「陰の実力者になりたくて!」は、逢沢大介 氏による日本の小説。
異世界ファンタジーとコメディの要素を持ち、主人公のㇱドが、ヒーローではなく、陰で世界を牛耳る様な「陰の実力者」に憧れているというストーリー。
小説版は、小説家になろうにて2018年1月から掲載され、書籍版はエンターブレイン(KADOKAWA)より2018年11月から刊行。
また、漫画版やアニメ版も制作されている。
特徴は、ストーリー展開がメチャクチャ飛びまくる。
どうやら読者にアンケートして面白い展開を決めてたらしい。
だから展開が予想の斜め上や下に行くからメチャクチャに感じてしまう。
そして、それが面白い。
小説版3巻の後約2年間新刊が出てなかったが。、
アニメ化発表と同時に4巻を発売したのが21年3月くらい。
アニメ1期放映中(2022年12月28日)に5巻を発売。
そして、アニメ2期放映中(2023年10月30日)に6巻を発売。
小説家になろうの分は既に超えており。
いつエタるか判らない。
止まらないでください!!!
アニメ1期(全20話)は1,2巻分が大好評。
小説3巻、4巻部分を2期(全12話)で放送。
4巻後半は映画化するもよう。
3巻の主な出来事
ブシン祭とクレアの活躍
ブシン祭でクレアが優勝し、ローズ会長の乱入もあったがアドリブで場を盛り上げ、学園生活は通常通りに戻った。クレアは優勝後、学園に復帰し、祝勝会を開いた。
クレアと主人公の街歩き
クレアと主人公は王都を散策し、「血の女王」の話について語った。クレアは討伐チームに参加予定で、主人公を安全な場所に置くつもりであることを明かした。
主人公と無法都市の計画
主人公は無法都市に興味を持ち、街の印象や「番犬」との戦いを通じて計画を練った。そして、無法都市で大きな行動を起こすことを決意した。
無法都市の冒険
主人公と姉は無法都市に向かい、奴隷販売や魔剣士協会の情報収集などを通じて冒険を展開する。
血の女王の復活
血の女王エリザベートの復活と、彼女に関連する出来事が都市を騒がせつつあり、それに関連した出来事が続く。
シャドウの出現
シャドウと呼ばれる謎の魔剣士の活躍が目立ち、彼の登場によって物語が動き出す。
三つの勢力
「紅の塔」に向かう三つの勢力が戦いを繰り広げる中、暴君、妖狐、そしてシャドウという謎の男が登場する。彼らの関係や思惑が交錯し、塔に向かう壮大な戦いの幕が上がる。
番犬の過去
番犬は過去に「白い悪魔」として知られ、吸血鬼と戦ってきた過去を抱えている。彼の過去の経緯や塔での行動が、物語にどのような影響を与えるのかが注目される。
クレアとメアリーの行動
クレアとメアリーは「紅の塔」の内部で様々な出来事に直面する。吸血鬼や謎の組織との戦いに巻き込まれながらも、彼女たちは過去や目的を胸に進んでいく決意を見せる。
金貨の計画と回収
始祖の宝物庫で金貨を狙う計画を立て、金貨千枚を仕込んだが、戦いに備えるため限界を感じ、計画を実行する。回収後、3000枚中500枚の金貨を持ち出すことができた。
クリムゾンの復活とシャドウの出現
クリムゾンはエリザベートの復活を試みるが、シャドウとの遭遇で敗れ、シャドウによって復活が阻止される。シャドウは「イヴ」と呼ばれた少女に導かれ、出現する。
クレアの戦いと特別な力
クレアはエリザベートとの激しい戦いを繰り広げ、特別な力に目覚める。アウロラとの出会いで、クレアの体内での血の適応と力の制御が語られる。
クレアとシドの訓練
クレアは弟のシドのために特別訓練を思いつく。彼女は父親が森にスカーフェイス盗賊団がいることを知りつつも、シドの根性を鍛えるために森へ向かう。
森での戦い
クレアとシドは森でスカーフェイス盗賊団に遭遇し、クレアは必死に戦うも倒されてしまう。しかし、シドが意識を取り戻し、驚異的な力を発揮して盗賊団を圧倒し、クレアを救う。
シドの力と再会
クレアはシドの強さを再認識し、彼を守ることを誓う。二人は再会を喜び、強く抱き合う。盗賊たちが逃げた後、クレアはシドの過去の助けに気づき、彼を今度は自分が守ることを決意する。
クレアとシドの関係
クレアは魔剣士として期待される一方で、弟のシドは目立たない存在だった。クレアは厳しく接していたが、森での出来事を通じて、過去の記憶から弟に対する気持ちが変わっていく。
スカーフェイス盗賊団との戦い
クレアとシドはスカーフェイス盗賊団との戦いに巻き込まれる。クレアは必死に戦うものの倒れてしまい、シドも助けに入るが敗北する。しかし、シドが驚くべき力を発揮し、盗賊団を打倒する。
クレアとシドの再会
クレアは意識を取り戻し、シドと再会する。彼女は弟を守る決意を新たにし、再び強く抱きしめる。
ユキメとシャドウの計画
ユキメとシャドウは包囲網の情報を共有し、大商会連合に対抗する計画を練る。ユキメは商会関係者たちと共に計画的な反撃を行い、利益を独占する提案をする。
ミツゴシ商会と大商会連合の対立
ミツゴシ商会と大商会連合の対立が激化し、偽札作戦や包囲網の情報が明らかになる。ミツゴシ商会が銀行を運営し、大商会連合との対立が激化する事態に進展する。
偽札作戦と盗賊狩り
ユキメによって承認された偽札作戦が進行し、ジョンは偽札の完成を待ちつつ、敵の諜報員を排除する任務に取り組む。また、ジョンとデルタは盗賊狩りを行い、深夜の森での一連の出来事が描かれる。
月丹とガーター商会
豪華な部屋には太った商人ガーターと盲目の獣人月丹がおり、月丹はミツゴシ商会を襲撃する計画を立てていた。彼らの目的や思惑についての物語。
ミツゴシ商会の状況
雨の夜、ミツゴシ商会の内部では大商会連合との戦いについて話が展開され、商会の戦力や関係者の動向についてのエピソード。
偽札工場とユキメの依頼
語り手が偽札工場に案内され、ユキメから月丹という男に対する復讐を誓う話を聞く。そして、偽札の流通計画や月丹への復讐についての物語。
アルファとガンマの対応
アルファとガンマは偽札の発見に驚き、連合への噂流しと出所探しを指示した。ガンマはナンバーズを動員して調査を開始し、アルファは事態の計画性に考えを巡らせた。
偽札の出所と計画
偽札の流通と出所についての計画が明らかになり、月丹の信用崩壊計画とジョン・スミスの行動が明らかになった。また、ミツゴシ商会の狙いや危機も浮かび上がってきた。
デルタとジョン・スミスの関係
デルタとジョン・スミスの対立や関与が明らかになり、主人公の計画やデルタの任務遂行に関わる決断が示唆された。また、アルファのジョン・スミスに対する興味も浮かび上がった。
月丹とユキメの過去
ユキメは幼い頃に大狼族の青年月丹に救われ、彼との出会いが初恋だった。しかし、戦乱の中で悲劇に見舞われ、復讐のために力を得て月丹に立ち向かうことを決意する。
シャドウの計画
シャドウは偽札を利用し、商会連合の崩壊を見越して計画を進める。最終的にはシャドウとミツゴシ商会の協力が明らかになり、月丹との決着後に新たな連携が約束される。
結末と新たな始まり
商会連合は崩壊し、ミツゴシ銀行と商会が信頼を得て王国経済を支える存在となる。ジョン・スミス(シャドウ)は金貨を見つけられず、新たな旅に出る決意をする。
読んだ本のタイトル
#陰の実力者になりたくて ! 03
著者: #逢沢大介 氏
イラスト: #東西 氏
あらすじ・内容
クレアに誘われ『無法都市』へと訪れたシド。
そこに眠る始祖の吸血鬼『血の女王』の討伐依頼に参加することになった彼の眼前に現れたのは、『最古のヴァンパイアハンター』を名乗る謎めいた美少女・メアリーだった。
『無法都市』の三大勢力、『暴君』ジャガノート、『妖狐』ユキメ、『吸血鬼』クリムゾンに加え、
『始祖の血』と『悪魔憑き』の繋がりを探る『シャドウガーデン』までもが乱入し、
混迷を極める戦場に今、『伝説の始祖』の覚醒の刻が迫る……!
とまあ、とにかくガチでビッグな『陰の実力者』的イベントが大発生!!!!!!!
