小説「片田舎のおっさん、剣聖になる 2」感想・ネタバレ

小説「片田舎のおっさん、剣聖になる 2」感想・ネタバレ

どんな本?

片田舎のおっさん、剣聖になる 2』は、佐賀崎しげる氏が執筆し、鍋島テツヒロ氏がイラストを担当したライトノベルシリーズの第2巻である。本作は、片田舎で剣術道場を営む中年男性、ベリル・ガーデナントが、かつての弟子たちの活躍により、次第にその実力を認められていく物語である。

第2巻では、ベリルが元弟子であるスレナから迷宮攻略への同伴を依頼される。迷宮攻略の経験がほとんどないベリルであったが、その依頼を受けることにした。しかし、実力に疑問を持たれたベリルは、それを証明するためにスレナと戦うことになる。 

本作は、2021年9月にSQEXノベルより刊行されている。 また、シリーズ累計発行部数は650万部を突破し、2025年4月にはテレビアニメ化も予定されている。 

読んだ本のタイトル

片田舎のおっさん、剣聖になる 2
著者:佐賀崎しげる 氏
イラスト:鍋島テツヒロ  氏

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あらすじ・内容

そのおっさん、国を揺るがす陰謀も一刀両断する!!!

弟子アリューシアに引き立てられ、不承不承都にやってきた剣術師範のおっさん、ベリル・ガーデナント。 ようやく新生活にも慣れてきたのも束の間、最強の弟子や都会の喧噪は彼を放っておいてくれないようで――「先生の剣! こいつは腕が鳴るぜ!」 凄腕の鍛冶師に成長した弟子と再会したり(!)、「るっせぇ! アタシに構うな!!」 ワケありな不良少女の教育をしたり(!!)、 さらには魔法師団長ルーシーから、国家で蠢く策謀の解決を頼まれてしまって!?「あの……何度も言うけど俺、しがないおっさんだよ?」 困惑しながらも、今日もおっさんは剣を抜く――。 大人気成り上がりおっさんファンタジー、第2弾!

片田舎のおっさん、剣聖になる 〜ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件〜 2

感想

謙虚なおっさんが巻き込まれる都会の騒動
主人公ベリル・ガーデナントは、自分を「ただの田舎のおっさん」と謙遜する剣術師範である。
しかし、都会では彼を頼る人々が次々と現れ、彼の優しさや誠実さが求められる状況が続いた。
本巻では、特別討伐指定個体の魔物との戦いや、スリの少女ミュイとの出会いを通じて、ベリルの成長や周囲との絆が描かれていた。

新たなキャラクターと温かみのある関係性
本巻では元弟子たちの登場が控えめであった一方、新キャラクターとの関わりがメインとなった。
特にスリの少女ミュイとのエピソードは感動的で、彼女を養い子とする展開には驚かされた。
さらに、魔法師団長ルーシーとのやり取りも増え、家族のような温かい雰囲気が漂っていた。
ルーシーの存在感が増したことで、彼女がヒロインとして主人公に相応しいと感じられる場面もあった。

都会生活の中での成長と葛藤
都会での生活に慣れ始めた矢先、次々と事件に巻き込まれるベリル。
自分を過小評価し続ける彼が、周囲の信頼と期待を受けながら少しずつ前に進む様子は心温まるものである。
愛弟子たちとの絡みが少ない一方で、魔物の素材を使った新しい剣の製作や、ミュイを守るための奮闘が描かれ、物語に緊張感と感動をもたらしていた。

本格的な展開と次巻への期待
物語が本格的に動き出し、国家の陰謀や新たな事件の片鱗が見える展開となった。
ベリルが新しい剣を手にしたことや、義理の娘となったミュイとの関係がどう深まるのか、次巻への期待が高まる内容であった。
また、平凡を自称するおっさんが活躍する姿は、ほっこりとした安心感と、胸が躍るような楽しさを提供してくれた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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片田舎のおっさん、剣聖になる
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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

一  片田舎のおっさん、剣を探す

剣が折れた後の日々

ベリルはゼノ・グレイブルとの戦闘で剣が折れてから、落ち着かない日々を過ごしていた。冒険者ギルドからの助力要請が一段落し、騎士団での指南役の業務に専念していたが、折れた剣の代わりを見つける必要に迫られていた。彼は新たな剣を手に入れるべく、鍛冶屋を訪れる決意を固めた。

