ベリル・ガーデナントは、レベリス王国の片田舎で剣術師範として静かな生活を送っていた。
しかし、元弟子のアリューシアの訪問を機に、彼の生活は一変する。
彼女の推薦により、ベリルは騎士団付きの特別指南役に任命され、再び元弟子たちとの交流が始まる。
本作第8巻では、隣国スフェンドヤードバニアでの戦闘で剣を失ったアリューシアのため、ベリルが新たな武器を用意しようと奮闘する姿が描かれる。
また、レベリオ騎士団の入団試験で弟子たちの成長を見守り、北方遠征では幼馴染みの大隊長との再会も果たす。
多忙な日々の中、温泉でのひとときが彼の疲れを癒やす。
主要キャラクター
• ベリル・ガーデナント:レベリス王国の片田舎で剣術師範を務める男性。自身の強さに無自覚で、のんびりとした性格。
• アリューシア:ベリルの元弟子で、現在は騎士団長を務める女性。ベリルを特別指南役に推薦し、彼を支える。
物語の特徴
本作は、主人公ベリルの無自覚な強さと、彼を慕う弟子たちとの関係性を中心に描かれる。田舎の平穏な生活から一転、騎士団や冒険者として活躍する弟子たちとの再会を通じて、ベリルの新たな一面が明らかになる。特に第8巻では、アリューシアのための新たな武器の制作や、弟子たちの成長、そして過去の人間関係の再確認など、多彩なエピソードが展開される。また、温泉での癒やしのシーンなど、読者を和ませる要素も含まれている。
出版情報
• 出版社:スクウェア・エニックス
• 発売日:2024年8月6日
• ISBN:978-4757593459
• ページ数:366ページ
• 価格:1,430円(税込)
2025年4月よりテレビアニメの放送が予定されている。
読んだ本のタイトル
片田舎のおっさん、剣聖になる 8 ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件 ~
著者:佐賀崎しげる 氏
イラスト:鍋島テツヒロ 氏
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あらすじ・内容
春、来たる。
おっさん今年も大忙し!
隣国スフェンドヤードバニアでの戦闘により餞別の剣を失ってしまったアリューシアのため、彼女にふさわしい新たな武器を授けると決めたベリル。
「これを素材に考えているんだけど……どうかな」
持ち出したのはかつて仕留めた特別討伐指定個体(ネームド)の素材!?
さらにはレベリオ騎士団入団試験では受験する弟子の奮闘を見守り、北方遠征にて思いがけず再会した幼馴染みの大隊長と旧交を温め、そんな多岐にわたる特別剣術指南役の仕事疲れを癒やすのは……温泉!?
“片田舎のおっさん”は、今日も元気に奔走します!
感想
騎士団の入団試験と新たな世代の台頭
レベリオ騎士団の入団試験が行われた。
多くの志願者が集まり、その中には道場に通っていた双子の姿もあった。
かつての弟子たちが成長し、新たな道を歩み始めたことに、ベリルは複雑な心境を抱く。
試験では技量を競い合う模擬戦が展開され、実力が試される場となった。
アデルとエデルの奮闘も見られた。
試験終了後、合格した新人騎士たちは正式に団へ迎え入れられ、研修を経て遠征訓練へと進むことになった。
北方遠征と旧友との再会
訓練の一環として、新人騎士たちとともに北方遠征が実施された。
その目的地はヒューゲンバイトという港町であり、そこで彼らは実戦経験を積むことになる。
旅の途中、彼らは行軍や野営をこなしながら、剣士としての心得を学んでいく。
港町に到着すると、騎士団の守備を担う大隊長が、ベリルの幼馴染であることが判明した。
旧友との再会は懐かしさに満ちたものだったが、彼は剣術師範としての立場や、アリューシアとの関係について厳しい言葉を投げかける。
アリューシアの新たな剣と騎士団長の覚悟
先の戦闘で剣を失ったアリューシアのため、ベリルは新たな武器を用意することになった。
鍛冶師バルデルと協力し、最適な素材を求めて奔走する。
その結果、過去に討伐した強大な魔物「ロノ・アンブロシア」の核が剣の素材として選ばれた。
剣の完成までには試行錯誤が重ねられ、ようやく理想の武器が誕生した。
アリューシアはその剣を手にし、試し斬りを行うと、その切れ味に満足の表情を浮かべる。
ベリルもまた、自らが果たすべき役割を再確認する機会となった。
ヒューゲンバイトでの酒場巡りと揺れる心
遠征の最後の夜、ベリルはヒューゲンバイトの酒場を巡り、地元の酒と料理を楽しんだ。
そこへ偶然にもアリューシアが現れ、二人は酒を酌み交わすことになった。
普段とは異なる雰囲気の中で、彼女の素顔を垣間見ることとなる。
温泉での出来事を思い出しながら、彼女との距離が以前とは変わりつつあることを実感した。
その後、アリューシアはこれまでの想いを静かに告げ、ベリルに向き合うよう求める。
