どんな本?
「老後の安泰のため、目指せ20億円!」
両親と頼れる兄が突然事故で亡くなり、いきなり世間の荒波にひとり放り出された18歳の少女ミツハ。
途方に暮れていたところにたまたま謎の存在から世界間転移能力をゲットした彼女は‥‥?
タフな精神を持ちながら、ちょっと残念な思考の美少女が現代の知識とアイテムで我が道を行く、異世界マネー・メイキングストーリー!!
崖から落ちた時に死にたく無いという念が、謎の不思議高次元存在から力を一部を毟り取ったミツハ。
その力と同化して、ミツハは異世界を渡る能力を手に入れた。
さらに存在の説明で、部位欠損があっても治癒する能力も手に入れ出る事が発覚。
そんな彼女の目標は彼女ならではの商売で、日本円換算20億円。
金貨8万枚を稼ごうとする。
読んだ本のタイトル
読んだ本のタイトル
老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます 9
著者:FUNA 氏
イラスト:モトエ恵介 氏
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あらすじ・内容
老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます9
「ミツハ、準備の方は大丈夫?」
新大陸での商売に領地運営にと大活躍のミツハだが、
ベアトリスちゃんに聞かれるまで忘れていた!
15歳の社交界デビュー(ルビ:デビュタント・ボール)パーティを
盛大に行う約束をさせられていたことを……。
出店に電飾に、花火、コネと財力をフルに活かして
なんとか乗り切れた……のだが、それを見ていたサビーネちゃんは――!!
一方、ミツハによって撃退されしばらくはおとなしくしているはずの
アルダー帝国の動きがきな臭いらしい。
しかも狙われているのはゲゲゲ姫ことレミア王女のいる隣国で――。
同盟仲間を助けるため、史上最大の作戦が始まる!?
アニメに漫画に絶好調! のシリーズ最新第9巻!
感想
新大陸で商売や領地運営に奮闘していたミツハが、ベアトリスちゃんの社交界デビューを盛大に行うことになるところから始まる。
ベアトリスちゃんの問いかけにより、自身が約束していたデビュタント・ボールのことを思い出し、出店や電飾、花火などを駆使してその場を乗り切る。
しかし、そのパーティーを見ていた第三王女のサビーネちゃんにさらなるレベルの上がった要求を受けることになる。
一方で、以前ミツハによって撃退されたアルダー帝国の動きが再び活発化し、隣国のレミア王女がいる国が狙われる。
ミツハは同盟国の仲間を守るため、史上最大の作戦を立てる。
侵攻して来た帝国軍をミツハは、帝国の首脳部を狙撃し、帝国の侵略を阻止する。
その過程で、ミツハは帝国が弱体化して群雄割拠する戦争を望んでおらず、侵略を企む貴族、軍部の上役たちだけを標的にする。
また、作戦に参加した傭兵たちは、異世界の物品を少量持ち帰り、オークションで大きな利益を得る。
それを傭兵達が、今回の仕事で赤字にならなくて良かったと思いながらも、複雑な気持ちで見るミツハ、、
感想としては、ミツハの人柄や行動力が際立つ一方で、周囲の人々が彼女に依存している構図が見られ、読者としては複雑な感情を抱かざるを得ない。
まぁ、困った彼女を見るのも面白いのだけど、、
当たり前だと思ってた違うとツッコミを入れたくもなる。
社交界デビューを成功させるために奔走する姿、それに巻き込まれて頑張ってしまう花火師の親方の姿は面白いが、同時に領地経営の進展が見られない点や、似たような展開が続くことに対する物足りなさも感じている。
結論として、この巻はミツハの新たな試練はあったが、彼女の成長が描かれているとは思えなかった。
でも、彼女の決断や行動が、周囲の人々や国の運命を大きく変える力を持っていることが示された。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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備忘録
第八十三章
ミツハがベアトリスの15歳の誕生パーティー、デビュタント・ボールの準備について突然思い出され、慌てる様子が描かれている。ベアトリスはパーティーでの電飾行進、出店、そして花火などを期待しており、ミツハは以前約束したことを正確に覚えていたベアトリスに驚いている。ミツハは料理、出店の準備については比較的自信があるが、電飾行進や本格的な花火の準備については、高いコストと専門的な知識が必要であるため、どのように対処すべきか悩んでいる。特に花火に関しては、大規模なものを望むベアトリスの期待に応えるためには、プロフェッショナルな対応が必要であることに頭を抱えている。ミツハは、この大きなプロジェクトにどう取り組むべきか、非常に困惑している状態である。
日本の某市にある小さな花火製造・打ち上げ会社を訪れた若い女性(ミツハ)が、デビュタント・ボールのために花火の打ち上げを依頼する場面が描かれている。この会社は、従業員全員が特殊な専門技術を持ち、密接な信頼関係のもとで仕事を行っている。女性は300万円の予算で、どれくらいの花火を打ち上げられるか尋ねる。社長は、その予算で大きな花火を数発含めた打ち上げを提案し、夏の繁忙期が終わったこの時期であれば、さらにサービスできると応じる。女性は、観客が花火を初めて見るため、打ち上げ速度を遅くし、大きな花火をじっくり鑑賞できるように要望する。社長は、この責任重大な依頼に応えるため、予算内で最大限のサービスを提供することを約束し、細かな打ち合わせが始まる。しかし、イベントまでの期間が3週間しかないことを知り、社長は驚くが、それでも女性の要望に応えようとする。
