どんな本?
戦国小町苦労譚は、夾竹桃氏によるライトノベル。
農業高校で学ぶ歴史好きな女子高生が戦国の時代へとタイムスリップし、織田信長の元で仕えるという展開が特徴。
元々は「小説家になろう」での連載がスタートし、後にアース・スターノベルから書籍としても登場。
その上、コミックアース・スターでも漫画の連載されている。
このシリーズは発行部数が200万部を突破している。
この作品は、主人公の静子が現代の知識や技術を用いて戦国時代の農業や内政を改革し、信長の天下統一を助けるという物語。
静子は信長の相談役として様々な問題に対処し、信長の家臣や他のタイムスリップ者と共に信長の無茶ブリに応える。
この物語には、歴史の事実や知識が散りばめられており、読者は戦国の時代の世界観を楽しむことができる。
2016年に小説家になろうで、パクリ騒動があったらしいが、、、
利用規約違反、引用の問題だったらしい。
前巻からのあらすじ
宣教師フロイスから信長に大鷲が贈られるが、あまりにも肉を食べるので静子の元に贈られて来た。
それをなんの戸惑いもなく世話をする静子。
更にフロイスに壊血病の治療方法の情報を対価に色々な作物、家畜達を要求したら多種多様な動物達が来た。
孔雀、ゾウガメ、シェパード、ターキッシュアンゴラ、、
静子の家が動物王国となってしまう。
世間では、朝倉討伐のために出陣した織田軍を包囲しようと各勢力が動き出す。
そんな中、浅井長政が、、
父親から叛乱を起こされて討ち取られる寸前に、動物達を京に受け取り帰る途中だった静子に出会う。
そこから、お市の方も救出して織田領に連れ帰る。
静子も初めての実戦を経験する。
読んだ本のタイトル
戦国小町苦労譚 5 宇佐山の死闘と信長の危機
著者:#夾竹桃 氏
イラスト:#平沢下戸 氏
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あらすじ・内容
1570年、夏ーー「オウギワシ」「シェパード」「ターキッシュアンゴラ」「孔雀」「ゾウガメ」までもが仲間入りし、動物園状態の静子たち一行は第一次織田包囲網の真っ只中。姉川の戦いを勝ち抜くも、損失の激しかった信長軍は三好三人衆との戦いに苦戦を強いられていた。それまで後方支援に徹していた静子は、ついにゲリラ戦を展開! 自ら弓矢片手に宇佐山城を守るべく奮闘することに・・・・・・
ますます目が離せない大人気戦国ファンタジー大注目の第5巻!!
戦国小町苦労譚 五、宇佐山の死闘と信長の危機
感想
第一次信長包囲網で、遂に自らの手で人を殺め。
多勢に無勢の状態の中、ゲリラ戦術で相手の大軍を足止め。
情報を得るために嬉々として拷問する森可長、、
相手を解放するときに首から下は埋めて、顔に蜂蜜をベットリ塗り虫に集らせる、、
それに戦慄する相手の雑兵達。。
でも、大軍が来る事は止められなかったせいで合戦が始まってしまう。
本来は討ち死するはずだった森可成を何とか救出。
それでも多大な犠牲が出てしまい、負け戦である事は変わりない。
おかげで織田家は苦しい時期に突入してしまう。
そんな中、織田家で多大な影響力を持ってきた静子。
そんな彼女も撤退戦の殿をして森可成を治療してたら、、
過労で倒れてしまう。
そんな彼女の獅子奮迅の活躍で、織田家の中で重要度は爆上がりする。
関わった領地の食糧事情は全て改善して。
あの竹中半兵衛も健康体となり労咳の心配が無くなるほど領民も飢餓から無縁になる。
あと、家にはオオカミ、シェパード、ゾウガメ、フクロウ、オオワシ、さらにカラス達が縄張りにしており。
部外者が来ると警戒して監視する。
襲う事はしないが、一定の感覚で空と陸からジーーーと見ている。
近づくとカラスがジーーー
それでも近づくとフクロウ、ワシがジーーー
さらに近づくと、オオカミ、シェパードがジーーー
軽くホラーw
しかも、実力は森長可(鬼武蔵)が必死に逃げるほど。
何気に侮れない。
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備忘録
元亀元年第一次織田包囲網
千五百七十年八月下旬
コショウ栽培の困難
静子はコショウ栽培の難しさを痛感していた。尾張に届いた苗木と種は発注数よりも大幅に減り、さらに植え替え後に生育できたのはごくわずかだった。寒冷な日本の冬を乗り越えるため、静子はビニールハウスの建設を進めていたが、特殊な設計が必要なため完成までには時間を要した。
フロイスとの会談
静子は新たな作物を手に入れるため、フロイスと会談した。壊血病対策を編み出したことでフロイスは驚き、今回は多くの修道士を伴っていた。その中には修道女もおり、静子はその存在に疑問を抱いたが、良家の子女が派遣されたものと考えた。フロイスは修道士たちを「修行を希望した者たち」と説明し、静子の視線に気づくと苦笑していた。
作物の輸入交渉
静子は新たな作物の輸入を依頼し、フロイスに資金を提示した。彼は書類を確認しながら静子の多様な品目に感心し、特にカカオとコーヒーの扱いに注意を促した。両者はスペインとオスマン帝国の独占品であり、入手は困難だった。静子は「異教徒の独占を防ぐためにコーヒーに洗礼を授ける」という大胆な発想を述べ、フロイスは驚きつつも笑いながらその考えを認めた。
家畜と作物の管理
静子はヤギや羊を輸入し、それぞれ除草や毛皮、乳の供給に活用していた。また、いんげん豆やキャベツ、オリーブなどの栽培も進めており、ポルトガル商人を通じて輸入できる範囲を見極めていた。しかし、難易度の高い作物は商人が敬遠するため、精神的に強い宣教師たちに依頼する方が効果的であった。