彼はその言葉を受け止めつつ、自身の気持ちを整理する必要性を感じた。
総括
本巻では、騎士団の新人達の成長とベリルの心境の変化が丁寧に描かれていた。
新たな剣の製作、遠征を通じた若手騎士たちの鍛錬、そしてアリューシアとの関係の進展が、物語に深みを与えていた。
特に、ベリルが剣士としてだけでなく、一人の人間としても変わりつつある点が印象的であった。
次巻では、彼の決断がどのような形で示されるのか、またアリューシアとの関係がどのように進展するのかに注目したい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
一 片田舎のおっさん、剣を贈る
剣の選定と鍛冶師との再会
バルデル鍛冶屋にて、剣の選定を進めていた。並べられたロングソードはどれも優れた品であったが、決定打に欠けていた。バルデル・ガスプはかつて剣術を学んだ元弟子であり、現在は鍛冶師として高い評価を得ていた。彼の打つ剣は信頼に足るものであり、先の遠征で破損したアリューシアの愛剣の代わりを求める際、彼を頼るのは当然の成り行きであった。アリューシアは剣の選定にこだわりはないようであったが、彼にとっては譲れぬ意地であり、慎重な選定を進めていた。
剣の選択と武器の最適化
バルデルが用意した剣は、アリューシアのこれまでの武器の形状や重さに基づいて製作されていた。そのため、手馴染みは良好であったが、彼は単に使いこなせる剣ではなく、アリューシアの実力を最大限に引き出せる剣を求めていた。卓越した剣士である彼女には、並の剣では不十分であり、より適した武器を模索する必要があった。そこで、より優れた素材の可能性を探ることになった。
新たな素材の模索
ゼノ・グレイブルの素材は既に手に入らず、サーベルボアの牙やエルヴン鋼も十分な強度を持たなかった。魔鉱石の活用も考えたが、すでにエルヴン鋼の製法に取り入れられているため、特別な効果は期待できなかった。アリューシアの剣のために最適な素材を求め、考え抜いた末に、彼はある可能性に気付いた。それは、過去に討伐した特別討伐指定個体「ロノ・アンブロシア」の核であった。
ルーシーへの相談と核の入手
彼はルーシー・ダイアモンドの元を訪れ、ロノ・アンブロシアの核の譲渡を依頼した。核は依然として微弱な魔力反応を示していたが、実質的に死んだも同然であり、研究対象としての価値は薄れていた。そのため、ルーシーは特に異論なく譲渡を承諾した。しかし、彼女はレベリオ騎士団長の剣を打つという事実がもたらす影響について指摘した。それは鍛冶師としてのバルデルにとって大きな名誉であり、また政治的にも無視できない要素であった。しかし、アリューシアが何も異を唱えなかったため、問題はないと結論づけた。
スフェンドヤードバニアの現状と新たな動き
ルーシーとの会話の中で、スフェンドヤードバニアの現状についても触れられた。グレン王子が旗頭となり、教都ディルマハカの復興に尽力していた。また、レベリス王国からの支援も進められており、両国の結び付きは一層強まっていた。しかし、その裏では黒衣を纏った勢力が活動しているとの情報もあった。これはヴェルデアピス傭兵団の動向である可能性が高く、彼らの目的は依然として不明であった。
今後の展望と決意
核の譲渡が決まり、新たな素材を得る目途が立った。彼はルーシーに感謝を述べつつ、帰路についた。鍛冶師バルデルの手によって、この素材がどのように活かされるのかが重要な課題となる。アリューシアの新たな剣が、彼女の実力を最大限に引き出すものとなるよう、今後の動向を注視する必要があった。
鍛冶屋への訪問と新たな剣
バルデルにロノ・アンブロシアの核を預けてから二週間が経過した。騎士団での鍛錬や学院の剣魔法科の講義を覗きつつ、ミュイとの日常を過ごしていた。アリューシアの剣の準備には特に関与できることはなく、焦らず日常を維持することが重要だと再認識した。二週間の間にバルデルを訪れた際、彼は疲労困憊ながらも闘志を燃やしていた。アリューシアは多忙で訪問が遅れたが、ようやく時間を作ることができたため、共に鍛冶屋へ向かった。
鍛冶屋での対話と剣の完成
バルデル鍛冶屋に到着し、彼の案内でアリューシアの新たな剣を見ることとなった。剣は黒塗りの鞘に収められ、剣身は薄墨色に輝く異質なものだった。この色合いは素材によるものとバルデルは説明した。核をエルヴン鋼と混ぜ、最適な配合比率を探すのに苦労したものの、最終的に最高の仕上がりになったという。アリューシアは剣の質を即座に見極め、優れた一振りであることを認めた。
試し斬りと剣の評価
屋外で試し斬りを行うこととなり、バルデルが巻き藁を用意した。アリューシアの一閃は見事なもので、巻き藁は無駄な力を受けることなく綺麗に斬れた。剣士としての技量と、剣の切れ味が共に一級品であることが証明された。アリューシアは剣に対し「素晴らしい」と評し、バルデルも鍛冶師としての誇りを感じていた。バルデルの作った剣がアリューシアの手に渡ることで、彼の名声もさらに高まる可能性があった。
