どんな本?
現代の日本では、あやかしが人間社会に溶け込み、政治や経済、芸能などで活躍している。
そんな中、あやかしの玲夜と人間の花嫁・柚子の物語が続く。
玲夜はあやかしの本能を失ったが、柚子への愛情は変わらない。
しかし、柚子は友人の芽衣から玲夜の浮気現場を目撃したと伝えられ、動揺する。
証拠写真に写っていたのは玲夜にそっくりな別の鬼のあやかしだった。
その男は鬼龍院への復讐を誓っており、柚子を攫おうと襲いかかるが、玲夜が柚子を守る。
『鬼の花嫁』は、クレハ氏著作の小説で、あやかしと人間が共生する日本を舞台にした物語。
主人公は平凡な高校生・柚子で、妖狐の花嫁である妹と比較され、家族にないがしろにされながら育ってきた。
しかし、ある日、類まれなる美貌を持つひとりの男性と出会い、柚子の運命が大きく動き出す。
「見つけた、俺の花嫁」と言ったその男性の名は鬼龍院玲夜で、あやかしの頂点に立つ鬼だった。
この物語は、絶大な権力を持つあやかしの花嫁に選ばれることが憧れであり、名誉なことだとされている。
シリーズは大ヒットを記録し、累計400万部を突破。
また、コミカライズもされている。
この物語は、和風あやかし恋愛ファンタジーとして人気を博している。
読んだ本のタイトル
鬼の花嫁二~波乱のかくりよ学園~
著者:クレハ 氏
イラスト:白谷ゆう 氏
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あらすじ・内容
あやかしの頂点に立つ鬼、鬼龍院の次期当主・玲夜の花嫁となった柚子。家族に虐げられていた日々が嘘のように、玲夜の腕の中で、まるで真綿で包むように溺愛される日々。あやかしやその花嫁が通うかくりよ学園大学部に入学し、いつか嫁入りするその日へ向けて花嫁修業に励んでいたけれど…。パートナーのあやかしを毛嫌いする花嫁・梓や、玲夜に敵対心を抱く陰陽師・津守の登場で、柚子の身に危機が訪れて…!?
感想
『鬼の花嫁二~波乱のかくりよ学園~』は、主人公の柚子があやかしの世界を知り、様々な試練に立ち向かう姿を描いた物語である。
柚子は鬼龍院の次期当主である玲夜の花嫁として新たな生活を始め、かくりよ学園大学部への進学を通じて新しい人々と出会い翻弄される様が描かれている。
物語の中では、柚子が玲夜に対する強い愛情を持ちながら、他のあやかしや花嫁たちとの関係に悩む姿が印象的であった。
彼女がかくりよ学園での新生活に直面し、様々なしきたり、他の花嫁を見て戸惑いながらも馴染もうとする様子は、社会に適応しようと足掻く者として共感するモノであった。
特に、花嫁としての役割や期待に応えるための努力を続ける柚子の姿は、誰しもが応援したくなる魅力があった。
玲夜との絆が深まる中で、二人の関係がどのように進展していくのかが物語の大きな見どころだと思われる。
今巻では、新たに登場した猫のまろとみるくが物語に新たな風を吹き込んでいる。
彼(女)らの可愛らしさと力強さが、物語にユーモアと癒しをもたらし、小鬼ちゃん達とのコラボは吐血モノの可愛いさであった。
彼(女)らの正体が霊獣だと明らかになるシーンは驚があり、今後の展開であの2匹がどのように活躍するのか期待が高まる。
また、柚子が直面する新たな敵や陰謀も物語に緊張感を加えている。
梓というキャラクターが玲夜に対して抱く恋心や、それが引き起こす対立は物語の中で大きな山場となっており、ハラハラさせる展開であった。
その彼女に振り回される蛇塚くんが何とも気の毒でもあった。
陰陽師の津守が柚子を誘拐するシーンもスリリングで、最後まで目が離せなかった。
幸い、柚子は無事に救出されが普通の人である柚子には強力な護衛が必要だと思われる。