武器と天下五剣の譲渡
静子は南蛮の小刀を輸入し、家臣に天下五剣の一部を譲った。姉川の戦い後、足満が「三日月宗近」を所有していたことから、静子はバランスを取るために「童子切安綱」を慶次に、「鬼丸国綱」を才蔵に与えた。さらに、長可には「大典太光世」か「数珠丸恒次」を譲る予定であった。信長は足利家の重宝を持ち帰り、政治的取引を行った可能性が高かった。
目安箱と民意の反映
静子は目安箱の回収を行い、多くの投書が寄せられていることを確認した。目安箱は単なる意見箱ではなく、政治に役立つ情報や役人の不正を通報するための手段であり、一定の規則の下で運用されていた。内容を精査し、必要な政策を実行することで民の信頼を得ていた。
雲水との対話
目安箱を回収する静子の前に、一人の雲水が現れた。彼は目安箱の目的を尋ね、静子は「支配する側とされる側が互いに耳を傾けなければ国は良くならない」と答えた。雲水はその考えに感銘を受け、静子の統治が民の笑顔を生んでいると称賛した。静子は自分の政策が民の生活を良くしていると実感し、照れくさそうに感謝を述べた。
三好三人衆の侵攻と信長の対応
三好三人衆は摂津国へ進軍し、京への足掛かりとして野田・福島に砦を築いた。彼らの軍勢には雑賀衆や斎藤竜興も加わっていた。信長はこの侵攻に激怒し、岐阜を出陣して京へ入り、摂津国で三好三人衆を包囲した。両軍は日本初の大規模な鉄砲戦を繰り広げ、信長は徐々に包囲網を狭める作戦を取った。
足満の戦術
足満は弓騎兵隊とともに、三好兵の火縄銃部隊を狙撃し、兵力を削ぐ作戦を展開した。弓兵の精度は高く、火縄銃を使う兵士を次々に倒した。さらに、スタッフスリングを用いたレンガ投擲で敵の陣を混乱させた。カプサイシン爆弾は雑賀衆に対してのみ使用し、敵の火力を確実に削る戦略を進めていた。
雲水の正体と静子の影響
雲水はただの修行僧ではなく、多くの護衛を伴っていた。慶次と才蔵はその正体に警戒しつつ、静子には余計な心配をかけまいとしていた。静子の夢は大きく、天下統一の先に飢饉の克服を見据えていた。慶次はその壮大な理想に共感し、静子に忠誠を誓っていた。夕餉の話題で気を緩める一方で、彼らは静子の夢を支える覚悟を固めていた。
宇佐山城への進軍決定
静子は慶次、才蔵、長可と兵7500を率い、尾張に留まっていた。信長から従軍命令が下されたが、静子は従えない理由を説明し、別の行動を取ることを決めた。彼女は全軍を整列させ、宇佐山城へ向かうことを宣言した。宇佐山城は織田本軍が挟撃されるのを防ぐための要所であり、敵の南進を止める最後の砦であった。静子は兵士たちに自らの意志で戦うよう訴え、彼らもこれを受け入れた。
兵士たちの決意
静子の演説を受け、兵士たちは沈黙の中で彼女の言葉を待っていた。やがて、一人の足軽・玄朗が前に進み、「命じてほしい」と告げた。彼の言葉に静子は涙を堪えつつ、決意を固めた。戦いは避けられず、自らの生きる道を確信した彼女は、兵士たちに誇りを持って戦うよう促し、全軍は熱狂的な士気を見せた。
坂本守備隊との合流
野田・福島での戦闘が続く中、信長は静子たちの動向について「任務中」と簡潔に説明し、家臣たちの不安を和らげた。静子の軍は坂本守備隊と合流し、宇佐山城の森可成の下に入った。しかし、彼女は到着直後に延暦寺の僧兵に襲撃されたため、山中にブービー・トラップを仕掛けることを決定した。この罠は心理的な負担を敵に与え、戦意を削ぐ狙いがあった。
石山本願寺の挙兵
九月十二日、石山本願寺の顕如が挙兵し、三好三人衆側として参戦した。信長は本願寺の動向を察知し、布陣を調整したものの、戦局は徐々に悪化していった。十三日には本願寺勢力が鉄砲を撃ちかけ、織田軍と交戦状態に入った。十四日には戦闘が激化し、織田軍は守勢に追い込まれ、堤防の破壊による浸水など大きな被害を受けた。
弓騎兵隊の活躍と感染戦術
劣勢の中、足満率いる弓騎兵隊は鉄砲隊を次々に狙撃し、疑似撤退を繰り返した。また、矢尻を雑菌やカビで汚し、負傷者を増やすことで感染症を引き起こす戦術を採用した。この作戦は敵の戦力を徐々に削ぐ効果があったが、戦局を一気に覆すには至らなかった。
織田軍の撤退決定
信長は形勢不利を悟り、石山本願寺との和睦交渉を試みた。しかし、十七日には浅井・朝倉・延暦寺の連合軍3万が南下しているとの報が入り、織田軍の撤退が決定された。軍議が開かれ、坂本守備隊の森可成は静子の軍を軍議に招いた。彼女は三好三人衆の侵攻が陽動であり、本願寺勢力の動きと連動していると分析し、織田軍の窮地を説明した。
遊撃戦の採用
圧倒的な兵力差を前に、静子は正面衝突ではなく遊撃戦を提案した。奇襲や攪乱を用いるこの戦法は、心理的な負担を敵に与えつつ、持久戦を有利に進める狙いがあった。彼女は敵の食糧汚染や放火などの戦術を提示し、森可成は一瞬ためらったものの、最終的に静子の提案を受け入れた。織田軍は生き残るために、あらゆる手段を講じることを決断した。
千五百七十年九月下旬
ゲリラ戦の準備
静子は、道徳や戦中作法を無視できる兵を集め、最終的に800名の志願者を得た。慶次、才蔵、長可も同行を申し出たが、彼らの身分を考慮した静子は躊躇した。しかし、彼らは戦場を選ばず、面白さと忠誠心から参加を決意した。静子たちは闇夜を進み、敵陣の灯りを発見。陣幕に近づくと、静子は双眼鏡で内部を確認し、混乱を誘うための作戦を決定した。
敵陣への奇襲
