「陰の実力者になりたくて!」は、逢沢大介 氏による日本の小説。
異世界ファンタジーとコメディの要素を持ち、主人公のㇱドが、ヒーローではなく、陰で世界を牛耳る様な「陰の実力者」に憧れているというストーリー。
小説版は、小説家になろうにて2018年1月から掲載され、書籍版はエンターブレイン(KADOKAWA)より2018年11月から刊行。
また、漫画版やアニメ版も制作されている。
特徴は、ストーリー展開がメチャクチャ飛びまくる。
どうやら読者にアンケートして面白い展開を決めてたらしい。
だから展開が予想の斜め上や下に行くからメチャクチャに感じてしまう。
そして、それが面白い。
小説版3巻の後約2年間新刊が出てなかったが。、
アニメ化発表と同時に4巻を発売したのが21年3月くらい。
アニメ1期放映中(2022年12月28日)に5巻を発売。
そして、アニメ2期放映中(2023年10月30日)に6巻を発売。
小説家になろうの分は既に超えており。
いつエタるか判らない。
止まらないでください!!!
アニメ1期(全20話)は1,2巻分が大好評。
小説3巻、4巻部分を2期(全12話)で放送。
4巻の現代編は映画で放送するらしい。
2巻の主な出来事
アルファの誘い
アルファからの手紙には「暇なら聖地に来て」と一言だけ書かれていた。学園が半焼し、夏休みに入った僕は暇を持て余していたので、アルファの誘いに乗り、聖地リンドブルムへと向かった。
リンドブルムでの過ごし方
シドとローズは二日後に聖地リンドブルムに到着した。聖教会が立つ山の麓には白い街並みが広がり、観光客で賑わっていた。主人公は温泉が好きで、リンドブルムに来た際、早朝の温泉を楽しんでいた。
前夜祭の出来事
前夜祭の夜、リンドブルムの時計塔から街を見下ろす男がいた。男は聖教会のパーティーには呼ばれておらず、呼ばれても辞退するつもりであった。男は夜の風に髪をなびかせながら、街や人々を見下ろすことが好きであると微笑む。
アレクシアの不満
アレクシアは『女神の試練』の開幕セレモニーでネルソンとナツメに不満を抱いていた。ネルソンが事件の調査を拒否し、ナツメの人気に疑念を抱いていた。
ベータの感情
ベータはアレクシアに対する不満を抱いており、彼女の存在に強い嫌悪感を抱いていた。また、シャドウの登場に驚きと理解を示し、アウロラとの戦いに心配を抱いていた。
シャドウの戦い
主人公は『女神の試練』でシャドウとアウロラの戦いに臨み、ヴァイオレットとの戦いを通じて対話を楽しむ久々の感覚を味わっていた。シャドウはアウロラとの戦いで驚異的な実力を見せ、勝利を収めた。
ローズとアルファの対立
ローズとアルファの対立では、アルファがシャドウガーデンの一員として聖域に侵入し、ローズたちとの対立が描かれる。アルファの力を持つイプシロンが登場し、戦いが激化する。
イプシロンの新たな生きる意味
イプシロンの新たな生きる意味では、イプシロンが悪魔憑きとなり、過去を失った経緯や力を求める姿が描かれる。彼女はスライムボディースーツを駆使し、ヴェノムとの戦いで圧倒的な力を見せる。
聖域での戦いとオリヴィエの登場
聖域での戦いとオリヴィエの登場では、ローズたちが聖域で戦いを繰り広げる中、オリヴィエが登場し、ディアボロス教団とシャドウガーデンの対立が明らかになる。ネルソンの計画が進行中であり、聖域に侵入した者を追うためオリヴィエと共に場を去る。
遺跡での戦い
主人公とヴァイオレットは遺跡で戦いが展開し、オリヴィエやアウロラとの対峙、そしてシドの奮闘が描かれる。
聖域の消滅
シドが聖域を破壊し、アウロラとの別れを経験した後、イプシロンとアルファが新たな情報を得ている。
情報の共有と決意
アレクシア、ローズ、ナツメの3人は情報を共有し、新たな戦いに向けて協力を決意する。また、イプシロンのプライドやシャドウとの思い出が描かれる。
ローズの剣の道
ローズは幼い頃から芸術に親しんで育ちながらも、美しい剣に憧れ、剣の道を選ぶ。彼女は学園での剣の感覚を取り戻し、父王の訪問と婚約に対する決意を固める。
ブシン祭への準備
主人公はブシン祭に登場し、計画を実行するための準備を進める。ガンマは主の意図を理解しようと努力し、スライムを用意する。そして、主人公は大会に登録を完了し、自らの計画通りに進む。
ローズの逃亡と情報共有
ローズ生徒会長が婚約者を刺して逃亡し、情報を共有する。ナツメは慎重な行動を促し、アレクシアはローズを見捨てないことを決意し、情報収集を提案する。アレクシアとナツメは情報を交換することを約束し、ローズの理由を探るための行動を開始する。
ブシン祭の予選
『ブシン祭』の予選が開始され、シドとヒョロが闘技場で試合を観戦していた。予選は進行中であり、バトルデータを集計して賭けに参加するヒョロと、興味を持つシドが登場する。
ジミナとゴルドーの戦い
ゴルドー・キンメッキとジミナ・セーネンの戦いでは、ゴルドーが勝利を確信するものの、最後に逆転される展開があった。ゴルドーの技は驚異的だったが、最終的には敗北し、ジミナが勝者となった。
本戦への進出
本戦への進出が決まった選手たちは、予想外の戦いを見せる一方で、相手や観客との関係にも悩みを抱えていた。ジミナが本戦へ進む中、期待と不安が入り混じった状況が描かれる。
夏の朝とイメージトレーニング
夏の朝、主人公はイメージトレーニングをするために時間を過ごすが、ヒョロからローズ生徒会長の手配書を持ちかけられる。管理人からの連絡で、クレア姉さんが帰ってきたことを知り、ローズ捕獲作戦を決意し、窓から飛び降りて行動を始める。
アレクシアとベータの探索
アレクシアとベータは地下迷宮で教団との関係を探っていた。アレクシアはオリアナ国王の様子や、地下道についてベータと議論し、互いの行動について戸惑いつつも進んでいく。
語り手とピアノの音
語り手は早朝の王都を歩く中、ピアノの音に導かれて高級ホテルのカフェでイプシロンに出会う。ローズ王女の行方を尋ね、イプシロンは地下に逃げ込んだと伝える。イプシロンは王国での仕事に向かう予定で、語り手は彼女のスタイルを褒める。
感情の持続性
感情は長期間持続しないものであり、時間と共に薄れていく。怒りも時間が経つことで減少する。したがって、感情が原因での人間関係の衝突は時間が解決するという説を提唱している。
ブシン祭の展開
クレアと主人公の関係や「ブシン祭」の本戦の展開が描かれる。特別席の誤りや選手たちの戦い、新たな登場人物の会話や出来事が進行する。
アンネローゼとジミナの対戦
アンネローゼとジミナの対戦が描かれる。ジミナの技量や戦いの進行、両者の心境や戦略についての描写が含まれる。
特別席での出来事
特別席ではミツゴシ商会製の珈琲を楽しみながら、アイリス王女やベアトリクスなどのセレブたちとの会話が交わされる。本戦2日目が始まる中、微妙な空気の中で『ブシン祭』本戦2日目が始まる。
ドエムの計画とローズの登場
ドエムはオリアナ国王を操り、ミドガル国王を殺す計画を進めていたが、ベアトリクスやローズの登場により状況は複雑になる。ドエムの計画は崩れ、ローズは自らの命を絶とうとするが、ジミナが現れ、彼女を救う。
アイリスの試合と敗北
アイリスはジミナ・セーネンに敗れ、ドエムは彼の実力を認めつつも嫉妬を燃やす。アイリスの敗北により、状況は一変し、ローズの登場が注目を集める。
ローズ・オリアナの勇気
ローズ・オリアナは、父の死を無駄にせず最後の使命を果たす覚悟を決めた。しかし、幼少期の誘拐事件でスタイリッシュ盗賊スレイヤーに救われた記憶を持ち、その出来事が彼女の剣の道志向に影響を与えた。
スタイリッシュ盗賊スレイヤーの出現
幼少期にスタイリッシュ盗賊スレイヤーに救われた経験を持つローズは、シャドウの正体がそのスレイヤーであることを確信する。シャドウの言葉で、ローズは自らの死を選ぼうとしたことを恥じ、使命を果たす決意をする。
シャドウの真の目的
雨の中、ローズは父の死と王女としての責任を背負う決意をする。エルフのアルファに出会い、シャドウと共に戦うことを決意する。そして、シャドウの真の目的について思い巡る。
読んだ本のタイトル
#陰の実力者になりたくて ! 02(The Eminence in Shadow, Vol. 2 英語版)
著者: #逢沢大介 氏
イラスト: #東西 氏
あらすじ・内容
聖地・リンドブルムで行われる「女神の試練」イベントへと訪れたシド。
一年に一度、「聖域」の扉が開かれるこの日に、突如現れたのは、かつて世界に混乱と破壊を招いたと言われる「災厄の魔女・アウロラ」だった。
「災厄の魔女」と「聖域」、そして「ディアボロス教団」と「シャドウガーデン」の思惑が錯綜する!
