小説「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 20 クリフ編」感想・ネタバレ

小説「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 20 クリフ編」感想・ネタバレ

どんな本?

無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』は、理不尽な孫の手氏による日本のライトノベル。
この作品は、34歳の無職でニートの男性が剣と魔法の異世界に転生し、新たな人生を歩む物語。

主人公は、前世での経験と後悔を糧に、今度こそ本気で生きることを誓う。
彼は新たな名前「ルーデウス・グレイラット」として、家族や人間関係を大切にしながら、前世のトラウマを乗り越えて成長していく。

この作品は、「小説家になろう」で2012年から2015年まで連載され、その後書籍化された。
また、漫画版アニメ版も制作されています。
特にアニメ版は大変人気があり、2024年4月には第2期の後半が放送される。

また、「無職転生 〜蛇足編〜」という番外編もあり、こちらは本編完結後の物語が描かれている。

読んだ本のタイトル

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 20
(Mushoku Tensei: Jobless Reincarnation)
著者:理不尽な孫の手 氏
イラスト:シロタカ  氏

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あらすじ・内容

ザノバとともにシーローン王国から、ラノア王国へ帰ってきたルーデウス。
打倒ヒトガミへの布石を打つ日々を送っていた。
そんなある日、魔法大学を卒業したクリフにミリス神聖国の祖父から手紙が届く。
ザノバの時と同じように、ヒトガミの罠と疑っていると、なんとルーデウスにも手紙が……!?
それは、ゼニスの実家であるラトレイア家からの呼び出しの便りだった!!
「はじめましてお祖母様、ルーデウス・グレイラットと申します、本日は――」
様々な思惑が入り乱れる中、ミリシオンへやってきたルーデウス達を待ち受けていたものとは!?
人生やり直し型転生ファンタジー第二十弾、開幕!!

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 20

感想

本書は、祖母クレアの心神喪失な状態の娘、ゼニスへ非情な対応が心に残る一冊であった。
何でこんな事出来るんだ?
叔母であるテレーズの態度を見るに、何でそんな決断をしたのか本気で謎だった。

本巻序盤で、ルーデウスは日常を通して仲間たちとの絆を深め、自らの道を切り拓く様子が描かれており、物語に引き込む力を持っていた。

ルーデウスがシーローン王国から帰郷する場面では、ザノバとの友情が深まり、共に商売という新たな挑戦に立ち向かう姿が印象的であった。
ザノバは、王族を辞めて人形商店を開店することで、新たな人生を歩み始めた。
彼の選択は、人生に迷う自身に勇気を与えるものとなった。

序盤でクリフとザノバの卒業式が描かれ。
その後、ノルンとアイシャの成人式もあり、傭兵団との交流がしっかりと表現されていた。

彼女たちが成長し、新たな人生の一歩を踏み出す姿は、感動的である。

ノルンは、学校での経験を通じて自信を深め、アイシャは自分の役割を見つけようと努力する姿が描かれている

また、学園生活を通じてルーデウスがどのように周囲の人々と関わりながら、1年と月日が過ぎ去り、ルーデウスも卒業となった。

そして、アイシャ、ゼニス、クリフと共にルーデウスがミリシオンに到着し、新たな環境でどのようにして自分の目標を達成しようとするのか、彼の意志の強さが表現されていた。

クリフがミリス神聖国で新たな戦いを始めることに対しても、ルーデウスの支えが描かれており、友情の深さを感じることができた。
クリフが自分の力を試そうとする姿勢は、彼の成長を感じさせ、彼の人格への厚みを与えている。

ゼニスを連れて彼女の実家へ挨拶に行って関係を険悪にした後に、ルーデウスがクリフの祖父である教皇と会い、彼との対話を通じて新たな視点を得る場面は、物語の中で非常に重要であると感じた。
教皇との対話を通じて、ルーデウスがどのように自分の信念を貫こうとしているのかがわかり、彼の家族への想いと心の成長を感じることができた。

また、ルーデウスが神子と出会う場面では、彼がどのようにして人々の意図を読み取り、物事を判断するのかという彼の能力の高さを垣間見ることができた。
反対に神子の周辺にいる連中のヤバさは、、
それの隊長をしているテレーズが気の毒に思ってしまった。

この出会いは、物語の先に何が待ち受けているのか、期待を膨らませる要素となっていた。

全体として、 20巻は、ルーデウスやその仲間たちの成長を描くことで、感動を与える一冊である。
彼らの絆や成長がしっかりと描かれており、物語の中で様々な試練を乗り越えていく姿は、希望と勇気を与えてくれた。
この物語がどのように展開していくのか、次巻への期待を高める一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション あいうえお順

備忘録

第二十章  クリフ編

第一話「今後の方向性とクリフの悩み」

シーローン王国での出来事から一ヶ月が経過し、ルーデウスはオルステッドとの話し合いを重ね、今後の計画を立てた。計画は三つの方向性に分かれていた。一つ目は、情報収集を目的とする諜報組織の立ち上げで、「ルード傭兵団」を活用することで、各国の情報を集め、活動を補助する形とすることだった。二つ目は、権力を持つ、または持ちそうな人物を味方に引き入れることだった。ラプラス復活時に戦争が起こることを権力者たちに予め伝え、協力を求めることで、将来的な協力体制を構築しようと考えた。三つ目は、戦闘を主とする武人集団を仲間に加えることであり、ラプラスやヒトガミと対抗するための戦力を整えることであった。

ヒトガミの使徒が計画を邪魔する可能性があるため、対策を考えたが、明確な対策は見つからなかったため、仲間たちには「夢のお告げを信じるな」と伝えることにした。また、オルステッドとの連絡手段の確保や、魔導鎧の輸送方法についても考慮しており、オルステッドに相談して通信手段の開発を進め、魔導鎧『一式』の召喚を試みることを計画していた。これらの計画により、ルーデウスは将来の戦いに備え、組織や装備の強化を進めることを決意していた。

