どんな本?
『新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち ⑦』は、魔法が実在する世界を舞台に、魔法科高校に通う少女たちの日常と成長を描くライトノベルである。本巻では、ハロウィンやクリスマスといったイベントを通じて、彼女たちの友情や恋愛模様が描かれている。
主要キャラクター
• 遠上 茉莉花(とがみ まりか):明るく前向きな性格の持ち主で、アリサの親友。本巻では、ハロウィンイベントやクリスマスの出来事を通じて、彼女の感情や成長が描かれる。
• 十文字 アリサ(じゅうもんじ アリサ):魔法師の名家・十文字家に預けられた少女で、茉莉花とは幼少期からの親友。生徒会長としての責務を果たしながら、茉莉花との友情を深める。
• 一条 茜(いちじょう あかね):茉莉花のライバルであり、優れた魔法技能を持つ少女。本巻では、蟹パーティを通じて十文字竜樹との交流が描かれる。
• 五十里 明(いそり あきら):魔法工学に興味を持つ少女で、司波達也から魔法工学メーカー・FLTへ招待される。彼女の成長と挑戦が描かれる。
物語の特徴
本作は、ハロウィンやクリスマスといった季節のイベントを通じて、登場人物たちの日常や感情の変化を丁寧に描写している。短編集形式で構成されており、各キャラクターの視点から物語が展開されることで、彼らの個性や関係性がより深く描かれている。また、魔法が存在する世界ならではの独自のイベントや文化が描かれており、読者に新鮮な驚きと興味を提供する。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2025年3月7日
• 判型:文庫判/280ページ
• 定価:748円(本体680円+税)
• ISBN:9784049159783
読んだ本のタイトル
新・魔法科高校の劣等生キグナスの乙女たち ⑦
著者:佐島 勤 氏
イラスト:石田 可奈 氏
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あらすじ・内容
ハロウィンにクリスマス。乙女たちの学生生活はイベントが盛りだくさん!!
『それぞれのハロウィン』――九校フェスが終わり、アリサとの時間が増えウキウキの茉莉花。ハロウィンイベントの告知を見かけて……。
『蟹パーティ』――11月上旬、蟹漁が解禁される。茜は十文字竜樹を実家に招待することになり。
『憧れのあの人』――五十里明は達也から魔法工学メーカー・FLTへ招待されるのだが……。
『クリスマスの前に』――街が恋であふれる季節・クリスマス、アリサと茉莉花の前にも、それぞれを慕う男性が現れ!?
乙女たちの日常を短編集でお届け!
感想
ハロウィンの仮装と生徒たちの反応
ハロウィンが近づく中、一高の生徒たちは仮装やイベントに関心を示していた。
茜やレイラは手芸部員の協力を得て、ハロウィン用の衣装を準備した。
仮装への興味は女子生徒だけでなく男子生徒にも広がり、浄偉と役もこの話題で盛り上がった。
意外なことに、魔法科高校の生徒にもコスプレを趣味とする者がいたことが明らかになった。
こうした軽い話題が展開される一方で、ハロウィンイベントを純粋に楽しむ者と、文化的背景を意識する者の違いも描かれた。
クリスマスコンサートの準備と軍楽隊との関係
年末が近づくと、一高の生徒会や部活動のメンバーは忙しくなった。
特にアリサは、軍楽隊のコンサート準備に関わることになり、会場設営の手伝いをした。
防衛大の学生たちも参加し、作業を進める中で、あるアクシデントが発生した。
クリスマスツリーの設置中に突風が吹き、倒れかけたツリーを防ごうとした毛利が、アリサの障壁魔法に弾かれてしまった。
この出来事がきっかけで、ツリーの設置は中止となったが、作業現場の空気は和やかだった。
年上の男性からのアプローチ
コンサート準備を通じて、防衛大の毛利はアリサに惹かれるようになった。
