小説「鬼の花嫁 四 ~前世から繋がる縁 ~」感想・ネタバレ

小説「鬼の花嫁 四 ~前世から繋がる縁 ~」感想・ネタバレ

どんな本?

『鬼の花嫁 四 ~前世から繋がる縁~』は、和風ファンタジーを舞台にした、鬼と人間の間に繰り広げられる恋愛物語の第四弾である。このシリーズは、主人公の柚子が鬼の一族に選ばれ、最強の鬼である玲夜から深い愛情を注がれる中で、彼女が数々の困難に立ち向かう物語である。

今作では、柚子の前に、玲夜を脅かすほどの力を持つ謎の男が現れ、命を狙うと脅してくる。柚子は玲夜に守られながらも、自らの力でこの危機に立ち向かうことを決意する。物語が進むにつれ、柚子と玲夜の過去に繋がる因縁が明らかになり、彼らはそれを乗り越えるために協力して戦っていく。

この作品の魅力は、ただのラブストーリーにとどまらず、前世から続く因縁や、霊獣たちとの絆が描かれる深い物語展開である。過去と現在が交錯し、愛と運命に翻弄される登場人物たちの成長が感動を呼ぶ。和風ファンタジーや、運命に立ち向かうラブストーリーが好きな人にぜひおすすめしたい一冊である。

読んだ本のタイトル

鬼の花嫁  四 ~前世から繋がる縁 ~
著者:クレハ 氏
イラスト:白谷ゆう 氏

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あらすじ・内容

玲夜からとどまることなく溺愛を注がれる鬼の花嫁・柚子。そんなある日、龍の加護で神力が強まった柚子の前に、最強の鬼・玲夜をも脅かす力を持つ謎の男が現れる。そして、求婚に応じなければ命を狙うと脅されて・・・!? 「俺の花嫁は誰にも渡さない」と玲夜に死守されつつ、柚子は全力で立ち向かう。そこには龍のみが知る、過去の因縁が隠されていた・・・。あやかしと人間の和風恋愛ファンタジー第四弾! 電子書店限定のSS付き!

鬼の花嫁 四 ~前世から繋がる縁 ~

感想

『鬼の花嫁 四 ~前世から繋がる縁~』は、鬼の花嫁である柚子が、最強の鬼・玲夜から溺愛されつつも、新たな試練に立ち向かう物語である。柚子の前に、玲夜すらも脅かす力を持つ謎の男が現れ、彼女に求婚に応じなければ命を狙うと脅した。柚子は、玲夜に守られながらも、自らの力で立ち向かい、やがてその男との過去の因縁が明らかになる。

物語では、柚子が過去の因縁を知り、それに対処しながら成長する姿が描かれている。最初の花嫁「サク」の悲劇的な運命とその怨念が、柚子と深く関わっており、物語の中でその因縁が解消される展開は、読後感が非常に良かった。霊獣たちの役割が明らかになり、伏線がすべて回収されたことも、物語全体の完成度を高めていた。

玲夜は、これまで以上に柚子を溺愛しており、その甘さと愛情が物語の中で強調されている。特に、柚子を守るために彼が行動する場面が印象的であった。柚子自身も、危険な状況に立ち向かいながら成長し、前世の因縁を乗り越える姿には感動させられた。

今回登場した優生というキャラクターは、柚子への執着を持つ危険な存在で、彼が前世の因縁と絡んでいることが明らかになる。柚子がその因縁とどのように向き合うのか、また、玲夜と共にそれを乗り越えていく過程が、物語の大きな見どころであった。

物語はしっかりと完結しており、最後にはサクの魂が安らかに眠る結末となった。これからの柚子と玲夜の平和な生活が期待されるが、物語全体としては、緊張感と感動が入り混じる充実した内容であった。

