どんな本?
異世界のんびり農家とは、内藤騎之介氏による日本のライトノベル。
小説家になろうにて連載されており、書籍版はKADOKAWAから刊行されている。
また、剣康之氏が作画をしている漫画版もあり。
月刊ドラゴンエイジにて連載されており、現在は11巻まで発売されている。
また、異世界のんびり農家の日常というスピンオフ作品もあり。
こちらの作画はユウズィ氏が担当している。
アニメ版もあり。
アニメ版は全12話。
2023年1月6日から3月24日まで放送された。
各話のタイトルやあらすじは[こちら]。
物語は、闘病の末に死んだ男性・火楽が、神によって異世界に転移し、農業生活を送るというもの。
彼は神から「万能農具」という特別な道具を授かり、死の森と呼ばれる危険な場所で農地を開拓していく。
そこで出会った吸血鬼や天使、エルフや竜などの様々な種族と交流し、やがて「大樹の村」というコミュニティを作り上げていく。
作品の特徴は、タイトル通りの「のんびり」とした作風であり、戦争や陰謀などのトラブルに巻き込まれるような展開は少なく、主人公が農業や料理を楽しんだり、仲間や家族と触れ合ったりする日常が描かれている。
また、主人公が前世で得た知識や技術を活かして異世界の文化や産業に革新をもたらす場面もある。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2020年04月08日
• 判型:B6判/416ページ
• 定価:1,430円(本体1,300円+税)
• ISBN:9784047360181
読んだ本のタイトル
#異世界のんびり農家 07
著者:#内藤騎之介 氏
イラスト:#やすも 氏
あらすじ・内容
「安心して我に任せよ」
異世界のんびり農家 07
新しく作られた“五ノ村”では、責任者に任命された母狐・ヨウコが獅子奮迅の大活躍。
“五ノ村”の環境を迅速に整えつつ、
予想外に大勢集まった移住希望者をなんとか捌いていく。
そんな中、やってきたのは無礼なエルフの一団。
彼らの要望が“五ノ村”を事件に巻き込むことに……!
感想
聖女は神の声が聞ける能力があるせいで派閥争いの政争の道具にされてしまい、誘拐されまくった結果、五の村に保護される。
そこで農業を手伝いながら教会の管理もする生活でのんびりとしている。
剣聖は先代の剣聖が老衰で亡くなったので、剣聖の弟子達が国王に剣聖の称号を返上して次代の剣聖を決めようとしたら、、
国王は剣聖の称号を戦争に利用するために、自国の将軍に与えてしまった。
それに激怒した弟子達が20人で3000人いる将軍の本陣に突入して将軍を切り捨てしまう。
その弟子達は処刑されてしまい。
幼いため襲撃から外された少女が剣聖を名乗らされる。
そんな剣聖は未熟で弱い。
それを克服するため、剣豪が居る五の村に行って押し掛け弟子になる。
それ以外にエルフ、ドワーフなどが五の村に住み着き結果5万人の人口。
エルフは何か騒いでたけどいつの間にか白旗を挙げてるし。
本村では歯牙にもかけてない感じなのが・・
でも、本村にはハイエルフ、エルダードワーフが居るからな、、
数はともかく質は圧倒的に本村の方が凄いってのが眼中に無い原因なのかも?
でも、本村の村長はその辺を歩いていても気が付かれないモブっぷり。
しかも、本人はじゃれて来る子猫達の世話を試行錯誤することに夢中でマイペースw
最後までお読み頂きありがとうございます。
備忘録
序章 希望
村の喪失と避難生活
村は戦火によって焼かれ、住民たちは避難を余儀なくされた。幸い、事前の避難勧告があり、人的被害はなかった。しかし、家も畑も失い、避難先の村では厄介者として扱われることになった。避難先の村もまた余裕があるわけではなく、受け入れはしたものの、心の奥では彼らを追い出したいと考えている者も少なくなかった。
避難先での苦境
避難者の数は、受け入れた村の人口とほぼ同じだった。表向きは対等な立場とされていたが、実際には召使いのように扱われ、危険な仕事も彼らに回される状況であった。しかし、ここは彼らの村ではない。追い出されないためには、役に立つ存在であることを示し続けるしかなかった。戦が終われば村に戻れると信じ、彼らは耐え続けた。
三年後の現実
戦は落ち着いたものの、終結には至らず、村に戻ることはできなかった。避難先での生活にも限界が訪れ、住人としてこの村に溶け込むか、それとも新たな道を探すかの選択を迫られることになった。避難者たちは農作業に従事したが、収穫は増えず、畑を開墾するには長い年月が必要だった。そのため、彼らの存在は避難先の村にとって負担となりつつあった。
避難先に残る選択
避難先の村に住み続けるには、その住人として認められる必要があった。会合に参加し、村の方針に従い、独身者は婿入りや嫁入りをすれば立場は向上する。しかし、避難者たちが自らの土地を持つことはほぼ不可能であり、村の共有財産として新たな畑を管理することになる。それを受け入れることができる者もいれば、心が追いつかない者もいた。
村を離れる選択肢
村を出る選択肢もあったが、行き先のあてがある者はすでに去っていた。残っているのは行くあてもなく、家族単位での移動すら困難な者たちだった。冒険者になれればまだいいが、多くは悪い道に落ちる危険があった。そのため、結局のところ選択肢は一つしかなく、避難先の村の住人になるしかなかった。
領主からの提案
そんな折、領主の使者が村にやって来た。最初は村に戻れるのではないかと期待したが、そうではなかった。代わりに、新たに建設中の村への移住を提案された。それは〝シャシャートの街〟近郊にある新しい村で、領主はそこに村人として移ることを勧めていた。
新たな村への決断
この提案を聞いた避難者たちは、それぞれに決断を迫られた。新たな村が避難先の村より良いとは限らない。しかし、元の村を思い続けることもまた苦しかった。新しい場所での生活に挑むという選択肢が現れたことで、希望を持つ者もいた。
旅立ちと未来
領主は移住にかかる旅費まで負担してくれることになった。多くの者がこの申し出を受け、新しい村へ向かうことを決意した。避難先の村に残る者もいたが、ほとんどの避難者が移住を選択した。彼らは、新たな村での生活に向けて、一緒に頑張ることを誓い、旅立っていった。
一章 〝五ノ村〟と剣聖
ハンモックの試作と失敗
畑の見回りを終えた後、村長はハンモックの製作に取りかかった。庭の木陰にポールを立て、布製のハンモックを設置したが、使い方に苦戦した。ハイエルフのリアは慣れた手つきでハンモックに乗り、子供たちも簡単に乗りこなした。ハンモックは瞬く間に子供たちに占領され、村長の実験は終了した。
五ノ村の会議と魔王国の文官たち
リアは、フラウが「五ノ村」の会議を開くため村長を探していたことを伝えた。「五ノ村」は転移門を設置する新しい村であり、正式名称は未定だった。村長が会議室に向かうと、文官娘衆が珍しく雑談に逃げ込んでいた。その原因は、魔王国側の責任者リストに名を連ねた強者たちであった。先代四天王の側近ザイアッシュは、内政官でありながら武力でも将軍を倒すほどの実力者であり、彼より激しい人物が他にも多くいた。この現実に、文官娘衆は困惑していた。
五ノ村の実務責任者の決定
魔王国の強者たちとの交渉を誰が担当するかという議題に、文官娘衆はヨウコを推薦した。ヨウコは獣姿で会議に連れてこられ、獣のまま受諾した。しかし、村長の不安を察すると人の姿に戻り、堂々と「任せよ」と宣言した。だが、服を魔力で作っていたため、裸で現れ、フラウたちに即座に目隠しされることになった。ヨウコは再び獣の姿に戻り、正式に実務責任者に就任した。
転移門の設置準備
転移門の管理者として、マーキュリー種の三人、アサ(執事)、フタ(占い師)、ミヨ(幼女メイド)が紹介された。彼らは内政、外交、戦闘を含め何でもできると豪語したが、試しにガルフと戦わせた結果、「なんでも」は言い過ぎだったことが判明した。それでも一定の実力を持つと認められ、転移門の管理を任されることになった。
温泉地への転移門の開通
転移門の実験として、大樹の村のダンジョンと温泉地を繋ぐことが決まった。ハクレンに乗り、村長たちは温泉地に向かった。温泉地の死霊騎士たちは歓迎の舞を踊ったが、その動きは呪詛の儀式のようだった。座標の指定石を設置し、転移門が無事起動。これにより、大樹の村と温泉地の移動が劇的に短縮された。
転移門の運用ルールと課題
転移門の利用には、利用者の記録と十歳以下の子供の単独使用禁止という二つのルールが設けられた。スライムや動物たちの利用も検討され、酒スライムのみ特例として許可された。ルール運用はアサとラミア族が担当し、問題が発生した際は適宜改善する方針となった。