そして、コンサート終了後に告白を試みたが、彼女は「男性と交際するつもりはない」とはっきりと断った。
毛利は潔く身を引いたが、これを盗み聞きしていた浄偉と役は複雑な気持ちを抱いた。
一方、茉莉花もムエタイのジムで知り合った男性からアプローチを受けたが、彼の強引な態度に冷静に対応し、関係を断った。
彼女たちに対して年上の男性たちが積極的に動いたが、どこか発情期のような勢いを感じる展開でもあった。
それぞれの成長と新たな決意
FLTの見学を通じて、明は司波達也の技術力に改めて感銘を受けた。
彼と競うのではなく、支える側として力になりたいと決意を固める。
一方で、アリサは司波達也の持つ底知れぬ雰囲気に不安を感じ、彼を「怖い人」と評した。こうした印象の違いが、それぞれの今後の立場や考え方を浮き彫りにしていた。
全体の感想
本作は、ハロウィンやクリスマスといった季節のイベントを背景に、生徒たちの日常を描いた短編集である。
普段はシリアスな展開が多い魔法科高校シリーズにおいて、こうした日常的なやり取りは新鮮に感じられた。
コスプレに熱心な生徒がいたことには驚いたが、それ以上に、年上の男性たちが次々とヒロインたちにアプローチする展開は、やや強引な印象を受けた。
恋愛要素よりも、それぞれの成長や価値観の違いが際立つ内容であり、登場人物の関係性をより深く知ることができる一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
それぞれのハロウィン
マーシャル・マジック・アーツ部の練習と校内の雰囲気
十月二十六日、九校フェスが終わった翌日、第一高校の第二小体育館ではマーシャル・マジック・アーツ部が立ち技の練習を行っていた。女子部新部長の富田景冬は、緩んだ雰囲気を引き締めるために厳しく叱咤した。しかし、部員たちは普段よりも集中力を欠いていた。それはマーシャル・マジック・アーツ部に限らず、一高全体に蔓延していた気の緩みであった。九校フェスの疲れが原因であり、多くの生徒が燃え尽きた状態にあった。しかし、一部の生徒は異なり、茉莉花は普段以上に意欲的であった。
生徒会の業務と九校フェスの後処理
一方で、生徒会は祭りの余韻に浸る余裕もなく、九校フェスの決算処理に追われていた。学校の予算が関わる以上、支出の監査を行わなければならず、手続きの遅れは許されなかった。書記のアリサは展示グループから提出された領収書の確認を進め、会計担当の水戸も未処理の書類を整理していた。会長の勇人は作業の指示を出しながら、円滑に業務を進めるべく努力していた。どれほど忙しくとも、生徒会は残業や持ち帰り仕事を行わない方針であったため、決められた時間になると活動は終了となった。
アリサと茉莉花の帰宅と警護態勢の変化
生徒会の業務を終えたアリサは、部活帰りの茉莉花と合流し、二人で帰宅した。以前は勇人がボディガードとして同行していたが、ロシア人犯罪組織の動向が落ち着いたため、警備態勢が変更された。九校フェスの裏では、ロシア人犯罪組織が暗躍し、彼らの主な標的は司波達也であった。しかし、十文字家の判断により、アリサの警護は影に回る形となった。これにより、二人は久しぶりに気兼ねなく帰宅することができた。茉莉花はアリサに甘え、以前のように親密な時間を過ごしていた。
商店街のハロウィンセールとイベントの話題
帰り道、二人は商店街のハロウィンセールの装飾に目を留めた。浅草では毎年ハロウィンイベントが盛大に行われ、仮装パレードやスタンプラリーが催される。しかし、九校フェスやロシア人の件で忙しかった二人は、それまで関心を向ける余裕がなかった。茉莉花は興味を示し、アリサを誘った。商店街の広場には昨年のハロウィンの様子が映し出されており、様々な仮装の写真が展示されていた。伝統的な魔女や吸血鬼のほか、可愛らしさやセクシーさを強調したアレンジ衣装も見られた。
ハロウィンの意味と文化的な認識の違い
