小説感想(⚠️ネタバレあり)「水属性の魔法使い 第二部西方諸国編 Ⅳ(11)」

小説感想(⚠️ネタバレあり)「水属性の魔法使い 第二部西方諸国編 Ⅳ(11)」

どんな本?

本作は、異世界で最強の水魔法使いとなった主人公・涼が、西方諸国で巻き起こる謎と陰謀に立ち向かうファンタジー小説である。中央諸国から西方諸国へ外交使節として訪れた涼は、教皇の就任式を目前に控えたある日、突然教皇自身から襲撃を受ける。激闘の末、教皇を打ち倒すも、その体は跡形もなく消え去ってしまう。不可解な出来事に困惑する中、式当日には何事もなかったかのように教皇が出席しており、涼は西方諸国に潜む謎に直面することとなる。  

主要キャラクター
• 涼:異世界に転生し、最強の水魔法使いとなった青年。マイペースな性格で、数々の困難を乗り越えてきた。
• アベル:涼の相棒であり、天才剣士。共に旅を続け、多くの戦いを経験している。
• 教皇:西方教会の最高指導者。就任式を前に涼を襲撃するが、その真意は謎に包まれている。

物語の特徴

本作の魅力は、主人公・涼のマイペースで飄々とした性格と、彼が持つ圧倒的な水魔法の力である。また、西方諸国の宗教的・政治的な陰謀や、「神のかけら」の謎、人智を超えた存在の顕現など、複雑に絡み合うストーリー展開が読者を引き込む。他のファンタジー作品とは一線を画す、独自の世界観と緻密なプロットが特徴である。  

出版情報
• 出版社TOブックス
• 発売日:2024年8月  
• ISBN:9784867942529
• メディア展開:墨天業による漫画版が『comicコロナ』にて2021年9月より連載中
アニメ化:2025年7月よりテレビアニメ放送予定

読んだ本のタイトル

水属性の魔法使い 第二部西方諸国編 Ⅳ
著者:久宝忠 氏
イラスト:めばる  氏

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あらすじ・内容

中央諸国からはるばる西方諸国へやってきた目的、それは外交使節として教皇の就任式を見届けること。しかし式が目前に迫ったその日、涼を突然襲った敵は……ほかでもない教皇その人だった! 熾烈な戦いの末になんとか打ち倒すも、教皇の体は跡形もなく消え去ってしまう。あまりにも不可思議な出来事を前に途方に暮れる涼たちだったが、迎えた式当日、壇上には何事もなかったかのように教皇が出席しており……?
暗躍する枢機卿たち、「神のかけら」の謎、そして人智を超えた存在の顕現――。
ついにヴェールを脱いだ西方諸国の謎に立ち向かう!
いまだかつてない敵と対峙する、最強水魔法使いの気ままな冒険譚!

水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編4

感想

主な出来事は以下の通り。

涼はキューシー公国のルスラン公子とヴァンパイアのレアンドラ公爵の会談を仲介する。
しかし、最初は会話が進まず、モンブランと暗黒コーヒーが場の空気を和らげた。
ヴァンパイアと人間の対話は進展し、平和への願いが共有されたが、新たな脅威の存在も明らかとなった。
レアンドラはルスランの兄キリル公子の魔法を解く特別な薬を提供し、会談は成功に終わる。

その後、涼とヒュー・マクグラスは教皇庁を訪れ、教皇が堕天した存在に操られている可能性について知る。
魔法使い四人の失踪事件が発覚し、涼たちは捜索を開始。四つの保管庫を巡る中で、教皇庁内の陰謀や枢機卿たちの暗躍が明らかとなる。

地下空間での巨大魔法陣の発見や、教皇との対峙を経て、涼たちは魔法使いたちを救出する。
しかし、教皇は再び姿を現し、涼たちは聖剣を手に戦う。最終的に教皇を倒し、魔法使いを救出するも、中央諸国への帰還は困難となる。

教皇就任式では、教皇暗殺と魔力吸収の計画が明るみに出る。『霊煙』と呼ばれる存在が現れ、涼たちは戦う。最終的に堕天使が顕現し、涼は封印に成功するが、アベルとの交信が途絶え、物語は不穏な結末を迎える。

総括

本巻は教会内部での権力争いや狂信者による大規模な計画が中心であった。
堕天使の顕現とそれに立ち向かう涼たちの姿は迫力があり、引き込む展開であった。
リョウらしいケーキとコーヒーの組み合わせも物語の緊張感を和らげ、キャラクターの人間味を感じさせる要素となっていた。

ルスランとレアンドラの会談は、異種族間の理解と平和への道を模索する重要な場面であった。
魔法使い探しと生贄、四つの宝物庫と聖剣盗難、地下空間と巨大魔法陣といった要素は、物語に緊張感と謎解きの面白さを加えていた。

教皇との戦い、常夜の国での救出と帰還、グラハムとサカリアスの対立、四司教とルスランの地下空間での戦いは、物語のクライマックスにふさわしい緊迫感を持って描かれていた。
教皇就任式での魔力吸収と教皇刺殺、『霊煙』との戦い、堕天使の顕現といった一連の展開は、強烈な印象を残した。

最後にアベルとの交信が途絶える場面は、物語のラストを不穏なものにしており、次巻への期待を高めるものであった。
本作は、緊張と緩和のバランスが絶妙で、飽きさせない工夫が随所に見られた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

プロローグ

気まずい会談の始まり

涼は、キューシー公国のルスラン公子とヴァンパイアのチェテア公爵レアンドラの会談を仲介したが、両者は挨拶を交わしただけで沈黙が続いた。会場はファンデビー法国聖都マーローマーにある『カフェ・ローマー』の個室で、教皇庁の目の前という緊張感漂う場所であった。涼は、二人の好みに合わせてモンブランと暗黒コーヒーを注文したが、それでも会話は進まなかった。

モンブランがもたらす緊張緩和

店員がモンブランと暗黒コーヒーを運んできたことで、涼は二人に食事を促した。ルスランとレアンドラがモンブランを口に運ぶと、初めて感嘆の声が漏れ、場の緊張が緩和された。ヴァンパイアであるレアンドラが教会の本拠地に来たこと自体が異例であり、その場にいること自体が大きな意味を持っていた。

ヴァンパイアへの理解と対話の進展

レアンドラは、自らの種族が必ずしも人間を憎んでいるわけではなく、必要な血の供給源として認識していると説明した。一方、ルスランは父ユーリー十世の助言に従い、ヴァンパイアについてもっと知るべきだと考えて会談に臨んでいた。双方の率直な意見交換により、感情的なわだかまりが徐々に解消されていった。

平和への願いと新たな脅威

ルスランとレアンドラは、ヴァンパイアと人間の間に平和が訪れることを願っていることを確認し合った。しかし、レアンドラは別のヴァンパイア一派が西方教会の要衝を襲撃しようとしていることを明かした。この情報にルスランは顔をしかめたが、襲撃者に対する防衛行動に異論はなかった。

特別な薬と過去の傷

レアンドラは、ルスランの兄キリル公子にかけられた魔法を解くための特別な薬を提供した。この薬は闇属性と光属性の両方を必要とするもので、ルスランはその効果に半信半疑であったが、分析後に使用することを決意した。ルスランの母は息子の傷に深く心を痛めており、この薬が唯一の希望となる可能性があった。

会談の余韻と未来への展望

会談後、涼はルスランと別れた後、アベルと通信で今回の成功を報告した。涼は、共に食事をすることが緊張を解き、平和的な対話を促す鍵であると確信した。将来的には、中央諸国のトップが集まる国際会議でも同様の方法が有効であると考えていた。

アベルの過去と王族の重圧

アベルは兄カインディッシュへの憧れと、自らの役割を果たすために剣を極め冒険者となった過去を語った。彼の経験から、王族が背負う責任と教育の重要性を痛感しており、息子ノアに対しても適切な教育を施すことが親の務めであると考えていた。涼は、教育が楽しくなるような工夫が必要だと助言し、アベルもその意見に感謝した。