五ノ村の設立と周辺清掃
五ノ村の建設が進み、正式名称の募集が開始された。しかし、村周辺には魔物や魔獣が多く、掃討作業が必要だった。ガルフ、ダガ、リザードマン、ハイエルフらが派遣され、彼らは転移門の座標設置も担当することになった。
五ノ村の名称と未来
五ノ村の正式名称について、村長は五本の塔や五体の像などを考案したが、魔王国側の意見を待つことにした。そして、その矢先、ラスティの出産が近いとの報告を受けることとなった。
魔王国に渡った冒険者
ゴンドは人間の国で名を上げた冒険者であり、より稼げる場を求めて魔王国へ渡った。魔王国では冒険者の立場が高く、移動の自由も大きかったが、魔物の強さも一段上であった。そのため、未熟な冒険者は淘汰されるのが常だった。彼は十二人の冒険者チームを率いるリーダーとして活動していたが、慎重に依頼を選ぶ姿勢を持っていた。
新たな村の魔物討伐依頼
ある日、貴族の隠居地となる新しい村の建設予定地で、魔物の討伐を依頼された。報酬は高く、宿泊場所と食事の提供も含まれていたが、仲間たちは危険性を疑った。しかし、ゴンドは村を作る場所に強力な魔物がいるはずはないと考え、依頼を引き受けた。
予想外の強敵との遭遇
しかし、現地で待ち受けていたのはウォーベア三頭だった。この魔獣は兵士三十人を犠牲にしなければ討伐できないとされる存在であり、仲間たちは戦慄した。逃げることも難しく、戦うしかなかった。彼らは応援が到着するまで粘り、死者こそ出なかったものの、多くが負傷し、ゴンド自身も両腕を負傷した。
依頼主の本気度と冒険者の苦戦
ベースへ戻ると、治療師が惜しみなく治癒魔法を使い、治療費は依頼主が負担していた。さらに、破損した装備の代わりに上質な武器と防具が用意されていた。これにより、彼らは依頼を続行せざるを得なくなった。森にはウォーベア以外にも強力な魔物が潜んでおり、冒険者たちは苦戦しながらも討伐を続けた。
武神ガルフの参戦
依頼主は進捗に不満を抱き、新たな援軍としてガルフを呼び寄せた。ガルフは武闘会で圧倒的な強さを見せた冒険者であり、彼の登場により状況は一変した。彼の圧倒的な戦闘力は、これまで苦労していた魔物たちを軽々と討伐し、ゴンドたちはその実力差に愕然とした。さらに、ガルフの仲間であるリザードマンやエルフたちもまた、驚異的な戦闘能力を誇っていた。
実力差と新たな学び
ゴンドたちはガルフ一行の訓練に参加し、その圧倒的な強さを目の当たりにした。ガルフは最も弱い存在だと言われ、彼らのリーダーになったのも冒険者登録している唯一の人物だったからに過ぎなかった。ゴンドたちは改めて自らの未熟さを痛感し、少しでも強くなろうと訓練に励んだ。
ラスティの出産
一方、村ではラスティが女児ラナノーンを出産した。ラスティの祖先から名を取ったが、それを聞いたドースとギラルは過去の因縁を思い出し、複雑な表情を見せた。ドライムとグラッファルーンは喜びを隠さず、ドライムは庭で踊り続け、グラッファルーンはラナノーンを抱きしめて離さなかった。
出産祝いと宴会
出産祝いの宴が開かれたが、五ノ村の支援に向かったハクレンやガルフたちが不在のため、小規模なものとなった。ラナノーンの兄姉たちが妹を歓迎し、村全体で祝福した。ハクレンが戻った際には、フタの要望で改めて小さな酒宴が開かれたが、結局は大宴会に発展した。
フェニックスの卵の贈り物
宴の最中、南のダンジョンのラミア族が訪れ、フェニックスの卵を贈った。この卵は乳児の縁起物であり、大切に飾られることになった。ギラルが「美味い」と呟いたことで一瞬場が凍りついたが、グラッファルーンに殴られて事なきを得た。
五ノ村の発展
五ノ村では建物が並び始め、もはや村というより街と呼べる規模になっていた。転移門の座標指定の石が設置され、開通準備は整ったが、慎重に扱うべきとして村長は再確認の必要性を感じた。
ガルフの武闘会参加と新たな出会い
ガルフはシャシャートの街の武闘会の特別審査員に招かれ、五ノ村には戻らずに街へ向かった。ダガたちは村への土産として川エビを持ち帰り、その養殖計画が立てられた。このエビは三十センチほどの大きさで、比較的簡単に育てられるとされた。
養殖池とエビの戦闘力
村では養殖池を整備し、エビを放流した。しかし、子猫のミエルがエビに挑み、激しい戦闘が勃発。エビは水弾のような魔法を放ち、ミエルたちは火の魔法で応戦した。戦闘能力の高さに村長は驚き、養殖の是非を一瞬考えたが、ひとまず計画は継続された。
魔法の練習と新たな目標
村長は魔法の才能がないとされていたが、子猫やエビでさえ魔法を使えることに影響され、再び魔法の練習を始めた。しかし、結果は変わらず、周囲の視線を感じて早々に諦めた。
プールと夏の賑わい
村のプールは大盛況であり、ゴーレムが流れるプールの流れを作っていた。村長は水着に着替えてプールに入ったが、女性陣の解放感に押されて翻弄された。グランマリアは空中で障害物として遊ばれ、ヨウコは人間の姿で酒を持ち込もうとして注意された。
果実の差し入れと夕食前のひととき
鬼人族メイドが冷やした果実を差し入れ、村長の部屋は猫や仲間たちで埋め尽くされていた。村長はまったりと過ごしながら、ジュエルやクロたちを撫で、夕食までの時間を楽しんだ。
エビの養殖と計画の始動
エビを仮池から養殖池へ移動させる作業が始まった。リザードマンたちは魔法を使いながら次々とエビを捕獲し、養殖池へ運んだ。池をそのまま残すべきかという獣人族の提案もあり、スライムが自然に池を浄化することを確認したうえで、当面は放置することになった。リザードマンたちと相談し、エビの繁殖状況を一年間観察し、その結果に応じて収穫量を決定する方針が立てられた。
エビの餌と処理の有効活用
エビの食性についても検討が行われ、魔獣の内臓を好んで食べることが分かった。これまで処分していた時間の経過した内臓をエビの餌として活用することが決まり、食料資源の有効利用につながった。養殖池の管理はリザードマンに一任され、増殖を期待することとなった。
転移門の活用と移動時間の短縮
〝五ノ村〟への訪問を計画していたが、移動時間の確保が課題となった。通常の移動では五日かかるため、転移門を活用する方法が検討された。転移門の管理を担当するフタが、転移門を開かずに一方通行の転移が可能であることを提案した。この方法により、行きの時間を短縮できるため、すぐに試されることになった。
訪問メンバーの選定と準備
訪問メンバーには、帰還用の手段としてハクレン、案内役としてダガ、交渉役としてヨウコが選ばれた。しかし、村の住人から安全のために同行者を増やすよう求められ、リザードマン三人、ハイエルフ五人が追加された。過剰な武装に対して村長は疑問を抱いたが、護衛の必要性を考え受け入れることとなった。
転移門による移動と現地の確認
〝大樹のダンジョン〟五層にある転移門で、フタが長時間の詠唱を行い、転移が開始された。警戒のため、先にリザードマンとハイエルフが転移し、その後ヨウコ、ダガ、村長、ハクレンの順で移動した。転移先は〝五ノ村〟の屋敷の地下倉庫であり、事前の警戒も問題なく完了した。
予想外の〝五ノ村〟の発展
地上へ出ると、〝五ノ村〟の台地には建物がなく、代わりに斜面部分に村というより街が広がっていた。台地の外周には内壁が築かれ、さらにその外側に外壁が建設中であった。住人の数は五千人を超え、村というより新たな都市が形成されつつあった。村長は驚きつつも、建設の背景について説明を受けた。
移住希望者による街の形成
村への移住許可が正式に下りていなかったため、移住希望者たちは台地の斜面で生活を始めていた。その結果、住人が増え、自然と街が形成された。さらに、村を守るための防壁建設も進められており、〝魔王国〟側と〝大樹の村〟の代表であるヨウコの間で事前に相談されていたことが判明した。
食料と資金の問題
新しい街では食料生産がほとんどできず、輸入に頼る必要があった。しかし、商会や領主からの寄付により、当面の問題は解決されていた。村長はこれらの資金を負担することを決定し、持続可能な運営のために畑や牧場の開発計画が立てられた。さらに、近隣で有望な鉱脈が発見され、採掘と加工による収益化が見込まれていた。
転移門の早期開通計画
村長は転移門のある場所の整備が完了していることを確認し、早期に門を開くべきと判断した。建材を転移門経由で輸送すれば、短期間で村の建設が進むと考えた。既に五千人が住んでいるため、撤退する選択肢はなく、転移門の開通が最優先課題となった。
魔物の脅威とガルフの登場
村の周辺には強力な魔物が生息していたが、開発の手が入っていないためであり、〝シャシャートの街〟近郊とは異なる環境だった。この疑問に答えたのは、ちょうど下の森にいたガルフであった。彼は人間の剣士ピリカ =ウィンアップと共に現れ、彼女が自身を剣聖と名乗り、弟子入りを希望していることを明かした。
