小説「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 19巻  ザノバ編」感想・ネタバレ

小説「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 19巻  ザノバ編」感想・ネタバレ

どんな本?

無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』は、理不尽な孫の手氏による日本のライトノベル。
この作品は、34歳の無職でニートの男性が剣と魔法の異世界に転生し、新たな人生を歩む物語。

主人公は、前世での経験と後悔を糧に、今度こそ本気で生きることを誓う。
彼は新たな名前「ルーデウス・グレイラット」として、家族や人間関係を大切にしながら、前世のトラウマを乗り越えて成長していく。

この作品は、「小説家になろう」で2012年から2015年まで連載され、その後書籍化された。
また、漫画版アニメ版も制作されています。
特にアニメ版は大変人気があり、2024年4月には第2期の後半が放送される。

また、「無職転生 〜蛇足編〜」という番外編もあり、こちらは本編完結後の物語が描かれている。

読んだ本のタイトル

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~19
(Mushoku Tensei: Jobless Reincarnation)
著者:理不尽な孫の手 氏
イラスト:シロタカ  氏

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あらすじ・内容

シーローン王国から、ザノバのもとに帰郷を求める旨の手紙が届けられた。
王国でクーデターが起こり、低下してしまった兵力を補うために国防力が必要ということらしい。
手紙の内容がヒトガミの罠だと悟ったルーデウス。
ザノバをみすみす帰国させるわけにもいかないと考えた彼は、ロキシーとともにザノバに同行する。
だが、シーローン王国で彼らを待ち受けていたのは、七大列強の第五位である死神ランドルフ・マリーアンだった。
誰が敵か味方か分からぬ状況で、ルーデウスはヒトガミの企みを潰すことができるのか!?
人生やり直し型転生ファンタジー第十九弾、ここに開幕!!

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 19

感想

この物語は、ザノバの帰郷をきっかけにシーローン王国で繰り広げられる戦いを描いている。
ザノバは国防のために帰国する決意を固めるが、ルーデウスはその決断を危険だと感じ、彼を守るために同行する。
ザノバと共にシーローン王国へ向かったルーデウス。
そこではヒトガミの思惑が待ち受けており、七大列強の一人である死神ランドルフの存在が不気味に立ちはだかる。
誰が味方で、何が本当かが不明な中、ルーデウスたちは企みを阻止しようと奮闘する。

ルーデウスはロキシーとともにザノバに同行し、シーローン王国へ向かうが、悲しい結末を迎える。
ヒトガミの影が見え隠れし、一人で悩むのをやめたルーデウスの次の手に期待が集まる。
後味の悪い話ではあるが、家族や仲間の絆が描かれ、読後感は複雑であった。

ザノバ編は悲しい結末であり、エリスに子供が生まれ、ジュリがザノバの帰りを待つというわずかな救いがある。
しかし、パックスのストーリーを読むと、ランドルフとベネディクトの苦しみが浮き彫りになる。
ザノバがシーローン王国に帰る話で、ルーデウスはこれがヒトガミの罠だと考え続けたが、その目的は自分やザノバを殺すことだと思っていた。
最終的にパックスが死に、ザノバは王族であることを捨てた。

間話では、パックスが努力し、ベネディクトとの出会いで変わろうとする姿が描かれている。
ランドルフも戦いに疲れ、料理という趣味を見つけるが、パックスとベネディクトだけがその料理を喜ぶ。
今回の話で一番感動的な部分は、ランドルフの「私、あなたのこと、好きですよ」という言葉である。
パックスの死を止められなかったランドルフの気持ちが込められていると感じた。
この言葉に、彼の複雑な感情が表れていると思っている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション あいうえお順

備忘録

第一話「ザノバの決意」

ラノア魔法大学の研究室で、六人の男女がザノバの帰還命令について話し合っていた。シーローン王国の新国王パックスがザノバを戦線に戻すよう命じた手紙が届き、ザノバはそれに従うと言うが、クリフと他の仲間たちはそれが罠だと反対していた。ザノバは国防のために帰還すると決意しており、その理由を述べた。彼は生かされてきたのは国を守るためであり、その義務を果たすために行く必要があると主張した。最終的に、ルーデウスはザノバと共に行くことを決意し、ザノバを見殺しにしないと誓った。