アリサはハロウィンの本来の意味を考え、日本のイベント化したハロウィンに疑問を抱いていた。彼女の母親は正教会の信徒であり、アリサもその影響を受けていた。一方、茉莉花は日本のハロウィンを純粋に楽しむ姿勢であった。二人はイベントの歴史や宗教的背景について話し合いながら、文化の違いを再認識した。
金沢の竜樹とハロウィンへの関心
同じ頃、金沢では十文字竜樹が友人の伊倉左門と帰宅途中であった。左門はハロウィンイベントに興味を持ち、竜樹を誘った。竜樹は仮装には関心がなかったが、左門の熱意に押され、週末に見に行くことを約束した。
一条茜とレイラの仮装計画
一方、一条茜は義理の従姉妹であるレイラとカフェでスイーツを楽しんでいた。彼女はハロウィンの仮装に興味を持ち、レイラを誘った。レイラは恥ずかしい仮装でなければと渋々了承し、二人は仮装をすることになった。
一高女子のハロウィン談義
翌日、昼休みの学食では、茉莉花、小陽、日和がハロウィンについて話していた。小陽はハロウィンイベントに興味を持っており、日和に経験者としての意見を求めた。日和は友人と過去に参加したことがあり、小陽を誘った。しかし、茉莉花は「視姦されるのが嫌」という理由で消極的であった。一方で、学校内のハロウィンパーティなら興味があると話し、仮装の話題が広がった。
一高男子のハロウィンへの関心
放課後の部活連本部では、浄偉がハロウィンについて話題を振った。手伝いに来ていた役は興味がないとしながらも、仮装を見ること自体には少し関心を示した。浄偉は「どんな仮装が好みか」と問い、役は魔女と答えた。すると浄偉は「ミニスカ魔女がお望みか」と茶化し、役は強く否定したものの、会話の流れでからかわれる形となった。
手芸部員との商店街訪問
放課後、茜とレイラは三高の手芸部員と共に金沢の商店街を訪れた。手芸部員たちは全員がコスプレ愛好者であり、ハロウィンの仮装について話していた茜の会話を耳にし、彼女たちを衣装作りに巻き込んだ。部員たちは茜とレイラをモデルに、デザイン案を次々と提案した。網タイツやスリット入りの衣装のアイデアが飛び交い、二人はマネキンのように扱われながら、苦笑いを浮かべるしかなかった。
和美の仮装相談
夕食後、和美がアリサを訪ねてきた。彼女は中学の友人たちと仮装をすることになったが、衣装の作成に困り、アリサの助力を求めた。アリサはテーラーマシンのスクリプトを作成することに同意したが、デザイン画を確認すると、和美の恥ずかしそうな態度の理由を理解した。衣装は派手で露出度が高く、アリサは一瞬、忠告しようとしたが、和美の交友関係を考慮し、余計なことは言わずに作業に取り掛かった。
アリサの悪戯
スクリプトを完成させたアリサは、ふとした悪戯心で、モデルを和美から茉莉花に差し替えた。仮装衣装を茉莉花の体型に合わせると、思いのほか大胆な仕上がりになった。アリサは慌てて元のデータに戻したが、変更履歴を消し忘れてしまった。
学食での会話
ハロウィン当日、生徒会や部活連の業務が終わり、浄偉と役は学食で昼食をとっていた。そこへアリサ、茉莉花、明、小陽、日和が合流した。浄偉がハロウィンの予定を尋ねたが、誰も特に予定はなかった。明は司波達也との訓練に集中すると答え、話題はすぐにそちらへ移った。浄偉はハロウィンの話を続けるのを諦めたが、役はまだ答えていない人物の予定に興味を持っていた。
茜とレイラの仮装試着
茜とレイラは部活動を休み、手芸部員と共に家庭科室で衣装の試着を行った。手芸部員は二人の姿を見て大いに盛り上がったが、茜はスカートの短さ、レイラはスリットの深さに戸惑いを覚えていた。しかし、部員たちの熱心な説得に押され、最終的にそのままのデザインで決定した。
金沢のハロウィンイベント
夜、竜樹は左門に誘われ、金沢の繁華街へ向かった。ハロウィンの仮装をした若者が徐々に増え始める中、竜樹は二人の魔女の姿に既視感を覚えた。そのうちの一人が彼に近づき、声をかけたことで、彼女が茜であると判明した。茜は濃いメイクと派手な衣装を身にまとい、得意げに竜樹へ感想を求めた。彼は動揺しつつも「似合っている」と答え、茜は満足げに笑った。
東京の商店街とアリサの戸惑い