ルーデウスは、仲間集めに関する計画を立て、まずは「ルード傭兵団」を拡大し、各国の権力者と関係を築くことを決定した。最初のターゲットは、ミリス教団の教皇の親族であるクリフと、アスラ王国の次期国王であるアリエルであった。

ルーデウスはクリフの住むアパートを訪れ、彼にオルステッド陣営に正式に参加するよう勧誘した。クリフは、家族を守りながらミリス神聖国での権力争いに勝つ自信があると言っていたが、妻エリナリーゼと息子クライブを守ることに不安を抱えていた。ルーデウスは、オルステッドと共にクリフの陣営を支援し、彼の家族を守ることができると約束した。

クリフは、卒業式までに決断を下すことをルーデウスに約束し、ルーデウスはエリナリーゼにも相談するよう勧めた。卒業式までの間に、ルーデウスはザノバに頼むプロジェクトを進めることに決めた。クリフの返事は卒業式に聞く予定であった。

第二話「ザノバ商店」

王族を辞めたザノバは、王族としての財産を処分し、ルーデウスの家の近くに小さな家を構えた。その家は人形製作に適した設計で、一階は広いガレージのようになっており、二階が居住空間であった。ザノバはジンジャーとジュリとともにこの家で暮らし、生活を始めた。

ルーデウスは、ザノバに魔導鎧の製作賃金を支払い始め、彼の生活を支援した。ザノバは一人で作業したわけではないと遠慮していたが、ルーデウスは魔導鎧が必要なものであり、その技術を維持するために金を支払うのは当然だと考えた。

ルーデウスはザノバの家を訪れ、彼を「人形販売部門の責任者」に任命した。この任命は、ルイジェルド人形の販売計画を始めることを意味していた。ルーデウスは、ルイジェルドを見つけ出し協力を求めるために人形を販売することにした。これは、スペルド族のイメージアップを図ると同時に、魔導鎧の製作技術をさらに向上させるための人材育成も目的としていた。

ザノバはルーデウスの提案を快諾し、ジュリとともに人形の量産体制を整えることになった。ルーデウスは、ルード傭兵団の中から商業に詳しい者を見つけ、ザノバをサポートする予定であった。

数日後、ルーデウスはヨーゼフという男を伴ってザノバの家を訪れた。ヨーゼフは気弱そうな性格で、商人として一度は失敗し、現在はルード傭兵団に所属していた。彼は事務や会計に関しては非常に有能で、ルーデウスは人形販売のアドバイザーとして彼を推薦した。ヨーゼフはザノバのもとで働くことになり、少し不安を感じていたが、ルーデウスは彼を励ました。

ザノバの家に到着すると、ジンジャーが犬のぬいぐるみを抱えているのを見て、リニアが笑い出す場面もあったが、ルーデウスはジンジャーをフォローした。ザノバはヨーゼフを歓迎し、彼との握手を交わした。

ルーデウスはヨーゼフを紹介し、彼が人形販売において素人目線での視点を提供することを期待した。ザノバはプロジェクトに真剣に取り組む意思を示し、ヨーゼフとともに人形を広めることを決意した。

このプロジェクトの目的は、単に人形を売るだけでなく、傭兵団と別ルートの資金獲得や商業的な組織の確立、技術者の育成も含まれていた。しかし、ルーデウスの本当の目的はルイジェルドに再会することであった。顔合わせが済むと、彼らは最初の店舗を建てるための作戦会議を始めた。

ルーデウスは数日後、ヨーゼフという商売に詳しい人物を伴ってザノバの家を訪れた。ザノバの工房で、ルーデウスはルイジェルド人形とノルンが書いた絵本を紹介した。この絵本はルイジェルドの英雄譚を描いたものであり、ノルンから販売許可を得ていた。ルーデウスは本と人形を同時に販売することでスペルド族の名誉を回復しようと考えていたが、ヨーゼフは庶民相手には難しいと指摘した。

ザノバは絵本に付属している文字習得用の表に注目し、子供向けの商品としての可能性を示唆した。さらに、販売場所としてシャリーアの工房街を提案し、アスラ王国への展開も視野に入れて計画を練った。ヨーゼフはこの計画に賛同し、商売に関する経験を活かして積極的に提案を行った。

商売に関する全体的な方向性が決まり、ルーデウスはヨーゼフとザノバに商売を任せることを決断した。そして、ザノバ商店が正式に発足することとなった。会議が終わると、傭兵団のボスであるリニアがヨーゼフを見守るために同行していたことに気づき、ルーデウスは彼女の成長を喜んだ。

ザノバ商店の最初の店舗は、工房街の外れにある倉庫を改造して設置された。魔法都市シャリーアでは本社と工房業務が主となり、今後はアスラ王国への展開を計画していた。このためにアリエルへの協力要請が必要になる見込みである。ルイジェルド人形の販売計画はルーデウスの手を離れたが、彼はその成功を祈っていた。

第三話「クリフと魔法大学生徒会」

クリフは職員室で特別生としての研究レポート『呪いを抑制する魔道具に関する研究』を提出し、大絶賛を受けたが、すでに首席卒業者が決まっていると告げられた。彼はそれを受け入れ、卒業式までの間、ルーデウスに返事をすることを考えた。悩む中、クリフはノルンと生徒会メンバーたちが学内で幽霊騒動について議論しているのを聞き、彼らの討伐作戦に参加することを決意した。彼は生徒会の面々と共に地下倉庫へ向かうこととなった。

