どんな本?
本書は、ファンタジーとラブコメディを融合させた作品である。
主人公クロスは、最強の女師匠たちの指導のもと、成長と冒険を重ねる。
本巻では、勇者一族の現当主ガルグレイドの登場や、勇者パーティの末裔たちとの新たな出会いが描かれていた。
主要キャラクター
• クロス:主人公。最強の女師匠たちに育てられ、成長を続ける少年。
• リオーネ・バーンエッジ:龍神族の崩壊級万能戦士で、クロスの師匠の一人。
• リュドミラ・ヘィルストーム:ハイエルフの災害級魔導師で、クロスの師匠の一人。
• テロメア・クレイブラッド:最上位吸血族の終末級邪法聖職者で、クロスの師匠の一人。
• エリシア:勇者の末裔で、クロスと仲がいい。
• ガルグレイド:エリシアの父であり、勇者一族の現当主。
• ジオドラ:龍神族の勇者パーティの末裔。
• ギルバート:最上位吸血族の勇者パーティの末裔。
• リリアナ:ハイエルフの勇者パーティの末裔。
物語の特徴
本作は、最強の女師匠たちによる過保護な育成と、主人公クロスの成長を描く点が魅力である。さらに、勇者一族やその末裔たちとの関係性が複雑に絡み合い、物語に深みを与えている。新たなキャラクターの登場により、物語はさらにスケールアップし、読者を引き込む展開が続く。
出版情報
• 出版社:小学館(ガガガ文庫)
• 発売日:2024年12月18日
• ISBN:9784094532241
• 判型:文庫判
• 頁数:440頁
• 価格:957円(税込)
読んだ本のタイトル
僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場 6
著者:赤城大空 氏
イラスト:タジマ粒子 氏
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あらすじ・内容
伝説の血筋、集結!!
テロメアらとS級任務に臨みレベルアップを続けるクロス。
そんななか、エリシアの父であり勇者一族の現当主、ガルグレイドが現れる。
「――娘とは一体どういう関係かね?」
世界最強の男の詰問を、クロスは躱しきれるのか……!?
一方、バスクルビアでは勇者パーティの末裔がいよいよその姿を見せていた。
龍神族のジオドラ。最上位吸血族ギルバート。ハイエルフのリリアナ。
そして、若き次代の英雄らに引き寄せられるように、邪悪な魔神崇拝者も――。
一騎当千の猛者たちが集い、ここに機は熟す。“勇者の伴侶”編、開幕!!
感想
勇者の宿命に挑むエリシアの葛藤と成長
今巻はエリシアがメインヒロインだった。
彼女は勇者一族としての使命に縛られ、厳しい修行と実戦をしながらもスキルの発現に苦しみ、その重圧に耐え続けていた。
特に父親の訪問によってスキルの発現の進捗を聞かれて、出来てないと報告をする場面は、彼女の内面的な葛藤を深く描いており印象的であった。
その会談にクロスが自身の経験を踏まえて提言して、エリシアの父親も同意する展開は感動的であり、後々に彼女が勇者としてのスキルを覚醒させる瞬間は熱い展開であった。
ただ、突然の父親との会談は波乱の予感をさせながらも穏便に済んでいた。
その背景に、クロス自身の”無職”という制約が父親に安牌だと思わせていたとは、、
そのハンデを抱えながら女師匠達の修行を行い。
エリシアとの交流を通じて成長を遂げていった。
二人の関係性は互いを支え合いながら深化しており、物語全体に温かさをもたらしていったが最後の最後でドン底に落とされる。
伴侶選抜戦と無職の逆転劇の期待
物語の終盤では、エリシアに伴侶選抜戦という試練に直面する。
この選抜戦は彼女の自由を奪うものであり、クロスがそれに立ち向かう決意を固める展開は、彼の成長と覚悟を象徴している。
師匠達が荒ぶる事を除けば。
ストーカーのようにクロスを見守る泥棒猫もやらかすかも?
無職ながらもエリシアを救うために挑戦するクロスの姿が大きな期待を抱かせるものである。
エリシア自身もやっとスキルを手に入れて使命を果たせると思ったら、伴侶を選ぶ試合が開催される。
本人には相手を選ぶ権利はなし。
そんな絶望的な状況の中二人の関係がより深まり、選抜戦の厳しさや無職の制約をどのように克服するのか、今後の展開が楽しみであった。
師匠たちの影薄さと勇者の物語の集中
今巻では女師匠たちの登場が控えめであり、エリシアの物語が中心に展開された。
この切り替えは勇者編序盤の方向性を示すものとして興味深いが、リュドミラやリオーネたちの存在感が薄れたことはやや残念である。
それでも、エリシアの苦悩や成長が詳細に描かれた部分には見どころが多く、勇者としての宿命に挑む姿は読者に強く響いた。
今後、クロスが伴侶選抜戦でどのように奮闘し、エリシアを救うのか。
そして師匠たちがどのように関与していくのか、多くの要素が絡み合う展開に期待が膨らむ。
師匠達が伴侶選抜戦に出ればと思ったが、24歳までというルールが引っかかると思うが、、
彼女達が18歳と言えば、、
運営が認めたら、、
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
同著者の作品
【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう
出会ってひと突きで絶頂除霊!
