小説【小市民シリーズ 】「秋期限定栗きんとん事件 上下 」感想・ネタバレ

小説【小市民シリーズ 】「秋期限定栗きんとん事件 上下 」感想・ネタバレ

読んだ本のタイトル

#秋期限定栗きんとん事件 上・ 小市民シリーズ
著者:米澤穂信 氏

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あらすじ・内容

小鳩君に、彼女ができました。「ねえ、ジョーって呼んでいい?」

それでも推理をやめられない小鳩君の小市民的(?)日常

あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。――それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい……疾風怒濤の大人気シリーズ、第3弾。

秋期限定栗きんとん事件 上 小市民シリーズ

わたし、前から思っていたの。恋とはどんなものかしらって。

物語は佳境へ――小鳩君と小山内さんの再会はいつ?

ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど……ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ?

秋期限定栗きんとん事件 下 小市民シリーズ

第一章「おもいがけない秋」: 高校に入ってから図書室の利用が減った小鳩は、読書家の印象を与えたいと考えていた。ある日、夕焼けを眺めながら教室に向かった彼は、発信者不明のメッセージが書かれた紙片により教室に呼び出される。教室に到着すると、長い間同じクラスであったにもかかわらず名前を思い出せない女子生徒が待っていた。彼女は小鳩の正確な到着時間を褒め、突然の交際の申し込みをする。驚く小鳩は彼女の提案を受け入れることに決め、彼女の名前を知る方法を考え始める。

第二章「あたたかな冬」: 瓜野は、つきあい始めた日から小佐内と自然体で接していた。学年が上であることが明らかになった小佐内は、瓜野の新聞部活動を理解し支持する。一週間後、新聞部の編集会議で五日市がコラムの提案を行い、受け入れられる形で新聞に新しいスペースが作られ、瓜野にとっても学外の話題を取り扱う機会が得られる。放課後、小佐内は瓜野の成功を喜び、さらなる努力を促す。

第三章「とまどう春」: 「月報船戸」に掲載された瓜野の記事は、木良市で起きている不審火について述べていた。これらの火災はすべてボヤであり、大火への警戒が必要とされている。小佐内との関係は半年続いており、彼女は瓜野の努力を評価し「嫌いじゃない」と伝える。後日、瓜野は記事の的中に自信を持つが、学内放送で生徒指導室に呼び出され、放火事件に関連して詰問される。堂島部長は新聞部が犯罪者扱いされるなら顧問と話をするべきだと提案する。

第四章「うたがわしい夏」: 夏休み中も開放されている船戸高校では、瓜野が新聞部員を前にして連続放火事件の追跡について説明し、彼らの協力を強調する。五日市が実務的な説明を行い、部員たちには無理をせずに行動するよう指示される。瓜野は自らが放火犯を知っていると宣言し、その夜に犯人を捕らえるか、翌日に訪ねるかの二択を部員に告げる。

第五章「真夏の夜」: 小佐内と瓜野は夜風の中で羽虫を追いながら過去の行動について話し合い、互いの自意識過剰を許し合う関係について語り合う。しかし、その関係が摩擦を生じ、一緒にいられなくなった過去を共有している。一年後、小佐内は以前の考えを見直し、自分たちが完全に無能ではないと認める。二人は互いに重要であることを認め合い、再び一緒にいることを望んでいるが、これは長くは続かないかもしれないと感じている。

第六章「ふたたびの秋」: 連続放火事件の犯人が現行犯逮捕されるというニュースが報じられる。容疑者は未成年の高校生として発表され、事件はその後、大きな注目を集めることなく徐々に忘れ去られていく。二学期の始業式の日、「月報船戸」が配布され、新聞は平穏な内容が多い中で特にコラムが注目される。このコラムでは、連続放火事件についてこれまでの経緯が述べられ、犯人が逮捕された経緯が記されている。

感想

小佐内さんと別れてから小鳩君は、目指していた小市民としての生活から少しずつ離れ、推理する才能を発揮していく。
現在、付き合っている彼女の事を見てるようで全く見ておらず。
さらにその彼女も小鳩君以外にもお付き合いしている男性が複数いたりもしたが、、
元々、彼女に執着してない小鳩君には暖簾に腕押し。
それを突き付けられた小鳩君だったが、彼は小佐内さんの時よりケロッとしていた。
ただ、表情を作っただけ。