若い女性(ミツハ)が、日本の花火製造・打ち上げ会社の工房主と共に、花火の現地確認に向かう。彼女は前日に契約を結び、高額の仕事を半金前払いで依頼していた。現地確認の後、工房主は正式な依頼書の作成と、花火打ち上げに必要な諸手続きのための個人情報の提出を求める。しかし、女性は自分の本当の身元を隠しており、「なんちゃって王女様」として名乗っていたため、正式な個人情報の提出に戸惑う。彼女は、自分の地球での身元「山野光波」と異世界の王女様としての身元を結びつけられないように注意しながら、この問題をどう解決するか考える必要がある。
若い女性が、花火製造・打ち上げ会社の社長と従業員を連れて、異世界へと転移する。彼女は呪文を唱え、彼らと共に地球から消え、異世界の王宮に現れる。この王宮が花火の打ち上げ場所として選ばれた。社長と従業員は、突然の転移と異世界の景色、そして兵士たちの姿に驚きながらも、状況を理解し、花火の打ち上げに対する意気込みを示す。異世界で花火を打ち上げるという特異な依頼に、彼らは興奮し、全力を尽くすことを誓う。
花火師とその従業員は、異世界の王宮での花火打ち上げの現地確認を行う。彼らは、花火打ち上げのための手続きや許可の問題に直面するが、花火師はさまざまな方法で問題を解決しようと考える。依頼主である若い女性は、追加で200万円の予算を要求され、それがプロジェクトにとってどう影響するか考える。さらに、彼女は装飾や出演者の準備のために、異世界の軍隊から車両と人材の支援を受ける。彼女は、イベントを成功させるために必要なすべての準備を進めていく。
ベアトリスちゃんのデビュタント・ボールがボーゼス伯爵家王都邸の中庭で開催された。パーティーは、彼女の誕生日から3日後に行われ、ベアトリスちゃん自身も少し緊張している様子であった。しかし、事前にしっかりと準備を進めていた。パーティーでは、プロジェクターによる映像投影やステージ上での寸劇が行われ、ベアトリスちゃんは、衣装を変えて「宮廷バニー」として登場し、会場を沸かせた。この衣装は露出を控えめにし、女性近衛騎士を思わせるスタイリッシュなデザインが特徴であり、彼女の魅力と価値を最大限にアピールすることに成功した。パーティーは大成功で、ベアトリスちゃんの勇姿が光る一日となった。
寸劇を終えたベアトリスちゃんは、成功への自信と安堵の表情を見せつつ、普段のドレスに着替えていた。この段階で、ベアトリスちゃんの緊張は大きく和らいでおり、パーティーの残りの部分に自信を持って臨む様子であった。サビーネちゃんが現れ、寸劇の内容を現実と混同しているかのように振る舞うものの、ミツハは時間がないことを理由に、ベアトリスちゃんを会場へと急がせた。料理と飲み物の準備は問題なく、マルセルさんを含む料理人たちが手伝ってくれることで、パーティーは滞りなく進む見込みであった。ミツハは、パーティー会場を巡りながら異常がないか監視することに集中することにし、サビーネちゃんも彼女についていくことを選んだ。
会場は多くのテーブルと料理、そして巡回するウエイター、ウエイトレスで賑わっている。LED照明が完全に暗くなるはずの中庭を明るく照らし、知っている人は軍部や王宮の関係者で、雑貨屋ミツハで販売されている高価なLED懐中電灯についての話題もある。ベアトリスちゃんのデビュタント・ボールでは、約束された電飾行進、花火大会、出店が特色として加えられている。木工技師クンツさんが率いる出店は、簡易的に設営されたもので、各出店でそれぞれ特訓を受けた使用人が一品ずつを提供している。食材は地元で賄い、出店は模擬店として料理を提供する形をとっている。また、食べ方が分からない人向けにサクラを用意し、周囲の人々を誘導している。
ベアトリスちゃんはパーティーの主役として、多くの男性に取り囲まれており、その中には年上の者もいるが、ベアトリスちゃんは既に自身の道を見つけている。ミツハはこの日、裏方として全力を尽くしており、ドレスではなく店員服を着用している。彼女は会場全体を巡り異常がないか確認しており、出店の食べ物が好評であること、そして次に予定されている電飾行進に向けて準備を進めている。彼女は超小型トランシーバーで合図を送り、「女神の祝福の山車」の通過を告げるマイクを取ると、来場者を門の方へと誘導している。
軽装甲機動車を先頭に、電飾で飾り付けられたトラック2台が続き、派手な音楽とともに七色の光が乱舞する電飾行進が展開された。この行進は傭兵ギルドで依頼した若手の女性たちによる女神や天使のコスプレ軍団と、若手男性傭兵たちによる着ぐるみ軍団で構成されている。食い残しとして大皿の料理を無料で提供するという条件で、経済的に苦しい傭兵たちが積極的に参加した。トラックの荷台からは、玩具の光線が観衆に向けて放たれ、光の模様を描き出しているが、安全のためお菓子の配布は行われなかった。電飾行進は好評で、特に子供たちは着ぐるみ軍団に大喜びで、このイベントはベアトリスちゃんとの約束の一環として実施された。
その後、超小型トランシーバーを使用して「アンリミテッド・ファイアー・ワークス」と連絡を取り、花火大会の開始が指示された。花火師は日本の花火の素晴らしさをこの世界の人々に示すため、準備を整えていた。見物できる場所への移動後、計画通りに花火大会が始まり、これでベアトリスちゃんとの約束が全て果たされた。花火大会の成功はプロの腕に委ねられ、見物人たちは飲食を楽しみながらその光景を堪能した。
