小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編5」感想・ネタバレ

小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編5」感想・ネタバレ

どんな本?

『水属性の魔法使い』は、久宝忠による異世界ファンタジー小説である。主人公・涼が水属性の魔法を駆使し、異世界での冒険を繰り広げる物語である。

主要キャラクター
:異世界に転生した青年で、水属性の魔法使い。マイペースな性格でありながら、卓越した魔法の才能を持つ。
アベル:涼の仲間であり、天才剣士。涼との出会いをきっかけに、共に冒険を続ける。
セーラ:涼の仲間で、エルフの女性。高い戦闘能力と知識を持ち、涼をサポートする。

物語の特徴

本作は、異世界転生や魔法、冒険といった要素を中心に展開される。主人公・涼のマイペースな性格と圧倒的な魔法の実力が、物語にユーモアと爽快感を与えている。また、仲間との絆や成長、各国の陰謀や戦争など、多彩なストーリーラインが魅力である。

出版情報
出版社TOブックス
書籍版発売日:2022年8月20日
ISBN:9784866996417
コミカライズ:墨天業による漫画版が『comicコロナ』にて2021年9月より連載中
アニメ化:2025年7月よりテレビアニメ放送予定

読んだ本のタイトル

水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編5
著者:久宝忠 氏
イラスト:めばる  氏

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編5」感想・ネタバレBookliveで購入gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編5」感想・ネタバレBOOK☆WALKERで購入gifbanner?sid=3589474&pid=890540720 小説「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編5」感想・ネタバレ

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あらすじ・内容

王都から帰った涼は、十号室のメンバーたちと大好きなコーヒーの名産地・コナで、冒険者依頼をこなしていた。
村のトラブルを解決しつつ、美味しい食事に舌鼓を打つも——思わぬ告白が。
相棒のアベルが、ナイトレイ王国の第二王子だというのだ。
冗談だろうと受け流した矢先、大国・ハンダルー諸国連合が、隣国・インベリー公国に宣戦布告!?
戦乱に巻き込まれた愛弟子たちが、誘拐されてしまい……。
「僕の平和を乱すなら、本気の氷槍アイシクルランス見せちゃいましょう!」
王子アベルと共に、いざ敵陣夜襲へ!
最強水魔法使いの気ままな冒険譚・第5弾!

水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編5

感想

【第一部 中央諸国編5】の主な出来事は以下の通り。

アベルと涼の模擬戦
アベルは新剣技「刺突孤峰」を披露し、涼の「氷の壁」を貫いたことで成長を証明した。涼は再挑戦を申し出るも、最終的にアベルが夕食を奢る形で一件落着した。
錬金術と魔法の探究
涼は「フローティングマジックサークル」を用いた氷の槍を開発し、その美しさでセーラから称賛を得たが、実戦的な強化には至らなかった。
冒険者ギルドでの再会
涼は冒険者仲間と再会し、コナ村でのコーヒー関連の依頼を聞きつけ、参加を決意した。仲間たちは涼の加入を歓迎した。
コナ村の依頼と競争
コナ村ではコーヒー豆を狙う虫害と村人失踪の二つの問題が依頼内容であり、涼たち「十号室」と「竜のアギト」が競争形式で調査を進めることとなった。
涼の旅立ちと到着
涼はコナ村への旅路で仲間と和やかに会話を交わし、村到着後、代官ゴローと対面した。ゴローの洗練された振る舞いに涼は好印象を抱いた。
代官所での依頼説明
依頼は虫害と失踪の調査であり、「十号室」が虫害を、「竜のアギト」が失踪者調査を担当する方針となった。
虫害の調査と魔人虫の発見
涼たちは農園で黒い虫を発見し、「魔人虫」と特定した。魔人虫は封印された魔人の復活に関与する眷属であると判明した。
伝承官ラーシャータの招集
ゴローは中央神殿の伝承官ラーシャータを招き、魔人虫を確認させた。ラーシャータは魔人虫の存在を断定し、南の魔人復活の可能性を示唆した。
カイラディーの冒険者との対立
「竜のアギト」の態度は傲慢で、涼たち「十号室」との関係が険悪化した。涼は冷静に対処し、事態を収束させた。
ルンの援軍と勇者ローマンの到着
ルンの冒険者ギルドからの援軍と勇者ローマンの到着により、涼たちは新たな共同戦線を期待した。一方でカイラディー冒険者たちは動揺した。
悲鳴と負傷者の発見
森での悲鳴を受け、カイラディー冒険者の重傷者と死亡者を発見した。襲撃者は「赤い眼を持つ者」であり、ヴァンパイアの存在が浮上した。
ヴァンパイアとストラゴイの特性
襲撃者はヴァンパイアの眷属「ストラゴイ」であると特定され、ストラゴイの特性やヴァンパイアの強力さが議論された。
漁村への調査計画
代官ゴローの地図に基づき、漁村への調査計画が立てられた。ラーシャータが同行し、領主代理との交渉を担うこととなった。
戦力の役割分担と涼の決意
各人の役割が確認され、涼は仲間を守る決意を新たにし、これからの戦いに備えた。
荘園への到着と領主代理との面会
遠征隊はモモル男爵の荘園に到着し、領主代理ケーンカンと面会した。漁村が王家に返上されていることが明らかとなり、涼たちは漁村の孤立を懸念した。
漁村への道中と曇天の不安
曇天の影響でストラゴイの活動が懸念され、涼が村全体を凍らせる案を提案したが、ヒューに却下された。
漁村でのヴァンパイアとの遭遇
漁村に到着した一行は、ヴァンパイア・カリニコスと多数のストラゴイに迎えられ、戦闘を開始した。
後衛の戦術とストラゴイの制圧
涼は氷魔法でストラゴイの動きを封じ、前衛がストラゴイを討伐して全滅させた。
カリニコスとの戦闘と無力化
カリニコスが〈スレイブ〉を使いヒューを操ろうとしたが、最終的にヒューの聖剣で無力化された。
カリニコスの情報と滅亡
カリニコスは漁村支配の経緯と魔人の存在を語った後、グラハムによって滅ぼされた。
魔人の封印と洞窟の調査
洞窟の封印が地震で解かれていたことが判明し、魔人が石棺から覚醒して西へ飛び去った。
魔人との対峙と冷静な撤退
一行は魔人の圧倒的な力を前に冷静に撤退し、被害を免れた。
ギルドでの報奨と箝口令
ギルドで魔人やヴァンパイアの情報が秘匿され、ヒューは報奨金増額を伝えた。
隠された神殿の調査依頼
『十号室』はルンのギルドからの依頼で「火の隠された神殿」を調査し、報酬を得た。
ワイバーンの襲撃と討伐
アゾーン村でワイバーンの襲撃を受け、アモンが突撃してワイバーンを討伐した。
ホープ侯爵邸と帝国の襲撃
ホープ侯爵邸が帝国第二十軍に襲撃されるが、『白の旅団』が奮戦し、影軍を撃退した。
ケネスの焦燥と研究停滞
ケネスはヴェイドラの開発停滞に焦燥感を抱きながら、隣国の脅威に備えるため研究の再開を目指していた。
師フランクとの記憶
ケネスはかつての師フランクを思い出し、その喪失感とともに尊敬の念を抱いていた。
インベリー公国への潜入任務
諜報員コーンは「コロンパン」の偽装でイースト都市に潜入し、ナイトレイ王国の錬金術師フランク・デ・ヴェルデが開発したゴーレム兵団の存在を確認した。
公国の焦土戦略の決定
インベリー公国は連合軍の新兵器に対抗するため、焦土戦略を採用し、国土全体を犠牲にした防衛計画を進めた。
涼の救出活動と義勇軍参加の模索
涼は弟子たちを守るため救出行動を開始し、ギルドの規定に悩みつつも義勇軍参加の可能性を探った。
子どもたちの救出作戦
涼は連合軍に連行された子どもたちを救うため、仲間と連携してジマリーノの牢獄に潜入し、弟子たちを無事救出した。
炎帝フラムとの因縁の戦闘
アベルは炎帝フラムと激戦を繰り広げたが、涼の介入で戦闘を一時中断し、撤退を決断した。
公都アバディーンの陥落
連合軍が公都アバディーンを包囲し、人工ゴーレムを用いて城門を突破、公都を完全に制圧した。
守備隊長ナイジェルの降伏と民衆の保護
守備隊長ナイジェルは民衆の命を守るために降伏し、連合軍オーブリー卿が略奪行為を禁じ、住民の安全を保証した。
王国冒険者の国境突破と遠征開始
王国冒険者ギルドが公国解放を目的に進軍を開始し、グランドマスターの命令で作戦が本格化した。
オーブリー卿の戦略とゴーレムの活用
オーブリー卿は公国の反撃を封じるためにゴーレム兵団を整備しつつ、冒険者の動向を注視して作戦を練った。
難民問題と王国の対応
公国からの難民がレッドポストに押し寄せ、王国政府が対応策を講じて街の平穏を取り戻した。
人工ゴーレムとヴェイドラ技術の分析
オーブリー卿はフランクとともに、人工ゴーレムや模倣兵器「ヴェイドラ」の技術を分析し、連合軍の戦力向上を図った。
フィオン防衛戦の開始と公国軍の苦境
焦土戦略の失敗により公都陥落が早まり、連合軍が北部を支配した。補給線攻撃も失敗し、状況は悪化していた。
連合軍の静止と移民計画の疑念
公都占領後、連合軍は進軍を停止し、支配地域に自国民を移民させる植民政策を進めている可能性が示唆された。
王国遠征隊の進軍と士気の高揚
王国冒険者約三百人がフィンレー・フォーサイスの指揮の下進軍し、大戦の英雄ヒュー・マクグラスの参加が士気を高めた。
フィオン攻防戦の戦術と連合軍の反撃
公国騎士団が突撃に成功するも、連合軍の計画的な反撃で撤退を余儀なくされた。連合軍は混乱を狙い効果的に追撃を行った。
南部軍と連合軍第三独立部隊の衝突
南部軍が森を抜け進軍中、連合軍第三独立部隊に遭遇。涼が千人の部隊を引き受け、アベルが炎帝フラムとの一騎打ちを制した。
涼の魔法による戦局打開
涼は魔法と戦術で敵部隊を圧倒し、禁呪の危機も防いだ。敵の恐怖を引き出すことで戦争抑止の効果を狙った。
本陣強襲とオーブリー卿の対策
南部軍が本陣奇襲を試みたが、連合軍の人工ゴーレム部隊に阻まれた。撤退の中で連合軍の強力な兵器性能が明らかになった。
ロリス公の脱出とフィオン陥落
フィオンの戦火からロリス公とその家族が脱出したが、連合軍斥候隊に包囲されるも、南部軍の援軍で救出に成功した。
帝国への亡命と政治的介入
ロリス公は帝国の支援を受け亡命を決断し、帝国の飛行戦艦で安全を確保。これにより、連合はインベリー公国併合を宣言した。
王国冒険者たちの葛藤
帝国の戦略により王国の計画が阻まれたが、連合との対立回避を受け入れる一方で、翻弄された悔しさが残った。
涼と悪魔レオノールの邂逅
涼はレオノールの依頼を受けエルフの救助に協力し、命を救ったことで感謝を受けたが、さらなる疑問と後悔が残った。
書斎の主と報告者の到来
書斎の主はインベリー公国の亡命と連合での動きを静かに分析し、勇者や冒険者たちの影響を評価していた。
涼の新たな知識と武器の話題
鍛冶工房で涼は妖精王の剣「村雨」の価値を再確認し、魔法や武器技術の進化について新たな興味を抱いた。
未来を見つめる管理者の観察
管理者ミカエル(仮名)は涼が次に向かう西方での試練を予感し、その困難を乗り越えられることを静かに願った。