淫魔追放
下ネタという概念が存在しない退屈な世界
その他フィクション
備忘録
プロローグ
剣術道場の日常と背景
朝露に輝く広い中庭では、掛け声が響き渡っていた。エリシアは多くの異母兄姉たちとともに日課である剣術の稽古に励んでいた。勇者の一族は、血筋を絶やさないために多くの子をもうける責務を負っており、エリシアの父も例外ではなかった。稽古の内容は厳しいものではなく、武家貴族の子弟としては一般的な水準であった。エリシアは剣を振りながらも訓練後の食事のことを考える余裕があった。
突然の覚醒と周囲の動揺
その日の稽古中、エリシアの体に突如として変化が訪れた。木製の打ち込み用人形を模造刀で叩きつけた瞬間、攻撃スキルと機動力増強のスキルが発動し、今までにない一撃を放った。これに驚いた教官は、エリシアを急いで神官や商人のもとへ連れて行き、ステータスを確認させた。その結果、エリシアは6歳にして《瞬閃剣士》の職業と勇者のユニークスキルを発現していることが判明した。この報告は屋敷中を騒然とさせ、エリシアの運命が決定づけられる瞬間となった。
過去の夢と現実の重圧
目を覚ましたエリシアは、幼少期の夢を見たことに困惑していた。豪奢な寝室に戻った現実の中で、エリシアは勇者の適性を持つ唯一の存在であり、その力が発現した過去を思い出していた。さらに、父が訪れるという知らせがあったことが夢の理由であると気づいた。未だ発現しない勇者のユニークスキルと、一族に課された責務の重圧を感じながら、エリシアは重い溜息をついた。
第一章 S級クエスト
詠唱訓練と新スキルの習得
冒険者の聖地バスクルビアに戻ったクロスは、師匠リュドミラのもとで詠唱短縮と並行詠唱のスキルを訓練していた。その成果として、彼は中級風魔法「トリプルウィンドランス」を二発同時に放つことができるようになった。この進歩は、先の大事件で習得したスキル《魔装纏撃》をさらに活用するための基盤となった。《魔装纏撃》は剣に魔法を纏わせる強力なスキルであり、クロスの修行の中心となっていた。
師匠たちの衝突と修行方針
リュドミラとテロメアはクロスの修行を主導していたが、リオーネが不満を露わにし、修行の独占をめぐって師匠たちの間で口論が起こった。リュドミラは冷静に魔法系スキルの重要性を説き、修行方針を優先すべきだと主張した。これに対しリオーネも反発したが、結果的に修行はリュドミラとテロメアが引き続き担当することとなった。
緊急依頼の到来
そこにバスクルビア領主であり冒険者学校の長でもあるサリエラ学長が現れ、S級冒険者にしか任せられない護衛任務の依頼を伝えた。依頼の詳細は機密とされ、王都の依頼主から直接聞く必要があったが、報酬は破格であり、依頼主の身元も保証されていた。リュドミラたちは依頼を引き受けることを決め、クロスも同行することになった。
王都到着と依頼主の正体
リュドミラたちは王都に到着し、依頼主との待ち合わせ場所である高級宿に通された。そこで迎えたのは、最上級職の護衛を従えた少女、シャーロット・G・アルメリアだった。彼女はアルメリア王家の第三王女であり、今回の依頼主であることを明かした。依頼の詳細は明らかにされなかったが、王族直々の依頼であることにクロスは驚きを隠せなかった。
王女との邂逅と依頼の発端
クロスは依頼主がアルメリア王国第三王女シャーロットであることを知り驚愕した。アルメリア王国は大陸最大国家であり、その王族ともなれば極めて高い身分である。シャーロットは直々に護衛任務を依頼し、神託の街オラクルでの式典期間中に予見された厄災を防ぐため、S級冒険者たちに協力を求めた。
神託の街オラクルと厄災の予知
オラクルは初代勇者の予言がなされた聖地であり、アルメリア王家にとっても特別な場所である。今年の式典にはシャーロットが出席する予定で、その期間中に領地全体が滅びるという予知が出されていた。シャーロットは、この厄災を防ぐために護衛対象を自身のみならず領地全体とし、S級冒険者たちの協力を仰いだ。
王家の予知能力と信頼の欠如
シャーロットは王家が代々予知の職業を継承してきたことを説明した。しかし予知能力の不安定さから批判や疑念を受けることが多く、王家は予知能力を広く喧伝しない選択を取っていた。その背景には、誤解や民衆の不満が王家の威信を揺るがす恐れがあったからである。
師匠たちの葛藤と依頼の受諾
リュドミラとテロメアは王女の依頼を即座に受けることに躊躇していた。クロスと年の近い王女の存在に対し過敏になっていたためである。しかし、クロスが純粋に依頼を受けるべきと共感する姿を見て、二人は最終的に依頼を引き受けることを決意した。S級冒険者たちは王女の護衛と領地防衛を含む特殊な任務に向けて準備を進めることとなった。
封印された災厄の目覚め
数百年もの間、次元の狭間に封じられていた災厄が、その封印の劣化とともに目覚め始めていた。その存在は古の主に仕えるため、人族の拠点を壊滅させる使命を刻み込まれており、暴走に近い形で封印を内側からこじ開けようとしていた。やがて次元の亀裂とともに、圧倒的な魔力が各地に影響を及ぼし始めた。
神託の街オラクルへの到着
テロメアたちはアルメリア王族の依頼を受け、クロスを伴い神託の街オラクルに到着した。オラクルは初代勇者の予言にゆかりのある聖地で、現在は観光都市としても栄えている。式典を目前に控えた街は多くの人で賑わい、厳重な警備態勢が敷かれていた。クロスは王女シャーロットから街の成り立ちや結界の防御力について説明を受けた。
式典中の異変と災厄の出現
式典当日、控え室で待機中の一行は、遠方で発生した巨大な地鳴りを察知した。リュドミラが確認した先には、山を越えるほどの巨大ワームが現れ、無数のモンスターを生み出す光景が広がっていた。その後、さらに予測を超える事態が発生し、オラクルの空が裂け、異次元から巨大な怪鳥が現れた。その怪鳥は人語を解し、圧倒的な魔力と機動力で街を襲撃しようとしていた。
テロメアの防御と一行の対応
怪鳥が放つ広範囲の風魔法砲撃が街を覆い尽くそうとするなか、テロメアが即座に行動した。鐘塔の頂上から放たれた彼女のスキル《腐り落ちる神秘》が、すべての砲撃を弱体化し、街への被害を未然に防いだ。この活躍により、一行は災厄の初動に対応しつつ、さらなる脅威に備える体制を整えることとなった。
テロメアの反撃と怪鳥の猛攻
