小説「鬼の花嫁 五 ~未来へと続く誓い ~」感想・ネタバレ

小説「鬼の花嫁 五 ~未来へと続く誓い ~」感想・ネタバレ

どんな本?

『鬼の花嫁 五 ~未来へと続く誓い~』は、あやかしの世界を舞台に、最強の鬼である玲夜と、彼に選ばれた花嫁・柚子の結婚までの試練と成長を描いた物語である。このシリーズの第五巻では、柚子と玲夜の結婚が目前に迫り、ふたりの愛や信頼が大きな試練に直面する。

物語は、柚子が結婚の準備を進める中で、玲夜と知らない女性が抱き合う瞬間を目撃したり、突然両親から手紙が届いたりするところから始まる。柚子は自分の力で問題に立ち向かい、玲夜との絆を深めていく一方で、周囲の人々との関係も描かれている。

柚子が成長し、強い意志を持つようになる過程が物語の中心であり、彼女の優しさや芯の強さに共感する読者も多いだろう。さらに、あやかしの世界特有の不思議な力やキャラクターたちのユーモアが、物語に彩りを加えている。

結婚という大きなイベントを前に、ふたりの関係がどう進展するのか、あやかしの力が絡む特別な世界観の中で、恋愛や家族の絆がどのように描かれているのかに注目してほしい。魅力的な登場人物やドラマティックな展開が好きな方に、ぜひおすすめしたい作品である。

読んだ本のタイトル

鬼の花嫁 五 ~未来へと続く誓い ~
著者:クレハ 氏
イラスト:白谷ゆう 氏

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あらすじ・内容

玲夜から結婚式衣装のパンフレットを手渡された鬼の花嫁・柚子。玲夜とふたり、ドレスや着物を選び、いよいよ結婚するのだと実感しつつ、柚子は一層幸せに包まれていた。そんなある日、柚子は玲夜を驚かせるため、手作りのお弁当を持って会社を訪れると・・・知らない女性と抱き合う瞬間を目撃。さらに、父親から突然手紙が届き、柚子は両親のもとを訪れる決意をし・・・。「永遠に俺のそばにいてくれ」最も強く美しい鬼・玲夜と彼に選ばれた花嫁・柚子の結末とは・・・!?

鬼の花嫁 五 ~未来へと続く誓い ~

感想

『鬼の花嫁 五 ~未来へと続く誓い~』は、柚子と玲夜の結婚がいよいよ現実となり、ふたりの絆が試される物語である。結婚の準備が進む中で、柚子は玲夜と見知らぬ女性が抱き合う場面を目撃し、さらには両親との再会が描かれる。これらの試練に直面しながらも、柚子が自分の意志を強く持ち、成長していく姿が非常に印象的であった。

物語を通じて、柚子は玲夜に対して自分の考えを伝え、少しずつ自信をつけていく。特に、両親との縁を切る決断を自ら下した場面は、彼女の成長を感じさせる重要なシーンであった。玲夜は柚子を大切に思っているものの、説明不足な態度や芹の行動を黙認してしまう場面が多く、読者としては少々もどかしさを感じた。特に芹の存在が、物語における不安要素として描かれていたが、彼女に対する玲夜の対応には改善の余地があったように思う。

一方で、柚子の周囲のキャラクターたちも個性的に描かれている。透子の妊娠や蛇塚の新たな恋人の登場は、物語に彩りを添え、柚子の成長を支える存在として描かれている。また、龍や子鬼たちが柚子をサポートする場面は、物語にユーモアと温かみをもたらしており、彼らの活躍が物語の魅力をさらに引き立てている。

物語の終盤で、柚子と玲夜が結婚式に向けて歩みを進めるシーンは感動的であり、二人の未来を祝福する場面が心に残った。新婚生活がどのように展開されていくのか、次の章がますます楽しみになる一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

