どんな本?
「サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと」は、モニカ・エヴァレットという無詠唱魔術を使える世界唯一の魔術師を主人公にしたファンタジー小説。
彼女は伝説の黒竜を一人で退けた英雄であり、極度の人見知りの天才魔女でもある。
しかし、彼女は無詠唱魔術を練習しているのは、人前で喋らなくて良いようにするためで。
無自覚なまま「七賢人」に選ばれてしまい、第二王子を護衛する極秘任務を同僚の七賢人に押しつけられることになり、気弱で臆病ながらも最強の力を持つ彼女が、王子に迫る悪をこっそり裁く痛快な物語が展開している。
読んだ本のタイトル
サイレント・ウィッチ VII 沈黙の魔女の隠しごと
著者:依空まつり 氏
イラスト:藤実なんな 氏
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あらすじ・内容
戦禍を呼ぶ古代魔導具を破壊するため、王国の最高戦力、七賢人が団結する!
〈偽王の笛〉に操られた上位精霊と、それぞれ相対する七賢人たち。各地で人智を超えた激闘が繰り広げられる森で、第二王子も暗躍を始める。一方、学園にもモニカを不審に思い正体を暴こうと行動する生徒がいて……?
サイレント・ウィッチ VII 沈黙の魔女の隠しごと
感想
前半は、敵も含めて七賢人が大暴れ。
〈宝玉の魔術師〉が起こした古代魔導具〈偽王の笛ガラニス〉を巡っての騒動。
〈結界の魔術師〉〈砲弾の魔術師〉〈深淵の呪術師〉〈茨の魔女〉。
そして〈沈黙の魔女〉が対応に奔走する。
過労気味の結界の魔術師は斧を振り回し。←謎
砲弾の魔術師は派手に魔法をぶっ放し。
茨の魔女は初代が使用していた茨の魔法で大暴れの末に、深淵の呪術師の呪でぶっ倒れ。
沈黙の魔女は、ワタワタしながらも風精霊のリンを抑え、作戦を遂行した。
正気に戻った風精霊のリンは、主人の前で見事な着地を見せたく後に力尽き眠りに付く。
いや、その着地を決めなかったら貴女、ご主人様の要望に応えられたんじゃないの??
相変わらずフリーダムな精霊さんだわ、、
それに夢中な元、宝玉の魔術師の手下だったバルトロメウスも今後どうなるのだろうか?
なかなか油断ならない展開だよな?
精霊に拉致られたシリルとグレンは、、
瀕死になった氷の精霊を助けるために色々したが、最後はシリルの余剰魔力を放出する魔法具に入り眠りに付く。
後半は、え?
話の前提が覆るほどのどんでん返し!
オイオイ、いま目の前に居る王子様は何者なんだ?
回想シーンを見ていたら、引っ込み思案で、不器用。
でも凄く優しい、、
男の子だった王子様。
今のその人と比べたら、完璧に別人じゃないか?
そりゃその当時の王子様を知ってる人から見たら。
完璧超人な今の王子様は気持ち悪い処じゃない。
それを解消するために、公爵の屋敷に侵入するが、、、
其処でも謎が深まるばかり。
いったい彼は何者なんだろうか?
死んだと思われている、目の上に傷のある従者はどうなったんだろうか?
謎は深まるばかり。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
サイレント・ウィッチ シリーズ
その他フィクション
備忘録
七巻プロローグ
〈沈黙の魔女〉の時間稼ぎ
ケリーリンデンの森の上空で強い風が吹き荒れていた中、風の影響を受けていない木の天辺に、風の上位精霊リィンズベルフィードが立っていた。通常は味方であるはずのリンは、無言でモニカに風の刃を振り下ろしていた。モニカは防御結界を展開してリンの攻撃を凌ぐが、精霊の攻撃は人間とは比較にならないほどの魔力密度を持っており、戦闘は詠唱のいらない攻防となっていた。バルトロメウスは、リンを操っている可能性がある〈宝玉の魔術師〉エマニュエル・ダーウィンの古代魔導具〈偽王の笛ガラニス〉の存在を知らされておらず、モニカは慎重に言葉を選んでリンが操られていることを伝えた。結界が再び砕ける中、モニカはリンを封印結界で無力化する方法を思案し、バルトロメウスが時間を稼ぐ策を提案した。モニカはバルトロメウスの協力を受け、リンの攻撃から身を守りながら時間稼ぎを行うことに成功した。
七巻一章
誇りはなくとも、意地はある
バルトロメウス・バールは、シュヴァルガルト帝国の下町で生まれ、家族を養うために11歳でダーミッシュ魔導具工房に弟子入りした。彼は広く浅い技術を持ち、どんな仕事でもこなしていたが、一流にはなれなかった。彼の妹も同じ工房に弟子入りし、才能を見出されるが、後に贋作作りで逮捕される。この事件が原因で母は亡くなり、妹も処刑されたと聞かされ、失意のバルトロメウスは故郷を離れる。リディル王国で何でも屋を営む彼は、生活のために仕事を選べず、やがて〈宝玉の魔術師〉の下で魔導具を作るが、その工房を飛び出してからも、生きるために仕事を選んでいられない状況が続く。バルトロメウスが作ったのは、精霊を殺し閉じ込める魔導甲冑兵だったと後に知る。フラフラと流れ着いた場所で、彼は自分の仕事に誇りを持てずに生きている。