総括

物語は非常にテンポが良く、緊張感あふれる展開が続く。ヴァンパイア・カリニコスとの戦闘は圧巻である。特に涼が氷魔法を駆使して仲間を守るシーンでは、彼の魔法使いとしての実力が存分に発揮されている。勇者や冒険者、ヴァンパイアハンターの司祭との連携も見事であり、チームとしての成長が感じられる展開であった。

また、弟子たちを救うため戦場に突入する涼の決断と行動力が描かれるシーンには、彼の人間味と強さが表れている。特に錬金術のゴーレム兵器との戦いでは、魔法と科学の融合による新たな戦争の形が示唆され、興味深い。ゴーレムを倒せなかったことから涼が感じる無力感も、キャラクターの深みを与えている。

さらに、帝国が戦わずしてインベリー公国の一家を手に入れるという展開は、策略と外交の妙を描いている。戦争の影で蠢く帝国の思惑と、それを取り巻く勢力の動きは、読者に今後の展開への期待感を抱かせる。

怒りの涼が全てを一掃するような劇的なシーンは少なかったが、その分、物語全体にリアルな緊張感が漂う。また、ヴァンパイアの存在や錬金術の新しい可能性についての伏線が張られており、次巻への期待が高まる内容であった。

涼とセーラの微妙な関係性も魅力的である。お互いに深く踏み込まない距離感が絶妙であり、物語の中で癒やしとなる要素である。

この巻は、戦争と陰謀、友情と決断が絡み合った一冊であり、読者を引き込む力が非常に強い。文量は多いものの、テンポが良く飽きることがない。手に取る価値のある作品である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

プロローグ

『黄金の波亭』での模擬戦

アベルと涼は『黄金の波亭』の中庭で向き合い、アベルが新剣技「刺突孤峰」を披露した。この剣技は涼の「氷の壁」を貫き、アベルの成長を証明した。涼は悔しさをにじませながらも再挑戦を申し出、分厚い氷の壁でアベルを追い詰めた。最終的にアベルが涼に夕食を奢ることで一件落着となった。

錬金術と魔法の探究

涼はルンでの日々を錬金術と魔法の研究に費やしていた。新たに開発した「フローティングマジックサークル」で氷の槍を放つ技術を披露し、セーラの称賛を受けた。この技術は美しさを重視したもので、実戦的な強化には至らなかったが、涼は満足していた。

冒険者ギルドでの再会

久しぶりに冒険者ギルドを訪れた涼は、仲間のアモン、ニルス、エトと食堂で再会した。そこでコナ村での依頼について聞き、現地でのコーヒーの魅力に惹かれ、自らも参加することを決意した。仲間たちは涼の参加を歓迎し、依頼成功への期待を高めた。

コナ村の依頼と競争

コナ村では、コーヒー豆を狙う虫害や怪異の解決が依頼内容であった。村は二つのギルドに依頼を出し、特例として双方の競争が許可された。この状況を聞いた涼は、村の政治力に感嘆しつつ、負けられない戦いへの意気込みを示した。

涼の新たな旅立ち

涼はコーヒーへの期待と仲間たちの期待を背に、コナ村への旅に加わった。ギルド対抗の様相を帯びたこの依頼は、涼にとって新たな挑戦の幕開けとなった。仲間たちは涼の参加に安堵し、彼を頼れる仲間として改めて認識した。

コナ村へ

道中の会話と涼の思考

ルンの街を出発した涼たちは、明け方からコナ村を目指して旅を続けていた。道中では、涼が「コナを我が手に」という即興の歌を歌い、ニルスがそれに突っ込むなど、和やかな雰囲気が広がっていた。アモンとエトは「怪異」の詳細について話し合い、ニルスは脳筋らしい力強い発言で場を盛り上げた。涼はリーダーに必要な資質を考え、ニルスの役割を評価しつつも、内心で少し悪戯心を抱いていた。

コナ村への到着と代官との対面

午後二時、涼たちはコナ村に到着した。村は人口五千人を超え、ほぼ街といえる規模であった。そこで出迎えたのは、村の代官ゴロー・ガンダであった。ゴローは落ち着いた態度で冒険者たちを案内し、依頼内容の説明を準備した。ゴローの洗練された振る舞いに、涼は代官への好印象を抱いた。

依頼内容の説明と対立の発生

代官所での説明では、村の問題が二つ示された。一つはコーヒー農園に発生した謎の虫の被害、もう一つは村人の失踪であった。村は二つのギルドに依頼を出しており、涼たち「十号室」と、カイラディーの冒険者「竜のアギト」がそれぞれ調査を担当することとなった。しかし、竜のアギトのリーダー剣士は協力を拒み、双方が別々に行動する方針となった。

農園での調査と虫の正体の発見

涼たちは農園に向かい、虫の調査を開始した。農民たちの協力を得て黒い虫を見つけたエトは、涼の生成した氷レンズを用いて詳しく観察した。その結果、虫が「魔人虫」という特殊な存在である可能性が高いと判断された。魔人虫は封印された魔人が復活する際に力を集める眷属であることが明かされた。

伝承官への依頼と迅速な対応

ゴローは魔人虫の詳細を調べるため、カイラディーに滞在している中央神殿の伝承官を招くことを決定した。鳥便を用いて急ぎ手紙を送るなど、的確な判断で対応を進めた。ゴローの行動により、虫の問題解決への期待が高まり、エトもその成果に安堵していた。

竜のアギトとの分担と神官の重要性

結果的に、涼たちが虫の調査を担当し、竜のアギトが失踪者調査を担当する分担が功を奏した。エトは神官の存在が調査成功の要因と指摘し、竜のアギトに神官がいないことが今回の分担の利点を強調した。ゴローもこの結果に満足し、涼たちへの感謝の意を伝えた。

農園でのさらなる調査

その後、涼たちは農園での調査を続けることを決めた。涼はコーヒー農園の広大さと農民たちの作業に感銘を受け、改めてこの依頼の重要性を実感していた。農園でのさらなる調査が、次の行動の鍵となる予感が漂っていた。

宿泊所での夕食と衝突

涼たちは夕食を楽しんだ後、同じ宿泊所に現れたカイラディーのパーティー「竜のアギト」と遭遇した。竜のアギトの剣士が舌打ちをし、険悪な雰囲気が漂ったが、涼たちは冷静に対処した。剣士が涼に絡むも、涼は巧妙に魔法〈アイスバーン〉を使い、剣士を転倒させて事態を収束させた。

伝承官ラーシャータとの出会いと魔人虫の確認

翌朝、涼たちは代官所で伝承官ラーシャータと対面し、捕獲した虫を確認した。ラーシャータは虫を調査し、「魔人虫」であると断定した。魔人虫は「南に封じられた魔人」と関係しており、その復活の前兆である可能性が示唆された。この事態を受け、ゴローは王都に報告書を送り、状況の進展を待つこととなった。

カイラディーの冒険者たちとの対立

カイラディーから追加戦力として派遣された「五連星」が到着したが、彼らは傲慢な態度を示し、涼たち「十号室」との間で緊張が高まった。涼は冷静に魔法を用い、槍士を転倒させるなどして対応したが、依然として両パーティーの関係は険悪であった。

ルンからの追加戦力と勇者の登場

ルンの冒険者ギルドからギルドマスター・ヒューと、勇者ローマン率いるパーティーが追加戦力として到着した。その圧倒的な存在感により、カイラディーの冒険者たちは動揺を隠せなかった。一方で、勇者ローマンは涼と旧知の仲であり、再会を果たした。涼たち「十号室」は、勇者たちとの共同戦線を期待する形で物語が進展した。

ルンの援軍到着と作戦会議

ヒュー・マクグラス率いるルンの冒険者と勇者パーティーが到着し、ゴロー代官は大いに安堵していた。作戦会議では、村人の失踪と魔人の眠る森について議論が進められたが、失踪事件の調査はカイラディーの冒険者たちが進展を見せていないことが明かされた。翌日の会議を予定したものの、カイラディーの冒険者は朝早く森へ向かい、会議を欠席した。

悲鳴と負傷者の発見

涼たちが村で作業をしている最中、森の方から女性の悲鳴が響き渡った。駆けつけると、血まみれのカイラディー冒険者たちが発見され、重傷者や死亡者が含まれていた。聖職者グラハムの迅速な治療と、涼のポーションで救われた命もあったが、彼らは罠にかかり、襲撃を受けたことが判明した。