ギルドの提案と自立の選択

冒険者ギルドはベリルに剣を提供することを申し出たが、彼は借りを作ることを避けるためにこれを断った。ギルドの好意に感謝しつつも、ビジネス的な関係が自分には合わないと感じた彼は、自力で鍛冶屋を探す道を選んだ。

クルニとの再会と鍛冶屋探しの提案

早朝の散歩中、ベリルは元弟子であるクルニと再会した。クルニは彼が剣を探していることを知り、自身が剣を研ぎに出す予定を思い出した。そして、稽古後に推薦する鍛冶屋へ一緒に行くことを提案した。これにベリルは喜んで応じ、訪問を楽しみにすることとなった。

鍛冶師バルデルとの再会

クルニが推薦した鍛冶屋は、かつてベリルの弟子であったバルデルが営む店であった。再会を喜ぶバルデルは、彼女の剣の寿命を指摘し、新たなツヴァイヘンダーを提案した。クルニはその剣を選び、ベリルも新たな剣を求めて選定を始めた。

スレナの訪問と特別な剣の提案

剣を選んでいる最中、冒険者スレナが現れ、ゼノ・グレイブルの素材を用いた剣をベリルに贈りたいと提案した。彼は一度は固辞したが、スレナの熱意に押され、最終的に申し出を受け入れた。この剣が完成するまで、ベリルは日々の鍛錬に励むこととなった。

クルニとの両手剣訓練

修練場でベリルは、クルニにツヴァイヘンダーの使い方を指導した。両手剣に不慣れな彼女に、剣の扱い方や動作の基本を丁寧に教えた。特訓を重ねる中で、クルニは少しずつ成長し、ベリルも指導者としての手応えを感じていた。

不審者との遭遇と落とし物

訓練を終えた夜、ベリルは宿へ向かう途中でスリを試みた不審者に遭遇した。彼は相手を阻止したが、魔法で逃げられてしまった。不審者が落としていったペンダントを拾い、遺失物として届けることを決めた。

静かな夜の終わり

一連の出来事を思い返しながら、ベリルは宿へ戻り、疲れた体を癒すために風呂と睡眠を取ることを選んだ。彼の足音が夜の静寂に響く中、街は再び静けさに包まれていった。

二  片田舎のおっさん、盗賊と出会う

副団長との雑談と鍛錬

昨日のスリの話題
ベリルはレベリオ騎士団の修練場で副団長ヘンブリッツと稽古をしながら、前日に起きたスリ事件を語った。魔法を使われて驚き、相手を取り逃がした経緯を説明すると、ヘンブリッツは魔法の使い手がスリを行う不自然さに疑問を抱いた。魔装具を利用した可能性を示唆した彼の指摘に、ベリルは納得を示した。

クルニの成長と副団長の期待
話題はクルニの両手剣訓練に移り、地道に努力を続ける彼女の成長が評価された。ヘンブリッツは彼女の可能性を信じ、さらなる成長を楽しみにしている様子であった。

拾ったペンダントの相談
スリが落としていったペンダントについても話題が及び、ヘンブリッツは遺失物の預かり所への届け出を提案した。丁寧に手入れされたペンダントが持つ背景に思いを巡らせながら、ベリルは所有者へ無事に返したいと語った。

模擬戦の提案と鍛錬の熱意
ヘンブリッツが模擬戦を提案し、ベリルはこれを快諾した。二人の鍛錬は修練場に剣の音を響かせ、互いに熱意を持って稽古に励んでいた。

拾ったペンダントの届け出

騎士団詰め所での届け出
稽古を終えたベリルは、拾ったペンダントを騎士団詰め所に届けた。騎士たちが整然と対応する中で、彼は落とし主が現れることを期待しつつ手続きを済ませた。

少女との再会

ペンダントを探す少女との邂逅
街を歩いていたベリルは、地面を探す少女に気づき声を掛けた。彼女は落としたペンダントを探していることを告げ、前夜のスリの件と関連していると悟ったベリルは、それを騎士団に届けたと説明した。少女は動揺しながらも同行に同意し、共に詰め所へ向かうこととなった。