むしろ、事件に関わっている小佐内さんの事を気にしていたように感じてしまう。

その小佐内さんと小鳩君は以前は互恵的な関係にありながらも前巻で別れてしまった。

しかし、連続放火事件をきっかけに再び近づくことになる。
事件解決のプロセスで、小鳩君は小佐内さんがいかに自己中心的な行動を取るかを理解し、それに対応しながらも彼女が暴走しないように密かに支えようする。

一方で、今回の主役(道化?)で、新聞部のメンバーであり小佐内さんの現在の彼氏の瓜野君は、独自の調査と情熱を持って放火事件に取り組む。
彼の彼女である小佐内さんの影響を受けつつ、彼自身も放火事件の背後にある真実を暴くために奔走する。
瓜野君のスクープ欲は彼を次第に窮地に追いやり、彼の行動は小佐内さんを放火魔だと思い込み葛藤し、彼女を糾弾するのだが、、

もうヤメテ!瓜野君のライフはもうゼロよ!
小鳩君、早く小佐内さんを引き取って!
君じゃないと彼女は止まらないから!
小佐内ゆき、恐ろしい子!

本書の魅力は、単なる恋愛物語やミステリとして終わらない点にある。
小鳩君と小佐内さん、瓜野君を通じて、青春の複雑さ、理想と現実の間で揺れ動く心情が巧みに描かれている。
彼らの感情の起伏に共感しつつ、事件の謎を解き明かす過程を楽しむことができた。

この物語は、ただの学園ものではなく、成長の痛み、友情、恋愛、個人の欲望が交錯する深いドラマを提供してくれた。

結末には、さまざまな感情が交錯する中で、それぞれのキャラクターが何を選択し、どのように自らを見つめ直すのかが描かれており、思わず考えさせられる作品であった。
調子に乗っていたとはいえ、瓜野君マジで可哀想。
黒歴史だな。

全体として、この小説は青春の甘酸っぱさと、人間関係のもつ複雑さをリアルに描き出しており、読後感が非常に複雑である。
小鳩君と小佐内さんの関係の行方に注目しながら、次巻の展開に期待する。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

第一章  おもいがけない秋

小鳩は、約束の時間まで図書室で本を読んでいた。高校に入ってから図書室に足を運ぶことは減ったが、図書室にいれば読書家に見えると考えていた。小鳩は自身を「小市民」と定義し、他人に無関心を装っていた。

その日、小鳩は夕焼けを目にしながら図書室を出た。ポケットには、彼を教室に呼び出すメッセージが書かれた紙片が入っていた。発信者も目的も不明なこの招待に、小鳩は戸惑いながらも興味を持ち、教室へ向かうことを決めた。彼はクラスメートとすれ違いながらも、互いに存在を認識せず、無関心を保ち続けた。

教室への招待の意図は不明であり、小鳩はこの状況をどう解釈すればよいのか模索していた。学校で何か問題に巻き込まれるわけではないと考え、彼は招待を受け入れることにした。夕焼けが落ち着く中、彼は一人で約束の場所へと歩を進めた。

小鳩が図書室で過ごした後、夕焼けの中を歩きながら教室へ向かった。彼が教室に到着すると、そこにはクラスメートの女子生徒が待っていた。彼女は外の風を感じながら窓辺に立ち、小鳩の正確な到着時間を褒めた。この女子生徒は彼と何年も同じクラスであったが、名前は思い出せなかった。

会話が進む中、小鳩は彼女が何を聞きたかったのか尋ねた。意外にも、彼女は小鳩が別れたことを知っており、それについて確認したかった。その後、彼女は突然小鳩に交際を申し込んだ。彼は驚きつつも、彼女の提案を受け入れることに決めた。しかし、彼は彼女の名前を知らなかったため、どうやって名前を知るかを考え始めた。

図書室で本を返し、別の本を借りようとした瓜野は、意図せず知り合いの女子生徒、小佐内と対面する。彼女は以前、堂島部長に耳打ちをしていたが、瓜野は彼女のことをほとんど知らない。彼が偶然彼女の向かいに座ることになり、不意に会話が始まる。小佐内は瓜野の顔を見て気がつかないふりをするが、彼が自分を見ていたことを話すと、小佐内は興味を持ち始める。瓜野は勇気を出して話し続け、小佐内もそれに応じる。最終的には、彼女がカフェで話を続けることを提案し、二人は一緒に出かけることになる。