最初に20号玉の大きな花火が打ち上げられ、その後は予算内で一発ずつ間隔をあけてじっくり楽しめる構成で花火が打ち上げられた。安全を考慮して全て電子制御による遠隔点火が用いられ、限られた予算内で精一杯のプログラムが組まれた。花火の設置作業は王宮の敷地内で行われ、従業員たちには守秘義務が徹底された。この世界の人々にとって初めての本格的な花火大会は、王都中の人々から熱狂的な反応を得て、多くの人々がその美しさに感動した。打ち上げ作業をしている従業員たちにもその反響が届き、仕事のやりがいを感じていた。
連続乱れ打ちと大きな花火でフィナーレを飾った後、撤収作業が始まり、従業員には食事が用意された。花火の終了後、客たちは感動を共有し、特にサビーネちゃんは、自身のデビュタント・ボールでの演出について心配を表明した。サビーネちゃんはミツハに対し、ベアトリスちゃんのパーティーよりも凄い演出を期待すると強く言い、ミツハはルーヘン殿下を巧みに話題転換に使って逃げようとしたが、ルーヘン殿下からも同様の期待をされる。パーティーは無事に終了し、余った料理で二次会が行われ、ボーゼス家の使用人やライナー子爵家の手伝い、電飾行進のキャストたちが参加した。意外にも第一王女、第二王女、王様、宰相様も参加しており、ミツハは彼らの参加に困惑した。
二次会終了後、ミツハは王宮へ向かい、花火関連の撤収作業に取り掛かった。花火師たちは作業を終え、草地で食事をしていた。ミツハが到着すると、熱く花火師としての誇りを語るシーンがあった。花火は王都中の人々に大歓声をもって迎えられ、その歴史的偉業に花火師たちは感動を共有した。翌日、ミツハはボーゼス伯爵家へ訪れ、LEDライトや発電機などの回収と事後打ち合わせを行う予定である。
ベアトリスちゃんのデビュタント・ボール後、ミツハはベアトリスちゃんから感謝を受ける一方で、伯爵様とイリス様からは異なる反応を受ける。伯爵様は、花火によって王都の民が女神の祝福を信じ込んだことや、ベアトリスへの多数の婚約申し込みに頭を悩ませている。一方で、イリス様はミツハを守ろうとする。さらに、サビーネちゃんとルーヘン君の将来のイベントに対するプレッシャーもミツハにかかる。ミツハは、自分が普段貴族のデビュタント・ボールに招待されない理由を伯爵様から聞かされ、自己の社会的地位の高さを再認識する。最終的に、イリス様からの擁護を受け、伯爵様はミツハに対する姿勢を和らげる。
ミツハはベアトリスちゃんのデビュタント・ボールの後、伯爵様、イリス様、ベアトリスちゃんと共に話し合い、ベアトリスちゃんへの多数の婚約申し込みや「聖女疑惑」について対応策を考える。伯爵様は婚約申し込みは断れば良いとし、聖女疑惑に関しては、神殿や上位貴族が関わってくる可能性を指摘する。ミツハは、王都の民が花火を女神の奇跡と信じ込んでいる状況をどう説明するか悩むが、最終的には説明せずスルーすることを提案し、これが受け入れられる。
さらに、ミツハはサビーネちゃんとルーヘン君の今後のイベントに向けて、空中演舞やドラゴンブレス、レーザーショーやプロジェクションマッピングなどのアイデアを提案するが、その実現可能性には疑問符がつく。
ボーゼス伯爵様はミツハに対しての支払いを確認し、金貨240枚(約2400万円相当)で決定する。伯爵様はこの金額に驚くが、ミツハはこれを妥当な価格と考えている。また、ミツハはこのイベントがベアトリスちゃんとボーゼス家にとって大きな利益をもたらすことを示唆する。
最後にミツハは、ボーゼス家の王都邸で使用したLEDライトや電線、発電機などの撤収準備を行うことになる。
サビーネちゃんとルーヘン君のデビュタント・ボールまでの残り時間を考えると、まだ準備には十分な時間があるとミツハは考えている。彼女は将来の悩みはその時が来てから考えれば良いとし、現時点では余計な心配をせずに幸せに過ごすことを選択する。「アスタマニャーナ」という言葉を使い、明日で間に合うと前向きに捉える。
ベアトリスちゃんのデビュタント・ボールは大成功に終わり、今後の誕生日パーティーは普通の規模で行うことになりそうである。ミツハは、毎年大規模なパーティーを仕切ることの大変さを感じており、予算の面からも毎年のような派手なパーティーは現実的ではないと考えている。
ミツハは、ボーゼス家を含む貴族家では年間を通じて様々なパーティーが開催され、それには相応の予算が必要であることを認識している。特に、料理やドレス、装飾品には多額の費用がかかり、これが貴族社会における経済的な負担となっていることがうかがえる。
その後、ミツハはこれまでのイベントに関連した後払いの支払いを行うことが残された課題であると述べ、その処理を行う予定であることを示している。
ミツハは、ヤマノ子爵家の第4拠点であるギャラリーカフェ『Gold coin』に転移し、閉店間際の店内に入る。彼女はルディナとシルアに閉店後の打ち合わせがあることを事前に伝え、夕食の準備も彼女が行うと告げていた。2階の部屋で、事前に準備されたテーブルと椅子で待っている。閉店時間の2000時を迎え、客が去った後、ルディナとシルアはミツハが待つ部屋に向かう。
ミツハがクラッカーでお祝いのサプライズを仕掛けると、シルアは驚きつつも何かを取り出そうとする仕草を見せるが、ミツハの顔を見て手を止める。この行動にミツハは驚愕し、シルアがスカートの中から何を取り出そうとしたのか恐怖を感じる。
ミツハはシルアの誕生日を祝うためにこの場を用意したことを明かし、シルアの18歳の誕生日であることを告げる。しかし、シルアは動揺して動かなくなる。
