小説【おっさん剣聖】「片田舎のおっさん、剣聖になる 7」感想・ネタバレ

小説【おっさん剣聖】「片田舎のおっさん、剣聖になる 7」感想・ネタバレ

どんな本?

レベリス王国のサラキア王女と隣国スフェンドヤードバニアのグレン王子の結婚が迫る中、主人公ベリル・ガーデナントは、王女護衛のためレベリオ騎士団とともに隣国への国外遠征の任に就く。  

主要キャラクター
• ベリル・ガーデナント:片田舎で剣術道場師範を営む中年男性。かつての弟子・アリューシアの推薦で、騎士団の特別指南役として都に出向く。長年培われた剣筋は芸術の域に達している。  
• アリューシア・シトラス:ベリルの元弟子で、レベリス王国の誇り高き騎士団長。ベリルを強く尊敬している。  
• スレナ・リサンデラ:ベリルの元弟子で、冒険者ギルドにて最高位・ブラックランクの実力者。普段は勝ち気な性格だが、師匠には素直。
• シュステ:道中でベリルと交流を深める貴族の娘。

物語の特徴

本作は、主人公ベリルが自身の実力に無自覚ながらも、成長した弟子たちや新たな仲間との交流を通じて、剣士としての新たな道を歩む姿を描く。特に、異国の地での大規模な戦闘や、仮面の女性の正体など、読者の興味を引く展開が盛り込まれている。  

出版情報
• 著者:佐賀崎しげる
• イラスト:鍋島テツヒロ
• 出版社:スクウェア・エニックス
• レーベル:SQEXノベル
• 発売日:2024年1月6日  
• メディア展開:漫画版が秋田書店の「どこでもヤングチャンピオン」にて連載中。  

読んだ本のタイトル

片田舎のおっさん、剣聖になる  7 ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~
著者:佐賀崎しげる 氏
イラスト:鍋島テツヒロ  氏

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あらすじ・内容

教都、動乱。
レベリス王国のサラキア王女と隣国スフェンドヤードバニアのグレン王子の結婚が迫るなか、王女護衛のためベリルはレベリオ騎士団とともに隣国への国外遠征の任に就く。

道中貴族の娘シュステと交流を深めたり、滅多にない外国でのひとときを過ごしていたベリルだったが——婚儀当日。
祝福を受ける二人の影で反乱を画策する存在が——?

両国騎士団、歴戦の傭兵に冒険者、人智を超えた怪物たち、そして思わぬ協力者の存在。
異国の都にて役者が揃う。

「俺の剣が役に立つのなら、いくらでも振ってみせるよ」

ここに、おっさん最大の戦いが始まろうとしていた。

片田舎のおっさん、剣聖になる 7 ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~

感想

護衛任務と国家の危機

サラキア王女の輿入れに伴い、ベリルは護衛として騎士団とともにスフェンドヤードバニアへ向かった。

宗教色の強い国であったが、内部抗争が激化しており、王女の結婚式がその舞台となってしまった。

式典の最中に動く死体の群れが乱入し、会場は混乱に陥った。

さらに、街全体にも影響が広がり、キメラの出現によって事態は国家存亡の危機へと発展した。

こうした壮大な展開が、物語に緊張感をもたらした。

シュステの告白とベリルの迷い

道中、辺境伯領でシュステと再会し、彼女からの告白を受ける場面があった。

誠実な想いを受け取ったものの、ベリルは即答できず、どこか煮え切らない態度を取ってしまった。

結婚観が明確になった一方で、彼自身の優柔不断さが際立ち、もどかしさを感じる場面であった。

このような人間味のある描写が、ベリルというキャラクターに深みを与えていた。

因縁の傭兵団と共闘

教都での戦闘では、かつて敵対したヴェルデアピス傭兵団と共闘する展開となった。

ハノイをはじめとする傭兵たちとの再会は、単なる敵味方の関係を超えたドラマを生み出した。

ベリルにとっては、戦闘そのものよりも、この邂逅こそが本巻の大きな収穫だったのではないかと感じられた。

かつての敵と手を組むことの葛藤や、互いの成長が見えるやり取りが印象的であった。

ロゼの再登場と今後の展開

ロゼが仮面をつけて再登場したことも、物語の鍵となる要素であった。

彼女が今後どのように関わっていくのか、そしてベリルとの関係がどう発展するのかが気になるところである。

シュステやロゼといった女性キャラクターとの絡みを通じて、ベリルの内面がより鮮明に描かれている点が興味深かった。

主人公の成長と今後の展望

今巻では、ベリルの自己卑下や迷いが特に強調されていた。

その一方で、彼の持つ責任感や剣士としての覚悟も示されており、今後どのように成長していくのかが楽しみである。

戦いの果てに、彼がどのような選択をするのか、次巻の展開に期待したい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

一  片田舎のおっさん、冬の到来を感じる

冬支度と騎士団での日常

騎士団修練場での稽古と季節の移ろい


騎士団修練場での稽古が終わり、いつものように挨拶を交わした。稽古の時間帯は一定であり、長くやりすぎると効率が落ちるため、昼過ぎには切り上げるのが習慣となっていた。稽古後、外に出ると冷たい風が肌を刺し、秋の終わりと冬の訪れを感じさせた。バルトレーンの冬は雪が積もることは少ないものの、防寒対策は必要であった。ビデン村から持ってきたコートに加え、騎士団から支給される冬用のコートもあり、寒さに備える準備を進めていた。

冬支度とミュイの防寒着の準備

自宅の薪を十分に備蓄し、夜の寒さに備えていたが、ミュイの防寒対策も考えねばならなかった。イブロイから贈られた衣類の中に冬用の服はなかったため、彼女のために暖かい服を買い揃える必要があった。学院から支給されるコートだけでは心許なく、本格的に冷え込む前に準備を整えようと考えていた。

町の冬景色と市場の活気

騎士団庁舎を抜け、町の様子を見ながら帰路についた。守備隊の隊員も厚手のコートを羽織り、冬の訪れを実感させた。しかし、町の活気は相変わらずで、露店は変わらず営業を続けていた。都会の賑わいは季節を問わず、ビデン村とは違い、人々は冬になっても家に籠ることなく生活を続けていた。