魔法大学の地下倉庫は、増改築を繰り返してきた学校の歴史を物語る場所であった。生徒会長ノルンの発案で、この倉庫を整理し、生徒用のロッカールームとして利用する計画が始まったが、その中でスケルトンが現れる事件が発生した。これは倉庫の奥に潜むレイスの存在によるものであった。ノルンはクリフの協力を仰ぎ、生徒会メンバーと共にレイス討伐を試みることになった。彼らは役割分担を決め、慎重に地下倉庫へ進んでいった。

石の扉は、青白く光る聖級の結界魔術の魔法陣で守られていた。クリフはこの結界を解除し、ノルンと生徒会のメンバーとともに内部へ進んだ。扉の先にはスケルトンが待ち構えており、彼らはそれを打撃と魔術で撃退しつつ、奥に進んだ。最奥の祭壇ではレイスが現れ、生徒会のメンバーを襲撃したが、クリフの神撃魔術によりレイスは撃退された。戦闘後、彼らは現場の状況を調査し、レイスの不在についての疑問を抱きつつ探索を開始した。

魔法大学の地下でレイスが発生した原因は、ネズミ穴から地上に出ていたことであった。この場所には、かつて生徒が閉じ込められて死亡したという過去があったことが手記から判明した。クリフと生徒会は、この事実を受けて生徒たちの骨を埋葬し、祈りを捧げた。学校は事件を公表する方針をとり、ジーナス教頭がその決定に関与していた。ノルンは、自分でできることは自分でやるべきだと考え、ルーデウスには頼らなかったが、クリフは彼女の考え方に刺激を受け、自分自身の成長を確かめたいと決意した。卒業を控えたクリフは、生徒会のメンバーから感謝され、ノルンからも祝福を受けた。

クリフは夜にベッドでエリナリーゼと共に過ごしながら、ルーデウスへの返事を考えた。彼はルーデウスに感謝しつつも、今後は自分の力で歩んでいく決意を固めた。エリナリーゼもクリフの決意を理解し、彼を支えると告げた。クリフはまた、ノルンが自分を好いているかもしれないと思ったが、エリナリーゼはそれを勘違いだと指摘した。クリフは少し恥ずかしがりながらも、家族と共に新たな一歩を踏み出す覚悟をした。

第四話「クリフとザノバの卒業式」

ラノア魔法大学の卒業式が行われた。クリフとザノバも卒業生として参加した。クリフは成績優秀だったが、首席を取ることはできなかった。彼は卒業後の進路について未だに悩んでいる様子であった。式典後、クリフは友人や知人たちと再会し、卒業を祝った。ザノバも卒業式に参加し、感慨深い様子を見せた。

その後、首席卒業者のブルックリン・フォン・エルザースがルーデウスに決闘を申し込んだ。ブルックリンは自分の実力を確かめたいと考え、クリフに勝ったことを機にルーデウスに挑むことを決めた。ルーデウスはこれを受け入れ、ザノバに審判を依頼した。卒業式という特別な日に決闘を行うことになり、ルーデウスとブルックリンは互いの実力を試すことになった。

ラノア魔法大学の卒業式が行われた後、ルーデウスは校庭で決闘を行った。卒業生のブルックリン・フォン・エルザースからの挑戦を受け、ルーデウスは勝利を収めた。続いて他の卒業生からも次々と挑戦を受け、合計で二十人と対戦した。ノルンや生徒会の協力で、騒ぎは無事に収まり、卒業生たちは満足して帰った。

その後、ルーデウスはクリフと再会し、卒業を祝福した。クリフはルーデウスに対し、「卒業後一年間は魔法都市シャリーアに留まりたい」と伝えた。彼はクライブが乳離れするまで見守りたいと考えていた。また、クリフはミリス教団での自分の力を試したいという意向を示し、オルステッドの支援を受けることを延期したいと述べた。クリフは妻エリナリーゼと話し合い、自分が一人前になるまで家族を置いていく決断をしていた。

ルーデウスはクリフの意志を尊重し、一年間の猶予を与えることを約束した。彼は今後アスラ王国への進出を計画し、忙しい日々が続くことを思い描いた。そして、クリフやザノバと共に、卒業を祝う宴会を開くことを決め、楽しい一日を過ごす準備を始めた。

間話  「田舎者、都会へ行く」

ニナ・ファリオンはある夏の日、アスラ王国からの手紙を受け取った。手紙は水神流の筆頭剣士であり、友人であるイゾルテ・クルーエルからのものであった。内容は、ここ数年の出来事や近況が書かれており、特にアリエル陛下の戴冠式が近づいていることが記されていた。戴冠式の前後一ヶ月間は国を挙げての祭りが行われるということで、イゾルテはニナにその期間に遊びに来るように招待していた。ニナは即座にアスラ王国へ行くことを決めた。剣神流のモットーである即決即断を体現するように、迷わず行動に移したのであった。

アスラ王国の首都アルスでは、戴冠式を控えて人々が押し寄せ、街は混雑していた。そんな中、剣王ニナ・ファリオンは友人イゾルテ・クルーエルを訪ねるためにアルスを訪れていた。彼女は人混みに圧倒されながらも、商人に声をかけられ、絵本と人形を購入した。道案内をしてもらったことで無駄な支出をしたものの、商人の対応に嫌な気はしなかった。

ニナは絵本の勉強をすることを考えつつ、サアルテン通りを進んでいた。途中、大通りでのパレードの歓声に気を引かれ、大通りに目をやると、旧友エリスの姿を見かけた。エリスは、ルーデウス・グレイラットと共におり、娘を肩車して楽しんでいた。ニナはエリスが結婚して子供を持っていることに衝撃を受けたが、声をかけずにその場を去った。

