小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 3」感想・ネタバレ

小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 3」感想・ネタバレ

どんなラノベ?

『水属性の魔法使い』は、久宝忠による異世界ファンタジー小説である。主人公・涼が水属性の魔法を駆使し、異世界での冒険を繰り広げる物語である。

主要キャラクター
:異世界に転生した青年で、水属性の魔法使い。マイペースな性格でありながら、卓越した魔法の才能を持つ。
アベル:涼の仲間であり、天才剣士。涼との出会いをきっかけに、共に冒険を続ける。
セーラ:涼の仲間で、エルフの女性。高い戦闘能力と知識を持ち、涼をサポートする。

物語の特徴

本作は、異世界転生や魔法、冒険といった要素を中心に展開される。主人公・涼のマイペースな性格と圧倒的な魔法の実力が、物語にユーモアと爽快感を与えている。また、仲間との絆や成長、各国の陰謀や戦争など、多彩なストーリーラインが魅力である。

出版情報
出版社TOブックス
書籍版発売日
ISBN:
コミカライズ:墨天業による漫画版が『comicコロナ』にて2021年9月より連載中
アニメ化:2025年7月よりテレビアニメ放送予定

読んだ本のタイトル

水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編Ⅲ
(英語名:The Water Magician
著者:久宝忠 氏
イラスト:めばる  氏

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 3」感想・ネタバレBookliveで購入gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 3」感想・ネタバレBOOK☆WALKERで購入gifbanner?sid=3589474&pid=890540720 小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 3」感想・ネタバレ

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あらすじ・内容

商人の護衛依頼でインベリー公国に向かった涼は、公都で途方に暮れていた。王国を出る前に預金を下ろし忘れてしまい、異国の地で無一文になってしまったのだ。仲間のいるルンの街に帰るために引き受けたのは、王国行きの護衛依頼。その内容は、暗殺教団に狙われる王子の影武者になることだった! だが、裏をかかれて本物が誘拐されてしまい……? 背後に蠢く大国の思惑、王子が狙われる真の理由。次々降りかかる難題に対して、涼の答えはいつもシンプルである——「邪魔者は全員まとめて、永久凍土(パーマフロスト)に沈めます!」。最強水魔法使いの気ままな冒険譚・第3弾!

水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編3

感想

【第一部 中央諸国編3】主な出来事は以下の通り。

  • 高級家具店での購入
    涼はルンの街の高級家具店で50万フロリンのソファーを購入し、アベルはその出費に驚きつつも納得していた。
  • カフェでの情報共有
    二人はカフェでケーキを楽しみながら、アベルが外国諜報員の脱獄と「影軍」の存在について情報を伝えた。
  • 衛兵隊長からの協力依頼
    涼とアベルは衛兵隊長ニムルから捕縛作戦の協力を求められ、裏口で迎撃を担当することになった。
  • 捕り物と遭遇
    涼の魔法で脱走者を捕縛する中、紫髪の女性に遭遇したが、彼女はその場から姿を消した。
  • 紫髪の女性の動向
    女性は馬車の中で認識阻害の魔法が有効だったことを確認しつつ、次の行動を検討していた。
  • 捕り物後の反省
    涼とアベルは「影軍」の脅威や平和実現の難しさについて考えを巡らせた。
  • 勇者ローマンの帝都訪問
    勇者ローマン一行が帝都マルクドルフを訪れ、皇帝ルパート六世との謁見で模擬戦を希望した。
  • 模擬戦の準備と進行
    魔法師団長フィオナが模擬戦を提案し、師団員との対戦を通じて勇者パーティーと師団の双方が学びを得た。
  • ローマンの敗北と成長
    ローマンは模擬戦で敗北を喫し、さらなる成長を目指すことを決意した。
  • ゲッコー商隊の出発
    涼は護衛依頼を受け、商人ゲッコーの商隊と共にインベリー公国を目指して旅立った。
  • ロー大橋崩落と旧街道の選択
    商隊は大橋崩落のため、治安の悪い旧街道を通らざるを得なかった。
  • 盗賊襲撃の撃退
    涼の魔法が商隊を守り、計画的な盗賊団の襲撃を撃退した。
  • 謎の不審者との遭遇
    涼は不審者を拘束し、その行動やタトゥーに謎を感じたが、さらなる調査が必要となった。
  • 商隊の進行と魔物の襲撃
    涼は魔物から商隊を守りつつ、暗躍する勢力の存在を警戒した。
  • シャーフィーの拘束と情報提供
    涼は襲撃者のリーダー、シャーフィーを拘束し、呪いや暗殺教団についての情報を得た。
  • タトゥーの除去と教団の妨害
    リーヒャの魔法でシャーフィーのタトゥーが除去される中、教団の賊が妨害を試みたが撃退された。
  • 暗殺教団の脅威
    涼は教団の存在に興味を抱き、さらなる調査と対策を進める意志を固めた。
  • 商隊の次の目的地へ
    ゲッコー商隊は準備を整え、次なる目的地へ旅を続けた。
  • シャーフィーの拘束と情報収集
    シャーフィーの拘束が続く中、襲撃者から暗殺教団の活動に関する限定的な情報を引き出す作業が進められた。
  • 国境封鎖と調査依頼
    国境が封鎖され、ゲッコーが調査を依頼。アベルと涼はジマリーノへ潜入する任務を負った。
  • ジマリーノ潜入と情報収集
    城門が閉鎖された街に涼の魔法で侵入し、酒場で義賊「暁の国境団」と接触。
  • 酒場襲撃と義賊の脱出支援
    襲撃を察知した涼が義賊を援護し、脱出を成功させた。
  • 義賊の活動と街の腐敗
    義賊は街の腐敗を調査し、中心人物エレメエヴナの悪事を暴く計画を進めた。
  • 炎帝との戦闘と脱出
    赤い魔剣を持つ炎帝とアベルが激闘を繰り広げ、涼の支援で脱出を果たした。
  • ロースター隊長と赤い魔石の発見
    涼がロースター隊長から火属性の赤い魔石を回収し、これが国境封鎖と関わる可能性を示唆。
  • 暗殺教団本部への突入
    涼は教団本部を襲撃し、首領との戦闘に勝利。首領から錬金術の知識を受け取った。
  • ウィリー殿下の救出と旅路
    拉致された殿下を救出し、護衛を続けながら王都へ向かう旅を再開。
  • 暗殺教団と帝国の思惑
    デブヒ帝国が暗殺教団の活動を利用している事実が判明。教団拠点の壊滅が確認された。
  • 白い世界での管理者の独白
    管理者ミカエル(仮名)が涼とアベルの運命に懸念を示し、王都での新たな波乱を予測した。

総括

遂に600ページオーバー。

いきなり勇者パーティーが帝国に現れて、もう1人の主人公カイトと模擬戦を希望する。

そしてコテンパンにやられて未熟さが露呈する。

そんな勇者パーティーは今度は何処へ?

そんな時に主人公を含めた冒険者達はは帝国の侵攻前の工作に巻き込まれてしまう。

手紙を渡しに行った先の公爵が暗殺されたり。

通商破壊のために盗賊に扮した暗殺者に襲われたり。

モンスターパレードをされたり、、

そんな確実に殺しに来てる騒動を全て呆気なく鎮圧してしまう主人公の水魔法使い。

それに目をキラキラさせる商隊の水魔法使い達。

そして、遂には暗殺者を捕まえるが、胸に入ってる刺青には裏切ったら心臓を石の槍が突き刺す悪質な呪いが組み込まれており。

それを解除するために大手術をしたりするが、、

手術中に暗殺者が襲って来るおまけ付き。

どうやら呪いを解除しようとしたら通知が行くらしい。

そして、そんな暗殺者達の総本山。

暗殺教会に乗り込んだらそのボスと主人公の魔法のエフェクトがやらたらとお互いの琴線に触れて仲良さそうに殺し合いをして、遂には決着が付いて相手が転生者だと判る。

そして、ボスは部下の罠にハマり死亡するが錬金術の資料を主人公に渡す。

益々マッドになるな、、

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備忘録

プロローグ

高級家具店での選定

涼とアベルはルンの街北側の高級家具店を訪れた。涼は50万フロリンの高級ソファーを選び、店員に購入を依頼した。アベルはその予想外の出費に驚きつつも、涼の満足した様子を見て安堵していた。