ケリーリンデンの森で、〈結界の魔術師〉ルイス・ミラーと〈砲弾の魔術師〉ブラッドフォード・ファイアストンは、魔導甲冑兵と対峙していた。ルイスは魔導具と気づかずに戦い、魔導甲冑兵を解体し、宝石に封印を施す。彼らは森の奥へと進み、〈深淵の呪術師〉と〈茨の魔女〉が魔導甲冑兵との戦いで苦戦する可能性を懸念している。バルトロメウスとモニカは、古代魔導具〈偽王の笛ガラニス〉を破壊するために行動し、モニカは森の奥で魔力濃度が濃い場所へと進むが、バルトロメウスは待機するように言われる。
七巻二章
邪悪な魔女の末裔
セレンディア学園生徒会副会長シリル・アシュリーは、七賢人の一人である五代目〈茨の魔女〉ラウル・ローズバーグと三代目〈深淵の呪術師〉レイ・オルブライトに出会う。二人は一見気さくな人物だが、実は国内で最も力のある魔術師である。シリルとグレンは精霊に拉致され、笛吹き男が森の精霊を操っていることを知り、解放のために行動を開始する。ラウルとレイに助けられたものの、シリルたちは炎霊レルヴァや魔導具の鎧との戦いに巻き込まれる。ラウルは特殊な魔術で敵を制圧しようとするが、状況は厳しく、レイは助けを求められることに対して薄情な態度を示す。それでもシリルは氷霊を救うために努力を続け、セズディオと共に森での生存を目指す。
ラウルは自分に呪術をかけてもらい、その力を使って敵を圧倒する。しかし、戦いの中で、ラウルは魔力を使い果たしてしまい、呪術の影響で眠りにつく。シリルたちは氷霊を救うため、レイの助けを求めるが、レイは精霊に対して冷淡な態度を取る。それでもグレンの前向きな姿勢に励まされ、シリルは氷霊を救う決意を新たにする。セズディオは氷霊の供物を求め、二人を連れて森を駆ける。
七巻三章
天才達の美学、唯一無二の価値
モニカはケリーリンデンの森を歩いている。天気は良いが風は冷たい。彼女は私服のローブを着ており、シリルとグレンが寒さに震えているのではないかと心配している。モニカは方向感覚が優れており、森の入口に戻る自信がある。彼女は、精霊を動力源とする魔導具の技術を他の七賢人に伝える必要があると感じている。その技術は、危険な魔導具を作り出す可能性がある。ルイス・ミラーとブラッドフォードと合流し、魔導甲冑兵と戦闘になる。モニカは防御結界を使い、ブラッドフォードは強力な火炎魔術を発動する。戦闘の後、モニカは精霊の封印を施し、ブラッドフォードとルイスは特殊効果を持つ鎧について話し合う。セレンディア学園から連れ去られた一般人二名が無事保護されたことを知り、モニカは安堵する。戦いの中で、モニカは自分の魔術の完璧さにこだわりを持っており、ブラッドフォードはそれを理解し、ルイスは面倒臭がる。
泉の畔にある小さな家で、〈宝玉の魔術師〉エマニュエル・ダーウィンは塗料の調合に没頭していた。彼は通常、塗料の調合を弟子や職人に任せているが、不安を感じるときには自ら塗料を練ることで心を落ち着かせていた。彼が捕獲した上位精霊三体が〈偽王の笛ガラニス〉の支配から離れてしまったことにより、エマニュエルは手持ちの戦力を大きく失ったと感じている。
リディル王国の七賢人たちは、それぞれが突出した才能を持つ唯一無二の存在である。その中で、エマニュエルは自分がクロックフォード公爵の後ろ盾があったために七賢人になれたと感じており、自分の能力を他の七賢人と比較して劣等感を抱いている。同じくコネで七賢人に選ばれたと彼が思っている〈結界の魔術師〉ルイス・ミラーに対しても、複雑な感情を持っていた。
しかし、エマニュエルは〈偽王の笛ガラニス〉によって唯一無二の力を手に入れたと信じており、これからは自分の能力を証明しようと決意している。七賢人が三人近づいてくるという報告を受け、これを機に〈宝玉の魔術師〉としての唯一無二の存在を世に示そうと考えている。エマニュエルはクロックフォード公爵が七賢人長の導入を考えていること、そしてその座を〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレットに提案していることを知っている。彼は自分も唯一無二の能力があることを証明することで、自分の位置を確固たるものにしようとしている。
七巻四章
冬精霊の子守唄
昔、雪の森にシェルグリア、オルテリア、ロマリアという名の仲良し氷霊がいました。彼らは人間を愛し、冬の訪れを告げたり、美しい音色や子守唄を奏でたりしていました。しかし、ある日、魔力不足で理性を失った竜によって森が襲われ、三精霊は命の危機に陥ります。竜は魔力を求めて精霊を襲い、三精霊ははぐれてしまいます。シェルグリアは北風にメッセージをのせて助けを求め、オルテリアは氷の鐘を鳴らして精霊神に助けを求めました。精霊神がオルテリアに加護を与えたことで、ロマリアと力を合わせ、襲ってきた竜を倒しシェルグリアを救出しました。
シリルたちは、炎霊に襲われた後、地霊セズディオに案内され安全な場所へと向かっていた。途中、グレンが体調不良を訴えるが、それはレーンブルグでの呪竜の呪いの影響だったことが判明する。セズディオはシリルたちを安全な場所へと誘導すると言いながら、実際には彼らを森の奥へと誘導していた。その目的は、氷霊を救うためにシリルたちを犠牲にしようとするものだった。しかし、氷霊自らがセズディオの計画を阻止し、自分たちを犠牲にすることを拒否する。この時、氷霊が実は冬精霊の一人であるロマリアであることが明かされる。ロマリアは過去に人間を愛していたが、自分が人間を殺めてしまったという罪悪感に苛まれていた。最後に、一行は魔導具の全身鎧の群れに襲われる直面し、絶望的な状況に陥る。