罠と襲撃の詳細

剣士ドゴンの証言から、落とし穴にかかり、その後「赤い眼を持つ人間らしき者」に襲われたと報告された。襲撃者の特徴としては赤い眼、伸びた爪、並外れた身体能力が挙げられ、それらがヴァンパイアと判断された。グラハムはヴァンパイアに特別な興味を示し、ジョーの証言からもその存在がほぼ確定された。

ヴァンパイアの存在に関する考察

代官ゴローと伝承官ラーシャータは、魔人とヴァンパイアの関係について議論を交わしたが、伝承には繋がりを示すものは見当たらなかった。一方で、勇者パーティーや涼たち「十号室」もヴァンパイアの脅威を再確認し、グラハムの様子から西方諸国でのヴァンパイアに対する教会の歴史的敵意を推測した。

ジョーの証言とヴァンパイアの詳細

ジョーは襲撃者について、「貴族的なヴァンパイア」とは異なり、農民のような服装で裸足の者たちだったと証言した。この情報により、ヴァンパイアの起源や行動についてさらなる疑念が深まった。ヒューとグラハムは新たな情報を手に、今後の対応を模索することとなった。

ヴァンパイアと眷属の考察

エトが呟いた「服と靴」という言葉から、涼はヴァンパイアの貴族的なイメージに基づき、ジョーたちを襲ったのは「ストラゴイ」と呼ばれる眷属であると推測した。グラハムはその考えに同意し、ストラゴイはヴァンパイアに噛まれた人間が変異した存在であり、元に戻る方法はないと説明した。

ストラゴイとヴァンパイアの特性

ストラゴイは陽光を苦手とするが完全に行動不能になるわけではなく、魔法を使えない代わりに、首を刎ねられなければ倒せないという特性を持つと語られた。一方でヴァンパイアは個体ごとに異なる属性の魔法を使え、すべての属性に対する高い抵抗力を備える。グラハムは西方教会の教えを交えながら、ヴァンパイアの階級とその強さについても詳述した。

ヴァンパイアの存在の可能性

エトの「本物のヴァンパイアは確認されていない」という指摘に対し、グラハムはストラゴイが存在する以上、その主であるヴァンパイアがいる可能性は否定できないと述べた。ヴァンパイアの生息場所が東の森か、それを超えた漁村にあるのではという推測がなされた。

漁村への調査計画

代官ゴローの地図に基づき、漁村へ向かうには東の森を北から回るルートが最適と判断された。ラーシャータが同行を申し出たことで、貴族としての立場を活かして領主代理との交渉を担うことになった。ヒューは村の防衛のため、回復中のカイラディー冒険者たちを村に残す決定を下した。

戦力の見通しと役割分担

涼がローマンとヒューを主力として予測したことで、ニルスは一時的に落ち込んだが、後衛防衛の重要性を再確認して立ち直った。涼は三人の仲間を守る役割を自覚し、これからの戦いに備える決意を固めていた。

ヴァンパイア・カリニコス

荘園への到着と領主代理との面会

ヒュー率いる遠征隊はコナ村を出発し、午後三時にモモル男爵の荘園に到着した。荘園領主代理ケーンカンは普通の事務官風の人物であり、涼の期待したような異変はなかった。涼のわずかな失望を感じ取った十号室の仲間たちは、彼がまた何か考えていたのだと察していた。

漁村の管理状況と背景

ラーシャータの問いにより、漁村がすでに男爵領ではなくなり、王家に返上されていたことが明らかになった。その理由はモモル男爵が王都の土地を拝領したためであり、領主代理の管理から外れていた。ケーンカンは、漁村が外部から孤立している可能性が高いと述べた。

漁村への道中と曇天の不安

翌朝、遠征隊は漁村に向かって出発した。曇り空のためストラゴイの能力が十分に発揮される可能性をグラハムが指摘し、ヒューはストラゴイへの対策を涼に尋ねた。涼は村全体を凍らせる案を提案したが、ヒューに即座に却下された。

漁村での遭遇とヴァンパイアの登場

漁村に到着した一行は、仕立ての良い服を着たヴァンパイア・カリニコスと多数のストラゴイに迎えられた。カリニコスは伯爵を名乗り、自らの力を誇示しながら戦いを挑んだ。ヒューとローマンは前線で戦いを開始し、後衛はストラゴイの波を迎え撃った。

後衛の戦術とストラゴイの制圧

涼は〈スコール〉でストラゴイを濡らし、その水分を利用して〈氷結〉を発動、ストラゴイの動きを封じた。後衛の支援を受け、前衛は次々とストラゴイの首を刎ね、全滅させた。

カリニコスとの対決と〈スレイブ〉の脅威

カリニコスは〈スレイブ〉を使用してヒューを操ろうとしたが、涼はこれに耐性を持ち、ヒューと戦闘を繰り広げた。ヒューの剣技と涼の防御がカリニコスを追い詰め、最終的にヒューが聖剣ガラハットでカリニコスを無力化した。

カリニコスの情報と消滅

カリニコスは漁村を支配下に置いた経緯と、近隣の洞窟に眠る魔人について語った。その後、グラハムが西方教会の手法でカリニコスを完全に滅ぼし、ゴードンが遺体を焼却した。こうして、漁村におけるヴァンパイアの脅威は終息した。

勇者パーティーの目的と次なる挑戦

ヴァンパイア討伐後、涼が魔人への対応が本来の目的であることを指摘したことで、改めて遠征隊の目標が確認された。ヒューの指示により、遺体処理と休息を終えた一行は魔人が封印されていたとされる洞窟へと向かった。

洞窟の調査と封印の解明

洞窟の封印が地震による岩の移動で解かれたと、ドワーフのベルロックが分析した。950年もの間維持されていた封印には強力な魔力が関与しており、ヒューはその源を疑問視したが、涼は錬金術による外法的な手法が用いられた可能性を考えていた。

石棺からの異変と魔人の覚醒

洞窟内で一行は石棺を発見したが、石棺が突然光を放ち始め、広間が崩落。全員が外に退避する中、崩落地点から強い光とともに魔人が出現した。氷の壁で岩を防ぎつつ、涼は魔人の姿を目撃した。魔人は腰までの紫髪を持つ美女で、無属性魔法による浮遊を行っていた。

魔人との対峙と撤退

魔人は目を開き、一行を見渡した後に西へ飛び去った。グラハムが攻撃を試みようとしたが、涼が反撃の危険性を訴えこれを止めた。一行は魔人の圧倒的な力を前にしながらも、冷静な判断で被害を免れた。

帰還と勇者パーティーとの別れ

村に戻った後、遠征隊は勇者パーティーを見送り、互いに労をねぎらった。勇者パーティーは西方教会に戻る意向を示し、再会を誓った。

ギルドでの報奨と箝口令

冒険者ギルドでは、魔人とヴァンパイアに関する事実が王室と神殿からの箝口令で秘匿された。ヒューは報奨金の増額を伝え、十号室の面々に慎重な行動を求めた。

未知の動きと新たな疑問

カリニコスの消滅が確認された報告が、謎めいた書斎の主に届く。彼は中央諸国での伯爵級ヴァンパイアの消滅に関心を示し、経緯の調査を命じた。一方で、涼とアベルの会話では、アベルが王族であるという驚きの事実が告げられたが、涼には信じられなかった。信頼と真実が交錯する中、彼らの絆は微妙なものとなった。

間章  隠された神殿

アクレへの到着と依頼内容の確認

南部最大の街アクレに到着した『十号室』のニルス、エト、アモンの三人は、ルン冒険者ギルドからの指名依頼を受け、まずアクレ冒険者ギルドへ向かった。そこでギルドマスターのランデンビアから、発見された「隠された神殿」の調査依頼の詳細を聞いた。神殿は、以前エトたちが見たものと似たものであり、一行は詳細確認のためアゾーン村へ向かうこととなった。

アゾーン村での顔合わせと神殿の発見

アゾーン村では、『六華』と名乗るC級パーティーと合流した。リーダーのバンダッシュやメンバーと自己紹介を済ませた後、彼らの案内で神殿へ向かった。現地で「火の隠された神殿」であることを確認し、報酬を得るための報告内容を整えた。その帰途、一行は再びアゾーン村へ戻った。

アゾーン村の惨状とワイバーンの襲来

村に戻ると、ワイバーンによる甚大な被害を目の当たりにした。村の建物は破壊され、死者も多く出ていた。一行が代官所へ向かうと、そこも瓦礫と化しており、生存者は見当たらなかった。その時、再びワイバーンが現れ、一行に襲い掛かる。盾使いゴーリキーが〈エアスラッシュ〉を防ぎ続けたが、持久戦を強いられた。

アモンの挑戦と作戦の実行

戦況打開のため、アモンがゴーリキーに投げられ、ワイバーンに接近して攻撃を仕掛ける作戦が立案された。三姉妹の魔法使いの支援を受けつつ、アモンは空中からの突撃を試みた。ワイバーンの魔法をかわし、鼻を狙って剣を突き刺すことで討伐に成功した。

討伐後の落下と安全確保

墜落するワイバーンの背から離れたアモンは、地上のメンバーが広げた布に着地し、無事に生還した。一行はアモンの成功を称えつつ、村の復興と報告の準備を進めることとなった。

西部の暗闘

ナイトレイ王国の地域構造とホープ侯爵領

ナイトレイ王国は五つの地域に分かれ、中央部に王都クリスタルパレスが位置している。北部と東部は帝国や諸国連合と接し、軍事的に強力な貴族が多い。一方、南部や西部は比較的軍事力が弱く、ホープ侯爵領はその中で農業と商業が盛んな豊かな地域として知られている。当主マーカス・ハグリットは成熟した指導者であり、ホープ侯爵領の発展に尽力していた。