最後までお読み頂きありがとうございます

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

プロローグ

世界大戦が多くの国々に甚大な被害をもたらし、日本もその影響を大きく受けた。戦争が終結し、復興に向けて多大な時間と労力が必要とされる中、日本を救ったのは、それまで陰で生きていた「あやかし」たちであった。彼らは美しい容姿と人間ならざる能力を持ち、戦後の日本の復興に大きく貢献した。

現代では、あやかしは政治や経済、芸能などさまざまな分野で活躍し、地位を確立していた。彼らは時折、人間の中から花嫁を選ぶことがあり、選ばれることは人間にとって栄誉であった。あやかしにとっても、花嫁は唯一無二の存在であり、本能によって選ばれる花嫁は大切に愛される。

しかし、最初の花嫁はその運命に翻弄され、若くして命を落とし、桜の木の下に埋葬された。愛する人と子供を残してこの世を去った彼女が、悔いを抱いていたのか、恨みを抱いていたのかは、誰にも知ることができないままであった。

1章

早朝、屋敷には龍の助けを求める声が響き渡った。柚子はあきれつつも、身だしなみを整えて部屋を出ると、龍が黒猫のまろと茶色の猫のみるくに追いかけられていた。龍は柚子の腕に巻きつき安心していたが、霊獣であるにもかかわらず、龍の日常の様子は他の使用人たちに遊び相手として見られるほどだった。かつては強力で美しい龍だったが、今ではその姿は微塵も感じられなかった。

その後、柚子は龍を連れて朝食の広間に向かい、すでに座っていた玲夜と共に食事を取った。玲夜は柚子の予定を尋ね、柚子が友人の透子の家に行く予定だと答えると、玲夜は残念そうな顔をした。玲夜が仕事を休みデートを提案したため、柚子は透子に予定の変更を頼み、了承を得た。

デートの準備を整えた柚子は、普段と違ったラフな格好をした玲夜に驚きながらも、二人で出かけた。まず向かったのは呉服店であり、柚子は結婚式に着るための振袖を選ぶこととなった。

柚子と玲夜は呉服店の個室で待っていた。そこへ従業員がたくさんの着物を持ってきて、柚子の前に色とりどりの着物が並べられた。どれも美しく、選ぶのに迷っていると、妙齢の女性がクリーム色と薄ピンクの中振袖を勧めた。それを見た柚子はすぐに気に入り、玲夜も柚子の好みを察してその着物に決定した。

その後、二人は家電量販店へ向かったが、玲夜の容姿に周囲の人々が驚き、特に女性たちから多くの視線が集まった。玲夜は気にしていなかったが、柚子はその視線に少し戸惑っていた。しかし、玲夜とのデートを楽しんでいる自分に気付き、喜びを感じた。

玲夜が人目を気にせずに柚子にキスをすると、周囲から驚きの声が上がったが、無視を決め込むことにした。そんな中、柚子の悪口を言っていた人たちの上だけに突然雨が降り、彼らはずぶ濡れになった。龍がそれを引き起こし、玲夜は彼を褒めて機嫌を良くした。最後には青い空に虹がかかり、二人は次の目的地へ向かった。

柚子と玲夜は家電量販店でカメラを選んでいた。柚子は一眼レフやミラーレス、デジタルカメラなどの違いが分からず、玲夜に相談した。玲夜は柚子にコンパクトで扱いやすいデジタルカメラを勧め、柚子もそれを選んだ。玲夜の両親が結婚式にプロのカメラマンを手配しているため、柚子の選んだカメラでも十分だと納得した。

次に二人は飲食フロアに移動し、昼食をとることにした。玲夜は柚子に食べたいものを選ばせ、最終的にパンケーキのお店に並んだ。玲夜は初めて一般的なお店で並ぶ経験をし、少し驚いた様子だった。柚子はその状況を楽しみつつ、二人でパンケーキを注文した。玲夜は柚子を甘やかすのが好きで、彼女の反応を楽しんでいた。

店を出た後、宝くじ売り場に寄った柚子は、龍の加護を確かめるために宝くじを一枚購入した。龍は自分の加護が本物であると強調し、柚子は半信半疑ながらもその結果に期待しつつ家に帰った。