ルーデウスはザノバの帰還命令についてオルステッドに相談するために彼の元へ向かった。ザノバの召喚は日記には記されておらず、ヒトガミの仕業ではないかと疑ったが、オルステッドは三十年後にパックスがクーデターを起こし、シーローン王国を共和制に変える歴史を語った。オルステッドはザノバの帰還がヒトガミの罠である可能性を指摘し、ルーデウスはそれに同意しつつもザノバを見捨てられないと決意した。オルステッドはルーデウスに、パックスを殺さないように指示した。ルーデウスはザノバを助けるためにシーローン王国へ向かうことを決意し、オルステッドに感謝の意を示した。

第二話「虫の知らせ」

ルーデウスはシーローン王国への出張を家族に報告した。道中に時間がかかり、エリスの出産には間に合わない可能性が高いことを説明した。エリスは冷静に受け入れ、他の家族も反対はしなかった。エリスはルーデウスがいなくても出産はできると断言し、シルフィとロキシーもそれを支持した。

ルーデウスはロキシーがパックスの家庭教師をしていたことに責任を感じているが、ルーデウスはロキシーのせいではないと励ました。ララが異常に泣き出したことで、ルーデウスは不安を感じたが、ロキシーがララをなだめ、ルーデウスを送り出すことに成功した。

ロキシーがシーローン王国行きに同行することとなった。ルーデウスはこれを止めようとしたが、ロキシーは一つ一つの反論で論破した。家族全員がルーデウスの危険な状況に不安を抱き、ロキシーが同行することを決定した。

翌日からシーローン行きの準備が始まった。ルーデウスはザノバとロキシーの装備を整えた。ザノバには火を無効化する全身鎧、固い石の棍棒、そして自動追尾の網を用意した。ロキシーには結界を張る指輪と身代わりのネックレスを渡した。ザノバは退学、ロキシーは休職扱いとなり、ザノバがシーローンの宮廷魔術師として連れ帰る形で学校との交渉をまとめた。

ルーデウス自身の装備も確保し、魔導鎧『一式』と『二式改』、ガトリング砲を用意した。最後に移動手段として、ペルギウスに頭を下げに行った。

ルーデウスはペルギウスの空中城塞を訪れ、初めて豪華な部屋に通された。部屋はペルギウスが認めた者しか入れない特別な場所であり、ザノバの案内で入ることができた。ペルギウスはザノバに対して疑念を抱きつつも、ザノバの要請を受け入れ、シーローン王国への転移魔法陣と魔導鎧の持ち込みを許可した。

ザノバはシーローン王国から召集を受け、ルーデウスと共に故郷に戻る決意を固めた。ペルギウスはザノバが死ぬ気でいると指摘したが、ザノバはそれを否定しつつも、シーローン王国への帰還を決意していた。

出発の準備が整い、ルーデウス、ザノバ、ロキシー、ジンジャーの4人でシーローン王国に向かうことになった。ジュリはルーデウスの家に預けられることになった。ジンジャーの調査によれば、シーローン王国には北からの侵攻の気配があり、戦争ムードが漂っているという。

第三話「シーローン再び」

出発の前夜、ルーデウスは家族と共にいたところ、突如レオが吠え、エリスが敵襲を知らせた。しかし、来訪者はオルステッドだった。彼は夜遅くにルーデウスに伝えたいことがあった。オルステッドはシーローン王国での危険な敵について警告し、特に七大列強第五位「死神」ランドルフ・マリーアンの存在を伝えた。

ランドルフは北神二世の孫で、独自の戦闘スタイルを持ち、かつては七大列強の一人を倒してその地位を得た。彼は「幻惑剣」と呼ばれる技を使い、相手の思考を誘導して戦う。オルステッドはルーデウスに、ランドルフと対峙する際は距離を保つことを助言し、魔導鎧を身に纏うようにと伝えた。