支払いと帰路
剣の支払いが行われ、予想よりも高額だったが、その価値は十分にあった。鍛冶屋を後にした後、アリューシアは新たな剣が騎士団の入団試験に間に合ったことに安堵していた。試験は筆記、模擬戦二回、面接と厳しいものであり、アリューシアも剣を持たないわけにはいかなかった。試験の内容を聞きながら騎士団庁舎に到着し、二人は別れることとなった。
帰宅とスレナの訪問
帰宅すると、ミュイに加えスレナが訪ねていた。彼女は以前話していた魚料理の店に行く時間ができたと伝えに来たという。せっかくなので三人で食事に行くことになり、ミュイも多少緊張しながらも了承した。
魚料理と談話
スレナの案内で店に入り、白身魚のムニエルとフリッターを注文した。ミュイは美味しさに驚き、食事を楽しんでいた。食事中、スレナは自らが強くなるまで十五年かかったことを語り、ミュイに焦らず努力を続けるようにと助言した。スレナ自身も新たな目標を持っており、それに向かって精進していることが伺えた。
支払いと締め括り
食事の後、支払いについてスレナが負担しようとしたが、最終的に折半となった。三人での食事は成功し、ミュイとスレナの距離も少し縮まったように感じられた。こうして満足感とともに、一夜が穏やかに更けていった。
二 片田舎のおっさん、入団試験を見る
騎士団の訓練と新たな季節
バルトレーンの冬が過ぎ、騎士団での訓練が続いていた。騎士たちは日々の鍛錬を欠かさず、特に副団長ヘンブリッツの熱意によって、地獄の基礎練が定番となっていた。彼は体力と根性を鍛えることに価値を見出し、騎士たちもそれに付き合わされていた。特にクルニとの一騎討ちは恒例となり、彼女も食らいつく姿勢を見せていた。季節は春へと移り変わり、試験の準備が進められる中で、騎士団の空気はより引き締まっていた。
レベリオ騎士団の入団試験の準備
入団試験が近づき、騎士団内ではその準備が進んでいた。筆記試験の後に実技試験が行われ、候補生たちは厳しい審査を受けることになる。騎士団の掲示板には試験日程が張り出され、試験の内容も周知されていた。実技試験は修練場で行われ、見学も可能であった。興味を抱いたベリルは試験を観察することを決め、若者たちの成長を見守ることにした。
試験当日の静寂と準備
試験当日、ベリルは早めに修練場に到着し、二階席から様子を伺っていた。騎士団庁舎は静寂に包まれ、普段の喧騒とは異なる空気が漂っていた。ヘンブリッツも正装で現れ、試験を受ける候補生たちに対して規律を示していた。一方でベリルは平服で訪れたことを若干後悔していたが、周囲も普段着の者が多かったため、大きく目立つことはなかった。
志願者たちの点呼と意外な再会
点呼が開始されると、数多くの志願者が修練場に集まった。その中にはベリルのかつての弟子、アデルとエデルの姿もあった。二人が騎士団を志していることに驚きつつ、ベリルは試験の進行を静かに見守った。副団長のヘンブリッツも名簿を確認していたが、口利きを一切していないことを明言し、二人の実力を純粋に評価する姿勢を示した。
実技試験の開始と候補生たちの奮闘
実技試験が始まり、候補生たちは模擬戦を通じて自らの力を示すことになった。第一戦では技量に秀でた者が勝利し、観戦する騎士たちも彼の成長を期待した。続いてアデルが試験に挑み、槍使いの相手に対して果敢に攻め込んだ。彼女の闘志と勢いが相手を圧倒し、試験官によって試合が終了とされた。その姿にベリルも感慨を覚え、彼女の努力が実を結ぶことを期待した。
未来の騎士たちと試験の行方
試験は続き、他の候補生たちもそれぞれの実力を発揮していた。アデルとエデルの行く末を気にしながらも、ベリルは全体の試験の進行を見届けた。志願者たちがどれほどの力を持っているのか、そして今後の騎士団の成長にどう関わっていくのか、彼にとっても興味深い時間であった。新たな芽がどのように成長するのか、その未来を見守るべく、試験の行方を注視するのであった。
エデルの惜敗と戦況分析
エデルの剣が鋭く敵の喉を狙ったが、相手もまた同時に腹を突いてきた。わずかな差でエデルの剣は届かず、逆に彼の下腹部が捉えられた。試験官の合図とともに戦いが終わり、彼の惜敗が決定した。
ヘンブリッツはエデルの戦いぶりを評価しつつも、決定打に欠けた点を指摘した。特に彼の剣技は優れていたが、膂力の不足が最後の差となった。エデルは技術の精度は高いものの、力押しには弱く、特定の相手には苦戦を強いられた。
模擬戦の結果と戦績の分析
アデルは三勝一敗、エデルは二勝二敗と、成績は僅差であった。エデルの負けは惜敗が多く、アデルは相手によって勝敗が極端に分かれた。教官役の騎士たちは、彼らの技術と戦い方をどう評価するかが注目点であった。