数日後、柚子は透子を訪ね、東吉が不在の中、二人で過ごした。会話の中で柚子は玲夜とのデートの話をし、透子はその内容に笑いながら、彼女自身のデートの様子も語った。柚子は過去の一龍斎の問題を通して、玲夜との関係が以前よりも強くなったことを振り返り、透子には感謝していた。透子もその時の出来事を振り返り、玲夜が柚子をどれほど大切にしているかを認識していた。

その後、話題は柚子が購入した宝くじに移り、透子の促しで柚子は当選番号を確認した。驚くことに、柚子は十億円の当選者となっていた。二人は信じられない状況に驚き、そして龍の加護が本物であることを確認した。柚子は大金の扱いに困り、最終的に玲夜に相談して使い道を決めることにした。

柚子は、宝くじで十億円を当選したことに驚きと困惑を抱き、玲夜に相談した。玲夜は驚くことなく、龍の加護を信じていたため冷静であった。彼は柚子にその大金を自分の好きなように使うよう促したが、柚子は大金を持つことに対して不安を感じ、どう使うべきか迷っていた。

玲夜は、祖父母への恩返しとして使うことを提案し、柚子もそれに賛同した。ただし、現金を直接渡すのではなく、祖父母に宝くじの話をせず、欲しいものをさりげなく尋ねてみるという方法を考えた。後日、宝くじの当選金は柚子の口座に振り込まれ、その計画を実行する準備が整ったのである。

2章

桜子と高道の結婚式の日、柚子は朝早くから支度に追われていた。女性陣の手を借りて準備を進める中、龍や猫たちがその様子を見守っていた。柚子は自ら手作りした首飾りを龍に渡し、彼も気に入って身につけた。準備が整った柚子は玲夜と共に鬼龍院の本家へ向かい、古風な建物で行われる結婚式に参加することとなった。

式が始まる前、柚子は披露宴にも参加したいと望んでいたが、玲夜から一龍斎に関わる者が出席するため危険があると説明され、披露宴への参加を断念することになった。柚子は落ち込んだが、代わりにプロのカメラマンが準備されていることを知り、気持ちを切り替えて結婚式に参加することを決めた。

桜子と高道の結婚式が行われ、桜子の美しさに柚子は感嘆した。挙式は伝統的で、血を混ぜた盃を交わす儀式が印象的であった。宴が進む中、龍は柚子を裏の桜の木へと導き、最初の花嫁サクの話を語った。サクは愛されながらも悲劇的な運命に巻き込まれ、最期はこの桜の木の下に埋葬されたという。龍はその過去を悔いており、木の前で悲しみと怒りを感じていたが、柚子や玲夜と共にその場を後にした。

柚子は宝くじで当たったお金を使い、祖父母の家をリフォームすることに決めた。リフォーム中、祖父母は玲夜の屋敷に滞在していた。最初は遠慮していた祖父母も、屋敷での親切なもてなしに満足しており、柚子も安心していた。猫や子鬼たちとの賑やかな日々が続き、柚子と祖父母はゆったりと過ごしていた。使用人たちは訪問者を歓迎し、祖母は安心して滞在を楽しんでいた。

柚子は夕食の席で、同窓会に参加したいと玲夜にお願いした。最初、玲夜は元彼が来る可能性を聞き、参加を反対したが、柚子は必死に説得を続けた。祖母の不用意な発言もあり、話がこじれたが、柚子は玲夜に対し、過去の女関係を沙良に聞くか、同窓会に行くかの選択を迫った。最終的に、柚子は強気な態度で同窓会参加の許可を得たが、玲夜の過去に対する興味も湧き、複雑な思いを抱えることになった。

