小説「屍王の帰還 2」モブムーブ全壊‼ 感想・ネタバレ

小説「屍王の帰還 2」モブムーブ全壊‼ 感想・ネタバレ

どんな本?

『屍王の帰還 ~元勇者の俺、自分が組織した厨二秘密結社を止めるために再び異世界に召喚されてしまう~』は、異世界ファンタジーとコメディを融合させたライトノベルである。主人公の日崎司央は、中学3年生のときに異世界に召喚され、勇者として世界を救った過去を持つ。しかし、彼がかつて「屍王」と名乗り組織した秘密結社「ヘルヘイム」が、再び異世界で暴走していることを知らされ、再度召喚されることになる。自らの黒歴史と向き合いながら、彼は組織の暴走を止めるために奮闘する。

主要キャラクター
日崎司央(ひざき しおう):主人公。かつて異世界を救った元勇者であり、「屍王」として秘密結社「ヘルヘイム」を組織した過去を持つ。再び異世界に召喚され、自らの黒歴史と向き合うことになる。
八戒(はっかい):司央が組織した「ヘルヘイム」の最強の部下たち。彼らは司央を深く敬愛し、再び彼のもとに集結する。

物語の特徴

本作は、異世界ファンタジーとコメディを巧みに融合させている。主人公が自らの過去の黒歴史に悶えながらも、それを乗り越えていく姿が描かれており、読者に共感と笑いを提供する。また、個性的なキャラクターたちとの再会や、組織の謎を解き明かす展開が、物語に深みと興奮を与えている。

出版情報
著者:Sty
イラスト:詰め木
出版社KADOKAWA
レーベル:MFブックス
発売日:2024年11月25日
判型:B6判
ページ数:340ページ
ISBN:9784046841414
関連メディア展開
Web小説:『小説家になろう』および『カクヨム』にて連載
コミカライズ:未定

読んだ本のタイトル

屍王の帰還 ~元勇者の俺、自分が組織した厨二秘密結社を止めるために再び異世界に召喚されてしまう~ 2
著者:Sty 氏
イラスト:Sty 氏

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あらすじ・内容

再会と衝突――そして、屍王の秘密が明かされる
鉄鋼都市ガギウルを救ったヘルヘイムは、武具の素材と資金集めのため欲望の国、不夜国へと向かう。そこで再会するは八戒の一人、神樹の守衛フレスヴェルグ。しかし、彼女は屍王が百八十年前突如として姿を消したことに深いわだかまりを抱えており、二人は衝突してしまう。
一方、不夜国の住民たちは一様に「二匹の巨大な蛇」が出てくる悪夢に悩まされていた。この謎を解明するため、一八〇年前からの盟友、大商人ゼーノから依頼を受けた屍王は調査を開始。混沌とする不夜国で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
さらに、時を同じくして、不夜国にはレベル八探索者【紅華】や上級悪魔・騎士フルカス、そして人類最強の襲王殿までもが集結してきて――。
WEBから大幅に加筆しオリジナル展開を迎える再召喚×黒歴史コメディ第二巻。

屍王の帰還 ~元勇者の俺、自分が組織した厨二秘密結社を止めるために再び異世界に召喚されてしまう~2

KADOKAWAanime

感想

キャラクターの魅力

今回の物語では、フレスヴェルグやカグヤ、リンファネヴィルといった個性的なヒロインたちが登場し、物語を一層盛り上げている。
特にフレスヴェルグとの対立から和解までの過程は感動的であり、過去の因縁が丁寧に描かれていた。
また、カグヤの気まぐれな性格やリンファネヴィルの豪胆さも物語に彩りを加えていた。
屍王を中心に繰り広げられる会話ややり取りが、コミカルながらも深みのある展開を生み出していた。

ストーリーの展開

闘技場での戦闘や悪夢の調査など、多様なエピソードがバランスよく配置されており、テンポの良さが光った。
屍王が闘技場で無双しながらも仲間との絆を再確認する場面や、偽ヘルヘイムとの因縁が描かれるシーンは特に印象深い。
物語の伏線も随所に張り巡らされており、次巻への期待を膨らませる作りとなっていた。

テーマと設定

異世界に召喚された屍王の黒歴史の葛藤や仲間との絆がテーマとして際立っている。
異世界人である彼の特殊な魔力設定や、かつて結成した厨二病的な秘密結社「ヘルヘイム」が再び物語の中心に据えられる展開は新鮮であった。
特に、偽ヘルヘイムの暗躍と、真のヘルヘイムメンバーとの再会が物語に深みを与えていた。

惜しい点

主人公の妹の登場が期待されていたものの、今回の巻ではその描写がなく、次巻での再会に持ち越された点が残念である。
また、物語の盛り上がりは十分であったが、八戒のメンバー全員の描写にはまだ時間がかかりそうで、物語の全貌が見えるにはもう少し巻数が必要であると感じた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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同シリーズ

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屍王の帰還 ~元勇者の俺、自分が組織した厨二秘密結社を止めるために再び異世界に召喚されてしまう~2

その他フィクションョン

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

プロローグ  色褪せた世界

神樹の守衛フレスヴェルグの退屈

神樹ユグエルの頂

神樹ユグエルは大陸中央にそびえる巨木で、上部には文明が築けるほど広大な空間が存在していた。そこは人や獣、悪魔さえも寄り付かない神秘の地であった。その場所で足音を響かせるのは、神樹の守衛フレスヴェルグである。彼女はその日常の変わらなさに辟易していた。

フレスヴェルグの過去と屍王の影

フレスヴェルグは空色の髪を風に揺らしながら、かつての日々を思い返していた。彼女が「屍王」とともに過ごした日々は、退屈な観測者としての役割から救い出された時間であった。だが、屍王が姿を消してから、彼女の周囲は散り散りになり、再び孤独に戻った。