ヘンブリッツによれば、教官との模擬戦は全員が挑めるわけではなく、明らかに力不足の者は省かれる。しかし、エデルとアデルはその範疇には入らず、引き続き試験を受ける可能性が高いと考えられた。
候補生同士の模擬戦終了と合否発表
候補生たちは三から五戦を戦い抜き、候補生同士の模擬戦が終了した。明確な実力差がある者もいたが、圧倒的な才能を示す者は見受けられなかった。試験官たちは合否の擦り合わせを行い、不合格者の発表がなされた。
不合格者の名前が呼ばれる形式で発表され、候補生たちは結果を静かに受け入れた。ヘンブリッツは、この形式が現実を認めさせるためのものだと説明した。実力不足を理解することが、今後の成長に繋がるという考えであった。
教官との模擬戦開始
実技試験の次の段階として、候補生たちは現役騎士との模擬戦を迎えた。アデルの対戦相手は若手騎士エヴァンスであり、彼の実力を前に勝機は薄かった。
アデルは初手に鳶落としを仕掛けたが、エヴァンスは冷静に対応した。アデルは攻撃の方向性を変え、手数の多い剣技に切り替えたが、エヴァンスの巧みな足捌きにより一切の攻撃が届かなかった。ヘンブリッツはこの戦況を、騎士団の技術レベルの高さが示されたものだと評価した。
アデルの試みと敗北
アデルは膠着状態を打破すべく、枯蔦渡しという技を繰り出した。これは瞬間的にリーチを伸ばす突き技であり、奇襲には適していた。しかし、エヴァンスは動作を見切り、防御に成功した。
結果として、アデルは有効打を決められず、最後にはエヴァンスの差し返しを受けて敗北した。試験官は彼女の気迫を評価しつつも、技術と筋力の不足を指摘した。
実技試験の総括と今後の展開
候補生たちは実技試験を終え、合否発表を待つこととなった。ヘンブリッツによれば、試験官との模擬戦で騎士が敗れることは稀であり、今年も番狂わせは起こらなかった。
試験の次の段階は面接であり、ここでは人格や価値観が評価される。実技での結果が微妙だった者も、面接で評価される可能性があった。
エヴァンスは試験の緊張から解放され、鍛錬に戻った。彼のような若手騎士の姿勢は、試験官としての役目を終えてもなお、剣を振るうことを辞めない点にあった。
ベリルとヘンブリッツも試験を見守った熱意のまま、修練場へ向かい鍛錬に励むことを決めた。若き候補生たちの試練を見届けたことで、彼らの情熱もまた刺激されたのであった。
レベリオ騎士団の実技試験後の変化
新たな騎士たちの受け入れ
レベリオ騎士団の実技試験が終了し、数日が経過した。本日は新たに叙任された騎士たちが庁舎へ初めて訪れる日である。特別指南役であるベリルもこの場に立ち会うこととなり、騎士団の外套を羽織ることになった。騎士団長アリューシアと副団長ヘンブリッツもこの場に揃い、新人たちの迎え入れを行う準備が整えられた。
騎士団の編成と配置
新たに叙任されたのは十一名で、例年よりやや多い人数であった。騎士たちはバルトレーンだけでなく、国境都市ヴェスパタや海港都市ヒューゲンバイトにも配置される。特にヒューゲンバイトはアフラタ山脈の北端に位置し、騎士団が警備を担う重要な拠点の一つである。
新たな騎士たちの到着
時間が迫り、新人騎士たちが中庭へと姿を現した。彼らは整然と並び、先導役の騎士に引率されながら進んできた。その中で、特に自信に満ちた様子を見せるのはアデルであり、一方のエデルは緊張の面持ちであった。二人とも無事に試験を突破し、騎士団の一員となることができた。
アリューシアの挨拶
アリューシアは騎士団長として、新たな仲間を迎え入れる挨拶を行った。レベリオ騎士団は王国を守る盾であり、外敵を討つ矛でもある。その責務を果たすための環境は整えられており、騎士たちには国家と己の志に忠実であることが求められる。彼女の言葉は力強く、新人たちに騎士団としての使命を深く刻み込んだ。
庁舎の案内と今後の活動
ヘンブリッツの号令により、新人たちは庁舎内の施設案内へと移った。彼らは騎士団の一員としての生活に慣れるための第一歩を踏み出した。アリューシアはベリルに対し、今後予定されている北方都市ヒューゲンバイトへの遠征行事について相談を持ちかけた。新人たちを遠征に慣れさせ、駐屯する騎士たちとの連携を強化する目的があるという。
修練場での鍛錬
一連の儀式が終わった後、ベリルは修練場へと向かった。既に何人かの騎士が鍛錬を開始しており、彼らの熱意に感嘆した。新人たちがどのような実力を持ち、どのように成長していくのか。その未来を見守りながら、彼もまた自身の務めを全うする覚悟を新たにした。
幕間
叙任式の執行
