前巻 次巻
どんな本?
「陰の実力者になりたくて!」は、逢沢大介 氏による日本の小説。
異世界ファンタジーとコメディの要素を持ち、主人公のㇱドが、ヒーローではなく、陰で世界を牛耳る様な「陰の実力者」に憧れているというストーリー。
小説版は、小説家になろうにて2018年1月から掲載され、書籍版はエンターブレイン(KADOKAWA)より2018年11月から刊行。
また、漫画版やアニメ版も制作されている。
特徴は、ストーリー展開がメチャクチャ飛びまくる。
どうやら読者にアンケートして面白い展開を決めてたらしい。
だから展開が予想の斜め上や下に行くからメチャクチャに感じてしまう。
そして、それが面白い。
小説版3巻の後約2年間新刊が出てなかったが。、
アニメ化発表と同時に4巻を発売したのが21年3月くらい。
アニメ1期放映中(2022年12月28日)に5巻を発売。
そして、アニメ2期放映中(2023年10月30日)に6巻を発売。
小説家になろうの分は既に超えており。
いつエタるか判らない。
止まらないでください!!!
アニメ1期(全20話)は1,2巻分が大好評。
小説3巻、4巻部分を2期(全12話)で放送すると思われる。
読んだ本のタイトル
陰の実力者になりたくて! 06
著者: 逢沢大介 氏
イラスト: 東西 氏
あらすじ・内容
「見届けよ。その血塗られた道を――」 シリーズ累計400万部突破!!
陰の実力者になりたくて! 06
「見届けよ。その血塗られた道を――」シリーズ累計400万部突破!!
秘密結社『十三の夜剣』に陰から支配されるミドガル王国。
『ディアボロス教団』とも繋がる貴族たちは、その権力によってどんな悪事も隠蔽してきた。
「陰の支配者だと……?」
なんて羨まし……悪い奴らなんだ。
どれだけ悪いことしても無罪になる、悪徳貴族たち。
「……いいことを考えた!」
腐敗の蔓延した王都を、連続殺人鬼『ジャック・ザ・リッパー』が恐怖に陥れる…!?
悪を断つには、更なる悪を――
勘違いシリアスコメディ、待望の新刊!
TVアニメ2期も10月放送開始!
感想
ミドガル王国を陰から支配している権力者の秘密結社組織”十三の夜剣”。
権力者である貴族のための組織で、権力を私物化している腐敗の象徴。
さらにディアボロス教団をはじめ裏組織とも関わっているので、ミドガル国王すら下手に手を出せない組織だった。
その組織の長の娘、エライザ・アクダイカンが白い霧テロ事件で起こした、地位を利用しての殺人は、王女アレクシアと公爵令嬢のクリスティーナが証言者となり、複数の生徒が法廷闘争で証言しても不利となるほどの腐れっぷり。
それにアクレシアが歯噛みしていた時に、、
ミツゴシ商会のバーでリンゴジュースを飲んでいたシドにアルファが夜剣の事をミドガル王国の陰の支配者と報告したら、羨ま、、、
ゲフンゲフン。
けしからんとシドが動き出した。
そして、ミドガル王国を腐敗させている組織の幹部達を謎の暗殺者、ジャック・ザ・リッパーが殺し回るようになる。
そんな腕利の暗殺者を雇ったと、最初に疑われたのはエライザと法廷闘争しているクリスティーナのホープ公爵家だった。
そして、夜剣が報復に出ると想定してエライザの悪行を証言したカナデをクリスティーナの屋敷に匿う事とした。
さらに、最初に殺されたゲーテ・モーノ伯爵からジャック・ザ・リッパーが回収した、アクダイカン家の不正の証拠書類を偶然回収したシドもクリスティーナの屋敷に匿われる事となった。
だがクリスティーナの父親のホープ公爵が、勝手に娘が下級の者を匿ったと夜剣に情報を流し、襲撃に協力。
その手引きで、夜剣のボウ伯爵、シノビ子爵、ジェット侯爵が襲撃して来た。
襲撃される前に、相手の気配を察知して迎撃したクリスティーナとカナデだったが、、
シドは、窓から逃走。
そして、シドはジャック・ザ・リッパーとなって包囲していたジェット侯爵とシノビ子爵達を殺害。
返す刀でボウ伯爵親子も殺害してしまう。
コレで十三家中六家が殺害された。
そして、次のターゲットはホワイト伯爵だとメッセージカードを置いて、、
それをシドとなって解説して誘導するのが、ちょっと強引。
次のターゲットがホワイト伯爵家だと知ったアリシア達はホワイト伯爵家に潜入するのだが、、
夜剣が総力を上げてジャック・ザ・リッパーを屠ろうと罠を張る。
それをシャドウこと、ジャック・ザ・リッパーは力で捩じ伏せて。
残りの夜剣を暗殺してしまう。
それにしても、、
今回も敵の名前が、、
ダクアイカン侯爵
ゲーテ・モーノ伯爵
クザヤ伯爵
グレハン男爵
デクノ・ボウの父親、オヤノ・ボウ伯爵。
ホワイト伯爵
バトラー伯爵
その他6名。
声優さん誰になるんだろう?
凄く楽しみ!
そして、付章でクリスティーナがジャック・ザ・リッパーを引き継いで法廷闘争中のエライザ・ダクアイカンを殺害。
闇に潜む者が増えた。
さらに閑話で、デルタがサラと呼ばれていた時の話が出る。
デルタの力こそパワーの根底に触れる話が出て来て。
同腹の兄弟を殺しちゃうか、、
そりゃ異母兄とか平気に殺しちゃうな。
本編では表の顔をしている時のシドに突撃する。
おバカなデルタが出て来たが、、
さらにシベリアン・ハスキーな仲間が。。
デルタにおバカと言われてしまう子って、、、
どんなんなんだ??
