ラシードは元「時忘れの都」の経営者であり、シレーヌという来客を迎えている。
シャウザはシレーヌに兄リゲルと父親に関する話を始め、一族の反乱や神弓の伝説について語る。
リゲルは神弓の伝説を築き上げ、獣人たちの共同体に希望を与える存在になる。
商人たちと獣人たちの対立が深まり、獣人たちは自由を失い、奴隷としての生活を余儀なくされる。
獣人たちの絶望的な状況に対し、リゲルは神弓を手に取り、戦いに身を投じ、獣人たちの安全を守る決意を固める。
商人たちと獣人たちの戦いが激化し、獣人たちは未知の新型ゴーレムに敗れる。
リゲルと父は裏切られ、リゲルは父を処刑される最中に発見される。
リゲルは処刑を逃れ、サレンツァ家の少年から保護の取引を持ちかけられる。
新経営者ノールはゴーレムの襲撃に対処し、従業員に支援を約束する。
サレンツァ家ではゴーレムの戦いに敗れ、家族内での争いが起こる。
どんな本?
俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~ は、鍋敷 氏が小説家になろうで連載しているライトノベルです。
アース・スターノベルから単行 本が発売されており、現在第7巻まで出ている。
また、KRSG氏がコミカライズを担当しており、コミック アース・スターで連載中。
この物語は、才能なしの少年と呼ばれて職業養成所を去った男・ノールが、ひたすら防御技【パリイ】の修行に明け暮れた結果、世界最強クラスの力を手にしているのに、一切気がつかないまま強敵を打ち倒していく英雄ファンタジー。
ノールは、魔物に襲われた王女を助けたことから、王国の危機に巻き込まれていく。
しかし、彼は自分の能力に全く自覚がなく、常に謙虚で真面目に振る舞う。
そのギャップが面白く、読者の共感を呼んでいるらしい。
この作品は、TVアニメ化も決定している。
読んだ本のタイトル
俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~ 8巻
(英語名:I Parry Everything: What Do You Mean I’m the Strongest? I’m Not Even an Adventurer Yet!)
著者:鍋敷 氏
イラスト:カワグチ 氏
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あらすじ・内容
シャウザより兄・リゲルのその後を聞いてショックを受けるシレーヌ。
俺は全てを【パリイ】する⑧~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~
一方、時忘れの都にゴーレムの大群が襲来するが、
ノールとシャウザが協力して撃退する。
首都より呼び出しを受けたノールはラシードらとともに出発するが、
その途中、砂嵐の中から現れたのは、かつて戦った最強の敵だった……。
感想
『俺は全てを【パリイ】する 〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜 8』は、冒険と裏切りが織り交ぜられた物語である。主人公のノールとその仲間たちは、壮大なスケールで描かれる一連の出来事を通じて、自らの運命と直面する。
物語の始まりでは、シレーヌが自身の兄リゲルについての衝撃的な真実を知ることとなる。リゲルはかつて獣人たちを守るために戦ったが、最終的には裏切られ、商人たちに利用される運命にあったのである。彼は後にラシードに救われ、シャウザとして新しい人生を歩み始める。
物語のクライマックスにおいて、時忘れの都の経営権がノールに移ったことを知ったラシードの兄弟が、サレンツァ家の秘密兵器であるゴーレム軍団を派遣し、都を破壊しようと試みる。しかし、ノールとシャウザは共に戦い、ゴーレム軍団を壊滅させることに成功する。これにより、ノールは「時忘れの都」の人々からの信頼を得て、真のリーダーとしての地位を確立するのである。
物語はノールとシャウザが首都サレンツァへと向かうところで終わりを迎える。彼らの前には新たな挑戦が待ち受けており、その冒険が次なる物語へとつながっていく。この作品は、謎解き、戦闘、そして人物の成長が絶妙に組み合わされており、読者を引き込む力がある。また、キャラクターたちの背景が深く、彼らの行動の動機が明らかにされることで、物語はより一層の深みを帯びているのである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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アニメ
PV
OP
ED
同シリーズ
俺は全てを【パリイ】する
その他フィクション
備忘録
152 シャウザとシレーヌ
1. シレーヌの来訪
• 元『時忘れの都』の経営者ラシードはシレーヌの来訪に優しく応対した。シレーヌは緊張していたが、ラシードから出されたお茶を楽しみつつ、少しずつリラックスしていった。彼女の来訪目的はラシードではなくシャウザにあり、ラシードとメリッサは彼女の要望に応じて席を外した。
2. シレーヌとシャウザの対話