西区市場での買い物と冬物の下見

ミュイの防寒着を選ぶために西区の市場へ向かい、服飾店を下見することにした。普段の買い物は食料品が中心で、衣類を買う機会が少なかったため、店の場所や品揃えを事前に確認することが目的であった。市場では活気ある商売人の声が響き、冬の到来に伴い、珍しく魚が並んでいる光景が目に入った。

冬の到来と魚の購入

魚は保存と輸送の問題から高価であり、市場に並ぶのは稀であった。しかし、冬の寒さが輸送の難易度を下げ、手の届く価格で販売されることが増えるという。珍しさに惹かれ、二匹を購入することにした。魚の調理について商人から教えを受け、保存が利かないため、その日のうちに食べることを決めた。

偶然の再会と冬服の選定

市場で冬服を見ていたところ、スレナと偶然出会った。彼女も冬服を新調するために訪れており、慎重に選んでいた。スレナは浪費するタイプではなく、質の良いものを吟味して購入する姿勢が伺えた。ミュイの服を選ぶ際にも、本人が気に入るものを選ばせるべきだと考え、改めて後日連れてくることを決めた。

魚料理の準備とミュイの成長

帰宅後、購入した魚を調理するために下処理を始めた。しかし、魚を捌くのに慣れておらず、内臓の処理に手こずった。すると、ミュイが興味を示し、自らナイフを手に取り挑戦した。彼女の手際は良く、初めてとは思えないほどスムーズに処理を進めた。手先の器用さが活かされ、料理の技術もまた成長の一環であることを実感した。

初めての魚料理と新たな味覚

塩を振り、焼き上げた魚は香ばしく、ミュイも大いに気に入った様子であった。これまで食べたことのない味に驚きながらも、満足そうに食事を進めた。今後も市場で見かけたら購入し、新たな食の楽しみを広げていくことを考えた。彼女の成長を見守りつつ、自身もまた、新たな経験を積み重ねていく必要があると感じた。

寒空の朝と鍛錬の日々

朝の寒さと生活のリズム


冬の冷え込みが厳しくなりつつある中、いつものように家を出た。庁舎へ向かう時間は早く、ミュイよりも先に出ることが日常となっていた。彼女の生活リズムは自然とこちらに合わせる形となっていたが、それに対して無理を感じている様子はなかった。むしろ、帰宅後の食事が用意されている点で、互いに利を得ているとも言えた。

冷え込む季節と戦士の拘り

寒さを感じながらも、剣士としての習慣を崩すつもりはなかった。防寒よりも動きやすさを重視するため、厚着を避ける性格は変わらず、寒さには耐えるしかなかった。スレナも同様で、戦闘における利便性を優先し、最低限の防御に留めていた。戦士にはそれぞれの拘りがあり、それが日常生活の不便に繋がることもあった。

庁舎への道と守衛との挨拶

騎士団庁舎に向かう道中、歩きを早めながら体を温めることを意識した。守衛の騎士たちも防寒対策を施していたが、基本的に立ち続ける職務のため、寒さは一層堪えたことだろう。日々の警戒に敬意を払いながら庁舎に到着し、馴染みの顔と挨拶を交わした。

エヴァンスからの伝言と執務室への呼び出し

庁舎の中庭でエヴァンスに呼び止められ、アリューシアからの呼び出しを受けた。寒空の下、わざわざ待機していた彼の姿に申し訳なさを覚えつつ、執務室へ向かった。修練場ではなく、直接執務室に呼ばれるということは、何か重要な案件が持ち込まれたと考えられた。

サラキア王女の輿入れと護衛任務

執務室でアリューシアと対面し、サラキア王女の輿入れ日程が正式に決まったことを知らされた。王女の婚姻は国家間の重大事であり、予定が変わることはなかった。問題は、それに伴う安全確保の進捗であった。そこで王女の護衛団に加わるよう依頼され、これを了承した。

鍛錬の計画と騎士団の強化

護衛任務に備え、騎士団の鍛錬を強化するよう指示された。鍛錬の前半で厳しく追い込み、後半で負荷を調整しながら仕上げる計画であった。アリューシアの要請を受け、教官としての役割を果たす決意を固めた。

鍛錬と騎士たちの耐久戦

徹底した走り込みと騎士たちの根性


修練場では、騎士たちに極限まで追い込む走り込みを課した。全員で並んで壁まで走り、折り返す訓練を繰り返し、遅れた者は脱落となる方式を採用した。単なる持久走ではなく、瞬発力と判断力を鍛える意図があった。

耐久力の差と脱落者たち

次々と脱落する騎士たちの中で、ヘンブリッツとクルニだけが最後まで残った。フラーウも長く食らいついていたが、負傷明けであったため限界が訪れた。それでも復帰直後とは思えない根性を見せた点は評価に値した。

最後まで残った者と勝敗

最後に競り合ったヘンブリッツとクルニは互いに全力を尽くし、クルニが先に限界を迎えた。彼女の体力も並外れたものであったが、副団長としての意地を見せたヘンブリッツが勝利を収めた。

次なる訓練とさらなる追い込み

鍛錬が終了し、全員が息を切らしていたが、ここで終わりではなかった。次なる訓練として組み打ちを課し、疲労状態でも戦えるようにする計画であった。騎士団の鍛錬は、王女の護衛に向けて着実に進められていった。

鍛錬の疲労と帰路

極限まで追い込んだ鍛錬


騎士たちとの鍛錬を終え、疲労が全身を襲った。年甲斐もなく無理をしたことを反省しつつも、共に汗を流すことで士気を高めようと考えていた。しかし、騎士たちとの体力差は歴然であり、最後まで打ち合いに勝ち続けたものの、身体の限界を迎えていた。冬の冷気の中でも汗が止まらず、水分を摂らなければ倒れる危険もあった。

日常の信頼関係と帰宅への思い

修練場を後にし、ヘンブリッツに見送られながら庁舎を出た。足元がふらつくほどの疲労を感じつつ、何とか帰宅を目指した。ふと、ミュイとの生活が長くなったことを実感し、互いに気を張らず過ごせる関係が築けたことに気づく。彼女とはすでに家族のような信頼を持っており、些細な恥を見せても問題ないと思える存在となっていた。