街の道でお腹見せて寝転がるのは序の口なんだな、、
そして五章で4巻の最後でベータに地球から拉致られたアカネの話が出て来た。
ローズのように712番とナンバーリングされてシャドウ・ガーデンに入団するのだが、、
ほとんどシドと絡まない七陰のイータの異常さがよくわかった。
あと、ベータの胡散臭い日本語は定着しちゃったんだな。。
イータの方が日本語上手く無いか??
ベータ以上にイータって頭脳明晰なんだな、、
イータ。
恐ろしい子!
最後までお読み頂きありがとうございます。
前巻 次巻
アニメ PV
そして、アニメ2期制作決定
2023年10月から放送開始!!!
同シリーズ
陰の実力者になりたくて! シリーズ
小説版
漫画版
その他フィクション
陰の実力者になりたくて グッズ
備忘録
序章
ミドガル学園の学年末筆記テストが終わり、ヒョロとジャガは疲れ果てていた。
彼らはテストの自己採点をする気はなく、今後の実技テストに向けて気を取り直していた。
学園は最近の白い霧のテロ事件から一月ほど経過し、落ち着いてきたものの、世界はまだ不安定だった。
その中で、主人公は自分の過去の世界と比較しつつ、異世界の魅力を感じていた。
その後、ヒョロとジャガは学校を抜け出し、カードゲームに興じる。
主人公は金を稼ぎながら虚しさを感じていたが、ミドガル学園の生活を満喫していた。
突然、美しい装飾のカードを見つけ、それがミツゴシ商会からの高級バー会員証であることを思い出す。
冒険心をくすぐられた主人公は、その会員証を使って夜の街へと出かけることを決めた。
主人公が高級会員制バーを訪れた。
店内は落ち着いた雰囲気で、カウンターには星々のように輝くペンダントライトがあった。
彼は身分を隠さず、店員からの案内を受けカウンター席に座ることに決めた。
彼が注文したウォッカ・マティーニを作るバーテンダーは、指先が小刻みに震えながらも丁寧にカクテルを作り上げた。
その後、アルファが彼に声をかける。
彼らは上司部下の関係であり、彼女は彼の飲酒スタイルを知っていた。
二人はバーで会話を交わし、アルファは彼にマンハッタンを提供した。
アルファとの会話の中で、主人公は彼らがかつてのミッションについて語り、彼女はその進捗について報告した。
話は世界の秘密結社や高貴な家系の影響力にも及び、様々な事件について言及された。
ゲーテ・モーノ伯爵は夜の静けさの中で書類作業をしていた。
彼は、エライザ・ダクアイカンの事件に関連する隠蔽工作の文書を見ていたが、目撃者が多くて仕事は簡単ではなかった。
特にアレクシア・ミドガルとクリスティーナ・ホープの証言を覆すのが困難だった。
ゲーテは窓の外を眺めて疲れた表情をしていたが、ふと気配を感じる。
しかし、誰もいないはずの部屋に血濡れのピエロが座っていた。
ゲーテは驚き、ベルを鳴らして助けを呼んだが応答はなく、部屋にいた警備員たちも殺されていた。
ピエロは近づき、ゲーテは抵抗しながらも、最終的にピエロによって殺された。静かな夜が続いた。
一章
クリスティーナはミドガル王都のホープ家別邸で目を覚ました。
最近は安全を考慮して、主に別邸で過ごしている。
彼女は事件の資料をまとめる作業に夢中になり、疲れが顕著に表れていた。
資料にはエライザの事故とされる事件についての概要が含まれており、ゲーテ・モーノ伯爵の隠蔽と捏造が明らかにされていた。
しかし、権力の前では何もできず、自身の無力感と家族からの圧力に苦しんでいた。
また、シャドウガーデンについての独自の調査も進めていたが、情報は少なく、不明な点が多かった。
突然の父の訪問で、クリスティーナは慌てて資料を隠し、父はゲーテ・モーノの死とそれによる混乱を伝えた。
この知らせに驚いたクリスティーナはすぐに事件現場へと向かった。
アレクシアはモーノ邸で起こったゲーテ・モーノ伯爵の殺害事件の現場を調査していた。
彼女はクリスティーナと出会い、二人は不自然な足跡や事件の状況について議論した。
アレクシアは足跡が普通ではなく、ゆっくりと歩いているかのように見えることを指摘し、クリスティーナもそれに同意した。
アレクシアは「十三の夜剣」がゲーテ・モーノを口封じのために殺害したと推測した。
その後、二人は犯行現場に入ることが許可され、騎士団の責任者であるグレイから注意を受けながら現場検証を行った。
現場にはゲーテ・モーノの遺体があり、死因は眉間への一撃であったが、凶器がトランプのカードであることが異常だと話された。
また、部屋の入口にはクリスティーナが呆然と立っており、彼女は死体の頭に刺さっているトランプカードに興味を持った。
さらに、騎士団が目撃者からの情報を得たことで、犯人が血濡れのピエロの仮面をしていたことが明らかになった。
グレイは事件を単純な犯罪と見なしていたが、アレクシアはそれに疑問を持ち、もっと複雑な背景があるのではないかと考えていた。
クリスティーナとアレクシアはさらに状況を調査し、ゲーテ伯爵の机の上にコーヒーが零れた痕跡があることを発見した。
その形から、何か書類が置いてあり、それが持ち去られたことが示唆された。これにより、事件にはまだ解明されていない側面があることが示唆された。二人はこの事実に基づいて注意深く行動することを誓った。
クリスティーナは放課後、ミドガル学園の教室で事件について話し合うためにカナデを待っていた。
カナデは、エライザの悪行を暴露したため夜剣に敵視されていた。
カナデにとって、ゲーテ・モーノ伯爵の死は状況を変えるものだったが、彼女自身も狙われるリスクがあることをクリスティーナは警告した。