モニカたちはブラッドフォードの感じ取った精霊のざわつきに注意しながら、森を進んでいた。ブラッドフォードとラウルのように魔力量が多い者は、魔力の変化や精霊の気配に敏感である。彼らは〈宝玉の魔術師〉の隠れ家へ向かっており、その途中で〈偽王の笛ガラニス〉の破壊について話し合う。ルイスは〈偽王の笛ガラニス〉が歴史上、戦争を引き起こしてきたことを指摘し、その所有者が戦争のきっかけを作った人物やその側近だったことを明かす。モニカは、〈偽王の笛ガラニス〉が現代では戦争に役立つか疑問を呈し、もし自分がその古代魔導具なら、土地を魔力汚染して精霊を増やす戦略を取るだろうと考える。ブラッドフォードは、森の入り口周辺にしか罠がなかったことに気づき、大きな罠がある可能性を指摘する。彼らは〈宝玉の魔術師〉の隠れ家に近づきつつあるが、その途中でさまざまな戦略や可能性を考慮している。
七巻五章
パウロシュメルの処刑鏡
〈宝玉の魔術師〉エマニュエル・ダーウィンは、古代魔導具〈偽王の笛ガラニス〉の警告により、近づいてくる敵の存在を知る。彼は自信満々に〈結界の魔術師〉ルイス・ミラーを迎え撃とうとする。ルイスはエマニュエルの隠れ家に向かっており、彼が首から下げている笛、〈偽王の笛ガラニス〉について言及する。エマニュエルは笛を吹き、周囲の精霊を呼び寄せることで、自分の力を誇示しようとする。ルイスはエマニュエルの挑発に冷静に対応し、唯一無二の能力が全てではないこと、そして勝つことが最も重要だと主張する。エマニュエルは自らの才能を誇り、ルイスを見下すが、ルイスは有能な凡人が無能な天才よりも価値があると反論する。ルイスの言葉はエマニュエルにとって屈辱的であり、彼の自尊心を深く傷つける。エマニュエルは精霊を使ってルイスを攻撃しようとするが、ルイスの態度と発言はエマニュエルの不安と焦りを煽るのみであった。
エマニュエルと対峙するルイスの支援として、モニカとブラッドフォードは木陰から作戦を遂行していた。エマニュエルを直接狙うことが困難であるため、ルイスが囮となり、モニカが遠隔魔術で攻撃し、ブラッドフォードが超火力の魔術でサポートする計画である。ルイスは防御結界で精霊の攻撃を反射し、エマニュエルに迫るが、泉から魔導甲冑兵が現れる。エマニュエルは〈パウロシュメルの処刑鏡〉という反射結界の魔導具を使って、ブラッドフォードの攻撃を反射する。モニカはルイスを守るために防御結界を張るが、エマニュエルの攻撃を完全には防ぎきれず、ラウルの茨の魔法でかろうじて防がれる。モニカたちはエマニュエルの強力な防御結界を破壊するために、ブラッドフォードの六重強化魔術に全力を注ぐ計画を立てる。しかし、エマニュエルがさらに対策を講じている可能性に不安を感じつつ、ルイスは七賢人の団結力を見せることを宣言する。
七巻六章
笛の本懐
約50年前、リディル王国は帝国との戦争で敗北した。その原因は帝国が持つ古代魔導具〈ベルンの鏡〉によるもので、これは大規模な一級反射結界を展開できる。現在、〈宝玉の魔術師〉エマニュエルは、〈ベルンの鏡〉とは規模こそ劣るものの、一級反射結界を展開する魔導具〈パウロシュメルの処刑鏡〉を完成させた。反射結界の等級は、五級から一級まであり、現存する反射結界で人間が使えるのは二級までである。ブラッドフォードの六重強化魔術に対抗するため、エマニュエルは〈パウロシュメルの処刑鏡〉を用いて防御しようとしたが、ブラッドフォードとモニカたちの計画により、最終的に〈パウロシュメルの処刑鏡〉は破壊され、エマニュエルは無事だった。エマニュエルは最終的に膝をつき、〈偽王の笛ガラニス〉から響く声に耳を塞ぐが、笛の人格によってさらなる行動を促され、意識を失う。
モニカはエマニュエルに傷がないことを確認し、安堵する。エマニュエルが首から銀色の笛を強く握りしめ、ルイスに向かって振る舞うが、実際には笛を地面に突き刺し、〈偽王の笛ガラニス〉がエマニュエルの体を乗っ取っていることが明らかになる。この行動により、周囲の魔力濃度が急激に増加し、七賢人の中で最も魔力量が多いラウルを除き、皆が魔力中毒の症状を示す。〈偽王の笛ガラニス〉はエマニュエルを通じて、土地に溜め込んだ魔力を注ぎ込み、自身の力を増す計画を進める。これは、モニカが最も懸念していた魔力汚染であり、この状況下ではエマニュエルも生命の危険に晒されている。〈偽王の笛ガラニス〉は、エマニュエルを英雄にすると宣言するが、モニカはこの状況を打破する方法を模索する。最終的にはルイスが、これを七賢人の団結力を見せる総力戦と宣言し、〈偽王の笛ガラニス〉が〈星紡ぎのミラ〉の介入を恐れる。
〈星の槍〉を放った後、カーラは感知の魔術でエマニュエルの状況を把握し、メアリーに魔力汚染が始まったことを伝える。メアリーは〈星紡ぎのミラ〉に介入を求め、〈星紡ぎのミラ〉は〈偽王の笛ガラニス〉による戦禍を防ぐために行動を開始する。メアリーと〈星紡ぎのミラ〉は、土地に染み込んだ魔力を吸い上げ、それを森全体に分散させることで魔力汚染を浄化する。この行動は人間の都合であり、精霊たちや森自体のためではないが、〈星詠みの魔女〉は星の巡りを信じ、一心に祈り歌う。