テロメアは《邪法聖職者》としての力を発揮し、怪鳥が放つ広範囲風魔法砲撃を全て相殺した。その圧倒的な防御力に驚愕する最上級職の護衛たちやクロスであったが、怪鳥もまた圧倒的な力を見せつけ、次々と砲撃を放ち続けた。テロメアは《スピードアウト・ワールド》を発動し弱体化を試みたが、怪鳥の高度と風魔法の特性により効果を完全に霧散させられた。
結界の異常と怪鳥の真の力
怪鳥の砲撃を相殺し続けるなかで、街を守る結界が未だに作動しない異常事態が明らかとなった。その原因は、怪鳥が召喚した眷属モンスターによる妨害であった。さらに、怪鳥は突如街中に眷属をワープ召喚し、守備を崩壊させる動きを見せた。シャーロット王女は怪鳥の正体を〈都落とし〉と断定し、その危険性を語った。
結界塔への指令とクロスの決意
状況を打開するため、王女は護衛二人に結界塔の妨害原因排除を命じた。しかし塔の数が三つであるため、人員が不足していることが課題であった。そのときクロスが進言し、自ら塔の一つを任されることを申し出た。王女はその直感を信じ、クロスに任務を託した。クロスは《風雅跳躍》を発動し、結界起動のために全力で塔を目指した。
テロメアの静かな闘志
一方、テロメアは砲撃を相殺しながら街の状況を見守っていた。クロスの行動に信頼を寄せる一方、上空の怪鳥に向けて挑戦的な笑みを浮かべ、さらに激しい攻防を繰り広げる準備を進めていた。
オラクルの混乱とクロスの奮闘
オラクルの街は混乱に包まれていた。上空では怪鳥が災害級の砲撃を繰り返し、街中では召喚されたモンスターが暴れ回っていた。クロスは機動力強化スキルを駆使し、混乱を避けながら結界塔へと急いだ。到着した広場では、モンスターとの激戦の跡が残り、警備の精鋭たちが次々と倒れていた。クロスは生存者を救おうとするも、突如として現れた黒鉄球のジャミングモンスターに襲われる。
ジャミングモンスターとの激戦
黒鉄球は猛回転し、周囲のすべてを弾き飛ばす強力な攻撃を繰り出してきた。クロスは《心魂悟知》や《魔装纏撃》を駆使し応戦するが、猛回転による風圧で魔法を弾かれるなど苦戦を強いられた。幾度も回避と反撃を繰り返しながら、クロスはその防御を突破する策を模索した。
魔装纏撃の新たな力
クロスは《魔装纏撃》に弱体化スキルを融合させた新技を完成させ、黒鉄球に一撃を叩き込む。その一撃は黒鉄球の速度を著しく低下させ、攻撃の威力を削ぐことに成功した。そして《魔装重纏撃》というさらなる奥義を放ち、ついに黒鉄球を粉砕した。これにより、結界妨害の原因を取り除くことができた。
結界の復活と新たな疑念
街の防衛結界が無事に展開され、クロスは安堵した。これにより、テロメアが怪鳥との戦闘に専念できる状況が整った。しかし、僧侶系《職業》であるテロメアがどのようにして超高度を飛翔する怪鳥に挑むのか、クロスには疑問が残った。その背後で、テロメアは二振りのメイス型モーニングスターを手に取り、戦いの準備を整えていた。
テロメアの空中戦闘開始
テロメアは結界塔の上で特殊な武器を手に取り、怪鳥〈都落とし〉と対峙していた。怪鳥は結界の耐久性を嘲笑いながら、一方的な砲撃を開始した。その威力に結界が軋み、崩壊寸前となり街の人々が動揺するなか、テロメアは冷静に行動を開始した。
爆発を利用した空中機動術
怪鳥が優れた機動力でテロメアとの距離を取ろうとするが、テロメアは爆発を利用した高速移動術《爆縮地》で追撃を開始した。この術は両手に持つモーニングスター型武器《乱散華》の爆発を推進力に変えるもので、通常の空中戦闘の常識を覆す奇策であった。怪鳥はその異常な戦術に圧倒され、次第に劣勢に陥った。
デバフと爆発による攻撃
テロメアは怪鳥に《スピードアウト・ワールドブレイク》や《激痛特化猛毒》などの弱体化スキルを浴びせることで、怪鳥の機動力と攻撃能力を著しく低下させた。そのうえで、《乱散華》による強力な打撃と爆発を連続して叩き込み、怪鳥を追い詰めた。
怪鳥の最後の悪意
追い詰められた怪鳥は、自らの巨体を利用した自爆戦術を実行しようとした。自らを弾丸と化し、オラクルの街へと落下を開始したのである。だが、テロメアはこれを予測し、怪鳥の体内に弱体化スキルを放ちながら侵入した。
体内からの最終攻撃
テロメアは怪鳥の体内で弱体化スキルを極限まで使用し、防御力を完全に奪ったうえで、両手の《乱散華》による極大爆発を放った。その結果、怪鳥の巨体は内部から粉砕され、街を破壊することなく空中で消滅した。こうして街は守られ、怪鳥の眷属たちも姿を消した。
戦いの後
戦闘後、テロメアは無傷の状態で戻り、弟子であるクロスを称賛した。クロスもまた、結界を守る戦いで重要な役割を果たしたことをテロメアに認められた。しかし、テロメアの過剰なスキンシップにより、クロスは戸惑いと羞恥の色を浮かべた。最後には戻ってきたリュドミラによって二人が引き離され、オラクルの危機は完全に去った。
オラクル救済後の王女の感謝
シャーロット王女は、今回の災厄から街と領土を守ったテロメアたちに深々と頭を下げ、感謝の言葉を述べた。街の被害は奇跡的に軽微であり、人的被害は皆無であった。これもテロメアの回復スキルとリュドミラの迅速な対応、そしてクロスの活躍によるものであった。
クロスの評価と予知
王女はクロスにも感謝を述べ、ジャミングモンスター討伐の功績を高く評価した。恐縮するクロスに対し、王女はさらに特別な報酬を提供しようとした。その際、王女の予知能力が不意に発動し、クロスの未来に「女性関係の波乱」が訪れるという曖昧な神託を告げた。クロスは戸惑いつつもその言葉を受け入れたが、周囲の人々は彼を取り巻く環境への懸念を強めた。
冒険者たちの帰還と王女の感慨
クロスたちは無事に事件の後処理を終え、バスクルビアへと帰還した。王女は彼らの背中を見送りつつ、その活躍が伝説の再来を思わせると感慨深げに呟いた。そして、同時期に発生している他の脅威についても考えを巡らせ、残された事件の処理に向けて動き出した。
ウルカ帝国軍の侵攻
バスクルビアの東に位置する草原では、ウルカ帝国が十万の大軍を集結させ、《深淵樹海》の奪取を目指していた。指揮官は大勢の兵士と巨大なゴーレム兵器を率い、自信満々に侵攻を開始しようとしたが、突如として兵器が破壊される異常事態が発生した。
ガルグレイドの登場
現場には、王国最強のS級冒険者、ガルグレイド・ラファガリオンが現れていた。彼はわずか一人でゴーレムを破壊し、敵軍十万を瞬時に蹂躙した。その圧倒的な戦闘力により、最上級職の敵も含めて全軍が壊滅。兵士たちは恐怖と混乱に陥り、戦場は血で染まった。
侵略の終焉