第二章  あたたかな冬

小佐内は、つきあい始めた日から瓜野に対して自然体で接していた。ある日、瓜野は小佐内と同じクラスであることを知り、驚いた。小佐内は実は瓜野より学年が上であることも明らかになった。瓜野は学内新聞をより良くしたいと考えていたが、周囲からの支持を得られずにいた。そのことを小佐内と話し、彼女は瓜野の努力を理解し、支持を表明した。瓜野は彼女の支持に感謝し、励まされたと感じた。

一週間後、新聞部の編集会議が行われた。瓜野はこれまで提案していた学外記事について、積極的な返答を得られていなかったが、会議で五日市がコラムの提案を行い、それが受け入れられる形で新聞に新しいスペースが作られることになった。これにより、瓜野にとっても学外の話題を取り扱う機会が得られた。その日の放課後、小佐内は瓜野の成功を喜び、さらなる努力を促した。瓜野はこの新たなチャンスを活かすために、何か鮮度のある話題を見つける必要があると感じている。

仲丸十希子は外見からは想像できないほど気立てが良い人である。高校生活は彼女と過ごす幸せな日々で、二人で学校中を巡った文化祭やクリスマス、初詣など季節のイベントを一緒に楽しんでいた。冬休みの終わりには、ショッピングモールでの初売りに出かけたが、そこでの待ち合わせで仲丸さんは適切な装いで待っていた。その後、バスで移動中には、満員のバス内で密着する状況が生まれ、二人はそんな中でも幸せを感じていた。しかし、そこでは予期せぬ混雑と冷たい寒さが待ち受けており、その中で二人は互いに寄り添いながら次のバス停を目指すのであった。

夜中、サイレンの音を聞き、火事を確認した。火事の光景にぼんやりと見入りながら、暗闇と距離感に戸惑った。新年が明け、二月に入り、寒空の中、散歩に出かけた。河川敷での火事の調査をしている制服姿の人々を目撃し、野次馬の中に加わった。その日、健吾と連絡を取り、以前の火事現場で燃えた車の写真を確認した。寒さに耐えかねて、散歩を早めに切り上げる決断をした。

第三章  とまどう春

二月一日に発行された「月報船戸」にて、瓜野高彦が木良市で起きている不審火について記述した。昨年の秋から、市内で葉前、西森、小指で火災が発生し、その後も茜辺で火災が起こっている。これらはすべてボヤであったが、大火への警戒が必要であると述べている。瓜野は次に火災が発生しそうな地域として津野や木挽を指摘し、その予測は的中した。二月九日に津野町で自動車が焼ける事件が起き、木良署が不審火の可能性を調べている。瓜野は自らの予測が現実となったことに誇りを感じており、それを小佐内に示したが、小佐内の反応は予想外に冷静で、一度の的中だけでは十分ではないと述べた。

一ヶ月後、瓜野は小佐内と会う約束を取り付けた。半年間交際しているが、休日に会うことは少ない。約束した場所で待っていた小佐内は、文庫本を読んでいた。その日、小佐内は「タリオ」というカフェでクレームブリュレを注文し、瓜野はコーヒーを選んだ。瓜野は「月報船戸」と新聞の地域面を小佐内に見せたが、彼女はそれほど興味を示さず、クレームブリュレに夢中だった。最終的に、小佐内は瓜野の努力を認め、「嫌いじゃない」と言った。

後日、船戸高校で、瓜野が書いた記事が注目を集め、里村から特に関心が寄せられた。瓜野は記事の的中に自信を持っていた。しかし、校内放送で突然、生徒指導室に呼び出された。生徒指導の教師と堂島部長がいた部屋で、瓜野は記事が放火事件にどう関連しているか詰問された。教師は瓜野たちを非難し、放火犯ではないかと疑ったが、堂島部長は冷静に対応し、新聞部が犯罪者扱いされるなら顧問と話をするべきだと提案した。最終的に、部長は記事に根拠を持たせるよう指示し、次号で放火現場を当てる過程を詳しく書くよう瓜野に命じた。