そのとき、教室で男子生徒のシド・カゲノーが騒ぎを起こした。
彼は、エライザ・ダクアイカンの事件に関する隠蔽工作の詳細が記載された書類を発見し、それが間違いなくゲーテ伯爵の殺人現場から盗まれたものだとクリスティーナは確信した。
書類はクリスティーナの棚から発見され、誰かが意図的に彼女に見せるために置いた可能性があった。
さらに書類の裏には血で「ジャック・ザ・リッパー」と書かれており、それが書類を置いた人物の名前かもしれないことが示唆された。
この状況に、クリスティーナはシドとカナデにホープ家の別邸で共に生活することを提案し、彼らの安全を確保するための措置を講じた。
放課後、クリスティーナはミドガル学園の教室でカナデと会って事件について話すために待っていた。
カナデは過去にエライザの悪行を暴露したことで夜剣に敵視されており、ゲーテ・モーノ伯爵の死により、状況がさらに悪化する可能性があった。
クリスティーナはカナデに警告し、自分たちも狙われる可能性があると説明した。
その後、クリスティーナの家に滞在していたカナデとシドは、豪華な応接間でミツゴシ製の超高級コーヒーを楽しんでいた。
この際、カナデはコーヒーをたっぷりと飲み、シドは自分の分も彼女に譲った。
不意に、教室で発見された重要な書類についての話が持ち上がり、その書類にはエライザ・ダクアイカンの事件の詳細が記されていた。
この書類は、ゲーテ伯爵の殺害現場から盗まれ、意図的にクリスティーナの棚に置かれたと考えられた。
さらに、書類の裏には血で「ジャック・ザ・リッパー」と書かれており、これが書類を置いた人物の名前かもしれないと推測された。
クリスティーナは、カナデとシドにこれから一緒にホープ家の別邸で暮らすことを提案し、彼らの安全を確保するための措置を講じた。
カナデとシドはクリスティーナの家で遅めの夕食を楽しんだ。
食事はミツゴシ商会が出版した高級レシピ本に基づいており、サーモン寿司など斬新な料理が提供された。
食後、カナデは興奮してその味を褒め称えた。
その夜、クリスティーナの父から呼び出された彼女は、父と緊迫した会話を交わした。
エライザ・ダクアイカンを有罪にするための証拠があるにもかかわらず、父はそれを十三の夜剣に送り返すことで彼らの認める行動を取るべきだと提案した。
しかし、クリスティーナは、夜剣が証拠を知っても彼らを敵に回すことになり、また他の貴族も攻撃の対象になる可能性が高いと主張し、父と対立した。
会話の中で、クリスティーナは夜剣の悪行を告発しようと考えたが、そのための力が自分にはないと感じた。
この状況に対して諦めかけていたクリスティーナは、自らが直面する権力の腐敗と無力感に嘲笑を浮かべながら、自分自身もまた何もできないという現実に直面した。
クザヤ伯爵とグレハン男爵は、薄暗い隠し部屋でゲーテ・モーノの殺害事件について話し合っていた。
二人は、目撃証言がピエロに関するものばかりで、具体的な犯人を特定できないことに苛立ちを感じていた。
クザヤは、ホープ家が疑わしいと考えていたが、確固たる証拠は持っていなかった。
グレハンは、証拠を捏造することを提案したが、クザヤはその慎重さを主張し、十三の夜剣の支援団体「フェンリル派」の壊滅と、その影響で援助が難しくなっている状況を説明した。
話が進む中で、部屋に隠れていた血濡れのピエロが突然現れ、クザヤとグレハンに攻撃を開始した。
彼らは剣で応戦し、一度はピエロを倒したと思われたが、ピエロは再び立ち上がり、グレハンをトランプで殺害した。
クザヤも戦いを挑むが、ピエロには敵わず、最終的に自身も殺された。
ピエロは彼らの死体を持ち去り、夜の闇に消えた。
二章
王都の大通りで、クザヤ伯爵とグレハン男爵と思われる二つの死体が噴水に吊るされているのが発見された。
これにより、市民の間で騒動が起き、集まった群衆が騒ぎ立てた。クリスティーナ・ホープは騎士団を通して現場へ入り、二人の死体を確認した。
その後、彼女はグレイ課長と会話し、最近連続して起こった貴族の暗殺について話し合った。
また、アレクシア王女がクリスティーナにクザヤ伯爵の屋敷の調査結果を伝え、犯行現場が屋敷の隠し部屋であること、そして犯人が死体をわざわざ公共の場に移動させたことを報告した。
犯人が同じスペードのトランプカードを使っていることから、彼らはこれが意図的なメッセージである可能性を議論した。
シド・カゲノーも現場に現れ、トランプカードの意味について議論に加わった。
最終的に、噴水の支柱に「ジャック・ザ・リッパー」と書かれた血の文字が見つかり、これが野次馬たちに広まり、王都全体に衝撃を与えた。
アレクシア、クリスティーナ、シドの三人は、使われていない学園の教室でジャック・ザ・リッパーから受け取った証拠のコピーを検討していた。
クリスティーナはその証拠を使用してダクアイカン派を追い詰めることが可能だと指摘したが、ジャック・ザ・リッパーの真意が不明なため、行動を慎重に進めることを提案した。
また、アレクシアはその書類を父に相談すると述べた。
その後、アレクシアはシドとクリスティーナが同じ部屋で寝泊まりしていることについて問い詰め、クリスティーナは安全のためと説明した。
アレクシアも彼らと同じ部屋で寝泊まりすることを検討し始めたが、シドはその提案に抵抗を示した。
シドは学園の医務室でセクシーな女医に手当てされており、その後、クリスティーナに心配されていた。
シドは医務室で休むことにし、ニーナ先輩が現れて姉のクレアの状態を確認するために連れて行かれた。