〈偽王の笛ガラニス〉の力で銀色に染まっていた土地が、〈星紡ぎのミラ〉によって浄化され、本来の色を取り戻していく。追い詰められた〈偽王の笛ガラニス〉は、エマニュエルの体を操り笛を吹こうとするが、〈沈黙の魔女〉モニカが無詠唱の四重強化魔術で笛を真っ二つに破壊する。〈偽王の笛ガラニス〉は、その瞬間に強い後悔と共に消滅する。モニカはその行為に美学を欠くと嘆き、自らの行為に悲痛を感じる。一方、ルイスはエマニュエルの安否を確認し、古代魔導具の破壊と封印を完了させる。魔導甲冑兵の動力源として使われていた宝石に封じられた精霊たちを解放する必要があるが、森の精霊たちはモニカたちを恨んでいる可能性が高いため、森を出てから解放することになる。モニカはルイスの助言を受け入れ、人間と精霊の立場の違いを認識する。
七巻七章
秋の名残を捧ぐ
ケリーリンデンの森西部で、バルトロメウス・バールは風霊リィンズベルフィードを抱きながら、〈沈黙の魔女〉モニカとの再会を期待していた。リンが目覚めた時、彼女は〈結界の魔術師〉カーラの存在を感じ取り、森の奥へ飛んでいく。バルトロメウスはリンの後を追うが、途中で〈星詠みの魔女〉メアリー・ハーヴェイに遭遇する。メアリーは彼に〈沈黙の魔女〉モニカを助けるよう頼む。バルトロメウスは、第二王子とモニカの「秘密の恋」を支援することに同意する。彼は自分もリンに恋をしていると感じ、若い二人の恋をイケてるお兄さんとしてサポートすることを決めた。
〈偽王の笛ガラニス〉から解放された風霊リィンズベルフィードは、高く飛び上がって周囲を観察した後、〈星槍の魔女〉カーラ・マクスウェルの元へ急降下し、彼女の前でスタイリッシュに着地する。カーラとの再会を喜びながらも、リンはカーラの旅立ちを静かに見送る。カーラはリンを抱擁し、次なる旅先である西への出発を告げる。リンはカーラに向けて、メイドとしての礼儀正しい挨拶を交わし、彼女の旅立ちを見守った。
〈偽王の笛ガラニス〉を破壊したモニカたちは、エマニュエルの魔導具を破壊するために彼の家を調査していた。その中で、グレンが氷霊の危機を伝えに来た。氷霊は魔力を失い、消滅寸前の状態にあった。ルイスは氷霊を救うことができないと説明し、グレンは助けを求めて再び走り去った。ラウルはグレンを追っていったが、モニカは自身の正体を明かすわけにはいかず葛藤しつつも、足が勝手に動いてしまう心情を抱えていた。
ケリーリンデンの森で、地霊セズディオが氷から解放された。セズディオは人間への不満を抱えつつも、氷霊への怒りを感じていた。一方、シリルは消滅しそうな氷霊ロマリアに薔薇を凍らせた氷を贈り、氷霊はかつて人間に加えた悲劇を語った。モニカは氷霊ロマリアを救うために、シリルの魔導具ブローチを使って氷霊を封印し、シリルの魔力で回復させる計画を実行した。その行動はシリルとグレンに深い感謝をもたらしたが、モニカ自身は複雑な心境に陥っていた。ラウルはモニカの行動を称賛し、精霊と人間の関係性についてレイと対話する中で、友情の価値を再認識した。
ルイスとブラッドフォードはエマニュエルの家に入った際、エマニュエルが逃げ出す気配を感じるが、彼を追わない。彼らの任務にエマニュエルの捕獲は含まれておらず、彼を公にするわけにはいかないためだ。エマニュエルの今後について彼らは推測し、クロックフォード公爵が〈宝玉の魔術師〉という手駒を失ったことで、彼の次の動きは七賢人に第二王子派を新しく送り込むか、現七賢人の誰かを引き抜くかになると考える。特に、〈沈黙の魔女〉モニカが第二王子に絆されていることがクロックフォード公爵にとって価値ある動きと見なされている。しかし、ルイスはモニカの行動が読めず、彼女がどの陣営につくかで戦況が変わる可能性があると警戒する。ルイス自身は第一王子派だが、クロックフォード公爵を支持するわけではなく、第二王子を支える彼を止めたいと考えている。
七巻八章
動きだした者
モニカがレイ、ラウル、シリル、グレンと共にエマニュエルの家へ戻ると、ルイスとブラッドフォードが家から出てくるところであった。彼らは家の中の魔導具を破壊しており、エマニュエルは逃げた後だった。その後、一行は森から出て、〈星詠みの魔女〉メアリー・ハーヴェイが待つ馬車へと向かった。メアリーは、森で起こったことを秘密にするようシリルとグレンに告げ、彼らをセレンディア学園に送り返すことを決めた。ルイスはモニカに対し、引き続き第二王子の護衛任務を続けるよう命じ、リンを呼び出したが、リンは魔力を使い果たし、休息を取るために消えた。ルイスは疲労しており、馬車で王都に戻ることになる。モニカはルイスの状態に気を遣いつつ、セレンディア学園に戻る準備をする。この一連の出来事は、モニカとルイスの関係性や、七賢人間の微妙なバランスを示している。
セレンディア学園に向かう馬車の中で、シリルは窓の外を見つめ、襟元のブローチを無意識に握りしめていた。このブローチの中には、今、氷霊ロマリアが封印されて眠っている。隣の席にいるグレンは、冬休みに修行して力をつけたと思っていたが、最近の出来事で何もできなかったという無力感をシリルと共有する。シリルも、決闘での惨敗や森での出来事を通じて、自分の無力さを痛感していた。二人の若者は、これからもっと学んで強くなる決意を新たにする。その様子を、向かいの席で〈星詠みの魔女〉が穏やかに微笑みながら見守っていた。〈星詠みの魔女〉は、シリルや〈沈黙の魔女〉の近くで輝く特別な星を見て、重要な時が近づいていることを感じ取っている。
