どんな本?
『狼と香辛料』は、支倉凍砂 氏による日本のライトノベル。
文倉十 氏がイラストを担当。
この作品は、中世ヨーロッパ風の世界を舞台に、旅の行商人クラフト・ロレンスと狼の耳と尻尾を持つ少女の姿をした狼神ホロの物語を描いる。
物語は、ロレンスとホロが道中で起こる様々な事件を、ユーモア溢れる掛け合いを散りばめつつ描かれている。
特に、交易路での出来事や街での商取引における駆け引き等、経済活動を争いの主軸にした異色作となっている。
また、この作品は2005年に行われた第12回電撃小説大賞の銀賞を受賞し、2006年2月に第1巻が発売。その後もシリーズは続き、漫画化、アニメ化、ゲーム化もされている。
2024年3月には再TVアニメ化を記念して、原作1~17巻の文倉十 氏による描き下ろしイラストを含む新カバー版が発売。
この作品は、その独特な世界観とキャラクターの掛け合いから多くの読者に支持されている。
読んだ本のタイトル
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
シリーズ第3弾! ロレンス…… わっちは、ぬしのなんじゃ?
行商人のロレンスと狼神ホロが、冬の大市と祭りで賑わう町クメルスンへと着くと、若い魚商人・アマーティがホロに急接近してきた!
狼と香辛料III
ロレンスとホロの間に微妙な気持ちのすれ違いが生じ、あらぬ誤解が……。
ロレンスとアマーティそれぞれの商売をも巻き込んだ大騒動が始まる!
感想
北を目指す旅を続ける行商人のロレンスと賢狼のホロの物語であった。
この巻では、クメルスンという町で祭りが開かれる中、二人に新たな試練が訪れる。
物語は、ロレンスとホロが冷たい冬を旅している場面から始まる。
旅の途中、ロレンスは魚の仲買人であるフェルミ・アマーティと出会い、彼から宿を紹介される。
アマーティは若くて野心的な商人であり、彼の登場は後に大きな波乱を引き起こす。
クメルスンでの祭りの準備中、ロレンスはホロを祭りに連れて行く約束をするが、そこで予期せぬ出来事が発生する。アマーティがホロに一目惚れし、彼女に求婚する。アマーティは、ホロの借金を返済し、彼女を自由にするための契約をロレンスに持ちかける。この提案はロレンスを動揺させ、ホロとの関係に亀裂が入り始める。
ロレンスはアマーティの提案に対抗するため、黄鉄鉱(サイコロのような石)を巡る信用取引に手を出す。この取引を成功させることで、アマーティの求婚計画を阻止しようとする。しかし、この取引はリスクが高く、ロレンスは大きな金銭的な危機に直面する。一方、ホロはロレンスの行動を冷静に見守りつつ、彼を信じて待つ。
物語の終盤で、ロレンスは黄鉄鉱の価格を操作し、アマーティの計画を台無しにする。この成功はロレンスとホロの信頼関係を再確認させるきっかけとなる。最終的に、二人はより深い絆で結ばれ、共に旅を続けることを決意する。
信頼と絆の重要性を問う物語であり、商取引の知識も盛り込まれている。ロレンスとホロの関係には試練が訪れるものの、二人が共に乗り越えていく過程が描かれている。結末では、困難を乗り越えた二人の関係がさらに強固なものになり、新たな旅への希望が示される。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
同シリーズ
その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
平成版に引き続きEDカット描かせて頂いております!> https://t.co/m0abEaAcQd
— 文倉十 (@haino) April 1, 2024
備忘録
第一章
ロレンスは教会都市リュビンハイゲンを出発して六日目を迎え、寒さが厳しくなる中を旅を続けていた。