剣聖の実力と評価
ピリカは剣聖の称号を持つが、実戦経験が不足しており、技術は優れているものの戦闘に適していなかった。分身を使った剣技を披露したが、ダガとヨウコには実戦向きでないと評され、模擬戦でも圧倒された。彼女は道場育ちであり、実戦感覚が欠けていたため、剣聖の称号を返上して修業すべきだと厳しく指摘された。
ピリカの過去と剣聖の継承
ピリカは十五年前に先代剣聖の道場へ入門し、五年間修業を積んだ。しかし、先代剣聖が突如死去し、後継者の指名がなかったため道場の高弟たちが王国へ称号を返上。王国は戦争中の将軍に剣聖の称号を授けたが、それに反発した道場の高弟たちは襲撃を決行し、将軍を討ち取った。その後、道場は取り潰される危機に陥ったが、教会の介入で存続が許された。
武闘会とガルフへの弟子入り
十年間道場で修業を続けたピリカは、半年前に剣聖の称号を授かり、各国を巡った後、武闘会に参加。しかし決勝戦で敗北し、その勝者がガルフに挑んで敗れたため、ガルフこそが最強と判断し、弟子入りを希望した。
実力の序列と村長の評価
ピリカはダガを最も強いと評価したが、ダガは「実際の序列は村長が最強である」と訂正した。村長はハクレンに勝利しており、ヨウコもハクレンには敵わないと証言した。ピリカは相手の実力を見抜く経験が不足しており、ガルフにも実戦経験の不足を指摘された。
新たな決意
村長は今後の課題として、転移門の開通と〝五ノ村〟の発展を見据えた計画を進めることを決定した。一方、ピリカは修業の必要性を痛感し、新たな道を模索することとなった。
ガルフの残留とピリカの修行
村長はガルフを残し、〝大樹の村〟へ戻ることとなった。転移門の開放を決めていたが、正式な相談が必要であり、すぐに開けるかは未定であった。ガルフはピリカを見捨てることができず、修行を続けるために残ることを選んだ。ダガも残留を希望していたが、村長の護衛を優先し同行した。ピリカを連れて帰る案も出たが、ガルフは適切な場所で戦わせたいと主張し、その判断が尊重された。
ドライムの巣での滞在
村長一行はハクレンの背に乗り、ドライムの巣へ向かった。そこでは悪魔族たちによる激しい歓待を受けた。ラスティが子を産んだこともあり、祝いの宴が開かれていた。悪魔族の一人が「ラスティを泣かせるな」と厳しく警告したが、グッチに叱られていた。ドライムは不在であり、〝大樹の村〟にいると推測された。一泊後、一行は村へ戻ることとなった。
帰還と報告
〝大樹の村〟に到着した村長は、同行した者たちに礼を述べた後、ガルフの手紙を妻に届けた。ピリカの容姿について質問されたが、適切な返答に悩んだ。休憩を取った後、夕食を兼ねた報告の場が設けられた。村長は〝五ノ村〟への転移門を開くことを提案し、その利便性が議論された。交易の拠点としての価値が高まるが、急激な人口増加に伴う管理の問題も懸念された。
〝五ノ村〟の管理と経済の調整
先代の四天王が奮闘していたが、人手不足が予想された。村の通貨制度も〝五ノ村〟では異なり、他の村との統一が求められた。これらの課題を解決するため、会議が五日間行われた。転移門の開放は可決され、〝五ノ村〟の代表には新たに目覚めたマーキュリー種三人が就任することとなった。
転移門の管理と制限
転移門の利用については、無制限な往来は危険と判断され、制限が設けられた。〝五ノ村〟からの移動は制限され、〝大樹の村〟側も必要最低限の利用に留める方針となった。交易が主目的であり、村長やマルコス、ポーラの移動は例外として許可された。〝五ノ村〟は〝大樹の村〟の傘下とされたが、独立性を重視する方針で決着した。
転移門の開通と建設開始
転移門の開通準備が整い、三日後に開かれた。建材を用意し、ダンジョン内へ運ぶ作業が進められた。転移門を通じて建材が次々と運び込まれ、ハイエルフやリザードマンたちが建設作業を開始した。村長はクロやザブトンの子供たちを伴い、木材を調達するため森へ向かった。一方、ガルフは転移門が開いたことを知ると、急ぎ村へ戻り、妻の元へ駆けつけた。
〝五ノ村〟の区画整理と新たな計画
〝五ノ村〟の区画整理が進められた。元々は台地の上に村を作る予定だったが、現実には側面に街が形成されていた。全員の移住は不可能であり、村長の屋敷や行政機関を上部に設置し、移動は自由とする方針が決まった。主要な道路は馬車の通行を考慮し、ジグザグのつづら折りの形で整備された。さらに東西に新たな専用道路を設け、輸送の安全性を確保することとなった。
防壁の建設と農地の確保
上部の防壁は高さ三メートルほどで、石造りのしっかりした構造だった。四方向に門が設けられ、南門が最も立派な造りとなっていた。下部の防壁は建設中で、周囲の山を活用して谷間に畑を作る計画が進められた。魔物や魔獣の討伐も行われ、冒険者を大量に雇い、徹底的な対策が講じられていた。
〝五ノ村〟の住民構成と移住希望者の増加
住民の多くは戦争の影響で移住を希望した者たちであり、主に西方から来ていた。今後さらに増加する可能性があり、〝シャシャートの街〟からの流入も懸念された。村の建設に関する情報が広まり、各地で話題となっていた。マーキュリー種が新たな代表として統治を担当することとなり、村長は管理を委ねる意向を示した。
ガルフとピリカの修行
ガルフとピリカは森で魔物と戦っていた。村長が訪れると、ピリカは疲労困憊の様子だった。さらに新たな魔物が現れ、ダガが討伐に向かった。ピリカは焦りを見せ、無理に戦おうとしたが、ガルフに制止された。彼女は自由になったものの、道場に残された百人以上の弟子が人質となっていることを明かした。
ピリカの事情と救出計画の検討
ピリカは強くなり、弟子たちを救う必要があった。しかし、村長は単に強くなるだけでは根本的な解決にはならないと疑問を抱いた。〝大樹の村〟に戻り、対策を協議することとなった。いくつかの案が出されたが、王国との対立を避けるため、魔王や始祖の介入は見送られた。竜による直接介入案は危険性が高く、最終的に保留となった。
ピリカの単独行動と誤解
村長が〝五ノ村〟に戻ると、ピリカの姿が見当たらなかった。彼女は建設の手伝いを申し出ていたが、ザブトンの子供たちを見て驚き、剣を抜いたため、アラコによって簀巻きにされていた。ピリカは混乱していたが、ガルフが「生きているなら問題ない」と諭し、ようやく納得した。その後、ピリカは謝罪し、村長やザブトンの子供たちに対する理解を深めた。
道場の現状と弟子たちの問題
道場では百二人の弟子が人質状態にあり、彼らの家族を含めると三百人規模であった。彼らは王国からの支援金で生活しており、独立後の生計が立たないことを不安視していた。また、剣術に特化しており、実戦経験が不足しているため、他の職に就くのも困難だった。
王国の意図と今後の方針
ピリカは二年間で力をつけるよう指示され、外出許可を得たが、見張りは既に〝シャシャートの街〟で行方不明になっていた。ガルフがピリカと出会った経緯を明かし、護衛が冒険者によって船で強制送還された可能性が浮上した。村長は今後の対応について慎重に検討することとし、ピリカの問題解決に向けて協力を決意した。
剣聖の称号と己の未熟さ
ピリカ=ウィンアップは剣聖を名乗っていたが、それを誇ることはできなかった。自身の未熟さを誰よりも理解していたからである。もし兄弟子たちが健在であれば、彼女が剣聖を継ぐことはあり得なかっただろう。かつての道場には一騎当千の剣士たちが揃い、盗賊や不正を行う官僚を一掃していた。だが、その時代は終わり、彼女は剣聖として生きねばならなくなった。
剣聖としての修行と挑戦
己の力不足を痛感し、ピリカは修行の旅に出た。道場での稽古では対人戦に特化していたが、実戦では通用しないことを実感した。〝フルハルト王国〟の周辺国を巡ったが、剣聖の称号ゆえに王族への挨拶や社交の場が求められ、彼女には荷が重かった。そこで、戦争中の国にある〝シャシャートの街〟へ向かうことを決意した。
武闘会での敗北と新たな出会い
武闘会への出場を決め、優勝賞金を目指したが、決勝戦で敗北した。相手は六本の腕を持つ多腕族であり、独特の攻撃に翻弄された。敗北を機に、さらに強くなる必要を感じたが、彼女の鍛錬では限界があった。そんな時、優勝者が審査員としていた獣人族の男、武神ガルフに挑戦を申し込んだ。彼は前回大会の優勝者であり、その強さは圧倒的であった。
ガルフへの弟子入り
ピリカはガルフに弟子入りを懇願したが、彼は「自分より強い者は山ほどいる」と断った。しかし、彼女には諦めることのできない事情があり、必死に食い下がった。そして彼女は、ガルフだけでなく、リザードマンのダガという剣士が兄弟子たちに匹敵する力を持つことを知った。彼らの指導を受けることで、剣術の未熟さを痛感し、本来の言葉遣いに戻すことを決めた。
