どんな本？
物語の概要
本作は、悪役貴族として破滅の未来を予知した主人公が、その運命を回避するために奮闘する異世界ファンタジーである。前作でステリア領での目的を達成したローファスは、破滅の元凶である「第二の魔王」との対面イベントに挑む。仲間になる誘いを拒絶するも、逆に特別視されることに。さらに、ライトレス家の「初代の墳墓」に侵入した空賊の新ヒロインが深層に迷い込み、絶体絶命の窮地に陥るなど、物語の歯車が狂い始める。 
主要キャラクター
• ローファス・レイ・ライトレス：予知夢を頼りに破滅回避に勤しむ悪役貴族。本作の主人公であり、物語の中心人物。 
• 第二の魔王：ローファスの破滅の元凶とされる存在。ローファスに特別な関心を示す。 
• 新ヒロイン（空賊）：ライトレス家の「初代の墳墓」に侵入し、物語に新たな展開をもたらすキャラクター。 
物語の特徴
本作は、悪役貴族である主人公が予知夢を基に破滅の未来を回避しようとする姿を描く。物語は、予知夢に基づく行動が新たな展開を生み出し、予測不能なストーリーが展開される点が魅力である。また、主人公の行動が周囲のキャラクターや世界にどのような影響を与えるかが丁寧に描かれており、読者を引き込む要素となっている。
出版情報
• 出版社：ホビージャパン（HJ文庫）
• 発売日：2024年8月30日
• ISBN：978-4798636139
• 価格：770円（税込）
読んだ本のタイトル
リピート・ヴァイス 2~悪役貴族は死にたくないので四天王になるのをやめました~
著者:黒川陽継 氏
イラスト:釧路くき 氏
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あらすじ・内容
予知夢を頼りに、己の破滅回避に勤しむローファス。ステリア領での目的を達成した彼は、続けて破滅の元凶である【第二の魔王】との対面イベントに挑む！
仲間になる誘いを当然ローファスは拒絶するが――
「確信したよ。やはり君の存在は必須だ」
なぜか逆に特別視され、一目置かれることに!? 更には、ライトレス家の《初代の墳墓》に侵入した空賊の新ヒロインが深層に迷い込み、勝手に絶体絶命の窮地に陥っていて――
《物語》の歯車がどんどん狂いだす！ 悪役貴族×無双英雄譚！
感想
『リピート・ヴァイス2』は、予知夢を頼りに破滅の未来を回避しようと奮闘するローファスの物語である。
本作では、彼が新たな局面に挑みながら、運命の改変を試みる様子が描かれている。
破滅回避への挑戦と【第二の魔王】との対面
ローファスは、破滅の元凶である【第二の魔王】レイモンドとの対面イベントに挑んだ。
傲慢で自信家のレイモンドの誘いを断り、毅然とした態度を見せるローファスの姿が印象的であった。
一方で、レイモンドが彼を特別視する場面には、伏線を感じさせた。
この対決がどのような影響を及ぼすのか、興味を引く展開であった。
新キャラクターの登場と物語の広がり
本作では、新たなキャラクターが続々と登場した。
四天王候補であるヴァルムはその純粋さから読者の心を掴む存在であり、ライトレス家の墳墓に迷い込んだ空賊ヒロインのリルカは、新たな物語の軸を作り上げた。
リルカを窮地から救い出すローファスの姿には、冷徹な中にも垣間見える人間味が描かれており、物語を一層深める要素となっている。
運命の歯車の狂いと緊張感
ローファスの行動により、物語の運命が大きく変化し始めている点も注目である。
本来の流れではあり得なかったイベントやキャラクターとの出会いが続き、運命の歯車が狂っていく緊張感が描かれている。
特に、予知夢で見た未来を覆そうとする彼の努力が、逆にどのような影響をもたらすのかという不安が漂う展開であった。
ヒロインたちとの関係とローファスの成長
ヒロインたちとの交流も見どころの一つである。