静子はコンパウンドボウを使い、火矢を放った。陣幕が燃え始め、敵兵が慌てて消火に走る。その混乱の中、次に放った矢には爆発物が仕込まれており、轟音とともに敵兵を負傷させた。これを合図に静子たちは撤退し、敵の追撃を避けながら宇佐山城を目指した。彼女たちは事前に設置した薬剤の匂いを頼りに、犬の先導で道を確保し、無事に拠点へ戻った。
戦略的な攪乱
慶次が静子に攻撃の意図を尋ねると、彼女は「敵の精神を削ることが目的」と答えた。ゲリラ戦は直接的な殺傷よりも、長期的な精神的圧迫が重要であると説明した。その後も静子たちは様々な攪乱工作を実施し、敵軍に混乱をもたらした。毒キノコを食料に混ぜ、爆竹を鳴らし、進軍経路に罠を仕掛けるなどの戦術を駆使し、敵の士気を低下させた。
長可の独自戦術
長可はゲリラ戦術を自ら工夫し、捕虜に拷問を施して敵軍に恐怖を植え付けた。彼は敵の斥候を捕え、手足を縛った状態で埋め、顔に蜂蜜を塗って虫に襲わせるという非道な手法を用いた。この異様な光景が敵軍に広がることで、斥候活動そのものを躊躇させる狙いがあった。
マッチポンプ戦術の実行
長可は敵軍から奪った甲冑や旗を使い、偽装襲撃を仕掛けた。まず、敵兵に扮して村を襲撃し、一定時間後に再び現れ、今度は善意の味方として振る舞った。これにより、村人たちは織田軍を信頼し、連合軍に対する反感を抱くようになった。これが成功すると、長可は静子に報告し、静子は「ばれなければ問題ない」と結論づけた。
敵斥候の捕獲と尋問
長可は敵の斥候を罠にはめ、捕らえた。彼は斥候を逆さ吊りにし、ウォーターボーディングを施すことで情報を引き出した。恐怖に屈した斥候は素直に情報を吐き、長可はその後、彼を地面に埋め、顔に蜂蜜を塗るという拷問を続けた。これにより、敵軍は斥候活動をためらうようになり、織田軍に有利な状況が作られた。
戦局の変化と合戦準備
静子たちの攪乱戦術により、連合軍は兵力を3万から2万5000に減らした。しかし、それでも織田軍に対して数で優位を保っていた。森可成は戦略を調整し、宇佐山城の守備を強化。静子隊も装備を整え、毒を塗った武器を用いて敵を迎え撃つ準備を整えた。
開戦の檄
森可成の要請を受け、静子は兵士たちの士気を高める檄を飛ばした。彼女は「勇敢なる兵たちよ、今こそ武器を取り、敵を討て」と叫び、コンパウンドボウで矢を放った。その矢は敵軍の武将の首に突き刺さり、戦いの火蓋が切られた。
初めての殺人と戦の開幕
静子は初めて自らの意思で敵を討ち、その武将を確実に仕留めた。しかし、その瞬間に湧くはずの動揺はなく、心は静まり返っていた。だが、彼女に考える暇はなかった。敵軍は先制攻撃を受けたことに激昂し、突撃を開始した。通常、戦国の戦ではまず遠距離攻撃が行われるが、この戦場では違った。静子の指揮のもと、投石兵がスタッフスリングを用いてレンガブロックを投げつけ、100メートル以上の射程で敵を襲った。敵兵は足を止めざるを得なかったが、それでも前進を続けた。
クロスボウと混戦の始まり
投石攻撃の後、盾を構えた兵が前線に立ち、隙間から小型のクロスボウを射った。この矢には出血を促す加工が施されており、敵兵は深手を負うこととなった。しかし、連合軍の突撃は止まらず、接敵が避けられない状況となった。静子はすかさず各部隊に指示を出し、前田隊は奇襲、可児隊は突破、長可の隊は敵陣を撹乱する役割を果たした。戦場では各隊が特性を活かし、それぞれの戦い方で敵を圧倒していった。
戦局を揺るがす連合軍の不協和音
織田軍は初日の戦闘で連合軍に2,000~3,000の損害を与えた。連合軍は無策な突撃を繰り返し、消耗を避けるために撤退を選んだ。しかし、軍議では各勢力の意見が対立し、まともな方針が決まらなかった。さらに、宇佐山城に予想以上の兵がいたことで、浅井と朝倉は延暦寺の報告を疑い、内部の不和を深めた。ゲリラ戦の影響で兵の士気が低下し、負傷者の増加によって指揮系統も混乱した。
静子の暗殺戦法
静子は戦場で武将を狙い、要所を撃ち抜く戦法を展開した。彼女の弓の腕前は並外れており、100メートル以上の距離でも高い命中率を誇った。標的を定め、敵の指揮官を優先的に討つことで、戦局を大きく有利に進めた。彼女の冷徹な判断は味方を驚かせたが、戦場では極めて効果的であった。敵軍は次第に指揮を失い、織田軍は優位に立った。
包囲攻撃と戦線の崩壊
連合軍は新たな戦術を取り、三方から挟撃する包囲攻撃を仕掛けてきた。織田軍は弓兵と投石部隊の戦法を活かせず、混戦に持ち込まれた。特に森可成の軍が標的となり、激しい戦いの中、森可成は敵の矢を受けて倒れた。長可は父の救出を試みたが、敵の猛攻が続き、戦況は絶望的になった。
静子の決断と殿の覚悟
静子は戦場の責任者として、撤退戦を決断した。1,500人を殿部隊として配置し、残りの兵は宇佐山城へ撤退を命じた。彼女自身が殿を務めると宣言し、長可をはじめとする味方は驚愕したが、彼女の決意は固かった。長可は静子の命令を受け入れ、森可成を抱えながら撤退した。
死兵と静子の覚悟
残された兵たちは、自らの死を覚悟しながらも、静子の指揮のもと最後まで戦う決意を固めた。彼らは静子に生き延びるよう願いを託し、家族や一族の未来を守ることを求めた。静子はその想いを背負い、殿の任務に全力を尽くすことを誓った。彼女の号令とともに、殿部隊は死兵となり、最後の戦いに臨んだ。
戦況の変化と才蔵の決断
才蔵は戦場の流れを敏感に察知し、敗北が決定的であることを悟った。静子のもとへ向かうよう部隊に指示を出し、殿として撤退を援護する覚悟を決めた。静子に即刻の撤退を進言するも、彼女は責任者として最後まで戦う決意を示した。しかし、才蔵は彼女の役割を強調し、命を落とすべきではないと説得した。「殿は某が仕る」と断言し、静子の安全を確保するための道を開いた。
