どんな本?
戦国小町苦労譚は、夾竹桃氏によるライトノベル。
農業高校で学ぶ歴史好きな女子高生が戦国の時代へとタイムスリップし、織田信長の元で仕えるという展開が特徴。
元々は「小説家になろう」での連載がスタートし、後にアース・スターノベルから書籍としても登場。
その上、コミックアース・スターでも漫画の連載されている。
このシリーズは発行部数が200万部を突破している。
この作品は、主人公の静子が現代の知識や技術を用いて戦国時代の農業や内政を改革し、信長の天下統一を助けるという物語。
静子は信長の相談役として様々な問題に対処し、信長の家臣や他のタイムスリップ者と共に信長の無茶ブリに応える。
この物語には、歴史の事実や知識が散りばめられており、読者は戦国の時代の世界観を楽しむことができる。
2016年に小説家になろうで、パクリ騒動があったらしいが、、、
利用規約違反、引用の問題だったらしい。
読んだ本のタイトル
戦国小町苦労譚 17西国進出とこぼれ話
著者:夾竹桃 氏
イラスト:平沢下戸 氏
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あらすじ・内容
時は1578年11月、史実より約1年半早く開催される運びとなった
戦国小町苦労譚 17西国進出とこぼれ話
『京都御馬揃え』を皮切りに、西国進出と東国統一目指し、
知略謀略渦巻くメインストーリーを軸に、
今回は魅力溢れるあのキャラに焦点を当てたこぼれ話が満載!!
東国統一のため鉄道構想を練ったり、マンガンを選鉱したり、
オオウミガラスの飼育に奔走したり、羊羹を巡って諍いが起きたり……
ますます目が離せない17巻!
感想
東国の管領となり。
織田家支配圏半分をいきなり任された静子。
彼女の下に上杉家、徳川家が配され、彼等の領地も発展させる事となる。
そんな彼女の下に、京都で軍事パレードの御馬揃を行う事となった。
その準備に奔走させられる静子。
信長も貴族達の妨害を牽制するために色々と手を打っていた。
そして、日本の中心の京都で軍事パレードの御馬揃を無事に終わせ、織田家の軍事力を国内に知らしめる事に成功する。
さらに、大砲部隊を編成して試射。
もう江戸時代初期を超えてナポレオンの陸軍のような編成になってそう、、
そんな織田家は順調に毛利家に圧力をかけていた。
その後は、短編集となるのだが、、
短足な猫を見て明智光秀の娘、玉があまりの可愛さに気絶する「招き猫」。
濃姫、静子が居ない間にカリントウを大量に食べた織田信長に静子が「太った」と言ってお菓子禁止を言い渡す「かりんとう騒動」。
印刷技術が発達して、作家となった腐った女子達が実在する人物をモデルにしたBL本を描いてしまい原稿を燃やされてしまう「艶本騒動」。
再び起こる好みの羊羹の騒動。
「羊羹の乱」。
コレらが特に笑えて面白かった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
東国統一
千五百七十八年十一月上旬
信長の策略により、御馬揃えが十一月上旬に実施されることが確定した。この策略は、織田家に反意を持つ公家の心理を巧みに誘導し、彼らの過失による失敗の可能性を許容しつつ、事実上の妨害を防ぐために彼ら自身を自縄自縛の状態に追い込んだものである。御馬揃えは、現代の軍事パレードに相当するもので、その陣容は織田家の重要人物から公家衆、さらには信長お気に入りの騎馬兵や力士など、多岐にわたる。静子は、信長を支える重要な立場にあり、御馬揃えの準備に尽力する。準備は複雑で、数多くの諸将や参加者の調整を必要とし、静子はその準備において中心的な役割を果たす。イベント当日、静子は信忠や前久などからの支援や励ましを受けるが、彼女自身はイベントの成功に対して不安を抱えていた。最終的に、御馬揃えは信長や静子の努力によって無事に開催され、時の帝を含む日本中の有力者が一堂に会する大規模なイベントとなる。信長と前久は、静子の成功を讃え、彼女に簪を贈ることで彼らの評価を示した。
