どんな本?
『水属性の魔法使い』は、久宝忠による異世界ファンタジー小説である。主人公・涼が水属性の魔法を駆使し、異世界での冒険を繰り広げる物語である。
主要キャラクター
• 涼:異世界に転生した青年で、水属性の魔法使い。マイペースな性格でありながら、卓越した魔法の才能を持つ。
• アベル:涼の仲間であり、天才剣士。涼との出会いをきっかけに、共に冒険を続ける。
• セーラ:涼の仲間で、エルフの女性。高い戦闘能力と知識を持ち、涼をサポートする。
物語の特徴
本作は、異世界転生や魔法、冒険といった要素を中心に展開される。主人公・涼のマイペースな性格と圧倒的な魔法の実力が、物語にユーモアと爽快感を与えている。また、仲間との絆や成長、各国の陰謀や戦争など、多彩なストーリーラインが魅力である。
出版情報
• 出版社:TOブックス
• 書籍版発売日:2021年6月19日
•ISBN:9784866992259
• コミカライズ:墨天業による漫画版が『comicコロナ』にて2021年9月より連載中
• アニメ化:2025年7月よりテレビアニメ放送予定
読んだ本のタイトル
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編Ⅱ
(英語名:The Water Magician)
著者:久宝忠 氏
イラスト:めばる 氏
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あらすじ・内容
ルンの街を訪れたことで、涼の日常は秘境暮らしから一転。相棒アベルのパーティ『赤き剣』や同室の新人達と共に冒険者ギルドの依頼をこなしたり、剣豪エルフと剣の手合わせをしたり――と、全く違う世界がそこにはあった! だが、ダンジョンから魔物が溢れ出す「大海嘯【だいかいしょう】」が発生し、街が未曾有の危機に。調査へ赴いたアベル達も最下層に強制転移され、覚醒前の魔王ともいわれる魔王子【デビル】により、絶体絶命に陥ってしまう。隣国ハンダルー諸国連合からの干渉や、天敵・爆炎の魔法使いとの対峙……大切な仲間達へ次々襲いかかる危機を前に、涼がついに本気出力へ!? 「街も仲間も、手出しはさせませんよ?」。最強水魔法使いの気ままな冒険譚・第2弾!
感想
第一部 中央諸国編Ⅱの主な出来事は以下の通り。
- 涼の錬金術への興味
涼は仲間と公衆浴場や食堂で過ごしながら、錬金術やロンドの森開拓の夢を語らず秘めていた。 - ダンジョン探索の誘いと断り
涼はニルスたちからのダンジョン探索の誘いを断り、地上での研究と訓練に専念する意向を示した。 - 涼の魔法研究と訓練
涼は氷魔法や水魔法を用いた移動速度の向上に挑戦し、一部失敗しつつも改善を試みた。 - ゴブリンアーチャーの出現と異変の兆し
ニルスたちはダンジョンで珍しいゴブリンアーチャーに遭遇し、ギルドに報告した。 - ギルドの緊急対応
ギルドマスターは異変を察知し、赤き剣と白の旅団に調査と大海嘯対応を依頼した。 - 大海嘯と冒険者の戦い
ダンジョンから溢れた魔物に対し、冒険者と騎士団が連携して迎撃した。 - ゴブリンキングの出現と撃破
ゴブリンキングが登場し、冒険者たちは苦戦の末、最上級魔法でこれを撃破した。 - 戦後処理と宴会
ギルドでの宴会で冒険者たちは戦いの疲労を癒し、交流を深めた。 - 涼の錬金術初挑戦
涼は宿舎で解毒剤を作成し、錬金術の成長を実感した。 - 騎士団との対立と解決
涼は騎士団員との騒動に介入し、白の旅団団長の仲裁で事態を収拾した。 - 調査団の到着とギルドの交渉
調査団の要求にギルドマスターが抗議し、自己責任での調査を条件に合意が成立した。 - 涼の特異な魔法
涼の魔法の特殊性が冒険者や魔法使いの注目を集め、規格外の実力が認識された。 - 中央大学調査団の速攻進行
調査団は迅速にダンジョン下層を目指し、大規模調査を進めていた。 - 転移と新たな世界
赤き剣らは転移に巻き込まれ、未知の世界でデビルの脅威に直面した。 - 涼の参戦と魔王子の撃破
涼は魔王子を撃破し、危機を救った。その規格外の実力が再び証明された。 - デビルの謎と魔石の発見
デビルの魔石や未知の黒い水晶が発見され、さらなる謎が浮上した。 - ギルドマスターとの再会
涼の功績が評価される一方、権力争いへの巻き込みを避けるため記録に残さない決定がされた。 - 涼とアベルの友情
戦いを通じて涼とアベルの友情が深まり、日常への帰還が描かれた。 - 涼の鍛錬と次の挑戦
翌日、涼は鍛錬に励み、さらなる成長への決意を新たにした。
カレーとの出会い
涼は裏通りでカレーの香りに誘われ、『飽食亭』でセーラと再会し、日本風のカレーに感動した。 - 模擬戦への誘い
セーラは涼を騎士団演習場に誘い、模擬戦を提案した。目的は涼の戦闘意欲を発散させるためであった。 - 模擬戦と技量の評価
セーラの風属性魔法を駆使した剣技に涼は圧倒されるが、彼女は涼の技量を高く評価した。 - 領主館の稽古と別れ
模擬戦後、セーラは領主館の稽古へ向かい、涼は演習場を後にした。 - ギルドマスターとの出会い
涼は帰路でギルドマスターのヒューと遭遇し、馬車に乗せられて会話を交わした。 - 罰則としての依頼遂行
ヒューは涼が門番を無視した行為を軽い罰とし、三件の依頼遂行を課した。 - デブヒ帝国の模擬戦
帝国の第三魔法演習場では、皇帝魔法師団が高度な魔法技術を披露し、師団長が成果を評価した。 - フィオナの派遣理由
皇帝の命令でフィオナはウィットナッシュへ派遣され、国内で反乱貴族の粛清が進行している可能性が示唆された。 - 護衛依頼の準備
涼たちは初めての護衛依頼に向けて準備を進め、商人ウーゴの商団と合流した。 - 護衛完了と港町到着
護衛依頼を無事終えた涼たちは港町ウィットナッシュに到着し、祭りの雰囲気を楽しんだ。 - 開港祭の開始
開港祭が盛大に開幕し、涼たちは露店巡りや競技に参加し、祭りを満喫した。 - 皇帝魔法師団と冒険者の対比
フィオナ率いる皇帝魔法師団と現地冒険者たちの異なる立場や方針が浮き彫りになった。 - 園遊会の襲撃
園遊会では結界が崩壊し、黒ずくめの賊の襲撃が発生。フィオナらが防御戦を展開した。 - 涼とフィオナの救出劇
フィオナが海岸へ落下する中、涼たちが救出に成功。戦闘の中でオスカーとの誤解による衝突が起きた。 - 紫髪の男との戦闘
涼とアベルは連合の間諜と思われる紫髪の男と交戦したが、取り逃がす結果となった。 - 新たな家の購入
涼は広い庭を持つ物件を購入し、自身の錬金術や研究の場とする計画を立てた。 - 連合の謀略
ルンの街から撤退した間諜たちは北方連合本部へ報告し、新たな動きが始まった。 - 転生者の運命
管理者ミカエル(仮名)は、涼が「修羅の道」と呼ばれる過酷な運命を歩むことを予測し、無事を願った。
総評
この巻も600ページ近い。
冒険者となり初心者冒険者用の宿舎に泊まり普通ならダンジョンに潜るのだが、本人は金に困ってないので街の中で勝手気ままな生活をする。
錬金術の知識を詰め込むために本を買い、さらに図書館にも行って様々な本を読んで行く。
だが同室の冒険者達は普通にダンジョンに潜り討伐をしながら日銭を稼ぐのだが、ダンジョンに異常性が見えたのでギルドに報告したら大海嘯が発生していると冒険者達が招集される。
そんな時に主人公は図書館で読書をしていて招集には気付かず。本を堪能していたら事件は終わっていた。
そんな大海囑が発生したダンジョンは1ヶ月立ち入り禁止になるが、中央から研究者が大挙して押し寄せて来てダンジョンを開けろとギルドに圧力をかけてくる。
それに巻き込まれて危険なダンジョンに入るアベル。
そして、アベル達はダンジョンに潜ったら門に入ってしまいそこにはデーモン達が屯っており生命の危機になる。
それでアベルの危機を知った水系魔術師の名家の令嬢がアベルから困った事があったら凉に頼れと言われ彼にアベルの救助を頼んだら、、
ダンジョンの床を抜きながら下層に急行してデーモン達を蹂躙して終わる。
さらに護衛の依頼を受けて祭に参加するが、、
トラブルに巻き込まれて火炎魔法で1番強いと言われてる奴と出会ってしまい、仲間を殺されそうになり相手を完封して殺そうとしたが、帝国と戦争になるから止めろと言われて止める。なかなかに波瀾万丈。
あとエルフにも気に入られるな、、