消えた魔法使い

教皇庁への訪問

涼とヒュー・マクグラスは教皇庁を訪れ、グラハム枢機卿と面会した。ヒューは悪魔や堕天した存在、教皇が関与している可能性について語り、グラハムはそれを否定せず受け入れた。グラハムは新たな教皇がもはや人間ではないと感じたことがあると述べ、教皇が堕天した存在に操られている可能性を示唆した。

魔法無効化道具『ニール』の存在

涼は司教から奪った魔法無効化道具『ニール』をグラハムに見せた。グラハムはそれが教皇庁の秘宝の模倣品であり、使用者の寿命を削る代物であることを説明した。オリジナルは千年以上前から教皇庁に保管されているが、起動できなくなっているという。

枢機卿たちの暗躍

グラハムは教皇庁内で暗躍する二人の枢機卿、カミロとサカリアスについて語った。カミロは教会修養所を拠点にし、百人近い諜報員を抱えている。一方、サカリアスは優れた錬金術師で、共和国への侵攻やエルフの森の襲撃を指揮したとされる。彼は人間を模した錬金術生物を作り出すことができ、その影響力は教皇庁内外に及んでいる。

勇者パーティーの魔法使い失踪

グラハムは、勇者パーティーの魔法使い四人が失踪したことを告げ、涼と『十号室』に捜索を依頼した。彼らは教皇庁の保管庫から失われた聖剣を探していた最中に姿を消したとされる。涼は情報提供を条件に依頼を受け、調査を開始することを決意した。

捜索の準備と仲間たちの絆

涼と『十号室』のメンバーは、失踪した魔法使いたちの足取りを追うために出発した。彼らは聖剣が保管されていた四つの保管庫を巡ることを計画した。ニルスは仲間であるハロルドに成長の重要性を説き、仲間同士の絆を深めた。捜索に向かう途中、涼はテンプル騎士団の妨害を警戒しつつも、情報を得るための手段を模索していた。

第一保管庫の訪問と枢機卿との出会い

涼と『十号室』の仲間たちは、教皇庁近くにある第一保管庫を訪れた。そこでは助祭の案内を受け、グラハム枢機卿からの入庫許可証と聖印状を提示した。緊張した助祭の態度に涼は疑念を抱き、ニルスと軽口を交わしながらも内部に進んだ。すると、保管庫に入る前にサカリアス枢機卿との面会を求められ、彼らは司祭館へ向かった。

サカリアス枢機卿との対話とゴーレム見学の許可

司祭館でサカリアス枢機卿と対面した涼たちは、その優しげな雰囲気と礼儀正しい態度に戸惑いを覚えた。涼はゴーレムの見学を無謀にも要求したが、サカリアスは快く許可した。この予想外の展開に涼は疑念を深め、枢機卿の表向きの親切さに隠された意図を警戒することとなった。彼は、見学後に命を狙われる可能性すら考えた。

第一保管庫の調査と発見の欠如

保管庫内は広大で、数多くの貴重な品々が収められていた。司祭の説明によれば、魔王の血がここに保管されていた理由は、教皇庁内に置くことへの抵抗感からだった。襲撃の痕跡は修復されており、扉の破壊以外に証拠は見つからなかった。涼は現場に何らかの手がかりが残っていると期待したが、収穫はなく、次の保管庫へ向かう決意を固めた。

第二保管庫への移動と仲間たちの会話

涼たちは聖都東のエウロスにある第二保管庫を目指した。道中、涼とニルス、アモン、エトは軽妙なやり取りを交わしながら進んだ。ニルスは自らの強さを誇り、アモンと意気投合する一方で、涼はニルスの脳筋ぶりに嘆いた。到着したエウロス教会では、再び信仰の在り方について議論しつつ、第二保管庫の調査を開始した。

第二保管庫の調査と謎の侵入

エトたちは、聖都東のエウロス教会にある第二保管庫を訪れた。エトが司祭に聖印状と許可証を見せると、司祭は驚きながらも案内を開始した。保管庫の扉は火属性の魔法で破壊されていたが、不思議なことに誰もその音を聞いていなかった。司祭は自身の不手際を恥じたが、エトは賊の手慣れた手口であることを指摘し、司祭を慰めた。内部の被害は二つの棚が荒らされ、貴重品が奪われていたが、記録は教皇庁本庁にしか存在しないため、現地では詳細が不明であった。

涼の推理とアベル王との通信

涼はアベル王と『魂の響』で通信し、自身の推理を披露した。犯人は教皇庁保管部の内部の人間であると考えたが、アベル王はその推理を単純すぎると指摘した。涼は異端審問庁の厳しい取り調べを逃れるのは困難であると反論されたが、納得しきれずに通信を終えた。結局、第二保管庫でも有力な手掛かりは得られなかった。

テンプル騎士団との遭遇と情報交換

保管庫を出た一行は、テンプル騎士団の第三分遣隊に呼び止められた。隊長のアンドレ・ド・バシュレは教皇庁からの冒険者であることを確認し、得た情報を要求した。エトの提案で涼が前に出て、賊には火属性と風属性の魔法使いがいる可能性を示唆した。バシュレは教皇庁保管部が徹底的に調査されたこと、保管部長は国外出張中に火事で亡くなったことを明かした。さらに、今回の命令を下したのはオスキャル枢機卿であることも判明した。

唐揚げ定食との出会いと感動

南街ノトスに移動した一行は宿に泊まり、食堂で夕食をとった。涼はメニューで『カラアゲ定食』を発見し、期待に胸を膨らませた。運ばれてきた唐揚げ定食は涼の想像通りで、一口食べるとその美味しさに感動した。他の仲間たちも唐揚げの美味しさに驚き、全員が笑顔になった。唐揚げの魅力が異世界でも通じることを実感した涼は、追加注文を提案した。

伝統料理としての唐揚げと文化の違い

翌朝、西街ゼピュロスに向かう途中、エトは唐揚げが『ニュー様の料理』として伝統料理とされていることを伝えた。涼はこれに驚き、中央諸国で見かけなかったことを不思議に思った。また、ニルスの村の『山賊焼き』との違いについても議論し、料理が時代や地域で変化することを改めて認識した。涼は、唐揚げがそのままの形で残っていることに感慨深さを覚え、仲間たちと共に楽しい時間を過ごした。

地下にあったものは

第四保管庫の調査と隠された地下通路

ゼピュロス教会に到着した涼たちは、責任者である司祭が不在のため、代わりにピラル助祭の案内で第四保管庫に入った。この保管庫は他と比べて大きく、重厚な石造りで、かつて城塞として使われていた歴史があると助祭が説明した。内部の調査中、涼は床の亀裂に気付き、〈アクティブソナー〉を使って床下に隠された空間を発見した。その後、アモンが壁の隠し扉を見つけ、螺旋階段が現れた。助祭もこの存在を知らなかったため、一行は慎重に地下への探索を開始した。

地下で発見された巨大魔法陣

地下通路を進んだ涼たちは、広大な空間に到達した。そこには直径五十メートル以上の巨大な魔法陣が描かれており、涼は上空から全体を確認して解析を試みた。解析の結果、この魔法陣は彼らを生贄にするためのものであることが判明した。しかし、まだ起動はしていなかった。涼は魔法陣を破壊する代わりに、〈動的水蒸気機雷〉の変化形を用いて細工を施し、魔法陣が正常に起動しないように改変した。

テンプル騎士団の衝突とカミロ枢機卿の登場

保管庫に戻ると、外でテンプル騎士団の第三分遣隊と別の騎士団が戦っていた。一行は中立を保ちつつ第三分遣隊の勝利を助けた。その後、第三分遣隊は敵の騎士団がカミロ枢機卿の許可証を持っていることを確認し、混乱が広がった。そこへカミロ枢機卿本人が現れ、敵対していた騎士団は枢機卿の命令で動いていると説明し、即座に解放を要求した。バシュレ隊長たちは逆らえず、解放に応じた。

証拠隠滅と新たな疑念

解放された騎士たちはすぐにカミロ枢機卿に連れ去られたが、涼の〈パッシブソナー〉により、彼らの生体反応が消えたことが確認された。四人はその場所に向かい、池の中から十一人の遺体を引き上げた。遺体はすでに個人を特定できないよう処理されていたが、唯一ロケットペンダントが手がかりとして残っていた。この出来事により、カミロ枢機卿が背後で暗躍していることが一層明確になった。