冷たい風と遠征の準備

庁舎を出ると、冬の風が火照った身体を一気に冷やした。寒さに震えながらも、急いで帰宅しなければならなかった。今回の遠征は長期化が予想され、ミュイを学院の寮に預ける必要がある。金銭的な問題はないが、環境を整えるためにルーシーにも話を通しておくつもりであった。

家路を急ぎながら考えること

市場を経由する元気はなく、そのまま帰宅することにした。日々の食材は西区で購入しているが、今日は立ち寄る余裕がなかった。乗合馬車を使うことも考えたが、怠け癖がつくのを避けたかったため、歩いて帰ることにした。剣士としての体力維持は重要であり、些細な努力を怠れば衰えは加速する。

帰宅と食事の準備

煮込み料理の支度


帰宅すると、静まり返った家に自分の声が響いた。ミュイが戻る前に夕食の準備をしようと考え、煮込み料理を作ることにした。鍋に水を張り、肉や野菜を適当に切り、塩と香草を加える。煮込み料理は手間が少なく、疲れている時には最適な選択であった。

襲い来る眠気との戦い

料理をしながら、極度の疲労と眠気に襲われた。しかし、火をつけたまま眠るわけにはいかず、必死に意識を保とうとした。頬を抓って痛みで目を覚ましながら、自身の体力の衰えを実感した。若い頃はここまでの疲労を感じることはなかったが、今では少しの無理が身体に大きく響くようになっていた。

ミュイとの会話と遠征の話題

料理が完成するのとほぼ同時に、ミュイが帰宅した。彼女はすぐに俺の疲労を察し、遠征の予定を見抜いた。驚きつつも、隠す必要のない事実であるため、騎士団の遠征が再びあることを伝えた。今回の遠征は長期に及ぶため、ミュイを寮に預ける予定であったが、彼女は「一人でも大丈夫」と言い切った。

独り立ちへの意思と信頼

ミュイは自立心を見せ、寮に入らず家で過ごすことを希望した。その意志を尊重しつつ、万が一のためにルーシーの元を頼るよう伝えた。彼女も自身の生活を維持するための準備を始め、翌日から買い出しを担当すると申し出た。これを機に家事の習慣を身につけさせるつもりであった。

執務室での打ち合わせ

遠征の準備と騎士団の計画


数日後、アリューシアに呼び出され、執務室へ赴いた。ヘンブリッツも同席しており、遠征に関する正式な報告が行われた。遠征ルートと日程が確定し、王女の護衛任務が本格的に動き出していた。情報漏洩の危険があるため、詳細は限られた者にしか知らされず、慎重に扱われていた。

騎士団の外套の授与

アリューシアから厚手の外套を手渡され、それが騎士団の装備の一つであることを知らされた。冬季の遠征における防寒具としての役割だけでなく、王女の護衛任務において隊の統一感を持たせるための装備であった。騎士の鎧を持たない俺にとっては、見た目を揃えるための必要な措置であり、これは貸与ではなく正式に授与されるものとされた。

隊の指揮を巡る提案

その後、ヘンブリッツから俺に隊を持たせるという提案がなされた。驚いたが、これがサラキア王女の意向であると知り納得した。しかし、指揮官としての経験がない俺が隊を率いることは、騎士団の組織にとっても適切ではないと判断し、丁重に辞退した。

指揮官としての適性と断固たる拒否

俺の役割は剣士であり、戦場で部隊を指揮する適性はなかった。戦闘能力と軍略は別の資質であり、無理に任されても混乱を招くだけであった。アリューシアも最初から俺が断ることを想定していた様子で、正式に辞退の申し入れを行うこととなった。

遠征へ向けた準備と決意

俺の役割は未だ決まっていなかったが、剣士としての務めを果たすためには、これまで以上に鍛錬を積む必要があった。王女の輿入れという国家を挙げての一大事を控え、騎士団の一員として最大限の力を尽くすべく、さらなる鍛錬に励むことを決意した。

二  片田舎のおっさん、教都へ行く

遠征の始まり

家を出る前の別れ


サラキア王女殿下の輿入れが始まる日となり、遠征の初日を迎えた。主人公はミュイに見送られ、しばらく家に帰れないことを改めて実感した。すべてが順調に進んだとしても、バルトレーンに戻るのは年明け後になる。ミュイは寮には入らず家に留まる選択をし、困ったときはルーシーや学院を頼るよう言い含めていた。十分な金銭も用意してあり、彼女の自立を信じる気持ちと同時に、自分も子離れする時期に来ているのかもしれないと考えた。

寒さと防寒具の効果

冬の早朝、都の空はまだ暗く、冷たい風が肌を刺すようであった。しかし、騎士団から支給された外套がその寒さを大きく和らげた。厚手の生地が外気を遮り、身体を温かく保ってくれる。日常使いにはためらう装飾ではあるが、その機能性には感心せざるを得なかった。騎士たちが鎧を着るため防寒対策が必須であり、それを考慮した上層部の配慮に納得した。

遠征における役割の決定

これまで何度もアリューシアやヘンブリッツと打ち合わせを重ねた結果、主人公の配置はすぐに決まった。サラキア王女殿下が隊を持たせようと提案しなければ、当初から決まっていた配置であった。指揮官としての任務はなく、アリューシアの直下に位置し、王族の近衛として動くことになった。彼の剣技は高く評価されているが、自身が注目を浴びることは望んでおらず、アリューシアの思惑には若干の抵抗を感じていた。

名声と責務の重み

主人公は過去の事件で一定の評価を得てしまった以上、それに伴う責任から逃れることはできないと理解していた。おやじ殿がビデン村に定住した理由も、ある意味では「面倒事を避けるため」だったのではないかと考えるようになった。政治的な立場や名声に無関心であった父の生き方を振り返りつつ、自身もまた同じような葛藤を抱えていた。

しかし、責務を果たさないわけにはいかず、彼の実力が周囲から過大評価されることを懸念した。適切な評価を受け、必要以上の職務を背負わされないよう自制することが必要であると考えた。