シルアは自身の誕生日パーティーに呆然とする。彼女にとって、誕生パーティーは生まれて初めての経験で、自分には一生縁がないと思っていた夢のようなイベントだった。ルディナは孤児院で簡単なお祝いを経験しているが、シルアにとっては全く新しい体験である。ミツハはシルアが正気に戻るのを待ちつつ、彼女に楽しんでもらおうと考えている。ミツハはこの3人の中で最年長の19歳であり、外見では最年少に見えるかもしれないが、その点については言及を避ける。
第八十四話
シルアの生まれて初めての誕生パーティーが成功裏に終了した。ミツハは、シルアが嬉しさと感謝の感情を顔に出していたことに満足している。翌日、ミツハは日本の自宅で休むことにし、サビーネちゃんを避けるため安全策を取る。その後、地球のある高級カフェで、異世界の情報に詳しい年配の学者と会う約束をしている。この会合は秘密裏に行われ、ミツハは学者の時間と労力を尊重し、感謝の意を表している。学者との会話は、互いにフランクな話し方をすることで、効率的な意思疎通を図ることに合意し、本題に入る準備が整えられている。
ミツハが異世界から持ち込んだ生物、植物、鉱物の価値について学者と話し合う場面が描かれている。学者は、これらの素材が新素材や新薬、新ゲノムなどの発見に繋がる可能性があり、金銭的にも学術的にも政治的にも大きな価値があると指摘している。また、異世界の素材を独占的に手に入れた場合の優位性についても言及し、陸軍がヘリで得た貴重なサンプルが高く評価された事例を紹介している。しかし、ミツハは提供した異世界の素材の価値を正確に把握することの重要性を痛感し、ウルフファングのメンバーにはその価値を判断する能力がないため、信頼できる学者に相談した。この情報交換は、対等な立場で行われ、ミツハも学者の質問に答えることになる。
異世界の環境条件が地球に似ていることについて、ミツハと学者が話し合っている。学者は異世界へ行き、その地上に降りた経験があり、重力や大気組成が地球とほぼ同じであることを確認している。しかし、生物相が地球と酷似していることについては、謎が多い。ミツハは、その理由を学者から求められるが、明確な答えを持っていない。会話は、異世界のアノマロカリスやハルキゲニアのような生物が普通に存在し、食用にされることもあることへと移る。学者はこの事実に驚き、異世界の生物相の理解について深く考える。
その後、情報交換が有意義に進み、学者は感謝を表し、ミツハも彼から多くを学ぶ。ミツハは学者に対して、国益に反する情報を共有していないか心配し、また彼らの会話が上層部に報告されることについても懸念するが、学者は私的な時間に行った研究や会話であるため報告の義務はないと返答する。ミツハは情報が漏れても問題ないと述べるが、学者は自らの研究への影響を考えて情報を漏らさないことを決意する。
第八十五話
ミツハは、特別な人用のメールアドレスを学者先生に教え、日常的に地球に戻る際にはスマートフォンを持参している。『雑貨屋ミツハ』でサビーネちゃんから、アルダー帝国が戦争準備を進めているという情報を受け取る。その目標はダリスソン王国であり、アルダー帝国は前回の侵攻失敗から立ち直ろうとしている。サビーネちゃんは、アルダー帝国がダリスソン王国を狙っていると推測し、ミツハはその可能性を考える。ダリスソン王国は以前の事件で王族としての立場を固め、国民からの支持を得ているが、アルダー帝国は自国の困難から脱出するために再び戦争を選択する可能性があるとミツハは懸念する。
ミツハは、ダリスソン王国との個人的な約束は王女を守ることに限定されており、国との軍事的な協力を意味するものではないことを説明する。他国との戦争に介入することは国王の指示がなければ許されないため、ミツハができることは限られている。王様に会って状況を確認することが次のステップである。
ミツハは王様に状況を把握するために訪れ、アルダー帝国とダリスソン王国間の不穏な動きについて話し合う。彼女は、ダリスソン王国が『大同盟』の一員であることから、その安全が他の同盟国にとっても重要であることを指摘する。王様との会話中、ミツハはレミア王女を「ゲゲゲ姫」と呼ぶが、これが王様には理解されず、その後正式な名前で話を続ける。王様はミツハに対して、他国間の問題に勝手に介入しないよう警告するが、緊急時にはレミア王女とその弟を保護することは許可される。
サビーネちゃんがレミア王女からの連絡を持ってきて、アルダー帝国の動きに対する警戒を伝える。ミツハは、ダリスソン王国への支援を個人ではなく、ゼグレイウス王国の貴族として行う許可を王様から得る。これにより、ミツハは異国の王女ではなく、現在の身分であるゼグレイウス王国の貴族として行動することが可能になる。
ミツハはウルフファングの隊長にヘリコプターを飛ばすことができるか尋ねる。ウルフファングにはヘリがなく、必要であれば他の傭兵団に依頼することになる。ミツハは輸送用ヘリに武器を搭載することを了承し、さらに分隊支援火器や迫撃砲、そして携帯式地対空ミサイルの準備も要求する。これらの要求により、ミツハが大規模な戦闘の準備をしていることが明らかになる。ただし、ウルフファングからは戦闘要員として6人程度の参加で十分とし、ヘリ関連の作戦はヘリを提供する傭兵団に全面的に任せることにする。
ミツハは、ダリスソン王国の人々が自らの国を守ることの重要性を強調し、神のような存在が介入してすべてを解決することの問題点を指摘する。彼女は自分の役割を補助に留め、ダリスソン王国の人々とレミア王女が主導で戦うことを重視する。また、ミツハは自身の決定に対する責任を自分で負うことの重要性を認識している。