瓜野は堂島部長から「タネ明かし」すなわち次の放火現場を予想できる理由を明かすよう指示されていた。これについて氷谷と相談すると、氷谷は瓜野が引き続き放火のネタを小出しにしていけたのに惜しいと感じた。瓜野は臨時編集会議で新入生歓迎号の四分の一ページを割り当てられ、これをもって放火事件追跡に終止符を打つ予定であることを知る。新聞部の印刷準備室での新聞需要の増加や氷谷の分析により、瓜野は自分の状況を再評価し、堂島部長の対応に敬意を表するが、生徒指導部の指示には従うしかないと感じた。そして、これまでの放火事件のパターンを考えると、犯人は意図的に犯行をエスカレートさせていると気づく。しかし、この話を公にすることで、『月報船戸』のアドバンテージを失うことを懸念していた。氷谷は、今後の展開について瓜野に複数の記事の準備を助言し、これに対して瓜野はその可能性を疑問視していた。最終的には、名探偵としてではなく、新聞記者としての役割を再確認し、休憩時間を有効に使うことに集中する。

春休み、瓜野は小佐内と休日に街に出かけた。小佐内は結構裕福かもしれないと推測されるが、彼の家族のことは知られていない。この日の映画はラブストーリーだという触れ込みだったが、実際は詐欺的な広告文句であり、中盤から物語は女優の保険金詐欺にまつわる暗い展開へと変わった。映画が終わると、館内は後味の悪さを共有するカップルで満たされた。小佐内は映画について「楽しかった」と感じたようだが、瓜野は小佐内の真意を読み解くことができず、彼に対して遠慮しすぎているかもしれないと感じた。

その後、二人は「桜庵」という和風の喫茶店に入り、小佐内はアイスクリームを頼んだ。小佐内は食事中に話すことが多く、特に菓子については熱心に語る。彼女が甘いものが好きな理由について、瓜野が尋ねたとき、小佐内は「何も殺さずに食べられるから」と答え、その後「甘いから、好きなの」と簡潔に言った。この会話から、瓜野は小佐内との関係に疑問を感じ、もっと積極的に行動すべきか考え始める。

小佐内は突然、用事があると言って店を出て行き、新聞の一部を瓜野に残した。それは教職員の異動一覧で、生徒指導部の教師が異動になっていた。これが氷谷の言う「大逆転」であり、主人公はその事実に気づき、深い感慨に浸る。

春休みに入って数日が経ち、主 こは仲丸と多くのデートを重ねている。この日も、仲丸の希望で色彩豊かな版画展を見に行くことになった。自転車で駅前に向かい、仲丸と合流した後、二人は展覧会が開かれているビルの最上階に向かった。版画展自体に特に感動することはなく、主人公は展示を眺めつつ、サケの発音の違いについて考えていた。

展覧会の後、二人はどこかに入ろうと話し合い、仲丸は和風の落ち着ける店「桜庵」を提案したが、主人公が「ベリーベリー」が近いことを言うと、仲丸は少し不満そうな反応を示した。これには、主人公が過去の恋人との思い出が関連する場所を知っていることが関係していると仲丸は指摘した。散歩を続けながら、仲丸は過去に教室で主人公を呼び出した際のことを話題に出し、主人公がその時自分のことをどれほど知っていたかを尋ねた。主人公は仲丸の名前すら知らなかったことを認めたが、現在は彼女のことをよく理解していると応えた。

その後の散歩中に、仲丸は自分の兄が大学で遭遇した事件について話し始めた。兄のアパートの窓ガラスが割れ、部屋が荒れていたことから泥棒に入られたと思い込んだが、実際には何も盗まれていなかった。これについて、仲丸は窓のカーテンが開いていたことから誰かが部屋に入ったと確信していた。散歩が進むにつれ、仲丸はさらに家族や個人的な希望についても語った。最終的に、仲丸の兄はアパートの管理者から事情を聞かされ、窓を割った犯人と対面することになり、その人物は「部屋に住んでいる人ですか」と尋ねるところで物語は終了した。