ホープ侯爵とおババ様の会談

ロゼンジの侯爵邸では、ホープ侯爵マーカスとエルフの大長老「おババ様」が会談していた。王都での騒乱に関する話題や、騎士団の鍛錬についての冗談を交えつつ、西部における帝国の破壊工作の報告がなされた。特に、影軍と呼ばれる帝国第二十軍の活動が問題視されており、その指揮官ランシャス将軍の存在が明らかとなった。

『白の旅団』の到着と第五食糧庫への指示

ルン所属の冒険者パーティー『白の旅団』の六人がロゼンジ外縁に到着し、侯爵邸からの指示を受けて第五食糧庫の防衛に向かった。守備兵と共に襲撃者を迎え撃つ計画が立てられたが、敵の狙いが第五食糧庫に特化している理由については疑問が残っていた。

帝国第二十軍の襲撃開始

帝国第二十軍の襲撃隊が第五食糧庫に攻撃を仕掛けた。複数の地点で炎を上げ、守備兵を混乱させつつ、暗闇に紛れて正確に攻撃を仕掛ける影軍の戦術が展開された。守備兵の数が多いにもかかわらず、指揮系統の乱れにより効果的な防衛は難航した。

ガミンガムの捕縛と陽動作戦の発覚

指揮官ガミンガムは、『白の旅団』の双剣士ブレアらによって捕縛された。彼の動きを封じたのは副団長シェナの針であり、陽動作戦である可能性が浮上した。ホープ侯爵邸が真の標的であることが判明したが、その情報が漏れることを阻止するべく、影軍は撤退を決断した。

ホープ侯爵邸への襲撃とおババ様の奮戦

その頃、ホープ侯爵邸も影軍の襲撃を受けていた。おババ様が剣と風魔法で奮戦し、ランシャス将軍の部隊を迎え撃つが、敵の多勢に押され、ホープ侯爵も危機に陥った。襲撃者との激戦の末、侯爵は深手を負い、一時的に守備が崩壊する事態となった。

『白の旅団』の援軍と影軍の撤退

窮地に現れたのは、『白の旅団』のフェルプスとシェナであった。二人は迅速に影軍の一部を撃破し、形勢を逆転させた。しかし、ランシャス将軍は隙を突いて撤退を命じ、煙幕を用いて脱出に成功した。影軍の撃退は果たされたが、将軍の捕縛には至らなかった。

ケネスの嘆きとヴェイドラの開発停滞

内務省から戻った主任研究員で男爵のケネス・ヘイワードは、深いため息をつきながら部下のラデンに迎えられた。紅茶を口にしつつ、ヴェイドラの開発が今月も凍結されたままであることを伝えた。これにラデンもため息をつき、工房内には沈んだ空気が漂っていた。王都の機能回復が遅れていることを理解しつつも、ケネスは国の存亡にかかわるヴェイドラの進展が急務だと感じていた。

錬金工房とケネスの思い

王立錬金工房では様々な錬金道具の研究開発が進められており、ケネスはその中心的な存在であった。しかし、ヴェイドラの停滞により、彼は無力感を覚えていた。隣国の脅威に備えるためにも、工房の研究を進めなければならないという焦燥感が彼を苛んでいた。

空席が物語る師との記憶

ふと、ケネスは隣の空席に目を向けた。その席にはかつてフランク・デ・ヴェルデが座っていた。フランクは魔法大学から出向してきた天才錬金術師であり、ケネスにとって師と呼ぶべき存在であった。フランクの優しさと卓越した知識、そしてケネスとの親しい交流が彼の記憶を彩っていたが、フランクが工房を去ってから二年が経過していた。ケネスの中には、師への尊敬と喪失感が深く刻まれていた。

インベリー公国再び

インベリー公国とコーンの潜入任務

潜入任務の背景と課題

インベリー公国はハンダルー諸国連合の南に位置し、大戦を経て独立した国家である。その公国の諜報員であるコーンは、諸国連合が開発する新兵器の詳細を調査する任務を負った。閉鎖都市イーストに潜入した彼は、連合の錬金術水準の低さから疑問を抱きつつ、工房での情報収集を進めていた。

閉鎖都市イーストへの潜入

コーンは「コロンパン」という偽装パン屋の名を使い、閉鎖都市イースト内の第五エリアに潜入した。そこは厳重な警戒下にあり、特別な許可を得た者のみが出入りできる場所であった。彼はパン配達人を装い衛兵の付き添いを受けながら工房内部に進入し、奥に設けられた部屋への進入を試みた。

天才錬金術師との邂逅

第五エリアでコーンが出会ったのは、ナイトレイ王国の天才錬金術師フランク・デ・ヴェルデであった。彼は連合で新兵器の開発を主導しており、その存在がコーンに衝撃を与えた。部屋の奥に見えたのは、四足歩行の金属製ゴーレム。これは、連合が戦局を変えるために開発した人工兵器であると判断された。

インベリー公国への報告

潜入を終えたコーンは、公国の諜報拠点に戻り、ゴーレムの存在と最低20体以上確認したことを報告した。これに対し、公国の情報部は新兵器の脅威を認識し、迅速な対策を迫られた。

公国の危機と焦土戦略

新兵器に対する公国の反応

コーンの報告を受けたインベリー公国の公ロリス・バッジョは、ゴーレム兵団の驚異的な戦力を前に、国土全体を使った焦土戦略を採用せざるを得ないと決断した。戦力差の圧倒的な開きから、直接の防衛は不可能であると判断された。

ゲッコー商会への期待

ロリスは、大商人ゲッコーに戦後復興の物資調達を依頼し、必要であれば公都から退避するよう指示した。ゲッコーは王国との太い商業関係を活かし、復興に尽力することを約束した。

涼の決意

一方、ナイトレイ王国の冒険者涼は、連合の宣戦布告を知り、インベリー公国にいる弟子たちを守るための行動を決意した。ギルドで傭兵依頼に参加しようとしたが、自身のランクが規定を満たさず苦悩する。セーラの助言を受け、涼は義勇軍参加の可能性を模索することとなった。

結論と動き出した運命

焦土戦略を選択した公国と、それに巻き込まれる人々の運命が動き始めた。各勢力の選択と行動が、今後の戦局を大きく左右することは間違いない状況であった。

冒険者ギルドの葛藤と緊急の依頼

ギルドマスターとの対話とランクの壁
涼は冒険者ギルドマスター、ヒュー・マクグラスに直談判し、自身のランクをC級に上げるよう依頼した。だが、ギルド規定により、涼のランクでは傭兵依頼を受けることができないと告げられた。解決依頼数や成功率など厳密な条件があり、ヒューですら規定を曲げられなかった。涼は力尽くで国境を突破する可能性を示唆したが、ヒューに制止され、意気消沈して受付へ戻った。

倒れた男と急を要する依頼
ギルドの受付で騒ぎが起きていた。倒れていたのは元暗殺者であり現在はゲッコー商会護衛隊のシャーフィーであった。彼は傷だらけの体で涼を探し出し、商会の子どもたちを助けるよう懇願した。涼は事態の緊急性を理解し、即座に行動を開始した。

救出への準備と馬車の確保

最高の馬車と御者の確保
涼は迅速に行動し、ルンで最も速く頑丈な六頭立て馬車を買い上げた。さらに最高の御者として冒険者ウォーレンを招き、彼の同僚冒険者たちの協力も得た。彼らの助力により、馬車は最大の効率で走る体制が整えられた。

シャーフィーの報告
馬車内で、シャーフィーは商会の子どもたちが連合軍の襲撃を受けた経緯を語った。子どもたちは涼の教えた〈アイスウォール〉で連合兵の攻撃を防ぎながら逃げ延びたが、強力な土属性魔法使いと剣士の登場により、氷の壁は破られ、子どもたちは連行されたと判明した。

国境突破と連合への潜入

連合の防衛線と突破策
ジマリーノへの潜入に向けて、涼たちは国境の厳重な警備を確認した。シャーフィーの道具を用いた火災を利用して注意を引きつける戦術により、涼たちは混乱の隙を突いてジマリーノの城壁を突破した。

潜入先での手がかり
街の中心に到達した涼たちは、以前訪れた酒場に足を運び、店主から情報を得るために交渉を開始した。静まり返るジマリーノの街で、救出の糸口をつかむべく動き始めた。

炎帝との戦場での再会と捕虜救出

酒場での情報収集と再会
涼、アベル、シャーフィーの三人はジマリーノの酒場に入り、連合軍第三独立部隊の駐屯情報を入手した。部隊の本拠地は第二守備隊兵舎で、牢獄を備えた施設であることが判明した。涼たちは作戦の第一目標を牢獄に定めた。そこに現れたのは『暁の国境団』のフローラとその護衛たちであった。彼女たちは魔法使いの護衛ナラが攫われたことを伝え、涼たちの作戦に協力を申し出た。

合同作戦の策定
涼は『暁の国境団』に陽動作戦を依頼し、涼とシャーフィーは牢獄内に突入する計画を立てた。一方、アベルは兵舎の正面で独立部隊の注意を引き、涼たちの作戦を支援する役割を担った。連合の炎帝フラムとの因縁に決着を付けるため、アベルは覚悟を決めて突入した。

捕虜救出作戦と炎帝との激突

炎帝フラムとの対決
アベルは第二守備隊兵舎を正面から襲撃し、炎帝フラムと対峙した。二人の戦闘は激烈を極め、部隊兵士たちは手出しできず見守るしかなかった。涼とシャーフィーはその隙を突き、牢獄内の捕虜解放に向かった。

弟子たちとの再会
涼は牢獄内で三人の弟子を無事発見し、解放した。弟子たちは無事であったが、最年長のエヴァンスと最年少のルーチェはすでに連れ去られており、涼はその報告に動揺した。それでも弟子たちを安心させるため、涼は二人を必ず救出すると約束した。

敵魔法使いとの対決と撤退

ファウストとの激戦
涼とシャーフィーは連れ去られたエヴァンスとルーチェを発見したが、土属性魔法使いファウストと対峙することになった。涼は〈アイスウォール〉や〈アイシクルランス〉を駆使して応戦し、ファウストの攻撃を防ぎつつも激しい魔法戦を繰り広げた。

