どんな本?
『水属性の魔法使い』は、久宝忠による異世界ファンタジー小説である。主人公・涼が水属性の魔法を駆使し、異世界での冒険を繰り広げる物語である。
主要キャラクター
• 涼:異世界に転生した青年で、水属性の魔法使い。マイペースな性格でありながら、卓越した魔法の才能を持つ。
• アベル:涼の仲間であり、天才剣士。涼との出会いをきっかけに、共に冒険を続ける。
• セーラ:涼の仲間で、エルフの女性。高い戦闘能力と知識を持ち、涼をサポートする。
物語の特徴
本作は、異世界転生や魔法、冒険といった要素を中心に展開される。主人公・涼のマイペースな性格と圧倒的な魔法の実力が、物語にユーモアと爽快感を与えている。また、仲間との絆や成長、各国の陰謀や戦争など、多彩なストーリーラインが魅力である。
出版情報
• 出版社:TOブックス
• 書籍版発売日:2023年2月20日
•ISBN:9784866997735
• コミカライズ:墨天業による漫画版が『comicコロナ』にて2021年9月より連載中
• アニメ化:2025年7月よりテレビアニメ放送予定
読んだ本のタイトル
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編6
著者:久宝忠 氏
イラスト:めばる 氏
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あらすじ・内容
トワイライトランド——王国の隣にありながら謎に包まれた国。
錬金術三昧の涼が久々に受けた依頼は、その隣国と国交を結ぶため、外交使節団に加わることだった。
「コーヒーを飲みながら馬車に揺られるだけの簡単なお仕事ですね!」とお気楽に構えていたにもかかわらず、首都テーベでまさかのクーデターが発生! 国家反逆の咎で味方が囚われてしまう。
状況打開の鍵は「シンソ」という貴族も恐れる人物で……?
大陸各国に渦巻く陰謀、そして”爆炎の魔法使い”の暗躍。
複雑に絡まり合った計略を快刀乱麻に切り捨て、物語はクライマックスへ向けて動き出す!
最強水魔法使いの気ままな冒険譚・第6弾!
感想
【第一部 中央諸国編6】の出来事は以下の通り。
- グランドマスターの来訪
フィンレー・フォーサイスが冒険者ギルドに現れ、その威圧的な存在感で冒険者たちを圧倒した。彼はA級パーティー「五竜」の消息不明を報告し、帝国の関与を疑った。 - 使節団への計画変更
フィンレーは「赤き剣」を新たな使節団に加えることを提案したが、リーダーであるアベルが国王の次男であるため、トワイライトランドへの派遣が検討された。 - 涼の参加交渉
涼は当初消極的だったが、ゴーレム調査を条件とする特別報酬により依頼を受け入れた。準備期間を経て、使節団と共に旅立つ段取りを整えた。 - 旅の開始と馬車での交流
涼とアベルは王都へ向かう馬車で会話を交わしながら進み、魔法と錬金術を駆使した快適な移動環境に感心した。 - 王立錬金工房での研究
涼は王都到着後、錬金工房を訪れゴーレムの高度な技術に驚嘆した。ケネスとともに、設計者フランク・デ・ヴェルデの技術と失踪の背景について議論した。 - 使節団の旅路と課題
緩やかな速度で進む使節団の中で、涼は旅の過去を回想しつつアベルの課題を助けた。道中で交渉官イグニスとの親交も深めた。 - 暗殺教団の襲撃計画
使節団を狙う暗殺教団が行動を開始。涼の魔法による警戒体制が採用され、迫る脅威への対応が進められた。 - ワイバーンの討伐
涼の魔法〈アイシクルランス〉によりワイバーンを撃墜し、冒険者と騎士団の連携で魔物の脅威を排除した。 - 暗殺教団との戦闘
暗殺者たちの襲撃は涼の魔法と使節団の協力により撃退された。幹部ナターリアは捕縛され、教団の計画は阻止された。 - 捕虜の尋問と情報収集
ナターリアの尋問により、トワイライトランドの反乱分子が教団を操っていた事実が判明。ミューの出自も襲撃の背景に関係していることが明らかになった。 - 内戦の懸念と対策
トワイライトランドの内戦の可能性に備え、使節団は情報を共有し警戒を強化した。涼とアベルは反乱分子の狙いを見据え、行動を議論した。 - カルナックでの新展開
使節団はカルナックに到着し、捕虜の管理や情報共有が進められた。フェルプスからの書状を受け取った涼は、内戦の兆候について再確認した。
テーベ到着と歓迎
使節団はトワイライトランド首都テーベに到着し、市民による熱烈な歓迎を受けた。涼とアベルはその光景に感動しつつも、それぞれの視点で考えを巡らせていた。 - 大公との謁見
使節団は大公サイラスと謁見し、交渉官イグニスが主要なやり取りを担当した。涼は大公とミューの外見が似ていないことに気づき、不思議に感じた。 - 迎賓館での休息
迎賓館に案内された使節団は、充実した設備を享受した。涼は大浴場に感動し、アベルは涼の風呂好きを半ば呆れながらも理解を示した。 - 書斎での指示
公城内の「書斎」で主が使節団の動向と、計画される「シヴィルウォー」の準備について報告を受け、詳細情報の収集を命じた。 - 冒険者ギルドでの模擬戦
アベルは現地冒険者と模擬戦を行い、涼は魔法使いとしての経験を共有した。模擬戦は実践的な学びをもたらし、現地冒険者たちの荒々しい特性が明らかとなった。 - セフェリノとの模擬戦
アベルは冒険者パーティー「五連山」のリーダー、セフェリノと模擬戦を行い、接戦の末に勝利した。セフェリノはアベルに感謝し、再戦を誓った。 - 五連山との交流
涼は「五連山」のメンバーと情報交換を行い、トワイライトランドの貴族制度や冒険者文化の違いについて知識を深めた。 - 晩餐会での邂逅
涼はアルバ公爵アグネスと出会い、彼女の招待を受けた。彼女の提案で涼はラーメンを食べることとなり、その味に感動した。 - シヴィルウォーの準備
内戦の計画が進行し、アベルと涼はそれぞれの立場で対応を模索した。ラーメンを楽しんだ涼は内戦の予兆を感じ、仲間を救うため行動を開始した。 - アルバ公爵邸での戦闘
涼は魔法無効化空間の中、ヴァンパイア剣士グリフィン卿と戦い、持久力と技術で勝利を収めた。アグネスは魔法無効化を解除し、涼を迎賓館に送り届ける提案を行った。 - 模擬戦場での危機
アベルは模擬戦中にヴァンパイアたちに包囲されるが、真祖の介入により危機を免れた。真祖はランド内戦を「ゲーム」と評し、アベルに新たな勢力としての参戦を促した。 - 迎賓館制圧と仲間の救出
アベルと真祖、『五連山』は迎賓館を制圧し、捕らわれていた文官や騎士団を救出した。真祖はトワイライトランドの兵士が全員剣技を使える事実を明かした。 - コントレーラス伯爵邸襲撃
アベルたちはコントレーラス伯爵邸を襲撃し、敵の計画を暴いた。真祖の圧力でサンダリオ伯爵は敗北を認め、騒乱は終息に向かった。 - 公城での決着
アベルはエスピエル侯爵ビセンテとの一騎打ちに勝利し、真祖は彼を断罪した。公城は大公サイラスの指揮下で再び統制を取り戻した。
王国北部での反乱の調査
フリットウィック公爵領への反乱の兆候を受け、『白の旅団』が派遣され、慎重に行動しながら証拠集めを開始した。 - 帝国による王国東部の混乱
帝国が王国東部の治安悪化を煽り、難民問題を悪化させている可能性が指摘され、諸国連合が警戒を強めた。 - ハンダルー連合の軍事準備
西部国境への軍再配置を指示し、帝国侵攻への備えを整える動きが進められた。 - クルコヴァ侯爵領の学術と訪問者
工業と学術が発展した侯爵領をフィオナ皇女と護衛のオスカーが訪問し、新発明の確認と研究機関の視察を行った。 - 間諜の摘発とオスカーの変化
賊を制圧し、オスカーがかつての復讐心から解放され、フィオナとの信頼関係を再確認した。 - 空中戦艦の紹介
クルコヴァ侯爵領で建造された空中戦艦「マルクドルフ級」が公開され、その軍事的可能性が示唆された。 - 王国北部でのワイバーン討伐
涼とアベルが協力し、ワイバーンを討伐したが、討伐現場で発見された香りから、意図的な仕掛けの可能性が浮上した。 - 帝国影軍の活動と涼たちの対峙
帝国影軍の動きを追う涼とアベルが囮となり、影軍との戦闘を開始。最終的に敵を捕縛し、錬金道具を確保した。 - 捕虜の解析と地図情報の重要性
捕縛した影軍が持っていた錬金道具の解析で、帝国の侵攻計画が示唆され、詳細な地図情報の危険性が浮き彫りとなった。 - 帝国空中戦艦による捕虜奪還作戦
帝国の空中戦艦「マルクドルフ級」による捕虜奪還作戦が実行され、激しい戦闘が繰り広げられた。 - アベルと涼の戦闘と敗北
アベルと涼が帝国軍に奮闘するも敗北し、捕虜を奪還される結果となったが、新たな戦術の必要性を認識した。 - ケネスの救出と帝国軍撤退
涼が天才錬金術師ケネスを救出しつつも、帝国軍が計画通り撤退を完了した。 - 未来への希望と目標
ケネスが王国にも空中戦艦に対抗する手段があると示唆し、涼とアベルは次の戦いに向けた成長を誓った。 - ミカエル(仮名)の考察