全体として、”鬼の花嫁”は、あやかしの世界観と人間の感情が巧妙に交錯する物語であり、キャラクターたちの成長や人間関係が丁寧に描かれていた。
この物語は、読者を世界に引き込む力がある作品であり、次巻での新たな冒険やキャラクターの成長に大いに期待したい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
備忘録
プロローグ
世界大戦が多くの国を巻き込み、甚大な被害と悲しみをもたらした。日本も例外ではなく、大きな被害を受け、復興には多大な時間と労力を必要としたが、人々は戦争の終結に安堵していた。そんな中、日本の復興を助けたのが、それまで陰に隠れて生きてきたあやかしであった。彼らは、美しい容姿と人間ならざる能力で戦後の復興に大きく貢献し、現代では政治、経済、芸能など様々な分野でその地位を確立していた。
あやかしは時折、人間の中から花嫁を選ぶことがあった。花嫁に選ばれることは人間にとっても非常に栄誉なことであり、あやかしにとって花嫁は唯一無二の存在であった。しかし、花嫁に選ばれたからといってすべての女性がその立場を望むわけではなかった。あやかしは本能で花嫁を認識するが、花嫁となる人間にはその選ばれた理由が理解できず、あやかしの愛情に応えることが難しい場合もあった。そのため、あやかしと花嫁の間には苦しみや悲しみが生まれることもあったのである。
1章
柚子が通う高校では、大学受験を控えた三年生が緊張感を持ち始める中、柚子は担任の教師に職員室に呼び出された。普段は真面目で成績も良い柚子が呼び出されることは少ないが、最近では護衛として作られた子鬼たちが起こす問題のせいで呼び出されることが増えていた。
玲夜が柚子の護衛として作り出した子鬼たちは見た目はかわいらしいが、時にトラブルを引き起こしていた。柚子はまた子鬼たちの問題で呼び出されたのかと思ったが、今回の呼び出しは違った。教師は柚子の進路希望について話し合うためだった。柚子は遠方の大学を希望していたが、花嫁としての立場を考えると、それが適切でないことに気付いた。
家から遠く離れた大学に行くことを希望したのは、柚子が家族との関係から逃れたいという理由からだった。しかし、玲夜と出会い花嫁となったことで、その必要はなくなった。柚子は進路を再考する必要があると感じ、玲夜に相談することに決めた。
玲夜の帰宅後、柚子は進路について相談した。玲夜は「かくりよ学園」を勧め、柚子もその提案に興味を持った。桜子から「かくりよ学園」について詳しく話を聞き、柚子は最終的にその学園に進学することを決めた。
2章
柚子はかくりよ学園に進学することを玲夜に告げると、すぐに手続きを進めてくれた。友人の透子や東吉も喜び、柚子と一緒に学べることを楽しみにしていた。柚子は学園での面接に備え、友人たちと練習していたが、面接当日は玲夜と共に学園に向かい、形だけの面接を受けた。面接官は主に玲夜と話し、柚子はほとんど何も質問されることなく終了した。
卒業式では友人たちと別れを惜しみ、子鬼たちも大いに愛されている様子で別れのプレゼントを受け取った。柚子は玲夜に連れられて高級ホテルのレストランで卒業祝いの食事を楽しみ、デートのようなひとときを過ごした。
その帰り道、玲夜の知り合いである津守という男性に出会った。彼は陰陽師の家系であり、柚子に対して敵意を抱いているように見えたが、玲夜は彼を特に気に留めていなかった。柚子は彼の不気味な態度に少し不安を感じたが、玲夜の無関心さに従うことにした。のちに、柚子はこの出会いが予兆であることを知ることになる。
3章
柚子は、かくりよ学園大学部の入学式の日、玲夜が急な会議で参加できなくなったことを知った。柚子としては、玲夜が来なかったことで騒ぎにならず助かったと思っていた。祖父母が代わりに出席してくれたため、柚子は新入生として入学式に参加し、透子や東吉と共に列に並んだ。
