小説【小市民シリーズ】「夏期限定トロピカルパフェ事件 」感想・ネタバレ

小説【小市民シリーズ】「夏期限定トロピカルパフェ事件 」感想・ネタバレ

読んだ本のタイトル

夏期限定トロピカルパフェ事件 小市民シリーズ
著者:米澤穂信 氏

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あらすじ・内容

緊張の夏、小市民の夏。波乱と驚愕の夏休み!

小市民を目指す小鳩君の、苦悩と甘いものと推理の日々

小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。さかしらに探偵役を務めるなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を! 恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある小鳩君と小佐内さんは、今日も二人で清く慎ましい小市民を目指す。そんな彼らの、この夏の運命を左右するのは〈小佐内スイーツセレクション・夏〉!? 大好評『春期限定いちごタルト事件』に続く待望のシリーズ第2弾!

夏期限定トロピカルパフェ事件 小市民シリーズ

序章:まるで綿菓子のよう

小鳩常悟朗は禁止されている夜祭に参加し、ルールを破ることに小市民的な意味を見出している。夜祭での心引かれるものはないが、彼はその雰囲気を楽しむために参加する。そこで小佐内ゆきと出会い、彼女が狐の面をつけているのは特定の人物との接触を避けるためである。二人は一緒に歩きながら、小佐内ゆきは綿菓子を食べたいと望むが、小鳩くんは実用的な視点からコメントする。最終的に、小鳩くんは家に帰る決意をし、小佐内さんは夏休みの楽しみについて話し合う。

第一章:シャルロットだけはぼくのもの

小佐内さんが小鳩くんの家を訪れる。彼女はスイーツ店の地図を持参し、それが「この夏の運命を左右する」計画であると説明する。翌日、小佐内さんは急用で家を離れ、小鳩くんにマンゴープリンとシャルロットの購入を依頼する。小鳩くんはシャルロットが不足しているため、必要な数量を確保できず、小佐内さんの家に直接向かう。二人はケーキを食べながら、小鳩くんは小佐内さんが電話に夢中になる間にシャルロットをこっそりと食べ、後にその痕跡を隠す試みをするが、結局は小佐内さんに見抜かれてしまう。

第二章:シェイク・ハーフ

夏休み中、小鳩くんと小佐内さんは頻繁に会い、甘いものを共にする。しかし、小鳩くんは小佐内さんの行動に疑念を抱き始める。ある日、小佐内さんは「ベリーベリー三夜通り店」でフローズンすいかヨーグルトを食べることを提案する。その場で偶然、健吾と再会し、彼から謎のメモ「半」を受け取る。小佐内さんが現れ、二人はメモの意味を探るが、解明には至らず、そのまま喫茶店「チャコ」へと向かい、小鳩くんは謎を解くことに成功する。

第三章:激辛大盛

小鳩くんは家でリラックスしている最中に健吾からの電話を受け、ラーメンを食べに「金竜」へと出かける。健吾は川俣さなえという女性を救出しようとして失敗し、その経験について小鳩くんに語る。二人は重苦しい話題を共有しながら、それぞれの心情を明かす。

第四章:おいで、キャンディーをあげる

小鳩くんは「三夜通りまつり」に小佐内さんと参加する予定を立てる。彼女はりんごあめを楽しみにしており、その熱意に押されて小鳩くんは彼女の計画に同意する。しかし、約束の日に小佐内さんは誘拐され、小鳩くんは彼女の救出のために奔走することになる。最終的に小佐内さんは無事保護され、犯人は逮捕される。

終章:スイート・メモリー

事件解決後、小鳩くんと小佐内さんは「セシリア」でトロピカルパフェを楽しむ。小鳩くんはこの夏の出来事を振り返り、小佐内さんとの間の疑問や不安を打ち明けるが、彼女はそれについてあまり詳しく話さない。最終的に、小鳩くんは小佐内さんの行動の全容を理解しようとするが、完全な理解には至らず、それでも彼女の安全を最優先に考えることを決心する。