特に川沿いは寒く、ロレンスは防寒のため古着を重ね着していたが、寒さを感じていた。しかし、過去の苦しい旅の記憶と比較すれば、現在の状況はましに感じられた。
ロレンスにとって、この冬はホロという新たな寒さを和らげる存在が加わっていた。
ホロは見た目は少女だが、実は神々しい巨大な狼の姿を持つヨイツの賢狼である。
二人は互いに防寒用の布を共有しながら、旅を楽しんでいた。
ロレンスはホロの尻尾の温かさを懐炉代わりにすることを提案するが、ホロはそれを拒否する。
しかし、最終的にホロは尻尾を膝掛けの下に入れ、寒さを和らげてくれた。ホロは食事に対する不満を口にするが、ロレンスはこれから行く町での美味しい食事を楽しみにしていることを伝える。
ロレンスの懐具合が心配なホロは、無駄遣いをしないようにとアドバイスする。
その後、二人は魚を積んだ荷馬車に出会い、美味しい魚料理を楽しみにする。
ホロは魚の良し悪しを判断する能力を持っていることが明かされ、ロレンスはホロの提案に従うことにする。
二人のやり取りは親密で、旅の苦労を共有することで絆が深まっている。
ロレンスはホロの存在が旅をより豊かなものにしていることを実感していた。
ロレンスとホロはゆっくり流れる川沿いを進み、人々が馬に水を飲ませたり荷を積み替えたりしている様子を目にする。
そこでは旅の研ぎ師や、桟橋で船頭と言い争う騎士らしい者の姿も見られた。
旅の風景は徐々に開墾された畑へと変わり、生活の匂いが漂い始めた。
その中で、ロレンスは魚を積んだ荷馬車と合流し、その荷主が自分より若い商人であることに驚く。
その商人は魚の仲買人で、ロレンスが夕食用に魚を譲ってもらいたいと頼むも、すべての魚が売り先に決まっているという。
しかし、その商人、フェルミ・アマーティはロレンスと同じローエン商業組合所属であり、クメルスンで宿を一部屋用意できるかもしれないと申し出る。
アマーティの提案は、宿泊先での魚の販売も兼ねており、ロレンスはこの提案を受け入れる。
クメルスンに着いた時には、大市と祭り見物のための人で賑わっており、宿が足りなくなるほどの人出だった。
ロレンスはアマーティの手配により宿を確保し、若い商人との親交を深めることに専念することにする。
夜が落ち始める頃には、彼らはクメルスンの町に到着していた。
宿での食事では、鯉の切り身と根菜を煮込んだスープを中心に、海と川の貝類を含む様々な魚介料理が並んでいた。
特に巻貝の蒸し物が目を引くが、ロレンスには苦手で、すべてホロが食べることになった。
ロレンスはカワカマスの塩焼きを楽しんでいた。
食後、アマーティに礼を言う際、宿の主人も含めて周りがその様子に笑った。
食事中、ホロは酒を飲みながら北の故郷ヨイツの味がすると言い、ロレンスはその酒の強さに驚いた。
その後、ロレンスはホロに故郷ヨイツの場所を尋ね、ホロは具体的な場所を覚えていないが、ニョッヒラから南西にあることを示唆した。
二人はその場所を目指すことになるが、ロレンスはホロが一人でヨイツへ帰ることを提案し、それが誤解を招く。
しかし、ホロは甘えてしまっていると言いながらも、ロレンスとの関係を大切に思っていることを伝えた。
最終的に、ロレンスはホロが一人で出発しないように注意を払うが、そうする自分自身に対して無力感を感じていた。
夜は更けていき、外からは酔っ払いの声が聞こえていた。
第二章
商人らしく、どれほど心配事があっても夜はきちんと眠ることができた。
朝起きて、隣のベッドでホロがまだ寝ているのを見て安堵した。
ホロは二日酔いで辛そうだったが、祭りへの期待で元気を取り戻す。
ロレンスは市場での商談を始め、麦商人マルクに釘を売りつけた。
取引を通じて北方への情報収集の協力を得る。
また、年代記作家に関する情報も求め、その仲介をマルクに頼むことにした。
マルクとの交渉を通じて、ロレンスはヨイツの場所を探す手がかりを得ようとする。
ロレンスはマルクと握手を交わし、市場での仕事を終えた後、ホロのために美味しい昼飯を買って行くことを決意する。