フォルの積極的な行動にタジタジになるローファスの姿や、ファラティアナの親友であるノルンを救い出す場面など、彼の成長を感じさせる描写が随所に見られた。
ローファスの行動がヒロインたちの心に影響を与え、物語をより豊かにしている。
総評
『リピート・ヴァイス2』は、前巻を超えるスケールでローファスの破滅回避への挑戦を描き、緊張感と期待感を生み出す一冊であった。
新キャラクターの登場や運命改変の描写が物語をさらに広げており、続巻への期待が膨らむ内容となっている。
飽きさせないストーリー展開とローファスの成長を通じて、今後の展開をますます楽しみにさせてくれる作品である。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
備忘録
01 北方ステリア
ステリア領の概要と到着
ステリア領は帝国との国境に位置し、寒冷な地形と度重なる戦闘の影響で常に苦境にあった。領主は戦功を誇るステリア辺境伯で、領地には精強な兵士が揃っていた。ローファスとユスリカは転移結晶を用いてこの地に到着したが、着いた先は奴隷取引に関与する屋敷であった。
奴隷屋敷での邂逅と奴隷の救出
到着早々、ローファスたちは屋敷の警備兵と対峙した。ユスリカが冷静に制圧を行い、屋敷の主である小太りの男を拘束する。部屋には暴行を受け、身体的にも精神的にも傷つけられた少女ノルンが居た。ユスリカの高水準の治癒魔法によりノルンは治療を受け、救出されることとなった。
帰還手段の模索と飛竜の探索
ローファスはライトレス領への帰還手段を模索し、氷雪山脈で飛竜を探すことを決意した。山脈を飛び回るも、飛竜は臆病で近づくと逃げ去ってしまう。苛立ちながら探索を続ける中、傷ついた飛竜の死体を発見する。影の使い魔として蘇らせようとしたが、飛竜は完全には支配されず、暴走を始めた。
竜騎士ヴァルムとの対峙
その場に現れたのは竜騎士ヴァルムであった。ローファスの記憶に刻まれた人物で、物語上の四天王の一人であった。飛竜の暴走を止めようとするヴァルムと、彼に対する複雑な感情を抱えるローファスの間で、激しい戦闘が勃発した。
ローファスとヴァルムの決闘
ローファスは自身の影の使い魔や暗黒魔法を駆使してヴァルムに挑むも、ヴァルムの圧倒的な戦闘技術と雷魔法に苦戦を強いられた。飛竜とヴァルムの連携は完璧で、ローファスは魔力の消耗にも悩まされた。激闘の末、ローファスは飛竜を切り裂き、ヴァルムを地上へと堕とした。
氷雪地帯での落下
山脈の麓の雪原にローファスとヴァルムは落下したが、雪と魔法障壁、受け身によって双方ほとんど無傷であった。飛竜もローファスの魔力で再生した。ローファスは高品質なポーションをヴァルムに投げ渡し、これを無償で提供した。互いに攻撃に殺意がなかったことを認識し、言葉を交わす中で信頼感が芽生えた。
ヴァルムの問いとローファスの対応
ヴァルムはローファスに、自分の名前や飛竜フリューゲルの蘇生理由など多くの質問をぶつけた。ローファスは答えを濁し、突発的な行動を反省しつつ、説明を次の機会にすると約束した。その後、ローファスは自身の目的を伝え、奴隷購入者の情報をヴァルムに託すと共に、証拠品としてライトレス家の紋章入りの小物を渡した。
飛竜の使用交渉とヴァルムの懇願
ローファスはライトレス領への帰還手段として飛竜を借り受けようとしたが、飛竜の生命維持が魔法による支配に依存していると明かした。ヴァルムは、飛竜フリューゲルが自らを庇い傷を負った過去を語り、魔法を解かないよう土下座して懇願した。ローファスは彼の強い思いを受け入れ、魔法を維持することを約束した。
帰還準備とヴァルムの感謝
飛竜を借り受けたローファスは、奴隷商人に関する情報提供がヴァルムの父の捜査を助けることになると聞き、事態を任せることにした。ヴァルムもローファスの協力に感謝し、二人は別れた。