プロローグ

世界大戦が多くの国々に甚大な被害をもたらし、日本も例外ではなかった。戦後、日本の復興は絶望的と思われたが、人間に紛れて陰で生きてきたあやかしたちが表に出てきたことで、彼らの美しい容姿と人間ならざる能力が復興に大きく貢献した。現代では、あやかしは政治や経済、芸能などあらゆる分野で活躍している。あやかしは時折、人間の中から花嫁を選び、その選ばれた者は大切に愛される存在となる。特に強く美しい鬼に選ばれた花嫁は、一度は多くの女性が夢見る存在である。しかし、花嫁は意思を持つ個であり、時にあやかしの愛が窮屈に感じることもあるだろう。その時、花嫁はどのような選択をするのかが問われるのである。

1章

三月のまだ肌寒い時期、柚子は大学四年生になる前に料理教室に通い始めた。玲夜のために美味しい料理を作りたいという思いからだったが、玲夜は最初、料理教室への参加を渋っていた。しかし、最終的に玲夜の条件である「男性のいない教室」に通うことを許可された。

料理教室では、柚子が無花果を使ったマフィンを作り、無事に完成させた。教室が終わると玲夜が毎回迎えに来るため、他の女性たちは玲夜に興味を抱き、身だしなみに気を配るようになっていた。帰り道、玲夜は柚子に甘い言葉をかけ、柚子が作ったマフィンをその場で食べて褒めた。

さらに、玲夜は結婚の準備を進めることを提案し、婚礼衣装のパンフレットを柚子に渡した。柚子は結婚に対して喜びを感じ、二人は今後の結婚式に向けて心を弾ませた。玲夜もまた、柚子の婚礼衣装姿を見るのを楽しみにしており、忙しい中でも早く仕事を終え、結婚準備に取り掛かることを誓った。

玲夜が忙しくなり、屋敷にいる時間が減ったが、柚子は結婚準備に向けて喜びを感じていた。ウェディングドレスのパンフレットを見ながら、友人の透子と話をしていると、透子が突然気分が悪くなり、東吉が彼女を抱えて部屋を出て行った。戻ってきた透子は、実は妊娠していることを告白し、大学を辞める決意をしていた。東吉が過保護になっているため、透子は結婚式を諦め、籍だけを入れることにしたと話した。透子は少し不満を抱えているが、妊娠自体を喜んでおり、柚子もその幸せを感じ取った。

透子は、妊娠後の東吉の過保護ぶりを話し、柚子に対しても玲夜が過保護になるだろうと警告した。柚子は最初は笑っていたが、玲夜が普段から過保護であることを思い出し、不安を感じ始めた。

その夜、玲夜が仕事から戻り、柚子は短い時間を一緒に過ごした。透子の妊娠について話し、玲夜は祝いの品を贈ることを提案した。柚子が透子の妊娠を聞いて、自分たちの子供のことを考えたが、玲夜は「当分子供は必要ない」と述べた。理由は、子供ができると柚子の関心がそちらに向いてしまうことを心配していたからである。しかし、後に玲夜は、柚子に似た女の子ならば早くてもよいと冗談交じりに言い、柚子を笑わせた。

数日後、柚子は元手芸部の部長と会い、子鬼たちの結婚式用の衣装を依頼した。元部長は大喜びし、子鬼たちのために最高の衣装を作ることを約束したが、その気合いぶりに柚子は少し不安を感じた。

玲夜の仕事が一段落し、柚子との約束を果たすために衣装を見に行くことになった。週末、ふたりはまずオーダーメイドのドレス店を訪れ、柚子は試着を通してドレスを選ぶことにした。柚子がいくつかのドレスを試着する中、玲夜は彼女の美しさに感動しつつも、露出の少ないデザインを強く希望した。結局、袖のあるドレスが玲夜に最も好評で、柚子もそれに納得した。

次に、ふたりは和装の衣装を選ぶために呉服店を訪れた。柚子は桜の刺繍が施された白無垢を選び、色打ち掛けには赤色の華やかな生地を選んだ。玲夜は紋付き羽織袴を決定し、着物の試着も順調に進んだ。