• シレーヌはシャウザの首の後ろに見えた刺青跡に関して尋ね、シャウザはその刺青が部族に関連するものであることを認めた。シレーヌは家族の過去についての情報を探していることを伝え、特に離れ離れになった父と兄について知りたいと願っていた。シャウザはため息をつきつつ、彼女の求めに応じて少しだけ口を開いた。
3. ミオ族の滅亡と家族の顛末
• シャウザは、かつて自分たちの部族「ミオ族」がサレンツァ家に対し反乱を起こしたものの、数日で壊滅させられた過去を語った。シレーヌの父は臆病で、兄リゲルは無謀な英雄気取りであったと厳しく評し、二人の最期が処刑台での惨たらしいものであったことを伝えた。
4. シレーヌの動揺とシャウザの憎悪
• シャウザはシレーヌの家族に対する期待を完全に否定し、リゲルが英雄でも信念を持つ者でもなかったと断じた。シレーヌはショックを受けつつも、父と兄が信じるもののために戦ったのだと思いたいという心情を吐露したが、シャウザの激しい憎悪により否定された。
5. シャウザの警告と首飾り
• シャウザはシレーヌに、部族の象徴である首飾りを捨てるよう警告し、それが彼女に災いをもたらす可能性があると述べた。シレーヌがその首飾りを捨てる意思がないことを示すと、シャウザは引き下がったが、さらに何も話すことはないと告げた。
6. シレーヌの退場とシャウザの呟き
• シレーヌは話を聞いた後、礼を言って部屋を後にした。彼女が去った後、シャウザは一人、床を睨みつつ兄リゲルへの苛立ちを静かに呟き、過去の記憶を掘り返したことに自己嫌悪を感じていた。
153 【星穿ち】のリゲル 1
1. リゲルと妹シレーヌの幼少期
• リゲルには十二歳年下の妹シレーヌがいた。彼らは「ミオ族」という小さな獣人の集落で、族長の子供として生まれた。リゲルの母はかつて優れた狩人で、リゲルにも幼い頃から弓を教え、彼は母を超える技量を持つようになった。シレーヌも健康に育ち、リゲルは妹の寝顔を見つめつつ、母に再度弓を教わりたいと頼み続けた。
2. リゲルの才能と成長
• 幼少期からリゲルは早熟で、生まれて半年で歩き回り、三歳には大人と腕比べして勝てる程に力強かった。五歳になると、戦士用の強弓を引く技術を見せ、周囲を驚かせた。彼は集落の戦士達を凌ぐ弓の技量を持ち、十歳には一人前と認められ、訓練にも参加するようになった。リゲルの矢は強力で、鋼板を十枚貫き、集落の壁を突き破るほどであった。
3. リゲルの「流れ星」の練習
• 十二歳の頃、リゲルが矢を夜空に向かって放つと、それが「流れ星」のように見え、集落の人々に驚きと関心を与えた。リゲルは誤射を防ぐため空に向けて練習していたが、空で燃え尽きるその矢は、皆に「地上から空へと昇る流れ星」として伝わり、不思議な現象として注目された。
4. 流れ星の噂と「星穿ち」の誕生
• リゲルの放つ矢は砂漠の端にまで噂が広まり、遠くの集落からも彼を見ようと多くの者が訪れるようになった。弓の達人達もその噂に半信半疑で訪れたが、実際の光景を目にして驚嘆した。そしてリゲルは「星穿ち」という二つ名で知られるようになり、彼の存在は人々に希望を与え始めた。
5. 「引けずの神弓」の継承
• その後、複数の集落の長老達が集う場で、リゲルは伝説の弓「引けずの神弓」を試すよう促された。リゲルはその弓を容易く引き、放った矢が強力すぎて集会場の壁を吹き飛ばすほどだった。長老達は満場一致でこの弓をリゲルに託し、彼が「神弓」の継承者となった。
6. リゲルの伝説的な成長と神話の誕生
• 「神弓」を手にしたリゲルは、より強力な矢で砂漠の風景を変えるような力を見せ、その矢の光景は夜空に輝く幻想的な流れ星となった。リゲルの名は彼の技量と共に広まり、獣人たちの間で神話的存在として語り継がれた。
154 【星穿ち】のリゲル 2
1. 獣人たちの平穏と変化の兆し
• 獣人たちは「森の民」として、豊かな自然の中で平和な暮らしを送っていた。毎年決まった量の狩りと祭りを行い、精霊に感謝して暮らす彼らの生活には、ほとんど変化がなかった。しかし、遠方から商人たちが訪れ始め、彼らは外の世界の珍しい薬や装飾品に触れ、交流が生まれた。当初は衝突もあったが、互いの領域を尊重し合う関係が築かれ、良好な共存が続いた。
2. 旱魃と水源の問題
• ある年、干ばつが発生し、獣人たちは古老の指示で代々守られてきた水源地に移動した。しかしそこには商人たちの家が建ち並んでいた。商人たちはその土地が自分たちの所有であると主張し、土地の「権利書」を見せつけた。獣人たちは驚いたが、彼らが困窮しているのだろうと考え、温厚にその場を譲った。しかし、翌々年に再び旱魃が起こり、再び水源地に行くと商人たちの家が増え、水場は頑丈な柵で囲まれていた。
3. 商人たちとの対立と忍耐
• 獣人たちは再び水を分け合うよう商人たちに頼んだが、商人たちは権利書を盾に拒否した。獣人たちは若者の不満を鎮め、忍耐を選んだ。商人を「弱き者」として守り、争いを避けるのが自分たちの誇りとし、再び別の水源を探しに行った。しかし、数年後、今度は高い石の壁と武装した門番に囲まれ、かつての水源地はすでに商人たちの管理下にあった。獣人たちは通行料を払わされ、乾いた水源に案内され、立ち入るたびに「適正価格」を請求されるようになった。