ペンダント返却のやり取り
詰め所に到着した少女とベリルは、返却の手続きを進めた。ベリルは少女を責めることなく対応し、落ち着いた雰囲気の中で話し合いを進めた。

少女の告白と動機

スリを働いた理由の告白
少女は、姉を蘇らせるための資金が必要だったと告白した。その言葉はベリルとアリューシアを驚かせたが、詳細な手段は明かされないままであった。

魔術師学院との協力の取り付け
アリューシアの提案により、少女の才能を魔術師学院で確認することが決まった。ベリルもこれに同意し、彼女の未来の可能性を信じる姿勢を見せた。

盗賊団「宵闇」との対峙

拠点への突入
ルーシー、ベリル、少女の三人で盗賊団「宵闇」の拠点を急襲した。ルーシーの魔法が扉を開け放ち、緊張感漂う中で突入が開始された。

宵闇の頭目との対峙
頭目が姿を現し、少女を利用していたことが明らかになった。ルーシーはその魔法の冒涜に怒りを見せ、彼を無力化するための攻撃を躊躇なく繰り出した。

戦闘の決着と賊の制圧
部下たちとの戦闘が発生するも、ベリルが巧みに木剣を振るい、賊を次々と制圧した。最後にルーシーが頭目を完全に無力化し、一連の戦いが終わりを迎えた。

宵闇の調査とミュイの未来

魔装具の正体と黒幕の示唆
頭目が身に着けていた装飾品が魔装具であると判明し、背後に黒幕がいる可能性が示された。ルーシーとアリューシアは、さらなる調査の必要性を共有した。

少女の預かり先の決定
少女は一時的にルーシーの保護下に置かれることとなった。ベリルは彼女の未来が穏やかなものになることを願いながら、その場を後にした。

騎士団庁舎での報告

宵闇の連行と次なる行動
捕らえられた宵闇と部下たちは、騎士団の管理下に置かれた。ルーシーは調査の継続を提案し、騎士団と連携して黒幕の追跡を進めることとなった。

日常への帰還

宿への帰路
騎士団庁舎を後にしたベリルは、日常の生活に戻るため宿へ向かった。事件が一段落し、疲労感の中で明日への準備を整えようとしていた。

酒場でのひととき
行きつけの酒場に立ち寄り、一杯の酒で心を癒すことを選んだ。騒がしい街の中、穏やかな時間を楽しみつつ、新たな日々への期待を胸に刻んでいた。

〈ミュイ・フレイア〉

幼少期と姉との日々

ミュイは幼少期を姉と共に過ごしていた。両親の記憶はなく、日々の生活に追われる中で、姉が献身的に面倒を見ていた。ミュイも姉を助けたいと願い、次第に二人で別々の仕事を請け負うようになった。質素ながらも安定した生活が続き、姉妹の絆は深かった。

姉の死と運命の転換点

ある日、姉が帰宅せず、無愛想な男がミュイのもとを訪れた。男から姉の死を告げられ、ペンダントを手渡されたミュイは深い絶望に陥った。その後、男から「姉を生き返らせる手段がある」と持ち掛けられたことで、危険な道を選ぶこととなった。

危険な生活と目標への執着

ミュイは男から与えられた魔装具を用い、危険な仕事をこなし始めた。やがて炎を操る技術を身につけ、その力を使って金を稼ぎ、姉を蘇らせる資金を集めることに執着していた。彼女の生活は荒んでいたが、目標への執念だけは変わらなかった。

騎士団との出会いと価値観の揺れ

ミュイはある失敗を機に追われる身となり、偶然出会った男性に行動を見抜かれた。その後、彼に連れられ騎士団庁舎を訪れることになった。そこで、自分の生活の実態や、姉を蘇らせる希望の無意味さを知らされ、深い絶望に包まれた。騎士団長や魔法師団長、連れてきた男性は、そんな彼女を励まし、別の道を示そうとした。

希望の兆しと新たな一歩

ミュイは彼らの真摯な態度に触れ、失意の中で自身の未来について考え始めた。姉を蘇らせることは叶わないと理解しながらも、大人たちを信じてみる決意を固めた。過去の執念から一歩抜け出し、新たな人生を歩む可能性を感じ、ミュイは少しずつ前進を始めた。

幕間

クルニの新たな挑戦

夕暮れの騎士団修練場で、クルニ・クルーシエルは新たに手にした大剣・ツヴァイヘンダーを振るい続けていた。それはかつての師・ベリルの勧めで選んだ武器であり、扱いにまだ不慣れであった。ショートソードとは全く異なる重量と振りの感覚に戸惑いを抱きながらも、彼女はひたむきに練習を重ねていた。