船戸高校の新聞部が取り組んでいる連続放火事件について、新入生に向けた解説記事が掲載された。過去の放火事例を概観し、予測に成功した部分やまだ捉えられていない犯人に関する推理が述べられている。この記事は、部員が自らの手で配布し、部の実力を示すものとされた。しかし、年度が変わると共に編集方針についての内部対立が生じ、主要人物である瓜野は部の方針に反し、記事を差し替えた。これにより、部内では意見の衝突が激化し、編集会議での決定事項を巡って論争が展開された。編集方針の是非だけでなく、個々の部員の責任と役割が問われ、部内のダイナミクスと個々の立場が緊迫した形で描かれている。最終的には、瓜野が部長として指導力を発揮する場面が設定され、部の未来と継続的な問題に向けた新たなスタートが切られる。

ポケットの中で携帯電話が震える。アラームが作動したため、彼は大きな溜め息をつきながらシャープペンを机に置いた。図書館の学習室での受験勉強は誰にも褒められることではないが、許可されているため彼はそこで勉強している。多くの生徒が早くも受験勉強に取り組んでおり、彼も試験問題を解いていたが、完璧ではなく特に現代文で得点に波がある。

小鳩は時折現代文の問題で、設定された答えに固執せず、自分の解釈を加えてしまい間違えることがある。これが彼の悪癖であり、受験までに解決するかどうかは不明だ。勉強に疲れた彼は、図書館を早めに出て、自動販売機でコーヒーを買いベンチで一息つく。

その際、過去のいたずら書きや堂島健吾との関わりを思い出し、健吾に電話をかけるが出ない。しかし、図書館の外で健吾に遭遇し、小鳩と話をすることになる。健吾は新聞部の元部長であり、小佐内ゆきとの新聞部の問題について話が及ぶ。小佐内が新聞部に介入し、特定の記事を書かせようとした疑惑が浮かぶが、詳細は明らかにされない。健吾は小佐内が関与していたかもしれないと指摘し、他の部員との関連性を探る必要があると考える。

この話は新聞部内の権力争いや個々の動機に焦点を当てており、彼はこれが受験勉強に影響を与えるのを避けたいと思っている。小鳩は健吾にさらなる情報を求めるが、最終的には具体的な答えは得られないまま終わる。

月曜日に健吾のクラスである三年E組を訪れた小鳩は、休み時間に健吾から紹介された吉口と会話を交わした。彼女は情報通として知られていたが、彼女自身にその自覚はないようだった。小鳩は以前、彼女のバッグを見つけたことがあり、その縁で知り合いとして認識されていた。小鳩は小佐内ゆきとその元パートナーである瓜野について吉口に尋ねた。吉口は二人が交際しており、一緒に下校する姿を見たと語った。

小鳩の質問に対して、吉口は彼が未練を持っていると冗談めかして言い、これが他の生徒に伝わるのではないかと彼は懸念した。しかし、健吾が介入し、彼の質問は新聞部の問題に関連していると説明した。小鳩は健吾の説明に感謝しながらも、吉口が信じていない様子を察した。

その後、吉口は仲丸という人物が関連しているかもしれないと指摘したが、小鳩には仲丸のことがすぐには思い出せなかった。さらに、彼女が複数の恋人を持っているという情報を吉口から聞かされたが、これは小鳩にとっては不要な情報であった。休み時間が終わると、彼は健吾に今後の情報操作で問題が解決するだろうと述べた。

第四章  うたがわしい夏

瓜野高彦が連続放火事件の追跡について書いた記事が『月報船戸』で反響を呼び、読者が増加した。新聞部はこの事件を模倣犯防止の理由から秘密にしているが、真の理由は内部にのみ明かされている。瓜野は新入部員を前にして新聞部が大きな転換点にあることを説明し、彼らの協力が必要だと強調した。そして、彼は全員に集めたデータが入ったファイルを配布し、これが捜査の基盤となることを示した。

その後、瓜野と新入部員は五月九日に放火犯を捕らえるために張り込みを行ったが、結局は目立った成果は得られず、深夜のパトカーのパトロールによって犯人逮捕のチャンスを逃した。放火現場には、多くの証拠が残されていたものの、新聞部はそれを活用する前に撤退せざるを得なかった。そして、瓜野は小佐内からの心配の電話を受けるが、その会話も中断された。

話題は決まっていたが、話す場所が問題であった。結局、健吾の教室、三年E組を借りることになった。約束の時間に、健吾は新聞部員の二年生、五日市を連れてきた。五日市は不安そうに質問を繰り返していたが、健吾は詳細を知らないと答えていた。話は放火事件に関連しており、五日市は、新部長の瓜野が関与しているという。瓜野は自らが逮捕に近づくと信じていたが、失敗していた。五日市は、瓜野が警察に知られぬよう自分たちを巻き込む行動に批判的であった。健吾は五日市に協力を求め、五日市は最終的に協力することを承諾した。