自分の現状を振り返り、ホロとの旅を大切に思うロレンスの姿が描かれている。
クメルスンで、昼を告げる鐘は貴族の家の屋根に取り付けられた豪奢なものである。
ロレンスが宿を出ると、酒の臭いが気になるが、ホロは二日酔いから回復しているようだ。
小麦パンを買ってきたことでホロは喜ぶ。
ロレンスはプロアニア北方の商人からの手紙を受け取り、北の大遠征が取りやめになったため武具の取り扱いに注意すべきという情報が記されていた。
これはリュビンハイゲンでの騒動を避けられたかもしれない重要な情報であった。
ロレンスは年代記作家に会う約束があり、ホロを連れて行くことは避けたいと考える。
しかし、ホロはロレンスに祭りに行くことを強く望み、最終的には一人で出かけることに同意する。
ホロはロレンスが帰るまでに誰かを連れてくる可能性をほのめかし、二人の関係の深さを示す。
ロレンスは複雑な感情を抱えつつ、ホロに対する思いやりを示す。
昼過ぎにクメルスンの商館に到着したロレンスは、人々が祭りを楽しむために開店休業している中、館長と会話して時間をつぶしていた。
そのとき、アマーティが入ってきてロレンスに声をかけ、宿の手配への感謝を述べる。
アマーティはロレンスと話すうちに、町の案内を申し出るが、実際にはロレンスの連れであるホロに興味があることが明らかであった。
ロレンスはアマーティにホロの案内を頼むことにし、アマーティは喜んでこれを受け入れる。
その後、ロレンスが待っていたバトスが商館に現れ、ロレンスと挨拶を交わす。
ロレンスは、ホロがアマーティと共に町を楽しむことで、自分の用事を済ませる間にホロの機嫌をうまく取ることができると考え、少し安堵する。
バトスは商売で儲けることよりも酒を楽しむ行商人だと思われていたが、実際にはまったく異なる人物であった。
バトスは三十年にわたり、風が強く木が少ないヒョーラムの山々を行き来する貴金属の行商人である。
ロレンスとの会話の中で、バトスは昔話や言い伝えに興味を持ち、それらを通じて自分が知らない世界に触れたいと願っていることを語った。
ロレンスはこの会話から、昔話や言い伝えの価値を再認識する。二人は、クメルスンの特定の地区に住む錬金術師たちを訪ねた。
その地区は、石壁に囲まれ、教会から追われた者たちが住む場所であり、外界とは隔絶された環境である。
バトスに紹介されたディアン・ルーベンスは、ロレンスが想像していた年代記作家のイメージとは異なり、若く美しい女性であった。
彼女は高貴な印象を持ち、ロレンスを家の奥に招き入れる。
ディアナの家は荒れ放題で、純白の羽根ペンが散乱し、本棚と机の周りだけが秩序を保っていた。
ロレンスが北の地方の昔話について質問すると、ディアナは即座に月を狩る熊によって滅ぼされたヨイツの町の話を思い出す。
彼女は本からその話を探し出し、詳しく説明する。ロレンスが実際に興味があるのはヨイツの町自体であり、その場所について尋ねると、ディアナはプロアニアより北にあるレノスという町に関連する昔話を語る。
この話により、ロレンスはヨイツの場所を特定するための手がかりを得る。
ディアナは昔話や言い伝えに情熱を傾ける人物であり、その興味は教会からの追放をも顧みないほどである。彼女はロレンスに対し、昔話を報酬として求める。
ロレンスはディアナに麦の豊作を司る狼にまつわる話をすることで、彼女の要求に応える。
ロレンスはディアナとバトスと共にさまざまな伝説や昔話について話し合い、楽しい時を過ごした後、日が暮れかけると共に家を後にする。
市場へ向かう途中、ロレンスはホロとの出会いが自分の冒険心を再燃させたことを感じる。
しかし、リュビンハイゲンでの経験を思い出すと、自分は冒険活劇の主役ではなく脇役に過ぎないと苦笑する。
マルクからはレノスへの行き先変更を了承されるも、アマーティとホロが仲良くしているという情報を聞かされ、複雑な心境に陥る。