壮絶な殿戦
才蔵は静子の撤退を見届けると、猛然と敵に突撃した。彼の槍は驚異的な速さで振るわれ、敵兵を次々と討ち取った。剛力と言えば慶次の名が挙がるが、才蔵もまた静子のもとで鍛えられ、劣らぬ腕力を持っていた。敵兵は彼の鬼神のような戦いぶりに恐れをなし、戦列が崩れた。才蔵は静子の才覚と影響力を認め、彼女に仕えることが誇りであると確信した。「死にたいやつは前へ出ろ!」と叫び、さらに敵陣へと突撃していった。
慶次と名もなき兵士の決意
戦場を見渡した慶次は敗北を悟ったが、それを楽しむように微笑んだ。撤退を進言する伝令を放つが、彼自身は最後まで戦うつもりであった。しかし、ある負傷兵が彼の前に立ちはだかり、「旦那はここで死ぬ人ではない」と説得した。背中に矢を受けながらも、兵士は静子を守るために慶次が必要であると信じていた。慶次はその思いを受け止め、「お前らの夢と明日は任された!」と叫び、静子のもとへ向かった。一方、死兵と化した兵士たちは最後の突撃を仕掛け、敵を巻き込みながら戦場に散っていった。
壮絶な撤退戦と玄朗の覚悟
静子たちが撤退する中、玄朗率いる殿軍は数万の浅井・朝倉連合軍と対峙していた。負傷兵ばかりの3,000人という絶望的な状況であったが、静子軍からは一人の脱走兵も出なかった。彼らは己の命を顧みず、静子のため、そして家族のために戦う覚悟を決めていた。玄朗は決死の覚悟で戦いに挑んだが、仲間たちによって無理やり撤退させられた。彼の役目は生き延びて、殿軍の奮闘を静子へ伝えることだった。
死兵と化した織田軍の猛攻
殿軍は敵の度肝を抜く突撃を仕掛け、勝ち誇っていた浅井・朝倉連合軍の兵たちを恐怖に陥れた。死を恐れぬ織田兵たちは、命と引き換えに敵を討つことに全力を尽くした。敵将の首を取ることではなく、できる限り多くの敵を道連れにすることが彼らの唯一の目的であった。その狂気に満ちた戦いぶりに、敵兵たちは戦意を喪失し、隊列を乱しながら逃げ惑った。
浅井・朝倉軍の混乱と織田軍の壮絶な最期
織田軍の兵たちは瀕死の状態でも戦い続け、敵将に組み付きながら命を散らしていった。その執念に浅井・朝倉連合軍は恐怖し、統制が崩壊した。最期の突撃を仕掛けた織田兵たちは、数時間にわたり敵軍を足止めし、撤退戦を成功へと導いた。彼らの壮絶な戦いぶりに、勝利したはずの浅井・朝倉軍の兵たちは恐怖し、織田軍への追撃を諦めた。
戦の結末
宇佐山城の戦いは織田軍の敗北に終わったが、浅井・朝倉連合軍は戦場に残った織田兵の狂戦士のような奮闘により、進軍を大幅に遅らされた。織田軍の1万1,000の兵のうち、4,500人以上が戦死したが、彼らの壮絶な最期は敵軍に深い恐怖を刻み込んだ。浅井・朝倉軍は不要な損害を避けるため、追撃を断念し、戦場を後にした。戦は終わり、信長はさらなる苦境に立たされたが、織田軍の兵士たちはその名を歴史に刻む覚悟で戦い抜いたのであった。
千五百七十年十一月中旬
信長の渡河作戦と一向一揆の壊滅
信長は明智光秀と柴田勝家を殿として残し、野田・福島の兵を撤退させ、江口の渡しへ向かった。江口は水上交通の要所であったが、一向一揆衆が対岸に群がっていた。足満は投石兵を配置し、号令とともに石を投じた。対岸の一揆衆は石が届くとは思わず、防ぐ手段を持たなかった。信長は渡河を開始し、投石による混乱を利用して進軍した。一揆衆の反撃も弓騎兵隊に阻まれ、渡河を終えた織田軍は彼らを急襲した。壊滅した一揆衆を振り切り、信長は京へ帰還し、さらに坂本へ進軍した。
宇佐山城の戦況と森可成の死
信長の急襲により、宇佐山城を攻めていた浅井・朝倉軍は撤退し、比叡山へ逃げ込んだ。信長が城へ入ると、青地茂綱が戦況を報告し、森可成の戦死を伝えた。信長は宇佐山城を捨てるよう指示していたが、可成は最後まで戦い抜いた。家臣たちは血塗れの甲冑を信長の前に並べ、彼は静かに「大儀であった」と語った。その言葉に家臣たちは涙を流し、悲しみに包まれた。
長可の怒りと慶次の制止
長可は苛立ちを抑えられず、僧兵や斥候を捕らえて拷問し、暴力に明け暮れた。仏罰を口にする僧兵を殴りつけ、「仏を連れてこい」と叫んだ。慶次が彼を制止し、「後ろを向くな、前を見ろ」と諭した。長可は悔しさを滲ませながらも、慶次の言葉を受け入れ、「もっと強くなって親父を超える」と誓った。その場には血と臓物が飛び散り、凄惨な空気が漂っていた。
静子の演技と森可成の生存
信長は延暦寺の僧たちを呼び出し、山門領の返還と武家の戦へ関与しないことを迫った。僧たちは仏の加護を信じて高を括っていたが、突然、血塗れの森可成が現れると悲鳴を上げて逃げ惑った。これは静子が考案した策略で、森可成は実際には戦死しておらず、重傷を負ったものの静子の治療によって命を取り留めていた。敵を欺くために味方さえも騙し、森可成の死を偽装したのだった。
静子の倒れる日
策略が成功し、皆が安堵した矢先、静子は突如倒れた。過労による心因性発熱であり、宇佐山城中が大騒ぎとなった。慶次や才蔵、長可が動揺する中、信長は冷静に指示を出し、薬師と衛生兵を呼び寄せた。診断の結果、静子は極度の疲労による発熱と判断された。信長は静子の介抱を自ら行い、彼女の働きを労った。
宇佐山城の異様な空気
静子が倒れてから、宇佐山城は異様な空気に包まれた。長可は毎朝神仏に祈り、才蔵は報告書を逆さに読むなどミスを連発し、慶次は煙草に火をつけるも吸わず灰だけを生産した。兵たちは静子の回復を願い、敵への怒りを募らせた。三日後、静子は意識を取り戻したが、依然として体調は万全ではなかった。信長は彼女に休養を命じ、「仕事は全て滞りなく進めている。貴様の役目は休むことだ」と言い残し、部屋を後にした。