家紋は、個人や家族、同じ氏族を示す紋章であり、所有物や建物に刻まれ、その帰属を示すために用いられる。織田家と近衛家から贈られた家紋が刻まれた簪を静子が髪に挿したことは、彼女が両家にとって重要な人物であること、さらには近衛家の重要人物であり、織田家の直系親族に匹敵する存在であることを示す。この行為により、彼女の地位が公に宣言された。静子隊は御馬揃えにおいて、ド派手な衣装を身にまとった前田利益や近代的な甲冑を纏う可児吉長とともに登場し、沿道からは静子の装いや持っている簪の豪華さが注目された。信長から与えられた簪は「大衆の美」を、前久から与えられた簪は「洗練の美」をそれぞれ体現していた。御馬揃え後、静子は光秀との会談を控えており、信長からの密命と光秀への砲兵部隊の貸し出しを含む一連の事態に思案を巡らせていた。この会談を通じて、静子と光秀はさらに深い連携を図ることになる。
千五百七十八年十二月上旬
京から西へ数日行った丹波国の篠山盆地では、静子が光秀に預けた砲兵部隊が展開し、実弾演習を行っていた。これは光秀が大砲の性能と砲兵の練度を確かめるためである。演習は轟音を伴い、山を変形させるほどの力を示した。これを見た光秀や間者たちはその破壊力に驚愕した。大砲の射程と破壊力は著しく、従来の戦い方を根底から覆すものだったが、砲兵部隊の進軍と展開には時間がかかるという弱点も露見した。
信長は西国の反応を知り、満足していた。静子と光秀が派手に行動すればするほど、敵は振り回される。一方、信長は安土城へと入城し、毛利の反応を楽しみにしていた。西国では、大砲の実弾演習により、敵対する者たちが恐慌に陥った。信長はこの状況を利用して、大砲をお披露目し、敵に恐怖を植え付ける狙いがあった。
静子は京での滞在を終え、尾張へと帰還した。その間、大砲の存在は間者たちの間で大きな注目を集め、静子はこの状況を巧みに利用した。帰還する際、大砲を分解し、荷車に偽装して尾張へと運んだ。これにより、敵の間者は大砲の行方を見失った。
一方、京では慶次と長可が喧嘩に巻き込まれる事件が発生し、この騒動が信長の怒りを買った。しかし、これも静子が京を離れる大義名分となった。静子は信長に対する報告として、この事件を利用し、尾張へと無事帰還することができた。
静子の帰還後、静子は四六の元服の準備を進めることにした。四六は静子の後継者としての覚悟を示し、静子もこれを認め、後継者としての成長を期待した。
科学という名の幻術
信長から突然「幻術(手品)を用意せよ」という命令を受けた静子は、その意図を探るために信長に直接問い合わせることにした。静子は現代の知識を用いて、科学現象を駆使した手品を考案する。特に、粉体の流動性を活用した、砂を満たした水槽に仏像を浮かび上がらせる手品を思いついた。送風機を使い、砂の中から軽い樹脂製の仏像を浮上させることで、重い石の仏像が消えたように見せかける。
信長は自分の目でその手品を確認するために尾張を訪れ、静子の手品に大いに興味を示した。しかし、送風機の騒音や操作の不便さを指摘し、改良を求める。静子は指摘を受けて送風機のスイッチを足で操作できるよう改良することになる。数日間の滞在後、信長は満足して安土へ戻った。
静子は信長によって数日間も振り回された末、自室に戻ると、自分の仕事がすべて処理されていたことを知り、信長の真意に気づく。信長の意図は、仕事中毒の静子を強制的に休ませるためだったのだと理解し、彼女はその計略に驚愕する。
幕間 耳梟
戦国ファッションショー
静子邸の金庫番である彩は、静子の個人資産の出納管理を一任されており、彼女の信頼は厚い。しかし、静子の突発的な予算執行の案に頭を悩ませている。静子は時に非現実的なアイディアを実行に移そうとするが、公人としての立場もあるため、彩は静子の私財を無駄に使わせないようにしている。今回、静子が提案したのは、家人が一目で識別できる制服の導入だった。彩はこの提案の意義を認めつつも、静子が私財を投じようとする点に異を唱える。静子は最終的に彩の同意を得て、実用化された足踏み式ミシンを用いて制服の製作を進める計画を立てる。計画書を見た彩は、提案された衣装のデザインに驚き、最初は戸惑うが、静子の意図を理解し、計画の実行を受け入れる。