翌朝、ルーデウスは家族に見送られながら出発した。シルフィ、エリス、アイシャ、ノルン、リーリャ、ゼニス、ルーシー、レオ、ジュリがそれぞれの思いを込めて彼を送り出した。ルーデウスはザノバを助けるため、ロキシーと共にシーローン王国への旅に出た。

出発前日、ルーデウスはザノバたちと町の入り口で合流し、クリフとエリナリーゼに見送られた。クリフは家庭の事情で同行できず、エリナリーゼはロキシーにルーデウスの世話を頼んだ。彼らは半日かけて城塞跡まで移動し、空中城塞に入った。

空中城塞では、ロキシーは厳重な警備の中、ペルギウスの許可を得て入城した。ナナホシも見送りに来ており、ザノバと別れの挨拶を交わした。ザノバはナナホシに感謝の意を伝え、ナナホシもまた感謝の言葉を返した。

その後、ルーデウスたちは転移魔法陣を使い、シーローン王国の東端の森の中にある遺跡に到着。ロキシーは転移魔法陣に興味を示したが、ペルギウスの意図を考慮して覚えないことにした。ザノバの指示で荷物を回収し、王都に向けて出発した。

シーローン王国の王都ラタキアに到着したのは日没直前であった。ザノバは町の変化に感慨深い表情を見せた。町は以前よりも物々しく、ならず者のような風体の者が増えているようだった。

宿に着いた後、ジンジャーは町の情報を集めるために外出し、ザノバは彼女の行動を許可した。翌日のパックスとの謁見に備え、ルーデウスとザノバは作戦を練る。ヒトガミの思惑を探るための謁見であり、場合によっては『死神』と戦闘になる可能性がある。

ロキシーはルーデウスの緊張をほぐすために肩を揉み、リラックスさせた。ルーデウスはロキシーの優しさに感謝し、翌日の謁見に備えて早めに休むことにした。

第四話「パックス王」

王城へは正面から入った。門番は最初ザノバを訝しんだが、本物と確認するとすぐに道を開けた。王族の特権が明らかである。控室で小一時間待った後、謁見の間に通された。

謁見の間には、パックス・シーローンが玉座に座り、その隣に少女、そして『死神』ランドルフ・マリーアンと騎士二人がいた。ザノバは膝をついてパックスに挨拶し、ルーデウスもそれに倣った。

パックスはザノバに対し、ルーデウスの存在を問うた。ザノバは戦力として連れてきたと説明し、パックスは鼻で笑い、ランドルフを紹介した。パックスはザノバを警戒しているようだったが、最終的にザノバにカロン砦の守護を命じ、謁見は終了した。

謁見の間を退出したルーデウスは、肩透かしをくらった気分であった。

シーローン王宮にて、ザノバとルーデウスは客室を与えられ、監視の騎士が配置された。翌日、北のカロン砦へ出発する予定だ。ルーデウスはザノバとともに部屋で休み、ザノバがパックスの王としての行動を称賛し、ルーデウスはヒトガミの存在について再度説明した。ザノバはヒトガミの影響を疑問視しつつも、パックスを守る意志を示した。

ルーデウスはパックスがザノバを裏切る可能性を懸念し、証拠を探す必要があると考えている。現時点で具体的な証拠はないが、ルーデウスは今後の展開に注意を払うつもりである。ロキシーに相談する予定である。

第五話「カロン砦」

謁見の翌日、ルーデウスはロキシーと合流し、パックスがヒトガミの使徒ではない可能性や、カロン砦に関する情報を伝えた。パックスは北のカロン砦を少数の兵力で守り、リコン砦に傭兵を集める戦略をとっていることが判明した。ロキシーは、ヒトガミの罠として、カロン砦での戦いでルーデウスとザノバを疲弊させ、死神を送り込む可能性を指摘した。

ルーデウスは、ヒトガミの使徒が王竜王国の王と敵国の将軍であると推測し、カロン砦に行く決意を固めた。ザノバを説得するために、カロン砦を守りきることで国を守ったとする計画を立て、罠に対する警戒を怠らずに進むことを決めた。