ガルグレイドはただ一人無傷で残った将官に、死体と残骸を持ち帰るよう命じ、軍の再編を指示した。こうしてウルカ帝国の侵攻は、ガルグレイドの手によって完全に阻止された。彼はその場を後にし、次の目的地であるバスクルビアへと向かった。
バスクルビアへの帰還と成長の喜び
クロスはオラクルから無事に戻り、街の平穏を感じながら自分の成長を実感していた。《身体能力強化【大】》を獲得したことに感慨を覚えつつ、さらなる努力を誓った。
街の興奮と帝国の侵攻
街中で人々の活気を感じたクロスは、学校でジゼルから隣国ウルカ帝国の大軍侵攻があったことを知らされた。勇者一族の現当主が単独で帝国軍十万を退けたという話を聞き、その圧倒的な力に驚愕した。
派閥の悪評とジゼルの助言
ジゼルはクロスが不在だったことで派閥に悪評が立ったと指摘しつつ、後の依頼で巻き返すよう助言した。クロスは反省し、仲間たちとの訓練や依頼に積極的に取り組むことを決意した。
エリシアとの偶然の再会
訓練場への道中、クロスは人目を避けるように佇むエリシアと偶然出会った。エリシアの元気のない様子を察したクロスは、彼女に何かあったのかを尋ねた。
父との面会とクロスへのお願い
エリシアは父である勇者一族の現当主が街に滞在していることを明かし、彼に会いに行く予定であると語った。そして意を決して、クロスにも同行してほしいと頼んだ。クロスは予想外の展開に驚きつつ、エリシアの頼みに対する答えを考えるのだった。
第二章 伝説の血筋たち
エリシアからの予想外なお願い
エリシアはクロスに、自分の父に会いに行く途中まで付き添ってほしいと頼んだ。緊張した様子の彼女の依頼に戸惑いながらも、クロスは快くそれを引き受けた。
父との面会への不安
道中、エリシアは父親が厳格であることから会うのが少し苦手だと打ち明けた。クロスは彼女の様子に心配を抱きながらも、一緒に屋敷の近くまで向かった。
屋敷前での突然の邂逅
屋敷の前で別れる直前、エリシアの父であり勇者一族の現当主が突如現れた。その威圧的な存在感と鋭い視線にクロスは動揺し、エリシアも驚きを隠せなかった。
二人への強引な招待
エリシアの父は二人を屋敷の最上階へ連れて行くことを決めた。圧倒的な速度で移動し、クロスは状況に追いつけないまま伝説的存在との対面を迎えることとなった。
予想外の対面
クロスとエリシアは、突然の展開でガルグレイドの応接室へと連れられた。勇者一族の現当主であるガルグレイドは、エリシアの父として自己紹介をしつつ、クロスに興味を示していた。
鋭い問いかけと重圧
ガルグレイドは、クロスがエリシアと人気のない場所で二人きりだった件について問い詰めた。圧倒的な威圧感に圧倒されつつも、クロスはしどろもどろになりながら説明を試みた。エリシアが会話に割って入り、彼女自身の希望でクロスが付き添っていたと弁明したことで、緊張が幾分和らいだ。
修行方針を巡る意見の衝突
ガルグレイドはエリシアに対し、修行の進捗と今後の方針を尋ねた。エリシアは苛烈な修行方針を提案したが、その様子は自らの意思というよりも義務感から来ているように見えた。クロスはその状況に疑問を抱き、勇気を振り絞ってガルグレイドの方針に異議を唱えた。
クロスの真剣な訴え
クロスは、自身の経験をもとに、効率の良い指導の重要性を主張した。彼はエリシアの成長を促進するためには過度な修行が逆効果である可能性を指摘し、自分を育ててくれた師匠たちの教えを伝えた。
意外な展開とガルグレイドの判断
ガルグレイドはクロスの真剣な態度を受け入れ、エリシアに過度な修行を避けるよう指示した。バスクルビアでの滞在を通じて見聞を広めることの重要性を説き、余暇を過ごすことを奨励した。彼の言葉は、エリシアにとって驚きと安堵をもたらした。
退出とクロスの混乱
要件を終えたガルグレイドの指示で、二人は応接室をあとにした。クロスは、自分の早とちりでガルグレイドに対して不必要に踏み込んだ発言をしてしまったことに気づき、冷や汗を流していた。一方で、エリシアの険しい表情が和らいだことに安堵していた。
エリシアの感謝と提案
エリシアはガルグレイドとの話し合いが終わった後、クロスを屋敷の外まで送り届け、彼に感謝を伝えた。彼女はクロスが父に意見を述べたことを嬉しく思い、再度お礼を口にした。クロスは謙遜しつつも、エリシアの笑顔に少し救われた様子であった。さらにエリシアは、自主練の予定を聞いた上で、自分とも時間が合えば一緒に鍛錬しないかと提案した。
特別結界訓練場の提案
エリシアは、鍛錬場所として街の特別結界訓練場(トッケン)を提案した。この施設は模擬戦を安全に行える高度な訓練場であったが、利用には冒険者ランクが必要であった。クロスは自分のランクがまだ最低のままであることに気づき、急ぎランクを上げることを決意した。エリシアはその決意を受け入れ、鍛錬の約束を楽しみにしている様子であった。
ガルグレイドの観察と評価
エリシアとクロスが別れた後、ガルグレイドは屋敷内から二人の様子を観察していた。彼はクロスの行動を「惜しい」と評し、《無職》であるがゆえの制約を悔やむ様子を見せた。同時に、娘が見せた新たな表情に驚きつつも、父親としての立場を崩さなかった。
セラスの不穏な動き
一方、遠く離れた場所で、猫獣人の大怪盗セラス・フォスキーアがクロスとエリシアのやり取りを見守っていた。彼女はクロスとエリシアの親密さが進展することを警戒し、自分なりの干渉を企てた。セラスはクロスとの再接触を図るため、密かに動き始めたのである。
筆記試験合格と実技試験への準備
筆記試験を無事トップクラスの成績で突破したクロスは、次の実技試験に向けて東門へ向かった。集合場所に到着すると、自身の存在が注目されていることを感じつつも、偶然再会した竜人族の男性と合流。二人は軽い会話を交わしながら、試験官であるベルドラの先導で《東森ダンジョン》へ移動した。
ダンジョン崩壊と異常事態の発生
目的地に到着したクロスたちは、東森ダンジョンの入り口が完全に崩壊しているのを目撃した。信じられない光景に受験者たちは動揺するが、クロスは迅速に異変の原因を考察。直後、遠距離からの岩石砲撃が飛来し、受験者たちは十字砲火の形で攻撃される。クロスは危険度5のモンスター「インビジブルカノン」の存在を察知し、周囲に警戒を促した。
危機的状況と竜人族の青年の奮闘
激しい砲撃のなか、受験者たちは即席の防御陣形を組むも、砲撃の威力に押されていた。そのとき、竜人族の青年が突如動き出し、拳一つで二つの岩塊を粉砕。受験者たちを窮地から救った。この圧倒的な力にクロスは驚愕し、青年の正体に疑問を抱いた。
正体の判明とさらなる驚愕