蕭の郷帰り
戦国時代の婚姻慣習では、女性が男性の家に嫁入りするのが常で、政略結婚も珍しくなかった。この時代にあって、静子邸で表の顔を務める蕭は結婚を拒否し続けた。蕭は結婚適齢期を過ぎても嫁ぐことなく、静子邸での仕事に誇りを持ち、自分の立ち位置を守りたいと考えていた。彼女の結婚に対する条件は、仕事を続けることを許容する夫であることだった。静子邸では、出産に際して手厚いサポートがあり、母子健康帳も支給されるなど、女性職員にとって魅力的な環境が整っていた。蕭は静子邸での高待遇に慣れ、他のどこへも嫁ぎたくないと考えていた。静子は蕭の考えを理解し、彼女が静子に仕え続けることを支持する立場をとった。蕭は静子からの休暇を与えられ、両親と将来について話し合う機会を得た。静子は蕭の未来を考え、彼女の功績を称え、彼女が婿を迎えて新しい家を興すことも提案した。蕭は静子に深く感謝し、これまで以上に尽くすことを誓った。
鬼武蔵の泣き所
戦国の世において「鬼武蔵」と称される森長可は、静子の城下町で畏怖されつつも憧れの対象であった。長可は対外的には粗暴な武威を振るうが、守るべき領民の前ではその印象を悪くしないように振舞っていた。城下町では、花街を含む様々な場所で無法者が現れることがあり、そのような場合、長可が現れて犯罪者を一撃で叩き伏せる姿に多くの人が憧れを抱いていた。長可の処置は時に過酷で、凄惨な様子を見た者が恐れを抱くよう意図していた。
ある日、長可は花街で乱暴狼藉を働く酔漢たちを懲らしめ、その場にいた警備隊も彼に手を出せずにいた。この状況に介入したのは静子とその護衛の才蔵であった。静子の登場により、長可は立場を変えざるを得なくなり、彼女とのやりとりの中で、長可の優しさや領民への思いやりが垣間見えた。
静子は長可の行動をある程度理解しており、彼の反省を認めた上で警備隊に犯罪者たちの処置を指示し、自らは去っていった。この事件を通じて、長可が粗野な外見とは裏腹に、領民を思う心や静子への忠誠心を持っていることが明らかになった。また、静子の領地では警備隊や領民に扮した護衛が厳重な警戒を行っており、静子の安全がしっかりと守られていることが示された。
上月城の戦い
信長の命により砲兵部隊を率いていた明智光秀は、西国攻略の一環として備前国攻略を目指していた。光秀は播磨国を拠点に、毛利氏が待つ安芸国への進軍を企画していた。この中で、光秀は戦略的に重要な上月城を攻略するために砲兵部隊を展開する。上月城は標高190メートルの荒神山に築かれた堅固な山城であり、その攻略は大きな犠牲を伴うことが予想された。
光秀はまず先遣部隊を派遣し、砲兵部隊の展開が可能な平地を確保させた後、本体を率いて現地に入り、砲兵部隊の搬入経路を整えた。攻略対象の上月城は、周辺の城からの援助を受けやすい立地にあり、城攻めが長期化しやすい条件が揃っていた。しかし、光秀は砲兵部隊の力を活かし、精密な砲撃によって上月城を攻略する計画を立てた。
砲撃の準備が整うと、光秀は号令のもと観測射撃を行い、その後に合計十門の大砲から一斉射撃を実行した。砲撃は上月城の主郭の東側を大きく破壊し、土塁や堀切を無力化し、土砂崩れを引き起こした。城内に大きな被害が出たため、浦上軍は主郭を放棄し、二郭に移動し、決死隊を募って撤退を試みた。
光秀は銃兵と弓兵による制圧と、大砲による追加砲撃を指示し、斜面を駆け下りてくる敵兵を殲滅した。この砲撃により、上月城は完全に瓦解し、再利用が不可能となった。光秀の冷徹な計算と非情な戦略により、織田軍は毛利軍に対して大きな勝利を収めた。
招き猫 ★
その日、静子邸に七匹の子猫が運び込まれた。これらは特別な外国産の品種ではなく、突然変異により足が短い独特の特徴を持った新種とされていた。この子猫たちは飼い主によって静子邸に鑑定を依頼されたものであった。静子と共に猫たちを迎えたのは、猫好きで知られる長可と、彼と同様に猫が大好きな珠であった。子猫たちの愛らしい様子に、珠は感激のあまり気を失ってしまうほどだった。