3章

同窓会当日、柚子は透子と待ち合わせをしたが、玲夜の強い独占欲のため、柚子は地味な服装で出かけることになった。お気に入りの服やアクセサリーを用意していたが、玲夜はそれを許さず、祖父も彼に同意したため、泣く泣くシンプルな服に着替えさせられた。さらに、柚子の周囲には通常の三倍の護衛がつけられていた。透子はそんな柚子とは対照的に、自由におしゃれをしてきており、彼女と東吉の関係と比べて、柚子は玲夜に従わざるを得ない状況に不満を感じたが、同窓会のため、気を取り直して会場へ向かった。

同窓会当日、柚子は透子と共に会場のカフェに向かった。柚子は、玲夜の強い独占欲によって控えめな服装を選ばざるを得なかった。会場に到着し、友人たちと再会したが、突然現れたはとこの優生に不安を覚えた。彼はかつて柚子を好意的にかまっていたが、柚子には彼が苦手な存在であった。

その後、元彼の山瀬が現れ、優生がかつて二人の別れを脅迫によって引き起こしたことを告白した。驚いた柚子が優生に問いただすと、彼はしらばっくれるが、次第にその態度が変わり、彼の狂気じみた本性が露わになった。優生は、柚子が昔から自分のものだと主張し、柚子や山瀬に対して暴力的な行動を取る。

危機を感じた柚子は子鬼たちとともに逃げ、鬼龍院の護衛によって車に乗り込み、優生から逃れることに成功した。しかし、柚子は恐怖で震えており、優生の執着心に対する恐れを強く感じたのだった。

柚子は、同窓会から早めに帰宅し、祖父母の部屋を訪れた。そこで、優生が中学卒業後も祖父母を訪ね、柚子の様子を頻繁に聞いていたことを知り驚いた。特に、柚子が鬼の花嫁となったことを伝えた後、優生が突然訪問をやめたという話を聞き、優生の異常な執着心を思い返した。

また、柚子は優生の不思議な力についても疑問を抱いていた。祖母は優生に霊力があるとは信じていなかったが、柚子は優生が子鬼の炎を簡単に振り払ったことや、彼から出ていた黒いもやについて不安を抱き続けていた。龍も、優生の力が陰陽師のものではないと断言したが、詳細ははっきりしなかった。

その後、柚子は玲夜に優生との出来事を報告し、玲夜は優生に対する調査を開始した。調査の結果、優生の日常に異常は見つからなかったが、柚子は未だに不安を抱えていた。

深夜、龍は桜の木の下で、かつての花嫁「サク」の名を呼び、佇んでいた。霊獣であるまろとみるくも姿を現し、龍と共にサクを悼んでいた。龍は、サクを死に追いやった男が再び現れたことに対して怒りを抑えていた。

そこに鬼龍院の当主、千夜が現れ、龍と猫たちが何を知っているのか問いかけた。龍は、柚子が最初の花嫁サクの生まれ変わりであり、サクを害した男もまた生まれ変わっていることを明かした。その男が柚子に再び執着しており、前世の悪縁が再び巡っていると語った。

千夜は、この男が柚子のはとこである優生だと推測し、彼の監視を強化することを決めた。そして、柚子と玲夜には前世の因縁を知らせず、二人を守るために動くことを誓った。こうして、知らぬ間に事態は静かに動き始めたのである。

4章

柚子は夢の中で、鬼龍院本家の桜の木の下に立っていた。桜の花びらが舞い散る中、どこからか女性の声が聞こえ、「誰かをここに連れてきて」と囁くように伝えてきた。夢から目覚めた柚子は、夢の中と同じ桜の花びらが髪に付いていることに驚いた。龍もこの状況に不思議を感じ、柚子に夢の内容を尋ねた。

柚子は夢で見た桜の木や声のことを話したが、その意味はわからなかった。龍はこの夢に何か重要な意味があるかもしれないと考えたが、具体的な答えは得られなかった。柚子は再び眠ろうとするも、朝になって寝不足のまま大学に向かうことになった。

柚子は朝食の席で、寝不足から大きなあくびをし、夢見が悪かったと玲夜に話した。その後、祖母から家のリフォームが完成したと告げられ、祖父母がこの家を出る準備をしていることを知った。柚子はその知らせに落ち込んだが、祖父母はまた会えると慰めた。また、家のお披露目パーティーに誘われた柚子は、玲夜に許可を求め、子鬼たちを連れて行く条件で了承を得た。

