どんな本?
いきなり転生することになった主人公は、、
人のいない場所で孤独に修行をしながらサバイバル生活を満喫する話?
読んだ本のタイトル
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編I
(英語名:The Water Magician)
著者:久宝忠 氏
イラスト:ノキト 氏
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あらすじ・内容
「<水よ来たれ!>」異世界に転生した青年・涼は初めての魔法を唱える。コップ一杯の水で始まるスローライフーーそれは常に死と隣り合わせの戦闘が起きる日常だった!? おまけに隔絶されたロンド亜大陸で人間は彼一人。成り行き任せの生活に不都合はないものの、首なし騎士との剣戟、アサシンホークの襲撃、ドラゴンとの邂逅と慌ただしい。持ち前の呑気さか、隠しスキル「不老」のおかげか、気づけば二十年、いつしか人類最高峰の魔法使いに到達! やがて、天才剣士アベルとの出会いが涼を歴史の表舞台へと引き上げていくのだった……。“考えても無駄なことなら考えない”――マイペースすぎる最強水魔法使いの気ままな冒険譚、開幕!
(以上、Amazonより引用)
感想
サクサク話は進まない。
そして、、
なかなか読み終わらないなと思ったら、600ページ近くなかなかのボリューム。
いきなり転生する事になり、天使の前で人と関わりたく無いと言ったせいで陸の孤島のような森の中に転生され。
前半はその場の安全地帯で魔法がコップ一杯の水しか出せず、修行をして徐々に魔法を強くしていき。
氷の槍を出せるようになって狩に出てと、、、
かなり地味な展開だがスローライフだもんな仕方ない。
このまま進んだら本を閉じてたけど。
いきなり20年も経って。
そして精霊王と呼ばれる見た目デュラハンを師匠として、剣の修行をしてもらいかなり強くなっていた。
本来は精霊魔法を習うらしいが、何故か剣を習ってしまう主人公は特殊らしい。
そんなキャラクターだからか、精霊王には物凄く気に入られているようで、加護が凄い事になってるらしい。。
そんな彼の前に難破した船の残骸と3人の打ち上げられた人。
その内2人は死亡しており最後の1人が生き残っていた。
そんな生き残りの冒険者アベルを元いた街に送るため主人公は人の居る街に向かうが、、
周りは人外魔境。
彼等はヘビモスとワイバーンの戦闘を横目に通過して、最強種の一角のグリフォンには干し肉を捧げたら見逃してもらい、ワイバーンの巣を力技で突破。
多数の苦難を乗り越えて人外魔鏡を突破する事が出来た。
そして、アベルを元居た街へ送り届ける事に成功。
そのついでに冒険者へと登録してワイバーンの魔石を売ろうとしたら、、
あまりにも高価でなかなか売れない状態。
その間に彼は街に居着いてしまった。
寿命が無い彼にはちょっとお出かけしてる感覚になっているっぽい?
そして、月蝕の時。
天使から絶対に会うなと説明されていた悪魔に出会って戦闘をしてしまう。
まぁ、襲って来たら反撃しないと殺されるからね、、
なんとも気の毒な、、
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同シリーズ
備忘録
プロローグ
涼は大学二年生で、両親の死を受けて休学し、家業を継ぐために地元に戻った。彼は経験がないため、専務のシゲさんが社長となり、涼は副社長になった。社員は涼が小さい頃から知っている人々で、涼は給与が一番低く設定され、周りからの反感もなく仕事を覚えていった。十一ヶ月後、シゲさんは遅くまで作業をする涼に声をかけた。涼は社内の書類の少なさに感心し、シゲさんは先代の方針である「報告書の無駄を省き、労働時間を有意義に使うべき」と説明した。二人は「疲れるほどには働くな」という涼の父の言葉を思い出し、笑いあった。涼は、社員の健康を守りながら会社を運営することの重要性を再認識した。その後、涼は会社を後にし、交通事故に遭い、意識が遠のきながらもわずかな後悔と無念さを感じていた。
涼は交通事故で亡くなり、死後の白一色の世界で目を覚ます。そこで金髪長髪のヨーロッパ系の男性(ミカエルと仮称)と出会う。ミカエルは涼に、地球以外の異なる世界への転生を提案する。転生先は剣と魔法の世界で、涼は記憶を保持したまま新たな生を送ることができる。涼は水属性の魔法適性を持っており、魔法の使用法についても説明を受ける。ミカエルは涼に自由に生きることを奨励し、ロンドの森を転生先として設定する。涼は家と初期の食料、そして安全を保証された環境でのスローライフを約束される。最後に、涼の魔法についてはイメージが重要であると説明され、涼は光に包まれてその世界に消える。ミカエルは涼の高い魔力量を伝え忘れるが、それが後に重要となることを示唆している。
異世界『ファイ』へ
転生した涼は、自分の新しい住まいを探索する。住居には基本的な家具と必要な物資が揃っており、ミカエル(仮名)からのメモが見つかる。家の設備や供給された物資は、彼の要求を反映して用意されたと考えられる。涼は外の自然を眺めながら、この新しい世界での生活に適応しようと決心する。彼は、この異世界での生活を始めるために、周囲の環境や可能なリソースを把握し、新しい能力や状況を最大限に活用しようとする。