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備忘録
異変の兆し
ナイトレイ王国の冒険者たち
公衆浴場での会話と錬金術への興味
涼はルームメイトのニルス、エト、アモンと共に公衆浴場で汗を流した後、冒険者ギルドの食堂で夕食をとっていた。エトが涼に図書館での調査内容を尋ねると、涼は錬金術について学んでいたと答えた。彼はポーション作成や氷のゴーレムを作り、ロンドの森を開拓したいという夢を抱いていたが、それはまだ誰にも話していなかった。剣士見習いのアモンは本の値段に驚きつつも感心していた。
ダンジョン探索の誘いと辞退
ニルスは涼をダンジョン探索に誘ったが、涼は地上でやりたいことがあると断った。ニルスやエトは涼の実力があまりに高いため、一緒に探索することが無理だと理解していた。彼らはギルドが推奨する同程度の実力者でのパーティー編成を重視していた。
涼の訓練と魔法研究
翌日、ニルスたちがダンジョンに向かう一方で、涼は街の外で訓練を開始した。魔法生成スピードを高めるため、小型の氷の塔を作りながら走った。彼は移動速度を向上させるため、水属性魔法「ウォータージェット」の新たな応用を試みた。しかし、背部全体からジェットを噴出する実験は失敗に終わった。それでも、彼は改善の可能性を見出し、再挑戦を誓った。
ダンジョンでの戦闘とゴブリンアーチャーの出現
一方、ニルス、エト、アモンはダンジョン五層でゴブリンと戦い、ゴブリンアーチャーを含む集団を倒した。この層でのゴブリンアーチャーの出現は珍しく、異変の兆候とされる可能性が高かった。彼らは早めに探索を切り上げ、ギルドに報告した。
ギルドマスターの対応と緊急依頼
報告を受けたギルドマスターのヒューは、ゴブリンアーチャーの出現を異変の前兆と判断し、B級パーティー「赤き剣」と「白の旅団」にダンジョン探索の依頼を出した。依頼内容は、大海嘯の発生有無の確認であった。大海嘯とは、魔物の爆発的増加現象であり、数年に一度発生する危険な状況である。
冒険者たちの決意と準備
赤き剣のアベルと白の旅団のフェルプスは、それぞれ依頼を受け入れた。ヒューは既に迎撃体制の準備を進めており、異変に備えるための手を尽くしていた。冒険者たちは、大海嘯という未曾有の危機に対して挑む覚悟を決め、緊張感を抱えながら依頼に備えていた。
大海嘯
大海嘯と冒険者たちの戦い
地上依頼とダンジョン禁止の発令
火曜日の朝、涼が図書館に向かった後、ニルス、エト、アモンの三人はギルド掲示板で地上依頼を探していた。彼らは注意書きの「ダンジョン探索禁止」に驚き、理由を推測したが、その詳細は分からなかった。同じ頃、ダンジョン入口では「赤き剣」と「白の旅団」のメンバーが集結していた。ギルドマスターのヒューも出張所で指揮を執るため姿を現し、いよいよ調査が開始されるはずだった。
大海嘯の兆候と緊急事態
アベルの提案でリンが風魔法〈探査〉を使用すると、一層の大広間に大量の魔物が確認された。ヒューは即座に全員に退避を命じ、防壁内に避難させた。その直後、ダンジョンの扉が吹き飛び、大量の魔物が地上に溢れ出した。ゴブリンを中心とした群れが防壁内を埋め尽くし、冒険者たちは防壁上から遠距離攻撃を開始した。
冒険者と騎士団の共闘
赤き剣や白の旅団、騎士団は連携して魔物の群れに対抗した。ヒューの指揮のもと、矢や魔法による攻撃が繰り返され、補給班も迅速に動いて物資を届けた。エトやニルスたちも補給活動や回復に従事し、後方支援を続けた。しかし魔物の数は圧倒的で、戦闘は長時間に及んだ。
ゴブリンジェネラルとゴブリンキングの出現
戦闘中、ゴブリンジェネラル三体が現れ、赤き剣と白の旅団がこれに対処した。アベルとフェルプスはジェネラルを各自引き受け、他の冒険者たちが残り一体を攻撃した。さらにダンジョンから姿を現したゴブリンキングは巨大で、その一撃は驚異的な威力を持っていた。アベルとフェルプスは魔剣と魔槍を駆使して戦い、最終的にリンの最上級魔法〈バレットレイン〉でキングを撃破した。
戦後処理とギルドマスターの苦悩
戦闘が終わると、大量の魔石が回収されたが、それに伴う処理や報告書作成など、ギルドマスターのヒューには新たな仕事が山積みとなった。彼は大海嘯の異常な規模を認識しつつ、次の対策を考え始めた。
宴会と冒険者たちの交流
ギルドでは大宴会が開かれ、参加した冒険者たちは戦いの疲労を癒していた。涼も図書館から戻り、十号室の仲間たちと宴会に参加した。ニルスはアベルの活躍を熱弁し、リンは涼の特殊な魔法技術について質問を投げかけた。涼はその質問に丁寧に答え、宴会は和やかに続いていった。
初めての錬金術
ダンジョン封鎖後の冒険者たち
ギルド内の混乱と依頼の消滅
大海嘯鎮圧から五日が経過し、監察官が到着してギルド内は忙しさを増していた。冒険者たちはダンジョンが一カ月間封鎖されたため地上依頼に集中したが、掲示板の依頼は全て消えていた。特に、常時掲示されている採取依頼まで停止されており、ニルスたちは困惑していた。
涼の依頼と廃坑での採取計画
ニルスたちの困窮を見た涼は、自身の錬金術のために必要な魔銅鉱石を採取する依頼を提案した。報酬は前払いも保証され、条件は三人揃って無事に戻ることであった。この条件を受けた三人は早速準備を整え、廃坑へ向けて出発した。
禁書庫でのリンの調査
一方、リンは北図書館の禁書庫を訪れ、水属性魔法の調査を行っていた。涼が使用する魔法が既存の魔法書に記載されていないことから、彼の魔法が「オリジナル魔法」である可能性に思い至った。その後、偶然セーラと再会し、短い会話を交わした後に図書館を後にした。
涼の錬金術初挑戦
宿舎では、涼が錬金術の初歩を試みていた。苦労の末に解毒剤の生成に成功し、自身の成長を感じた。しかしその最中、宿舎の中庭では騎士団員が女冒険者に絡む騒動が発生していた。
騎士団との対立とフェルプスの介入
中庭では、ダンたちが騎士団員と対峙し女の子を守っていたが、騎士の威圧に押されていた。涼は魔法〈アイスバーン〉で騎士を転倒させ、状況を不利にしないよう支援した。最終的に白の旅団団長フェルプスが介入し、騎士たちを叱責して追い返した。
フェルプスとの対話
その後、フェルプスは涼に感謝の意を伝えた。彼は涼の魔法に興味を示し、アベルから聞いた話についても言及した。涼は謙遜しながらも、アベルやフェルプスの評価に驚きを感じていた。フェルプスは最後に再会を約束し、シェナと共に立ち去った。
ギルドでの会話
夕食時のやり取り
ギルド食堂で夕食をとっていた涼に、アベルが声を掛けた。二人は軽妙な会話を交わし、涼がアベルをからかう場面も見られた。花街や仲間との関係について話題が広がる中、涼は自身の性欲の喪失に気づきつつも、その状況を特に気にしていなかった。
依頼と夜の探索
アベルは監察官に同行している騎士団の問題行動を懸念し、涼に協力を依頼した。涼は錬金術の研究を理由に渋ったが、夕食代を奢られたことで承諾した。二人はルンの街へ向かい、騎士団員を探しながら話を続けた。
封鎖解除
朝食の混乱と学術調査団
朝食の品切れと涼の不満
涼はいつもの時間にギルド食堂を訪れたが、朝食がすでに品切れになっていた。原因は王都から派遣された学術調査団であり、彼らが食料をすべて接収してしまったためである。この事態に冒険者たちは不満を募らせ、調査団への印象は最悪となった。
調査団の構成と規模
今回の調査団は、王国中央大学、魔法大学、宮廷魔法団の三組織から総勢五千人で構成されていた。通常の調査団は百人規模であるため、この規模は異例であり、街の宿泊施設も対応しきれず、多くのメンバーが野宿を余儀なくされていた。
ギルドマスターと調査団の交渉
ギルドマスターの怒り
ギルドマスターのヒューは、調査団幹部との会談で強く抗議した。調査団は食料を接収した上、ダンジョン封鎖の解除と護衛の提供を求めていたが、ヒューはこれに反発した。
調査団幹部の態度と交渉の妥結
調査団幹部のクライブは、全権委任状を提示して要求を正当化した。一方、宮廷魔法団のアーサーは調停役を務め、食料問題の解決とダンジョン封鎖の解除に関して条件を提示し、妥協点を見出した。結果として、調査団が自己責任でダンジョン調査を行うことで合意が成立した。
涼とナタリーの出会い
涼とナタリーの邂逅