フィッセルとの再会と助言

修練場に現れたのは、クルニの旧友であり魔法師団のエース・フィッセル・ハーベラーであった。彼女は、約束していた夕食を忘れて訓練に没頭するクルニを見つけ、呆れながらも手助けをすることにした。フィッセルは剣術の専門家ではないものの、素振りに足りない「相手を想定する意識」について指摘した。その助言は、クルニに新たな気づきを与えた。

即興の模擬戦と友情の形

助言を受けたクルニは勢いに乗り、フィッセルに模擬戦を申し出た。渋々ながらも彼女は応じ、騎士団の修練場に剣戟の音が響き渡った。短い試合の中で、クルニは新たな意識を持ちながら剣を振ることを試みた。

日暮れ後の晩餐

その後、二人は日もとっぷり暮れた後にようやく夕食へと向かった。フィッセルは長時間訓練に付き合わされた不満を隠さず、クルニの財布は彼女の機嫌を取るために大いに苦労させられる結果となった。

三  片田舎のおっさん、闇夜を切り裂く

騎士団修練場での稽古

朝早くから、レベリオ騎士団の修練場では多くの騎士たちが鍛錬に励んでいた。その中で、指南役のベリルは、弟子であるクルニ・クルーシエルと模擬戦を行っていた。クルニは新たな武器であるツヴァイヘンダーを手にしており、その扱いに徐々に慣れつつあった。ベリルは彼女の成長を喜びつつも、間合いや突きの技術の改善を求めた。クルニは指摘に少し落ち込んだものの、その素直な性格ゆえにすぐに気を取り直し、次の稽古に臨む準備を整えていた。

クルニの成長と師の期待

クルニの成長は著しく、ツヴァイヘンダーという癖のある武器にも対応できる力を見せていた。小柄な体から繰り出される大剣の攻撃は、リーチと威力の両面で優れており、ベリルも彼女の将来性に大きな期待を寄せていた。日々の鍛錬が確実に実を結んでいることを、クルニ自身も感じ取っているようであった。

師の新たな剣への期待

稽古の合間、クルニが思い出したのは、ベリルの新しい剣の完成予定であった。彼女はそのことを伝え、共に鍛冶屋へ向かうことを提案した。剣の素材には特別討伐指定個体のゼノ・グレイブルの素材が使われており、その完成品に対する期待は高かった。ベリルは当初忘れていたが、改めて剣士としての心が弾み、鍛冶屋に足を運ぶ決意を固めた。

訓練再開と期待感

休憩を終えた後、ベリルとクルニは再び訓練に戻った。クルニの高まる意気込みに触発され、ベリルも改めて気を引き締めた。新たな剣との出会いを前にした彼らは、それぞれの期待を胸に秘めながら、この日の稽古に最後まで真剣に取り組むことを誓った。

クルニとの稽古終了と日常の一端

クルニとの鍛錬を終えたベリルは、生活のリズムを崩さないよう、修練の時間を決めていることを再確認した。クルニは明るい様子で更衣室へ向かい、ベリルはその間に外出の準備を整えた。アリューシアやルーシーが不在であることを気にしつつも、新たな剣への期待を胸に抱いていた。

鍛冶屋への道中の雑談

クルニと共にバルデルの鍛冶屋へ向かう道中、二人は雑談を交わした。ベリルは新調されるロングソードについての期待を語り、クルニは自分のツヴァイヘンダーがしっくりきていると嬉しそうに話していた。新しい武器が二人にとって重要な転機となっていることを実感しながら鍛冶屋に到着した。

新たな剣との出会い

鍛冶屋のバルデルから渡された剣は、ゼノ・グレイブルの素材とエルヴン鋼を用いた業物であった。細身の剣身と仄かな赤い輝きが特徴で、実用性と美しさを兼ね備えた一振りであった。ベリルはその剣を手に取ると軽く振り、確かな手応えを感じ取った。バルデルの自信作に対し、ベリルは感謝の意を伝えた。

帰路とルーシーの登場

鍛冶屋から戻る途中、騎士団庁舎の入り口でルーシーが待っていた。彼女はベリルに話があると言い、彼を北区にある自宅へ誘った。クルニには申し訳なさを感じつつ、ベリルはルーシーと共に街を進んだ。