騎士団庁舎への到着

まだ人通りの少ないバルトレーンの街を歩き、騎士団庁舎へ向かった。夜明け前の静寂が心地よく、日常では聞こえない空気の流れを感じながら、庁舎の前に到着した。守衛と挨拶を交わし、集合場所である中庭へ向かうと、すでにアリューシアとヘンブリッツ、そして数名の騎士たちが集まっていた。

遠征部隊の規模と編成

次第に騎士たちが集まり、その数は五十名ほどとなった。バルトレーンに常駐する騎士の約半数が今回の遠征に帯同することになり、加えて王国守備隊の兵士たちも同行する。総勢数百名規模の大行軍であり、これがいかに重要な遠征であるかを物語っていた。

アリューシアの号令が響くと、騎士たちは即座に整列し、統制の取れた動きを見せた。王宮へ向かい、王女殿下および守備隊と合流することが告げられ、遠征が正式に開始された。

王宮での待機と出発

王宮前での待機命令


騎士団庁舎を出発し、王宮へと向かった。王宮の正門前にはすでに多くの馬車が待機しており、王女殿下をはじめとする随行者たちの準備が整っていた。アリューシアとヘンブリッツは王宮内へ向かい、主人公を含めた騎士団は外で待機することになった。

王女殿下の登場と護衛の体制

しばらくして、サラキア王女殿下が侍女たちを伴い王宮の正門前へ姿を現した。彼女の周囲には、外交官や紋章官といった高位の者たちが同行しており、その警護には細心の注意が払われていた。王女殿下の身辺を固める侍女たちは単なる世話係ではなく、何らかの戦闘訓練を受けていることが明らかであったが、実戦経験の乏しさは否めなかった。

王女殿下は騎士団へ向けて激励の言葉を述べ、アリューシアが騎士たちを代表して忠誠を誓った。彼女の言葉には品格があり、形式的ではあるものの、王族としての威厳を保ったやり取りがなされた。

馬車内の配置と同行者

王女殿下は侍女たちとともに馬車へ乗り込み、それに続く形で主人公も別の馬車に案内された。外での護衛ではなく馬車内に配置された理由は、特別指南役という肩書きが関係していた。騎士ではないため、一兵卒として行動することも、隊を指揮することもできず、結果として高官たちと同じ馬車に乗ることになった。

彼と同じ馬車に乗ることになったのは、グリースモア宰相の名代トラキアス・センプル、紋章官のキフォー・クアンダ、そしてアデラート・マシカの三名であった。いずれも名のある高官であり、主人公にとっては馴染みのない顔ぶれであった。

政治的な判断と王国の対応

馬車内での会話から、王国がこの遠征にどのような姿勢で臨んでいるのかが見えてきた。宰相自身が同行せず、名代を立てたことからも、王国としては慎重な対応を取っていることが明白であった。王族暗殺未遂事件があった後、隣国の政情が完全に安定したとは言い難く、国家の要職者を大量に送り出す危険を回避するための措置であると考えられた。

グラディオ陛下やファスマティオ殿下が同行しないのも、同じ理由によるものだろう。もし遠征中に戦闘が勃発し、王族が命を落とすような事態になれば、国の存続自体が危うくなる。ゆえに、リスクを最小限に抑えつつ、外交上の義務を果たす形を取ったのであった。

長い旅路の始まり

王女殿下や騎士団、そして政治的な要人を乗せた馬車は、静かにバルトレーンを後にした。主人公は馬車内の空気に若干の緊張を覚えながらも、すでに決まった状況に抗うことはできなかった。

道中に何が待ち受けているかは分からないが、ただ一つ確かなのは、この遠征がこれまでとは一線を画す重要なものであるということであった。

フルームヴェルク領への到着

伝令の騎士が馬車の扉を叩き、フルームヴェルク領への到着を告げた。長い旅の果てにようやく自国領の最終地点へと至ったが、目的地はさらに先のスフェンドヤードバニアであった。行軍の速度は王女を伴うために遅く、慎重な計画のもとで進められていた。旅の間、宿場での休息が確保されていたことは幸運であった。

関所での顔合わせと警備交代

フルームヴェルク領の関所に到着し、護衛に就く貴族の私兵と顔合わせが行われた。特に今回はサラキア王女が同行しており、護衛の確認と侵入者の排除が慎重に進められた。暗殺者の潜入の可能性も考慮し、警備体制は徹底されていた。交代する私兵軍の兵士長サハト・ランバレンと書類のやり取りを済ませ、王女は馬車の中に留まったまま、儀式的な顔見せが進行した。

広大な護衛隊の規模

関所での顔合わせの場には、王国守備隊三百名、護衛の騎士五十名に加え、貴族の私兵が数十名から百数十名規模で集結していた。加えて、五十頭以上の馬が用意され、騎乗する騎士たちが整然と並んでいた。その壮観な光景は、通常の遠征と比較しても規模が桁違いであった。

ウォーレン邸での迎え

関所を越え、夜になって一行はフルームヴェルク辺境伯の屋敷に到着した。王女殿下は本邸で過ごし、護衛や外交官の一部は別館へ案内された。騎士団は町の宿に宿泊することとなり、厳格な格式のもとで宿泊場所が決められた。案内を担当したシュステは、彼女らしく柔和な態度で対応していた。

シュステとの再会と食事

ベリルは個室を与えられ、ようやく気を抜く時間を得た。しかし、食事の配膳に訪れたのは侍女ではなくシュステであった。彼女は自然な態度で食事を運び、二人きりの夕食が始まった。シュステはベリルへの好意を隠さず、以前贈った押し花が今も家に飾られていることに喜びを示した。彼女は庭の管理を任されるようになったと語り、さらにバルトレーンへの移住を希望していることを明かした。

シュステの告白

シュステはベリルへの好意を率直に告げ、彼との関係を深めたいという願いを述べた。彼女は彼の剣の腕、気遣い、強さに魅かれたとし、バルトレーンへの移住を望む理由もベリルの存在にあった。しかし、ベリルはすぐに応じることはできないと返答した。彼にはミュイという義娘の存在があり、剣の道を極めるという自身の目標もあったため、今の時点では彼女の想いに応えることができなかった。