感想
ブシン大会に優勝した姉クレア。
クレアに拉致られるように不法都市に来た主人公シド。
クレアは昔罹患した悪魔憑きの悪化を危惧しており。
自身がいなくなってからのシドの将来を心配していた。
そんなシドの就職の箔付けのためにクレア宛に来た血の女王討伐の依頼の従者として参加させる事になったのだが、、
クレアがミーティングをしてる時にフラッと外に出てたら、吸血鬼の下僕グールが現れてしまい最初はボコられていたが、突然に暴れてしまう。
そして、シドはシャドウとなりグールを討伐しながら娼婦のマリーを助けた。
そして「赤い月」が始まると吹聴しまくる。
そんな騒動の中クレアは部屋を勝手に出て行ってしまったシドを必死に探しながらグールを殺しまくり。
そして、グールに喰われてる黒髪の男の子を発見。。。
グールを瞬殺して遺体をㇱドと思い込み抱き締めながら号泣。
いや、それ人違いだから。
そんなクレアに、2人の黒髪の少年に心当たりがあると言ってクレアに接触して来たヴァンパイヤハンターのメアリー。
1人目は、暴走したグールの前で『ふふふ……』と微笑んでいた。←ㇱドです
2人目は、二人目は魔剣士の少年だった。『血の女王』の配下に襲われて連れ去られた。
地味で目立たない感じだった。
正解は1人目なのだが、クレアは地味で目立たない感じと聞いて2人目を選択。
そこから始まる姉弟のすれ違いw
そして、本格始動する「赤き月」の騒動。
クレアの狙いは攫われたシドの救出(人違い)。
メアリーは血の女王エリザベートの殺害。
地下道から侵入する2人だったが、、
その時、シドは拠点に戻って爆睡していた。
そして、起きたシドはグールが暴れている騒動の只中に飛び込んで行く。
そこで再度娼婦のマリーを助ける。
ちなみにマリーは4巻に再登場します。
その後、血の女王のアジトに乗り込んで行く姉クレアとヴァンパイヤハンターのメアリー。
そこで偶然に出会うシャドウガーデンのベータと664番、665番、そして元ローズと名乗っていた666番。
ちなみに彼女は初任務だった。
そこで最愛の存在シドの名を聞いて動揺してクレアに声をかけてしまう。
ベータが誤魔化していたが、、
裏からはそんな侵入者がいたが。
表から堂々と赤き月の騒動を治めようと血の女王のアジト、赤の塔に突貫する者が現れた。
無法都市のトップ『暴君』ジャガノートと『妖狐』ユキメ。
さらにそこにシャドウも参加する。
血の女王の間への1番乗りはシャドウだったが、、到着が早過ぎた。
番犬を瞬殺して、宝物庫に入って金貨を掻っ攫い。
そして、通りすがりにクレアを襲っているジャガーノートをぶん投げて。
最上階に行ったら、今回の騒動の首謀者『吸血鬼』のクリムゾンを通りすがりにサクッと倒し。
いざ血の女王と対決と思ったら、、
生贄にされた遺体のみ。
まだ何も起こってはいない状態。
それなので別の場所に行ったら。。
後に追い付いてきたクレアとメアリーが来て、生贄の黒い髪の少年を確認していたら、、
血の女王エリザベートがクレアを襲い、血を吸って復活してしまう。
さらに後からベータ達が突撃してクレア達を救出。
そして、血の女王との戦闘に突入する。
さらにジャガーノート、ユキネが参戦。
だが、血の女王は強かった。
血の女王が放った血の鏃がベータとクレアの魔力を乱れさせた。
悪魔憑きの症状が出て来た。
そんな時、意識不明になってたクレアに、、
アウロラが取り憑く。
精神世界で、クレアの身体に起こっている現象の説明をしてるのだが、、
チンプンカンプ。。
え?
何回読み直しても何を言ってるのか、、
そんなクレアに取り憑いたアウロラが表に出て来て、血の女王エリザベートと対抗するが、、
クレアの身体に限界が来た。
でも最後はシャドウが、、
リカバリーアトミック??
え?ナニソレ??
ただ、無法都市から去る時に、髪の赤い貴婦人がシャドウを見送っていた。
あと、クレアはシド曰く中二病に罹患した。
いや、アウロラが取り憑いただけだから!!www
取り憑いたのか??
わからない。
それはそれで面白い。
そして、幼少期の話が出て。
スレイヤーの話が出て来る。
シドのネーミングセンスが、、、
そして、後半はミツボシ商会が紙幣を出してより取引をしやすくしたが、、
他の大手商会が連合を組んでミツボシ商会を潰そうとする。
最初は盗賊のフリをしてミツボシ商会のキャラバンを襲うが、、
反撃されて全滅。
ミツボシ商会の会頭のガンマを暗殺しようとするが、、
ガンマのデタラメな動きに翻弄されて、、
失敗。
なんか事故が起こりそうで怖いな、、
そしてシャドウは、、
紙幣の信用制度を逆手に取って、無法都市の『妖狐』ユキメと暗躍して偽札を刷る。
ミツボシ商会への裏切り行為なので秘密にしようとしていたが、、
偽札の流通ルートの調査をした666番達のような従業員達が対応したが、シャドウことジョンスミスはアッサリと抑えられてしまう。
それなら最大戦力のデルタを送ったら、、
デルタは野生の勘でシドに気が付いてしまった。
ただゴールデンレトリバーな感じのデルタは、シドに新しいお仕事を言われて其方にダッシュしてしまい。
行方不明になってしまう。
それをアルファは悲しんでしまうが、、
デルタはただ単にアルファより優先しているシドの命令を優先しただけだった。
アルファがどれだけ心配していたか知らずに、、
デルタ、マジでワンコだわ。。
ゴールデンレトリバーってよりシベリアンハスキーな気がする。
あれ、見た目はオオカミみたいだし。
でも、底なしに人懐っこいシベリアンハスキー。
アレはアレで可愛い。
そして、アルファはジョンスミスを殺しに行ったら、シャドウだと判る。
それに絶望するアルファだったが、、
シャドウが残した暗号を解読したらシャドウが調達した金貨を回収。
そして、紙幣の信用を下落させて相手組織を壊滅させた。
そして、その対価となっなった金貨は・・・
何処に行った???
いや、ミツボシ商会の蔵じゃね?
それとも最後のデルタのセリフ、、
もう一回読んでみるかな?
あと、ユキネの昔話、、、
ユキネが気絶する前のセリフ、、
スタイリッシュ盗賊スレイヤーさんだよな?
アニメ PV
そして、アニメ2期制作決定
2023年10月から放送開始!!!
同シリーズ
陰の実力者になりたくて! シリーズ
小説版
漫画版
その他フィクション
陰の実力者になりたくて グッズ
備忘録
序章
ブシン祭でクレアが優勝した。
ローズ会長の乱入もあり一時混乱したが、アドリブで場を盛り上げ、無事に祭は成功した。
その後、オリアナ王国の内乱の噂もありながら、学園生活は通常通りに戻った。
クレアは優勝後、多忙な時期を過ごし、学園に復帰。主人公は彼女と祝勝会をミツゴシ商会のレストランで開き、豪華な料理を楽しんだ。
クレアは自分の実力を誇示し、主人公に将来のことを考えるよう促した。
彼は門番になりたいと冗談を言うが、クレアは彼を騎士団に入れる計画を立てていると明かした。
ディナーを終えた後、二人は王都を散策した。会計時に料金を求められず、ガンマのサービスか、クレアのブシン祭優勝のためかと考えた。夜道を歩く中で、主人公は赤く見える月に気付いた。クレアは「血の女王」の話を続け、無法都市で彼女の配下が事件を起こしていることを説明した。周辺国は討伐を依頼し、クレアは討伐チームに参加予定で、主人公を安全な場所に置くつもりである。
その時、二人は血の臭いを感じ、路地裏でグールと遭遇した。
クレアはグールを討伐し、彼が「血の女王」の配下である可能性に気付く。
クレアは自分も理性を失い化け物になるのではないかと不安を語り、過去に黒い痣が広がり、治ったことを話した。
主人公は心配しないよう促し、クレアはそれを冗談と受け流す。
彼女は秋休みに時間を空けるように言い、二人は騎士団を呼びに向かった。
夜空の赤い月を見上げる主人公は、吸血鬼や無法都市への興味を募らせた。
主人公は寮の自室でベータの報告を聞いていた。学園の授業後、彼は「シャドウガーデン」の定期報告を受けていた。
ブシン祭の事件でのドエムの立場について議論し、無法都市に関心を持つ。
無法都市は盗賊が集まる場所であり、彼はその盗賊の財産を得ることで問題を解決しようと考えた。
「シャドウガーデン」の戦力も拡大し、アレクサンドリアの研究所では蒸気機関の開発が進んでいる。
主人公は一生遊んで暮らせるほどの財産を得れば自由な人生を楽しめると考え、無法都市の勢力の一つを壊滅させる計画を立てる。
特に「血の女王」に興味を持ち、彼女をデザートとして最後に残すか迷っていた。
その時、彼は無法都市から血の臭いを感じ取り、「血の女王」が動いていることに気付く。
彼はベータに「赤き月」について語り、伝説の「赤き月」が現れることで無法都市と周辺国家に壊滅的な被害が及ぶ可能性を示唆する。
しかし、主人公は冷静に対応し、「シャドウガーデン」の派遣を控えるよう指示した。
ベータは主人公の決断に驚きながらも理解し、彼に従う姿勢を見せる。
主人公は「月が赤いだけの話だ」と冷静に述べ、ベータはその言葉に安心する。
二人は赤い月を眺めながらワインを楽しみ、主人公は秋休みに無法都市で大きな行動を起こすことを決意した。
無法都市は巨大なスラムであり、路上生活者が集まり、腐敗臭が漂う場所である。
しかし、その中には3本の摩天楼がそびえ立っている。
この摩天楼の一つ「紅の塔」は「血の女王」の城である。
悪役風の男クイントンと金髪の美青年ゴルドーは、この塔の前で立ち止まる。
クイントンは塔の高さに驚きつつも、「血の女王」を狩る強者としての自負を示す。
無法都市の中心部に進むにつれ、街の印象は多文化が融合した雑多な都市へと変わり、住人たちは獲物を狙う目を向ける。
二人は「血の女王」の縄張りに入ったことを察知し、塔の入り口に到着するが、そこに現れた「番犬」によって阻まれる。
「番犬」は4年前「血の女王」に挑み、利き腕を失った過去を持つ。