ウルフファングの隊長から、ミツハへの報告によると、異世界への戦闘参加のために2機のヘリコプターが用意されることになった。これは故障や定期整備を考慮しての措置で、通常は1機で十分だが、2機あることでより確実性が増し、不具合が生じても対応できる。ミツハは、参加料として30万ドル(約3000万円以上)がかかると認識していたが、実際には、この金額は傭兵団からミツハへの「参加料」として支払われるものであった。傭兵団のメンバーは異世界での戦いに参加できる権利を得るためにこの金額を支払う意欲があった。
ミツハはこの取引に驚くが、ウルフファングの隊長は、異世界での戦闘参加が傭兵にとっての夢であり、彼らにとって価値があるため、参加料を支払うことに異論はなかった。さらに、ミツハが武器や弾薬の経費を別途支払うことになり、参加料を受け取ることで、傭兵団にとってもメリットがあるとされた。ミツハはレミア王女の国からの謝礼金でこれらの経費を賄う予定であり、参加料の支払いに関しては、他の傭兵団への配慮から行われることが明らかになった。
ミツハはレミア王女の部屋に転移し、レミア王女との間で重要な話をする。レミア王女は、国民に既にミツハが助けると告知しており、ミツハを完全に嵌めた形である。ミツハは、自分が約束したのはレミア王女個人を守ることであり、戦争に介入する約束はしていないと主張するが、結局、お手伝いをすることに同意する。しかし、それは「お手伝い」に限定され、主な責任はレミア王女の国の軍隊にあることを強調する。また、ミツハはこの支援にかかる経費をレミア王女の国から賄ってもらうことを条件とし、レミア王女はそれに同意するが、具体的な金額については後で宰相や財務担当大臣と相談することになる。ミツハは、支援の規模は支払われる金額に依存すると示唆し、レミア王女に大きなプレッシャーをかける。戦争の情報共有の重要性を説き、今後の連絡方法や情報提供の必要性をレミア王女に伝える。
ミツハはサビーネの部屋に常時人を待機させるよう指示し、レミア王女の国への支援計画を進める。レミア王女の国、ダリスソン王国に侵入した帝国軍に対抗するため、ミツハはウルフファング6名と2機のヘリ、合計21名で出撃する準備を整える。ヘリの操縦士たちは初めての転移を経験することになり、ミツハは任務の成功を確実にするために細心の注意を払う。ダリスソン王国は戦闘の場となり、国際的な問題にならないように自国内で戦うことを選択する。敵の進軍経路上の村は避難させ、戦場の準備を整える。ミツハはダリスソン王国王宮の中庭からヘリに乗り込み、派手に出撃する。これはレミア王女からのリクエストに応える形で、国民の士気を高めるための演出の一環である。
ミツハは王宮の中庭に転移し、レミア王女が一般市民を王宮内に入れていたことに驚くが、無事に「首狩り作戦」を開始する。この作戦では、敵の司令部を潰し、兵士たちを潰走させることで、双方の被害を最小限に抑えることを目指す。ヘリチームは迫撃砲とともに敵の野営地を攻撃し、敵の混乱を促す。地雷を使って敵兵を王都の方向に向かわせないようにする一方で、ウルフファングは迫撃砲で敵の中心部に攻撃を集中させる。迫撃砲は主に敵を混乱させるために使用され、ヘリはサーチライトや機関銃、『ワルキューレの騎行』を流しながら敵を追い立てる。最終的に、敵兵はパニックに陥り、散り散りになってしまう。ミツハはこの作戦を通じて、戦争における被害を最小限に抑えるための努力をする。
ミツハが指揮する「首狩り作戦」が成功し、敵軍は完全に敗走を始めた。その後、ミツハは迫撃砲の撃ち方を停止し、ヘリチームに物資の破壊と焼却を命じる。敵軍は司令部や物資を失い、命令系統が崩壊し、混乱の中で敗走する。ミツハはその後、ヘリチームとともにウルフファングの本拠地へ帰還する準備をする。帰還前に、ヘリチームの隊員たちは異世界の土と草を持ち帰りたいとリクエストし、ミツハはこれを許可する。また、撮影に関しても顔以外であれば、そして公にはしない条件で許可される。この戦いで発生した地雷はミツハが責任をもって処分し、今後地雷を使う際には彼女の許可が必要であることをウルフファングに再確認させる。戦いは終わり、ミツハはレミア王女のもとへ報告に向かうことになる。
ミツハとヘリ乗員たちは、異世界の土と草を記念に採取し、その様子をビデオ撮影する。撮影はミツハが許可しており、採取物は売却の証明としてではなく、記念品としての価値が主である。その後、ミツハはウルフファングの本拠地へ帰還する準備を整え、ヘリと人員を転移させる。ミツハはレミア王女のもとを訪れ、戦いの結果として帝国軍の完敗を報告するが、その報告方法で一時的にレミア王女を驚かせる。レミア王女は、自国の兵がほとんど戦わずに勝利したことで、他国から見た国の評価が心配だと表明する。ミツハは、無駄な犠牲を避けるために自ら行動を起こしたと説明し、レミア王女に理解を求める。しかし、レミア王女は、国の名誉や兵士の犠牲について深く考え、簡単な解決策を拒否する。ミツハはレミア王女の立場と感情を理解し、納得してもらう方法を模索する。
戦況は一段落し、今後は帝国とダリスソン王国の間で政治的な協議が行われる見込みである。侵攻した帝国軍は指揮系統を潰され、敗走したが、人的被害は比較的軽微であり、国に戻れば再編成が可能であるため、他国が介入する可能性は低い。ミツハは戦後の処理を王や大臣たちに任せ、ウルフファングの本拠地へ戻る。事後検討会では、ヘリチームの操作や地雷の使用、低高度での攻撃などについて厳しい意見が出るが、全体としては成功した作戦と評価される。その後の親睦会では、戦場からの帰還を祝う盛り上がりの中、ミツハは参加者からの過度の親密な接触を避けようとする。