朝食を求めて街を歩いていた涼は、「黄金の波亭」で学術調査団の一員であるナタリーと出会った。彼女は宮廷魔法団の魔法使いであり、大先生からアベルへの手紙を託されていたため、涼にギルドまで案内を頼んだ。
アベルへの手紙とダンジョンの話題
ギルドに到着したナタリーはアベルに手紙を渡し、調査団がダンジョン潜入のサポートを要請していることが明らかになった。アベルはダンジョンが大海嘯後に危険であることを説明し、調査団の計画に困惑を見せた。
涼の魔法の謎
涼の特異な魔法への関心
ナタリーは涼の使う〈アイスウォール〉の特殊な性質に興味を抱いた。術者から離れた位置で生成されるというその魔法は、水属性魔法としては異例であり、ナタリーやリンは驚愕していた。
アベルの警告
アベルはパーティーメンバーに対し、涼との敵対を避けるよう警告した。涼の実力は規格外であり、敵に回すことは危険だと強調した。さらに、困難な状況では涼を頼るよう助言した。
ギルドマスターからの召集
主要パーティーへの召集
ギルドマスターはルンの街の主要パーティーリーダーを召集し、大海嘯後のダンジョン調査について説明する準備を進めていた。その頃、涼は朝食を求めて「黄金の波亭」に向かい、食事の確保を優先していた。
セーラとの出会い
北図書館での出会いと錬金術の探求
北図書館の雰囲気とセーラとの出会い
涼が北図書館に到着したのは朝十時過ぎであった。南図書館と異なり、北図書館の入口は美しいレリーフが施されていたが、受付には誰もいなかった。しばらく待つと、城から派遣された管理者が現れ、涼は冒険者用の黒い入館証を得て中に入った。大閲覧室は南図書館の広大さとは異なり、静謐で高い書架が並ぶ古典的な雰囲気を持ち、涼を魅了した。そこで、彼は美しいプラチナブロンドの女性、セーラと出会った。彼女は冒険者であり、涼に握手を求めつつ、探している本があれば手伝うと申し出た。
錬金術の研究と涼の幸福な時間
涼はセーラに錬金術に関する本を求め、特にゴーレムの動力に関連するものを探していると伝えた。セーラは驚きつつも彼を案内し、二人で関連書籍を調べ始めた。涼にとって北図書館の環境と、読書を共にするセーラの存在は極上のひとときであった。長らく本に触れられなかった彼は、再び活字への情熱を取り戻したようであった。
冒険者ギルドでの会議と新たな課題
冒険者たちの反発とヒューの説得
一方、冒険者ギルドではヒューが調査団のためのダンジョン護衛について説明していた。冒険者たちは調査団への不満を口にし、特に食料を奪われたことに対する怒りが強かった。ヒューは調査団を手伝うかどうかは依頼として各自が判断すればよいと伝えつつ、依頼を受けた者を非難しないよう釘を刺した。さらに、赤き剣のアベルが宮廷魔法団の護衛としてダンジョンに潜ることを宣言し、その情報がギルドにもたらされることを約束したことで、場は少し落ち着いた。
調査団の動きとダンジョンへの潜入
翌朝、アベル率いる赤き剣と宮廷魔法団の先発隊がダンジョンに潜入を開始した。リンの風属性魔法〈探査〉により一層の安全が確認され、慎重に探索が進められた。彼らは計画通り三層までしか下りない方針を堅持し、情報を共有する準備を整えていた。
十号室の仲間たちとの交流
帰還する仲間たちと報酬の分配
涼のルームメイトであるニルス、エト、アモンが廃坑から帰還した。彼らは依頼品の魔銅鉱石を持ち帰り、涼は成果に応じた報酬を提示し、彼らも納得した。疲労困憊の三人に水を差し出しながら、涼は労をねぎらった。
E級昇格とパーティー名の決定
その後、ニルスとエトがE級冒険者に昇格したとの知らせが届いた。パーティー名の登録が可能になったことで、彼らは新たな一歩を踏み出した。アモンも近いうちにE級に昇格するだろうと涼は信じていた。
魔石の謎とギルドの対応
魔石の濃淡に関する議論
講義室での説明会において、涼は大海嘯で倒した魔物の魔石の色が濃いか薄いかを質問した。この疑問に対し、ヒューは濃淡の重要性と、大海嘯で倒された魔物の魔石がすべて薄かった事実を語った。これにより、大海嘯で発生した魔物が最近生成されたものである可能性が示唆された。
ヒューの懸念と計画
ヒューは状況を懸念しながらも、調査団への対応や冒険者たちの安全を考慮し、辺境伯の協力を仰ぐ準備を進めた。彼は事態が順調に進むことを願っていたが、問題が起こる可能性を覚悟していた。涼の質問に対する評価は高まり、彼の冷静な考察が注目される結果となった。
涼の興味と仲間との時間
一方で、涼は大海嘯と悪魔の関係性に疑問を抱きつつ、それを深く掘り下げる方法を模索していた。彼の仲間たちとの食事の中で、日常の会話が繰り広げられ、懐中時計を手にしたニルスの新たな姿が見られた。そんな些細なやり取りが、彼らの日常の一端を彩っていた。
北図書館での日食と大海嘯の調査
再び北図書館での調査開始
涼は、日食と大海嘯の関係を調べるため、北図書館を訪れた。受付には新しい人物がおり、涼は二千フロリンを支払って入館した。館内は静まり返り、前日に協力してくれたセーラも不在であった。調査の進め方に悩んでいた涼の元に、偶然セーラが現れ、再び助けを申し出た。
日食と大海嘯の関連性
セーラは、大海嘯の前には必ず日食が発生しているという事実を語った。特に今回のような皆既日食だけでなく、過去には部分日食が多かったと述べた。この話に涼は驚きを隠せなかったが、自身の体験に基づく理由を明かすことは避けた。代わりに、大海嘯で討伐された魔物の魔石の色が薄かったことについて話を向けた。
過去の記録を追う調査
セーラは、北図書館に保存された過去の記録からも、討伐された魔物の魔石が薄かったことを確認できると語り、涼を記録が保管されている場所へ案内した。
赤き剣と宮廷魔法団の探索
予想外の静けさ
ダンジョン封鎖が解かれて三日目、赤き剣と宮廷魔法団は七層まで到達したが、魔物に一切遭遇せず、手がかりもほとんど得られていなかった。アベルと顧問アーサーは、この異常な静けさに疑念を抱きつつ、過去の大規模な魔力の痕跡が十層付近で確認されたため、調査の焦点を下層に絞ることにした。
魔石の色の謎
アベルは、大海嘯で現れた魔物の魔石が薄かった事実に基づき、これらがダンジョン下層ではなく上層で生成された可能性を考えていた。この情報は、涼がギルドでヒューに確認するよう促したことで得られたものであり、赤き剣の探索に影響を与えていた。
中央大学調査団の動き
中央大学の迅速な進行
同じ頃、中央大学の調査団は十層への進行を急いでいた。彼らは、大海嘯の魔物が三十八層よりも下層から出現したと仮定し、上層を軽視するかのような速さで進んでいた。その姿勢に疑問を抱いたアベルたちだったが、中央大学の調査方針に干渉することは避けた。
学術長への野望
中央大学総長クライブ・ステープルスは、今回の調査を通じて大海嘯の原因を解明し、次期学術長の地位を得ることを目指していた。調査団は十分な準備のもとで進行を続け、十層での野営を計画していた。
冒険者と研究者たちの対比
赤き剣と宮廷魔法団の慎重な探索
赤き剣と宮廷魔法団は、大海嘯の影響を慎重に調査しながら着実に進めていた。彼らは情報収集を重視し、過去の魔力の痕跡や階層ごとの手がかりを追いながら、次の日の十層調査に備えた。
中央大学の独自方針
一方で、中央大学の調査団は自身の仮説を優先し、早急に下層を目指していた。現地の冒険者たちを地上作業に従事させ、王都から連れてきた護衛に頼る方針は、効率的ではあるものの、現場に対する理解が不足している印象を与えていた。
『門』の先で
突然の転移と新たな世界
アベルたちは突如として転移し、広大な草原に飛ばされた。そこには仲間であるリーヒャ、リン、ウォーレン、そして顧問アーサーと宮廷魔法団の調査団もいた。アーサーはこの現象を「転移」と判断し、周囲の結界状況を確認するため、調査を開始した。
〈聖域方陣〉と結界の謎
リーヒャが結界が〈聖域方陣〉に似ていることを指摘し、一行は結界内に閉じ込められた可能性を認識した。リンの〈探査〉により、近くに人間千人規模の反応と未確認生物が存在することが判明したため、一行は反応の方向へ向かった。
中央大学調査団への攻撃
中央大学調査団は未知の生物「デビル」たちの攻撃を受けていた。彼らは非戦闘員が多く、初級の〈魔法障壁〉で守るのが精一杯であったが、デビルたちの魔法攻撃に圧倒されていた。冒険者たちが近接戦を試みるも、デビルの強力な肉体に歯が立たなかった。