アリサと茉莉花は、ハロウィンで賑わう商店街を歩いていた。仮装する人々を見て、茉莉花は楽しそうにしていたが、アリサは関心が薄かった。茉莉花はアリサにも仮装を勧めたが、彼女は「可愛いより綺麗と言われることが多い」として気が進まない様子だった。
アリサへの仮装提案
夕食後、茉莉花はアリサの部屋を訪れ、持ち込んだARフィッティングルームの機器を使い、アリサに様々な仮装を試させた。茉莉花は次々と衣装を変え、アリサを楽しませようとしたが、最終的に彼女の悪戯は逆転された。アリサは過去の変更履歴を利用し、茉莉花を過激な仮装姿にすることで仕返しをした。互いに土下座し合った後、二人は仲直りし、手作りのパンプキンプディングを食べながら笑い合った。
竜樹の困惑
竜樹は茜たちと会話を交わした後、手芸部員たちにも囲まれ、質問攻めに遭った。彼は茜とレイラの仮装について意見を求められ、適当に答えたが、その場の雰囲気に疲れ果てた。帰宅後、彼は次に茜たちと会う際、どのような顔をすればよいのか悩み、机に突っ伏してしまった。
それぞれのハロウィン 番外編
夕暮れの再会と誘い
唐橘役は、ハロウィン当日の夕方、一高の校門を出た際に火狩浄偉に呼び止められた。二人は同級生で、クラスは違うが親しい間柄である。浄偉は役を今夜の外出に誘った。役は特に予定がなかったため、快諾した。浄偉が示した待ち合わせ場所は、新宿駅の人混みから離れた改札口であった。
新宿での待ち合わせ
午後七時前、役は指定された場所に到着した。新宿には数えるほどしか訪れたことがなく、土地勘がなかったため、浄偉を探すのに手間取った。しかし、背後から声を掛けられ、先に到着していた浄偉と合流した。浄偉は仮装をせずとも浮かない服装を用意しようと考え、役を貸衣装屋に案内した。そこは西城家が関係する店舗で、関係者限定の貸衣装屋だった。浄偉はブラックスーツを用意し、役もそれを着ることになった。
ハロウィンの夜の賑わい
二人は新宿の街に繰り出した。駅前は仮装した若者で溢れかえり、予想以上の混雑ぶりであった。浄偉は混雑を避けるため、適当なカフェバーのテラス席に腰を下ろした。役は周囲の大胆なコスチュームに圧倒され、視線を彷徨わせていた。そこに、黒いワンピースと帽子を身に着けた二人組の女性が相席を求めてきた。
アリアとユリとの出会い
二人の女性は「アリア」と「ユリ」と名乗った。アリアは落ち着いた雰囲気を持ち、ユリは快活な性格だった。浄偉はユリとの会話を軽快に進め、役はアリアに積極的に絡まれた。アリアは役に対して親しげに接し、役はどう対処すべきか迷っていた。その時、近くで甲高い悲鳴が響いた。
事件の発生
二人は悲鳴の方向へ駆けつけると、男性が倒れており、女性が彼を介抱していた。男性は意識が朦朧としており、女性は「ジャックに襲われた」と証言した。「ジャック」とは、ジャック・オー・ランタンの仮装をした人物のことだった。浄偉は即座にその仮装の人物を追うため、街中へと走り出した。
追跡と遭遇
浄偉は街中を駆け回り、該当する仮装をした人物を発見した。ジャックは不自然な動きをしており、滑るように移動していた。浄偉は追い詰め、ローブを掴んだ。すると、ジャックの仮面が外れ、正体が女性であることが判明した。役も駆けつけ、彼女がただの悪ふざけをしていただけであることを知った。男性は自ら転倒しただけであり、事件性はなかった。
真相の解明
女性は大学で歩行補助具の研究をしており、その試作品を用いた仮装を試していたに過ぎなかった。驚かせるつもりはなかったが、結果的に騒動を引き起こしてしまったことを悔いていた。役と浄偉は彼女の謝罪を受け入れ、解決を図った。
翌日の学食での話題
数日後の昼休み、日和が「新宿にジャック・オー・ランタンが現れた」という話を持ち出した。役と浄偉は動揺しつつも冷静を装った。しかし、日和は二人の写真を持っており、アリアとユリが知り合いであることを明かした。浄偉と役は言い訳もできず、そそくさと学食を後にした。
蟹パーティー
解禁日前日の通学路