ザノバは、カロン砦の防衛に向けての士気を高めるため、ルーデウスとロキシーを紹介した。兵士たちはザノバのリーダーシップに感動し、士気が上がった。カロン砦は地形的に守りやすい場所にあり、王級魔術師のルーデウスとロキシーの存在により、守備力が大幅に強化されると説明された。ザノバの指揮のもと、兵士たちは勝利への希望を抱き、砦の防衛に全力を尽くす決意を固めた。

第六話「戦争の準備」


ザノバとルーデウスは、カロン砦の北側の荒野で地形の変化を行い、敵軍が布陣できないように対策を講じた。その後、砦の補強作業や兵士への魔術指導などを行い、準備を進めた。敵軍が接近する情報が入り、砦内は緊張状態に。ルーデウスは戦争での人殺しへの恐怖をロキシーに打ち明けるが、彼女の冷静な対応と励ましにより、少しずつ安心感を取り戻すことができた。

翌日、敵軍勢が動いたとの報告が入った。砦内は緊張が走り、総員が配置についた。彼は砦の屋上に移動し、魔導兵の中隊長の指示を受けつつ、魔術を放つため待機することとなった。彼とロキシーの仕事は、ここで魔術を使うことであった。

彼は魔導鎧『二式改』を着込んでおり、『一式』も砦の裏側に配置してあった。飛び降りればすぐに行動できるよう準備していた。ヒトガミが何かを企んでいるか、戦闘が終わった後に動くのか、使徒が敵方や砦内にいるのかといった不安が彼の中で渦巻いていた。

その時、彼の視界の端に動くものがあった。砦の裏側、敵が来るのとは逆側に、鎧姿の一団が川を渡って森へ移動していた。百人程度の集団であり、彼はそれが脱走兵かと疑った。中隊長ビリーに聞いてみると、それはザノバが編成した部隊で、森を抜けてくる敵兵を倒し、場合によっては敵本隊を奇襲し、敵将の首を取るためのものであることがわかった。

彼はザノバが部隊を編成したことを知らされておらず、中隊長の説明に驚いた。ルーデウスが砦を守るために来たのに、そのことを知らされていなかったことに不満を抱いた。彼はザノバを守るためにここにいるのだと感じ、出発前に一言あってもよかったのではないかと思った。

その時、砦内に再び緊張が走り、敵襲を知らせる鐘が鳴り響いた。周囲の視線が一点に向かい、土煙で地平線がぼやけているのを見た。敵が来てしまったのである。

第七話「戦争」

ザノバが敵将の首を取るためにどこかへ向かった。彼は持ち場を離れることができず、ザノバの動向が気になりながらも自分の役割を果たすことに集中した。ザノバが事前に打ち合わせをしていたため、無謀な行動を取ることはないと信じた。

敵軍が陣を敷き、魔術を使って罠を埋めようとしていることをロキシーが知らせた。彼は風聖級魔術『颶風』を使い、敵の土聖級魔術『砂嵐』を吹き飛ばした。敵軍が再び『砂嵐』を使うも、彼はこれをレジストし続け、敵の魔術師が力尽きるまで耐えた。

その後、敵軍が再度攻撃を試みるが、彼らは罠にかかりながら進軍を続けた。中隊長の指示で弓兵隊が矢を放ち、魔術兵たちが火球弾を放ち、敵を攻撃した。敵の魔術部隊が水塊を放つが、彼とロキシーはそれに対抗するために詠唱を開始した。結果的に、彼は戦場で敵を倒し、人を殺すことになった。

その後の戦闘は一方的な展開となった。敵は魔術師を失いレジストができなくなり、多くがこちらの火聖級魔術で焼き払われた。混乱した敵は撤退もできず、指揮系統も崩壊した。最後にはこちらの聖級魔術でとどめを刺された。

一部の敵は落とし穴を抜けて砦に迫ったが、防衛隊が迎え撃ち、こちらの魔術兵が魔術を浴びせた。敵の残存兵は捕虜になったり殺されたりした。こちらの被害は数名程度であり、大勝利となった。