宿での休息と次の行動

事件の衝撃が冷めやらぬ中、涼は健康管理と体調維持のためにゼピュロスの街で宿を取ることを提案した。一行は涼の提案に従い、翌日の行動に備えて休息を取ることにした。これまでの経験を通じて、彼らは自分たちが恵まれた環境にいることを再認識し、今後の困難に立ち向かう決意を新たにした。

聖剣のゆくえ

宿での出会いと謎の女性

四人が泊まった宿には食堂がなかったため、隣の食堂兼酒場を利用するよう勧められた。この食堂兼酒場は同じ経営者が管理しており、繁盛していた。席に着いた四人はビールを注文し、くつろいでいたが、アモンがカウンターの女性に目を奪われた。彼女の姿に見覚えがあると気づいた涼たちは、ロケットペンダントの中に描かれていた女性が彼女、エレナであることを確認した。酔客たちが減るのを待って、三人はエレナに接触を試みた。

エレナの語るトマーゾの過去

ニルスはロケットをエレナに見せ、持ち主が殺害されたことを伝えた。エレナは驚きながらも冷静を装い、伯爵家の三男トマーゾの話を語り始めた。トマーゾは聖職者となり、聖騎士団の隊長にまで昇進したが、酒場娘に恋をして道を踏み外したという。二人は将来を約束していたが、トマーゾは大きな仕事に関わり始め、次第に苦悩を深めた。そして一昨日、彼は父が関わる件について語り、消息を絶った。エレナの話から、四人はトマーゾの実家であるパダワン伯爵家へ向かうことを決意した。

パダワン伯爵家の調査と屋敷への潜入

翌日、四人は聖都に戻りパダワン伯爵家の情報を集めた。伯爵家の領地は西部にあり、現在の当主はトマーゾの父イラーリオであった。聖都郊外の屋敷に目を付けた四人は現地へ向かい、多数のゴーレムと冒険者が屋敷を守っているのを確認した。この防衛体制は教会の関与を示唆しており、四人は屋敷の裏手から潜入することにした。

テンプル騎士団の襲撃と屋敷の制圧

同時に、テンプル騎士団の第三分遣隊が屋敷に接近し、戦闘が勃発した。ゴーレムを前に騎士団は健闘するも、次第に苦戦を強いられた。その隙を突き、四人は裏口から屋敷に侵入し、内部の冒険者たちを制圧した。最後にパダワン伯爵の部屋に辿り着き、伯爵本人と対面した。

伯爵との対話と聖剣の発見

伯爵は既に酔い潰れており、生きる気力を失っていた。ニルスたちは伯爵に対し、教会から隠すよう命じられた物の在り処を尋ねた。伯爵は寝室に繋がる秘密の保管室を案内し、そこには四本の聖剣が保管されていた。聖剣を回収した後、エトは伯爵にロケットを手渡し、トマーゾが愛したエレナの存在と彼女がトマーゾの子を妊娠している可能性を伝えた。

伯爵の希望と再生の兆し

エトの言葉に衝撃を受けた伯爵は、自身の罪を償うためエレナを助ける決意を見せた。四人は伯爵にエレナの居場所を伝え、パダワン伯爵家の悲劇に新たな希望の光をもたらした。

深夜の休憩と突然の襲撃

パダワン伯爵の屋敷から撤退した四人は、午前三時に聖都の門を避けて街道脇で休憩を取っていた。エトがエレナの妊娠について話す最中、突如として土の槍による攻撃を受けた。涼が即座に氷の防御壁を展開し、四人を守ったが、敵の魔力は尋常ではなく、圧倒的な力を感じさせた。

教皇との対峙

攻撃の主は、現教皇であった。教皇は感情を排した声で「盗んだ剣を置いていけ」と三度繰り返したが、ニルスはこれを拒否。教皇は土、炎の二属性の魔法を同時に操り、さらに物理障壁や身体強化魔法まで展開して四人を圧倒した。涼は地面からの魔力供給に気づき、教皇を氷柱で空中に持ち上げて魔力供給を断つ作戦に出たが、教皇は氷に傷をつけずに忽然と姿を消した。

教皇の背後に潜む存在

教皇の異常な力と消失の謎に対し、涼とエトは次元を超えた干渉の可能性を考察した。彼らは、教皇の背後に存在する「堕天した存在」が次元を超えて関与しているのではないかと推測するに至った。四人はこの戦いで聖剣の必要性を再認識したが、涼はその力で本当に教皇の背後の存在に対抗できるのか疑念を抱いた。

聖都への帰還と新たな情報

朝になり、四人は聖都へ戻り王国使節団宿舎で団長ヒューに報告を行った。四振りの聖剣はすべて本物と確認され、ヒューからの称賛を受けた。しかし、四人の魔法使いの行方は依然として不明だった。そんな中、ヒューは新たな情報として、四人が「常夜の国」にいる可能性を示す手紙をグラハムから受け取っていた。

常夜の国への調査計画

常夜の国はかつてヴァンパイアが住んでいた地下都市で、聖都と北の街ボレアスの間に位置していた。四人はこの地下空間に魔法使いたちが囚われていると推測し、まず調査を行うことを決意した。調査の結果次第ではグラハムの部隊と共に突入する計画であった。

ボレアスへの移動と地下への潜入

四人はその日のうちにボレアスに移動し、政庁の中庭から地下への入口を発見した。入口には鍵がかかっておらず、人の出入りも少ない様子だった。慎重に扉を開けた四人は、長い螺旋階段を下り、常夜の国へと足を踏み入れた。

常夜の国

地下街との遭遇

錬金道具『街灯』が点在する坂道を下った先、四人は高さ三メートルの大きな扉の前に到達した。扉を慎重に開けると、予想外にも明るい地下空間が広がり、多くの人々で賑わっていた。この地下街は教会や法国政府に近い人物を通じて開放されたが、噂を聞いて自力で訪れる者もおり、混沌とした状況であった。四人は地下街の宿に滞在し、次なる行動を計画した。

北東の宮殿と隠蔽の計画

涼の探知魔法により、北東の方向に水蒸気の反射が異常な場所が特定された。そこには天井に届くほどの巨大な宮殿がそびえ、教会や政府に関わる施設と推測された。夜間の潜入が不可能な常時明るい環境のため、涼は隠蔽のブレスレットを利用して単独潜入を試みることとなった。

宮殿内部への潜入と発見

涼は慎重に隠蔽のブレスレットを使用し、宮殿内に潜入した。内部では百人を超える人々の存在が確認され、地下二階の奥に異常な水蒸気の動きが感知された。そこには捕らえられた魔法使い四人が鎖で拘束されており、彼らの魔力が吸い取られていた。

教皇との対峙と戦闘

地下二階の中央で、涼は教皇と遭遇した。教皇は涼の存在を予見しており、両者は戦闘に突入した。教皇は四つの顔を持ち、それぞれが異なる属性の魔法を同時に放つという驚異的な戦術を展開した。涼は氷の防御魔法で応戦しつつ、教皇の魔法が共振現象によって強化されていることを突き止めた。

決着と教皇の消滅

涼は〈アイシクルランスシャワー〝貫〟〉を用い、教皇の絶対防御魔法〈絶対聖域〉を突破した。最終的に教皇の額を貫いた氷の槍が致命傷を与え、教皇は天からの光によって消滅した。しかし、涼は教皇の血液の一部を採取することに成功し、この存在が全知全能ではないことを証明する手がかりを得た。

魔法使いたちの救出作戦

涼は、破壊音が響いたにも関わらず誰も現れないことに気付き、静かに通路を進んだ。〈パッシブソナー〉で確認した結果、捕らわれている魔法使いが三十二人いることを把握した。最初に風属性のアリシア、土属性のベルロック、エンチャンターのアッシュカーン、火属性のゴードンを救出した。鉄の扉と鎖は冷却して割り、特製ポーションで体力を回復させた。しかし、ほとんどの魔法使いは自力で歩けない状態であったため、涼は氷の荷車を作り彼らを運ぶ決断をした。