十一月五日の朝、左門は三高へ向かう通学路で竜樹に声を掛けた。蟹漁の解禁が翌日に迫り、彼は期待に胸を膨らませていた。しかし、竜樹はその話題に関心を示さず、左門の熱意とは対照的な反応を見せた。左門は故郷の新潟県長岡市でも蟹が獲れることを誇り、加能蟹に負けない味を持つと自信を持って語った。竜樹は蟹の種類や産地に詳しくなかったが、左門の情熱に押され、今度食べに行こうかと話を合わせた。
帰郷と蟹の宴
蟹漁の解禁翌日、金沢の一条家には東京の魔法大学に通う将輝と、その親友である吉祥寺が帰省していた。昨年、将輝が帰省を遅らせたことで妹たちの不満を買い、今年は父の剛毅から早めの帰省を命じられていた。吉祥寺も同行するよう念押しされ、二人は大学から直行する形で金沢に到着した。
歓迎の食卓
帰宅した将輝を迎えたのは妹の茜の叱責だった。彼女は準備を手伝わなかった兄に不満を抱いていたが、将輝は最速で帰省したことを主張し、言い争いを避けるために謝罪した。食卓には蟹料理が並び、一条家の家族と吉祥寺が囲んだ。茜の親友であるレイラは、この日不在だった。
茜への問いかけ
食事中、美登里は茜に対し、十文字竜樹との関係を問うた。茜は同級生として時々話す程度だと説明し、将輝は十師族の関係としてもう少し親しい交流があるべきだと主張した。茜は反論したが、将輝の提案に母の美登里が賛同し、竜樹を食事に招くことが決まった。
招待の申し出
週明け、茜は登校直後の竜樹を廊下に呼び出し、今週か来週の土曜日の夜に予定があるかと尋ねた。竜樹は特に予定がないと答えたが、茜の問いかけに戸惑いを見せた。茜は、一条家に蟹があり、両親の意向で彼を招待することになったと説明した。竜樹は正式な招待かどうかを確認したが、茜は単なる親睦の場だと強調した。竜樹は同級生として参加すると了承し、日時の詳細は後日決めることになった。
十文字家での相談
竜樹は帰宅後、長兄である十文字克人に相談した。克人は招待を快く認め、服装は高校の制服が適切であると助言した。また、一条家への手土産としてワインを用意し、それを竜樹に持たせることにした。竜樹は、兄の配慮に感謝し、招待に相応しい態度で臨むことを決意した。
左門の誤解
ワインが届いた翌日、竜樹はアパートの宅配ロッカーから荷物を取り出したところを左門に見られた。左門は、一条家への手土産と聞くと、交際の挨拶ではないかとからかった。竜樹は茜が吉祥寺に想いを寄せていることを指摘し、そのような関係ではないと否定した。しかし、左門は「お似合いだ」と言い、冗談交じりにからかい続けた。竜樹は不快感を覚えながらも、必要以上に反論することなく話を終えた。
一条家での会食
土曜日の夜、竜樹は一条家を訪れた。茜に案内され、表玄関から招き入れられた。食卓には蟹料理が並び、剛毅、美登里、茜、次女の瑠璃が揃っていた。剛毅は竜樹に関心を持ち、彼の人柄や魔法の実力について問いかけた。竜樹は慎重に答えながらも、剛毅の探りを感じ取った。
瑠璃の指摘と姉妹の応酬
瑠璃は竜樹の落ち着いた態度を称賛し、茜の相手には吉祥寺よりも彼の方が相応しいのではないかと発言した。茜はこれに動揺し、吉祥寺が頼りになる人物であることを強調したが、瑠璃は彼が姉に振り回されているだけではないかと指摘した。茜は反論したものの、会話の流れに押され、次第に劣勢になった。
母の質問と剛毅の追及
美登里は竜樹に、茜をどう思っているのか尋ねた。竜樹は戸惑いながらも、茜が優秀で魅力的な人物であると評価した。これに対し、剛毅は「茜をどう考えているのか」とさらに問い詰めた。竜樹は答えに窮し、状況の重さに圧倒された。
会食の終了と帰路
会話の緊張を解くように美登里が食事を促し、蟹鍋や蟹雑炊が振る舞われた。竜樹は最後まで礼儀正しく振る舞い、感謝の言葉を述べて一条家を後にした。
別れ際の謝罪
門の外で茜は竜樹を見送り、突然深く頭を下げて謝罪した。竜樹は驚きつつも、彼女の真剣な態度に怒りを鎮めた。茜の申し訳なさそうな様子を見た彼は、不思議と嫌な気持ちが消えたと伝えた。茜は安堵し、再び学校で会うことを約束して別れた。