村長の存在とデーモンスパイダー
ピリカは村長という存在に疑問を抱いた。普通の人にしか見えなかったが、ガルフやダガは決して逆らわないよう忠告していた。さらに、村長はデーモンスパイダーを家族と呼び、その幼生体を心配していた。ピリカはデーモンスパイダーを「死と同じ存在」と教えられてきたが、その考えを改めねばならなかった。村長がただの人間とは思えず、神のように感じる瞬間もあった。
強さを求める理由
ピリカが強さを求める理由は自由を得るためだった。〝フルハルト王国〟は彼女を縛るため、道場の弟子たちを人質にしていた。彼女が戻らなければ、弟子たちがどうなるかわからなかった。村長は彼女に「王国に復讐する気はあるか?」と問いかけたが、彼女は復讐は考えていなかった。ただし、剣聖の称号は捨てたくないという思いもあった。
救出計画の決断
村長はガルフとダガと共に、彼女を助ける方法を模索した。しかし、他国の問題であり、勝手に介入するわけにはいかなかった。そこで彼は「報酬」を求めた。剣聖の称号ではなく、ピリカ自身が何を望むのかをはっきり言葉にすることを求めた。ピリカは改めて頭を下げ、「私たちを助けてください」と頼んだ。
道場からの脱出と移住
二カ月後、弟子たちやその家族全員が〝五ノ村〟へ移住した。〝フルハルト王国〟は作戦決行日に竜の飛来による混乱で対応できなかった。村長は竜に頼んだと言っていたが、その詳細は不明である。道場跡地は先代剣聖と兄弟子たちの墓以外、すべて畑になっていた。村長が一晩で作り上げたという。
新たな生活の始まり
ピリカと弟子たちは〝五ノ村〟で生活を始めた。建設中の村であり、三百人増えても問題はなかった。すぐに住居が用意され、仕事も手配された。彼女たちは魔物退治をしながら、将来的に衛兵となることを期待されていた。ガルフやダガとは週に一度会い、鍛錬を続けた。
剣聖の称号の封印
ピリカは剣聖の称号をしばらく封印することを決めた。〝フルハルト王国〟との軋轢を避けるためでもあったが、何よりも自分にはまだその称号が重すぎると感じたからである。しかし、いつか剣聖の名に相応しい剣士になることを誓った。
ガルフとの関係と未来への展望
弟子としての生活が続く中、周囲から結婚についての話題が出た。ピリカは二十五歳であり、意識せざるを得なかった。ガルフについて尋ねられると、素敵な人だと思うが、それ以上の感情は持っていないと動揺しつつも答えた。だが、可能性があるなら……と考える自分がいることに気づき、赤面した。
二章 秋冬の様子
文官娘衆の仕事と役割
文官娘衆は、〝大樹の村〟の行政を支える存在である。その主な業務は、作物の収穫量の記録と管理、余剰分の販売であった。〝大樹の村〟では年に三回の収穫があり、作物の流通を円滑にすることが求められた。さらに、褒賞メダルの管理も重要な役割であり、村内の経済を維持するための工夫がなされていた。
祭りや武闘会の運営
村の祭りや武闘会の実行委員会としても、文官娘衆は活躍していた。特に武闘会は規模が大きく、世界一決定戦と称されるほどの盛況であった。竜王や暗黒竜、魔王を迎え、厳正な抽選による対戦が行われた。文官娘衆はその運営を担い、時には参加者の不満を受け止めつつ、混乱を防ぐ役割を果たした。
〝ビッグルーフ・シャシャート〟の管理
〝ビッグルーフ・シャシャート〟の経営もまた、文官娘衆の業務の一つであった。屋台規模の店舗として始まったものが、いつの間にか複合商店に発展し、塾や宿の経営まで含まれるようになった。現地の経理担当者からは暗号めいた助けを求める文が送られてきたが、余剰戦力がないため、現状の戦力で乗り切るしかなかった。
〝五ノ村〟の経営管理
新たに建設された〝五ノ村〟は、もはや村ではなく街と呼ぶべき規模であった。幸いにも、〝五ノ村〟には優秀な文官が揃っており、業務の整理が進められた。書類業務の負担は大きかったが、適切な管理体制が整えられつつあった。
人員不足と極秘作戦
文官娘衆の業務量は膨大であり、人手不足が深刻化していた。フラウには何度も増員を相談していたが、そのたびに最新式の計算道具や筆記用具が増えるばかりで、人員は増えなかった。そんな中、突如としてある極秘作戦が持ち込まれた。某国に潜入し、数百人を〝五ノ村〟へ移送するという内容であった。転移門を使い捨てることで実行可能とされたが、計画が粗く、文官娘衆が見直しを行うこととなった。
ピリカの弟子救出作戦
武闘会が終了した後、ピリカの弟子救出作戦が決行された。作戦の要となったのは、竜のマークスベルガークであり、彼が飛行することで注目を集め、その間に転移門を開くという計画であった。ピリカは事前に弟子たちを説得し、全員が逃亡に同意した。作戦当日、転移門が開かれ、弟子たちは無事に〝五ノ村〟へ移送された。転移門は最終的に破壊され、痕跡が消された。
転移門の消失と新たな問題
救出作戦は成功したが、転移門の管理者として予定されていたミヨの役割が消失した。文官娘衆は増員を求めていたため、彼女は一時的にその手伝いをすることになった。しかし、その表情には疲労がにじみ、心配の声も上がった。
冬の訪れと新たな生活
秋の忙しさが過ぎ、冬が訪れた。文官娘衆は依然として多忙であったが、〝五ノ村〟の管理体制が整いつつあった。ヨウコが村長代行に就任し、聖女が宗教関係責任者となったことで、村の運営は安定し始めた。
コタツの団欒
夕食後、村長は久しぶりに一人の時間を持ち、コタツでくつろいでいた。しかし、すぐに子猫たちやクロ、酒スライム、ザブトンの子供たち、ドライム、ヨウコらが集まり、賑やかな団欒となった。そこへウルザ、アルフレート、ティゼル、グラル、ヒトエも加わり、穏やかな夜が過ぎていった。
ダンジョン畑の拡張と地竜の食性
冬でも〝大樹のダンジョン〟内では作物が育つと判明し、本格的に畑を整備することになった。ダンジョン畑と名付けられたこの農地では、モヤシをメインにホワイトアスパラガスやキノコを栽培する方針が決まった。ただし、ダンジョン内に住む者は自由に収穫してよいというルールが適用された。収穫が遅れて育ちすぎたり腐らせたりする心配もあったが、地竜がモヤシを好んで食べるため、その問題は解消された。肉食と思われる地竜がモヤシを好むという意外な事実には驚かされたが、結果としては問題なかった。
真っ白な馬の正体
牧場エリアで異変が発生した。最年長の子馬に見知らぬ真っ白な馬が寄り添っていたのである。牧場を管理する獣人族の娘が報告し、野生の馬ではないかという推測がなされたが、それは否定された。〝五ノ村〟の住人が連れてきた可能性も検討されたが、ヨウコや聖女が否定し、転移門の管理者たちも馬が通過した形跡はないと証言した。ドースやドライム、始祖も関与を否定し、正体が不明なままだった。しかし、ドライムがその馬を見て「ユニコーン」だと断言し、正体が明らかとなった。ユニコーンの雌には角がなく、普通の馬と見分けがつきにくいとのことだった。
ユニコーンの雄の問題行動
ユニコーンには雄と雌が存在し、雄が穢れなき乙女にしか触れられないというのは迷信だった。実際のところ、雄は非常に好色であり、雌のユニコーンが大人しいのに対し、雄は子馬の雌を執拗に追いかけ回していた。これに激怒した父親馬がユニコーンの雄にタックルし、さらには後ろ足で蹴り飛ばして制裁を加えた。ユニコーンの雄は完全にダウンし、その場で倒れ込んだ。ユニコーンの雌と子馬の長男は既に合意の上で番になっていたが、雄は別の子馬の雌にまで目をつけていたため、最終的に〝シャシャートの街〟の近くにある牧場へ送ることが決まった。
ユニコーン輸送の旅
ユニコーンの雄を冬の間に輸送することになり、輸送隊が編成された。参加者は、村長である俺、ガルフ、獣人族の娘数人、ハイエルフ五人であった。転移門のおかげで移動は楽になるはずだったが、ユニコーンの足が異常に速く、〝五ノ村〟から〝シャシャートの街〟までわずか一時間で駆け抜けた。途中でガルフたちとはぐれ、彼らを心配させる場面もあったが、無事に再合流。〝シャシャートの街〟でマイケルに連絡を取り、牧場へ案内された。ユニコーンは牧場で歓迎され、特にマイケルの長男マーロンが大興奮していた。
南のダンジョン訪問とラミア族の熱烈な歓迎
〝南のダンジョン〟に向かうことになったのは、武闘会の宴会での出来事が発端だった。ラミア族と巨人族が、村長との関係を巡って口論し、場外乱闘に発展したのである。それ以来、双方が無言の圧力をかけるようになったため、間を取る形で〝南のダンジョン〟を先に訪問することになった。訪問当日、ラミア族や従えている魔物・魔獣が整列して出迎え、異様な熱狂ぶりを見せた。案内されたダンジョン内は、広大な迷宮のような構造をしており、入口近くの大広間で宴が開かれた。村長である俺はラミア族の長ジュネアよりも上座に座らされ、スピーチを求められた。とっさに言葉を発したが、ラミア族は感動して涙を流すほどであり、過剰な反応に戸惑うばかりであった。