4. 獣人社会の変容と従属化
• 商人たちは獣人の土地を細分化し、権利を割り当てて販売することで支配を広げていった。獣人たちは住める土地を徐々に奪われ、生活は困窮を極めたが、争いごとを嫌う獣人たちはなおも忍耐を続けた。やがて彼らは貧困に追い詰められ、商人たちの交易相手から利益を搾り取られる日々が続き、金を得られずに生活が破綻し、多くの獣人が奴隷となっていった。砂漠の隅に追いやられた彼らは、わずかな誇りを持ちながらも、衰弱していくしかなかった。
5. 「星穿ちのリゲル」の登場と希望の兆し
• この困難な状況に現れたのが「星穿ち」と呼ばれるリゲルであった。彼の並外れた弓の技量と強力な矢は、獣人たちの間に希望をもたらし、一部の者は商人たちに対して「鉄槌」を下すべきだと考えるようになった。しかし、リゲル自身は戦争を望まず、弓が人を傷つける道具になることを避けようとしていた。商人たちの圧力にも抵抗せず、ただ日常の練習に励む彼に、失望の声が上がり始めた。
6. 反撃の決意と「戦」への準備
• ある日、リゲルは奴隷にされた獣人の姿に触発され、ついに弓を取る決意を固めた。彼は父親に告げ、今までの忍耐がもたらした結果を訴えた。彼の訴えに父も応じ、ついに商人たちとの対決を決意した。古くからの教訓に基づき、彼らは「戦」を通じて、相手の武力を奪い、対等な話し合いに持ち込むことを計画し、家族を安全な場所に移して準備を整えた。
7. 最初の戦果と期待の高まり
• 戦士たちは「ゴーレム」と呼ばれる商人の兵器が収められた倉庫を襲撃し、リゲルの矢で次々と破壊した。初日の戦果に獣人たちは歓声を上げ、この調子で戦争が早く終わることを期待した。彼らは慎重に進みつつ、次の倉庫を襲撃し、二日目までに大きな戦果を上げた。この順調な戦いに、早く愛する家族の元へ帰れるかもしれないという希望が芽生えた。
8. 裏切りと計画の崩壊
• 三日目、案内役に導かれた獣人たちは、異様に堅牢な新型ゴーレムに囲まれてしまった。商人たちは密かに裏切り者を潜ませ、獣人たちを罠にかけていたのだった。逃げ場を失った獣人たちは次々とゴーレムに捕まり、圧倒的な力に敗れて多くが命を落とした。商人たちは彼らの抵抗を待ち構えており、手強い獣人の戦士たちが一掃される様子を遠くから観察し、喜びの祝杯を挙げていた。
9. 絶望的な結末と獣人たちの敗北
• 戦士たちは勇敢に抗ったが、多くの犠牲を払うこととなり、リゲルと父も追い詰められ、ついにその場で気を失った。獣人たちの戦いは三日で終焉を迎え、彼らの夢見た全ては一瞬で崩れ去った。家族と共に歩む未来も、誇りある生き方も失い、商人たちに抑圧される運命が確定した。
155 【星穿ち】のリゲル 3
1. リゲルの目覚めと恐怖の処刑
• リゲルが目を覚ますと、彼は知らぬ街の高い塔の上に鎖で繋がれていた。すぐそばには同じく鎖で拘束された父親が黒い金属台に押さえつけられていた。観衆が見守る中、父の片腕、反対側の腕、脚が次々に切断され、観衆はその様子を歓喜と共に見つめていた。魔物の檻に父の体の一部が投げ込まれるたび、民衆は手を叩いて喜び、その光景が現実であることをリゲルはようやく理解した。
2. 絶望と同胞の裏切り
• リゲルは自身が囚われた状況と、自分たちが完全に敗北したことを理解した。彼の仲間たちは巨人に引き裂かれ、命を落としていった。父は息子であるリゲルの命乞いをしながらも、無情に切り刻まれていく。さらに、リゲルはかつて助けようとした同胞たちが自分を裏切り、嘲る言葉を投げつけているのを知り、深い絶望に陥った。
3. 神弓の破壊と心の崩壊
• 処刑の場ではリゲルの「引けずの神弓」が刑務官の手で破壊され、その美しい弓が粉々に砕け散る光景を彼は見届けた。観衆の歓声の中、リゲルは父の首が処刑人によって刎ねられ、魔物の腹に消えたのを目撃し、全てが終わったと悟った。次は自分の番であることを知りながらも、もはや抵抗する気力もなかった。
4. 奇妙な嵐と生き延びたリゲル
• リゲルの処刑は嵐によって中断された。突然空に湧き上がった巨大な雨雲が雷と共に強風を巻き起こし、観衆は嵐の到来に驚き、その場を去った。処刑は延期され、リゲルは暗い牢獄に繋がれたまま生き延びた。孤独と空虚な心の中で、自分が「星穿ちのリゲル」として持ち続けた重荷から解放されたことに安堵を覚え、また、自分が偽りの英雄だったことを嘲笑うかのように、彼は静かに笑った。
5. 神秘的な少年の登場
• 牢獄で虚ろに座り込むリゲルの前に、年端もいかない少年が現れた。少年は刑務官たちを連れて牢に入り、リゲルの前で彼の処刑が近いことを告げたが、すぐに処刑を実行する気はなく、リゲルに取引を持ちかけた。リゲルが拒絶しても少年は楽しげに言葉を続け、彼の命を買いたいと提案した。
6. 命の価値と少年の計画
• 少年はサレンツァ家の一員であることを明かし、リゲルにとって敵であることを承知の上で、リゲルを「護衛」として自分のために働かせようと提案した。リゲルが協力することによって、少年が一族を乗り越える時には、リゲルの全ての罪を帳消しにし、完全な自由を約束すると話した。リゲルは少年の言葉に憤りと疑念を抱きながらも、彼の提案に興味を持ち始めた。
7. 新たな名前「シャウザ」と未来への選択