一方、柚子はインターンに応募していたが、玲夜がすべて辞退していたことを知り、ショックを受けた。翌日、大学で透子にそのことを愚痴ると、透子からは「当然だ」と冷たい反応が返ってきた。さらに、玲夜に泣き落としを試みたが失敗してしまった。

その後、透子が体調不良を訴えたが、風邪ではないようだという話になり、二人は優生の話題にも触れた。柚子は優生の異常な執着を感じており、透子も優生が以前から柚子に関心を持っていたことを認めた。

また、一龍斎の急激な衰退と、龍の加護を持っていたミコトが大学を辞めたことも話題に上がった。龍は、ミコトの行動に対して鬼龍院の当主が一龍斎に苦情を入れたことを告げ、柚子を守るための対応があったことが明らかになった。

柚子は、大学卒業後の進路について玲夜と話し合うため、彼が帰宅する時間を見計らって玄関で待ち構えていた。玲夜は柚子を出迎えたが、柚子が進路について話をしようとすると、彼は即座に却下した。柚子がインターンの応募を勝手に辞退されたことに抗議すると、玲夜は花嫁を外に出すことに反対し、自分の会社でさえも許可しなかった。

玲夜は、柚子が働く必要はなく、彼女が望むことをして生きていけばいいと説得した。彼は、柚子が無理に働かなくても、屋敷で彼の帰りを待っている方がよほど役に立つと話し、柚子が働きたい理由を問いただした。柚子は自分が本当に何をしたいのかを考えたが、具体的な答えが浮かばず、不安を感じた。玲夜は、焦らずに自分のやりたいことを見つければいいと優しく言い、柚子に無理に働く必要はないと伝えた。

最終的に、柚子は就職を諦め、自分のやりたいことをゆっくり見つけることを決めた。玲夜は彼女の幸せが自分の願いであり、それ以上は望まないと話し、二人は結婚の準備に焦点を移すこととなった。 

柚子は、玲夜との話し合いで就職を諦め、自分のやりたいことを探すことに決めたと、透子に報告した。透子はそれを聞き、「若様は本当に甘いわね」と言いながらも、柚子が資格試験の本を読んでいることに驚いた。柚子は、まだ何をしたいか分からないため、とりあえず資格を取っておこうと考えたのだ。透子は「無理して探さなくても、流れに身を任せていれば見つかる」と楽観的にアドバイスした。

その後、透子が体調不良を訴える場面があった。柚子は病院に行くよう勧めたが、透子は病院嫌いで乗り気ではなかった。柚子は透子の健康と彼女の恋人・にゃん吉の心配を考え、強く説得した。最終的に透子は観念し、その日の帰りに病院に行くことを約束した。

透子は、週末に行われる柚子の祖父母のリフォーム祝いのパーティーにも参加したいと言ったが、柚子は彼女の体調を気遣いながら、まずは病院で診察を受けることを優先するよう促した。

週末、柚子は祖父母のリフォームされた家を訪れることになった。本来は玲夜も同行する予定だったが、高道と桜子の披露宴と重なり、柚子一人で行くことになった。披露宴には一龍斎の関係者が来るため、柚子の参加は危険を避けるために見送られた。

出発前、玲夜は柚子を心配し、護衛と共に子鬼や龍を連れていくよう念を押していた。柚子は彼の心配に感謝しつつ、祖父母の家に設置された強力な結界に守られているため大丈夫だと伝え、安心させた。

その後、柚子は透子を迎えに行くが、透子の恋人である東吉も同行することになった。透子の体調が優れないことを心配してのことだったが、透子自身は特に問題ないと主張していた。車中、東吉は鬼を怖がる性質から怯えていたが、透子はその様子に気づかないままだった。