赤き剣の参戦と反撃
赤き剣と宮廷魔法団が到着し、アーサーの指揮のもと反撃が開始された。ジャベリン系魔法でデビルを撃破するも、魔法団は魔力切れに陥った。赤き剣のメンバーは単縦突撃でデビルの前衛を突破し、十二体を討伐したが、体力と魔力の限界が迫っていた。
魔王子の出現と絶望
デビルの中に、魔王子と思われる個体が現れた。異常な強さと知性を備えたその存在に、アベルたちは恐怖を感じた。魔法が効かず、近接戦でも圧倒される状況で、赤き剣の戦力はさらに削られていった。
アベルの奮闘と最後の試練
アベルは魔王子との一騎打ちに挑んだが、圧倒的な力と速度に追い詰められた。仲間たちも倒れ始め、アベルは魔王子の攻撃を受けながらも立ち向かい続けた。
新たな希望の到来
天井が崩れ、一人の水属性魔法使いが現れた。彼は氷の魔法〈アイスウォール 10層〉を使い、状況を一変させた。その姿にアベルは懐かしさを覚え、絶望の中に一筋の希望が差し込んだ。
涼の本気
ナタリーの緊急依頼と涼の出発
ナタリーは、アベルたちがダンジョン内で行方不明になったことを伝えるため、涼を訪ねた。彼女の必死の訴えに、涼は装備を整えてすぐに出発した。途中で疲労したナタリーを〈台車〉に乗せ、ダンジョンの入口へと急行した。
ダンジョン侵入と独自の探索法
ダンジョン入口が封鎖されていたが、涼は〈アイスウォール〉を用いて侵入した。一層から探索を開始し、魔法〈アブレシブジェット〉を駆使して階層の底を抜きながら進んだ。三十九層まで敵に遭遇しなかったが、そこで異常な結界の存在を察知した。
魔王子との遭遇と戦闘開始
四十層に到達した涼は、膝をついたアベルと異形のモノである魔王子を目撃した。涼は即座に〈アイスウォール〉でアベルを守り、魔王子の取り巻き三体を短時間で倒した。涼の圧倒的な戦闘技術に、周囲は驚愕した。
魔王子との一騎打ち
涼は魔王子と対峙し、首を落とすも再生能力の前に倒すには至らなかった。〈アブレシブジェット 256〉を用い、空間ごと切り刻むことで魔王子の魔石を破壊し、ついに撃破した。
仲間たちとの再会と感謝
戦闘後、涼はアベルや赤き剣のメンバーと合流し、感謝の言葉を受けた。宮廷魔法団のアーサーも遺品回収を提案し、中央大学調査団の死者を悼んだ。
デビルの正体と謎
戦場で回収した魔石が黒であることが判明し、デビルの存在が再び浮き彫りとなった。アーサーの話によれば、デビルとの遭遇は二百年ぶりであり、時空魔法を使える可能性が議論されているという。
時空魔法の話題と涼の思索
涼は、時空魔法〈無限収納〉と〈転移〉の存在に興味を示したが、それを使えるのが帝国の一人の男爵に限られている事実を知り、複雑な心境を抱いた。魔石やデビルの謎を胸に、彼らは次の行動に向けて準備を整えた。
悪魔レオノールと勇者パーティーの対峙
西方の地で、勇者ローマン率いる七人のパーティーは、人工の祭壇に現れた悪魔レオノールと遭遇した。彼女を魔王と誤解した一行は討伐を試みたが、戦いは一方的な展開となった。勇者ローマンは果敢に挑むも、レオノールに圧倒され、致命傷を負った。レオノールは祭壇の宝珠を手に入れると、自分が魔王ではないと伝えつつその場を去った。
ルンの街からの冒険者たちとの合流
赤き剣や魔法団が四十層で活動している中、ルンの街や他の都市から来た冒険者たちが合流した。新たに約百人が加わり、彼らの助けを借りて、デビルの魔石や中央大学調査団の遺品を回収し、地上へ戻る準備を進めた。
四十層の異物とその謎
帰還途中、一行は三十九層と四十層の間で奇妙な黒い水晶を発見した。残留魔力検知機によると、それは強力な魔力を持っていた痕跡があったが、詳細は不明であった。顧問アーサーはそれを結界袋に収め、地上に持ち帰ることにした。
ギルドマスターとの再会と涼への評価
地上に戻ると、ギルドマスターのヒューが一行を迎えた。涼が規則を破ってダンジョンに突入したことについて咎めるも、顧問アーサーがその功績を説明し、事なきを得た。ヒューとアーサーは、涼の規格外の実力を認めつつ、彼が権力争いに巻き込まれるのを避けるため、彼の行動を報告書に記載しないことを決めた。
アベルと涼の友情
帰路の中、アベルは涼への感謝を改めて伝え、涼はそれを受けつつカレーの話題で応じた。二人の対等な友情が垣間見える場面であった。
涼の翌日の鍛錬
翌朝、涼は街の外で体力づくりを行い、仲間を圧倒する体力を見せつけた。戦闘でのモヤモヤを振り払うように走り続ける涼の姿は、次なる挑戦への準備を示していた。
演習場で
香りに導かれたカレーとの出会い
お昼過ぎ、涼は裏通りで偶然カレーの香りを嗅ぎつけ、『飽食亭』に入った。店内でエルフのセーラと再会し、二人で中辛カレーを注文。日本風のカレーに感動し、会話を交わしながら食事を楽しんだ。
セーラの提案と騎士団演習場への誘い
食事後、セーラは涼を騎士団演習場に誘い模擬戦を提案した。セーラは騎士団の剣術指南役であり、涼の心に残る戦闘意欲を発散させるため、一緒に演習場へ向かうことを提案した。
模擬戦の開始と激戦
演習場でセーラは風属性魔法を駆使し、音速を超える剣戟を見せた。涼は防御に徹しながらも、限界に達し剣が折れる。最終的にセーラが勝利を収め、涼の技量を称賛した。
涼とセーラの剣技の背景
セーラは風魔法を剣技に応用する高度な技術を持ち、涼の師である妖精王の存在にも驚きを示した。涼の剣技の背景を知り、二人は互いの技量を認め合った。
領主館の事情と次の展開
模擬戦後、セーラは領主の孫アルフォンソの稽古に向かうため涼と別れた。涼は領主館のメイド、レイリッタに案内されながら演習場を後にした。レイリッタはセーラの「大切な人」という紹介に驚きながらも丁寧に涼を送り出した。
演習場での出来事
ギルドマスターとの出会い
涼が演習場を出て門へ向かう途中、一台の馬車が彼を追い抜き、前方で止まった。馬車から降りてきたのはギルドマスターのヒューであった。ヒューは涼を見つけると、宿舎に戻る予定なら話があると言い、馬車に乗るよう促した。涼は少し躊躇したが、断ることができず乗り込んだ。
依頼を課される罰
馬車の中でヒューは、涼が門番を無視して領主館に入った行動を指摘した。しかし、救出劇で命を助けた功績を認め、軽い罰として依頼を三件こなすよう命じた。これには涼も納得し、ギルドに着くまでの間、和やかな雰囲気で話が進んだ。
デブヒ帝国の演習
皇帝魔法師団の模擬戦
帝国の第三魔法演習場では、皇帝魔法師団による模擬戦が行われていた。参加者たちは詠唱なしで強力な魔法を発動し、移動しながら戦闘を繰り広げていた。この光景は、ナイトレイ王国の魔法使いが目にすれば驚愕するほどの高度な技術であった。
師団長と副長の評価
演習を見守る師団長フィオナと副長オスカーは、現状の成果を評価しつつも、さらなる向上を期待していた。特にオスカーは厳しい視線を送り、終了後には規律を守る重要性を隊員たちに説いた。彼の厳しさは、隊員たちが日々の訓練を真剣に取り組む原動力となっていた。
師団長室での会話
ウィットナッシュ訪問の準備
演習後、フィオナと幹部たちは師団長室で次の任務について話し合った。フィオナは、皇帝の命令でナイトレイ王国の港町ウィットナッシュに向かう理由について考え込んでいた。副長のオスカーは、皇帝がフィオナを遠ざける間に国内で何かしらの血生臭い事態を処理しようとしているのではないかと推測した。
フィオナの特別な存在感
フィオナは皇帝ルパート六世の末娘であり、その美しさと魔法の才で帝国内でも特別な存在であった。彼女が率いる皇帝魔法師団は、名誉職から実戦部隊へと再編され、短期間で強力な戦力として成長していた。皇帝は彼女を溺愛している一方で、戦場や粛清といった光景を彼女に見せたくないと考えている節があった。
未来への懸念
皇帝の思惑
オスカーは、皇帝がフィオナをウィットナッシュに派遣する間に国内で反乱貴族への粛清を行おうとしている可能性を感じ取っていた。親としての愛情と、皇帝としての冷徹さが絡み合い、フィオナへの特別な配慮が見られる行動であった。
師団の未来
フィオナがいない間も、皇帝魔法師団はその強力さをさらに高めるべく訓練を続けることが決まっていた。彼女の帰還後にさらなる成果を示すことが師団員たちの目標であり、次なる任務への準備が着々と進められていた。