退屈からの脱出と葛藤

彼女は神樹から離れる制約を抱えながらも、その場所を抜け出す計画を練っていた。かつての仲間であるガルムの名前を口にしつつも、それすら確固たる目的ではなかった。退屈と寂しさに抗いながら、フレスヴェルグは消滅の覚悟で神樹から離れようと決意した。

人間への興味と新たな一歩

フレスヴェルグは、人間の欲望が集まる場所に足を向け、彼らをからかうことを考えた。彼女は退屈から逃れるための「最後の遊び」を見つけたように振る舞い、軽やかな笑みを浮かべていた。

屍王の帰還前夜

この物語は、屍王が帰還の兆しを見せる少し前の出来事である。フレスヴェルグの退屈を断ち切る運命の瞬間は、まだ遠くにあったが、彼女の選択が新たな展開を引き寄せるきっかけとなっていた。

一章  不夜国での再会

エリューズニルでの準備と次なる計画

ガギウル騒動後の休息

屍王シオーたちは、ガギウルでの戦いを終えてヘルヘイムの拠点「エリューズニル」に帰還した。彼は部下たちとともに短い休息を取りつつ、次の行動を計画していた。部下たちの心身をケアすることも、王としての務めであると考えていた。

鍛冶神グルバとの対話

シオーは鍛冶神グルバに、ガギウルで入手した上級悪魔オセの素材を手渡した。グルバはその素材を見て喜び、早速新たな武具の制作に取り掛かることを決意した。シオーは、グルバが作る武具が自らの生命線であることを強調し、彼の仕事に期待を寄せた。

原生種の素材と課題

グルバは武具制作に必要な素材として原生種の皮や中級悪魔の甲殻などを挙げた。しかし、原生種の素材は希少であり、入手には困難が伴う。屍王は素材を探すため、不夜国のオークションに向かう計画を立てた。

不夜国への準備と金銭問題

不夜国のオークション参加には多額の資金が必要であったが、シオーたちは金銭的な余裕がなかった。グルバの協力も断り、自力で資金を調達する方法を模索した。その中で、不夜国名物の「闘鬼場」で資金を稼ぐという案を思いつき、実行を決めた。

部下たちとの日常

休息期間中、シオーは部下たちとの何気ない日常を過ごしていた。ニヴルは子ドラゴン姿のニーズヘッグを世話しながらも、ヘルヘイムの仲間たちとの関係を楽しんでいた。一方で、シオーは自分がいなければ成り立たない彼らの依存関係を変えるため、八戒の絆を深める必要性を感じていた。

不夜国への決意

屍王シオーは、原生種の素材を手に入れるため、不夜国の闘鬼場での戦いに挑む決意を固めた。彼は自らの戦闘力を試しつつ、勝利によって資金を調達することを目指していた。新たな挑戦に胸を躍らせつつ、彼は次なる旅路を思い描いていた。

不夜国シェヘムの光と影

煌びやかな都と闘鬼場

不夜国シェヘムは、フォルテム帝国の境界に隣接する唯一の都市であった。商業と歓楽の中心地として繁栄し、夜通し輝く魔法光が都を彩っていた。その中心には領主の居城「夜天」と、隣接する闘鬼場がそびえ立ち、闘技が観客の欲望をさらに掻き立てていた。

新たな闘鬼の登場

闘鬼場では、一人の少年アレウ・カリーが注目を浴びていた。無名ながら風魔法を駆使し、下級悪魔を圧倒する姿に観客は驚愕した。彼の戦闘は圧倒的で、拡声魔法による無自覚な発言が観客をさらに騒がせた。試合はアレウの勝利で終わり、彼は控室へと戻った。

フレスヴェルグとの出会い

控室で待機していたアレウの元に、美少女フレスヴェルグが現れた。彼女は彼に風魔法を貸し与えた張本人であり、馴れ馴れしい態度で彼を翻弄した。アレウは彼女の力を得て、かつて自分を見下した故郷の人々や幼馴染ライカへの複雑な思いを胸に秘めながら、自らの力を磨いていた。

カグヤの退屈と挑発

一方、夜天の頂上に住む傾国鬼カグヤは、日々の退屈を嘆いていた。彼女は闘鬼場の様子を眺めつつ、新たな闘鬼アレウの力を認めつつも期待を寄せていなかった。側付きが提案した高位探索者【紅華】を招く案に興味を示し、余興として戦いを見届けることを決めた。

運び屋との対峙

カグヤの私室には「運び屋」と名乗る謎の人物が侵入し、不吉な言葉を告げた。彼は「復活の時が近い」と語り、彼女に行動を促したが、カグヤはそれを一蹴した。かつての王を尊崇する運び屋に対し、カグヤは自身の自由と在り方を貫く姿勢を示し、彼を退けた。

静寂と不穏な予兆

運び屋が去った後、カグヤは静寂の中で物思いにふけった。彼女は不夜国に迫る不穏な変化を予感しつつも、その場では何も行動を起こさなかった。城下の喧騒を見下ろしながら、彼女は独り憂いの声を漏らしていた。

不夜国シェヘムへの到着

不夜国シェヘムを囲むザルド平原は、街の魔法光に照らされ、怪しい雰囲気に包まれていた。ガルムは小さな身体で興奮しながら飛び跳ね、街の門を通ると興奮を抑えきれない様子で街の中心を目指した。対照的にニヴルは不満げな表情を見せ、街の下賤さを嘆いていた。司央はそのやり取りを苦笑しつつ、仲間たちとともに街を進んだ。