• 少年は取引の内容を詳しく語り、リゲルに「シャウザ」という新しい名前を提案した。少年は自らの家族を犠牲にしてでも自分の望む未来を手に入れる覚悟を示し、リゲルに協力を持ちかけた。リゲルは心の奥に眠っていた復讐の火が再び灯り、無意識に少年の提案に応じる決意を固めていた。
156 新経営者ノール
1. シレーヌの落胆とリーンの気遣い
• シレーヌは浮かない顔で戻り、リーンが声をかけると、家族に関わる話が見つかったが、良い内容ではなかったと伝えた。リーンは、今後も家族の手がかりがあれば協力する意向を示し、シレーヌも礼を述べたが、まだ気持ちは晴れていなかった。その場でイネスやロロ、ノールも遠くから二人の様子を見守っていた。
2. ラシードの来訪と話し合い
• 廊下の奥からラシードが現れ、メリッサとシャウザを引き連れて歩いてきた。ノールとラシードは荷物や茶葉について何気ない会話を交わした。リーンがラシードに礼を述べ、シレーヌを送り出したことへの対応を感謝すると、ラシードは自身も気遣い、邪魔者を退けたと返答したが、リーンはラシードに対して引き続き警戒している様子であった。
3. 館の引き継ぎと館長の選任
• ラシードはノールに館の取扱い説明を申し出、館長の選任について話した。ノールが館長に誰を任命するかを問うと、ラシードはメリッサを解任したが、新館長には誰を選んでも自由であるとした。ノールが再度メリッサを館長に任命したいと希望を述べると、ラシードとメリッサは驚きながらも承諾することとなった。
4. 館長職の承諾と条件交渉
• メリッサが館長職の再任を承諾する条件として、安全保障と給与を求め、ノールがその条件に同意したことで交渉が成立した。ラシードもその内容を承認し、メリッサが館長職を再び引き受けることになった。メリッサはやや不満げながらも、正式に館長の役職を受け入れる意思を示した。
5. 経営者交代の挨拶準備
• メリッサは館の経営における混乱を防ぐため、ノールに全従業員への経営者交代の挨拶を行うよう求めた。挨拶の内容はノールの意向に基づいてスタッフが作成することになり、ノールもその提案を受け入れ、従業員への挨拶の準備が進められた。
6. メリッサの指導力とラシードの別れ
• メリッサは早速、館の維持管理に向けて迅速に指示を出し、ノールはその姿勢に頼もしさを感じた。一方で、ラシードはメリッサに対して長期間ここに残るよう告げ、彼女の眉が動くが、今後の成り行き次第だとして場を和ませた。ノールたちは、挨拶の準備に移行し、従業員たちの前で新しい館の体制を示す準備を整えていった。
157 経営者ノールの挨拶
1. 挨拶原稿の作成と準備
• ラシードたちと別れた後、ノールはリーンとメリッサの手助けを借りて、従業員の前で行う挨拶の原稿を作成した。リーンとメリッサが手早く文章を校正し、最終的に原稿を仕上げたため、ノールは本番に向けて読み上げの練習を行った。練習の結果、紙に頼らず話すことが推奨され、ノールもその方法で本番を迎えることに決めた。
2. 従業員への挨拶
• ノールは『時忘れの都』の中央講堂で集まった多くの従業員を目の当たりにし、その数に圧倒された。約3万名の従業員の中から2万名程度が講堂に集められていた。講堂内には集音器が設置され、ノールの姿も鏡に大写しされるなど、立ち振る舞いにも細心の注意が求められた。
3. 挨拶内容と反応
• ノールは演台に立ち、新オーナーとして自己紹介を行った。自身が魚好きであるものの、従業員を強制的に使役するつもりはないことを伝え、不安を感じる必要がないと安心させようとした。館長にはメリッサを任命し、今後も彼女の指示に従ってもらう旨を話した。従業員たちの多くはこの内容に驚きつつも安心する様子を見せた。
4. 借金の免除についての説明
• ノールは、従業員の借金について言及し、ザザとリーアを呼んで詳細を説明させた。財務状況を明確にし、借金を個人資産から肩代わりすることを宣言。これにより従業員たちは驚きと安堵の反応を見せ、さらなる金銭的支援も考慮する姿勢を示した。
5. 挨拶の途中で原稿が足りない事態
• 最後の原稿を控室に置き忘れてしまい、ノールは焦りながらも即興で話を続けることとなった。責任を持てる範囲で即興の言葉を述べ、不安を持つ従業員が安心できるような内容で締めくくり、拍手で歓迎された。
6. 挨拶終了後の振り返り
• 挨拶を終えて控室に戻ったノールは、メリッサから挨拶の内容について概ね好意的な評価を受けた。リーンもノールの即興の話に満足し、経営者としての信頼を寄せる表情を見せた。
7. サレンツァ家からの出頭要請
• 控室でラシードがノールに出頭命令を伝え、サレンツァ家からの召喚状がノールにも届いていることを明かした。リーンと一緒に首都へ向かう予定のノールは、ラシードからの説明を受けて首都行きを決意した。
8. 緊急事態の襲撃報告
• ノールが出頭要請に応じる準備をしている最中、クロンが慌てて現れ、砂漠に巨大なゴーレムの軍勢が『時忘れの都』に向かって進行していることを告げた。この突然の襲撃により、ノールたちは新たな緊急事態に直面することになった。
158 俺はゴーレムをパリイする
1. ゴーレムの襲撃確認と映像拡大