彼女は、エリスが家庭を持ち幸せそうな姿を見て、自分が剣王としての道を進んでいるにもかかわらず、どこか敗北感を感じた。ニナは気持ちを切り替えて、イゾルテに会いに行くことを決めた。

ニナはイゾルテの道場に向かった。そこでは、厳粛な雰囲気の中、剣士たちが訓練に励んでおり、ニナの心は安らいだ。イゾルテに挨拶をした後、道場を案内され、彼女の住居に泊まることになった。

イゾルテの家には空き部屋があり、ニナはそこに滞在することになった。彼女はイゾルテに男っ気がないことに安心したが、イゾルテから「小さな集まり」に誘われ、参加することにした。しかし、ニナはすぐに後悔することになった。

王城近くの館に連れて行かれ、豪華なドレスに着替えさせられたニナは、貴族のパーティに参加させられることになった。そこで、様々な人々と交流したが、食事を楽しんだ後にトイレに行き、迷子になってしまった。

その後、廊下でアリエルとルーデウスが話しているのを目撃し、ニナはルーデウスがアリエルを脅していると誤解した。彼女はルーデウスを斬る決意をしたが、エリスが現れて状況は一変した。アリエルはルーデウスに頼み事をしていただけであり、ニナの誤解が解けた。

エリスに声をかけられたニナは、彼女のドレス姿を褒めた。エリスは自慢げに胸を張り、ニナはエリスがあまり変わっていないことに気づいた。そして、ニナはエリスにイゾルテについての愚痴をこぼし始めた。

ニナはエリスと一緒にパーティ会場に戻り、ルーデウスから「八十年後の戦争に備えてオルステッドに協力してほしい」という話をされた。内容はよくわからなかったが、アリエルからの依頼であることもあり、ニナを含む参加者たちは頷いた。その後、エリスの勧めで、ニナはイゾルテとともにルーデウスの館に泊まり、三人で懐かしい会話を楽しんだ。

翌日からニナは、エリスと共に首都アルスの観光を満喫した。エリスはルーデウスの勧誘をニナに受けてほしいと考えていることが分かり、ニナは少し考えてみることにした。

戴冠式が終わると、ニナは剣の聖地に戻った。帰路で、八十年後の戦争に備えるという話や、エリスとルーデウスの幸せそうな様子を思い返し、何かを考えた。そして、剣の聖地で従兄弟のジノ・ブリッツと再会し、彼に「結婚しないか」と提案した。これがきっかけで、一組の夫妻が誕生することとなった。

間話「成人式」

ノルン・グレイラットは、生徒会長として人気を博し、学業や剣術にも励んでいた。最近では剣神流中級の認可を受け、様々な分野に積極的に取り組んでいる。ノルンは親しみやすさがあり、「ノルンちゃん」と呼ばれることもあるが、恋愛沙汰には無縁で、学校のマスコット的存在となっていた。

アイシャは、エリスが不器用であるためか、アルス君にべったりで、彼を可愛がっている。アイシャは時折心配な行動を見せるが、傭兵団の管理や人材の手配に関しては抜群の手腕を発揮しており、リニアやプルセナとも良好な関係を築いている。

ノルンとアイシャはもうすぐ十五歳を迎え、成人式として盛大に祝う計画が立てられていたが、ロキシーの助言により控えめなお祝いが検討されることとなった。家族全員での会議を通じて、二人に最適なお祝いの方法を考えることに決まった。

ノルンとアイシャの成人祝いのために、家族会議が夜中に地下で開かれた。ルディがサプライズの計画を立てようとしたが、ロキシーやリーリャの意見を受けて、二人にオープンに祝う方針となった。

会議ではプレゼントの内容について話し合われ、リーリャはノルンにハンカチ、アイシャにエプロンを、シルフィはノルンに本、アイシャに羽根ペンを、ロキシーはノルンに特注の鎧、アイシャに園芸用シャベルを、エリスはノルンに剣帯、アイシャにベルトを贈ることになった。ルディはノルンにパウロの人形を製作中であったが、アイシャには何を贈るか決めかねていた。

女性陣の成人の時の贈り物を参考にすることで、アイシャへのプレゼントに頭を悩ませたルディは、最終的にロキシーの提案に基づき、自分がもらって一番嬉しかったものを贈ることに決めた。

準備が着々と整う中、ノルンとアイシャに誕生日会を開くことを伝え、その日は予定を空けておくように通達した。ノルンは珍しく素直に「ありがとうございます」と感謝の意を示した。学校での立場もあるため、普段の刺々しさとは異なる反応であった。

一方、アイシャは驚いた様子で「そっか、あたし、もう大人なんだ」と呟いた。彼女の賢さゆえに何か思うところがあったのかもしれないが、ルディは訓示を垂れるのは控えることにした。自分が大人と言える自信がなかったためである。準備は整い、あとは誕生日会の日を待つのみであった。

誕生日会の当日、ノルンはいつも通り学校に行き、「なるべく早く帰ってきます」と言って出かけた。楽しみにしている様子であった。アイシャは傭兵団の事務所に行ったが、昼前には仕事を終えて帰宅した。団員からのプレゼントはなかったが、お祝いの言葉を受けて上機嫌であった。

アイシャは食堂に座り、準備を進める家族をじっと見ていた。リーリャとシルフィは厨房と食堂を行き来し、エリスとロキシーは食材を運び、ルディは飾り付けを手伝っていた。アイシャは無表情でそれを見守り、何も口出しをしなかった。何を考えているのかわからなかったが、成人について考えているのかもしれなかった。