感想
前の巻で活躍した王女が2人。
1人は自国の第二王女。
もう1人は隣国の芸術の国の王女?
共に剣を嗜むからややこしいが、、
主人公が通う学園は魔法剣術の学校だった。
なら仕方ないか。
さらに、主人公の部下、七陰達の表の仕事も順次発覚。
前の巻で既にわかってたけどガンマはミツボシ商会の商会長。
主人公の前世の知識を活かした商品を売りまくる。
ベータは作家。
吾輩は猫である、赤ずきん、ロミオとジュリエットをパクって出版してベストセラーになっている。
イプシロンはピアニスト。
主人公の前世の知識を活かして曲をパクっている。
それを知った時の主人公の懺悔が面白いw
デルタは、、狩り?
他のメンバー、、
2人足りないぞ?
そして、話は聖地リンドブルムで女神の試練がありそれを観に行く主人公。
女神の試練。
参加費:10万ゼニー
挑戦者が白い光のドームに入ると、聖域が挑戦者に相応しい戦士を選び戦う大会。
女神の試練をクリアすると記念メダルをもらえて就職に有利になるらしい。
そんな女神の試練。
モブになりきってる主人公は、何故か芸術の国の王女と同伴して、、
そして、何故か女神の試練にエントリーされており目立ちたくないからシャドウとして、、
いや、目立つから!
そっちの方が目立つから!!ww
そして試練に出て来たのが、歴史上最強の女。
厄災の魔女アウロラだった。
そんな歴史上最強をシャドウは勝ってしまう。
ただ、シャドウは指名手配犯なのでサッサと逃亡したのだが、、
そこに扉が現れる。
でも何で招待するのか、、
なんかサラッと書いてあったな。。
その扉に、スキ突いてシャドウの部下、シャドウガーデン達が女神の試練の中枢システムに侵入。
そこにクビを突っ込む王女2人。
さすがは剣を嗜む人たち。
そして、本来扉に入るはずだったシャドウは、、
別の扉に追いかけられた結果、扉に強制的に入れらる。
そこで魔女アウロラと再会する。
そして、彼女と共に中枢に行く。
それで揃う役者達。
そこでも教団が関わっていたのだが。。
色々と口上を述べる教団幹部が自信満々に出した最終兵器をアッサリと倒して、システムを破壊するシャドウ、、
ワンパンマンかよww
そして、次はブシン祭。
似たような大会が同じ巻で2連発するから混乱すんだよな、、
でも、そこで手を変えるのがこの話。
今度はすごく弱そうな奴に変装して出場する。
変装した青年は実在しするが既に死亡してる。
その名も、ジミナ・セイネン!!
おい!!!!www
そのまんまな名前じゃねぇか!
実在したんかい!w
そんな変装して大会の予選に参加するのだが、、
弱いそうにしてたら、注意するテンプレ発生。
それを自信満々にスルーして予選を突破。
本戦に出場する。
その裏では隣国の王女が父王を刺して重傷を負わせて逃亡。
それは教団が傀儡にした父王を傀儡から解放するための行為だった。
そんな騒動があったが、本戦は開かれダークホースな存在。
ジミナ・セイネンは決勝まで行ってしまう。
そして、優勝。
そんな優勝が決まった瞬間、、
VIPルームで王女が父王を殺害。
それを逃す為にジミナ・セイネンが化けの皮を剥いでシャドウ登場。
シャドウの剣筋を見て王女が衝撃を受けるり
王女が剣を目指すキッカケを与えたのが、、
シャドウだった。
当時の名乗りはスタイリッシュ盗賊スレイヤーだったらしい。
センス無ぇ、、、
しかも、盗賊を襲う時のセリフが全て一緒じゃないか。。
そして、王女を逃す為にシャドウが殿になり初代優勝者と自国の第一王女を相手に圧倒する。
そして、隣国の王女ローズはシャドウガーデンに入隊する。
話が飛びすぎて追いつけないww
でも、予想の斜め上、下に行くから面白い。
アニメ PV
そして、アニメ2期制作決定
2023年10月から放送開始!!!
同シリーズ
陰の実力者になりたくて! シリーズ
小説版
漫画版
その他フィクション
陰の実力者になりたくて グッズ
備忘録
序章
アルファからの手紙には「暇なら聖地に来て」と一言だけ書かれていた。
学園が半焼し、夏休みに入った僕は暇を持て余していたので、アルファの誘いに乗り、聖地リンドブルムへと向かった。
そこは「聖教」の聖地で、女神ベアートリクスを唯一神とする宗教である。
馬車での旅は四日かかるが、途中で生徒会長のローズ・オリアナに出会い、彼女の招きで同じ馬車に乗ることとなった。
ローズは「女神の試練」に招かれており、僕もそのイベントに誘われたと感じた。
彼女は僕に対して運命的な言葉をかけ、「二人でいばらの道を歩もう」と語りかけたが、僕にはその熱意が理解できなかった。
馬車の中での会話を続ける中、ローズは「シャドウガーデン」と「シャドウ」という二つの組織についての疑念を話し、事件の裏に何かがあると考えていた。
宿場町に着くと、ローズは僕に高級な部屋を用意し、ディナーやショッピング、カジノでの遊びに誘った。
全ての費用はローズが負担し、僕は豪華な体験を無料で楽しむことができた。
金持ちに寄生するのも悪くないかもしれないと考えるようになった。
シドとローズは二日後に聖地リンドブルムに到着した。
聖教会が立つ山の麓には白い街並みが広がり、観光客で賑わっていた。
彼らは高級料理店でランチを取りながら、露店を見て回った。
シドは「英雄オリヴィエの剣と魔人ディアボロスの左腕」というお土産を購入し、ローズのファンであるナツメ先生のサイン会に立ち寄った。
ローズはファンとしてサインをもらい、シドも興味を持って列に並んだ。
ナツメ先生はベータという名のエルフであり、シドの前世の物語を利用して本を書いていた。
ベータはシドに計画の詳細を本に書いたと告げ、古代文字で記された内容をシドに渡した。シドはそれを読めなかったが、暗号のような雰囲気を楽しんだ。
その後、彼らは最高級ホテルにチェックインし、ローズは挨拶回りに向かった。
シドは宗教には深入りしないと決め、もし深入りするなら自分が教祖になる時だと考えた。
主人公は温泉が好きで、リンドブルムに来た際、早朝の温泉を楽しんでいた。
しかし、そこで偶然アレクシアと遭遇する。
広い湯船で二人は視線を避けながら過ごし、アレクシアから「怪我はもういいの?」と尋ねられる。
その後、「女神の試練」についての会話が続く。
「女神の試練」は、古代の戦士の記憶と戦うもので、毎年多くの魔剣士が挑戦するが、実際に戦えるのは少数であるという。
アレクシアは監査のため参加しないが、主人公はアルファが参加する可能性を考える。
アレクシアとの軽妙なやり取りの中で、主人公は自身のエクスカリバーについての冗談を交わし、最終的に立ち上がって温泉を出る際に、湯船での独特な動作を見せる。
それを見たアレクシアも同様の動作を真似る場面で終わる。
大聖堂はランプの光に照らされ幻想的な雰囲気を漂わせていた。
その中に佇む金髪のエルフ、アルファが、英雄オリヴィエの石像に向けて語り掛けていた。
彼女は真実を求め、オリヴィエの過去について問いかけた。
アルファはハイヒールの音を響かせ、大理石の床に広がる血と肉片のもとへと近づく。
そこには大司教ドレイクが無惨に斬り裂かれて息絶えていた。
彼女は、大司教が何を隠していたのか、誰に殺されたのかを問いかける。
大司教の黒い噂は広まり、調査が進められる直前に彼は殺された。
アルファは聖域の扉が開くのを待つと告げ、石像を一瞥して立ち去った。
大聖堂の外からは大司教を探す声が近づき、彼女は無視して扉を開けて去った。
その後、聖騎士たちが大聖堂に入ってきたが、金髪のエルフに関する言及はなかった。
誰も彼女とすれ違ったことに気づかなかったのである。白い大理石の廊下には血の付いたハイヒールの跡が続いていた。
前夜祭の夜、リンドブルムの時計塔から街を見下ろす男がいた。
『女神の試練』を翌日に控え、街は賑わっていた。メインストリートには屋台が並び、ランプの灯りが続いていた。
男は聖教会のパーティーには呼ばれておらず、呼ばれても辞退するつもりであった。
彼は夜の風に髪をなびかせながら、街や人々を見下ろすことが好きであると微笑む。
雰囲気に浸りながら「始まったか……」と呟き、何かに抗おうと決意する。彼はシャドウの姿に変わり、「我らはそれを許さない」と言い、夜空に飛び立った。
前夜祭の喧騒から離れた路地裏には、覆面で顔を隠した男がいた。
彼は聖教会から逃げ出す泥棒であり、少し血の臭いがしたため強盗と思われた。
男は逃げられないと察し、剣を抜くが、その瞬間、彼の首が宙を舞った。
そこに現れたのはイプシロン、五番目の『七陰』であった。
彼女はエルフであり、透き通った湖のような髪と深い色の瞳を持つ派手な美人である。
彼女は刀を抜かず、遠距離から斬撃を飛ばすことが得意で、その二つ名は『緻密』である。