未来への可能性

シュステはその言葉を受け入れつつも、将来的にチャンスが残ることを確認した。そして、文通を提案し、これからも交流を続けることを望んだ。ベリルは彼女の誠実さと器量の良さを改めて感じながらも、自身の道を優先せざるを得なかった。

酒に逃げる夜

告白を受けた後、ベリルは気まずさを紛らわすようにエールを飲み続けた。シュステの想いを受け止めながらも、それに即座に応じられない自分へのもどかしさが酒の消費を早めた。シュステはそんな彼に優しく寄り添いながらも、彼の選択を尊重していた。こうして、ベリルの悩みとともに夜は更けていった。

護衛団の出立と別れの挨拶

遠征団は予定通りフルームヴェルクで一泊し、スフェンドヤードバニア領へ向けて出発した。王女殿下とウォーレンは簡潔な別れの挨拶を交わし、王女は侍女二人とアリューシアを伴い馬車へ乗り込んだ。護衛団はすぐに出立の準備を整え、ウォーレンらが見送る中、旅が再開された。

シュステとの視線の交錯

馬車に乗る直前、シュステと視線が交わる。彼女の微笑みには恋慕か軽蔑か、どのような感情が込められているのか判然としなかった。昨夜の出来事が思い出されるが、ここで何か言葉を交わすには適切な場ではなかった。彼は剣士としての道に後悔はないものの、己の人生における縁について改めて考えさせられる瞬間であった。

馬車内の雑談と遠征の疲労

馬車の中でトラキアスとの何気ない会話が続く。昨夜の深酒が響いて体調が優れず、旅の疲労も蓄積していた。座りっぱなしの移動は腰に負担がかかり、さらに満足に剣を振れていないことが身体の鈍りを招いていることを自覚する。遠征が長引くにつれ、鍛錬の時間を確保する必要性を痛感する。

スフェンドヤードバニア国境での入国手続き

国境に到着すると、教会騎士団のガトガが出迎え、護衛の引継ぎが行われた。手続きは滞りなく進み、遠征団は正式にスフェンドヤードバニアへ入国した。ガトガと短い視線を交わし、彼の表情から状況が悪化していないことを確認する。警備体制についての最終確認が行われ、馬車は再び動き出した。

国境越えの感慨と異国の景色

国を越えるという大きな節目でありながら、特別な感慨は湧かなかった。周囲の景色は変わらず、国境を越えた実感が薄い。目的地である教都ディルマハカへ向かいながら、異国の文化や食事への興味が湧くものの、持て成されることに慣れつつある自分を戒める。剣士としての自律を保つため、己を律することの重要性を改めて認識する。

ディルマハカ到着と鍛錬の再開

教都ディルマハカに到着後、貴族の別邸に宿泊した。長旅で鈍った感覚を取り戻すため、裏庭を借りて剣を振るう。微細なズレを感じ、鍛錬不足を実感する。身体能力の低下も考慮し、今後の鍛錬時間の確保を決意する。観光にはあまり関心が湧かないが、都市の様子を知る必要があるため、最低限の散策を行うつもりであった。

アリューシアとガトガの訪問

アリューシアとガトガが訪ねてきた。彼らは都市の地理把握を兼ねて、案内を申し出る。初めて訪れる街であり、護衛任務に備えて地理を理解することは重要であるため、提案を受け入れる。急ぎ外出の準備を整え、都市散策に同行することとなった。

ディルマハカの街並みと歴史

街の構造は独特で、尖塔を目印にすれば迷うことはないと説明を受ける。都市の区画は教会を基準に整理されており、それぞれの教区には過去の権力者の名が付けられていることを知る。スフェンドヤードバニアの歴史も学び、信仰が深く根付いた国家であることを改めて理解する。

護衛の準備と婚姻儀式の予定

サラキア王女とグレン王子の成婚儀が年明け早々に行われることが判明する。スフェン教の教えに基づき、新たな年の始まりと共に祝福を受けるのが慣例だという。王女は新しい環境に適応するため、儀式の準備を進めていた。

昼食と異国の食文化への期待

長時間の散策の後、腹が減っていることに気付く。ガトガの案内で適当な店に入り、昼食を取ることに。スフェンドヤードバニアの郷土料理を味わう機会を得るが、昼間の酒は避け、次の機会に期待を寄せる。異国の文化を体験しながら、遠征の終着点に近付いていることを実感する。

幕間

冬の訪れとイブロイの訪問

ルーシー・ダイアモンドは、使用人のハルウィが淹れた温かい茶を飲みながら、目の前に座るイブロイ・ハウルマンへと視線を投げかけた。イブロイはレベリス王国のスフェン教司教であり、王都バルトレーンにおいて情報収集を行う人物である。彼は定期的にルーシーのもとを訪れ、得た情報を共有していた。この日もまた、予定されていない訪問であったが、彼はまるでルーシーの行動を把握しているかのようなタイミングで現れた。

王女の婚姻と両国の関係

サラキア王女の婚姻の儀が近付く中、ルーシーはその行列に同行するつもりがないことを告げた。魔法師団とスフェンドヤードバニアの関係は決して良好ではなく、スフェン教の一部の信徒からは魔法師団が「神の奇跡を冒涜する存在」として嫌われている。外交上の問題を避けるためにも、彼女が表立って動くべきではないという判断であった。イブロイもまた婚姻の儀に出席する予定はあったが、護衛の大行列を追い抜く余裕があるため、今はまだ王都に留まっていた。

婚姻の儀を狙う教皇派の動き

イブロイは、王女の婚姻の儀を狙って教皇派が何らかの行動を起こすことが確定したと告げた。これまでの失敗が積み重なり、彼らは追い詰められている状況であった。レビオス元司教の捕縛と王族暗殺未遂事件の失敗により、戦力と研究者を失った教皇派は、焦りから更なる策を講じていた。イブロイは独自の手段で事前に情報を掴み、それに対する対策を練っていた。