宴の賑わいと翌日の帰還
宴では、ラミア族の伝統料理が振る舞われ、焼き物や生食が中心となっていた。〝大樹の村〟の影響を受けた新しい料理も試され、努力の成果が感じられた。宴の後はダンジョン内に宿泊することになったが、ラミア族が添い寝を希望したため、ルーやティアが牽制に動いた。翌日、予定通り出発し、次なる訪問地である〝北のダンジョン〟へ向かった。
北のダンジョン訪問と予想外の展開
〝北のダンジョン〟では、ラミア族ほどの熱狂的な歓迎はなかったものの、村長である俺はなぜか歌を披露する羽目になった。群衆の注目を一身に受けながら歌うという試練を乗り越え、日帰りで帰還。精神的な疲労を抱えながら、子猫たちに癒しを求めた。
ウルザとナートの料理修行
ウルザとナートが煮カボチャを作り、村長である俺に試食を求めた。味は良かったが、皮が硬く、香草の香りが強すぎたため、改善の余地があった。彼女たちはその後、鬼人族メイドの指導を受け、改良版を作成。ルーは試食を回避したが、アルフレートとティゼルが料理に興味を示していた。
雪の到来と冬の風景
雪が降り始め、クロが外のトイレに出るのをためらうほどの寒さとなった。インフェルノウルフ用の室内トイレを設置する案も浮上したが、鬼人族メイドの判断で却下された。馬や牛は元気だったが、鶏は小屋の中で身を寄せ合って寒さを凌いでいた。ウルザとアルフレートは泥だらけになり、ハクレンの風呂担当となった。
風呂場での一幕
アルフレートと親子で入浴していたところ、ドライムが乱入。孫に邪険にされたとのことで、温まることに専念していた。風呂上がりにクロを洗おうとしたが、コタツから出ようとせず、代わりにユキがやってきた。ユキを洗っていると、クロも現れたため、一緒に湯船に浸かった。しかし、その後クロの子供たちも順番待ちを始め、風呂場は賑やかな状態となった。
冬の寒さと温もり
寒さが本格化する中、風呂場で過ごす時間が増えた。村長である俺は『健康な肉体』のおかげで風邪をひくことなく過ごし、寒い冬の日々を乗り越えていた。
雪合戦の激闘と敗北
クロの子供たちとともに雪で作られた要塞へ突撃したが、敵の集中攻撃を受けて敗北した。特に、アルフレートやティゼルが雪球を持って突進してくる戦法が厄介だった。クロの子供たちは優しさから避けることができず、全員が倒された。さらに、鬼人族メイドの投げる雪球が凶悪で、バスッではなくドゴッという音が響いた。人数差と作戦の甘さが敗因だった。ティゼルの指摘で参加人数を減らしたことが裏目に出たが、もう一度挑戦することになった。しかし、雪の中を潜る戦術もウルザに見破られ、またしても敗北。
風呂と餅の宴
雪合戦で冷えた体を温めるため、全員が風呂へ入ることになった。風呂上がりには焼き餅が振る舞われ、好みの味付けを選べることとなった。味噌を好むナートや、きな粉と砂糖を推す者がいたが、どれも自由だった。しかし、餅を焼く作業は村長が一人で担当し、雪合戦で負けた罰として扱われた。始祖やドライムも餅を食べていたが、手伝う気はなく、追加の餅を倉庫から運ぶことを提案されただけだった。
ザブトンの子供たちとの室内遊び
冬の間、クロの子供たちとばかり遊んでいたため、ザブトンの子供たちとも遊ぶことにした。第一弾として「ザブトンの子供将棋」を開催。大きな盤を用意し、ザブトンの子供たちに将棋の駒を背負わせ、最低でも一回は動かさなければならないルールで対局が行われた。クロヨンが対戦相手に名乗り出たが、彼は村のチェス大会で無敗を誇る強者であり、ハンディをつけることになった。しかし、結果はクロヨンの勝利。敗因はルールによる制限だった。ザブトンの子供たちは将棋の理解が深く、戦略を指摘するほどだったため、次の対局では彼らの指示を受けて挑んだが、それでもクロヨンには勝てなかった。
将棋対チェスの対決
ザブトンの子供たちは将棋の駒の模型を気に入り、チェスの駒の模型も欲しがったため、制作することになった。後日、将棋とチェスの盤上戦が行われ、白熱した対決が繰り広げられた。途中で子猫が乱入し、ザブトンの子供たちは散り散りになったが、配置を元に戻して再開。盤上戦の緻密さに感心させられる場面だった。
聖女セレスティーネの数奇な運命
セレスティーネ・ロッジーネはロッジーネ家の三女として生まれ、農村で育った。しかし、十歳の時に両手に現れた聖痕が教会の人々に発見され、村を離れることになった。父に支払われた金額は山羊一頭にも満たず、自身の価値の低さに憤慨した。以降、教会の人々に反抗的な態度を取ったが、彼らから子供扱いされ、何をするにも細かく指示されることとなった。
聖女としての修行と神の声
大きな街の教会に連れて行かれたセレスティーネは、神の声を聞く修行を始めた。しかし、修行よりも教会の偉い人々への挨拶が多く、頻繁に中断を余儀なくされた。修行を開始して二年後、神の声が聞こえるようになったが、その内容を自分では覚えていなかった。しかし、教会の人々は歓喜し、彼女を聖女として崇めるようになった。最上級の部屋が与えられ、十人のお世話係がついたが、毎日神の声を聞く必要があった。
襲撃と誘拐の連続
教会は何者かに襲撃され、セレスティーネは標的とされた。しかし、彼女は自衛のために鍛えた左ショートフックを駆使し、襲撃者を撃退した。その後も幾度となく襲撃が続き、二度さらわれたが、救出された。しかし、三度目の誘拐では教会側の助けが間に合わず、誘拐されたまま半年間、敵勢力のもとで神の声を伝えることとなった。意外にも待遇は悪くなく、従順であれば食事も用意され、監視も緩やかだった。最終的に彼女を確保したのは教会本部直属の武力集団だったが、彼女はそのまま村へと送られ、身を隠すことになった。
村での生活と適応
セレスティーネは村での生活に適応するのに時間を要したが、徐々に慣れていった。特別扱いされることなく、普通の娘として扱われたため、彼女も村人として働くことにした。農作業に励み、収穫の喜びを再び味わった。また、村では神の声がより鮮明に聞こえ、まるで隣にいるかのような感覚を覚えた。
〝五ノ村〟の教会運営
正式に村へ移住することが決まり、彼女の職場は〝五ノ村〟の教会とされた。村の地下道を通って向かうと、小山の上に出る不思議な地形だった。彼女は教会の責任者となったが、神事には詳しくなかったため、コーリン教本部から神官が派遣された。彼女も勉強を始めることとなり、収穫祭の計画にも関与することになった。
創造神像の制作と設置
村長は〝五ノ村〟の教会のために創造神像を彫り上げた。高さは二メートルを超える大作で、始祖の協力により転移魔法で運搬された。背面には後光を表現する棒が設置され、視覚的に神聖な雰囲気が演出された。クロたちのミニチュア像も作られ、セレスティーネの私室に飾られた。
〝五ノ村〟の発展と新たな人材
〝五ノ村〟は大きく発展し、村長屋敷、教会、村議会場、牧場、交易所が整備されていた。村の代表はヨウコが務め、マーキュリー種の補佐が新たに加わった。村の軍事を担当するヒー、行政を支えるロク、情報収集を担うナナがそれぞれ活躍していた。
新たな交易と鍋の計画
冬の寒さの中、村の設備は風対策が施されており、安全性が確保されていた。そんな中、ゴロウン商会の馬車が到着し、新鮮な海産物が運ばれてきた。村長はこれを機に鍋を楽しむ計画を立てたが、ヨウコ屋敷の門番に不審者として止められるという事態に直面した。顔を覚えられていなかったことに、少しショックを受けた。
〝五ノ村〟での不審者騒動と対策
〝五ノ村〟で不審者扱いされたことが予想以上に大きな問題となった。村長自身は軽い話題として食卓で語ったつもりだったが、村の者たちは真剣に議論を交わした。彼は顔見せのために〝五ノ村〟へ行くことを決意し、最低限の面通しを行うことにした。しかし、派手な衣装を求められ、ザブトンが作った装飾の多い服を着る羽目になった。
〝五ノ村〟での昼食会と顔見せ
十日間、〝五ノ村〟で昼食を取りながら面通しを行った。初日はヨウコ屋敷で、二日目は同じくヨウコ屋敷で働く者たちと。三日目には村議会場でマーキュリー種の三人と食事し、なぜか会議に参加させられた。四日目は先代四天王二人と昼食を取ることになったが、彼らは昼食場所を巡って殴り合い、引き分けた結果として村議会場での食事となった。五日目以降は村内の施設を巡りながら昼食を取り、護衛や関係者が同行するため、それなりの大所帯になった。
昼食期間の出来事と褒賞メダルの配布