オークションの発見と問題

街の掲示板で、オークションの開催案内が目に留まった。原生種の皮を含む希少素材が出品されるが、参加費用は前金150枚の金貨であり、さらに使用する通貨は神銀貨である必要があることが判明した。神銀貨への両替には商会の利用が必要だが、ヘルヘイムの一員であるグルバや一行にはその選択肢が難しかった。

グルバの落胆と司央の決意

グルバは落胆した様子を見せ、鍛冶への情熱が抑えられない様子であった。その姿を見た司央は、仲間の期待に応えるため、何としても問題を解決する決意を固めた。ニヴルの助言により、司央は大商会セノスカルの不夜国支部を訪れることとなった。

セノスカル商会への訪問

セノスカル商会は豪華な建物で、内部では司央が「ゼーノに会いたい」と繰り返し要求した。対応にあたった会員たちは困惑し、支部長セルジュが登場した。彼女は司央の名前を聞くと驚愕し、普段の冷静さを失ったまま司央に丁重に接した。

謎めいた対応と同行

セルジュは周囲の会員を退け、司央を特別扱いして奥へと案内した。その異様な態度に周囲の者たちは困惑しながらも従うほかなかった。司央自身も状況を飲み込めないまま、セノスカル商会の奥へと進んでいった。

ゼーノとの再会

ゼーノとの再会は、不夜国シェヘムの商会支部で行われた。司央が名前を出しただけで、支部長セルジュが過剰なまでに動揺し、特別待遇で通された部屋で待たされた。ゼーノは遠隔虚像として現れ、百八十年ぶりの再会に感慨深い様子を見せた。ゼーノは司央に感謝し、自身の成功を司央との出会いに繋げて語った。

オークションと協力の提案

司央は、原生種の皮を手に入れるためオークションへの参加を希望し、ゼーノに相談した。ゼーノは、自身の商会の規約や帝国への報告義務を考慮した上で、司央を代理人として参加させる案を提示した。この方法で神銀貨の提供と報酬の相殺が可能となり、司央はこの提案を快諾した。

悪夢の相談

ゼーノは、商会の会員たちが悪夢を見るという奇妙な現象を司央に相談した。その悪夢は「二匹の巨大な蛇」を見るというもので、被害が広がり実害も出始めていると説明した。司央は調査を引き受け、報酬としてオークション費用の一部を軽減することで合意に至った。

別れと決意

ゼーノとの会話が終わり、天然遺物のタイムリミットが訪れると、彼は消えゆく中で司央の成功を祈りつつ別れを告げた。司央は、ゼーノの信頼と友情を再確認しつつ、調査とオークションに向けて改めて決意を固めた。

街に漂う異変の兆し

不夜国シェヘムの街中、ガルムが漂う魔力の奇妙な匂いに気付き、周囲に注意を促した。彼の鋭敏な嗅覚が捉えた「懐かしい」と表現されるその魔力は、街全体に広がっているようであった。ニヴルやグルバも警戒心を抱き、調査を始めることに決定した。

探索者ギルドでの手掛かり

ガルムの嗅覚を頼りに辿り着いたのは、探索者ギルドの不夜国支部であった。内部では様々な種族が入り乱れ、特有の賑わいを見せていた。ニヴルは依頼板を確認し、「悪夢を見る」という奇妙な依頼が複数掲示されていることに注目した。悪夢の内容は不気味な「二匹の蛇」というもの。さらに調査を進める中で、悪夢は不夜国生まれの人間だけが見るものであるという情報を得た。

騒動と青年探索者の介入

情報収集中、ニヴルは酒気を帯びた探索者二人組に絡まれるが、突然現れた青年探索者アレウ・カリーによって救われた。彼は風魔法で二人を制し、ニヴルに怪我がないことを確認した後、礼を拒んだ。アレウの冷静な行動に一時の注目が集まる中、ニヴルは彼に最低限の礼を述べつつも早々にその場を立ち去った。

フレスヴェルグとの再会と葛藤

裏路地でグルバとガルムと再び合流したニヴルは、ガルムの質問からアレウに同行していたフレスヴェルグの存在を認識していたことを明かした。しかし、彼女はフレスヴェルグに声を掛けなかった理由について、自身の中に残る迷いや葛藤を語った。八戒としての忠誠心や、彼女たちを孤独に追いやった屍王の行動に対する思いがその背景にあった。

屍王との合流

議論を終えた一行はガルムの感知能力を使い、セノスカル商会付近で待つ屍王の元へと向かった。それぞれが抱える思いや過去を胸に秘めつつ、彼との再会を喜び、共に新たな行動を始める決意を固めた。

二章  闘鬼ヒザキ

孤島の襲王殿と少年少女の退屈

北端の孤島にある古城、襲王殿。そこに居を構える少年アンデルと少女リャーラは、日々の退屈を持て余していた。二人は襲王殿九席「裂王」と十席「水王」の称号を持ち、強さを極めた結果、相手を失い戦闘への情熱を失いつつあった。アンデルは外の敵に手応えを感じられず嘆き、リャーラも読書で闘争心を紛らわせるのが精一杯であった。

不夜国の悪魔騎士フルカスへの執着

そんな二人が悪魔王直属の騎士フルカスの情報を掴んだ時、彼らの心は闘志に燃えた。フルカスは因縁深い相手であり、久しく失われていた研鑽相手として最適だった。二人は古城を飛び出し、不夜国へ向かうことを決意した。

ギルドでの奇妙な魔力の発見

一方、不夜国シェヘムでは、ガルムがギルドの下から漂う奇妙な魔力を嗅ぎ取った。その匂いは懐かしさを伴いながらも不穏さを感じさせるものであった。ニヴルはそれを呪いの一種と推測し、負の魔力に起因する現象である可能性を示唆した。不夜国で蔓延する悪夢とも関連があるかもしれないという考えから、調査を進めることが決定された。