大胆な脱出と騎士団との遭遇

氷の荷車に魔法使いを乗せた涼は、氷の壁で守りながら『宮殿』の内部を堂々と進んだ。途中で騎士たちに止められるも、涼はテンプル騎士団地下政庁大隊長のドッチョと対峙し、元勇者パーティーの魔法使いを救出したことを告げた。ドッチョ大隊長はこの事実を知らなかったが、涼の言葉に従い同行することを決意した。

聖都への行進と再会

一行は聖都へ向かい、途中で涼の仲間であるニルス、エト、アモンと再会した。彼らの手配により、グラハム枢機卿が聖都の門で待っていた。無事に元勇者パーティーの四人を届けたことで、依頼は達成された。ドッチョ大隊長も同行し、グラハム枢機卿に護衛としての役割を認められた。

ドッチョ大隊長の決断

グラハム枢機卿はドッチョ大隊長に感謝を述べ、彼の正義感を評価した。ドッチョ大隊長は枢機卿の庇護を求め、忠誠を誓うことを決意した。これにより、グラハムの影響力はテンプル騎士団内で強まることとなった。

サカリアス枢機卿と天使『レグナ』の陰謀

一方、サカリアス枢機卿は教皇杖を通じて天使『レグナ』と交信していた。魔法使いたちの解放に驚いたサカリアスは、教皇の一体が倒された事実を知る。『レグナ』は、中央諸国から来た男が関与していることを告げたが、教皇就任式でその男の力を吸収する計画を示唆した。サカリアスは安堵し、教皇就任式の準備が整ったことを確認した。

グラハムとサカリアス

宿での出会いと謎の女性

四人が泊まった宿には食堂がなかったため、隣の食堂兼酒場を利用するよう勧められた。この食堂兼酒場は同じ経営者が管理しており、繁盛していた。席に着いた四人はビールを注文し、くつろいでいたが、アモンがカウンターの女性に目を奪われた。彼女の姿に見覚えがあると気づいた涼たちは、ロケットペンダントの中に描かれていた女性が彼女、エレナであることを確認した。酔客たちが減るのを待って、三人はエレナに接触を試みた。

エレナの語るトマーゾの過去

ニルスはロケットをエレナに見せ、持ち主が殺害されたことを伝えた。エレナは驚きながらも冷静を装い、伯爵家の三男トマーゾの話を語り始めた。トマーゾは聖職者となり、聖騎士団の隊長にまで昇進したが、酒場娘に恋をして道を踏み外したという。二人は将来を約束していたが、トマーゾは大きな仕事に関わり始め、次第に苦悩を深めた。そして一昨日、彼は父が関わる件について語り、消息を絶った。エレナの話から、四人はトマーゾの実家であるパダワン伯爵家へ向かうことを決意した。

パダワン伯爵家の調査と屋敷への潜入

翌日、四人は聖都に戻りパダワン伯爵家の情報を集めた。伯爵家の領地は西部にあり、現在の当主はトマーゾの父イラーリオであった。聖都郊外の屋敷に目を付けた四人は現地へ向かい、多数のゴーレムと冒険者が屋敷を守っているのを確認した。この防衛体制は教会の関与を示唆しており、四人は屋敷の裏手から潜入することにした。

テンプル騎士団の襲撃と屋敷の制圧

同時に、テンプル騎士団の第三分遣隊が屋敷に接近し、戦闘が勃発した。ゴーレムを前に騎士団は健闘するも、次第に苦戦を強いられた。その隙を突き、四人は裏口から屋敷に侵入し、内部の冒険者たちを制圧した。最後にパダワン伯爵の部屋に辿り着き、伯爵本人と対面した。

伯爵との対話と聖剣の発見

伯爵は既に酔い潰れており、生きる気力を失っていた。ニルスたちは伯爵に対し、教会から隠すよう命じられた物の在り処を尋ねた。伯爵は寝室に繋がる秘密の保管室を案内し、そこには四本の聖剣が保管されていた。聖剣を回収した後、エトは伯爵にロケットを手渡し、トマーゾが愛したエレナの存在と彼女がトマーゾの子を妊娠している可能性を伝えた。

伯爵の希望と再生の兆し

エトの言葉に衝撃を受けた伯爵は、自身の罪を償うためエレナを助ける決意を見せた。四人は伯爵にエレナの居場所を伝え、パダワン伯爵家の悲劇に新たな希望の光をもたらした。

ゴーレム共同研究とルスランの違和感

午前中、キューシー公国のルスラン公子は教皇庁の兵団管理部で法国とのゴーレム共同研究に参加していた。彼はサカリアス枢機卿の指導の下、法国最高機密のゴーレム『白騎士』を研究し、その革新的な機構に感銘を受けていた。特に『武器変形』の機構について、将来的な民間利用の可能性を見出したルスランは、ゴーレムの社会進出に期待を寄せていた。しかし、サカリアスの発言にわずかな違和感を覚えたルスランは、その感覚の正体を掴めずにいた。

父ユーリー十世の訪問と驚愕の情報

共同研究を終え大使館に戻ったルスランは、予期せぬ人物と対面する。それはキューシー公ユーリー十世であった。父の突然の訪問に驚くルスランに、ユーリーは連合王国とマファルダ共和国で得た情報を伝える。それによると、サカリアス枢機卿が連合王国による共和国侵攻、さらにはエルフの森への襲撃を画策していたという。ルスランは衝撃を受けながらも、サカリアスの言動に感じた違和感の正体に気づき始めた。

レアンドラの薬と兄の回復への希望

ユーリーは、ルスランがヴァンパイア公爵レアンドラから託された薬についても確認した。この薬は、兄キリル公太子の完全な回復を約束するものであった。ルスランは慎重に分析を進め、翌日には安全性の確認が取れる見込みであった。ユーリーは息子の報告を信じ、薬を持ち帰る決意を固めた。

オスキャル枢機卿との対話と教会の権力構造

翌日、ユーリーは教皇庁を訪れ、オスキャル枢機卿と会談した。オスキャルは教会内の権力構造について語り、グラハム枢機卿、カミロ枢機卿、サカリアス枢機卿の三人が現在の権力を握っていると説明した。特にサカリアスについては、現教皇イライジャを操っている可能性があると示唆し、その思想が信徒の利益を顧みないものであることを懸念していた。ユーリーはこの話に深い関心を寄せ、サカリアスの影響力の大きさを再認識した。

ロベルト・ピルロとの偶然の再会

教皇庁での会談中、ハンダルー諸国連合のロベルト・ピルロが訪れ、ユーリーと再会した。三人は国家運営や信仰について意見を交わし、和やかな雰囲気の中で情報を共有した。ユーリーはこの対話から多くの示唆を得て、サカリアスへの警戒をさらに強めた。

ルスランの決意とサカリアスの本質

大使館に戻ったユーリーは、オスキャルから得た情報をルスランに伝えた。ルスランは、サカリアスが人を神のための存在と見なしていることに気づき、その思想に強い違和感を覚えた。彼はサカリアスの本質を探る決意を固め、慎重に行動を開始した。

帰国の途と新たな展開

翌日、ユーリーは分析結果を得た薬を持って帰国の途についた。聖都を出発する際、彼は再びロベルト・ピルロと出会い、共に北へ向かった。二人はそれぞれの目的地へ向かう道中で、再び意見を交わしながら北の道を進んでいった。

宿での出会いと謎の女性

四人が泊まった宿には食堂がなかったため、隣の食堂兼酒場を利用するよう勧められた。この食堂兼酒場は同じ経営者が管理しており、繁盛していた。席に着いた四人はビールを注文し、くつろいでいたが、アモンがカウンターの女性に目を奪われた。彼女の姿に見覚えがあると気づいた涼たちは、ロケットペンダントの中に描かれていた女性が彼女、エレナであることを確認した。酔客たちが減るのを待って、三人はエレナに接触を試みた。