砲撃を防いだ際の衝撃で、青年のローブが剥がれ落ち、彼の素顔が露わになった。これにより、彼が「ジオドラ・ディオスグレイブ」であることが判明。ディオスグレイブ派のトップであり、龍神族の勇者パーティの末裔である彼の存在に、受験者たちは驚愕の声を上げた。クロスもまたその名に呆然とし、状況の異常さを改めて実感することとなった。
衝撃の正体判明
受験者たちを魔法砲撃から救った竜人族の青年が、実は龍神族の勇者パーティ末裔であり「ジオドラ・ディオスグレイブ」であることが判明した。彼の正体に、受験者たちは驚愕の声を上げた。クロスもまた、自身が一緒に試験勉強をした人物が大陸最強クラスの血筋を持つ存在だったことに唖然とした。
試験中の圧倒的な戦闘力
ジオドラはその卓越した戦闘力で砲撃を次々に打ち砕き、受験者たちを守り抜いた。しかし、砲撃が複数方向から絶え間なく飛んでくる状況に対応するため、クロスと連携を取ることを決断。クロスが守りに徹する間、ジオドラは敵の陣形を崩し、短時間でインビジブルカノンの群れを殲滅した。
イレギュラーへの対応と試験結果
戦闘終了後、試験官ベルドラはイレギュラーへの対応を評価し、クロスとジオドラの二人を実技試験トップで合格とした。これによりクロスは目的としていた総合成績トップでのE級試験合格を果たした。
ジオドラとの予想外の関係
戦闘後、ジオドラがディオスグレイブ派のトップであり、クロスが引き抜いたギムレットの元所属派閥の長であることを知ったクロスは困惑した。しかし、ジオドラは派閥間の因縁を意に介さず、むしろクロスの実力を評価し、友好的に接してきた。
模擬戦への提案
ジオドラはクロスに感謝を述べた後、さらに模擬戦を提案した。その無邪気な態度にクロスは戸惑いつつも、ジオドラの純粋な興味と善意を感じていた。
模擬戦への誘いとその理由
ジオドラはクロスに模擬戦を提案した。派閥の争いには無関心で、ギムレットを引き抜いた件も特に気にしていなかった。ただし、派閥の面目を守るためにも二人が顔を合わせたことを秘密にするよう念押しした。クロスはジオドラの率直な態度と冒険者としての真剣さに触発され、模擬戦を引き受ける決意をした。
模擬戦での激戦と圧倒的な実力差
模擬戦が開始され、ジオドラは驚異的な速度と威力を持つ攻撃で圧倒した。クロスは《心魂悟知》や各種スキルを駆使して必死に応戦したものの、ジオドラのフェイントスキルに翻弄され、攻撃を捌くことすら困難だった。クロスは一撃必殺の技を試みるも、ジオドラの対応力と圧倒的な身体能力の前に通じなかった。
模擬戦の成果とクロスの決意
模擬戦を通じて、クロスはジオドラの実力が伝説の血筋に恥じないものであることを実感し、自らの未熟さを痛感した。一方、ジオドラもクロスの潜在能力を高く評価し、将来的にまた戦うことを楽しみにしている様子だった。模擬戦後、クロスはさらなる成長を誓い、勇者パーティの末裔たちに追いつくことを目標に据えた。
リオーネの伝説とジオドラの目標
模擬戦のなかで、ジオドラは自身の目標である龍神族の伝説的な冒険者「リオーネ」の存在を語った。彼女の圧倒的な武勇に触発され、ジオドラはさらなる高みを目指していることを明かした。クロスはその話に驚愕しつつも、自身の目指す道について考えを巡らせた。
勇者パーティの再集結
模擬戦を終えたジオドラは、勇者エリシアやほかの末裔たちと合流した。彼らは《深淵樹海》で連携訓練を兼ねたモンスター討伐を進めており、若手冒険者最強の実力を見せつけた。ジオドラはクロスとの模擬戦で得た刺激を胸に、新たな戦いに向けて意欲を燃やしていた。
新たな脅威の存在
遠方では魔神崇拝者の一派が勇者パーティへの暗殺計画を進めていた。彼らはジオドラたちを観察し、未熟な次代の勇者を排除する機会を伺っていた。歪んだ信仰と策略が交錯し、次なる戦いの火種が生まれつつあった。
秘密の鍛錬と師匠たちの追跡
クロスはE級試験に合格してから初めての休日、憧れのエリシアとの鍛錬の約束を胸に冒険者学校へ向かった。一方、リオーネとリュドミラはクロスの行動を不審に思い、泥棒猫セラスや危険な予知の影響を警戒しながら尾行を始めた。しかし、この動きを察知していたセラスが巧妙な偽装工作を施し、二人を出し抜いた。
特別結界訓練場での模擬戦準備
クロスはエリシアと学校の特別結界訓練場に入り、壮大な仮想空間の設備に感嘆した。エリシアは模擬戦を提案し、クロスも緊張しつつも憧れの人と手合わせする高揚感を抱いた。しかし、模擬戦開始直前、エリシアは異常な魔力の奔流を感じ取り、即座に行動を開始した。
次元結界と強制転移の発動
仮想空間内では強力な次元結界が発動し、エリシアとクロスは脱出を試みるも結界の力に阻まれた。エリシアの剣戟とクロスのスキルによる攻撃も結界を崩せず、異常な魔力が最高潮に達した。その直後、強制転移が発動し、二人の姿は完全に消え去った。
セラスの奮闘と未然の失敗
セラスはクロスの危機を察知し、地下通路へと急行した。途中で祭壇魔術と違法薬物を使用した魔神崇拝者による術が原因であると推測したが、術の発動を止めるにはわずかに間に合わなかった。セラスは結界を突破しようと全速力で突入したが、激しい魔力の奔流に巻き込まれ、クロスやエリシアとともに姿を消した。
未知の危機とその余波
クロスたちが転移させられた場所や状況は不明であり、街に残された者たちには異変の痕跡だけが残された。勇者の末裔や冒険者たちを狙った計画が徐々に現実味を帯び、さらなる混乱の予兆が漂っていた。
第三章 ふたりきりの銀世界
突風と異変への気づき
バスクルビアの街では突如として突風が吹き荒れ、莫大な魔力が弾ける異常な気配が生じた。街の人々はこの異変に首を傾げたが、上空を駆け抜けるリオーネとリュドミラはそれどころではなかった。セラスに騙されたことに気づいた二人は、クロスの位置を特定するため全力で駆け抜けていた。
次元結界と消えたクロスの痕跡
二人が冒険者学校の訓練施設に到着したとき、異常な魔力が立ち上る中、クロスの魔力反応が突然消失していた。急いで施設内を探索したものの、残されていたのは魔力の残滓のみであった。焦りと混乱のなか、二人は状況を理解しようとするが、目の前には分身セラスが現れ、クロスとエリシアが魔神崇拝者の罠で転移されたことを告げた。
魔神崇拝者の陰謀と怒り
分身セラスの報告に耳を疑う二人だったが、地上から響いた魔神崇拝者の哄笑と得意げな言葉により、その情報が真実であると確信した。二人は直ちに魔神崇拝者を叩きのめして情報を引き出したが、クロスとエリシアが飛ばされた先までは特定できなかった。状況の深刻さに二人はさらなる怒りを覚え、全力でクロス救出に乗り出した。