異世界での戦いから少し経って、ミツハはウルフファングの本拠地に相談に訪れる。ヘリの提供者に赤字補填が必要かと思いきや、隊長からその必要はないと聞かされる。なんと、異世界から持ち帰った土や草をオークションで売り、撮影した映像の上映会を開催して、大金を稼いでいたのだ。異世界の素材や戦闘シーンの撮影映像には、政府関係者や研究機関が高い関心を持ち、高額で購入していた。ミツハは当初驚くが、全てが彼女の許可の範囲内で行われていたことを知り、安堵する。傭兵たちは赤字を出すことなく、しっかりと利益を上げていたのである。
異世界での戦い後、ミツハはウルフファングの本拠地で隊長に協力者の赤字補填の相談を持ちかけるが、隊長から協力者が異世界から持ち帰った土や草をオークションで売り、撮影した映像の上映会を開催して大金を稼いでいることを聞かされる。異世界の素材や戦闘シーンの映像は科学的価値や証拠として、また娯楽としても高い関心を集め、政府関係者や研究機関から高額で購入されていた。全てはミツハの許可の範囲内で行われ、彼女が懸念していた赤字補填の必要はなかった。傭兵たちは賢く、かつ律儀に利益を上げ、約束を守っていた。
異世界での帝国軍との戦い後、ミツハがウルフファングの本拠地を訪れ、協力したヘリの赤字補塡の必要性を相談する。しかし、隊長から協力者が異世界から持ち帰った土や草をオークションで売り、大金を稼いでいることを知らされる。さらに、異世界の素材や撮影した戦闘シーンの映像が高い関心を集め、政府関係者や研究機関から高価で購入されていることが明らかになる。全てはミツハの許可の範囲内で行われ、彼女が懸念していた赤字補填の必要はなかった。傭兵たちは賢く、かつ律儀に利益を上げ、約束を守っていた。
周辺諸国で評判のヤマノ子爵領の商品を独占していることに不満を持つ者たちの仕業で、レフィリア貿易が一度襲われたことがある。しかし、今回の状況は異なり、ヤマノ子爵家に忖度する者はおらず、他の商家や官憲も犯人である大店に擦り寄るか、ラルシア貿易の味方をする者はいない。主人公は、自分や仲間の敵に対して復讐を誓う。
第八十七話
大月総合病院でマッコイさんと合流した主人公は、ラルシア貿易を訪れ、怪我をしたラルシアとその従業員たちを見舞う。マッコイさんはラルシアの診察を行い、怪我の治療を施す。ラルシアは自分の不始末について謝罪し、主人公に深く感謝する。主人公はラルシア貿易が被った損害に対し、ヤマノ子爵家から補充品を提供すると約束し、怪我人の治療も支援することを伝える。また、主人公はラルシア貿易を襲った犯人への報復を示唆し、ラルシアから詳しい事情を聞き出す。事件の背後には証拠がなく、官憲も十分な調査を行っていない状況が明らかになる。主人公はラルシアを慰めつつ、犯人に対する怒りを内に秘める。
ラルシア貿易を訪れた主人公は、マッコイさんと共に怪我人の診察を終え、従業員と警備員に対して、今後同様の事態が発生した際には人命を最優先にするよう訓示を行う。今回亡くなった50歳を超える男性は、若い女性を守るために命を落としたという。主人公は従業員全員に合成宝石のペンダントを慰労品として配り、亡くなった男性の家族にはルビーのペンダント、金貨301枚、感謝状を渡す。遺族は、金貨1枚を主人公に渡し、報復を依頼する。主人公はこの行為が遺族の心の安寧に少しでも役立つことを願いつつ、犯人への運命が決まっていることを内心で感じる。
主人公は、ラルシア貿易に戻り、亡くなった警備員の家族への支援を行ったことをラルシアに報告する。ラルシアは、その寛大な行動について懸念を表明するが、主人公はこれが一回限りの特別な措置であり、防衛と見せつけるためのパフォーマンスであると説明する。また、主人公は犯人を特定し、対処するための準備を整える。その準備には夜間迷彩レオタード、ヘッドマウント式暗視スコープ、超小型ICボイスレコーダーが含まれている。これらの装備を使って、主人公は証拠収集のために犯人の元へ向かうことに決める。
主人公は深夜、エノバ商会に転移を使って侵入する。外部からの監視の可能性が低いことを確認し、店内に連続転移して内部調査を開始する。高価な商品は既に安全な場所に移されているため、夜間警備はその保管場所に集中しており、主人公が潜入する売り場は警備の目が届いていない。主人公はヘッドマウント式暗視スコープを装着し、迷彩服ではなく動きやすさを考慮した濃い土埃色のレオタードを着用している。この装備は、万が一発見されても非武装であることを明示し、逃走を容易にする。主人公は店内の様々な場所に超小型ICボイスレコーダーを設置し、特に重要そうな応接室には録音器を仕掛ける。これらの録音器は音を感知したときのみ作動する設定になっており、設置後、主人公は情報収集のために場所を離れる。この行動は犯人がエノバ商会であるかどうかを確かめるためのものであり、証拠収集が主目的である。
主人公はラルシア貿易の従業員に自身が実施した労いの話を広めるよう依頼し、その噂を利用して犯人たちが自らの行動について話し合う状況を作り出す。数日後、設置していた録音器を回収し、その内容の確認作業をコレットちゃんとサビーネちゃんに依頼する。彼女たちは報酬として「我が儘を1回通してもらえる券」と「指定した便利道具を1つもらえる券」を受け取る。録音内容からは、エノバ商会が襲撃の犯人であることを示す発言や、官憲や他の商家との癒着を示唆する発言が確認される。これにより主人公は犯人に対して遠慮なく行動を起こすことができるようになる。さらに、情報収集を深めるために再度録音器を設置し、新たに犯罪ネットワークに関連する場所にも仕掛けることを計画する。録音器の音質向上のために外部マイクを購入し、再び現場へと転移する準備を整える。