柚子たちは祖父母の家に到着したが、東吉は車から飛び出し、透子には理由がわからなかった。柚子は車の護衛に感謝し、祖母に挨拶を済ませ、家に入った。家の中では、祖父や近所の人々が既に酒を飲み、酔っ払って騒いでいた。柚子も酔っ払いの男性たちに捕まり、日本酒を注がれたが、アルコールに弱い柚子は困惑していた。

その時、柚子に巻きついていた龍がジョッキを取り、酒を飲み干した。酔っ払い達は龍を歓迎し、次々と酒を注ぎ続けた。柚子はその隙に酔っ払いの輪から逃げ出し、酔っ払いの相手を龍に任せることにした。

柚子は酔っ払いの輪から抜け出し、透子たちと談笑していたが、突然鬼龍院の護衛から「すぐに家を離れるように」と電話がかかってきた。優生が祖父母の家に向かっているとのことで、柚子たちは急いで家を出た。道中、護衛が倒れ、黒いもやに包まれていたことに気づいた柚子は、優生が関与していると感じた。そこに現れた優生は、柚子に鬼龍院との関係を断ち切るよう迫るが、柚子は断固として拒否した。優生は一時退散するが、彼の行動に不安を感じた柚子は、護衛たちと共にその場を離れた。

5章

玲夜は、高道と桜子の結婚披露宴に参加していたが、護衛から柚子が危険にさらされたとの報告を受けた。優生が柚子と接触し、護衛たちが気を失ったため、事態は深刻であった。披露宴を抜けることはできず、玲夜は怒りを抑えつつ護衛に注意を促した。その後、千夜から優生の霊力が変質して危険な存在になっていることを聞かされた玲夜は、急いで屋敷へ戻り、無事な柚子の姿に安堵した。

玲夜は龍から、優生の力が極めて危険であり、普通の鬼や人間では対処できないと告げられる。さらに、龍は祓う力を持つ陰陽師の協力が必要だと助言し、玲夜は力の強い陰陽師を探すことを決意した。

柚子は、再び桜の木の下で女性の声を聞く夢を見たが、内容ははっきりとは分からなかった。起きた後、玲夜と話し、優生が黒いもやを放って護衛たちを倒したことを打ち明けた。柚子は優生が以前とは異なり、違和感を抱いていたが、詳しくは説明できなかった。玲夜は護衛たちを叱らないように努めると約束した。

その後、柚子は東吉から透子が急変し、入院したと聞かされ、病院に駆けつけた。透子は意識を失っており、検査でも原因が不明であった。柚子が透子の体に黒いもやが見えることに気づき、龍はそれが祓う力を持つ者でなければ除去できないと告げた。絶望した東吉に対し、柚子は玲夜に連絡を取り、陰陽師の助けを求めることにした。

玲夜はすぐに陰陽師を連れて透子のもとに駆けつけた。しかし、陰陽師たちは透子に取り憑いた黒いもやを祓うことができず、柚子は優生に会う決意をした。玲夜も同行することを条件に同意し、優生のもとへ向かった。

優生は透子を助ける代わりに、柚子を自分のものにすることを要求したが、柚子は拒否した。優生は次に、自分を殺すことで透子を助けられると告げ、柚子を苦しめた。玲夜は激怒し、優生を攻撃したが、黒いもやに阻まれた。そこへ突然、桜の花びらが舞い、もやが消え、優生も姿を消した。

その夜、柚子は再び桜の木の夢を見た。夢の中に現れた女性は、柚子を桜の木の下へ導こうとしていた。目覚めた柚子は急ぎ本家の桜の木へ行く決意を固め、玲夜と共に出発した。

柚子は夢で見た桜の木に行きたいと玲夜に伝え、夜中にもかかわらず本家へ向かうこととなった。本家に到着した柚子は、夢の中で女性が指差していた桜の木の下を掘り始めたが、何も見つけられず途方に暮れた。