教皇派への対抗策

イブロイは、教皇派の動きを阻止するため、いくらかの協力者を抱き込んでいた。そのために多額の金銭を費やしたが、確実に足がつかないように慎重に行動していた。ルーシーもまた、レベリス王国側の対応について言及し、王室関係者は慎重に動いていることを確認した。グラディオ国王とファスマティオ王太子は警備を強化し、婚姻の儀に直接関与しない方針を取っていた。最前線に立つのは、レベリオ騎士団団長アリューシアと、その特別指南役であるベリルであることが確定していた。

戦いの準備と各々の役割

ルーシーとイブロイは、各自の立場でやるべきことを全うしていた。ルーシーは外交的な立場から王室に情報を伝え、イブロイは水面下で実際の対策を講じていた。そして、実際に剣を振るう役割を担うのが、アリューシアとベリルであった。戦いは避けられず、騎士団の力が試される場面が訪れることは確実であった。イブロイはベリルとアリューシアの能力を信頼しており、ルーシーもまた彼らの実力を認めていた。

ルーシーとイブロイの関係

話が一段落すると、ルーシーはふとイブロイの過去に触れた。彼が司教の職に就いて二十年以上が経過し、今ではすっかりその立場が板についていたことを語る。だが、彼女はイブロイの幼少期を知っており、彼がまだ無邪気だった頃のことを思い返していた。イブロイ自身はそのことを覚えておらず、彼とルーシーの間には認識の齟齬があった。

ルーシーは長年、資質のある者を見極め、育て上げてきた。イブロイもまた、その一人であった。彼はスフェン教徒でありながら、信仰に溺れることなく、教会内部の過激派の動きを監視し、制御する役割を果たしていた。その立場は決して楽なものではなかったが、彼自身は今の自分の在り方に満足していた。

別れの言葉と覚悟

話を終えたイブロイは、ルーシーの屋敷を後にしようとした。その際、ルーシーは彼に「死ぬなよ」と言い残した。イブロイもまた、「敬虔なる信徒に見送られて死ぬつもりだが、それはまだ先の話だ」と応じ、扉を開けて去っていった。

彼が去った後、ルーシーはカップに残った茶を一気に飲み干し、冷え込む空気の中で静かに呟いた。

「……気張れよ、若造ども」

その言葉が誰に向けられたものかは定かではなかったが、彼女の眼差しは確かに遠くを見据えていた。

三  片田舎のおっさん、救世主となる

王族の婚姻と護衛の任務

ベリルはディルマハカの大聖堂へ赴き、グレン王子とサラキア王女の結婚式の護衛を任じられていた。新年を迎えた実感は薄く、遠征が増えることで自身の立場の変化に複雑な思いを抱えていた。大聖堂は荘厳な建造物であり、圧倒的な威厳を放っていたが、彼は特に信仰心を持っていなかった。それでも、その神聖さには敬意を感じずにはいられなかった。

式の準備と武装解除の指示

拝廊の入口で教会騎士に武器を預けるよう求められた。レベリオ騎士団として事前に知らされていない指示であり、アリューシアは困惑する。教会騎士の説明によれば、ガトガ団長の承認のもと、武器は見える場所で保管され、厳重に監視されるという。結局、彼らは指示に従い、剣を預けて聖堂内へ入った。

式の開始と教皇の不在

グレン王子とサラキア王女の登場により、婚姻の儀が正式に始まった。荘厳な雰囲気の中、大司教ダートレスが進行を務めた。しかし、予定では教皇が主催するはずだったため、アリューシアはその不在を不審に思う。違和感を抱えながらも、式は順調に進行していた。

襲撃と戦闘の開始

式の最中、大聖堂の外で騒ぎが起こり、異変が生じた。教会騎士が止まるよう警告するが、侵入者は応じず、遂に拝廊の扉が破られた。中へ雪崩れ込んできたのは、理性を失った動く死体の群れであった。武器を預けていた参列者たちは一時混乱するが、アリューシアは素早く剣を取り戻し、迎撃を開始する。ベリルも赤鞘の剣を受け取り、戦闘に加わった。

暗殺者の潜伏と混乱

戦場は混乱を極め、死体の中には暗殺者も紛れていた。ベリルは彼らの奇襲を防ぎながら、王族の安全を確保することに注力する。側廊の武器を取った参列者たちも次第に反撃を開始し、戦況は持ちこたえていた。しかし、敵の数が多く、次第に押されていく。

謎の仮面の剣士と霧の発生

戦場の中、仮面を被った女性が目を引く動きを見せる。彼女の剣捌きはベリルの記憶にある人物と一致していた。そんな中、突如として濃霧が発生し、視界が奪われる。この霧は以前フルームヴェルク領で遭遇したものと同じだった。

ヴェルデアピス傭兵団の乱入

霧の中から現れたのは、かつて敵対したヴェルデアピス傭兵団の頭領ハノイ・クレッサであった。彼は王子と王女の護衛を依頼されていると述べるが、ベリルはその言葉を信用できずにいた。しかし、イブロイ司教と仮面の女性の判断を信じ、彼らと共に王族の脱出を図ることにした。

脱出とハノイとの対峙

ハノイの指示のもと、一行は大聖堂を離脱する。外では傭兵団が待機し、敵の襲撃を防いでいた。グレン王子は彼らの正体を問いただすが、ハノイは依頼主を明かすことなく、護送を続ける。ベリルは彼らの行動に納得がいかず、ハノイの襟首を掴むが、彼は冷静に対応し、自らの仲間の死も割り切ったものとして受け止めていた。

揺れる信念と剣士としての在り方

ハノイの言葉にベリルは激昂するが、アリューシアの言葉により冷静さを取り戻す。彼は自らの戦士としての在り方に疑問を抱きながらも、目の前の任務を優先することを決意した。そして、ヴェルデアピス傭兵団と共に王族を護衛し、宮殿へ向かうのだった。

サン・グラジェ大聖堂への到着

スフェンドヤードバニアの教都ディルマハカに到着し、大聖堂への道を確認した後、特に予定がなかったため、庭で鍛錬に励んでいた。しばらくして、大聖堂で行われるグレン王子とサラキア王女の成婚の儀に参列するため、足を運ぶこととなった。大聖堂は大通りの突き当たりに位置し、その巨大な姿に圧倒された。信仰心は持ち合わせていなかったものの、その荘厳さには畏敬の念を抱かざるを得なかった。