入学式から数日後、柚子は私服の準備に忙しくなり、大学の講義の選択に向けて透子とともに説明会に参加した。そこで、花嫁学部の新入生は三人しかおらず、梓という新しい友人候補に出会った。梓は、親の負債を解決するために花嫁になることを強いられたことが明らかになった。
一方、蛇塚という男性は梓の花嫁でありながら、彼女に嫌われていることを悩んでいた。彼は、梓に対して好意を抱いているが、彼女が別の男性を好きであることが原因で関係がうまくいっていなかった。柚子は、玲夜との関係がいかに幸運だったかを改めて感じながら、玲夜に感謝の気持ちを伝えた。
玲夜は、もし柚子が他の誰かを好きだったとしても奪い、愛させると言い放った。その自信満々の言葉に、柚子は彼の存在を再確認し、玲夜を選んで良かったと心から思った。柚子は、運命の導きによって玲夜と結ばれたことを幸運に感じた。
4章
柚子はかくりよ学園での講義が始まり、毎日多忙な日々を送っていた。梓とはほとんど話していなかったが、蛇塚との間でいざこざが続いているのを目撃していた。蛇塚は梓との壁を壊そうと努力していたが、梓はなかなか心を開かず、蛇塚家の者たちからも批判を受けていた。その結果、梓の心はますます閉ざされていた。
柚子は講義の中で、花嫁として学ぶべきことの多さに驚いていた。歴史やマナー、護身術まで幅広い知識が必要とされており、特にあやかしとの関係における力関係が重要視されていることを学んだ。鬼の一族の中での桜子との関わりもあり、柚子は大学内で有名人となってしまい、他の学生からも注目を浴びることが増えた。
ある日、柚子は大学の近くで捨て猫を見つけた。二匹の猫、まろとみるくは柚子に懐いており、彼女はそのまま猫たちを引き取ることを決意した。玲夜も快く了承し、猫たちは柚子の家族の一員となった。
猫たちが普通の猫とは少し違うかもしれないと感じた東吉や玲夜の反応に、柚子は少し戸惑ったが、動物と過ごす幸せな時間に気を取られて深く考えなかった。玲夜は猫たちに対して何か不思議な感覚を持っていたが、柚子はそのまま猫たちとの生活を楽しんでいた。
5章
柚子と玲夜は普段、別々の車で通学・通勤していたが、ある日は玲夜の車で大学まで送ってもらった。車内で玲夜は、今度行われる人間とあやかしの親睦パーティーについて話し、柚子も出席するように告げた。玲夜は、パーティーには人間の資産家や政治家が参加しており、その中には彼との関係を望む女性もいると説明した。柚子は、大学でも陰口を叩かれていることを隠し、玲夜に心配をかけないよう努めていた。
パーティーでは、玲夜は柚子をエスコートし、彼の隣にいる柚子に人々の注目が集まった。彼女は緊張しながらも玲夜に支えられ、その場に立ち続けた。玲夜は、人々との挨拶を続ける中で、冷たい態度を見せる場面もあり、特に彼に興味を示す女性たちには冷徹な態度を取った。玲夜は、柚子にだけ見せる優しさを持ちながらも、他の女性には興味を示さない一貫した態度を保っていた。
柚子は、玲夜の花嫁としての立場に慣れようと努力しつつも、自分が玲夜にふさわしいのかと不安を抱えていた。それでも、彼女は玲夜の隣に立つことを決意し、その場での経験を積み重ねていった。玲夜は、柚子が自分にとって特別な存在であることを再確認し、彼女のためにどんな障害も乗り越える覚悟を固めた。
梓の日常は、仲の良い両親と弟妹に囲まれた幸せな家庭に包まれていた。彼女は幼い頃から容姿に恵まれ、多くの男の子から好かれたが、その一方で女の子からは敬遠され、女友達は少なかった。それでも、彼女は満足していた。しかし、蛇のあやかしに花嫁に選ばれるまでは、彼女の人生は順調であった。