柚子は子鬼たちの衣装を元部長に依頼していたが、龍も自分の衣装を欲しがり、結果として呉服店に龍の衣装も頼むこととなった。龍は喜びつつも、派手で神々しいデザインを要求し、どんな衣装になるか心配する柚子の姿があった。

2章

柚子は大学四年生になったが、透子が退学したため、共に卒業することは叶わなかった。友人は東吉と蛇塚しかおらず、他の学生たちは鬼龍院の影響を恐れたり、嫉妬や利用目的で近づいてくるため、仲良くなるのが難しかった。柚子は玲夜との結婚を心待ちにしつつ、家族ができることに期待していた。

一方、透子は妊娠し学生結婚した。柚子は透子の幸せを祝福し、透子の様子を気にかけながら東吉や蛇塚と大学のカフェで食事をする日々を過ごしていた。透子のつわりがひどいことを聞き、柚子と蛇塚はそれぞれお取り寄せスイーツやレストランの品を透子に送ることにした。

そんな中、カフェで白髪の少女が柚子を睨むように見つめていることに気づいたが、柚子には心当たりがなかった。蛇塚はその少女に近づき、彼女の手を取り出て行った。柚子と東吉は驚き、彼女が蛇塚の知り合いなのかと興味を抱いた。

柚子は週末、玲夜が仕事に出かけた後、自宅でお弁当を作ることにした。子鬼たちと一緒に料理を楽しみながら、彼女は料理教室で学んだスキルを生かして玲夜へのサプライズを計画していた。作ったお弁当を持って玲夜の会社へ行くことを決意し、専属の使用人たちに見送られながら出発した。

会社に到着し、受付で玲夜の婚約者だと名乗ったが、受付の新人女性に信じてもらえず、嘘だと判断されて追い返されそうになった。新人は、あやかしはあやかしとしか結婚しないという常識を信じていたためであった。しかし、別の社員が柚子の正体を知り、状況を解決した。

その後、高道が柚子を迎えに来て、無事に玲夜へのサプライズは成功に向けて進んだ。

柚子は久しぶりに玲夜の社長室へ訪れた。玲夜にサプライズでお弁当を届けるため、秘書の高道に案内されて部屋へ向かった。しかし、到着すると、玲夜が見知らぬ女性と抱き合っている場面を目撃してしまい、動揺した。龍も激怒して玲夜を非難したが、玲夜は冷静に状況を説明し、浮気ではなく、幼馴染の鬼沢芹が抱きついただけだと明かした。芹は海外での生活習慣から挨拶として抱きついただけで、深い意味はないと説明されたものの、柚子は不安を感じた。

玲夜は柚子を抱きしめ、彼女だけを愛していると改めて伝え、柚子は納得したものの、芹の言動や態度にはまだ違和感を覚えた。そんな中、玲夜に手作りのお弁当を差し出し、彼がそれを美味しいと喜んでくれたことで、柚子も安心した。柚子は料理教室で学んだ技術をもっと活かしたいと考え、玲夜に料理教室にもっと通いたいと提案したが、玲夜は彼女との時間が減ることを懸念し反対した。

玲夜が仕事を終えて帰宅すると、柚子は彼を迎えたが、同時に芹という女性も一緒に屋敷に現れた。玲夜は、しばらくの間芹を屋敷で面倒見ることになったと説明し、理由として芹が実家で見合いを強要されることを避けたいからだと言った。玲夜の幼馴染である芹の存在に、柚子は戸惑いと嫉妬を感じつつも表面上は平静を保とうと努めた。

夕食の席で、芹は幼少時代の話を持ち出し、玲夜と親しげに会話を進めたが、玲夜は常に柚子に視線を向け、芹の話にはほとんど興味を示さなかった。芹が玲夜の気を引こうとする様子に、柚子は苛立ちを覚えながらも、自分の感情を抑えようとした。食事後、芹は玲夜に仕事の話をしたいと言い、二人は客間で話すことになったが、柚子は内心で不安を抱えていた。