カルロスの予測とローファスの帰還
カルロスはローファスが予定通り早朝に帰還するだろうと確信し、ステリア領方面を注視していた。果たしてローファスは飛竜に乗り、ユスリカとノルンを連れてローグベルト近郊に到着した。飛竜が去った後、ローファスとカルロスは短い言葉を交わし、カルロスの予想通りの展開に驚きと安堵を感じた。
ノルンの意志とカルロスの提案
ノルンはローグベルトに帰りたいという強い意志を示した。ローファスはその願いを尊重し、彼女を奴隷ではなく一人の人間として扱うべきだと主張した。一方、カルロスは彼女の精神的回復を優先し、教会への一時的な保護を提案したが、ローファスの決断を受け入れた。
ローファスの心境と次の行動
ローファスはフォルへの訪問を拒否し、用事が済んだ以上、二度とここに来ないと宣言した。カルロスの問いにも明確な理由を示さず、馬車へ向かった。その姿にユスリカは困惑し、カルロスもローファスの変化に複雑な思いを抱いた。
ノルンの送還とカルロスの役割
カルロスはユスリカからノルンの護送を引き受け、丁寧な態度で彼女を安心させながらローグベルトへの案内を始めた。一方でユスリカにはローファスの護衛を任せ、彼女を促して送り出した。
02 精霊憑きのファラティアナ
ノルンの帰還とローグベルトでの再会
ノルンは筋力が衰えた状態で岩肌の露出した山道を下るのに苦労していたが、カルロスが最後には抱きかかえてローグベルトへ連れ戻した。ノルンは懐かしき磯の香りと住民の声に涙を浮かべ、帰還を喜んだ。住民たちの中にフォルの姿が現れ、彼女とノルンは感動的な再会を果たした。
ノルンの誘拐とフォルの過去
半年程前、ノルンはクリントンの私兵により攫われた。当時、フォルは漁船を守るために魔物駆除に従事していたが、誘拐が発生したことで怒り狂った。フォルはノルンの奪還を試みたが失敗し、村はその後も私兵による暴力に晒され、住民は逃げるように移住を余儀なくされた。フォルは自身の無力さを嘆き、ノルンとの再会を半ば諦めていた。
ローファスへの感謝とノルンの決意
ノルンはローファスに助けられたと語り、その厳しい叱責が希望を取り戻す契機となったと明かした。フォルもローファスに感謝を抱きながらも、彼が何も言わずに去ろうとしていることに憤りを覚えた。フォルはローファスに直接会って礼を言うべく、彼を追う決意を固めた。
ローファスとの対面とフォルの告白
フォルはユスリカに阻まれながらも、海の精霊ルーナマールの助けを得てローファスの乗る馬車に辿り着いた。ローファスに感謝と想いを伝え、涙ながらに告白したが、ローファスは冷静に突き放した。フォルは諦めることなく、貴族に成り上がる決意を語り、ローファスの気持ちを変えさせると宣言した。
別れとその後の余韻
フォルの感謝の言葉と決意に、ローファスもまた複雑な感情を抱きつつ、フォルを見送った。ローグベルトの住民たちに奴隷として保護された者たちの情報を伝えた後、ローファスは寂しげな様子で本都への帰路に就いた。
ローファスと父ルーデンスの対立
ライトレス本邸にて、ローファスは父ルーデンスと対面した。ルーデンスはローファスの行動を咎め、特に辺境での禁忌魔法の使用や多額の物品調達について厳しく追及した。これに対しローファスは反発しつつ、辺境の汚職や住民の苦しみについて指摘した。父子間の意見は平行線を辿り、ローファスは扉を閉じてその場を後にした。ルーデンスは独り残り、息子の変化に驚きを見せた。
別邸での軽妙なやり取り
ライトレス家別邸にて、ローファスはカルロスと会話を交わした。カルロスは、ローファスがローグベルトで得た経験を成長と称したが、ローファスはそれを否定した。また、カルロスが記載した報告書には、フォルとの関係を煽る表現が含まれており、ローファスは激怒した。二人のやり取りは軽妙ながらも、ローファスは請求書や苦情処理の重圧に頭を抱えていた。
