どんな本?
本書は、ハイファンタジー小説である。
主人公・涼が水魔法の使い手として、王国を脅かす敵国の陰謀に立ち向かう物語。
ウィリー王子の護衛任務を終えた涼は、仲間のセーラと共に平穏な日々を過ごしていたが、突如として神殿地下から魔物の大群が出現し、さらには空から降ってきた島が王城に突き刺さるという異常事態が発生する。涼は仲間たちと協力し、これらの危機に立ち向かう。
主要キャラクター
• 涼:主人公であり、水属性の魔法使い。仲間思いの性格。
• セーラ:涼の想い人。
• ウィリー王子:小国の王子であり、涼の教え子として水魔法を学ぶ。
• アベル:涼の仲間であり、共に危機に立ち向かう。
物語の特徴
本作は、主人公・涼の強力な水魔法を駆使した戦闘シーンや、仲間たちとの絆が描かれている点が魅力である。また、次々と発生する異常事態に対する涼の機転や、敵国の陰謀を暴くストーリー展開が読者を引き込む。さらに、電子書籍限定で書き下ろしの外伝「火属性の魔法使いⅣ」が収録されており、物語の世界観をより深く楽しむことができる。
出版情報
• 著者:久宝忠
• イラスト:めばる
• 出版社:TOブックス
• 発売日:2022年3月10日
• ISBN:9784866994697
• コミカライズ:墨天業による漫画版が『comicコロナ』にて2021年9月より連載中
• アニメ化:2025年7月よりテレビアニメ放送予定
読んだ本のタイトル
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編4
著者:久宝忠 氏
イラスト:めばる 氏
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あらすじ・内容
ウィリー王子の護衛依頼を完遂し、一つ肩の荷が下りた涼。王子の水魔法の師匠ポジションまでゲットした彼は、セーラと合流し、ほくほく とスイーツの食べ歩きに興じていた。エルフの自治庁を一緒に訪問したりと距離を縮めていく二人だったが、別行動の翌日、神殿地下から魔物の大群が出現! 更には、原因究明に努める涼とアベルの前で、空から降ってきた”島”が王城に突き刺さる事態に。異常事態が次々と発生する中、仲間を守ろうと奮闘するセーラにも強敵・アークデビルが迫りーー「僕の大事な人を傷つけてタダで済むとでも?」
王国へと牙をむいた敵国の策謀を、涼が超高圧水流【ウォータージェット】で迎え撃つ!
最強水魔法使いの気ままな冒険譚・第4弾!
感想
【第一部 中央諸国編4】の出来事は以下の通り。
- 王国第二街道の旅
ウィリー殿下を中心に旅を続ける涼たちは、暗殺教団の襲撃後、信用状を失い涼が費用を立て替えていた。 - ウィリー殿下の魔法練習
ウィリー殿下は水属性魔法の練習に熱心で、度々魔力切れを起こしていた。涼や一行はその努力を見守りつつ支えていた。 - アベルの密会と「英雄の間」の鍵登録
アベルは地下通路を通り王太子と密会。「英雄の間」の鍵を新たに登録する任務を遂行した。 - 王都への準備
アベルは王都での宿泊に備えた対策を整え、一行は役割を分担し王都へ向かった。 - 王都到着と研究所訪問
『赤き剣』は王都に到着後、王国魔法研究所を訪問し、筆頭宮廷魔法使いイラリオンと面会した。 - 王宮の異変と腐敗の発覚
国王の孤立や騎士団長バッカラーの賄賂、侍従長ソレルの不正行為、財務卿フーカの影響力拡大が判明した。 - 謎の計画「ヴェイドラ」
ソレルが「ヴェイドラ」という計画の資金調達を耳にするが、その詳細は不明であった。 - 王立錬金工房の問題
ケネス男爵は「ヴェイドラ」開発費の一時凍結に憤慨しつつも重要性を再認識した。 - 次男坊連合と涼への関心
ケネスとアベルの再会で涼の実力が語られ、涼への興味がさらに深まった。 - アベルの尾行と反撃
アベルは尾行者を無力化し、捕らえた者をイラリオンと共に尋問した。 - 財務卿の陰謀と潜入計画
財務卿フーカの疑惑が深まり、アベルはイラリオンから追跡装置を渡され潜入を開始した。 - 捕獲と尋問
アベルは捕らえられたが嘘で相手を惑わせ、最終的に反撃に成功した。 - 黒い粉の発見
イラリオンは大量の「黒い粉」を発見し、その危険性を断定した。 - 財務卿弟の関与
捕らえた男が財務卿の弟であることが判明し、フリットウィック公爵や連合の陰謀が浮かび上がった。 - スタンピードへの備え
一行は宮廷魔法団の護衛を受け、王都への旅路を無事に終えた。 - セーラの行動と決意
涼の手紙を受け取ったセーラが王都への同行を決意し、騎士団長ネヴィルの許可を強引に得た。 - 騎士団の王都行き準備
セーラは王都行きの準備を進め、彼女の情熱が周囲を動かした。
王都集合
- 王都到着と別れ
ウィリー殿下は王都クリスタルパレスに到着し、涼や冒険者たちに感謝し別れを告げた。 - セーラとの再会
涼は王城前でセーラと再会し、彼女が涼を「栄養補給源」として重要視していることを語った。 - フリットウィック公爵邸の陰謀
フリットウィック公爵邸では、財務卿や涼の動きを警戒しつつ、アベル暗殺計画が進行していた。 - ゴードンの悲劇的なデート
ゴードンはデート中にナンシーが倒れたことで怒り、アベルに攻撃を仕掛けたが、返り討ちに遭った。 - 勇者との誤解による戦闘
アベルとローマンが街中で剣戟を繰り広げ、野次馬がその激しさに近づけなかった。 - 涼の仲裁と戦闘の終結
涼は氷魔法で戦闘を分断し、ローマンに使命を説いて戦いを収めた。 - 錬金術師ケネスの紹介
アベルは涼にケネス・ヘイワード男爵を紹介し、錬金術の相談を促した。 - 自治庁からの呼び出し
セーラは自治庁からエルフの鍛錬依頼を受け、大長老が王都にいることを確認した。 - 浮遊大陸の伝承
涼はアベルから浮遊大陸の伝承を聞き、その壮大さに胸を躍らせた。 - 勇者戦闘の余波
リーヒャが負傷し、現在は中央神殿で静養していることが明らかになった。 - 自治庁の拡張と大長老との出会い
自治庁が拡張され、大長老「おババ様」との面会で、妖精王のローブが話題に上った。 - エルフの鍛錬依頼
おババ様はセーラに自治庁のエルフたちの鍛錬を依頼し、騎士団進出の遅れを懸念した。 - 浮遊大陸人の疑念
浮遊大陸の住人が紫の髪を持つという話が出て、涼とアベルは過去の遭遇を思い出した。 - 商会での監視者発見
涼とアベルは商会で監視者と接触し、商会が王城の機密情報を盗んでいる疑いを知った。 - 商会への踏み込み
第二近衛連隊が商会を摘発し、黒い煙の球体を発見したが、問題の女性秘書は見つからなかった。 - 大使館への到着
涼はジュー王国大使館に到着し、翌日の王立錬金工房訪問を期待してその夜を過ごした。
王都騒乱
- 地下墳墓の異変
地下墳墓で神官が黒い水晶玉を使いアンデッドを発生させたが、異形の存在により殺害された。 - 錬金工房訪問
涼は錬金術師ケネスと議論を交わし、アベルは勇者たちと再会し、公爵邸への不信感からの移動を知った。 - 中央神殿の緊急事態
地下からアンデッドが溢れ、アベルと勇者たちはリーヒャの指揮のもと防衛戦に加わった。 - 王都北部の混乱
アンデッドの出現が王都全体に広がり、王城や騎士団が対応に追われた。 - 錬金工房の避難
涼の提案でルン辺境伯邸へ避難し、氷魔法で安全を確保しながら移動を完了した。 - 中央神殿での攻防
涼の水魔法で戦況が好転し、新たに修道院の通路が発見されさらなる危険が示唆された。 - 騎士団の壊滅
演習場や詰め所が魔物に制圧され、多くの騎士が戦死した。 - エルフ自治庁の防衛
セーラが自治庁で防衛線を構築し、住民の避難と魔物への対処を進めた。 - ウエストウッド子爵邸の孤立
ザックとスコッティーが邸を防衛するも限界を迎え、自治庁への撤退を決断した。 - 中央神殿での長期戦