エレナの語るトマーゾの過去

ニルスはロケットをエレナに見せ、持ち主が殺害されたことを伝えた。エレナは驚きながらも冷静を装い、伯爵家の三男トマーゾの話を語り始めた。トマーゾは聖職者となり、聖騎士団の隊長にまで昇進したが、酒場娘に恋をして道を踏み外したという。二人は将来を約束していたが、トマーゾは大きな仕事に関わり始め、次第に苦悩を深めた。そして一昨日、彼は父が関わる件について語り、消息を絶った。エレナの話から、四人はトマーゾの実家であるパダワン伯爵家へ向かうことを決意した。

パダワン伯爵家の調査と屋敷への潜入

翌日、四人は聖都に戻りパダワン伯爵家の情報を集めた。伯爵家の領地は西部にあり、現在の当主はトマーゾの父イラーリオであった。聖都郊外の屋敷に目を付けた四人は現地へ向かい、多数のゴーレムと冒険者が屋敷を守っているのを確認した。この防衛体制は教会の関与を示唆しており、四人は屋敷の裏手から潜入することにした。

テンプル騎士団の襲撃と屋敷の制圧

同時に、テンプル騎士団の第三分遣隊が屋敷に接近し、戦闘が勃発した。ゴーレムを前に騎士団は健闘するも、次第に苦戦を強いられた。その隙を突き、四人は裏口から屋敷に侵入し、内部の冒険者たちを制圧した。最後にパダワン伯爵の部屋に辿り着き、伯爵本人と対面した。

伯爵との対話と聖剣の発見

伯爵は既に酔い潰れており、生きる気力を失っていた。ニルスたちは伯爵に対し、教会から隠すよう命じられた物の在り処を尋ねた。伯爵は寝室に繋がる秘密の保管室を案内し、そこには四本の聖剣が保管されていた。聖剣を回収した後、エトは伯爵にロケットを手渡し、トマーゾが愛したエレナの存在と彼女がトマーゾの子を妊娠している可能性を伝えた。

伯爵の希望と再生の兆し

エトの言葉に衝撃を受けた伯爵は、自身の罪を償うためエレナを助ける決意を見せた。四人は伯爵にエレナの居場所を伝え、パダワン伯爵家の悲劇に新たな希望の光をもたらした。

聖都への帰路と魔法戦の分析

聖都に戻るルスランの馬車内で、涼たちは先の戦闘について語り合っていた。ロベルト・ピルロ陛下がヴァンパイアに一撃で大ダメージを与えながらとどめを刺さなかった理由は、自国の魔法戦力を誇示するためであったとアベルが推測した。涼は魔法の威力だけでなく、速度や戦術の重要性を再認識し、自身の魔法もさらに高める決意を固めた。

ヴァンパイア討伐の謎と魔法の応用

護衛隊長グロウンがヴァンパイアにとどめを刺した際の武器の性質について議論が交わされた。聖剣の特性や聖別の影響が話題に上る中、ロベルト・ピルロ陛下の魔法が火と風の二属性を組み合わせたものであると涼は分析した。また、魔法で斬るという技術についても関心が集まり、涼はその習得を試みる意欲を見せた。

『雷帝』の組み立てとサカリアス枢機卿の関与

ルスランは大使館に戻り、新たに『雷帝』の組み立てに取り掛かった。ヴァンパイアとの戦いを経て、さらなる強化が求められていた。一方で、共同研究の相手であるサカリアス枢機卿に対する疑念も深まっていた。ルスランは『雷帝』を兵団管理部に持ち込み、その性能を披露することで、枢機卿の真意を探ろうとした。

兵団管理部での反応と四司教の登場

『雷帝』を目にした兵団管理部の研究員や整備士たちは驚嘆し、サカリアス枢機卿もその完成度に感嘆した。サカリアスは『雷帝』に教皇直属の四司教の戦闘術を取り込むことを提案し、その代わりに得た情報を自国のゴーレムに還元するよう求めた。ルスランはその提案を受け入れ、四司教との接触を進めることにした。

四司教との模擬戦と衝撃の告白

四司教との訓練で『雷帝』は模擬戦を行い、その戦闘力を高めた。チェーザレ司教との直接対決を経て、四司教たちは涼を殺害する意向をルスランに明言した。ルスランは驚きつつも、この情報を涼に伝えることを決意した。

『カフェ・ローマー』での再会と警告

涼たちはルスランと『カフェ・ローマー』で再会し、教皇就任式を控えた聖都の賑わいについて語り合った。ルスランは四司教の殺害宣言を涼に伝え、涼は驚きながらも戦闘を避ける策を模索した。さらに、暗黒大陸からの来賓の存在にも注意を向け、教皇就任式に隠された陰謀についての懸念を共有した。

教皇就任式に向けた不穏な兆し外交とケーキの甘い罠

ケーキ選びの葛藤

王国使節団宿舎のラウンジで、涼はモンブランか新作ケーキかで深刻に悩んでいた。その様子にニルスは呆れながらも、自分なら両方頼むと即答した。涼はアベル王の「ケーキは一日一個まで」の教えを持ち出したが、ニルスはそれが涼に対する忠告に過ぎないと指摘した。このやり取りの中、アベル王が実は密かにケーキを複数食べているのではないかという疑念が浮上し、涼は「国王の横暴」と揶揄した。

予期せぬ招待

その時、連合使節団のグロウン護衛隊長が現れ、ロベルト・ピルロからの招待状を届けた。招待の理由は、先日の救援に対する感謝の意を示すための茶会であったが、実際には『十号室』の四人は特別な貢献をしていなかった。グロウンは、剣を取り戻したことへの感謝も含まれていると説明し、四人は午後三時の茶会に出席することを決めた。

外交と情報戦

茶会に向かう途中、涼はロベルト・ピルロが自分たちのケーキ好きという情報を把握していることに警戒心を抱いた。涼は孫子の兵法を引用し、情報戦の重要性を強調したが、ニルスはそれを大袈裟だと一蹴した。アモンは涼の戦略的思考に感心し、涼の知識をさらに引き出そうとした。

茶会の始まりと甘い罠

連合使節団宿舎で迎えたロベルト・ピルロは、形式的な礼儀を排し、和やかな雰囲気を作り出した。テーブルには数々のケーキが並び、涼たちはその豪華さに驚嘆した。涼は王国宿舎にはないケーキが多いことに不満を漏らしたが、ロベルト・ピルロはそれを微笑ましく受け止めた。

砂糖の話と外交戦略

話題はケーキからその原料へと移り、ロベルト・ピルロは自国カピトーネ王国の特産品であるテンサイについて語った。涼は王国南部のサトウキビ産地アクレを引き合いに出し、テンサイの輸入は不要であると説明した。この発言により、ロベルト・ピルロの提案が実は王国内の権力バランスを揺るがすためのものであったことを涼は理解した。外交の場で交わされた甘い会話の背後に隠された策略に、涼は「外交とは、かくも恐ろしい」と呟いた。

涼たちは聖都の地下に存在する巨大な魔法陣の存在を再確認し、就任式での発動に備えた。ルスランは就任式には出席しないことを告げ、安全を確認したが、依然として教皇庁内部の動向には警戒を怠らなかった。四人はこれからの戦いに備え、決意を新たにした。

宿での出会いと謎の女性

四人が泊まった宿には食堂がなかったため、隣の食堂兼酒場を利用するよう勧められた。この食堂兼酒場は同じ経営者が管理しており、繁盛していた。席に着いた四人はビールを注文し、くつろいでいたが、アモンがカウンターの女性に目を奪われた。彼女の姿に見覚えがあると気づいた涼たちは、ロケットペンダントの中に描かれていた女性が彼女、エレナであることを確認した。酔客たちが減るのを待って、三人はエレナに接触を試みた。

エレナの語るトマーゾの過去

ニルスはロケットをエレナに見せ、持ち主が殺害されたことを伝えた。エレナは驚きながらも冷静を装い、伯爵家の三男トマーゾの話を語り始めた。トマーゾは聖職者となり、聖騎士団の隊長にまで昇進したが、酒場娘に恋をして道を踏み外したという。二人は将来を約束していたが、トマーゾは大きな仕事に関わり始め、次第に苦悩を深めた。そして一昨日、彼は父が関わる件について語り、消息を絶った。エレナの話から、四人はトマーゾの実家であるパダワン伯爵家へ向かうことを決意した。