屍王の指示と闘鬼場への挑戦

屍王はゼーノからの依頼を受けつつ、悪夢や呪いの解明とオークションへの準備を進めることを決めた。その中で、彼は闘鬼場での戦闘に参加し、資金を稼ぐことを選んだ。周囲の協力を得ながら、屍王は闘鬼場の登録を済ませ、試合に向けた準備を整えた。

闇鍋戦の開始と観客の思惑

闘鬼場では、屍王が新顔の闘鬼獣と対戦する「闇鍋戦」に挑むことが決まった。屍王の戦闘経歴が空欄であることを聞きつけた観客たちは闘鬼獣に賭ける者が大勢を占めた。裏で情報を操作していたのは、屍徒としての顔を持つニヴルであった。彼女は屍王への忠誠心から情報を利用し、観客たちを巧みに動かしていた。

試合への期待と闘志の高まり

屍王はガルムや仲間たちの期待を背負い、闘鬼場での戦いに臨む。彼が勝利すれば多大な利益が得られる状況で、観客たちの注目も集まっていた。彼の一挙手一投足が試合を盛り上げることは確実であり、勝敗の行方に全員の視線が集中していた。

闘鬼場での激戦

闘鬼獣との対峙

ヒザキは闘鬼場に登場し、獣型悪魔の闘鬼獣と対峙した。その闘鬼獣は改造され、飛行能力を持つ純白の羽や異形の目を植え付けられていた。観客はその異様な姿と、対するヒザキの自然体な立ち振る舞いに注目し、勝敗を見守っていた。

試合開始と圧倒的な蹂躙

銅鑼の音で試合が始まると、闘鬼獣は全力の突進でヒザキに襲いかかった。しかし、ヒザキは跳躍で攻撃をかわし、続けて鋭い尾を奪取。それを武器にし、闘鬼獣の足と羽を破壊した。最終的にヒザキの強烈な蹴撃により、闘鬼獣は完全に無力化された。

観客の反応と勝者の発表

観客たちは、ヒザキが一切の魔法を使わずに闘鬼獣を圧倒した光景に驚愕していた。審判は「勝者ヒザキ」と声高らかに宣言し、一部の観客から歓声が上がったが、多くは損失の大きさに頭を抱えていた。

勝利後の配当

試合後、ヒザキは受付から配当として金貨626枚を受け取った。これはニヴルが情報操作を行い、試合の注目度を高めた結果でもあった。ヒザキは次の試合に向けての準備を進めるべく、満足げに小切手を受け取った。

次の試合への挑戦

その後、受付係から次の試合の相手が「アレウ」という無敗の闘鬼であることを告げられた。この試合は不夜国の夜天の主「傾国鬼」からの特別な要望で組まれたものであった。ニヴルは対戦相手の情報収集に取り掛かることを約束し、ヒザキは次なる勝利を目指す意気込みを見せていた。

新鋭戦の幕開け

傾国鬼からの試合要望

闘鬼アレウは、傾国鬼カグヤからの要望で試合に出場することとなった。アレウは自身を「弱い」と謙遜しながらも、内心では力を隠し持つ自信を秘めていた。その姿勢に相棒のフレスヴェルグは苛立ちを見せつつも、試合の準備を進めた。

紅華リンファの登場

一方、傾国鬼のいる夜天の天守には、Lv8探索者である【紅華】リンファが訪れていた。彼女は無礼な振る舞いながらも、その明るい性格で場を和ませ、カグヤとの親交を深めていた。カグヤは闘鬼場で行われる新鋭戦を心待ちにしており、試合の観戦を楽しみにしていた。

異様な控室の空気

試合当日、アレウが控室に入ると、闘鬼たちはオッズ表を見つめ不安げな様子を見せていた。アレウは、自分の支持率が予想外に低いことに驚きつつも、屈辱を力に変えて戦う決意を固めた。対戦相手であるヒザキの情報がほとんどない中、アレウはフレスヴェルグに力を借り、全力を尽くすつもりで試合に臨んだ。

新鋭戦の開始とアレウの奮闘

試合が開始されると、アレウは風魔法を駆使しヒザキに攻撃を仕掛けた。しかし、ヒザキは圧倒的な力でアレウの攻撃を軽くいなし、反撃でアレウを圧倒した。観客たちはその光景に歓声を上げ、ヒザキの実力に驚嘆した。

フレスヴェルグとの再会と真実

試合中、ヒザキはフレスヴェルグと再会し、彼女がアレウに力を貸していた理由を知った。ヒザキは彼女に過去の因縁を問いかけるが、フレスヴェルグは明確な答えを避けつつも、彼に対する複雑な感情を抱いていた。

ヒザキの勝利

最終的に、ヒザキはアレウを圧倒し試合に勝利した。観客たちは歓声と罵声を交えた反応を見せる中、ヒザキはフレスヴェルグに優しく語りかけた。しかし、彼女はかつての出来事を思い出し、ヒザキに対する憎悪と混乱を抱えたままその場を後にした。

幕間  獣神

獣神としての誕生と崇拝

『自分』は生まれた瞬間から村人たちに神として崇められていた。村の豊作や雨風を司る存在として扱われ、三年間神の座に君臨していた。村には獣神信仰という因習が根付いており、特定の動物を実在する神として信仰する習慣があったのである。しかし、三年という周期で新たな獣神に切り替わることで、『自分』は神の座から失墜した。

堕落と知性の苦悩

『自分』は普通の獣にはない知能を持ち、鏡像認知能力さえ備えていた。そのため、自分が神ではなくなったことを強く痛感し、与えられるだけの生き方に慣れ切った己の堕落を自覚した。牙や爪を失い、自然の中で生き抜く力を奪われていたことに気づいたとき、『自分』は初めて村人たちへの憤りと恐怖を覚えた。