子鬼たちが玲夜を「見張る」と言って彼に同行することで、柚子は少し安心したものの、芹との生活がこれから始まることに対して不安を拭いきれなかった。

柚子は結婚式でサムシングフォーを取り入れようと、玲夜の母である沙良を訪ねたが、芹に対する愚痴をこぼしてしまった。龍が率先して芹の行動を告げ口し、芹が柚子に敵対心を持っていると主張した。実際に、芹は玲夜に馴れ馴れしく接し、柚子と玲夜の時間を邪魔するような行動を取っていた。

沙良は芹がかつて玲夜の婚約者候補であったことを明かし、彼女がまだ玲夜を諦めていない可能性を示唆した。芹の振る舞いは柚子にとって不快であり、柚子は彼女を苦手に感じていた。

沙良は芹が長く屋敷に滞在するかもしれないと話し、柚子はその状況に悩んでいた。玲夜が芹の行動に対して無反応なことに疑問を感じた柚子に、沙良は玲夜が芹に対しては友達未満の関係であり、深い関係ではないと説明した。沙良は、柚子が玲夜にとって唯一の花嫁であり、自信を持つように励ました。

柚子と玲夜は結婚式のためのオーダードレスの打ち合わせに参加した。忙しい中、玲夜が一緒に来てくれたことに感謝していたが、芹の存在が問題だった。芹は玲夜の元婚約者候補で、柚子に対して明らかに敵対的な態度を取っていた。打ち合わせの場でも、芹は自分の意見を押し付け、柚子のドレスのデザインに難癖をつけた。

柚子はついに我慢の限界に達し、芹に対して毅然と反論したが、芹は玲夜に泣きつこうとした。しかし、玲夜は芹を冷たく突き放し、柚子を優先した。芹は悔しがりながら店を去ったが、その後も彼女は屋敷に居続けた。柚子はこれ以上芹と関わりたくないと玲夜に訴えたが、玲夜は状況を変えることはできなかった。

3章

柚子は、玲夜と一緒に過ごす時間が減り、芹が屋敷に居続ける状況に不満を抱いていた。芹は柚子に対して毒を吐き、玲夜にべったりと寄り添う行動を続けていたため、柚子は次第に不信感と不安を抱えるようになった。蛇塚に相談する中で、彼は「花嫁を裏切ることはない」という言葉で柚子を励まし、もう少し信じて待つよう助言した。

また、柚子は雪女の白雪杏那から嫉妬され、冷気を感じていた。杏那は蛇塚に好意を持っており、彼が柚子に優しくする様子に嫉妬していたのだが、蛇塚と杏那は交際を始めたことが明らかになった。これに柚子と東吉は驚きながらも祝福し、透子にも報告した。

柚子は今後、杏那の嫉妬に注意しながら、蛇塚の幸せを見守ることになった。

柚子は、待ちに待った結婚式用の色打掛が届いたことで、興奮しながら帰宅した。彼女は雪乃から衣装が無事に届いたことを聞き、早速和室に向かった。そこで目にした美しい赤い色打掛に感嘆し、玲夜にも見せたいと思い、試着は控えることにした。雪乃から白無垢も後日届くと聞き、さらに期待が膨らんだ。

柚子は着物を見ながら結婚式の準備に思いを馳せ、鬼の一族の結婚式で使われる桜の花びらについて龍と話し合った。龍は桜の木が完全に枯れたわけではなく、来年の春には満開になると保証し、柚子は安心した。その後、夜帰ってきた玲夜に早速着物を見せ、二人で喜びを共有したが、その場には無表情で見守る芹の姿もあった。

柚子は朝、色打掛が黒い液体で汚されているのを発見し、ショックを受けた。龍がその液体が墨汁であると告げると、現場に居合わせた芹が不適な笑いを浮かべた。芹は自らが犯人であることを否定したが、猫たちが芹が夜中に色打掛を汚した証拠を見ていたことが判明し、状況は一転した。芹はその場で非難を浴び、まろとみるくが彼女に噛みつき騒ぎが大きくなった。