ケリーリンデンの森の前でルイスと別れた後、モニカは枝に跨って飛行魔術を使い、セレンディア学園に向かった。彼女の飛行魔術は不安定であり、安定のためには跨る物が必要だったが、それによりルイスは置き去りにされた。多忙な日々を送っている中で、モニカは何かを忘れていないかと一瞬不安に思ったが、すぐにその考えは疲労により消え去った。彼女はバルトロメウス・バールの存在を思い出さなかった。セレンディア学園に到着したのは夕焼け時で、寒い冬の風が彼女を迎えた。屋根裏部屋に着地して枝を投げ捨て、ヴェールを外したその時、暗がりからブリジット・グレイアムが現れ、モニカに何者かを問い詰めた。
ケリーリンデンの森を南に抜けたエマニュエル・ダーウィンは、古代魔導具〈偽王の笛ガラニス〉の破壊により、途方に暮れながら街道を目指して歩いていた。彼はクロックフォード公爵の支援を受けて七賢人になり、魔導具工房を維持してきたが、今回の騒動が公爵に知られたら見捨てられることを恐れていた。不安と恐怖に震える中、夕焼けの空の下で第二王子フェリクスに出会う。フェリクスはエマニュエルに対して、クロックフォード公爵にこの件が知られる前に、彼の力になると申し出る。エマニュエルはフェリクスの提案に戸惑いながらも、公爵の脅威から逃れるための希望を見出すようだった。
七巻九章
優しい王子様と青い薔薇の思い出
夕焼けが差し込む屋根裏部屋で、生徒会書記ブリジット・グレイアムがモニカに対し、「お前は何者ですか」と問う。ブリジットはモニカの左手を強く握り、彼女が痛みに呻く様子から、モニカが左手を負傷していることを見抜く。モニカはフェリクスが探している左手を負傷した女性として認識され、ブリジットはモニカに何か交渉を持ちかけたい様子である。モニカはブリジットが一人で屋根裏部屋に潜んでいた理由に疑問を抱く。ブリジットはモニカの正体を探るために、ケルベック領内の修道院の記録を調べ上げ、モニカが魔術師であることと、フェリクスが探す人物であることを突き止める。しかし、モニカが七賢人であることまでは知らず、彼女がケルベック伯爵に雇われた諜報員ではないかと推測する。
ブリジットはモニカの正体については関心がなく、彼女にフェリクスの秘密を探る協力を求める。モニカには3日の猶予を与え、その間にフェリクスが左手を負傷した女子生徒を探すのを諦めさせると約束する。モニカはブリジットの申し出に困惑しながらも、彼女の計画に興味を持つ。ブリジットが去った後、モニカはラウルからの手紙を読み、彼からの潜入調査の提案を受け入れることを決意する。手紙はクロックフォード公爵の屋敷での植え替え作業を機に、公爵の悪事を暴く計画を示していた。モニカは父の死の真相を追求する決意を新たにし、ブリジットの計画への協力を前向きに検討する。
屋根裏部屋を後にしたブリジットは、寮の自室に戻り、待機していた年若いメイドのドリーに迎えられる。ドリーはブリジットに対し、仕事熱心で慕っている様子を見せ、温かい紅茶を用意する。ブリジットは、一人での調査活動には限界があるため、ドリーにモニカ・ノートンの見張りや探偵との連絡役を手伝わせていたが、それ以上の関与はさせられないと考えている。休日ながら制服に着替え、生徒会の仕事を理由に部屋を出たブリジットは、屋根裏部屋に潜んでいた。部屋に戻ると、新しく活けられたピンク色の薔薇に気づき、その花弁を冷えた指先でなぞりながら、過ぎし日のことを思い出す。
ブリジット・グレイアムが七歳の時、父であるシェイルベリー侯爵から、クロックフォード公爵の屋敷に招待された。この招待は、病弱で療養中の第二王子フェリクスの話し相手としてのものであった。ブリジットはこの招待が、フェリクスの婚約者候補としてのものだと理解していたが、フェリクスに対して不満を抱いていた。フェリクスは病弱で王宮の行事にほとんど出席せず、存在感が薄かった。
公爵の屋敷を訪れたブリジットは、美しく洗練された振る舞いを見せるが、フェリクスは恥ずかしそうに挙動不審であった。フェリクスがブリジットのために選んだ花を飾ったティールームで、二人はお茶をすることになる。ブリジットはフェリクスの頼りなさに内心苛立ちつつも、彼の優しさを感じていた。
ある時、ブリジットがジャムをこぼしてしまい、フェリクスはスカーフで作った青薔薇のコサージュをブリジットに差し出す。この優しい行動は、ブリジットを感動させ、彼女の心を変えることになる。
ブリジットはその後、フェリクスの話し相手として頻繁に招かれるようになり、フェリクスに語学やダンスを教えるようになる。フェリクスの不器用さや人見知りをサポートしながら、ブリジットは彼の優しさに心を動かされる。彼女はフェリクスを将来の伴侶、自分の王子様として見るようになる。
部屋に戻ったブリジットは、幼い日の思い出から現実に戻り、メイドのドリーに紅茶とジンジャークッキーを用意してもらう。そして、ブリジットはドリーにある噂を使用人仲間に広めるよう頼む。ブリジットにできることは少ないが、モニカ・ノートンを名乗る魔術師の少女を味方につける必要があると考えていた。
七巻十章
帰ってきた日常、広まる噂