涼、アベル、ローマンが魔物の殲滅戦を続け、魔物の発生源を探る中、疲労が蓄積した。 - 浮遊大陸の墜落
地上に戻った三人は王城に浮遊島が突き刺さる異常事態を目撃し、新たな混乱を予感した。
自治庁防衛戦
- 自治庁の防衛開始
自治庁は魔物の攻撃に備え、収容者十二人と共に防衛態勢を取った。午後には魔物の行動が組織化し、新たな強敵の存在が予感された。 - 門の破壊と近接戦
門が破壊され、セーラ指揮のもと近接戦が展開された。矢の供給が尽きる危機に対し、セーラは援軍が来ると虚勢を張り士気を維持した。 - アークデビルの出現
特別な魔物アークデビルが現れ、自治庁の危機が最高潮に達した。セーラは戦闘を諦めず、一騎打ちに挑んだ。 - セーラの勝利
長時間の戦闘の末、セーラはアークデビルを撃破。魔力を使い果たして倒れたが、勝利を収めた。 - 涼の登場と氷の壁
涼が氷の壁で魔物を圧倒し、自治庁に到着。セーラを救出し、魔物を殲滅した。 - 自治庁の平穏
セーラは救出され、自治庁の生存者たちは一時的な安堵を得た。おババ様は涼とセーラの働きを称賛した。 - 勇者パーティーの到着
赤き剣と勇者パーティーが自治庁に合流し、おババ様との対話を交わした。セーラの戦闘力が改めて評価された。 - ケネスの貢献
ケネスが自治庁に到着し、彼の錬金術が復興の鍵となった。王都復興への兆しが見え始めた。 - 三大国と連合の情勢
三大国の中でナイトレイ王国の混乱が進み、連合はその状況を利用しようとしていた。 - ウィリー王子の決断
ウィリー王子は大使館に留まり、騒乱を冷静に見守った。 - コーンの離脱
コーンは公国の指示で王都を離れ、ジェイクレアへの潜入任務に向かった。 - イラリオンの帰還
イラリオンが研究所に戻り、勇者たちに一時的な宿泊を許可した。 - ルンへの帰還
涼とアベルはルンへ向けて旅を進め、途中で盗賊と遭遇し戦闘を経て旅を再開した。 - 悪魔レオノールとの戦闘
涼は悪魔レオノールと戦い、相打ちに近い形で勝利。負傷を乗り越え旅を続けた。 - 浮遊島と管理者の観察
管理者ミカエルが涼の特異性に注目し、新たな戦争の兆しを懸念した。
総括
本作は、涼たちが王都に集まり、そこで起こる騒動に翻弄されながらも反撃する姿が描かれていた。
スタンピードや浮遊島の墜落といったスリリングな展開が続き、読者を飽きさせない構成であった。
セーラがエルフ自治庁で若者たちに課した過酷な訓練や、その成果がスタンピードて発揮され。
その根源に踏み込む際に、合流した勇者たちと連携が物語に深みを与えていた。
特に、涼の氷魔法を使った大規模な救援劇は圧巻であり、ヒーローらしい姿が際立つ。
また、悪魔レオノールとの戦闘シーンは、涼の規格外の強さと執念が描かれており、上には上がいる状況も垣間見えた。
戦闘シーンのテンポが良く、魔物との攻防や剣戟の描写が迫力満点であった。
浮遊島の墜落や財務卿の陰謀が物語に緊張感を与える一方で、セーラと涼の交流やエルフ自治庁でのやりとりが、物語に温かみとユーモアを添えていた。
次巻では、逃げ延びたレオノールとの再戦や、ルンでのさらなる展開が期待される。
中央諸国編がどのように終結していくのか、今後の展開が楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
プロローグ
移動中の王国第二街道
王都クリスタルパレスから東部国境の街レッドポストへ続く王国第二街道を、一行はウィリー殿下を中心に西へ進んでいた。大きな箱馬車に乗り、新たに購入した装備と共に旅を続けていた涼たちは、暗殺教団の襲撃を経て信用状を失っていたため、涼が費用を立て替えていた。道中、昨夜の食事を称賛するウィリー殿下に涼が笑顔で応じる場面が、同行者たちに微笑ましく映った。
魔法練習への情熱
ウィリー殿下は水属性魔法の練習に熱心であり、その結果魔力切れを起こして寝てしまうことが頻繁にあった。涼は殿下を止める役割を担っていたが、殿下の一途な努力を見守ることが一行の共通した姿勢となっていた。特にロドリゴ殿は、留学を通じて以前の芯の強い姿に戻りつつある殿下を喜ばしく感じていた。
村の教会での密会
夕方、王都近郊の教会を訪れた四人の冒険者の一人が、神官によって秘密の地下通路へ案内された。その男、アベルは地下道を抜け、王太子と密会を行った。王太子から伝えられたのは「英雄の間」の鍵を国王が放棄したという重大な知らせであった。さらにアベルは、新たな鍵の登録者として選ばれることとなった。
英雄の間の鍵登録
王太子の体調を気遣いながらも、アベルは「英雄の間」への鍵の登録に協力した。兄弟が密かに地下通路を通じて目的を果たした後、アベルは元の道を戻り、教会に帰還した。同行者との食事の中、アベルは王都での調査を決意するが、その具体的な手段については謎めいた笑みを浮かべるのみであった。
秘密裏の行動と王都への準備
王都での宿泊には厳しい身分確認が求められるが、アベルは既にその対策を考えていると述べた。その言葉に仲間は不安を覚えつつも、次の行動への準備を進めていった。一行はそれぞれの役割を胸に、王都クリスタルパレスへと向かうのであった。
王都到着と研究所訪問
『赤き剣』の四人は、王都に無事到着し、目的地である王国魔法研究所を訪問した。この研究所は筆頭宮廷魔法使いイラリオン・バラハが管理しており、広大な敷地と高度な設備を備えた施設であった。アベルはためらうことなくイラリオンの研究室に入り声をかけたが、イラリオンは彼の無遠慮な態度に呆れつつも歓迎した。
イラリオンとの対話
イラリオンは訪問の理由を聞く前に、最近の魔法研究の進展や、涼という水属性魔法使いについての話題を持ち出した。『赤き剣』のリンは涼の卓越した魔法技術を「化物」と評し、イラリオンも興味を示した。しかし、涼の実力に対する驚きの一方で、イラリオンが直接彼に会うことは現状不可能であると分かり、彼は一時的に落胆した。
王宮の異変と情報収集
イラリオンは、現国王スタッフォード四世が以前と異なり、寡黙で孤立気味であることに触れた。アベルもこの変化を認識しており、王宮内で力を持つ者たちへの疑念を抱いていた。イラリオンから、近年影響力を拡大した騎士団長バッカラーや侍従長ソレル、財務卿フーカの名前が挙がり、アベルはさらなる調査を決意した。
王宮の腐敗と権力構造
王国騎士団では賄賂が横行し、団長バッカラーは地位を利用して私腹を肥やしていた。同様に、侍従長ソレルも権力を背景に特定の利益を追求していたが、彼の行動は財務卿フーカの監視下に置かれていた。フーカは収税権を握り、王国内で絶大な影響力を持っていた。
謎の計画「ヴェイドラ」
ソレルは財務卿と内務卿が国王と交渉する場面に立ち会い、彼らが「ヴェイドラ」と呼ばれる計画の資金調達について議論しているのを耳にした。この計画の詳細は不明であり、ソレル自身もその正体を知らなかった。しかし、彼は深く関与することを避け、知識を封印することで危険を回避しようとしていた。
財務卿と内務卿の会話
財務卿フーカと内務卿ハロルド・ロレンスは、ロー大橋の復旧費用と「ヴェイドラ」開発費について議論を行った。フーカは予算調整に苦労しながらも、内務卿の協力に感謝していた。フーカは部下から東部での問題の報告を受け執務室に向かったが、その直後、ロレンスは一瞬の微笑を浮かべつつ自室へと向かった。
アベルの情報収集と疑惑
数日間でアベルは膨大な情報を集めた。騎士団長バッカラーと侍従長ソレルが汚職にまみれている一方で、財務卿フーカがそれらを黙認している可能性が浮上した。しかし、アベルは彼らが国王に直接手を下すほどの罪を犯しているとは考えにくいと推測した。リンとリーヒャもその分析を聞きつつ、アベルの情報網の広さに感心していた。
王立錬金工房での問題発生