• ラシードの指示でメリッサが執務室の壁一面に映像を拡大し、ゴーレムの軍勢の全貌が明らかとなった。クロンの言う通り、大量のゴーレムが砂漠から『時忘れの都』に迫っている様子が映し出され、ラシードがその数の多さに驚きを見せた。
2. ゴーレム襲撃の目的と敵の正体
• ラシードは、ゴーレム軍勢の正体について、弟たちが送り込んだ兵であると説明した。『サレンツァ家』の内部抗争が原因で、ラシードを狙う弟たちが彼の命を奪おうとしていると推測された。また、襲撃の目的としては、ラシードの命以外にも、この土地の利権や貴重な宝物、異国から来た高貴な女性を含めた様々な目的があると見られた。
3. ゴーレムとの戦闘準備と役割分担
• ラシードの助言を受け、ノールは自らが先陣を切ることを決意した。リーンやイネスもノールの護衛を考慮しつつ後方の守備に回り、シレーヌとロロは一般の従業員の保護に当たることにした。ラシードも戦力としてシャウザを提供し、彼がノールをサポートすることとなった。
4. ゴーレムとの対決開始と『黒い剣』の威力
• ゴーレムが近づく中、ノールは【筋力強化】を発動し『黒い剣』をゴーレムに向けて投げた。その結果、ゴーレムが次々に爆散し、大軍勢の進軍を食い止めることに成功した。シャウザもその剣を受け止めて再び投げ返し、ノールとシャウザの連携により、ゴーレムの数は次第に減少していった。
5. ゴーレムの強敵登場と戦略の調整
• 砂から新たに巨大なゴーレムが出現し、これまでの戦闘よりも難易度が上がった。ノールはさらに力を込めて剣を投げ、ゴーレムたちを次々と粉砕した。シャウザもまた、ゴーレムの大群の中に飛び込み、その場で手際よく戦った。
6. ゴーレムの大群壊滅と戦闘終了
• 最終的に、ノールとシャウザの連携が功を奏し、すべてのゴーレムが破壊された。砂漠にはゴーレムの残骸が散らばり、襲撃は無事に鎮圧された。
159 中央講堂にて
1. ゴーレム襲来の不安
• 館長命令により『時忘れの都』の従業員たちが中央講堂に集められた。彼らは巨大な『物見の鏡』に映し出された砂漠の向こうのゴーレムの大群に困惑し、状況を理解できずにいた。また、館外の住民たちまで講堂に避難させられ、不安の色が一層濃くなった。
2. ノール新会長の異様な戦い
• 鏡の映像に現れたノール新会長が、黒い棒のような武器を用いてゴーレムを次々に粉砕する姿が映し出された。その爆音と震動は館内にも伝わり、従業員たちは自分たちの目の前で起きている現実を理解できず、ただ驚愕していた。何が起きているか判別できない中、ゴーレムの四肢が次々と宙に舞い、あまりにも圧倒的な戦いぶりに目を奪われた。
3. ノールの「約束」を思い出す従業員たち
• 戦いの様子を目にするうち、従業員たちはノールが自らの身を危険に晒し、彼らを守ろうとしていることに気がついた。先ほど「自分が会長でいる間、従業員を誰一人、危険に晒さない」と約束した言葉が現実となっていたのを見て、彼の他の約束も信じられるのではないかと考え始めた。
4. 従業員の意識の変化と希望の芽生え
• かつて権力者たちから理不尽な仕打ちを受け続け、信頼を捨ててきた従業員たちにとって、この戦いは一種の希望をもたらした。『サレンツァ家』の象徴であるゴーレムが次々に破壊される姿を見て、変化の兆しを感じる者が増えた。
5. ノールの勝利と帰還
• 砂嵐が晴れると、砂漠には破壊されたゴーレムの残骸が広がり、立っているのはノールと片腕の獣人シャウザだけであった。彼らが無事に戻ってくる姿を見て、従業員たちは整然と列をなして新たな主人の帰還を静かに待ち、館内には安堵と敬意の空気が漂っていた。
160 滅びの足音
1. 首都サレンツァと兄弟の祝杯
• 『首都サレンツァ』は一族の支配下にあり、国内の富が集約される街である。その都の中央にそびえ立つ巨大な純白の屋敷の一室では、サレンツァ家の次男アリと三男ニードが盃を交わし、長男ラシードの失脚を喜んでいた。彼らはラシードが「裁定遊戯」に敗北して莫大な借金を負い、『時忘れの都』の経営権を失ったことに嘲笑し、兄弟の絆と共に家族の財産に安堵する言葉を交わしていた。
2. 母の登場と兄弟への戒め
• 二人の会話が盛り上がる中、彼らの母が登場し、息子たちをたしなめる。母は一見厳しい態度を取りながらも、彼らがラシードを討つために『始原』のゴーレムを送り出したことを称賛した。母はサレンツァ家の栄光を守るため、ラシードの排除を肯定し、彼らに更なる決断力を持つことの重要性を説いた。
3. 使用人への冷酷な仕打ち
• 会話の中で緊急の報告に駆けつけた臣下がアリに酷く叱責され、暴力を受ける場面が続く。アリは臣下の無礼な行動に苛立ち、彼の報告に対し更なる厳しい罰を与えようとするが、結果としてその臣下は『時忘れの都』に送られたゴーレム兵の全滅という衝撃的な報告を伝えることになる。この報告は、兄弟にとって想定外の事態であった。
4. 全滅の報告に動揺する兄弟と母
• ゴーレムが全滅したことに驚愕した兄弟と母は、『物見の鏡』に映し出される映像に目を見張る。彼らが期待していたラシードとその仲間たちが惨敗する光景はなく、逆にゴーレムが次々に破壊され、砂嵐の中に消えていく異様な光景が映し出される。その後、男が鏡を通して彼らを見据えたように感じた親子は、その視線に恐怖を覚えた。