モニカが屋根裏部屋に帰ってきた翌日、雪が降り、冬の寒さが一層深まった。休日だったため、モニカはほぼ一日中布団に包まって休息を取り、疲労を多少回復させることができた。次の日、彼女は通常通りに起き、学園へ向かう準備をした。この日々のルーティンは、かつて山小屋で研究に没頭していたモニカにとって、小さな成長だった。
学園へ向かう途中、モニカはシリルと遭遇する。シリルは外でモニカを待っており、風邪をひいている様子だった。シリルは以前の決闘でモニカを守れなかったことを謝罪し、モニカはシリルの思いやりに感謝し、自分も何か言葉を返そうとするが上手くできないでいた。その時、元気なグレンが現れ、彼もまた風邪を引いていたが、シリルとともに寮に戻ることになる。
モニカはシリルとグレンが離れていくのを見送りながら、彼らが魔力中毒になっていないか心配していたが、その心配は無用だった。また、氷霊のことも気にかけていたが、どう対処すべきか分からずにいた。
その後、モニカは学園に向かい、寒さの中で手を温めながら歩いていた。彼女は、多くの女子生徒が左手に包帯を巻いていることに気づき、その理由を不思議に思った。
フェリクス・アーク・リディルは、セレンディア学園での日々に憂いのため息をつく。ヒューバード・ディーによる決闘騒動から三日が経過し、行方不明だったシリルとグレンは七賢人によって救出されて学園に戻っている。この事件は一段落したが、フェリクスの個人的な問題、即ち左手を負傷した女子生徒──〈沈黙の魔女〉探しは難航している。学園内には「フェリクス殿下が、左手を怪我した少女を妻にしたい」という根拠のない噂が広がっており、左手を怪我した女子生徒が急増している。この状況は、フェリクスがレディ・エヴァレットの正体を突き止めることを困難にしている。
エリオットはフェリクスに報告書を提出し、左手を負傷した女子生徒探しの難航を示唆する。フェリクスはこの噂がどこから来たのか確かめようとするが、噂の出所は不明であり、様々なバリエーションがあるものの、「左手を怪我した少女が、殿下の妻候補」という点では一致している。
フェリクスは、エリオットからのやや皮肉を含んだコメントに対して、自分が左手を負傷した女性に感謝の言葉を伝えたいだけであることを説明する。さらに、エリオットはフェリクスの過去の風邪がちな性質をからかうが、フェリクスは昔の話だと応じ、エリオットの気遣いに感謝する。
モニカがブリジットに一方的な約束を持ちかけられてから三日が経過し、セレンディア学園では「左手を怪我した女子」が急増している。この現象はブリジットの影響力と手腕によるものであり、モニカはその効果に感心している。放課後、魔法史研究クラブのクラブ長コンラッド・アスカムがモニカに接近し、生徒総会を控えた予算交渉のためにお茶に誘うが、モニカは困惑する。
その時、ケルベック伯爵令嬢イザベル・ノートンと彼女の侍女アガサ、そしてモニカのミネルヴァ時代の先輩であるヒューバード・ディーが現れ、コンラッドを困惑させる。イザベルとヒューバードは、コンラッドに圧力をかけ、自分たちもお茶会に参加すると宣言する。コンラッドは半泣きになりながら引きずられていくが、アガサがついているため、モニカは少し安心する。
その後、ブリジット・グレイアムがモニカに近づき、約束の三日目であることを伝え、ティーサロンに移動するよう促す。ブリジットはフェリクスの「左手を負傷した女子生徒探し」を諦めさせるための計画を進めているようで、モニカに協力を求める。モニカはブリジットの提案に従い、静かに頷く。
七巻十一章
煌びやかな笑顔の応酬
ブリジットがモニカをセレンディア学園で最も格式の高い個室ティーサロンに連れて行き、二人きりで茶会を開いた。ブリジットは紅茶を楽しむようモニカに促すが、モニカは直接、ブリジットにフェリクス殿下の秘密と自分に何を手伝わせたいのかを問う。ブリジットはモニカの質問に先立ち、紅茶と花を愛でることで茶会の雰囲気を楽しむよう言う。モニカはフェリクスに対する思いが複雑であることを明かすが、ブリジットはその返答に満足するかのように、フェリクス殿下について語り始める。
ブリジットによれば、彼女が知るフェリクスは病弱で気が弱く、勉強も運動も苦手で、何をやっても平均以下であった。初めて会った時のフェリクスは、挨拶もろくにできないほど人見知りだったという。しかし、ブリジットはそんなフェリクスを誰よりも優しい人として見ていた。
ブリジットは、フェリクスが病気で長期間会えなかった時期があったこと、その後、病が完治して再会した時にはフェリクスがまるで別人のように変わっていたことをモニカに語る。彼女の話からは、フェリクスへの深い愛情と、彼が抱える秘密についての謎が感じられる。
フェリクス・アーク・リディルが一年ぶりにブリジットの前に現れた時、彼は以前とは大きく変わっていた。初恋の少年が、自信に満ちた仕草でブリジットに口づけをし、彼女の美しさを褒め称えた。しかし、ブリジットはその変化に深い違和感を覚え、内心で「お前は誰ですか」と問うほどだった。フェリクスの変貌は、勉強や運動、ダンスなど、あらゆる面での完璧な振る舞いを見せ、次期国王に相応しいと周囲から高く評価されていた。しかし、ブリジットはその新しいフェリクスを受け入れることができず、彼に対する強烈な嫌悪感を抱いていた。この出来事は、国内貴族が第一王子派と第二王子派に分かれ始めるきっかけとなった。