ホロがアマーティに襟巻きを買ってもらったことを知り、それが贈り物であることに戸惑うロレンス。
さらに、ホロがアマーティから競り落としたというサイコロ(黄鉄鉱)について話し合う。
翌朝、マルクの露店にいた小僧から驚くべき言伝を受け取る。
第三幕
クメルスンの町は朝早くからラッドラ祭の準備で活動していた。
ロレンスは商館に到着し、そこでアマーティによって騎士ハシュミットとして宣言される。
アマーティは羊皮紙の契約書を用いて、ホロの借金を返済し、自由を得させた上で結婚を申し込むと宣言する。
この契約は古い方法であり、羊皮紙に血判を押し、相手にナイフを渡すことで成立する。
ロレンスはアマーティの提案を受け入れ、契約書を確認し、契約の履行期限を祭り最終日とする。
アマーティはトレニー銀貨千枚でホロの借金を返済するというが、その金額を出せるか疑問視される。商館での騒動は賭け事にまで発展し、多くの商人たちがこの件に注目する。
ロレンスはホロが自分との旅をやめることはないと確信し、アマーティの計画が成就する可能性は低いと考える。
しかし、バトスはアマーティが資金調達の当てを持っていることを伝え、ロレンスに対策を練るよう助言する。
アマーティの資金調達の方法については不明だが、ロレンスはホロとの関係を信じている。
ロレンスがホロにアマーティの提案について説明すると、ホロの反応は薄く、尻尾の毛づくろいを優先していた。
アマーティが銀貨千枚を渡した場合のロレンスの対応を尋ねると、ロレンスはホロに使い込んだ金額を清算した後、残りはホロに渡すと答える。
しかし、ホロはロレンスが真っ先に考えたことを言わなかったことに気づく。
ホロは、アマーティが契約を完了した場合もロレンスが契約を守るとし、ホロ自身は自由の身であると言う。
ホロの信頼を得ていることを強調し、ホロがロレンスと一緒にいたいと強く感じていることを示唆する。
ホロは、アマーティに契約を申し込まれた場合の対処方法として、笑って受けると言う。
ロレンスはホロのこの発想に言葉を失い、ホロの余裕と懐の広さに圧倒される。
しかし、ホロはもし契約を受け入れたら、ロレンスに直接歩み寄り、感情を表現すると冗談めかして言う。
ロレンスはホロの裏工作や水面下での動きを期待しており、祭りへの同行をホロに提案する。
最終的に、ホロの機嫌次第で銀貨千枚の取引が左右されることになり、ロレンスはホロを祭りに連れて行くことに同意する。
ロレンスはアマーティの財産を調査するため、マルクの協力を得て情報収集を行う。
マルクは、祭りで忙しい中でも二つ返事で協力を承諾し、ロレンスと共にアマーティの納税台帳を確認することになる。
納税台帳から、アマーティが銀貨千枚を持っている可能性は低いと判断されるが、マルクとロレンスはさらにアマーティの行動を監視することを決定する。
その過程で、アマーティの性格や行動原理について考察し、彼が単独で行動し、他人との横のつながりを軽視する傾向があることを推測する。
しかし、ロレンスは商人としての横のつながりを利用することに躊躇しないとし、マルクもそれに同意する。
一方、ホロはマルクとロレンスの計画に対して自分の望みをユーモラスに表現し、二人を笑わせる。
最終的には、ロレンスが商人としての策略を駆使してアマーティとの競争に臨む構えを見せる。
ロレンスはマルクに依頼してアマーティに関する情報収集を行うことにし、ホロの身に起こり得る未知のリスクに備えると同時に、アマーティの金儲けにも何らかの形で関与できるかもしれないと考える。
町が祭りで賑わう中、二人はマルクの店を後にして人々が集まる場所へと向かう。
そこでは祭りの開始を告げる角笛の音が聞こえ、奇妙な装束をした人々が行列をなしている様子が目に入る。
これらの行列は祭りに特有の物語性を持っており、ホロとロレンスは宿から祭りの様子を眺めることにする。