クレアの部屋で、彼女は医療機器につながれており、動かない状態だった。その後、医務室で働く女医であるミューが入ってきて、クレアの治療を担当していることを明かした。
ミューは魔力の検査を行い、クレアの状態が安定していることを説明したが、シドは姉がいつ目覚めるかが問題だと感じていた。
その後、クリスティーナ、シド、カナデの三人はババ抜きをして過ごし、カナデがエライザに脅かされる恐れがあることを心配していた。
深夜、ホープ家の別邸では複数の人影が動いていた。覆面を被り、武器を携えた彼らは襲撃の時を待っていた。
デクノ・ボウとオヤノ・ボウは静かに会話し、シノビ子爵からの合図を待っていた。
オヤノはデクノに、この襲撃で功績を挙げさせると約束し、クリスティーナとカナデをターゲットと定めた。
襲撃はボウ伯爵家が主導し、包囲はジェット侯爵が担当しており、シノビ子爵が偵察を行っていた。
襲撃部隊には無法都市出身の暗殺者や白虎流の達人も含まれていた。
シド・カゲノーも部屋にいることが判明し、彼も消す対象とされた。最後に偵察部隊からの合図があり、彼らは館に侵入した。
クリスティーナがベッドに寝転びながら天井を見上げていたとき、室内ではカナデのいびきとシドの寝息が聞こえていた。彼女は眠れず、過去の暴力的な出来事を思い出していた。
突然、誰かが部屋に入ろうとしている音がしたが、護衛の反応がなく、不審に思っているところに黒ずくめの集団が襲撃を開始した。
クリスティーナは反撃を試み、カナデと共に戦ったが、数には勝てず、窮地に追い込まれた。
しかし、その瞬間、意外な展開があり、二人の魔剣士が突然両断された。
事件の真相は謎に包まれているが、カナデの剣には血が付いておらず、彼女が加害者でないことは明らかであった。
その後、見知らぬピエロが登場し、状況はさらに混沌とした。
オヤノ・ボウは血濡れのピエロに対峙し、彼が雇った暗殺者ではないかと疑うが、クリスティーナはそれを否定する。
ピエロは現実を受け入れ、敵対するのは得策ではないと考え、手を引くことを提案し、報酬を三倍にすると持ちかける。
しかし、ピエロの不気味な行動は続き、彼の指の動きで襲撃者たちが次々と命を落とす。
オヤノ・ボウは交渉の余地を見つけようとするが、ピエロは彼の提案を無視する。
続いて、ピエロはシノビ子爵とジェット侯爵の生首を取り出し、オヤノ・ボウに見せつける。
これが、包囲部隊が全滅したことを示していた。オヤノ・ボウは驚愕し、自身の要求を叫ぶが、その言葉も虚しく、彼の言葉が終わる前にピエロは彼と息子デクノ・ボウを殺害する。
この事態にクリスティーナも戦慄し、ピエロの目的を問いただすが、ピエロは答えずに去っていく。
最終的にピエロはクリスティーナの頰を掠めるカードを投げ、そのカードがカナデを致命的に傷つける。
ピエロはその場を去り、クリスティーナは何もできずに残された。
カナデが命の危機に瀕していると思われたが、実際には傷一つなく、頭に刺さったカードは血糊で張り付いていただけであった。
彼女はクリスティーナに遺言を伝えたいと言ったが、それは裏切り者であるシド・カゲノーへの怒りを露わにするものだった。
しかし、その後、カナデはシドが部屋に入ってくると、彼を裏切り者として激しく非難し、肉体的に攻撃を加えた。
一方、クリスティーナはカードに書かれた血の詩を解読しようとするが、その意味は不明のままだった。
シドはカナデとの再会を喜んでおり、ジャック・ザ・リッパーの登場に感謝していた。
三章
朝日が差し込む中、ホープ邸の寝室で騎士団による現場検証が行われている。
グレイ課長がクリスティーナたちから事情聴取をしており、オヤノ・ボウ伯爵、シノビ子爵、ジェット侯爵が共謀してホープ家に襲撃をかけたとの説明を受けている。
さらに、ジャック・ザ・リッパーと呼ばれる血濡れのピエロが襲撃者を皆殺しにし、クリスティーナたちには手を出さずに去ったという。
グレイはこの話を疑い、ジャック・ザ・リッパーがホープ家が雇った暗殺者である可能性を指摘しているが、クリスティーナはそれを否定している。
グレイは、オヤノ・ボウ伯爵たちがホープ家に誘い出されて濡れ衣を着せられた可能性も示唆し、状況の不確かさを強調している。
さらに、市民の不満が高まり魔女狩りが始まる恐れがあるため、警察としても対応が難しいと述べている。
グレイは今後もカナデとシドに対する聴取の可能性を示しつつ現場を去る。
カナデはクリスティーナを慰め、シドは高級茶菓子を食べながら事件の解決を望んでいる。
ジャック・ザ・リッパーが残したメッセージについても議論が交わされ、その内容からジャック・ザ・リッパーのターゲットが夜剣であることや、彼の行動の意図がさらに明確になっている。
シドはメッセージの隠された意味を解釈しようとしており、それが将来の展開にどう影響するかを示唆している。
ホープ邸の応接室でアレクシアが高級コーヒーを飲んでいる。
彼女はジャック・ザ・リッパーのメッセージについてクリスティーナに返すと、騎士団がジャック・ザ・リッパーの捕獲作戦に参加するが、ホワイト邸の周囲を固めるだけで内部には入らないことを明かした。
夜剣は自らの手でジャック・ザ・リッパーを捕獲することにこだわりを持っており、戦力を集めている。
クリスティーナはジャック・ザ・リッパーが実際に現れるか疑問に思っており、アレクシアはメッセージがブラフである可能性を示唆している。
クリスティーナはジャック・ザ・リッパーを単なる凶悪な殺人鬼としてではなく、彼の行動に悲しい過去が関係しているのではないかと憂慮している。