イプシロンは過去に紅茶を入れてくれたいい子で、上下関係をしっかり守る性格である。
男は彼女の雰囲気から『シャドウガーデン』モードであることを察し、彼女に『計画』の進行状況を尋ねた。
彼女はターゲットが教団の『処刑人』に始末されたことを報告し、計画を第二に変更することを提案した。男はそれを了承し、注意を促して闇の中に消えた。
一章
アレクシアは『女神の試練』の開幕セレモニーを来賓席から見ていたが、不満を抱いていた。主な理由は二つある。
まず、大司教代理ネルソンが昨日の大司教殺害事件の調査を頑なに拒否していることに不満を感じていた。
ネルソンは監査対象が死亡したので事件は終了だと主張しており、再調査には新たな許可が必要だと言い張った。
アレクシアは重要な証拠が消える前に迅速な対応を求めていたが、時間をかけることは避けられなかった。
さらに、ナツメという人物にも不満を抱いていた。
ナツメは白銀の髪と猫のような青い目を持つ美しい女性で、民衆の人気を集めていた。
彼女の完璧な所作と微笑みが民衆に好評であったが、アレクシアはその振る舞いを不自然だと感じていた。
アレクシア自身も完璧な王女を演じているため、ナツメの裏側に疑念を抱いていた。
アレクシアは民衆に手を振るナツメを見ながら内心で舌打ちし、その過剰な振る舞いに苛立ちを覚えた。
彼女も負けじと民衆に手を振り、少し前屈みになって胸を強調したが、反応はナツメに及ばなかった。
その後、アレクシアはナツメがあざ笑うように片頬を吊り上げるのを目撃し、心の中で何かが切れる音を感じた。
ベータは小説家ナツメを演じながら、隣に座るアレクシア・ミドガルに対して不満を抱いていた。
アレクシアは王女で学友という立場を利用し、ベータが敬愛する主に近づく存在であり、ナツメにとっては邪魔者と感じていた。
アレクシアは猫なで声で民衆に媚び、うさんくさい微笑みを見せているが、その裏側はどす黒いとベータは考えていた。
ベータは、アレクシアが自分の執筆する『シャドウ様戦記完全版』に相応しくない存在であり、彼女の存在に強い嫌悪感を抱いていた。
ベータは王女誘拐事件でシャドウ様がアレクシアを救出したことに対しても不満を抱いており、その怒りを執筆にぶつけていた。
今後もアレクシアが物語に登場することを避けるため、ベータは心の中で彼女に悪態をつきながら民衆に応えていた。
隣のアレクシアが胸を強調し民衆に媚びている姿を見たベータは、その行為を気色悪いと感じた。
ベータは自分のほうが明らかに美しいと感じており、その優越感を持っていたが、アレクシアがベータの右足を踏んだ際、ベータは激痛に耐えながら冷静に足をどかすよう頼んだ。、アレクシアはそれに対して謝らず、さらに笑ったため、ベータは怒りを抑えるのに苦労した。
この一連の出来事で、ベータは敬愛する主と『シャドウガーデン』への忠誠心を保ちつつ、内心の怒りを抑え続けた。
隣のローズは、終始幸せそうに微笑んでいた。
観客席に座る主人公は「女神の試練」イベントを眺めていた。
日中の挨拶やパレードが行われ、メインイベントは夜に始まる。
主人公は「陰の実力者」として何か特別なことをしたいと考えたが、適切なアイデアが浮かばず、観客としてイベントを楽しむことにした。
イベントが進行し、挑戦者が次々と登場した。
14人目の挑戦者であるアンネローゼがドームに入ると、古代文字が反応し、半透明の古代戦士ボルグが現れたが、アンネローゼが勝利した。
主人公は他の古代戦士がより強力であることを期待したが、実際にはアンネローゼが特に強かったことに気づいた。
夜が更け、イベントも終わりに近づいた頃、「ミドガル魔剣士学園のシド・カゲノー」が挑戦者として呼ばれた。
主人公は自身がエントリーした覚えがなく驚いた。
拍手と歓声が会場を包む中、主人公は三つの選択肢を考えた。挑戦するか、逃げるか、うやむやにするかであったが、主人公は「うやむやにする」ことを選んだ。
主人公はシャドウの姿に変わり、ドームに降り立った。
「我が名はシャドウ、陰に潜み、陰を狩る者」と名乗り、古代文字が再び反応した。
主人公は漆黒の刀を抜いて夜空を薙ぎ、観客席のベータが驚いた表情を浮かべていた。
ベータは「シャドウ」という名を思わず呼びそうになり、言葉を止めた。
観客はシャドウに注目し、ベータの言葉は聞こえなかった。
アレクシア、ローズ、ネルソンも驚いていた。
ベータは、シャドウの意図を理解し、サポートに徹することを決意した。
ネルソンはシャドウを「愚か者」と呼び、聖騎士たちを集めるよう指示した。
聖騎士は教会を守る選ばれた騎士で、その実力は一般の騎士とは異なる。
ベータは幼い頃に聖騎士と戦った経験があるが、現在では強力な戦士となっている。
アレクシアはシャドウの意図を疑問視し、ローズはシャドウが無事であるかを気にしていた。
会場が白く染まり、古代文字が光を放ち、一人の女性「災厄の魔女」アウロラが現れた。
アウロラは世界に混乱と破壊をもたらした人物で、その姿が初めて明らかになった。
ベータはその姿をスケッチし、ネルソンにアウロラについて尋ねた。
ネルソンはアウロラが教会内でも限られた情報であることを述べた。
彼女は歴史上最強の女性であり、シャドウは敵わないだろうと予測した。
ベータはシャドウが負けるとは思わないが、アウロラとの戦いで疲弊し、聖騎士に隙を突かれることを心配した。
シャドウは「聖域に眠る古代の記憶を解き放つ」と述べ、アウロラを呼び出すために動いた。
ベータはシャドウの意図を理解し、計画を変更する合図をイプシロンに伝えた。
会場にはシャドウとアウロラが対峙し、緊張感が漂っていた。
アレクシアはシャドウが簡単に負けるとは思わないと呟き、戦いは静かに始まった。
主人公はヴァイオレットの瞳を持つ女性と対峙し、戦いを通じて対話を楽しむ久々の感覚を味わっていた。
戦いは対話であり、細かな動作や視線に込められた意味を読み取り、それに対処することが重要であると考えている。
デルタとの戦いは一方的で対話にならず、主人公は戦いが対話にならないことに物足りなさを感じていた。
しかし、ヴァイオレットとの戦いでは、互いに視線や動作を通じて対話を楽しんでいた。
ヴァイオレットは距離を保ちながら戦い、主人公は相手に合わせる戦い方をする。
主人公は先手を譲り、ヴァイオレットの攻撃を観察しながら対処した。
彼女の赤い槍や触手のような攻撃に対し、主人公は最適な動作を選び回避し、反撃の準備を整えた。
主人公はヴァイオレットの攻撃を回避しながら、反撃のための動きを最小化し、最終的に彼女の目前に立った。
彼女の大鎌の攻撃を防ぎながら足を蹴り、爪先ソードで彼女の足を貫いた。
その瞬間、ヴァイオレットは微笑みながら結果を受け入れた。
主人公はヴァイオレットに「全力の君と戦いたかった」と伝え、戦いの結末を迎えた。
アレクシアは、シャドウとアウロラの戦闘を観戦していた。
ネルソンはシャドウが劣勢であると主張していたが、アレクシアはシャドウがまだ攻撃を開始していないことを見抜いていた。
アウロラの赤い槍はシャドウに一度も触れることなく、シャドウの回避は徐々に小さく精密になっていった。
アレクシアとナツメは、シャドウの卓越した防御力に驚嘆していた。
ネルソンはアウロラに早急に仕留めるよう促すが、アウロラではシャドウを止めることはできなかった。
最終的に、シャドウがアウロラを瞬時に倒し、その戦闘はまるで獅子が仔羊を屠るようにあっけなく終わった。
ネルソンや観衆は、アウロラが勝勢であると思っていたため、この急転直下の結果に理解が追いつかなかった。
シャドウが勝利した後、ネルソンは聖騎士たちにシャドウを追跡するよう命じた。
アレクシアはシャドウの剣技を頭の中で繰り返し思い返していた。突然、会場は眩い光に包まれた。
二章
ローズは光が収まるのを待ち、現れた白い扉に驚愕していた。ネルソンは、その扉が聖域の扉であり、迎える者によって形が変わることを説明した。
ネルソンは「女神の試練」を中断し、観客を外へ誘導するよう指示した。
その時、黒ずくめの集団が現れ、ローズとアレクシアを包囲した。
集団の中で唯一異なる装いの女性が、アルファと呼ばれ、扉に向かって歩いていった。
アルファはシャドウガーデンの一員であり、ネルソンの制止を無視して聖域に入った。
アルファの後を追う形で、イプシロンがネルソンを連れて行こうとするが、周囲に緊張感が漂う中、ナツメが捕らえられていたため、ローズたちは手出しできなかった。
アレクシアは一瞬の隙に反撃を提案するが、ローズは断固拒否する。
聖域の扉が閉まり始め、ナツメやネルソンは扉の中へ連れ去られた。