ブリジット・グレイアムは、昔のフェリクス・アーク・リディルを内気で人見知りな王子として記憶している。しかし、一年ぶりに再会した彼は別人のように変わっており、ブリジットはその変化に深い違和感を抱いた。彼女は現在のフェリクスが偽物だと疑い、本物のフェリクスを見つけ出すことを望んでいる。ブリジットは、本物のフェリクスがクロックフォード公爵の屋敷で幽閉されていると考え、その真実を確かめたいと願っている。彼女のこの決意は、モニカ・ノートンにも伝わり、モニカはブリジットをシェフィールドの祝日にクロックフォード公爵の屋敷に潜入する計画に連れて行くことを提案する。しかし、ブリジット自身が潜入を志願し、モニカを驚かせる。ブリジットの強い意志と恋する心の行動力に、モニカは深く感銘を受ける。
魔法戦クラブのクラブ長であるバイロン・ギャレットは、友人である魔法史研究クラブ長のコンラッド・アスカムに借りた本を返すために魔法史研究クラブの研究室を訪れた。研究室では、ケルベック伯爵令嬢イザベル・ノートン、編入生ヒューバード・ディーを含むメンバーが、歴代の七賢人について熱く議論していた。バイロンは、魔法兵団の元団長である〈結界の魔術師〉を自分のお気に入りとして挙げ、その場の雰囲気に巻き込まれる。イザベルは〈沈黙の魔女〉のファンであり、魔術についてもっと学びたいと熱意を示す。一方、ヒューバードは自身がミネルヴァの在学期間中に〈星槍の魔女〉、〈結界の魔術師〉、〈沈黙の魔女〉と時を同じくしていたことを自慢する。賑やかな議論の中で、バイロンはコンラッドに本を返すタイミングを見失い、結局下校時刻まで彼らの七賢人トークに付き合わされることになる。
七巻十二章
恋愛初心者迷走中
チェス盤を前にして、モニカはロベルト・ヴィンケルと再戦していた。ロベルトは留学生で、モニカに唯一匹敵する実力者だが、今回もモニカが勝利した。勝負後、ロベルトは音楽的優雅さを取り入れた話し方を試みていたが、モニカにはその意図が理解できなかった。その場にいたエリオットとベンジャミンも、恋愛についての独自の見解を展開し、モニカはますます混乱する。特に恋愛に関する話題になると、モニカはブリジットとフェリクスの関係を思い出し、恋愛の難しさを感じていた。
ロベルトは、恋愛もチェスの駆け引きのように考え、共に成長していこうと提案するが、モニカは恋愛についての理解が深まることはなかった。授業中の私語がチェス教師のボイドに注意され、彼らは急いでチェスの駒を並べ直した。この一連のやり取りから、モニカは恋愛の本質についてさらに疑問を持つようになる。
チェスの授業で恋愛について考えるようになったモニカは、放課後に図書館へ向かった。恋愛に関する本を探すが、どのカテゴリーで探せばいいのか悩んでいた。そこに、グレンと第三王子アルバート、その従者パトリックが現れ、モニカの悩みを聞いた。アルバートは、恋愛についての本の探し方に困っているモニカに哲学書を勧める。モニカは感謝して、哲学書を探しに行くことにした。
モニカはセレンディア学園に来てから理解できない恋愛に直面し続けていた。入学初期にはセルマ・カーシュという女性と出会い、彼女の婚約者を助けるための必死さに戸惑った。そして現在、フェリクスのために行動するブリジットを見て、似たような疑問を持つ。モニカは恋愛について理解したいと思うようになり、ブリジットを動かす恋心がどのようなものかを知りたがっている。
哲学書を読んだ後の放課後、モニカはラナとクローディアとの茶会で恋愛について話し始めた。モニカは恋をしたことがあるかラナに尋ね、恋愛に対する行動力を数式化できたら役に立つかもしれないと提案した。ラナとクローディアは、恋愛を異なる観点から語り、モニカは恋愛の多様性と複雑性に気づいた。クローディアは恋愛が抽象的で人それぞれ異なるものであると指摘し、モニカは人によって恋愛の形が異なることに納得した。ラナは一緒にいて安らげる人との恋愛も価値があると述べ、モニカは一緒にいて落ち着ける人がラナであると感じた。結局、モニカには恋愛が完全には理解できなかったが、それは人それぞれにとって大切なものであることを学んだ。
モニカがブリジットに協力を申し出てから一ヶ月後、冬眠から目覚めたネロとルイス・ミラーの契約精霊リンが屋根裏部屋で再会する。リンはモニカに、決闘騒動や〈偽王の笛ガラニス〉についての情報を伝え、ネロは冬眠していた間の出来事について語る。モニカは、リンの訪問が最近減ったことに気づき、リンはルイスの悪巧みに忙しいと語る。ネロは、自分が冬眠中の騒動に参加できなかったことを残念がるが、モニカはそれが良かったと考える。リンはルイスの悪事に関わっていることを暗示し、モニカはルイスが何を企んでいるか気になるが、追求は避ける。リンは窓から飛び去り、モニカはネロに最近の出来事を語る。ネロは、フェリクスが偽物ではないかという疑問を投げかけ、モニカも半信半疑であるが、肉体操作魔術の可能性を否定する。ネロはフェリクスが双子の兄弟ではないかと推測するが、モニカはそれに疑問を持つ。最後に、モニカは〈茨の魔女〉からの手紙を読み、ブリジットと共にクロックフォード公爵の屋敷に潜入する計画をネロに伝える。ネロは潜入作戦に参加することを楽しみにしていたが、モニカによると、今回はブリジットが協力者として参加する。モニカは、本物のフェリクスの運命が読めなくなった一〇年前の出来事とブリジットの言葉を繋げ、フェリクスに関する深刻な予感を抱く。