アレクシアはクリスティーナを支持し、彼女と一緒にホワイト邸の外から状況を見守ることを提案する。
また、アレクシア自身も多くのことを考えており、特に姉のクレアの状態について心配している。
彼女はクレアが目覚めることを願いつつ、身近な人々に対する思いやりも見せている。
アレクシアは私室でミドガル国王に詰め寄り、夜剣の横暴とディアボロス教団との関連を問うた。
国王はその存在を認め、ディアボロス教団が世界の闇を支配し、敵対すれば国は大きな犠牲を払うことになると説明した。
アレクシアはミドガル国王が教団と手を組んでいると非難するが、国王はミドガルが教団と協力したことはないと否定した。
アレクシアは教団による悪事について指摘し、国王はそれを見逃していると批判したが、国王はミドガル国が教団と戦える力を持たないと反論した。
シャドウガーデンの登場が状況を変え、教団が焦りを見せ始めていることも明かされた。
アレクシアは教団に対抗する意思を示し、自分も行動を起こすことを決意する。
国王は彼女に自由に行動することを許し、ミドガル王国が生き延びるための選択を模索し続けると述べた。
アレクシアは昨晩の会話を思い返し、クリスティーナに話している。
彼女は父から特に事件介入を止められていないが、支援も受けられない状況を伝える。
そのため、自由に行動することにしている。
翌日、ホワイト邸に行くことになっているため、打ち合わせのためにクリスティーナの家に泊まることを決める。
寝室での会話から、シドとカナデも同室にいることが明かされる。
アレクシアは、自分が何故そこにいるのかについて哲学的な言及をするが、シドはその回答に不満を示す。
彼らはその夜、ジャック・ザ・リッパーの事件について再検討することにし、夜剣の関係者かジャック・ザ・リッパー自身による犯行と考えている。
また、美術品の壺が盗まれた事件についても議論し、その壺がレプリカだったために犯人の意図が不可解であると結論づける。
高級住宅地を歩くクリスティーナとカナデは、豪華な家々に驚きを隠せなかった。
一方でアレクシアは、ジャック・ザ・リッパーからのメッセージが隠されていると考え、その謎を解こうとしていた。
その時、不意に獣人の少女デルタが現れ、周囲を驚かせた。デルタは制御が効かず、アレクシアとの衝突を避けるために、彼女の飼い主はデルタを抑えつけた。
デルタはアレクシアに挑戦的な態度をとり、その場の緊張が高まる。
しかし、その場は彼女の飼い主の努力で何とか収束し、アレクシアたちはその場を離れた。この出来事は彼らにとって思いがけない挑戦となった。
アレクシア王女がホワイト邸の表玄関に到着したことを受け、ホワイト伯爵は苛立ちを隠せず、王女の敷地内への立ち入りを禁じ、門外で待機することを許可した。
同時に、ホワイト伯爵は「十三の夜剣」の上位メンバーと共にジャック・ザ・リッパーの対策を協議し、過剰とも言えるほどの戦力を動員して彼の抹殺を計画していた。
彼らは闘技場でジャック・ザ・リッパーとの戦いを楽しみ、勝利を確信している様子であった。また、彼らは闘技場に高い結界を設け、ジャック・ザ・リッパーが結界から脱出するには、用意された魔剣士全員を倒さなければならないという条件を設定していた。
夜剣たちは魔剣士の選定を楽しむ一方で、ジャック・ザ・リッパーが現れなければ彼の名誉を失墜させる計画も立てていた。
アレクシア、クリスティーナ、カナデは薄暗い地下通路を歩いていた。
アレクシアは自信を持って先導し、クリスティーナとカナデは不安を抱えながら後を追っていた。
アレクシアはホワイト邸に秘密の地下空間があると信じており、その存在を確認しようとしていた。一行は地下通路を進み、隠し扉を発見し、その先の地下空間に侵入した。
彼らが進むにつれて、ホワイト伯爵が運営すると噂される闘技場にたどり着いたことが明らかになった。
この場所は夜剣の貴族たちが集まっているようで、何かが始まる兆しを感じ取った。
四章
夜剣のメンバーはジャック・ザ・リッパーの出現を待ちながら晩餐をとっていた。
深夜近くになってもジャック・ザ・リッパーが現れないため、彼らはジャック・ザ・リッパーが恐れをなして逃げ出したと考えていた。
しかし、その時闘技場が光り輝き始め、結界が発動し、中央に血濡れのピエロが現れた。これがジャック・ザ・リッパーであると認識した夜剣たちは、挑発的に彼を迎えた。
夜剣たちはジャック・ザ・リッパーに対して刺客を全員倒すことを条件とするゲームを提案し、第一の刺客としてスパルタンの魔剣闘士を送り込んだ。
この魔剣士は見た目の威圧感に反して、戦いを盛り上げるために最初の一撃を外したが、ジャック・ザ・リッパーに瞬時に倒された。
次に登場したのは三人組の傭兵団「白狼」であったが、彼らもジャック・ザ・リッパーの前に恐怖し、戦うことなく撤退を選んだ。
さらに、次の対戦相手として呼び出されたベガルタの剣豪も、「嫌な予感がする」と言い残し退場してしまった。
これに激怒したホワイト伯爵は、都市国家群の悪鬼と無法都市の伝説という更なる戦力を闘技場に送り込むことを命じた。
ジャック・ザ・リッパーは都市国家群の悪鬼と無法都市の伝説という二人の一流魔剣士を相手に、容易く撃退した。
その戦いはアレクシアにとって驚愕のものであり、ジャック・ザ・リッパーが全力を出していないことに彼女は特に驚いた。
アレクシアはジャック・ザ・リッパーの実力がシャドウに匹敵するかもしれないと感じたが、その動きや魔力の質が異なっていることも認めざるを得なかった。