夕方、準備が整い、飾り付けられた食堂にはプレゼントが山積みされ、冷めても大丈夫な料理が並べられた。ノルンを待つだけとなり、予定より少し遅れていたが、ノルンは宣言通り早く帰ってきた。ノルンは学校で多くの人からプレゼントをもらっており、それを抱えて帰宅した。

ノルンを迎え入れ、本格的に誕生日会を開始することとなった。彼女の人気をうかがわせる場面であった。

誕生会当日、ノルンは学校から、アイシャは傭兵団の事務所からそれぞれ戻ってきた。会は数年前の誕生パーティと同様の流れで進行した。ルーデウスが開会の挨拶をし、成人としての心構えを話し、他の大人たちもそれに続いた。シルフィは責任を持つこと、ロキシーは学び続けること、エリスは目標を持つことを語った。リーリャは感動し、半べそになりながらパウロとゼニスの若い頃の話をした。

プレゼント贈呈では、ノルンは特にロキシーの特注鎧を気に入り、笑顔を見せた。エリスから贈られた剣帯とパウロの愛剣を合わせて、一端の剣士のように見えた。ルーデウスが作ったパウロの胸像に最初は驚いたが、ノルンは大事にすると受け取った。そして、感謝の言葉を述べ、堂々とした姿を見せた。

一方、アイシャは表面上は明るく振る舞っていたが、ルーデウスには違和感があった。笑顔や反応がどこか作り物のように感じられた。アイシャへのプレゼントとして、ルーデウスは自身の成長に繋がったミグルド族のペンダントのレプリカを贈った。アイシャはきょとんとした表情でペンダントを見つめ、何かを考え込んでいる様子であった。

誕生会ではメインディッシュやケーキを食べながら楽しんでいたが、ノルンにプレゼントを渡しに来た学校の生徒たちが訪れ、プレゼントの山ができた。アイシャのプレゼントは家族からだけであり、彼女の笑顔はどこか作り物めいていた。

そんな中、玄関で騒ぎが起きた。ガタイが大きく毛深い獣族の傭兵団が訪れ、アイシャのために巨大なイノシシの魔物をプレゼントした。団員たちは「誕生日おめでとう」と声を揃え、アイシャを祝福した。

アイシャはその光景を見て大声で笑い、満面の笑みを浮かべた。彼女も自分のコミュニティで受け入れられていることを感じた。アイシャは庭を使って団員たちと一緒に食事をしたいと提案し、それが承諾され、笑顔を見せた。

その後、ノルン目当てでやってきた学生たちを巻き込みつつ、庭で宴会が始まった。獣族の持ってきたイノシシが丸焼きにされ、商店街でアイシャに世話になったというおっちゃんが持ってきた酒が振る舞われた。近所迷惑だっただろうし、厳かな成人式とはかけ離れていたためか、ノルンはため息をついていた。

しかし、ノルンは嫌そうな顔はしておらず、水を差すようなことも言わなかった。アイシャが心の底から楽しんでいるように見えたからかもしれない。宴会はしばらく続き、傭兵団の面々が満腹になったところでお開きとなった。人々が三々五々、帰り始める中、アイシャが「大人って、わかんないや」とポツリと言った。自覚を持って生きると言ったノルンに対し、アイシャの言葉は子供っぽく聞こえた。

しかし、それも自然なことだろう。アイシャにはアイシャの、ノルンにはノルンの大人像がある。人の数だけ、大人と子供がいる。それぞれ、自分の理想に近づいていけばいいのだ。「そうだな、わかんないな」と答えた。アイシャに対しては無理に大人ぶる必要はないと思えた。こうしてアイシャとノルンは、十五歳になった。

第五話「成果とそれから」

一年が経過した。あっという間だった。そして今日、ラノア魔法大学の卒業式が行われた。自分の卒業式である。普段は生徒会側から眺めていた行列に、最近あまり袖を通していない制服を着て卒業生の一人として参列した。ザノバとクリフの卒業式がつい昨日のことのように感じられた。

見覚えのない同級生に囲まれながら、校長の話を聞いた。校長の話は以前に数回聞いたものと全く同じで、毎回同じ原稿を読んでいるようであった。在校生の参列がないことは楽であったが、感慨深さはあまり感じなかった。学校にはあまり来ておらず、授業もほとんど取っておらず、最終的にはホームルームにすら出席していなかったからだ。ただ籍を置いているだけという感じだった。それでも、無詠唱魔術に関する研究考察と、その教育方法に関するレポートを提出したところ、C級魔術師ギルド員の証をもらえたが、これでは感慨深さを感じるのは難しかった。

しかし、思い出は多かった。シルフィと再会し、ザノバやクリフと仲良くなり、事あるごとにリニアとプルセナにセクハラをかまし、ナナホシと共に日本の思い出話を語り、バーディガーディと酒を飲んで笑った。そんな場所ともお別れだった。そう考えると涙が出そうになり、これが感慨というものかと感じた。なるほど、深いものだと思った。

この一年で、アスラ方面への準備が完了した。アスラ王国に数ヶ月滞在し、傭兵団の支部やザノバ商店の支店、工場を設立したのはアリエルの支援によるものである。彼女はオルステッドに協力し、パーティを開いて自派の人間を集めた。アリエルを中心に、アスラ方面は順調に進展している。

アリエルは、エリスが男の子を生んだことを喜び、子供の誰かをアスラ王家の子供と婚約させることを提案したが、それは断った。子供の意向次第で考慮することにした。現在はアスラ方面を手中に収め、今後は王竜王国に進出し、ランドルフのつてを利用して関係を築く予定である。

研究の成果もあった。ザノバは店舗の立ち上げで忙しかったが、店は順調に回っている。クリフは研究に従事し、道具の効果を向上させたが、完全な解除には至っていない。鎧の召喚方法を考え、転移魔法陣を利用して召喚する方法を確立した。オルステッドは通信用の石版を作成し、固定電話として使用されることになった。