梓は、以前から好意を持っていた人物に出会った。それは、親睦パーティーでのことだった。彼女は、その人物に一目惚れをし、その美しい容姿と威厳に惹かれた。その人物は鬼龍院の次期当主である玲夜で、梓は彼の姿を思い浮かべるたびに心をときめかせた。
玲夜への想いを募らせる梓は、彼が出席するかもしれないパーティーに積極的に参加するようになった。しかし、ある日、玲夜には婚約者の桜子がいることを知り、彼女は大きなショックを受けた。玲夜への思いを断ち切れないまま、彼女は自分の心に葛藤を抱えていた。
その後、梓は父親から、蛇塚家の花嫁になるように頼まれる。父親の会社は経営が悪化しており、梓が花嫁になることで会社を救うことができるという理由からだった。梓は、家族のために仕方なく蛇塚の花嫁になることを了承したが、蛇塚に対する反発と玲夜への想いは消えなかった。
大学に入学してからも、梓は玲夜への想いを引きずりながら生活していた。ある日、親睦パーティーで再び玲夜の姿を見かける。玲夜が他の女性に笑顔を向けている姿に嫉妬を覚えた梓は、自分が選ばれなかったことに対する不満を募らせていた。そんな中、津守幸之助という男が現れ、彼女に甘い言葉をかけてきた。彼は、梓が玲夜の花嫁になれるよう手を貸すと言い、彼女はその言葉に心を動かされた。
6章
柚子は大学の講義を終えて屋敷に帰り、部屋で予習復習をしていた。週に三回、玲夜の会社でバイトをしていたが、この日は休みであった。しかし、集中できず、ペンを回して考え事をしていた。先日、梓が怒りをぶつけてきた件が頭を離れなかったからである。
梓は玲夜に恋心を抱いているようで、その気持ちが成就しないことに苛立っているようだった。柚子はその状況をどう対処すべきか悩んでいた。すると、梓から手紙が届き、謝罪と相談をしたいと書かれていた。梓は柚子に一人で来るよう求めており、透子には知らせないでほしいと頼んでいた。柚子は悩んだが、梓が心を開くかもしれないと考え、一人で出向くことを決めた。
翌日、指定された大学の駐車場で梓と会った柚子は、車でどこかに連れて行かれることになった。梓の態度が少し不自然で、何かおかしいと感じた柚子は、不安を覚えながらも車に乗り込んだ。到着した場所は武家屋敷のような大きな家で、そこで柚子は囲まれてしまった。梓が何者かに操られているように見え、彼女は津守幸之助という男の指示に従っていた。
柚子は状況の異常さを感じ取り、子鬼たちに助けを求めた。子鬼たちは柚子を守ろうとしたが、魔法陣によって力を封じ込められた。幸之助は柚子を捕らえ、鬼龍院への復讐の道具にしようとしていた。柚子は最後の抵抗を試みたが、背後から襲われて意識を失った。意識が遠のく中、彼女は最後に黒と茶色の影が走り寄るのを見た。
幸之助は、柚子の使役獣である子鬼たちを祓うように命じたが、突然現れた黒猫と茶色猫が子鬼たちを助け、塀の向こうに逃げ去った。幸之助は柚子を屋敷に連れて行った。
一方、玲夜は社長室で仕事をしている最中に、柚子が行方不明であることを知らされた。柚子の気配を感じることができないため、彼は非常に強い鬼の気配を持つ柚子が学園内にいない可能性を考えた。また、子鬼とのつながりが弱くなっていることにも気づき、屋敷に急いだ。
屋敷に到着した玲夜は、柚子の猫たちが子鬼を連れて帰ってきたことに気づいた。子鬼たちは消えかかっていたが、玲夜の霊力によって復活した。子鬼たちからのビジョンを通じて、柚子が梓によって誘い出され、津守幸之助の屋敷に連れて行かれたことを知った。
玲夜はすぐに一族を集め、柚子を救出するために津守の屋敷に向かう準備を始めた。彼は父親の千夜にも協力を求め、陰陽師との緊張関係に注意を払いながら、柚子の奪還に向けて動き出した。