五日市が去った後、健吾は表情を険しくして話を始めた。小鳩は健吾の説得の仕方を褒めたが、健吾は反応せず、五日市の素直さを評価した。健吾は小鳩に不適切な行動を控えるようにと促したが、小鳩はそうした行動はしないと返答し、信頼関係に疑問を感じた。その後、小佐内が過去にどのように情報を操作していたかを振り返り、小佐内との関連性について考えた。

放火事件の調査において、瓜野が重要な情報源であると考えられたため、小鳩は健吾により積極的な調査を依頼した。健吾はその責任を重く感じ、状況に戸惑った。小鳩は市役所と図書館から『防災計画』のコピーを入手し、最新の計画に消防分署の管轄区域が記載されていないことを確認した。これは、特定の情報が限られた人々にしか知られていないことを示唆している。最終的に、健吾は小鳩の提案に同意し、今後の調査でどのように協力するかを計画した。

週末には月に4回から5回、そのうちの3回から4回は仲丸と会う日となっている。この日も駅前での待ち合わせだが、仲丸は予定より20分遅れで到着した。仲丸は春の服装で現れたが、実際にはかなり暑い日だった。小鳩は半袖を選んで正解だと感じた。会話の中で、仲丸はこの日は夜早めに帰らなければならないと告げた。夜の予定があるため、門限が早まったとのこと。それに、仲丸が受験を控えていて、勉強に集中したいとの理由もあった。

デート中、二人はランチの場所を選ぶために歩いたが、多くの店が閉まっている時間帯だった。結局、ファミリーレストランで食事をすることになった。仲丸は冷製パスタを食べたがったが、気温が高かったために、結局熱いクリームパスタを選んだ。これは、トマトが苦手だと思った小鳩が、仲丸のためにトマトを避けたからである。しかし、実際は仲丸はトマトが苦手ではなく、単にメニューの写真が美味しそうだったからという理由だった。

デートの終わりに、仲丸は小鳩に彼女が何を好きで付き合っているのか尋ねた。小鳩は、その質問に対する回答を避け、相手と一緒にいる理由を言葉で説明することの難しさを指摘した。デートは穏やかに終わり、二人はコーヒーを飲みながら過ごした。

五月十日に木良市上ノ町で放置されていた自転車が焼ける事件が発生し、不審火の可能性があるとして調査されている。同市では今年に入り、複数の不審火が報告されており、市民は不安を感じている。五月十七日には三宮寺町で地元住民が参加する防災訓練が行われ、初期消火方法などが学ばれた。これには木良消防署が協力しており、地域住民の間での防火意識の高まりが見られる。同じく、新聞部員たちは市内で発生している連続放火事件に注目し、報道活動を続けている。事件の背後には犯人と思われる「ファイヤーマン」の存在があるとみられ、彼の逮捕を願う声が強い。北浦町では、総合運動場や木良城址公園など、重要施設が多く、新聞部員たちはこの地域が次の標的になる可能性が高いと考えている。

六月十三日、台風により木良市は強風域に巻き込まれ、大雨洪水警報が発令された。新聞部員は、晴天時に限り張り込みを行うこととしており、この日は部員たちが早々に帰宅した。部室には、意外にも小佐内がいた。彼女は新聞部員ではないが、職員室で部室の鍵を借り入室していた。二人は部室で会話を交わし、小佐内は「月報船戸」に掲載された記事について意見を述べた。その後、二人は帰宅の準備をする中で、小佐内は以前の会話を引き合いに出し、瓜野の張り込み計画についての詳細を尋ねたが、台風のため実行不可能となった。最後に、小佐内は文庫本を部室に忘れて帰るが、それを手にした瓜野は、小佐内がその本を購入した日時が印字されたレシートを発見し、何かを悟った様子であった。

健吾からのメールにより、小鳩は今日が連続放火事件が予想される日であることを知る。学校で健吾に会い、新聞部の作戦会議の報告を待つことになる。二人は犯罪の進行状況や警察の対応について話し合い、小鳩は特にケーキを楽しみにしているが、話には乗り気ではない様子である。最終的に、五日市からの連絡を待っている間に、小鳩は自分の行動が重要でないと感じ、帰宅を決意する。その際、小鳩の携帯に仲丸からのメールが届き、教室に来るように求められる。