カフェでの会話とアベルの情報

家具店を後にした二人は、涼の提案で「カフェ・ド・ショコラ」に向かいケーキセットを楽しむことになった。道中、アベルは涼に以前捕らえた外国諜報員が脱獄した情報を伝えた。その四人が正規の暗殺訓練を受けた者であり、帝国第二十軍「影軍」の一員である可能性を示唆した。

衛兵隊長からの依頼

衛兵詰所の前を通りかかった二人は、衛兵隊長ニムルから再び捕り物への協力を求められた。ニムルは捕縛対象が食堂跡に潜伏していることを説明し、涼とアベルは裏口での迎撃を任された。

捕り物と逃亡者の追跡

突入後、逃げ出した三人を涼が魔法で動きを封じ、衛兵隊が拘束した。さらに窓から飛び出した一人を涼が氷の槍で妨害した。別の窓から逃げた男を追う途中、涼とアベルは紫髪の青い目を持つ女性と遭遇した。二人は彼女の正体に疑念を抱きつつも、女性は姿を消した。

紫髪の女性の動向

紫髪の女性は馬車の中で、涼とアベルとの偶然の遭遇に驚きつつも、認識阻害の魔法が有効だったと安心していた。一方で、同行者ユリウスの力任せの行動を懸念しつつ、次の行動を考えていた。

平和への思い

捕り物が終了し、涼は再び「影軍」の存在とルンの街における不穏な動きに思いを巡らせた。アベルとの軽口を交わしながら、世界平和の実現がいかに難しいかを改めて実感するのだった。

勇者の訪問

帝都での勇者到来と謁見

未明の雪に覆われたデブヒ帝国帝都マルクドルフで、勇者ローマン一行が帝城に到着した。皇帝ルパート六世は勇者との謁見に渋々応じ、約三百年前の王国時代に結ばれた勇者との協力約定に基づく対応を確認した。謁見の場でローマンは、皇帝魔法師団副長オスカー・ルスカとの模擬戦を希望した。ルパート六世はこれを了承し、翌日の演習場訪問を許可した。

皇帝魔法師団とオスカーの現状

魔法演習場では、師団長フィオナ・ルビーン・ボルネミッサが勇者一行の訪問連絡を受けた。副長オスカーはウィットナッシュの件以降、一人で魔法演習場にこもり鍛錬を続けており、師団運営はフィオナを中心に問題なく進んでいた。フィオナは勇者一行を迎える準備を整え、模擬戦への対応を指示した。

勇者一行の演習場到着と歓迎

翌日、勇者ローマン一行は魔法演習場に到着した。フィオナは直々に出迎え、演習見学を求めるローマンに対し、師団員との模擬戦を条件に許可する方針を示した。これを受け、火属性魔法使いゴードンと、師団員クリムトとの模擬戦が決定した。

ゴードンとクリムトの模擬戦

模擬戦ではゴードンが火属性魔法を次々と繰り出すが、クリムトは冷静に迎撃し続けた。継戦能力で優位を示したものの、経験不足から最後はゴードンに敗北を喫した。フィオナはクリムトの継戦能力を高く評価し、経験を積むことを励ました。

続く模擬戦と勇者ローマンの挑戦

模擬戦はさらに続き、勇者一行のアリシアやベルロックが師団員と対戦した。最後にローマン自身が第一中隊長エミール・フィッシャーと戦ったが、実力差が歴然としており完敗した。模擬戦を通じて、勇者一行と師団員の双方に学びの機会が与えられた。

フィオナの戦略と指導方針

フィオナは模擬戦を通じて師団員に実戦経験を積ませつつ、勇者一行に帝国の実力を示すという二重の目的を達成した。勝ち負けにこだわらず、師団員の成長を重視したフィオナの姿勢が印象的であった。

朝の準備とオスカーの不在

勇者パーティーは準備された別館で朝食をとり、フィオナたちは師団長室で朝の報告会を開いていた。しかし、いつもは朝食に姿を見せる副長オスカーが現れなかった。ユルゲンが心配するも、フィオナはオスカーが復帰の準備をしていると見越し、そのまま放置することを決めた。

団体戦の提案とメンバー選定

フィオナは勇者パーティーに七対七の団体戦を提案し、グラハムがこれを受諾した。フィオナは自分を含む師団の精鋭七名を選び、対戦準備を整えた。副官ユルゲンや中隊長たちに加え、フィオナ自身がメンバーに入ることを明かし、周囲を驚かせた。

開幕の激戦とフィオナの指揮

試合開始と同時に、フィオナパーティーは強力な魔法を一斉に放ち、演習場の魔法障壁が破れるほどの威力を見せた。しかし、勇者パーティーはローマンの聖剣で攻撃を防ぎ、全員無傷で応戦した。ローマンは仲間に本気を出すよう促し、戦闘は激しさを増した。

個別戦闘とフィオナの剣戟

フィオナはローマンと直接剣戟を繰り広げ、宝剣レイヴンの力を最大限に引き出しながら戦った。剣術と魔法を融合させた戦闘スタイルは、ローマンを圧倒し、師団員たちにも驚きを与えた。一方、モーリスやアッシュカーンはそれぞれユルゲンやマリーと戦い、互いに一進一退の攻防が続いた。

アッシュカーンの敗北とモーリスの機転

アッシュカーンはユルゲンの巧妙な土魔法によって動きを封じられ、降参を余儀なくされた。その直後、斥候のモーリスがフィオナパーティー後衛の後方に回り込み、攻撃を仕掛けた。モーリスの奇襲により、フィオナパーティーの陣形に混乱が生じた。

均衡の崩壊と戦況の変化

モーリスの奇襲によって、フィオナパーティーの後衛が混乱し、戦況が動き出した。ユルゲンは敵の動きを察知するのが遅れ、劣勢に立たされた。一方、中央でのローマンとフィオナの戦闘は、依然として激しい剣戟が続いていた。戦況はまだ均衡を保ちつつも、どちらに転ぶか分からない状況であった。

フィオナパーティー後衛の混乱と敗北

斥候モーリスの奇襲により、フィオナパーティー後衛のメンバーが次々と戦闘不能に追い込まれた。泥地生成や煙幕による攪乱戦術が功を奏し、フィオナパーティーは戦力を削がれた。ユルゲンも事態の改善を図ろうとしたが、フィオナがローマンとの戦闘に集中していたこともあり、混乱は収拾できなかった。そして、フィオナはエミールに降参を告げ、試合は勇者パーティーの勝利に終わった。

オスカー副長の帰還

試合終了後、フィオナは観客席最上段に現れたオスカー副長を確認した。オスカーは二百人近い師団員の敬礼を受けながら降りてきて、フィオナの前で復帰を宣言した。簡潔な言葉ながら、フィオナとの間に濃密な信頼が感じられるやり取りであった。その後、フィオナはオスカーに勇者ローマンとの模擬戦について伝えた。

模擬戦の提案とオスカーの条件

オスカーは模擬戦を一度は断ったものの、ローマンの真摯な願いに応じ、試合を承諾した。ただし、勇者パーティー全員が相手をする形を要求し、その提案に対してゴードンが激昂したものの、最終的に試合が始まることとなった。

ゴードンの敗北とローマンの挑戦

試合開始直後、ゴードンは最強の炎魔法で攻撃したが、オスカーは軽々とそれを防ぎ、反撃でゴードンを倒した。この結果、ローマンは強化魔法を受けた上で戦闘に臨み、聖剣アスタルトを駆使して攻撃を繰り出した。しかし、オスカーの魔法と物理を融合した〈障壁〉の前に、全ての攻撃が弾かれた。

オスカーの勝利とローマンの成長

最終的にローマンの渾身の突きも〈障壁〉を破るには至らず、オスカーの勝利が宣告された。オスカーはローマンにさらなる成長を促し、ローマンもまた敗北を糧に努力を誓った。

レオノールの存在とオスカーの過去

ローマンは過去に敗北を喫した「レオノール」という魔法使いについて語り、その話にオスカーは興味を示した。一方、オスカーが連想した魔法使いについて尋ねられると、彼はナイトレイ王国にいる水属性の魔法使いだと答え、それ以上の詳細を語ることを避けた。その後、オスカーはフィオナの元へ戻り、次の展開を控える形で場を収めた。