玲夜が現場に駆けつけ、汚された色打掛を見て柚子の悲しみに気づくが、すぐに本家に行くと言い残し、その場を去った。柚子は失望し涙を流したが、使用人の雪乃に支えられて部屋へ戻った。桜子が現れ、芹を叱責し、柚子を慰めた。そして、龍が桜子に事情を報告していたことが明らかになり、桜子は芹を厳しく非難した。

最終的に、玲夜は芹を屋敷から追い出すことを決断し、彼女は使用人たちによって退去させられた。玲夜は、芹を屋敷に置いていたのは父・千夜の指示であり、一族内の不審な動きに対する監視のためだったと説明した。柚子を悲しませた代償は厳しく取られることが示され、桜子も満足げに笑みを浮かべた。

玲夜に追い出され本家に送られた芹を待っていたのは、鬼の一族の当主である千夜であった。芹は千夜に自分が不当に扱われたと訴えたが、千夜は穏やかな笑顔のまま、玲夜は何も変わっておらず、ただ本当に愛する人を見つけたに過ぎないと述べた。また、芹が玲夜に好意を抱いたのは誤解であり、玲夜は彼女を牽制役として黙認していただけだと指摘した。

千夜は、柚子に対する芹の行動を厳しく批判し、芹が一族にとって不要になったことを告げた。彼は芹を海外の不便な地域へ送り、二度と日本に戻ってくることを許さないという当主命令を下した。芹が去った後、隣の部屋にいた千夜の妻・沙良が現れ、柚子を泣かせた芹に対し、自ら罰を与えたかったと不満を漏らしたが、千夜は当主としての責任を果たしたと説明した。

沙良は怒りを収めきれず、柚子の花嫁衣装を台無しにした芹への処罰が軽すぎると感じたが、千夜は芹に厳しい罰を科したと弁明し、さらに鬼沢家も管理不行き届きで処罰されることを明かした。しかし、千夜がまだ何か隠している様子を見た沙良は激怒し、柚子をこれ以上巻き込めば離婚を考えると脅した。その結果、しばらく沙良の機嫌は悪かったという。

4章

柚子は芹によって汚された結婚衣装を呉服店に持ち込んだが、墨汁による汚れを完全に取り除くのは難しいと言われた。落ち込む柚子に、店の女性は新しく入荷した美しい生地を勧めた。玲夜もその生地を気に入り、柚子は新しい着物で仕立て直すことを決めた。しかし、最初に選んだ衣装に対する思い入れが強く、完全に納得することはできなかった。

店員の提案で、汚れのない部分を使って人形を作ることになり、柚子はそのアイデアに感激し、明るい気持ちを取り戻した。玲夜も元気を取り戻した柚子を見て安堵していた。その後、オーダードレスの店に向かったが、芹による悪い記憶がよみがえり、柚子は気分が沈んでしまった。しかし、子鬼や龍の励ましを受け、前向きに新しいデザインのドレスを決めることができた。

柚子は友人の透子とドレスの話をした際、汚れた衣装を使った人形ができあがったことを話し、透子も柚子の気持ちを理解していた。また、透子は自身の妊娠についても語り、柚子の結婚式には無事参加できるだろうと言った。結婚式には、友人たちや柚子の両親についても話が及び、柚子は両親を招待するかどうか悩んだ。

その後、柚子はSNSでキャラ弁の投稿が大きな反響を呼び、料理に対する情熱を再確認した。そして、料理を学びたいという夢を抱き、専門学校への進学を考えた。しかし、玲夜は柚子の安全を優先し、外部の学校に通うことを許可しなかった。このことで二人は言い争い、柚子は一度はあきらめかけるが、自分の夢に対して真剣に向き合う決意を固めた。

翌日、玲夜は柚子に対して気を使いながらも、進学を許可することはなかった。柚子は納得できないまま、玲夜の言葉を受け止めつつも、今後の進路について考え続けることになった。