ローグベルトの日常とフォルの葛藤
ローグベルトの食堂では、フォルがローファスへの想いに悩み奇声を上げる姿が見られた。リリアとノルンはこれに冷静に対処しつつ、フォルの情緒不安定さを嘆いた。フォルはローファスとの年齢差や自身の行動を振り返りつつも、その想いを諦めきれずに葛藤していた。
ローファスの三ヶ月後の現状
ローファスは本都に戻り、辺境の問題や商業組合との交渉に忙殺されていた。ステリア領との交易を有利に進めるべく計画を練りつつも、ライトレス領全体の貧困問題解決には未だ道筋が立たず、疲弊していた。カルロスとのやり取りからも、問題の複雑さとローファスの心労が窺えた。
ガレオン公爵家のパーティへの出立
ガレオン公爵家のパーティへの参加を拒否しようと試みたローファスであったが、父ルーデンスの厳命により叶わなかった。馬車内での道中、ルーデンスとの沈黙は長く重苦しいものだったが、途中でフォルについての話題が出た。ルーデンスは干渉しないと語りつつも、ローファスは父の問いに不快感を露わにした。その後、親子らしい会話が試みられたものの、ローファスは本邸への帰還を拒否したまま休息に入った。
03 第二の魔王
竜王バハムートとレイモンドの宣言
月夜の下、蒼炎を纏った巨大な竜――竜王バハムートが光を放ち、まるで世界そのものを威圧するかの如く存在感を示していた。だがそのバハムートが、ある少年に服従する姿を見せた。少年――後に【第二の魔王】と呼ばれるレイモンド・ロワ・ノーデンス・ガレオンは、不敵な笑みを浮かべながらこう語った。「さあ、私と共に征こう。世界を統べる力が、我々にはある」
ガレオン公爵家の盛大なパーティ
ガレオン領本都にて開催された貴族たちが集う盛大なパーティに、ライトレス家も招かれていた。ローファスは父ルーデンスに付き従い、社交の挨拶をこなした。立食形式のパーティでは上流階級の華やかさが漂う中、ローファスはその空虚さを感じていた。フォルとの日々が脳裏をよぎり、それを振り払おうとした矢先、背後からカルロスに声を掛けられる。軽い会話の後、ローファスは一人バルコニーに向かった。
レイモンドとの初対面
バルコニーに現れたのは、純白のスーツに身を包んだ少年レイモンドであった。レイモンドはローファスを庭園へと誘い、そこで待つ二人――ディアマンテ伯爵家のオーガスとトリアンダフィリア伯爵家のアンネゲルトと引き合わせた。レイモンドは彼らに自らの能力を誇示し、圧倒的な魔力や身体能力を披露した。
レイモンドの理想と世界征服の提案
庭園での魔力放出や圧倒的な力のデモンストレーションを終えたレイモンドは、自身の過去と理想を語り始めた。王国と帝国での矛盾や理不尽さを訴え、世界を一つの価値観で統治する必要性を説いた。そして、自らの計画にローファスたちの力を求めた。
ローファスの冷静な否定
レイモンドの壮大な計画にアンネゲルトとオーガスは心を動かされ、その下に跪いたが、ローファスは冷静に否定した。「無理だな」と言い放ち、その理由として計画の現実性を疑問視した。レイモンドはさらに自らの力を証明しようと竜王バハムートを召喚したが、ローファスは冷静さを崩さず、古代魔法《命を刈り取る農夫の鎌》を発動。圧倒的な魔力でバハムートを一撃で葬った。
レイモンドの評価と再会の約束
バハムートを倒したローファスに、レイモンドは謝罪と感嘆の言葉を述べた。そして、自らの計画に必要不可欠な存在と認め、改めて協力を依頼するための再会を求めた。ローファスはこれを軽く受け流し、その場を後にした。
ライトレス領での新たな問題
パーティから帰還したローファスは父ルーデンスの書斎を訪れ、汽車の設置を嘆願した。父は費用や許可の問題を理由に慎重な姿勢を見せたが、話し合いは進んだ。その矢先、父の使い魔が異変を告げる。《初代の墳墓》への侵入者の存在が判明し、事態は緊迫の様相を呈した。