王立錬金工房の主任研究員ケネス・ヘイワード男爵は、「ヴェイドラ」開発費の一時凍結に憤慨した。彼は内務省へ直談判に向かい、ロレンスから「ロー大橋復旧が優先事項である」との説明を受けた。ケネスは一時的に納得したものの、「ヴェイドラ」開発の重要性を再認識し、課題を残したまま内務省を後にした。
次男坊連合の集まりと再会
錬金術師ケネスは、友人である騎士ザックやスコッティーと飲み会を開き、アベルと初めて顔を合わせた。アベルがルンの街の冒険者であり、ケネスの元の家を購入した涼という水属性魔法使いと知り、驚きを隠せなかった。会話の中で、涼が戦闘においても優れた魔法使いであることが語られ、ケネスは彼の錬金術への興味に協力を申し出た。
涼の存在とその影響
アベルは涼が命の恩人であり、戦闘能力が突出していると語った。水属性魔法使いとして異例の冒険者である涼の存在が、仲間たちに感銘を与え、ケネスも彼に対する興味を深めていた。飲み会は笑いと感嘆の声に包まれ、次男坊連合の絆がさらに強まったのであった。
アベルの尾行と反撃
アベルは居酒屋を出た直後から尾行されていることに気付いていた。尾行者は三人で、彼は巧みに路地を利用して全員を無力化した。その後、協力者ウォーレンと共に尾行者を「王国魔法研究所」地下へ運び、尋問の準備を整えた。
イラリオンによる尋問
捕らえられた男は目覚めると、イラリオン・バラハに尋問される。イラリオンは自らの権威を利用し、魔法の脅威をほのめかして男を圧倒した。男は恐怖のあまり断片的な情報を漏らし始めた。
女子会での情報共有
イラリオンが尋問を終えて戻ると、リンとリーヒャ、そして襲撃者の一人オリアナが茶会を開いていた。オリアナは財務卿の部下から依頼を受けたと説明し、彼女たちは和やかな雰囲気で詳細を聞き出していた。イラリオンは自らの尋問の成果が軽視されたように感じ、敗北感を味わった。
財務卿の陰謀と冒険者たちの動揺
オリアナは財務卿から正式な依頼を受け、アベルを尾行していたと明かした。その際、アベルと別れた仲間たちにも尾行者が付いていることが判明した。アベルはこれを機に財務卿の黒い疑惑を深めた。
潜入計画と追跡装置の活用
イラリオンはアベルに潜入を提案し、追跡装置を渡した。アベルが安全に潜入し、状況を把握できるよう設計されたこの装置により、彼は周囲から監視される環境下でも情報を伝えられる状態となった。
襲撃者との協力体制
捕らえられた冒険者たちは、イラリオンの説得により協力を決意した。彼らはアベルを財務卿の元に送り届ける計画を了承し、その行動がもたらすリスクを理解しつつ準備を整えた。
潜入直前の調整と不安
アベルが潜入に備え装置を隠そうとする中、仲間たちはさまざまな提案を行った。しかし提案は奇抜なものも多く、アベルは自分の選択を嘆きながらも準備を進めたのであった。
捕獲されたアベルと隠れ家での計画
ヘクター率いる『明けの明星』は、捕獲したアベルを袋に入れて隠れ家に運び込んだ。仲間であるケンジーとターロウに合流すると、ヘクターは貴族や騎士団員を尾行した件を報告しつつ、彼らに一切関わらないよう指示を出した。その後、アベルは袋から出され、別の男たちに引き渡されて厳しいボディーチェックを受けた。
尋問の開始とアベルの巧妙な嘘
アベルは広い部屋に連行され、リーダー格の男たちから尋問を受けた。彼らの質問に対し、アベルは「騎士団長の手先だ」と嘘をつき、さらなる疑念を植え付ける。アベルの言葉はリーダーを動揺させ、財務卿側が警戒している事実を引き出すきっかけとなった。
樽の中身と尋問者の動揺
尋問中、誤って部屋に運び込まれた樽が男たちを焦らせた。アベルはこの樽に疑問を抱きつつ、リーダーに嘘の情報を提供しながら巧みに時間を稼いだ。その隙に取り巻きの男たちを次々と倒し、リーダーを気絶させることに成功した。
『赤き剣』とイラリオンの合流
アベルがリーダーを制圧した直後、『赤き剣』とイラリオンが現場に到着した。アベルはリーダーを袋に入れさせ、誤って運び込まれた樽の中身を調査するため、イラリオンと共に奥の部屋へ向かった。
黒い粉の発見と危険性の判明
奥の部屋で、アベルたちは大量の樽を発見した。その中の黒い砂状の物質を見たイラリオンは、それが「黒い粉」と呼ばれる爆発性の危険物であると断定した。これを受け、彼らは急いでその場を離れ、建物を脱出した。
捕らえられたリーダーの正体と背後の陰謀
隠れ家に戻ると、捕らえられたリーダーが財務卿フーカの異母弟シーカであることが判明した。尋問の結果、シーカは兄フーカが弟ルーカの誘拐を受け、脅迫により「黒い粉」の横流しを強要されていたことを明かした。その背後には、フリットウィック公爵とハンダルー諸国連合の関与が浮かび上がった。
イラリオンの提案とアベルの身分公開
イラリオンはシーカを説得するため、アベルがナイトレイ王国第二王子である事実を明かした。シーカはフーカの計画について詳細を語り、横流しが救出作戦の時間稼ぎであったことを説明した。
爆発事件と新たな危機
調査を終えた直後、アベルたちは「黒い粉」による爆発が起きた現場を確認した。これが事故か意図的なものかは不明だが、イラリオンはシーカの安全を確保するよう指示を出し、次の行動への準備を進めた。
事故現場での混乱とイラリオンの調査
現場周囲には赤い「立入禁止ロープ」が張られ、衛兵たちが野次馬を抑えていた。しかし、イラリオンが現れロープを無視して現場に入ったため、衛兵たちは困惑した。責任者のレックス副隊長が駆けつけると、イラリオンは現状報告を求めた。その後、内務卿ハロルド・ロレンスが加わり、事故原因について火属性魔法の暴走という仮説を示したが、イラリオンは納得していなかった。
犠牲者の確認と冒険者ギルドの協力
現場には10人の遺体があり、王都の冒険者ギルドサブマスター、ジョザイアが身元確認を行った。犠牲者はC級パーティー「竜の爪」とD級パーティー「黒の影」のメンバーであった。イラリオンは、『明けの明星』が無事だったことに安堵し、現場を後にした。
王子の護衛と森での異変
翌日、王国第二街道を進むウィリー殿下の一行は、森から聞こえる剣戟の音に気付いた。殿下の意向で冒険者たちが現場に向かい、襲撃されていた二人を救出した。一方、涼は森に潜む別の五人に気付き、氷魔法を使って迎撃準備を整えた。
追手との戦闘と涼の活躍
追手の四人が近接戦を挑むも、涼の魔法で動きを封じられた。コーンが機敏に対応し、全員を無力化した。残った弓士は姿を消したが、その腕前の高さから一行は警戒を強めた。
救出者の正体と同行の決定
助けられたマシューとルーカは、ハンダルー諸国連合に捕らわれていたルーカを救出する部隊の一員であった。追手から逃れ王都を目指していたことが判明する。一行は議論の末、二人を王都まで同行させることを決め、殿下も喜びを見せた。
捕らえた襲撃者たちの尋問
捕らえた四人の襲撃者のうち、一人が目を覚ました。涼とコーンは対話を試みたが、男は自分たちの身分を隠そうとした。涼が氷魔法を使う話を持ち出すと、男は怯えながら「リーダーが起きるまで待て」と言い訳をする。リーダーが目を覚ました直後、街道に騎馬の衛兵が現れ、事態は新たな展開を迎えた。
騎馬衛兵との対峙と捕らえた者の正体
衛兵たちは襲撃者を公爵家の者と認識し、その紋章の影響で対応に戸惑った。ウィリー殿下は二人の随行員としての安全を主張し、衛兵隊長に対し、事態を王国の重鎮に判断させるよう提案した。涼は宮廷魔法団顧問アーサー・ベラシスを召喚する案を提示し、衛兵隊長もこれに同意した。
アーサー・ベラシスの到着と裁定
ストーンレイクに到着した一行は、後日、アーサー・ベラシスと対面した。彼は襲撃者たちの罪を軽い禁固刑とし、ウィリー殿下の随行員としてマシューとルーカを認めた。さらに、護衛として宮廷魔法団を派遣することを提案し、一行の安全が確保された。