「白い世界」の管理者ミカエルは、争いが世界の摂理であると結論付け、涼の進む未来を見守る姿勢を示した。
総括
500ページオーバーな本巻。
涼とアベルの掛け合いは今巻も絶妙で、読者を笑顔にさせるシーンが多かった。
吸血鬼の国トワイライトランドでは、涼が魔法だけでなく剣技でも実力を発揮し、真祖との会話では互いの事情を準えながらも、教養が深く感じられるやり取りが印象的であった。
さらに真祖の「ラーメンのために興した」というユニークな設定も、物語に軽妙なアクセントを加えていた。
この巻から燻っていた帝国との絡みが本格化し、新型空中戦艦や影軍など、脅威の存在感が際立つ一方、涼の引きの強さや機転が光る場面が随所に見られた。
錬金術師ケネスを中心とした謎の錬金道具の解析は、次巻への伏線として期待を膨らませる展開であった。
特に涼とオスカーの激しい戦闘シーンは、緊張感がありつつも、双方の実力が拮抗している点が魅力的であった。
吸血鬼や帝国の脅威が増す中で、涼たちの成長や新たな技術が物語を引き締めている。
涼がどれほどの実力を発揮し、次の巻で帝国との対立がどのように収束するか、目が離せない展開である。
総じて、物語のボリュームと緊迫感のある展開が満載で、特に涼とアベルの成長や、吸血鬼や帝国との戦いが読者を惹きつける作品であった。
次巻への期待がさらに高まる一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
プロローグ
グランドマスターの来訪
ギルドへの登場と圧倒的な存在感
冒険者ギルド前に停まった馬車から、威圧感を放つ壮年の男、フィンレー・フォーサイスが降り立った。彼の登場によりギルド内の空気が変わり、冒険者たちはその異様な雰囲気に言葉を失った。受付嬢ニーナは彼を「グランドマスター」と呼び、深々と頭を下げた。
ルンギルドマスターとの会談
フィンレーはギルドマスターのヒュー・マクグラスを訪ね、A級パーティー「五竜」の消息不明を告げた。彼らは国の使節団の一員として派遣される予定であったが、連絡が途絶えており、その背景には帝国の関与が疑われていた。
新たな使節団計画
赤き剣への代役依頼
フィンレーは「五竜」の代わりに、A級パーティー「赤き剣」を使節団に加える案を提案した。だが、魔法使いリンが王国の筆頭魔法使いイラリオンの補助に従事しているため、代役の必要性が生じた。
アベルの正体と新たな制約
ヒューは「赤き剣」のリーダーであるアベルが国王の次男である事実を明かした。これにより、アベルを危険地帯である帝国国境に派遣する案は却下され、代わりにトワイライトランドへの派遣が検討された。
涼への依頼と交渉
涼の特殊な性格と日常
涼は自宅の広大な庭で魔法の練習に没頭していた。ヒューが訪問し、涼に使節団の魔法使いとして参加を依頼したが、彼は消極的な態度を見せた。
ゴーレムの誘い
交渉の末、フィンレーは壊れた連合のゴーレムを調査できる特別報酬を提示。この条件に涼は興奮し、即座に依頼を引き受けることを決定した。
新たな旅立ちの準備
準備期間と出発の予定
ヒューは涼に準備期間として1日を与えた。涼はセーラへの伝言と自宅の管理を手配し、翌朝ギルド前から使節団と共に出発する段取りを整えた。
決意と次の展開
涼は期待を胸に抱きながら、トワイライトランドへの旅立ちに向けた準備を進め、物語は新たな展開を迎えることとなった。
王都へ
旅立ちの朝と馬車の会話
ギルド馬車の出発
涼とアベルを乗せたギルド馬車は、朝八時にルンの街を発った。二人の荷物は小さな旅行鞄一つずつと簡素で、準備も短時間で済んでいた。アベルは、ヒューから涼が「かかった馬」のようだと言われたことを話題にしたが、涼は冷静に「急がば回れ」と諭し、落ち着いた様子を見せた。
お見送りの話題
涼は出発時に誰も見送りに来なかったことを指摘し、アベルが仲間から疎外されているのではと冗談を交えながら問いかけた。アベルは反論し、「赤き剣」のメンバーが別の仕事で不在だった事情を説明したが、涼はなおも茶化し、アベルを困らせた。
馬車の異常な速度
高速移動の理由
涼は馬車の速度が異常に速いことに気づき、その理由をアベルに尋ねた。アベルは、ヒューが王都への早急な到着を望む涼のために、途中で馬を交換しつつ進める特別な手配をしたことを明かした。涼はその配慮に感謝しつつも、乗り心地の良さに違和感を覚えた。
魔法と錬金術の技術
アベルはギルド馬車に魔法と錬金術で衝撃吸収機構が備えられていることを説明し、涼は改めてこの世界の魔法技術に感心した。また、アベルは最近乗り心地の良い馬車を開発した鍛冶師「カラシニコフ」の名を挙げ、それが馬車工房として評判を集めていることを語った。
王都到着と錬金工房訪問
王立錬金工房への直行
二日で王都に到着した馬車は、そのまま涼を王立錬金工房へと運んだ。涼は馬車を降りると即座に工房へ向かい、アベルの呼びかけも耳に入らないほど熱中していた。
ケネスとの再会
錬金工房で涼はケネス・ヘイワード男爵の部下ラデンと再会し、工房内へ案内された。ケネスと対面すると、涼は見学の許可が下りたゴーレムを目の当たりにし、興奮しながら感動を隠せなかった。
ゴーレムの調査と発見
ゴーレムの構造と仕組み
ケネスはゴーレムの構造を説明し、体内に六つの魔石があり、それらを切り替えながら稼働していることを明かした。その高度な錬金術に涼は驚嘆し、製作者である天才錬金術師フランク・デ・ヴェルデの存在を聞かされると、その技術力に感銘を受けた。
ヴェイドラの迎撃原理
ゴーレムが連合の魔導兵器ヴェイドラを迎撃できた理由を巡り、涼とケネスは議論を交わした。涼はプラズマの発生による防御機構の可能性を示唆し、その理論がケネスの理解を助けた。二人は設計者フランクの意図を推測しながら、その技術の奥深さに思いを馳せた。
別れた師匠の影
フランクの行方
ケネスは失踪したフランクが連合で活動している可能性を示唆し、涼は戦場で彼に遭遇した記憶を語った。ケネスはその話を聞いて安堵と寂しさを抱えつつも、涼の協力が自身の研究にとって大きな助けになることを確信した。
錬金術の基礎とポーション作成
錬金術と錬金道具の定義
錬金術とは、錬金道具を生み出すことを目的とする技術であった。錬金道具は、魔法使いでなくとも魔法現象を起こせる道具である。例えば、ポーション作成に必要な「魔法陣の描かれた紙」も、錬金道具の一種と見なされる。魔力を供給して動作するこれらは、錬金術の初歩的な技術として位置付けられた。
魔法陣と魔法式の違い
錬金道具には魔法陣や魔法式が用いられる。魔法陣は属性を問わず起動可能である一方、魔法式は特定の属性に対応していた。そのため、魔法陣は汎用性が高いが、多くの魔力を消費する。涼は、錬金術の初歩段階では魔法陣を使い、進むにつれて魔法式も活用する必要性を学んだ。
魔法式の多様性と錬金術の困難
魔法式の独自性
涼が疑問に思った「魔法式の違い」について、ケネスはそれぞれの錬金術師が独自の魔法式を生み出すことを説明した。魔法式は言語を作るのに似ており、百人いれば百通りの魔法式が存在すると言われていた。この事実に涼は驚愕しつつ、複雑な心境を隠せなかった。
既存の魔法式の活用
ケネスは、既存の魔法式を参考にしたり改変したりすることで、魔法現象を再現できると説明した。涼はこの考えに救いを見出し、独自の魔法式を作る困難さを緩和する方法として積極的に活用する決意を固めた。
王立錬金工房での研究と目標
ゴーレム研究の資料
ケネスは、フランク・デ・ヴェルデが残した人工ゴーレムに関する膨大な資料が閲覧可能であると涼に告げた。これを聞いた涼は喜びに満ち溢れ、ゴーレム作成の研究が進展する可能性に胸を膨らませた。
食堂の驚きと交流
ケネスは錬金工房の食堂を紹介し、その利用が無料であることを説明した。涼はその寛大さに感動し、美味しい食事が研究の閃きに繋がるというリチャード王の言葉に共感を覚えた。二人は、食事を通じて研究や国際関係についても語り合った。
ウィリー殿下との再会と魔法大学見学
学生たちとの邂逅
涼は魔法大学の見学に来た学生たちの中で、かつての弟子ウィリー殿下を発見した。殿下は涼と再会を喜びつつ、現在の学業や進学の状況について説明した。王都騒乱の影響で貴族用の高等学院が機能しておらず、魔法大学で学んでいる経緯を明かした。
涼の師匠としての誇り
涼は、努力を惜しまないウィリー殿下の成長に感銘を受けた。殿下の環境適応能力を称賛しつつ、今後の成長を期待した。殿下との会話を終えた涼は、再び研究へと戻った。
ケネスとフランクの思い出
フランクの出奔と現在
ケネスは、フランクが王国の錬金術研究の行き詰まりから連合へ移った背景を語った。涼は国際関係の変化がフランクとの再会をもたらす可能性に触れ、ケネスを励ました。
研究環境の難しさ