最後に残ったイプシロンがネルソンを連れて入ろうとした時、突如として黒い影が現れ、イプシロンを斬り裂いた。
それは「処刑人」ヴェノムであり、ネルソンは歓喜の声を上げた。
イプシロンは「処刑人」ヴェノムの奇襲に遭うが、極限の集中力で回避し、過去の記憶が走馬灯のように蘇る。
シャドウに助けられ、イプシロンは新たな生きる意味を見つけた。
彼女は家柄や美貌、武芸の優れたエルフだったが、悪魔憑きとなり全てを失った過去があった。
シャドウに救われたイプシロンは、力を求め新たな人生を歩み始める。
彼女は「シャドウガーデン」の一員として努力を重ね、特にスライムボディースーツを駆使して完璧な肉体を手に入れた。
襲撃された際もスライムボディースーツの防御力で即座に修復し、ヴェノムを撃破する。
その際、周囲に圧倒的な威圧感を放ち、ネルソンを捕らえて扉の奥へと消えた。
ローズとアレクシアもイプシロンを追って扉に飛び込み、扉は閉ざされて光と共に消え去った。
ローズは落下し、アレクシアとナツメの上に乗ってしまう。
状況に気づき、彼女たちは即座に立ち上がり、周囲には黒ずくめの女たちがいた。
アルファはディアボロス教団の真実を知るため、英雄オリヴィエの像を調査する。
像はアルファと瓜二つのエルフの女性で、彼女が悪魔憑きであることが示唆される。
アルファは石像に魔力を注ぎ、オリヴィエを現出させる。
ディアボロス教団とシャドウガーデンの対立が明確になり、ローズはその事実に戦慄する。
オリヴィエが現れ、アルファは皆をお伽話の世界へ導く準備を進める。
ヴァイオレットを倒した僕はリンドブルムから脱出し山中に隠れた。そこで不思議な扉が現れ、中に入るとヴァイオレットが拘束されていた。
彼女を解放し、共に脱出を目指すことにした。聖域は魔力を吸収するため、物理的に戦うしかなかった。
二人は記憶の世界を進み、泣いている少女を助ける。
戦場でゾンビに囲まれながらも突破口を開き、少女を突き刺して次の記憶に移動。最終的に聖域の中心に到達した。
アレクシアが目覚めると、白い廊下に立っていた。
オリヴィエは子供たちが実験の対象となった過去を示し、ディアボロス細胞が人間に適応する過程を説明する。
アルファは、教団がディアボロスの力を利用して「ディアボロスの雫」を開発したと述べる。
ネルソンは「ナイツ・オブ・ラウンズ」の第11席「強欲」として登場し、ディアボロスの細胞を用いた研究の成果である赤い錠剤の存在を明かす。
デルタがネルソンを攻撃するが、彼は再生能力を持ち、再び立ち上がる。
白い空間でアルファとデルタはネルソンと対峙する。
ネルソンは分身を増やして応戦するが、アルファとデルタの圧倒的な力で次々と倒される。
ネルソンは聖域の最後の番人であるオリヴィエを呼び出すが、アルファたちは撤退する。
ネルソンは自分の計画が進行中であると安心し、聖域に侵入した者を追うためオリヴィエと共にその場を去った。
三章
物語は遺跡のような場所で展開する。
主人公とヴァイオレットは、巨大な扉の鎖を解くために剣を探すが、その剣は選ばれた者にしか抜けない。
突然、裂け目からハゲた男とエルフのオリヴィエが現れ、戦いが始まる。
オリヴィエの強さを感じた主人公は、学園の剣を構え対峙するが、ヴァイオレットは戦いを止めようとする。
シドとオリヴィエの戦いは、シドが一方的に押される形で始まった。
オリヴィエの圧倒的な力により、シドは何度も吹き飛ばされ、深い傷を負いながらも生き延びる。
シドはその間にオリヴィエの心がないことに気づき、戦いが単調であると感じた。
彼の背後からアウロラが現れ、戦いを止めようとするが、シドは自ら戦い続けることを選ぶ。
オリヴィエの攻撃を受けながらも、シドは彼女の首を狙い、最終的にオリヴィエの頸動脈を噛み切り彼女を倒す。
ネルソンは驚きながらも、聖域の力を使って無数のオリヴィエを召喚する。
シドは青紫の魔力を使い、オリヴィエたちを一掃するが、それでも終わらない。
シドは最終的に「アイ・アム・オールレンジアトミック」を発動し、全てを破壊して聖域を消滅させた。
シドは暗闇の中で鎖に拘束された醜い左腕を目にし、それが彼に手を伸ばす直前に漆黒の刀を構えた瞬間、光に包まれた。次に気づくと早朝の森に戻っていた。そこでアウロラと再会し、彼女が心臓をズラして無事であることを確認しながらも、彼女が消えかけていることに気付く。アウロラは、自分がシドを呼び出したこと、そしてシドに嘘をついたことを謝罪する。
彼女は全てを忘れたいと思っていたが、シドとの記憶だけは忘れたくないと告げ、感謝の言葉を残して消えていった。
シドは彼女の最後の言葉「私を殺して」を反芻し、彼女の温もりを感じながら朝を迎えた。
アルファとイプシロンは山頂からリンドブルムを見下ろし、聖域の消滅を確認した。
聖剣と核は蒸発して回収不能であり、アルファはシャドウの確実な解決策に納得した。
イプシロンは誇らしげにシャドウを称え、ベータが王女たちを誘導していることを報告。
聖域の調査も完了し、イプシロンは「災厄の魔女」アウロラが「魔人ディアボロス」であるという仮説が正しかったと伝える。
アルファは遠くの朝日を見つめ、その事実に思いを馳せた。
聖域から脱出後、アレクシア、ローズ、ナツメはリンドブルムの森に立っていた。
遠くに街が見え、ナツメが指摘した。
それぞれが街へ戻る決意を固めたが、アレクシアは悔しさを口にした。彼女たちは何もできず、善悪の判断もできなかったことを嘆いた。
ナツメは大きな組織「シャドウガーデン」の存在に言及し、アレクシアは3人で情報を集め、共有する提案をした。
ナツメの指摘にアレクシアは反発しつつも、3人で協力して情報を集め、戦うことを決意した。
ローズがオリアナ王国で、ナツメが作家の人脈で情報を集めることを確認し、アレクシアもミドガル王国の王女として協力することを誓った。
3人は手を重ね合い、世界の真実を暴く仲間として歩み始めた。
朝日はリンドブルムの街並みを照らしていた。
ガンマはミツゴシ商会の業務を主に担当しており、ベガルタ帝国のマドリーで新規店舗の開店交渉を行っていた。
ルードは、商会会長「ルーナ」としてのガンマに物件を紹介し、大幅な値引きを提案した。
マドリーは過疎化が進んでおり、立地の悪さと帝都への人材流出が原因であった。
ガンマは物件を視察し、購入を決定することなく様子を見ていた。
調査員が「石油の存在」を確認し、ガンマは笑顔で物件の購入を決定した。
彼女は通りの全物件を購入し、ナール川の支流拡張と運河建設による都市再開発を提案した。
ガンマは部下に不動産バブルの開始を指示し、迅速に行動を開始した。
取り残されたルードは父親への報告を決意した。
獣人の少女は、一族の中で価値がないと教えられて育った。
彼女は食事を与えられず、自力でイノシシを狩り、強さを得て生き抜く術を見つけた。
やがて彼女は「悪魔憑き」となり、群れから追放されるも、狩りを続けた。
しかし病に侵され、エルフの少女に救われた。
エルフの少女は、シャドウという少年を呼び、彼の魔力で少女を治療した。
少女はシャドウの圧倒的な強さを感じ取り、彼に服従を誓った。アルファというエルフが組織の説明をすると、少女は新たな群れとして受け入れた。
シャドウから「デルタ」と名を与えられた少女は、群れの序列を確認し、アルファに挑戦を挑む。
「デルタがナンバー2」と宣言し、群れの中での地位を主張した。
イプシロンは早朝に起床し、魔力を使って3時間の睡眠でも体調を整える術を習得している。
彼女は毎朝、鏡の前でスライムで作った胸や体のバランスを丹念にチェックする。
スライムの盛り具合を調整し、自分の美しさを確認してから日課を終える。
ある日、彼女はシャドウとの再会を思い出し、自分の胸に向けられた彼の熱い視線に喜びを感じた。
その朝、廊下でベータと出会い、胸の大きさを競い合う。
イプシロンは自分がシャドウの視線を釘付けにしたことを誇りに思い、ベータに対して優越感を示す。
互いに対抗心を燃やしながらも、イプシロンは自分がシャドウに認められたと信じている。
彼女のプライドは非常に高く、シャドウもその高さを指摘している。
イプシロンの一日は、自身の美しさへの自信とシャドウへの思慕から始まるのである。
四章
ローズはオリアナ王国の王女であり、幼い頃から芸術に親しんで育った。
しかし、彼女はある日突然、芸術を捨て剣の道を選んだ。
その理由は、美しい剣に憧れたからである。
家族や国から剣は野蛮だと軽蔑される中、彼女はミドガル魔剣士学園に留学し、自分の道を進むことを決意した。
最近、ローズは父王がブシン祭に訪れるという手紙を受け取った。
剣を軽視する父王が来るのは異例であり、彼女を連れ戻すつもりだろう。さらに、ローズの婚約が内定しているという噂も耳にした。