静子と長可は子猫たちの処遇について話し合い、飼い主に鑑定書を付けて返すことを決めるが、その希少性が飼い主にとっての危険を招くことも懸念された。長可は猫たちを引き取ることを提案し、静子邸での安全を保証した。しかし、静子は静子邸に珍しい猫が持ち込まれると、特定の人々に知られることを心配していた。その懸念はすぐに現実となり、信長と近衛からの訪問が告げられる。
この出来事は、静子邸に持ち込まれた突然変異による短足の子猫たちが、静子やその関係者たちにどのような影響を与え、また静子邸の日常にどのように溶け込んでいくかを描いたものである。
万能の意思疎通手段
言語とは他者とのコミュニケーションを図るための手段であるが、通じない場合の解決手段として暴力があることが述べられている。文中では、足満が拷問を用いて男たちから情報を引き出そうとする様子が描かれる。男たちは極めて苛烈な状況下に置かれ、身体的な拷問を受けている。足満は暴力によるコミュニケーションを行い、男たちが静子に危害を加えようとしたことだけで彼らを徹底的に罰しようと決意している。彼にとって静子以外の存在は消耗品と同じであり、情報の有無に関わらず男たちには死が待っている。足満の行動は、彼が静子に対して抱く異常なまでの忠誠心に基づいており、その狂気は人間のそれを超えているようにさえ思える。
考察『本能寺の変』
『本能寺の変』が起こるためには、信長とその後継者である信忠を一度に襲撃できる状況、護衛の兵力が少ないこと、そして彼らを援護できる兵力が付近にいないことの三条件を満たす必要がある。しかし、静子主導の下で静子邸や安土城などには大軍が常駐し、更に京の治安を担う京治安維持警ら隊や機関銃のような先進兵器が配備されているため、数的優位に立つことは極めて困難である。東国ではいくさを禁じ、扮装地帯では信長と信忠が揃って前線に出ることはあり得ず、もし奇跡的にそうなったとしても静子軍による兵站部隊が支援を提供し続けるため、孤立無援の状況にはならない。また、静子の尾張における引き籠りや、金権や色欲に動じない性格から、調略が不可能であり、信長と信忠を討とうとする場合は静子を尾張から引き出すことが先決であるが、これは実現不可能に近い。したがって、現時点で『本能寺の変』やそれに匹敵する事件は発生しないと考えられる。
ダブルブッキング
男が慢性的な胃痛に悩まされている中、先祖伝来の名刀を静子に売却しようとする。しかし、その過程で信長からも名刀の譲渡を求める文が届き、男は二重のプレッシャーに苦しむ。最終的に男は静子に名刀の取り引きを中止して欲しいと願い出るが、静子は男の事情を理解し、信長との間での問題も解決すると約束する。静子は名刀を買い取り、信長に対しては形式上の手続きを経て後で譲渡することになる。一連の出来事を通じて、男は静子に心酔し、信長と静子の間での名刀を巡るやり取りは一件落着する。静子は今後も信長に刀が出し抜かれる可能性を憂いながらも、解決策を模索することになる。
天下人の孤独
封建時代の為政者は、孤独であり、多くの責任と権限が集中するため、重大な問題を誰とも共有や相談ができない状況が発生していた。信長も例外ではなく、実際には数少ない信頼できる相手がいたが、その中の一人が静子だった。信長は静子を安土に秘密裏に招き、その功績に対する褒美を与えるためだったが、静子は趣味と実益を兼ねた綿花作付け計画を提案する。しかし、信長はこれを却下し、静子に対する褒美の話をしたいと明かす。静子の提案は民の健康や福祉を考慮したものであり、信長も静子の心意気を理解するが、褒美としての外面を問題視する。最終的に信長は静子に外聞の良い褒美を考えると約束し、静子は感謝していた。信長は静子との馬鹿なやり取りを通じて心の休息を得ており、静子の性根が変わらないことを感じながら、彼女の行動に笑みを浮かべていた。
四六と器の事業運営