ケネスは、錬金術研究が純粋に進められない現状を嘆きつつも、涼の前向きな姿勢に希望を見出した。涼もまた、自身の研究目標を再確認し、工房での貴重な時間を大切にする決意を新たにした。
ケネスの研究室と錬金術師たちの生活
研究中心の生活
ケネスが涼を案内したのは、自身の住居であった。そこにはリビングと寝室が備わり、研究にすぐ戻れる環境が整っていた。錬金術師全員が同様の部屋を持ち、研究を最優先とした生活を送っていることに、涼は感心していた。「研究に戻る」という言葉からも、研究が日常の中心であることを強く感じ取っていた。
ゲストルームの提供
ケネスは涼に専用のゲストルームを提供した。これにより涼は仮眠室ではなく、快適な環境でゴーレム研究に集中できることとなった。涼は歓喜しながら、その充実した一週間を迎えた。
王太子とアベルの議論
王国の危機と戦争の兆候
王太子はアベルに帝国との戦争の可能性について語った。王都騒乱の影響で王国騎士団が弱体化し、北部貴族の動向も不穏であると説明した。さらに、王国が大敗する可能性を示唆し、アベルに未来の王として情報収集や分析を求めた。
内務省への警戒
王太子は内務省に注意を払うようアベルに伝えた。内務卿ハロルド・ロレンス伯爵やその周囲が帝国と関与している可能性を示唆し、特にゴンゴラド商会の取り締まりに関する過去の出来事もその一端であると指摘した。
国王と王太子の覚悟
王太子は、自身と現国王の死を既定の事実として受け止めていた。その上で、アベルに国王としての覚悟と法律改正の必要性を語った。アベルは重責を痛感しつつも、その要請を受け入れた。
使節団出発前の準備
再会と疲労
アベルは使節団出発の前夜、錬金工房で涼と合流した。王太子の集中講義による疲労が顔に出ていたが、一晩の休息で回復した。涼も準備を整え、二人は新たな旅に備えた。
偶然の再会と緊張感
集合場所でアベルと涼は、王国騎士団員のザックとスコッティーと再会した。だが、ザックは涼に対して敵意を抱いていた。その原因は王都騒乱時のエルフ自治庁での出来事にあったが、涼はその理由を知らず首を傾げるばかりであった。
使節団の出発
構成と目的
外務省交渉官を筆頭に、文官や冒険者、騎士団、護衛冒険者を含む総勢82名の使節団が結成された。涼とアベルもこの一行に加わり、王都を後にした。それぞれの目的と緊張感を抱えながら、旅路が始まったのであった。
王国使節団
使節団の旅路
ゆっくりとした進行
使節団は、文官と涼、アベルのA級パーティーが馬車、騎士団が騎馬、他が徒歩で移動したため、速度はゆっくりであった。旅程は王都から南部のアクレを経て、最終目的地であるトワイライトランドまでの片道1カ月であった。初日はデオファム、以降は街で宿泊し、文官への配慮から野営は計画されていなかった。
アベルの宿題と涼の回顧
旅の中で、涼はデオファムを訪れた過去を語り、斬られた左腕の思い出まで笑顔で振り返った。一方、アベルは王太子から課された宿題の山に苦しんでいた。その内容は現実に起きた事件を基にした政治的なケーススタディで、アベルをさらに疲弊させていた。
デオファムでの会食
交渉官との対面
宿に到着した涼は、交渉官イグニスとの夕食会に不安を抱いていたが、実際に対面したイグニスは親しみやすい人物であった。気さくな態度と美味しい料理で、涼は次第にリラックスし、楽しいひとときを過ごした。
ホープ侯爵家の背景
イグニスの家柄についても語られ、ホープ侯爵家が政治から距離を置きつつ、領地経営に優れていることが明らかになった。アベルもホープ侯爵領の状況を学んでおり、その知識を涼に披露した。
アクレ到着と暗殺教団の動向
豪華な宿泊施設
南部最大の都市アクレに到着した使節団は、領主館に隣接する高級旅館に宿泊した。豪華な設備に涼は感動し、特に露天風呂付きの客室に大いに満足していた。一方、冒険者たちとの食堂での交流では、女性冒険者たちから「かわいい」と言われ困惑する場面もあった。
フェルプスからの警告
夜遅く、涼はフェルプスと再会した。フェルプスは暗殺教団が再び活動を始め、使節団を狙っている可能性があると警告した。アベルの身分についても確認があり、涼は第二王子であることをようやく認めた。
旅の続行と警戒
本格的な警戒態勢
アクレを出発した使節団は、次の目的地バードン・ブレインに向かった。森が多い地域に入るため、ここからが旅の本番となると涼とアベルは認識した。フェルプスからの警告を受け、アベルも慎重に行動していた。
ハインライン侯爵の防諜機能
アベルは、ハインライン侯爵領が王国屈指の防諜能力を持つ背景を説明した。侯爵の父アレクシスが、諜報活動を重視していたことが理由であり、彼の指導のもとでフェルプスもその技術を受け継いでいた。
王家の象徴的意義
涼の考察
移動中、涼は王家の存在について独自の見解を語った。王家は国民をまとめる象徴としての役割を果たし、その存在が国家運営において重要であると説明した。アベルはその話に興味を持ちつつも、自分がその象徴となることへの疑問を抱いていた。
涼の発明と旅の快適化
水属性魔法を駆使して、涼は旅の途中でも淹れたてのコーヒーを飲める環境を整えていた。その工夫にアベルは感心し、旅の疲れを癒していた。
ハインライン侯爵の憂慮と警戒
執務室での親子の会話
ハインライン侯爵アレクシスは、執務室で書類整理を進めていた。息子フェルプスから、使節団がアクレを発ったとの報告を受け、彼は水属性魔法使いである涼の存在について言及した。アレクシスは涼の能力を評価しつつ、その力の危険性に懸念を抱いていた。暗殺教団の村を壊滅させた涼の過去が、彼の心を揺るがしていたのである。
トワイライトランドの内戦の兆し
フェルプスがもたらした情報によれば、トワイライトランドでは内戦の可能性が高まっていた。コントレーラス伯爵とエスピエル侯爵という二人の大貴族が対立しており、政府がその動きを把握していないという奇妙な状況が浮上した。さらに、今回の使節団派遣がコントレーラス伯爵によるものであることが判明し、アレクシスは使節団が内戦に巻き込まれる可能性を危惧した。
王国東部の混乱と帝国の影
シュールズベリー公爵の死と混乱の拡大
王国東部ではシュールズベリー公爵コンラッドの死をきっかけに混乱が広がっていた。地方領主の死や治安の悪化により、事態は日に日に悪化していたが、黒幕の正体は掴めていなかった。アレクシスとフェルプスは、その背景に帝国が関与している可能性を疑った。
北部の謎とフリットウィック公爵
アレクシスは王国北部に潜む未解明の問題にも触れ、フリットウィック公爵が関わる可能性を示唆した。彼らは、目立つ行動を取ることで相手の反応を引き出し、真相に迫る手段を取るべきだと結論付けた。
使節団への襲撃と涼の活躍
連日の魔物の襲撃
使節団がアクレを発って以降、魔物の襲撃が続いた。冒険者と騎士団の連携により対応は順調であったが、魔物が一定の周期で現れることから、背後に人為的な意図があるとアベルは推測した。ショーケンはアベルと涼に意見を求め、涼の〈パッシブソナー〉による警戒が新たな対策として採用された。
ワイバーンの襲来
トワイライトランド国境近くで涼の魔法が巨大な魔物を感知した。それはワイバーンであり、涼の〈アイシクルランス〉によって撃墜された。槍隊の冒険者たちは難航しつつもワイバーンを討伐し、大きな犠牲なく脅威を排除した。
トワイライトランドへの到達
国境を越えての新たな地
使節団は王国からトワイライトランドへ無事に入国した。涼はその地名から黄昏時を連想していたが、実際には普通の明るい空が広がっており、拍子抜けしていた。異なる文化や環境への期待が高まりつつ、彼らは新たな冒険へと足を踏み入れた。
暗殺教団の襲撃計画
ナターリアの指揮
暗殺教団の幹部ナターリアは、手練れの暗殺者三十人を率いて使節団を襲撃する計画を立てていた。ワイバーンの撃退後、疲労を狙った奇襲を命じ、教団の勝利を「黒」に捧げることを誓った。
使節団の防衛体制
ワイバーン討伐後の休憩
使節団はワイバーンを討伐後、冒険者たちは魔石の回収、文官は休憩を取っていた。騎士団のザックとスコッティーは、アベルに状況説明を求めるが、彼は涼の力を隠すため、詳細を語らなかった。その間に涼が襲撃者の接近を察知し、即座に対応が開始された。
迎撃準備
涼の警告により、使節団は迅速に陣形を構築した。冒険者と騎士団が連携し、盾壁や魔法使いによる砲撃体制を整えた。この協力体制は、日頃の努力と高い技量の賜物であった。
暗殺教団の襲撃
白煙戦術の無効化
襲撃者は矢に付けた白煙を使い、混乱を引き起こそうとした。しかし、涼の魔法〈スコール〉と〈氷結〉により、白煙は雨で洗い流され、矢の機能も凍結した。これにより、暗殺教団の戦術は無効化された。
遠距離攻撃による削減
従士たちの弓や冒険者たちの魔法により、暗殺者三十人中十人が戦闘不能に陥った。この想定外の損害により、教団の士気は大きく揺らいだ。
近接戦の開始