感想

本作『夏期限定トロピカルパフェ事件』は、平穏を愛する高校生、小鳩くんと小佐内さんの甘く、そして少し苦い夏の物語である。
二人は普段から「小市民」を目指しており、夏休みを通じて様々なスイーツを巡る「小佐内スイーツセレクション・夏」を楽しんでいた。
しかし、その裏で小佐内さんはより大きな計画を進めており、小鳩くんは知らず知らずのうちにその計画の一部となってしまう。

物語は、小佐内さんの計画が一つ一つ明らかになる中で、小鳩くんが彼女の真意を理解しようと奮闘する様子を描いていた。
特に小佐内さんの誘拐事件は、彼女自身が計画者であるという衝撃の事実が明らかになった時、彼女の新たな一面を見せることになった。
これは2巻目にしてとっても大きな転換点であった。
いや、これぞ小佐内ゆきの真骨頂なのか?

緊張感あふれる夏の日々の中で、小鳩くんは小佐内さんの「誘拐」事件を解決するために奔走し、事件の背後に隠された真実に迫る。
最終的に小鳩くんは、小佐内さんが自身の誘拐を自ら演出し、特定の人物を罠にはめるために利用していたことを突き止め。
この驚愕の事実が明らかになると、彼は小佐内さんとの関係を見直し、二人の間にあった信頼と依存の糸が切れてしまった。
まぁ、そりゃね・・・

終章では、小佐内さんと小鳩くんが向き合うシーンは非常に緊張感が高く、二人の関係の変遷を象徴していた。
物語の終わりに彼らがどのように前を向いていくのか、その心の変化が印象的だった。
小佐内さんの計画によって多くの人が巻き込まれたが、最後には彼女が真意を語り、二人は前を向いて歩き出す。

総じて、この本は夏の冒険という軽やかなテーマの中に、人間関係の深い洞察と複雑な心理が織り交ぜられており、推理小説としても、人間ドラマとしても楽しめる作品であった。
甘く、時に切ない夏の記憶として心に残る作品だった。
小鳩くん強く生きろ!

最後までお読み頂きありがとうございます。

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

序章  まるで綿菓子のよう

小鳩常悟朗が縁日に出かけている。
彼は学業に専念すべき時期にも関わらず、
禁止されているにもかかわらず夜祭に参加することを選ぶ。小市民としての道を追求し、ルールを破ることに小市民的な意味を見出している。夜祭では心を引くものがなく、安いものにも興味を示さないが、その空気を楽しむために参加している。また、小鳩くんは夜祭で知り合いを何人か見かけるが、ほとんどの人とは表面的な挨拶だけ交わす。学校外での人間関係について、彼と彼の知人たちは学校内外で異なる態度を取る。

夜祭で、小鳩くんは堂島健吾とは異なり、小佐内ゆきと出会う。小佐内ゆきは狐の面をつけ、浴衣を着ており、彼女の目的は特定の人物との接触を避けることである。小佐内ゆきは小鳩くんに親しく話しかけ、一緒に歩くことを提案する。夜祭の最後に、小佐内ゆきは綿菓子を食べたいと強く望むが、小鳩くんはそれに対して実用的な視点からコメントする。

小鳩くんと小佐内さんは、夜祭で一緒に歩いていた。小佐内さんは狐の面と大きな白い綿菓子で顔を隠しながら、小鳩くんの横で歩いていた。小佐内さんは綿菓子に時折かぶりつき、楽しそうにしている様子が描かれている。
小佐内さんは浴衣を着ており、下駄を履いていたため、自転車で来ていないことが暗示されている。小佐内さんが顔を隠す理由は、顔を見られたくないが見たいという心理があるためである。また、二人は「小市民」を目指していることから、物語に自意識過剰な雰囲気が漂う。夜が更けると、小鳩くんは家に帰ることを決める。夜祭の終わりに、小佐内さんは夏休みの楽しみについて話し、小鳩くんもそれに笑顔で応じる。