5. 絶望と恐怖の結末
• 最後に映し出されたのは、全てのゴーレムが破壊された後の砂漠と男の姿だけであった。その男が自分たちに向かって石を投げつける場面に親子は身を引き、恐怖に震えた。母は怒り狂って『物見の鏡』を破壊し、豪奢な部屋の中で物を投げつけ、取り乱し続けた。兄弟はその光景に立ちすくみ、自分たちがこれから破滅の危機にさらされることを悟った。
161 首都サレンツァへ
1. リーンとの再会と状況報告
• 戦闘を終えたノールとシャウザが街の外れまで戻ると、リーンが出迎えた。彼女はノールの無事を確認し、戦闘の様子について称賛を述べた。イネスも現れ、シャウザに以前の言葉について謝罪し、二人は警備に関する情報を交換した。ノールは街へ戻る途中、魔物たちがごろごろと寝転んでいる様子を目撃し、ロロが闘技場の魔物たちを連れ出していたことを知る。
2. ロロと魔物たちの解放
• ロロは魔物たちがゴーレムの足音で怯えていたため、外に連れ出したことを説明。彼は魔物を指輪に収納する方法をノールに見せ、魔物たちを自在に出し入れできる技を披露した。ノールはこの便利な道具に驚きつつも、ロロの頼みで『時忘れの都』から何匹かの魔物を連れ出す許可を与えた。
3. シレーヌとシャウザへの感謝
• シレーヌはノールとシャウザの無事を確認し、ノールへの感謝とシャウザへの礼を述べた。シャウザは冷静に応じ、他人のためではなく自分の役目を果たしたとだけ答え、立ち去った。ノールはラシードと合流し、彼からも怪我の有無を確認された後、首都への出発を促された。
4. 中央講堂での報告
• ノールが中央講堂に到着すると、整列した従業員たちが彼の帰還を待っていた。ノールは従業員や住民にゴーレムの脅威が去ったことを告げ、子供たちも安心させる。さらに、自身が無事であることを伝え、食事を楽しむようにと付け加えた。従業員たちは彼の冗談に小さく笑い、緊張が和らいだ。
5. シンへの特別な指示と準備
• ノールはメリッサに、ある革袋をシンに渡すよう依頼し、その内容を伝達するよう指示した。これによりシンがある村に届け物をすることとなる。ノールはメリッサに館内の管理を任せ、従業員たちに別れを告げて講堂を後にした。
6. クロンへの剣の預けと出発準備
• クロンに『黒い剣』を預けたノールは、クロンの誠実な対応に感謝した。クロンは次の出発まで剣を預かり、その間、館内の警備を引き受けると誓った。ノールは準備を整え、リーンとラシードと共に首都サレンツァへと向かった。
162 黒いローブの男
1. ザイードの苛立ちとサレンツァ家の危機
• サレンツァ家当主であるザイードは、息子たちの失態に苛立ちを隠せなかった。息子たちが一万二千体の『始源』ゴーレムを浪費し、全滅させたことは、サレンツァ家が長年築き上げてきた権力の象徴に対する重大な打撃であった。ザイードは「始源」ゴーレムがただの兵器ではなく、サレンツァ家が富と権力を築く礎であることを再確認し、失われた資源に対する危機感を募らせた。
2. クレイス王国と未知の男への不安
• ザイードは、息子の部下が撮影した映像に映る『時忘れの都』の新経営者が、ゴーレムを破壊した張本人であることを知る。その男は、かつてザイードが手を焼き首都から遠ざけたラシードを打倒し、さらには『始源』ゴーレムさえも制圧する力を持っていた。ザイードはこの未知の男の強さとその背景がわからないことに不安を覚え、サレンツァ家が築いてきた秩序が崩壊する危機を感じた。
3. ルードの登場とザイードの怒り
• ザイードは部下のルードを呼び出し、クレイス王国の勢力を国内に引き入れた失態について責任を問いただした。ルードは「始源」ゴーレムが破壊された件について平然と認める一方で、ザイードに対して冷静に返答した。ザイードはルードの冷静さに苛立ちを隠せず、怒りを露わにしたが、ルードは怯むことなくその場を収めた。
4. ルードの圧倒的な力とザイードへの警告
• 突然、ルードはザイードに対し容赦ない力を見せつけた。ザイードの頭を強引に鷲摑みにして痛めつけ、彼が忘れていた「契約」の存在を思い出させた。ルードはサレンツァ家との契約が破られた場合、彼らの滅亡が免れないことを冷酷に告げ、ザイードに対し「契約の重み」を再認識させた。
5. ザイードへの記憶操作と「忘却の巨人」
• ルードはザイードの記憶を消し去り、再度冷静に会話を進めた。ザイードは自分が「忘却の巨人」という強力なゴーレムを使用する準備をする必要があることを理解し、そのために必要な「鍵」を手に入れる計画を立てることを決意した。ルードは巨人を操作するための準備を進める一方で、ザイードに対して自身の忠告を残した。
6. ザドゥとの協力関係と「黒い剣」の回収依頼
• ルードは廊下で奇妙な出で立ちの男、ザドゥに「黒い剣」を回収する依頼を行った。ザドゥは、ルードの依頼を快諾し、割増料金で依頼を受け入れることにした。
163 砂漠の嵐
1. 馬車での同行と道中の様子
• 砂漠の澄み切った空の下、ノールたちはラシードとシャウザを加えた一行で馬車を進めていた。普段は自らのゴーレムで移動するというラシードたちは、馬車での同行を選択した。狭い馬車内では、シレーヌやシャウザが落ち着かない様子を見せていたが、旅の空気は和やかであり、ラシードが馬車内での異国文化の体験を楽しんでいた。