ウイングストンの赤き剣

赤き剣の到着と移動

ルン所属のB級冒険者パーティー『赤き剣』は、ルン辺境伯からの指名依頼を受け、東部最大の街ウイングストンへ向かった。リーダーである剣士アベル、神官リーヒャ、盾使いウォーレン、風属性魔法使いリンの4人は、夕方に無事ウイングストンに到着し、宿『天の雫』を確保した。翌朝、疲労も回復した4人は政庁を訪問し、シュールズベリー公爵への書状を届ける手続きを進めた。

公爵邸での予期せぬ事態

政庁での取り次ぎの後、公爵邸に向かった4人は、到着時に何か異常が起きている様子を目撃した。ほどなくして、公爵が急死したという報せがもたらされ、彼らはその対応に追われる屋敷の外で待機を余儀なくされた。最終的に、公爵の長男アンドリューに書状を手渡し、依頼を無事完了した。

紫髪の男との再会

依頼を終えた『赤き剣』は、昼食を取るために街を移動中、広場で紫髪の男を発見した。男は過去にアベルと交戦した相手であり、他の仲間には認識できなかった。男はアベルに敵意を示し、問答無用で攻撃を開始した。

激戦の展開

紫髪の男の奇襲を防ぎ、パーティーは即座に戦闘態勢に入った。アベルは前線で戦いを繰り広げ、仲間たちは支援に回った。男は高い戦闘能力と魔法を駆使してアベルを追い詰めたが、パーティーの連携によって防御と反撃が行われた。

決着と男の消失

リンの放った風属性魔法〈バレットレイン〉が命中し、男に致命的なダメージを与えたかに見えた。しかし、その直後、男は何らかの方法で姿を消した。地面には何も残されておらず、アベルたちは男が逃げたのではないかと推測した。結論を出せぬまま、4人はその場を後にすることとなった。

ランシャス将軍の指揮と報告の概要

ランシャス将軍は、シュールズベリー公爵邸に仕掛けた策略の失敗報告を受けた。副官アンバースによれば、シュールズベリー公爵代行となったアンドリューにより、計画の要となる人物が解任されたとのことだった。さらに、先代公爵の死因についても報告が入り、馬の鞍の下に仕込まれた陶器の破片による謀殺の可能性が指摘された。ランシャス将軍は、この事件を連合による謀略と判断した。

ルンの潜入工作の失敗

南部の街ルンに潜入した連合の密偵が続々と捕まり、衛兵の警戒が強化されていることが報告された。加えて、ガミンガム小隊がルンの街で失敗した詳細も伝えられた。小隊は二人組の衛兵を暗闇に誘い込み攻撃を試みたが、強力な〈物理障壁〉に阻まれ、全員捕縛されたという。ランシャス将軍は、ルンに強力な魔法使いがいる可能性を疑い、調査のため新たに二小隊を派遣するよう命じた。

帝城からの指示と西部の重要性

北部のフリットウィック公爵領での活動中止命令については、帝城の指示とし、それ以上の詮索を避けた。一方で、西部地域の抑制が最重要とされ、特に「西の森」の勢力が中央に関わることを防ぐべきだと厳命した。ランシャス将軍は、この任務が失敗すれば帝国の計画が崩壊すると認識していた。

将軍自らの前線出陣の決意

最終的にランシャス将軍は、自ら西部へ赴き直接指揮を執ることを決意した。アンバースには後方支援と追加戦力の準備を任せ、「影軍」の名に懸けてこの任務を成功させる覚悟を示した。

インベリー公国へ

十号室の訪問と邂逅

涼の家を訪れたニルス、エト、アモンの三人は、右側の勝手口から入ろうとして絶世の美女セーラと出会った。驚きつつも再度挑戦し、家主の涼に迎えられた三人は、セーラが錬金術を教える騎士団指南役だと知り、その存在に圧倒された。涼がセーラと気軽に接する様子に驚きつつ、三人は持参したクレープを渡し、涼と共に食べながら楽しいひと時を過ごした。

ギルドでの取引と交渉

冒険者ギルドでは、ギルドマスターのヒューと商人ゲッコーによる熱い交渉が行われていた。風の魔石二個の取引が成立し、二十六億フロリンで決着した。商人ゲッコーは、護衛の必要性を訴え、冒険者を五人雇う依頼を出した。ヒューはこれを受け入れ、護衛の選定を開始した。

涼の朝練習と街の探索

涼は朝早く起きて魔法の練習を行った。自身のロマン技「ブレイクダウン突貫」を完成させるべく奮闘し、日課を終えた後、クレープ屋を訪問。その隣にある弓具店の店主が、ウィットナッシュ時代の知り合いであるアブラアム・ルイだと気付き、旧交を温めた。その後、クレープを手にギルドへ向かった。

護衛依頼の詳細と決意

ギルドに到着した涼は、ヒューから護衛依頼の詳細を聞かされた。護衛対象は商人ゲッコーであり、目的地はインベリー公国の公都アバディーン。道中二十日を要する長旅であったが、報酬は十分であり、さらに風の魔石の購入が含まれているという理由で、涼は依頼を引き受けた。同行者として、C級パーティー「スイッチバック」のメンバーが紹介され、涼は新たな冒険に向けて準備を始めることとなった。

商隊の出発と護衛体制

商人ゲッコー率いる商隊は、公都アバディーンを目指してルンを出発した。涼は集合時間より早く到着し、ゲッコーや護衛隊長マックスとの挨拶を済ませた。マックスから、主に戦闘時や夜間見張りの手伝いを頼まれた涼は、ゲッコーの信頼厚い護衛隊に安心感を覚えた。合流した「スイッチバック」と共に商隊は順調に進み始めた。

ロー大橋崩落の知らせと新たな進路

途中、早馬がもたらした情報により、ロー大橋が崩落していることが判明した。このため、一行は治安が不安な旧街道を通ることとなった。ラーは旧街道の状況を涼に説明しつつ、警戒を呼びかけた。

盗賊の襲撃と罠

夜営中、盗賊団「東の狼」が商隊を襲撃したが、護衛隊と冒険者が計画的に迎え撃ち、一方的な勝利を収めた。涼は指示通り、〈アイスウォール〉でゲッコーとその部下を守り、被害を最小限に抑えた。捕らえた盗賊から、ロー大橋崩落や商隊狙いの襲撃が計画的である可能性が浮上した。

謎の襲撃者と異様な行動

翌日、昼食中に涼が感知した五人の不審者が接近していた。涼が一人を〈アイスバインド〉で拘束すると、他の四人が即座にその人物を殺害し、死体を焼こうとした。涼は炎を消し、死体を氷で保護したが、残りの四人は撤退した。この一件から、彼らの行動の徹底ぶりと不明瞭な目的が明らかとなった。

死体の検分と謎のタトゥー

護衛隊長マックスが死体を検分したところ、胸部に「剣が突き刺さった双頭の鷲」のタトゥーを発見した。この紋章に関する情報は乏しかったが、ゲッコーはこれを重要な手がかりと考え、大切に保管した。一方、涼とラーは、この紋章の意味に頭を悩ませながらも先を急いだ。

魔物の襲撃と商隊の防御

その後、魔物の大群が商隊に迫ったが、涼の〈アイスウォール〉で商隊は守られた。魔物たちは特定の方向に追い立てられているようで、一行はさらなる警戒を強いられた。涼が襲撃の隙に潜んでいた不審者を察知したことで、商隊は危機を免れたが、不穏な状況が続いている。

謎の深まる道中

商隊を取り巻く襲撃や暗躍する勢力の影響が徐々に明らかになる中、一行は公都アバディーンへ向けて旅を続けた。ロー大橋崩落、盗賊の動向、不審者の正体など、未解決の謎が一行の行く手に暗い影を落としていた。

黒ずくめの集団と失敗の報告

森の中に集まった黒ずくめの五人は、ナターリアと呼ばれる女性に状況を報告した。四人の部下たちは、ゲッコー暗殺の計画が進行中であることを説明しつつ、仲間ゲーの遺体処理に失敗したことを謝罪した。ナターリアは冷静に彼らの言葉を聞き、失敗の原因を問いただした。