サバイバルの基本である火と水を、魔法によって得ることに成功した涼は、魔法の便利さを実感している。空気中の水分を取り出して水を生成する水属性魔法を使いこなせるようになり、気温が高く湿度も高いロンドの森の環境が、その魔法の成功を助けていると考えている。涼は、物理現象が地球と『ファイ』で基本的に同じであるというミカエル(仮名)の言葉を信じて、エネルギーから物質を生成する可能性について考えている。また、彼は水分子の振動を制御することで氷を生成し、その逆の過程で水を温めようと試みるが、安定した成功はまだ得られていない。涼は水属性魔法を活用してさらに多くのことを成し遂げようと決意している。
ひたすら水属性魔法の練習に励む涼は、特に〈ウォータージェット〉の制御に成功し、その力を浴槽の水生成にも応用した。浴室での一連の修行を通じて、水の生成と温度制御の技術を磨いた。その結果、水を短時間で温める能力を手に入れた。この経験から自信を深めた涼は、氷の生成にも挑戦。空気中から直接氷を作ることに成功するも、氷を飛ばす技術は未だ習得できていない。氷の槍や〈アイシクルランス〉といった形状の氷を作ることはできるが、それが目標通りに動作するわけではなかった。習得には時間がかかり、多くの反復練習が必要であった。しかし、練習を重ねることで、氷の生成時間を短縮し、その使用法をより理解することができた。
結界の外へ
涼は『ファイ』に来て十二日目に〈アイシクルランス〉の生成を一秒以内で行えるようになったが、未だに飛ばすことはできなかった。これにより結界外への出発が可能となったが、回復手段の確保が急務であった。『植物大全 初級編』に記載されているキズグチ草を基に、解毒効果を持つ解毒草も結界の外で手に入れる必要があった。火打石と解毒草を確保することが初の目標となったが、物理的な攻撃手段としてはナイフしかなく、涼は竹槍を作成し、これにナイフを組み込んだ。結界の外に出る準備が整い、明日への出発に備えた涼は、経験を積んだ魔法の技術を反芻しながら、次の日を迎えた。
涼はレッサーボアの重い死体をどう運ぶか考えた際、氷の道〈アイスバーン〉を利用して運ぶ方法を思いついた。結界までの約百メートルを氷の道を敷きながら、レッサーボアを引っ張って運んだ。家に着いた涼は精根尽き果てていたが、戦果として火打石とレッサーボアの肉を得た。『ファイ』に来て十四日目、涼はレッサーボアのモモ肉を堪能し、残りを氷漬けにして保存した。初めての獲物を無事家まで運び、解毒草は得られなかったものの、初戦闘での勝利を手に入れたことに満足していた。
涼はアサシンホークとの遭遇により、命がけの戦いを強いられた。アサシンホークは風属性の遠距離攻撃魔法エアスラッシュと、速度を活かした物理攻撃を駆使する。涼は〈ウォータージェット〉で対抗しようとしたが、アサシンホークは高速で避け、効果的な攻撃を遂げることができなかった。危機的な状況で反射的にナイフ付き竹槍を使い、アサシンホークの右目を傷つけることに成功する。その後、〈アイスウォール〉を試みるものの、アサシンホークは容易に逃げることができた。この体験から、涼は自身の魔法の範囲と限界を再認識し、さらなる強化の必要性を感じる。魔物との遭遇は、涼の生活に新たな課題を投げかけ、彼のスキル向上への動機付けとなった。
涼は二日に一度、東の森で狩りを行い、レッサーラビットやレッサーボアを狩る。狩り以外の日は、『魔物大全 初級編』を読むか、魔法の練習に励んでいる。特に、自分から離れた場所に水や氷を生成する練習に力を入れているが、十メートル以上離れた場所に直接魔法を発動することはまだできない。それでも、〈ウォータージェット〉の発射練習を積極的に行い、わずかながらの成長を感じており、その成果は涼にとって大きな喜びである。涼は、理屈抜きで努力の重要性を感じており、見える成果がモチベーションに直結している。
涼は、食の充実を目的に、再度北の森に出かけた。前回アサシンホークに阻まれたが、今回は万全の準備とともに勝てなければ撤退するという明確な方針で探検を進める。前回イチズクを手に入れた場所から、さらにイチズクを回収し、今回はコショウを新たに発見した。それを麻袋に詰め、探検を続けた。北の森から五百メートルほど進むと、湿地帯に到達し、リザードマンがいないことを確認し、そのまま探検を終えることにした。涼は自分の身の安全を第一に考えながら、新たな食材を手に入れ、成功を収めた。
〈アイシクルランス〉を飛ばすことに成功した涼は、翌日東の森で狩りに出かけた。自信満々でいた涼は、予期せぬアサシンホークの襲撃を受けた。前後からのエアスラッシュ攻撃に対し、〈アイスウォール全方位〉で防ぐも、右手には折れた竹槍のみが残る。敵は前回の片目のアサシンホークと新たなアサシンホークの二羽で、連携して涼を攻撃した。涼は〈ウォータージェット 32〉で反撃するも回避され、連続するエアスラッシュにより防壁〈アイスウォール〉が次々と破壊される。絶体絶命の状況で、涼は〈ウォータージェット〉での反撃と共に動きを変え、新人アサシンホークの突貫を回避し、一計を案じて片目のアサシンホークを撤退させることに成功した。この戦いで涼は、戦闘技術だけでなく、身体能力の強化の重要性を痛感した。
持久力をつけるための訓練に励んだ涼は、二カ月後には午前のメニューをこなしても午後の活動に影響が出なくなった。新たな目印として、結界内に百メートルの氷の塔を建造し、これを使って遠征の方向性を定めた。北東に位置する湿原地帯を目指すことにし、途中でレッサーボアを狩り、リンドーというリンゴに似た果物を採集した。遠征中、カイトスネークという毒を使う巨大な蛇の襲撃を受け、緊急で〈アイスウォール〉と〈アイスアーマー〉を使いながら対抗した。〈スコール〉という雨を降らせる魔法で毒を無効化し、〈アイシクルランス〉でカイトスネークを撃破した。この経験から涼は、更なるスタミナと防御魔法の練習の重要性を感じた。