森可成の後悔と決意
森可成は長可の成長を静子のおかげだと感謝しつつ、「自分は良い父ではなかった」と自嘲した。武家の父親としての責務を果たさず、長可を放置していたことを悔やんでいた。静子は「失敗を上回る成功を収めれば良い」と諭し、森可成は「いくさも育児も変わらぬ」と納得した。
信長の決断と帰還
信長は雪が降る前に朝倉を討つため、延暦寺を包囲する方針を固めた。静子の疲労を考慮し、慶次や才蔵とともに尾張へ帰還させることを決定した。一方、長可と1,000の兵は宇佐山城に残ることを選んだ。信長は長可の成長を認め、「立派な武将になった」と評価した。森可成は「お館様のために働かせていただきます」と応え、父としての誇りと涙を滲ませた。
静子軍の再編と長可の暴走
坂本・宇佐山城の合戦で静子隊は兵を半数以上失い、再編成が行われた。慶次と才蔵は静子の馬廻衆に戻り、静子自身も療養に専念した。森可成も傷を癒すため領地へ戻り、長可は単独で指揮を執ることとなる。信長の期待を受けた長可は、戦場で暴れ始めた。
村の壊滅と信長の反応
信長は「延暦寺に協力する村を説得せよ」と命じたが、長可は翌日帰還すると村は全滅し、焼け落ちていた。信長に「背後から襲われたため武力で対応した」と報告すると、信長は「問題なし」と受け流し、むしろ煽るような態度を見せた。
関所の襲撃と村の虐殺
延暦寺の関所が織田軍の通行を拒否すると、長可は門番を皆殺しにし、関所を焼き払った。さらに周辺の村を襲い、住民を虐殺した。信長に「通れなかったので通れるようにした」と報告すると、「ご苦労」と認められた。
寺の占拠と破壊
長可は兵の宿泊地として延暦寺勢力の寺を占拠し、僧たちに食事を要求した。僧が拒否すると、彼らを皆殺しにし、寺に火を放った。仏像を移動させた後で焼き払うことで「仏も喜んでいる」と嘯いた。後日、自ら置いた仏像を忘れ、薪として破壊した。
僧兵の拷問と火刑
延暦寺の斥候を捕らえると、長可は拷問の末、磔にし、生きたまま焼き殺した。その後「逃亡したため追跡したが、焼身自殺をされた」と信長に報告した。信長は責めることなく、長可の行動を容認した。
鬼斬の異名
長可の狂気じみた行動が織田家中で恐れられ、家臣たちは彼を「鬼斬」と呼ぶようになった。彼は独自にゲリラ戦術を展開し、悪逆無道の限りを尽くした。信長が比叡山・坂本での騒ぎを問題視し呼び出したが、長可には長島の一向一揆討伐を命じるにとどまった。家臣たちは彼の転戦に安堵した。
静子の帰還と療養
宇佐山城での戦闘後、負傷兵とともに静子は帰還命令を受けた。襲撃の懸念はあったが、一向一揆勢も追撃を躊躇し、無事に美濃へ帰還した。彩が出迎え、静子は久々に風呂を楽しんだが、体力の回復には時間を要した。
静子の休息と反静子派の沈静化
休養中の静子は猫たちと戯れながら心身を癒やし、前久の指導で連歌と書道を学んだ。彼女の和歌には「心がこもっていない」と指摘され、理と情のバランスを学ぶこととなった。一方、秀長が反静子派を説得し、静子への反発は鎮まった。
信長の商業戦略と柚子胡椒の開発
信長は醤油と干しアユの販売戦略を進め、莫大な利益を得た。静子は新たな調味料として柚子胡椒を開発し、料理の幅を広げようと試行錯誤を重ねた。
蟄居状態と暇の持て余し
信長の命で静子は自宅に留め置かれ、仕事を禁じられた。退屈に耐えかねた静子は、前久に手紙を送り学びを深めたが、なかなか満足のいく結果を得られなかった。
長可への鉈の贈呈静子軍の再編と長可の暴走
坂本・宇佐山城の合戦で静子隊は兵を半数以上失い、再編成が行われた。慶次と才蔵は静子の馬廻衆に戻り、静子自身も療養に専念した。森可成も傷を癒すため領地へ戻り、長可は単独で指揮を執ることとなる。信長の期待を受けた長可は、戦場で暴れ始めた。
村の壊滅と信長の反応
信長は「延暦寺に協力する村を説得せよ」と命じたが、長可は翌日帰還すると村は全滅し、焼け落ちていた。信長に「背後から襲われたため武力で対応した」と報告すると、信長は「問題なし」と受け流し、むしろ煽るような態度を見せた。
関所の襲撃と村の虐殺
延暦寺の関所が織田軍の通行を拒否すると、長可は門番を皆殺しにし、関所を焼き払った。さらに周辺の村を襲い、住民を虐殺した。信長に「通れなかったので通れるようにした」と報告すると、「ご苦労」と認められた。
寺の占拠と破壊
長可は兵の宿泊地として延暦寺勢力の寺を占拠し、僧たちに食事を要求した。僧が拒否すると、彼らを皆殺しにし、寺に火を放った。仏像を移動させた後で焼き払うことで「仏も喜んでいる」と嘯いた。後日、自ら置いた仏像を忘れ、薪として破壊した。
僧兵の拷問と火刑
延暦寺の斥候を捕らえると、長可は拷問の末、磔にし、生きたまま焼き殺した。その後「逃亡したため追跡したが、焼身自殺をされた」と信長に報告した。信長は責めることなく、長可の行動を容認した。
鬼斬の異名
長可の狂気じみた行動が織田家中で恐れられ、家臣たちは彼を「鬼斬」と呼ぶようになった。彼は独自にゲリラ戦術を展開し、悪逆無道の限りを尽くした。信長が比叡山・坂本での騒ぎを問題視し呼び出したが、長可には長島の一向一揆討伐を命じるにとどまった。家臣たちは彼の転戦に安堵した。
静子の帰還と療養
宇佐山城での戦闘後、負傷兵とともに静子は帰還命令を受けた。襲撃の懸念はあったが、一向一揆勢も追撃を躊躇し、無事に美濃へ帰還した。彩が出迎え、静子は久々に風呂を楽しんだが、体力の回復には時間を要した。