クイントンは「番犬」を軽視して攻撃するが、逆に腹を裂かれ倒れる。
ゴルドーは「番犬」の力を理解しつつも仲間を救おうと最強の技を放つが、「番犬」の圧倒的な実力に直面する。
ゴルドーはその技を地面に打ちつけ、クイントンを助けるために逃走するが、「番犬」は追わず、無法都市の支配者としてその摩天楼を見上げる。
無法都市は悪と富と力が集う弱肉強食の世界であり、ここでは力こそが法である。
一章
秋休みに主人公と姉は無法都市に向かった。
都市には3本の塔があり、姉はまず情報収集のため、魔剣士協会の拠点に行くことを提案した。
スラムを歩いていると、怪しい露店が並び、店主が金髪の魔剣士奴隷ゴルドーを紹介した。
ゴルドーは傷ついていたが、高額で売られていた。
さらに、クイントンという別の奴隷も紹介され、二匹セットで販売された。
姉は購入を拒否し、露店を後にしたが、その後、奴隷たちは別の客に購入された。
主人公は無法都市の3本の塔を見据え、どの塔に向かうかを考えた。
魔剣士協会の拠点に到着したが、主人公は会議に呼ばれず、姉は「大人しく待っていろ」と言い残して会議に参加した。
主人公は夕日が沈む無法都市を散歩することにし、スリに遭ったが、すり返して財布の中身が増えた。
その後、突然「グール」の出現の悲鳴が聞こえ、現場に向かうと、グールは既に捕らえられ、集団リンチに遭っていた。
しかし、グールが突然復活し、赤く染まり暴走を始めた。
混乱の中、細身の剣士が現れ、赤いグールを一刀で斬り捨てた。
剣士は「最古のヴァンパイアハンター」メアリーと名乗り、「血の女王」エリザベートを狩る者であると告げた後、夜の闇に消えた。
主人公は赤い月を見上げ、少し遅くなる帰りを思いながら微笑んだ。
夜の無法都市で最も賑わうのは色町である。娼婦たちが男たちを魅惑する中、突然「グールが出た」との悲鳴が響く。用心棒が対応するも、今回は赤いグールに襲われ、無残に食いちぎられる。襲われた若い娼婦を救ったのは漆黒のロングコートを纏った剣士で、彼はグールを両断し、赤い月を見上げ「『赤き月』…残された時間はわずかだ」と呟く。
その後、剣士は自らを「シャドウ」と名乗り、闇に消える。
救われた娼婦マリーはシャドウに礼を言おうとするが、既に彼は姿を消していた。
先輩娼婦たちと共に彼の正体について話す中、シャドウが「学園を襲撃し、聖域を吹き飛ばした組織の親玉」とされる噂が語られる。
しかし、マリーはシャドウが悪者には見えず、彼が赤い月の異変とその先に起こる何かを知っていると感じていた。
シャドウが何かを止めに来たのだと信じるマリーは、不安げに赤い月を見上げ、シャドウに感謝の意を呟く。
シドが行方不明になり、クレアは弟を探して夜の無法都市を駆け巡る。
彼が一人で拠点を出たと知ったクレアは、協会の魔剣士を殴り倒し、都市に飛び出した。
無法都市は危険で、シドのような魔剣士学園の生徒は格好の獲物である。
クレアは「黒髪黒目で15歳くらいの男の子」を探し、道行く人々に尋ね続けた。
ブシン祭優勝の実力を発揮し、襲いかかる者を撃退しながら、ついに黒髪の男性を発見する。
しかし、彼は路地裏でグールに襲われていた。
クレアは即座にグールを斬り倒し、黒髪の男性の前に跪く。彼の体は損傷が激しく判別がつかないが、シドの可能性を考え涙する。
その時、背後に赤い髪の美しい女剣士が現れる。
彼女はヴァンパイアハンターのメアリーで、「黒髪黒目の少年」を探しているという。メアリーは二人の候補を挙げ、一人目はグールの前で不気味に微笑んでいたが、クレアはそれを否定する。
二人目は「血の女王」の配下に襲われた魔剣士の少年で、その描写にクレアはシドだと確信する。
メアリーは彼が「赤き月」が始まる前に贄にされる可能性を示唆し、協力を提案する。
クレアはその手を取り、共に行動する決意を固める。
クレアはシドを救うため、メアリーと共に路地の奥へと進んでいく。
クレアとメアリーが訪れたのは、崩れかけた家屋で、室内は大量の土砂に埋もれていた。
メアリーはランプを灯し、クレアに「血の女王」エリザベートの居城「紅の塔」に弟がいる可能性が高いと告げた。
エリザベートは千年前、世界を支配していた始祖の吸血鬼であったが、人間にその弱点が広まり、次第に狩られる立場となった。
吸血鬼の弱点は、心臓を破壊されると再生できないこと、吸血行為をしなければ力を維持できないこと、日の光に当たると灰になることの三つである。
吸血鬼は「赤き月」の夜に反逆し、多くの国を壊滅させたが、その後姿を消し、人々から忘れられていった。
メアリーによれば、エリザベートは千年の眠りについており、「赤き月」の力で蘇ろうとしている。
彼女の復活には魔力を豊富に含んだ若い男の生き血が必要であり、クレアの弟がその贄にされる可能性が高い。
クレアは弟を救うために「紅の塔」へ向かう決意を固めた。
メアリーは「赤き月」の影響で吸血鬼たちが暴走し、人々が危険にさらされていることを説明し、地下から塔に侵入する策を提案した。
メアリーは事前に塔の下まで穴を掘っており、この穴を使って侵入する計画を立てていた。
クレアとメアリーはお互いに協力し合うことを確認し、クレアは迷わず穴に入り進んでいった。
メアリーはクレアを見送り、赤い月を見上げながら「エリザベート様、もうすぐです」と呟き、クレアの後を追った。
主人公が魔剣士協会の拠点に戻ると、クレアは不在であった。
彼はクレアが散歩に出たと思い、暇つぶしに眠ることにした。
目覚めると、無法都市は荒れ、深紅の月が空に浮かび、グールが暴れていた。
「暴走」が起きているようだ。拠点では緊急会議が開かれているが、主人公はイベントに遅れていないか心配しつつ、すぐに行動を開始した。
主人公は漆黒の衣を身に纏い、高い建物の屋上に立った。「赤き月」「暴走」「血の女王」などのキーワードが頭に浮かび、興奮を抑えきれない。
最古のヴァンパイアハンターとも接触したいと考え、イベントを最大限楽しむためのルートを構築しようと決意する。
最終目標は「血の女王」の討伐であり、「紅の塔」での火事場泥棒の計画も視野に入れている。
クレアがまだ戻っていないが、彼女が「紅の塔」に突入している可能性があるため心配していない。
主人公はイベントを周知しながら、グール狩りを開始する決意を固めた。
マリーはその日最後の客を見送った後、部屋の扉を閉め、乱れたシーツと散らかった下着を片付けた。
その後、透けた下着を着たままベッドに倒れ込んだ。疲れたマリーは眠ろうとしたが、部屋の臭いが不快で窓を開けた。
外の騒がしい様子に気づき、赤い月が浮かぶ夜空と遠くの火事を見た。
街全体が慌ただしく、普段とは異なる様子であった。
13歳で売られ、5年間この街で過ごしたマリーは、無法都市から外に出ることを考えていたが、最近は諦めかけていた。
マリーは色町で有名な娼婦だが、頂点には立っていなかった。
外の世界への思いを忘れつつあり、無法都市に馴染んでいく自分を感じていた。
その時、一匹のグールが窓から部屋に飛び込んできた。
狭い室内で逃げ場を失ったマリーにグールが襲い掛かった瞬間、漆黒のロングコートを着た男、シャドウが現れ、グールを瞬時に倒した。
シャドウは街が血で染まる様子をマリーに示し、逃げるように促した。
通りは血と肉塊で埋め尽くされ、グールたちが暴れていた。
マリーの先輩も襲われそうになったが、シャドウが再び現れてグールを倒した。
シャドウの姿は消え、通りの肉塊もすべてグールのものであることに気づいたマリーは、シャドウが人々を助けていると感じた。
マリーは下着の上に服を着て、手早く荷物をまとめて2階から飛び降りた。
シャドウに感謝し、いつか恩を返すことを心に決めて、混乱に紛れて逃げ出すことにした。
魔剣士協会はグールの暴走に対して後手に回っていた。
一流の魔剣士たちが対応するも、強化されたグールとその圧倒的な物量に押され、後退を余儀なくされていた。
指揮を担当するクローディアが必死に士気を保とうとするも、通りはグールの死体で埋め尽くされ、協会の士気は低下していた。
大量のグールの出現は計画的な犯行であり、無法都市の一部を支配する「血の女王」の力であると考えられた。
クローディアは上層部の判断を非難しつつ、撤退を決断した。彼女は剣を抜き、自身の判断の遅れを悔やんでいた。
撤退を命じたクローディアは、単独で殿を務めるが、グールに囲まれ追い詰められる。
その時、漆黒の魔剣士シャドウが現れ、一瞬でグールを殲滅した。
シャドウの驚異的な実力にクローディアと他の魔剣士たちは驚愕した。
シャドウは、暴走が始まり、時間がわずかであることを告げた。
赤い月が浮かぶ夜空を見て、クローディアは「赤き月」の伝説を思い出し、千年前の惨劇が再び起こる可能性を感じた。
クローディアはシャドウに協力を要請するが、シャドウはそれを断り、一人で「血の女王」を討伐すると言った。
彼の言葉にクローディアは戦慄しつつ、その背中を見送った。
シャドウは「陰に潜み、陰を狩る者」と名乗り、深紅の月の下、「紅の塔」へと向かっていった。
クリムゾンは無法都市を見下ろし、夜空に浮かぶ赤い月を見つめていた。
都市の制圧は計画通りに進んでいるが、配下の報告によると、局所的に予想以上の抵抗があるという。
その抵抗は、「妖狐」ユキメと「暴君」ジャガノートによるものであった。
クリムゾンはこれまでこの二人に苦しめられてきたが、赤き月の下での女王の復活が近づく中で、彼らも血の海に沈むと確信していた。
クリムゾンは棺に歩み寄り、「血の女王」の復活を喜びながら撫でていた。
しかし、配下が「三人の抵抗者」と報告したことに疑問を抱いた。
シャドウという名の者が、多数のグールを駆逐し、吸血鬼の増援すら一掃しているという報告を聞き、クリムゾンはその名をつぶやいた。
シャドウが最大の脅威であると認識したのである。
二章
紅の塔に向かう三つの勢力があった。一つは「暴君」と呼ばれる褐色の巨人で、巨大な鉈のような武器で敵を両断していた。