竜樹は夜風を浴びながら、一条家での出来事を反芻しつつ、ゆっくりと帰路についた。
憧れのあの人
放課後の生徒会室
生徒会室では、アリサと明が日常業務をこなしていた。先月の忙しさの反動で集中力が続かず、気持ちの切り替えに苦労していた。アリサは肩を回して一息つくと、明にも休憩を提案した。二人はドリンクサーバーでそれぞれ紅茶とコーヒーを入れ、会議用テーブルに座る。広すぎるテーブルに違和感を覚えつつ、仕事の進捗について語り合った。明は、日曜日に控えた特別な予定に緊張を覚えていた。
明の憧れと招待状
明は、一高のOBであり、世界的に有名な魔法師・司波達也から、魔法工学メーカーFLTに招待されていた。彼女は達也の研究に強い関心を持ち、彼の技術に惹かれていた。FLTに就職するだけでなく、彼の側で働きたいという願望を抱き、今回の機会を最大限に活用しようと考えていた。そのために九校フェスで披露した重力制御魔法の改良版を準備し、達也にアピールするつもりでいた。
不安と同行の依頼
準備は順調だったが、明の表情には不安が残っていた。アリサが問いかけると、明は一人でFLTを訪れることに不安を感じていると打ち明けた。そこでアリサは同行を検討し、十文字家の当主・克人に相談することにした。
十文字家の許可と勇人の同行
克人は、FLT訪問への同行を許可し、司波達也に対して礼節を守るようアリサに助言した。彼は達也を理性的で信頼に値する人物と評価していた。さらに、前当主の和樹はアリサの安全を気にかけ、養子である勇人に同行を命じた。勇人は特に懸念点がないことを確認しつつも、アリサの護衛役として同行を承諾した。
仲間たちの参加
翌日、アリサは明に同行の許可が取れたことを伝えた。これを知った茉莉花は、自分も参加したいと申し出た。さらに、小陽と役もFLT訪問に興味を示し、明がFLTに確認を取ることとなった。その結果、全員の同行が認められ、日曜日の訪問が正式に決まった。
FLTラボ訪問と意外な展開
当日、町田のFLTラボに集合した六人は、達也の秘書・花菱兵庫に案内された。研究室や工作室を見学すると思っていたが、案内されたのは屋上のヘリポートだった。そこには十人乗りのVTOLが待機しており、彼らは巳焼島の恒星炉実験プラントへと向かうことになった。
巳焼島の驚異的な施設
到着した島には、巨大なメガフロートや先進的な研究施設が広がっていた。その規模に圧倒される勇人たちをよそに、明と小陽は研究施設への期待で胸を膨らませていた。一行はバスに乗り、恒星炉プラントへと案内された。
司波達也との対面
研究室に到着すると、ついに司波達也が姿を現した。彼の外見は極めて普通であり、魔法師特有の気配が全く感じられなかった。アリサと茉莉花は違和感を覚えつつも、達也の技術的な知識に感銘を受けた。
技術議論と恒星炉の見学
明は緊張しながらも、恒星炉システムに関する技術的な議論を交わした。達也は、恒星炉の安定性向上のために重力制御魔法の改良を求めており、明の魔法がその鍵になる可能性を示唆した。見学では、実験プラントの仕組みや今後の改良点についての説明が行われ、勇人は魔法師不足の懸念を指摘したが、達也はそれを魔法師自身の選択に委ねるべきだと答えた。
深雪の登場と昼食会
見学後、一行はホテルのレストランへと案内された。そこに達也の妹・司波深雪が現れ、彼女の美しさに皆が圧倒された。食事の場では、達也が深雪の手料理を好むことを自然に語り、二人の親密な関係が窺えた。
帰路と明の決意
帰路のVTOL内で、茉莉花は明に感想を尋ねた。明は、達也の知性と強い意志に改めて憧れを抱き、浮つくどころか決意を固めていた。彼女は、将来恒星炉プロジェクトに携わることを目標に定めたのだった。
十文字家での食卓
十文字家では夕食の席に家族が揃い、アリサはFLT訪問の感想を求められた。彼女は巳焼島の急速な発展に驚いたことを語り、空港やホテルの完成度の高さに言及した。これに対し、克人と和樹は驚愕し、巳焼島の恒星炉プラントが政府の視察すら拒否している施設であることを説明した。