戦闘が終わると、部隊長のガリックが勝鬨を上げ、兵士たちは喜びの声を上げた。彼も高揚した気分になり、周囲の兵士たちと喜びを共有した。ロキシーも興奮し、彼に飛びついてキスをした。周囲は彼らを祝福し、彼は喜びを感じた。

戦闘が終わるとザノバが戻ってきた。ザノバは奇襲で敵将を捕らえ、尊敬の眼差しを受けていた。彼は九十人の犠牲を払って敵国の王族を捕らえたと報告した。これにより、停戦協定が結ばれ、戦争が終わる見込みが立った。

彼はザノバの成功に感謝しつつも、自分が敵に大打撃を与えたのかを疑問に感じた。夜になると襲撃者が現れたが、弱いため殺さずに済んだ。彼は自分の行動をコントロールできていると自分に言い聞かせた。結局、死神の襲撃はなかった。

翌朝、ザノバの協力を得て人質を尋問した。人質は北の国の王族であった。尋問の結果、ヒトガミという存在については知らず、国内で予知能力を持つ者もいなかった。また、この短期間で五千の兵力を集めたのではなく、シーローン王国を数年前から狙っていたため、計画的なものであった。

この結果から、北の国がヒトガミと関係している可能性は低く、人質もただの指揮官であることが確認された。さらに、死神の襲撃もなかったため、北の国はシロであることが判明した。

これらの結果により、今までの予想がことごとく外れ、根本的な勘違いがあったことを感じた。罠がなかったか、ヒトガミが無関係だった可能性を考えながらも、警戒を続けた。そして、十日が過ぎた頃、事態が動き出した。

第八話「火急の知らせ、ザノバの真意」

戦闘から十日が経過し、ザノバは敵国に対し、人質を使って停戦協定を申し出た。協定の詳細は不明だが、戦争は終わりに近づいている。シーローン王国に戦力がないため、パックスも反対しないだろうが、返事が来ないことに不安を感じる。

砦内では戦闘についての熱狂が続いており、魔術の威力やザノバの勇姿が語られている。兵士たちの態度も柔らかくなり、ロキシーの日々のカウンセリングやザノバの気遣いのおかげで、精神状態も回復した。

しかし、戦争への参加はもう望まず、殺しも最低限にすることを決めた。警戒を続けたが、何も起こらず、ヒトガミは無関係だった可能性が高い。

その後、ザノバの頼みで人質を尋問した結果、ヒトガミと関係がないことが確認された。状況が変わったのは十日後だった。

ザノバは人質を使って停戦協定を申し出、本国にも初戦の勝利と人質の入手、停戦の申し入れを伝えた。パックスが反対することはないが、返事が来ないことに不安を感じる。兵士たちは戦闘の話に熱狂しており、魔術の威力やザノバの勇姿が語られている。

兵士たちの態度は柔らかくなり、精神状態も回復した。しかし、戦争への参加はもう望まず、殺しも最低限にすることを決めた。

警戒を続けたが、何も起こらず、ヒトガミは無関係だった可能性が高い。

第九話「パックスの元へ」

魔導鎧を使用して王都への移動を決めたが、移動中の魔力消費が懸念であった。仲間の移動方法として馬車を使うことにし、土魔術で安定させたが、乗り心地は悪く、到着時には皆が疲弊していた。それでも王都には五日で到着し、目的はパックスの救出である。

王都ラタキアは封鎖され、城壁の外には閉め出された人々がいた。反乱軍が城壁を守り、王城はまだ落ちていない。ザノバが王子と知られると騒ぎになるため、隠密に行動し、川沿いの秘密の抜け道を使うことにした。川沿いを進むと水車小屋があり、そこで魔導鎧を停止させた。

水車小屋の中を調べると、地下通路への入口を発見。ザノバが金属製の扉をこじ開けると縦穴と横穴が見え、地下通路であることが確認された。疲労回復のため、休憩を取ることにした。

三時間の休憩後、主人公は馬車に戻り、二式改魔導鎧を装着した。狭い通路を通るため一式ではなく二式改を選んだが、不安が残る。狭い通路をザノバ、主人公、ロキシーの順で進む。ロキシーが狭い通路を進む中で過去を思い出すが、会話は少なく、ただ進む。