レベリス王国の現国王、グラディオ・アスフォード・エル・レベリスが叙任の剣を掲げ、新たにレベリオの騎士となるアデル・クラインの肩を叩いた。叙任式はレベリス王宮の一室にて厳かに執り行われ、十一名の新騎士がその名を刻まれた。騎士とは忠誠を誓うことでその役目を果たすものであり、彼らはレベリス王国と国民を守る使命を背負うこととなった。アデルは練習通りに返答し、儀式の簡潔さと格式の高さを実感しながら、緊張の中でその責務を受け入れた。
王の退出と緊張の解放
全員の叙任を終えた国王は静かにその場を去った。国王の退出によって場の空気はわずかに緩み、緊張感の中にあった新米騎士たちはほっと息をついた。しかし、アデルが思わず声を漏らしたことで一瞬にして全員の視線が彼女に集中し、場の空気は再び張り詰めた。騎士団の先導者の声掛けによって彼らはその場を退出し、王宮の廊下を整然と進んだ。
副団長ヘンブリッツの登場
レベリス王宮の正門を潜った彼らを迎えたのは、レベリオ騎士団副団長である轟剣ヘンブリッツ・ドラウトであった。彼はアリューシア・シトラスと並ぶ双璧の騎士であり、その圧倒的な剛力と規律の厳しさで知られていた。ヘンブリッツは新たな騎士たちを歓迎しながらも、その場の規律を示すため、軽率な言動をとったアデルに対し、一瞬で距離を詰めて腹部へ打撃を加えた。
制裁と教育
ヘンブリッツは一度目は忠告で済ませるとしたが、命令を守らなかったアデルには即座に罰を与えた。アデルは痛みに苦しみながらも、その打撃が本気ではないことを理解し、彼の手加減を感じ取った。この一撃によって、彼女は騎士団の規律の厳しさを身をもって知ることとなった。ヘンブリッツは教育の一環としてこれを行い、彼女の今後を見据えての行動であった。
庁舎への案内と警告
ヘンブリッツは庁舎の案内を開始し、新人たちに新たな環境を紹介した。その道中、彼は騎士団が招聘している特別剣術指南役の存在について説明し、その人物が騎士ではないものの剣の達人であることを強調した。そして、騎士ではないからといって無礼を働けば、先ほどの処罰とは比較にならない厳しい罰が待っていることを警告し、新人たちにその意味を理解させた。
三 片田舎のおっさん、北方へ征く
遠征の出立
ミュイに見送られ、ベリルは馴染み深くなった自宅を発った。バルトレーンに来てから一年が過ぎ、遠征も三度目となる今回は、北方都市ヒューゲンバイトへの行軍であった。新人騎士の訓練を兼ねた演習であり、行軍や実戦を経験させる目的があった。ミュイは今回も留守番となり、ルーシーとキネラに万が一の際の手配を済ませていた。気候も穏やかであり、不安はなかった。
遠征には新人騎士十一名、引率役五名、騎士団長アリューシア、副団長ヘンブリッツ、特別指南役のベリルが同行する。騎士団の慣習に従い、幹部が同行する形となった。遠征の目的は行軍訓練と実戦経験の積み重ねであり、アフラタ山脈北端で中型モンスターを討伐する計画であった。
騎士団庁舎での集合
出発の朝、ベリルは庁舎へ向かい、アリューシアと合流した。すでに新人騎士たちは整列しており、その中にはアデルの姿もあった。彼女はこれまでにないほど丁寧な態度を取っていた。理由を尋ねると、ヘンブリッツから上下関係の教育を受けたとのことだった。規律に厳しい彼に鍛えられたことで、アデルは態度を改めていた。
準備を確認した後、アリューシアは総員に出立の号令をかけた。新人騎士にとっては緊張の旅が始まることとなった。
野営訓練と朝の準備
遠征が始まり数日が経過し、ある日、村落に立ち寄らず野営を行う訓練が実施された。朝、ベリルはテントでの寝泊まりの影響で腰の痛みを感じつつも、訓練の重要性を再確認していた。新人たちは班ごとに分かれ、各自の役割をこなしていた。
四班は人数が少ないため準備に遅れが出ていたが、アリューシアは現状を冷静に分析し、考慮するべき点として受け止めていた。ベリルは組織内での評価や競争の厳しさを改めて実感し、個人として剣を磨いてきた自分との違いを認識した。
朝食と出発準備
二班の新人騎士たちは朝食の準備を終え、全員が順番に食事を取った。ベリルは、彼らの努力の成果をただ享受することに若干の抵抗を感じていたが、特別指南役としての立場を理解し、自身の役割を全うする決意を新たにした。
遠征には馬車が二台あり、一台はアリューシアと幹部用、もう一台は物資用であった。班ごとに順番で夜警を担当し、その班は翌日の行軍中、馬車で休息することが許可されていた。
ベリルは、自身の年齢と体力の衰えを感じつつも、剣の道を進む覚悟を新たにした。若い騎士たちの成長を見守ることに喜びを感じながら、遠征の意義を改めて噛み締めた。
その後、全員の準備が整い、アリューシアの指示のもと、レベリオ騎士団の行軍は再び始まった。
北方都市ヒューゲンバイトへの到着
行軍を続けた一行は、ついに目的地である北方都市ヒューゲンバイトへ到着した。関所の厳重な造りに驚きつつ、通行証を提示し、問題なく都市内へと進んだ。バルトレーンやフルームヴェルク領とは異なり、この地は王家直轄の都市であり、警備も厳重であった。