主人公はエノバ商会をはじめとする怪しい商会や警備隊本部に録音器を設置し、犯罪ネットワークに関する情報収集を行う。特に警備隊本部への侵入では、レオタード姿で暗視スコープを装備し、深夜に慎重に行動する。しかし、警備隊員に発見され、魔物と誤認されてしまう。この一件は街中で奇妙な噂として広まり、主人公の姿は「11~12歳の男の子の体形で、裸のような色の魔物」と語られる。この誤解に基づいた噂に対し、主人公は憤りを感じ、録音器の情報収集を通じて犯人特定とその後の対策を図ることに集中する。
警備隊本部への録音器設置は予定よりも少ないが、重要な場所には設置完了した。前夜の発見事件を考慮し、警戒を避けるため、設置数を調整した。これらの録音器は、商会や警備隊本部内での犯罪に関連する会話を捉える目的で使用される。主人公は、慎重に行動を進め、敵対者の特定とそのネットワークを明らかにしようとする。その後、コレットとサビーネに再度録音内容の確認を依頼するが、増えた録音器に対する不満を示される。報酬については、二人が物質的報酬を受け取らないため、主人公は別の報酬方法を模索する必要がある。
コレットとサビーネへの報酬については、今後の作業も含めて後で協議することになった。主人公は、彼女たちに無理な要求をしないよう念を押し、徹夜を避け、作業には休憩を取るよう促した。エノバ商会を含む関連商家には新たに追加購入した録音器を設置し、その間に録音内容の確認作業を行った。主人公は、犯人たちが計画や貴族への上納金についてペラペラと喋っている録音を発見し、今後の対策を練る。サビーネが確認作業を終えて報告に来た際、報酬についての期待を示される。サビーネは主人公の状況を理解し、作業が終わるまで邪魔をしない態度を見せた。主人公は、サビーネが自分を最も理解している友人かもしれないと感じながら、録音内容の確認を続ける決意を固めた。
サビーネとコレットから内容確認済みの録音器とメモを受け取った2日後、主人公はパソコンでエノバ商会を中心とした相関図を作成していた。この相関図には、貴族や警備隊上層部といった「上」、中小商家や下請け業者などの「下」、同格の商家や取引先といった「横」の関係が色分けされて記されている。主人公は、警備隊本部に設置していた録音器から回収したデータを確認し、相関図に最終的な仕上げを施す予定である。この相関図における「レベル」とは、「やらかしレベル」および「報いを受けるレベル」、すなわち「罪の重さ」を指す。そして、この「罪の重さ」を決定し、裁くのは主人公自身である。
第八十六話
主人公は自身や仲間が犠牲になることを拒否し、理不尽な手段を使う者に対しては同じく理不尽な手段で対抗する決意を示す。彼女はエノバ商会を中心とした悪事に関わる商店に対して、夜間に店内の商品を高い位置から落として破壊するという行動を5回繰り返し、その結果大騒ぎが起きたと予想する。翌朝、ラルシア貿易を訪れ、ラルシアに対し敵に対する「戦闘開始」を宣言し、『女性事業主国際ネットワーク』を通じて行動を開始する。その後、街中には「六つの商店で謎の怪奇現象が起こり、売り場が滅茶苦茶になった」という噂が広まる。この六つの商店に共通するのは、タチの悪い商行為で知られ、エノバ商会と関連があることだった。その翌日、王都中の商店にラルシア貿易から手紙が配られ、ラルシア貿易が襲われた経緯と、襲った者たちは商品を破壊しただけであること、そしてラルシア貿易が被害を受けた六つの商店と取引を行わないことが宣言された。
エノバ商会の商会主、バルトアードは、自社と取引を中止する通告が王都中の商店から届いていることに激怒する。しかし、その理由は彼には理解できなかった。ラルシア貿易からの通告は、エノバ商会が関与した犯行を知っていることを示唆しており、王都だけでなく、周辺諸国の商店からも同様の通告が届く。これらの商店は『女性事業主国際ネットワーク』加盟店であり、エノバ商会と取引のある商店とは一切取引を行わないと通知していた。この状況により、エノバ商会は貴族や王族からの重要な発注を失う危機に直面し、他の商家に対してもその影響が広がることとなる。
エノバ商会の商会主バルトアードは、自身の商会と取引を中止する通告が国内外の商店から届いていることに憤慨する。この事態の背後にはラルシア貿易がいることが判明するが、バルトアードはラルシアを軽視しており、その影響力を甘く見ていた。彼はラルシア貿易に対し不利な条件での取引を強要しようとしたが、ラルシアはこれを断固として拒否。ラルシア貿易が反撃に出ると、周辺諸国の商店も含めて多くの商店がエノバ商会との取引を中止する。バルトアードはこの状況を理解できず、かつての力と影響力に安住していたことの代償を知ることになる。彼の過小評価していたラルシア貿易とそのネットワークの力は、エノバ商会にとって予想外の打撃となり、年老いた虎が獰猛な雌狼たちの群れに襲われる状況へと変わっていった。