その時、千夜が現れ、月明かりが桜の木を照らすと、柚子は再び女性の声を聞いた。そして、桜の花びらが舞う中で、柚子は何かに触れた感覚を覚えたが、突然の眠気に襲われて倒れてしまった。

夢の中で柚子は、ある女性の悲しみや怒り、そして復讐への強い思いを体験した。女性は、かつて自分を苦しめた男への憎しみを晴らすために、柚子に「ここに連れてきて、あの男を」と伝えていた。

6章

柚子は桜の木の下で夢を見て倒れたが、すぐに意識を取り戻し、玲夜と千夜に夢で見た内容を話した。その夢には透子を助ける手がかりが含まれていると感じた柚子は、千夜に協力を求め、桜の木の場所で儀式を行うことを提案した。千夜は協力を約束し、柚子は透子を救うために行動を起こす決意を固めた。

その後、透子の病室を訪れた柚子は、疲れ切った東吉を励まし、透子が助かると確信をもって語りかけた。東吉もその言葉に力を得て、再び前向きな姿勢を取り戻した。柚子は透子の回復を信じ、最後の戦いに向けて強い意志を抱いていた。

柚子は透子を助けるため、優生に対して決着をつける覚悟を固め、玲夜や千夜の協力を得て、鬼龍院本家の桜の木の下で優生と対峙した。優生の中には、かつて初代花嫁サクを苦しめた男の執念が宿っており、その強い怨念が優生を通じて表に出ていた。柚子は、サクの思念と桜の力を借りて、この男の怨念を消し去ろうとした。

満月の夜、玲夜と千夜の霊力を注いだ桜の木が青く輝き、サクの霊が現れた。サクは舞を舞い、怨念に囚われた優生を桜の花びらで包み込み、最終的に男の怨念を浄化した。サクはようやく復讐を果たし、静かに消えていった。

その後、サクの長年の思念が消え去ったことで、桜の木も花を散らし、終わりを告げた。柚子は、なぜサクの幼馴染みの男が自分に執着したのかという疑問を残しつつも、サクがようやく安らかに眠れることに安堵した。

柚子たちは桜の木の下での出来事を終え、本家の屋敷へ戻った。疲れ果てた玲夜や千夜は帰宅を急ぎ、柚子もそれに従った。しかし、途中で優生を忘れかけていたことに気づき、子鬼たちが無理やり優生を引きずりながら運ぶ形となった。優生は無事に屋敷へ到着したが、彼の扱いはひどく、使用人たちによって物置部屋に放り込まれた。

屋敷に戻った後、沙良から透子が目覚めたという知らせが入り、柚子は大喜びした。優生の中に宿っていた怨念が消えたことで、透子にかかっていた呪いも解かれたと考えられた。その後、優生が目覚め、彼は何も覚えておらず、過去の記憶が失われていたことが判明した。千夜は嘘の説明で優生を安心させたが、玲夜は彼に冷たい態度を取り続けた。

最終的に、優生は柚子に結婚を申し込んだが、玲夜によって阻止され、再び物置部屋に放り込まれることとなった。

柚子は透子が入院している病院を訪れ、元気な透子を見て安心した。透子は完全に回復しており、黒いもやも消えていたため、彼女の健康を取り戻したことに柚子は喜びを感じた。柚子は透子に、優生の中に潜んでいた前世の記憶とその影響について説明した。透子と東吉は、優生に怒りを覚えたが、最終的には落ち着きを取り戻した。柚子は透子の回復を祝福し、玲夜と共に帰宅した。

帰宅後、柚子は自分のベッドがなくなっていることに気づき、玲夜に尋ねたところ、寝室を一緒にするために準備が進んでいたことを知った。玲夜は早速新しい寝室を用意しており、柚子は驚きつつも、二人で過ごす時間が増えることに喜びを感じた。柚子は玲夜に「ずっとそばにいる」と約束し、二人は小指を絡めてその誓いを交わした。