恒星炉の可能性
恒星炉がすでに実用化の段階にあるとアリサが述べると、勇人も同意し、都市の電力供給が十人程度の魔法師で賄える可能性を指摘した。さらに、使用する魔法は高度に自動化されており、低ランクの魔法師でも運用可能だと推測された。克人は東京の電力供給に必要な魔法師の数を問い、勇人は五十人ほどで十分と答えた。この技術の可能性に、和樹は驚愕し、克人も世界を変える発明であることを認めた。
司波達也への印象
克人はアリサに司波達也の印象を尋ねた。アリサは、彼の態度は穏やかであったが、目を合わせていると深い谷間を覗き込むような不安を覚えたと述べ、彼を「怖い人」だと表現した。その言葉に克人と和樹は意外そうな反応を見せた。
五十里家での対話
五十里家では、夕食後に啓と明が二人でお茶を飲んでいた。啓は明にFLT訪問について尋ね、彼女が感銘を受けたと答えた後、「口惜しくはなかったか」と問いかけた。明は一瞬動揺したが、すぐに笑みを浮かべ、啓が達也の技術に嫉妬したことを見抜いた。啓は、魔工師ならば誰もが達也に嫉妬すると認めたが、明は憧れの感情が勝ったと述べた。
明の決意
明は達也と競うつもりはなく、彼の力になる魔工師になりたいと語った。啓は、明が達也に恋愛感情を抱くのではないかと懸念していたが、明はそれを否定し、むしろ彼と深雪の関係を崇拝する立場であることを強調した。彼女は、二人の仲を妨げる者には容赦しないと断言し、FLT訪問を経て「達也と深雪の下で働く」という新たな目標を定めた。啓は、明の突飛な決意に戸惑いながらも、それを受け入れた。
クリスマスの前に
茉莉花
期末試験と茉莉花の決意
一高では月例実技試験を兼ねた期末試験が行われた。B組以下の生徒は上位クラスへの昇格を目指し、A組の生徒も現状維持のために必死で試験に挑んだ。茉莉花はクラスの序列には関心がなかったが、アリサと同じクラスで過ごしたいという理由で努力を重ね、A組を維持した。
試験が終わり、茉莉花はムエタイのジムに通い始めた。マーシャル・マジック・アーツの競技で打撃技の技術不足を痛感したため、打撃力の向上を目指したのだった。
ジムでの鍛錬と初めてのスパーリング
ジムでは基本技術の練習を続けながら、ムエタイの動きを学んでいた。ある日、練習中にジムの若い男性会員が話しかけてきた。茉莉花は最初は適当に受け流していたが、彼がしつこくスパーリングを持ちかけてきたため、応じることにした。
スパーリングでは、彼女の防御技術とカウンターが冴え、相手の動きを封じた。最後には急所への打撃を織り交ぜたコンビネーションで相手を倒し、実力の差を見せつけた。トレーナーたちも茉莉花の才能を認め、本格的な指導を受けることになった。
生徒会室での会話
生徒会室では、明が茉莉花の姿を見かけないことに疑問を抱き、アリサに尋ねた。アリサは彼女がジムに通っていることを明かし、マーシャル・マジック・アーツの技術向上を目指していることを伝えた。明はその熱意に驚きながらも、学校の勉強との両立を気にしていた。
オーグラビリンスへの誘い
ムエタイのトレーナーである山井は、茉莉花をARアトラクション「オーグラビリンス」に誘った。戦闘型のアトラクションであり、茉莉花にとっては良いトレーニングの機会だったため、彼女は了承した。
当日、二人はペアで迷路を攻略し、次々と敵を撃破した。茉莉花はこのシステムを戦闘訓練として楽しみ、動きの研究に活かそうと考えた。一方で、山井は彼女と過ごす時間を意識していたようだった。
予想外の告白と決別
アトラクションを終えた後、山井はカフェで茉莉花に告白した。彼女は即座に断ったが、山井は引き下がらず、粘り強く説得を試みた。茉莉花は最後に「自分より弱い相手には興味がない」と突き放した。
怒った山井は手を振り上げたが、茉莉花の防御魔法によって自らの手を痛める結果となった。彼女は冷静に正当防衛を宣言し、その場を去った。
ジム退会と日常への回帰