因習の正体と絶望

村人たちは、三年間神として崇めた獣神を地下の洞穴に生き埋めにし、その死から放出される魔力を村の土壌を肥やす糧としていた。『自分』は他の獣神の腐乱した死体と共に閉じ込められ、死を待つだけの存在と化した。暴力を受け、過去の栄華を思い出すたびに絶望と恥辱が胸を締め付けた。

死の拒絶と憎しみの継続

『自分』は死を望みながらも、負の魔力によって衰えず、死ぬことも許されなかった。それどころか、他の獣神たちが遺した魔力によって生き続ける運命を背負わされた。死を願う日々が永遠に続く中、『自分』は人間たちへの憎しみを深めていった。

果てなき恨み

朽ちることなく生き続ける『自分』は、すべての人間を恨み続ける決意を胸に抱いた。自身を踏み台にして栄える彼らの行いを許さず、その存在全てを否定し続けるのだと心に誓っていた。

三章  悪魔がカタる。

試合後の収穫と転移

試合後、ヒザキたちは宿屋からエリューズニルに転移した。ニヴルの転移魔法による素早い移動が功を奏し、今回の試合で得たファイトマネーは一七三三枚となった。これにより総資産は金貨三〇八九枚に達し、オークションの準備や予算の確保が完了した。計画通り順調に進む中、部下たちとの会話が続いた。グルバ製作の外套がその価値を再認識される場面もあり、ヒザキは部下たちの優秀さに感謝していた。

フレスヴェルグの怒りと対立

フレスヴェルグとの再会は緊張感に満ちたものであった。彼女は過去のヒザキの行動に対して強い怒りを抱き、直接的に問い詰めた。ヒザキは異世界人であることを隠し続けているため、それが原因で彼女を納得させることができず、さらなる対立を招いた。フレスヴェルグの失望した瞳と涙はヒザキの心を強く打ちのめし、彼の胸に深い痛みを刻み込んだ。

カグヤの新たな試合提案

宿屋に現れた受付嬢から、傾国鬼カグヤによる新たな試合の提案が伝えられた。次の相手は Lv 8探索者【紅華】リンファネヴィルであり、条件としてカグヤとの面会が付与されるとのことだった。ヒザキはその提案を受け入れることで、得られる情報の価値に賭けた。

エキシビションマッチの開始

エキシビションマッチ当日、観客の注目を集める中、ヒザキとリンファネヴィルが対峙した。試合はリンファネヴィルの圧倒的な身体能力と攻撃力で始まり、ヒザキは防戦一方の様相を見せた。しかし、ヒザキは自らの魔法【氷纏】を駆使し、巧妙な地雷型の魔法でリンファネヴィルを追い詰めた。

試合の勝敗とカグヤの反応

リンファネヴィルを氷で束縛し勝利を収めたヒザキは、観客からも大きな喝采を受けた。試合後、カグヤはヒザキの戦いぶりに感銘を受け、彼を呼び寄せるよう命じた。彼女は「氷魔法」に注目し、ヒザキに隠された真実を探ろうとしていた。カグヤの背後には、ただの傾国鬼ではない別の顔がちらついていた。

フレスヴェルグの苦悩と不満

フレスヴェルグは屍王との対話で抱えていた思いを吐き出し、一時の安堵を得たが、その裏に深い悲しみを感じていた。彼女は屍王が自分たちを愛していると信じ、重荷を共有したいと願っていたが、彼の沈黙がその期待を裏切った。信じたい気持ちと、自らの弱さに苛まれながら、フレスヴェルグは不夜国の街を彷徨い歩いた。

アレウとの再会と歪んだ執着

闘鬼場近くでフレスヴェルグはアレウ・カリーと再会した。力を求める執念に取り憑かれた彼は、再びフレスヴェルグの力を利用しようと画策していた。フレスヴェルグは冷めた目で彼を見下ろし、彼の矮小な執着心を嘲笑した。アレウは彼女を選んだ自分の正当性を叫び、歪んだ怒りをぶつけたが、フレスヴェルグはそのすべてを冷静に受け流し、彼をさらなる破滅の道へ誘った。

カグヤとの対面

カグヤとの面会で、ヒザキは彼女が悪魔族であることを看破した。カグヤはヒザキの洞察力に驚きながらも、悪魔族としての情報を一部明かした。特に「悪魔王を名乗った者が真の悪魔王ではない」という事実はヒザキを大いに驚かせた。さらに、過去の上級悪魔たちの動きや目的についても語られ、ヒザキはその真偽を探ろうと決意した。

悪夢騒動と因習の影

カグヤの話によれば、不夜国に広がる悪夢騒動は「獣神信仰」という古い因習が関係している可能性が示唆された。生き埋めにされた獣神たちの存在が魔力の異常を引き起こしているのではないかという推測が立てられたが、確固たる証拠は得られなかった。一方、探索者ギルドの地下に異様な魔力を感じたというヒザキの報告を受け、調査が必要と判断された。

オークション襲撃と偽ヘルヘイム

その矢先、オークション関係者が殺害され、ヘルヘイムを名乗る者たちが関与しているとの報告が入った。ヒザキはこの襲撃事件が偽ヘルヘイムの仕業であると判断し、即座に行動を開始する決意を固めた。カグヤからの支援を受けつつ、彼は自らの目的を果たすために動き出した。

四章  騎士

オークション強盗とヘルヘイムの陰謀

不夜国郊外に逃亡した盗賊たちは、馬車に乗り込んで盗品を品定めしていた。彼らの目的は、オークションで取引予定だった天然遺物であり、特に「異界召喚珠」の可能性がある物に目をつけていた。しかし、突如現れた屍王一行によって盗賊団は制圧され、生き残ったまとめ役の男が追及を受けた。男は依頼主がヘルヘイムの幹部であること、そして天然遺物を狙う理由が異界召喚珠に関連することを白状した。だが、男は屍王に処刑され、馬車と盗品は屍王一行の手に渡った。