十日間の昼食会の中で、彼の立場を明確にする目的は達成された。最終日には教会での食事となり、かなりの疲労を感じた。特に喜んでいたのは先代四天王の二人で、彼らの尽力を考慮し、褒賞メダルを三枚ずつ渡した。また、ヨウコには三十枚を託し、協力者へ配るよう指示した。〝五ノ村〟では通貨が流通しているため、褒賞メダルの配布は慎重に行われた。
竜族の分類と勢力関係
竜族は大きく三つの系統に分かれていた。最上位に位置するのが神代竜族であり、神によって生み出され、現在は五十頭ほどしか存在しない。その下に混代竜族が続き、炎竜族や水竜族などがこれに属した。混代竜族は神代竜族の個体ごとに従っており、たとえば炎竜族はセキレンに従っていた。最後に、最も数が多いのが色竜族で、統制が取れておらず、世界に一万頭以上が存在するとされている。
下級竜人による誘拐事件
下級竜人という竜族とは無関係の種族が、赤竜族の子供を誘拐した。竜族を信奉する者たちはこれを救出したが、救出時に子供が負傷したため、赤竜族は激怒した。暴走を防ぐため、風竜の一頭が介入し、ライメイレンが呼ばれることとなった。ライメイレンはグッチの説得を受け、ドースとドライムを呼び寄せた後に現場へ向かった。
ヒイチロウとライメイレンの関係
ライメイレンはヒイチロウの世話をするとき、若い姿になっていた。彼女はヒイチロウに「かーたん」と呼ばせようとしており、村長はドースにこの動きを止めるよう頼んだ。しかし、ドースもその手があったかと感心し、若い姿になってしまった。ヒイチロウの「とーたん」が村長であることを強調したが、周囲の対応は変わらなかった。
温泉での休息とクロの子供たち
村長は温泉に入り、ライオンの子供たちと交流した。そこには死霊騎士や地竜のダンジョンウォーカーもいた。クロの子供たちが温泉に飛び込み、彼は順番に撫でてやった。さらに、狩りを終えた子供たちが戻り、パニックカリブーを仕留めたと誇らしげに報告した。彼は労いながらも、次々と並ぶクロの子供たちに応じることとなった。
転移門の管理とアサの役割
〝温泉地〟の転移門を管理しているアサに話を聞きに行った。彼の仕事は転移門の動作確認、利用者への説明、通行記録の管理であり、ライオン一家や死霊騎士の協力もあって負担は少なかった。現在、釣りに凝っており、趣味の部屋が充実していた。フタに関する懸念もあったが、彼はすでに書類仕事を任されており、大きな問題はなかった。
移住者の受け入れと新たな生活
避難民の一団が〝五ノ村〟へ向かい、途中で合流を繰り返し、最終的に二千人以上の集団となった。彼らは不安を抱えていたが、村は受け入れてくれた。各家庭に家が提供され、食事も支給された。さらに、職人には適した仕事が割り振られ、報酬まで支払われた。この待遇に驚きつつも、彼らは村の発展に協力することを決意した。
農地開拓と新たな決意
移住者の中には農業を希望する者も多かったが、開拓には許可が必要だった。魔獣や魔物の駆除が優先され、しばらくは待機となった。数カ月後、ようやく許可が下りたが、すでに森は切り開かれ、整備された土地が提供された。各家庭に畑が割り当てられ、五年間は借地扱いだったが、六年目からは正式な所有となると説明された。彼らは決意を新たにし、新たな村の住人として歩み始めた。
〝五ノ村〟の規模と未来
移住者たちはこの村を「村」と認識していたが、その規模はもはや街に匹敵していた。しかし、村長が村と言う以上、それに従うこととなった。彼らはここを新たな故郷とし、〝五ノ村〟の住人として生きることを誓った。
三章 春とエビと勝負
十三年目の春の訪れと華やかな衣装
春が訪れ、ザブトンが目を覚ました。彼は挨拶を交わし、変わりがないことを確認したが、ザブトンの手にはきらびやかな衣装があった。それはまるで王族の儀式で使われるような服で、宝石のような装飾が散りばめられていた。ザブトンの子供たちが集めたものだと知り、彼は一日だけ着ることを了承した。村の住人たちの評判は意外にも良く、彼は派手な衣装のまま村を巡ることとなった。
春の祝祭と予期せぬ宴会
村の住人たちは彼の姿を見ようと集まり、〝一ノ村〟から〝四ノ村〟の住民や、〝大樹のダンジョン〟のアラクネや巨人族まで姿を見せた。そのまま宴会が始まり、一日が費やされた。見そびれた者たちの嘆きもあったが、彼は来年には全員で着飾ることを提案し、村の文官たちは早速、生地の発注を進めた。
村の会議と冬の報告
各村の代表が集まり、村の方針について話し合いが行われた。主な議題は収穫量の安定、備蓄の増加、そして火の用心であった。冬の間に〝三ノ村〟で小火騒ぎが発生し、子供の不注意によるものだった。被害は軽微だったが、火の管理の徹底が求められた。各村には防火用の水槽や樽を設置し、備蓄も家一軒が全焼した場合に備えて一年分を確保する方針が決定された。
褒賞メダルの分配と〝五ノ村〟の対応
各村や個人へ褒賞メダルが配布されたが、〝五ノ村〟には特に多くの枚数が割り当てられた。これは人口を考慮したものであり、各村も納得していた。また、〝温泉地〟の代表としてアサが正式に就任し、管理体制が強化された。〝五ノ村〟の税収は予想以上に多く、黒字が続いていたが、税は村のために使う方針が確認された。
農作業の開始と五ノ村での歓迎
春の訪れとともに畑作りが始まり、各村で新しい耕地が整備された。〝五ノ村〟にも訪れ、彼は新たな果樹の植樹を決めた。特に桜の木が求められ、将来的には花見を楽しむ計画が立てられた。村の住人たちは彼の訪問に熱狂し、万歳三唱まで行ったが、彼は過剰な崇拝を避けるよう注意を促した。
珍客たちの訪問と教会問題
〝五ノ村〟には次々と珍客が訪れた。最初はコーリン教の神官たちで、新たな教会の建設を求めたが、既存の教会の譲渡を要求し、ヨウコに拒絶された。神官たちは恫喝を試みたが、最終的に聖女セレスとフーシュの前で論破され、村を退去した。
ドワーフの横暴と牢獄
次に訪れたのは武装したドワーフの一団で、魔鉄粉を要求した。しかし、彼らは買い取りではなく強奪を狙っており、ヨウコに即座に制圧され牢屋に投獄された。〝五ノ村〟には軽犯罪を取り締まるための牢獄があり、今回のドワーフたちはそこで反省することとなった。
エルフの理不尽な要求と討伐依頼
最後に現れたのはエルフの一団で、〝五ノ村〟の冒険者たちが魔物を駆逐した影響で、自分たちの里が襲われたと主張した。しかし、証拠もなく言いがかりに過ぎなかったため、ヨウコは毅然とした態度で対応した。最終的にエルフ側は正式な討伐依頼を出し、ダガやガルフらが指揮する討伐隊が結成された。
ヨウコの采配と村の安定
一日のうちに三組もの珍客が訪れたが、ヨウコはすべて適切に処理した。〝五ノ村〟の自治が安定し、村の発展が進んでいることが証明された。彼はヨウコや村の管理者たちに感謝を述べ、村の運営を信頼して任せることを決めた。
乗合馬車の計画と即座の実行
〝大樹の村〟から〝大樹のダンジョン〟までは約二キロの距離があり、冬場の移動が面倒であった。そこで、乗合馬車の導入が提案された。計画では、村の屋敷からダンジョンの入り口までの定期便と、ダンジョン内を通る二路線の計三路線が想定された。しかし、計画を話し合う前に、山エルフたちが馬車の製作を始め、数時間で一台が完成した。
馬車の試運転と運行開始
馬車の動力について、馬とケンタウロス族の間で議論があったが、今回は馬が選ばれた。さらに、ダンジョン内の移動用に小型のリヤカー型馬車が作られ、ラミア族が牽引を担当した。彼らは尻尾を使ってスムーズに運行し、移動時間が大幅に短縮された。馬車の導入により、村の女性たちは〝温泉地〟へ行きやすくなり、特に喜んでいた。
ドワーフの訪問と鍛冶勝負の始まり
乗合馬車が稼働し始めた頃、〝五ノ村〟にドワーフの一団が訪れ、牢屋にいる仲間の引き取りに来た。彼らは謝罪と迷惑料を納めたが、捕らえられたドワーフの解放を求めず、むしろ村の法に従って処罰するよう願い出た。さらに、彼らは村の鍛冶技術に興味を持ち、魔鉄粉を使用した武具の鍛造を見学したいと申し出た。これにより、獣人族のガットとドワーフたちの間で鍛冶勝負が決定された。
鍛冶勝負と五ノ村祭の開催
鍛冶勝負は六チームが参加し、勝者には希望が一つ叶えられることになった。参加チームには、獣人族のガット率いるチーム、魔鉄粉を求めるドワーフたち、牢屋から出てきたドワーフチーム、〝五ノ村〟の鍛冶師たちなどが含まれていた。鍛冶勝負の準備と同時に、〝五ノ村〟では祭りが開催され、村の通りには食べ物や見世物の店が並び、七日間の賑わいとなった。
鍛冶勝負の進行と関心の薄さ
鍛冶勝負は夜通し行われたが、村の住人たちの関心は薄く、主に祭りの方に向けられていた。これに対し、ドワーフの一人がヨウコに不満を述べたが、鍛冶の作業は観客向けではないと諭された。それでも、彼は馬車の仕組みを知りたいと願い出たため、見学が許可された。