ギルドの混乱と責任
ギルドの学長サリエラは、強制転移の術式がギルドの施設内で発動したという大事件に頭を抱えていた。内部に潜んでいた魔神崇拝者の存在が明らかとなり、責任の重さがサリエラにのしかかる。エリシアとともに巻き込まれたクロスの安否を懸念しつつ、彼女は国王への謝罪と報告を行った。
ガルグレイドの冷静な判断
エリシアの父であるガルグレイドは、サリエラの報告を受け、処罰は不要であると断言した。彼は、エリシアがこのような窮地を乗り越えることで成長すると信じており、状況を冷静に受け止めていた。サリエラはその厳格な態度に困惑しつつも、引き続き捜索に全力を尽くすことを決意した。
迫る危機と救出への奔走
クロスとエリシアが転移された先は不明のままであり、ギルドは内通者を排除しながら捜索を進めていた。リオーネとリュドミラも殺気を放ちながら奔走し、クロス救出に向けて全力を尽くしていた。世界規模の波乱の予兆が漂う中、二人の救出が急務であった。
突如現れた雪原の世界
クロスは仮想空間の異変に巻き込まれ、視界が歪み重力も感じられない奇妙な空間に放り出された。その後、彼は足元に雪を感じながら、目の前に広がる広大な雪原に驚愕していた。そこはアルメリア王国内どころか大陸の果てかもしれない場所であった。
エリシアとの再会と状況の整理
エリシアはすぐ近くでクロスの無事を確認し、状況の整理を始めた。二人は強制転移の罠に巻き込まれ、魔力溜まりの中心に飛ばされたと推測した。エリシアは魔神崇拝者による暗殺計画の可能性を示唆し、ギルド内の内通者の存在にも言及した。
危険地帯の過酷さ
エリシアは転移の誤作動により危険な座標を回避できた可能性を語ったが、魔力溜まりが持つ過酷な環境や潜在的な敵の存在に警戒を強めた。クロスもまた、寒さやモンスターの脅威を意識し、防寒具の必要性を痛感していた。
現れる災害級モンスター
洞窟を発見し安堵したのも束の間、地面が割れ巨大な白熊型モンスター「フォートレスグリズリー」が姿を現した。その巨大な体躯と危険度9に迫る魔力にクロスは恐怖したが、エリシアは冷静に迎え撃つ準備を整えた。
エリシアの圧倒的な実力
エリシアは《英雄の証》というユニークスキルを駆使し、モンスターを一瞬で切り伏せた。そのスキルは相手の防御を無視し、致命傷を与える力を持つものであった。クロスはその圧倒的な実力に驚愕し、彼女の規格外の強さを目の当たりにした。
雪中行軍の開始
エリシアはクロスを励ましつつ、安全圏を目指す雪中行軍を提案した。彼女はクロスを必ず無事に帰すと約束し、その言葉に勇者の血筋たる覚悟が垣間見えた。クロスはエリシアへの信頼を深めながらも、次々と明らかになる困難な状況に気を引き締めるのだった。
洞窟に潜む刺客の策略
魔力溜まりの奥に位置する洞窟では、魔神崇拝者アイリーン・ハザードが20人近い部下とともに待ち伏せをしていた。彼女たちは勇者の末裔エリシアを罠にかけるために強制転移の儀式を用意していたが、転移の誤作動により目標を逃していた。それでも、対象の位置を特定する追跡魔術を備えた水晶を使い、執念深く追撃の準備を進めていた。
雪中行軍の順調な進行
クロスとエリシアは魔力溜まりを進むなかで、多くのモンスターに遭遇していた。推定レベル40以上のホワイトウルフやレベル50のアイスベアなどが次々と襲いかかるが、エリシアの圧倒的な剣技とユニークスキルによって、全ての脅威が瞬時に無力化された。彼女の戦闘能力により、二人の進行速度はまるで街道を歩くかのように速やかであった。
防寒具と生存術
エリシアはフォートレスグリズリーの素材を活用して防寒具を作り、クロスにも着用させた。さらに、魔力溜まりの特殊な冷気に対抗するため、木々を集めて焚火を行いながら行軍を続けた。しかし、魔力を含む冷気の影響で手足の感覚が徐々に失われていくことが課題として残っていた。
洞窟での暖を取る工夫
クロスとエリシアは洞窟で休憩を取り、火を焚いて手足の冷えを和らげた。しかし通常の火では魔力冷気に十分な効果を発揮できず、エリシアは自身の体温を共有することで冷気を凌ぐ策を講じた。クロスはその予想外の対応に動揺しつつも、生存のための行為として受け入れた。
襲い来るモンスターの群れ
洞窟を出た二人を待ち受けていたのは、大規模なホワイトウルフの群れであった。エリシアはその大半を瞬時に撃退したものの、いつもより若干手間取っている様子を見せた。その戦闘後、二人は敵の奇妙な動きに不穏な空気を感じ取った。
刺客の現れる予兆
突如として洞窟上の小高い丘に現れた20人の集団。その中心にはアイリーンが立ち、圧倒的な魔力と殺気を放っていた。彼女はエリシアを追い詰める準備が整ったことを告げ、二人に迫る脅威が本格化していた。クロスはその場の緊迫感に直面し、エリシアとともに新たな試練に挑む覚悟を固めるのであった。
刺客の登場と脅威の宣告
アイリーン・ハザード率いる20人規模の集団が丘の上から現れた。彼女の正体は「女王蜂」の異名を持つA級犯罪者であり、勇者の末裔であるエリシアを狙う刺客であった。彼女はユニークスキル《私は異形の女王様》を用い、使役するモンスターの能力を自分に取り込むという異常な力を有していた。その特性によって、エリシアのユニークスキル《英雄の証》の攻撃もほとんど無効化されることが判明した。
不利な状況下でのエリシアとクロスの苦闘
アイリーンの手下たちはモンスターの魂防御能力を利用し、エリシアに圧倒的な負担をかけた。一方、クロスも魔神崇拝者たちの攻撃に対して必死に抵抗するが、上級職の集団を相手に完全に押されていた。さらに、エリシアはアイリーンとの激戦の中で足を負傷し、行動の自由を大きく制限されてしまう。
クロスの一か八かの賭け
窮地に追い込まれたクロスは、魔装過重纏撃という破壊力の高い攻撃を放つが、威力を制御できず直接的な戦果を得られなかった。しかし、彼の真の狙いは戦闘の余波による雪崩を引き起こすことであった。その賭けは成功し、山の中腹から巨大な雪崩が発生し始めた。
雪崩による形勢の逆転
雪崩の迫るなか、アイリーンは追撃を諦め、手下たちと共に撤退を決断した。一方、エリシアは瀕死のクロスを抱え、懸命に雪崩から逃れようと疾走した。その後、雪崩は戦闘の痕跡を完全に飲み込み、魔神崇拝者たちを撤退に追い込む大規模な自然災害として猛威を振るった。
雪崩からの脱出とクロスの救出
