても、嫌がらせを意図している可能性が高いと考えていた。敵の目的は、相手に追加のコストと手間をかけさせることだと説明し、これにより相手が撤退する可能性を高めるという戦略であることを教えてくれた。

あの人の冷静な分析と戦術的な洞察力は、私たちを安全に導くために大いに役立っているようであった。

その後、旅は順調に進み、途中で攻撃されることもなかった。いくつかのオアシスを抜け、山岳地帯に入ると、谷には多くの緑が広がっており、段々畑が故郷を思い起こさせる風景が広がっていた。道は整備されており、車は快適に進んでいた。夜間も移動を続けたが、途中で休むことはできなかった。

道中、地域の住民の顔立ちが自分たちに似ていることから、この辺りがタジク人の居住地であることをあの人に説明した。ヘラート周辺には国際部隊やアフガニスタン軍が展開しており、この地域の治安は安定しているようであった。ヘラートの国際空港に到着すると、ノルウェー軍の護衛はここで終了し、トルコ軍が護衛を引き継ぐことになった。

トルコ軍の駐留場所は空港近くにあり、その規模は4000人を超えていた。しかし、驚いたことに、それは軍隊ではなく国家憲兵であり、アフガニスタンの治安強化を図るために派遣されている警察官たちであった。トルコ軍の案内役であるアルティナは、40歳ほどの女性警官で、アフガニスタンの警察官を訓練する役割を担っていた。

アルティナはトルコと日本が協力して警官の訓練を行っていることを説明し、あの人に親しげに話しかけた。彼女はイランへの護衛について自信を持っており、イラン国境までは安全に連れて行くと約束したが、入国審査には協力できないとも伝えた。あの人はアルティナの言葉に感謝しつつも、アフガニスタンの治安がまだ不安定であることを理由に、難民申請を希望する意向を示した。

アルティナはあの人と同乗してイランを目指すことになったが、この同乗により、警官の前ではハサンやイブンを運転に使えず、あの人とオマルがずっと運転を続けることとなった。

四章 軍と警察

トルコの国家憲兵が出発するのは翌日であり、もともと2日の余裕があったものの、襲撃の影響で予定が遅れ、観光の時間はなくなった。観光の計画を聞いていなかった私たちにとっては、特に失望することもなく、体がなまっていないか心配する程度であった。

ジニが運動をしたいと希望したため、トルコの国家憲兵に場所を借りて体操をすることになった。一方、あの人は宿泊場所を確保するため市内を駆け回っていた。くじ引きで護衛役が決まり、ジニがあたったため彼女が同行することになった。私たちはオマルの指導で体操を行い、運動後は体が活気づいたと感じた。

アルティナは体操を見た後、私たちに話しかけ、食事や仕事について質問をした。尋問のようにも感じられたが、特に問題になるような内容ではないと判断し、深く考えないようにした。

その後、あの人が戻ってきて宿泊場所を確保したと伝えたが、アルティナは宿舎を提供することを提案し、私たちはトルコ料理の食堂を利用することになった。あの人はアルティナの誘いでバーに行くことになり、私たちは寂しく食事をすることとなった。

ジニは食事中、あの人がアルティナと親しくなるのを心配する私に対し、「寂しいだけだ」と指摘した。私はジニの言葉を聞いて、あの人がいないことに対する不安や嫉妬心を感じている自分を認めた。

翌朝、私はあの人を探しに行った。宿舎は別で、どの時間に戻ったのかもわからなかった。水場での混雑を避け、あの人はマグカップを使って歯を磨いていた。私が近づくとあの人は少し驚いた様子だったが、特に問題はないようだった。

準備を整えて出発の時間が近づき、私たちは食事を済ませた。アルティナさんも既に準備を終え、軍用トラックの助手席に乗り込んでいた。私は急いでその間に入り、あの人とアルティナさんの会話に割り込んだ。車内でのやりとりは警官としての彼女の疑念を解こうとするあの人と、それを探ろうとするアルティナさんとの間で続いた。彼女は私たちの安全を心配しているように見えたが、それ以上にあの人の正体や意図を疑っているようだった。

車列が進む中、道中での襲撃を警戒していたが、特に問題はなかった。突然、車列が止まり、爆発音が響いた。前方での攻撃音に、私たちは緊張感を強めた。あの人は冷静に状況を判断し、トラックを道路から外し、荒野へと進路を変えた。