2. ゴーレムに関する会話と興味
• 道中、ノールはラシードから移動用ゴーレムの話を聞き、発掘された迷宮産ゴーレムと人造ゴーレムの違いを学んだ。ノールは特に人造ゴーレムの実用性に興味を持ち、自分の村での農作業に役立つようなゴーレムの製作を思い描き、次の首都での訪問に期待を抱いた。
3. 異変の発見と砂嵐の接近
• シレーヌとシャウザが遠方で砂嵐の異変を察知し、一行は警戒を強める。シレーヌの鋭い視力により、砂嵐が異様な動きをしていることが判明し、皆は馬車を止めて砂嵐の進行方向を見守った。砂嵐はただの自然現象ではなく、真横に広がり一行を取り囲むように移動していた。
4. 不審な男との再会
• ノールは、砂嵐の中に現れた男に気づいた。その男は顔に黒い包帯を巻き、半裸で不敵な笑みを浮かべていた。ラシードとノールはこの男を「死人」ザドゥとして認識しており、彼が危険な存在であることを感じ取った。ザドゥは、ノールの持つ『黒い剣』を狙い、対話ではなく武力で奪い取るつもりで接触を図ってきた。
5. ザドゥとの激闘と攻防
• ノールはザドゥの猛攻を迎え撃ち、剣を振るって彼の攻撃を防いだ。ザドゥは何度もノールに迫り、剣を奪おうと試みたが、ノールの『黒い剣』の防御力に阻まれ、短剣が次々に壊れていった。幾度となく姿を消しては背後から襲いかかるザドゥに対し、ノールは冷静に応戦したが、ザドゥはまったく怯まず笑みを浮かべ続けた。
6. 砂嵐の中の正体不明な脅威
• 戦いの最中、ザドゥは「回りくどいやりとりをやめる」と告げ、視線を遠くの砂嵐に向けた。そこには、銀色にきらめく鋭い何かが大量に交じっており、一行に迫っていた。
164 シレーヌの弓 2
不穏な嵐の正体
• ノールと仲間たちは、奇妙な砂嵐の中に無数の銀色の刃が含まれていることに気づいた。これは、ザドゥという男の仕業であり、リーンやロロたちにとって重大な脅威となる可能性があった。ノールはザドゥに『黒い剣』を引き渡して皆を守ることを一瞬考えたが、シレーヌが「撃ち落とせばよい」と提案し、戦闘の準備を整えた。
シレーヌの驚異的な射撃
• シレーヌは弓矢を手に取り、嵐の中の銀の刃を次々と撃ち落としていった。最初は一本の矢で試したが、やがて十本、百本と放ち、銀の刃を圧倒する。彼女の弓技は精確で、風の流れを読み取りながら、全ての刃を嵐の外へ弾き出す技術にノールたちは驚嘆した。シレーヌの矢によって砂漠には銀の刃が散らばり、嵐が徐々に収束していった。
ザドゥの困惑と撤退
• ザドゥはシレーヌの技に驚き、やがて自分の攻撃が通じないことに気づく。彼はその場で「もう帰る」と告げ、依頼の再見積もりを検討すると皮肉交じりに話した。ノールは「他の職に就いたらどうか」と提案するが、ザドゥはそれを聞き流し、興味深そうにノールを観察した。彼は赤黒い刃を手にし、最後の一撃を仕掛けるも、ノールによって打ち砕かれ、結果的に撤退を決意した。
最後の脅威と去り際の宣告
• ザドゥは、最後に赤黒い刃でノールに一撃を試みたが、見事に防がれる。ノールの成長に驚き、楽しむように笑ったザドゥは、「また後で」と言い残し、煙のように姿を消した。その場に残されたノールたちは、ザドゥの不気味な再来の可能性を感じながら、静かに広がる銀の刃が散らばる砂漠を見つめていた。
【とある使用人と新たな主人】
ラシードと新人使用人メリッサの出会い
• 少年ラシードは、自ら屋敷の扉を開け、新人の使用人メリッサを迎え入れた。メリッサが護身用と称して隠し持っていたナイフを、ラシードは流れるような動作で奪い取り、彼女を壁に押し付けた。護衛用との説明に一応納得したラシードは、ナイフを返しつつ屋敷内の案内を続けた。
メリッサの雇い主への疑念
• ラシードは、メリッサの真の雇い主が誰であるかを問いかけた。メリッサは表情を変えず答えを避けるも、ラシードは彼女の無表情を肯定と捉え、彼女が何者かに騙されて送り込まれた可能性を指摘する。
紅茶を淹れるメリッサの緊張
• ラシードの指示でメリッサは紅茶を淹れ、テーブルに運んだが、その手が震えていることを見抜かれる。ラシードは彼女が人を殺すのは初めてかと笑い、彼女の甘さと無条件の優しさを批判した。メリッサは言葉に詰まりつつも、平静を装っていた。
ラシードの提案
• ラシードは、命を狙われたことを気にせず、彼女を使用人として雇う意向を示した。予想外の提案に驚くメリッサに対し、ラシードは金銭を提示し、彼女が敵対者の手を借りる一方で自身の側に留まることも容認した。
メリッサの過去を見抜くラシード
• ラシードは、メリッサの所作や持つ短刀から彼女の出身地や過去を推理し、彼女が貴族階級から奴隷にまで落ちぶれた可能性を示唆する。ラシードは彼女の反応を面白がり、冗談混じりに挑発するが、メリッサは冷ややかな態度で反応した。
雇用契約の成立
• ラシードは、最後に選択肢として提示した金銭と条件を改めて示し、メリッサはためらいながらもそれを受け入れる旨を表明した。ラシードは彼女に「正直すぎる」と笑い、三枚の白金貨を彼女のポケットに差し入れた。
毒の指摘と新たな関係の始まり