初めての護衛依頼
初めての護衛依頼と準備
護衛依頼への期待と準備
魔王子との戦闘から三日後、涼と仲間たちは初めての護衛依頼に向けて準備を進めていた。ニルスは興奮しながら護衛についての知識を確認し、エトやアモンも期待と緊張を抱いていた。彼らは前夜、アベルから護衛の基本を教わっていたことで、自信を持ちながらも慎重に行動を計画していた。
十号室とパーティー名の由来
ニルスたちはパーティー名を「十号室」と決定しており、涼はその名前の由来を再確認していた。ニルスの提案によるもので、他のメンバーも受け入れていた。このパーティー名は個性的であり、他の冒険者たちのユニークな名前とも並ぶものだった。
護衛の始まり
商人ウーゴとの出会い
集合場所では、商団のまとめ役であるウーゴと挨拶を交わした。ウーゴは柔和な態度で接し、十号室のメンバーたちも安心して自己紹介を行った。続いて、護衛を共にするパーティー「コーヒーメーカー」のリーダー・デロングらと顔合わせをし、友好的な雰囲気の中で護衛が開始された。
ウィットナッシュへの道中
商団の目的地はナイトレイ王国の港町ウィットナッシュで、開港祭に合わせた護衛依頼であった。道中では涼が水属性魔法使いとして珍しい存在だと注目され、仲間たちから期待を寄せられた。また、祭りの詳細を聞き、涼を含めた全員が訪問を楽しみにしていた。
港町ウィットナッシュでの到着
安全な護衛の完遂
二日間の護衛を無事に終えた涼たちは、商団と共に港町に到着した。宿泊先で部屋を分け合い、初めての護衛任務を成功させた達成感を味わった。街の活気ある雰囲気と祭りの準備が進む様子に触れ、涼たちは早速街を探索した。
露店での食事と楽しみ
露店を巡りながら、涼たちは様々な料理を堪能した。フィッシュアンドチップスやタコ足の炭火焼きなど、地元ならではの味覚に感動を覚え、祭りの始まりを心待ちにした。露店の食べ歩きがその日の楽しみとなり、特別な時間を過ごした。
デブヒ帝国の来訪者
第三皇子コンラートの到着
祭りの準備が進む中、デブヒ帝国の代表団が到着した。その中でも、帝室の紋章が刻まれた豪華な馬車に乗る第三皇子コンラートが目を引いた。彼は帝国の代表として多忙な日程をこなす中、海の香りを懐かしむように呟き、帝国に海がない現実と向き合っていた。
晩餐会とフィオナの退出
晩餐会では、コンラートが皇女フィオナを気遣い、早めに退出するよう配慮した。フィオナは自室に戻り、副官マリーと共に旅の疲れを癒していた。剣と魔法に特化した自分の能力に満足しながらも、政治の場での役割を果たす難しさを感じていた。
祭りの期待と仲間たちの絆
祭りの期待と新たな挑戦
翌日、涼たちは街の活気に触れながら、祭りの本格的な開始を心待ちにしていた。彼らの護衛任務は一段落したものの、新たな経験と挑戦が彼らを待っていることを予感させた。仲間たちとの絆が深まる中、十号室はさらなる成長を遂げていく準備を整えていた。
開港祭
開港祭の開幕とアベルの姿
ウィットナッシュ開港祭が盛大に幕を開けた。来賓席に座る凛々しい装いのアベルの姿が観客席から確認され、涼たちは驚きを隠せなかった。彼の普段の冒険服とは違う正装は、まさに「馬子にも衣装」という言葉を体現していた。来賓席には帝国皇女もおり、ニルスたちはその美しさに目を奪われつつも高嶺の花と諦めた様子であった。
赤き剣との再会とアベルの役割
「赤き剣」のメンバー、リン、リーヒャ、ウォーレンが涼たちに声をかけ、来賓席にいるアベルの背景が明かされた。アベルはギルドマスターの代理として招かれていたが、その本音は宮廷魔法団の危険な任務から赤き剣を外すための策略であった。リーヒャは、来賓席を覆う風の障壁に気づき、その防御の強固さから戦争回避のための措置だと推測した。
帝国皇子コンラートとアベルの駆け引き
アベルは来賓席を離れたコンラート皇子と接触する。コンラートはアベルの正体に疑念を抱きつつも、互いに駆け引きを交えた会話を展開した。アベルは冷静に対応しつつ、帝国の意図と示威行動を見極めていた。
フィオナ皇女の休息と部下たちの買い出し
一方、フィオナ皇女は来賓席から戻り、普段着に着替えて疲れを癒していた。副長オスカーと副官ユルゲンは露店で買い出しを行い、フィオナに料理を届ける「任務」を遂行していた。戦場での「爆炎の魔法使い」であるオスカーが食べ物を温める姿は、彼女だけに許される特別な光景であった。
港での新発見と挑戦
翌日、涼たちは港の露店を巡り、新たな食事や船「レインシューター」に目を輝かせた。この船は魔法によって動く画期的な構造で、翌日に実演が行われることを知り期待を膨らませた。その後、「シャテキ」に挑戦するも全く的に届かず落胆する中、アベルが登場。彼は見事百メートルの的を射貫き、周囲を驚かせた。
赤き剣との再会と別れ
赤き剣のメンバーも合流し、アベルの射撃を称賛した。リーヒャはアベルを引き連れ、露店巡りに向かった。一方、涼たちはアベルの活躍を目の当たりにして新たな意欲を抱き、それぞれの楽しみを見つけながら祭りを満喫した。
カレーと冒険者たちの食卓
通りから漂う香りに引き寄せられ、十号室の面々はシーフードカレーの店に入った。それぞれ異なるカレーを注文し、初めてカレーを食べるアモンは「超激辛カレー」を選んだ。予想以上の辛さに挑んだアモンは驚異的な適応力を見せ、おかわりまでするほど楽しんだ。一方でニルスは一口で撃沈し、その辛さを痛感した。
蠢く影と謀略
同じ夜、ウィットナッシュの闇に三つの影が集まり、密かに計画を立てていた。標的は開港祭最終日の園遊会であり、計画の詳細が練られつつあった。
二人乗りボートレースの熱闘
翌日、ニルスとアモンが参加する二人乗りボート周回レースが行われた。対戦相手にはギルド宿舎一号室のダンが含まれており、激しい競争が展開された。先頭争いの中、二艘のボートはブイを超え、互いにオールで攻撃を繰り広げたが、最後はボートが破損し海に投げ出された。彼らの熱闘は観客を沸かせ、特別賞を授与される結果となった。
レインシューターの航行披露
午後には三胴船「レインシューター」の航行披露が行われた。十号室の四人は最前列でその革新的な船を見つめ、感嘆の声を上げた。来賓席ではヒューが涼たちに呆れながらも、船の建造費の高さに驚嘆していた。
弓矢専門店での発見
開港祭四日目、四人は弓矢専門店を訪れ、店主アブラアム・ルイの試作品「連射式弩」に出会った。エトが購入を即決し、仲間たちも費用を分担した。エトは試射場での訓練を経て、弩の操作に熟達した。その後、涼が店内で見つけた完全機械式の懐中時計に心を奪われ、店主とその技術について語り合った。時計の美しさは、まさに芸術の域であった。
開港祭五日目の光景
四人は、午前中に買い食いを楽しみ、老舗の名店で昼食を満喫した。食後、壊れた荷馬車を修理する男たちに気づき、その手際の良さに感心した。ニルスの説明によれば、彼らはルンの街のD級パーティー「みんなで鍛冶師になろう」であった。鍛冶師でありながら木工の技術も持つ彼らの多才ぶりに驚く涼たちであったが、エトは体格の良い神官がいることに驚愕していた。
六日目の店舗めぐり
六日目、四人は露店ではなく、街中の店舗を中心に食べ歩きを楽しんだ。気になる店を次々と訪れ、満腹となりながらも食べつくした。その充実感を胸に、最終日を迎えた。
冒険者ギルドへの訪問
七日目の昼食後、ニルスの提案で冒険者ギルドに立ち寄ることになった。ウィットナッシュの冒険者ギルドはその規模の大きさが印象的であり、四人は多くの冒険者で賑わう光景に感心していた。しかし、ニルスはそこで宿舎一号室のダンと再会し、険悪な雰囲気となった。一方、アモンとダンの仲間たちは和やかに会話を交わし、エトも同じ神官のサーシャと再会していた。
ギルド食堂での歓待
ギルド食堂に誘われた四人は、祭り期間中の飲み放題・食べ放題を満喫した。料理はどれも絶品であり、彼らは魚介料理に舌鼓を打った。涼たちはルンの街とは異なるギルドの文化を楽しんでいたが、その一方で、どこかで密談を交わす者たちの不穏な動きが進行していた。
『爆炎の魔法使い』
園遊会の開始と皇子・皇女の登場
夕刻、領主館では園遊会が始まった。第三皇子コンラートと第十一皇女フィオナが招かれた来賓たちと挨拶を交わしていた。フィオナは華やかな装いで姿を現し、冒険者ギルドの代理であるアベルとも簡単な挨拶を交わした。アベルは園遊会の格式に馴染めず心細さを感じていたが、領主が壇上で開会を宣言し、会が始まった。