一時間ほど歩いた先に扉があったが、土砂で埋もれていた。ロキシーは地震やジェイド将軍が通路を塞いだと推測。主人公が土砂を処理し、さらに一時間進むと地下室に到達。シーローン王国の王城にある地下室で、ここは主人公とザノバが初めて出会った場所だった。感傷に浸ることなく、上へと進む。

城内は無人で、ザノバが城の構造を説明しながら進む。王の寝室がある五階に到達すると、死神ランドルフが待っていた。ランドルフは王の命令でここを守っていると言い、ザノバを制止。ランドルフがヒトガミの使徒であることが判明し、戦闘が避けられない状況に。戦闘は始まり、緊張感が高まる。

第十話「誰もがみんな空回り」

戦いは突然始まった。主人公は二式改魔導鎧で戦闘に臨む。ザノバがまず飛び出し、ロキシーも魔術で援護する。死神は回避し続けたが、泥沼で体勢を崩し、ロキシーの魔術でさらに追い詰められる。ザノバの一撃が死神に当たるかと思われたが、死神は素手で受け止めた。主人公の電撃で死神を麻痺させ、岩砲弾でトドメを刺そうとするが、岩砲弾は消える。

死神ランドルフは吸魔石を使い、岩砲弾を無効化していた。再度の戦闘でロキシーが傷を負うが、彼女は魔力付与品で一命を取り留める。ランドルフが攻撃を続け、ザノバが重傷を負う。主人公は一度撤退しようと提案し、ランドルフに話しかけると、彼がヒトガミの使徒でないことが判明する。

ランドルフはパックス王とベネディクト王妃の味方であり、戦う必要がなかった。話し合いの末、戦闘は終わり、ランドルフはパックス王の命令で誰も通さないようにしていただけであった。戦いはなし崩し的に終わり、彼らは通行を許された。

王城最上階、豪華な王の寝室。王妃ベネディクトが眠るベッドには乱れたシーツ。パックスはバルコニーにいて、戦争の準備や改革の努力を話すも、反乱により失敗したと語る。ザノバはパックスを助けようとするが、パックスは繰り返される失敗に絶望し、自ら命を絶つ。

ザノバと主人公は治癒を試みるも無駄だった。ザノバは自身の努力が無駄だったのかと問うが、主人公はそれを否定。彼らはパックスの亡骸を抱え、失意の中で帰路に就いた。

第十一話「戦後」

パックスを荼毘に付す準備がされたが、ザノバは反乱を治めるために死体を残すべきだと主張した。彼の意見を尊重し、パックスの死体を水魔術で清め、五階へ運んだ。ランドルフは王妃ベネディクトを連れて脱出する準備をしており、王妃を背負いながら必要なものをまとめていた。

ザノバは淡々とパックスの逝去を報告し、ランドルフと共に王城からの脱出を開始した。地下通路を通り、水車小屋に戻った時にはまだ夜が明けていなかった。ランドルフは魔導鎧について尋ねたが、それが彼の想像する闘神鎧ではないことを知った。

ランドルフとの会話の中で、彼はヒトガミの話を聞いたことがあることを語り、親戚がヒトガミの力を借りて戦った過去を話した。最終的にランドルフは、ヒトガミには関わらない方が良いと忠告した。ランドルフは王妃を守り、出産後はその子供を育てるつもりであると述べた。

ランドルフとの別れ際、ザノバと握手を交わし、ガイコツのような姿で闇夜に消えていった。その後、残った者たちは何も言わずに水車小屋で眠りについた。

翌日、俺たちは昼過ぎに目を覚まし、王都へ戻った。王城はすでに反乱軍に占領されており、城外の集団も消えていた。門の封鎖も解除されていた。ランドルフの魔眼の効果が切れたのだろう。

町には反乱軍の勝利を喜ぶ活気があったが、一方でパックスの死体が広場で晒されていた。死体は裸で、後から付けられた傷や汚れが目立った。ジェイド将軍はパックスを暴君として喧伝し、新たな王を正当化しようとしていた。しかし、町の人々はパックスに対して無関心だった。