04 初代の墳墓
《初代の墳墓》の秘密と侵入者
ライトレス家に伝わる《初代の墳墓》は、初代当主の遺体が眠る極秘の墓所である。その存在を知るのは現当主、先代、嫡男のみであったが、侵入者が現れたとの報告を受け、ローファスが調査を命じられた。墳墓内には初代の影の使い魔が多数徘徊し、墓荒らしを排除していたが、今回の侵入者は物語に登場する空賊《緋の風》であった。
飛空艇《緋の風》の痕跡
墳墓の入り口付近で発見されたのは、不可視化されていた飛空艇であった。これは《緋の風》の所有物であり、彼らは未知の古代遺跡や財宝を狙うトレジャーハンターであるが、無断で侵入した行為は墓荒らしに等しかった。ローファスは《緋の風》の存在を確認し、彼らの行動がライトレス家や地域に及ぼす悪影響を憂慮した。
リルカ・スカイフィールドとの遭遇
墳墓内を探索中、ローファスは《緋の風》の一員であるリルカ・スカイフィールドに出会った。彼女は罠にかかり仲間と離れ、危険な四階層で命の危機に直面していた。影の使い魔に襲われるリルカを救出したローファスは、彼女の天然な態度に困惑しつつも、彼女を仲間の元へ送り届けることを決意した。
初代の影の使い魔との戦闘
四階層では、影の使い魔の一体がローファスに襲い掛かった。高度な魔力や霧化の能力を持つ使い魔であったが、ローファスは圧倒的な魔力と戦闘技術でこれを撃破した。リルカはその戦いぶりに驚愕しながらも、ローファスの強さに感謝の意を示した。
脱出への道のり
リルカを肩に担いだローファスは、墳墓の上層階を目指して進んだ。途中、初代の影の使い魔たちが次々と襲い掛かるが、ローファスは一撃で次々と切り伏せ、道を切り開いていった。リルカの軽口や驚きの声を聞き流しながら、彼は墳墓からの脱出を急いだ。
道を阻む新たな脅威
三階層へ通じる階段に辿り着いた瞬間、新たな使い魔が現れ階段を塞いだ。その存在は圧倒的な威圧感を放ち、ローファスとリルカの前に立ち塞がった。二人はさらなる試練を迎えることとなった。
木の根による階段封鎖と逃走
突如として石の床を突き破り、木の根が階段を塞いだ。これにより上層へ通じる唯一の道が遮断された。驚くローファスとリルカは状況を打開しようとしたが、後方からも木の根が迫り来ていた。ローファスは最大出力の暗黒鎌で木の根を切断しようと試みたが、魔法は途中で消散し効果を発揮しなかった。木の根は術式を分解する特性を持っていたため、ローファスは純粋物理攻撃か、さらに強力な魔法を検討し始めた。
《命を刈り取る農夫の鎌》の発動と木の根の再生
ローファスは《命を刈り取る農夫の鎌》を発動し、木の根を一掃することに成功した。しかし、木の根は再生能力が高く、完全な攻略には至らなかった。これ以上の消耗を避けるため、ローファスは木の根の本体を探し出して叩く方針を立て、魔力探知で巨大な魔力反応を発見した。
アルラウネの出現と圧倒的な力
木の根の本体は、アルラウネと呼ばれる女神像のような姿の使い魔であった。アルラウネは《初代の墳墓》の最下層に侍る特別な存在であり、術式の分解や障壁貫通といった高い魔法技術を持っていた。ローファスは果敢に攻撃を仕掛けたが、アルラウネの再生力と防御能力の前にすべて無効化された。
花粉の脅威とリルカの協力
アルラウネは木々を生い茂らせ、花粉で視界を覆った。リルカの風魔法によって花粉が吹き飛ばされ、ローファスはその隙をついてアルラウネに接近した。しかし、アルラウネは暗黒の濃霧を分解することでローファスの奇襲を無効化し、木の根でローファスの動きを封じた。
死の鎌と反撃の連撃
リルカの精密な風刃により、ローファスの拘束が解かれた。ローファスは《命を刈り取る農夫の鎌》を振るい、アルラウネを何度も切り裂いた。再生力を持つアルラウネに対し、ローファスは連続攻撃で再生速度を上回り、ついにはアルラウネの上半身を暗黒の斬撃で吹き飛ばした。