式典前の邂逅

大聖堂の広大な敷地を歩く中、イブロイ・ハウルマン司教と再会した。彼もまた成婚の儀に出席するために訪れており、スフェン教の司教としての役目を果たしていた。アリューシアとも旧知の仲であり、礼儀正しく挨拶を交わす。イブロイはディルマハカの観光を勧め、いずれ落ち着いたら旅に出るのも悪くないかもしれないと考え始めた。

武装解除の要請

大聖堂へ入場しようとしたところ、教会騎士による武装解除の要請を受けた。アリューシアは、事前にその説明を受けていなかったことに疑問を抱いたが、ガトガ団長の承認を得た措置であることが分かり、やむなく剣を預けることとなった。剣士にとって武器を手放すことは大きな負担であったが、預かり場所が視認できる位置にあることを確認し、一旦納得するしかなかった。

大聖堂の荘厳な内部

大聖堂の内部に入ると、その壮麗さに圧倒された。高くそびえる天井、精緻に造られた内壁、神秘的な採光窓から差し込む光が、神聖な雰囲気を演出していた。中央には身廊が広がり、奥には王子と王女が誓いを交わすであろうサンクチュアリが存在していた。側廊には預けられた武器が並べられ、教会騎士が厳重に監視していた。

参列者と謎の仮面の女性

式典が始まるまでの間、参列者を観察していた。貴族や聖職者、騎士たちが多くを占める中、仮面を着けた女性が一際目を引いた。全身を鎧で包み、無言で佇むその姿には、何か特別な目的があるように思えた。視線が交錯した瞬間、彼女はわずかに反応したが、正体を探る余裕はなかった。

成婚の儀の開幕と違和感

鐘の音が響き渡り、大司教ダートレス・カイマンによる進行が始まった。本来、教皇モーリスが執り行うはずの儀式であったが、彼の姿はなかった。アリューシアはこの事実に違和感を覚えたが、式典は滞りなく進行し、グレン王子とサラキア王女が堂々と入場した。二人の姿は見事であり、参列者から賞賛の声が上がる。

突如として訪れる危機

指輪の交換が行われようとしたその時、拝廊の外から異様な騒ぎが聞こえてきた。教会騎士が侵入者を制止しようとするも、相手は止まることなく突進し、ついには扉を破壊して大聖堂内へとなだれ込んできた。襲撃者は人の形をしていたが、その動きは明らかに異常であり、まるで生者ではないように見えた。

迎撃と戦場の混乱

アリューシアとともに即座に武器を回収し、迎撃態勢を整えた。襲撃者たちは痛みを感じず、通常の攻撃では止まらなかった。確実に仕留めるためには、胴体や下半身を狙い、行動不能にする必要があった。戦闘が始まり、教会騎士や参列者のうち戦える者たちが迎撃に加わったが、敵の数は圧倒的であった。

仮面の女性と暗殺者の存在

襲撃者の中に紛れ込んでいた暗殺者が現れ、王子と王女を狙って短剣を振るった。即座にこれを阻止し、迎撃を続ける。仮面の女性もまた戦いに加わり、その動きは見覚えのある剣捌きであった。彼女の正体を確信するには至らなかったが、確実に味方であることは分かった。

濃霧とヴェルデアピス傭兵団の乱入

戦闘が激化する中、大聖堂内に突如として濃霧が発生した。そして、その中から黒のロングコートを纏った集団が姿を現した。彼らはフルームヴェルク領で敵対したヴェルデアピス傭兵団であり、その頭領ハノイ・クレッサが先頭に立っていた。彼は王子と王女を護送すると告げ、事態は混乱を極めた。

信頼と疑念の狭間

イブロイがハノイらの信頼性を保証したこと、そして仮面の女性が彼らの指示に従ったことにより、一時的に彼らと共に行動することを決めた。アリューシアは王子と王女を誘導し、ヘンブリッツは殿堂内に残り戦線を維持することとなった。ハノイらの案内で、大聖堂を離脱し、宮殿へ向かうこととなる。

ハノイとの対峙と怒り

脱出後、ハノイと対峙し、過去の襲撃について言及した。ヴェスパーとフラーウの負傷、そして彼らの仲間の死について話が及び、怒りに任せてハノイの襟を掴んでしまう。しかし、ハノイは冷淡に「それも戦場の結果だ」と応じるのみであった。戦士としての価値観の違いを見せつけられ、割り切れない感情が胸に渦巻いた。

次なる局面へ

最終的に王子と王女の護衛を優先し、ハノイらとともに宮殿へ向かうこととなった。彼らの真意は未だ不明だが、現状では協力する他に選択肢はなかった。戦場を離れながらも、剣士としての在り方と、自らの信念に対する疑問が心の奥底に残り続けていた。

疾走する騎士たち

アリューシアと仲間たちは、教都ディルマハカを疾走し、異変の中心地へと向かった。都市は避難民で混乱していたが、騎士団の指揮によりある程度秩序が保たれていた。彼女の見事な馬術にハノイが感嘆し、戦いの準備を整える。

都市の異変と合成獣

ディルマハカはまだ破壊を免れていたが、合成獣の猛威による負傷者が増えていた。すでに教会騎士団では抑えきれず、戦況は悪化の一途をたどっていた。

合成獣との遭遇

四体の合成獣が都市を蹂躙し、それぞれが異なる場所で暴れていた。主人公とアリューシア、ハノイとプリムがそれぞれ戦う形となり、戦いが始まる。

戦いの始まり

主人公は赫々の剣を振るい、獅子頭と大蛇の尾を持つ合成獣を迎え撃つ。その防御力は高かったが、何とか傷を与えることに成功する。動きを封じる戦術を用い、徐々に追い詰めていく。