パダワン伯爵家の調査と屋敷への潜入

翌日、四人は聖都に戻りパダワン伯爵家の情報を集めた。伯爵家の領地は西部にあり、現在の当主はトマーゾの父イラーリオであった。聖都郊外の屋敷に目を付けた四人は現地へ向かい、多数のゴーレムと冒険者が屋敷を守っているのを確認した。この防衛体制は教会の関与を示唆しており、四人は屋敷の裏手から潜入することにした。

テンプル騎士団の襲撃と屋敷の制圧

同時に、テンプル騎士団の第三分遣隊が屋敷に接近し、戦闘が勃発した。ゴーレムを前に騎士団は健闘するも、次第に苦戦を強いられた。その隙を突き、四人は裏口から屋敷に侵入し、内部の冒険者たちを制圧した。最後にパダワン伯爵の部屋に辿り着き、伯爵本人と対面した。

伯爵との対話と聖剣の発見

伯爵は既に酔い潰れており、生きる気力を失っていた。ニルスたちは伯爵に対し、教会から隠すよう命じられた物の在り処を尋ねた。伯爵は寝室に繋がる秘密の保管室を案内し、そこには四本の聖剣が保管されていた。聖剣を回収した後、エトは伯爵にロケットを手渡し、トマーゾが愛したエレナの存在と彼女がトマーゾの子を妊娠している可能性を伝えた。

伯爵の希望と再生の兆し

エトの言葉に衝撃を受けた伯爵は、自身の罪を償うためエレナを助ける決意を見せた。四人は伯爵にエレナの居場所を伝え、パダワン伯爵家の悲劇に新たな希望の光をもたらした。

地下空間の戦い

教皇就任式前夜の陰謀

聖都は第百代教皇就任式を控え華やいでいたが、教皇庁内では異変が進行していた。四司教、アベラルド、ブリジッタ、チェーザレ、ディオニージは、教皇がサカリアス枢機卿の操り人形であることを知り、動揺していた。彼らは教皇に忠誠を誓っていたが、その信仰が裏切られたことで葛藤に苛まれていた。チェーザレは個人的な復讐のためにリョウを殺す決意を固めるが、他の司教たちは教皇庁内の秩序維持を優先するよう説得を試みた。

四司教の発覚とサカリアスの支配

前夜、四司教はサカリアスの部屋に押し入り、教皇が錬金術で作られた存在であることを目撃した。彼らは本物の教皇イライジャの所在を問い詰めたが、サカリアスは既に存在しないと告げた。動揺する四司教は、教皇杖を使って天使に真偽を確かめようと決意し、翌朝、教皇執務室で教皇杖に触れた。すると天使と名乗る存在からサカリアスを補佐するよう命じられる。しかし四司教はこれを拒否し、サカリアスに逆らう決意を固めた。

サカリアスの罠と四司教の堕落

サカリアスは四司教の反逆を予期しており、錬金術を使って彼らの体を制御不能にした。四司教はサカリアスの命令に従わざるを得ない状況に追い込まれ、彼の意のままに動く人形と化した。サカリアスは彼らを教皇就任式のための「予備魔力」として利用することを明言し、四司教の信仰と忠誠心を完全に踏みにじった。

ルスランの疑念と追跡

同じ頃、教皇庁兵団管理部にいたルスランは、異様な様子の四司教を目撃し、不審に思い彼らを追跡した。四司教は教皇庁開発局に向かい、隠し通路を通って地下の巨大な空間へと進んだ。ルスランと彼のゴーレム『雷帝』は慎重に後を追い、地下でサカリアスと四司教が密談している現場を目撃した。

サカリアスの告白とルスランの決意

サカリアスはルスランの存在に気付き、全ては教会のため、そして天使レグナの意志であると語った。彼は信徒の存在を軽視し、神と天使のために行動していると主張した。ルスランはその歪んだ信仰と目的に憤りを覚え、サカリアスと対峙する決意を固めた。

『雷帝』と『白騎士』の戦闘

サカリアスは法国最強のゴーレム『白騎士』を差し向け、ルスランの『雷帝』との戦闘が開始された。両者は互角に戦ったが、サカリアスはゴーレム戦の本質は操縦者の排除にあると語り、ルスランに生体ゴーレムを差し向けた。

サカリアスの最終命令と決戦の幕開け

サカリアスは四司教とルスランを抹殺するよう命じ、就任式へと向かった。ルスランはサカリアスの陰謀を阻止するため、『雷帝』と共に決死の戦いに挑むこととなった。

戦場での覚醒

ルスランは急展開に圧倒され、一瞬立ち尽くしていたが、ジューダスリモースの襲撃により危機に陥る。しかし、チェーザレが投げたナイフが敵を撃退し、ルスランを正気に戻した。チェーザレは、「主のために戦う『雷帝』に応えろ」とルスランに呼びかけ、ルスランは戦意を取り戻した。

ルスランの戦術と覚悟

ルスランは一流の錬金術師でありながら魔法戦は不得手だった。彼は〈物理障壁〉と〈エアスラッシュ〉を駆使して戦い、『雷帝』が『白騎士』との戦闘に集中できるよう支援した。ルスランは『雷帝』の能力に絶大な信頼を寄せ、自ら作り上げたゴーレムに国民の命を託す覚悟を持っていた。

司教たちの奮闘

アベラルド、ブリジッタ、ディオニージの三人の司教たちは、サカリアス枢機卿への怒りを胸に、素手でジューダスリモースと戦った。彼らは限界を超えて戦いながらも、ルスランの動向に注目し、『雷帝』が勝利することを信じて守りに徹した。

『雷帝』と『白騎士』の激闘

『雷帝』と『白騎士』の戦いは、変幻自在な攻撃と防御の応酬であった。『白騎士』はそのスピードとパワーで優位に立とうとしたが、『雷帝』の卓越したテクニックがそれを凌駕した。『白騎士』は戦術を変え、攻撃密度を高めたが、『雷帝』は即座に対応し守備を固めた。

決着の瞬間

ルスランは〈エアスラッシュ〉を使い、『白騎士』の膝に衝撃を与えた。この隙を突いた『雷帝』は、敵の動きを封じ、首を斬り飛ばして完全に無力化した。続いて『ジューダスリモース』たちも一掃され、戦闘は終結した。

戦いの後

ルスランは『雷帝』を抱きしめ、勝利を喜んだ。一方、司教たちは疲労困憊し座り込んだが、ルスランは『雷帝』にポーションを取りに行かせ、回復を図った。ルスラン自身も傷だらけだったが、主としての責任を全うし続けた。

教皇就任式

教皇就任式の開始と使節団の観察

地下で戦闘が続く中、地上では第百代教皇の就任式が行われていた。教皇の即位から一年後に行われるこの式典には、中央諸国や暗黒大陸から多くの使節団が招かれていた。暗黒大陸からは約四百人が参加しており、その多彩な服装が目を引いた。涼たち王国使節団は円形集会場の中央に座り、暗黒大陸の使節団は東西に分かれて配置されていた。『十一号室』の神官ジークは、暗黒大陸の東部と西部諸国が長年対立しているため、教会も配慮して座席を分けていると説明した。

教皇の登場と魔力の異変

鐘の音とともに集会場は静寂に包まれ、十二人の枢機卿に続いて教皇が現れた。教皇の姿は以前と変わらず、涼とエトは歓迎式典の際に感じた空虚さを再び覚えた。勇者パーティーの魔力供給が途絶えた影響で、教皇の力が弱まっていると推測された。一方で、涼は水田管理ゴーレムに魔力供給を組み込むことを考え、ニルスに呆れられる場面もあった。

観客席での魔力吸収の発覚

式典が進む中、連合使節団のロベルト・ピルロは文官たちの異常な様子に気付き、魔力が観客席を通じて吸い取られていることを発見した。涼も呼び出され、問題の解決を依頼された。涼は氷の床〈アイスバーン複層氷〉を用いて魔力の移動を遮断し、ロベルト・ピルロと共に効果を確認した。この方法は成功し、王国使節団全体に施された後、帝国使節団にも同様の対策が取られた。