もう一つは「妖狐」と呼ばれる白銀の狐人で、鉄扇を使い舞うように敵を切り刻んでいた。
二つの勢力は交戦し、ジャガノートは「久しぶりだな、妖狐」と挑発し、ユキメは「会いたくなかった」と返答した。
そのとき、漆黒のロングコートを纏った男が現れ、追跡してきた吸血鬼を瞬時に倒した。
彼の名はシャドウであり、彼の剣技にジャガノートとユキメは感嘆した。
「シャドウガーデン」の首領であるシャドウは、自らを陰に潜み陰を狩る者と称した。
三者は互いに牽制し合い、ジャガノートは「三人で見合いするか、デスマッチを始めるか」と挑発した。
ユキメはシャドウと組むことを提案し、ジャガノートは「油断すると寝首をかかれる」と嘲笑した。
シャドウは「赤き月」の暴走が始まったため、争う時間がないと告げ、立ち去った。
ユキメはシャドウを追いかけ、自分の助けを感謝する旨を伝えたが、シャドウはそれを受け入れずに立ち去った。
ユキメは再度感謝の意を示し、紅の塔に向かい、シャドウも姿を消した。
番犬は紅の塔で獲物を待っていた。
彼はかつて「白い悪魔」と呼ばれる殺人鬼であり、騎士団長として市民を守る理想の騎士に見えたが、実際は夜な夜な人を斬り続ける殺人鬼であった。
同僚に犯行が発覚すると彼は騎士団を全員斬殺し、逃亡先の無法都市で殺人を繰り返した。
しかし、紅の塔でクリムゾンに敗北し、番犬として生きることになった。
赤き月が始まり、多くの吸血鬼が塔から出たため、番犬は自由に人を殺す機会を得た。
彼は魔剣士協会が血の女王を討伐する噂を聞き、獲物を待ち望んだ。
やがて、荒々しい足音と共に暴君ジャガノートが現れ、番犬はその圧倒的な力に恐れおののきながらも扉を譲った。
ジャガノートは扉を破壊して紅の塔に入った。
続いて現れたのは妖狐ユキメであり、番犬は彼女の妖しい美しさに圧倒されて道を譲った。
彼は塔の中で起こる怪獣大戦争を予感した。
最後に、黒ずくめの男が現れた。番犬は彼を待ち望んだ獲物と見なし、斬りかかったが、逆に両断された。
黒ずくめの男は紅の塔に入り、壁を垂直に走って大穴を開けて塔の中に入った。番犬はその男の危険さを知り、命が絶える寸前に塔の宝物庫を思い出した。
ベータが読書中に、何かを叩く音が聞こえ、壁が崩れて二人の女性が書庫に転がり込んだ。
黒髪の少女はクレア・カゲノーで、赤髪の女性はメアリーであった。
彼女らは『紅の塔』の地下書庫に侵入したところだった。
ベータが『シャドウガーデン』の一員であることを明かし、彼女たちは始祖の血のサンプルを求めていると語る。
クレアとメアリーは一時的に剣を納めたが、〈悪魔憑き〉の研究について問答を続けた。
ベータがクレアに、弟シドが『血の女王』に攫われた理由を尋ねると、別の黒いボディースーツを着た女性、666番が現れる。
ベータは彼女を控えさせ、クレアに再び尋ねた。
メアリーは黙って扉を開け、クレアも後を追う。
ベータは666番に対し、今回の任務での失態を指摘し、次回は注意するよう指示した。
また、研究室からの依頼で始祖の血のサンプルを回収する任務を確認し、『血の女王』の対処はシャドウ様に任せるとした。
最後に、3人に書庫での資料調査と重要書類の回収を再開させた。
メアリーの予想通り、『紅の塔』にはほとんど吸血鬼が残っていなかったが、散発的な襲撃は受けた。
クレアはメアリーの指示に従い、吸血鬼の心臓を貫き灰にした。
メアリーの協力により、クレアは無傷で進んでいた。
メアリーは吸血鬼の戦いに精通しており、その動きを予測し的確に対応した。
クレアはメアリーに対し、「何か隠しているのではないか」と問いかけた。
メアリーは「『血の女王』を討伐するために生きてきた」と答えたが、クレアはそれでは不自然だと感じ、書庫での「安息の地」という言葉の意味を問いただした。
メアリーは詳細を語らず、クレアも〈悪魔憑き〉へのこだわりについて明確に答えなかった。
お互いに秘密を持ちながらも、クレアは弟の救出に、メアリーは『血の女王』の討伐に協力することで合意し、視線を合わせることなく塔を進んでいった。
メアリーとクレアが『紅の塔』を進むと、戦闘音が聞こえたため、彼女らは慎重に扉を覗いた。そこでは褐色の巨漢が吸血鬼と戦っていた。
この巨漢は無法都市の支配者の一人である『暴君』ジャガノートであり、吸血鬼を圧倒していた。
吸血鬼が霧化して背後から攻撃を試みるも、ジャガノートは予感でこれを察知し、巨大鉈で吸血鬼を粉砕した。
クレアとメアリーが隠れようとするが、ジャガノートに気づかれ、扉を破壊される。二人は戦闘を避けられず、ジャガノートと対峙した。
クレアはジャガノートの攻撃を受け流そうとするが、ジャガノートの一撃により顔面を殴られる。
メアリーも援護しようとするが、彼の圧倒的な力の前に傷つく。
メアリーはクレアの血を吸うことで傷を癒し、吸血鬼としての力を発揮する。
再びジャガノートと戦うも、メアリーは押し負け、クレアも窮地に陥る。
そのとき、漆黒のロングコートを纏ったシャドウが現れ、ジャガノートを一撃で打ち倒した。
シャドウの圧倒的な力にクレアは安心感を覚えたが、シャドウはすぐに姿を消した。
メアリーは自身が吸血鬼であることをクレアに明かし、『血の女王』の真実について語り始めた。
メアリーはかつて『血の女王』エリザベートの配下であった。
吸血鬼が世界を支配していた時代、エリザベートは始祖の中でも強力であったが、必要以上に人を狩ることを嫌い、配下が少なかった。
人が吸血鬼を狩る時代になると、エリザベートは人と共存し、血を断ち、吸血衝動を抑えて生きていた。
エリザベートの配下は血を断ち、力を失ったが、太陽の下で生きる力と安らかな心を得た。
しかし、エリザベートは強い吸血衝動を抑えきれず、黒い日傘を使って外出していた。
彼女は吸血鬼と人が共に暮らせる『安息の地』を作ろうとしたが、その夢はクリムゾンの裏切りによって崩壊した。
クリムゾンはエリザベートの食事に人の血を混ぜ、『赤き月』の夜に彼女を暴走させた。
彼らは領地の人間を食い尽くし、エリザベートの夢は破れた。
エリザベートの配下は血を断ち力を失っており、唯一メアリーが彼女を追った。
エリザベートは自らの過ちを悔い、心臓に剣を刺して倒れたが、完全に死ぬことはできず、メアリーは彼女を棺に隠し守り続けることを決意した。
メアリーはエリザベートを守れなかったことを後悔している。
彼女は血を断ったために力を失い、エリザベートが再びクリムゾンに利用されることを恐れている。
メアリーは自身が吸血鬼であることを隠していたことを詫び、クレアも自身が〈悪魔憑き〉である可能性を告白した。
クレアは弟を騎士団に入れたが、彼が攫われてしまったことを悔やんでいる。
クレアはエリザベートの夢を幻想だとは思っておらず、彼女を助けたいと考えているが、メアリーは過去の過ちを繰り返したくないと述べる。
クレアは『赤き月』が終わったらエリザベートを目覚めさせ、再度話し合うことを提案するが、メアリーはエリザベートが死を望んでいるかもしれないと考えている。
クレアは「話してみなければ分からない」と言い、メアリーに笑顔を見せる。
メアリーもまた、エリザベートの夢が幻想ではなかったと感じ、皆が笑顔で終わることを望んでいる。
メアリーはクレアの提案に同意し、クリムゾンを倒してエリザベートを助けることを決意する。
クレアは弟シドの救出を自分の役目とし、メアリーにサポートを依頼する。
二人は塔を上っていった。
三章
吸血鬼の始祖の宝物庫で感動したが、持ち帰れるものは限られているため、金貨に狙いを定めた。
金貨は500円玉サイズで1枚10万ゼニー、換金不要で使えるため効率的で信頼性が高い。
美術品や大きな貴金属は持ち運びや処分が難しいため選ばなかった。
金貨を持ち運ぶためにスライムボディースーツに埋め込み、金貨千枚(1億ゼニー)を仕込んだ。
これ以上仕込むと動きが硬くなるため、これで限界とした。
金貨千枚でも目立たないが、2000枚だと目立つ可能性があると考えた。
『血の女王』との戦いが控えており、彼女は始祖の吸血鬼であるため強力であることが予想された。
今回は自ら先に戦いに挑むことで、主人公たちが到着した際にその激闘に驚く展開を計画している。
金貨を宝物庫の扉の前に運び、後で回収しやすいように配置した。
無事に回収できることを祈りつつ、全力で塔を上った途中で姉を見つけ、彼女を助けるために『暴君』を撃退した。
その後、急いで塔を上ることにした。
クリムゾンは『血の女王』エリザベートを復活させるための準備を整えた。
彼は棺のふたを開け、そこから干からびた心臓を取り出し、贄の体に埋め込んだ。
心臓さえあれば、始祖は復活する仕組みである。
復活には時間がかかるため、クリムゾンはしばらく離れることにした。
部屋を出たクリムゾンは漆黒のロングコートを着た男に遭遇した。
男は即座にクリムゾンを一刀両断し、再生を繰り返す彼を次々と細切れにして最終的に心臓を一突きして灰にした。
男は自らをシャドウと名乗り、棺の前で待ったが、棺の中には誰もいなかった。
シャドウは室内を見渡し、黒髪の少年の遺体を見つけ、もしかしたら女王が既にいないのではないかと推測した。
彼は金貨を回収して捜索を続けることにし、部屋を後にした。
室内は赤い月の光に照らされ、突然贄の体が震え始め、埋め込まれた心臓が鼓動を始めた。
メアリーとクレアは『紅の塔』の最上階に到達し、扉を開けた。
クレアは血を流して倒れている黒髪の少年の遺体を見つけ、飛びついて抱きしめたが、それがシドではないと気付いた。
その瞬間、少年の腕がクレアの腹を貫き、彼女は血を吐きながら崩れ落ちた。
少年は死んでいたはずだが、触手のようなものが胸から溢れ出し、彼を覆い尽くした。
触手が弾け、美しい全裸の少女エリザベートが現れた。
エリザベートはクレアを抱きかかえ、その首筋に噛みついた。
クレアは生きていたが、メアリーは何もできなかった。