教室で小鳩は仲丸と再会する。仲丸は以前と同じ構図で窓辺に立っており、やや強ばった笑顔をしていた。二人だけの空間で、仲丸は過去の出来事や二人の関係について話し始める。その会話からは、仲丸が小鳩に対して抱いていた期待と、それが満たされなかったことへの失望が明らかになる。仲丸は小鳩が過去に示した反応のなさに対し、感情を抑えながら話を進め、最終的に二人の関係の終わりを告げる。その後、小鳩は健吾からのメッセージを受け取り、新聞部の計画について知らされる。一連の出来事を経て、小鳩はその夜、賽の河原で石を積む夢を見るが、それは自己反省や無意味な努力の象徴として描かれている。

第五章  真夏の夜

船戸高校は夏休み中も主に部活動のために開放されているが、校舎には冷房がないため、訪れる生徒は少ない。特に、八月八日には新聞部の十四人全員が校舎に集められた。この日、新聞部は過去の失敗を振り返り、放火犯を捕まえるための決戦の準備を行った。部員たちは、過去二回の放火現場発見時に犯人を逃がしており、今回こそは終わりにしようと決意を新たにしていた。

五日市が実務的な説明を行い、部員たちには無理をせず、必要ならば犯人の写真を撮るだけでよいと指示された。また、警察のパトロールが強化されているため、部員たちは慎重に行動するように求められた。

部長の瓜野は自らはあまり前に出ず、五日市に多くの指示を任せていた。瓜野は新聞部の活動について深く考え込む時間が多く、特にこの日は部員たちに具体的な指示を出す前に、自身の過去の決断や行動について疑問を感じつつも、新聞部の勝利を信じる決意を新たにしていた。

最終的に瓜野は、放火犯が誰であるかを知っていると宣言し、その夜に犯人を捕らえるか、翌日に訪ねるかの二択を部員に告げた。彼はその場を去り、彼らに勝利を約束した。

気分のよくない夜、ある小鳩は以前からの複雑な感情を抱えながら、深夜の張り込みを経験している。天気予報では熱帯夜が確実とされており、小鳩は放火犯が出現するかどうか気にしていた。その中で小鳩は健吾と電話で連絡を取り合い、お互いの位置を確認していた。彼はCDショップの駐車場で、健吾は針見町にいる。

その夜は船戸高校新聞部とその支援者が大勢投入される予定で、彼らが活動している中で健吾が目撃されることを防ぐために彼は隠れていた。二人は過去の放火事件が深夜に起こっていたため、まだ時間が早いと考えていたが、健吾は何か不備があるかを尋ねた。

二人はその後、自身たちも高校三年生であり、受験勉強を始めなければならない現実を話し合う。健吾は小鳩との関係を振り返り、新聞部での経験が思い出深いものであったことを認める。それにもかかわらず、健吾は小鳩の行動を嫌っており、その感情を正直に伝えていた。

この会話は二人の関係の複雑さを示しており、彼らの未来についての不確実性を感じさせる。健吾の電話は、今夜が彼らがともに行動する最後の夜であるかもしれないという予感に満ちていた。

突然逃げ出した小佐内の足は速く、彼女が公園に逃げ込んだことが目撃された。その夜、消防車が到着し、騒がしさが増していた。小佐内が着ていた深い紺色の服は夜に溶け込んで見づらかったが、彼女が公園に入ったのは確かである。瓜野は小佐内を呼び出そうと試み、彼女が現れた際には、互いに対峙した。小佐内は火事に遭遇したことは偶然だと主張し、家から遠く離れたこの場所にいる理由を説明したが、瓜野はその説明を信じなかった。瓜野は以前から小佐内を疑っており、彼女が連続放火事件に関与していると確信していた。証拠として、小佐内が購入したとされる文庫本のレシートが挙げられ、瓜野は彼女が事件に関与していると断定した。