涼は午前の訓練を終えた後、塩焼き魚が食べたいと呟いた。魚を手に入れるために、川に向かいナイフ付き竹槍を持参した。そこで川辺にいたワニを避けて上流に向かうと、ホーンバイソンがワニを倒す現場に遭遇し、ホーンバイソンを狩った。さらにピラニアも捕まえて、魚の冷凍保存を行った。これを利用して、将来的に日本食の調味料である魚醤を作る計画を立てた。魚醤の発酵樽として、針葉樹の大木を切り出し、魔法で樽を作成した。涼はピラニアを塩漬けにして発酵樽に入れ、数カ月後の魚醤完成を待つことにした。
久しぶりにピラニアの塩焼きと白いご飯を食べた涼は、その意外な美味しさに驚いた。通常、肉を好む涼だが、時折魚を欲することがあり、南の川で再びピラニアを捕る決意を固めた。昼間はショッキングな光景を目撃したものの、夕食は大満足で終えることができた。夜の森は不気味に感じられ、人間には視覚と聴覚が重要であるため、夜の森を避けるべきだと涼は考えている。また、風属性魔法使いに憧れを持ちながらも、水属性魔法使いとしての自己の能力を評価している。
ミカエルが用意した『魔物大全 初級編』は多くの魔物を網羅しているが、特に「特級編」のページには、ドラゴンと悪魔の情報が記載されており、それらは通常の魔物とは格が違う。これらの魔物は極めて強力で、一つの都市を破壊できるほどの力を持つ。特に悪魔については出身が不明であるため、出会わないことを祈るしかない。涼はこれらの魔物との遭遇を避け、穏やかなスローライフを目指している。また、涼は氷を研磨材として使い、岩を切断する魔法「アブレシブジェット」を開発し、魔法の力で氷を硬くする方法で新たな可能性を見出した。
海へ GO
涼は「ウォータージェット」と「アブレシブジェット」を完全に習得し、魔法による狩りが楽になった。涼は海への挑戦を決意し、自宅から南西にある海岸で塩の採取や海の幸を得る計画を立てた。しかし、涼が魔物を殺したことで、海中の魔物たちと敵対する事態になり、戦闘が発生した。海中で魔物の「ベイト・ボール」と遭遇し、涼は魔法使いとしての経験不足を痛感した。結局、戦闘を生き延びるも、今後の魔法制御についてさらなる修業が必要であると実感した。この経験から、涼は魔法の更なる理解と技術向上の必要性を認識し、継続して訓練を行うことを決意した。
涼は、一年ほど前に海中で気絶した経験から魔法制御の訓練を欠かさず行っているが、依然として「血液凍結」は成功していない。最近は北の森の湿原にある湖でデュラハンと剣の稽古をしている。デュラハンは首がなく、口頭での指導はないが、涼が剣を構えると応じてくれる。デュラハンは「魔物大全 初級編」に載っておらず、涼にとっては倒せない存在であり、魔法も使わず剣技だけで対抗している。稽古は日々進み、最初は秒殺されていた涼も今では一時間ほど戦えるようになっている。この訓練は涼にとって貴重な対人戦の経験となっており、防御技術も向上している。ある夜、デュラハンから水の剣を模したナイフを受け取り、それを使いこなすよう示される。このナイフは氷の刃を生成する能力があり、涼はこれを使用して剣の技術をさらに磨くこととなる。次の日も、涼はデュラハンと湖畔で打ち合う姿が見られた。
涼は、デュラハンとの剣戟によって剣術に自信を持つようになったが、未だ「血液凍結」の魔法は成功していない。彼は自己成長を実感しようと海中での戦いを選び、これまで敬遠していた海に再び挑むことにした。前回海中での戦闘で奇襲によりベイト・ボールを散らしたが、涼は本当の魔法制御の戦いで勝利する必要があると感じている。海に飛び込んで魚を捕まえると、再びベイト・ボールが現れ、涼は魔法制御の力でその挑戦に応える。彼は海水を自由自在に操り、ベイト・ボールを無力化するが、その直後にクラーケンに襲われる。クラーケンは涼の「アイスウォール」を容易く破壊し、最終的には緊急脱出を余儀なくされる。結局、海中での勝利と敗北を経験し、さらなる訓練の必要性を感じる涼であった。
涼は常に戦闘をしているわけではなく、スローライフを楽しむことを目指している。彼は食事を中心にした生活を営んでおり、多くの料理の材料を自ら採取している。これには香辛料や果物が含まれており、自分でブラックペッパーを作ったり、珍しい果物を発見したりしている。しかし、必要な植物や作物が見つからないことも多く、例えば大豆がないために味噌を作ることができず、また解毒草も見つかっていない。また、涼は「水田整備計画 inロンドの森」というプロジェクトを進めており、水田の開発に多大な努力を注いでいるが、苗を準備していないことに気づき、その準備が無駄に終わったと感じた。
竜王
涼は、片目との激しい戦闘を経た翌日、戦場を訪れ、そこでの勝利を静かに実感した。その場には歓喜の感情はなく、突如現れた紅く輝くドラゴンによって涼の頭は混乱した。ドラゴンは念話で涼に話しかけ、昨日感じた強力な鳥の反応の消失の理由を尋ねた。涼は昨日戦った片目のアサシンホークがドラゴンの知り合いかもしれないことに気がつき、事の顛末を正直に話した。ドラゴンは涼が使っていた剣が妖精王のものであることに気づき、涼が水属性の魔法使いであることを賞賛したが、涼は水の魔法ではなく剣術を習っていたことを説明した。ドラゴンは自身の名前をルウィンと名乗り、再会を約束して去っていった。その後、涼はドラゴンの存在感に改めて圧倒され、ドラゴンが住む東の山に近づかないことを誓った。