魔力吸収の目的と対策

魔力が吸収されていた目的は、聖都地下にある巨大魔法陣の起動用魔力の収集であると推測された。また、使節団の魔力を奪うことで彼らを弱体化させる意図もあった。涼は魔法陣の中心部分が動作しないように細工していたが、初動部分は作動する可能性があると説明した。ニルスとエトは、魔力吸収装置を破壊することで先手を打つことを決断し、四人はヒュー・マクグラスに許可を得た上で行動を開始した。

決意と行動の開始

観客席の後方から静かに退出した四人は、魔力吸収装置の破壊に向けて動き出した。この行動は、教会の陰謀に対抗するための重要な一歩であり、彼らは敵の強硬措置に備えつつ、先手を打つ覚悟を固めていた。

聖都アリーナの探索と異変の発見

聖都のアリーナは七層構造であり、三層までは壁に囲まれ、四層から七層が観客席となっていた。涼たち四人は観客席最上層の七層から六層に降り、魔法陣や仕掛けを探したが、痕跡は見つからなかった。五層も調べたが結果は同じであった。涼は、魔法陣ではなく錬金道具が使用されている可能性を示唆し、その時〈パッシブソナー〉によって行方不明だった錬金術師ニール・アンダーセンの反応を捉えた。ニールは第一層から第三層までの吹き抜け空間におり、傍らには三メートル級のゴーレムと棺桶型の錬金道具があった。

ニール・アンダーセンとの対峙

四人は吹き抜け空間に向かい、ニルスとアモンがゴーレムと戦い、涼とエトはニールの元へ向かった。ニールは重騎士の兜を被り、二人に〈ソニックブレード〉で攻撃を仕掛けた。涼は氷の壁で攻撃を防ぎ、ニールに呼びかけたが反応はなかった。涼は兜がニールを洗脳している可能性を考慮し、〈スコール〉と〈氷棺〉の魔法でニールを氷の中に閉じ込めた。その後、棺桶型錬金道具を〈精査〉し、魔力を吸い取る仕組みを解明した涼は、魔法陣の線を〈ウォータージェット〉で切断し、装置を停止させた。

ゴーレムの撃破と兜の解析

ニルスとアモンは連携してゴーレムの弱点である喉元を突き、撃破に成功した。一方、涼は氷の中のニールの兜を〈精査〉し、内側に設置された針や攻性防壁の存在を確認した。兜は複数の防御機構を備え、強引に外すとニールに致命傷を与える仕組みであった。しかし、涼は魔法制御の技術を駆使して兜の形状を完全に把握し、水中プラズマを用いて兜を消滅させた。氷棺を解除した後、ニールを救出し、エトが治療を行った。

暗黒大陸東部諸国使節団の救援

涼たちがニールを救出している間、暗黒大陸東部諸国使節団の護衛パーティー『清涼なる五峰』のパトリスとグティは、テンプル騎士団と戦闘していた。二人は金属製の籠手とグリーブを用いて戦ったが、人数差に苦戦し、グティが負傷した。そこへ涼たちが駆けつけ、ニルスたちが騎士団と戦う間に涼は棺桶型錬金道具を停止させた。戦闘終了後、エトがグティの治療を行い、パトリスは感謝の意を示した。

次なる目的地への移動

涼たちはパトリスとグティに別れを告げ、暗黒大陸西部諸国の使節団救出のために移動を開始した。東部での戦闘と錬金道具の停止により、異変の一部は解決されたが、問題はまだ完全に終わっていなかった。四人は次なる戦いに備え、迅速に行動を続けた。

教皇暗殺とアリーナの混乱

教皇就任式のメイン会場であるアリーナは、大混乱に陥った。教皇がグーン大司教に刺され、即座に回復魔法〈エクストラヒール〉が施されたが効果はなかった。混乱の最中、カミロ枢機卿が教皇の首を斧で斬り落とし、場内は怒号と混乱に包まれた。聖職者たちは正気を失い、走り回る者、動けなくなる者が続出した。

枢機卿サカリアスの動揺と計画の崩壊

西方教会の聖職者たちも混乱していたが、枢機卿サカリアスは冷静さを保っていた。しかし、教皇の首が落とされた状況は予想外であり、彼の計画は崩れ始めた。サカリアスは観客席から魔力を吸収する装置の稼働状況を確認するが、三基すべてが停止していることに気づく。彼は吸収した魔力を地下の魔法陣に強制的に流し込むボタンを押したが、すでに手遅れであった。

異端審問官による追及とサカリアスの暴走

異端審問官ステファニアがサカリアスを囲み、教皇暗殺に関与していた証拠を突きつけた。サカリアスはグラハム枢機卿の策略に気づき激昂するも、全てが計画通りに進められていたことを知り絶望する。グラハムは地下の魔法陣が機能しないよう細工していたことを明かし、サカリアスは自らの喉を短刀で突き、自害した。

サカリアスの死と異形の出現

サカリアスの死後、彼の遺体は爆発し、周囲の聖職者たちは吹き飛ばされた。砂塵が収まると、教皇とサカリアスの顔が融合した異形の存在が現れた。その姿に場内は再び混乱し、聖職者たちは恐怖に包まれた。グラハムはその異形が人の手によるものではないと断じ、空は曇り、稲光が走る中、無数の魔物が空から降り注ぎ、さらなる混乱を引き起こした。

霊煙

アリーナの防衛と魔物の襲撃

ヒュー・マクグラスは魔法使いに上方への〈障壁〉展開を指示し、物理職が横からの敵を防ぐ防御陣を整えた。王国、帝国、連合の使節団も同様に防御態勢を取り、魔物の降下に対応していた。魔物同士が共食いを始める特性に気付いたヒューは、討伐よりも防御維持を優先するよう命じた。やがてホーリーナイツが到着し、強力な聖なるゴーレム騎士が魔物を駆逐。集会場内の魔物は一掃され、勝利を確信する声が上がった。

金色の霧と『霊煙』の出現

勝利の余韻に浸る間もなく、空から金色の霧が降り注ぎ、霧は人型の姿に変化した。それは『霊煙』と呼ばれる存在で、ホーリーナイツに襲い掛かった。剣が通じない『霊煙』は圧倒的な力でホーリーナイツを次々と倒し、テンプル騎士団も苦戦を強いられた。〈絶対聖域〉による防御で辛うじて戦線を維持したが、その持続には限界があった。

グラハムの登場と聖剣の力

異端審問官の一団と共に現れたグラハムは、回収した聖剣を手に『霊煙』と対峙した。彼の操る『聖煙』は敵の感覚を狂わせ、聖剣の一撃で『霊煙』を撃破した。グラハムは次々と『霊煙』を斬り倒し、戦況を一変させた。

『十号室』の奮闘と新たな脅威

一方、『十号室』の四人は暗黒大陸西部諸国の使節団席で破壊された錬金道具とテンプル騎士団の死体を発見。彼らの前にも『霊煙』が現れた。涼はアモンの剣に魔法式を施し、煙の核を攻撃する作戦を立てた。アモンは戦闘を重ねる中で煙の動きに慣れ、ついに『霊煙』の核を捉えて撃破した。

勝利と成長の証

アモンの勝利により、『十号室』の面々は安堵した。ニルスはアモンの剣才を称えつつ、涼の魔法支援が戦闘を支えたことを認識していた。エトはアモンの成長を喜び、涼の技術に感心した。戦闘は終わったが、彼らは新たな脅威に備えて次の一歩を踏み出す覚悟を固めていた。

東側観客席での惨劇

暗黒大陸東部諸国の使節団が撤退を試みていた中、サカリアス枢機卿と教皇の顔を持つ化物クモがアリーナから現れた。この怪物は〈ファイヤーカノン〉を四連発し、観客席の一割を瓦礫に変えた。使節団は防御を試みたが、魔法の破壊力に圧倒され、撤退は困難を極めた。

グラハムとステファニアの共闘

グラハムは『霊煙』との戦いに苦戦していたが、異端審問庁長官ステファニアが聖剣を手に参戦した。二人は聖剣を駆使して『霊煙』を次々と斬り倒したが、東側観客席の使節団を救出する余裕はなかった。グラハムは、目の前の聖職者たちを守ることを優先せざるを得ないと判断した。