激闘の末の勝利

戦いの末、主人公の一撃が獅子頭を断ち割り、合成獣を討ち取る。しかし、尾の大蛇が独立して襲いかかり、ロゼが盾で防ぐことで窮地を脱する。

アリューシアの苦戦と救援

アリューシアは剣が通らず苦戦するも、主人公とロゼの援護を受け、ついに撃破する。しかし、彼女の剣は砕けてしまった。

予想外の援軍

突如としてスレナ率いる冒険者団が現れ、左翼の合成獣を討伐したことを告げる。これにより戦況が大きく好転し、最後の合成獣討伐に全力を注ぐこととなる。

モーリス教皇の出現

最後の合成獣を追う中、ハノイがモーリス教皇と対峙していた。彼は驚異的な力を持ち、プラチナムランクの冒険者すらも圧倒していた。

教皇との激闘

教皇は全身に強化魔法を巡らせ、すべての攻撃を回避しながら反撃する。アリューシアの渾身の一撃すら躱され、彼女は戦線を離脱する。

勝機の発見と教皇の制圧

主人公はロゼの盾で視界を遮り、その隙を突いて赫々の剣で教皇を貫く。肩と腹を刺し、動きを封じることで勝利を収めた。

戦いの終結と未来への課題

戦いの終結とともに、スフェンドヤードバニア王国の未来は大きく変わることとなる。グレン王子とサラキア王女がこの事態をどう収束させるかは未知数である。しかし、主人公たちは戦い抜き、新たな未来を切り拓いたのであった。

謁見と戦果の報告

合成獣の討伐とモーリス教皇との戦いを終え、一行は負傷者と教皇の遺体を回収し、グレン王子とサラキア王女が待つ宮殿へ向かった。警邏の教会騎士に事情を説明し、王子との謁見を許された。王子は労いの言葉をかけつつ、戦いの詳細を聞いた。討伐の功績は認められたが、教皇を生け捕りにできなかった点を謝罪したところ、王子は十分な結果と評価した。

教皇の死とその影響

ロゼが動けなくなった教皇を仕留めた件について、明言すべきか迷った。教皇殺害の責任を誰が負うのかが問題となり、事件の公表方法も議論の対象であった。教皇の死は避けられぬ事実であり、国の政治家たちにとっても難題となることが予想された。

褒奨と評価

王子は一行に褒賞を与える意向を示し、望む報酬について尋ねた。ハノイは金銭を要求し、王子もそれに応じた。王子は以前よりも成長した姿を見せたが、その背景には厳しい状況があった。一方で、ハノイたちは王族に対する態度を崩さず、無礼な言動を続けたが、王子は動じることなく受け流した。

戦闘の影響と負傷者

戦闘後の負傷者の状態も確認された。ハノイはアリューシアと同様に強打を受けていたが、耐久力の差が明らかであった。プリムは一撃で戦闘不能となったが、アリューシアは重傷には至らなかったものの、自身の剣の損傷により落ち込んでいた。その姿を見て、主人公は埋め合わせを考えた。

解散とそれぞれの道

王子からの言葉を受け、一行は解散となった。ハノイは宿の手配を依頼し、王子はそれを承諾した。教会騎士たちの対応も一貫していたが、彼らの態度に違和感を覚えた者もいた。スレナは主人公の隣に立てたことを光栄だと述べ、冒険者ギルドの役割も改めて確認された。

ロゼとの対話

その後、ロゼとともにディルマハカの街を歩いた。彼女は自身の選択に後悔はないと語ったが、完全に納得しているわけではなかった。彼女は国の行く末を見届ける意志を示し、これまでの決断を受け入れていた。

ロゼの変化と未来

ロゼは以前よりも「死ねなくなった」と告げ、これを良い変化と捉えていた。主人公は彼女の決意を尊重し、彼女が歩んできた道を称えた。最後にロゼは、もし道に迷ったら拾ってくれるかと冗談めかして尋ね、主人公は軽くかわした。そのやり取りは、以前の彼女の姿を思い起こさせるものであった。

寒風が吹く中、二人は並んで歩いた。ロゼの存在が生み出した温かな空気が、戦いの終わりを象徴していた。

末  片田舎のおっさん、約束する

食事処での再会

アリューシアに誘われ、彼とともにディルマハカの食事処を訪れた。事件の後処理が一段落し、ようやく訪れた休息のひと時であった。店内は静かで、落ち着いた雰囲気が漂っていた。アリューシアはこの店の情報をラズオーンから仕入れたようで、選択に間違いはないと確信していた。

注文と食事の選択

二人はメニューを眺め、海鮮の盛り合わせやチーズと腸詰の盛り合わせを注文した。スフェンドヤードバニアは海に面しており、海産物が豊富に手に入る。そのため、バルトレーンではなかなか味わえない魚介類を堪能することを楽しみにしていた。エールとともに料理を味わいながら、静かな会話が続いた。

事件の振り返りと王族の今後

エールを口にしながら、二人は事件の振り返りをした。モーリス教皇の死をはじめとする混乱が収束しつつあるとはいえ、今後の政治的な動きは複雑である。グレン王子やサラキア王女の負担は大きく、レベリス王国との交渉も避けては通れない。二人は、それぞれの立場で出来ることを考えながら、改めて状況を見つめ直した。

エールを重ねながらの語らい

食事が進み、アリューシアの飲みっぷりに驚きつつも、リラックスした時間を楽しんだ。彼女は久しぶりの酒を楽しみつつ、改めて剣を失ったことに対する心情を語った。新たな剣を手にする必要があるが、その選定には慎重を期すべきである。かつての剣には思い入れがあり、修繕の後に自宅へ飾る意向を示した。

新たな剣を求めて

アリューシアは、今後も並び立つために、最高の剣を共に選びたいと告げた。師としての責任を感じつつ、その願いに応えることを決意した。彼女にふさわしい一振りを見つけることは容易ではないが、それこそが剣士としての歩みを支える重要な課題である。

微笑ましいやり取りと未来への展望

アリューシアはどこか恥ずかしげな様子を見せつつも、彼との時間を楽しんでいた。新たな剣を選ぶことは、二人にとって重要な意味を持つ。彼女の未来がより輝かしいものとなるよう、最良の選択をする決意を新たにした。彼女の成長と共に、自身もまた剣士としての責務を果たすべく、この時間を大切にするのであった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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