祭りの場では、奇怪な姿をした人々や動物の人形が登場し、最後には参加者たちが歌や踊りで大通りを舞踏場に変えてしまう。
ホロはロレンスを誘って踊りに加わることを提案し、ロレンスもこれを受け入れる。二人は宿を出て、祭りの輪に加わる。
長い間大きな騒ぎになったのは久しぶりで、ロレンスとホロは祭りで踊り、笑い、酒に酔いしれた。
宿に戻りながら、ロレンスはホロとの時間に満ちた楽しみと暖かさを感じていた。
マルクからの伝言があり、アマーティの金稼ぎの手法についての情報が入ったことを知る。
しかし、ロレンスはその事実に対して特に心配することなく、そのことを一時忘れていたほどだった。
また、年代記作家ディアナからの手紙も届き、そこにはおそらくホロの故郷に関する重要な情報が含まれていることが示唆されている。
この情報はホロにとって非常に重要なものであり、彼女はそれを聞いて感動し、二人の目的地がかなり特定されたことに喜びを感じている。
ロレンスはマルクの店に向かう前に、ホロが手紙を読めるように置いていく。
二人の間には深い信頼と絆が築かれており、これからも共に旅を続けていく決意が新たにされた。
ロレンスは、アマーティの金稼ぎの方法についてマルクから情報を得るために市場にある彼の露店を訪れた。
マルクは、祭り期間中は通常よりも商売が暇になるため、ロレンスの依頼を快く引き受けていた。
アマーティの稼ぎ方には便乗する余地があったようで、その方法は黄鉄鉱の販売であった。
この黄鉄鉱は占いや美容の秘薬として女性たちに大人気となり、その価格は異常なまでに高騰していた。
ロレンスは、この儲け話を聞いて後悔し、自分もこのビジネスに参入することを決意する。
しかし、この商売の成功はアマーティがホロに対する借金の返済を容易にするだけでなく、ロレンスのリュビンハイゲンでの損失を補う機会でもあった。
マルクはロレンスに黄鉄鉱の販売での利益の可能性を示唆し、ロレンスはその提案を受け入れることにした。
ロレンスは四つの黄鉄鉱をトレニー銀貨三十枚で購入し、宿に戻る途中、祭りの第二部が始まっているのを見る。
祭りの空気に浮かされ、黄鉄鉱の価格高騰を商機と捉えていた。
しかし、彼の心はアマーティが千枚のトレニー銀貨を稼ぎ出す可能性に動揺することなく、黄鉄鉱による儲けに集中していた。
一方で、祭りの熱気に乗じて人々が普段とは異なる行動を取っている様子を見て、その一時的な変化が黄鉄鉱の価値を上げている原因と考え、商人としての興味を抱いた。
宿に戻ったロレンスは、ディアナからの手紙がホロを深く傷つけていることに気づく。
手紙には、ホロの故郷ヨイツに関する情報が含まれていたが、その内容にショックを受けたホロは、自分が独りになったと感じ、深い絶望に陥っていた。
ロレンスはホロを慰めようとするものの、ホロは自分の存在意義や二人の関係を疑い、苦悩する。
ホロの痛みと孤独感に対して、ロレンスは適切な言葉を見つけられず、ホロに対する深い愛情にもかかわらず、その感情を適切に伝えられないでいる。
第四幕
ロレンスは、祭りの荒々しい夜の雰囲気の中、ホロとのやり取りに思いを巡らせながら町を歩いていた。
彼はアマーティが黄鉄鉱の荒稼ぎによってすでに相当な利益を手にしている可能性を認識し、自らがアマーティの稼ぎを阻止しなければならないと考えた。
しかし、その具体的な方法については頭を悩ませていた。ロレンスはホロがアマーティと何らかのやり取りをしているのを目撃し、彼らが宿の一室で会話を交わしていた可能性を考えた。
しかし、ホロがロレンスの方を見ても慌てる様子がなかったことから、ロレンスはそのやり取りがあてつけである可能性を感じ取った。ロレンスは、ホロとの関係を修復するためには自分から行動を起こす必要があると感じ、宿に向かいながら覚悟を決めた。
彼はホロに自分の思いを伝えることで、何とか状況を好転させようと考えていた。