二十年後と漂着者
片目との戦い、ルウィンとの出会いから約二十年が経過した涼は、歳を取ることなく永遠の十九歳であった。時を数えることに興味を失った涼は、スローライフを送っていたが、塩と海魚の塩焼きを求めて久しぶりに海に向かった。そこで見た光景は、難破した船の残骸と海岸に打ち上げられた三人の人間だった。生き残った一人はアベルという名の剣士で、涼は彼を救助し家まで運んだ。アベルとの交流が始まり、彼はこの土地がロンドの森であることを知り、涼が魔法使いであることを知った。涼は日常的にラビットを狩り、生活の中で魔法を用いるが、アベルからはそれが特別なこととは感じられなかった。二人の新たな生活が始まったのであった。
アベルは、自身が打ち上げられた海岸に行きたいと涼に相談した。涼は腰布、サンダル、ナイフのみを装備し、二人は海岸に向かった。アベルは自身が剣士であることから、何かあれば前衛を担うと申し出た。海岸には以前の死体はなく、涼はアベルが生き残れたことを幸運だと評した。アベルは涼を呼び捨てにし、友人と同様に扱うことを望んだ。その後、涼はデュラハンとの最後の剣戟を行い、感謝の意を表した。デュラハンは涼にローブとマントを贈り、二人は別れた。
涼とアベル
涼とアベルは軽装で旅立ち、食料は現地調達することとした。涼は水を含む基本的な調味料を担当し、北の湿原を抜けて進むルートを説明した。途中、アベルは涼に夜の行動について尋ね、涼は師匠に挨拶に行ったことを説明した。アベルは涼のローブとマントについて特別な効果があるか疑問を持ち、涼は特にないと答えた。
北の大湿原を抜けた後、二人はレッサーボアと遭遇し、アベルは剣技を駆使して狩りを行った。夜は野営をし、レッサーボアを料理して食事を楽しんだ。涼は米がないことに少し物足りなさを感じたが、アベルは満足していた。涼はお米の重要性を改めて認識し、家に戻ったら大切に育てることを決意した。
アベルが仮眠を取る間、涼は魔法制御の訓練を行った。特に強い魔物が現れない限り、涼はアベルを起こさずに自ら魔物を処理することにした。実際、魔物が現れた際には、涼は動かずに〈ウォータージェット〉で魔物を無音で倒し、アベルの睡眠を妨げなかった。夜を通じて魔物を処理し、涼は翌朝アベルに挨拶を交わした。アベルは焚火の前で涼の準備した水差しとコップを使いながら、涼の魔力の源やそのローブについて疑問を抱いたが、結論には至らなかった。夜が明け、二人は無事に朝を迎えた。
涼とアベルは森を進んでいた。その日、彼らは数回魔物に襲われたが、戦闘は全てアベルが担当した。彼は涼の戦闘を学ぶために、アベルの戦闘技術に特に注目していた。昼頃には、倒した魔物を食事とする計画であった。途中、広い場所に出た際に、アサシンホークとノーマルボアに遭遇し、戦闘になった。涼は空中のアサシンホークに対処し、アベルはノーマルボアを倒した。アベルは剣技を駆使し、疲労しながらもノーマルボアを倒し、涼の元へと急いだ。広場に戻ると、涼はすでにアサシンホークを倒していた。二人とも無事であり、アベルは疲れたが無傷であることに安堵した。
アベルと涼が森の中を歩いていた際、彼らは鳥肉の山賊焼きと猪ホホ肉の炙り焼きで昼食をとった。その後、彼らは引き続き北へと進んだ。アベルが前を歩き、涼が後を追う形で進行し、涼はアベルのすぐ後ろを歩いていた。途中でアベルは、涼がどのようにしてアサシンホークの攻撃を防いだのかを尋ねた。涼は、水属性の魔法「アイスウォール」を用いて氷の壁を生成し、アサシンホークの攻撃を防いだと説明した。アベルはその透明な壁に気付き、その効果に驚いた。彼は自身の知人には水魔法を使う者がおらず、その有用性を再認識した。二人は、森をさらに進みながら、互いの技能について学び合っていた。
アベルと涼が進むと、音の正体がリザードマンであることが判明し、二人はその場所を迂回することにした。しかし、迂回したにもかかわらずリザードマンに気づかれ、戦闘になった。アベルは剣で多くのリザードマンを倒し、涼も魔法でリザードマンを討伐した。その中には、通常のリザードマンよりも大きく強力なリザードキングも含まれていたが、それも二人の協力で無事倒すことができた。その後、二人は野営地でリザードマン以外の獲物を探し、晩御飯として調理した。また、涼は魔法を使って水を準備し、アベルに渡した。この一連の出来事を通じて、二人は互いの技能を尊重し合いながら協力して困難を乗り越えた。
壁
アベルと涼は、途方もなく高く、東西に切れ間の見えない巨大な岩の壁に遭遇した。その壁は、素手で登るには非常に難易度が高いため、二人は東に向かって迂回することを決めた。この選択をコイン投げで決め、東を向かうことになった。
この旅で初めて、涼はお金、具体的には銅貨を手にした。涼は転生して以来、一人で暮らしており、お金を見る機会がなかったのである。アベルは涼に銅貨を見せ、その銅貨がナイトレイ王国の通貨であることを説明した。また、その国の王であるスタッフォード四世陛下の横顔が描かれていることも教えた。涼はこの情報に興奮し、その響きの良さにテンションを上げていたが、アベルはその反応に対してやや困惑していた。
アベルと涼は、高さが三十メートルほどまで低くなるも、依然登れない壁に沿って歩き続けた。壁は次第に低くなり、最終的には全くなくなり、草原が広がっていた。草原に入った二人は、石を投げるロックゴーレムの集団に遭遇した。涼が生成した〈アイスウォール〉で防御しながら、アベルはロックゴーレムを攻撃し、涼は空から〈アイスウォール〉を落としてゴーレムを圧倒した。一体だけアベルが蹴り倒したゴーレムは、その後動かなくなった。涼はそのゴーレムから黄色い大きな魔石を取り出し、それをアベルに渡した。