消火作業は遠くでまだ続いており、野次馬らしい人影が行き来していたが、公園で対峙している二人には気付く者はいなかった。連続放火事件の犯人である小佐内を追っていた彼 瓜野は、彼女を捕らえたというのに勝利感は感じられず、代わりに溜め息が漏れた。小佐内はハンマーを捨て、チョコレートを食べ始める。彼女は犯罪が暴かれても落ち着いているように見えた。彼女は彼に、自分は火事の現場にいただけで放火魔を追っていたと説明し、瓜野に対する誤解を解く試みを続けた。彼女は彼が犯人を自力で捕まえようとするのに反対し、忠告していたことを説明した。最終的には、小佐内が彼を助けていたことを認め、彼が彼女をガッカリさせてしまったことを告げた。二人の間の対話は終わりを告げ、彼は重たい足取りで公園を後にした。

ある夜、小鳩は小佐内と瓜野が会話をしている現場に居合わせたが、自身は二人が気づかないように木の陰に隠れていた。瓜野が去った後、小佐内は何も知らないと言いながら、小鳩に犯人が誰であったかを訊いた。小鳩は、瓜野が進めていた「防災計画」と放火犯との関連について疑問を持ちつつも、最終的には、新聞部内の情報を基に犯人を特定することに成功した。彼は五日市の協力を得て、瓜野が知らない間に「月報船戸」の特定のクラスに異なる内容の新聞を配布し、それによって放火犯のクラスを特定した。最終的に、犯人は針見町の第一児童公園での待ち伏せによって確保された。犯人の名前は氷谷優人であり、この事件は小鳩の計画によって解決された。

小鳩と小佐内は、夜風の中で羽虫を追っていたが、結局仕留めることができなかった。小佐内は小鳩の放火魔の捕獲について触れ、その手腕を称賛するが、小鳩は自身の行動が単なる楽しみから出たものだと認める。また、小佐内が放火魔についての新聞部の作戦を知っており、それを裏から支えていたことが示唆される。小佐内は自らが放火魔の対策として活動していたことを話し、小鳩はそれに疑いを持つ。さらに、二人は個人的な関係についても言及し、それぞれが恋愛関係に疑問を感じている様子が描かれていた。小鳩は、恋愛関係において自分が理解されていないことに苦悩していると語り、小佐内も同様の感情を抱いていることを示す。

小鳩と小佐内は、過去に自分たちが小市民として行動した理由を振り返りながら、それぞれの自意識過剰を許し合う関係について話していた。しかし、その関係が摩擦を生じ、一緒にいられなくなった過去を共有している。一年後、小佐内は以前の考えを見直し、自分たちが完全に無能ではないと認める。二人は互いに重要であることを認め合い、再び一緒にいることを望んでいるが、これは長くは続かないかもしれないとも感じている。夜が更けるにつれて、小鳩は次の行動を考えているが、小佐内との再会が彼にとって意味深いものであることを感じている。

第六章  ふたたびの秋

八月八日(金)。連続放火事件の犯人が現行犯逮捕され、そのニュースはテレビでも報じられた。容疑者は未成年のため「市内の高校生」と発表された。事件を解決に導いた勇敢な少年は名乗らずに姿を消したとされ、「彼も高校生だったと思います」と通行人が警察に証言している。事件はその後、大きな注目を集めることなく、徐々に忘れ去られていった。そして夏休みが終わり、季節は秋へと移り変わる。

二学期の始業式の日、しばらく配られていなかった学内新聞「月報船戸」が配布された。新聞は平穏な内容が多く、特にコラムが注目されていた。このコラムでは、連続放火事件についてこれまでの経緯が述べられており、犯人が逮捕された経緯が記されていた。犯人は動機について「ムシャクシャしてやった」と述べており、それが友人たちの注目を集めるのが面白かったと話しているという。この発言には、ある程度の自省も含まれていると筆者は述べている。

その日の放課後、小鳩は新聞を読み終え、学校の廊下を歩いていたところ、ある生徒と目が合った。その生徒は過去の事件の情報収集に役立ったとされるが、表面上はただの生徒として知られている。小鳩はその生徒の噂収集能力を評価しつつ、校内での役割について考えていた。

その後、小鳩はある小佐内と会う約束をしており、学校の昇降口で待ち合わせていた。二人はお互いに重要な存在であると感じており。この日は特に、秋限定の和菓子を楽しむためにカフェへ行くことになっていた。二人がカフェで過ごす時間は、お互いの関係を深め、楽しい会話を交わす貴重な時間となった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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