宿に戻ったロレンスは、ホロからの手紙を受け取った。
手紙にはアマーティの財産内訳が記されており、ロレンスはこれがホロからの暗示であると解釈した。
さらに、アマーティからの婚姻誓約書も手渡され、これにはホロとアマーティが夫婦になるための誓いが書かれていた。
しかし、後見人の欄は空白であり、ホロの名前は不慣れな筆跡で記されていた。この状況からロレンスは、ホロがアマーティとの結婚を考えていること、そしてアマーティが財産内訳をロレンスに知らせるためにホロがこの情報を手に入れたことを理解した。
それは同時に、ロレンスがアマーティの計画を打ち砕くことができれば、ホロが再び彼のもとに戻る可能性があることを意味していた。ロレンスは宿の主人に現金を全て出すように求め、これからの行動に備えた。
彼はホロとの関係を回復させるため、そしてホロがアマーティと結ばれることを阻止するために、あらゆる努力をする覚悟を決めた。
ロレンスはアマーティを経済的に打ち負かす計画を実行に移すため、アマーティに対して信用売りの取引を持ちかけた。
信用売りとは、現時点での相場価格で未来の特定時点に商品を販売する取引である。
アマーティがこの取引を受け入れれば、ロレンスは明日の相場価格にかかわらず、約束された価格で黄鉄鉱を売却できる。
ロレンスの計画は、アマーティに信用売りを提案し、同時に市場で黄鉄鉱の価格を操作して暴落させることでアマーティに大きな損失を与えることにある。アマーティとの交渉後、ロレンスは市場で黄鉄鉱を大量に買い集めるための協力者を探した。
しかし、町商人のマルクはロレンスの頼みを断り、代わりに別のアプローチを提案した。
マルクは、錬金術師たちが黄鉄鉱を持っている可能性が高いとし、彼らに接触することを勧めた。
さらに、ディアナという年代記作家を通じて、錬金術師たちと交渉することを提案した。ロレンスは、マルクとの会話から町商人と行商人との間に存在する違いと、それぞれの商売のリスクや責任の重さを理解した。
また、マルクは表立っては動けないものの、黄鉄鉱の買いつけ先を示すことを約束し、ロレンスの計画を間接的に支援することを決めた。ロレンスは計画を成功させるために必要な黄鉄鉱を確保しようとするが、その過程で商人としての自己認識と、他者との関係性について深く考えさせられた。
計画の実行に向けて、ロレンスはバトスやディアナといった新たな協力者との交渉に臨むことになった。
ロレンスは黄鉄鉱を仕入れるため、そしてディアナとの仲介を再度頼むために、バトスを訪ねた。彼はバトスに黄鉄鉱の在庫があるかどうか、または錬金術師たちが持っている可能性があるか尋ねた。
バトスは黄鉄鉱の投機的な取引を良く思っていないが、ロレンスの説得に応じて、錬金術師たちが黄鉄鉱を持っている可能性があると示唆した。
そして、ディアナを通じて錬金術師たちにアクセスすることを勧めた。バトスはロレンスに対して、彼が真に商売のためだけに動いているわけではないこと、そして彼の持つ誠実さを試した。
バトスの助言として、ロレンスが「白い羽をしまう箱を買いに来ました」と言えば、錬金術師たちに意図が通じるだろうと伝えた。
バトスの協力に感謝しながらも、ロレンスは彼からの具体的な在庫の情報を得られず、しかし錬金術師たちにアプローチするためのヒントを得た。このやり取りを通じて、ロレンスはバトスとの信頼関係を深め、黄鉄鉱を仕入れるための新たな途を見出すことに成功した。
バトスは、ロレンスがどれほど時間がなくとも、待つことの重要性を説いた。
そして、商館の裏口から出て直ちにディアナのもとへ向かうことを勧めた。
ロレンスは、黄鉄鉱を仕入れるためにディアナの家を訪ねた。
彼は夜道を進んでディアナの家に到着し、バトスから得た合言葉を使ってディアナに黄鉄鉱の買いつけを頼んだ。