エリザベートがメアリーを見据えた瞬間、黒い影が現れエリザベートと衝突した。
それは漆黒のボディースーツを着たベータだった。
彼女はエリザベートの爪を受け止め、間合いを外した。
ベータの呼びかけで他の影が現れ、クレアを救出した。クレアはまだ息があったが、早急な治療が必要だった。
エリザベートが近づく中、ベータは仲間に指示を出し、メアリーにクレアを託した。
メアリーはベータに戦わないよう忠告したが、ベータは任務を遂行する意志を示し、『血の女王』と対峙した。
ベータは『血の女王』エリザベートとの対峙で失態を悔やんでいた。
主の姉が危機に陥ったことは大きな過ちであり、主が姿を見せない今、この場の対応はベータたちに任されている。
ベータはその認識が遅れ、事態を悪化させたことを悔いていた。
ベータは主の姉を救うため、エリザベートに勝利するしかないと決意し、魔力を込めた漆黒の刀で攻撃を開始した。
彼女の部下たちも協力し、エリザベートに連続攻撃を仕掛けたが、エリザベートの肉体は刃を受け止め、動きを封じた。
ベータと部下たちは何とか攻撃を続けたが、エリザベートの力は強大で、傷を再生させながら反撃してきた。
エリザベートが本格的に目覚め、その魔力が爆発的に増加すると、ベータたちは圧倒された。そこに『妖狐』ユキメと『暴君』ジャガノートが現れ、共闘を申し出た。
ジャガノートが先陣を切ったが、エリザベートの霧化能力によって攻撃をかわされた。
エリザベートは血の塊を放ち、それが爆発して血の鏃となり、ベータたちに襲いかかった。
ベータはクレアを守り、自身が傷を負いながらも鏃を受け止めた。
部下たちやジャガノートも大きな傷を負い、戦闘不能に近い状態だった。
ベータはエリザベートの伝説的な強さを前に勝機がないと判断しつつも、主が来るまで時間を稼ごうと決意した。
しかし、彼女の魔力が乱れ、〈悪魔憑き〉の症状が現れた。
エリザベートはさらに強力な血の塊を作り出し、ベータは動けない状況に追い込まれた。
そのとき、クレアがメアリーに抱かれたまま目を覚まし始めた。
クレアは白い無限の空間で浮かんでいた。そこで彼女は自分の鼓動だけを聞いていたが、突然、長い黒髪の女性の声が聞こえた。
ヴァイオレットの瞳を持つその女性は、クレアを助けに来たと告げた。
クレアの体は黒く変色しており、それはかつて経験した〈悪魔憑き〉の症状に似ていた。
女性は、クレアの症状が彼によって治療されていると説明し、彼は全てを知っていると告げたが、具体的な説明は避けた。
彼女はクレアに、体が腐り果てる前に少しだけ力を貸すと話した。
女性は進化の話を引き合いに出し、適応した者だけが生き残ると説明した。
クレアの体内で二つの血が適応しようとしており、それが制御できないために体が壊れていると告げた。
その際、クレアの手に複雑な魔法陣が現れ、黒い痣が消えていった。
女性はアウロラと名乗り、クレアに助けを貸すと言い残して姿を消した。
アウロラはシャドウの名前を最後に呟き、クレアはその名を口にした。
クレアがメアリーに抱かれて目を開くと、瞳が美しいヴァイオレットに染まっていた。
クレアは突然立ち上がり、その瞳の色と大人びた雰囲気、そして変わった魔力の質にメアリーは驚いた。
クレアの傷口は血で覆われ、その血は「血の女王」のものと同じように宙に浮かんでいた。
クレアは静かに呟き、血の塊を操り、「血の女王」と同じ技を使い、血の霧で敵の血の制御を奪った。
しかし完全に奪うことはできず、数本の鏃を返すに留まった。
それでも、その力は人を超越していた。
クレアと「血の女王」の戦いは激しく、互いの赤い触手が空間を埋め尽くした。
クレアは、吸い込んだ血の霧を利用し、「血の女王」を跪かせた。
だが、クレアの体はその力に耐えられず、苦しそうに血を吐き倒れた。
メアリーはクレアを助けようと駆け寄ったが、クレアは彼が来るまでの時間稼ぎを終えたと告げた。
その時、黒い影が現れ、自らを「シャドウ」と名乗った。クレアは彼の姿を見て安心し、気を失った。
漆黒の影シャドウが現れ、ベータは歓喜した。
彼女は主に絶対の信頼を寄せており、『血の女王』相手でも安心していた。
しかし、ジャガノートとユキメは不満と不安を抱いていた。
シャドウと『血の女王』の対峙が始まり、緊張が高まる中、『血の女王』は力を増していた。
シャドウは漆黒の刀で触手を斬り落とし、血の女王の攻撃を防いだ。
しかし、何かが普段と違うとベータは感じていた。
『血の女王』は自身の触手で分身を作り、シャドウに攻撃を仕掛けたが、シャドウは巧みに防いでいた。
ベータはシャドウが反撃せず、守りに徹していることに気づき、主が彼女たちを守りながら戦っていると悟った。
シャドウはついに攻撃を受け、壁に突き飛ばされたが、再び青紫の魔力を纏って現れた。シャドウは本気を出し、再び『血の女王』と対峙した。
シャドウは最小限の動きで触手を避け、『血の女王』の攻撃をすべて見切りながら進んだ。
そして、静寂の中で『血の女王』と見つめ合い、彼女に「死を望むか」と問いかけた。
『血の女王』が赤い爪を伸ばす中、メアリーが止めようと飛び出したが、触手に弾き飛ばされた。
最後に、シャドウは「リカバリーアトミック」と呟き、青紫の光が辺りを染めた。
ベータは気を失っていたが、目覚めると『赤き月』の光が降り注ぐ静かな夜だった。
周囲は皆気絶しており、ベータが最初に目覚めた。
主の姿は既になく、次の戦いに向かったと考えたベータは、主が彼女たちを守って戦った姿を忘れないと心に誓った。
傷が完全に治っていることに気づいたベータは微笑み、仲間たちも同様に回復しているのを確認した。
彼女は『血の女王』の血を小瓶に回収し、自分の血を浮遊させる能力を試した後、部下たちを起こした。
無法都市のジャガノートとユキメも目覚め、シャドウが全てを守ったことに驚嘆していた。
『紅の塔』は消滅しており、皆は彼の存在を確認するように空を見上げた。
ベータは帰還を宣言し、夜の闇に消えていった。
その時、クレアとメアリーも目覚め、メアリーは深紅の髪の少女を抱き起こしていた。
ベータは「今度こそ『安息の地』を見つけられるといいわね」と優しく微笑み、姿を消した。
語り手は朝日に照らされた黒塗りの豪華な馬車を眺めながらあくびをし、馬車の中では姉と吸血鬼の友人がお別れ会をしていると考えていた。
秋の澄んだ空気が気持ちよく、始祖の吸血鬼イベントが終わったことに満足していた。
予期せぬトラブルもあったが、最終的にリカバリーできたので、満足の結果となった。
しかし、全ての金貨を回収できたわけではなく、持ち出せたのは3000枚中500枚、つまり5000万ゼニーであった。
これでは一生暮らすには足りないが、無法都市が依然存在し、塔も2本残っているため、再び訪れればいいと考えた。無法都市を自分の貯金箱のように感じていた。
しばらくして、姉が馬車の扉から出てきたが、昨夜の宿泊先で姉が右手に魔法陣を描いているのを見たことを思い出した。
姉は「右手が疼く、特別な力がある」と呟いていたため、語り手は姉が特別な力を持ち始めたと感じた。
黒塗りの馬車から出た姉は陰のある微笑みで歩いてきた。
語り手は普段通り声をかけ、二人で歩き始めたところ、突然姉に抱きしめられ「特別な力が眠っている」と告白された。
語り手はこれを否定せず、「姉さんは特別だ」と励ました。
姉は力の謎を解く決意をし、語り手は姉の選択を尊重し応援することを誓った。
そのとき、背後から視線を感じ、振り返ると、黒い大きな日傘をさした深紅の髪の少女が立っており、彼女は深く一礼した。
付章
クレア・カゲノーは8歳の少女で、弟にシド・カゲノーがいる。
クレアは優れた才能を持ち、カゲノー家で期待される魔剣士であり、子供の大会で優勝するほどの実力がある。
それに比べ、シドは平凡で目立たない存在である。
カゲノー家では6歳から魔剣士の訓練が始まるが、シドは最近その訓練を始めたばかりである。
しかし、シドは訓練中に情けない声を上げることがあり、クレアはそんな弟に対して厳しく接していた。
クレアはシドを見下ろしながら、軽く当てただけで倒れるシドに不満を抱いていた。
クレアはシドの根性を鍛えるため、特別訓練を思いつく。
父親が仕事に行った後、クレアはシドを引きずって森へ向かうことにする。
父親が「森にスカーフェイス盗賊団がいるので近づかないように」と言ったのに対し、クレアは逆に森に行くことでシドの根性を鍛えようと考えた。
シドはこの提案に恐れを抱くが、クレアは大会で優勝した自信を示しながら、シドを説得し続けた。
最終的に、クレアはシドを引きずり、抜け道から家を出て森へ向かうのであった。
クレア・カゲノーと弟シドは、森の中でスカーフェイス盗賊団に遭遇した。
クレアは弟のために特別訓練として森に入ったが、昼食時に母が心配することを思い出し、帰ろうとしたところで盗賊団に襲われた。
クレアは盗賊団に立ち向かうが、彼らは全員が魔剣士であり、その力は圧倒的であった。
クレアは弟を守るために必死に戦うが、大人と子供の力の差は大きく、クレアは簡単に倒されてしまう。
シドもまた、クレアを守ろうと木剣を持って戦いに挑むが、盗賊に倒されてしまった。
絶望的な状況の中、クレアの脳裏に過去の記憶が蘇る。
幼少期、クレアが危険な目に遭ったとき、シドが何度も彼女を助けてくれたことを思い出した。
鍋の熱湯から助けられたことや、窓から落ちそうになったとき、野良犬に嚙まれそうになったときなど、いつもシドが助けてくれた。
クレアは弟のすごさを周囲に知ってもらいたいと思っていたが、その思いが逆にシドを危険にさらしてしまったことを後悔する。
意識が薄れる中、クレアは弟に謝りながら手を伸ばす。シドが起き上がるように見えたのは、彼女の幻覚であった。
黒髪の子供は、まるで何事もなかったかのように起き上がった。
彼はスライムを利用して攻撃をかわしており、盗賊たちはその事実に驚愕する。