第一章  シャルロットだけはぼくのもの

小鳩くんは、自宅で小佐内さんと二人きりになる。外の暑さとは裏腹に、部屋の中ではクーラーが涼しい風を送っているはずだが、小鳩くんは異常な熱気を感じていた。この状況で彼は、通常考えないような行動に出ることを決意する。彼が感じている緊張と興奮は、一部はこの異常な暑さによるものと彼は考えている。小佐内さんは、外から帰ってきた小鳩くんに気遣い、冷たい麦茶を提供してくれたが、彼女は小鳩くんの裏切りを想像すらしていなかった。小鳩くんは彼女の信頼を裏切ることに罪悪感を感じつつも、行動に移す決意を固めている。

高校二年生の夏休み初日、小佐内さんは小鳩くんの家に自転車で訪れた。小佐内さんは、夏の間に訪れるべきスイーツ店の地図を持参し、それが彼女の「この夏の運命を左右する」計画であると小鳩くんに説明した。この計画は、「小佐内スイーツセレクション・夏」と名付けられており、夏期限定のスイーツを楽しむものだった。小佐内さんは小鳩くんを翌日のスイーツ巡りに誘い、彼は当惑しつつも最終的に承諾する。

翌日、小佐内さんは急用で家を離れられなくなり、小鳩くんにマンゴープリンとシャルロットを購入し、彼女の家まで届けるよう依頼した。小鳩くんは予定された店で購入を試みたが、シャルロットが必要な数量に足りず、3つしか買えなかった。その後、彼はそのまま小佐内さんの家に向かい、直接話すことに決めた。この一連の出来事は、小佐内さんと小鳩くんの互恵関係が休日にも及ぶことを示している。

小佐内さんのマンションに到着した小鳩くんは、彼女から涼しげな白のワンピース姿で迎えられた。彼は暑い中、小佐内さんのためにケーキを買って来ており、彼女はこれに対し謝罪しつつ彼を室内に招いた。小佐内さんの両親は共働きであり、彼女は一人っ子であるため、家には生活感が希薄な印象を与える。小鳩くんは、エアコンがそこまで効いていない室内で麦茶とコーヒーを提供され、リビングでケーキを食べることになった。

その際、小佐内さんが急に電話を受け、彼女が電話に夢中になっている間に、小鳩くんはシャルロットを食べてその味に感動した。このケーキは非常に美味しく、外側はスポンジ生地で内側はクリームチーズ風味のババロアが詰まっており、マーマレードのソースが隠されていた。小佐内さんが電話で忙しくしている間、小鳩くんは食べ進め、空腹もあってか、小佐内さんの分にも手を出そうかという誘惑に駆られた。しかし、彼はそれが不適切であることを自覚し、内心で葛藤していた。

川中島の戦いは、戦国時代に武田信玄と上杉謙信が繰り返した小競り合いであり、歴史的に大きな影響を与えたわけではないが、二人の英雄の対決というロマンティシズムから有名である。この事実を思い返しながら、小鳩くんは小佐内さんにケーキの一部を隠そうと試みていた。彼は、小佐内さんが戻る前にケーキの箱やスプーンなどの証拠を処理し、シャルロットの巻紙を適切に配置することで、隠し事を成功させようとした。しかし、コーヒーの量の不一致に気づき、急いで問題を解決する方法を模索した。最終的に、麦茶をコーヒーに注ぐことで矛盾を解消し、小佐内さんが戻ったときには何事もなかったかのように振る舞った。

小佐内さんは、シャルロットが二つしかないことに気づいたが、特に疑いを持っている様子はなかった。小鳩くんは、シャルロットが人気で売り切れだったと説明した。その後、小佐内さんが一時的に部屋を離れている間、小鳩くんはシャルロットの一部を食べ、痕跡を隠そうとした。戻った小佐内さんは、シャルロットを食べながらその美味しさに没頭しており、何も疑っていないように見えた。しかし、小佐内さんが紙ナプキンを使った際、シャルロットが三つあった可能性に気づく可能性があったため、小鳩くんは細心の注意を払って証拠を隠滅しようとした。最終的に、コーヒーをこぼしてしまい、それを拭くために紙ナプキンを使ったことで、証拠を隠滅することに成功した。小佐内さんはその後も何も疑わず、ケーキに夢中になっていた。