謎の銀髪男の登場
戦闘中、突然銀髪の男が現れ、ファウストに撤退命令を下した。ファウストは命令に従い、戦場を離脱したが、その際、謎の魔石を落としていった。涼は銀髪男とも短い戦闘を交えたが、敵の高性能な煙玉による攪乱で追撃を断念した。

救出の成功と後悔
涼はエヴァンスとルーチェを無事救出したものの、彼らが連行されている間に受けた苦痛を想像し、自らの力不足を痛感した。弟子たちと再会した涼は、子どもたちを守るという強い意志を再確認し、撤収を指示した。涼はアベルを回収した後、再び仲間たちと合流するため動き出した。

アベルと炎帝フラムの戦闘

激しい剣戟の応酬
アベルと炎帝フラム・ディープロードの剣戟は、最初の一撃から激しく展開した。互いに三度目の戦闘であり、全力の攻防が繰り広げられた。炎帝は両手剣による連続突きを繰り出し、以前よりも成長した姿を見せた。アベルもその変化に気付きつつ、剣士としての本能に従い戦い続けた。

戦闘中の心境と成長
炎帝はアベルの成長に驚き、戦闘を通じて彼が「化物のような存在」と出会ったことを感じ取った。一方アベルは、涼と悪魔レオノールの戦闘を思い出し、それが自分の剣士としての認識を大きく変えたことを認めた。二人は剣士として互いを高め合う存在であると実感していた。

涼の介入と部下との交戦

涼と部下たちの再会
アベルと炎帝の戦いを見守る炎帝の部下たちは、涼が現れたことに気付いた。彼らは涼を「赤の魔王」と呼び、過去の戦闘での因縁を思い出した。涼は軽妙な口調で彼らを挑発しつつも、自らの実力を誇示した。

魔法戦と圧倒的な防御
炎帝の部下たちは風・火・土属性など多種多様な魔法を涼に放ったが、涼は〈ドリザリング〉という特殊な水の盾を展開し、全ての攻撃を無効化した。彼の防御魔法は進化を遂げており、部下たちに大きな衝撃を与えた。

アベルの撤退と涼の作戦

炎帝との決着の先送り
涼は戦闘が長引くことを危惧し、アベルに撤退を促した。アベルは名残惜しそうにしながらも、炎帝との戦いを一旦終えることを決断した。涼は炎帝に対し冷静に撤退を告げ、次の対決を示唆した。

兵士たちへの牽制
涼は〈アイスバーン〉で地面を凍結させ、独立部隊や街の守備兵を行動不能にした。さらに、炎帝の部下たちを氷漬けにしながら、自らの魔王的なセリフを残してその場を去った。

連合軍の進軍と焦土戦略

オーブリー卿の指揮
連合軍の最高指揮官オーブリー卿は、インベリー公国への侵攻を指揮していた。彼は公国の焦土戦略に対し、迅速な進軍で補給部隊を攻撃させる狙いを見せていた。オーブリー卿は冷静かつ計算高い指揮で部隊を動かし、圧倒的な進軍速度で公国を追い詰めていた。

焦土戦略の影響
インベリー公国は全てを犠牲にして連合軍を引き込み、補給線を叩く構えを見せていた。しかし、その過程で国民や土地に多大な被害が生じており、諸侯や国民の士気が揺らぐ懸念があった。オーブリー卿は公国の内部崩壊を狙いながら、戦略的な進軍を続けていた。

公都アバディーンの危機

連合軍の進軍と公国の危機感
インベリー公ロリス・バッジョは、情報部長官ジョゼッペ・サリエリから連合軍の急速な進軍報告を受けた。先鋒部隊は約三千人で、冒険者を含む騎兵主体であるため、公都陥落の可能性が懸念された。対策として急襲部隊の動きを加速する必要性が議論された。

補給部隊への襲撃

急襲と防御魔法
連合軍補給部隊は公国軍急襲部隊から攻撃を受けたが、錬金術で作られた〈ウインドジャマー〉が展開され、火矢や魔法を完全に防いだ。この防御により急襲部隊は近接戦を余儀なくされ、補給部隊の護衛は時間稼ぎに成功した。

包囲殲滅と公国軍の敗北
公国軍が近接戦を挑む間に連合軍の援軍が到着し、急襲部隊を包囲殲滅した。結果として公国軍は甚大な損害を受け、戦略的後退を余儀なくされた。補給物資は無事確保され、連合軍の作戦は順調に進んだ。

子どもたちの救出とその後

子どもたちの安全確保
涼とアベルはジマリーノの街から救出した子どもたちを、王国南部ルンの街へ送り出す準備を整えた。ゲッコー商会の協力により子どもたちの保護が確保され、『赤き剣』のメンバーが引率を引き受けた。

義賊への評価と議論
義賊的行為を肯定する涼と否定するアベルの意見が交わされたが、結論には至らなかった。涼は義賊を称賛しつつも、自身の目標に集中する姿勢を見せた。

戦場への決意

涼の戦場参加の交渉
涼は冒険者ギルドのルン支部長ヒュー・マクグラスと交渉し、戦場への参加を主張した。正式な資格を持たない涼は、「リョウ・ウォーレン」と名乗り、自らを盾使いと位置付けて説得した。

アベルの決意と涼の誓い
アベルは戦場での経験を積むため、自ら進んで戦場行きを決断した。涼は彼を守ることを誓い、ヒューの承認を得た後、「リョウ・ウォーレン」として戦場への同行が認められた。こうして二人は次なる戦いに向け準備を整えた。

公都防衛戦

アバディーン陥落の記録

公都包囲と降伏勧告
インベリー公国の公都アバディーンは、連合軍に四方を包囲されていた。オーブリー卿率いる主力軍は北側に陣を敷き、その他の方角も厳重な包囲網が敷かれていた。降伏勧告の期限が過ぎたが、公国側からの反応はなかった。オーブリー卿は、前線指揮官に攻撃の許可を出した。

防御機構の破壊と初撃
連合軍は公都の北側城門の防御機構を破壊しており、初撃で城門に迫る騎馬隊が送り出された。一方、公国は秘密兵器「グリーンストーム」を起動させ、緑色の光で騎馬隊を薙ぎ払い壊滅させた。公国守備隊はこの成果に沸いたが、連合軍の反撃を警戒していた。

人工ゴーレムとの戦闘
連合軍は秘密兵器に対抗するため、人工ゴーレムを投入した。最初のゴーレムはグリーンストームの集束型で撃破されたが、その後に登場した複数のゴーレムは、光の防御機構を備えており、攻撃を無効化した。グリーンストームが無力化される中、ゴーレムは城門を突破し、連合軍は公都内に侵入を開始した。

公都陥落と副隊長の決断
連合軍が公都内を制圧する中、守備隊副隊長メレディスは、隊長ナイジェルの指示で公都を脱出した。彼女は、公国の未来を託された重要な物資を運びながら、南へと向かい走り続けた。公都アバディーンは短時間で完全に陥落し、連合軍の支配下に置かれた。

公都占領とナイジェルの決断

公都占領後の報告
公都アバディーンは連合軍に完全に占領された。報告によれば、公城はもぬけの殻であり、魔導兵器は破壊され、住民も500人程度しか残っていなかった。インベリー公一家は脱出済みであった。オーブリー卿はこれを予想していたが、わずかにため息をつき、広場に向かった。

守備隊との対話
広場には降伏した守備隊が集められており、その前に守備隊長ナイジェルが立っていた。オーブリー卿は自ら名乗り、彼らの名前を尋ねた。ナイジェルは民衆と部下の命を救うため、自身の命を差し出す覚悟を示した。オーブリー卿は、民衆への危害や略奪行為を一切禁止していると明言し、民衆の安全を保証した。その言葉に、ナイジェルは安心しつつも、オーブリー卿の器の大きさに圧倒されていた。

尖塔の魔導兵器調査
オーブリー卿は、破壊された尖塔の魔導兵器を調査するため、最上階に向かった。そこではドクター・フランクが調査を進めていた。フランクによれば、この兵器は王国の秘密兵器「ヴェイドラ」の模倣品であった。巨大な風属性の魔石が必要だったが、それらは持ち去られていた。オーブリー卿は、この兵器がもう一基存在する可能性を指摘した。

人工ゴーレムの技術と解説
オーブリー卿は人工ゴーレムがヴェイドラを迎撃した技術について尋ねた。フランクの説明によれば、ゴーレムは風と火属性の魔法を融合させ、雷のような現象を発生させていた。この技術は防御のみならず、城門の突破にも応用されていた。フランクは、この技術が非常に斬新であり、さらなる調整が必要であると語った。

レッドポストでの難民問題
一方、ナイトレイ王国のレッドポストでは、インベリー公国からの難民が押し寄せ、一時混乱が生じていた。しかし、王国政府の指示により、難民は内部へと移動させられ、街は平穏を取り戻していた。涼は難民問題の複雑さを感じつつ、宿の食堂でアベルと再会し、公都陥落後の情勢を話し合った。

冒険者ギルドの議論とグランドマスターの登場
遠征隊の進軍を巡る冒険者ギルドの会議は紛糾していた。王都のサブマスターを含む各部のギルドマスターたちが意見を割り、議論は進まなかった。状況を一変させたのは、王都本部のグランドマスター、フィンレー・フォーサイスの登場であった。フィンレーは王国政府の要望として、公国解放を命じた。この一言が議論の流れを変え、遠征隊はついに進軍を決定した。

王国冒険者の国境突破

冒険者の進軍開始
ランバーの報告により、王国冒険者が国境を突破し、公国守備隊が橋を放棄したことが判明した。オーブリー卿は、その動きが予想より遅れたことを指摘しつつも、王都からギルド紋章付きの馬車が到着したことを聞き、グランドマスター・フィンレー・フォーサイスの関与を推測した。