氷の魔法使いの存在

部下たちは、ゲーの遺体を燃やそうとしたが、突如降った大雨により炎が消され、遺体が氷漬けにされたと説明した。その氷はどんな攻撃にも傷一つつかなかったため、処理を断念し撤退したと報告した。ナターリアは氷の魔法使いの厄介さを認識し、当初の計画が予想外の障害に直面していることを悟った。

計画の変更と指示

ナターリアは部下に、本部への報告を命じ、ロー大橋崩落の状況を伝えるよう指示した。同時に、ゲッコー暗殺が未完了であることも報告し、別の隊に任務が再割り当てされるであろうと述べた。さらに、欲をかきすぎることの危険性を反省しつつ、計画を修正した。

水属性魔法使いへの新たな評価

ナターリアは最後に、水属性の魔法使いを軽視していた自らの認識を改める必要があると呟き、次なる行動に備えた。

スランゼウイ

商隊のスランゼウイ到着と宿泊先の様子

商隊は旧街道を経て六日を費やし、スランゼウイに到着した。ゲッコー商隊は定宿である紅玉館に宿泊し、ゲッコーは宿泊費と食事代を負担すると約束した。一方、ラーは宿を抜け出そうとしたが斥候スーに見つかり連れ戻された。この後、彼はこの行動に感謝することになる。

黒ずくめの集団と新たな指令

スランゼウイ郊外では、黒ずくめの集団が本部からの至急文を受け取っていた。シャーフィーという男が率いるこの集団は、指令に従い、第三目標をゲッコー暗殺に変更した。ゲッコーの顔をすでに覚えていた彼らは、紅玉館で暗殺計画を開始した。

深夜の襲撃と領主館の炎上

深夜、涼は轟音で目を覚まし、領主館が燃えていることを確認した。ゲッコーたちは迅速に行動し、安全確保のため部屋を移動することとなった。その後も爆発音が響き、ゲッコーは領主館と騎士団詰所が狙われた可能性に言及した。混乱の中、涼はゲッコーとその部下たちを氷の壁で囲み、安全を確保した。

襲撃者の接近と戦闘の開始

ゲッコー一行が広場に避難すると、襲撃者が投げナイフを放つが氷の壁で防がれた。涼は〈氷棺〉で三人の襲撃者を拘束し、マックスと護衛隊はその場を制圧した。一方で、シャーフィーは部下の生存を確認するため現場を観察していたが、氷の柱に驚愕した。

騎士団の介入と襲撃者の引き渡し

広場に到着した騎士団副団長ボールドウィンは、捕らえられた襲撃者の引き渡しを要求した。ゲッコーは冷静に対応し、〈氷棺〉を解除して襲撃者を引き渡した。ボールドウィンはゲッコーの協力的な態度を評価し、一行に道中の安全を願った。

ゲッコーの判断と再出発

ゲッコーは襲撃者を引き渡した理由を部下に説明し、商会の安全を最優先に考える方針を強調した。その翌朝、一行は火が収まった紅玉館を出発し、次の目的地ハルウィルを目指して旅立った。

再度の襲撃計画と涼の予知

旅の途中、涼は前方から襲撃者が接近していることを察知した。ゲッコーは河原で休憩するよう指示を出し、涼は再び〈アイスウォール〉を展開して商隊の安全を確保した。襲撃者は煙幕で攻撃を試みたが、涼の水魔法によって無効化され、戦闘が始まった。

シャーフィーの降伏と交渉

襲撃者のリーダーであるシャーフィーは、仲間を失った後に降伏を申し出た。命の保証と引き換えに情報を提供すると約束したが、ゲッコーは慎重に対応した。シャーフィーはスランゼウイでの破壊活動の目的やロー大橋崩落の背景を明かし、組織の指令に従っていたことを告白した。

呪いの告白と命の保証

シャーフィーは自分が教団にかけられた呪いによって、裏切れば命を失う危険があると明かした。ゲッコーは彼の命を保証する代わりに協力を求め、涼は一時的に心臓を守るための氷魔法の使用を提案した。

シャーフィーの拘束と商隊の移動

シャーフィーは心臓を守るために涼の魔法で氷の拘束衣を着けられていた。彼はその不便さに愚痴をこぼしたが、涼は暗殺者としての危険性を理由に拘束を強化した。さらに、涼は氷の仮面を作り出し、シャーフィーに装着させたが、彼の不満を引き起こした。ハルウィルの街に到着する際、涼は氷の仮面を外し、シャーフィーは一時的に解放された。

ハルウィルでの宿泊とシャーフィーの適応

ゲッコー商隊はハルウィルの高級宿「山水亭」に泊まった。シャーフィーは護衛の一員として扱われ、身分を偽装して街に入った。涼とラーの部屋に同室となったシャーフィーは、涼の冗談混じりのからかいに振り回されたが、最終的に受け入れる姿勢を見せた。涼は信頼構築の一環としてシャーフィーの食事を奢る提案をしたが、その費用はもともと商隊持ちであることが発覚し、信頼関係の構築は難航した。

商隊内での魔法訓練

休憩中、ゲッコーの部下たちは涼の指導のもと、水属性魔法で氷の壁を作る練習をしていた。その様子を見たシャーフィーは驚愕し、暗殺者としての引退を正当化した。一方、ゲッコーは商人としての心得を語り、シャーフィーに商売の基本を問うた。シャーフィーは「儲けること」と答えたが、涼は「リピーターの確保」を挙げ、ゲッコーから高い評価を受けた。

レッドポスト到着と「赤き剣」との再会

ゲッコー商隊はレッドポストに到着し、高級宿「翠星亭」に宿泊した。そこで涼は冒険者パーティー「赤き剣」のリンとウォーレンと再会し、彼らをゲッコーに紹介した。涼はリーヒャの回復魔法を用いてシャーフィーの呪いのタトゥーを除去する提案をし、ゲッコーもこれに同意した。

呪いのタトゥーの除去作業

リーヒャの協力を得て、シャーフィーの呪いのタトゥーを剥ぎ取る作業が始まった。涼は心臓を守る氷の膜を強化し、マックスがナイフでタトゥーを切除した。作業中、タトゥーから石の槍が生成されたが、氷の膜が心臓を守った。一方、外部から黒ずくめの賊が侵入しようとしたが、リンの風魔法とアベルの迅速な対応で撃退された。

シャーフィーの回復と暗殺教団の存在

シャーフィーの胸部をえぐった傷は、リーヒャの〈エクストラヒール〉によって完全に治癒された。タトゥーの除去に成功したことで、シャーフィーの命は救われた。黒ずくめの賊たちは暗殺教団の一員であり、涼はその存在に興味を抱きつつも、さらなる詳細を探ることを決意した。

ゲッコー商隊の今後の計画

作業後、ゲッコーは「赤き剣」に感謝の意を表し、謝礼を約束した。シャーフィーは一命を取り留めたが、涼や商隊との信頼関係は引き続き課題となった。ゲッコー商隊は次の目的地に向けて再出発の準備を整えた。

ヴォルトゥリーノ大公国

シャーフィーの拘束と襲撃後の動向

暗殺者シャーフィーの拘束が続く中、氷漬けにされた襲撃者から情報を引き出す作業が行われた。襲撃者たちは、タトゥーの発動を確認するため、またゲッコーの暗殺を狙い侵入していたことが判明した。得られた情報は限られており、暗殺教団の活動やゲッコー暗殺の優先順位について触れるにとどまった。賊は守備隊に引き渡され、一行は翌朝を迎えた。

国境封鎖の発覚と新たな依頼

ゲッコーからレッドポストが国境封鎖されている旨が説明された。レッドポストを含む三国間での封鎖が確認され、商隊は足止めを余儀なくされた。ゲッコーは状況解決のため、『赤き剣』に封鎖の原因と解除の見通しの調査を依頼した。アベルと涼には、ハンダルー諸国連合のヴォルトゥリーノ大公国への潜入を任された。