決着と威厳の保持
アルラウネは敗北し、その目に浮かぶのは敗者の表情であった。ローファスはその姿を見下ろし、さらなる反撃を許さない圧倒的な魔力で勝利を収めた。こうして、ローファスは自らの威厳を保ちつつ戦いを終えた。
影の使い魔の撤退と脱出の決意
ローファスは《暗黒領域》を発動し、影の中を移動して上層への階段を目指した。途中、木の根の追撃は無かったが、アルラウネが修復を終えた兆しを感じ取り急いで階段を突破した。影から解放されたリルカは動揺していたが、三階層に到着すると追撃の気配は無くなった。ローファスは初代への対抗姿勢が露見する事を危惧し、今後は慎重に動くことを決意した。
アルラウネの回復と最下層への帰還
アルラウネ――影の使い魔〝インヴィディア〟は失われた上半身を修復し、上層への階段が切り裂かれたことを察知した。命令を果たせなかったことに肩を落とし、三階層への追撃を行わず最下層へと撤退した。その際、インヴィディアはリルカの正体について思案を巡らせるも、命令を優先して地下に戻った。
リルカとの問答とライトレス家の血筋
三階層で一息ついたリルカは、アルラウネの正体や遺跡についてローファスに質問を繰り返した。ローファスは彼女を煩わしく思いながらも、自分がライトレス家の嫡男であることを明かし、遺跡の秘密を漏らさないよう警告した。リルカはそれを受け入れ、口外しないことを誓ったが、ローファスは完全には信じ切れなかった。
緋の風の戦闘と絶体絶命の状況
遺跡一階層では、《緋の風》のメンバーが黒い魔物たちとの死闘を続けていた。不死身の魔物に加え、出口を塞ぐ黒いヒュドラが現れ、絶望的な状況に陥っていた。彼らは閃光結晶を用いて魔物の動きを封じるも、ヒュドラには効果が無く、次第に追い詰められていった。
ローファスの登場と圧倒的な力
絶望的な状況の中、ローファスが暗黒魔法で黒い魔物たちを駆逐し、さらに巨大な触腕を用いてヒュドラを暗黒に沈めた。圧倒的な力を目の当たりにした《緋の風》のメンバーは呆然と立ち尽くしたが、リルカの呼び掛けで彼に従い出口へ向かった。
信念と冷徹な決意
ローファスは自らの過去を振り返り、失敗を繰り返さないことを心に誓った。どんな手段を使ってでも生き残るという彼の決意は揺るぎなく、その冷徹な姿は仲間たちに強烈な印象を残した。
05 緋の風
イフリートの由来と《緋の風》の絆
イフリートは、《緋の風》の飛空艇であり、サブリーダーのイズが所有していたものである。この飛空艇はイズの祖父が遺跡から発掘した古代遺物であり、その鮮烈な赤色から《緋の風》という名の空賊団が誕生した。リーダーのシギルは幼馴染で、他のメンバーも孤児として船で育ち、家族のような絆を形成していた。
ローファスへの土下座と《緋の風》の危機
遺跡の一件後、シギルはローファスの前で土下座し、無断侵入の非礼を詫びた。彼らはライトレス侯爵領の遺跡に無許可で入ったため、罰則が懸念された。《緋の風》の面々は恐怖と不安を抱えながらも、ローファスの圧倒的な力に圧倒され、抵抗を諦める他なかった。
イズの病と《初代の墳墓》探索の理由
サブリーダーのイズは特殊な病に侵されており、その治療薬が高価だったため、シギルたちは金策のため危険な遺跡探索に踏み切った。イズの症状は魔力に関連しており、魔素が身体に蓄積する病であったが、治療薬の効果や存在そのものに疑問が残った。
ローグベルトへの飛竜出現
ローファスに緊急連絡が入り、ローグベルトに飛竜が現れたことが伝えられた。討伐隊が編成されたが、住民の妨害により失敗。ローファスはその事態を確認するため、イフリートに搭乗し急行することとなった。
リルカとの交流と疑念の高まり
航行中、リルカはローファスに軽い調子で接し、食事を共にしながら交流を深めた。しかし、ローファスはリルカの態度や性格に違和感を覚え、彼女が物語の未来を知る人物ではないかと疑念を抱いた。直接問い詰めるが確証は得られず、リルカの誤解と照れによる奇妙なやり取りの末にその場を離れた。