小鳩くんは、小佐内さんと二人だけの環境で知恵試しを楽しむ機会を持ちたいと考え、シャルロットのケーキを隠し持つという策略を巡らせた。しかし、この策略は小佐内さんに見抜かれてしまった。小佐内さんは、小鳩くんが汗を拭くためにハンカチではなく、紙ナプキンを使用したことから、何かを隠していると疑った。その結果、小佐内さんは小鳩くんがシャルロットを隠し持っていたことを確信し、これを認めさせた。最終的に小鳩くんは小佐内さんの洞察力を認め、自分の策略が見抜かれたことを受け入れた。二人は夏休みを一緒に過ごす約束を交わし、その過程でさらなる交流を深めることになった。

第二章  シェイク・ハーフ

小鳩くんは、夏休みに小佐内さんと頻繁に会っており、甘いものを一緒に食べる機会が増えていることに不審を抱き始めている。特に「小佐内スイーツセレクション・夏」という名目でシャルロットを巡る知恵比べに誘われた後、頻繁なデートのような行動に小鳩くんは戸惑いを感じている。今日のメールでは、町外れにある「ベリーベリー三夜通り店」でランキングに入ったフローズンすいかヨーグルトを食べることが提案されており、小佐内さんの行動が一連の謎かけのように感じられる。小鳩くんは、これまでの小佐内さんのイメージとの違いに疑念を深め、何かを企んでいるのではないかと思い至る。

小鳩くんは「ベリーベリー三夜通り店」での待ち合わせまで時間があるため、駅前で時間を過ごすことにする。早く着きすぎたため、小腹が空いている彼は近くのハンバーガーショップで軽く食事をし、その場で昔の知り合いである堂島健吾と再会する。健吾は別の調査に取り組んでおり、短い会話を交わした後、彼はその調査を続けるため急いで店を出る。健吾から「見張りをしてほしい」と頼まれた小鳩くんは、健吾が書き残した謎のメモ「半」を見つめながら何のことだか理解できずに困惑する。

小鳩くんはハンバーガーショップにて、小佐内さんが変装して現れ、再会する。二人の会話から、小佐内さんが小鳩くんの知らない事実を知っていることが明らかになる。また、小佐内さんは飲んでいたシェイクの味に満足していない様子を見せる。一方で、小鳩くんは健吾から受け取った謎のメモ「半」について理解しようとするが、小佐内さんもその意味を理解できない。小鳩くんは健吾に電話を試みるが連絡がつかず、二人はそのメモの意味を解明しようと試みるが、すぐには解決に至らない。

小佐内さんは小鳩くんの解釈を静かに聞いているが、小鳩くんはメモの解読に苦戦している。小鳩くんは健吾が慌てていたからという理由でメモを残したと推測しているが、どうしても「半」から連想されるものが思い浮かばない。小佐内さんはメモを書く理由を簡潔に述べるが、小鳩くんはそれでもメモの意味を把握できないでいる。

小鳩くんはメモの「半」という文字の字形が通常と異なることに気付き、それが何かの図表を示している可能性を考える。しかし、その解釈も確信には至らず、小佐内さんも具体的な解決策を提供できないでいる。最終的に、小鳩くんはメモが伝える情報の重要性に気付きつつも、それを完全に理解するには至らない。小佐内さんは小鳩くんの推理プロセスを静かに見守りつつ、時折助言を投げかけるが、二人ともメモの真意を完全には解明できないまま終わる。