ジマリーノへの潜入

アベルと涼は、国境の街ジマリーノに潜入した。城門は全て閉じられ、街全体が封鎖されている様子であった。涼が魔法を駆使して城壁に穴を空け、二人は街に侵入。酒場での情報収集を試みるが、街の人々からも封鎖の原因について明確な情報は得られなかった。

酒場での偶然の出会い

酒場で食事を楽しむ二人の隣に、新たな三人組が現れる。その中で中心人物と思われる女性が貴族然とした風貌で注目を浴びたが、彼女は自身を義賊「暁の国境団」の一員だと名乗った。彼女たちは、民衆を救うために腐敗した権力に立ち向かう活動をしていると語った。

酒場への襲撃と脱出

酒場が外部から魔法砲撃を受けていることを涼が察知。攻撃の標的が義賊であることを理解した涼は、守りを固めつつ、義賊たちの脱出を援護する準備を整えた。義賊の三人は感謝を示しながら、涼の魔法で作られた氷の壁の隙間を通って酒場を飛び出していった。

封鎖の原因への疑念

義賊の存在が国境封鎖の原因かどうかを検討するアベルと涼であったが、直接的な証拠は得られなかった。引き続き調査を行うことを決め、一時的に状況の推移を見守ることとした。

ジマリーノの深夜の探索と義賊への疑念

アベルと涼は、深夜のジマリーノの街で義賊「暁の国境団」による逃走劇を振り返っていた。彼らの手際の良さと光魔法の巧みさに感心しつつも、「国境封鎖の原因にしては何かが足りない」との疑念を抱いた。街中をさらに探ろうと決めたが、守備隊に不審者と勘違いされ、追われる事態となった。

守備隊との遭遇と尋問

追跡者の一人である守備隊員キンコを捕らえ、涼とアベルが尋問を行った。キンコは恐怖に震えながら、自身が政庁部に所属していること、賄賂に汚染された上官ロースター隊長の実態を語った。また、「暁の国境団」に関する情報として、彼らの活動が守備隊の中でも一部では好意的に受け止められていることを明かした。二人はキンコを解放し、さらなる情報を整理することにした。

暁の国境団の隠れ家での会議

義賊「暁の国境団」の隠れ家では、リーダーであるフローラを中心に会議が行われていた。街の腐敗状況を測るため、酒場への潜入と活動を続けていた彼女たちは、街が賄賂と権力の腐敗に深く侵されていると確信した。また、商人エレメエヴナがこの腐敗の中心人物であり、三年前の太守夫人殺害にも関与している証拠を掴んでいた。フローラは「太守に目を覚ましてもらうため」に大胆な行動を起こす決意を表明し、部下たちも全員がその計画に同意した。

義賊と腐敗への対峙

暁の国境団の活動を通じて、ジマリーノの街における腐敗の実態が明らかになった。義賊の存在が市民や守備隊内でも一定の支持を得ている一方で、街の権力構造と対峙するための戦いはこれから本格化することが示唆された。

炎帝

深夜のジマリーノでの逃亡

アベルと涼は、深夜のジマリーノの街を移動していたが、守備隊の強化された見回りに気づいた。冗談を交えつつも危機感を抱き、逃亡を図った。だが突如現れた赤い魔剣を持つ男に遭遇する。涼の〈パッシブソナー〉に映らないほど動きを抑えた男に驚きつつも、アベルは対峙することを決意した。

魔剣使い同士の剣戟

赤い魔剣を持つ男、炎帝フラム・ディープロードと名乗る相手との戦闘が始まった。アベルは彼の技量に圧倒されながらも懸命に応戦したが、フラムの魔剣の能力解放により傷を負わされる。戦闘は涼の魔法〈アイスウォール〉によって中断され、二人はその場から逃亡を余儀なくされた。

斥候らしき男との遭遇

涼が発見した不審な動きをする斥候のような男を〈氷棺〉で捕らえ、尋問を開始した。男は盗人であることを認め、守備隊政庁部のロースター隊長と接触を図ろうとしていたことを白状した。さらに、ロースターから受け取る予定だった荷物を商人ゴンゴラドに届ける計画であることが明かされた。

ロースター隊長の接近

涼の〈アクティブソナー〉によって、政庁から4人の集団が近づいていることが判明した。二人はロースター隊長が関与している可能性を推測し、状況を見極めるため準備を整えた。捕らえた盗人バガナを再び〈氷棺〉に封じ、次の展開に備えた。

ロースター隊長の確保と赤い魔石の発見

ロースター隊長は部下に待機を命じ、自ら暗がりに進んだが、アベルと涼に氷漬けにされた。涼の魔法により、彼の懐から拳大の赤い魔石が回収された。この魔石は極めて珍しい火属性の魔石であり、サラマンダー由来のものであった。アベルと涼は、これが非常に高価で貴重なものであることを確認した。

盗人バガナの尋問と背後の商人

バガナは、赤い魔石を密かに城壁の裂け目から持ち出す役割を担っていたと告白した。依頼者は商人ゴンゴラドで、魔石の運搬先が国外の勢力である可能性が高いことが明らかになった。アベルと涼は、この状況が単なる盗難事件を超えて複雑な背景を持つことを理解した。

ロースター隊長への尋問と飛空艇墜落の真相

ロースター隊長は赤い魔石の盗難について尋問を受け、騒動の一環として魔石を奪う計画があったと語った。その背景には、連合のアドラン公国が開発した小型飛空艇の墜落があり、それが国境封鎖の直接的な原因であったことが判明した。この墜落が守備隊の混乱を招き、その隙に魔石が盗まれたのである。

政庁前への魔石返却と守備隊の混乱

涼の魔法により、ロースター隊長と部下たちを含む五つの氷の柱が政庁前に運ばれた。守備隊は状況に困惑し、氷を割ろうと試みたが、成功しなかった。この大胆な行動により、守備隊内部の混乱はさらに深まった。

太守ボニートとの対峙と要求

アベルと涼は、ジマリーノ太守ボニート・ベキスの部屋に侵入し、赤い魔石を返却した。涼はボニートに国境封鎖の解除と守備隊の綱紀粛正を要求した。太守は、魔石の盗難が自身の管理の甘さに起因することを認め、要請に応じる決意を示した。

ボニートの再起と決意

魔石を取り戻したボニートは、かつての妻カロリーナの遺影に語りかけ、これまでの無策を悔い改めた。そして、自身の使命に立ち返り、封鎖解除と統治の改善に取り組むことを心に誓った。彼の目には、かつての活力と決意が戻りつつあった。

朝日の下での会話と反省

涼は朝日を浴びながら、自分たちの行動に満足感を示していた。アベルは太守ボニートを告発しなかったことに疑問を呈したが、涼は太守の改心と再起の可能性に期待していた。政治における間違いは避けられないが、それを正す姿勢が重要であると涼は語り、アベルも納得した。

ジマリーノの謎と涼の推理

涼は今回の事件に関する全ての謎を解いたと自信満々に主張した。政庁の宝玉盗難、大公の娘の駆け落ち、伝説の人斬りの出現、ドラゴンの幼生の墜落といった噂が、すべて今回の出来事に繋がっていると述べた。しかし、アベルの指摘により、大公の娘の件は解決していないと気付かされ、逆ギレ気味に議論を切り上げた。

太守の決断と政庁の再建

政庁前に届けられた氷柱の解凍後、ロースター隊長は収監された。太守ボニートは、国境封鎖解除や守備隊の綱紀粛正を進め、街に透明性をもたらそうとした。これにより、良識ある官吏たちが活気を取り戻し、住民からも支持を得た。一方で、腐敗した者たちは恐れおののいていた。

首席監察官の介入と権力の奪取

都から首席監察官ファンキーニ子爵が訪れ、太守ボニートを解任すると宣言した。しかし、ボニートが魔石の回収と報告の準備を示したことで解任は撤回され、守備隊への指揮権のみ剥奪された。ファンキーニ子爵は新たに守備隊を掌握したが、計画が狂い始めたことに苛立ちを見せた。

監察官の苦悩と新たな事件

ファンキーニ子爵は、ジマリーノでの権力掌握が失敗に終わり、自身が道化のようになったと感じていた。ゴンゴラドの依頼も無駄に終わり、早急に街を去る計画を立てた。しかし、平穏な時間は長く続かず、エレメエヴナ商会が襲撃されたとの報告が入り、新たな混乱の幕が上がった。