結界の異変と襲撃の開始
園遊会が始まって一時間ほど経ったころ、結界の異常に気付いた魔法使いたちは混乱に陥った。魔力供給線が細工されており、防御膜が崩壊。外部からの攻撃が矢や魔法で一斉に始まり、会場は大混乱に陥った。さらに、黒ずくめの賊たちが突入し、出席者たちを次々と襲撃した。騎士たちも応戦したが劣勢を強いられ、中庭は惨劇の場と化した。
皇子コンラートと皇女フィオナの防御戦
フィオナはコンラートを守りながら魔法障壁を張り巡らせ、攻撃に耐え続けた。コンラートは負傷していたが、フィオナの回復魔法で動ける程度には回復した。だが、外部からの攻撃だけでなく、次々と現れる賊たちとの戦闘が続き、彼女の魔力消耗は激しかった。フィオナは救援を求めるために緊急の彩光弾を放ち、仲間に助けを求めた。
側近たちの救援と新たな脅威
フィオナの側近であるオスカーたちは彩光弾を目にし、直ちに領主館へ突入した。館内では黒ずくめの賊たちを撃退しながら中庭を目指したが、そこは地獄絵図であった。一方、フィオナは彩光弾の影響で新たな襲撃者たちに狙われており、コンラートとともに防御と反撃を続けていた。激しい戦闘の末、ようやく少しの間静寂が訪れた。
皇女の落下と冒険者たちの奮闘
彩光弾の効果で発見されたフィオナは、戦闘の衝撃で中庭から海岸へと飛ばされた。偶然それを目撃したニルスたちが急行し、ギリギリで彼女を救出した。だが、黒ずくめの賊たちが現れ、戦闘が再開。連射式弩や剣技を駆使し、賊たちを撃退したが、その場に現れたオスカーがフィオナを抱えるニルスたちを敵と勘違いして攻撃を仕掛けた。
オスカーとの対峙と涼の応戦
オスカーの猛攻に対し、涼は全力で防御と反撃を行った。氷の壁と魔法を駆使し、オスカーの強力な炎魔法を防ぎ切った。その戦闘は激烈を極めたが、ギルドマスター代理のアベルが間に入り、両者を説得。最終的に涼はアベルの頼みを受け入れ、剣を収めた。
フィオナの救出と戦闘の終結
フィオナは無事にオスカーの手に渡り、オスカーも冷静さを取り戻した。アベルの仲裁により、戦争を招きかねない事態は避けられたが、涼の中には怒りと決意が残っていた。オスカーとの戦いを通じて、自らの魔法をさらに鍛える必要性を痛感したのである。
治癒院での回復とリーヒャの尽力
開港祭の翌日、エトは治癒院での治療によりほぼ回復していた。治療には『赤き剣』の神官リーヒャが関わり、その技術の高さにエトは感動していた。外傷はなく、〈サンクチュアリ〉の反動からの回復で済んだのが幸いであった。一方、涼はエトの回復を確認しつつ、この世界の魔法体系の複雑さに改めて興味を抱いていた。
祭り後の露店とアベルの訪問
祭りの後もいくつかの露店は営業を続けており、十号室の四人は最後の買い食いを楽しんでいた。そこにアベルが現れ、前夜の戦闘の後始末について語った。皇女フィオナと皇子コンラートの回復後、アベルが両者に詳細を説明し、副長オスカーの謝罪もあり、十号室の四人との戦闘は不問とされた。ただし、園遊会の襲撃については外交問題に発展する可能性が高く、ウィットナッシュの領主家が責任を問われることは避けられないと述べた。
フィオナ皇女からの感謝と褒賞
アベルは、ニルス、エト、アモンに対し、フィオナ皇女から感謝と金一封が贈られることを伝えた。助けた行為が認められたことに三人は喜んだが、涼には特に褒賞がなかったため、涼は皮肉混じりにアベルと会話を交わしていた。
アベルの園遊会での出来事
涼たちは、園遊会でのアベルの行動について質問した。アベルは最初は参加していたものの、街のギルドマスターとの会談に捕まり、異変に気付くのが遅れたと説明した。しかし、その挙動が怪しいため、涼たちから疑惑の目で見られることとなった。
ルンの街への手紙とアベルの依頼
最後にアベルは、ウィットナッシュのギルドマスターとの話し合いの内容を書き留めた手紙を、ルンの街のヒューに届ける依頼を十号室の四人に託した。アベル自身が避けようとしている様子を見た涼は、問題を先送りする人の性質について考えを巡らせていた。
帰路
護衛依頼の完遂とニルスの名声
十日ぶりに商団と合流した十号室のメンバーは、デロング率いる『コーヒーメーカー』とも再会した。デロングはニルスの名声が広がったことをボート競技の話題を交えながら称賛した。護衛は無事に完了し、一行は問題なくルンの街に帰還した。
セーラの不機嫌と館の様子
セーラの不機嫌は領主館の全員が感じていた。アルフォンソはその原因を探ろうと考え、セーラに敬愛と畏怖の念を抱いていた。メイドのレイリッタは、セーラが剣術の稽古には普段通り取り組みながらも元気がない様子を憂慮していた。その理由として、リョウとの模擬戦での感情の高ぶりと別れ際の言葉が影響していると推測していた。
冒険者ギルドでのセーラの落胆
セーラは冒険者ギルドを訪れ、リョウを探したが、彼が依頼で街を離れていると聞かされる。これにより深い落胆を覚え、しばらくの間、北図書館や『飽食亭』に足を運ぶも、リョウの姿を見つけられず、心は晴れなかった。
再会と禁書庫での研究
八日後、セーラは『飽食亭』でようやくリョウと再会し、感極まる様子を見せた。その後、セーラの手配により、リョウは北図書館の禁書庫で錬金術に関する羊皮紙を閲覧することができた。禁書庫での調査では、セーラがリョウのために尽力したことが明らかとなり、リョウは彼女への感謝を改めて感じた。
転写魔法の学びと転写屋訪問
セーラはリョウを転写屋に連れて行き、転写魔法の実演を見せた。リョウはその便利さと実用性に驚嘆し、日常の中で魔法が果たす役割について学んだ。転写屋のコピラスからも丁寧な説明を受け、リョウは新たな知識を得た。
呼び方の変化と親密さの表れ
転写屋を出た後、セーラはリョウに対して「さん付け」をやめて名前を呼び捨てにしてほしいと頼んだ。リョウがそれに応じると、セーラは満足げな笑顔を見せた。このやり取りは二人の間の信頼と親しみの深まりを象徴するものであった。
ニルスの不思議な村
罰則としての依頼遂行と残る目標
涼は冒険者ギルドから「二カ月間で依頼を三つこなす」という罰則を課されていた。ウィットナッシュへの往復商団護衛依頼を完了し、すでに二つ分を消化していた。残り一つの依頼も時間的な余裕があるため、涼は北図書館や『飽食亭』、騎士団演習場での日々を過ごしていた。
ニルスの依頼と討伐の概要
ある日、ニルスが涼に助けを求めた。ニルスの故郷でゴブリンとスケルトン討伐の依頼が出されており、涼が臨時パーティーを組むことで依頼を受ける条件が整うという。涼は了承し、翌日から準備を開始した。ゴブリンとスケルトンの組み合わせに違和感を覚える中、彼らは討伐対象の詳細を調査する必要があると考えた。
騎士団での模擬戦とセーラへの報告
涼は依頼のため、セーラとの模擬戦を一時的にキャンセルする必要があった。騎士団演習場でセーラにその旨を伝えると、セーラは一時落胆したものの、涼の帰還後に模擬戦や食事に行く約束を取り付けて満足した様子だった。
ギルドマスターとの面談と依頼の背景
ギルドで依頼手続きを済ませた後、ギルドマスター・ヒューとの面談が行われた。カイラディーのギルドから回ってきたこの依頼では、過去に派遣されたパーティーがいずれも失敗していた。スケルトンとの遭遇報告や村人との不和が背景にあり、詳細な情報が不足している状態での挑戦となった。
移動中の観察と退魔柱の説明
カイラディーへ向かう道中、涼たちは整備された街道と設置された退魔柱について話し合った。退魔柱は魔物避けの効果を持ち、主要街道の安全確保に貢献しているが、涼はその効果を自宅の結界と比較し、興味を抱いた。
カイラディーでのサブマスターとの対話
カイラディーのギルドではサブマスター・ランデンビアが対応し、これまでの依頼の失敗経緯を説明した。スケルトンは東の森で発見されており、村人たちの協力不足や伝統的な制約が討伐の障害になっていたという。
ニルスの故郷アバリー村への到着
アバリー村に到着した涼たちは、ニルスの知人たちから歓迎を受けた。村のしきたりや秘事が討伐依頼に絡んでいると知った三人は、ニルスが村の人々を説得する間、彼の弟夫婦の家で待機し、村の背景事情を知った。ニルスの尽力により、依頼に対する村人たちの協力体制が整えられていく様子であった。