小佐内さんはデニム地のベストに着替え、小鳩くんとともに三夜通りを歩く。繁華街を少し外れた通りには活気がない。二人は健吾が残したメモと「三夜通りまつり」のチラシを重ね合わせ、メモに書かれた地図が三夜通りの続きであることを確認する。チェックマークが付けられた交差点を目指し、そこにある喫茶店「チャコ」を訪れる。店内で、健吾の相棒が待機していることを確認した小鳩くんは、用事を済ませて店を出る。小佐内さんは、小鳩くんが謎を解いたことを認め、今日のフローズンすいかヨーグルトをご馳走すると提案する。

第三章  激辛大盛

小鳩くんは自宅でエアコンの効いたリビングで文庫本に没頭していたが、電話が鳴り邪魔される。電話の相手は堂島健吾で、彼からタンメンを食べに行く誘いを受ける。最初は冗談かと思い、困惑する小鳩だが、健吾の本気を知り、約束の場所である「金竜」というラーメン店へ向かう。店では健吾が異常に高いテンションを見せ、小鳩はその異変に気付く。健吾は、川俣さなえという女性を悪い環境から救い出そうと試みたが、彼女からは邪魔だと言われてしまう。二人はラーメンを食べながら、健吾の心情を語り合い、その重苦しい話題を共有する。最終的に、健吾は小鳩に自分の話を聞いてもらえる適任者だと認める。

第四章  おいで、キャンディーをあげる

小鳩くんは読書を楽しんでいた夜、小佐内さんからの電話を受ける。彼女は『三夜通りまつり』に一緒に行く約束を確認し、彼の予定が空いていることを確かめた後、ひどく安堵した様子を見せる。小佐内さんはこの祭りで「りんごあめ」を特に楽しみにしており、その魅力を熱く語る。彼女の熱意に押され、小鳩くんは彼女の家から一緒に出かけることを約束する。小佐内さんは、これが夏の思い出の集大成になることを望んでいる。

小鳩くんは前日に辛いタンメンを食べた影響で体調が優れず、商店街のイベントへ自転車で向かう。約束の時間には小佐内さんのマンションに到着するが、彼女は留守であった。代わりに、小佐内さんの母が出迎え、家の中で待つように言われる。予定していた商店街のイベントとは異なり、小佐内さんは家でなく買い物に出かけており、その戻りが遅れていることに驚く。小佐内さんの母とリビングで会話を交わす中、突然、小佐内さんの家からの電話が鳴る。通話内容から、小佐内さんが誘拐されたことが判明し、母は非常に動揺する。小佐内さんは市内で待ち伏せされ、脅迫された上で車に拉致され、この間、周囲の人々は何も気付かなかった。

小佐内さんへの連絡は取れず、身代金が要求される。小佐内さんの母は夫と警察に連絡し、娘の誘拐の事実を伝える。小鳩くんは誘拐の現実を受け入れがたく、詐欺ではないかと疑うが、小佐内さんの安全についても心配している。誘拐の非現実感と恐怖が彼を包み込む中、彼は自らの感情に動揺し、知恵試しの材料として見る自分自身に苦悩する。しかし、警察の介入により彼の行動は制限され、彼は小佐内さんの無事をただ祈ることしかできない。その後、小佐内さんからのメールが届き、彼女が無事であることが示されるが、その内容には再び謎が残される。

小鳩くんは小佐内さんからのメールを受け取り、すぐに電話を試みるが、電源が切られていたためにつながらない。そのメールにはりんごあめとカヌレを求める内容が含まれており、小鳩くんはこれが救援要請の隠喩であると気付く。彼は警察への連絡を選ばず、独自に小佐内さんの居場所を突き止めようとする。その過程で、健吾を協力者として招き、二人で小佐内さんが最後に見られた場所を特定する。

解読作業の中で、小佐内さんの指定した菓子の店と関連付けられた場所から、彼女が監禁されている可能性がある南部体育館を発見する。体育館は閉鎖されており、立ち入り禁止の状態で、適切なアジトとなり得ることから、小鳩くんと健吾はそこに向かうことを決意する。