エレメエヴナ商会襲撃

義賊『暁の国境団』は、明け方にジマリーノの商人エレメエヴナの商会を襲撃した。死者を出さないという彼女らの方針の下、多額の財産を奪い、街の住民に配る準備を進めた。これによりエレメエヴナの商会は実質的に崩壊し、住民からの支持を失った。義賊の派手な行動は、小悪党たちの活動抑止にも繋がった。

アベルと涼の義賊への見解

涼は『暁の国境団』の行動を称賛したが、アベルは法を無視した手法に疑問を抱いていた。正義と法の間にある微妙な境界を巡り、二人は意見を交わしたが、最終的にはそれぞれの立場を尊重した。涼はさらに、アベルが義賊だった過去を持つのではないかと推測し、冗談交じりにからかった。

炎帝の襲来と戦闘の幕開け

広場に現れた八人の侵入者の中に、かつてアベルが戦った炎帝フラム・ディープロードがいた。炎帝は義賊のリーダーであるフローラを連れ戻そうとしたが、アベルが立ちふさがり、二人の間で激しい戦闘が始まった。一方、涼は『暁の国境団』から借りた仮面とマントを身に着け、炎帝の部下たちとの戦いに挑んだ。

アベル対炎帝の激闘

アベルは炎帝の剣技と魔剣モラルタの特性に苦戦しつつも、前回の敗北を活かして戦いを繰り広げた。激しい剣戟の中で、アベルは魔剣の動きを利用したカウンター攻撃を成功させ、炎帝の両腕を斬り落とすことに成功した。炎帝は怒りを露わにしながらも、アベルの力を認めざるを得なかった。

涼の「赤の魔王」伝説の始まり

涼は炎帝の部下七人を相手に、魔王のような振る舞いで圧倒的な力を見せつけた。風属性の最上級魔法〈バレットレイン〉をも凌ぎ、部下たちを氷の中に封じ込めた。その圧倒的な戦いぶりは、後に「赤の魔王」として噂されることとなった。

ジマリーノからの脱出

炎帝との戦いが終わり、広場に集まった守備隊に囲まれる中、涼は〈アブレシブジェット〉で城壁を破壊し、混乱を引き起こした。その隙を突いて、アベルと涼はジマリーノの街を脱出することに成功した。彼らはようやくレッドポストへ帰還し、一連の事件を終えた。

国境越え

国境封鎖解除後の朝食とゲッコーの懸念

ゲッコー商隊が朝食を取る中、ゲッコーは涼に「暁の国境団」がジマリーノにいたことの驚きを語った。涼はそれまで知らなかったため、団の活動について質問した。ゲッコーは「炎帝フラム」の存在が、今後アベルに影響を及ぼす可能性があると指摘し、涼もその懸念を共有した。

シャーフィーの監視と情報収集

ゲッコー商隊はレッドポストを出発し、インベリー公国を目指した。涼はシャーフィーの監視役となり、必要に応じて水属性魔法で制圧できると示した。この間、シャーフィーから教団の破壊活動や王国東部での計画についての情報を引き出した。さらに、教団の本部が王国東部のアバン村にあることが判明し、涼はその近さに驚愕した。

インベリー公国への入国と護衛依頼の終了

商隊は公都アバディーンへ問題なく到着し、護衛依頼を終えた。ゲッコーは涼たちに感謝を示し、報酬を渡したが、涼が所持金を管理口座に預けたことで、王国に戻る資金不足が発覚した。スーの提案で、護衛依頼を受けて王国に戻る計画を立てたが、依頼の条件に不安を抱えたままギルドを目指した。

『赤き剣』の旅路と涼の異常性

一方、『赤き剣』は王都クリスタルパレスへ向かっていた。途中、涼の魔法が通常では不可能な「生きた人間を氷漬けにする」技術であると話題に上り、リンやリーヒャはその恐ろしさを認識した。さらに、涼が王国と帝国間の戦争の火種になりかねない存在であると結論付け、アベルは困惑しつつも否定できなかった。

勇者パーティーの目的地への旅路

勇者パーティーはデブヒ帝国帝都マルクドルフから南下し、ナイトレイ王国の国境近くまでたどり着いていた。火属性魔法使いのゴードンは、西方諸国に戻りたいと考えていたが、勇者ローマンはさらなる成長を求めており、その熱意にパーティーは付き合っていた。斥候のモーリスはゴードンに呆れつつも会話を交わし、寒さが苦手なベルロックとアリシアは南下に賛成していた。

勇者ローマンの成長への渇望

勇者ローマンは、水属性の魔法使いに関する情報を求め、ナイトレイ王国への旅を決めていた。ゴードンの疑問に対しても、「強い人と訓練することで成長できる」と熱心に答えた。だが、その水属性魔法使いの名前すら分からず、情報の不足にやや困惑していた。

パーティー内の葛藤と調整

最年長のグラハムは、ローマンのやる気を評価しつつも、限られた時間の中で効率的に行動する重要性を感じていた。一方で、無言のエンチャンター、アッシュカーンは黙って旅を見守りつつ、折衝役としてパーティーをまとめるグラハムに支えられていた。彼らは魔王討伐を目的に活動しており、過去の戦いや失敗を糧にしながら、新たな挑戦へと向かっていた。

護衛依頼

護衛依頼の出会い

涼は公都アバディーンの冒険者ギルドを訪れ、ナイトレイ王国への護衛依頼を探していた。だが、受付嬢からはC級以上の条件であることを告げられ、途方に暮れる。しかし、そこにコーンという冒険者が現れ、特定の条件に合致する護衛依頼を持ちかけた。依頼内容は「影武者」として王都まで同行することであった。

影武者としての使命

依頼主であるウィリー殿下と対面した涼は、影武者としての危険性を知る。過去に影武者が犠牲となった経緯も説明され、依頼の重大さを理解した。だが、涼自身も王国に戻る必要があったため、危険を承知で依頼を引き受ける決意を固めた。

ウィリー殿下との旅の始まり

翌日、涼は護衛団と共にナイトレイ王国へ向けて旅立った。ウィリー殿下は八男の王子でありながら厳しい立場に置かれていたが、涼との交流を通じて徐々に明るさを取り戻していった。殿下は水属性魔法の素質を持つものの未熟であったが、涼の指導を受けながら魔法の練習を始めた。

魔法の練習と成長

道中、涼はウィリー殿下に水属性魔法の基本を教え、実践的な訓練を行った。殿下は〈水の生成〉を短期間で習得し、その後、涼式の実践的な指導を受けながら成長していった。涼は、殿下に魔法のイメージの重要性を説き、詠唱なしで魔法を使う技術も伝授した。

国境への準備

旅の後半、涼たちはインベリー公国からナイトレイ王国への国境越えを控えていた。護衛団は昼間の襲撃のリスクを意識しながら、街道沿いの宿泊地での休息を計画した。涼は影武者としての責任を再確認し、緊張感を持ちながらも殿下の指導を続けた。旅路は順調であったが、護衛団全員が常に警戒を怠らない状況が続いていた。

冒険者への憧れと王族の責任

ナイトレイ王国に入ったウィリー殿下は、涼に自身の過去を語った。かつて冒険者に憧れ、父王にその思いを伝えたものの、王族としての責任を理由に断られたという。涼は殿下の苦悩に共感し、責任を伴う立場の重さを理解していることを示した。この誠実な態度に、殿下は驚きと感謝の念を抱いた。

王国の美食と旅路の平穏

旅の三日目、ウィリー殿下一行は宿での食事に満足し、次の目的地へ向かっていた。特にハンバーグの味に感激した殿下は、その喜びを涼に伝え、涼もまた嬉しそうに応じていた。しかし、その穏やかな時間は突然の襲撃により破られた。

全方向からの襲撃と涼の決断

涼は〈パッシブソナー〉で十人の襲撃者と、さらに別動隊として森に潜む五人を確認した。護衛のコーンと連携し、殿下を守るために自身が囮となる計画を立てた。馬車を離れて森へと誘導し、追跡者十二人を引き離すことに成功した涼は、全包囲された状態で襲撃者たちと対峙した。