『十号室』の登場と作戦

西側から『十号室』の四人が現れ、状況を一変させることを決意した。ニルスとアモンはグラハムの指示を受けて聖剣を手にし、『霊煙』を斬りながらアリーナを突き進んだ。一方、涼とエトは暗黒大陸の使節団席に向かい、エトが負傷者の治療を行い、涼が防御を固めた。

化物クモとの最終決戦

中央諸国使節団の魔法砲撃が化物クモにダメージを与える中、ニルスとアモンが背後から奇襲を仕掛けた。アモンがサカリアスの首を斬り、ニルスが教皇の顔を貫いたことで〈絶対聖域〉が消滅。涼の氷魔法で膝の顔も破壊され、最終的に化物クモは氷漬けとなった。この瞬間、全ての『霊煙』が消滅し、集会場は完全に制圧された。

勝利の余韻と新たな疑念

全員が勝利を確信する中、涼だけが違和感を抱いていた。化物クモの魔力供給源が堕天使からであると仮定すると、エネルギーが次元の壁を越えてきた可能性があると推測した。その直後、天から一筋の光が降り注ぎ、涼の不安は現実のものとなりつつあった。

顕現

堕天使の顕現

アリーナの中央に現れた存在は、一見すると白い祭服を纏った聖職者に見えた。しかし、そこにいる誰もが「あれは人ではない」と認識していた。その圧倒的な存在感は観客席にまで及び、氷漬けにされたはずの化物クモが消えたことに気づいたのは涼だけであった。涼はそれが堕天使であると確信し、目が合った瞬間、氷の防壁〈アイスウォール複層氷30層〉が一瞬で消滅した。

堕天使との戦闘開始

グラハムとステファニア、ニルスとアモン、ヒュー・マクグラスが三方向から堕天使に襲いかかった。しかし、彼らの攻撃は全て堕天使の前で弾かれた。ロベルト・ピルロの魔法砲撃すらも堕天使に届く前に消滅し、そのエネルギーは堕天使に吸収された。魔法も剣も通じない状況の中、涼は「倒す必要はない、封印すればいい」と判断した。

封印の準備

涼は地面に穴を開け、第一層にあった棺桶状の錬金道具を持ち上げた。それは魔力と『神のかけら』を集める機構を備えており、涼はこれを使って堕天使を封印する計画を立てた。しかし、棺桶の強度が堕天使には不十分であると気づき、もう一つの棺桶を南側観客席から引き上げて二重の封印を施した。

堕天使との一騎打ち

封印の準備が整ったものの、堕天使を強引に封じるにはさらに弱体化させる必要があった。涼は妖精王から授かった剣「村雨」を手にし、堕天使との一騎打ちに挑んだ。堕天使の障壁を破り、互いの剣が激しく交錯する中、涼は右腕を斬られるも、左手一本で村雨を堕天使の胸に突き刺した。その瞬間、村雨は青く輝き、堕天使の動きを止めた。

堕天使の封印と戦いの終焉

涼の合図で二重封印された棺桶が起動し、堕天使は吸い込まれていった。涼は穏やかな口調で堕天使に別れを告げ、堕天使も微笑みながら封印された。戦いが終わり、エトによって涼の負傷した右腕は再生され、アリーナは再び静寂を取り戻した。

棺桶の保管と涼の疲労

棺桶の保管についての話し合いが行われ、涼は唯一その棺桶を移動できる人物として最後まで残っていた。中央諸国使節団が宿舎に戻った後、涼も宿舎に戻ったが、魔力の消費は少なかったものの、精神的な疲労を強く感じていた。再び腕を斬り飛ばされた戦闘の影響も大きかった。エト、アモン、ニルスの出迎えに少しだけ気持ちが和らいだ涼は、国王アベルに報告することにした。

アベルとの交信途絶

涼が《魂の響》を通じてアベルに連絡すると、これまで聞いたことのないほど暗い声でアベルは応答した。《すまん、リョウ。王国はもうダメだ》《使節団の人間だけでも生き残ってくれ……絶対に中央諸国に帰ってくるな》という言葉を最後に交信は途絶えた。何度試みてもアベルとの接続は叶わず、涼は異常事態が発生していることを確信した。十号室の仲間たちも涼の尋常でない様子に気づき、緊張が走った。

中央諸国への帰還方法の模索

涼は中央諸国に戻る決意を固めたが、ニルスはここから戻るには一カ月かかると指摘した。アモンとエトは魔人マーリンによる転移の可能性を探ったが、西ダンジョンの魔力が回復しておらず、それも不可能であった。状況が行き詰まる中、涼は一つの考えに至り、帝国使節団宿舎へ向かった。

帝国使節団宿舎での真実

涼は自らの身分を証明しながら帝国使節団宿舎に強引に入り込み、先帝に面会を求めた。しかし、最上階の豪奢な部屋にいたのは先帝ではなく、ハンス・キルヒホフ伯爵であった。涼が先帝ルパートの所在を尋ねると、ハンスは「陛下はいらっしゃいません」と平然と答えた。この瞬間、涼は先帝がすでに西方諸国を離れ、中央諸国に戻っていることを悟った。

中央諸国への帰還手段の消失

涼は膝から崩れ落ち、中央諸国への帰還が不可能であることを理解した。先帝と共に〈転移〉を使えるハーゲン・ベンダ男爵も不在であり、迅速な帰還手段が完全に失われたことを確認した。ハンスはその事実を認め、涼は絶望感に包まれた。中央諸国への帰還の道は、完全に閉ざされてしまったのであった。

エピローグ

白い世界と未来の予兆

そこは白一色に包まれた世界であった。ミカエル(仮名)は、いつものように手元の石板を見つめていた。石板には未来に関する情報が映し出されており、それを目にしたミカエル(仮名)は静かに呟いた。「この未来は……ああ……」その声には、予兆に対する深い嘆きと困惑が滲んでいた。

特典 SS先王陛下のティーパーティー

外交とケーキの甘い罠

ケーキ選びの葛藤


王国使節団宿舎のラウンジで、涼はモンブランか新作ケーキかで深刻に悩んでいた。その様子にニルスは呆れながらも、自分なら両方頼むと即答した。涼はアベル王の「ケーキは一日一個まで」の教えを持ち出したが、ニルスはそれが涼に対する忠告に過ぎないと指摘した。このやり取りの中、アベル王が実は密かにケーキを複数食べているのではないかという疑念が浮上し、涼は「国王の横暴」と揶揄した。

予期せぬ招待

その時、連合使節団のグロウン護衛隊長が現れ、ロベルト・ピルロからの招待状を届けた。招待の理由は、先日の救援に対する感謝の意を示すための茶会であったが、実際には『十号室』の四人は特別な貢献をしていなかった。グロウンは、剣を取り戻したことへの感謝も含まれていると説明し、四人は午後三時の茶会に出席することを決めた。

外交と情報戦

茶会に向かう途中、涼はロベルト・ピルロが自分たちのケーキ好きという情報を把握していることに警戒心を抱いた。涼は孫子の兵法を引用し、情報戦の重要性を強調したが、ニルスはそれを大袈裟だと一蹴した。アモンは涼の戦略的思考に感心し、涼の知識をさらに引き出そうとした。

茶会の始まりと甘い罠

連合使節団宿舎で迎えたロベルト・ピルロは、形式的な礼儀を排し、和やかな雰囲気を作り出した。テーブルには数々のケーキが並び、涼たちはその豪華さに驚嘆した。涼は王国宿舎にはないケーキが多いことに不満を漏らしたが、ロベルト・ピルロはそれを微笑ましく受け止めた。

砂糖の話と外交戦略

話題はケーキからその原料へと移り、ロベルト・ピルロは自国カピトーネ王国の特産品であるテンサイについて語った。涼は王国南部のサトウキビ産地アクレを引き合いに出し、テンサイの輸入は不要であると説明した。この発言により、ロベルト・ピルロの提案が実は王国内の権力バランスを揺るがすためのものであったことを涼は理解した。外交の場で交わされた甘い会話の背後に隠された策略に、涼は「外交とは、かくも恐ろしい」と呟いた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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