宮廷魔法団の護衛と王都到着
翌朝、氷漬けにしていた襲撃者たちを解放した涼は、宮廷魔法団の護衛と共にストーンレイクを出発した。予想以上の規模で到着した護衛隊は50人にも及び、壮観な隊列を形成した。一行は二日後に王都クリスタルパレスに到着し、その様子は王都民の大きな話題となった。
イラリオンの早馬と期待
イラリオンは研究所に戻り、机の上の伝言を確認した。そこには涼からの要請が記されていた。涼のオリジナル魔法に興味を持ったイラリオンは急いでストーンレイクに向かったが、途中で護衛付きの馬車とすれ違うことに気付かず、到着した時には涼の一行は既に出発していた。
セーラへの手紙と決意
ルンの領主館前で、冒険者スーとラーがセーラに涼からの手紙を渡した。手紙を読んだセーラは、その内容に大きく心を動かされ、王都への同行を決意した。彼女は即座に騎士団長ネヴィルの執務室を訪れ、王都への護衛任務に加わることを直訴し、強引に許可を得た。
騎士団の王都行き準備
セーラはネヴィルの了承を得た後、領主への報告も自ら引き受け、旅費の増額を約束して準備を進めた。彼女の異例の行動に、周囲の騎士団員やネヴィルも理由を掴めず困惑する中、セーラの熱意だけがその場を動かしていった。
王都集合
王都到着と別れの挨拶
ウィリー殿下と一行は、王都クリスタルパレスに到着した。殿下は涼や冒険者たちに深く感謝し、別れを告げた。涼はコーンら冒険者と冒険者ギルドへ向かう予定だったが、王城から現れたセーラと再会する。セーラは涼に抱きつき、自身がエルフとして涼を「栄養補給源」として重要視していることを語った。この再会により、涼の予定は一変した。
フリットウィック公爵邸の陰謀
フリットウィック公爵邸では、公爵家の家臣と連合情報省の使者が密談していた。彼らは財務卿や涼の動きを警戒しつつ、アベルの抹殺計画を進めていた。アベルの暗殺にはゴードンを含む勇者パーティーの一部を利用する手筈が整えられた。
ゴードンの初めての恋と不幸なデート
勇者パーティーの一員ゴードンは、初めての恋に舞い上がり、秘書ナンシーとのデートを楽しんでいた。しかし、デート中にナンシーが口から血を吐いて倒れる。ゴードンは激昂し、彼女を傷つけたと思われる剣士アベルに攻撃を仕掛けるが、アベルに反撃されて意識を失った。
誤解から始まる激闘
ゴードンを倒した現場に現れた勇者ローマンとベルロックは、状況を誤解し、アベルに攻撃を仕掛ける。ローマンとアベルの激しい剣戟が街中で繰り広げられ、周囲の野次馬や店主たちは戦いの危険さに近寄らなかった。ローマンはアベルの高度な剣技に感嘆しつつも、激戦は続いた。
戦いの広がりと勇者パーティーの動揺
戦いの様子を見ていた他の勇者パーティーのメンバーも現場に集まったが、牽制され手を出せない状況が続いた。一方で、ローマンは技術的に追い詰められることはなかったが、アベルとの戦いが異例の経験となっていた。戦闘の混乱はさらに広がりを見せる予兆を孕んでいた。
クレープと偶然の剣戟
涼とセーラは王都を歩きながらクレープを楽しんでいた。途中、剣の打ち合いの音を聞きつけた二人はその現場に向かい、激しい戦いを繰り広げるアベルとローマンを目撃した。セーラは戦いに感嘆しつつ、ローマンが勇者であることを見抜き、その剣が聖剣アスタルトであると推測した。
戦いの中断と仲裁
アベルとローマンの戦いは熾烈を極めたが、精神的な疲弊からアベルが次第に追い詰められていた。涼は戦いの危険性を察し、氷の魔法で二人を強制的に分断した。勇者ローマンに涼は彼の使命を説き、戦闘を終わらせることに成功した。その後、涼は二人にクレープを渡し、和解を促した。
錬金術師ケネスの紹介
戦いの後、涼とセーラはアベルとともにカフェで話をした。アベルは涼に王国の天才錬金術師ケネス・ヘイワード男爵を紹介し、相談するよう助言した。涼は錬金術の勉強を決意し、ケネスとの面会を約束した。
自治庁からの呼び出し
セーラのもとに自治庁から手紙が届き、王都に滞在するエルフたちへの稽古の依頼があった。さらに、大長老も王都にいることが判明し、セーラは涼とアベルを伴い自治庁へ向かうことを決めた。
浮遊大陸の伝承
自治庁への道中、涼は王国の起源や浮遊大陸「超帝国バビロン」の伝承をアベルから聞き、その壮大な話に興奮した。セーラはエルフの間にも伝わるこの伝承について、大長老から詳細を聞ける可能性を示唆した。涼は浮遊大陸の話に胸を躍らせながら、期待を膨らませていた。
勇者との戦闘の余波
涼がアベルにリーヒャの状態を尋ねたところ、リーヒャは勇者との戦闘中に魔法を防いだ際、吹き飛ばされて負傷したことが明かされた。現在、彼女は回復のため中央神殿で静養中であった。アベルは、自身の未熟さが原因でリーヒャを傷つけたことに悔しさを滲ませていた。
自治庁への到着と建物の変化
一行が自治庁に到着すると、その広大で立派な石造りの建物が目に入った。以前は普通の一軒家だった自治庁が、取り壊された伯爵邸跡地に移転して大きく拡張されていた。アベルはその変化に驚きつつも、以前の庶民的な建物を懐かしんでいた。
部分日食の予兆と過去の記憶
涼は太陽が陰る現象を部分日食と認識し、ルンでの皆既日食の際に起きた悪魔との戦いを思い出した。その時の恐怖が蘇り警戒したが、セーラが「王都にダンジョンはない」と涼を安心させた。一方で、アベルは日食と大海嘯の関係を知らず、疑問を抱いていた。
自治庁での歓迎と衝突
自治庁の中庭で出迎えたのは、エルフの大長老「おババ様」とその側近ロクスリーであった。おババ様は涼が纏うローブに驚嘆し、それが妖精王のローブであることを見抜いた。しかし、ロクスリーが涼を不審視して剣を抜こうとしたため、セーラが彼を制圧した。おババ様はロクスリーの行動を詫び、事態を収めた。
エルフ自治庁の現状と要請
おババ様は自治庁のエルフたちの鍛錬をセーラに依頼した。エルフたちの騎士団進出が滞っている背景には、王国騎士団内の問題があると語った。セーラは鍛錬を引き受けるが、その際に彼らの精神面も鍛える必要があると苦言を呈した。
浮遊大陸の伝承と驚きの真実
涼が浮遊大陸について尋ねると、おババ様はその存在を肯定した。浮遊大陸は分厚い雲に隠れており、過去に小規模なものを見たことがあると語った。しかし、浮遊大陸の住人は紫の髪を持つという話が出ると、涼とアベルは過去に遭遇した紫髪の人物を思い出し、不安を抱いた。彼らが浮遊大陸人であるかは確証がないものの、二人の中で疑念が深まった。
緊張の中での平和な結末
涼は浮遊大陸への興味を膨らませ、いずれ訪れる決意を固めた。おババ様もその情熱に応え、知る限りの情報を提供する姿勢を見せた。一方、アベルは浮遊大陸人の可能性を否定しきれず、複雑な表情を浮かべていた。最後にセーラとおババ様が話を進め、エルフ自治庁での鍛錬が具体化したところで、次なる展開が示唆される形で幕を閉じた。
自治庁を後にしての帰路
涼とアベルは、自治庁でセーラと別れ、帰路に就いた。涼は、ジュー王国大使館の離れを宿泊先として提供されていると語ったが、大使館の場所を知らないことが発覚した。アベルはその予想通りの展開に苦笑しつつ、涼をからかった。
謎の女性との遭遇
帰路の途中、アベルがローブ姿の女性に目を留めた。涼は冗談交じりに浮気を指摘したが、アベルは女性が先ほどの戦闘に関わった人物である可能性を指摘した。二人はその女性を尾行することを決め、距離を保ちながら追跡を開始した。
商会と監視者の存在
女性がゴンゴラド商会に入る様子を確認した二人は、同時にその店を複数の集団が監視していることに気づいた。涼は商会が悪徳商人ゴンゴラドと関係している可能性を示唆し、アベルもその疑念に同意した。二人は商会に直接踏み込むことを避け、周囲の状況を慎重に探ることにした。