最終的には、ゴーレムの襲撃を受けながらも、二人は無事に草原を抜けて川に出た。川で魚を捕まえ、その夜は川魚の塩焼きで食事をし、一日を終えた。翌朝、アベルは川で朝練を行い、涼はその様子を称賛しながら観察した。そして、二人は川を上流に向かって歩き続けることに決めた。
怪獣大決戦
涼とアベルは川べりで巨大な生き物、ベヒモスを目撃した。それは普段人目に触れることがない、伝説的な存在である。二人は、空からワイバーンが近づくのを発見し、ワイバーンとベヒモスの戦いを予想した。戦闘が始まると、ワイバーンは空中から風属性の魔法を使い攻撃したが、ベヒモスは土属性の魔法でそれを防ぎ、最終的にはワイバーンを圧倒した。ベヒモスはその巨体と魔法能力でワイバーンを一方的に打ち負かし、戦いはベヒモスの圧勝で終わった。この一連の出来事を遠くから見守った涼とアベルは、その場を大きく迂回して移動を続けた。その後、涼とアベルは北に向かいながら、遠くに見える山脈を目指し、さらに旅を続けることにした。
晩御飯後、涼とアベルはくつろいでいた。昼間、見えない麻痺毒を吐く植物の魔物に遭遇したことが話題になった。アベルはこの魔物の存在を初めて聞いたと驚き、涼は植物の魔物が少ない地域出身であることを話した。アベルは錬金術に使える植物の魔物の素材について説明し、涼は錬金術に興味を示した。さらに、涼が麻痺毒に影響されなかった理由について議論し、涼は自身のローブが効果を持っている可能性を示唆した。
翌日、二人は山越えの準備として干し肉作りを始め、涼はラビットとグレーターボアを狩ることを提案した。アベルはグレーターボア狩りの困難を指摘したが、最終的に涼の意見が通り、ラビットとボアの狩りが計画された。アベルは涼の意志の強さに圧倒され、二人のやり取りは激論となった。
涼とアベルは、順調にレッサーラビット五頭とレッサーボア四頭を狩り、肉を冷凍保存していた。最後の獲物、グレーターボアの発見は涼の能力で容易だった。涼は独特な詠唱で氷の壁と氷の槍を生成し、グレーターボアを足止めした。アベルは魔剣を使ってグレーターボアを効果的に討ち取り、その皮を利用する計画を立てた。涼はこの皮で鞄や服を作る予定で、グレーターボアの選択はそのためであったことを後から説明した。二人はこの成功を受け、さらに皮の加工に取りかかる予定だったが、涼はアベルが皮を無駄にしないか心配していた。アベルは涼の懸念を冗談めかして受け流し、血抜きの作業に取り掛かった。
血抜きが終わると、アベルはグレーターボアの皮剥ぎを行うことにした。彼は解体経験が豊富で自信があったためである。涼はアベルが意地悪だと何度も言い、それに対しアベルは否定した。涼はアベルの真面目さを称賛したが、性格については否定的な意見を述べた。二人は作業を続けながら会話を交わし、皮剥ぎが終わると鞣し作業に移った。アベルは涼の指示に従い、皮の洗浄や真皮の剥がしを行い、燻煙鞣しの準備もした。最後に、涼が氷ローラーで皮を均一に延ばした。その間も、アベルは涼の指示に従いつつも、彼の文句や指摘に応じていた。
涼はカイトスネークの位置と動きを〈パッシブソナー〉で把握し、その動きを阻止しようとした。〈アイスウォールパッケージ〉でカイトスネークを氷の箱で囲む試みをしたが、カイトスネークの動きは速く、氷の壁を生成するよりも早く動いたため捕らえることができなかった。しかし、涼は諦めず、カイトスネークを中心に半径二十メートルの〈アイスウォール 5層〉を生成し、さらに壁の上を跳んで逃げ出せないように屋根も作った。その後、〈アイスウォール収縮〉で壁を狭め、捕らえたカイトスネークに対して〈スコール〉で水をかけ、〈氷棺〉で完全に凍らせた。成功した涼の前に戻ってきたアベルは、氷漬けになったカイトスネークを見て、自身の介入が不要であることを認めた。
レッサーラビット五頭、レッサーボア四頭、そしてグレーターボア一頭が干し肉の原料となった。塩とブラックペッパーを用いて、三日間乾燥させた後に干し肉が完成した。塩だけでなく、ブラックペッパーが利用できたため、二人は幸運だと感じていた。また、干し肉を入れる鞄は、グレーターボアの皮から作られた。この皮は防寒効果が高く、涼の服にも使用された。涼は既に持っていたローブの下に貫頭衣として使用し、これによってさらなる防寒効果が期待された。
二人は干し肉を鞄に詰め込み、北へ向けて旅を続けた。鞄が干し肉を全て収納するには小さすぎたため、手に持って行く必要があったが、最終的には一日分程度で済み、アベルはその事実に安堵した。
山越え
涼とアベルが、ヒマラヤ山脈のような巨大な山脈を目前にして立っていた。地球であれば無酸素での登頂が困難とされるが、ファイ世界で鍛えられた彼らには無酸素でも可能だと思われた。アベルはB級冒険者の剣士で、涼は魔法使いながらも非常に高い持久力を持っていた。通常、魔法使いは体力が少ないが、涼はアベルに負けない体力を持ち、戦闘でも問題なく活動できる異例の存在である。その後、二人はグリフォンと遭遇し、巨大で威圧的なその存在に一時は動けなくなった。しかし、涼が放った干し肉をグリフォンが受け取ることで事なきを得た。二人はその後も進行し、山脈を越えようとしている間にワイバーンと遭遇。この魔物との戦いでは、涼の水属性魔法とアベルの剣術が見事に連携し、ワイバーン二頭を迅速に討伐した。ワイバーンからは魔石を取り出し、これが高値で売れることを期待しながら、さらなる冒険を続けている。