暗殺者たちは残りの戦力で突撃を敢行したが、冒険者や騎士団の連携により次々と倒されていった。風属性魔法〈風圧〉を利用した攻撃で暗殺者の動きを封じ、近接戦へと移行する中、使節団側は傷を負いながらも迅速な回復で戦線を維持した。
ナターリアの敗北と捕縛
暗殺教団の壊滅
教団の幹部ナターリアは最後の手段として石の槍を放ったが、涼の魔法障壁により阻まれた。その後、涼によって完全に氷漬けにされ、捕縛された。他の暗殺者たちも次々と制圧され、教団の襲撃は失敗に終わった。
捕虜の尋問
捕虜となった暗殺者たちはアベルによる尋問を受けた。彼は暗殺教団の詳細な情報を把握しており、幹部ナターリアが教団首領を裏切ったことも明らかにした。この情報により、捕虜たちの心理は揺さぶられた。
闇属性魔法使いロザリア
仲間割れの発生
尋問の中で、捕虜の一人ロザリアが闇属性の魔法使いであることが判明した。その直後、他の捕虜が彼女を口封じしようとしたが、涼の〈アイスウォール〉により防がれた。この出来事でロザリアは教団を見限り、使節団側につく決断を下した。
ミューの出自
暗殺の標的
涼は、暗殺教団が狙っていた冒険者ミューと会話し、彼女が狙われた理由を尋ねた。ミューは自身の祖父がトワイライトランドの現大公サイラスであることを明かした。この事実により、暗殺教団の目的の一端が浮き彫りとなった。
ミューの出自と暗殺教団の狙い
ミューの背景
ミューはトワイライトランドの大公サイラスの孫であり、王国侯爵の娘であった。ただし、トワイライトランドでは直系男子以外に公位継承権が認められないため、彼女自身に継承権はなかった。それでも、彼女の存在は王国とランドの関係を象徴し、暗殺教団の襲撃理由となり得る要素を持っていた。ミューは護衛選抜時に出自を上層部に明かし、それをリスクとして伝えていたが、上層部はそれを許容し、彼女を任命していた。
リーダーたちの情報共有
涼はミューから情報を聞き出し、リーダー会議が終了したアベルと情報交換を行った。暗殺教団の狙いはミューの暗殺であり、彼らはトワイライトランドの反乱分子の依頼を受けて動いていた。捕虜となった暗殺者たちはランドに引き渡されることが決定されていたが、涼とアベルは彼らを尋問する必要性を感じていた。
ナターリアへの尋問
氷漬けの幹部との交渉
涼はナターリアを部分的に氷解させ、尋問を行った。彼女は初めは抵抗を見せたが、涼の力に恐れを抱き、最終的に協力する意志を示した。ナターリアは、襲撃を指示したのがランドの反乱分子であり、特定の貴族たちが計画に関与していたことを明かした。また、暗殺対象がミューであることを確認し、その他の冒険者と騎士を壊滅させる指令も受けていたと語った。
情報の収集と交渉の終了
涼は暗殺教団に対し、自身から攻撃を仕掛けないことを約束し、ナターリアから詳細な情報を引き出した。その内容をもとに、使節団は反乱分子の動きに備える必要性を再確認した。
カルナック到着と新たな展開
街への到着
使節団はカルナックの街に到着し、全員が宿泊施設に泊まることができた。捕虜となった暗殺者たちは厳重な監視下に置かれ、ナターリアも引き続き氷漬けの状態で保管された。一方、ランドに協力の意思を示したロザリアは監視付きで部屋に泊まることを許された。
忍者からの書状
その夜、涼は忍者のような人物から、フェルプスが送った書状を受け取った。書状にはトワイライトランドでの内戦の可能性が記されており、政府側コントレーラス伯爵と反政府側エスピエル侯爵が中心人物であることが記されていた。涼は翌朝、この情報をアベルや使節団全体と共有した。
内戦の可能性と対策の議論
内戦への懸念
涼とアベルは、トワイライトランドでの内戦の可能性について議論を深めた。涼は反乱分子が外交使節団を利用する可能性を指摘し、アベルもその見解に同意した。彼らは使節団の立場が微妙であり、内戦に巻き込まれるリスクが高いことを認識していた。
戦略的な準備
アベルは涼からの情報をもとに、使節団全体が内戦に備えた対策を議論する必要性を感じていた。涼はミューの出自や暗殺教団の動き、反乱分子の狙いを背景に、これからの展開に備えた行動を進言した。
テーベにて
カルナックから首都テーベへの到着
歓迎される使節団
捕虜の引き渡しを終えた使節団はカルナックを発ち、五日後にトワイライトランドの首都テーベに到着した。到着時には、大勢の市民が両国の小旗を振り、使節団を歓迎した。涼とアベルはその光景に感動しつつも、それぞれ異なる思いを抱いていた。涼は地球で見たような光景を思い出し、アベルは他国からの使節団がこれほどまでに歓迎されることに驚いていた。
大公との謁見
到着後、使節団はすぐにトワイライトランド大公との謁見に臨んだ。使節団の代表であるイグニス交渉官が主にやり取りを行い、アベルと涼は謁見中、大公の言葉を静かに聞くだけであった。涼は、大公がミューの祖父であるにもかかわらず、彼女に似ていないと感じていた。
迎賓館での安息
謁見を終えた使節団は、公城内の迎賓館に案内された。この迎賓館はランド滞在中の宿泊施設として提供され、大浴場も備えられていた。涼は大浴場に感動し、その存在を絶賛した。一方、アベルは涼の風呂への情熱を半ば呆れながら受け止めていた。
謎の書斎と報告
主の指示
その頃、公城内の一角にある「書斎」と呼ばれる場所では、膨大な書物の中で主が報告を受けていた。使節団の到着と、六日後に首都テーベ全域で行われる「シヴィルウォー」という戦いの計画が報告されていた。主は王国の使節団メンバーの詳細情報を求め、それを文書で届けるよう指示した。
冒険者ギルドでの模擬戦と会合
冒険者ギルドでの仕事
翌日から、イグニス交渉官と文官たちは本格的な会議に臨んだ。一方でアベルと涼は、冒険者ギルド本部での会合に参加した。アベルは、現地の冒険者たちと模擬戦を行いながら指導を行い、涼は魔法使いとしての経験を語り、多くの質問に答えていた。模擬戦では、冒険者たちが積極的に体を動かし、議論よりも実践的な学びを得ていた。
模擬戦の成果
模擬戦を終えたアベルと涼は、迎賓館への帰路で模擬戦の内容を振り返った。涼は冒険者たちの荒々しさに驚いていたが、アベルはそれが冒険者の特性であると語った。また、アベルは涼が戦闘中に笑顔を浮かべることを指摘し、それがおとなしい性格とは言えないと断言した。
公城正門前の出会い
謎の一団との接触
迎賓館に戻る途中、アベルと涼の乗った馬車が公城正門前で一団に呼び止められた。その一団は、冒険者ギルド所属の「五連山」というB級パーティーであり、リーダーである剣士セフェリノがアベルに模擬戦を申し込んだ。
アベルとセフェリノの模擬戦
模擬戦は正門前の広場で行われた。アベルの赤い魔剣とセフェリノの家伝の剣が激しく交錯し、両者はほぼ互角の戦いを繰り広げた。最終的に、アベルが一撃でセフェリノの動きを止め、模擬戦は終了した。セフェリノはアベルから多くを学んだことを感謝し、再戦を申し出た。
迎賓館での会話
善意と後輩
迎賓館に戻ったアベルと涼は、模擬戦や冒険者たちの熱意について語り合った。アベルは後輩に頼られると断れない性格であると自認し、それを涼にも指摘した。涼はその性格に善意があると称賛しつつも、ややずる賢くアベルに奢らせようとしたが、アベルは迎賓館の無料の食事を奢ると冗談を返して応じなかった。二人のやり取りは軽妙であり、互いの信頼が垣間見えた。
大公騎士団での講演と模擬戦
講演から模擬戦へ
涼とアベルは、大公騎士団での講演に臨んだが、途中から模擬戦が中心となった。騎士団も冒険者と同様に、座学よりも体を動かすことに適していたためである。その夕方、アベルと剣士セフェリノの模擬戦が再び公城前広場で行われた。
涼と『五連山』の情報交換
模擬戦中、涼はセフェリノの仲間である『五連山』のメンバーとお茶会を開いていた。風属性魔法使いイラーナ、神官ニエベス、斥候プリモ、盾使いレオンシオの四人と自己紹介や冒険者の国・王国との違いについて語り合った。特にトワイライトランドでは貴族が公に現れず、執事や家令を通じて依頼を行うことに涼は驚いていた。また、貴族が中央政府の役職に就かず、特権的な存在として隔絶されている状況も共有された。
模擬戦の終了とセフェリノの挑戦
模擬戦の成果
模擬戦が終了し、セフェリノはアベルとの差を実感しつつも、再挑戦を誓った。アベルはセフェリノの剣筋を把握したことで戦いやすくなったと説明したが、その言葉にセフェリノは悔しさを見せつつも努力を続ける決意を示した。
アベルの感想と次回の模擬戦
アベルはセフェリノとの模擬戦を通じて自身も成長していると語った。彼の剣は独特であり、アベルにとっても有益な発見が多かったためである。翌日も模擬戦を行う予定が組まれたが、翌々日は晩餐会があるため実施できないことを涼が助言し、アベルがセフェリノにその旨を伝えた。
晩餐会での出会い
貴族と冒険者の邂逅