彼女には心に決めた相手がいるため、父に剣の美しさを認めさせなければならない。
ローズは道場で剣の練習に励みながら、学園での最高の剣の感覚を取り戻そうと努力している。
彼女の心には、その美しい剣士への憧れと、自らの道を貫く強い意志が宿っている。
雨音が響く中、彼女は集中し、ひたすら剣を振り続けた。
ブシン祭の季節が到来し、主人公は賑やかな王都を歩いていた。
様々な人種や国籍の人々が集まり、祭りを楽しむために一体感が生まれている。
その空気を楽しみながら、主人公はある計画を実行しようとしていた。
それは、謎の実力者として大会に登場し、観客を驚かせることである。
主人公はミツゴシ商会王都支店に向かい、友人のオーナーに頼って列を無視して入店する。
店内は繁忙期特有の慌ただしさがあるが、すぐに店員に連れられて豪華な椅子のある部屋に通された。
リンゴジュースが用意され、夏の暑さを和らげる風鈴の音が響く中、主人公は心地よさを感じていた。
ガンマを呼びに行く店員を待ちながら、主人公は大きな入道雲を眺め、ここでの生活に満足していた。
ガンマは敬愛する主が来訪したと聞き、急いで陰の間に向かった。
彼女は夏らしい服装で、香水をつけていた。主は陰の王座に座り、空を眺めながらガンマに頼み事をした。
それは「ブシン祭」に正体を隠して出場することであった。
ガンマは主の意図を理解しようと努力するが、その理由は分からなかった。
主は理由を明かさず、ガンマは主の意図を読み取れなかった自分を悔やんだ。
主の意図を察することができなかったことを恥じるガンマは、主の望み通りに動くことを誓った。
ガンマは部下に指示を出し、「陰の叡智」を参考に改良したスライムを用意した。
それは魔力を通すと本物の肌のようになるものであった。
主はスライムを顔に貼り、地味で弱そうな顔に変装するため、ニューがスライムを削り始めた。ガンマは主の満足する様子を見て安堵した。
主は姿勢や歩き方も弱そうに見せるため練習し、ガンマはその姿を見守った。
衣装と安物の剣が用意され、主は「ブシン祭」の登録に向かった。
扉の前で主がガンマの髪型を褒めると、ガンマは喜び、思わずヒールが折れてしまった。
ガンマは幸せそうな表情を浮かべていた。
ブシン祭の登録が行われている闘技場の受付で、主人公は魔剣士たちの列に並び、自身が最も弱そうに見えるかどうかを観察した。
自分を納得させるために、周囲をトーナメント形式で評価し、自分が最弱だと判断する。
その時、魔剣士の少女アンネローゼが主人公に話しかけ、「そんな体では死ぬ」と忠告する。
主人公は強者の設定を維持し、人を見かけで判断するなと返す。
するとクイントンという戦士が現れ、主人公を侮辱するが、主人公は余裕を見せる。
クイントンは主人公を殴り続けるが、主人公は反撃せずに殴られ続ける。
周囲の嘲笑の中、アンネローゼが介入してクイントンを止め、主人公に怪我の具合を尋ねる。
しかし、主人公はほとんどダメージを受けておらず、口元の血を拭い去る。
主人公はアンネローゼに名前を尋ねられ「ジミナ」と名乗り、そのまま立ち去る。
主人公は自分の計画通りに進んだことに満足し、大会前に実力を見せないことが一流だと自負している。
そして、アンネローゼたちが立ち去った後、再び列に並び直し、ブシン祭の登録を完了した。
『ブシン祭』の予選が来週から始まる。
シドは闘技場を下見し、演出パターンを妄想した後、『まぐろなるど』でサンドを購入し寮に戻る。
アルファに奢る約束を思い出しつつ、彼女が忙しそうなので気長に考えている。
学園の火事復旧工事が進んでおり、夏休み終了までに完成しそうである。
シドは蟬の声を聞きながら学園へ向かい、人が少ないことに気付く。
姉が帰省を促したが無視し、『ブシン祭』本戦までに戻るかを考えつつサンドを食べている。
突然、練習用の細剣の鞘が肩に触れたが、反応せずにいた。鞘の主は蜂蜜色の髪の美人、ローズであった。
彼女はシドに剣を振るために時間を作ったと話し、シドは『まぐろなるど』の店長と知り合いだと告げた。
ローズはナツメ先生とアレクシアと共に『まぐろなるど』に行ったと語り、アレクシアとの関係を話した。
ローズはベータとアレクシアの関係に不安を抱きつつ、世界の平和を願っていると述べた。
時間が来たためローズは別れを告げようとしたが、父との会合で婚約者が紹介されることを打ち明けた。
シドはローズを励まし、信じることを約束した。
最後にシドはローズにサンドを渡し、彼女の肩の力を抜くよう促した。
次の日、ヒョロの絶叫でシドが目を覚ます。ローズ生徒会長が婚約者を刺して逃亡したという。シドは状況を理解しながら、ローズの行動の理由を考えた。アレクシアとナツメが情報を共有し、ローズが王都の北に逃亡したことが明らかになる。ナツメはオリアナ国王が問題を国内で処理し、ミドガル王国に介入を控えるよう求めていると報告。アレクシアは事なかれ主義の父親を思い浮かべ、ローズの婚約者がオリアナ王国の公爵家次男ドエム・ケツハットであることを確認した。
アレクシアはローズを確保して話を聞こうとするが、ナツメは慎重な行動を促す。アレクシアはナツメに対して苛立ちを見せつつも、ナツメは冷静に対応。ナツメが不安そうにしながらも、自分の意見を主張するが、アレクシアは強く反発する。二人の間で緊張が高まる中、アレクシアはナツメの胸ぐらを掴み上げるが、最終的にナツメを解放する。
アレクシアはローズに理由があると感じ、仲間として見捨てないことを決意。ナツメも同意し、ローズと婚約者の情報を集めることを提案する。アレクシアは姉に相談し、今夜情報を交換することを約束する。アレクシアはナツメの背中を見送りながら、自らの服を整え、部屋を出る。
五章
週が明け、『ブシン祭』の予選が開始された。シドはヒョロと共に闘技場で試合を観戦していた。まだ日は高く、観客は少ない。
予選はその程度のものである。
シドは前日に草原で2試合戦い、どちらも簡単に勝利した。
3回戦からは闘技場で試合が行われ、観客も増えてきた。
ヒョロは熱心に試合のメモを取っており、聖剣のネックレスを身につけていた。
彼はバトルデータを集計し、統計に基づいて賭けに参加しているという。
シドはその話に対して興味を持ったが、特に感銘を受けることはなかった。
その時、金髪の華やかな青年ゴルドー・キンメッキが現れ、ヒョロに興味を示した。
ゴルドーは「常勝金龍」と呼ばれており、彼もバトルデータを集計していると話す。
ヒョロはゴルドーの話に感激し、彼から話を聞きたいと頼んだ。
シドはトイレに行くために席を外し、その後選手控室に向かった。
ヒョロはゴルドー・キンメッキの理論を熱心に聞いていた。
次の試合を例に挙げてゴンザレスとジミナ・セーネンの戦いについて解説していた。
ゴルドーはゴンザレスのバトルパワーを1364とし、ジミナのバトルパワーを33と評価した。
試合が始まり、ゴンザレスがジミナに斬りかかるが、突如転んで失神してしまう。ジミナが勝者となり、観客は怒りの声を上げた。
ゴルドーは勝負に絶対はないとヒョロに教え、強者と弱者を見極めて賭けることが重要だと述べた。
ゴルドーは明日の4回戦でジミナと対戦することを明かし、ヒョロに勝利の方程式を理解するよう促した。
ヒョロは感動し、シドに明日の試合に全力で賭けることを提案したが、シドはそれを断った。二人は観戦を続けた後、寮に戻った。
『ブシン祭』の4回戦が開始された。アンネローゼは観客席の最前列で試合の開始を待っていた。
彼女は水色の髪と同色の瞳で闘技場を見つめていた。
観客は増えていたが、まだ満席には遠い。
クイントンが彼女に話しかけ、ジミナ・セーネンの3回戦について意見を求めた。
アンネローゼは対戦相手が転んで勝ったと見えたが、ジミナの右手が動いたことに注目していた。
クイントンは、ジミナが使用禁止のアーティファクトを使ったのではないかと考えていた。
アンネローゼは、その可能性も否定しなかった。
今日の試合で真相が明らかになると話し、ゴルドー・キンメッキが対戦相手であることを明かした。
彼女は過去にゴルドーと戦ったことがあるが、ゴルドーは強い相手と戦うのを避けるため、不敗神話と呼ばれていると説明した。
クイントンはゴルドーの戦法に驚きながらも、ゴルドーがジミナと戦うことを決めたことに興味を示した。
アンネローゼは、ゴルドーが実力差を確実に見抜くことが強みであり、ジミナ相手には逃げなかったことから、試合が面白くなると期待していた。
二人は試合を見守りながら、歓声とヤジの中でジミナとゴルドーが向かい合っているのを見つめていた。
試合が始まると、アンネローゼとクイントンだけがこの試合の真の意味を理解していた。