柚子は目を覚ますと、見知らぬ部屋の座敷牢に閉じ込められていることに気づいた。彼女は状況を理解しようと鉄格子を試すが、外に出ることはできなかった。気を失う前の出来事を思い出し、子鬼たちの安否を心配しつつ、玲夜に迷惑をかけている自分に悔しさを感じた。
その時、幼馴染の浩介が現れ、彼が津守幸之助の異母弟であることを告げた。浩介は陰陽師の家系であり、柚子を監視するために大学に通っていたと明かした。彼は柚子を「鬼」から守るために協力したと言い張るが、柚子は浩介の言葉を信じることができず、玲夜への愛と信頼を強調した。
浩介は柚子の言葉に動揺するが、最終的には柚子を解放することなく、鉄格子に鍵をかけて去った。柚子は彼を何度も呼び止めようとしたが、浩介は振り返らなかった。
津守幸之助は、陰陽師の一族に生まれ、強い霊力を持ち、優秀な子供として期待されて育った。しかし、かくりよ学園で出会った鬼龍院玲夜に対して嫉妬と対抗心を抱くようになった。玲夜は幸之助の上を行く存在であり、その無関心さが幸之助の自尊心を傷つけた。
卒業後も玲夜の存在が気になり続けた幸之助は、玲夜に花嫁ができたことを知り、その女性に執着するようになった。彼は花嫁の存在を利用して玲夜を揺さぶりたいと考え、政治家と共謀して彼女を誘拐する計画を立てた。幸之助は異母兄弟の浩介を使い、柚子を監視させる一方で、彼女を利用するための準備を進めた。
柚子を手に入れた後、政治家は彼女を人質にして玲夜を脅す計画を立てたが、幸之助の真の目的は玲夜の反応を楽しむことであった。彼は玲夜が花嫁を失い、絶望する姿を見たいと考えていた。浩介が柚子を助けようとしたが、幸之助に阻止され、彼自身も捕らえられてしまった。幸之助は、玲夜を絶望させるための計画を着々と進めていった。
玲夜のもとには桜子が訪れて謝罪をしていた。桜子は柚子の監視を任されていたが、柚子がいなくなったときに登校が遅れてしまい、その間に柚子がさらわれてしまったことを悔いていた。桜子は大学で一族を集めて捜索したが、柚子の痕跡はすでに消えていた。子鬼たちも霊力を消耗して戻ってきただけで、柚子を守れなかったことを痛感していた。
玲夜は桜子を責めることなく、失態を自分のものとして受け入れた。桜子は玲夜の変化に気づき、柚子が彼を変えたのだと感じていた。玲夜は柚子を取り戻すため、子鬼の記憶から得た情報をもとに蛇塚家を訪問し、柚子の誘拐に関わった梓という人物と接触した。
蛇塚家では、玲夜が来訪したことに動揺していた。玲夜は梓に会うことを要求し、当主が彼女の居場所を案内した。梓は玲夜に対して強い執着を示し、玲夜の名前を呼びながら近づいたが、玲夜は彼女を冷たく拒絶した。梓は津守幸之助の暗示を受けており、玲夜に好意を抱いているようだったが、玲夜は彼女の言葉に興味を示さず、すぐに去った。
玲夜は父親からの電話で津守幸之助が柚子の誘拐を指揮していたことを確認し、津守の当主にも許可を得て、彼の居場所に乗り込む準備を整えた。玲夜は柚子を取り戻すため、鬼の一族を率いて行動を開始した。
政治家の男が去った後、津守幸之助は鬼龍院家の反応を楽しみにしていた。彼は、鬼龍院玲夜を出し抜いたという達成感から酒を飲もうとしていた。しかし、その瞬間、津守家の屋敷が鬼たちに囲まれているとの報告が入った。陰陽師の一人が慌てて知らせに来たのである。
幸之助は柚子を誘拐したことがまだ露見していないと信じていたため、なぜ鬼たちが屋敷を取り囲んでいるのか理解できなかった。使役獣が鬼龍院のもとへ戻り、事態を報告した可能性を考慮しつつも、彼はそれを信じられずにいた。
屋敷の外に出た幸之助は、鬼たちが玲夜の命令で花嫁を返すように要求していることを知った。事態の深刻さを感じつつも、幸之助は強気に「花嫁など知らない」と嘘をつき、門を閉ざして鬼たちを拒絶した。彼は陰陽師たちに鬼を中に入れないよう命じたが、心中では事態の悪化に焦りを感じていた。