五ノ村祭と子供たちの反応
〝五ノ村〟の祭りには、大樹の村の住民も自主的に参加した。子供たちも興味を持ったが、クロの子供たちやザブトンの子供たちが行けないことを知ると、ウルザやアルフレートは行くのを躊躇した。しかし、村長の説得により、大人の付き添いのもとで祭りに参加することとなった。
エルフの降伏と魔王国の対応
鍛冶勝負が続く中、ガルフたちが〝五ノ村〟に帰還したが、二つのエルフの里の代表者を伴っていた。彼らは突然、降伏を宣言し、温情を求めた。事情を聞くと、ガルフたちが魔物討伐を進める過程でエルフの抗争に巻き込まれ、防衛のために戦った結果、両陣営が降伏したのだった。これにより、魔王国への対応が問題視されたが、先代四天王の見解では、魔王国領内の争いは許容範囲内であり、問題にはならなかった。
五ノ村への従属と村の安定
最終的に、降伏したエルフの里は〝五ノ村〟の支配下に入ることとなり、正式にその従属が認められた。これにより、〝五ノ村〟の勢力は拡大し、村の統治も強化された。村長は一連の騒動を終え、ようやく休息を取ることができた。
ドワーフの長フアノの決断
フアノは二百人のドワーフを率いる長であったが、指導力を問われる立場になっていた。気ままに鍛冶をしていた過去と比べ、長としての務めは煩雑であった。そんな折、部下の一部が〝五ノ村〟で問題を起こし、牢に入れられたと知らされた。情報をもたらしたのはエルフであったが、ドワーフを嫌う彼らがなぜ協力的なのか疑問に思いつつも、フアノは対応に追われることになった。
五ノ村への訪問と謝罪
牢に入れられたドワーフたちの目的は、村で売られていた魔鉄粉を使った武具であった。フアノは彼らが不当な要求をした可能性を考え、即座に謝罪を決意した。村に到着すると、想像以上に規模が大きく、都市のような光景に驚いた。村長代行のヨウコは温和な対応を見せ、フアノの謝罪を受け入れた。そのため、ドワーフたちはそのまま村の法に従って処罰されることになった。
鍛冶勝負の勃発
フアノは自らが鍛えた斧をヨウコに見せ、魔鉄粉を扱う資格があることを証明しようとした。しかし、この行動が誤解を招き、鍛冶勝負へと発展した。対戦相手は獣人族の鍛冶師ガットであり、彼は〝ハウリン村〟の村長の息子でもあった。フアノは〝ハウリン村〟で修業した経験があり、技術は同じ流派に属していた。つまり、自らの斧を見せる行為が挑発と受け取られてしまったのである。
鍛冶勝負の展開と五ノ村祭
鍛冶勝負は一週間にわたり開催され、村では同時に祭りが催された。料理の香りに心を奪われつつも、フアノは勝負に集中した。途中でヨウコに頼み、特別に料理と酒を差し入れてもらったことで、彼の戦意はさらに高まった。特に気に入ったのは串カツと麦酒であり、彼はこれらに夢中になった。
審査と結果発表
最終日には、エルダードワーフのドノバンが見物に訪れた。審査方法は、実際に剣鉈を試し、その性能を測るというものであった。優勝したのは〝五ノ村〟チームであり、フアノの剣鉈は見た目重視のため実用性で劣った。ガットは魔鉄粉なしの鍛造に苦戦し、本来の実力を発揮できなかった。フアノは敗北を受け入れつつも、結果に満足していた。
村への定住と新たな交流
勝負の後、フアノはヨウコに説得され、牢屋にいたドワーフを部下に持つ形で〝五ノ村〟に定住することとなった。これには、酒や料理の魅力も影響していた。さらに、エルフの代表者である樹王と弓王が村の外交官として迎えられ、村の統治体制はさらに強化された。
五ノ村の新体制
新たな体制のもと、ヨウコが村長代行を務め、先代四天王が相談役に就いた。文官筆頭はロク、情報収集官はナナ、警備主任にはピリカが任命された。さらに、樹王と弓王が外交官となり、村の安定と発展に貢献することが期待された。
五ノ村の未来とフアノの決意
村の新体制が整う中、フアノは自身の未来について考えた。鍛冶師としての腕を磨くことはもちろん、新しい環境での適応も求められた。村の発展に貢献しつつ、ドワーフの鍛冶技術を広めることを決意し、彼は新たな生活を歩み始めた。
薬棚の製作と設置
春の収穫を目前に控えたころ、主人公は工作部屋で木工に励んでいた。ルーからの依頼で薬棚を作ることになり、設計に従い引き出しを作成。しかし、精密に作りすぎたため、引き出しの動きが悪くなり、新たに棚を作り直すことになった。ザブトンの子供たちの協力を得て作業を進め、無事に完成。運搬の際も、彼らの手助けにより、安全にルーのもとへ届けられた。
棚の転用とザブトンの子供たちの住居
最初に作った棚の使い道に悩んでいたところ、ザブトンの子供たちが小部屋として利用し始めた。そこで、棚を彼らの住居として活用することに決定。屋敷の空き部屋を使用する許可を得た後、さらに棚を増設し、ザブトンの子供たちが快適に過ごせる環境を整えた。数が足りず、より大きな棚や部屋も必要になり、最終的には広い休憩室として機能することとなった。
ザブトンの子供たちの変化
しばらくして、ザブトンの子供たちが棚の小部屋を糸で封じるという行動を見せた。繁殖や脱皮かと考えたが、隣の子供たちは問題ないと説明。やがて、小部屋が開き、新しい姿のザブトンの子供たちが現れた。ルーやアンは驚いていたが、主人公は彼らを温かく受け入れた。以降、棚部屋は彼らの脱皮の場としても利用されるようになった。
土人形アースの誕生
新たに屋敷を訪れた男性がいた。凛々しい姿の執事風の男であったが、実は土人形の進化した姿であった。ルーが魔粘土を用いて強化し、変幻自在な体を持つようになったのだ。ウルザの世話をしやすくするための措置だったが、ウルザは最初、土人形がいなくなったと勘違いし、大騒ぎとなった。最終的に和解し、アースはウルザのそばで活動することになった。
魔粘土の活用と死霊騎士の変化
ルーは大量の魔粘土を作り、温泉地の死霊騎士たちに新しい体を提供した。彼らは以前の姿よりも人間らしくなり、温泉利用も可能となった。外見が恐ろしくないため、今後増える訪問者への配慮としても役立つと判断された。一方で、この魔粘土の影響で畑の土が減少し、ティアが相談事がルーに集中することを不満に思う場面もあった。
ツリーハウスの建設と村の子供たちの興味
主人公は新たな試みとしてツリーハウスを建設。高さ十メートルの木を利用し、梯子や階段を組み合わせ、安全性を確保した。完成後は静かに過ごすつもりであったが、子供たちが興味を示し、すぐに賑やかな場となった。特にアルフレートと獣人族の男の子たちは自分たちでも作りたいと考え、主人公と共に新たなツリーハウス建設を目指すこととなった。
卵料理を巡る派閥争いと祭りの準備
村では、卵料理の好みを巡る派閥が発生。目玉焼きの焼き方や卵料理の種類について論争が起こり、最終的に卵の提供が一時的に禁止された。しかし、卵は余っており、煮卵やパン、ケーキ、プリンとして有効活用されることとなった。村は祭りの準備に追われ、主人公も料理研究に参加。卵の使い道について再び論争が起こったが、最終的に煮卵の大量生産で解決した。
五ノ村からの招待客の選定
ヨウコからの相談により、五ノ村からの招待客をどうするか議論された。主人公は関わりの深い者を招きたいと考えたが、大人数になりすぎるため、見送られることになった。五ノ村では派閥が形成されつつあり、内部統制のためにも公平性を保つ必要があった。結果として、五ノ村からの参加者は先代四天王の二人のみとなった。
祭りの開幕と参加者たち
各地から人々が集まり、祭りが始まった。〝一ノ村〟から〝四ノ村〟、〝温泉地〟、さらに〝南のダンジョン〟や〝北のダンジョン〟の住人が訪れ、来賓として魔王や始祖を含む多くの有力者が招かれた。参加者は八百人を超えていたが、五ノ村の規模を見た後ではそれほど多くは感じられなかった。
夢魔族の来訪者も例年より多かったが、村人の指導により、彼女たちは場にふさわしい服装を着用。とはいえ、色気は隠しきれず、主人公が見とれていたところをアンに咎められた。そのまま祭りの開始を宣言するために所定の位置へ向かい、派手な衣装を身にまといながら開幕の合図を行った。
第一部:子供の障害物競走
最初の競技は子供たちによる障害物競走であった。坂登りや跳び箱といった一般的な障害に加え、パズルやモノマネなどの頭脳系の課題も含まれていた。ケンタウロスの子供たちが身体能力で優位に立ち、モノマネの課題では種族によって大きな差が出た。
主人公もアルフレートの回答者として参加し、五回の間違いの末に正解を出したが、冷たい視線を浴びた。一方、ティアがティゼルのモノマネを一発で当てたことで、場の盛り上がりは最高潮に達した。
第二部:大人のリレー競争