廃遺跡への追跡と異界召喚珠の真相

屍王たちは盗賊が目指していた廃遺跡へと進んだ。そこは秘境「古来の遺物群」の中に位置し、外部からの侵入者を迎え入れるかのように扉が開かれていた。遺跡内に入ると、悪魔の存在が排除された不自然な空間であることが明らかとなった。調査の中、屍王たちは異界召喚珠が偽ヘルヘイムの目的であると確信したが、実際には遺物は発見されなかった。さらに、陽動作戦の可能性を察知し、遺跡に集まった上級悪魔がセーレに利用されたことに気付いた。

フルカスとの再会と悪魔派閥の動向

遺跡内で屍王一行は、悪魔族の騎士フルカスと再会した。彼は反逆者であるバエル派の上級悪魔たちを討伐しており、その中でセーレが彼らを唆していたことを明かした。フルカスの証言により、偽ヘルヘイムの目的が異界召喚珠の奪取であることが明確となったが、その真意は依然として不明瞭であった。

不夜国の異変と原生種の顕現

突如として不夜国を覆う魔力の奔流が発生し、街全体が赤紫色のドームに包まれた。魔力の中心に現れたのは、二匹の巨大な蛇に見える影を従えた原生種であった。住民たちが見た悪夢が現実となり、不夜国は異変の中心地と化した。屍王はこの事態を解決するため、フルカスに防壁の破壊を命じ、不夜国への再突入を計画した。

作戦開始と八戒の決意

屍王は仲間たちと共に、原生種と偽ヘルヘイムの鎮圧を目的とした作戦を開始した。ニヴルにはフレスヴェルグの捜索、フルカスにはセーレ討伐を任せ、原生種の対処を自らの手で行うことを決意した。全員がそれぞれの役割を理解し、行動を開始したことで、不夜国での新たな戦いが幕を開けた。

屍王とフルカスの再会

フルカスは屍王の生き方を見て、過去と変わらず無様で破滅へ向かうものであると感じていた。屍王は悪魔や天使、原生種と共に歩み、神樹の守り人すら従えようとしていた。その姿に、フルカスは忠告せず、ただ彼の生き様を興味深く眺めていた。屍王の内なる葛藤を思わせる様子は、彼自身が最悪の結末へ進んでいるように見えて仕方なかった。

アレウと運び屋の接触

謎の外套を纏った運び屋に誘われたアレウは、不安を感じつつもその後を追った。運び屋の言葉に刺激され、力を求める彼は、自身の劣等感を振り払うために風魔法を示そうとする。しかし運び屋は冷淡にアレウを見限り、その態度にアレウは怒りと不安を抱えていた。運び屋に導かれた先が探索者ギルドであることに戸惑いを見せたが、その場で異常な光景を目にする。ギルド内の人々が時を止められたように動かない状況に、アレウの思考は停止した。

黒瑪瑙の秘密と呪いの発端

運び屋は探索者ギルドの床下に隠された黒瑪瑙を暴露した。それは過去にこの地で行われた獣神信仰の産物であり、数千の命が埋葬されてきた結果生まれたものだった。黒瑪瑙は負の魔力を吸収し、呪いを抑え続けてきたが、その純度は既に失われ、限界を迎えていた。運び屋はアレウを黒瑪瑙に投げ捨て、その力で何かを引き起こそうと画策していた。

フレスヴェルグの覚悟と終焉

アレウに宿る風精霊フレスヴェルグは、自身の役目を終えようとしていた。屍王への信頼を失い、失望に苛まれる彼女は、アレウと共に消滅する覚悟を決めていた。黒瑪瑙の引力に逆らわず沈んでいく中で、フレスヴェルグは封じられた獣神と邂逅する。その存在は、過去に犯された禁忌の象徴であり、蓄積された魔力のすべてを受け継ぐ原生種であった。

原生種の覚醒と呪いの結実

黒瑪瑙が限界を迎え、蓄積されてきた負の魔力が原生種に流れ込んだ結果、呪いは新たな形で目覚めた。原生種はこの地の人間への怨念を抱き、不夜国の悪夢として具現化しつつあった。しかし呪いの本体はまだ地下に留まっており、黒瑪瑙による抑制がかろうじて機能していた。この危機は、地上へと解放される日を待つのみであった。

原生種の苦悩と孤独

原生種は何百年もの間、飢餓と孤独に苛まれ続けていた。人間への恨みも、裏切られた悲しみも、既に感じる気力を失っていた。ただ身体に蓄積する負の魔力と獣神たちの怨念が、彼女を立ち上がらせようと強制していた。動けば身体が痛み、苦しみが増すため、彼女はただ静かに死を望んでいた。それでも、外部から侵入した空色の光球に反応し、飢餓に突き動かされた身体はそれを口に含んでしまった。

セーレの仕掛けと呪いの解放

七十番目の上級悪魔セーレは、黒瑪瑙に蓄積されていた負の魔力を解放する計画を進めていた。彼は空中に一本の白い線を描き、それを使って黒瑪瑙を貫通させた。その瞬間、蓄えられていた呪いが一気に地上へと噴き出した。呪いは原生種の願いそのものであり、不夜国の滅亡を目指す破壊的な力であった。こうして封印された負の感情と魔力が、国全体を覆う脅威として姿を現したのである。