リルカの勘違いとローファスへの詰問
リルカは、ローファスに押し倒されたことを口説かれたと勘違いし、怒りをぶつけていた。ローファスは無視を続けるが、リルカは追及を止めなかった。《緋の風》のメンバーたちは遠巻きにこのやり取りを見守り、ケイはリルカの感情が空回りしていると冗談交じりに語った。ホークは到着が近いことを告げ、全員に揺れへの備えを指示した。
ローグベルトでの停泊と飛竜との再会
イフリートはローグベルト近くの岩山上空に停泊し、不可視化された船からローファスは飛竜の姿を確認した。飛竜は弱々しく鳴き続け、まるで何かを訴えるようであった。ローファスは飛竜との再会を前に、シギルに対して特効薬が存在しない可能性を示唆し、警告を発した。シギルはその言葉に動揺しつつも、商人ギランに真偽を確かめる決意を固めた。
ローファスの降下と飛竜の異変
ローファスはイフリートを降り、飛竜の導きでステリア領へ向かう道中、飛竜が突然意識を失い、ローファスは極寒の地に放り出された。飛竜は無事であったが、原因不明の状態に陥り、ローファスはそのまま一人進むことを余儀なくされた。
謎の少女ユンネルとの遭遇
吹雪の中でローファスは白髪の少女ユンネルと遭遇した。彼女は飛竜を操ってローファスを呼び寄せたと告げ、ヴァルムを救うために協力を求めた。ユンネルは人間ではなく精霊に近い存在であり、彼女の言葉に警戒を抱きながらも、ローファスは人里への案内を受け入れた。
ヴァルムと紅蓮の剣聖エリックの対峙
同じ頃、ステリア領の牢獄ではヴァルムが鎖で拘束され、剣聖エリックと対峙していた。エリックはギランの悪事を黙認する理由を語り、経済を回すための必要悪とした。ヴァルムは父の解放を訴えたが、エリックは拒絶し、ヴァルムの抵抗を無力化した。
ローファスの決意と北方への旅
ローファスはユンネルの言葉を完全には信じていなかったが、ヴァルムの現状を知る必要があると判断し、彼女を追って雪山を進んだ。吹雪の中、未知の脅威と困難に向き合いながら、ローファスは自身の力で未来を切り開こうとしていた。
ギランの要塞化された屋敷
ギランの屋敷は、一等地に建てられた要塞同然の建物であった。広大なステリア領の経済を支配する彼は、以前受けた襲撃を機に防御を固め、護衛を増員した。この屋敷でギランは《緋の風》のリーダー、シギルを迎えた。
特効薬を巡る疑念
シギルはギランに特効薬の信憑性を尋ねたが、ギランは不快感を露わにし、取引不成立を宣言した。シギルは謝罪し、関係の修復を試みたが、ギランは謝罪だけでは信用を取り戻せないと主張し、無礼を許さなかった。
ギランの下卑た要求
ギランはシギルに対し、仲間の女性を差し出すよう要求した。侮辱的な提案にシギルは激昂し、剣を抜いてギランに斬りかかったが、ギランの護衛に阻まれた。戦闘の末、シギルはギランの屋敷に仕える謎の殺し屋「血染帽」によって制圧された。
血染帽の登場
血染帽と呼ばれる男は、不死身とも噂される伝説の殺し屋であった。その力は圧倒的で、シギルを簡単に制圧し、ギランの命令に従って彼を拘束した。ギランはシギルを辱め、仲間や飛空艇を奪う計画を明かした。
シギルの抵抗
ギランはシギルに服従を強要し、靴を舐めるよう命じたが、シギルは激しく抵抗した。シギルの行動はギランを激怒させ、彼はシギルを地下牢に監禁するよう命じた。ギランはさらに、仲間を殺害し、その遺体をシギルに見せることで屈服させようと画策した。
翌日の報道
翌朝、ステリア領本都では《緋の風》のリーダー、シギルがギランに捕らえられたというニュースが広まった。この報道は、ギランの権威を示す象徴的な出来事となった。
06 ｏｕｔｅｒ
アウターの観測と疑問