戦いが進む中、クリスティーナはアレクシアに行動を促すが、アレクシアはすべてが終わるのを待つことを選んだ。
その後、ジャック・ザ・リッパーは百人を超える魔剣士を相手にすることとなり、この数の敵に対しても彼がどう対処するかが注目された。
アレクシアはジャック・ザ・リッパーの戦い方から、彼が異次元の強さを持っていることを感じ取り、その規模の大きさに圧倒された。
ホワイト伯爵は呆然と呟き、観客席の夜剣たちは沈黙した。
都市国家群の悪鬼と無法都市の伝説はジャック・ザ・リッパーによって一方的に嬲り殺されたのだ。
それまでの最強とされた二人の戦士が容易く倒されると、夜剣たちの間に恐怖が広がった。
戦いの最中、ダクアイカン侯爵が現れ、教団からの助っ人、実験体 227番ミリアを投入した。
ミリアはジャック・ザ・リッパーに立ち向かったが、彼は動じることなく観客席に現れ、次々と夜剣たちをトランプカードで殺害した。
結界内にジャック・ザ・リッパーが侵入することにより、闘技場は完全な混乱に陥った。
ミリアの攻撃はジャック・ザ・リッパーに効かず、彼は何度も攻撃を避けながら反撃した。
最終的には、彼を取り囲むミリアの触手が彼を貫き、彼の姿は見えなくなった。
クリスティーナはジャック・ザ・リッパーが触手に貫かれる様子を見て、イトミミズを思い出した。ジャック・ザ・リッパーは反撃せず、十三の夜剣を殺害するという目的を達成した後、反撃の意志を見せずに消えた。
ミリアとの戦いは彼の本来の目的ではなかったが、その戦い中に突如として青紫の光が現れ、触手を吹き飛ばした。その後、漆黒のロングコートを纏った男、シャドウが現れた。
彼は自らを陰に潜み、陰を狩る者と名乗った。
シャドウの登場によって混乱が起こり、ミリアの連撃が始まった。シャドウはその攻撃を華麗にかわしながら、青紫の軌跡でミリアの肉体にダメージを与え続けた。
ミリアは人間の姿へと戻り始め、最終的にはシャドウが短剣でミリアを止めた。
その後、シャドウは女性たちに後始末を命じて現場から立ち去り、クリスティーナたちはその場を去ることを決めた。
ジャック・ザ・リッパーが十三の夜剣を斬殺し、その後姿を消した事件は、王都に多くの憶測を呼んだ。
その正体については、様々な噂が広まったが、警察はシャドウであるという説を否定している。
ジャック・ザ・リッパーの正体は最終的に不明のままであり、彼の行動は伝説となったと言える。
現在、取調室で騎士団捜査課課長のグレイと事情聴取を受けている人物は、ジャック・ザ・リッパーがシャドウではないかという噂を否定し、アレクシア王女がホワイト邸に侵入したことについて話している。
グレイはこの噂をデマとし、アレクシア王女の行動を若さゆえのものと解釈している。
その後、事情聴取が終了し、取調室を出た人物は、ふと気になる男とすれ違いながら、その後を見送った。
取調室に入った彼は、グレイの前に座り、グレイが礼をした際に、自身に気づくのが遅かったと指摘した。
さらに、以前にすれ違った少年が気づいたことに言及したが、これに対してグレイはその少年が偶然気づいただけではないかと返答した。
この会話は彼にとって雑談程度のものであり、重要な意味を持っているわけではない。彼は、十三の夜剣が壊滅したことについて言及し、それがミドガル王国に自由に動かせる戦力が足りなかったためであるとし、グレイはそれに謝罪した。
しかし、計画への影響はないとし、「陰を狩る顎」は必ず成功させると断言した。
シャドウの実力が想定以上であったことについても話され、その後彼は姿を消した。その後、グレイ一人が取調室に残された。
付章
エライザにとって、悪夢のような一週間が終わった。
十三の夜剣が次々と斬殺され、彼女の父も帰らぬ人となった。
ダクアイカン家の資産は捜査という名目で接収され、屋敷からも追い出された。
周りから人と金が離れていくのを感じつつ、彼女は仮宿で叫んだ。
裁判も敗訴しそうな状況で、多くの貴族がダクアイカン家から離れたが、全ての貴族が離れたわけではなかった。
次世代の夜剣の家との絆は強く、団結することで形勢を逆転させると信じていた。
しかし、隣室に呼びかけても誰も現れず、エライザは怪訝な顔で扉を開けたが、誰もいなかった。その時、背後で奇妙な足音が響き、振り返るとそこには血濡れのピエロが立っていた。
彼女は驚愕し、近くのものを手あたり次第に投げたが、血濡れのピエロは止まらず、エライザは壁際に追い詰められた。謝罪し、要求を尋ねるも、ピエロは黙って見つめていた。
エライザはネグリジェをはだけさせるも、ピエロはジャック・ザ・リッパーであるクリスティーナ・ホープだった。
クリスティーナは、彼女がジャック・ザ・リッパーの後を継いでいると説明し、この国の腐敗に対する自身の使命を表明した。
そして、クリスティーナはエライザを刺し殺し、トランプのジョーカーを胸の傷に挿入した。
閑話
デルタはシャドウと共に盗賊を多数狩り、その力を誇示した。
シャドウは盗賊の死体から財布を回収しつつ、デルタの狩りを認めていた。
これにより、デルタは群れの中での自身の立場を強くすることができた。
その日、デルタは自身の兄の死体を目にし、不快な過去の記憶が蘇った。
シャドウが死体の処理を提案したが、デルタはそれを拒否した。
その後、シャドウに飛びついて彼の匂いを纏い、昔の記憶を薄れさせようとした。
デルタには、シャドウの匂いが昔の記憶を消し去るような気がしていた。
暗く狭い小屋で病床に伏せる母は、水を求めた。
サラは水を汲むために外に出たが、水桶を忘れてしまい、取りに戻ろうとした際に転んだ。