襲撃者との交戦と捕縛

涼は戦闘の末、暗殺教団と見られる十二人を次々と氷の中に閉じ込めた。敵の胸に刻まれた双頭の鷲の紋章を確認し、襲撃者の身元に確信を得た涼は、殿下の元に戻る決意を固めた。

殿下の拉致と護衛の負傷

涼が馬車の元に戻ると、護衛や冒険者たちは倒れており、ウィリー殿下が連れ去られていることが判明した。ロドリゴとコーンにポーションで応急処置を施した涼は、殿下の救出を決意し、暗殺教団の本部とされる「アバンの村」へ向かうことにした。

殿下を襲う謎と涼の覚悟

涼は暗殺教団による殿下への執拗な襲撃の背景に疑問を抱きつつも、救出のための行動を急いだ。殿下が拉致されるに至った責任を痛感しながらも、涼は自身の力で事態を打開する覚悟を胸に、全速力で目的地へ向かった。

暗殺教団本部

暗殺教団幹部の会話

アバンの村にある暗殺教団の本部で、幹部のシッカーとナターリアが会話を交わしていた。ジュー王国のウィリー王子を拉致する作戦の成功を確認しながらも、影武者を追った部隊が戻らないことにシッカーは不安を覚えていた。その最中、首領からの召集が二人に伝えられた。

首領との対面と儀式の準備

二人が首領の前に出ると、拉致した王子が本物であったことが告げられた。首領は年齢を超越した力を持ち、幹部たちにも敵わない存在として畏怖されていた。首領はウィリー王子の体を用いて、不死の儀式を行う意向を明かし、長老の間に閉じこもった。ナターリアはこの計画に危機感を抱き、反首領派である『黒』に連絡を取り、儀式の阻止を命じられた。

水属性魔法使いの襲撃

ナターリアが策を練る中、村が一人の水属性魔法使いに襲撃されるとの報告が入った。魔法使いの強大な力により村は壊滅状態となり、多くの暗殺者たちが無力化された。ナターリアは魔法使いの狙いがウィリー王子の奪還にあると察し、首領の儀式と共に暗殺者たちを全滅させる罠を準備した。

涼と首領の対決

涼は村を凍結させながら、長老の間へ突入した。そこでは首領が儀式を始めようとしていた。首領と涼の戦いは熾烈を極め、互いの魔法と剣術がぶつかり合った。涼は水属性魔法を活用して剣技を加速させ、首領に傷を負わせることに成功したが、首領の持つ驚異的な能力と錬金術に苦戦を強いられた。

首領の最期と涼への遺産

戦いの中、ナターリアが仕掛けた罠が発動し、首領は致命傷を負った。死を悟った首領は、自身の錬金術の技術を涼に託し、全てを伝えるよう頼んだ。涼は首領から資料を受け取り、その最期を看取った。首領は自らの暗殺者としての人生に満足しながら息を引き取ったが、その背後には長年の怨念が影を落としていた。

ウィリー殿下と涼の行動

襲撃現場の調査と次の目的地

涼とウィリー殿下は襲撃された場所に到着したが、すでに何も残されておらず、回収された形跡があった。二人はウイングストンへの移動を決めた。ウイングストンは王国東部最大の都市で、最も近い街であった。涼は殿下に馬車で王都へ向かう案も提案したが、ウィリー殿下はロドリゴ殿らとの合流を最優先すると主張したため、それに従った。

冒険者ギルドでの連絡と再会

ウイングストンに到着した二人は、冒険者ギルドを訪れた。コーンから涼宛てに手紙が預けられており、その手紙に記された宿泊先で無事ロドリゴ殿や他の護衛たちと合流した。数日ぶりの再会となり、一行は再び旅を続けることになった。

信用状の喪失と費用の立て替え

襲撃によって、ジュー王国発行の信用状が失われたことで、ウィリー殿下とロドリゴ殿は資金を引き出せなくなった。涼が一時的に費用を立て替え、王都到着後に大使館で返済を受ける予定となった。涼は過去の窮地から一転し、魔石の売却で得た資金により余裕を持って対処していた。

デブヒ帝国での皇帝への報告

暗殺教団の関与の確認

デブヒ帝国帝都マルクドルフでは、執政ハンス・キルヒホフ伯爵が皇帝ルパート六世に報告を行った。ウィットナッシュの襲撃が暗殺教団によるものであったことが確定し、教団は帝国と連合双方の依頼を受けて活動していることが判明した。ルパート六世は、この事実を受け止めつつ、教団を利用し続けるため慎重な対応を指示した。

凍りついた村の報告

ハンスは教団の拠点であるアバンの村を調査するため人員を派遣した結果、村全体が凍りついていることを発見したと報告した。この異常事態にルパート六世は驚き、天変地異や未知の魔物、あるいは強力な魔法使いの仕業を疑った。

水属性魔法使いの捜索命令

ルパート六世は、以前オスカーが遭遇した水属性魔法使いに着目し、その者が村を凍りつかせた可能性を示唆した。皇帝魔法師団に情報を共有し、オスカーからも直接詳細を聞き取るようハンスに命じ、早急な調査を指示した。

エピローグ

白い世界と管理者ミカエル(仮名)の独白

世界管理と三原涼への懸念
白い世界で、ミカエル(仮名)は今日も石板を用いて複数の世界の管理を行っていた。彼は笑顔を浮かべつつも、人知を超えた状況に巻き込まれる三原涼とその友人アベルへの懸念を口にしていた。絡みついた宿命が解けることなく、さらなる試練に直面することを案じている様子であった。

赤の魔王と王都の予兆
水属性の魔法使いでありながら「赤」と称される魔王の存在に疑問を抱き、不吉な予感を漏らしていた。血や赤い水に染まる未来を思わせる言葉は不穏であったが、それも彼の特異な視点によるものと言える。さらに、三原涼とアベルが向かう王都には西方の勇者たちも到着しつつあり、その動きが大規模な事態を引き起こす予兆であると察知していた。

三原涼の運命への考察
ミカエル(仮名)は、三原涼が意図せずして波乱の中心に立つ人物であることを指摘した。彼自身に責任が無いにもかかわらず、常に混乱の場に巻き込まれる特異な運命を持つことを理解しつつ、その苦労を静かに案じていた。

外伝  火属性の魔法使い III

クルコヴァ侯爵夫人

帝都での新たな依頼

オスカーは帝国南東部から帝都マルクドルフへ拠点を移していた。ギルドマスターのモーリッツ・バッハマンから、クルコヴァ侯爵夫人の護衛依頼を受けた。侯爵夫人は、知識と美貌を兼ね備え、帝国内でも著名な女性であった。特にサロンを通じて多くの情報を集める立場にあり、オスカーが追い求める「傷の男」に関する情報も得られる可能性が高かった。

サロンへの参加と教育の成果

護衛として侯爵夫人に同行する中、オスカーは彼女のサロンに参加した。そこでは教養豊かな貴族や学者、商人らが集い、様々な分野について議論が交わされた。オスカーは、ご隠居様から幼少期に学んだ洗練された所作を評価され、騎士団長ノルベルトの推薦も受けていた。サロンでは主に聞き役に徹しつつ、相槌を打ちながら幅広い知識を吸収していった。

ラティモア伯爵家の陰謀

一方で、クルコヴァ侯爵夫人の領地で見つかった鉄鉱山を巡り、隣接するラティモア伯爵家は不満を募らせていた。伯爵親子は、侯爵夫人の死が領地の権利を左右するという法の抜け穴を利用し、彼女を暗殺する計画を企てた。伯爵は盗賊による襲撃に見せかけた暗殺を画策し、親子でその計画を進めていた。

オスカーの新たな生活

侯爵夫人の護衛として邸宅に住み込むことになったオスカーは、サロンでの知的交流を通じて成長するとともに、敷地内の鍛冶場を自由に使える許可を得た。鍛冶の時間は、彼にとって心を落ち着けるひとときであった。一方で、侯爵夫人を狙った伯爵家の陰謀が暗躍しており、オスカーの戦いは新たな局面を迎えようとしていた。