涼とアベルは、最低でも四千メートルの高度まで登る必要があると考えていたが、実際にはその地点まで登ると、ワイバーンの大群に遭遇した。この山脈はワイバーンの多く生息する地であった。彼らは山を登りながらワイバーンとの戦闘を繰り返し、その数も多かった。干し肉を消費する速さと同じ速さで魔石を回収していった。高度が三千メートルになると、ワイバーンの襲来は止まり、代わりに寒さが彼らを襲った。しかし、調達した装備のおかげで大きなダメージは受けず、山脈の北側に達することができた。その地点からは、ハーピーの群れに囲まれるが、涼の魔法とアベルの剣技でこれをも撃退。さらにハーピークイーンとの戦いがあり、これも涼とアベルの協力により撃退する。最終的に、二人は山を下り、文明の領域に戻る道を見つけた。
街へ
アベルと涼は魔の山を越えて街道に到達し、西へ進むことを決定した。魔の山は中央諸国の人々が普通は近づかない場所で、冒険者も余程の依頼がない限り訪れない場所である。涼は冒険者ギルドについて興味を持ち、アベルからギルドのメリットについて詳細な説明を受けた。ギルドカードは身分証明としての役割を果たし、国内の全ての街での入市税が免除される。また、ギルドに預けたお金は国内のギルドから引き出せるが、戦争時にはギルドが国に占領されるとそのお金も危険に晒される可能性があるとアベルは説明した。
その後、アベルと涼はカイラディーの街に到達し、アベルが奢ったカレーライスを食べた。涼はカレーライスの再現度に驚き、非常に満足した。次の日、彼らはルンの街へと向かい、アベルは涼が冒険者登録をする場合はルンで登録することを勧めた。ルンではカレーライスも食べられ、食のレベルが高いため、地元の冒険者には優遇があるとアベルは説明した。
アベルと涼はルンの街に近づき、その巨大な規模と城壁の外に住む人々に涼は驚いた。街は夜でも城門を閉めず、警邏が厳重で治安も良いとアベルは説明した。街に到着後、アベルは古い知り合いの衛兵と再会し、涼の入市税を支払い、二人は街へと入った。
街内で、アベルの冒険者としての過去と彼の人気が明らかになった。アベルは涼を冒険者ギルドに連れて行き、彼の推薦により涼はD級で登録することになる予定である。アベルは涼の能力を高く評価し、彼が命の恩人であると紹介した。冒険者ギルドでは、アベルが持っていたワイバーンの魔石の売却を計画し、ギルドを通じて市場価値が暴落しないように配慮することを話し合った。売り上げはアベルが四、涼が六の割合で分けることになり、アベルの提案に涼は最終的に同意した。
魔石の記録と保管が終了すると、走る音と共に魔法使いのリンが登場し、アベルを歓迎した。リンはアベルのパーティ『赤き剣』の一員であり、その後、他のパーティメンバーも加わり、感動の再会があり、涼はその場の雰囲気に戸惑った。ヒューは涼とニーナを別室に連れて行き、涼の冒険者としての登録手続きを進めた。ニーナは登録用の道具を持って来て、涼はD級としての登録を行った。その後、アベルは涼を飲み会に招待し、アベルが連れて行きたい場所があると言って涼を連れ出した。最終的に涼はアベルのパーティの一員として迎えられ、ヒューとニーナは通常業務に戻った。
執務室に一人残ったギルドマスターのヒュー・マクグラスは、アベルの無事な帰還に安堵の声を漏らしていた。アベルが行方不明になった際の緊迫した状況を振り返り、二度と経験したくないと心底思った。アベルとリョウに感謝し、通信用の錬金道具を使って報告を行った。
一方、アベルは涼を連れて衣服と杖を購入するために店へ向かった。涼は自身の衣服とサンダルについて語り、新しい服を喜んで受け入れた。アベルは涼に杖の使用を提案したが、涼は杖を使わずに魔法が発動できることを説明した。アベルは涼の剣術に驚き、涼は実際にはナイフを持っていると説明した。二人は街中で服を購入し、その後黄金の波亭で行われるアベルの帰還を祝う感謝祭に向かった。
涼はギルドの宿舎に移り住むため、受付嬢のニーナと共に宿舎へと向かった。宿舎はギルド本館の裏手にあり、石造りの二階建ての建物だった。ニーナによると、宿舎の利用者は自己管理が原則で、掃除は外部の業者が行っていることが説明された。涼は十号室に割り当てられ、すでにその部屋にはニルスとエトという二人の冒険者が住んでいた。ニーナは涼の名札を掛け、簡単な紹介を行い、受付に戻った。
その後、新たにアモンという若い冒険者が入居することになり、彼もダンジョン初心者講座に参加することになった。ニルスとエトはダンジョンに潜ることを告げ、涼とアモンはギルドの食堂で朝食を取った後、講座が行われる講義室へ向かった。講座は五日間にわたり、ダンジョンでの基本的な知識とスキルが教えられる内容だった。
アベルが不在の間、残されたパーティメンバーは地上の依頼を数件こなし、報酬は四等分されて各自の口座に入金された。アベルは帰路にワイバーンを倒し、その魔石を回収して売却し、得た金もメンバーに分配する予定である。しかし、その話を聞いたリーヒャ、リン、ウォーレンは、その行為の実際を疑問視した。アベルは、ワイバーン討伐が魔の山の南側で必要となったため、避けては通れなかった事態だったと説明した。しかし、通常はC級冒険者が20人以上を要するワイバーンを、アベルと涼の二人で倒したという事実に、彼らは驚愕し、信じがたい反応を示した。
アベルが涼との行動を通じて理解したのは、魔法使いとしての涼の能力が非常に高く、特に詠唱なしで魔法を生成できる点が印象的であった。さらに、涼は近接戦闘の技術も持ち合わせており、アベル自身も涼に対する対策が思い浮かばないほどだった。これらの事実から、アベルは魔法使いとしての涼を非常に高く評価している。