魔力の話題と魔術師の違い

道中、ルーシーはベリルの剣から微かな魔力を感じ取ったことを語り、それに感心するベリルが魔術師の呼び名について尋ねた。ルーシーは、魔術師という呼び名が魔法使いと異なる理由を説明し、ベリルはその奥深さに驚きを覚えた。彼らは穏やかな会話を交えながら目的地へ向かっていった。

魔法と魔術の違い

ルーシーは魔法と魔術の違いを語り始めた。魔法とは、魔力を媒介に発生するすべての現象を指し、魔術はその中でも人の手で再現可能なものだと説明した。古代から存在する魔法の中で、人が扱えるようになったのは最近のことで、研究を通じて魔法から魔術への区別が始まったという。魔術師はその一部を操れるに過ぎず、すべてを扱える者はいないとのことだった。

スフェン教の奇跡

スフェン教の教えでは、神スフェンの奇跡が人々の信仰の基盤であると説明された。その中でも最上位の奇跡とされる「死者の蘇生」について語られたが、イブロイ自身はこれを伝説と捉えていた。ルーシーは脚色だと断じたが、イブロイは教典に基づく信仰の重要性を軽視しないよう諫めた。

レビオス司教の疑惑

ルーシーは、捕えた宵闇の尋問から判明した黒幕の名前として、スフェン教の司教レビオスを挙げた。彼が魔装具を流している可能性が浮上し、その捕縛が必要だとされた。しかし、レビオスは隣国スフェンドヤードバニアの人間であり、やましい自覚があれば容易に亡命できる状況であるため、迅速な行動が求められていた。

ベリルへの依頼の理由

ルーシーやアリューシアは、それぞれの立場上動くことができなかった。魔法師団や騎士団が表立って行動すれば、国際問題や教会との対立を招く恐れがあるためである。一方で、ベリルはその制約から自由な立場にあるため、レビオス捕縛の役割を依頼された。イブロイもまた教会内の立場を保つ必要があり、自ら動けない事情を抱えていた。

司祭イブロイの苦悩

イブロイは司祭という立場上、物的証拠がない状態でレビオス司教を拘束することは難しいと説明した。スフェンドヤードバニアの教会騎士団を動かすにも時間が足りず、結果として内部での問題解決を模索していた。冒険者ギルドへの依頼も情報漏洩のリスクが高いため選択肢にはならなかった。

レビオスと宵闇の契約

ルーシーの説明によれば、レビオス司教は宵闇と契約を結び、教会勢力から魔装具を横流しする代わりに、魔法の素質を持つ者や影響の少ない者を提供させていた。目的はスフェンの奇跡、すなわち死者蘇生の再現と推測された。この事実が公になればスフェン教やスフェンドヤードバニアそのものが批判を浴びる恐れがあった。

ベリルへの依頼

レビオス捕縛の依頼がベリルに向けられた理由は、彼が騎士団や教会に属さない立場だからである。彼の肩書きはレベリオ騎士団の特別指南役だが、正式な叙任を受けていないため、形式上はただの雇われ人だった。ルーシーはこの点を挙げ、彼が依頼を受けることに支障はないと説明した。

ミュイへの配慮

ミュイの存在がこの依頼を受ける決断に影響を与えた。彼女の過去や、現在の環境に対する戸惑いを考慮し、彼女の将来のためにも問題を解決する必要があると判断された。ミュイ自身にはこの件が伝えられておらず、彼女の心情を揺るがさないためにも慎重に進めることが求められた。

行動計画とリスク

レビオスが北区の教会から逃亡を図る可能性が高く、その動きを抑えるため、ベリルは張り込みを任された。ルーシーは地図を示し、具体的な行動指針を説明した。戦闘の可能性についても触れられ、レビオスが単独で動かず協力者がいる可能性が高いことが示唆された。

ミュイとの対話

ベリルは出発前にミュイと対話し、彼女の疑念や不安を和らげるために子供らしく過ごすことの重要性を説いた。彼女の反発も見られたが、大人として彼女を支えるべきという姿勢を崩さなかった。ルーシーも見守る中、ベリルはミュイの未来を守る決意を新たにした。

出発の準備

最後に、ベリルは移動手段を確認し、馬車を利用することを決めた。暗くなる時間帯に備え、早急に行動する必要があった。彼は依頼の成功を祈りつつも、その困難さを実感しながら北区の教会へ向かう準備を整えた。