エリシアは雪崩に巻き込まれたものの、最上級職の膂力と剣戟で雪中を脱出した。しかし、クロスが手元から離れたことで彼の行方を見失った。共通感知スキルを駆使しながら必死に掘り進んだ結果、ほど近い場所でクロスを発見した。彼は息があったものの、生気を失い、身体は極度に冷え切っていた。
追跡魔法の解除と状況の好転
クロスの状態を回復させるため、エリシアはポーションを使い尽くしたが、体温の低下は防げなかった。一刻も早く安全な場所を探さなければならない状況で、エリシアは偶然アイリーンの持っていた追跡魔法の水晶を発見した。驚くべきことに、水晶に示されていた追跡魔法の効果が途切れていた。雪崩の影響で魔力が拡散した可能性が高く、敵の追撃を一時的に防ぐことができた。
過酷な雪原での苦闘
追跡魔法が解除されたことに安堵したものの、エリシア自身も足の負傷と失血により体力が限界に近づいていた。クロスを背負い毛皮で包むことで寒さをしのぎながら進むが、吹雪の中では休める場所も暖を取る資源も見つからず、状況はさらに悪化していった。
冒険者との邂逅と救援
限界を迎えつつあったエリシアは、吹雪の中で遠くに揺れる光を発見した。それは松明を持った冒険者の一団であった。必死に声を張り上げ、意識が薄れる中でクロスの救援を懇願した。冒険者たちは状況を把握し、エリシアとクロスの介抱を開始。エリシアは最後の力を使い果たし、その場で意識を失った。
第四章 英雄の証
祝賀の晩餐会とエリシアの幼き夢
アルメリア王国の王城は、エリシアが6歳という歴代最速で《職業》とユニークスキルを発現したことで祝賀の雰囲気に包まれていた。速度特化の《瞬閃剣士》と破壊力に特化した《英雄の証》の組み合わせは理想的であり、国中が喜びに沸いていた。しかし幼いエリシアはその理由を理解できず、ただ食事が豪華で人々が楽しそうに見えたため、自らも同じように喜びを与えたいと「大人になったら料理を作る人になる」と無邪気に語った。その言葉は楽しい時間を一変させ、厳格な父の怒声によって引きずられるように訓練場へと連れて行かれる結果となった。
父からの使命と厳しい訓練の日々
父はエリシアに、勇者の一族として魔神復活の危機に備える使命を果たす責務を課した。その責任の重さは、幼い彼女の夢を押しつぶし、鍛錬を義務付けるものだった。以降、エリシアは個人の意思を捨て、修羅の道を進み始めた。常に己を鍛え続け、戦い抜き、望まぬ運命に従うしかなかった。こうして、エリシアの人生は灰色に彩られたものとなり、希望を抱く余地を失っていた。
隠れ里での目覚めとクロスの無事
雪崩を経て意識を失ったクロスが目覚めたとき、彼は隠れ里の一室に寝かされていた。エリシアはすでに目覚め、クロスの看病を続けていた。二日間も意識を失っていた彼の無事に安堵し、エリシアは思わず涙を流しながら彼を抱きしめた。隠れ里の住人たちが、エリシアたちを助け、追跡者を防ぐ祭壇魔術や防寒設備を整えたこの村に導いたことで、二人は救われた。
エリシアの告白と勇者の苦悩
エリシアはクロスに、勇者としての自分の運命に対する本音を語り始めた。彼女は自らの立場に縛られ、望まぬ責務を果たさざるを得なかった過去を吐露した。クロスとの時間は彼女にとって数少ない心の拠り所であり、それを口実にして窮屈な現実から目を背けていたと告白した。勇者になりたくなかったと語る彼女の言葉には、自由を奪われた人生への苦悩が滲み出ていた。
勇者の覚醒と運命の重圧
エリシアは、自身が六歳で《瞬閃剣士》と《英雄の証》を発現して以来、厳しい修行と自由を奪われた生活を強いられてきたことを語った。彼女の人生は、遊びや休息すら許されず、過酷な使命に従うだけの日々だった。幼少期の晩餐会で夢を口にしたことで、父から勇者としての責務を厳しく叩き込まれ、以降その言葉に縛られた人生を歩んでいた。
勇者の宿命と魔神の覚醒
エリシアは、勇者の一族が代々背負ってきた宿命についても語った。魔神を討伐できるのは、勇者のユニークスキル《英雄の証》を最大レベルまで高めて覚醒させた者だけであり、他の者が魔神を倒せば、より強化された形で復活するという事実が明かされた。この宿命のため、彼女は己の意志を殺し、世界を守るための力を磨き続ける日々を送ってきた。
クロスとの対話と本音の告白
エリシアは、クロスに本音を打ち明けた。彼女は、自分の立場を忘れるためにクロスとの時間を利用していたと告白した。使命から逃れたいという気持ちと、自分が勇者にふさわしくないのではないかという葛藤に苦しんでいた。さらに、今回の出来事でクロスを危険に巻き込んだことに強い責任を感じ、自分を責めていた。
クロスの励ましと共感
クロスは、エリシアの苦しみに共感しつつも、彼女の努力と献身を高く評価した。彼は、エリシアが使命に従いながらも他者を守る姿を「純粋で高潔」と称え、憧れの対象であり続けていると伝えた。その言葉は、エリシアにとって自らの価値を再確認するきっかけとなり、彼女の心を少しずつ解きほぐした。
隠れ里での平和な瞬間
クロスとエリシアが隠れ里で過ごす間、村の住民たちは彼女が討伐したモンスターに感謝し、久しぶりの平和と祝宴を楽しんでいた。エリシアは、自分の行いが人々の笑顔につながっていることを初めて実感し、自らの使命の意義に気づき始めた。
平穏の終焉と新たな脅威
しかし、その穏やかな時間は突然の鐘の音で破られた。隠れ里の周囲にモンスターの大群が現れ、緊急事態が発生したのである。村人たちは戦闘態勢に入り、クロスとエリシアも状況の把握に動き出した。穏やかなひとときの終わりを告げるように、隠れ里に再び危機が迫っていた。
村を襲うモンスターの大群
隠れ里は突如としてモンスターの大群に襲われた。村人たちは即座に応戦態勢を整え、戦士たちが各方面で迎撃を開始したが、その数の多さに手が足りず、クロスとエリシアにも戦力として村東の防衛を任せた。二人は村の存続をかけ、急ぎその場へ向かった。
モンスター誘引の真相
村東の雪原に到着した二人は、異常な数のモンスターに圧倒されながらも応戦を開始した。その最中、クロスは異臭に気づき、以前経験したモンスター誘引アイテムの匂いであることを悟った。この襲撃は自然発生ではなく、人為的なものだった。そしてその犯人が姿を現す──宿敵アイリーン・ハザードと彼女の仲間である魔神崇拝者たちであった。
アイリーンとの再戦
アイリーンは、以前と同じく圧倒的な魔力と防御能力を持ち、モンスターと連携しながらエリシアに襲いかかった。エリシアは雪中装備に助けられ前回よりも優れた戦いぶりを見せるが、アイリーンの持つ魂防御によって攻撃が通らず、再び劣勢に追い込まれた。