静子の休息と反静子派の沈静化
休養中の静子は猫たちと戯れながら心身を癒やし、前久の指導で連歌と書道を学んだ。彼女の和歌には「心がこもっていない」と指摘され、理と情のバランスを学ぶこととなった。一方、秀長が反静子派を説得し、静子への反発は鎮まった。
信長の商業戦略と柚子胡椒の開発
信長は醤油と干しアユの販売戦略を進め、莫大な利益を得た。静子は新たな調味料として柚子胡椒を開発し、料理の幅を広げようと試行錯誤を重ねた。
蟄居状態と暇の持て余し
信長の命で静子は自宅に留め置かれ、仕事を禁じられた。退屈に耐えかねた静子は、前久に手紙を送り学びを深めたが、なかなか満足のいく結果を得られなかった。
長可への鉈の贈呈
静子は美濃の刀工に依頼し、多目的軍用シャベルと剣鉈を開発した。長可が小木江城へ向かう際、静子は彼に長めの腰鉈を譲った。後にこの鉈は「脳天かち割り鉈」として語り継がれることとなった。
静子は美濃の刀工に依頼し、多目的軍用シャベルと剣鉈を開発した。長可が小木江城へ向かう際、静子は彼に長めの腰鉈を譲った。後にこの鉈は「脳天かち割り鉈」として語り継がれることとなった。
千五百七十年十二月下旬
静子の退屈と戦後処理
静子はやることがなく、ただ待機する日々を送っていた。信長に提案した意見は却下され、戦後処理を引き続き担当するよう命じられていた。奇妙丸は比叡山包囲戦、長可は小木江城の防衛に就き、濃姫も消息を絶っていた。戦没者や傷痍者への対応には慶次や才蔵の助力を求め、慰霊碑を建立し供養を行った。戦没者の中には元奴隷や前科者も含まれていたが、静子は全員に同じ供養を施し、「死ねば仏」と言い放ち、周囲を驚かせた。傷痍者には臨時の治療院を設立し、治療を支援した。
戦没者遺族の支援策
戦没者遺族の生活を支えるため、静子は紡績工場を建設し、寡婦たちを女工として雇用する計画を立てた。工場の発展に伴い、保育所や寺子屋、衛生施設が整備され、多くの雇用が生まれた。だが、最大の問題は流行病であった。防疫を強化するために公衆衛生や法の整備を進める必要があった。さらに、迷子紐(セーフティーハーネス)を普及させ、幼児の事故防止を図った。反対意見も多かったが、静子は権力を行使し、装着を義務化した。
空中栽培の実験とその成果
静子は薩摩芋の空中栽培に成功し、収穫量の向上を確認した。二期作が可能であることを示し、専有面積一平方メートルあたりの収穫量を増やす計画を立てた。しかし、収穫された薩摩芋の消費が問題となり、静子はチップスなどに加工し間食用として利用した。
南蛮馬の輸入と信長の関心
信長の厳しい移動制限が緩和され、静子はフロイスとの取引でアラブ種の馬を受け取った。アラブ種は走力と耐久性に優れるが、日本の地形では運用が難しく、木曽馬との交配を視野に入れた。信長はアラブ種を気に入り、一頭を自ら選んだ。
猫の輸入と誤解
フロイスはイエズス会の意向に反し、静子へ山猫を献上した。静子は無用な乱獲を戒めつつ、マヌルネコを「丸太」と命名し飼育を始めた。一方、妙に大きな白猫の種類は不明であったが、静子には嫌な予感があった。
壊血病対策とカトリック教会の反応
壊血病の治療法として、静子はフロイスにモヤシ栽培を提案し、効果を証明した。カトリック教会はこの知識を秘儀として利用し、教会の権威回復を図った。
小木江城の防衛戦と奇襲戦術
長島一向一揆衆が小木江城を包囲したが、城の要塞化と足満の毒を用いた戦術により進軍を阻まれた。長可と足満は夜襲や罠を駆使し、敵の戦意を削いだ。使者を送り降伏を促したが、使者は皆処刑された。
信長の和睦工作と反織田勢力の動き
信長は朝廷を動かし、反織田連合と和睦を進めた。浅井・朝倉はこれを受け入れ、延暦寺も渋々従った。信長は天下を望まないとする誓約書を提出し、講和が成立した。これにより、信長は一時的に危機を脱したが、織田軍の弱体化が露呈し、多くの離反者を出した。
人攫いの取り締まりと長可の暴走
信長は織田領での人攫いを取り締まるため、長可を派遣した。長可は苛烈な手法で摘発し、悪名を轟かせた。静子の特注武器を勝手に使用したことで抗議が殺到し、彼の暴走が問題視された。
長可の成長と静子の対応
静子は長可が思春期に入り、精神の均衡を崩していることを見抜いた。彼に理解を示しつつ、慶次や才蔵に相談役を任せた。長可は慶次に連れられ、酒を交えながら男同士の話し合いをすることとなった。
信長の悩みと静子の助言
信長は家臣の離反に憤りを感じていたが、静子は「忠誠を尽くす者が残ったことを幸運と考えるべき」と助言し、信長を納得させた。信長は静子の言葉に笑い、敵対者を容赦なく排除する決意を固めた。
未来への決意
信長は静子に対し、「辛くなったら仲間を頼れ」と諭し、彼女を支える意思を示した。静子はその言葉に感謝しつつ、これからの戦いに向けて気を引き締めた。
矢の増産と織田軍の戦略
静子は来年早々に戦が始まることを見越し、信長が和睦を結ぶ前から矢の増産に注力していた。戦国時代の矢は使い捨てが基本であり、特に静子軍のように弓兵の多い軍にとっては、大量の矢を短期間で確保することが重要であった。信長は火縄銃の調達が難しいことを考慮し、短弓を大量生産し、弓の斉射戦法を採用した。その製造を統括しているのが静子であり、彼女は効率的な大量生産と規格統一により、矢の供給を安定させていた。
冬の準備と静子の役割