晩餐会ではトワイライトランドの貴族や政府高官が出席し、華やかな場となった。涼は食事を楽しみながらその様子を観察していたが、食事中にアグネスという絶世の美女の貴族から話しかけられた。彼女はアルバ公爵であり、涼を館に招待し、ラーメンを振る舞いたいと申し出た。この申し出に涼は驚きながらも喜び、快く応じた。
アルバ公爵の招待状
文官たちの驚き
晩餐会の翌日、迎賓館に戻った涼はアルバ公爵からの正式な招待状を受け取った。文官たちは涼がアルバ公爵と知り合いであることに驚き、その背景を問いただした。アルバ公爵が美しい女性であり、強力な水属性の魔法使いであるという話に、文官たちは涼との繋がりに納得していたが、実際には晩餐会での偶然の出会いがきっかけであった。
アベルのぼやき
アベルは晩餐会で自分に仕事を押し付け、涼が料理を楽しんでいたことをぼやいたが、その声は誰にも届かなかった。
シヴィルウォー
ラーメンへの期待と不安
朝の興奮とアベルの忠告
涼は朝からラーメンを食べることに浮かれていた。「ついに我が野望がかなう」と喜ぶ涼に対し、アベルは「涼の期待するラーメンと同じものか分からない」と忠告した。その言葉に涼は凍りつき、ラーメンが違う可能性に衝撃を受けたが、最終的には気を取り直し、予定通りアルバ公爵邸へ向かった。
ランド貴族の模擬戦見学
模擬戦場での観覧
アベルはランド貴族が主催する模擬戦を見学するため郊外へ向かった。四つの騎士団が整列し、主催者のリージョ伯ロベルトがアベルを迎えた。アベルは模擬戦の進行を見守る中、騎士団の規模や若い貴族たちの活気に興味を持った。
アルバ公爵邸でのラーメン体験
豪華な迎賓と期待の料理
アルバ公爵邸に到着した涼は、豪勢な屋敷と完璧に揃った執事・侍女たちの所作に圧倒された。その後案内された広大な食堂で、涼はアグネス公爵と再会。彼女に招かれ、とんこつラーメンが供される。涼は久しぶりのラーメンを存分に味わい、箸の存在にも感動しながら美味を堪能した。
アグネスとの和やかな時間
ラーメンを食べ終えた涼はアグネスの優雅な食事姿に見惚れるほど満足していた。おかわりを勧められ、即座に応じる涼に、アグネスも微笑みを浮かべていた。
大公応接室での騒乱
ミューたちの危機
同じ頃、大公サイラスの応接室では突如として武装した兵たちが現れた。彼らを率いるマギージャ伯爵はサイラスを国家反逆罪で拘束すると宣言した。ミューとそのパーティー『ワルキューレ』はサイラスを守ろうとしたが、サイラスは抵抗をせず拘束を受け入れた。エスピエル侯爵が現れ、ランドの実権が彼らにあることが明らかとなった。
アベルの模擬戦中の包囲
不穏な模擬戦の終了
模擬戦が突然終了し、アベルはリージョ伯に誘導され騎士団の中心に連れて行かれた。そこで彼は包囲され、降伏を要求された。ロベルトはサイラスの拘束と使節団の捕縛を告げ、ミューたちも処刑されると宣言した。
ロベルトとの対峙
アベルは怒りに駆られ、瞬時に剣を抜きロベルトの首を刎ねた。その後も騎士たちを次々と倒したが、倒れたロベルトが動き出し、自身がヴァンパイアであることを明かす。アベルはヴァンパイアに囲まれた状況に直面し、深い苦悩を抱えながら戦うこととなった。
ラーメンの秘密とアグネスの思惑
ラーメンと異世界の謎
涼はアルバ公爵邸でラーメンを食べた後、その麺の存在に疑問を抱いた。異世界でラーメンが再現されることは少なく、特に「かんすい」という化学成分が必要な麺の製造は困難であるからだ。その疑問をアグネスにぶつけると、ラーメンのレシピは「シンソ」という人物が考案したものだと告げられた。アグネスはシンソを称賛し、彼への好意を隠しきれない様子であった。
突然の内戦の予感
アグネスのもとに届けられた一通の紙が、事態を一変させた。その内容を確認したアグネスは涼に「屋敷に留まるよう」求めたが、涼はその背景に内戦の勃発を察知した。アグネスが示唆した通り、外に出るならば命の保証はないと告げられたが、涼は仲間を救うために外へ出る決意を固めた。
魔法無効化空間とアグネスの本音
魔法無効空間の発動
涼の決意を受け、アグネスは「魔法無効化空間」を発動した。この特殊な空間はシンソが設計した特別なもので、涼はそれを即座に見抜いた。アグネスは涼の魔法の才能を認めつつも、魔法無効化の中でヴァンパイア屈指の剣士グリフィン卿を相手にする涼の不利を指摘した。
アグネスの悲しき役割
アグネスは涼を屋敷に留めるため、命を奪う覚悟でいることを告げた。その表情には本心では望んでいない苦悩が滲んでいた。彼女はヴァンパイアとしての立場と役割に従いながらも、涼への好意を完全に断ち切ることができなかった。
涼とグリフィン卿の剣戟
互角の戦い
涼は魔法無効化の中で剣を手に取り、グリフィン卿との激闘を繰り広げた。速さ、力ともにグリフィン卿が上回る中、涼は卓越した技術と粘り強さで応戦し続けた。アグネスはその戦いを見守り、涼の剣術が尋常でない才能によるものと認識した。
グリフィン卿の驚愕
グリフィン卿もまた、目の前の敵がただの魔法使いではないことに気づいていた。剣技においても卓越した才能を見せる涼に対し、決着がつかない状況が続き、戦いはさらに激化した。
模擬戦場での危機と真祖の登場
アベルの絶体絶命
一方、模擬戦場ではアベルがヴァンパイアたちに追い詰められ、首を刎ねられる寸前であった。その時、突如として現れた「真祖」が場を制止した。真祖はアベルに興味を示し、彼が発した言葉に反応を見せた。
涼の存在と真祖の決定
アベルが涼の存在を伝えると、真祖は大いに興味を抱き、アベルの命を救うことを決めた。さらに、真祖はランドの内戦を「ゲーム」と断じ、アベルに力を示すよう促した。アベルは仲間を救うため、第三勢力として参戦することを決意した。
アベルの決意と新たな局面
内戦への参戦表明
真祖はアベルの覚悟を認め、ランド内戦において彼が新たな勢力として立ち向かうことを許可した。そして、ランド内戦の首謀者たちに対し、アベルとその仲間が第三勢力として動くことを宣言するよう指示を下した。こうして、涼やアベルを中心とした新たな局面が幕を開けることとなった。
真祖との会話とヴァンパイアの事情
真祖の目的と立場
アベルは真祖と共に馬車に乗り、今回の戦いの目的について話し合っていた。真祖は案内役として戦いには参加しないと明言し、人間自身が力を示さなければ意味がないと語った。また、ランドの貴族たちは全員ヴァンパイアであり、大公家だけが例外であることを告げた。
特別な武器の準備
馬車が館に到着すると、真祖は執事に「スタンリング」という道具を準備させた。スタンリングはヴァンパイアを麻痺状態にする錬金道具で、模擬戦や今回のような戦いで使用されるものだった。さらに、真祖はアベルの剣に興味を示し、リチャードが作りそうな剣だと独り言を漏らした。
真祖の地位とアベルへの協力
真祖の影響力
館での準備中、アベルは真祖の地位について質問した。真祖は公的な地位や爵位を持たずとも、ヴァンパイアの中で高い地位を持つゆえに敬意を受けていると説明した。また、真祖がアベルに協力する理由として涼への興味を挙げ、リョウとの対話を望んでいると告げた。
アベルの正体への言及
真祖はアベルが王国の第二王子アルバートであることを指摘したが、アベルはそれに答えることを拒否した。真祖はその拒否を受け入れつつも、アベルが持つ影響力を認識している様子だった。
仲間集めとギルドの動き
冒険者への協力依頼
冒険者ギルドに近づいたアベルは、知り合いの冒険者セフェリノ率いる『五連山』に協力を求めた。セフェリノは即座に承諾し、ギルド内で追加の仲間を集めると約束した。また、真祖はギルドマスターとの関係を証明するため、自身の指輪をセフェリノに託した。
作戦の策定
真祖とアベルは作戦を練り、敵陣の本拠地を狙うことで戦力を分散させ、仲間の救出を目指すことを決めた。真祖はランド貴族たちの戦いが「遊び」であると断じ、勝利条件として「大将首」と「本拠地の奪取」を挙げた。
コントレーラス伯爵の屋敷襲撃
屋敷への侵入
アベルと『五連山』はコントレーラス伯爵の屋敷に侵入し、敵の警備を突破して三階に向かった。魔法使いの支援を受けながら、効率的に敵を制圧していった。
ヴァンパイアとの対峙
アベルは三階でヴァンパイアの執事長シリノと対峙し、一合で首を斬り飛ばして勝利した。スタンリングを用いたことでヴァンパイアを消滅させず、気絶状態で拘束することに成功した。
真祖の尋問と新たな情報
執事長からの情報
目を覚ましたシリノは真祖の威圧に屈し、コントレーラス伯爵が魔物を使って公城を襲撃する準備を進めていることを明かした。この計画は、捕らえた闇属性魔法使いを利用して実現されるものであった。
真祖の評価と次なる動き
真祖は伯爵の計画を「悪手」と評しつつ、事態の進行に興味を示した。アベルは仲間を救出するため、さらに具体的な行動を進める覚悟を固めていた。
コントレーラス伯爵邸の炎上とビセンテの動揺
伯爵邸炎上の報告