守護獣と討伐計画の共有
ニルスは総会から戻り、スケルトン討伐とゴブリン調査の計画を話した。特に、東の森には村の守護獣が存在するため、血を流さないよう努力することが求められた。また、村には祠があり、その説明は翌日、相談役のばば様が行うとされた。ニルスは総会で話された内容を他言無用とし、討伐の準備を進めた。
ゴブリン調査の開始と巣の発見
翌日、ニルスたちは村長ブーランと共にゴブリンの目撃場所へ向かった。道中、子供の遊び場近くでゴブリンの足跡が急増していることを確認した。さらに進むと、ゴブリンの巣が形成されている可能性が高いと推測された。その後、涼の索敵能力により十匹のゴブリンが接近していると判明し、即座に対応した。
ゴブリン討伐と巣の位置特定
涼は〈アイスバインド〉の魔法を用い、ゴブリンたちを動けなくし、仲間が一匹ずつ仕留める形で迅速に九匹を倒した。一匹を意図的に逃がすことで、巣の位置を特定する手段を取った。逃げるゴブリンの後を追い、小高い丘に隠れた巣を発見した。
ゴブリンジェネラルとの戦闘
巣の外にいた十匹のゴブリンを再び涼の魔法で捕縛し殲滅した直後、洞窟からゴブリンジェネラルが姿を現した。ジェネラルは高い戦闘力を持つが、涼の魔法によって動きを封じられ、仰向けに転倒させられた。ニルスがその隙をついて首を刎ね、討伐に成功した。
帰路と村人たちの感嘆
ゴブリンジェネラルの討伐後、ニルスたちはジェネラルの魔石を持ち帰った。エトとアモンは即興の歌を作り上機嫌であった。村長ブーランは、ニルスとその仲間たちの実力に感嘆し、村への帰還を見守った。
守護獣
村人たちの感謝と守護獣への案内
村広場ではゴブリン討伐の成功を聞いた村人たちが集まり、ニルスたちを称賛し食べ物を振る舞った。村長ブーランは酒を控えるよう注意し、ばば様から守護獣への案内を指示された。涼は守護獣との謁見に期待しつつ、不穏な展開を想像していた。一方、エトはばば様の杖の根付を見て、大地母神の紋章であることに気付いた。ばば様の説明により、大地母神は過去の七神の一柱であったが現在は衰退していることが語られた。
守護獣との出会い
村人が立ち入ることを禁じられた東の森を進み、一行は守護獣が棲む洞窟に到着した。守護獣は銀色の毛並みを持つ巨大な狼の姿をしており、体力を失いつつも毅然とした態度で四人を迎え入れた。守護獣は自身を「ンクゥースィン」と名乗り、特に涼に興味を示した。涼の存在が守護獣の寿命を大幅に延ばすという現象に、ばば様や村長は驚きを隠せなかった。
討伐計画と祠の謎
守護獣の説明により、討伐対象として三十体のスケルトンと強力な個体「スケルトンアーク」が判明した。一行は祠に向かい、エトの魔法〈ターンアンデッド〉によってスケルトンを浄化した。アークを討伐する際、涼が魔法で特殊な氷床を作り、転倒させることで無力化。ニルスとアモンが涼の生成した氷ハンマーで攻撃を続け、ついに討伐に成功した。
祠内部の調査
祠内部は広々としており、祭壇とひび割れた黒い水晶があった。ばば様の話では、かつて光り輝いていた水晶が黒く濁り、割れた過去があるという。現在も祠から力が流れており、洞窟にも影響を与えている可能性があることが語られた。ばば様は次世代の巫女たちにこの祠を託す意向を示し、村の未来への希望を感じさせた。
ゴブリンの洞窟と今後の課題
ばば様は、ゴブリンの洞窟が村を襲った過去の本拠地である可能性を指摘し、封印の塚を作る計画を立てた。この日、一連の討伐と祠の調査によって、村の長年の懸案が解決に向かい、村人たちの未来への安心感が強まった。
依頼達成と帰還
十号室の四人は、五日間の依頼を無事達成し、ルンの街に帰還した。到着したのは夕方で、冒険者ギルドは普段以上の混雑を見せていた。混雑を避けて、四人は先に行きつけの公衆浴場で体を休めることにした。
宿舎生活の期限
浴場での会話中、ニルスとエトが冒険者登録から三百日が迫っていることを話題にした。この期限を迎えると、ギルド宿舎を退去しなければならないことを二人は懸念していた。涼もこれを聞いて、楽しい時間の終わりが近付いていると感じた。
共同生活の提案
ニルスは、退去後にエトと家を借りるか購入し、涼とアモンを誘って共同生活を提案した。アモンは即座に同意し、一緒に住むことを決めた。一方、涼は自身の魔法や錬金術の実験のために広い土地が必要だと説明し、別に家を購入すると答えた。涼の決定に、ニルスとエトは寂しさを感じながらも、それぞれ理解を示した。
未来への語らい
その夜、四人はギルド食堂で遅くまで語り合った。今回の依頼の振り返り、これまでの思い出、そして未来の計画について、笑顔と少しの寂しさを交えながら話を続けた。
青い目の者たち
冒険者ギルドマスターの訪問
冒険者ギルドマスターのヒュー・マクグラスは、ルンの街の領主館を訪れ、領主や騎士団長ネヴィル・ブラックと打ち合わせを行った。話題は、涼とアベルが持ち込んだワイバーンの魔石の追加購入に関する件であった。魔石は、領主の協力の下、工房の要望に応じて再度購入されることとなり、取引金額も六億フロリンで確定した。
涼とセーラの模擬戦
話題は突如として涼に移り、騎士団長ネヴィルは涼が騎士団演習場でセーラと模擬戦を行っていることを語った。ヒューは驚愕し、涼が魔法使いであることを指摘したが、ネヴィルは涼が剣術でも互角に戦えることに驚きを隠せなかった。セーラの「風装」を活かした剣技は圧倒的であり、模擬戦は騎士団員たちにも良い刺激を与えていると評価された。
飽食亭での会話
翌日、涼は久々にセーラと飽食亭で食事を共にした。二人はカレーを楽しみながら、それぞれの予定を話し合い、セーラはその後領主館へ、涼はアベルに会うため黄金の波亭へ向かった。
アベルとの家探し
涼はアベルに、ニルスやエトが宿舎を出る予定であることを伝え、彼自身も広い庭のある家を探すための協力を依頼した。アベルはギルドの不動産部門を紹介し、二人で物件探しを進めることとなった。リプレート部門長の協力により、涼の希望に合う家を見つけるための準備が進められた。
ケーキとコーヒーの一幕
物件探しの合間に、アベルと涼は「カフェ・ド・ショコラ」でケーキとコーヒーを楽しんだ。涼は異世界におけるコーヒーやケーキの存在に驚きつつも、味を堪能した。会話の中で、セーラとの模擬戦や過去の出来事が話題となり、二人は親交を深めた。
衛兵隊長ニムルの依頼
最後にアベルは、不審者が集まる建物の捜索に涼の助力を求めた。衛兵隊長ニムルからの正式な依頼であり、二人は衛兵詰所で詳細を確認した後、行動に移ることを決めた。涼は渋りながらもアベルの頼みを引き受けることとなった。
衛兵詰所での指令
衛兵詰所に着いたアベルと涼は、ニムル隊長から捜索計画の変更を知らされた。隠れ家に潜んでいる連合の間諜が全員揃っているとの情報を受け、急遽予定を繰り上げたのだ。二十名の襲撃隊が編成され、アベルと涼は裏口から逃走者の確保を担当することとなった。
隠れ家での戦闘
工房跡に到着した一行は正面と裏口に分かれて突入した。正面からの突入で室内が混乱する中、裏口から逃げ出した者たちを涼が魔法で足止めし、衛兵が拘束した。しかし、二人の間諜が窓から逃走し、アベルとジョシュが追跡を開始した。涼は取り残されながらも、拘束作業を続けた。
紫髪の男との遭遇
逃走者を追うアベルは、紫髪の男と遭遇する。男は高度な魔法を駆使してアベルを攻撃し、アベルは剣技で応戦した。一瞬の隙をついて反撃を試みるも、相手を取り逃がしてしまう。その後、涼が現れ二人で反撃に転じたが、紫髪の男は強力な魔法を放ち撤退した。涼は相手の魔法の異常な強さに気付き、彼の正体に疑念を抱いた。
新たな家の発見
翌日、涼は冒険者ギルドの不動産部門で紹介された家を見に行った。その物件は街の外にあり、広大な庭と清潔な内装を備えていた。涼は庭の広さや自由な改装が可能である点に満足し、物件を即決で購入した。ただし風呂が無い点に気付いたが、自分で設置することを決意した。
紫髪の男女の撤退
一方、紫髪の男と女は馬車に乗り、ルンの街を後にしていた。彼らは「異常値」の調査を目的に潜入していたが、予期せぬ戦闘で計画が狂った様子であった。男は涼とアベルへの復讐を誓いつつ、次の目標地へ向かうことを決めた。
連合の新たな動き