彼らが体育館に到着すると、敷地は閉鎖されており、周囲は警戒を必要とする雰囲気だった。二人は体育館の側面から入る方法を見つけ、小佐内さんの救出に向けて動き出す。この行動は極めて危険であるにも関わらず、小鳩くんは小佐内さんを救出しようという強い決意を持っていた。

体育館の階段を上がりながら、小鳩くんと健吾はロリポップの包み紙を見つけ、それが最近触れられたことに気づく。二人は音を立てずに階段を上がり、少し開いていた鉄扉を押し開けて体育館のキャットウォークに侵入する。暗く陰鬱な雰囲気の中、一階を覗くと人の姿は見えないが、女性の声が聞こえ始める。

小佐内さんの声だと断定できないが、健吾と小鳩くんは声の方向へ進む。彼らが格技室の鉄扉をそっと開けると、内部には五人の女性がいて、そのうち一人が小佐内さんを罵倒している。小佐内さんは椅子に縛られ、制服風の服を着ている。

誘拐グループの身代金要求の額が普通でないことから、小鳩くんは犯人たちの知能や動機について考え込む。犯人たちが重犯罪の重さを理解していないことや、単なる悪ノリかもしれないと推測する。しかし、何があっても誘拐は犯罪であり、小佐内さんが危険にさらされていることに変わりはない。

最終的に小鳩くんは外に出て警察に連絡し、警察が現場に急行する。事件は解決に向かい、誘拐グループの五人が逮捕される。小佐内さんは無事保護され、石和はナイフを持っていたため、特に厳しく取り扱われる。小鳩くんは一時的に警察から疑われるが、小佐内さんの証言と彼の携帯のメールによって疑いが晴れる。

風が強まり、西の方から晴れ間が広がる中、健吾は病院へ連れて行かれた。切り傷があり、警察の前で負傷したため、診断書が必要だったためだ。小鳩くんは健吾に改めて感謝の意を示す必要があると感じている。小佐内さんは警察車両で送られ、家族と再会する予定だ。精神的ダメージを考慮して、警察の本格的な聴取は翌日以降に予定されている。

小佐内さんは電話で家族に無事を伝えた後、小鳩くんにも怪我を心配されるが、小鳩くんは自分の軽傷を軽く扱う。小佐内さんも軽く笑いながら体の痛みを認めるが、その表情は明るく、捕らわれていた時の辛さを感じさせない。

警察官が待つ中、小佐内さんは小鳩くんに深く感謝を表し、その後は自宅に帰ることを話す。その途中でお腹が空いたことを告げ、小鳩くんは小佐内さんが好きなスイーツを買って一緒に帰ることを提案する。小佐内さんはそれを快く受け入れ、次に食べたいスイーツを楽しそうに語る。その間のやり取りは二人の間に温かな空気をもたらすが、それも束の間のことであった。

終章  スイート・メモリー

二日後、小鳩くんと小佐内さんは、「セシリア」というお店で夏期限定のトロピカルパフェを注文した。店内は涼しげで、デザインには曲線が多用され、テーブルは瓢箪形であった。パフェの価格に驚く小鳩くんに、小佐内さんは彼の分を支払うと申し出た。パフェが届くと、そのサイズと豪華さに小鳩くんはさらに驚いた。色とりどりのフルーツやクリームが層を成していた。小佐内さんはパフェを楽しんでいたが、小鳩くんはその量に圧倒されつつも、一生懸命食べ進めた。

会話の中で、小鳩くんはこの夏の出来事について振り返り、特に堂島健吾と川俣さなえに関するトラブルを思い出して話した。一方、小佐内さんはメロンに夢中で、小鳩くんの話を聞いている様子はあまりなかった。彼女は食事を楽しみながら、時折小鳩くんに話を促した。食事が進むにつれ、小鳩くんは小佐内さんとの間にある疑問や不安を打ち明けたが、彼女はそれに対してあまり詳しく話すことはなかった。