玲夜が乗り込んでくる前に、幸之助は柚子をどうにかしようと考え始めた。玲夜の怒りが津守家に及ぶことを恐れ、彼の目には危険な決意が宿っていた。
柚子は座敷牢からの脱出を試みていたが、手元に武器もなく、鉄格子を壊すこともできなかった。彼女は玲夜や子鬼たちのことを心配しながら、どうにかして脱出しようとしていたが、その途中で津守幸之助が現れ、彼女に暗示をかけようとした。しかし、みるくとまろが幸之助の持っていた香炉を壊し、柚子は意識を取り戻すことができた。
柚子は、みるくとまろの助けを借りて座敷牢から逃げ出し、玲夜と再会した。しかし、幸之助がナイフで脅しをかけてきたため、再び危機に陥った。だが、柚子は大学で学んだ護身術を使い、幸之助から逃れた。最終的に玲夜が幸之助を制圧し、柚子は無事に救出された。
その後、柚子は玲夜と一緒に屋敷に戻り、透子や他の友人たちに無事を知らせた。彼女は今回の事件を通じて、玲夜や子鬼たちの存在の大切さを再認識し、安心感を取り戻していた。
柚子が屋敷に戻ってから数日が経ち、彼女は玲夜の指示で大学に行けず、屋敷で過ごしていた。暇を持て余していた柚子のもとに、透子と東吉が蛇塚を連れて訪れた。蛇塚は梓の暗示が解けたが、彼女の態度が変わらないことを説明し、梓を家に返す決断をした。柚子はその話を受け入れ、大学生活が再開されたが、蛇塚は寂しそうにしていた。
その後、柚子は大学で浩介と再会し、彼が津守の家を出る決意をしたことを知る。浩介は、これから新しい生活を始めると告げ、柚子と透子に別れを告げた。玲夜の父親である千夜が訪れ、津守の息子・幸之助が破門されたことを伝え、事件が収束したことを確認した。
また、柚子は玲夜との関係を大切にしたいと再確認し、玲夜も柚子への愛情を改めて示した。二人は今後も一緒に歩んでいくことを誓い合った。
小鬼と猫と
玲夜が柚子のために作り出したふたりの使役獣、通称「子鬼」は、柚子に「子鬼ちゃん」と呼ばれているが、個々の名前はまだなかった。彼らは柚子のボディーガードとして作られたものの、普段はマスコット的な存在であった。しかし最近、まろとみるくという二匹の霊獣である猫たちが仲間に加わり、柚子に懐いていた。
子鬼たちは、まろとみるくから霊力を分け与えられたことで命を救われた経験があり、そのため彼らをとても大切にしていた。この霊力の影響か、子鬼たちは話すことができるようになったが、玲夜は柚子の前で話さないようにと指示していた。柚子の関心が子鬼たちに向かうことを心配したからである。
現在、子鬼たちはまろとみるくと仲良く過ごしており、今日も一緒に遊びながら楽しい時間を過ごしていた。
桜子と同志たち
柚子は大学のカフェで桜子とランチをしていた。桜子はいつも通り美しかったが、何か思い悩んでいる様子であった。柚子が理由を尋ねると、桜子の同志である漫画研究部の部長がスランプに陥っているという話だった。桜子は、柚子に部長を助けてほしいと頼んだ。
桜子に連れられ、柚子は漫画研究部の部室を訪れた。そこには、部長をはじめとする部員たちが待ち構えており、柚子が来たことに喜んでいた。部長は玲夜に関する話を聞けばスランプを脱出できると考え、柚子に質問をし始めた。柚子は恥ずかしがりながらも、玲夜との日常についていくつかの質問に答えた。
部長はその話を聞いて再びやる気を取り戻し、漫画の制作を再開した。しかし、柚子が見たその漫画は、玲夜と高道をモデルにした過激な内容であった。柚子は自分が手を貸してはいけないものに加担してしまったのではないかと感じ、玲夜に知られないことを願った。後日、完成した漫画を受け取った柚子は、隠し場所に困ることになった。
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