ダンジョンへ
ダンジョン初心者講座の最終日に、受講生は実地訓練としてダンジョンの第一層に潜ることになった。講座ではダンジョンの基本情報が伝えられ、午後の訓練に向けて、必要な道具がギルドから支給された。受講生の中には、ルンの街で冒険者登録をした者も多く、通常はダンジョン上層部で経験を積みながらレベルアップを目指す。涼とアモンは質疑応答のセッションで積極的に参加し、午後からの実地研修で緊張をほぐすために励まし合った。
実地研修では、全員がダンジョン入口で記録され、一定時間内に外に出なければ救助要請が出されるシステムがある。涼とアモンはペアを組み、ダンジョンの広間で活動することに。二人はソルジャーアントと遭遇し、涼が氷の槍で魔物の動きを封じ、アモンがその首を斬り落とすという連携を見せた。アモンにとっては初めてのダンジョンでの戦闘であり、見事に敵を倒した後、その魔石を記念品として受け取った。
この経験はアモンにとって自信をつける大切な一歩であり、二人はその後、落ち着いて集合場所へと戻った。このように、ダンジョン初心者講座は実戦経験を積む重要な機会となった。
ダンジョン初心者講座を終えたリョウとアモンの祝賀会が、ギルド併設の食堂で行われた。アルコールは提供されず、参加者はジュースで乾杯した。アモンはダンジョンでの初戦闘でソルジャーアントを狩る活躍を見せ、リョウのサポートを受けながらその功績を果たした。ニルスはこの成功を喜び、エトも祝福した。翌日、リョウとアモンはダンジョンの第三層を目指す計画を立て、その中でソルジャーアントが一層に現れる異常を指摘した。この議論にはベテラン冒険者アベルが加わり、アベルは新人冒険者たちに助言を提供した。アベルのパーティーからはリンとリーヒャが現れ、彼らはアベルを連れ戻した。この一連の出来事は、新人冒険者たちにとって刺激的な経験となった。
レオノール
ルンの街には南北に各一つの図書館が存在する。南の図書館は一般向けや入門者向けの書籍が多く、隣には大きな本屋があり、図書館で貸し出しが禁止されている本を購入するスタイルが取られている。南図書館は五階建ての大きな石造りの建物であり、入場料は二千フロリンだが、問題なく退場すれば半額が返金される。内部は非常に広く、数え切れないほどの開架式書棚が並んでいる。涼は錬金術の入門書を求めて司書の案内を受けた。最終的に『錬金術の初歩の初歩』、『初めての錬金術』、『錬金術 最初のレシピ集』という三冊を勧められ、その場で学習を始めた。特に『錬金術 最初のレシピ集』には簡単な魔法陣やポーションのレシピが掲載されており、非常に役立つと感じた。図書館を出た涼は本屋でその本を購入しようとしたが、価格が高く手持ちでは足りないため、冒険者ギルドの報酬を確認しに向かった。その途中で、涼は日食に遭遇し、異界のような場所に迷い込んだ。何か異様な存在の気配を感じながらも、自身の魔法で対応した。そして、人間の外見を持つが尻尾やツノがある不思議な存在と遭遇し、涼はその姿に悪魔を連想した。
『魔物大全 初級編』にはミカエルが加筆した悪魔に関する記述があり、涼は異空間で実際に悪魔と遭遇した。この悪魔は強大な魔力を持ち、涼との戦闘では業火や風槍を使って攻撃した。涼は〈アイスウォール 10層〉でこれを防ぎつつ、防御に徹して悪魔の攻撃を受け止めた。悪魔は涼の防御が妖精王のローブによるものと気づき、さらに剣での直接攻撃を試みる。涼はこれをかわし、魔法で応戦したが、悪魔の再生能力と魔法の威力には及ばなかった。戦闘の末、悪魔はレオノール・ウラカ・アルブルケルケと名乗り、涼との再戦を予告して消え去った。世界は元の状態に戻り、涼は次なる遭遇に備えた。
涼は悪魔レオノールとの戦闘を生き延びた後、図書館前広場のベンチに座っていた。この戦闘は片目のアサシンホーク以来の危機であり、レオノールは風属性魔法で涼の攻撃を一瞬で消し去る能力を持っていた。戦闘は日食が関係していると推測され、時間制限によりレオノールは退去した。涼はその後、冒険者ギルドの訓練場で宿舎の仲間たちと再会し、彼らが一号室の冒険者たちとの模擬戦で苦戦しているのを助けた。その日の後、涼と仲間たちは公衆浴場に向かい、涼は宿舎の仲間から感謝された。この日曜日は、平和であり、涼の死闘とは対照的であった。
エピローグ
ミカエルは白い世界で石板を使い、三原涼とオスカー・ルスカという二人の未来について考察している。三原涼はスローライフを終え、予測によれば今後厄介な相手、爆炎の魔法使いオスカー・ルスカと対峙する可能性がある。オスカーの過去も壮絶であり、敵に回すと大変なことになりそうだ。ミカエルは未来が確定していないとしつつ、三原涼の未来に幸あることを願っている。
外伝 火属性の魔法使い I
フォスト村
オスカーは「爆炎の魔法使い」として知られるようになる少年で、赤い髪を持ち、自給自足の小さな集落「フォスト村」で育った。彼は鍛冶師ラサンの唯一の弟子であり、鍛冶や狩りに参加しながら、魔法も使うことができる特異な存在だった。村の人々との強い絆と協力が強調され、オスカーの成長と共同体の中での彼の位置づけが描かれている。特に、彼が自分の剣を持ち、狩りで成功を収めることは、彼の成長とコミュニティへの貢献を象徴している。一方で、盗賊の脅威に直面した村は、自己防衛のために結束を固める決意を示している。