子供は姉を助けるために盗賊団を倒す決意を示し、次々と彼らを圧倒していく。
最終的に、スカーフェイスと名乗る盗賊団のリーダーが子供に挑むが、子供はその攻撃を回避し、逆にスカーフェイスを圧倒する。
子供の魔力は凄まじく、彼の瞳は赤く輝き、『オーバードライブ』と呼ばれる力を発揮した。
この力により、スカーフェイスの武器は粉々に砕け散り、彼自身も両断される。
子供はその過程で大きな負担を受け、吐血しながらもスカーフェイスを倒すことに成功した。
しかし、彼は自身の力に対して30点と評価し、『陰の実力者』ならばもっと容易に勝利できたとため息をつく。
クレアは弟シドの声で意識を取り戻し、シドが無事であることを確認して安堵する。
彼女はシドを強く抱きしめ、涙を流しながら再会を喜ぶ。周囲を見渡すと、盗賊たちの姿はなく、血痕だけが残っていた。
シドは賞金稼ぎが現れたため、盗賊たちが逃げたと説明する。
クレアは過去の記憶を思い出し、シドがこれまでずっと彼女を助けてくれていたことに気づく。
彼女は決意を新たにし、今度は自分がシドを守ると誓い、シドを再び強く抱きしめた。
四章
ユキメは「白の塔」の最上階でシャドウを待っていた。
月光が差し込み、蝋燭の火が豪華な食事を照らしていた。
突然、漆黒のコートを纏ったシャドウが現れると、ユキメは彼を歓迎した。
ユキメは先日の感謝を述べ、シャドウにお礼として美女二人を差し向けたが、シャドウはこれを断った。
ユキメは最高級の和酒を勧めながら、シャドウに近づき用件を話し始めた。
ユキメは、ミツゴシ商会に対する包囲網の情報を提供し、商会連合が手を組んでミツゴシ商会を潰そうとしていると説明した。
しかし、ユキメはどちらも勝利しないと断言し、シャドウと手を組んで利益を独占しようと提案した。
ミドガル王国の王都から馬車で二日ほど離れた夜、ミツゴシ商会の馬車隊が野営をしていた。
彼らは高価な荷物を運んでおり、その価値は非常に高い。
ミツゴシ商会の成功を妬む他の商会が、大商会連合を組んで彼らに対抗しようとしていた。
夜、覆面をした魔剣士たちがミツゴシ商会の野営地を襲撃する。
彼らは銀髪のエルフを含む商会のメンバーを次々と襲い、最後に白金の髪の美しいエルフに迫った。
彼女は恐怖に怯えるふりをしながら、黒い衣をまとい、自らの防御を固めた。
襲撃者が彼女に刃を向けたが、黒い衣がその攻撃を完全に防ぎ、彼女は逆に襲撃者を倒す。
そして、彼女の命令で、倒されたはずの商会関係者たちが次々と立ち上がり、刺客たちを殲滅した。
彼らは全員、黒い衣を着ており、計画的な反撃を行った。
戦闘が終わり、白金の髪のエルフであるアルファは、部下のベータから刺客の殲滅が完了したとの報告を受けた。
彼女たちは無傷であり、数名の刺客を捕らえていた。アルファは遠くの空を見つめ、戦争の開始を予感していた。
秋の終わりが近づき、冷たい夜風が感じられる頃、彼は寮の自室でスーツに着替えていた。
彼のスーツはユキメから贈られた雪狐商会製のもので、ミツゴシ商会の製品を模倣している。
ユキメは無法都市の外で商会を運営しており、模倣品を主力に業績を伸ばしているが、ミツゴシ商会の技術力には及ばない。
彼は黒いスーツにストライプのシャツと細い黒ネクタイを合わせ、白い仮面を装着した。
彼はユキメとの約束の時間に間に合うよう、窓から外へ飛び出し、学園の敷地を抜けて森の中を進んだ。
数十分後、滝の音が聞こえる場所に到着し、ユキメのアジトである落水邸にたどり着いた。
彼は静かに室内に入り、暖炉の前に座るユキメと対面した。
ユキメは彼をジョン・スミスと呼び、彼を歓迎した。
彼はスーパーエリートエージェントのジョン・スミスとして活動しており、ユキメの誘いに応じていた。
ユキメは大商会連合の集会について話し、ミツゴシ商会が大商会連合に潰される可能性が高いと述べた。
彼らの計画は、ミツゴシ商会と大商会連合が対立する間に準備を進め、最終的に全てを手に入れるというものであった。
ユキメは自分の背中に負った傷を見せ、大商会連合に「剣鬼」月丹という敵がいることを明かした。
彼女は月丹を必ず倒すと誓い、彼と共にしばらく暗躍することを提案した。
彼はワインを飲み、静かにその場を立ち去った。
休日、シド、ヒョロ、ジャガの3人で買い物に出かけた。
シドは特に目的もなく日用品を購入し、会計時に紙幣を受け取った。
ミドガル王国では貨幣が一般的だが、王都では紙幣も浸透してきた。
紙幣は実際にはお金の引換券で、使えない店もあるため、使用時には確認が必要である。
シドは新しく手に入れた千ゼニー札のデザインが違うことに気づく。
ジャガがそれは大商会連合の新札だと説明し、その日は新紙幣発行記念のバーゲンであったことを知らせる。
シドは大商会連合の新紙幣に疑問を持ち、過去に使っていた紙幣を見ると「ミツゴシ銀行」と記されていることに驚く。
ミツゴシ商会グループが紙幣を発行していたことを知る。
シドはかつて前世の知識を語り、銀行や信用創造について話したことを思い出す。
その時の話が基となり、ミツゴシ商会は銀行を運営するようになったのだと理解する。
そして、その影響でミツゴシ商会が他の大商会連合から包囲される事態となったことに気づく。
シドはミツゴシ銀行の紙幣が緻密なデザインと透かしを持ち、大商会連合の紙幣にはそれがないことに気づく。
彼は大商会連合の偽札を作成すれば簡単に利益を得られると考え、裏社会の仲間を頼りにこの計画を進めることを決意する。
シドは全てを手に入れる計画を立て始め、過去の知識を活用することを決意する。
ユキメは暖炉の火を眺めながら晩酌をしていたが、風が流れてくるのを感じて振り返ると窓が開いていた。
そこにスーツ姿のジョン・スミスが現れ、金貨を弄びながら話し始めた。
彼はミツゴシ銀行が発行する紙幣について語り、それが実際の貨幣と同じ価値を持つ預かり証であることを説明した。
さらに、ミツゴシ銀行が預かり証を決済に利用できるようにし、信用創造によって市場に流通させていると指摘した。
ジョンは、預かり証と実際の金貨が市場に二重に存在することで、1万ゼニーが2万ゼニーに増える仕組みを説明した。
そして、大商会連合が同様に紙幣を発行し始めたが、その紙幣には透かしがなく、偽札が作りやすいと指摘した。
ユキメは、偽札の流通が容易にバレることを指摘するが、ジョンは大量に流通させることで大商会連合の信用を崩壊させる計画を示唆した。
ユキメは最初は戸惑ったが、計画の全貌に気付き、偽札作りを進めることに同意した。
ジョンの最後の試みにユキメは誠実に応じ、ジョンは計画の詳細を後日話すことを約束して姿を消した。
ユキメは彼の智謀と胆力に感嘆し、彼を稀代の傑物と称賛した。
偽札作戦がユキメによって承認され、ジョンは偽札が完成するのを待つだけとなった。
彼の役目は、偽札の出所が露見しないように敵の諜報員を排除することである。
彼は自分を組織を裏切りながらも救うエージェントと考えていた。
深夜、ジョンが王都を歩いていると、犬耳を持つデルタを見つける。
彼女はジョンに駆け寄り、狐の匂いがすると訴える。
ジョンは狐狩りをしていたと説明し、デルタは一緒に狩りをしたがるが、ジョンはそれを断る。
デルタは王都で盗賊狩りをしており、アルファの命令で動いていたことが明らかになる。
彼女はジョンを狩りに誘うが、ジョンは寮に戻る必要があるため、後日一緒に狩りをすることを約束する。
デルタは急いでアルファの元へ向かうが、ジョンは彼女の行動を微笑ましく思い、ため息をついた。
深夜の森で、ジョンはデルタと共に盗賊狩りを行っていた。
デルタは狩りが得意で、気配を消すのも非常に上手であるため、ジョンは彼女に盗賊の探索を任せていた。
デルタは盗賊を見つけると即座に攻撃し、数人の盗賊を瞬時に斬り倒した。
彼女は獲物を前にすると「待て」ができず、一方的に攻撃するため、ジョンにはほとんど出番がなかった。
盗賊の一人が命乞いを始め、デルタはその男が自分の兄であることに気づく。
兄は月丹という強者の下で働いていると述べたが、デルタは興味を示さず、彼の首を斬り飛ばした。
ジョンはデルタに兄妹を覚えておくように勧めるが、デルタは多くの兄弟がいるため、一人減っても問題ないと言った。
デルタはジョンに獣人の国の長になることを提案し、強力な一族を築こうとするが、ジョンはそれを拒否し、デルタを引き連れて王都に戻った。
五章
豪華な部屋に太った商人ガーターと盲目の獣人月丹がいた。
月丹は「四つ葉」の末席の獣人が任務中に殺されたと聞き、低い声で唸った。
ガーター商会の私兵団「四つ葉」は、ミツゴシ商会を襲撃していたが、襲撃部隊は全滅し、都心部のミツゴシ商会は依然として営業を続けていた。
月丹は焦るふりをし、残った「四つ葉」を全て使ってミツゴシ商会を襲撃し、資金と製造法を奪うよう命じた。
ガーターが退室した後、月丹はミツゴシ商会の壊滅を任務としてガーター商会を乗っ取ったことを思い出し、鋭い牙を剝き出しにして嗤った。
彼はミツゴシ商会を「教団」が危険視するほどの組織だと認識していたため、大商会連合は捨て駒と考え、その犠牲でミツゴシ商会を潰すつもりであった。
月丹はラウンズの席を望む位置まで上り詰め、あと少しで目的に達するところだった。
彼の目の傷が痛み、その傷口は過去の過ちを思い出させるものであった。彼は初めての汚点を思い出し、牙を軋ませた。
雨の夜、雲に隠れた月と雨音が響く中、ミツゴシ商会の一室で二人のエルフがソファに座っていた。
藍色の髪と深い青い瞳を持つエルフ、ガンマが資料を見ながら、大商会連合の襲撃を馬車に護衛を付けて防ぎ、逆に大商会連合の刺客を殲滅し、戦力を削っていることを報告した。
アルファと呼ばれたエルフは、白金の髪が暖炉の光で輝いており、状況が問題ないことに満足していた。
市場でもミツゴシ商会が優勢であり、大商会連合は崩壊しつつあると判断していた。
アルファはミツゴシ商会と「シャドウガーデン」の関係が露呈することを避けたいと考えていた。