エスピエル侯爵ビセンテは、コントレーラス伯爵邸がアベルたちによって落とされ、炎上しているとの報告を受けた。不機嫌そうに対応しつつ、人間に屋敷を奪われた事実をヴァンパイアの恥と断じた。そして、自身の侯爵邸が次の標的になる可能性を懸念し、公城の守備を減らしてでも侯爵邸の防衛を優先する命令を下した。
人間への敵意
ビセンテは人間がヴァンパイアの戦いに介入することを「場を汚す行為」と激しく非難した。しかし、事態を冷静に受け入れざるを得ない状況に苛立ちを募らせていた。
迎賓館の制圧と真祖の計画
地下貯蔵庫からの潜入
アベル、真祖、『五連山』の一行は迎賓館の地下貯蔵庫を通じて内部へ潜入した。この貯蔵庫は、かつての建設時に脱出路として作られたもので、長期間放置されていた。潜入後、守備が手薄になった迎賓館内で守備兵を迅速に制圧した。
食堂での激戦
迎賓館の食堂では、指揮官クラスの守備兵が双剣技を用いてアベルに挑んだ。激しい剣戟の末、アベルは指揮官を討ち取ったが、両肩に傷を負った。援軍として駆けつけた冒険者たちにより、迎賓館は完全に制圧され、軟禁されていた文官や騎士団が解放された。
貴族の兵士の実力
真祖はトワイライトランドの兵士が全員剣技を使用できる事実を明かした。この情報にアベルと冒険者たちは驚愕したが、それでも迎賓館の制圧は成功に終わった。
公城への侵入と大公との再会
魔物の襲撃を利用
コントレーラス伯爵の策略で公城に魔物が送り込まれるが、アベルたちはこれを逆手に取り、公城守備が手薄になる間隙を突いて正面から侵入した。真祖の圧倒的な存在感によって守備兵は抵抗できず、アベルたちは大公応接室に到達した。
大公サイラスの服従
応接室で真祖を見た大公サイラスは、彼に片膝をつき礼を示した。この光景に居合わせた者たちは、真祖の異常な権威を肌で感じた。真祖はエスピエル侯爵ビセンテに対して、迎賓館が制圧された事実を告げ、王国使節団を迎賓館へ戻すことを命じた。
ビセンテとの一騎打ちと真祖の裁定
ビセンテの敗北
真祖の言葉に激昂したビセンテはアベルに一騎打ちを挑んだ。しかし、冷静なアベルの剣技により、一合で喉元に剣を突きつけられ敗北した。怒りに支配されたビセンテは敗北を認めず、アベルに不正を疑う言葉を投げかけた。
真祖の断罪
見苦しい振る舞いを見せたビセンテに対し、真祖は剣を振るい首を斬り飛ばした。さらに、彼の身体を灰にして消滅させた。この一連の行動は、真祖が持つ力の恐ろしさと、その判断の冷徹さを明確に示した。
公城の守備と次なる行動
兵士への指示
ビセンテの消滅後、真祖はその兵士たちにサイラスの指示に従うよう命じた。これにより、公城の守備体制は整えられた。サイラスは真祖の決定に深く感謝した。
正門での戦闘準備
アベルと『五連山』の面々は、魔物の襲撃が続く正門での戦闘を終わらせるため、行動を再開した。真祖の提案を受け入れ、彼らは次の局面に向けて準備を整えていった。
魔物の消滅とコントレーラス伯爵の敗北
魔物の殲滅
公城正門前では、コントレーラス伯爵サンダリオが魔物を使役し、守備兵たちを攻撃していた。しかし、突如〈光芒〉の魔法により、魔物たちはすべて消滅した。サンダリオと副官モレラス子爵は状況を理解できず困惑したが、そこに現れた真祖が「ゲームの終わり」を宣言した。
サンダリオの敗北受諾
真祖はアベルがコントレーラス伯爵邸を落とし、大公サイラスを奪還したことを告げた。さらにエスピエル侯爵ビセンテがアベルとの一騎打ちに敗北し、真祖によって消滅させられたことを伝えた。サンダリオは真祖の圧倒的な威圧感を前に敗北を認め、兵を引き揚げると宣言した。これにより、テーベの騒乱は終息に向かった。
涼とアルバ公爵邸での剣戟
グリフィン卿との激戦
アルバ公爵邸の食堂では、涼がグリフィン卿との剣戟を繰り広げていた。グリフィン卿はスピードとパワーで涼を圧倒していたが、涼は徹底した「受け」の剣術で耐え続けた。彼の技術は、これまで培ってきた経験と持久力に支えられており、徐々にグリフィン卿のスタミナを削っていった。
勝負の決着
グリフィン卿の疲労が見え始めた瞬間、涼は隙を突いて反撃に転じた。村雨の一撃でグリフィン卿の左肩を斬り裂き、喉を貫くことで勝利を収めた。これは技術と持久力が生み出した結果であり、涼の冷静さと耐久力が勝敗を分けた。
アルバ公爵アグネスの提案
魔法無効化の解除
戦いの後、アグネスは指を鳴らして涼にかけられていた魔法無効化を解除した。そして、グリフィン卿の手当てと馬車の準備を命じた。
迎賓館への同行
アグネスは公都内での移動制限を考慮し、涼を迎賓館へ送り届けるため同行を提案した。涼はその申し出を受け入れ、感謝を述べた。こうして涼は、公都内の制約を越えて安全に迎賓館に戻ることができる状況が整えられた。
二人目の
王国の反乱の兆候と『白の旅団』の派遣
ハインライン侯爵領の依頼
ハインライン侯爵家当主アレクシスは、フィンレー・フォーサイス伯爵からの特別な依頼を受けた。内容は、王国北部フリットウィック公爵領都カーライルへの『白の旅団』派遣であった。団長フェルプスは、反乱の可能性が高いと判断し、副長シェナと団員4名を派遣することを決定した。神官ギデオンは反乱の証拠を集めるよう指示されたが、命を優先するよう念押しされた。
派遣メンバーの出発
双剣士ブレア、魔法使いワイアット、神官ギデオン、斥候ロレンツォが派遣メンバーに選ばれた。フェルプスは彼らに反乱の全容を探る任務を託し、慎重に行動するよう求めた。派遣された『白の旅団』は、北部での任務を遂行するため出発した。
ハンダルー諸国連合の懸念と帝国の策謀
難民問題と王国東部の治安悪化
ハンダルー諸国連合執政オーブリー卿は、王国東部の治安悪化がインベリー難民の帰還を妨げていることに頭を悩ませていた。王国への難民受け入れは、景気向上どころか統治の混乱を招いており、帝国が王国東部の混乱を意図的に煽っている可能性が指摘された。
皇帝の狙いと王国の動向
オーブリー卿は、王国の混乱を利用して帝国が王国侵攻を狙っている可能性を考慮した。しかし、王国北部の貴族たちは強力な軍事力を保持しており、帝国内の貴族間の派閥抗争も一因として皇帝の計画に影響を与える要因と考えられた。現時点での連合の対応策は、万が一の侵攻に備えて軍の配置を見直すことであった。
ハンダルー連合の軍事準備
軍の再配置
オーブリー卿は、斥候隊長オドアケルの軍と第三独立部隊を西部国境に配置するよう指示した。修復が進んでいるレッドナルを拠点に、即座に対応できる態勢を整える命令が下された。これにより、中央諸国全体が徐々に緊張状態に入りつつあった。
間章 クルコヴァ侯爵領
クルコヴァ侯爵領の概要と訪問者の到着
領地の特色と研究機関
クルコヴァ侯爵領は、デブヒ帝国東部に位置し、工業、農業、学術、芸術の分野で発展していた。学術都市を擁し、帝国内外から優秀な研究者が集まり、機密性の高い研究も進められていた。領地の潤沢な資金は、研究を支え、十数年に渡る好循環を生んでいた。
フィオナとオスカーの訪問
フィオナ皇女とその護衛であるオスカーが侯爵夫人マリアを訪問した。フィオナは、皇帝の指示で新たな発明を確認するために派遣され、マリアの温かい歓迎を受けた。オスカーもまた、旧知のマリアとの再会に心を和ませていた。
老師との再会と治癒師の教え
モーリッツとの再会
マリアの招きで現れたのは、かつての冒険者ギルドマスター、モーリッツ・バッハマンであった。オスカーの復讐心に満ちた若き日々を知るモーリッツは、彼の変化を歓迎し、その変化がフィオナによるものであることを見抜いた。彼らは和やかなお茶会を楽しみ、モーリッツは治癒師としての信頼関係の重要性を語った。
信頼関係と人間性
モーリッツの教えに基づき、人間関係は言葉の慎重な選択によって築かれるとオスカーは再認識した。モーリッツの治癒師としての経験と教訓が、場の雰囲気を和ませ、オスカーに深い影響を与えた。
間諜の摘発と復讐の終焉
賊の捕縛
クルコヴァ侯爵領で発生した火事と騒動は、間諜の活動によるものであった。オスカーとフィオナは賊を見事に制圧し、間諜の狙いが領地の機密情報にあると確認された。捕らえられた賊の中に、かつてオスカーが仇としたボスコナが含まれていた。
復讐心の終焉
磔にされたボスコナを前にしても、オスカーの心は平静を保っていた。過去の復讐心は完全に消え去り、彼はフィオナへの忠誠心を改めて胸に誓った。この変化は、フィオナとの信頼関係によりもたらされたものであった。
空中戦艦の秘密と未来
空中戦艦の開発
フィオナとオスカーは、侯爵領で建造された空中戦艦を目にした。その中でも「マルクドルフ級三番艦クルコヴァ」が紹介され、湖を基点とした試験航行が行われた。空中戦艦は、帝国錬金協会が30年にわたり研究を重ね、独自の浮遊機関を開発して完成させたものであった。
未来への展望
マリアは、空中戦艦が帝国の新たな交通と軍事の基盤となる可能性を語った。フィオナはその未来像に胸を膨らませ、オスカーもまた、穏やかにその姿を見守った。三人は、帝国の空に広がる新たな可能性を感じ取りながら、その場を後にした。