次に行われたのは大人のリレー競争である。参加者は自主的にチームを編成し、速さの近い者同士で競い合う形となった。クロの子供たちやハーピーはバトンの代わりにタッチ方式を採用。ミノタウロス族と巨人族の迫力あるレースや、ケンタウロス族とクロの子供たち、馬チームによる接戦など、白熱した展開が続いた。
魔王や有力者たちもチームを編成し、主人公は魔王チームに参加。しかし、結果はビーゼルチームが一位を獲得し、魔王チームは三位に終わった。主人公と魔王が足を引っ張る形となったが、楽しい競技となった。
第三部:盆踊りと宴会
自主参加の部では、主人公の提案で盆踊りが行われた。初めは説明が難航したが、実演を交えながら広めていき、村の住人たちは理解を深めた。
祭りの夜、櫓を囲む輪は徐々に広がり、魔王や死霊騎士、クロの子供たち、ザブトンの子供たちも独自の踊りを披露。主人公は櫓の上で太鼓を担当し、夜通し続く盆踊りを見守った。
ホケロスの派遣と五ノ村の変革
ホケロスは文官として働いていたが、ある日、主である領主によって五ノ村へ送られた。出張かと思いきや、実際には売り渡された形であり、彼は復讐を誓う。しかし、ヨウコに一蹴され、新しい主として彼女に仕えることとなった。
新たな住居と資金を与えられ、ホケロスは五ノ村での職務に就くことになった。そこで、同じく送り込まれた文官たちと再会。さらには元の領主までが五ノ村に移住しており、驚きを隠せなかった。
ヨウコの指示により、まずは五ノ村の行政に適応するための学習を命じられた。これまでのやり方が通じないことを痛感し、彼は新しい手法を学びながら成長。結果的に彼ら文官たちは、急増する五ノ村の人口を管理する役目を担うこととなった。
ゴーンの森とガレツの森の戦乱
ゴーンの森のエルフたちは、グータートル討伐のために五ノ村の協力を求めた。しかし、ガレツの森との対立が激化し、戦闘へと発展。五ノ村の戦士たちが参戦し、戦況は混乱を極めた。
戦闘の中でゴーンの森のエルフの一人が、自らの里を五ノ村に降伏させる形で和平を模索。彼の貢献が評価され、結果としてゴーンの森の里長代行に任命される。しかし、樹王の息子が怪我を理由に復帰しないため、その役目を続けることになった。
さらに、樹王の娘が突如として彼の婚約者となり、彼の人生は大きく変わることとなった。彼はこの決定を受け入れるしかなく、未来に対する不安を抱えながらも、新たな役割を果たしていくこととなった。
終章 〝五ノ村〟の産業発展計画
屋敷の猫たちとその行動範囲
屋敷には六匹の猫が住んでいた。最初に村へ来た猫と宝石猫ジュエル、そして四匹の子猫たちである。彼らの活動範囲は広く、庭や屋敷内だけでなく、牧場エリアや宿の屋根の上、時には牛の背にまで乗ることもあった。ジュエルは基本的に屋敷から出ず、子猫たちを迎えに行くときのみ外に出る。
四匹の子猫のいたずら
子猫たちは普段は大人しく、アンの部屋では決して暴れなかった。しかし、主人が祭りで不在の間、彼の部屋で大暴れ。ザブトンの子供たちが警備していたおかげで被害は敷物がボロボロになった程度で済んだ。帰宅した主人は、糸に絡まれ身動きが取れず助けを求める子猫たちを発見。助けると、それぞれ違う反応を見せたが、やがて全員が落ち着いた。
猫たちの生活環境の整備
主人は、猫たちのために環境を整えた。爪研ぎ用の木材を交換し、砂を敷いたトイレの清掃も行う。猫たちは屋敷の柱で爪を研がず、決められた場所でのみ研ぐため、新しい木材の設置が必要だった。また、風呂を嫌がる子猫たちのために鉄製の毛繕いブラシを用意。最初は警戒したが、一匹ずつ慣れさせ、満足そうな様子を見せた。
祭りの酒の影響と酒場の苦境
五ノ村祭で提供された酒が美味すぎたため、祭り後、通常の酒が売れなくなった。村内の酒の卸業者を探したが、どこも取り扱っておらず、唯一の手がかりはシャシャートの街のゴロウン商会本店であった。しかし、そこでも品切れだった。
困り果てた酒場経営者のもとに、ヨウコの布告が届く。祭りの酒を少量ながら低価格で卸すという内容だった。販売会場には多くの人々が集まり、酒の管理方法や価格について説明が行われた。一般販売を推奨しない方針だったが、販売量が少ないため納得するしかなかった。
酒の等級制度と五ノ村での酒造り
五ノ村では酒の流通を整理するため、酒に等級が設けられた。生産性が高い順に《山》《森》《木》と分類され、五ノ村で流通する酒は《五ノ村酒》《五ノ村酒改》の二種類となった。《五ノ村酒改》は祭りで提供され、人々の間でその味が周知された。
その後、販売の拡大と並行して、五ノ村での酒造りを本格化させる計画が進行。将来的には、五ノ村産の酒と大樹の村の酒を混ぜた《真・五ノ村酒》を開発する構想が立てられた。
五ノ村の夜の街の管理と代表選出
五ノ村の北側は、日当たりが悪く人気がなかったが、ヨウコの指示により娼館やカジノが集められ、賑わいを見せるようになった。治安維持のため、北側の統括組織「北側会」が結成され、十人の代表者が運営を担った。
しかし、合議制では決定に時間がかかるため、一人の代表者を選ぶことが決まった。公平を期すためにくじ引きが行われ、ロガーボが代表に選ばれた。彼は渋々ながらも職務を遂行し、部下を募るためにスカウト活動を開始。その過程で、偶然にも五ノ村の村長をスカウトしそうになり、危うく大問題になるところであった。
村長との対面と緊迫の空気
村長の正体を知ったロガーボは、即座に謝罪。村長は寛大な態度を見せたが、彼を取り巻く女性たちはそうではなかった。彼女たちの厳しい尋問を受けることになり、身の危険を感じるほどであった。
ロガーボは、任期が無事に終わることを願いながらも、北側の管理を続けることとなった。
夜の店の客引き問題と看板の設置
五ノ村の北側斜面に集められた夜の店は、客引き禁止に不満を持っていた。客引きがないと店の種類が分かりにくいという声が上がったため、五ノ村で用意した店種表示看板を配布することになった。看板の製作はヒラクの役割とされたが、作業量が多すぎたため、焼きごてを使った方法に変更された。
ファイブ君の人気とグッズ販売
五ノ村のマスコットキャラ「ファイブ君」は人気を博し、商店から勝手に関連グッズが販売されるようになった。これに対し、明らかに粗悪な品や高額商品に対する注意が必要とされた。また、ファイブ君を増やせないかという要請があったが、ファイブ君は一人というルールが設けられ、中の人の存在も否定された。さらに、シャシャートの街からの招致要請があったが、当面は五ノ村での活動に留めることが決定した。
五ノ村の農業と食料問題
五ノ村の農業は土作りの段階であり、自給率は低かった。当面は外部からの仕入れと、冒険者による魔物や魔獣の狩猟で補うこととされた。出張買取所が設置され、そこで食料が取引されていたが、冒険者からは宿泊施設や飲食店の設置要望が出ていた。その対策として、キャンピング馬車が開発され、試験運用が開始された。
食料供給と価格の安定化
魔王国ではダンジョンイモによる農地改造が進められ、食料難は解消されたが、市場の値崩れを懸念する動きがあった。そのため、魔王国側も価格の安定化に動いていた。一方、大樹の村の作物は高級食材としての価値を維持し、需要が高まっていた。
エルフとの外交と従属の誓詞
五ノ村の東側と西側に点在するエルフの集落は、それぞれ十七と二十二の集落が五ノ村に従属する誓詞を提出した。一部戦闘が発生したが、大きな被害はなかった。外交というよりも、上下関係を明確にすることが必要だったと樹王と弓王は説明した。また、敵対する可能性のあるエルフ勢力として、ギグの森の槍王、ガウの森の風王、そしてエルフ帝国が挙げられた。エルフ帝国は孤立した島にある国で、外部との交流はほとんどなかったため、放置することとなった。
五ノ村の名称変更問題
村の規模が拡大し、「五ノ村」という名称が適切ではなくなったため、村の住人から名称変更の要望が出た。しかし、書類作業の負担を考慮し、村の頂上部分を「五ノ村」とし、側面部や裾野を「五ノ街」とすることで決着した。
神々の世界と分け身の問題
創造神の娘であるオリオンセーヌは、地上に送り込まれた小神の分け身の影響を懸念し、捜索を開始した。分け身は国を滅ぼすほどの力を持っていたが、すでにその力を失っていた。原因は、大樹の村のヒラクが持つ神具グライムによるものであった。
分け身の捕縛と神々の反応
分け身は真っ白な雌猫の姿となり、神の力を完全に封じられていた。これにより、オリオンセーヌの懸念は解消された。彼女はこの事態を創造神の策と見なし、ヒラクに加護を授けることを決めた。しかし、後日、農業神の姉や創造神から「加護は無用の長物」と笑われ、ショックを受けることとなった。
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