監視者との接触
監視者の一人がアベルの旧知、第二近衛連隊の中隊長エマニュエルであると判明した。エマニュエルは、商会の監視と取り締まりが王太子の命令によるものであると説明し、商会が王城の機密情報を盗んでいる疑いがあることを明かした。さらに、商会が帝国とも繋がりを持つ危険な存在であることが語られた。
商会への踏み込み
第二近衛連隊が商会に踏み込んだ結果、店長以下二十名が捕縛されたが、問題の女性秘書は発見されなかった。一方で、商会内部から人の拳より大きな、黒い煙が渦巻く球体が発見された。その異質な物体は、エマニュエルの指示で王城地下の重保管室に厳重に保管されることとなった。
静かに終わる一幕
踏み込みの間、涼とアベルはエマニュエルの指示に従い、外から事態を見守った。二人は、特に危険な場面に巻き込まれることなくその場を離れたが、商会と女性秘書の背後に潜む謎を残したまま、その日は平穏に終わった。
踏み込みの成功と秘書の不在
涼とアベルは、第二近衛連隊による商会への踏み込みが成功したのを見届けた。だが、目的の女性であるフレッチャー子爵の秘書が見つからなかったことに疑問を抱いた。涼は地下の抜け穴や異常事態を推測したが、アベルはそれを現実的に受け流した。
王都の街並みと大使館への道中
二人は東地区にあるジュー王国大使館を目指しながら、王都の街並みについて話した。西地区の商業地区から、露店が並ぶ王都中央を通り、賑やかな東地区へと進んだ。涼は工房地区の雰囲気や錬金術への期待感を楽しそうに語り、アベルは王都の地理や施設について説明した。
ルン辺境伯邸での伝言
東地区のルン辺境伯邸に寄り、涼はセーラの伝言をイーデンに伝えた。セーラが自治庁でエルフたちを鍛える予定であることに、イーデンは苦笑しつつも了承した。涼は冗談交じりにエルフたちの無事を祈ると言い、イーデンと別れた。
ジュー王国大使館への到着
ジュー王国大使館に到着した涼は、アベルに礼を述べ、翌日の王立錬金工房への案内を約束された。その後、大使館内での歓迎を受けた涼は、翌日王太子が大使館を訪れるという知らせを聞き、期待を抱きながらその夜を過ごした。
王都騒乱
地下墳墓での異変と男の最期
王都中央神殿の地下墳墓にて、白い神官ローブを着た男が、地下五階で封印された黒い水晶玉を使用した。水晶玉から噴き出した黒煙は数千のアンデッドを生み出し、男はその力で神殿壊滅を目論んでいた。しかし、アンデッドに混じり現れた異形の存在によって、男は斬り倒された。
錬金工房訪問と勇者パーティーの動き
翌朝、アベルは涼を迎え、王立錬金工房で錬金術師ケネス・ヘイワード男爵との面会を手配した。涼が錬金術の議論に夢中になる中、アベルは王国魔法研究所に戻った。そこでは、勇者ローマンらがフリットウィック公爵邸を離れ、アベルの元を訪れていた。ナンシーが連合の諜報員と判明したことが原因で、公爵邸に不信感を抱いた勇者たちは移動を決意したという。
中央神殿の緊急事態発生
王国魔法研究所に緊急連絡が入り、中央神殿地下からアンデッドが溢れ出ているとの報告が届いた。スーラーの指示で、アベルと勇者パーティーが中央神殿へ向かった。彼らは、地下で指揮を執るリーヒャの元へ急行し、混乱を収拾すべく戦場に加わった。
神官たちの防衛戦とリーヒャの指揮
中央神殿の地下では、神官たちがリーヒャの指揮のもと、数の優勢を誇るアンデッドと戦っていた。撤退戦を続けながらも、敵の猛攻に体力と魔力が尽きかけていた。援軍が到着しない中、リーヒャは冷静な判断で持ちこたえていたが、モンク隊の副隊長が窮地に陥る。しかし、アベルとリンの活躍により窮地が救われ、神官たちは一時的な安堵を得た。
王都全体への影響と騎士団の動き
中央神殿以外でも、アンデッドの発見が相次ぎ、王都北部は混乱に陥っていた。王都衛兵隊副隊長レックスは状況を把握し、騎士団に協力を要請したが拒否され、代わりに御前会議への参加を命じられた。王都全体で異変が拡大する中、レックスは対応策を模索しながら王城へと向かった。
錬金工房での異変と避難計画
涼は王立錬金工房でケネスと錬金術について語り合っていたが、中央神殿地下で魔物が発生したとの報告を受けた。同時に、王都にもオーガなどの魔物が現れ、工房は緊急退避警報を発令した。涼の提案で、避難先としてルン辺境伯邸を選び、工房の人々を安全に移動させた。氷の魔法で一行を守りながら無事到着し、イーデン隊長の協力で邸内に避難することに成功した。
中央神殿での攻防と涼の加勢
アベルたちは中央神殿地下で魔物との迎撃を続けていたが、状況は依然厳しかった。そこに涼が到着し、強力な水魔法で戦況を好転させた。涼は魔法使いたちの疲労を考慮し、戦力を整理してアベルやローマンとともに効率的に魔物を殲滅した。戦いの中で、地下三階が古い修道院の通路に繋がっている可能性が示唆され、リーヒャたちは新たな危険を警戒した。
王国騎士団第二演習場の陥落
修道院跡の通路から溢れた魔物が、王国騎士団第二演習場に到達した。訓練中の騎士たちは不意打ちを受け、多くが壊滅的な被害を受けた。室内にいた騎士たちは酔った状態で抵抗できず、外部の騎士たちもほとんど抗えなかった。魔物はさらに北上し、第一演習場も瞬く間に制圧された。
騎士団詰め所の混乱と陥落
魔物は騎士団詰め所にも侵入し、衛兵の警鐘も虚しく詰め所全体が飲み込まれた。騎士団長バッカラーは一時的に抵抗を試みたが、最終的にホブゴブリンにより命を落とした。詰め所制圧後、魔物は市街地へと進行を始めた。王都全体に魔物の脅威が広がり、事態はさらに悪化していった。
エルフ自治庁の防衛戦開始
セーラはエルフ自治庁で精鋭を鍛えていたが、王都にオーガやオークが現れる異常事態を確認した。自治庁前の道路でオーガを討ち取り、逃げ込む住民を庇護するよう指示を出した。エルフたちは弓矢を中心に防衛線を構築し、周囲の住民を受け入れながら防衛戦を開始した。
王都貴族街での異変
ウエストウッド子爵邸では、騎士団のザックとスコッティーが訪問中にスケルトンの襲撃を受けた。二人は冷静に敵を撃退し、屋敷の住人を守るため防衛を固めた。外部にはゴブリンやオークの群れが徘徊し、事態はさらに深刻化していた。
御前会議での報告と対策の遅れ
王城では御前会議が開かれ、中央神殿の防衛が続いていることに安堵が広がった。しかし、王国騎士団の壊滅や衛兵隊の不足により、王都北側で魔物が広がっている状況が報告された。騎士団の腐敗が招いた危機であり、王城防衛のために衛兵隊を回す決定がなされたが、戦力不足は明白であった。
ウエストウッド子爵邸の孤独な抵抗
自治庁から見えるウエストウッド子爵邸では、ザックとスコッティーが槍を用いて門を守り続けていた。しかし、敵の数に対し二人だけの防衛は限界が近づいていた。セーラはその様子を見て、支援の必要性をおババ様に進言した。
エルフの防衛と有限資源の懸念
自治庁の弓矢防衛は驚異的な精度で魔物を撃退していたが、矢や魔力の消耗が問題となりつつあった。セーラは状況を見極め、周囲の屋敷からの避難者を保護する一方で、今後の戦略を考えながら防衛を続けていた。
ウエストウッド子爵邸の撤退決断
ザックとスコッティーは屋敷の防衛に限界を感じ、非戦闘員を連れてエルフ自治庁への撤退を決意した。自治庁の指揮官セーラが援護射撃を開始し、自治庁との間に安全な通路を作り出した。二人は非戦闘員を連れて移動したが、ザックが転倒し危機に陥ったところをセーラが救った。その後、一行は無事に自治庁に避難することに成功した。
セーラとの邂逅と驚愕
ザックとスコッティーは自治庁でセーラに礼を述べ、その名を聞いた。彼女がルン辺境伯領騎士団の剣術指南役であると知り、二人はその実力に納得した。セーラは今後の混乱が長引く可能性を示唆し、休息を取るよう二人に伝えた。