ゴルドーが先手を取り、開始と同時に間合いを詰め、装飾過多な両手剣でジミナの首を狙った。
しかしジミナはまだ剣を抜いておらず、棒立ちで反応もしなかった。
ゴルドーが勝利を確信した瞬間、ジミナの首を剣がすり抜けて空振りした。
ジミナはゆっくりと剣を抜くだけで、ゴルドーの致命的な隙を見逃した。ゴルドーは苛立ちながら「お前舐めてんのか?」と問いかけた。
観客席ではクイントンがアンネローゼに「見えたか?」と尋ねた。アンネローゼは「かろうじて」と答え、ジミナが剣が当たる直前に首を鳴らしたと説明した。
クイントンはそれが偶然ではあり得ないと驚愕したが、アンネローゼは「彼にとっては剣を避けることがついでだったのかもしれない」と述べた。
ゴルドーはジミナを睨みつつ、千載一遇の好機を逃したことを嘆くべきだと語ったが、ジミナは平然としていた。
ゴルドーは「オレの全力で屠ってやる」と宣言し、剣に魔力を溜めた。会場がざわめく中、ゴルドーは「オレのバトルパワーは4300だ」と誇示し、「邪神・秒殺・金龍剣」で黄金の龍を幻視させた。
しかし、その龍が突然消失し、ゴルドーは宙を舞って地に落ち、動かなくなった。
観衆は呆然とし、勝者はジミナ・セーネンと宣言された。ジミナは勝者のコールを背に立ち去った。
ゴルドー・キンメッキが試合後に見せた技は予想以上の実力であり、『ブシン祭』の予選を勝ち抜けるほどの威力があった。
クイントンはその強さを認めつつ、ジミナの最後の動きについてアンネローゼに尋ねた。
アンネローゼは「クシャミをした」と説明し、ゴルドーの攻撃とクシャミが偶然重なったと考えた。
彼女はジミナの動きを再現しようと試みたが、周囲から奇妙な目で見られて退席した。
ゴルドーの敗北は闘技場マニアたちに衝撃を与えたが、試合内容を知るとまぐれと考える者が多かった。
しかし、ジミナの評価に疑問を持つ一部の観衆は彼の試合に足を運び、実力を計ろうとした。
ジミナは予選Bブロック決勝でも一撃で勝利し、本戦出場を決めたが、彼の具体的な強さは依然として不明だった。
クイントンは安定した実力の持ち主であり、彼を倒したジミナの実力を認めざるを得なかったが、その具体的な評価は困難であった。
ジミナが本戦に相応しい実力を持つか、歴代の入賞者に並べるかは不明だった。
闘技場マニアの間で議論が続く中、ジミナの評価は低めに見積もられていた。
これは他の本戦出場者が実績を持っていたのに対し、ジミナにはそれがなかったためである。
しかし、一部のマニアはジミナをダークホースとして注目していた。
本戦は来週から始まり、ジミナ・セーネン対アンネローゼの一回戦が予定されていた。
多くの人々がアンネローゼの勝利を予想していたが、ジミナには未知の実力があり、期待の視線が集まっていた。
今日の対戦相手は非常に元気で、名前は「クイ」から始まるものだった。
敵意が感じられ、新鮮な試合だったと感じつつ、闘技場を後にした。
これで「ブシン祭」本戦に出場が決まり、来週から本戦が始まる。
観客の反応も良好で、本戦で実力を見せる予定である。
選手入場口の長い廊下を歩いていると、水色の髪のアンネローゼが立ちふさがった。
彼女は、本戦に進むとは思わなかったと述べ、僕の動きは見切ったと自信を見せた。
僕は彼女の横を無関心に通り過ぎつつ、心の中で話しかけてほしいと叫んでいた。
アンネローゼが睨む中、僕はリストバンドを外して足元に投げ、「この重りはオレを封じる鎖」と言い残し、歩き続けた。
アンネローゼは慌てて僕を止めようとし、「それで勝ったと思わないことね」と言い、首を鳴らして見せた。
僕はその行動の意味を理解できないまま、彼女の横を通り過ぎた。彼女の意図は不明だった。
六章
夏の朝は清々しく、僕は青空を見ながら大きく伸びをした。
ベッドに寝転びながら何をするでもなく過ごす時間を楽しんでいた。
夏休みは残り少なく、来週から「ブシン祭」の本戦が始まるため、イメージトレーニングをしなければならないと思いつつも、ぼんやり過ごす時間は自分にとって必要だと感じていた。
その時、扉を叩く音とともにヒョロが叫んだ。人間関係の煩わしさを感じながらも、人を求める理由を考えさせられる朝だった。
「はいはい」と言って扉を開けると、ヒョロは「ローズ生徒会長の手配書」を持っていた。
生け捕りで1000万ゼニー、情報提供で50万ゼニーの報酬があるという。
「俺たちで捕まえようぜ」と言うヒョロに対し、僕は「金がない」という理由で協力を求められたが、気が進まなかった。
僕は反骨精神のあるローズの逃亡を応援したい気持ちがあり、「頼む、このとおり!」と頭を下げるヒョロを前に迷っていた。
その時、寮の管理人から「お姉さんが来てるよ」と告げられ、クレア姉さんが帰ってきたことを知った。
瞬時にどちらが面倒かを考えた結果、「ローズ捕獲作戦」を開始することに決めた。
ヒョロが喜ぶ中、僕は窓から飛び降りることを決断し、そのまま行動に移した。
アレクシアはベータに感謝の意を伝え、協力を求めた。
二人は螺旋階段を下り、地下へ向かう。
アレクシアは、ドエム・ケツハットが教団と繋がっている可能性を指摘し、証拠の難しさを語った。国と宗教が絡む問題で、厳密な証拠が必要である。
聖教の一部が教団と関係していることが問題であり、対処の難しさを認識していた。
アレクシアは、オリアナ国王の様子が虚ろで、甘い匂いがしたと述べた。
ベータはそれが特定の薬品によるものかもしれないと考えた。
教団が動き出していることに対し、現状のままでは国も危機に瀕する可能性がある。
二人は無言で階段を下り、深い縦穴と梯子がある場所に到着した。
そこは王都地下道の一つの入り口であり、昔は王族の脱出用に使われていたが、現在は迷路となっている。
アレクシアはベータに冗談を言い、地下道にローズが逃げ込んだ可能性を示唆した。
ベータが戸惑いながらも忠告すると、アレクシアは簡単に来た道を戻れば良いと答えた。
ベータはアレクシアの無計画な行動に対し不満を表したが、アレクシアは構わず梯子を下りて行った。
ベータはアレクシアを守るため、彼女を追うことにした。
語り手は早朝の王都を歩いていた。ヒョロが聞き込みに行った間、彼はあまり真剣にローズを探すつもりはなく、むしろ逃げ切ってほしいと考えていた。
ピアノの音が聞こえてきたため、彼は興味を持ち、その方向へ向かうことにした。
ピアノが得意な語り手は、前世で家の教育方針に従い、ピアノを練習していた。
嫌々ながら始めたが、次第にピアノの魅力に気付き、練習に励むようになった。
その結果、ピアノの腕前が上達し、特にベートーヴェンの「月光」が好きであった。
語り手がピアノの音の方向に進むと、王都にある高級ホテルのカフェから流れてくる音であることに気付いた。
ホテルに入ると、演奏を終えたのはイプシロンであった。
イプシロンは語り手に気付き、控室に案内した。
イプシロンは語り手にピアノの演奏を聴いてもらえたことを喜び、「月光」が好きな曲であることを告げた。
彼女は、語り手に教えてもらった数多の曲の中で「月光」が一番好きであると話し、作曲家としても活動していることを述べた。
彼女は現代過去の名曲をあげ、それらが貴族に好評であったと自慢した。
イプシロンはオリアナ王国での仕事に向かう予定であることを伝え、芸術の国で良い「仕事」をするつもりであると語った。
語り手はローズ王女の行方について尋ね、イプシロンは王都の地下に逃げ込んだと聞いていることを教えた。
最後に、語り手はイプシロンのスタイルを褒め、イプシロンは照れながらも喜んだ。
語り手は青い夏空を見ながら、世界が回っていることを実感した。
ローズは追っ手から逃げながら、地下道を歩いていた。
背中の傷からはまだ血が滲んでおり、体力も徐々に奪われていた。
彼女は婚約者ドエムを刺したが、結果として失敗し、追われる身となった。
オリアナ国王が傀儡と化していることに気付き、ドエムの排除を選んだが、失敗に終わった。
ローズは地下道で思考を巡らせ、自分の行動が感情に突き動かされたものだったと自嘲した。
ドエムを排除しただけでは教団の根深い影響を断つことはできないと悟り、投降すべきか悩んだ。
しかし、その時、ピアノの「月光」の音色が地下道から聞こえてきた。
その音に導かれ、ローズは幻想的な聖堂にたどり着き、そこでシャドウが「月光」を演奏しているのを見た。
シャドウはローズに「何を成すのか」と問うた。
ローズは、自分が守りたかったものを告白し、戦う意思があることを示した。
シャドウは青紫の魔力を彼女に授け、「抗え、そして貴様に共に戦う資格があるのか見せてみろ」と言い残した。
シャドウの魔力を受け取ったローズは、その力で追っ手を次々に倒し、教団と戦う決意を固めた。