子供たちも成長している。長女のルーシーは五歳になり、元気に育っている。ララは二歳で好奇心旺盛に動き回り、レオに守られている。アルスは一歳で家族が大好きだが、父親が抱くと泣く。少し寂しいが、今後の教育が必要だと感じている。

総括として、この一年は多くの成果があった年であり、「来年もこの調子で頑張りましょう」という評価を得た年であった。

一年を振り返っているうちに卒業式が終了した。首席はルーデウスではなかったが、卒業を迎えたことに感慨はあった。卒業後、仲間たちと酒場でクリフの送別会を兼ねた宴会が開かれた。クリフはミリス神聖国で新たな戦いを始めることになっていた。エリナリーゼは彼を信頼しつつも心配しており、ルーデウスにクリフを見守ってほしいと頼んだ。ルーデウスは友人としてクリフを支援することを決意した。

宴会が終わった後、ルーデウスは帰宅したが、そこで重苦しい空気を感じた。彼に届いた手紙が問題であり、ミリス神聖国のゼニスの実家からゼニスを連れ戻すようにという内容だった。ノルンとアイシャはゼニスの実家であるラトレイア家に行くことを嫌がったが、ルーデウスはゼニスを連れて行くことを決めた。ミリス神聖国への移動を決めたルーデウスは、アイシャに同行を依頼し、傭兵団の立ち上げをサポートしてもらうことにした。彼はクレアという人物に対する不安を抱きつつも、次の旅の準備を進めることとなった。

王竜王国への予定を変更し、次の傭兵団支部をミリス神聖国に設立することとなった。アイシャは文句を言いながらも、準備を始めた。彼女は各国における必要な人材の資料を用意し、支部設立には国の後ろ盾がないため、半年程度を目処に軌道に乗るかどうかを見極める予定であった。

ルーデウスはクリフにも同行することを伝え、彼はそれを受け入れた。クリフはルーデウスが同行することに安心感を覚えている様子だった。ミリス行きが決まったメンバーは、ルーデウス、アイシャ、ゼニス、リーリャの四人であった。シルフィとロキシーはそれぞれ家庭や魔族であることを理由に留守番を選び、エリスはリーリャの反対で同行を断念した。

ラトレイア家のクレアが気難しい人物であることから、エリスを同行させない方が良いと判断した結果、ルーデウスは妻たちを誰も連れて行かないこととなった。準備が整い出発を控えたある日、シルフィの妊娠が判明した。

第六話「そしてミリシオンへ……」

シルフィが二人目の子供を妊娠したことが発覚した。出発直前のこの時期、リーリャは家事を任せられる人がいないことに不安を覚えたが、ロキシーやエリスの助けがあるため、何とかなると判断した。

リーリャはシルフィの妊娠に対する不安を抱えていたが、ゼニスの強い意志を見て、その不安を振り払った。リーリャはゼニスの代わりにシルフィの世話をすることを決意し、アイシャにはゼニスのお世話を任せることになった。アイシャは一瞬迷ったが、状況を理解して了承した。

ルーデウスはシルフィに愛を伝え、子供の名前を考えておくことを約束した。出発前にロキシーとエリスにも別れの挨拶をし、ルーデウスたちはミリス神聖国へと出発した。

ルーデウス、アイシャ、ゼニス、クリフの四人は、ミリス神聖国へ向けて出発した。荷物は多かったが、二式改を装備したルーデウスは問題なく移動できた。出発前にクリフは、ルーデウスの子供の誕生を祝福し、ラトレイア家について情報を提供した。ラトレイア家は、神殿騎士団を輩出する名家であり、ノルンは「出来が悪い」と言われた記憶があり、アイシャも「ノルン姉を立てろ」と言われたことがあると話していた。リーリャはラトレイア家を「血筋と教義を重んじる方」と評した。

移動中、ルーデウスはゴブリンを排除しながら、ゴブリンが生息地によっては魔族と認識される可能性を考えた。アイシャは傭兵団での人間関係について悩んでいた。彼女は部下に厳しく指導する一方、リニアやプルセナがフォローしていると話した。ルーデウスはアイシャが他者の苦悩を理解することで、さらに人望を集めると考えた。

ミリシオンへの道中、馬車を購入して移動を続けた。ミリス神聖国の風景はアスラ王国とは異なり、放牧地が広がっていた。魔物の多さはミリスの方が多かったが、ルーデウスたちは順調に進み、ミリシオンに到着した。

第七話「クリフ、故郷に帰る」

ミリス神聖国の首都ミリシオンに到着した一行は、ルーデウスが人生で二度目の訪問をした。初めて訪れた時の北側からの景色は、青竜山脈から流れる川、湖に浮かぶホワイトパレス、金色の大聖堂、銀色の冒険者ギルドが広がっていた。これらの美しい景色は、冒険家ブラッディーカントの『世界を歩く』という本で読んだ通りであった。

今回の南側からの景色も同様に美しく、高い塔と城壁が清廉な白銀の城を際立たせていた。クリフはその美しい城を見ながら、「その中身はきっと、世界で一番汚い」と呟いた。ミリス神聖国の外観は美しいが、中身はそうではないと感じていた。ルーデウスは、クリフがその町でこれからの戦いを迎えることを理解していた。

ルーデウスは、クリフに何かあったら言ってほしいと申し出た。クリフは、馬車で自分の家まで送ってほしいと頼み、ルーデウスはそれを快諾した。この日、クリフは約十年ぶりにミリシオンに戻ったのである。