北区への到着と教会の静寂

ベリルはルーシーの案内を受け、北区へ向かう馬車に乗った。この時間帯、北区行きの乗客は少なく、彼は一人静かに街の景色を眺めていた。到着した北区は静寂に包まれ、観光地として有名な王宮の影が遠くに見えた。目的地であるスフェン教の教会は、馬車停留所から少し離れた丘の上に控えめに建っていた。

教会への張り込みと異様な動き

教会周辺にはほとんど人影がなく、夜の暗がりの中でベリルは張り込みを始めた。しばらくすると、教会の扉が開き、多くの人々が荷物を運び出す様子が見られた。重装備の騎士たちが護衛を務めるその光景は、夜逃げを示唆していた。ベリルは彼らに接触し、慎重に会話を試みたが、司教レビオスの指示により重騎士たちが武器を抜き、戦闘が避けられない状況となった。

騎士たちとの戦闘

重騎士たちは身体強化の奇跡を用いて襲い掛かり、ベリルは鋭い剣技とゼノ・グレイブルの強力な剣を駆使して応戦した。彼は相手を殺さないよう力加減を調整しながら、騎士たちを次々と制圧していった。しかし、その数と彼らの戦力の高さから、戦況は決して楽観できるものではなかった。

助っ人の登場

戦闘の最中、ベリルの元弟子である魔法師団のフィッセルと、大剣を振るうクルニが現れた。二人はそれぞれ騎士たちに立ち向かい、戦況を少しずつ有利に導いた。フィッセルは魔法と剣技を駆使し、クルニはツヴァイヘンダーを振るい騎士と互角以上に渡り合った。二人の予想外の登場により、ベリルは少し緊張を解きつつ戦闘を続けた。

レビオス司教の奇跡と新たな敵

戦いのさなか、レビオス司教が奇妙な祝詞を唱え始めた。その結果、周囲に置かれていた木箱から六人の人間が現れた。彼らは不自然な状況で箱に封じられており、レビオスの奇跡によって目覚めたようだった。司教と彼を守るシュプールはその場を離れようとし、ベリルは阻止しようと試みたが、新たに現れた六人が彼の行く手を遮った。戦闘はさらなる混沌へと進んだ。

不気味な六人の出現

レビオス司教の奇跡によって箱から出現した六人は、生命の気配がなく、単なる死体が操られているように見えた。その中の一人の姿が、ミュイに酷似していたため、ベリルの足は一瞬止まった。彼らはゆっくりと歩み寄り、命令通りに邪魔をするため動いているようだった。フィッセルとクルニが駆け寄り勝利を報告するも、この異様な光景を前に言葉を失っていた。

六人との対峙

ベリルは弟子たちに下がるよう指示を出し、自ら剣を構えた。この六人を斬り伏せる役目は、自分でなければならないと決意したためである。彼は一人ずつ静かに剣を振り、かつて人だった者たちを斬っていった。その風貌や背景を思えば、罪のない人々を利用したレビオスの非道さに怒りがこみ上げたが、目の前の敵を倒すことに集中した。

レビオス司教の追跡

六人を片付けた後、ベリルはレビオス司教を追うよう弟子たちに指示を出した。クルニは騎士団を呼びに行き、フィッセルはベリルと共に司教を追跡することとなった。彼らは夜の北区を駆け抜け、ほどなくレビオス司教とシュプールを発見した。

シュプールとの一騎打ち

レビオス司教を守るシュプールは高い技量を持つ騎士であり、ベリルとの戦闘は熾烈を極めた。シュプールの速度と力はフルプレートを着ているとは思えないほどで、ベリルは攻撃をいなしつつ必死に反撃の隙を探った。さらに、シュプールは奇跡を用いて身体を強化し、激しい鍔迫り合いが続いた。

フィッセルの支援もあり、最終的にベリルはロングソードの斬撃でシュプールの武器を破壊し、致命的な一撃を与えた。だが、強敵を倒した余韻に浸る暇もなく、彼はレビオス司教の追撃をフィッセルに任せ、自身はその場を片付けることに集中した。

司教の拘束と葛藤

レビオス司教は逃げきれずフィッセルに拘束された。彼の口からは研究の正当性を主張する言葉が飛び出し、ベリルの怒りを買った。だが、ベリルは感情を抑え、司教を騎士団庁舎に引き渡すことを優先した。