柚子は大学のカフェで、玲夜への不満を東吉に愚痴として漏らしていた。東吉は鬼龍院としての立場を理解し、柚子を諭そうとしたが、柚子は納得せず、玲夜が頭ごなしに自分の夢を否定したことに対して不満を抱いていた。彼女は、玲夜が以前は自分のやりたいことを応援してくれると言っていたのに、突然状況が変わったと言い出したことに困惑していた。

その時、龍が玲夜が苛立っている可能性を示唆し、柚子はそれに驚いた。玲夜が平静を装っていたことを知り、柚子は自分に相談してほしいと感じた。彼女は以前、なんでも話し合うと誓ったことを思い出し、玲夜がその誓いを忘れてしまったのではないかと不満を抱いた。

ある日、柚子に差出人不明の手紙が届いた。それは父親からの手紙であり、これまでの行いを反省し、謝りたいという内容が書かれていた。柚子は手紙を破り捨てたい衝動に駆られたが、透子の「両親を結婚式に呼ばないのか」という言葉が頭をよぎり、破るのをためらった。手紙の内容に戸惑いながらも、柚子はその手紙を引き出しにしまった。

数日後、再び差出人不明の手紙が届き、今回は住所が書かれていた。柚子はその手紙が本物かどうかに疑念を抱きつつ、手紙の内容に心が揺れた。そして、両親と会うべきかどうか悩み始めた。

柚子は玲夜に両親から手紙が届いたことを報告し、会いたいと相談したが、玲夜はそれを厳しく拒否した。玲夜は「両親とはもう縁を切った他人だ」と言い、会うことを許さなかった。

その後、龍が玲夜に「何か隠しているのか?」と問いかけたが、玲夜はそれを否定し、話は終わった。柚子は玲夜の態度に不満を抱きながらも、夜に玲夜に抱きしめられ、「俺には柚子以上に大事なものはない」という玲夜の言葉に心が揺れた。

柚子は、両親からの手紙が突然届かなくなったことに不審を抱いていたが、龍から「玲夜が手紙を握りつぶしている」という情報を得た。玲夜はどうしても柚子を両親と会わせたくないようであった。柚子は、玲夜が何かを隠していることを感じ、その理由を知るために、両親に会いに行く決意を固めた。

ある朝、玲夜が仕事に出かけた後、柚子は龍や猫たち、子鬼たちとともに行動を開始した。柚子は龍に、護衛の目をかいくぐって両親のもとに行くことができるか尋ねると、龍は「自分の力で可能だ」と応じた。龍は、子鬼たちにも柚子に忠誠を誓わせ、計画を進めることにした。

準備を整えた柚子は、龍に乗り込み、空を飛んで屋敷を抜け出した。無事に抜け出したものの、空中での移動に不安を感じた柚子は地面に降りた後、安堵していた。その後、柚子は再び強い決意を胸に抱き、両親のもとへ向かった。

5章

柚子は両親の手紙に書かれた住所を訪れたが、そこには立派な洋館があり、両親の暮らしぶりに疑問を抱いた。母親に導かれ、父親とも再会したが、両親は神谷という人物に援助されており、柚子にも神谷との結婚を強要しようとしていた。驚愕した柚子は自分の意思で断固として両親との縁を切ることを決意し、両親の思惑に従うことを拒んだ。

その後、神谷が現れ、柚子を取り囲むあやかしたちに捕らえられそうになったが、龍が大きな姿で現れ、柚子を守った。壮絶な場面の中で、玲夜が到着し、柚子を無事に救出。柚子は両親に対する情を完全に断ち切り、玲夜との未来を選ぶ決意を固めた。

柚子は玲夜とともに無事に屋敷へ戻り、使用人たちに迎えられた。柚子は彼らに迷惑をかけたことを謝罪し、後で個別に謝ることを決めた。部屋で玲夜と話し、柚子の両親が鬼沢家の指示を受けて柚子を利用しようとしていたことが明かされた。玲夜は柚子を守るためにそのことを隠していたが、柚子は自分が思っているほど弱くないと訴え、すべてを話すように求めた。