正月に静子から四六と器に与えられた課題、大金の使い方に関する問題解決策として、二人は共同事業を立ち上げることに決めた。幼少期にネグレクトの影響で成長が遅れていた器は、静子の愛情と教育の下で数学に対する驚異的な適性を示し、経理と財務に関心を持つようになる。この時代、貸金業はいくさによる略奪が認められていたため衰退していたが、四六と器は静子邸の一角で貸金業を始めることに成功し、四六は資金提供と債権回収を、器は経理と財務を担当する。事業は好調で、客筋も良好だったが、城下町に店舗を構えた際には悪意を持つ顧客も現れるようになる。しかし、器は他者からの悪意を感じ取る特殊な能力を持っており、詐欺を試みる者を見抜くことができた。四六と器が始めた金融業は社会の潤滑油として機能し、成長していくこととなった。
かりんとう騒動 ★
静子が信長に対して太ったことを指摘したことで場が凍りついた。関東開発の視察から帰還した静子が、信長の変わった容姿を直接言及したのである。信長は最近、かりんとうに傾倒し、その過剰な摂取が原因で体重が増加していた。静子からは糖分の摂取に厳しい制限が課せられていたが、静子と濃姫の不在中に信長は食べ続け、その結果太ってしまった。静子は信長に体重管理を徹底させ、厳しい食事制限と運動を課した。この一件で信長は健康的な体型を取り戻すが、体重計が苦手なものになった。
ワーカーホーリックスに効く薬
静子邸ではハイイロオオカミのカイザーやマヌルネコの丸太、ターキッシュアンゴラのタマとハナなど、さまざまな動物たちが共に生活している。丸太は静子の文机の上で丸くなって寝るのを好み、静子はその様子に愛着を感じつつ、作業の妨げになることもある。一方で、カイザーたちオオカミも静子の周りに集まり、彼女は彼らの毛繕いに時間を費やすことが多い。この日、丸太とカイザーたちの行動によって、静子は仕事を中断し、最終的には彼らとの触れ合いの中で、仕事を再開する意欲を失ってしまった。その結果、静子はカイザーたちと共にリラックスした時間を過ごし、一時的に仕事から離れることを選んだ。
呑兵衛の習慣
静子邸には酒蔵があり、静子自らが運営しているため多種多様な酒が納められているが、静子は信長からの禁酒令によりこれらを消費することはない。しかし、静子邸には酒好きがおり、時折酒蔵から酒を拝借している。ある日、慶次と兼続という二人の吞兵衛が酒蔵で次に飲む酒を選び、最終的に『東の司』という酒に決定する。この酒蔵には希少な銘酒も含まれており、天覧品評会で最優秀を受賞した『静誉』のような貴重な酒も保管されているが、二人はそれを手に取ることなく、普段から楽しめる酒を選ぶ。最後に二人は酒徳利を持ち寄り、仲間内で宴を楽しむことにした。翌日まで続くその宴は、彼らにとって楽しい時間となった。
艶本騒動 ★
戦国時代の日本では、手書きの書物が主流であり、限られた地域でのみ出版された書物が流通していた。特に京と尾張では印刷技術が発展し、読書文化が根付いていた。この文化の中心にいるのが、静子に囲われた少女たちであり、特に詩と海という二人の少女がいた。彼女たちは衆道を題材にした紀行文風の衆道小説を発表し、一世を風靡していた。しかし、趣味に没頭するあまり日常生活を疎かにしてしまうため、静子は彼女たちの世話人として澪という少女を派遣した。出版業に目を付けた商人たちもこの流れに乗じ、さまざまな出版物を刊行し始めた。しかし、実在の人物を題材にした艶本が問題となり、静子が規制に乗り出す事態となった。詩と海は静子に叱責され、澪によって彼女たちが作った原稿が燃やされるという厳しい結末を迎えることとなった。
制服、その後
静子が計画した彩の着せ替え人形企画は、彩自身によって大幅に変更された。静子が提案した洋服デザインの大部分が却下され、和服ベースのデザインへの改修が決定された。制服計画に濃姫が介入し、静子の当初の案は大きく変更され、多様なデザインの制服が四季折々で用意されることになった。彩と静子邸の女性たちは、制服のデザインについて積極的に意見を交わし、柄の公募も検討された。濃姫は静子の却下されたラフ画を私的に仕立てる計画を立て、静子の悲嘆を慰めた。結果として、静子邸での制服計画は濃姫の案に沿って進行し、彩たちは公募の準備に取り組むことになった。
悪魔の契約