彼女は、シャドウが闇に立ち向かう一筋の光であると感じ、その光に導かれながら戦うことを決意した。
アレクシアとベータは地下迷宮を探索していたが、ベータは早くも帰りたい様子だった。
探索の途中、二人は強大な魔力を感じ、急いでその場所へ向かうと、ローズが黒ずくめの男たちを倒して佇んでいた。
ローズはアレクシアに「力を得た」と言い、彼女の信じる道を進むと宣言する。
アレクシアはローズを止めようとし、過去の誓いを思い出させるが、ローズはそれを断る。
二人は剣を交えて戦うが、ローズが勝利する。
ローズはナツメと別れを告げ、地下道を立ち去る。
ナツメはアレクシアを介抱しながら、シャドウの選択を問いかけた。
七章
感情は長期間持続しないものであり、たとえ大切なものを失っても、その悲しみが長く続くことはない。
嬉しさや喜びも同様で、時間と共に薄れていく。
怒りも同じく、時間が経つことで減少する。
したがって、感情が原因での人間関係の衝突は時間が解決するという説を提唱している。
クレアは、寮の前で主人公を待っている間に怒りを募らせていた。
主人公はその怒りに対して無関心だったが、クレアは時間が経つごとに怒りが増すことを経験する。
主人公はクレアに首を絞められながらも冷静に受け答えを続け、クレアの怒りが最終的に消えると考えていた。
クレアは主人公に「ブシン祭」の特別席のチケットを渡し、試合を見て勉強するように言う。
クレアは学園代表として出場することを主人公に伝え、試合を見に来るよう強く要求する。
主人公はクレアの言葉に従い、彼女が部屋を出ていくと、試合に向けてイメージトレーニングを始めることにした。
週が明けて「ブシン祭」の本戦が始まった。
クレアは先に会場に入り、シドは彼女からもらったチケットを持って席を探していた。
そのチケットは特別席であり、シドは豪華な扉の前にたどり着く。確認すると、そこが彼の席であった。
室内に案内されると、そこは特別席ではなく、ハイパーVIP席だった。
そこには大貴族や学園の上位カーストの人々が集まっていた。
隣には王女アイリス・ミドガルが座っており、シドに話しかけた。
アイリスはクレアの弟であるシドに親しげに話しかけ、クレアとの関係やアレクシアとの関わりについて話題にした。
シドはアイリスと話しながら、周囲の人々と会話を続けた。
アイリスは「ブシン祭」の注目選手について聞かれ、元「ベガルタ七武剣」のアンネローゼを挙げた。
アイリスは自信を持って、今年の本戦での優勝を目指していると語った。
シドは他の注目選手についても質問し、アンネローゼの1回戦の相手であるジミナについて言及した。
アイリスや周囲の人々はジミナをあまり高く評価していなかったが、シドはその反応を調査して満足した。
最後にアイリスは「ブシン祭」の初代優勝者である「武神」ベアトリクスが王都に来ていることを話し、彼女の動向に注目が集まっていることを述べた。
シドはその人物について知らなかったが、興味を持つようになった。
試合の時間が近づき、シドはトイレに行くと言って選手控室へと急ぐ。
クレアは1回戦に勝利したようで、シドは彼女が勝ち進むことを期待していた。
廊下を歩いていると、灰色のローブをまとった人物とすれ違った。
シドはその人物と同時に立ち止まり、振り返った。灰色のローブからは濃い青色の瞳がシドを見据えていた。
その人物はエルフの匂いを感じたと言い、エルフの知り合いがいるか尋ねた。
シドはエルフの友達が何人かいると答え、相手はエルフを探していると続けた。
彼女はエルフの特徴について話し、シドはアルファに似ているかもしれないと感じたが、心当たりはないと答えた。
彼女は剣を抜き、寸止めの一撃を放つ。シドはその剣が首に触れるのを受け入れ、腰を抜かしたふりをして座り込んだ。
彼女は首をかしげて剣を引き、謝罪した後、シドに名前を尋ねた。シドは震える声で名乗り、彼女はベアトリクスと名乗った。
ベアトリクスはシドの手を握り、その手が良いと評価し、強くなるだろうと微笑んだ。
最後に謝罪し、ベアトリクスは立ち去った。
シドはその背中を見送りながら、自分も強くなれるかもしれないと呟き、踵を返した。
アイリスは特別席で試合が始まるのを待っていた。特別席からは会場全体が見渡せ、専用階段から直接試合場に下りることもできる。
試合場には既に二人の魔剣士が呼ばれていた。注目のアンネローゼと、初めて見る黒髪の剣士ジミナ・セーネンである。
アイリスの隣に座ったのはドエムであった。
アイリスはシドの席であることを指摘したが、ドエムの姿に驚き言葉を止めた。
ドエムはアイリスと一緒に観戦できることを喜んだが、その笑顔には本心が感じられなかった。
彼は婚約者が逃げたことを軽く笑い飛ばした。
アイリスはドエムの笑顔が好きではなく、オリアナ国王の体調を尋ねた。
ドエムは明日には出席すると答え、ミドガル王も出席予定だと付け加えた。
アイリスはドエムの目から何かを探ろうとしたが、何も読み取れなかった。
ドエムはアンネローゼについて話し、彼女を自国に招きたいと述べた。
アイリスも同意し、ミドガル王国に招きたいと考えていた。
ドエムはミドガル王国には優れた魔剣士が多いが、自国には少ないことを嘆いた。
アイリスはジミナについて聞かれ、彼が不気味な自信を持っていると答えた。
ドエムはそれをただの自惚れと捉えたが、アイリスはジミナの目に迷いがないことを指摘した。
ドエムは自らが剣を扱えることを告白し、アイリスにごまかしが通じないことを認めた。
ドエムはジミナの自信がどれほどのものかを見たいと述べ、試合開始を待ち望んだ。
試合は「アンネローゼ対ジミナ・セーネン」として始まった。
アンネローゼは試合開始と同時にジミナの間合いに飛び込み、彼の強さが圧倒的な速さにあることを見抜いていた。
ジミナの剣の技量は低いと判断し、速さに惑わされなければ勝てると考えた。
アンネローゼはジミナが外した重りに注意を払いつつ、速度で勝る相手の脚を止める戦術を取った。
アンネローゼの一撃はジミナに防がれたが、その脚を止めることには成功した。
彼女の連撃により、ジミナの体勢が乱れた瞬間、アンネローゼは勝利を確信し、彼の胸を突いた。
しかし、ジミナの姿は忽然と消え、彼の声が背後から聞こえた。
動揺しつつもアンネローゼは冷静を保とうとし、ジミナの速さに対抗する策を考えたが、彼の速度はアンネローゼの反応を超えていた。
彼女はジミナの次の一撃に備え、カウンターの機会を狙った。
ジミナの姿が消えた瞬間に剣を振ったが、ジミナは寸前で止まり、アンネローゼの剣を避けた。
ジミナの動きは極限の間合い管理であり、アンネローゼの剣は彼の鼻筋を掠めて空を斬った。
アンネローゼはこの瞬間、ジミナの技量が遥かに高いことを理解した。
最後にジミナの剣がアンネローゼに迫り、その技は芸術にまで昇華されていた。
その美しさに感嘆しつつ、アンネローゼの意識は暗転した。
アイリスはジミナの強さに驚き、その剣技の美しさを称賛した。
ドエムもジミナの実力に驚きつつ、アイリスが次の対戦相手となることに興味を示した。
アイリスはジミナの速さと美しさには敵わないが、勝負は美しさで決まるものではないと自信を見せた。
ドエムはジミナが何かを隠している可能性を感じており、その正体を探ろうとしている。
ジミナが計画の障害になるかどうかは、アイリスとの戦いの結果次第であると考えている。
ジミナが無名でいた理由や、その背後にある可能性を探る必要があると感じている。
アンネローゼは廊下でジミナを呼び止め、完敗を認めた。
彼女は強くなったと思っていたが、慢心していたことに気づいた。
ジミナは枷を外して戦ったことを伝え、アンネローゼと握手を交わした。
彼はすべてを捨てて強さを追い求めたことを語り、アンネローゼの誘いを断った。
彼女はジミナが優勝し、世界に名を轟かすと信じ、再会を誓った。
また、ジミナは過去にスタイリッシュな剣を追求していたことを振り返り、今回の大会でその成果を感じていた。
彼は次のアイリス戦を山場と見ており、勝利後のシナリオを考えた。
優勝するか、姿を消すか、様々な選択肢を検討していた。
特別室に戻った際、知らない男が座っていたため、その日は早めに寮に戻ってイメージトレーニングを行った。
八章
翌日、特別席でモーニング珈琲を飲んでいた。ミツゴシ商会製の珈琲は特別なもので、ミルクと砂糖たっぷりで楽しんでいた。
特別席は便利で、メイドに頼めば多くのものが無料で提供される。
アイリス王女が登場し、コーヒー牛乳を試すなど会話が弾んだ。
朝食後、セレブたちが入室し、社交が始まるが、男爵家出身のため会話に入れなかった。
少し居心地の悪い中、本戦2日目が始まり、色褪せたローブ姿の女性ベアトリクスが登場した。