会議中

深夜、柚子を守るために集まった龍、ふたりの子鬼、そして二匹の猫であるまろとみるくが密かに話し合っていた。龍は、自分が今回の出来事であまり役に立てなかったことを嘆き、子鬼たちに慰められていた。まろとみるくは龍を役立たずだとからかうが、子鬼たちは龍をかばい、その優しさに龍は感激していた。話し合いの末、彼らは再び決意を新たにし、これからもより一層柚子を守ることを誓ったのである。

見られてはいけない黒歴史

柚子は退院した透子を見舞うため、手土産を持って玲夜と共に猫田家を訪れた。猫田家の使用人たちは鬼である玲夜の存在に戸惑っていたが、東吉は玲夜に多少慣れていた。彼らは透子の部屋に入るが、そこはアルバムで散らかっていた。透子は中学時代の写真を探しており、柚子は透子と共に写真を見ながら昔話に花を咲かせた。透子は優生に関する心霊写真の可能性を気にしていたが、柚子は異常を感じなかった。

その後、透子が積んでいたアルバムから茶封筒が落ち、中には中学時代に撮ったプリントシールが入っていた。シールには柚子と透子が当時の彼氏にキスをしている写真が含まれており、これに東吉と玲夜が激怒した。最終的に柚子と透子は彼らに説明を求められ、後日、プリントシールを再び撮ることになった。

登場人物

  1. 柚子
    本作の主人公であり、最強の鬼・玲夜の花嫁である。玲夜との結婚準備を進める中で、様々な試練に直面しながらも、強い意志と成長を見せる。優しさと芯の強さを持ち、周囲の人々を大切に思っている。家族や友人との関係を大切にしながら、玲夜との愛を深めていく。
  2. 玲夜
    最強の鬼であり、柚子の婚約者。冷静でありながらも、柚子に対しては深い愛情を注いでいる。過保護な一面もあり、柚子を守るために努力を惜しまない。芹との関係や家族の問題を抱えながらも、柚子との結婚に向けて誠実に向き合う。

  3. 霊獣であり、柚子や玲夜を守る存在。元々は強力で美しい龍であったが、現在は日常ではお茶目な一面を見せている。柚子を守るために奮闘し、彼女に対して深い愛着を抱いている。龍の加護が本物であることが確認された場面もあり、彼の力が重要な役割を果たす。
  4. 透子
    柚子の親友であり、物語中盤で妊娠・出産を経験した。柚子との友情を大切にしており、互いに助け合いながら生活している。彼女の妊娠と出産が物語に感動を与え、柚子との関係を深める要素となった。
  5. 東吉
    透子の夫であり、柚子や玲夜の友人。過保護な一面を持ち、透子の妊娠中は特に慎重な行動を見せていた。玲夜に対しても敬意を抱いており、物語の中で重要な役割を果たしている。
  6. 千夜
    鬼龍院の当主であり、玲夜の父親。厳格な性格ながらも、柚子や玲夜を支える存在であった。物語の後半で優生の異常な力に対して対策を講じ、柚子と玲夜を守るために重要な行動を取る。
  7. 沙良
    玲夜の母親であり、柚子にとっても大切な存在。家族として柚子を支え、玲夜との結婚に向けて彼女を励ました。芹との関係にも敏感であり、柚子の幸せを守るために協力を惜しまなかった。

  8. 玲夜の幼馴染であり、かつての婚約者候補であった。物語の中で柚子に敵対心を抱き、玲夜に対しても未練を持っている。彼女の行動が物語に波乱をもたらし、柚子にとって試練の一つとなった。
  9. 優生
    柚子のはとこであり、彼女に異常な執着を見せた。過去の出来事から柚子に対して強い関心を抱き、物語の中で彼の霊力が危険な存在となっていた。物語後半で柚子や玲夜と対峙し、彼の行動が物語に大きな影響を与えた。
  10. まろとみるく
    柚子に仕える二匹の猫。まろは黒猫、みるくは茶色の猫であり、柚子や龍のそばに常に寄り添っている。彼らは柚子や玲夜の生活に温かさをもたらし、物語における癒しの存在であった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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