前哨戦
ルン辺境伯領主館の客人
ケネスの訪問と手紙
ルン辺境伯領主館の離れには、ケネス・ヘイワード男爵が滞在していた。彼は王都からの依頼で訪れており、そこで父からの手紙を受け取った。その内容は荘園付近にワイバーンが現れたというものであり、放置できない事態であった。彼は即座に行動を開始した。
『黄金の波亭』での相談
アベルとの相談
ケネスはルンの街にある『黄金の波亭』で、A級冒険者アベルと面会した。手紙を見せたケネスに、アベルはワイバーン討伐が必要だと判断した。討伐隊の編成が困難であることを理解したアベルは、解決策を考え始めた。
涼との出会いと提案
涼の協力要請
アベルは、ワイバーン討伐に最適な協力者として、涼を訪ねた。涼はその提案を快く受け入れ、自らが討伐に加わることを宣言した。涼の提案を受け入れたケネスは、二人に全幅の信頼を寄せた。
モッチュウモチ村への到着
村の歓迎と調査開始
ケネスの荘園であるモッチュウモチ村に到着したアベルと涼は、荘園領主代理の両親に歓迎された。二人は、村の状況やワイバーンの特徴について話を聞き、翌日にはワイバーンが目撃された場所へ向かう計画を立てた。
ワイバーンの討伐
成竜ワイバーンとの対峙
二人はワイバーンを発見し、涼が魔法を駆使して撃退した。〈アイシクルランス〉などの魔法を用い、ワイバーンの羽を貫き地面に縫い付け、首を落とすという圧倒的な戦術で討伐を成功させた。
アベルの役割と疑問
涼の魔法による圧倒的な活躍により、アベルの活躍の場がなかったことが話題となった。アベルは討伐証拠であるワイバーンの頭を運ぶ役目を引き受けたが、不満げな様子であった。
甘い香りの追跡
香りの正体と疑念
討伐現場で甘い香りが漂っていることに気づいたアベルと涼は、その正体がワイバーンを引き寄せる成分である可能性を見出した。その香りは、帝国北部特産の「バナバナ」の花びらから作られるもので、誰かが意図的に仕掛けた可能性が高かった。
さらなる調査の決意
涼の〈アクティブソナー〉の魔法により、香りの発生源を追跡できる見込みが立った。二人は香りの元を探り出すため、さらなる調査を開始することを決めた。
勅命と影軍
皇帝直筆の命令書
ランシャス将軍は、ユルゲン・バルテル副官から皇帝ルパート六世直筆の命令書を受け取った。内容はナイトレイ王国内での地図作成であり、ユルゲンは皇帝魔法師団の一員として行動していた。将軍は命令書の希少性に驚きつつも、皇帝命令の優先性を理解して受け入れた。
影軍と皇帝魔法師団の役割
ランシャス将軍率いる影軍は帝国の裏の切札であり、一方で皇帝魔法師団は表の切札とされていた。将軍は、地図作成任務の重要性を評価しつつも、自身の部隊が優先されなかったことへの小さな不満を口にした。
冒険者の動向
監視と接触
ランシャス将軍の部下から、冒険者らが「香」をたどっているとの報告が入った。彼らの目的が影軍の活動に干渉する可能性を見た将軍は、冒険者の排除を命じた。その場所は、ユルゲンが地図作成を進めていた第二設置点でもあった。
ユルゲンの違和感
ユルゲンは影軍との接触を避けようとしていたが、ランシャス将軍の行動により、任務に不安を抱き始めた。彼は「嫌な予感」を感じながらも、将軍の指示に従わざるを得なかった。
冒険者との戦闘
アベルと涼の囮作戦
冒険者のアベルと涼は、影軍の動向を引きつけるため、自ら囮となる行動を取った。涼の魔法〈パッシブソナー〉によって敵の位置と数を把握し、彼らを挑発して接触を図った。
影軍との交戦開始
影軍の指揮官ランシャス将軍と冒険者たちの戦闘が始まった。アベルは将軍との一対一の剣戟を繰り広げ、涼は他の影軍兵士たちを相手にした。涼は魔法を駆使しつつも戦場を制御し、少しずつ敵を削りながら戦った。
ユルゲンとの対峙
涼の狙いと接触
涼は影軍の戦力を削る中、目当ての人物であるユルゲンに接触した。ユルゲンは影軍とは異なる動機で動いており、涼の挑発に対して剣を抜いて戦いを挑んだ。
剣技での対決
ユルゲンの剣技は洗練されており、涼を圧倒する勢いを見せた。しかし、涼もまた魔法使いながら剣技に優れ、互角の戦いを繰り広げた。ユルゲンは剣技に自信を持ちつつも、涼の異質な戦闘能力に驚きを隠せなかった。
戦いの中の本質
互いの技量と背景
涼はユルゲンの剣技が努力と鍛錬の結晶であることを見抜き、その力強さを認めた。一方で、ユルゲンもまた、涼の剣技が単なる魔法使いの域を超えていると感じ、彼を一流の剣士として認識した。
戦いの決意
両者は、それぞれの背景と能力を背負いながら戦い続けた。ユルゲンは剣に全てを懸け、涼は魔法と剣技の両方を駆使して対抗し、決着の行方は未だ見えないままであった。
捕縛された影軍と魔法師団
ユルゲンと涼の剣戟
ユルゲンは、水属性魔法使い涼との戦闘で、相手の防御力の異常な堅さに驚いていた。剣技の熟練度は兄ハルトムートに匹敵し、涼の堅実な構えは揺るがなかった。ユルゲンは相手の綻びを見つけるべく主導権を維持していたが、味方の捕縛状況に気を取られた隙に足を滑らせ、後頭部を打って意識を失った。
アベルとランシャス将軍の剣戟
アベルとランシャス将軍の戦闘は熾烈を極めた。将軍は冒険者アベルの剣技が常軌を逸していると感じ、撤退を考えたが、部下が次々と涼に倒される光景に意識を奪われた。その一瞬の隙を突かれ、アベルの一撃によって将軍も意識を失った。結果として、帝国軍十九人全員が捕虜となった。
捕虜と涼の対応
涼は捕縛した影軍の兵士たちを〈氷棺〉に封じたが、晒しものにしないため配慮を見せた。彼らを仮死状態にしつつ、慎重に移送を計画した。中でもユルゲンの所持していた謎の錬金道具に興味を示し、天才錬金術師ケネスに解明を依頼するため、ルンの街への移動を決めた。
アベルと涼の対話
移送中、涼はユルゲンの正体が「爆炎の魔法使いオスカー・ルスカ」の副官であることを明かした。アベルは驚きつつも、彼らを捕えた正当性を認めた。二人は戦闘の成果をギルドマスター・ヒューに報告し、後の対応を一任するつもりであった。
帝国の動揺と皇帝の命令
報告を受けた帝国要人たち
クルコヴァ侯爵領では、帝国魔法師団団長フィオナと爆炎の魔法使いオスカーが、捕縛されたユルゲンとランシャス将軍の報告を受けた。フィオナは報告書に驚愕し、王国南部アクレ近郊で起きた出来事の重要性を理解した。
皇帝の勅命
報告書の最後には皇帝からの勅命が記されていた。「あらゆる手段をもって速やかに全てを取り戻せ」という指示は、帝国要人たちに大きな影響を与えた。フィオナとオスカーは、事態を収拾するための具体策を練り始めた。
フィオナとマリアの連携
フィオナとオスカーは、クルコヴァ侯爵夫人マリアに協力を依頼した。学術都市として発展する侯爵領の資源を活用する意図があった。マリアはその要望に応じる構えを見せ、帝国側の対応が加速する兆しを見せた。
氷棺の捕虜と謎の錬金道具
ギルドでの報告と捕虜の確認
ルン冒険者ギルドの保管庫には、19個の氷の棺が並べられていた。ギルドマスターのヒュー・マクグラスは、アベルと涼から帝国軍捕虜に関する説明を受けた。その中には、影軍司令官ランシャス将軍と、皇帝魔法師団副官ユルゲンが含まれていた。ヒューはその重要性に驚愕しつつ、涼の捕縛手段を称賛した。また、捕虜たちが持っていた錬金道具についても議論が行われ、詳細な解析のためにケネス・ヘイワード男爵に調査を依頼することとなった。
帝国の動きと王国の対応
アベルとヒューは、帝国が捕虜を奪還するために襲撃を企てる可能性を指摘した。特に、影軍や皇帝魔法師団といった帝国の切札が関わる可能性が高いと推測された。ヒューは早急に対策を講じるため、領主や騎士団への報告を指示し、気絶枷や強制侵食椅子といった道具の使用を準備した。
捕虜奪還に向けた帝国の決意
皇帝魔法師団の決起
帝国では、捕虜19人と錬金道具を奪還する勅命が発せられた。これを受け、皇帝魔法師団団長フィオナ、爆炎の魔法使いオスカー、そして皇帝十二騎士の一人ハルトムートが、捕虜奪還作戦を指揮することとなった。奪還目標には、捕虜と錬金道具のほか、調査を担当するケネス・ヘイワード男爵の拉致も含まれていた。
空中戦艦による極秘作戦
奪還作戦には、帝国が開発した新型空中戦艦マルクドルフが投入された。クルコヴァ侯爵領で秘密裏に開発されたこの艦は、帝国の技術の粋を結集したもので、地上からは姿を隠す特殊機能を備えていた。艦内では、かつての冒険者パーティー「乱射乱撃」のメンバーが操艦を担当し、彼らの熟練した技術で作戦を支えた。
戦闘狂の騎士たちの決意
ハルトムートの野望
フィオナとハルトムートは、作戦会議の中で奪還に向けた具体的な方針を確認した。ハルトムートは捕虜奪還の指揮を担い、フィオナとオスカーは錬金道具の確保を目指した。作戦に臨むハルトムートの中には、戦闘への強い情熱が秘められており、彼の鋭い眼差しは戦場への渇望を示していた。