戦国時代の織田軍でも、足軽の間で賭博が流行し、問題となっていた。賭博によって財産を失い、最終的には武具まで賭ける者が出現し、賭博による悪影響が広がる中、賭博を止められない足軽への対策として信長は足満から「リボルビング払い」という方法を提案される。これは月々の返済を一定額にすることで、借金を意識させ制限を促す方法だった。しかし、利用を誤ると返済額が元本の倍以上になる可能性があり、現代においては「悪魔の契約」と称されることもある。賭博によって身を持ち崩す者への罰則も設けられ、返済できない場合は厳しい処罰が科せられた。このような金融機関の設立は表向きは信長名義で行われ、静子は家臣に対して借り入れをしないよう厳命した。
羊羹の乱 ★
羊羹は、織田領内で甘味の王者と称される人気の和菓子で、元は織田軍の携行食として開発された。その後、「粒餡・漉し餡の乱」に見られるような派閥争いが羊羹にも起こりかけたため、静子は羊羹を携行食から外し、代わりにショートブレッド類の焼き菓子を採用した。しかし、後に羊羹を再度軍用携行食として検討する中で、各武将からの要望が殺到し、信長をはじめとする諸将が各自の好みの羊羹を推薦し、軍内での暗闘が激化した。静子は複数の羊羹を詰め合わせにする方式を取り、最終的には信長の推薦により特定の組み合わせが採用された。試験的な支給では、消費が思いのほか早く、追加支給の要請が来るほどだった。結果として、信長の命令で羊羹が正式に軍用食に採用されることとなり、静子はその決定に従うことになった。
過ちの代償
静子が日本に持ち込んだオオウミガラスの飼育は、環境適応の困難さから数が増えずに苦労している。当初の淡水での飼育から海水環境への切り替え、食欲の過剰など多くの問題が発生し、特に日本の高温多湿の夏とカビによる健康被害が深刻であった。飼育員たちは、静子から飼育方法の改善とオオウミガラスの特性解明に対する褒美を受けるが、彼らは職務に真剣に取り組んでおり、静子の支持と理解に感謝している。一方で、資金面での難癖をつける役人が静子によって更迭されたこともあり、飼育員たちはこれまでの苦労が報われたと感じている。さらに、病死以外で死亡したオオウミガラスの肉を食べたことがあり、その行為が静子によって黙認されているかのような状況になっている。しかし、これは厳に禁じられていた行為であり、飼育員たちはその事実に胸を痛めている。最終的に、飼育員たちは静子から受けた褒美を確認し、その額に驚くが、同時に『次はないよ』というメッセージを受け取り、今後の行動に警告を受ける。
食への執着
静子邸で提供される食事は非常に質が高く、尾張米を用いた白米や味噌汁、主菜、漬物などが一日三食供されている。一方で、一般的な庶民は玄米や雑穀を混ぜた雑炊が主食で、糠味噌汁が精々である。静子邸では地位が上がると食事内容も豪華になり、クエ鍋のような高級料理も登場する。クエは非常に貴重で旨みが強く、皮目のゼラチン質は熱を通すととろけるほどの味わいがある。しかし、以前ノドグロの献上品を強奪された報復として、犯人一味を公開処刑にした過去があり、食べ物の恨みは恐ろしいと語られている。静子は美食を提供することで、皆が豊かな生活を送れるよう努力しているが、それが原因で人の命が失われるのは悲しいと感じている。
関白閣下の憂鬱
近衛家当主の前久が帰宅途中に襲撃されるが、護衛により刺客を撃退し無事だった。上京の治安は良いが、夜になると人通りが少なくなり、闇夜に乗じた襲撃が可能になる。前久は、朝廷での役割が大きいため、政敵からの命を狙われることがある。護衛は襲撃者の身元を調べるが、直ちにはわからず、さらなる調査を前久に約束する。前久は襲撃の背後に大物がいると推測し、静子の軍による調査を進めることを決める。襲撃者の武器から捜査を開始し、静子と信長の支援もあるため、調査は有力者の邸宅にも及ぶ可能性がある。襲撃の背後には二条家の昭実がいることが疑われ、彼は静子を害そうとして壱岐に流されていた。前久は公家同士の対立を避け、朝廷の権威を盛り立てるべきだと考え、二条家の動向に警戒を強める。
時を告げる鐘