都市の規模と印象
馬車から降り立った一行は、都市の賑わいに目を見張った。広い大通りと密集した建物が並ぶ景色は、バルトレーンに匹敵するほど発展しているように見えた。湿気を帯びた風が吹き、海が近いことを感じさせた。遠征の合間に、海の景色を見てみたいと密かに考えた。
駐屯所での顔合わせ
一行は騎士駐屯所へ向かい、北方駐屯大隊長であるケーニヒス・フォルセと対面した。彼は実直な態度で出迎え、アリューシアと形式的な挨拶を交わした。しかし、ベリルが名乗ると、彼は驚きの声を上げた。ケーニヒスはベリルの幼馴染であり、かつて同郷で過ごした仲であった。
旧友との再会
三十年ぶりの再会に、二人は互いに驚きつつも、昔の記憶を呼び起こした。幼い頃、剣を交えた仲であり、久しぶりの対話に懐かしさが込み上げた。アリューシアは二人の関係に驚きながらも、職務を全うするべく、駐屯所の案内をケーニヒスに依頼した。
駐屯所の案内と今後の予定
駐屯所内を案内された一行は、施設の堅牢さと整然とした管理に感心した。訓練場や指揮所などが整備されており、戦力の維持に力を入れていることがうかがえた。アリューシアは今後の予定を確認し、この日は宿で休息を取ることと決定した。
旧交を温める約束
案内を終えた後、ケーニヒスはベリルを飲みに誘った。北方都市の料理と酒を楽しみつつ、旧友として語らう時間を持つことになった。久しぶりの再会を喜びながらも、彼の歩んできた道を知ることへの興味が募った。
宿での休息と明日への備え
宿に到着したベリルは、移動で鈍った身体をほぐすための鍛錬を行うことを決めた。特別指南役としての役割を果たすため、日々の鍛錬を怠らぬよう自らを律しつつ、新たな地での戦いに備えるのであった。
酒場での再会
ケーニヒスとベリルは、北方都市ヒューゲンバイトで再会し、共に酒場へ向かった。二人はエールを片手に乾杯し、久しぶりの再会を祝した。ケーニヒスはヒューゲンバイトの海産物を勧め、ベリルも期待を膨らませた。互いの人生について語る中で、ベリルはケーニヒスがどのようにして現在の地位に至ったのかを尋ねた。
ケーニヒスの過去
ケーニヒスは幼少期から「大物になりたい」という夢を抱いていた。剣を学ぶ選択肢もあったが、他人の剣で成り上がることを良しとせず、独自の道を歩んだ。村を飛び出した後、傭兵として生計を立てたが、より高い地位を求めてレベリオ騎士団の試験を受け、二度の不合格を経て合格した。その後、昇進を重ね、北方駐屯所の指揮官となった。
海鮮料理と語らい
酒と共に運ばれてきた海鮮シチューと白身魚の炙り焼きを楽しみながら、二人はさらなる話に興じた。ベリルは料理の美味しさに感嘆し、ケーニヒスも自慢げにヒューゲンバイトの食文化を語った。酒が進む中、話題はベリルがなぜ特別指南役になったのかに移った。
アリューシアの想い
ケーニヒスは、アリューシアの態度から彼女がベリルに特別な感情を抱いていることを指摘した。ベリルは、彼女を元弟子としてしか見られず、一線を引いていることを説明した。しかし、ケーニヒスは「それを言い訳にして逃げているだけだ」と断じ、アリューシアを一人の女性として見るよう促した。
ケーニヒスの結婚
話の流れで、ケーニヒスが既に結婚していることが判明した。彼の妻は二十五歳で、三年前に結婚したという。ベリルはその年齢差に驚いたが、ケーニヒスは「お互いが納得していれば問題はない」と述べた。さらに、「お前もアリューシアの気持ちを無視するべきではない」と強調し、ベリルの態度を批判した。
ミュイの存在
ベリルが後見人として面倒を見ている少女・ミュイの話をすると、ケーニヒスは驚愕し、「嫁もいないのに娘がいるのか」と詰め寄った。事情を聞いたケーニヒスは、さらに酒を頼み、「今夜は長くなりそうだ」と呟いた。ベリルは、旧友との再会がこんなにも説教じみたものになるとは思っていなかったが、同時に、こうして真剣に忠告してくれる存在がいることに、どこか嬉しさを感じていた。
朝の出発と心の整理
ケーニヒスとの再会を経た翌朝、ベリルは宿のロビーでアリューシアと顔を合わせた。二人は挨拶を交わし、駐屯所へ向かうことにした。アリューシアの美しさに改めて気付かされたベリルは、昨夜の会話を思い返しつつ、意識の変化に戸惑いを覚えた。しかし、遠征の本来の目的に集中すべく考えを切り替え、共に駐屯所へ向かった。
騎士駐屯所での準備
駐屯所へ到着すると、既に集まっていた騎士たちと挨拶を交わした。アリューシアはベリルの様子を気にしていたが、彼は昨夜の話を伝えるわけにもいかず、誤魔化すことにした。現場指揮を執るケーニヒスは、レベリオ騎士団の秩序を示すような堂々とした態度で指示を出し、遠征の準備を進めた。新米騎士たちは緊張しながらも、与えられた役割をこなしていた。