侯爵夫人の帰路と襲撃事件

侯爵夫人が知人の子爵夫人を見舞った帰り道、馬車が襲撃を受けた。騎士たちは矢で馬を倒されつつも、冷静に応戦し、賊を制圧した。賊のうち二人を生け捕りにするよう命じた侯爵夫人の指示で、戦闘は短時間で終わった。オスカーは馬車の中で侯爵夫人を守りつつ、遠距離攻撃で敵を撃退した。

侯爵夫人とオスカーの会話

戦闘後、侯爵夫人はオスカーに「マリア」と呼ぶことを許した。長らく「侯爵夫人」と呼ばれていたが、この変化を通じて、オスカーが館の一員として認められたことを示した。侯爵夫人は捕らえた賊二人を騎士団長ノルベルトに引き渡し、尋問を命じた。

尋問の結果とお粗末な襲撃

翌朝、騎士団長ノルベルトからの報告で、賊たちがラティモア伯爵の指示で動いていたことが判明した。しかし、その手口は杜撰で、依頼者の身元すら隠せていなかった。侯爵夫人は、この稚拙な襲撃と依頼主に呆れを隠せず、頭を抱えた。

帝都守備隊への届け出

侯爵夫人は、騎士団長ノルベルトに帝都守備隊への届け出を託し、捕らえた賊二人を連行するよう命じた。帝都内での事件処理のため、守備隊が窓口となる規定に従った行動であった。

公爵の失望と計画の修正

一方、帝都某所では、公爵が襲撃の結果に失望していた。ラティモア伯爵の無能さに呆れ果て、「最も恐るべきは無能な味方」という言葉を吐いた。その失敗を受けて、公爵は計画の修正を余儀なくされ、新たな動きを模索する様子を見せていた。

襲撃

ミューゼル侯爵別邸のお披露目会への招待

クルコヴァ侯爵夫人マリアの元に、ミューゼル侯爵の新築別邸のお披露目会の案内状が届いた。ミューゼル侯爵は帝国屈指の大貴族であり、皇帝派でも反皇帝派でもない中立の立場で、多くの貴族と絶妙な関係を築いていた。今回の案内は、別邸が帝室への献上を予定されており、皇帝も臨幸するため、多くの貴族が出席を望んでいる状況を反映していた。マリアは、その目的に理解を示しつつ、出席を決めた。

お茶会での会話

マリアは親しい友人であるションドラ子爵夫人ベルタとロイター男爵夫人エラを招き、小規模なサロンを開いた。二人は、別荘のお披露目に皇帝が臨幸することを既に聞いており、貴族たちが何とか招待状を得ようと奔走している様子を語った。マリアは、友人たちと笑い合いながらも、招待の背景を探るべく、思案を巡らせていた。

ミューゼル侯爵別邸の壮麗さ

マリアとその護衛であるオスカーは、お披露目会に出席した。別邸は巨大で華美な三層構造の建物であり、その壮麗さに二人は驚嘆した。オスカーは、侯爵がこれを献上する理由を尋ねたが、マリアは侯爵が自らの力を示し、帝室への影響力をアピールするためではないかと推測した。会場に到着すると、ミューゼル侯爵が自ら客人を迎えており、マリアも一通りの挨拶を済ませて奥に進んだ。

皇帝との再会とフィオナ皇女の依頼

お披露目会には皇帝ルパート六世が臨幸し、その威厳ある佇まいにオスカーは圧倒された。マリアは皇帝と再会し、領地の発展を称賛される中、皇帝から末娘であるフィオナ皇女をマリアのサロンに参加させてほしいとの依頼を受けた。フィオナが剣術に専心し、皇女としての振る舞いを学ぶ機会が少ないためであった。マリアはその依頼を了承し、会話は穏やかに進んだ。

別邸の崩落とオスカーの奮闘

突如として別邸が崩落を始め、会場は混乱に包まれた。オスカーは即座に判断を下し、強力な火属性魔法〈ピアッシングファイア〉を使用して建物の崩落を食い止め、多くの命を救った。その後、皇帝ルパートから感謝の言葉を受け、マリアもオスカーの活躍を讃えた。

モンティ公国残党の襲撃

崩落後、モンティ公国の残党が会場に侵入し、復讐の名のもとに貴族たちを襲撃した。皇帝ルパートは剣を抜き、豪快な剣技で次々と賊を討ち、同時に加勢したハルトムート・バルテルの剣技も輝きを見せた。最終的に賊は全滅したが、背後にいる首謀者の存在が疑われた。

首謀者への疑念と次なる調査

ルパートは、崩落の計画がモンティ公国の残党だけで実行できるものではないと見抜き、背後に別の勢力が存在すると推測した。マリアもその意見に同意し、真相解明は信頼するキルヒホフ伯爵に託されることとなった。事件は一旦収束を迎えたが、さらなる謀略が潜んでいる可能性が示唆された。

別荘襲撃事件の黒幕発覚

皇帝ルパート六世は、右腕であるハンス・キルヒホフ伯爵から、三日前に起きた別荘襲撃事件の黒幕がウィルヘルムスタール公爵シュテファンであるとの報告を受けた。シュテファンの狙いは皇帝の暗殺だけでなく、クルコヴァ侯爵領とラティモア伯爵領の併合も含まれていた。状況証拠しかなく宮廷裁判には至らなかったが、ハンスは非公式な解決策を提案し、皇帝の許可を得た。

公爵邸での交渉と提案

ハンスは十二騎士を伴い、ウィルヘルムスタール公爵邸を訪れた。シュテファンは疑惑を完全に否定し、証拠の提示を求めたが、ハンスは状況証拠のみであることを認めた上で、公爵位を息子ジークハルトに譲り、自身は隠棲することを提案した。シュテファンは一時は反発したものの、提案を受け入れる素振りを見せた。

シュテファンの隠棲とその結末

シュテファンは表向きには隠棲し、息子ジークハルトが新公爵として補佐を受けながら公務を引き継いだ。しかし、ある夜、シュテファンの元にハンスが現れ、クリスティーネの同意のもとシュテファンを排除する計画を告げた。シュテファンは怒りに燃えたが、ハンスの手によって命を奪われた。その後、館に火が放たれ、事件は隠蔽された。

事件の終結

シュテファンの死はクリスティーネによって公式に発表され、ウィルヘルムスタール公爵家の実権は完全にクリスティーネの手に渡った。この一連の出来事に対し、皇帝とハンスの間で交わされた言葉は「ご苦労」の一言だけであった。こうして、皇帝弑逆を狙った一件は静かに幕を閉じた。

ギルドマスターの日常

ルン冒険者ギルドマスターの日常

ヒュー・マクグラスの朝の習慣

ヒュー・マクグラスは、貴族街に屋敷を持ちながらも、豪奢な生活には興味を示さず、毎朝庭で剣を振るうことを日課としていた。その後、露店で朝食を購入し、冒険者ギルドに向かう。ギルド職員の気遣いを考慮し、朝6時半に出勤するという配慮を見せていた。

ギルドの運営と取引の成功

ヒューは冒険者ギルドの運営に尽力しており、若手冒険者に経験を積ませる一方で、外部との交渉にも力を注いでいた。前日には、風属性の魔石を二十六億フロリンで商人に売却する取引を成功させており、ギルドに大きな利益をもたらしていた。

騎士団長からの謎の依頼

昼食時、騎士団長ネヴィルから「動きやすい服装で来い」との手紙を受け取ったヒューは、その意味を図りかねながらも午後の連絡会に出席した。しかし、その場では特に説明はなく、連絡会終了後、ネヴィルに導かれて騎士団演習場に向かった。

指南役セーラとの模擬戦

演習場に到着したヒューは、騎士団指南役のセーラとの模擬戦に巻き込まれた。ヒューは英雄としての名声に違わぬ剣技を披露したが、第一線を退いて久しいため、次第に体力の限界を感じていた。一方、セーラは鉄壁の防御を見せつつ、ヒューの剣技を完全に受け止めていた。

模擬戦の終結と新たな試練

模擬戦はセーラの都合で中断されたが、ヒューはセーラが自分の体面を保つために切り上げたと理解していた。セーラとネヴィルの提案により、ヒューは週一回の模擬戦を続けることとなった。ヒューはその場の状況に流されつつ、新たな試練を受け入れるしかなかった。

こうして、ルン冒険者ギルドのギルドマスターは、再び鍛錬の日々を送ることになったのである。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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