ミリス神聖国の首都ミリシオンに到着した一行は、ルーデウスが人生で二度目の訪問をした。初めて訪れた時の北側からの景色は、青竜山脈から流れる川、湖に浮かぶホワイトパレス、金色の大聖堂、銀色の冒険者ギルドが広がっていた。これらの美しい景色は、冒険家ブラッディーカントの『世界を歩く』という本で読んだ通りであった。

今回の南側からの景色も同様に美しく、高い塔と城壁が清廉な白銀の城を際立たせていた。クリフはその美しい城を見ながら、「その中身はきっと、世界で一番汚い」と呟いた。ミリス神聖国の外観は美しいが、中身はそうではないと感じていた。ルーデウスは、クリフがその町でこれからの戦いを迎えることを理解していた。

ルーデウスは、クリフに何かあったら言ってほしいと申し出た。クリフは、馬車で自分の家まで送ってほしいと頼み、ルーデウスはそれを快諾した。この日、クリフは約十年ぶりにミリシオンに戻ったのである。

ミリシオンには四つの入り口があり、冒険者区、居住区、神聖区、商業区に分かれていた。今回、一行は冒険者区の入り口から町に入った。クリフが久しぶりに故郷を見たいと言ったため、町の中を馬車で進むことにした。

ミリシオンの冒険者区には、多種多様な冒険者たちがいた。特に、獣族や長耳族といった種族が多く見られた。クリフは、この町で傭兵団を立ち上げるための人材を探していた。彼はアスラ王国で成功した経験を活かし、ミリシオンでも同様に優秀な人材を見つけたいと考えていた。

アイシャもまた、周囲を観察しながらメモを取っていた。冒険者区以外にも、神聖区や居住区を見てから結論を出すべきだと考えていた。冒険者だけでなく、現地の人々を相手にすることが重要だと感じていた。

一行が進む中、ゼニスが馬車の上で立ち上がり、何かを指さした。その先には、猿のような顔をした男がいた。彼は獣族ではなく、魔族であった。この出会いは、一行にとって思いがけない再会であった。

ミリシオンには四つの入り口があり、冒険者区、居住区、神聖区、商業区に分かれていた。今回、一行は冒険者区の入り口から町に入った。クリフが久しぶりに故郷を見たいと言ったため、町の中を馬車で進むことにした。

ミリシオンの冒険者区には、多種多様な冒険者たちがいた。特に、獣族や長耳族といった種族が多く見られた。クリフは、この町で傭兵団を立ち上げるための人材を探していた。彼はアスラ王国で成功した経験を活かし、ミリシオンでも同様に優秀な人材を見つけたいと考えていた。

アイシャもまた、周囲を観察しながらメモを取っていた。冒険者区以外にも、神聖区や居住区を見てから結論を出すべきだと考えていた。冒険者だけでなく、現地の人々を相手にすることが重要だと感じていた。

一行が進む中、ゼニスが馬車の上で立ち上がり、何かを指さした。その先には、猿のような顔をした男がいた。彼は獣族ではなく、魔族であった。この出会いは、一行にとって思いがけない再会であった。

クリフの家に着いた頃には日が落ちており、その家は普通の一軒家であった。教皇の家としては意外に思えたが、教団本部に勤める聖職者は同様の家を支給されるとのことだった。クリフは、祖父が本部にも部屋を持っているため、この家は使っていないと説明した。

クリフは一行に泊まっていくように勧め、皆で掃除を始めた。埃だらけの家を風魔術で大まかに掃除し、アイシャが素早く台所を片付けた。軽い晩餐の後、クリフの家に泊まることになり、ゼニスにはベッドを譲り、ルーデウスとアイシャは床に寝ることにした。

アイシャはルーデウスと一緒に寝ることを楽しんでおり、ルーデウスも彼女を家族として愛していると感じていた。アイシャはいつか誰かを好きになり、子供を持つことを考えるかもしれないと言った。彼女は母親の言いつけに従って明日ゼニスの実家に同行すると決めた。ルーデウスは彼女の協力に感謝し、眠りについた。

第八話「ラトレイア家」

ゼニスの実家は大きく、貴族の邸宅というにふさわしい佇まいであった。大きな門や獅子の像、噴水に囲まれた道を進み、訪問者を迎えるための「お出迎えの陣形」が整えられていた。執事やメイドたちはゼニスを歓迎し、ルーデウスとアイシャも中へ案内された。

応接室で待っていると、クレアという神経質そうな婦人と、彼女の主治医であるアンデルが現れた。クレアは、ゼニスの状態を確認し、アンデルに診察を依頼した。その後、ルーデウスに対して、ミリス神聖国の常識を説きながらも、ゼニスを「子を産める」という理由で婚姻させる意向を示した。

ルーデウスは、ゼニスを物のように扱うクレアの態度に激しい怒りを感じたが、冷静を保ちながらも衝撃を受けた。彼は自分の血管が切れるような音を聞いたような気がし、ゼニスを置いてこの家を去るよう求められたことに困惑した。

ゼニスの実家での一件を経て、ルーデウスはゼニスを連れて神聖区まで戻った。クレアとの対立により、彼は大声で抗議したが、言葉の詳細は覚えていなかった。アイシャの声で我に返り、ラトレイア家と縁を切る決意を固めた。怒りが収まらず、ゼニスを引き連れて立ち去った後、彼はアイシャを抱きしめて謝罪し、別のコネを模索することにした。クリフの家に戻ることを決めた彼は、ラトレイア家に頼らずに傭兵団を作ることを決意した。