静子が運営する学校には、始業、昼時、終業の際に特徴的なチャイムを鳴らす巨大な鐘塔が存在する。このチャイムのメロディは『ウェストミンスターの鐘』に由来し、実際には戦国時代には存在しない楽曲である。この矛盾は、静子が安易にチャイムのメロディを決定した結果生じた。尾張の領民は、このチャイムによって昼時を知り、飲食店での昼食が定着している。学校では一日六時限の授業が行われ、昼休憩はチャイムと共に始まり、一時間の休憩があるため生徒たちは外食に出かけることができる。将来的には、学校給食を導入したいと静子は考えている。また、学校の鐘塔を時計塔に改造する計画も進行中である。静子、足満、みつおの三人は、戦国時代へ来てからの生活が大きく変化したものの、時間の流れだけは変わらず続いている。
実在する魔法
技術街にあるガラス工房で、魔法瓶ポットの製造が進められている。この製品の製造は技術的に難しくはないものの、硼砂などの必要素材の調達が困難であった。耐熱ガラスを使用し、手吹きの技術で二重構造の容器を作成することに成功。容器内を真空状態にし、銀メッキ溶液で内側を鏡面処理することで、保温効果を高めた。完成した魔法瓶ポットは静子に献上され、静子邸でお湯割りの焼酎を楽しむために使用されている。大量生産が可能になれば、大きな変革をもたらすことが期待されているが、現時点では静子邸の吞兵衛たちが独占している状況である。
紳士たちの釣り日誌
尾張では釣りが娯楽として既に定着しており、特に川釣りが人気であった。海釣りは費用が高く敬遠されていたが、消波堤の設置により養殖場兼釣り堀が開業し、アクセス改善の必要性が指摘されている。静子は釣り好きで、休暇を利用して海釣りに出かける計画を立てたが、信長の訪問で中止に。結局、静子抜きで足満らが海釣りへ出かけ、みつおが最も多くの釣果を上げた。救命胴衣の着用義務など、海釣りの普及に向けた課題が浮き彫りになった。釣り終えた後、釣った魚を使って豪華な料理を楽しむ一方で、五郎は最下位となり料理担当に。最後は静子へのお土産を整理しながら、今後の釣りや生活について楽しく談笑する一行の姿が描かれている。
織田政権
千五百七十九年一月下旬
織田領では正月が和やかな雰囲気の中で迎えられ、信長とその家族に対する挨拶が行われていた。静子は東国管領として、尾張で挨拶を受ける立場となり、尾張への諸将の訪問が新たな常例となった。尾張では防衛設備のない武家屋敷が使われ、その異様さに諸将は驚いたが、尾張の豊かさと城下町の活気に感銘を受ける。一方、西国では上月城の落城を受けて宇喜多直家が羽柴軍への降伏を模索し、浦上宗景は大砲の攻略策を考えていた。静子は越後の農業改革に取り組む中、越後での清酒造りを促進しようと杜氏と蔵人の募集を始める。さらに、外洋航行のための中継基地として八丈島への関心を新たにしていた。
巻末SS 公共投資
信長は京都滞在時に静子の京屋敷を宿所としてよく利用している。主な理由はその快適性と高いセキュリティにある。静子邸はかつて警ら隊の活動拠点であり、現在でも京治安維持警ら隊の立ち寄り所として機能している。このため、静子の京屋敷周辺は犯罪発生率が非常に低い。上京の犯罪発生率は平安京遷都以来の低水準を維持しており、下京にも同様の対応が計画されている。京の再開発では土木・建築関係者が集まり、京全体の経済活性化が進んでいる。特に下京では大規模な開発が進められ、期間労働者を対象とした飯場が準備されている。静子は京の再開発を通じて、失業者や浪人を社会に復帰させる政策を推進している。信長は静子の京再開発計画に感心しつつも、大胆な方針に驚く。しかし、この計画は経済活性化だけでなく、敵の侵攻を早期に察知し対応策を立てやすくする副次的な効果も持っている。静子は必要があれば京を一時的に捨てることも辞さない姿勢を示し、京という特異な地を有効に利用する戦略を信長と共有している。
同シリーズ
戦国小町苦労譚 シリーズ
小説版
漫画
その他フィクション
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