静子は軍の兵站だけでなく、日常の業務にも追われていた。竹中半兵衛が「戦闘食」という名称を「いくさ飯」に変更するよう提案し、静子も異論なく受け入れた。また、害虫駆除のための加圧式ハンドポンプの試作品が届けられたが、噴霧量が多すぎる問題があり、改良を求めることとなった。年末を迎えるにあたり、静子は一時的な休養を取ることを決めたが、翌年には信長が軍備を整え、戦に向けた動きを活発化させていくことが予想されていた。
信長の懸念と静子の立場
信長は静子の武功が高まりすぎることを問題視していた。彼女が女性であるがゆえに、影響力を狙った政略結婚の対象になりかねないと考えたためである。そこで、信長は静子を織田家の一分家として扱い、自身の子を養子にすることで、その影響力を織田家内に収める方針を打ち出した。また、信長は森可成に訳ありの子の教育係を任せることを依頼し、森可成はそれを快く引き受けた。
反織田勢力の調略と静子の対応
反織田勢力は静子を引き抜こうと画策していたが、彼女自身もそれを察知し、足満、みつお、五郎と共に対策を講じた。五郎は料理にしか興味がなかったが、調略に乗る気はなく、彼らは信長への忠誠を再確認した。特に、信長にとって静子たちの存在は織田家の発展に不可欠であり、反織田勢力の調略を警戒する必要があった。
甲賀衆の動揺と臣従
甲賀衆は信長が大量の金を保有していると誤認し、これにより信長に臣従するしかないと判断した。実際には信長が仕掛けた罠であり、多くの荷車には金の延べ棒は積まれていなかった。しかし、甲賀衆はこの事実に気づかず、年明けには信長へ臣従する決断を下した。信長は甲賀衆に一定の自治を認める一方、作戦行動の逐次報告を義務付けた。
長政の決意と信長の助言
浅井長政は信長のもとで一兵卒からやり直すことを決意し、父・久政との決着を自らの手でつけようとしていた。信長は彼の覚悟を受け入れつつ、「死んだつもりで生きてみよ」と助言した。長政はこれを受け入れ、涙を流しながら新たな道を歩み始めた。
織田家の権力争いと静子の立ち位置
信長の家臣団では柴田勝家、丹羽長秀、滝川一益、明智光秀、木下秀吉の五大将が権力争いを繰り広げていた。彼らは静子とその軍を味方に引き入れたかったが、静子軍は信長直轄の部隊であり、調略は困難だった。一方で、静子は戦とは関係なく、水耕栽培の試験に取り組んでおり、わさびの安定した大量生産を目指していた。
岐阜酒造会社の設立と影響
静子は尾張・美濃の酒造業を立て直し、岐阜酒造会社を設立した。この会社は酒造家と商人を繋ぐ役割を果たし、株式制度を導入して運営の安定化を図った。信長や森可成も株式を保有しており、織田家の財政基盤を強化する仕組みが整えられた。
羊羹の乱と静子の苦悩
静子が開発した羊羹は、家臣たちの間で好みが分かれ、争いを引き起こした。この騒動は「羊羹の乱」と呼ばれ、結果として羊羹がいくさ飯として採用されることはなかった。しかし、需要は高まり、静子は五郎を監督として岐阜に甘味処「岐阜屋」を開くこととなった。
事務担当の不足と静子の課題
静子は増え続ける業務に対応するため、事務・経理を担当できる人材を求めていた。しかし、武勲を目指す者が多い戦国時代において、陰で支える人材は極めて少なく、育成の必要性を感じていた。彩の負担が増していることを考慮しながらも、すぐに解決できる策は見つからなかった。
意外な訪問者
年の瀬が迫る寒さの中、前久のもとに上杉謙信が姿を現した。彼は雲水の姿で訪れ、周囲の者を下がらせると、前久と静かに語らい始める。越後の龍が岐阜にいることは誰も予想せず、武田の忍びさえも欺かれていた。謙信は冬の庭を眺めつつ、前久と共に酒を酌み交わした。
月夜の語らい
謙信は前久が用意した燗酒に驚きつつ、その風味を楽しんだ。彼は織田家に身を寄せる前久へ忠告しつつも、かつての盟友としての絆を再確認する。やがて謙信は前久の娘について語り始め、彼女が持つ影響力に言及した。武田や北条の忍びが気づかないほど巧妙に動く彼女の手腕に、謙信は関心を示した。
静子との対面
翌日、静子が前久のもとを訪れると、謙信は待ち構えていた。彼女が連れる巨大な獣たちに驚くも、その威厳に感嘆した。謙信は静子の人柄に触れ、単なる利を求める者とは異なる風を感じたと語る。静子は謙信が岐阜に来たことを気遣い、単純な善意を示すが、それこそが謙信を驚かせた。
近衛静子の正体
論功行賞の場で、前久は静子の正体を明かした。彼女が近衛家の人間であることに家臣たちは驚くも、彼女の才能を既に知る者たちは動じなかった。信長は静子を重用し、彼女の存在を家臣に明示することで、織田家内での立場を確立させた。
新兵の試練
信長より百名の足軽が静子に預けられた。彼女はまず体力測定を行い、砂地での長距離走を課した。新兵たちは次々と脱落し、最後まで走りきれた者はほぼ皆無だった。さらに懸垂などの訓練を課し、彼らの実力を見極めた。遠巻きに見守る信長は、新兵の中に浅井長政が混ざっていることを知っていた。
森可成と長可の手合わせ
年末、森可成が訪れ、長可との手合わせを求めた。左腕に障害を持ちながらも、可成は長可を圧倒し、戦いの基本を説いた。技に頼るのではなく、一突きで敵を怯えさせることの重要性を教え、長可の成長を促した。
静子の準備と新たな波乱
年末、静子はペニシリン培養用のシャーレや防寒具を揃え、兵たちの冬支度を整えた。防寒装備の配布により、兵たちの士気は向上した。彼女は来年こそ静かな生活を送りたいと考えるが、宇佐山城での戦いが世間に衝撃を与えたことで、各国の間者が動き出していた。静子の波乱に満ちた日々は、まだ続くのであった。
書き下ろし番外編 ネコなんだもん