翌日、茉莉花はジムを退会した。通い続けることは難しいと判断したためである。電車の中でアリサに経緯を話し、アリサは「勘違いされるのは仕方がない」と諭した。茉莉花は納得し、再びアリサと一緒に帰る日常に戻った。
クリスマスの前に
アリサ
年末恒例のお手伝い
軍楽隊コンサートの準備
東京の江東地区で毎年開催される軍楽隊のクリスマスコンサートには、十文字家が協力していた。彼らは経営する土木建設会社「十文字組」を通じて、会場の設営を担当していた。戦略的な理由から更地にされている埋立地に、毎年一からステージや客席を建設し、コンサート後には撤去する作業が行われていた。
アリサは現場作業に直接携わることはなかったが、作業員の補助や連絡業務を担当していた。また、強力な障壁魔法を扱えることから、事故発生時の安全確保要員としての役割も担っていた。平日も資料整理や事務的な調整に追われ、彼女の多忙な日々が続いていた。
防衛大の学生たちの協力
コンサートの準備には防衛大学の学生たちも参加していた。アリサは現場責任者である毛利利春と顔を合わせた。彼はエリート候補生としての自信を持ちながらも、親しみやすい性格をしており、作業員や他の学生たちとも良好な関係を築いていた。
アリサは当初、彼に対して距離を感じていたが、彼の飾らない態度に少しずつ慣れていった。作業員たちも彼を好意的に見ており、現場の雰囲気は良好であった。
クリスマスツリーのアクシデント
コンサート会場の設営も佳境を迎えたある日、防衛大の学生たちがクリスマスツリーを設置し始めた。しかし、強風のリスクを考慮し、本来は設置されないはずのものであった。指示を出したのは軍楽隊の責任者であったが、安全上の問題が懸念されたため、勇人が直接交渉に向かった。
その間、アリサは学生たちに休憩を取らせ、作業を一時中断させた。しかし、その直後、突風が吹き、ツリーが倒れ始めた。アリサは即座に障壁魔法を展開して防御したが、毛利は彼女を守ろうとして突進し、障壁に弾かれてツリーに突っ込む形となった。
この一件を機に、ツリーの設置は正式に中止されることとなった。
コンサート当日
翌日のコンサートは好天にも恵まれ、無事に終了した。アリサは午後の部を関係者席で観覧した。事前に役と浄偉が立ち見に来ると聞いていたため、午前の部を避けたが、彼らを意識していると誤解されることも避けたかった。
演奏後、アリサは防衛大の学生たちに挨拶をし、毛利から話があると呼び止められた。彼は彼女をトラックの陰に連れて行き、意を決して告白をした。しかし、アリサは「男性と交際するつもりはない」と明確に断った。毛利は潔く諦め、二人の会話は静かに終わった。
盗み聞きをしていた二人
一方で、浄偉と役はアリサと毛利の会話を魔法で盗み聞きしていた。アリサが告白を断ったことには安堵したものの、「男性と交際するつもりはない」という言葉に複雑な心境を抱いた。二人はそれぞれの思いを胸に秘めながら、その場を後にした。
毛利の気づき
数日後、毛利は気分転換に街を歩いていた。そこで偶然、楽しげに歩くアリサと茉莉花の姿を目にした。彼女の自然な笑顔を見た毛利は、自分が引きずっていた気持ちに整理をつけた。アリサには彼女の道があり、自分がその一部になることはなかったのだと悟り、晴れやかな気分でその場を後にした。
新魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち






別シリーズ
魔法科高校の劣等生


























続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー







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四葉継承編



師族会議編



エスケープ編

その他フィクション

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