ザノバはその光景を見て震えていた。彼の心中は計り知れないが、弟に対して特別な感情を抱いていたことは明らかだった。「余は、また間違ったのでしょうか」と呟いた彼に、俺は次の王に逆らう者が減るだろうと答えた。

その後、俺たちは王都で宿を取り、ジンジャーと合流するまでの数日を過ごした。ジンジャーと合流した際、彼女はパックスの死を受け入れつつ、ザノバに仕える意思を示した。ザノバは王族の身分を捨て、普通の人間として生きることを決意した。ジンジャーはザノバの側に仕えることを誓い、彼らは新しい生活を始めることとなった。

今回の出来事は解決したわけではなく、多くの後味の悪さを残したが、終わりは終わりである。俺たちは次の道へ進む準備を始めた。

第十二話「ザノバの選んだ道」

ザノバはかつて、人間と人形の区別がつかなかった。彼にとって人間は、少し扱えば壊れる嫌いな人形に過ぎなかった。そんな彼の考えが変わったのは、師匠との出会いからであった。

ジュリという奴隷をお守りとして任された時、ザノバは彼女に様々なことを教え込んだ。その過程で、ジュリが彼の好みの人間になっていく姿を見て、他の人間に対する見方も変わっていった。ジンジャーに対しても、再会時には邪魔な存在ではなくなっていた。

これらの変化は全て、師匠の影響であった。師匠は決してザノバを見捨てず、彼に人形作りを教え続けた。師匠の行動がザノバに人間の大切さを気づかせたのである。

ナナホシの故郷への思いを手伝ううちに、ザノバ自身も故郷のことを考えるようになった。そして、パックスからの救援要請に応じた時、「弟だから助けたい」と言った。これは単なる言い訳に過ぎなかったが、パックスの死を目の当たりにして、彼が本当に弟として特別な存在だったことに気づいた。

ザノバは過去の出来事を思い返し、パックスにもっと声をかけていれば良かったと後悔した。しかし、今更遅いことを悟った。師匠がナナホシを妹のように思っていたように、ザノバもパックスを弟のように思っていた。

パックスの死を受け入れ、ザノバはまだできることがあると心に誓った。

ルーデウスは魔法都市シャリーアへ戻り、ザノバと共にペルギウスに帰還の挨拶をした。ペルギウスはザノバが王族を辞めると知り満足した様子であった。ナナホシも帰還を聞いてため息をついた。

ルーデウスはオルステッドへの報告のため事務所に向かった。そこでザノバも同行し、オルステッドに感謝と鎧の破壊について謝罪した。ルーデウスはシーローン王国での失敗を報告し、パックスの死がヒトガミの策略によるものであると説明を受けた。

オルステッドはシーローン共和国がラプラス誕生の鍵であったことを明かし、今回の失敗を認めた。しかし、ザノバはラプラスとの戦いに備え戦力を集める提案をし、オルステッドの配下に加わることを申し出た。オルステッドはこれを受け入れ、ザノバはルーデウスの同僚となった。

ルーデウスは自らの役割とオルステッドの期待に応えなければならないと決意し、これからの努力を誓った。

第十三話「喜んでいいんだ」

ルーデウスは魔法都市シャリーアに戻り、ザノバと共に自宅へ向かった。エリスが出産し、息子アルスが生まれていたことを知り、驚きと喜びを感じた。エリスの元気な様子に安心しつつ、ジュリがザノバに再会し、感動の再会を果たした。

ルーデウスは家族との再会を喜びつつ、家族全員にヒトガミとオルステッドの戦いの全貌を話した。家族全員が協力を誓い、ルーデウスは再び決意を新たにした。

まず、ヒトガミを倒すためには、龍族に伝わる五つの秘宝が必要である。これらの秘宝は五龍将が持っており、ラプラスが持つ最後の一つも含まれる。未来のルーデウスはこの最後の一つが手に入らず絶望した。オルステッドもラプラスを復活させ、その秘宝を得ようとしたが、今回は失敗した。