アフラタ山脈への行軍開始
ケーニヒスの号令の下、一行はアフラタ山脈北端を目指して進んだ。道中の警戒は怠らなかったが、大きな問題もなく目的地へ到着した。天候が安定していることを確認したアリューシアとベリルは安堵し、キャンプの設営が始まった。新米騎士たちにとって初めての本格的な遠征訓練であり、それぞれが真剣に取り組んでいた。
遠征の意義と指揮の役割
設営が終わると、アリューシアは遠征の指揮についてベリルに説明した。彼女自身が全体の指揮を執るのではなく、現場指揮はケーニヒスに委ねることで、より円滑な指揮系統を確立する意図があった。ベリルはその合理性を理解しつつ、自身が組織の中で果たすべき役割について改めて考えさせられた。
偵察と新たな挑戦
設営後の休憩を経て、一行は周辺の偵察を開始した。アフラタ山脈の危険性を考慮しつつも、ベリルは未知の脅威との対峙に興味を抱いていた。彼はかつてゼノ・グレイブルやロノ・アンブロシアといった強敵と戦い抜いた経験を思い返し、自らの実力がどこまで通用するのかを試したいという欲求を密かに抱いていた。
変化する自己認識
自身の内面の変化に気付いたベリルは、かつての自分とは異なる考え方を持ち始めていることを自覚した。それは成長とも言えるし、環境の変化に順応した結果とも言える。彼はこの遠征を通じて、自らの役割とこれからの生き方について、さらに深く考えざるを得なくなっていた。
野営の準備と食糧の確保
アフラタ山脈北端の麓に拠点を設営し、周辺の偵察を終えた後、ケニーの提案で軽い行軍が始まった。その途中、麓に降りてきたボアを二匹仕留め、遠征の食糧として持ち帰ることとなった。野生動物の解体作業は新米騎士の訓練の一環として任され、臭気に苦戦する者もいたが、経験を積む良い機会となった。ボアの肉は市場でも流通しており、干し肉ばかりの食事と比べれば遥かに豪華なものとなるため、一同は喜びを見せた。
新米騎士の実力と遠征の意義
偵察では、ケニーの指揮のもと、新人騎士たちがボアとの戦闘を行い、特に危険な場面もなく二匹を仕留めた。彼らの技量にはまだ伸びしろがあるものの、勇気と実戦での判断力は評価できるものであった。遠征の目的は単なる行軍ではなく、こうした経験を通じて騎士たちの成長を促すことであり、彼らは少しずつ戦士としての素養を身につけつつあった。
ヒューゲンバイト周辺の脅威
ケニーによると、ヒューゲンバイト周辺では主に一角狼やワーム系のモンスターが見られ、稀にグリフォンも飛来するという。人間の悪党は都市部ほど多くはないが、漁船がモンスターに襲われることもあり、海上の脅威にも一定の注意が必要とされる。バルトレーンとは異なり、この地では自然の脅威と向き合う機会が多いことが分かった。
山中行軍と新米騎士の試練
翌日、山中行軍が開始された。新人騎士の中でも特に意欲的なアデルが気勢を上げていたが、小隊長によってすぐに咎められた。山の環境はそれほど視界が悪くないものの、飛行するグリフォンの脅威があるため、警戒が必要であった。アリューシアは植生の観察をしながら冷静に進軍し、その適応力の高さを見せた。
一角狼との遭遇と戦闘
行軍の途中、一行は一角狼の群れに遭遇した。新米騎士たちは二人一組で前進し、囲い込む戦術を用いた。アデルは素早い動きで敵を追い込み、仲間との連携によって一匹を仕留めることに成功した。彼らの奮闘により、今回は指導者が介入せずとも戦闘を終えることができ、新人たちの実力の向上が確認された。
グリフォンの襲撃と迎撃
戦闘終了後、空を旋回する二匹のグリフォンが現れた。彼らは集団を獲物と認識し、徐々に高度を下げていた。新人騎士たちは防御態勢を取り、アリューシアとベリルが迎撃に当たることとなった。一匹目のグリフォンはベリルによって前脚を斬り落とされ、撤退。二匹目はアリューシアが鋭い突きで喉元を貫き、即死させた。彼女は勢い余って引きずられそうになったが、素早い判断で危険を回避した。
戦闘後の振り返りと成長の兆し
グリフォンを退けたことで、一行は再び行軍を開始した。戦闘を目の当たりにしたアデルはベリルの実力に感嘆し、興奮気味に称賛の言葉を口にした。ベリルは自身の成長を実感しつつも、自信と増長の境界について思案した。剣士としての道を歩む中で、彼もまた精神的な成長を遂げつつあることを感じながら、次の戦いへと歩みを進めた。
遠征の総括と帰還準備
ベリルたちはアフラタ山脈の偵察を終え、拠点へと帰還した。行軍は順調であり、大型種との遭遇は一度きりで、それ以外は一角狼やボアといった中型の獣が主な相手であった。新米騎士たちは、山中での実戦経験を積む貴重な機会を得た。特に狩猟経験のある者は順応が早く、都市育ちの騎士たちは新たな環境に適応するための学びを得た。彼らは、今後の鍛錬を通じてさらに逞しくなることが期待されていた。
ケニーの部隊との情報共有