• 最後に、ラシードはメリッサが紅茶に仕込んだ毒に気づいていたことを明かし、次回はより慎重に行うようアドバイスをした。震える手で紅茶を注ぐメリッサを楽しげに見守りながら、ラシードは彼女に紅茶を淹れ直すよう指示した。
【シンの帰郷】
『時忘れの都』からの届け物の依頼
• 元剣闘士シンは、館長メリッサから呼び出され、「ノール様」から預かったという革袋を北方の獣人集落まで届けるよう頼まれた。シンは袋の中身が謎めいた石のような物であることに疑問を抱くも、ノールに対する恩義から引き受けた。袋には目的地までの難解な地図も同封されており、シンはこれが自身の故郷であることに気づいた。
慰労金の受け取りと感謝の言葉
• メリッサはシンに対し、彼が先の「特別試合」に出場したことへの慰労金を渡し、彼の安全を案じた。シンは彼女の心配に感謝を示し、自由となった今の生活への喜びを語った。その後、シンはメリッサからの温かい言葉を受け取り、集落に向けて出発した。
帰郷と集落の変化
• シンが久しぶりに故郷に戻ると、かつての小さな集落が大きく変貌を遂げていた。集落には城塞のような壁が築かれ、警備が強化されている様子であった。そこで旧知の青年カイルと再会し、二人は積もる話を交わした。シンは集落の発展と変化に驚きを隠せず、長老との再会を心待ちにした。
奇跡のような発展と恩人の存在
• シンは集落に入ると、村の内部が以前よりも整備され、住民たちも活気に溢れていることに気づいた。カイルによると、隣国クレイス王国からの来客が集落を支援し、砂漠に作物が育つ畑や、清らかな水が流れる水路が新たに整備されたとのことであった。これらの奇跡的な変化をもたらした来客に、シンは感謝の念を抱いた。
守りの強化と襲撃者への対応
• 突如、集落に警笛が鳴り響き、シンは状況を確認する。集落は襲撃者に対して矢と魔導罠で応戦し、非殺傷性の罠によって襲撃者を無力化する体制が整っていた。捕縛された襲撃者たちは、村で食事を与えられ、正気に戻った後で話し合いが行われることとなり、集落の平和と豊かさを守るための柔軟な対応が取られていた。
ノールからの贈り物と驚愕の手紙
• シンが持参した革袋の中身は、最高価値を持つ「王金貨」であることが判明した。その上、ノールからの手紙には「時忘れの都」のオーナーになったことや、集落が今後百年間無税であることが書かれていた。この知らせに、シンや長老、カイルは驚愕し、集落の発展に大きな希望を抱いた。
百年無税の集落としての未来
• カイルと長老は、無税であることが集落の領域全体に及ぶことを確認し、今後の村の拡大と発展を視野に入れた計画を立てる必要性を感じた。そして、長老はこの奇跡的な出来事を獣人の同胞全てに知らせ、集落の未来と発展について話し合うため、近隣の集落に使者を出すことを決意した。
特別書き下ろし 副団長クラスの【大感謝祭】
『副団長たちの食事会』
レイの感謝と新たな体験
• 王都の街中で【隠密兵団】副団長のレイは、【魔術師兵団】副団長メリジェーヌと【僧侶兵団】副団長マリーベールに丁寧にお礼を述べた。レイにとって、人前に姿を見せ普通に話せるのは初めてのことであり、メリジェーヌが作成した『魔導具』のおかげで彼女の姿が見えることに深い感謝を抱いていた。
ブレスレットと感謝の言葉
• レイ、メリジェーヌ、マリーベールの3人は、姿を見せるブレスレットを身につけていた。レイの姿が見えることに、メリジェーヌとマリーベールもその美しい容姿に驚き、称賛した。普段は「幽霊のようだ」と怖がられていたレイにとって、彼女たちの優しい言葉は新鮮であり、特別な体験であった。
マリーベールの提案と食事会の開始
• マリーベールの提案で、3人はレストランに入り、ケーキの食べ放題に臨むこととなった。意気込んで次々と注文をするマリーベールの姿に、メリジェーヌは苦笑しつつも、レイと共に席に着いた。
レイの注文と存在感の問題
• 注文の際、レイは店員に見えていなかったため、メリジェーヌが代わりに注文をして、彼女の席にケーキを運ばせた。レイは生まれつきの【恩寵】により存在が気づかれにくく、普段はこのような店には入れないため、今回は特別な機会であった。
レイの過去と現在の職務
• レイは幼い頃から誰にも気づかれず、両親も彼女の存在を知覚するのが難しかったために「幽霊屋敷」とまで呼ばれた家を出た過去を語った。生活に苦労していた彼女を唯一見出し雇ってくれたのが、現在の上司であるカルー団長であった。レイはその幸運に感謝し、隠密兵団で働く道を選んだ。
レイの謙虚な喜び
• レイはお二人と一緒に普通の場所で会話し、ケーキを楽しむという何気ない日常の瞬間に感激し、過ぎた喜びを感じることを控えめに述べた。そんな彼女の純粋さに、メリジェーヌも「性格美人」として感心し、レイが生きる喜びに満ちた時間を大切にする様子に心を打たれた。
食事会の締めくくり
• マリーベールは勢いよくケーキを食べ続け、メリジェーヌは彼女の食欲に驚きながらも会話に耳を傾けた。一方で、レイも静かにフォークを手に取り、自分の前に置かれたケーキに向き合い、丁寧に食事を楽しんでいた。
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