中央神殿での終わりなき戦闘
涼、アベル、ローマンの三人は中央神殿地下で魔物との殲滅戦を続けていた。アベルとローマンの剣技は衰えを見せず、涼の魔法支援も相まって戦線は安定していたが、戦闘が長時間に及ぶ中、疲労の色も見え始めた。涼は魔物の発生源を探り、戦いの終結を目指した。
浮遊島の墜落
地下の探索を終えた三人が地上に戻ると、王都に異変が起きていた。王城に巨大な島が突き刺さっており、浮遊大陸の一部が落下した可能性が示唆された。その異常な光景に三人は言葉を失い、さらなる混乱の到来を予感した。
落ちた島
浮遊島型輸送艇の異常事態発生
リウィアとユリウスが操縦する全長二百メートル級の浮遊島型輸送艇が、浮遊機関の異常により制御不能に陥り、ナイトレイ王国の王都に落下した。島は右旋回しながら墜落し、衝撃音とともに着地した。操縦室では警報音が響き渡り、リウィアがコンソールで状況確認を行った。
損傷確認と修復準備
リウィアは島の外殻が無傷であると予想していたが、前部乗降口の破損を確認した。ユリウスは、修復作業の間に外部からの侵入を防ぐ役割を引き受け、リウィアは修理に必要な時間を二時間と見積もった。
王城の異変と敵性存在の発見
リウィアは遠眼鏡装置を使用して王城周辺を調査し、オーガやオークといった魔物が存在していることを発見した。その異常事態に驚きつつも、状況を受け入れ、輸送艇の防衛体制を整える決断を下した。
ユリウスの制限解除と防衛命令
リウィアはユリウスに「制限『一段階』解除」を許可し、冷凍睡眠中のドルススを補佐として起こすよう指示した。さらに、近付く存在が魔物でも人間でも全て排除するよう命令を下し、ユリウスはそれを正式な礼をもって受諾した。
王城への決意
涼とアベルは、王城に突き刺さった島を確認した後、中央神殿から王城に向かうことを決めた。アベルは王城にいる父と兄の安否を確認するため、涼の協力を要請し、報酬としてギルド食堂の日替わり定食を提示した。この提案に涼は即座に同意し、二人で王城を目指すこととなった。
王城への道中
広い通りを進む中、魔物たちが多数出現したが、アベルは近距離でゴブリンやオークを、一刀のもとに倒し、涼は遠距離から魔法でオーガやスケルトンを次々と仕留めた。効率的に魔物を排除する涼の姿にアベルは感心し、二人は互いに軽口を交わしつつ進んでいった。
突き刺さった島と異常な光景
二人は、突き刺さった島を見上げながら、王都の異様な静けさを語った。野次馬がいない理由については、通りにあふれる魔物の存在が大きいと推測した。王城の大きさと島の異常な巨大さを確認しながら、二人は少しずつ距離を詰めていった。
アベルの家族についての問答
涼がアベルの父と兄の職務について尋ねた際、アベルは「内勤である」と答え、二人の安全を信じるよう促した。だが、アベルは内心で真実を話すかどうか葛藤していた。しかし、魔物の襲撃が続く中で話題は途切れ、アベルの内心は明かされないままとなった。
王城の混乱
その頃、王城内では涼とアベルが想像する以上に、状況が悪化していた。王城を中心に、魔物の侵入が進み、さらなる混乱が広がっていた。
王城地下からの魔物の出現
王城の根元に突き刺さった島の先端が、地下の重保管室に到達し、そこに保管されていた黒い球が割れ、魔物が溢れ出した。この現象により、王城内部に混乱が広がり、魔物は一階にまで侵入していた。王都衛兵隊副隊長レックスは部下たちを率いて、国王を守るために即座に行動を開始し、階段での防衛戦を展開した。
レックスの奮闘と部隊の防衛戦
レックスは自身の剣技を駆使し、階段を守りながら魔物たちを次々に排除した。特にオーガが出現した際には、自らの手でその巨体を倒し、部下たちの士気を高めた。しかし、さらなるオーガの襲来が予期され、戦況は厳しさを増していった。
涼とアベルの救援
レックスの危機に涼とアベルが到着し、氷魔法と剣技で戦況を一変させた。涼は魔法でオーガを一掃し、アベルは剣で紫髪の男たちと対峙した。戦闘の中で、紫髪の男たちの強大な力が明らかになり、彼らとの戦いは激しさを増した。
紫髪の男たちとの戦いと島の消失
紫髪の男たちは驚異的な魔法と戦闘技術を持ち、涼とアベルに圧力をかけたが、二人は連携して彼らを撃退した。その後、彼らと共に島が突然消失し、戦いは一応の終息を迎えた。
王都の魔物と新たな危機
レックスからの報告で、魔物が王都内で北西地区に向かっていることが判明した。涼とアベルはその先にエルフの自治庁があると気づき、再び危機を察知して行動を開始した。
自治庁防衛戦
自治庁の防衛開始
自治庁はウエストウッド子爵邸の生存者十二人を収容し、門を閉じて防衛態勢に入っていた。二階、三階から矢を放ち、魔物の侵入を防いでいたが、午後を過ぎた頃から魔物たちの行動に変化が見られた。まるで指揮者が現れたかのように動きが組織的になり、おババ様は「力で従える化物が来た可能性がある」と推測した。
門の破壊と近接戦の激化
突如として門が吹き飛ばされ、セーラが指揮を取りつつ自治庁の戦力を再配置した。ザックやスコッティーを中心に剣を用いた近接戦が展開され、二階や三階の窓から矢で援護が行われた。しかし、矢の供給が尽きる危機に陥り、セーラは士気を維持するため「援軍が来る」と虚勢を張り続けた。
アークデビルの出現
防衛線が崩れかけたその時、三体のデビルが現れた。その中央にいる存在はアークデビルと呼ばれる特別な魔物であった。おババ様はその強大さに危機感を抱き、セーラに戦闘を止めるよう諭したが、セーラは「勝つ以外に道はない」と決意を固め、一騎打ちに臨んだ。
セーラとアークデビルの死闘
セーラとアークデビルの剣戟は一時間以上続き、自治庁の攻撃を一時的に止める効果を生んだ。しかし、互いに疲弊する中、次の一撃で勝敗が決まることは明白であった。アークデビルが仕掛けた猛攻を、セーラは残りの魔力を使った瞬間的な「風装」でかわし、死角からの一撃で首を斬り落とし、心臓の魔石を貫いて勝利を収めた。
氷の壁の到来と救援の兆し
勝利を収めたセーラであったが、魔力を使い果たし倒れ込んだ。まだ魔物たちの脅威が残る中、遠くから氷の壁が次々と降り注ぎ、魔物たちを押し潰しながら近付いてくる音が聞こえた。その氷の上を、ローブを纏った魔法使いが一人駆けてくる姿が、自治庁の生存者たちの視界に映った。
涼の突進と氷の壁
涼は魔物がひしめく通りを突進し、自治庁へ向かった。その様子を見ていたアベルとレックス副隊長は、その規格外の体力に驚きつつも追わなかった。涼が放つ氷の壁が次々と空から落ち、魔物を押し潰していく光景が広がった。アベルは涼の魔法をよく知るゆえ、驚きは少なかったが、その特異性を再確認していた。
赤き剣と勇者パーティーの再会
氷の壁が落ちる音が響く中、アベルは赤き剣の仲間と再会を果たした。抱きついてきた神官リーヒャや、魔物退治を報告する勇者ローマンと短い会話を交わした。一方、勇者パーティーの面々は、涼の魔法の規模に困惑しながらも、氷の道がもたらす状況を受け入れざるを得なかった。
自治庁での救出と涼の力
自治庁に到着した涼は、片膝をついて傷だらけのセーラを発見し、超音速の飛び込みで彼女を抱き支えた。特製ポーションを飲ませる間にも魔物たちが動き出し、涼は瞬時にウォータージェットの魔法を発動。数百体の魔物を首だけの状態にし、周囲の視線を釘付けにした。涼に感謝の言葉を囁くセーラの表情には安堵が滲んでいた。
自治庁の平穏と涼とセーラの交流
全ての魔物が倒れた後、涼はセーラを抱えたまま安全を確認した。自治庁の指揮を執るおババ様は、セーラの活躍を称賛し、涼に彼女を休ませるよう頼んだ。お姫様抱っこで連れて行かれるセーラは恥じらいを見せながらも、涼の優しさを受け入れた。その光景におババ様が満足げに頷いている姿は、二人には見えなかった。
勇者パーティーとおババ様の対話