道中、司教の言葉に苛立ちを募らせつつも、ベリルは自制を保ち続けた。彼はレビオス司教の非道を裁くのは自分ではなく、国や司法の役目であることを理解していたからである。レビオスの所業や騎士団との関係に疑念を抱きながらも、彼は任務を完遂するため足を進めていった。

アリューシアとの再会

レベリオ騎士団庁舎に到着すると、出迎えたのは夜間警備の騎士ではなく、団長のアリューシアであった。彼女はベリルたちの到着を待っていたようで、その信頼の厚さにベリルは少し戸惑いを覚えた。レビオス司教はアリューシアの指示により地下へ連行され、無駄な抵抗を見せることなく騎士たちに引き渡された。

フィッセルとの別れ

任務を終えたフィッセルは、ベリルと簡単に言葉を交わして庁舎を後にした。彼女の成長ぶりを感じたベリルは、剣術と魔法を融合させたその戦闘スタイルが非常に実戦的であり、場合によってはルーシーを超える可能性すらあると考えた。フィッセルの後ろ姿を見送りながら、ベリルは彼女の柔軟な戦い方に感嘆した。

騎士団との情報交換

アリューシアとの会話の中で、現場の確保が問題なく進んでいることを確認したベリルは、戦闘中に感じた疲労を漏らした。彼が対峙したシュプールの強さについて語ると、アリューシアはその使用武器から彼が教会騎士団の一員である可能性を指摘した。レビオス司教の一派が教会騎士団内部に影響力を持っていることが示唆され、問題の深刻さを共有した。

ミュイへの秘密

ベリルは、レビオス司教の「奇跡」によって蘇らせられた六人の中に、ミュイに似た人物が含まれていたことを思い出した。この事実を彼女に伝えるべきか迷った末、心理的負担を与えることを避けるため、自分だけの秘密として胸に収めることを決意した。何事も時間が解決してくれると信じ、彼は事実を告げない道を選んだ。

騎士団への後処理の委託

レビオス司教を捕えたことで、今回の件はひとまず解決の形を見せた。後処理はアリューシアたちに任せることを確認し、ベリルは宿へ戻ることにした。疲れを感じながらも、今日の成果に安堵しつつ、彼は夜のバルトレーンを歩いた。

一日の終わり

騎士団庁舎を後にしたベリルは、今日の激闘を振り返りながら宿へ向かった。激しい戦いと複雑な心情が入り混じった一日を終え、彼は早く休みたいと思いながら夜の街を静かに歩き続けた。

ルーシーの訪問と新たな提案

翌朝、ベリルは騎士たちの指導に向かうため庁舎へ向かったところ、ルーシーが入口で待ち構えていた。彼女は既にアリューシアへ連絡済みで、職務への影響を配慮していた。歩きながら話を交わす中で、ミュイの様子についても語られた。ミュイは元気だが、将来の身の振り方を模索している様子であった。ルーシーとベリルは、時間が解決してくれるだろうと同意した。

フィッセルに関する疑問

道中、ベリルはフィッセルの派遣がルーシーの指示だったのではないかと尋ねたが、彼女はとぼけて明言を避けた。その態度にやや疑念を感じつつも、ベリルは深追いを避け、会話は雑談へと戻った。こうしてルーシーの家へ到着すると、そこには既にイブロイが待っていた。

報告と司教捕縛の成果

応接室にて、ベリルはレビオス司教の捕縛成功を報告した。イブロイはその成果を喜び、今後の処遇について語った。司教の奇跡による死者蘇生についても議題となり、それが倫理的に許されない行為であると三者の見解が一致した。司教の護衛として現れた騎士団については、教会騎士団である可能性が高いとイブロイが指摘した。

家の提供という意外な報酬

ルーシーは、ベリルに家を提供することを提案した。この申し出は突然であり、ベリルは困惑しつつも、内覧を経て判断することを決めた。イブロイもこの提案を後押しし、ベリルが宿暮らしを続けることへの懸念を述べた。

家への出発とハルウィの挨拶

ルーシーの家を後にし、内覧に向かう準備が整った。家政婦のハルウィは彼らを見送り、いつも通りの丁寧な挨拶を交わした。ベリルは突然の展開に戸惑いながらも、与えられた機会を前向きに捉えようとしていた。