軍の動向と人工ゴーレムの準備
オーブリー卿はランバーに今後の作戦を尋ねた。ランバーは、人工ゴーレムの準備が整うまで待機しつつ、冒険者の動向を見守るべきと提案した。冒険者たちが進む先からインベリー公の居場所を特定し、合流直前または直後に攻撃を仕掛けるのが有効であると述べた。

インベリー公の居場所の推測
オーブリー卿は、インベリー公が南部の街フィオンにいる可能性が高いと予測した。斥候を放って確認を進めており、確証が得られ次第攻撃を開始すると宣言した。

冒険者の脅威と戦場の難しさ
ランバーは、冒険者が戦場に到着すれば厄介な敵になるのではと懸念を示した。オーブリー卿はそれを認めつつ、冒険者が素早く国境を抜け、インベリー公のいる街に到達してほしいが、完全に合流されるのは望ましくないと述べた。戦場の難しさを語りながら、紅茶を飲み干して次の作戦を練る姿が印象的であった。

フィオン防衛戦

フィオンでの反撃準備

焦土戦略の失敗
インベリー公ロリス・バッジョは、南部の街フィオンで残存兵力を集結させていた。当初の計画では焦土戦略による敵の疲弊後に反撃を行う予定であったが、公都の陥落が予想よりも早く、北部全域が連合軍の支配下に置かれたことで、計画は破綻していた。補給線への攻撃も失敗続きであり、状況は悪化の一途をたどっていた。

連合軍の静止と移民計画の推測
公都陥落後、連合軍が進軍を停止している理由が不明であった。情報部長官サリエリは、連合軍が北部と公都に自国民を移民させ、支配を固めようとしている可能性を指摘した。さらに、幅30メートルの大規模な道路整備が進行していることからも、侵略ではなく植民政策の準備であると考えられた。

王国遠征隊の到来
そんな中、王国の精鋭冒険者約三百人がグランドマスター・フィンレー・フォーサイスの指揮の下、フィオンへの進軍を開始したとの報告が届いた。さらに、大戦の英雄ヒュー・マクグラスも参加していることが判明し、会議室の士気は大きく高まった。ロリスは遠征隊との合流後、反撃を開始する決意を固めた。

南部軍の進軍と森の中の戦闘
遠征隊は主要街道が敵に押さえられているため、地元民の案内で森の中を進んでいた。南部軍を指揮するヒュー・マクグラスは、敵の配置を確認しつつ慎重に進軍を続けた。途中で泥地に誘い込まれた冒険者が罠にはまっている現場を目撃したヒューは、南側の敵を突破して馬を奪い、フィオンまで進軍する計画を立てた。

フィオン攻防戦の開始
連合軍の攻撃が始まり、フィオンの守備隊はグリーンストームを含む防衛準備を整えた。だが、連合軍は隘路の外で停止し、一体の人工ゴーレムを進軍させた。公都でグリーンストームが通じなかった事例を知る守備隊長メレディスは警戒を強め、近接戦闘を余儀なくされる可能性が高まった。

公国軍の突撃と撤退
公国騎士団の突撃により連合軍の前線を突破することに成功したが、隘路を抜けた後、連合軍が整然とした反撃を開始した。公国軍は連合軍の包囲を恐れて撤退を開始したが、連合軍は巧妙に公国軍と入り乱れた状態を維持しながら追撃を行い、グリーンストームを封じることに成功した。

オーブリー卿の策略
連合軍の並行追撃により、公国軍はフィオンの街への撤退を許したが、その背後にはオーブリー卿の周到な計画があった。グリーンストームを無効化し、戦場を混乱させることで、公国軍を効果的に無力化する狡猾な作戦が展開されていた。ロリスは連合軍の策略に気付きながらも、対抗策を打てないまま苦境に立たされた。

南部軍の奇襲と第三独立部隊との遭遇

森を抜けた先の伏兵
南部軍は森を抜けると草原に出たが、そこには展開中の千人規模の部隊が待ち構えていた。涼は即座に魔法〈アイスウォール〉で仲間を守り、戦闘に備えた。敵部隊には涼と因縁のある第三独立部隊がおり、彼はアベルと二人で敵を引き受ける決意を固めた。

アベルと涼の役割分担
涼は千人の敵を相手にする一方、アベルは炎帝フラムとの一騎打ちを任された。涼は仲間を守りつつ、敵の注意を自分に向けるための準備を進めた。彼の冷静な判断により、南部軍は先を急ぐことが可能となった。

炎帝とアベルの戦い
アベルは炎帝が解放した魔剣モラルタの特殊能力に対し、極限まで近づいて防御するというリスクの高い戦法を採用した。この防御法を繰り返しながらアベルの動きは洗練され、最終的に炎帝の腕を切り落とし勝利を収めた。炎帝は潔く敗北を認めた。

涼対千人の戦闘
涼は魔法〈アイシクルランス〉と近接戦闘を組み合わせ、千人の部隊を圧倒した。さらに倒した敵を一人ずつ氷の棺に封じ込め、戦闘の脅威を示した。その圧倒的な実力により、敵兵は恐怖を覚え、戦意を喪失した。

ファウストとの魔法戦
涼は炎帝の部下やファウストとも戦い、魔法の巧妙な使い方で優位に立った。ファウストの連続攻撃を全て防ぎ、逆に彼を魔力切れに追い込んだ。涼は敵の計算の甘さを指摘しつつ、自らの魔力理論を語り、ファウストに圧倒的な差を見せつけた。

禁呪〈テンペスト〉の発動
炎帝の部下であるアメリアは命を賭けて禁呪〈テンペスト〉を詠唱したが、涼はこれを防ぎ生き延びた。その後、涼はアメリアを救うため、心臓停止から蘇生させるという奇跡的な行動を取った。この行動により、敵兵たちの間にさらに深い畏怖を植え付けた。

戦闘の終結と涼の計算
涼は最後に炎帝らを三百層の氷壁で封じ込め、戦場を離れた。彼は自らの行動を冷静に分析し、相手に恐怖と敬意を同時に植え付けることで、戦争抑止への効果を狙った。また、戦闘の中で魔力の本質について新たな仮説を見出し、さらなる研究を目指す決意を固めた。

本陣強襲

本隊の防御体制と奇襲への警戒

連合軍の指揮官オーブリー卿は、北側の平地に本隊を配置し指揮を執っていた。戦場の経験豊富な彼は、騒音もない状況下で異変を察知し、「敵襲」の指示を下した。部下たちは即座に陣形を整え、迎撃の準備を進めた。彼らは敵の位置を正確に把握していなかったが、オーブリー卿の判断を信じ、全方位迎撃を開始した。

南部軍の進撃と急襲

ヒュー・マクグラスと案内人クロエを先頭とする王国遠征隊南部軍は、敵本陣を目指して進軍した。奇襲の発覚後、彼らは全速力で馬を駆り、オーブリー卿の首を狙う戦略を展開した。彼らの目的は敵将を討つことであり、これが公国存続の唯一の可能性とされていた。

謎のゴーレムとの遭遇

進軍の最中、ヒューらは奇妙な四足の人工ゴーレムと遭遇した。そのゴーレムは魔法障壁を備え、遠距離攻撃を防ぐ堅固な存在であった。涼はその構造と魔法の仕組みに興味を示し、ゴーレムを倒し研究材料にしたいと願ったが、戦場の規定により持ち帰ることはできなかった。戦闘を通じてゴーレムの驚異的な性能が明らかになり、撤退を余儀なくされた。

ヒューとオーブリー卿の対峙

ヒューはオーブリー卿との一騎打ちに臨んだが、戦場の状況は刻々と変化した。オーブリー卿の回復ポーションによる体勢立て直しや近衛部隊の介入により、ヒューたちは劣勢に立たされた。しかし、ヒューの部下である涼とアベルの活躍により、危機的状況を一時的に打開した。

人工ゴーレム部隊と新たな脅威

フランク・デ・ヴェルデ伯爵が連れてきた人工ゴーレム部隊が戦場に投入され、状況は再び連合軍有利に傾いた。ゴーレムは高度な防御力と攻撃力を兼ね備え、王国側の三人に大きな圧力をかけた。最終的にヒューたちは撤退を決断し、氷の魔法で時間を稼ぎながらその場を離れた。

戦場の余韻と新たな展開

撤退後、オーブリー卿とフランクは戦闘の結果を振り返り、王国側の魔法使い涼の実力を認めた。また、公国が新たな兵器を投入し始めたことが報告され、戦場の情勢はさらに複雑化していく兆しを見せた。戦いは続き、さらなる衝突が予感される中で幕を下ろした。

終結

グリーンストームの無力化とロリスの苦悩

守備隊長メレディスの報告により、連合軍のゴーレムにグリーンストームが無効化されている事実が明らかになった。ロリス公は最精鋭部隊の壊滅や騎士団長スタンリーの死を受け、逆転の望みが絶たれたことを理解していた。そんな中、侍従長の提案により家族と共に国外脱出を決断した。

脱出路とフィオンの戦火

ロリス公一行は、商人ゲッコーの準備した地下道を通り森へ脱出した。そこからフィオンの街を眺め、戦火に包まれる光景にロリスは自責の念を深めていた。だが、森の安全を確保する間もなく、連合軍斥候隊長オドアケル率いる部隊に包囲され、投降を求められる。

近衛兵の奮戦と南部軍の救援

絶望的な状況下でロリス公は剣を抜き、近衛兵たちが奮闘するも圧倒的な戦力差に追い詰められた。その時、王国南部軍が援軍として到着し、戦況は一変。援軍の中には水属性魔法使いの涼が含まれており、彼の的確な指揮と斥候隊長オドアケルへの直接攻撃が状況をさらに優位にした。

涼とオドアケルの一騎打ち

涼はオドアケルの間合いを変化させる戦法に苦戦しつつも、氷魔法を駆使してミドルレンジを封じ、近接戦に持ち込むことに成功した。オドアケルの多彩な技と剣技に対しても涼は防御を固め、隙を突いた一撃でオドアケルを戦闘不能に追い込んだ。