拠点に戻ると、ケニーの部隊と情報を交換した。彼らもグリフォンと遭遇し、右前脚を失った個体を討伐したという。その傷の特徴から、以前ベリルが戦った個体である可能性が高かった。戦場での情報共有は基本であり、ケニーも冗談交じりに確認を取るに留めた。討伐したグリフォンの肉は持ち帰られ、今夜の祝勝会の食材となる予定であった。
演習の意義と剣士の心得
遠征の目的は単なる戦闘ではなく、騎士たちの成長であった。新米騎士たちはグリフォンの討伐を知り、己の技量と他部隊の力量を比較することで刺激を受けた。ベリルは自らを剣士として導く役割を担っているが、組織を統括する資質についてはアリューシアの方が優れていると考えていた。剣技の指導はできても、組織の運営にはまた別の能力が必要であり、ヘンブリッツのような補佐役の重要性を改めて認識した。
帰還前夜の祝宴と温泉の誘い
食事の準備が進む中、アリューシアがベリルに休息日の予定を尋ねた。彼女はヒューゲンバイトに温泉があることを教え、心身を癒す機会を持つことを提案した。ベリルはその誘いを快諾し、遠征の無事を祝いつつ、温泉への期待を膨らませた。
温泉での安息と自省
温泉に浸かりながら、ベリルは遠征の振り返りを行った。今回の行軍は比較的順調で、グリフォンとの戦いも危機的状況には至らなかった。かつての激戦を思い返しながら、騎士団の鍛錬と自身の成長について思索を巡らせた。同時に、周囲の者たちとの関係性や、自らの振る舞いについても考えを深めた。
アリューシアの告白と未来の選択
温泉の最中、アリューシアがベリルの前に現れた。彼女はこれまでの想いを打ち明け、自らの幸せを考えるようになったことを告白した。ベリルはその言葉を受け止めつつ、自身の立場と剣士としての信念との間で葛藤した。彼はシュステからの告白についても言及し、自身がまだ剣の道を優先していることを伝えた。しかし、アリューシアが傍にいることの安心感もまた、無視できないものであった。
師弟関係から一歩踏み出す覚悟
ベリルはアリューシアを一人の弟子として見続けるのか、それとも一人の女性として向き合うのかを自問した。ケニーからの忠告も思い出し、自らの感情に向き合う必要性を感じた。アリューシアはベリルが自らの幸せを考えることを望み、その傍にいたいと願った。彼はまだ明確な答えを出すことはできなかったが、彼女の気持ちを無碍にはできなかった。ベリルにとって、それは剣の道とは異なる新たな課題となったのである。
末 片田舎のおっさん、解を求める
酒場巡りと北方都市の味覚
ベリルはヒューゲンバイトでの最後の夜、酒場巡りを楽しんでいた。田舎では味わえない楽しみを満喫しながら、酒と料理を堪能していた。酒場では、小魚の突き出しや魚介のスープが提供され、バルトレーンとは異なる食文化を体験した。特に魚介の出汁が効いたスープは、彼にとって興味深い一品であり、ミュイにも作ってやりたいと考えていた。
アリューシアとの再会
二軒目の酒場で寛いでいると、背後からアリューシアが声をかけた。彼女も酒場を訪れ、一杯楽しむつもりであった。普段は鎧姿の彼女も、この日は軽装であり、その姿にベリルは少し戸惑いを覚えた。彼は自然な態度を保とうとしたが、温泉での一件の影響か、どこかぎこちなさを感じていた。
ヒューゲンバイトの魅力と旅の名残
アリューシアと共に酒を酌み交わしながら、ベリルはヒューゲンバイトの良さについて語った。都市の雰囲気はバルトレーンとは異なり、それぞれに魅力があると感じていた。しかし、二都市間の距離や道中の安全性を考えると、気軽に往復することは難しいと改めて実感した。
変化する関係性
アリューシアはエールを飲み干し、料理を注文しながら、自然にベリルへと話を向けた。彼は彼女に対してどのように接すればよいか悩んでいたが、彼女は「普段通りでよい」と静かに告げた。温泉での出来事以来、ベリルは彼女に対して意識せざるを得なくなっていたが、それを見透かされていたことに驚かされた。
揺れる心と覚悟の決意
ベリルは、アリューシアの率直な言葉に押され、自分が彼女に対して抱く気持ちを整理し始めた。彼女の魅力を認め、弟子としてではなく、一人の女性として向き合う決意を固めた。それでも、彼の理想は高く、剣の道と並ぶほどの課題であると感じていた。アリューシアはその言葉を受け止め、穏やかに微笑んだ。
酒と料理を楽しむ夜
会話に一区切りがついたところで、料理が運ばれてきた。海鮮の盛り合わせと、北の海で獲れる大型魚・アラギのステーキであった。二人は料理を前に「いただきます」と声を揃え、このひとときを存分に楽しむことにした。ベリルは、アリューシアとの語らいも良いが、今はこの極上の料理を堪能し、翌日の帰路に備えようと考えていた。
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