五章  風精霊

不夜国を覆う呪いの発動

不夜国全体は赤紫色の魔力による巨大なドームに覆われ、外界との接触を断たれた。ドームの内部では魔力が渦巻き、獣神たちの怨念が四足獣「獣神の嗚咽」として具現化した。形状は流動的で、かつて生贄とされた獣神たちの姿を残していた。獣神はその場に集まる人々の恐怖を煽り、不夜国を恐慌状態に陥れたが、実体がない魔力体ゆえに直接的な破壊は行わなかった。

呪いの真意と暴風の拡散

獣神の嗚咽は咆哮とともに暴風を発生させ、呪いを不夜国全体に拡散させた。住民たちは次々と倒れ、国全体が沈黙に包まれていった。この呪いの目的は物理的な破壊ではなく、不夜国を滅亡へ導くことであった。セーレはこの事態を冷笑しつつ、カグヤに選択を迫った。カグヤは都を守るための行動を模索するも、国を破壊せざるを得ない状況に葛藤していた。

探索者たちの奮闘と紅華の挑戦

不夜国には探索者たちが集まり、呪いに立ち向かうべく一致団結した。特に探索者リンファネヴィルは炎の力を駆使して獣神の嗚咽の魔力攻撃を相殺し続けた。しかし、獣神の嗚咽は膨大な負の魔力を源としており、探索者たちの攻撃に一向に衰える気配を見せなかった。リンファネヴィルは体力と魔力の限界に達しながらも奮闘を続けたが、ついに膝を折り、攻撃が途切れてしまった。

中級悪魔の出現と決定的な一撃

セーレはさらに探索者たちを追い詰めるべく、中級悪魔を次々と召喚した。探索者たちは四面楚歌の状況に陥り、連携が崩れかけた。しかし、その時、不夜国を覆う魔力のドームに白い光が射し込んだ。朝日にも似たその光は、ドームを裂いて外界との道を開き、同時に雷のごとき一撃が獣神の嗚咽を焼き尽くした。この一撃によって、戦局は新たな展開を迎えることとなった。

雷槍を用いた四足獣との交戦

ヒザキはニヴルの宝物庫から「三十四番目の雷槍」を取り出し、それを四足獣の影に投擲した。槍は寸分違わず命中し、ヒザキは槍の能力を用いて獣の目の前に瞬間移動した。ガルムと協力して敵を牽制しつつ、ヒザキは紅華を安全な場所へ退避させるよう指示を出した。その後、ニヴルやガルムと連携しながら、四足獣の本体を探るために状況を整理した。

中級悪魔の排除と探索者の支援

ヒザキはニヴルの加速能力を借り、圧倒的な速度で中級悪魔を討伐した。短時間で十一体を仕留めるという戦果を挙げた後、状況を再確認した。獣神の影は再構成され、依然として四足獣として存在していた。ガルムの観察により、獣神の影は生物ではなく魔力の塊であることが明らかとなり、ニヴルはこれが不夜国の呪いの核心である可能性を指摘した。

フレスヴェルグの救出計画

ヒザキは獣神の影がフレスヴェルグを取り込んでいると判断し、彼女を救出するために影の内部に潜る決断を下した。ニヴルはこの行動の危険性を警告したが、ヒザキは強い意志を持ってその場に向かった。ガルムとニドが協力して獣神の魔力攻撃を破壊し、ヒザキが影の内部へと突入する道を切り開いた。

セーレとカグヤの対峙

一方、城内ではセーレが獣神の力を背景にカグヤを挑発していた。しかし、彼の計画は次第に崩れ始めた。カグヤの冷静な対応と不夜国を守る探索者たちの奮闘が、セーレの思惑を裏切ったのである。

フルカスの介入とセーレの制裁

突如として現れたフルカスは、セーレを圧倒的な力で制圧した。彼女はセーレの右腕を切り落とし、獣神にフレスヴェルグを取り込ませた責任を厳しく追及した。最後には、フルカスの一撃によってセーレは完全に葬り去られた。

呪いの残存と戦いの継続

ヒザキの奮闘とフルカスの介入により状況は大きく動いたが、四足獣の影は依然として健在であった。呪いの核心を完全に破壊し、不夜国を救うための戦いはなお続いていた。

乱気流の中での葛藤とフレスヴェルグの拒絶

ヒザキは魔力の奔流に飲み込まれ、身体を乱気流に弄ばれながらフレスヴェルグを探した。彼の呼びかけにフレスヴェルグは答えず、その奔流はまるで彼を拒絶しているかのようであった。ヒザキは彼女の心の奥底にある孤独や失望を思い返し、必死に謝罪と説得の言葉を心に浮かべた。やがて乱気流は収まり、空色の光球となったフレスヴェルグが姿を現した。しかし、フレスヴェルグはヒザキの謝罪を拒絶し、消える覚悟を伝えた。

異世界人の秘密とフレスヴェルグの動揺

ヒザキはフレスヴェルグに、自分が異世界人であるという秘密を打ち明けた。この世界の魔力循環に属さない異世界人は魔力を自ら補充する特異な存在であり、その魔力は近くにいる者に吸収される特性を持っていた。このため、ヒザキと共にいることでフレスヴェルグたちは彼の寿命を削っていたのである。ヒザキはこの秘密を明かしたことでフレスヴェルグが離れていく恐怖を抱えながらも、必死に彼女に一緒に居てほしいと懇願した。

フレスヴェルグの決断と再び共に歩む誓い

ヒザキの告白を聞いたフレスヴェルグは動揺し、自分が彼の寿命を奪うことへの罪悪感から彼の手を取ることをためらった。しかし、ヒザキの切実な思いと「家族」として共に生きたいという願いに触れ、彼女は彼と再び共にいることを選んだ。ヒザキは彼女に「どうせ死ぬならお前たちに殺されたい」と告げ、自分の命を削ってでもフレスヴェルグたちと一緒に生きる覚悟を固めた。