そのとき、部屋の扉がノックされ、ダークブラウンの髪の少女、ニューが侵入者がいると報告した。
ガンマは自信満々でソファから立ち上がり、ニューと共に侵入者対応に向かった。
アルファは不安そうに二人を見送りつつも、ニューが同行することで問題ないと自分を納得させた。
暗闇の廊下を黒装束の男が走っていた。
彼は『四つ葉』の長で、『一葉』と呼ばれる魔剣士である。
彼の任務はミツゴシ商会への侵入と機密書類の回収で、『二葉』は破壊工作、『三葉』は略奪と重要人物の誘拐を担当していた。
商会の奥へ進む『一葉』は藍色の髪のエルフ、ガンマに遭遇する。
『三葉』の役割である誘拐を自ら行おうとしたが、ガンマに失敗し、不敵な笑みを浮かべる彼女に驚かされる。
ガンマは漆黒の刀を出現させ、身体強化して『一葉』に接近。
ガンマの動きは速いが無駄が多く、魔力が過剰であった。
『一葉』は彼女の動きを見切り、カウンターを試みたが、ガンマの刀には強力な魔力が込められていたため、避けざるを得なかった。
ガンマは『一葉』の剣術『リヒテンラワー流』を見破り、再び攻撃を仕掛けたが、動きに成長が見られなかった。
ガンマは大振りで連撃を繰り出し続け、無駄な魔力を込めて攻撃した。
『一葉』は彼女の動きを見切り、ガンマがコケた隙にカウンターを狙ったが、運悪く飛んできたガンマの刀に両断され、意識を失った。
その時、薄く微笑んだダークブラウンの髪の少女ニューが登場。
彼女は『二葉』『三葉』の生首を持ち、『一葉』を恐怖させた。
ニューが刀を抜いたことで、混乱した『一葉』はガンマに襲い掛かるも、最後にはガンマの偶然の攻撃で倒れた。
ガンマの「奥義『捨て身大車輪』」という自己弁護にニューが称賛し、『一葉』の意識は途絶えた。
『四つ葉』が戻らないとの報告を受け、月丹は考え込んでいた。
ミツゴシ商会の襲撃に向かわせた『四つ葉』が全員戻らず、これは襲撃の失敗を示している。
『一葉』『二葉』『三葉』はすご腕の魔剣士であったが、彼らと私兵団も全員帰還していない。任務失敗時の連絡要員すら戻ってこないという。
月丹は、この状況からミツゴシ商会の護衛が非常に強力であることを認識した。
大商会連合から成果が出ないことへの不満が出ているが、それに対して月丹は「黙らせておけ」と命じた。
ガーターが退出するのを見送りながら、月丹はミツゴシ商会の戦力を再評価し、『教団』がこの商会を危険視する理由を考えた。
そして、自身の目の傷を押さえつつ「計画は順調だ。奴らは既に罠に嵌まっている」と自らに言い聞かせた。
秋が終わり、季節は冬に入った。語り手は学園でモブたちの日常を見守りながら、偽札の完成を待っていた。
大商会連合を崩壊させようとし、成功すれば偽札を換金して利益を得られると考えていた。
ヒョロとジャガと共にモブトリオを結成しつつ、語り手はモブライフを楽しんでいた。
ある日、白銀の髪と赤目のアレクシアが語り手を引きずって道場に連れて行った。
そこで、アレクシアが剣を振るうのを見て、彼女の成長に驚いた。
アレクシアは、語り手に前に自分の剣を好きだと言われたことを思い出し、さらに力を求めている理由を語った。
オリアナ王国の状況を説明し、ローズ先輩を守れなかったことを悔やんでいた。
語り手は日常の裏側で世界が動いていることを再確認し、アレクシアと別れた後、ジョン・スミスに変装して人気のない場所へ向かった。
そこで、茶色の猫耳を持つ獣人ナツと会い、彼女から例の物が完成したという報告を受けた。
偽札工場は王都と無法都市の間の地下施設に設置された。
この場所は、かつて姉が攫われた際に盗賊を退治した場所で、秘密施設に適していると推薦された。
ここで製造された偽札を無法都市経由で王都に流通させ、出所を特定しにくくする作戦である。
ナツに案内され、工場内を進むと、大きな社長室のような部屋に到着。
ユキメが札束を取り出し、どちらが本物かを尋ねる。
語り手は紙質、インクの滲み、印字の歪みから偽札を見破り、ユキメに指摘する。
ユキメは驚きつつ、翌日から流通させることを決めた。
ユキメは語り手に月丹という男を見つけても殺さずに見逃すよう依頼した。
彼女は、過去に平和な村で母と暮らしていたが、村が襲われ全てを失ったと語った。
ユキメは月丹に全てを奪われたため、今度は彼女が月丹の全てを奪う復讐を誓っている。
月丹は両目に傷がある盲目の獣人であると説明した。
語り手は立ち去り際に、復讐に囚われず自分の道を見失わないよう忠告し、その場を後にした。
六章
執務室で書類を確認していたアルファは、突然の異変に気付いた。
次の瞬間、ガンマが扉を開け勢いよく突入し、アルファの机にぶつかって停止した。
ガンマは涙目で偽札の件を報告する。
ガンマによれば、大商会連合の偽札が少量出回っており、連合はまだその事実に気付いていないという。
アルファは連合に噂を流し、偽札の存在を認識させるよう指示した。
また、偽札の出所を探ることを最優先任務とし、一刻も早く食い止める必要があると強調した。
ガンマはナンバーズを動員して調査を開始する旨を伝え、退出する。
アルファは窓外の風に揺れる紅葉を眺めながら、今回の事態が何者かの計画である可能性を考えたが、それを振り払うように首を横に振った。
ガーターから偽札の発見報告を受けた月丹は驚きを見せた。
ガーターは詳細調査を報告しようとしたが、月丹から叱責されることはなく、すぐに出どころを探るよう命じられた。ガーターは急いで部屋を出た。
月丹は偽札の発見が予定されていたことを考えた。
偽札の流通が進むと、大商会連合の紙幣の信用が崩壊し、ミツゴシ銀行の紙幣も同様に疑われる。
信用創造に依存するミツゴシ銀行も破綻の危機に瀕する。
月丹の計画は、大商会連合で粗悪な紙幣を製造し、それを偽札として流通させることであった。
だが、偽札の発見はまだ先の予定であり、『教団』の資産を安全な場所に移す計画が進んでからのはずであった。
計画の前倒しが行われた可能性があり、月丹は上層部に確認を取る必要があると感じた。
もし手違いがあれば、『教団』は大きな損失を被ることになる。
月丹は目の傷の痛みを感じながら、事態の確認を急ぐ必要性を感じていた。
偽札は計画通り徐々に流通し換金されていた。ジョン・スミスとして時計塔に立つ人物は、好景気に沸く夜の街を見下ろしながら、裏に潜む組織の計画を見透かしていた。
「この気配……組織の計画が動き出した……」とつぶやき、意味深に微笑む。
暗躍を最初に察するのは誰かと思案しながら夜景を楽しんでいると、王都から静かに出立する一台の馬車と、それを追う三人の黒い影を見つけた。
「そうか……最初に気付くのはやはり……」と、その影を追って時計塔から飛び降りた。
スライムボディースーツを着ていることで、彼らがミツゴシ商会の関係者であることが分かったが、「残念だが──まだ知られるわけにはいかない」と考えた。
現状、彼は裏切り者の行動をとっているため、彼女たちが真実を知るのは全てが終わってからで良いと判断した。
偽札の出所を探るために、664番と666番が王都を出立した馬車を追っていた。664番は、独断専行しがちな666番に対して、分隊長としての指示に従うよう注意を促していた。追跡中、665番があくびをしたことに対しても任務への集中を求めた。
この任務は大商会連合の偽札流通ルートを特定するためであり、極めて重要なものであった。
ガンマが怪しいルートを絞り込んでおり、前を走る馬車がその一つだった。
664番は666番の焦りに不安を感じていた。
突然、666番の叫びに反応して跳んだが、664番と665番は足を取られて転んだ。
彼女たちの足には細い糸が絡まり、魔力を通した鋼糸であった。
敵の男が現れ、その周囲には月明かりに反射する糸が漂っていた。
ジョン・スミスと名乗る男は、鋼糸を操り、彼女たちを圧倒していた。
ジョン・スミスの強さは場の支配力にあり、彼の操る糸は彼女たちの攻撃を封じていた。
彼女たちは距離を詰められず、むしろ遠ざかっていた。
664番は退避を指示し、ジョン・スミスが糸を動かし彼女の首に巻き付けた時、彼の糸の操作の巧妙さに驚いた。
ジョン・スミスは彼女たちを完全に拘束し、糸を通じて高濃度の魔力を放っていた。
しかし、彼は彼女たちを殺さず、「関わるな」と忠告し、無造作に解放した。
666番は悔しさを感じつつも、ジョン・スミスを排除しなければ偽札の出所は判明しないと考えた。
664番は去り行くジョン・スミスを見据えながら、任務の重要性を再確認した。
664番は任務を終えて帰還し、アルファとガンマに報告した。
彼女たちは3人がかりでもジョン・スミスに手も足も出なかったという事実に驚いていた。
ジョン・スミスの技量は『七陰』に匹敵するほどであったが、彼に似た人物は『教団』には存在しないことが確認された。
アルファは、デルタを使うことを決定した。
デルタは戦闘特化のメンバーであり、単純な戦闘で彼女が敗北することは考えにくいため、この決定が最善だとガンマも同意した。
アルファはジョン・スミスの実力に注目し、彼がいったい何者なのか、その正体に興味を持った。
主人公はミツゴシ商会の刺客を撃退し、昼は通常の生活を送りながら夜は陰のエージェントとして活動していた。
ユキメと連絡を取りながら偽札の流通を助け、出どころを探る者を排除する役目を果たしていたが、ミツゴシ商会の動きは静かであった。
ある夜、主人公は偽札を運ぶ馬車を警備していたところ、気配を消して近づく刺客を察知した。その刺客はデルタであった。
主人公は自分の戦闘スタイルがデルタに対して有利であると考えつつも、彼女の鋭い勘を警戒した。
主人公はデルタに自分がジョン・スミスであることを明かし、秘密の任務を遂行していると説明した。
デルタは最初は混乱していたが、主人公の説得により彼の指示に従うことに同意した。
デルタには無法都市の黒い塔にいるジャガノートという盗賊を狩る任務を与えた。