エノバ商会の大番頭がヴァネル王国まで来て、直接取引を試みるが、ミツハはこれを断り、国内での取引相手はラルシア貿易のみであると告げる。ミツハは1国につき1商店のみと取引し、店の経営者が変われば契約は継続しないことを明確にする。大番頭は、自分たちが思っていたよりもミツハの立場が強く、エノバ商会を軽んじた態度によって完全に取引の機会を失う。ミツハの真の地位を誤解していた大番頭は、ミツハがヤマノ子爵家当主であることを知らされ、自分の誤算を痛感する。エノバ商会がミツハに対して不適切な交渉を試みた結果、何の成果も得られずに退散することになり、その間にエノバ商会の失策は広く知れ渡ってしまう。
バルトアードは、ヴァネル王国に派遣した大番頭がヤマノ子爵家との交渉に失敗し、帰国するまでの間、自分の計画がどのように進展するかを考えていた。彼はラルシア貿易を攻撃したことによる負の噂が広がっていることを懸念しており、特に上層部にその話が伝わることを危惧していた。バルトアードは警備隊を利用することを考えていたが、その間にラルシア貿易に警備隊が押し入る。しかし、実際にはミツハがラルシア貿易を訪れており、警備隊をあっさりと撃退する。ミツハはこの行動をエノバ商会からの宣戦布告と見なし、ラルシアと共に反撃を開始する決意を固める。彼女は情報を掌握し、エノバ商会の計画を事前に知っていたため、警備隊の動きを予測して対策を講じていた。ミツハとラルシアは、エノバ商会への直接攻撃を計画し、ラルシアは自らの商売と仲間、そして亡くなった警備員への復讐を誓う。
翌日、警備隊が再びラルシア貿易を訪れ、ラルシアにエノバ商会に対する妨害行為の嫌疑で本部までの同行を求めるが、ラルシアは公然とその申し出を拒否し、周囲の人々に警備隊の行動を大声で知らせる。これにより、警備隊の行動が王宮や貴族たちに知れ渡ることとなり、警備隊及びエノバ商会の計画に大きな支障をきたす。ラルシアの戦略的な反応は、警備隊を動揺させ、最終的には彼らが何も行動できないまま事態を見守るだけとなった。警備隊員たちは、この一件が自身の未来にどのような影響を与えるかを考え、分隊長の指示に対して異議を唱え、正義を貫いたと主張することで、悪事に巻き込まれることなく逃れることを期待していた。
従業員に紛れ込んだ貴族の娘が、社会経験として平民の振りをしていた。彼女は、必要であれば自分の身分を明かしてラルシア貿易の商会主を守る用意があった。彼女の身分詐称に協力した者や、彼女を侮辱した者には重い罰が待っていることを知っているため、誰も彼女の身分を疑ったり否定したりすることはなかった。従業員たちは王宮へ駆け込み、ラルシア貿易の従業員が警備隊による不法行為を告げて救援を求めた場合、無視されないことが保証されていた。これは、ラルシア貿易の関係者が事前に根回しをしていたためであり、彼らが駆け込んで助けを求めれば、すぐに関係者が駆け付けることになっていた。このように、計画通りに事態が進んでいることを確認した彼女は、ラルシアの強制連行を阻止することに成功した。
ラルシア貿易の従業員が王城に駆け込んだ際、事前に根回しした人々の配下が迅速に行動を起こした。これにより、警備隊の膿を出し尽くす動きが加速し、監察官や査察官による抜き打ち調査が行われた。悪事の証拠は次々と発見され、警備隊内の不正が露見する。この過程で、警備隊の者たちは、自分たちの悪行を隠す暇もなく、迅速な行動を取られたことで、抵抗を試みる者は即座に制圧された。結果、警備隊の不正が明らかになり、関係者が処分されることとなった。一方で、悪事に関与した者たちは、自らの行いを正当化しようとし、証拠や証言を偽造しようとするが、監察官たちの異常なほどの勘の良さによって、真実が明らかにされた。最終的に、警備隊の問題が解決に向かい、正義が実現される流れが描かれている。
ミツハは、レフィリア貿易が襲われた際の対応として、相手の倉庫の中身を奪ったが、今回は荷物を奪うことなく、相手の不正行為を示しつつ、法に触れずに報復した。この行動は、敵に自分たちが攻撃可能であることを知らしめつつ、証拠を残さない戦略である。さらに、「女性事業主国際ネットワーク」加盟店を敵に回した場合のリスクを示して、権力とコネクションを用いた対応の重要性を強調した。エノバ商会に対する査察が始まり、商業ギルドがエノバ商会を見捨てる形で、エノバ商会の悪事が暴かれる流れになった。ミツハは、エノバ商会を支えていた貴族層に対しても手を出すべきか悩みつつ、エノバ商会だけでなくその背後にいる支援者たちにも責任を問うべきか考えている。
ミツハはラルシアから、ラルシア貿易襲撃がエノバ商会の独断行為であり、上層部の具体的な指示によるものではないと説得された。エノバ商会はヤマノ子爵領産商品の独占を目論んでいたが、その野望は始めから実現不可能であった。ミツハは、貴族に手を出さない方が良いとのアドバイスを受け入れ、事件をこれ以上追及しないことに決めた。しかし、ラルシア貿易やラルシア本人に対する安全策は講じることにした。エノバ商会の跡地についての提案がラルシアからミツハにされたが、ミツハはこれを断り、ミツハがこの国に拠点を持つことはないと明言した。後々に、ラルシア貿易に対する攻撃はなくなるだろうとミツハは考え、その強い立場を活用してラルシア貿易の安全を保障する方針を示した。
雑貨屋ミツハの3階にある彼女の部屋で、サビーネちゃんが録音器の解析の報酬として自動車を要求するが、ミツハによって却下される。サビーネちゃんの提案する運転方法は非現実的であり、ガソリンの補給や整備、サビーネちゃんの身長が足りないなどの問題点が指摘される。最終的に、サビーネちゃんの要求は受け入れられず、その提案は『ドン松五郎の生活』のような非現実的なものとして却下される。
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