早朝の目覚めと食事
丸太は夜行性のマヌルネコであったが、飼育下で人間の生活リズムに順応し、日の出とともに目を覚ました。早朝五時、寝床から抜け出すと一鳴きし、腹が減ったことを静子に伝えた。反応がなければ廊下を歩きながら鳴き続けるのが常であった。静子が応じると、彼女の後ろに回りじっと見上げた。朝食はハツカネズミであったが、丸太はすぐに食べず、水が足りないことを手で床を叩いて知らせた。井戸水や溜め置きの水は飲まず、山の清流から汲みたての水を好むため、静子は渋々用意した。水と餌が揃うとようやく食事を終え、満足げに尻尾を振りながら散策へ向かった。
縄張りの巡回と休息
食後、丸太は自らの縄張りを巡回し、異常がないことを確認すると、日当たりと風通しの良い休憩場所を探した。しかし、最適な場所はヴィットマンファミリーが陣取っていたため、二番目に良い場所で休むことにした。一度あくびをすると、体を丸めて深い眠りについた。二時間後、目を覚ますと再び縄張りを見回った。外敵の侵入はなかったが、本能的な行動であった。巡回を終えると、静子の部屋へ向かい、器用に扉を開けて寝床へ潜り込んだ。籠に絹布を敷き詰めた特製の寝床で毛繕いをした後、再び仮眠をとった。
長可との交流とブラッシング
午後三時、目を覚ました丸太は静子の近くへ向かったが、彼女が仕事に没頭していたため、気づいてもらえなかった。仕方なく部屋を出て、次善の策として長可を探しに行った。道中、慶次と遭遇し、撫でられると満足げに鳴いた。その後、長可を見つけると、彼は猫じゃらしでターキッシュアンゴラのタマとハナを相手に遊んでいた。長可の技術は並外れており、二刀流で猫じゃらしを操っていた。丸太が近づくと、長可は彼の意図を察し、ブラッシングをしてやることにした。特製の手入れキットを用い、丁寧にブラシをかけると、丸太は満足し、長可の手を軽く叩いて礼を述べた後、その場を去った。
夕刻の食事と就寝準備
日が沈む頃、丸太は再び食事を求めて鳴きながら歩いた。しかし、反応したのは彼が最も苦手とする彩であった。一瞬身を震わせたものの、食事の要求は変えず鳴き続けた。彩は適当な者に指示を出し、ハツカネズミが用意された。食事を終えると、体の汚れを拭き取られ、夜のブラッシングを受けた。長毛種ゆえ、一日二度の手入れが必要であり、夜の時間は理想的であった。満足した後、丸太は静子の部屋へ向かった。
静子とのひとときと就寝
静子は明かりを灯しながら読書をしていた。彼女は丸太が近づくとすぐに気づき、撫でてやった。丸太は心地よさそうに喉を鳴らし、静子のそばでまったりと過ごした。しかし、やがてあくびをすると、寝床へ移動し、大の字になって眠りについた。静子は彼の顎下を優しく撫でながら、自由気ままな丸太の様子に微笑んだ。こうして、丸太の一日は静かに幕を閉じた。
特別書き下ろし 猫は傾奇者なり
猫たちの占拠と静子の嘆き
静子の部屋は、猫たちとヴィットマンファミリーによって完全に占拠されていた。寒い季節になると、暖を求める猫たちが集まり、快適な場所で惰眠を貪っていた。特に静子の部屋は、日差しを調整できる構造や、エコ加湿器、掘り炬燵があるため、猫たちにとって理想的な環境であった。静子は机の上で寝る猫を追い払おうとしたが、全く動じない。ヴィットマンファミリーも部屋の隅でくつろぎ、誰も出て行く気配がなかった。追い出しても翌日には元に戻るため、静子は諦めるしかなかった。
おやつの催促と猫たちの合唱
静子の部屋にいる猫たちは、朝になると一斉に起き、おやつを要求し始めた。特にターキッシュアンゴラのタマは、静子の体をよじ登りながら催促するほどであった。静子がささみ姿干しを取り出すと、猫たちは鳴き声の大合唱を始めた。彼らは食べ物に対する嗅覚が鋭く、静子が持っていることをすぐに察知していた。静子はおやつを簡単には渡さず、猫たちに跳んで取るよう挑発した。猫たちは懸命に飛び上がったが、静子の素早い動きに翻弄され、なかなか手に入れられなかった。
タマの勝利と猫たちの満足
猫たちは諦めずにささみを狙い続けた。特にタマは執念を見せ、ついに空中で向きを変えて静子の腕にしがみついた。驚いた静子が腕を振っても、タマは離れず、静子の手のひらを舐めた。これには静子も降参し、ささみ姿干しを細かくカットして猫たちに与えた。満足した猫たちは食後に伸びをし、それぞれ好きな場所で昼寝を始めた。
ヴィットマンファミリーの甘えと静子の奮闘
猫たちが眠りについた直後、今度はヴィットマンファミリーが静子の元へ駆け寄った。カイザーが静子の口を舐めると、他の狼たちも負けじと甘え始めた。静子は彼らをなだめるため、強めに撫でてやると、次々に頭を差し出してきた。30分もすると、ヴィットマンファミリー全員が床に寝転がり、手足を伸ばして完全に脱力していた。静子は得意げに彼らを撫でながら、自分の撫でスキルに自信を深めた。
仕事を忘れた静子の悲劇
その後も静子は、ブラッシングや昼寝から目覚めた猫たちの相手をしながら、彼らと遊び尽くした。しかし、翌日になって仕事が全く進んでいなかったことが彩に発覚し、静子は厳しく叱責された。
同シリーズ
戦国小町苦労譚 シリーズ
小説版
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漫画
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その他フィクション
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