二人の兄、ラルとレンが彼女を嘲笑し、母の世話が無駄だと言い放った。
二人はサラとの家族の縁を断ち切り、別の家に養子に行ったことを告げた。
サラは彼らの言葉に動揺し、涙を拭いながら小屋に戻った。
サラは笑顔で小屋の戸を開け、母に水桶を忘れたことを告げた。
母はサラの赤く腫れた頰に気付き、ラルとレンにやられたかと尋ねたが、サラは否定した。
母はサラに優しく話し方を教え、サラは母に似たくても父親似であることに落胆した。
母はサラに群れの掟とその厳しさを説明し、サラが養子に行くことを提案した。
母がラルとレンを養子に出したことは秘密であるとし、サラには二人を悪く言わないようにと頼んだ。
母は病が進行しており、サラは心配しながら水を汲みに行った。
夜、母が寝たのを確認してから、サラは小屋からこっそり抜け出し、暗い草原に足を踏み出した。
サラはまだ幼く狩りの訓練を受けていなかったが、家族の中で最も感覚が鋭かった。
目、鼻、耳を使って、周囲を注意深く観察しながら、集落から遠く離れた場所まで進んだ。
彼女は魔物の群れが通るのをやり過ごし、自身の隠れる技術を活かした。
サラはその技術で、弱っている大豹を見つけ出した。
豹は死臭を放っており、彼女はその匂いが母の匂いと同じだと感じた。
この瞬間、サラは自分が何をしているのかを理解し、愕然とした。
しかし、彼女の前にはすでに大豹が立ちはだかり、その鋭い牙がサラに迫っていた。
この状況でサラは、自身の弱さを痛感した。
夜明け前の草原で、サラは息絶えた大豹の隣に立っていた。
朝日が空を染め始める中、彼女は全身を血で濡らし泣いていた。
サラには傷がなく、血は全て豹のものだった。
この草原で弱いということがどれほど罪深いかを彼女は理解してしまった。
サラは大豹を誰にも見つからないように小屋へと持ち帰り、秘密にすることにした。
群れの掟で狩りに出ることが許されていない年齢であり、母を心配させたくなかったが、それ以上に弱さの罪を自覚していた。
母より強くなることが恐ろしかったため、彼女は弱い者として母の温もりに包まれることを望み、やがて眠りについた。
サラが目を覚ますと、母の慌てた声が聞こえていた。
母は小屋の前に大豹が置いてあることに驚いており、サラは驚いたふりをした。
しかし、母が突然咳き込み始め、サラは母を床に寝かせると、大豹を捌くと言って水場に向かった。
経験がないサラは捌き方が分からず困っていたところ、二人の獣人が現れて大豹を奪おうとした。
サラは抵抗せず、彼らに大豹を持ち去られた。
獣人たちは去った後、サラは草原の空を見上げながら、自分の強さを信じて笑顔で家に戻った。
サラは時々、目立たないように小さな獲物を狩り、母に教わりながら捌き方を覚えていった。
母の体調は次第に悪化し、母の寿命が近づいていることを感じていた。
母と過ごす最後の時、サラは母の温もりを感じながら母が亡くなるのを見守った。
翌朝、サラは母を誰にも知られずに草原に葬り、二人だけのお墓を作った。
その後、ラルとレンに遭遇し、彼らが母の死を馬鹿にしたため、サラはレンを攻撃し、ラルも同様に処理した。
サラは強さを以て生きる決意を新たにし、草原の掟を深く理解していた。
そんな彼女の首筋には黒い痣が浮かんでいた。
五章
西野アカネは真っ白な部屋で目覚め、白い薄手の病院着のようなものを着ていた。
床は大理石のようであり、部屋には不明な文字が点在していた。
アカネは自身が何者かに誘拐されたと考え、状況を探ろうとした。
彼女は記憶と『はじまりの騎士』としての力を取り戻しており、防御が甘い誘拐計画に驚いていた。
扉を破ろうとしたが、魔力で硬化されていることが判明し、拘束されていなかった理由が理解できた。
その後、扉が開き、銀髪の美少女が現れ、ナツメではなくベータであること、彼女がシャドウガーデンの一員でアカネを「異世界生命体」として調査していることが明らかになった。
ベータに拠点を案内されたアカネは、進んだ魔法技術と遅れた科学技術のアンバランスさに驚いた。
拠点の女性たちは、アカネには聞き慣れない言語を話しており、エルフや獣人のような特徴的な耳を持っていた。
ベータはこの施設での立場が高く、多くの敬意を受けていた。
ベータはアカネに戦闘を試すことを勧め、訓練施設での戦闘の準備を進めた。
誤解によりアカネは戦闘を避けられず、ベータが召集した少女と対峙することになった。
この少女はまだ十三歳であり、シャドウガーデンの新人であることが明らかになった。
試合は間もなく始まり、訓練場には多くの注目が集まっていた。
その間、《七陰の第七席イータ》が実験体の様子を見に来たが、アルファの許可があるかどうかが疑問視されていた。
アカネは、体格から想像できないほどの重い一撃を受けながら、711番との戦いに挑んでいた。
未知の経験に戦慄しながらも、アカネはすぐに魔力を解放し、戦況を逆転しようとした。
その戦いの中で、711番も冷静さを取り戻し、実力を発揮し始めた。
互いに強い決意を背負っていた二人は、剣を交えながら激しい攻防を繰り広げた。
戦いが長引くにつれ、711番はアカネの魔力を巧みに流し始め、次第に優位に立っていった。
しかし、最終的にはアカネが711番の一瞬の隙を突き、決着をつけたが相打ちだった。
訓練場で倒れた二人を見下ろし、ベータとラムダは話していた。
711番が逸材であることに同意しつつ、アカネの魔力の質が異常であることに驚きを隠せなかった。
イータはアカネに駆け寄ろうとしたが、ベータに止められた。
アカネと711番は医務室に運ばれ、意識を取り戻すと、アカネは自分が負けたかどうかを考えていた。