アイリスが彼女を招待したことを告げると、セレブたちは彼女が「武神」と呼ばれる伝説の剣聖であることに驚いた。
ベアトリクスは姪を探していると話し、顔のローブを取ってエルフの美しい顔を見せた。
セレブたちは彼女の姪に心当たりがないと答えたが、ベアトリクスはエルフだから時間はたくさんあると応じた。
注目の選手について尋ねられたベアトリクスはシドに注目していると答えたが、周囲のセレブたちは彼が強くなるとは思えない様子だった。
アイリスの一言で場の空気は落ち着いたものの、セレブたちは彼女の本物性に懐疑的な視線を向けていた。
ベアトリクスは自然体であり、飾らない強さが周囲には理解されていなかった。
こうして微妙な空気の中で、『ブシン祭』本戦2日目が始まった。
ドエムが特別室に入ると、灰色のローブを纏った女性が彼を見て、オリアナ国王にも目を向けた。
そして「くさい」と一言発した。
ドエムはその発言に動揺しつつも、彼女を睨みつけた。
オリアナ国王を依存性の強い薬草で操っていたドエムは、臭いを香水で隠していたが、彼女に気付かれることはないと信じていた。
灰色のローブの女性が『武神』ベアトリクスであると知り、ドエムは驚いた。
彼女は礼儀知らずに見えたが、実力が本物であると認識した。
ベアトリクスの失言はドエムに対するものとされ、臭いの話題は避けられた。
ドエムの目的はローズの確保であった。
彼女に『ブシン祭』の会場に来なければオリアナ国王を使ってミドガル国王を殺すと脅していた。
ドエムはその脅しを本気で実行する覚悟であった。
ミドガル国王を殺すことで戦争が始まり、オリアナ王国は滅びる可能性があるが、ミドガル王国の次期王座に傀儡を据える計画が進行中であった。
アイリス王女がオリアナ国王を不信に思っているが、彼女の試合中に国王を殺すことで対処するつもりであった。
しかし、ベアトリクスが現れたことで状況が複雑になった。
彼女の実力はアイリス以上であり、妨害される可能性があった。
さらに、謎の男ジミナも不確定要素であった。彼は裏世界の住人であり、その目的や背後関係は不明であった。
ドエムは警戒を強めたが、計画は順調に進んでいると自分に言い聞かせた。
試合ではクレア・カゲノーが勝利し、その実力にドエムは驚いた。
彼女はまだ成長の余地があり、強くなる素質を持っていた。
アイリスが席を立ち、ジミナとの試合に向かったとき、ドエムはその試合に注目し、ジミナの実力と狙いを見極めようとした。
アイリスが試合場に現れた際、彼女を大きな歓声が迎えた。彼女の人気は『ブシン祭』の主役であることを示していた。
彼女は自身が王国の象徴としての役割を担っていることを認識しており、その使命感から勝利を目指していた。
しかし、政治的な力はなく、騎士団の結成にも苦労していた。
試合ではジミナ・セーネンと対峙し、彼の底知れない力に圧倒された。
アイリスはジミナの剣の動きを捉えられず、幻覚かと思うほどの不思議な体験をした。
彼女は幻覚と現実の区別がつかず、自分の限界を感じながらも、試合を続行した。最終的には、ジミナの圧倒的な力に敗れた。
その後、観客の注目を集めたのは現れたローズ・オリアナであった。彼女は特別席を見据え、何も言わずに場の注目を集めていた。
アイリス・ミドガルがジミナ・セーネンに一撃で敗れた事実に、ドエムは驚愕しながらも嫉妬に燃えた。
アイリスを一太刀で倒せる者は、ドエムが知る限りいなかったからである。
ドエムはジミナの実力を認めたくない一方で、彼の剣技に憧れも抱いた。
ドエムはベアトリクスに試合の感想を求めるが、彼女はジミナと戦いたいと答えた。
そこへローズ・オリアナが登場し、ドエムはオリアナ国王を伴い、彼女に接近する。
ローズは父親に謝罪し、ドエムの陰謀を阻止すべく、オリアナ国王を刺した。
ドエムの計画は崩れ去り、ローズは自らの命を絶とうとするが、ジミナが現れ、彼女を救った。
終章
ローズ・オリアナは、死を覚悟していた。
彼女が捕らえられることで父の死が無駄になることを避けたかったからである。
王女としての務めを果たし、これが最後の使命だと覚悟を決めていた。
しかし、美しい一閃を放つ青年ジミナが現れ、その剣技を見た瞬間、ローズは幼き日の思い出を蘇らせた。
ジミナが自らの顔を剝ぐと、会場は騒然となり、彼の正体がシャドウであることが明らかになった。
ローズにとってシャドウは憧れの剣士であり、その人物が幼少期の剣士、スレイヤーであることに気づいた。
ローズ・オリアナは幼少期に誘拐された経験がある。
彼女がミドガル王国を訪問中、公務の合間に遊びに出かけた際、突如として視界が暗くなり、気を失い、目覚めたときには薄暗い小屋に拘束されていた。
盗賊たちは彼女をオリアナ王国の王女と認識し、人質として利用するか、価値のわかる人物に売ることを計画していた。
ローズは恐怖に震えながら縄を解こうと試みたが、無駄に終わった。
その時、場違いな子供の声が響き、盗賊たちを次々と倒し始めた。
その子供はズダ袋を被っており、驚くほどの剣技を披露し、盗賊たちを一瞬で制圧した。
ローズはその光景に魅了され、恐怖も忘れて見入ってしまった。
子供はローズの拘束を解き、「スタイリッシュ盗賊スレイヤー」と名乗って去っていった。
ローズはその子供に感謝し、何かお礼をしたいと申し出たが、子供は誰にも話さないよう頼むだけで立ち去った。
彼の美しい剣技と在り方に感銘を受けたローズは、その日から剣の道を志すこととなった。
ローズ・オリアナは幼少期の誘拐事件で、スタイリッシュ盗賊スレイヤーに救われた記憶を持っていた。
その秘密を今まで誰にも話したことがなかったが、シャドウの姿を見て彼がそのスレイヤーであったことを確信した。
シャドウの沈黙がその証明だったのだ。
彼が幼少期から悪と戦い続け、ローズを助けたあの日のように、今も誰かを助け続けていることを知った。
シャドウの言葉で、強さとは力ではなくその在り方であることを理解し、ローズは自らの死を選ぼうとした自分を恥じた。
彼女はまだ戦うことができたが、生きることが辛く、失敗を恐れて逃避しようとしていた。
シャドウは「貴様の戦いは、まだ終わってはいない」と言い、漆黒の刀で会場の壁に大穴を開けた。
そして「往け」と告げ、ローズは細剣を拾いその穴に飛び込んだ。
彼女にはまだ果たすべき使命があるのだ。シャドウはその後、ローズの後を追おうとする者たちを阻んだ。
雨が降りしきる中、ドエムの配下たちはシャドウに立ち向かうが、一太刀で薙ぎ払われてしまう。
ドエムは混乱し、シャドウを倒せる者を求めるが、誰も応じない。
その時、灰色のローブを纏ったベアトリクスが現れ、シャドウに挑む。
二人は美しい剣の舞を繰り広げるが、シャドウの剣は自然で予備動作がなく、ベアトリクスは対応できない。
アイリスも加勢し、二人は共にシャドウに挑むが、シャドウは圧倒的な実力で二人を打ち負かす。
最終的にシャドウは圧倒的な魔力を解放し、「真の敵を見失うな」と告げて去る。彼の魔力は闘技場の雨雲を消し去り、晴れ渡った空には虹が架かる。
アイリスは彼の言葉の意味を考えながら、シャドウの真の目的を思い巡らす。
ローズは雨の中、無目的に走り続け、森の中で息を整えていた。
彼女は父を殺した責任と王女としての責任を背負う決意をするも、不安に苛まれていた。
前を向いて歩き出した彼女の前に、漆黒のドレスを纏ったエルフ、アルファが現れる。
アルファはローズに「一人で戦うか、我らと共に戦うか」という選択肢を提示する。
ローズはオリアナ王国を救うためには価値を示す必要があると告げられ、彼女の過去を思い出し、シャドウと共に戦うことを決意する。
ローズはアルファに従いながら、シャドウの正体について尋ねるが、信頼を得ればいずれ知ることになると言われる。
二人は無言で森の奥へ進んでいった。
ローズは深い霧の中、アルファと共に進んでいた。
その霧は「龍の吐息」とされる毒性を持つもので、彼女はアルファに従うことを余儀なくされる。霧を抜けた先に、古の都アレクサンドリアが広がっていた。
そこは『シャドウガーデン』の拠点であった。
アルファはローズに力を示すよう指示し、ラムダという女性教官に引き渡す。
ラムダはローズを「666番」と呼び、過酷な訓練を命じる。
ローズは自らの名を捨て、純粋な兵士になることを強要される。
訓練の中で、ローズはかつてシドからもらった贈り物の包み紙を発見し、初恋の思い出が蘇る。
しかし、その包み紙は無情にも切り裂かれ、彼女の夢も断たれる。
ローズは涙を流し、過酷な現実と向き合う決意をする。
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