晴天の下での会話

ルーシーとベリルは晴れた空の下で家を目指しながら会話を交わしていた。道中、ベリルは昨日の出来事を振り返り、操られた死体の中にミュイの姉らしき人物が含まれていた可能性について語った。ルーシーもそれをミュイに伝えるべきではないと同意し、今後はミュイへのフォローが重要であると話した。

家の場所と立地の確認

家はルーシーの現住居から近く、中央区のやや閑静な場所に位置していた。騎士団庁舎にも程よい距離で、ベリルにとって生活しやすい立地であることがわかった。建物は小ぢんまりとしていたが、ベリルの一人暮らしには十分な広さであった。

予想外の住人との出会い

家の玄関を叩いたルーシーの呼びかけに応じて現れたのはミュイであった。彼女は片付けや料理をしていたと語り、家の管理を任されていたことが判明した。ハルウィから言葉遣いを指導されているらしく、ぎこちない敬語を使うミュイの姿に、ベリルは微笑ましさを覚えた。

家の内覧と住居の決定

ベリルは家の中を見て回り、その状態に満足した。ミュイの手で整理された家は清潔で、家具も揃っており、すぐに住み始められる状態だった。ルーシーは初対面時の非礼を詫びる意味も込めて、家を譲る意図を説明した。

ミュイの後見人問題

ルーシーはミュイを魔術師学院に入れる計画を語り、そのためには後見人が必要であると明かした。ルーシーやアリューシアでは適任ではない事情があり、結果としてベリルが選ばれた。ミュイもこの提案を受け入れており、彼女のために後見人を引き受けることをベリルは了承した。

ミュイとの新生活の始まり

学院の入学手続き書類に署名し、ベリルはミュイの後見人として新たな責任を背負うことになった。彼はミュイの文字の読み書きを教えることを約束し、彼女の成長を見守る決意を固めた。最後に、ビデン村の家族へ手紙を書くことを思い立ち、心の中でこう綴った。「嫁さんを見つける前に家が見つかって、子供が増えました」。

末  片田舎のおっさん、飯を奢る

新居近くの飯処

ベリルはミュイを連れて新居近くの少し高級そうな飯処に向かった。中央区の閑静な住宅地の中、ルーシーに教えてもらったその店は、気取らずとも雰囲気が良く、賑やかさも心地よいものであった。ミュイにとって新生活の門出を祝うため、彼女にはこれまで経験のない上質な食事を提供しようというベリルの意図があった。

緊張するミュイと初めての乾杯

店内に案内されたミュイは明らかに緊張していた。彼女にとって初めての雰囲気の店だったのだろう。ベリルはそれを和ませようと努めながら、まずエールとぶどうジュースを注文し、新しい生活の祝杯を挙げた。乾杯の際の彼女のぎこちなさに微笑ましさを感じつつ、ベリルは娘のような愛おしさを覚えていた。

山菜の素揚げと茸のシチュー

ベリルは山菜の素揚げと茸のシチューを注文した。素揚げの山菜は香ばしく、エールとの相性も抜群であった。一方、ミュイはスプーンでシチューを掬い、その美味しさに目を輝かせながら一心不乱に食べ進めた。その姿を見たベリルは、彼女がこれまでどれほど厳しい生活を送っていたかを思い、これからは彼女に不自由させないと改めて決意した。

メインディッシュのボアのフリッター

続いて、店の目玉であるボアのフリッターが運ばれてきた。揚げたての衣が黄金色に輝き、肉汁が溢れるその見た目に、ミュイは目を輝かせていた。初めて揚げ物を口にしたミュイは、その美味しさに驚き、感動の表情を見せた。一方のベリルも、揚げ物のポテンシャルを見直さざるを得ないほどの美味しさに舌鼓を打った。

ミュイからの小さな贈り物

食事の途中、ミュイは切り分けたボアの肉を不器用にベリルの皿に移した。彼女は、自分が姉以外と食事をするのが初めてであり、ベリルとの食事が悪くないと感じたことを、照れくさそうに伝えた。それに対しベリルは、「ミュイはきっと優しくて魅力的な大人になる」と励まし、その気遣いを心から喜んで受け取った。

不器用な切り分けの肉の味

ミュイが切り分けてくれたボアの肉は不細工な形だったが、ベリルにとってその一切れは、これまで食べたどの肉よりも美味しく感じられた。ミュイとの食事を通じて、彼女の成長を見守る責任と喜びを改めて感じた一幕であった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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