新たな戦いへの幕開け
新型空中戦艦に乗り込んだフィオナたちは、王国南部への極秘侵入を開始した。帝国の誇る最強の戦士たちが、捕虜奪還を目指して動き出したことで、王国と帝国の緊張はさらに高まることとなった。
離れでの待機と錬金道具の解析
ケネスの到着と錬金道具の確認
涼とアベルは、領主館の離れでケネスの到着を待っていた。彼らの軽い言い争いが続く中、ケネスが戻り、錬金道具の解析が始まった。涼が提出した箱は、高度な錬金道具であり、特定の呪文と魔力によってのみ起動する構造であった。ケネスは、その仕組みを説明し、箱の内容を解明するための手順を示した。
解析用魔法陣の使用と結果
ケネスは魔法陣を用意し、箱に記録された情報を解析した。彼の操作により、起動のための呪文が「皇帝陛下万歳 世界の全てを帝国の旗の下に」であることが判明した。さらに、箱の機能は地形情報を収集するものであり、これを基に詳細な地図を作成できることが分かった。この機能が帝国の軍事目的に直結している可能性が指摘された。
帝国の侵攻計画の示唆
箱の意図と地図作成の重要性
箱の解析結果から、帝国が王国への侵攻を視野に入れている可能性が浮上した。アベルは地図の重要性を強調し、帝国が侵攻の準備を進めていると推測した。涼はその危険性を指摘しつつも、冗談めかして即座の対応を提案したが、アベルにより却下された。
箱の情報の保存と今後の方針
ケネスは箱内の情報を錬金術で転写する提案を行い、それによって王国内の地図をさらに詳細にする意図を示した。涼はその計画を称賛し、アベルとの軽口を交わしながらも、帝国の動きに対する備えを進める必要性を共有した。
第二別館への移動と出会い
知人との邂逅
第二別館へ向かう途中、涼とアベルは武器職人アブラアム・ルイに出会った。涼は彼の技術を称賛し、会話の中で自分の模擬戦についての評判に照れる様子を見せた。その後、ギルドマスターのヒュー・マクグラスにも遭遇し、目的地である強制侵食椅子の存在について軽いやり取りが交わされた。
強制侵食椅子の議論
強制侵食椅子について話題が及ぶと、ヒューはその異質さを指摘した。涼とアベルは、それぞれの性格に応じた反応を見せながらも、好奇心と緊張感を抱いて目的地への足を進めた。二人のやり取りは、重々しい空気を和らげつつも、椅子の存在がもたらす意味を含んでいた。
帝国艦内での作戦確認
奪還作戦の準備
一方、帝国の空中戦艦マルクドルフでは、捕虜奪還作戦の最終確認が行われていた。ハルトムートは、作戦の詳細と魔法的な索敵能力について質問し、フィオナやオスカーの説明を受けた。フィオナの魔法能力には帝国の最高機密が関わっており、慎重に扱われるべきものであった。
作戦開始に向けた調整
艦内では、奪還作戦が迅速に進められるよう、突入から撤収までの計画が具体化されていた。マルクドルフは空中支援を担いながら、作戦成功のために動き出した。時間との戦いの中、帝国の意志が行動に移される瞬間が近付いていた。
捕虜奪還の計画と移動
第二別館への移動と事前情報
涼、アベル、ヒューの三人は第二別館へ向かいながら、ヒューから強制侵食椅子が地下牢ではなく大倉庫に保管されていると聞かされた。涼は、天才錬金術師ケネスなら同じものを作れると主張したが、ヒューとアベルは半ば呆れながら聞き流した。その後、第二別館大倉庫に到着した三人は、涼が即興で行った「顔パス」に驚きつつ中に入った。
大倉庫の異様な光景
広大な倉庫の中には、等間隔に横たわる捕虜たちと、巨大な強制侵食椅子が配置されていた。椅子にはランシャス将軍が座らされ、背後ではケネスの部下が操作していた。涼とアベルは椅子の機能や将軍の穏やかな表情に疑問を抱きつつも、その場を観察していた。
帝国軍の襲撃と戦闘の開始
急襲と混乱
突如として、ルンの街に鐘の音が響き渡った。同時に帝国軍が空中艦マルクドルフで急降下し、領主館第二別館を襲撃した。艦橋ではエルマー艦長が指揮を執り、迅速な突撃と奪還作戦を指示した。艦から放たれた炎により、守備兵たちは圧倒され、帝国軍が突入を開始した。
第二別館内での迎撃
大倉庫内ではヒュー、アベル、ネヴィルが応戦したが、帝国軍の数と練度に圧倒された。涼はケネスの救援のため奔走し、一方で皇帝十二騎士ハルトムートが名乗りを上げ、戦いに加わった。アベルはハルトムートと対峙し、熾烈な剣戟を繰り広げた。
戦闘の激化と皇女の参戦
アベルとハルトムートの戦い
アベルはハルトムートの圧倒的な剣技に追い詰められながらも、一撃必殺を狙い全力で立ち向かった。しかし、ハルトムートの攻撃を防ぎ切れず、腹を斬られて倒れた。とどめを刺されそうになった瞬間、セーラが駆け付け、アベルを救った。
セーラとハルトムートの剣戟
セーラは到着するなりハルトムートの剣を吹き飛ばし、その実力を見せつけた。ハルトムートは自身の右肩の負傷が影響したことを認め、セーラの強さに驚嘆した。一方で、フィオナ皇女とアベルの戦いは続き、宝剣レイヴンにより力を底上げされたフィオナが優勢であった。
帝国軍の撤退
襲撃の終結と捕虜の奪還
外から聞こえた信号音により、帝国軍は撤退を開始した。煙幕が張られる中、捕虜の回収が行われ、倉庫内のルン騎士団や冒険者たちは追撃を断念せざるを得なかった。セーラも損耗の激しい味方を見て、冷静な判断で動きを抑えた。
戦闘の余韻
戦いが終わり、ルン側は大きな損害を受けながらも、戦線を持ちこたえた。アベルやヒューは深い傷を負いながらも生き延び、セーラがその場を支えた。帝国軍の撤退後、大倉庫内は静寂に包まれ、戦場の傷跡だけが残された。
錬金実験室への急行
ケネス救出への決意
涼は、第二別館大倉庫から錬金実験室へ向かい、希代の天才錬金術師ケネス・ヘイワード男爵の身を案じていた。襲撃者の一部にはフィオナ皇女の姿があったが、彼女の副官オスカー・ルスカが姿を見せない理由に疑念を抱いた。涼は、箱の奪取だけでなく、ケネスの誘拐も帝国の狙いと見抜いていた。
オスカーとの対峙
錬金実験室に飛び込んだ涼は、オスカーが意識を失ったケネスを抱えている姿を目にし激昂した。瞬間移動の如き速度で接近し、オスカーを殴り飛ばしてケネスを奪還した。ケネスを安全な場所に移した後、涼は再び敵へと向き直り、オスカーとの戦いが始まった。
熾烈な魔法戦と剣戟
魔法戦の応酬
涼とオスカーは広範囲の魔法を応酬したが、互いに一撃で決着をつけられないことを悟り、剣戟へと移行した。剣技と魔法を交えた戦闘は壮絶であり、涼の猛攻とオスカーの冷静な防御が拮抗した。
執念の接近戦
涼は連撃を加え、オスカーの腹部を剣で貫いたが、オスカーは自らの体を焼き、出血を止めるという執念を見せた。近接戦では拳も交えた攻防が展開され、互いに深手を負いながらも、一進一退の激戦が続いた。
戦闘の決着と帝国の撤退
撤退の合図
戦いの最中、帝国側の撤退を知らせる信号が鳴り響いた。オスカーは部下を率いて撤収を開始し、涼は重傷のため追撃できなかった。オスカーは次の決着を誓いながら戦場を後にした。
涼の意識喪失
戦闘後、涼は脇腹の重傷による失血で気を失ったが、セーラら仲間の助けによって救出された。目覚めた涼は、ケネスが無事であることを確認し安堵した。
戦いを振り返る
敗北の受容
涼とアベルは、今回の戦いを敗北と認め、敗因を冷静に分析した。涼は冷静さを欠いた自分を反省し、今後の戦いに向けた改善点を挙げた。二人は敗北から学び、次の勝利を目指すことを誓った。
新たな目標
涼は「新必殺技」の開発を提案し、その名を「叢雲」や「朧」として構想を語った。アベルは半ば呆れつつも涼の意気込みに感化され、共に成長を誓い合った。
未来への希望
ケネスの展望
ケネスは帝国の新型空中戦艦に対抗する手段が王国にもあると示唆した。その力強い言葉に、涼とアベルは未来への希望を抱きながら歩みを進めた。
エピローグ
白い世界の管理者
石板に記された情報の謎
ミカエル(仮名)は、白い世界でいくつかの世界の管理を行っていた。手元の石板を見ながら、「三原涼がヴァンパイアたちと渡り合えた」と確認したが、ヴァンパイアを率いる転生者の記録が残っていないことに疑問を抱いていた。「大混乱」の際に転生した可能性を考えたが、詳細を得ることはできなかった。結局、情報の曖昧さを受け入れ、追求を諦めた。
争いの本質に対する考察
ミカエル(仮名)は、三原涼が進む未来が王国と帝国の全面戦争であることを憂い、人間が争いをやめられない理由に思いを巡らせた。しかし、争いは人間だけでなく、生きとし生けるものすべての摂理であると認識し、「争いこそが世界の理であり、全てを読み解くキーワード」であると結論付けた。その考えに至る中で、「大混乱」もまた争いの一部であると呟き、世界の悲しい側面を見つめていた。
同シリーズ
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