オマルの車もすぐに続き、私たちは逆走してヘラートへ向けて逃走を開始した。アルティナはあの人の行動に驚き、仲間を見捨てるわけにはいかないと訴えたが、あの人は冷静に状況を判断し、敵が攻撃を続ける可能性を考慮して逃げることを選んだ。彼は安全な場所でアルティナを降ろすと約束し、ヘラートに戻らず北の荒野へ進路を取ることにした。

車の中で、あの人はアルティナにすべてを話すことを決意し、協力を求めた。車の中に隠されていた盗聴器を発見し、それを取り外した後、あの人はシベリア共和国に対する不信感を口にしつつ、可能な限り安全な道を選んで西へ向かうことを提案した。しかし、アルティナはヘラートに戻ることを強く求め、最終的にトルコを信じることにした。

あの人は子供たちが安全に暮らせることを望んでいたが、アルティナの言葉に納得し、彼女の意見に耳を傾けることにした。

五章 二度目のヘラート

ヘラートでトルコ国家憲兵部隊と再会し、アルティナは私たちを逃走させたことを自身の指示として処理したため、特に処罰は受けていなかった。駐屯地は攻撃で悲しみに包まれていたが、あの人は軍隊と警察のどちらも問題があると考え、両者の良い部分を兼ね備えた警備会社を作ることを計画していた。

その後、私たちはイラン国境に向かうため、情報収集を開始した。あの人は治安が悪い方が情報が得やすいと考え、難民キャンプの周辺で情報を集めることにした。キャンプで怪しい人物と接触した私は、捕虜として一人の子供を連れ戻したが、その子供が私たちの存在を知っていることが判明した。

ハキムという少年が私たちの元に現れ、彼はタリバンに両親を殺され、私たちのグループに加わり戦いたいと申し出た。ハキムは復讐を目的として戦いを手段にすると主張したが、あの人は戦いを目的にすることの無意味さを説明し、戦うべきではないと諭した。

ハキムは感情を抑えていたが、「機械のようだ」と指摘されると怒りを露わにし、銃を抜こうとした。あの人はハキムがシベリアから来た者であると見抜き、彼を落ち着かせるよう指示した。ハキムはシベリア・ラーダの存在を否定したが、その言い方から彼の出自が明らかになった。

六章 ハイムと武器

ジブリールが連れてきた少年ハキムは、実際には捕虜ではなく志願者であった。彼はタリバンと戦うためにグループに加わりたいと主張したが、あの人はハキムをシベリアのスパイであると疑い、彼の話を信じなかった。ハキムは、自分がスパイではなくタリバンに復讐したいだけだと説明し続けたが、誰も彼の言葉を信じなかった。

あの人はシベリアの目的を探りながら、グループの安全と経済的安定を確保するために、タリバンとの戦いを避け、イランの国境警備隊と交渉して入国を許可された。彼らはイラン南東部の訓練キャンプで3ヶ月間、武器の使い方や戦闘訓練を受けた。この期間を通じて、彼らは新たな戦術や装備を学び、戦闘能力を向上させていった。

訓練が続く中、オマルは別のコースでテロリストについての勉強をしていた。一方で、あの人や他のメンバーは、通常の訓練を受けながらも、厳しい訓練の中で充実した食事を楽しんでいた。ハキムは訓練の厳しさと自身の運動の苦手さに不満を抱き、あの人に対してタリバンとの戦いを提案していたが、あの人は慎重に行動し、シベリアの指導部の意向を見極める姿勢を崩さなかった。

その後、ハキムは訓練の合間に本を読むことを望み、あの人に依頼した。あの人は子供向けの本を提供し、ハキムは不満を抱きながらも楽しんでいた。そして、実際の活動として「テスト」が始まり、成功すればアフガニスタンへの道が開けると告げられた。メンバーたちは訓練に戻ることを避けるため、テストを成功させる決意を固めていた。

七章 テスト

テストはイラン国内で行われることになり、参加者たちは予想外の展開に驚いた。あの人は、テストの内容として近々日本企業へのテロ攻撃を阻止することだと説明したが、具体的な情報はほとんど与えられなかった。守るよりも先に攻撃する方針で、敵の情報を先んじて収集し、テロを阻止しようと計画していた。

情報収集のため、彼らはバムという都市へ向かった。バムは過去に大きな地震で被害を受けた街で、古代の遺跡の近くに位置していた。現地での情報収集の過程で、あの人は日本の商社マンでイラン人の妻を持つという設定で行動していた。あの人の指示で、守備的な行動よりも積極的な攻撃的行動を取る方針が示され、参加者たちはその方針に従って行動を開始した。