撤収と勝利の余韻

南部軍は斥候隊を足止めしつつ、ロリス公と家族の安全な退避を確保した。その後、指揮官の声を合図に撤収を開始。涼は勝利を確信しつつも、戦闘の緊張感と達成感を共有するかのようにアベルと言葉を交わし、戦場を後にした。

洞窟での避難とゲッコーの準備

インベリー公ロリスらは、緻密に設計された巨大な洞窟に避難した。洞窟内には、二十人以上が一カ月暮らせるだけの物資が用意されており、これらの準備がゲッコーの有能さを物語っていた。

ヒューの訪問と王国への亡命提案

洞窟に到着した王国冒険者のヒュー・マクグラスは、ロリス公に亡命を提案した。ヒューは礼儀を尽くしながら王国への移動を勧めたが、その直後、想定外の訪問者が現れた。

フィオナ皇女と帝国の親書

赤髪のフィオナ皇女が、帝国からの親書を携えて現れた。親書には、インベリー公の家族全員の亡命受け入れが記されており、皇帝ルパート六世の裁可も下りていると説明された。ロリスは、帝国への亡命を受け入れることを決断した。

飛行戦艦と亡命の実現

ロリス公の懸念に応える形で、帝国の飛行戦艦が現れた。その巨体は夜空に溶け込みつつ、ロリス公たちを安全に帝国へと運ぶために用意されたものだった。亡命は無事に完了し、飛行戦艦は静かにその場を去った。

連合軍の反応と併合宣言

帝国への亡命を知ったオーブリー卿は驚愕しつつも、帝国の政治力を認めた。一方、連合はインベリー公国の併合を宣言し、元公国民には連合国民と同等の権利を認めると布告した。これにより、多くの民衆が新たな支配体制を受け入れるようになった。

王国冒険者たちの心情

ヒューたちは帝国の介入により計画を阻まれたものの、ロリス公の身柄が王国に留まらないことで、連合の干渉を避けられると考え納得した。しかし、帝国の完璧な戦略に翻弄された悔しさは、彼らの胸に残ったままだった。

インベリー公の帝都到着と今後の処遇

インベリー公ロリスとその家族が帝都マルクドルフに到着し、帝城で保護された。皇帝ルパート六世は、貴族たちの干渉を避けるため、公を帝城から荘園へ移動させるよう指示した。この措置は一時的な安息を与える一方、将来的に利用する意図も含まれていた。

景気の停滞と政策の維持

執政ハンスが、帝国全土の景気悪化が続いていることを報告した。皇帝ルパートはこれを政策として意図的に維持していると明かし、最低限の生活支援は継続するよう指示を出した。景気悪化の背景には、戦争準備の必要性が含まれていた。

財務官僚ローレンツの提案

若手官僚ローレンツ・クッシュが、民衆の疲弊を訴え、景気回復策を皇帝に上申した。彼は詳細な政策案を提出したが、皇帝は実行を却下した。代わりに、現在の不景気が政策的に維持されている理由を説明し始めた。

景気悪化の意図と戦争の準備

ルパートは、過去の好景気が戦争復興需要によるものであったと指摘し、現在の不景気が「戦争を起こすための準備」であることを語った。戦争は国家最大の消費行動であり、景気回復の手段として避けられないとした。戦争に向けた準備は既に進行中であり、外交交渉では解決できない多くの問題を抱えていると述べた。

戦争の不可避性と皇帝の責務

ローレンツの「戦争を避ける方法はないのか」という問いに対し、ルパートは断固として必要性を主張した。そして、戦争は複雑な要因が絡む避けられないものであり、自身がその責任を背負うことを静かに受け入れていると示唆した。その後、ルパートは「皇帝というのは罪な役割だ」と呟き、深い苦悩を垣間見せた。

突然の来訪者

王国への帰還と冒険者たちの安堵

王国冒険者たちは、旧インベリー公国から王国東部のレッドポスト近郊まで戻り、ようやく緊張を解いた。涼は「ド派手な魔法使いとして戦いたい」という願望を語り、斥候のスーや剣士ラーと意気投合した。一方で、涼は帝国の皇女と火属性魔法使いがインベリー公の避難所を正確に見つけ出した謎に思いを巡らせていた。

レッドポストでの野営と旧知との再会

遠征隊はレッドポストで解散し、街の外で野営を開始した。涼は酒宴を離れて一息ついていると、旧インベリー公国の商人ゲッコーと再会した。ゲッコーは、弟たちが周辺国で商会を立ち上げる話を語り、インベリー公亡命にまつわる役割をほのめかした。彼は王国ではなく帝国を選んだ理由について、治安や政治的安定を考慮した結果だと示唆した。

レオノールとの意外な邂逅と頼み事

涼の前に悪魔レオノールが現れ、妖精の雫を持つ涼にエルフのエリザベス救助を依頼した。エリザベスは酷い状態にあり、涼の力に頼るほかないと語った。涼はエルフを救うため協力を約束し、レオノールの導きでエリザベスと対面した。

エリザベスの救助とレオノールの感謝

涼はエリザベスの額に手を当てることで、彼女を回復させることに成功した。エリザベスは感謝を示し、レオノールも深い礼を述べた。涼は「人の役に立てた」と喜びを感じたが、レオノールの戦闘や国、女性に関する過激な提案は丁重に断った。

レオノールとの質疑応答

涼は「自分が何者か」「ヴァンパイアの国の場所」を問い、レオノールは涼が過去にも類似例がいる「特別な人間」である可能性を語った。一方、ヴァンパイアの国については答えを濁し、涼はそれを中央諸国内にあると推測した。

別れと後悔

レオノールたちはエリザベスを連れ封廊を通じて去った。涼は感謝を受けつつ、後になって「ゴーレムを頼むべきだった」と後悔した。アベルは涼の行動を見て「また世のためにならないことを考えている」と呟き、涼の評価は不憫なままであった。

書斎と報告者の来訪

広大な書斎に一人佇む主は、淹れたてのコーヒーの香りを楽しんでいた。執事が訪問者であるドラスの到着を告げ、主はその報告を許可した。ドラスは二つの報告を行った。一つはインベリー公のデブヒ帝国への亡命発表、もう一つはハスキル伯爵カリニコス消滅に関する情報であった。その事件の背後には、ルンのギルドマスターや勇者ローマンの存在があった。主はその報告を聞き、勇者の聖剣やギルドマスターの剣が与えた影響を静かに考察した。

鍛冶工房の訪問と妖精王の剣

涼とセーラは、剣の手入れのため鍛冶師ドラン親方の工房を訪れた。セーラの剣を預けた後、涼が持つ妖精王の剣「村雨」が話題となった。氷の刃を生じさせるその剣は、伝説的なものであった。親方や居合わせた職人アブラアムもその価値を認識し、驚愕した様子を見せた。

規則正しい日常と『赤き剣』の昇級

涼は規則正しい日常を送りつつも、アベル率いる『赤き剣』がA級パーティーへ昇格したことを祝った。昇級式では、涼が親目線でアベルの成長を喜ぶ一方、周囲の仲間たちもそれぞれの感情を抱いていた。アベルとの会話では、涼の持つ錬金術や武器に関する知識が披露され、緑の光を放つ魔導兵器「ヴェイドラ」の技術流出問題が語られた。

闘技に関する疑問とアベルの見解

涼はアベルに「闘技は魔法を使えない者のみが習得可能」という話を問いかけた。アベルはそれが「おそらく真実」と述べ、西方から広まったと推測された闘技の起源について話した。一方で、セーラの剣術やエルフの技術との関連性は否定され、謎が深まった。涼はその議論を通じてさらに知識を深める意欲を抱いていた。

エピローグ

未来を見つめる管理者

白い世界と管理者の観察
白い世界でミカエル(仮名)は、複数の世界の管理を行っていた。彼の手元には石板があり、その内容を静かに読み進めていた。三原涼が東の戦争に介入し、困難な道を選び続けていることを確認した彼は、涼に引き寄せられるように多くの人々が関与している状況を把握していた。

西への未来と試練の予兆
次に涼が向かうのは西と判明したが、その地には並大抵ではない困難が待ち受けていた。ミカエル(仮名)は、未来が生死の狭間で揺れていることを感じ取り、生き残る可能性と死を迎える可能性の両方が見える現状を憂慮した。彼は、涼が無事に試練を乗り越えられることを願いつつ、観察を続けていた。

外伝  火属性の魔法使い V

予選

武闘大会とオスカーの挑戦

フィオナとの会話とルパートの忙しさ
フィオナはオスカーの武運を祈りつつも、怪我をしないよう心配していた。一方、皇帝ルパートは移動中の馬車内でも山積みの書類に追われていた。フィオナは父の仕事の大変さを理解しつつも、優雅な侯爵夫人のような未来を夢見ていた。

二次予選の試合と戦わない選択
オスカーの二次予選では、他の選手たちが互いに戦い、彼を避ける形となった。結果、オスカーは何もしないまま勝ち残り、エルマーと共に予選を突破した。試合後、フィオナの笑顔がオスカーを迎え、彼は無事を喜ぶ彼女の気持ちを感じ取った。

決勝トーナメント進出者たちの抽選
三次予選後、オスカーと他の参加者が決勝トーナメント進出を果たした。観客の注目を集める中、抽選が行われ、オスカーの初戦は前回三位のアンゼルムとの対戦に決まった。場内にはセーラや他の強豪選手もおり、それぞれの試合に期待が高まっていた。

開幕戦と仮面の男の圧倒的な実力
決勝トーナメント開幕戦では、仮面の男ボスが前回四位ディーターを圧倒的な速さで破った。その剣技に観客も驚愕したが、オスカーにとっては特別な衝撃があった。ボスの剣が、かつてオスカーの師匠が打ち、父が使った剣であり、家族を殺した仇の証であった。

フィオナの支えとオスカーの決意
フィオナの不安を感じ取ったオスカーは、彼女の視線によって冷静さを取り戻した。過去の出来事を思い出していたが、フィオナに対して詳細を語らなかった。その後、オスカーは決意を固め、決勝でボスと対峙することを目標に据えた。