玲夜は柚子の妹、花梨についても話し、彼女が無事であることを伝えた。柚子は花梨に会わなくてもよいと判断し、玲夜との結婚を前にして隠し事をしないようにお願いした。玲夜は柚子の成長を認め、互いに愛を確認し合った。

その後、柚子は料理学校に通いたいと話し、玲夜と妥協を重ねた結果、週三日という条件で了承された。最後に、子鬼たちが言葉を話すようになったことが明かされ、玲夜は驚きながらも、柚子との関係を再確認し、さらに絆を深めた。

6章

柚子は両親との決別を決意し、玲夜との関係も修復して甘い雰囲気が戻っていた。そんな中、玲夜の父親、千夜が現れ、今回の出来事について柚子に謝罪をした。柚子は事前に情報を知りたかったと玲夜に不満を伝え、玲夜は困った顔をしていた。

また、神谷という人物は適切な処罰を受け、再び柚子の前に現れることはないと千夜は説明した。さらに、神谷を裏で操っていた鬼沢家については島流しの刑に処されたと語られた。

その後、柚子と玲夜は披露宴会場の下見に行き、高道の計画に驚きながらも披露宴の準備が着々と進んでいた。高道の熱心なサポートによって、柚子の結婚式の演出やスケジュールはほとんど決まっており、柚子はその出来栄えに感心しつつもやや圧倒されていた。

披露宴の準備の最中、柚子は東吉から電話を受け、透子が無事に女の子を出産したことを知らされ、喜んだ。玲夜と柚子は東吉への祝いの品を考えながら、子供の話題に花を咲かせた。

その後、柚子は料理学校に通いたいという希望を再確認し、玲夜は心配しながらも最終的には妥協し、週三日だけ通うことを認めた。

柚子は透子が出産した赤ちゃんを見に猫田家を訪問し、元気な透子と東吉に再会した。彼女たちは赤ちゃんの誕生を祝い、柚子はベビー服をプレゼントした。透子から赤ちゃんを抱っこするよう勧められ、柚子は初めて赤ちゃんを抱き、その小ささと重さに感動した。

一方で、玲夜も赤ちゃんに興味を持ち、最初は戸惑いながらも赤ちゃんを抱く姿が絵のように美しかった。赤ちゃんは玲夜に怖がることなく手を伸ばし、彼に興味を示していた。これに驚いた東吉は、普通のあやかしの子供なら鬼の霊力を怖がるはずだと説明したが、莉子はその例外であった。

透子は玲夜の姿を見て、彼が自分の子供を抱く日が楽しみだと語り、柚子もその未来に思いを馳せた。玲夜が赤ちゃんを抱く穏やかな姿を見て、柚子もいつか自分たちに同じ幸せが訪れることを期待していた。

柚子は大学を卒業し、ついに結婚式の日を迎えた。白無垢を着た彼女は、鬼龍院本家の一室で準備を進め、祖父母と感動的な時間を過ごしていた。祖父母に感謝の言葉を伝えた柚子は、涙をこらえながらも、ふたりの愛情に心から感謝していた。

その後、玲夜が現れ、彼女に設計図を手渡した。それは、玲夜がサプライズとして用意した柚子の料理店の建設計画であった。玲夜は、かつて反対していたにもかかわらず、柚子の夢を応援し、彼女の喜ぶ顔が見たくてこのプレゼントを準備したのだ。柚子はその気持ちに感動し、涙を浮かべた。

ふたりは互いに感謝を伝え合い、玲夜は柚子が自分にとって最高のプレゼントであると告げた。柚子も、玲夜が自分を見つけてくれたことに感謝し、これからも共に歩んでいくことを誓い合った。彼女たちは、未来に向けて深い愛情と絆を確かめ合い、幸せを噛みしめながら結婚の誓いを交わした。