フォスト村は村人総出で矢の増産に取り組んでいる。この村では、男女老若問わず全員が弓矢を扱え、防衛の主力としている。特に今回は敵の規模が不明なため、近接戦を避け、矢が尽きる事態だけは避けなければならない。フォスト村は山から岩塩と鉄鉱石が採れるため、矢じりに鉄を使用している。村の周囲には腐食防止処理を施した丸太の柵が設置されており、六年前の盗賊襲撃からの教訓に基づいて強化された。村人たちは夜の襲撃に備えて位置取りを計画し、バッサが盗賊団の規模を知らせたことで、襲撃日が今夜である可能性が高まった。村全体での協力により、五十人を超える大規模な盗賊団に対抗する準備が整えられている。
ポーシュが率いる盗賊団『闇夜の狼』は、フォスト村への襲撃を計画していた。しかし、物見が村人に見られた可能性を報告し、ポーシュは不安を感じ始める。盗賊団は冬前に食糧と酒を備蓄する必要があり、迷いながらも襲撃を決行する。襲撃当日、盗賊団は再び村人に見られたとの報告を受けるが、村は異常なほど静かで、昼間の行動が見られていたにもかかわらず警戒が見られない。盗賊団は計画通りに村を襲うが、オスカーとその家族は戦いに備えていた。オスカーは矢を放ち、戦闘が始まる。村は盗賊たちにとって予想外の抵抗を示し、彼らは混乱する。夜間、村全体での戦いが続き、盗賊の間から「接近して戦え」という声が上がる。この戦いでオスカーとその家族は、盗賊に対して有効な槍を使いながら戦うが、経験豊富な盗賊に対して苦戦を強いられる。
ポーシュが率いる盗賊団『闇夜の狼』のリーダー、ポーシュは違和感を抱いていた。五日前に盗賊団の物見が村人に見られた可能性があると報告し、ポーシュは注意深く下見を行う。最終的に冬の備蓄の必要から、襲撃を決行するが、物見が再び村人に見られたと報告する。襲撃の夜、村は静まり返っており、ポーシュは不安を感じるが、計画通り襲撃を実行する。オスカーはこの事態に備え、家族と共に戦闘態勢を整える。盗賊たちは村に襲撃をかけるが、オスカーとその家族は力強く抵抗し、混乱する盗賊たちに対して効果的に反撃する。
コーンとその父ラタトーは河原で意識のないが生存している男の子を発見する。子供は六歳か七歳で、赤い髪を持ち、腕には剣を抱えていた。ラタトーは子供を温めるために空の麻袋を被せ、コーンはお屋敷の執事ベルロックを呼びに行く。ベルロックが到着し、子供が生きていることを確認して、彼をお屋敷に運ぶことを決定する。こうして、男の子は新たな人生を歩むことになった。
ご隠居様
オスカーは見慣れない部屋で目を覚ました。彼はベッドを知らないフォスト村出身の六歳の少年である。周囲を見渡し、初めての環境に再び眠りにつく。目を覚ましたとき、近くに人の気配を感じ、向かい側に座っている白髪の老人に話しかけられた。老人は自分をルーク・ロシュコーと名乗り、ここがマシュー近くのシュク村であると説明した。オスカーは感謝の言葉を述べ、その後、食事を共にした。食事後、彼は初めてコーヒーを飲み、砂糖を加えると甘くて飲みやすくなった。ルークはオスカーに居場所があるか尋ね、オスカーがフォスト村の家族が亡くなったことを認めると、彼がシュク村に残ることを提案した。オスカーはこれを受け入れ、これからの生活と勉強を始めることになった。
コーンは、共に学ぶオスカーが天才であることに不安を感じながらも、一生懸命勉強に取り組んでいた。冒険者になるという目標を持つコーンは、村で学べることを全て学ぼうと努力していた。その結果、最初は関わりを持とうとしなかったオスカーとも、半年が過ぎる頃には親密な関係になっていた。自由時間にはオスカーが魔法を、コーンが復習をしていたが、オスカーがしばしば屋敷から姿を消すことにコーンは気づいた。ある日、オスカーが隣の廃工房で刃物を研いでいるのを発見し、その理由を知る。オスカーは、鍛冶を少しでもできるようになることを望み、コーンはそれを支持した。二人はお互いに学び、励ましあいながら成長していった。
オスカーはマシューの街にある騎士団で剣の訓練を受けていた。週に一度、お屋敷からマシューの街に向かい、一泊して訓練に励んでいた。この訓練を通じて、オスカーと同じく十六歳になった学友のコーンも共に訓練を積んでいた。ある日、オスカーとコーンはマシューからの帰り道にシュク村から立ち上る異常な黒煙を目にし、急いで現場へと向かった。お屋敷に近づくと、戦闘が発生しており、オスカーは賊の一人を攻撃し、その場を制圧したが、ベルロックは重傷を負っていた。オスカーは屋敷内でご隠居様を守るために戦い、しかし賊には敵わず、重傷を負い意識を失った。この戦いで、オスカーはご隠居様が致命傷を負う瞬間を目の当たりにし、その後、賊によって自身も深刻なダメージを受けた。
ベルロックの命はポーションによって助かったが、オスカーの傷は深く、回復に時間がかかった。マシュー騎士団が緊急で駆けつけたものの、現地に高位の神官がおらず、オスカーは三日後にようやく目を覚ました。その時には既に、ご隠居様であるルーク・ロシュコー男爵の葬儀は終えられていた。これに関してベルロックはオスカーに申し訳なさそうに説明した。また、ベルロックは以前、ハント領が盗賊を雇い国を荒らしている話をご隠居様としていたことをオスカーに伝えた。目覚めてからのオスカーは精神的に大きな影響を受け、見るからにやつれ、髪が白くなった。一カ月後、オスカーはお屋敷から忽然と姿を消し、周囲は彼を探したが見つからなかった。その二年後、盗賊を狩る火属性の魔法使いの噂が広まった。
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