アカネが戦いを振り返り、相手の攻撃が鈍ったため、なんとか同時に攻撃が当たり相打ちとなったのだ。
隣のベッドにいた711番はうなされていたが、アカネは優しく頭を撫でて安心させた。
その後、ベータが医務室に入り、アカネにこれからの行方とシャドウガーデンとしての生活を説明した。
アカネは712番という番号で呼ばれることになり、これからの生活を始める準備をした。
医務室を出たアカネとベータは石造りの廊下を歩いていた。
廊下の装飾は異世界のものであり、現代の日本との技術的なギャップにアカネは新鮮さを感じていた。
トイレは意外にも水洗式で、日本の技術が用いられていたようだ。
アカネは、トイレを設計したイータについて問いただすが、ベータは秘密だと言って明かさなかった。
食堂に到着し、アカネはその広大さに圧倒される。そこで出された和食に、アカネは異世界にいながら日本の味を再確認した。
食後、ベータの背後からイータが現れ、アカネの身柄について話し合った。
イータは書類を偽造しており、アカネを手に入れようとしていたが、ベータによってその試みは阻止された。
その後、イータは魔力撹乱技術を用いてベータとその仲間たちを翻弄し、最終的にアカネを連れ去ることに成功した。
アカネが目を覚ましたとき、彼女は薄暗い地下室のベッドに黒いスライムで拘束されていた。
周囲には実験器具や不明なガラクタが溢れていた。
拘束を解こうと試みるものの、スライムは強固で解けなかった。
イータと名乗る白衣の少女がアカネの前に現れ、彼女の健康状態を確認しながら、冷淡にもアカネを実験動物として扱う様子があった。
イータはアカネの声帯を切除することを検討し、その後でアカネの知識を抽出する計画を語った。
イータが示した脳の知識抽出装置は、アカネにとって恐怖の対象となった。
彼女はその装置に対して強い不安を感じつつも、イータから情報を引き出そうとした。
イータは流暢な日本語で応じ、研究のためにアカネを利用する意図を明かした。
その会話中に、アカネは影野実という名前を耳にし、彼が異世界でイータの実験体になっていることを知った。
突如、金髪の美しいエルフが現れてイータを制止し、アカネを救出した。
このエルフはアルファと呼ばれ、イータを処罰すると共にアカネの拘束を解除した。
アカネはその場で救われ、後にベータが彼女の面倒を見ることになった。
この一連の出来事を通じて、アカネはこの異世界の組織の複雑さとその中での力関係の一端を垣間見た。
アカネはベータに案内され、新しい部屋へと到着した。
ベータはアカネに言語学習のための教科書を渡し、独学を促す形で去っていった。
部屋に入ると、その中には三つのベッドがあり、そのうちの一つには白髪の少女が寝ていた。この少女は以前アカネと戦った相手だった。
二人はお互いに驚いた反応を見せたが、少女はアカネと同じ部屋にいることを好まず、外で寝ると言って部屋を去った。
アカネは異世界での生活に疲れており、友好的でないルームメイトや理解不能の言語、強者ばかりの組織といった数多くの問題に直面していた。
しかし、彼女は影野君を助けるという一つの希望を胸に新たな環境での生活を始める決意を固めた。
終章
木の香りに満ちた秋の終わりの日、アルファは窓辺で書類を整理していた。
街路樹が鮮やかに紅葉し、王都の街並みが広がる外景に心を奪われる。
かつてシャドウガーデンが二人だけだった頃、アルファは森の中の自作の小屋で暮らしていた。
彼が建て、彼女が完成させたその小屋は、木の香りで常に満たされていた。
彼は夜中にのみ訪れ、日中はアルファが単独で魔力と剣の訓練、山菜採りや狩りをして過ごす。夜は二人だけで食事を共にし、彼は様々な話を聞かせてくれた。
ある日、彼は湯気の持つ巨大な力について語り、アルファに蒸気の研究を促した。
蒸気機関が鉄の車や船を動かす可能性を示唆し、アルファに考えさせることで、彼女の知識と問題解決能力を鍛えた。
アルファは自身を賢いと考え、故郷で誰も彼女に敵わなかったが、彼は常に彼女より高い知識を持っていた。彼の指導の下、アルファは武力だけでなく知力の重要性も学び、成長していった。
季節が流れ、アルファとシャドウの二人だけの時間は終わり、銀色の髪を持つ泣きぼくろの少女、ベータが加わった。
ベータは人見知りで、シャドウを怖がり、いつもアルファの後ろに隠れていたが、二人はすぐに打ち解けた。
その後、ガンマとデルタも加わり、小屋は賑やかになった。
アルファたちはシャドウから学んだ技術で小屋を立派な家に増築した。
ある日、シャドウは早めにデルタとガンマの指導を切り上げ、全員を集めて金の操り方と経済支配の方法を説明した。
デルタとガンマは互いに競い合いながらも、シャドウの教えに感銘を受け、特にガンマはその日から変わり、シャドウの知識を貪欲に学んだ。
イプシロン、ゼータ、イータが加わり、各々が家族として馴染んでいった。家は常に木の香りに包まれ、彼女たちは幸せだった。
あの日から、アルファはがむしゃらに生き続けてきた。
茜色の木漏れ日が室内を染める中、ガンマが入室し、かつて二人で語り合った木の香りのことを思い出させる。
ガンマは隣に立ち、大きな街路樹を見上げながら風に運ばれてくる木の香りを感じ取り、懐かしさを表す。
アルファはまだ夢の途中であることを認めつつ、信じる道を走り続ける決意を新たにする。遮る者には容赦しないと言いながら、二人は再び前進を始める。
かつての木の香りは、いつまでもアルファの胸の奥に残っている。
Share this content:
コメントを残す