自治庁に到着した赤き剣と勇者パーティーは、おババ様と会話を交わした。勇者ローマンを一目で見抜いたおババ様の洞察力に、一同は感嘆した。また、セーラがアークデビルと風装なしで戦い抜いた話を聞き、アベルたちはその驚異的な力を再認識した。
ケネスの登場と復興への兆し
ルン辺境伯邸からケネス・ヘイワード男爵が到着し、彼の錬金術の知識が防衛に大きく貢献したことが語られた。セーラと涼が自治庁の危機を救い、王都復興への道筋が見え始めた中、アベルはその大変さにため息をつきつつも、涼の存在の大きさを再確認していた。
三大国とハンダルー諸国連合の情勢
中央諸国には三大国が存在し、北のデブヒ帝国、南のナイトレイ王国、東のハンダルー諸国連合が互いに接していた。特に連合は王国と帝国の間で勢力を維持していたが、十年前の大戦で王国に大敗し、領土を失うとともに、属国の独立を許した。この中でもインベリー公国の独立は連合にとって大きな損失であった。
オーブリー卿の策略と王都の混乱
連合首都ジェイクレアでは、執政オーブリー卿がナイトレイ王国の混乱に嘲笑を浮かべていた。彼は王国騎士団壊滅の報告に基づき、スタッフォード王の異常を指摘した。また、フリットウィック公爵が帝国とも連合とも密接に関わる状況を冷静に分析しつつ、密偵ナンシーを王国西部へ派遣することを決定した。さらに、王都騒乱の原因とされた宝珠についても再度の入手を試みたが失敗し、連合軍の準備が整う四カ月後の出陣を宣言した。
ジュー王国大使館とウィリー王子の決断
王都騒乱の中、ジュー王国大使館は被害を免れた。ウィリー王子は学園への登校を延期して大使館に留まり、無事を喜んだ。また、王太子から受けた指示の的確さに感銘を受け、感謝を伝えることを決意した。さらに、知人である涼や護衛冒険者コーンの安否を気遣いながらも、冷静に状況を見極めていた。
コーンの任務と王都からの離脱
インベリー公国に所属する冒険者コーンは、王都騒乱の発生直前に公国政府からの指示を受け、スパイ活動のため王都を離れた。公国は小国ながらも独自の諜報網を駆使しており、コーンはその一員として諸国連合首都ジェイクレアへの潜入任務に向かった。結果的に、彼は騒乱を回避することができた。
筆頭宮廷魔法使いイラリオンの帰還
王国を代表する魔法使いイラリオンは、王都を離れていた間に騒乱が発生し、変わり果てた街並みに驚愕した。研究所に戻ると、アベルと勇者ローマン率いるパーティーが滞在しており、思いがけない状況に困惑した。勇者ローマンの丁寧な挨拶に応えたイラリオンは、彼らの宿泊を許可し、王都における一時的な安息の場を提供することとなった。
ルンへの帰り道
冒険者たちの旅路と騒動
王都からルンへの帰還
王都騒乱から三週間後、復旧が進む王都を後に、アベルと涼の二人は辺境の街ルンを目指して南街道を進んだ。先に帰還した仲間たちを追う形で旅を始めた二人は、途中で冗談を交えつつ、旅の疲れを紛らわせていた。
宿場町デオファムでの小休止
初日の夜、二人はデオファムの宿に泊まった。涼は大浴場のある宿を気に入り、旅の中での小さな贅沢を楽しんだが、アベルに恩を売る試みは失敗に終わった。
不審な視線と盗賊の出現
デオファムを出発した二日目から、二人は誰かに監視されていることに気付いた。不快な視線を感じながらも慎重に進んだ二人は、四日目に盗賊の集団に包囲された。盗賊たちはアベルが持つ剣を狙っており、交渉の末に二人は盗賊たちの拠点となる村へ連行されることとなった。
謎の村と神殿での遭遇
村に到着した二人は、表向きは村だが違和感のある環境に疑念を抱いた。子供がいないことに気付いた涼は、村が何らかの偽装であると直感した。その後、村の神殿で黒ローブの老人たちに遭遇し、闇属性の魔法を用いた精神干渉を受けたが、二人は魔法に抵抗し、支配を免れた。
悪魔レオノールの出現と戦闘
突然現れた悪魔レオノールが、神殿の奥にある宝珠を奪い去り、老人たちを瞬く間に排除した。レオノールは涼に戦いを挑み、激しい戦闘が繰り広げられた。レオノールの圧倒的な力に苦しむ涼であったが、魔法〈ジャミング〉を駆使して反撃し、最後には相打ちに近い形で勝利を収めた。
負傷と左腕の再接合
戦闘後、涼は左腕を失う重傷を負ったが、自らの魔法とポーションを駆使して腕の再接合に挑んだ。アベルの協力を得て接合を成功させた涼は、旅を続けるための力を取り戻し、再び立ち上がった。
悪魔の去就と新たな課題
レオノールは宝珠と老人を連れ去り、再戦を誓って去った。涼とアベルはその場に残され、次なる目的地であるルンへ向けて再び歩みを進めた。旅はまだ続いていた。
旅路と魔法の探究
道中の平穏と涼の嘆き
ルンの街へ向かう途中、涼は「道中で何も起きなかった」と呟き、アベルを呆れさせた。涼は冒険物語に出てくるような「盗賊襲撃」や「貴族令嬢の救助」などの出来事を期待していたが、それが叶わなかったことを残念がっていた。アベルはその意見を一笑に付し、旅は無事であることが何よりだと考えていた。
レオノールとの戦闘を振り返る
アベルは、涼が悪魔レオノールとの戦闘で相手を氷漬けにしなかった理由を尋ねた。涼は、強力な魔法使いや特定の存在に対しては、氷漬けが通用しない場合があると説明した。また、これまでにエルフのセーラや宮廷魔法団のアーサーに試した結果も同様であった。さらに、氷漬けの魔法は長い修練の末に習得したものであり、一筋縄ではいかない技術であることを語った。
闘技と魔法の関係
涼は、闘技が魔法の一種ではないかという疑問をアベルに投げかけた。アベルは、闘技が魔法的な性質を持つ可能性が議論されていることを認めたが、結論には至っていないと述べた。また、涼は「トリガーワード」や「バレットレイン」のような魔法の名称が、現代の技術や概念と関連しているように感じる点を指摘し、その謎について考えを巡らせた。
魔法無効化の脅威
アベルは、魔法無効化という能力が極めて危険であることを改めて実感した。涼は、過去にアサシンホークとの戦闘でその能力を目の当たりにした経験を語り、その際に使用した氷の剣「村雨」について説明した。村雨は、涼の師匠から授かった特別な武器であり、その形状や性能は独特であった。
ルンの街への到着
旅を続けた二人は、ついにルンの街を望む地点に辿り着いた。涼は長い旅路を振り返り、懐かしさと安堵の思いを抱いていた。アベルに促され、二人はルンの街へと足を進めていった。
エピローグ
超常の管理者と三原涼の特異性
白い世界と管理者の観察
そこは白一色の世界であった。ミカエル(仮名)はいくつもの世界を管理しており、手元には石板が置かれていた。彼は「三原涼」という人物の動向を見守り、彼の特異性に感嘆していた。涼が異世界「ファイ」における超常的な存在たちと頻繁に関わり、その中で注目を集めていることを興味深く語っていた。
戦争の予兆と管理者の懸念
ミカエルは涼の行動を観察しながら、彼が新たな困難に直面する兆候を発見した。それは珍しい存在たちとの遭遇や、修羅の道を歩む者が必然的に経験する戦争であった。彼はその忙しすぎる状況に対し心配を募らせ、涼の無事を祈るように言葉を漏らしていた。
外伝 火属性の魔法使い Ⅳ
フィオナ
侯爵夫人と皇女の出会い、オスカーの冒険
マリアの帝都への帰還と護衛の不在
ミューゼル侯爵別荘での事件から一年後、クルコヴァ侯爵夫人マリアは領地での半年間の滞在を終え、帝都に戻ってきた。彼女は護衛として依頼しようとしていた冒険者オスカーが北部での任務に出ていることを知り、仕方なく騎士団長ノルベルトに護衛を任せることにした。マリアは、オスカーが成長する様子を楽しみながらも、彼の抱える孤独を案じていた。
皇女フィオナとの出会い