アウターは、自身を観測者と称し、この世界の変化を見守っていた。ローファスや空賊《緋の風》の動向が、本来の物語から逸脱していることに着目し、その要因を探ろうとしていた。特に《緋の風》が次々と遺跡やダンジョンを攻略している状況や、《初代の墳墓》で出会ったインヴィディアの存在に注目していた。ライトレス領の秘密、初代の使い魔が今も活動している理由、そしてリルカや他のヒロインたちとの関係性についても疑念を抱いていた。
ヴァルムと愛竜フリューゲルの絆
ステリア領の騎士見習いであるヴァルムは、愛竜フリューゲルを家族同然に扱い、その死を受け入れられず、毎晩墓参りを続けていた。フリューゲルは、《はぐれ機獣》との戦いでヴァルムを救うために致命傷を負い、最期を迎えていた。教会に治療を懇願したものの断られ、救えなかったことがヴァルムの心に深い傷を残していた。
レイモンドとの邂逅
フリューゲルの墓を訪れていたヴァルムの前に、謎の少年レイモンドが現れた。彼は魔物と意思を通わせる力を持ち、ヴァルムに「友になる」と告げた。この邂逅が、後に【竜駆り】ヴァルムと【第二の魔王】レイモンドの関係の始まりとなった。
フリューゲルの復活
レイモンドは《死の先導者》レーテーを召喚し、死霊魔法を用いてフリューゲルを復活させた。復活したフリューゲルは、かつての姿とは異なるアンデッドの屍竜であったが、ヴァルムはその事実を認めようとはしなかった。彼はフリューゲルが生き返った喜びに打ち震え、涙ながらにレイモンドに感謝した。
ヴァルムの忠誠
ヴァルムはフリューゲルを救った恩人としてレイモンドに忠誠を誓い、自身の槍として彼の力になることを誓約した。レイモンドもその誓いを受け入れ、ヴァルムに他の仲間たちを紹介すると告げた。ヴァルムはフリューゲルの変化を感じつつも、その事実を受け入れられず、疑うことを避けた。
偽りの再会
ヴァルムとレイモンドが手を取り合う中、屍竜となったフリューゲルは咆哮を上げた。その姿は偽りの生を受けた証であり、フリューゲルの本来の死を意味するものでもあった。しかし、ヴァルムはその真実に目を向けることを拒み、絆の幻影に縋り続けた。
『もしも目覚めたのが〝四天王のローファス〟だったら Ⅱ』
初代の墳墓での遭遇
ローファスは《初代の墳墓》第四層で、初代の使い魔であるアルラウネと対峙した。アルラウネは大部屋を覆う木々と根でローファスに敵意を向け、攻撃を開始した。ローファスはその攻撃が魔法障壁を無効化する仕組みに驚きながらも、冷静に反撃を試みた。
暗黒魔法による迎撃
ローファスは暗黒の濃霧を展開し、《光無き世界》を発動させてアルラウネを封じ込めようとした。しかし、アルラウネの木々が濃霧を分解し、大部屋全体に暗黒が広がるのを防いだ。ローファスは多数の使い魔を暗黒の中に隠し、多種多様な攻撃でアルラウネの防御を突破した。
アルラウネの変貌と《魔法分解》
アルラウネは追い詰められながらも異形の姿へと変貌した。巨大な樹木のような姿となり、その両翼から発する《魔法分解》でローファスの濃霧を完全に無力化した。ローファスは新たな攻撃手段を用意するが、形勢が逆転していく。
使い魔の反逆
アルラウネは《魔法掌握》を駆使し、ローファスの使い魔たちを支配下に置いた。使い魔は突如としてローファスに牙を剥き、一斉に襲い掛かった。ローファスは攻撃を防ぐも、使い魔たちの支配権を奪われたことに困惑した。
インヴィディアの宣告と敗北
異形となったアルラウネは、自らをインヴィディアと名乗り、ローファスをライトレス家の正統な後継者として認めないと宣告した。ローファスがその声に驚く間もなく、無数の木の根が彼を串刺しにし、致命傷を与えた。ローファスはインヴィディアの静かな声を耳にしながら、息絶えた。
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