武闘大会の試練とオスカーの決意

フィオナの心配とルパートの忙しさ
フィオナはオスカーの武運を祈りつつ、怪我のないよう気遣っていた。一方、馬車の中では皇帝ルパートが書類仕事に追われ、部下ハンスと共に効率的に処理を進めていた。フィオナは父を尊敬しながらも、自らは優雅な侯爵夫人のような未来を望んでいると語った。

二次予選での不戦勝
オスカーの二次予選では、他の参加者が彼の実力を恐れ戦いを避けたため、結果として彼は動かずに勝ち残った。剣士エルマーも勝利し、観客たちは二人の勝ち上がりに歓声を上げた。フィオナはオスカーが無事であることに安心し、彼を笑顔で迎えた。

三次予選の展開とフィオナの支え
三次予選でもオスカーは特に戦わず勝ち抜けたが、物足りなさを感じていた。しかし、フィオナの変わらぬ笑顔が彼の心を癒した。オスカーは次のステージに向けて、温かな気持ちを抱いていた。

決勝トーナメントの抽選
決勝トーナメント進出者64名がコロセウムで抽選を行い、オスカーの初戦相手が前回大会の三位アンゼルムに決まった。抽選では人気選手や強敵が次々と名前を呼ばれ、観客の期待が高まった。オスカーは抽選会場で、仮面を被った不気味な男ボスと出会い、その剣が自分の因縁と深く関わるものであることに気付いた。

仮面の男ボスと過去の因縁
ボスが振るう剣を目にしたオスカーは、かつて両親や育ての親を殺した仇敵の存在を確信した。その剣は、師匠が打ち父が使ったものであり、オスカーの心に激しい怒りと悲しみを呼び起こした。しかし、フィオナの視線により冷静さを取り戻し、彼女に謝意を示した。

開幕戦の圧倒的な決着
決勝トーナメント開幕戦では、ボスが前回四位のディーターを圧倒的な技量で破った。観客は何が起きたのか分からぬまま、ボスの実力に驚愕した。オスカーは仇敵との決着を心に誓い、決勝に進む覚悟を固めた。

決勝トーナメントとオスカーの激戦

乱射乱撃メンバーの活躍とセーラの圧勝
決勝トーナメント二日目と三日目では、双剣士ザシャと剣士エルマーが苦戦しながらも初戦を突破した。一方、エルフのセーラは第三日目の試合でわずか十秒で勝利を収め、その実力の高さを見せつけた。オスカーはこれらの試合を観戦したが、仮面の男ボスを見つけることはできなかった。

オスカーとアンゼルムの対戦
四日目のラウンド六十四最終戦では、オスカーが前回三位のアンゼルムと対決した。試合序盤、オスカーの攻撃はすべて防がれ、アンゼルムの技量に圧倒されたが、決勝まで進む必要があると決意したオスカーは火属性魔法を駆使して攻勢に出た。囮を織り交ぜた巧妙な戦術でアンゼルムの動きを封じ、足を撃ち抜いた後、喉元に剣を突きつけて勝利を収めた。

準々決勝での乱射乱撃の躍進とボスの圧勝
準々決勝では、仮面の男ボスが難なく勝利しベスト四入りを果たした。ザシャも逆転勝ちを収め、乱射乱撃の名声は帝都中に広がった。しかし、セーラとの戦いを前にしたエルマーは実力差に絶望し、善戦の末に敗北を喫した。最後は急所を攻撃される屈辱的な敗北であったが、その実力と闘志は多くの観客から称賛された。

セーラとオスカーの激闘
準決勝第二試合で、オスカーはセーラと対決した。試合序盤、セーラの〈風装〉を纏った剣技に圧倒されたが、魔法を駆使して応戦した。両者の戦いは剣戟と魔法が交錯する熾烈なものとなり、オスカーはセーラの攻撃に次々と傷を負いながらも戦い抜いた。最終的に、オスカーは自身の左腕を犠牲にした一撃でセーラの剣を破壊し、彼女を追い詰めた。

セーラの棄権とオスカーの勝利
オスカーの決意に心を動かされたセーラは、自ら棄権を宣言した。勝利を収めたオスカーは治癒室で応急処置を受け、観覧席へと戻った。彼を出迎えたフィオナは、彼の無事を確認すると涙を浮かべながら叱責した。オスカーは彼女に謝罪し、次の決勝戦へ向けた決意を新たにした。

皇帝ルパートの葛藤
フィオナの行動を目にした皇帝ルパートは複雑な心境に陥った。父親としての感情と、娘の成長を喜ぶ気持ちが交錯する中、何も言葉を発しなかった。

決戦

決戦前夜の告白

オスカーとフィオナの対話
オスカーは決勝戦前夜、フィオナの元を訪れ、自身の過去と明日の対戦相手について語った。両親と育ての親を殺害した仇敵が、明日の対戦相手である仮面の男ボスコナであることを告げたのだ。フィオナは驚きながらも、オスカーの固い決意を目にし、彼の意思を尊重することにした。二人の会話の後、オスカーは忠誠の意を示し、フィオナの元を去った。その後、フィオナの小さなすすり泣きは、誰にも聞かれることなく夜に消えた。

決勝戦の開始
大会最終日、午前中に予定されていた三位決定戦は、セーラの棄権によりザシャが三位となった。午後、決勝戦の場が整い、オスカーとボスコナが対峙した。皇帝ルパート六世が開戦の宣言を行い、試合が開始された。

素顔の暴露と心理戦
オスカーは試合開始直後、大規模火属性魔法〈天地崩落〉を放ち、ボスコナの仮面を破壊して素顔を暴いた。ボスコナの正体が露わになると、観客たちは彼がかつて国境地帯を荒らした盗賊であったことに気付き、会場がざわめき始めた。オスカーとボスコナは互いに言葉を交わしつつも、戦闘を続行した。

熾烈な剣戟と策略
戦闘中、オスカーは魔法〈ピアッシングファイア〉を駆使して攻撃を仕掛けたが、ボスコナの剣技と投げナイフに苦戦を強いられた。さらに、ボスコナの靴に仕込まれた毒刃により、オスカーは一層神経を研ぎ澄ませて戦う必要があった。長時間にわたる激戦の末、ボスコナの剣が折れ、オスカーは反撃に転じた。

ボスコナの敗北とオスカーの決断
ボスコナの右手首を斬り飛ばしたオスカーは、彼を殺す決意を口にした。しかし、最後の一撃でオスカーの剣も折れ、ボスコナは気絶した。皇帝ルパート六世が試合終了を宣言し、オスカーの勝利が確定した。

栄誉と新たな地位
試合後、オスカーはルパート六世によりルスカ男爵に叙された。断絶していた名門の家系を継ぐこととなり、正式に帝国貴族となったのである。その所作の完璧さと実力により、成り上がり者という声もかき消され、オスカーの名声はさらに高まった。オスカーは自身を育ててくれた前ロシュコー男爵への感謝を胸に、貴族としての新たな役割を全うする決意を固めた。

忠誠の誓いと師弟の絆

フィオナの呼び名へのこだわり
フィオナは、帝城の離れでオスカーと会話を交わしていた。オスカーが「師匠」と呼ばれることを控えてほしいと願うも、フィオナはこれを拒否し、自分にとって敬愛する人物であるオスカーを「師匠」と呼び続ける決意を示した。オスカーはフィオナの言葉に困惑しつつも、最後には彼女の意志を受け入れる形となった。

復讐についての問い
フィオナは真剣な表情でオスカーに問いかけた。「復讐は果たされたのか」と。オスカーは即答できず、深く考えた末に自分の気持ちを語った。ボスコナにとどめを刺していれば復讐が果たされたと感じられたかもしれないが、その場合、自分はこの場所には居られなかっただろうと述べた。フィオナはその言葉を聞いて顔をしかめ、オスカーも苦笑しながら同意した。

新たな決意と忠誠の誓い
オスカーは復讐に囚われることはなくなったと語り、自身の忠誠の全てをフィオナに捧げると宣言した。そして、片膝をつき礼を取るオスカーに、フィオナは笑顔で応えた。彼女は「ここが師匠の場所です」と言葉を添え、オスカーの存在をその場に確かに受け入れる意志を示した。

コナ村からの帰還後

村への帰還とニルスへの励まし

ヴァンパイア退治を終えた一行がコナ村に戻った際、涼がニルスに対して「眷属にならなくて良かった」と話しかけた。涼は冗談めかしながらも、ニルスの将来性を認めており、それが仲間たちの笑いを誘った。ニルスは当初は照れながらも、自らの未熟さを認め、より強くなりたいという意志を見せた。それを見た涼はさらに煽るような提案を続けた。

涼の過激な提案と仲間たちの反応

涼はニルスに「ヒューに襲いかかる」ことで急成長を図るべきだと提案した。この冗談めいた提案に、ニルスは戸惑いながらも半ば真剣に考え始めた。仲間たちは涼の言葉を聞いて困惑するが、先頭にいるヒューや他のメンバーは涼の冗談であることを見抜き、静かに微笑んでいた。

アモンの挑戦と模擬戦

宿泊所に着くと、十六歳の剣士アモンが勇者ローマンに模擬戦を申し込むという意外な展開があった。その勇敢な提案に涼やニルス、エトは驚いたが、アモンの非凡な剣技と向上心が一行を感心させた。ローマンは手加減しながらも、指導するような模擬戦を展開し、アモンとニルスに剣の基礎と応用を見せつけた。

剣術教室の提案

模擬戦を見守りながら、涼はヒューに対し冒険者向けの剣術教室を開くことを提案した。最初は乗り気ではなかったヒューも、涼の説得によって週一回の開催に同意した。涼の目的は、冒険者全体の戦闘能力を底上げし、彼らの生存率を高めることであった。

未来への期待

その後、一行の中で剣士たちの成長を促す環境が整備され、冒険者たちはさらに強くなったとされる。アモンやニルスのような若手の冒険者たちが、経験豊富な者から学びつつ成長していく姿が垣間見えた。これにより、ルンの冒険者たちの未来にはさらなる可能性が広がったのである。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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