あの人はテストの準備として、大量の携帯電話と特大のライフルを購入し、日本企業周辺で監視活動を行うよう指示した。彼らは変装して企業を監視し、敵の動きを察知しようとした。あの人は日本商社を狙ったテロリストの監視や調査活動を見抜き、攻撃を阻止する計画を立てた。

活動中、彼らは車で日本商社を尾行する者を発見し、それが敵の動きの手がかりになると判断した。ハキムは、監視の重要性と効率的な情報収集について議論したが、あの人は実際の状況に応じた柔軟な対応を重視していた。

あの人は商社を訪れ、日本人社員に警告し協力を依頼した。夜間の監視は避け、必要に応じて敵を攻撃する計画を立てた。最終的には、状況に応じて行動を調整し、運を天に任せることにした。

八章 遺跡での戦い

翌日、日本企業からあの人に電話がかかってきた。彼は警察が動かないため、自分たちの助けが必要だと知らされた。警察の協力を期待していたものの、結局、自分たちで対処することになった。

その日の監視活動中、敵が日本人を尾行している車を発見した。あの人はバイクでその車を追跡し、途中でジブリールが後部に飛び乗った。敵は銃撃を仕掛けてきたが、あの人は巧みにバイクを操り、射撃を回避しながら反撃を試みた。ジブリールも銃を取り出して応戦しようとしたが、うまくいかず、彼らは状況を整理するため一時的に退避することにした。

その後、あの人はジブリールに対して無鉄砲な行動を叱ったが、彼女はその行動が彼のためであったと主張し、命を懸けてでも彼の側にいたいと訴えた。最終的に、オマルからの連絡を受けて、あの人とジブリールは再び敵を追うために出発した。

あの人はジブリールを連れてバイクで遺跡へ向かい、敵との銃撃戦に巻き込まれた。あの人はオマルと合流し、敵の攻撃を回避しながらも冷静に状況を分析していた。敵はシベリアからの兵士で、あの人を狙っているようだった。

彼らは遺跡を利用して敵の攻撃を避け、地下に逃げ込んだ。ジブリールはあの人の態度に違和感を感じ、彼がいつもと違うことに気づいた。あの人は敵の目的が理解できないまま、彼らが戦う理由を探ろうとしていた。

その後、シベリアの老人が現れ、あの人に戦いをやめるように提案した。老人は何か過去の出来事を重ねているようで、最終的に彼らを許して去っていった。あの人とジブリールは、敵の行動の意図を理解できず、困惑しながらも戦闘が終わったことを確認した。あの人は戦いが終わったことに安堵し、ジブリールを抱き上げて歩き出した。彼らはともに過ごす時間に満足し、再び平穏な生活に戻る準備をしていた。

マージナル・エピローグ

警察は最終的に姿を現さず、シベリアがその地域を制圧していた可能性が示唆された。私たちは撤収し、日本企業から感謝され、少額ながらも報酬を受け取った。あの人は金額が少ないことを不満に思っていたが、今後も警備の契約が続く見込みであるため、それなりに満足していた。

また、シベリアの老人からは10万ドルの現金が送られてきた。老人は「多すぎる金は人を狂わせるから、これくらいから始めろ」と述べており、その自己中心的な物言いには苦笑させられた。ハキムはスパイの役目を解かれ、私たちの仲間として行動することになった。彼が新しい環境に馴染めるか不安もあったが、あの人は問題ないと楽観視していた。

私は毎日、背が低いことがあの人に子供扱いされる理由だと気づき、背伸びをするようになった。あの人は日本に私たちを連れていく準備を進めながら、楽な警備の仕事を探していた。私が背が伸びたかと尋ねられると、大人になった証だと答えた。あの人はその答えに少し驚きつつも、大人になることへの執着に対して複雑な気持ちを抱いていたようである。

カナン・エピローグ

ヨシフはヘリコプターの中で、古い中央アジアの女性用ショールを手にしながら微笑んでいた。彼は「あのバイクの操縦は見事だったが、それ以外はまだまだだった」と亡くなった多くの人々に語りかけるように呟いた。彼は過去の感傷に浸りながらも、同じでないことに安堵していた。

その時、機関銃を片づけながら女秘書が「あのままでよかったのですか」と尋ねると、ヨシフは「良いのだ、この件は機密にし、すべてを忘れなさい」と命じた。女秘書は「ご命令とあれば」と応じた後、困惑した表情を浮かべたが、沈黙で答えた。

ヨシフは外の景色を見ながら、「今度は子供ができるといいんだが」と言い、不確かな未来に思いを馳せていた。女秘書の沈黙は、誰にも未来を予測できないことを物語っていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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