エリシアの覚醒
激戦の最中、エリシアの心にこれまでにない覚悟が芽生えた。クロスとの時間や村人たちの笑顔に触れ、自らの使命の意義を初めて実感したエリシアは、勇者の力を「自らの意思」で振るう決意を固めた。その想いが限界を超えた力を呼び覚まし、エリシアの《英雄の証》が覚醒した。
圧倒的な一撃
覚醒した《英雄の証》により、エリシアの剣はアイリーンの魂防御を突破した。その一撃は、彼女の甲殻を粉砕し、これまで無傷であった身体に致命的なダメージを与えた。アイリーンの表情からは余裕が消え、戦況は一変した。
勇者一族の覚醒条件
ガルグレイド・ラファガリオンは《英雄の証》の覚醒条件をシャーロット王女に問われた際、教えない理由を明確に述べた。それは、覚醒が指導では達成できない内面的な要因によるものであるからであった。このスキルの覚醒には、熟練度の限界突破とともに「世界を守りたい」という強固な想いが必要であり、その感情が本物でなければ覚醒に至らない仕組みであった。
覚醒条件の実証とガルグレイドの確信
覚醒の契機は些細なものでよいとされるが、その感情の強度は尋常ではないものであった。過去にガルグレイド自身もこの条件を満たし覚醒を果たしており、エリシアに関してもその可能性を信じて見守っていた。ガルグレイドはエリシアとクロスが必ず戻ると確信し、冷静に王城で事態を見守り続けた。
エリシアの覚醒と逆転劇
アイリーンとの戦闘で追い詰められていたエリシアは、《英雄の証》が覚醒し、アイリーンの魂防御を無効化する力を得た。この力により、エリシアはアイリーンに圧倒的なダメージを与え、戦況を一気に逆転させた。さらに、アイリーンの回復手段はすべて無効化され、勝負はエリシアに傾いた。
クロスの新たなスキルの発現
クロスもまた、極限の状況下で新たなスキル《スピードイーター》を発現した。このスキルは攻撃した相手の速度を吸収し、自身を強化するという特異な能力であった。この力を用い、クロスは魔神崇拝者たちとそのモンスターを次々と撃破し、エリシアの戦闘を補佐する形で戦局を有利に進めた。
アイリーンの最期とエリシアの決断
追い詰められたアイリーンは禁じられた薬を用いて怪物化し、最後の抵抗を試みた。しかし、エリシアの覚醒した《英雄の証》の力により、怪物となったアイリーンもろとも敵を一掃した。この戦いで、エリシアは自らの使命を再認識し、クロスとともに村を守ることに成功した。
戦いの終わりと二人の再確認
激闘を終えたエリシアとクロスは、互いの無事を確認し合い、戦い抜いた喜びを共有した。エリシアは使命を果たせた安堵とともに、クロスと手を取り合いながら新たな一歩を踏み出した。
雪原での戦いの終息
エリシアとクロスは、アイリーン一派を撃破した後、村を襲うモンスターへの対応を再確認した。しかし、村から駆けつけた戦士たちの報告によれば、モンスターの数は急激に減少し、すでに全滅していた。正確な理由は不明だったが、アイリーンのスキル暴走による影響の可能性が示唆された。二人はようやく安堵し、その場に座り込んだ。
隠れ里での援護者の影
隠れ里近くの針葉樹の天辺には、セラス・フォスキーアの姿があった。彼は雪原で密かにクロスとエリシアを支援し、村を襲ったモンスターを駆逐していた。セラスは二人を見守りつつ、介入を最小限に留めていたが、クロスの成長に満足げな表情を見せた。その後、彼はさらなる行動を起こすべく立ち去った。
救援部隊との再会
クロスとエリシアが隠れ里で一日を過ごした後、リオーネたちが救援部隊として現れた。彼らはクロスの無事を確認するとともに、状況の把握と村人への説明に努めた。村人たちはリオーネたちの圧倒的な存在感に驚きを隠せなかったが、次第に信頼を寄せていった。
エリシアの心境と別れ
バスクルビアへの帰還後、クロスはエリシアに勇者としての重圧や日常への不安を尋ねた。エリシアは冒険者としての自由を望む気持ちを認めつつも、バスクルビアで過ごす時間が新たな支えとなると語った。お互いに別れを告げる中、クロスはエリシアの背中を見送りながら、自分の未熟さと更なる成長への決意を新たにした。
未来への希望と課題
クロスはエリシアを思い返しながら、魔神を倒す力が《英雄の証》以外にも存在すれば、彼女の負担を軽減できるのではないかと考えた。彼は自身の使命感と決意を胸に、師匠たちとともに次の行動を模索していくのだった。
エピローグ
伴侶選抜戦の準備
アルメリア王国では、第三王女シャーロットが勇者の末裔エリシアに関する議題に懸念を抱いていた。勇者一族の当主ガルグレイドは、エリシアが《英雄の証》を覚醒した今、バスクルビアに長く滞在する理由はないと断言した。彼は伴侶選抜戦の準備を進める決定を下し、エリシアに早急に伝えるべきと述べた。シャーロットはわずかに抗議を試みたが、最強の男の意思の前に沈黙せざるを得なかった。
《無職》への偏見
バスクルビアに戻ったクロスは、リュドミラから《無職》が勇者の伴侶になれないという話を聞いた。勇者一族が《無職》を拒絶する理由は様々だが、国内の結束を優先するためとの説が強い。リュドミラはクロスに偏見に屈せず強くあれと励ました。クロスはこの話を聞きながらも、エリシアとの距離を感じる苦悩を抱えたまま修行と学校生活に戻っていった。
伴侶選抜戦の発表
街ではエリシアの伴侶を決めるための選抜戦が発表された。この急な告知にクロスは混乱し、エリシアが真の自由を得られない運命を強く感じた。伴侶選抜戦の詳細を聞いた彼は、自らがこの戦いに参加し、エリシアの自由な時間を延ばすことを決意した。彼の心には、自分の未熟さを越える意志が生まれた。
ギルバートとの衝突
クロスはエリシアに会うため街を駆けたが、途中で最上級聖騎士ギルバートに阻まれた。ギルバートはクロスの進行を許さず、選抜戦の厳しさと《無職》が伴侶になれない現実を突きつけた。クロスはそれでも諦めず、自らが選抜戦で優勝し続ければエリシアを街に留められると確信し、戦う意志を新たにした。
新たなる挑戦の始まり
ギルバートとの対峙で実力差を痛感したクロスだったが、エリシアの笑顔を取り戻すための道を模索し始めた。一方で街は、伴侶選抜戦を巡る興奮に包まれ、多くの若き冒険者たちがその舞台へと集まろうとしていた。クロスは《無職》の名を背負いながらも、エリシアのために挑む決意を胸に抱いていた。
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