ディアナは、既に黄鉄鉱を買いつけに来た人物がいることを明かしたが、その取引がまだ確定していないため、ロレンスに黄鉄鉱を譲る可能性があると伝えた。
ロレンスはディアナに感謝し、黄鉄鉱の買いつけを依頼した。この訪問では、ロレンスがホロとの関係に関連して異教の神々と人間との間の特別な関係について尋ねるシーンもあった。
ディアナはロレンスの質問に対して肯定的な回答をし、詳細な話を後日改めてすることを約束した。結局、ロレンスはディアナの協力を得て黄鉄鉱の買いつけの可能性を見出し、さらに自分の探求についても新たな情報を得た。
彼はディアナの家を後にし、今後の行動計画を考えた。
ロレンスがディアナからの帰りにマルクの露店に戻ると、マルクと小僧がいる場面に遭遇した。
ロレンスはディアナとの話が一応進展したが、先客がいるため結果が不確かであるとマルクに報告した。
マルクからは、現金払いであれば黄鉄鉱を三百七十枚分確保できるという情報が提供された。
この提案を受けてロレンスは、どうにかして黄鉄鉱を確保しようと決意した。マルクとロレンスの間には、商取引を超えた友情が芽生えていた。
マルクはロレンスに行商人の呪いをかけられていると言い、それがホロとの関係を通じて解けつつあると示唆した。
また、マルクはロレンスに対して、人生で大切なものを見つけたことで行商人としての姿勢に変化があったことを認めさせた。夜が更けていく中、マルクはロレンスがその夜の寝床をどうするか尋ねた、ロレンスは露店で夜を過ごすことを選んだ。
これは験担ぎかもしれないと述べ、マルクはそれを受け入れた。
二人は夜明けに再び会うことを約束し、願掛けの乾杯を交わした。
第五幕
ロレンスは、マルクの露店の側で一人眠ったことに気づき、寂しさを感じる。
露店の前で掃除をしている小僧、ラントと挨拶を交わし、ロレンスは今日の予定をほのめかす。
ラントは、ロレンスの計画に積極的で、彼の冒険心に触れる。
ロレンスがラントに名前を尋ねると、ラントは自分が北の村出身であることを明かす。
ロレンスはラントに信頼を寄せ、朝食を買いに行かせる。
マルクも登場し、ラントへの親切心と商人としての計算を見せる。
朝の冷たい空気の中、ロレンスは計画に集中し、ラントが朝食を持って帰ってくるのを待つ。
人々が露店の前で待機している間に、ロレンスは黄鉄鉱の相場を注視していた。アマーティが露店の前に現れ、ロレンスは彼の動きに警戒しつつも、ホロの姿が見えず不安を感じる。
ホロはロレンスを見つめ、不機嫌そうに立ち去る。
ロレンスは自身が置かれた状況に悩み、ディアナからの使いが未だに現れず、黄鉄鉱の価格は上昇し続けている。
ラントがロレンスに接触し、石の決済を行いたい者がいると伝え、ロレンスは銀貨二百五十枚分の黄鉄鉱を購入する。
アマーティはロレンスと同じように周囲を気にしていたが、ロレンスはディアナからの使いが現れるのを待ちわびる。
しかし、ディアナからの使いは結局、交渉が失敗したという消息をもたらす。
絶望的な状況の中、ロレンスは自分がどれほどホロを信じているかを再認識し、ラントの言葉に励まされる。
ホロが再び現れ、ロレンスと共に黄鉄鉱を売りに出す。
この一連の売りにより、黄鉄鉱の価格は大きく変動し、アマーティの計画を阻止することに成功する。
結局、ロレンスとホロは再び互いの絆を確認し合うのだった。
終幕
黄鉄鉱の相場が暴落し、最終的にはロレンスとホロによる売りが追加され、相場は下落した。
アマーティは大きな損失を被り、ホロとロレンスの行動に衝撃を受ける。
ロレンスはアマーティとの契約を終え、ホロとの関係を見直すことになる。
ホロはロレンスに対して不満を表明し、ロレンスは自身の行動を反省し、ホロへの信頼を再確認する。
ディアナとのやりとりを通じて、ロレンスはホロとの絆の重要性を再認識し、二人は再び夜祭りへと出かけることになる。
Share this content:
コメントを残す