ある日、皇帝ルパート六世からの手紙がマリアに届き、皇女フィオナと引き合わせたいという要請があった。フィオナとの面会で、マリアは彼女の教養を称えながら、亡き母フレデリカの話を交え親しく会話を進めた。フィオナはマリアとの交流を通じて自信を深め、数日後、マリア主催のサロンに参加し、貴族社会に初めて足を踏み入れた。
フィオナ皇女の誕生日と伝説の剣
その後、フィオナの十歳の誕生会が宮廷で盛大に開催された。フィオナは帝室に伝わる伝説の宝剣レイヴンを父ルパートから贈られる。幼い頃から剣術に励んできた彼女にとって、それは念願の品であった。この贈り物により、宮廷ではフィオナの帝位継承を巡る憶測が広がるが、ルパートはその意図を否定し、剣がフィオナに最もふさわしいと判断しただけであると語った。
オスカーの北部での任務
一方、北部での依頼を終えたオスカーは、冒険者パーティー「乱射乱撃」と共に帝都へ向かっていた。道中、ワイバーンが馬車を襲う現場に遭遇した一行は、遠巻きに様子をうかがうことにした。しかし、オスカーが提案した策によって状況は一変した。彼の魔法攻撃がワイバーンの頭部を直撃し、一撃で討伐するという信じがたい成果を上げた。
オスカーの力に対する仲間たちの反応
突如として現実を超えたオスカーの力に、仲間たちは一瞬驚愕したが、次第にそれを受け入れ、彼を称賛した。その後、一行は助けを求める馬車の元へ向かい、依頼を完遂すべく行動を再開した。
フィオナ皇女とオスカーの運命的な出会い
再会と新たな護衛依頼
オスカーが帝都に戻ると、クルコヴァ侯爵夫人マリアからの護衛依頼が届いていた。契約期間は約半年であった。帝都の冒険者ギルドを訪れたオスカーはすぐに侯爵邸を訪問し、マリアと再会した。マリアは、オスカーがワイバーンを一撃で倒したという話を聞き、その成長ぶりを喜んでいた。そして彼をある人物に紹介する予定があると告げた。
帝城での顔合わせ
翌日、マリアに連れられたオスカーは帝城を訪れた。皇帝ルパート六世が直々に迎え、オスカーの実力を称賛した。ルパートは実力主義者であり、若きオスカーの才能を高く評価していた。マリアの説明により、オスカーはフィオナ皇女と引き合わせるために招かれたことを知った。ルパート自ら案内を買って出て、三人はフィオナのいる離れへ向かった。
レイヴンの暴走とフィオナの危機
フィオナの中庭に到着すると、彼女の剣・レイヴンから炎がほとばしり、異常な状態に陥っていた。オスカーはレイヴンがフィオナの精神を支配していると判断し、すぐに対応に動いた。激しい魔法攻撃を防ぎつつ間合いを詰めたオスカーは、拳一撃でフィオナを気絶させ、剣を手放させた。皇帝ルパートは娘を救ったオスカーに感謝の意を示し、彼の迅速な判断を称えた。
フィオナとレイヴンの相性
オスカーは、フィオナとレイヴンの相性が良すぎたために暴走が起きたと説明した。フィオナは剣の修行には熱心だったが、魔法の訓練が足りなかったことが原因と推測された。皇帝ルパートもこれを受け入れ、フィオナがレイヴンを完全に使いこなせるよう魔法の修行を進める必要性を認めた。
オスカーへの特別な依頼
ルパートは、フィオナに魔法を指導してほしいとオスカーに依頼した。冒険者であるオスカーに皇女の教育を任せるという異例の決断であったが、ルパートはオスカーの知識と経験を信頼していた。驚きながらもオスカーはその依頼を受け入れ、フィオナ皇女付きの冒険者として新たな役割を担うこととなった。
こうして、十六歳のオスカーと十歳のフィオナは、共に新たな道を歩み始めたのであった。
動き出す宿命
皇女と師匠、武闘大会への道
皇帝への相談と貴族の不満
執政ハンス・キルヒホフ伯爵は皇帝ルパート六世に、フィオナ皇女とオスカーに関する相談を持ちかけた。内容は、貴族たちの間で「皇女の傍らに下賤な者がいる」との不満が広がっているというものだった。しかしルパートは、オスカーが持つ教養や品位、そして戦闘能力の高さを挙げ、貴族たちの主張を一蹴した。さらに、オスカーに爵位を与えることを検討していると明かし、そのための功績を求めていた。
武闘大会への提案
ルパートは、五年に一度開催される武闘大会への参加をオスカーに提案した。優れた戦闘能力を見せれば、貴族たちの批判を鎮め、功績として爵位を与える口実になると考えた。ハンスは、武闘大会が近接戦に有利な場であるため、魔法使いのオスカーには不利ではないかと懸念を示した。しかしルパートは、オスカーがフィオナの模擬戦で見せた剣技を信じ、トップ八人に入ることを期待した。
フィオナ皇女の反論
提案を聞いたフィオナ皇女は、父ルパートに強く反対した。貴族たちの不平不満に対応するためにオスカーを利用することは不合理であり、オスカーの時間を奪う行為は許せないと主張した。さらに、大会で結果を残せなかった場合の影響についても指摘し、父と執政を論破した。フィオナの情熱的な弁論により、ルパートとハンスは一時的に黙らざるを得なかった。
オスカーの決意と参加承諾
フィオナの懸念を聞いたオスカーは、自身の意思を示し、武闘大会への参加を希望した。五十回記念大会という特別な機会で自らの力を試したいと述べ、フィオナの許可を求めた。フィオナは悩みながらもオスカーの意志を尊重し、参加を許可した。ルパートもオスカーの決意に満足し、改めて彼の参加を支持した。
大会への期待と現実
ルパートは、オスカーが大会で上位に入ることを期待していたが、ハンスは記念大会の特別な規模と難易度を指摘し、優勝どころか上位進出も厳しい可能性があると説明した。しかし、オスカーの実力に信頼を置くフィオナは、大会での結果に関わらず、彼を引き続き自身の教師として求めると断言した。
こうしてオスカーは、武闘大会への挑戦を決め、新たな舞台へと足を踏み出した。皇帝、執政、そして皇女の期待を背負いながらも、自らの力を試す旅が始まるのであった。
武闘大会への参加と試練
冒険者ギルドでの手続き
オスカーは武闘大会への参加手続きのため、二年ぶりに帝都の冒険者ギルドを訪れた。久しぶりの訪問で受付の者に驚かれつつも、手続きを進めようとしたが、ギルドカードを忘れていたことに気づき、一時中断となった。その場で再会した旧友エルマーとザシャの助けを借り、名簿を使って所属確認が行われ、無事に登録が完了した。
武闘大会予選の開幕
記念大会初日の予選では、十人が同時に戦うバトルロイヤル形式で行われた。オスカーは八人から一斉に狙われる形となったが、冷静に対応し、全員の戦闘能力を無力化した。同じ組だった若者エミールと共に勝利を収めたオスカーは、観客から大歓声を浴びた。会場の観覧席では、皇帝ルパートもオスカーの戦いぶりに感心していた。
隣の舞台でのエルフ剣士の活躍
隣の舞台では、美しいエルフの剣士セーラが圧倒的な剣技を見せつけていた。挑戦者たちは次々と倒され、セーラの凄まじさに最後の二人も挑むのを躊躇した。その舞台でセーラの対面にいた仮面の男が一瞬のうちに残りの挑戦者たちを無力化する場面もあり、その圧倒的な力に観客たちは息を呑んだ。
謎の剣と仮面の男
オスカーは隣の舞台を目にすることはなかったが、もしその仮面の男の剣を見ていれば驚いただろう。それは師匠ラサンが打ち、父スナが愛用した剣であった。武闘大会の場に現れたその剣の持ち主は、謎に包まれていたが、オスカーにとって宿命の再会となる可能性を秘めていた。
皇帝とエルフへの関心
皇帝ルパートは、エルフ剣士セーラの実力に感嘆すると共に、帝国におけるエルフの扱いについても触れた。エルフの存在が戦力として恐ろしいと理解しつつも、帝国内での不当な扱いは無いことを強調していた。その背後には、かつて自身の右腕を斬り落としたエルフへの複雑な感情が見え隠れしていた。
武闘大会はさらなる戦いを予感させながら、その幕を進めていった。
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