ルンの街から離脱した間諜たちの失態が北方の連合本部に報告された。将軍はその事態に苛立ちつつ、南部の領地攻略を急ぐよう指示を出した。新たな工作員を送り込む決定がなされ、ルン辺境伯領は再び不穏な動きを見せ始めた。
エピローグ
白い世界と転生者の運命
オスカーとの前哨戦
ミカエル(仮名)は、白い世界で複数の世界の管理を行っていた。その中で、三原涼が「爆炎の魔法使い」オスカー・ルスカと初めて衝突した出来事に注目していた。水と火という相反する属性がぶつかる戦いであったが、幸いにも今回は前哨戦に過ぎず、大きな被害は出なかったことを確認して安堵していた。
未来予測と涼の運命
石板を操作し、未来の予測を続けるミカエル(仮名)は、涼の行く末がさらなる試練に満ちていることを見出した。転生者としての特異性ゆえに、通常の人生では経験し得ない困難に巻き込まれ続ける運命を持つことを理解していた。そして、その運命を「修羅の道」と評し、涼が無事にその過酷な運命を生き抜けるよう願った。
外伝 火属性の魔法使い II
再会
白髪の少年と盗賊狩り
オスカーの新たな道
オスカーが姿を消してから二年が経過した。マシュー領の抗争を契機にコーンは冒険者となり、独立の道を歩んでいた。一方で、連合支配下では「盗賊狩り」という噂が広がり、その人物が一人で盗賊を倒していると言われていた。盗賊を狩る際には、半数を火で焼き、残りを剣で斬る手法が特徴であった。この噂を聞くたびに、コーンの脳裏には火属性の魔法使いであるオスカーの姿が浮かんでいた。
フリントの街とオスカーの評判
フリントの街の冒険者ギルドにおいて、オスカーはよく知られた存在であった。基本的にソロで活動し、盗賊情報を集めながら冒険者として生計を立てていた。ランクは年齢制限によりE級であったが、その実力は目を見張るものであった。ギルド内ではオスカーに手を出さないという不文律が存在し、彼の剣の腕前や協調性の高さが評価されていた。
ジョスタ砦での戦い
盗賊団「黒キツネ」が潜むジョスタ砦の情報を耳にしたオスカーは、単身で砦へ向かった。砦内では、盗賊たちを瞬く間に仕留め、リーダーであるバランに詰め寄った。バランは最終的にポーシュとボスコナの情報を提供したが、命乞いを受け入れられることはなく、炎の檻で命を落とした。
ニュスター砦での対決
次にニュスター砦に潜む盗賊団「闇夜の狼」に対してオスカーは襲撃を仕掛けた。リーダーであるポーシュとの一対一の剣戟は激戦となり、ポーシュの巧妙な駆け引きにオスカーは苦戦を強いられた。しかし、オスカーは火属性魔法で煙を操り、ポーシュを追い詰めた。最終的に、ポーシュは情報を引き出された後、オスカーの剣によって命を落とした。
盗賊狩りの終焉と帝国への旅
ニュスター砦とジョスタ砦での戦いの後、オスカーは盗賊狩りを終えた。その後、盗賊狩りの存在は姿を消し、噂だけが残った。一方、オスカーは父の剣に関する真相を胸に抱え、さらなる目標を求めて帝国へ向かう道を歩み始めた。移動中、彼は火属性魔法の応用を模索し、敵を無力化する新たな技術の必要性を考え続けていた。
帝国へ
オスカーとエンペラータイガーの討伐戦
エンペドクレスの哲学と火属性魔法の進化
紀元前五世紀の哲学者エンペドクレスが唱えた四元素説は、土、水、風、火の属性魔法に通じる考え方であった。オスカーはその火属性魔法の中で、特にプラズマに近い状態を扱う技術を習得していた。彼の火は「非常に熱い火」として認識され、プラズマの概念がないこの世界では「真っ白い火」と呼ばれていた。〈ピアッシングファイア〉と名付けられたこの魔法は、オスカーの火属性魔法の新たな進化を示していた。
帝国での冒険者生活と〈乱射乱撃〉との出会い
オスカーは十四歳となり、帝国のヘムレーベンで冒険者活動を行っていた。〈乱射乱撃〉というC級パーティーから助っ人を依頼され、ウォータイガー討伐に同行することになった。ウォータイガーの討伐は、斥候アンの冷静な判断や双剣士ザシャの巧みな剣技、オスカーの〈ピアッシングファイア〉など、それぞれの役割が重要であった。
ウォータイガーの正体とエンペラータイガーとの戦闘
討伐対象のウォータイガーが実際にはエンペラータイガーであることが判明し、一行は予想以上の強敵に直面した。エンペラータイガーは不可視の突撃や〈エアスラッシュ〉を駆使し、一行を圧倒したが、オスカーの防御魔法〈障壁〉が攻撃を防ぎ続けた。斥候アンが放った短剣がエンペラータイガーの左目を潰し、戦況を変えるきっかけとなった。
エンペラータイガー討伐と剣技の一撃
怒りに燃えるエンペラータイガーが新たな攻撃を仕掛ける中、オスカーは冷静に対応した。自ら突進し、エンペラータイガーの左耳に剣を突き刺すという巧妙な一撃で、見事に討伐を果たした。この一撃は剣士エルマーに「剣技:零旋」を連想させたが、オスカー自身はそれを否定し、単なる力と勢いを使った戦法だと説明した。
討伐の成功と新たな未来
こうして〈乱射乱撃〉とオスカーは、圧倒的な強さを誇るエンペラータイガーの討伐に成功した。一行はこの結果に安堵しつつも、オスカーの驚異的な実力に改めて感銘を受けていた。この経験は、オスカーにとってさらなる成長の礎となるものであった。
エンペラータイガー討伐後のギルド帰還と新たな展開
ギルドへの帰還と異様な喧騒
エンペラータイガーの部位を積み、オスカーたちはヘムレーベンの冒険者ギルドへ戻った。宵の口にもかかわらず、受付周辺は冒険者たちでごった返していた。その異様な光景に、『乱射乱撃』のメンバーは困惑しながらも受付嬢スーシェのもとへ向かった。
エンペラータイガー討伐の報告
剣士エルマーが討伐完了を報告し、ウォータイガーではなくエンペラータイガーであった事実を伝えた。スーシェは驚愕したが、討伐成功の報告に安堵と祝福の言葉を述べた。エルマーはエンペラータイガーの部位を裏の鑑定所へ回すよう指示しつつ、ギルドの喧騒の理由を尋ねた。
宣戦布告と大戦の予兆
スーシェから告げられたのは、「連合が王国に宣戦布告をした」という重大な知らせであった。双剣士ザシャをはじめ全員が驚愕し、中央諸国での大規模な戦争の到来を予感した。この瞬間、大国同士の戦争――後に「大戦」と呼ばれる出来事が幕を開けようとしていた。
ルーセイ村の魔銅鉱石
ルーセイ村廃坑での魔銅鉱石採掘と予期せぬ戦い
廃坑の崩落と予期せぬ困難
ニルス、エト、アモンの三人は、ルーセイ村に到着後、廃坑へ向かった。しかし、入口付近が崩落しており、中へ入ることができない状況であった。現場には多数の村人が集まり、状況の確認が行われていた。そんな中、C級冒険者パーティー『クライスさまと仲間たち』のリーダーであるクライスが現れ、彼らと協力する形で廃坑への新たな道を開くことが提案された。
新たな道の開通と採掘開始
土属性魔法使いリュートの高位魔法〈ストーンチェンジ〉によって壁に穴が開けられ、一行は廃坑内に入ることができた。広間に到着すると、クライスは採掘のポイントや注意点を説明した後、ニルスたちに作業を託し、自分たちは廃坑内の安全確認に向かった。ニルスたちは適度な休憩を挟みながらつるはしを振り続け、ついに二個の魔銅鉱石を掘り出すことに成功した。
広間への侵入者と緊急撤退
歓喜の中、再び不穏な音が響き渡り、広間の壁が崩れた。現れたのは、地底の魔物グレーターモールであった。土属性攻撃が効かない厄介な魔物に対し、クライスはニルスたちを安全な場所に退避させ、自分たちが応戦することを決断した。ニルスたちは指示に従い、魔銅鉱石を抱えて廃坑の外へ急いだ。
グレーターモールの撃破と先輩の支援
廃坑外で待つ三人の元に、クライスたちが無事戻ってきた。彼らはグレーターモールを見事に撃破し、その魔石を手に入れていた。クライスは、同じ街の後輩冒険者を支援するのは当然のこととし、ニルスたちの依頼成功を共に喜んだ。このサポートのおかげで、クライスたちは貴重な魔石を得ることもでき、双方にとって有意義な結果となった。
採掘の成功と温かな別れ
こうして、ニルス、エト、アモンは目標であった魔銅鉱石の採掘を成功させた。彼らはクライスたちの助けに感謝しつつ、次の冒険へ向けて意気込んでいた。廃坑での試練は、彼らにとって貴重な経験となった。
同シリーズ
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