龍の願い

龍が特注した華やかな衣装を披露し、子鬼たちやまろ、みるくがそれぞれの装いを整えて、柚子と玲夜の結婚式が始まった。会場には柚子の祖父母も参加し、龍や猫たち、子鬼たちも最前列に陣取っていた。柚子は白無垢に身を包み、玲夜と共に儀式を進め、ふたりは盃を交わし血の契約を結んだ。儀式の後、会場は大きな拍手に包まれ、龍たちは柚子と玲夜の新しい門出を心から祝福した。龍は、かつてのサクの魂が幸せになれなかった分も、柚子がたくさんの幸せを掴んでほしいと願っていた。そして、光る粒子が降り注ぎ、ふたりの未来を祝福するかのように輝き続けていた。

千年先まで残りそうな負の遺産

柚子は玲夜と共に本家での話し合いに参加し、話の間、桜子とお茶を楽しんでいた。しばらくして話し合いが終わり、玲夜が戻ると、高道が鬼の形相で現れ、桜子の秘密のコレクションに激怒した。高道は桜子が秘密裏に建てた建物と、その中にあるコレクションに驚き、燃やそうとしたが、龍の加護により燃えなかった。実は、龍が過去の謝罪の一環として、桜子の願いを受けてコレクションを守る加護を施していた。高道はその加護を解こうとしたが、龍は断固として拒否し、桜子も龍の言葉に同意した。高道は、最終的に桜子の趣味を受け入れることを余儀なくされ、落胆する姿を見せた。

登場人物

  1. 柚子
    本作の主人公であり、鬼の花嫁である。強く美しい鬼・玲夜と結婚準備を進める中で、多くの困難や試練に直面しながらも、成長を遂げていた。彼女は家族や友人との関係を大切にしつつ、玲夜との絆を深めていく。
  2. 玲夜
    柚子の婚約者であり、最も強く美しい鬼である。過保護でありながらも柚子に対して深い愛情を持ち、彼女を守るために奮闘していた。彼の幼馴染である芹との関係や家族の問題に悩みつつも、柚子との結婚に向けて誠実に対応していた。
  3. 透子
    柚子の親友であり、物語中盤で妊娠・出産を経験した。彼女は柚子と深い絆を持ち、互いに支え合いながら生活していた。妊娠中も友人として柚子に多くの助言を与えた。
  4. 東吉
    透子の夫であり、柚子の友人でもある。過保護な一面を持ちながらも、透子や柚子を支えていた。玲夜とも友好的な関係を築いていた。
  5. 蛇塚
    柚子の友人であり、透子や東吉と共に過ごすことが多かった。白雪杏那との交際が明らかになり、柚子や透子から祝福された。
  6. 白雪杏那
    雪女であり、蛇塚に好意を持っていたが、柚子に対する嫉妬心も抱えていた。彼女は蛇塚と交際を始めたことで物語に新たな展開をもたらした。

  7. 玲夜の幼馴染であり、かつての婚約者候補であった。物語の中で柚子に敵対心を抱き、玲夜への未練を見せたが、最終的に玲夜によって屋敷を追い出された。

  8. 霊獣であり、柚子や玲夜を守る存在であった。かつての強力で美しい姿は衰えたが、今でも柚子を守るために奮闘し、加護を施すなど重要な役割を果たしていた。
  9. 高道
    玲夜の秘書であり、柚子のサプライズを助けた人物である。結婚式や披露宴の準備にも熱心に関与しており、物語の中で重要なサポート役を担っていた。
  10. 千夜
    玲夜の父であり、鬼の一族の当主であった。芹に厳しい処罰を与え、家族を守るために奮闘していた。
  11. 沙良
    玲夜の母であり、柚子を優しく支える存在であった。芹に対しては厳しく接し、柚子を守るために努力していた。
  12. 神谷
    両親が柚子に強要しようとした結婚相手であり、物語の後半で柚子を襲う事件に関与していた人物である。最終的に千夜により適切な処罰を受けた。
  13. まろとみるく
    柚子に仕える二匹の猫であり、霊獣でもある。彼らは常に柚子や龍のそばに寄り添い、日常生活を明るくしていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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