デルタはこの任務を受け入れ、王都から離れることになった。
主人公はデルタが真相を知るのは全てが終わってからであると決めていたため、この状況を利用して彼女を遠ざけたのであった。
ガンマはアルファに、デルタの消息が途絶えたことを報告し、デルタの毛を見せた。
アルファはデルタが任務を放棄するとは考えにくく、深い悲しみを覚えつつ、捜索を続けるよう指示した。
デルタは危険な仕事を常に任されており、戻らない場合は死を意味する可能性が高い。
ガンマは、ジョン・スミスの危険性についても報告し、アルファは彼が偽札を利用して信用崩壊を狙っていることを悟った。
ジョン・スミスの目的は小金稼ぎではなく、ミツゴシ商会と大商会連合の信用を崩壊させることにあった。
一方、教団の月丹は、偽札の出どころが不明で、ミツゴシ商会が背後にいることに気づき驚愕した。
信用崩壊を避けるためには莫大な資金が必要であり、ミツゴシ商会が市場を独占する危機を感じた。
月丹はジョン・スミスを追うことで事態を挽回しようと決意した。
冬の冷たい夜、ベータは主の下に定期報告に訪れていた。
『シャドウガーデン』の活動報告の後、ミツゴシ商会の現状について報告を始めた。通常、ミツゴシ商会の詳細は報告しないが、現在の窮状を受けてのことだった。
主はメモ帳を取り出し、報告を聞きながらメモを取り始めた。
ベータは、流通している偽札の増加とそれに伴う物価の上昇について報告したが、主から報告内容の誤りを指摘された。
これを受け、ベータは調査のやり直しを約束した。
その後、ベータはデルタの消息が途絶えたことを報告し、主はデルタが「少し遠いところに行っただけだ」と答えた。
この言葉にベータは涙をこらえられなかった。
続いて、ベータはシャドウ様に協力を求めたが、主は既に別の対策を講じていることを示唆した。
報告を終えたベータは、メモの処分規則について確認し、主から暗号文のメモを受け取った。
暗号は五つの言語で構成されており、ベータはこれを解析するよう研究室に送ることにした。
大商会連合はジョン・スミスの行方を探るために大量の人員を動員したが、その痕跡は発見できず、逆に注目を集めてしまった。
偽札の流通は公にはなっていないものの、勘のいい人々は気付き始めていた。
時間は迫っており、崩壊は目前に迫っていた。
深夜、王都から出た馬車がガーター商会の私兵に止められた。
彼らは怪しい馬車を次々と調べていたが、その馬車から大量の金貨を見つけた瞬間、首を斬り飛ばされた。
犯人はジョン・スミスであり、彼の鋼糸によって私兵たちは瞬時に命を絶たれた。
ジョン・スミスは闇の中からアルファが現れるのを察知し、対峙することになった。
アルファは鋭い斬撃を放つが、ジョン・スミスはそれを最小限の動きで回避し続けた。
アルファはジョン・スミスの動きに驚愕し、その技術に圧倒された。
彼女は赤い霧を使って姿を消し、攻撃を繰り返すが、ジョン・スミスは鋼糸を操って反撃する。
最終的にジョン・スミスは巨大な竜巻を起こし、アルファの霧を吹き飛ばして姿を現させ、漆黒の刀で彼女を薙ぎ倒した。
意識が遠のくアルファに対し、ジョン・スミスは「全てが終わったときにこれが最善だったと知るだろう」と言い残し、立ち去った。
アルファは必死で彼を引き留めようとしたが、その声は届かなかった。
終章
偽札工場がその役目を終え、地下施設での作業は撤収作業のみとなっていた。
ジョン・スミスの姿でユキメに促され、鉄の扉を開けると大量の金貨が現れた。
偽札のほとんどは換金され、工場は未だ発見されていない。
ユキメは本物の紙幣を回収し、最終的には大商会連合で換金する計画であった。
ユキメが自ら換金に行くと言い出したことにジョンは疑問を感じたが、彼女には行く意味があると告げられた。
ユキメは昔話を始めた。彼女が幼い頃、村が敵対部族に襲撃され、母親が不在の間にユキメも襲われかけたが、大狼族の青年月丹に救われたという。
ユキメはその時の出来事を語りながら、遠い昔を思い出していた。
ユキメにとって月丹との出会いが初恋であった。
襲撃後、村は大狼族の協力により復興した。
戦乱の世で、部族間の同盟強化が進み、ユキメは月丹と婚約した。
二人は別々に暮らし、月に数回会うことを楽しみにしていたが、戦乱に巻き込まれた。
妖狐族と大狼族は中立を選んだが、その選択は愚かであり、村は一夜で滅ぼされた。
月丹はユキメと共に逃げ延びたが、彼は強大な力を求める錠剤を提案し、ユキメの母の反対を理由に彼女を殺したと告白した。
月丹はユキメに錠剤を飲むよう迫り、彼女を傷つけた。
しかし、ユキメは意識を失い、目覚めたときには月丹の姿はなく、傷は治っていた。
ユキメは村に戻り、母の死体を見つけ、全てを奪われたと知る。
彼女は仇敵の存在を心に刻み、戦場で娼婦として生き延び、17歳で高級娼館で頂点に立った。
富を得た彼女は次に力を求め、仇敵の全てを奪うことを決意した。
ユキメは月丹に復讐する決意を語り、商会やジョンの力を借りて月丹の富、権力、命を奪うことを目的としていた。ユキメはジョンに謝罪しつつも、月丹との決着をつけるために動く決意を表明した。二人は部屋を後にし、冬の暖かな日差しが差し込む中で動き始めた。
一方、月丹はガーター商会の本部でジョン・スミスの居場所が突き止められないことに激怒していた。
無法都市の調査は困難で、調査員が消息を絶つ事態が続いていた。
偽札の噂が王都に広まり、大口の換金が急速に進行していることに月丹は焦燥感を抱いていた。
商会連合からのクレームや資金不足の危機にも直面し、ガーターに対して強硬な指示を出していた。
月丹は疑念を抱きつつ、過去の記憶を辿りながら、自身の失われた眼球の痛みに悩まされていた。
彼は今後の動きに不安を抱えつつ、次の行動を模索していた。
ジョン・スミスの正体がシャドウであることは、『七陰』内部の機密とされた。この事実が広まれば『シャドウガーデン』の士気に悪影響を及ぼすと判断されたためである。
ガンマは大商会連合の崩壊についてアルファに報告し、ミツゴシ商会も危機に瀕していると告げた。
ガンマは資金不足を訴えるが、アルファはシャドウが偽札を流通させて資金を集めたことに気づく。
ガンマは偽札による信用崩壊を逆手に取るシャドウの計画を理解し、その資金で危機を乗り越えると決意する。
その後、ベータがシャドウの暗号を解読し、シャドウが彼らのために資金を用意していたことが判明した。
シャドウは『教団』の計画を見抜き、ミツゴシ商会の信用を保つために偽札を利用したのである。
アルファとガンマはシャドウの計画に感謝し、彼が用意した金貨を回収することを決意する。
最後にデルタが戻り、アルファたちは彼女を迎え入れ、『シャドウガーデン』はその夜、行動を開始した。
ジョン・スミスは地下施設に戻り、ユキメが金貨を持ち帰るのを待っていた。
しかし、金庫が無理やりこじ開けられ、中身が空であることに気付く。
彼は一瞬動揺するが、ユキメが何か理由があって持ち出したと考え、冷静を保つ。
その後、ユキメの側近であるナツとカナが駆け寄り、ユキメが月丹に捕らえられたことを報告する。
ジョン・スミスは事態を理解し、ユキメの金貨を取り返す決意を固める。彼は強大な魔力を放ち、報復を誓い、月丹に立ち向かう準備を整える。
時が少し戻り、王都に雪が降り始めた夜、ユキメは月丹との対決を迎える。彼女は復讐のために待ち続けた。
月丹が現れ、ジョン・スミスとの協力関係を非難するが、ユキメは諦めるよう告げる。
戦いの末、ユキメは勝利し、妖狐族の真の姿を見せるが、月丹の憎悪は収まらない。
ユキメは彼に復讐を終えると告げて立ち去ろうとするが、月丹は赤い錠剤を飲み、自らを強化する。そして、ユキメを刀で貫く。
ジョン・スミスが現れ、月丹に対して激しい怒りを見せる。
ジョン・スミスと月丹の戦いは激化し、月丹は最終的に力尽きる。
ジョン・スミスは月丹の願いを聞き入れ、彼の思いを託される。ユキメはジョン・スミスの力によって癒され、心の氷が溶け始める。
最後に、ジョン・スミスは雪の下に隠された何かを示唆する。
ジョン・スミスは月丹の墓を掘るために穴を掘り始め、ユキメは王都に戻って金貨を回収しアジトに向かった。
アジトで金庫が空になっていることに驚くユキメの前に、『シャドウガーデン』のアルファが現れる。
アルファは月丹の遺言として、ディアボロス教団の関与を示す手紙をユキメに渡す。
アルファは、ミツゴシ商会が『シャドウガーデン』のフロント企業であり、ジョン・スミス(シャドウ)が全てを計画していたと伝える。
ユキメはジョン・スミスを裏切り者とは思わず、彼に感謝する。
アルファはユキメに『シャドウガーデン』との連携を提案し、ユキメはこれを受け入れる。
二人は今後の協力を約束し、ユキメはジョン・スミスの多くの大切な人々に感嘆しつつ、アジトを後にした。
大商会連合は、紙幣の換金に応じられず、商会の夜逃げが続出したため、崩壊した。騎士団が金庫を開けたが、中身は少なかった。商人たちは捕らえられ、罰を受けることになる。民衆はミツゴシ銀行に押しかけたが、銀行には大量の金貨が積まれており、銀行員の対応も良好であったため、安心して撤退した。ミツゴシ銀行と商会は信頼を得て、王国の経済を支える存在となった。王国はミツゴシグループとの信用創造に関する取り決めを交わした。
その間、僕(シャドウ)は穴を掘り続けたが、金貨は見つからず、ユキメとも連絡が途絶えた。
ミツゴシ銀行が生き残っていることに驚き、自分の計画が破綻したと悟る。デルタと共に掘り続けたが成果はなく、彼女に協力を感謝しつつ、僕は自分探しの旅に出ることを決意した。
人間関係での奥義として、相手を呆れさせることに気付き、時間が解決すると信じて旅立った。
デルタの呼びかけを背に、僕は全力で走り去った。
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