第九話「ミリス教団本部」

ルーデウスは、クレアとの不愉快な邂逅を終えてクリフ邸に戻った。そこで、クリフが見知らぬ女性と抱き合っている場面に遭遇し、驚きを隠せなかった。しかし、女性は「ウェンディ」という名前の家事を手伝うお手伝いさんであることが判明し、クリフの説明で誤解は解けた。ルーデウスは、クレアの非常識な言動に憤りを感じ、クリフに事情を説明した。クリフはクレアの行動に理解を示しつつも、ミリスの貴族としての考えを説明した。

クリフはルーデウスに対し、今後のミリスでの活動を円滑に進めるために、彼の祖父に会うことを提案した。クリフの祖父は教皇であり、彼の後ろ盾を得ることはゼニスと傭兵団にとって有益であるとルーデウスは考えた。最終的に、ルーデウスはクリフの提案を受け入れ、今後の計画を立て直す決意を固めた。

ルーデウスは、クリフと共にミリス教団本部を訪れたが、通行許可証がないために中に入ることができなかった。クリフが許可を取りに行く間、ルーデウスは敷地内を散策していた。そこで、彼は中庭で一人の女性を囲む男たちの集団に出会った。彼らは女性を称賛しており、ルーデウスに対しても警戒心を露わにした。ルーデウスが不用意に神について尋ねたため、男たちは敵意を示し、ルーデウスに剣を向けた。

しかし、緊張が高まったところで、女騎士が現れ、ルーデウスを助けた。彼女はルーデウスを甥だと認識し、男たちに剣を収めるよう指示した。女騎士はルーデウスの過去の知り合いであり、彼を見つけて喜んでいた。

ルーデウスは教団本部でゼニスの妹であるテレーズ・ラトレイアと再会した。彼はテレーズに、クレアとのトラブルについて話したが、テレーズはそれを誤解として受け止め、母親の頑固さを指摘した。テレーズはルーデウスを慰め、彼の成長を喜んだ。

その後、ルーデウスは神子と出会い、エリスが過去に彼女を救ったことを知った。神子はルーデウスの妻であるエリスに興味を示し、彼との対話を求めた。ルーデウスは神子に対してオルステッドに敵意を持たないように頼み、神子はそれを理解したようだった。神子の能力については詳しい説明は得られなかったが、ルーデウスは彼女を警戒しつつも敵ではないと判断した。

最後にルーデウスはテレーズにクレアへの伝言を頼み、教団本部を後にした。彼は神子との出会いから、彼女の力と立場に注意を払いながら、今後の行動を考えることにした。

第十話「教皇と、そして……」

ルーデウスは教団本部の中枢でクリフの祖父である教皇に会った。教皇はクリフの紹介を受け、ルーデウスの過去をすでに調査しており、彼の目的についても理解していた。ルーデウスは教皇に対し、傭兵団の立ち上げとスペルド族の人形販売の許可を求めた。

教皇はクリフとの関係を重視し、傭兵団の支援を約束したが、スペルド族の人形販売については、枢機卿派の影響力が強まっているため難しいとした。ルーデウスは教皇の言葉に対し、魔族排斥派に対抗することを示唆されていると感じつつも、今回は傭兵団の支援だけで満足することにした。彼は今後の対応について考えを巡らせながら、教皇との会談を終えた。

ルーデウスはクリフが本部に残る中、一人で教団本部を出て大きくため息をついた。神子と教皇に会い、二人の異なる立場を理解したが、どちらに付くかを決めかねていた。彼は、魔族迎合派の教皇に付きたいと思いつつも、テレーズとの関係を考慮し、慎重に行動する必要があると感じていた。

神子の能力やヒトガミの使徒については、まだ情報が不足しているため、さらなる接触が必要だと考えた。アスラ王国での傭兵団設立時に邪魔がなかったことを踏まえ、今回も行動を進めることを決めた。

次のステップとして、教皇の協力を得たことから、傭兵団支部の設立を優先することにした。具体的には、適切な建物を選び、通信設備を整える計画を立てた。建物の選定はアイシャに任せ、ゼニスの面倒についても相談することを考え、彼は行動を起こすことにした。

ルーデウスは神聖区のクリフ邸に馬車で戻ったが、家ではアイシャがウェンディを責め立てる声が響いていた。アイシャによると、昼間にギースがゼニスを連れ出し、未だに戻ってきていないという。アイシャは、外出中にゼニスが連れ出されたことに責任を感じており、半泣きで混乱していた。

ギースはゼニスの友人を名乗り、彼女を外に連れ出したが、アイシャの留守中であったため、ウェンディがそれを許可してしまった。アイシャは帰宅後、すぐにゼニスを探しに出たが見つからず、ウェンディを責めているところでルーデウスが帰宅した。ルーデウスはアイシャを落ち着かせ、ギースが戻ってくることを待つことにした。

しかし、日が落ちてクリフが帰宅しても、ゼニスとギースは戻ってこなかった。ルーデウスはギースが意図せず時間を過ごしていると考え、少し待つことにしたが、不安が募る夜となった。

ルーデウスはゼニスとギースを探すため、夕方になってから捜索に出る決意をした。クリフはウェンディを擁護しながらも叱責したが、責任は問わず、ルーデウスはアイシャと共に行動することにした。アイシャは、ゼニスがギースと一緒にいなくなったことに動揺し、半泣きで状況を説明した。彼女の推測によれば、ギースは冒険者区にいる可能性が高いと判断された。

ルーデウスはアイシャをお姫様抱っこし、魔導鎧の力を使って夜の空に跳躍することで冒険者区に向かった。ゼニスがいなくなった状況は、偶然ではなく何らかの陰謀が絡んでいる可能性があると考えた。彼は、この事件がラトレイア家、教皇派、神子、あるいはヒトガミの策略であるかもしれないと懸念し、迷いを振り払って行動することを決意した。シーローンでの失敗を繰り返さないためにも、彼は覚悟を決めて捜索を開始した。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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