最終的に、小鳩くんは小佐内さんの行動や意図についてある程度理解し、彼女の安全と無事が何よりも重要であると感じるに至った。しかし、全ての疑問が解消されたわけではなく、彼女の過去や行動の全容を完全には理解できないままでいた。それでも、彼は小佐内さんが無事であることに心から安堵し、彼女を受け入れようと決心した。

小鳩くんは自分の洞察力について考えるが、実際には非常に鋭い。特に小佐内さんが自らの誘拐を事前に知っていたことについて気付く。これは彼の直感と、小佐内さんがぼくに与えた「小佐内スイーツセレクション・夏」という計画から派生したものである。

その後、小佐内さんとの対話中に、小鳩くんは彼女が誘拐について予め知っていたこと、さらには誘拐実行の日時まで知っていたことを確信する。これには内通者の存在が関与していると推測される。小鳩くんはさらに、この誘拐計画が実際には小佐内さん自身によるものである可能性に気づく。彼はこれが小佐内さんの復讐計画の一環であり、彼女の目的は石和馳美を逮捕させることにあったと結論付ける。

最終的に、小鳩くんの推理が正しいことが明らかになり、小佐内さんが実際に誘拐計画を仕組んだことを認める。しかし、彼女はその全貌を明かすことなく、さらに深い計画があったことをほのめかす。そして、突然川俣さなえが登場し、彼女もまたこの複雑な状況に関与していることが示される。この一連の出来事は、小鳩くんと小佐内さんの関係を新たな段階へと導く。

小鳩くんは、テープレコーダーに録音された声を手掛かりに、小佐内さんと川俣さなえの間にある策略を解明する。小佐内さんは自身が犯罪のターゲットになることを知り、川俣を利用して自分の誘拐を計画する。その目的は、石和馳美たちが逮捕される状況を作り出すことにあった。この計画では、川俣が内通者として機能し、小佐内さんを助けた過去が利用される。

小佐内さんは、川俣が録音した身代金要求のテープを用いて、石和たちが誘拐を企てたと警察に信じさせる。しかし、この計画には石和たちに対する冤罪の可能性が含まれており、小鳩くんはこの点に強い疑問を抱く。彼は、小佐内さんが計画した犯罪が道徳的に許されない行為であると非難する。

最終的に小佐内さんは小鳩くんの指摘を受け入れるが、その表情は過去に見たことのないものであり、疲労と寂しさが見て取れる。この一連の出来事は、小鳩くんが小佐内さんとの関係を再考する契機となる。

小鳩くんと小佐内さんは、互いに嘘をつきながらも互いに依存する関係を築いていた。小佐内さんは、自身が計画した誘拐が、実際には石和たちによるものでなく、自己保護のために自ら演出したものであることを小鳩くんに明かす。小佐内さんの目的は、石和たちによる本物の脅威から自分を守るため、彼らを「誘拐犯」として訴えることにあった。これは、自己防衛のための計画だったと彼女は主張する。

しかし、小鳩くんは小佐内さんの行動を完全に理解し共感することができなかった。二人の間には、お互いを「小市民」として支え合うという当初の約束があったが、その約束は次第に意味を失い、互いに利用する関係に変わっていった。最終的に、小佐内さんはこの依存関係を解消することを提案し、小鳩くんもその提案を受け入れる。二人の関係は、計算された互恵関係でありながらも、その終わりには感情的な対応が見られ、小佐内さんは涙を流す。

小鳩くんは、小佐内さんとの別れを受け入れつつ、彼女との思い出と独りでいることへの対応を試みている。小佐内さんが去った後、小鳩くんは喫茶店でパフェを食べるが、その甘さが以前とは違って感じられ、胸が詰まるほど不快に思えるようになる。この経験は、彼にとって非常に苦痛なものとなり、結果的にパフェが食べられなくなる。一方で、小佐内ゆき誘拐事件の関与者である石和馳美は少年院に送られる。事件に関する詳細は公にされず、小佐内さんの反応も不明のままである。この出来事全体が小鳩くんにとって深い心の傷となり、甘い思い出がトラウマとして彼の心に残る。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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