ラプラスの復活と戦争は避けられず、その後の戦いでオルステッドが消耗するため、ヒトガミを倒すのは困難である。そこで、ザノバの提案で、仲間を集めて戦力を増強することにした。オルステッドをサポートするための組織を作り、ラプラスを倒すための戦力を整える。

ルーデウスは自分の寿命が尽きるまでに、仲間と組織を作り、遺志を残すことを目標とする。この目標が達成されれば、オルステッドは必ずヒトガミを打倒できると信じている。

間話『死神騎士と食い意地の張った王子』

王竜王国の離宮には、多くの王族が暮らしている。その中には属国からの王子や王女もおり、表向きは留学や養子という形だが、実際は属国からの反乱を防ぐための人質である。

パックス・シーローンもその一人であり、彼はある日を境に剣術、魔術、勉学に励むようになった。午前中は体を鍛え、午後は勉学や魔術に取り組むという日課を決めたが、最近は午前中を庭園で過ごすことが多かった。彼はそこで第十八王女ベネディクトに自分の冒険話を語りかけていた。

パックスは、シーローンのスラムの支配者となった話をベネディクトに語り、彼女はその話に興味を示した。ベネディクトは教育を受けておらず、話しかけてくれる者もいないため、パックスの話が唯一の楽しみであった。彼女はパックスの話を純粋に楽しみ、パックスもその反応に満足していた。

パックスは彼女に話をしながらも、庭園での訓練を続けていた。彼はシーローン王国で学んだことを独力で復習しながら、勉学に励んでいた。離宮におけるパックスの評価は少しずつ上がっていった。

彼らが歩いていると、すれ違った貴族が悪口を言ったが、パックスは怒りを抑えた。ベネディクトは自分が原因だと思ったが、パックスは彼女のせいではないと断言した。彼の生まれつきの体が原因で侮られるのは日常茶飯事であった。

離宮と王宮の境目に差し掛かったとき、パックスは異臭に気づき、その原因を探るために進んだ。ベネディクトも少し嬉しそうにそれに従った。

シーローン王国の「地獄の晩餐会」という絵画には、五人の貴族がスケルトンの給仕によって食事をしている様子が描かれている。ザノバ・シーローンがこの絵画に関心を寄せていたため、弟のパックスもその内容をよく覚えていた。

ある日、パックスは離宮の訓練場で見た光景に、この絵画を思い出した。五人の従騎士が炊事場で真っ青な顔をしており、その炊事場には骸骨のような男、死神ランドルフが料理を作っていた。従騎士たちは、以前の演習で大将軍シャガールを落馬させてしまった失敗から、ランドルフに殺されるのではないかと恐れていた。

パックスは状況を理解し、ランドルフに話しかけると、彼は従騎士たちに料理を振る舞いたいだけだと答えた。パックスは彼の料理を試すことに決め、シチューを食べると意外にも美味しかった。従騎士たちも安心し、感謝の念を抱いた。

その後、パックスとベネディクトはランドルフの料理を定期的に楽しむようになり、彼の料理が毒ではなく美味しいものであることを確認した。

パックスはシーローン王城の階段の踊り場で、過去を振り返りつつ呟いた。彼は、ベネディクトやランドルフと共に過ごした日々を思い出していた。パックスとベネディクトはランドルフの料理を楽しみ、交流を深めていた。

パックスは、今目の前に広がる篝火や狼煙を見下ろしながら、王となるために努力してきたが、味方を増やすことができなかったことを悔やんでいた。彼は、自分がなぜ人々に嫌われ、味方を作れなかったのか、その理由がわからなかった。

ランドルフに対して、パックスはもし自分が死んだらベネディクトを連れて脱出し、子供が生まれたら剣や料理、学問を教えてほしいと頼んだ。ランドルフはパックスの決意を尊重し、命令を受け入れた。

最後に、パックスはベネディクトとの別れを告げるため寝室へ向かい、ランドルフはその部屋の前に立ち続けた。ランドルフは心の中で、パックスに死んでほしくないと思いながらも、彼の誇りある選択を尊重したのである。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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