七巻十三章
従者の名前
潜入当日の朝、モニカはブリジットと共にクロックフォード公爵の屋敷近くの宿に移動し、潜入準備を始める。モニカが古着屋で購入した服に着替えるが、ブリジットから庭師としての不自然さを指摘される。ブリジットはモニカに肌を日焼けさせる練り白粉を塗ることを指示し、自身も変装を始める。ブリジットは化粧と小道具を駆使して下町の庭師になりきり、モニカはブリジットの徹底した準備と演技力に驚く。ブリジットが長期間にわたって準備していたことを知り、彼女のフェリクスに会うための決意を感じ取るモニカは、ブリジットに潜入できるか疑っていた自分を反省する。ブリジット・グレイアムは、自分が悪役令嬢と称するイザベル・ノートンとは異なり、演技において徹底していた。
潜入調査の日、モニカとブリジットはクロックフォード公爵の屋敷手前で、協力者の〈茨の魔女〉ラウル・ローズバーグと待ち合わせる。ラウルは野良着姿で二人を快活に迎え、モニカとブリジットは庭師に変装している。ブリジットはラウルの異なる印象に驚き、ラウルはブリジットの素性を深く詮索せずに歓迎する。ラウルは自身とローズバーグ家の使用人達と共に庭仕事に従事し、モニカとブリジットに屋敷内の調査は昼過ぎに行うようアドバイスする。昼には屋敷の中を見て回る機会があり、ラウルはその時に同行することを提案する。ブリジットは以前社交界でラウルを遠くから見たことがあると言い、その時の印象との違いに言及する。ブリジットの後を追いながら、モニカは社交界での立ち振る舞いに思いをはせる。
クロックフォード公爵の屋敷を訪れたモニカとブリジットは、その豪華さと歴史の重みに驚く。庭師に扮した二人は草むしりをしながら潜入調査を行い、ブリジットはミミズを見て硬直するが、モニカが手助けする。ラウルは彼女たちに西側の草むしりも依頼する。ブリジットの目的は、本物のフェリクスが屋敷に幽閉されている可能性のある場所を探ることである。モニカは呪竜騒動の主犯であるピーター・サムズと公爵の関連を調査するが、どこから手をつけていいか分からず、ブリジットの調査を手伝うことにする。庭師の小屋で老人と出会い、彼からピーター・サムズが以前この屋敷で医者として勤めていたことを知る。老人の話から、フェリクスの幼少期の出来事や、彼に仕えていた従者アイザック・ウォーカーが火事で亡くなったことを聞き、ブリジットはショックを受ける。屋敷内を見学中、クロックフォード公爵と遭遇し、ラウルの姉の名前を出して場を切り抜ける。コレクションルームでの会話から、モニカは屋敷内の隠し部屋の可能性を探る手掛かりを得る。全体を通じて、モニカとブリジットはそれぞれの目的を追いながらも、屋敷の人々や歴史に深く触れ、複雑な人間関係や過去の出来事に思いを馳せる。
七巻エピローグ
沈黙の魔女より粘土男へ
作業を終えた後、ラウルはローズバーグ家の馬車でモニカとブリジットを宿まで送り、彼らの調査について尋ねる。ラウルはブリジットの変装に気づき、彼女が飢えていると勘違いし、モニカにニンジンを渡してブリジットに食べさせるよう頼む。宿で、モニカはブリジットにクロックフォード公爵の屋敷内に本物のフェリクスが幽閉されている証拠は見つからなかったこと、屋敷内に隠し部屋がないことを伝える。ブリジットはフェリクスがすでに亡くなっていることを感じていたが、真実を自ら確かめたかったと述べる。モニカはブリジットに、帝国の言葉で「アーサー」が「アルトゥール」となることを確認し、以前学園祭で耳にした会話の意味を理解する。彼女はブリジットに王都に行きたいと伝え、ブリジットはそれを受け入れる。
庭師の老人がクロックフォード公爵の屋敷での長年の勤務を振り返り、体の衰えと共に後継者を探す必要性を感じている。彼の管理下にある庭は特別な知識が必要であり、かつて庭仕事を手伝ってくれた金髪の少年がいたことを懐かしく思う。この少年は、庭師にとって理想的な後継者だったが、厨房長との間でその少年の将来について口論になったこともある。少年はいつも庭仕事を手伝い、特に剪定作業に秀でていたが、今はもうその姿はない。ある日、廃棄されるはずだった天文学の本を、少年が庭師の老人の知らずに持ち去ったことがあった。その本は後に発見され、少年は厳しい罰を受けた。老人は、少年が生きていれば今二十歳になっていること、そして、成長したフェリクスのそばに少年の姿がないことを哀しみながら、煙草に火をつけ、少年への祈りを捧げる。
リディル王国王都の新聞に、青い鱗の粘土男へのメッセージが掲載される。これを見た諜報員ユアンは、そのメッセージが〈沈黙の魔女〉からのものだと確信し、自身の主人に伝える。ユアンの主人は、七賢人の一人である〈沈黙の魔女〉に興味を持ち、彼女の能力について話し合う。主人は、無詠唱魔術が暗殺に非常に有効であると認め、〈沈黙の魔女〉についてさらに知りたがる。そして、彼はリディル王国へ行くことを宣言し、ユアンはその突然の決断に驚きながらも従うことになる。
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