帰還への決意

フレスヴェルグの心を動かしたヒザキは、彼女を連れて元の世界へ戻ることを誓った。彼は自分の命が尽きるその時まで、彼女たちと共に王として生き抜き、彼女たちが笑顔で前を向いて生きられる未来を残すことを目指した。彼の言葉には揺るぎない決意が込められていた。

六章  産声

グルバの交渉と神水の入手

グルバは不夜国の混乱の中、悠然とセノスカル商会へと向かった。彼は目的地へ辿り着くと、支部長セルジュにヒザキの使者として神水の購入を依頼した。初めは警戒したセルジュだったが、状況を判断し迅速にゼーノとの面会を取り次いだ。

遠隔で現れたゼーノに、グルバは神水の提供を求めるヒザキの伝言を伝えた。ゼーノは神水を大量に保有しており、それが彼自身の呪いを解くための執念の結晶であった。しかし現在ではその呪いを受け入れており、神水の使用目的を失っていた。ゼーノはこれを快諾し、神水をヒザキに無償提供することを決めた。

フレスヴェルグと屍王の共闘

不夜国ではフレスヴェルグと屍王が力を合わせ、獣神の嗚咽と戦いを繰り広げていた。屍王は雷槍を携え、フレスヴェルグの力を得て無数の光弾と嵐を組み合わせた攻撃を繰り出した。その威力は圧倒的で、獣神の影を粉砕するほどであった。しかし、影は再び形を取り戻し続け、完全な決着はつかなかった。

グルバが届けた神水の到着が戦況を大きく左右する鍵となり、屍王は迅速にギルドへ向かうことを決意した。その間、仲間たちは獣神や中級悪魔への対応を引き続き行った。

襲王殿の闖入者との衝突

戦闘中、突如として謎の少年少女が現れ、ニーズヘッグとニヴルに挑発的な態度を取った。少年は屍王を侮蔑する発言を口にしたが、ニーズヘッグは即座に対応し、魔力を纏った一撃を放った。その結果、少年アンデルは瀕死となり、リャーラに救助される形で撤退した。

ニーズヘッグは襲王殿の無礼さを非難し、再び対立することを宣言した。この場面で、襲王殿の実力と異質さが明確に示された。

次の行動への決意

屍王は仲間たちの連携と支援を受けながら、戦いを続ける準備を整えた。神水の到着と敵の再構成に備え、全力で次の戦局へ向かう決意を示した。戦いはまだ終わらず、さらなる困難が待ち受けていることを誰もが理解していた。

神水による呪いの浄化

屍王はグルバから神水を受け取り、ガルムとフレスヴェルグに促されギルド地下へ向かった。床下には黒瑪瑙が敷き詰められており、グルバの異能【神魔の鋳型】によって破壊された。現れた地下空間には濃密な呪いが漂い、神水がその呪いを吸い上げて浄化を始めた。浄化が完了した後、屍王たちは地下に降り、粗末な社と鳥居の奥で苦しむ猫妖精の姿を発見した。

猫妖精との邂逅と救出

地下に閉じ込められていたのは、痩せ細った猫妖精であった。彼女は数百年もの間、呪いを背負い苦しんでいた。屍王はその身を優しく抱き寄せ、神水を与えて彼女を癒やした。ガルムとフレスヴェルグも寄り添い、猫妖精の心に安らぎを与えた。その瞬間、猫妖精を苦しめていた呪いが消え去り、彼女は新たな希望を胸に目覚めた。

獣神の嗚咽の消滅と勝利

地上では獣神の嗚咽の再構成が止まり、不夜国を覆っていた悪夢が完全に消滅した。人々は歓喜に包まれ、屍王の勝利を讃えた。ニーズヘッグとニヴルも屍王の偉業に笑みを交わし、不夜国の平和を祝福した。

カグヤの感謝と新たな展望

カグヤは屍王に感謝を述べ、不夜国を救った彼を「欲しい」と表現した。しかしフルカスは屍王がすでに自分たちのお気に入りであると告げ、不穏な空気を残して会話を締めくくった。外界から差し込む朝日は、悪夢から解放された不夜国の新たな始まりを象徴していた。

エピローグ  かの名を知る者よ

皇帝への報告とヘルヘイムの存在

フォルテム帝国の皇帝オルドルムの玉座の間で、探索者アーテル・ナノアールが報告を行った。グリフィル神聖国領内の異常事態を調査した結果、凍結は魔力的要因によるものと判明した。また、秘境「戦地の檻」でヘルヘイムと遭遇したことを報告した。アーテルは情報の一部を皇帝だけに伝え、屍王がヘルヘイムの主であること、さらに彼の言葉として偽のヘルヘイムの存在が明かされた。

ニーズヘッグの離反と皇帝の反応

アーテルは、かつて帝国を支えた竜、ニーズヘッグが屍王に従い離反したことを告げた。この報告は玉座の間に緊張を走らせたが、皇帝オルドルムは動じることなくその報告を受け止めた。彼は玉座を立ち、アーテルを労い、さらなる探索者の招集を指示した。その後、使用人に二百年物のワイン「オルドミナ・シオー」を持ってくるよう命じた。皇帝は微笑を浮かべながら屍王の帰還を歓迎するかのように天を仰いだ。

老人の怒りと屍王への憎悪

一方、ある場所では老人が屍王の帰還を知り、激しく動揺していた。管を付けた身体は衰弱しきっていたが、かつての屍王、ヒザキへの憎悪をあらわにして怒りを叫んだ。その側には帽子を被った男が冷笑を浮かべ、屍王の存在が現在の世界では悪逆の象徴となっていることを示唆した。老人はその言葉に怒りを募らせ、壁を叩きながら屍王の名を呪った。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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