どんな本?
物語の概要
本書は、異星人との戦争から帰還した英雄、四分咲タカシが「普通の高校生活」を夢見て日本の高校に編入する物語である。しかし、友達が一人もできないまま、学校での日々は過ぎていく。さらに、かつて戦場を共にした軍の仲間たちが来日し、彼の平穏な学園生活は波乱に満ちたものとなる。
主要キャラクター
• 四分咲タカシ:異星人との戦争から世界を救った最強の帰還兵。普通の高校生活を送りたいと願っているが、なかなか友達ができずに苦労している。
• ナタリー:北欧出身のタカシの戦友。タカシに対して積極的な愛情を示し、彼の生活に干渉してくる。
• シェリー:タカシの戦友であり、彼の高校に急遽入学することが決定し、彼の学園生活にさらなる波乱をもたらす。
物語の特徴
本作は、最強の帰還兵である主人公が平穏な学園生活を望むものの、戦友や幼馴染、さらには謎の令嬢たちによって次々とトラブルに巻き込まれる様子を描いている。戦場での経験と学園生活とのギャップ、そして個性的なキャラクターたちとの関係性が、他の作品とは一線を画す魅力となっている。また、電子版には書き下ろしショートストーリー『失った彼女のプロローグ』の特別付録が収録されており、ファンにとって興味深いポイントである。
出版情報
• 出版社:主婦と生活社
• 発売日:2024年12月20日
• ISBN:978-4-391-16382-7
• 価格:880円(税込)
• 電子書籍版特典:書き下ろしショートストーリー『失った彼女のプロローグ』収録
• シリーズ:PASH!文庫
• 判型:文庫
• ページ数:304ページ
読んだ本のタイトル
戦地から帰ってきたタカシ君。普通に高校生活を送りたい 2
著者:安い芸 氏
イラスト:千種みのり 氏
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あらすじ・内容
「いいなぁ…俺も陽キャになりたい」
”普通の学園生活”を夢見て高校へ編入した最強帰還兵、四分咲タカシ。
しかし友達が一人もできないまま、学校での日々は残酷に過ぎていく。
そんな状況でもお構いなしに愛をぶつけてくる戦友のナタリーや幼馴染、
そしてタカシを嗅ぎ回る謎の令嬢に翻弄される中で、
シェリーの入学も急遽決定し、ますます憧れのスクールライフは遠ざかるばかり。
そんな時、かつて戦場を共にした軍の仲間達が来日してきて——?
無双不可避の学園生活編、波乱の第二巻!
感想
「平穏を夢見る最強帰還兵」
四分咲タカシは、戦地から戻り普通の高校生活を夢見て編入したが、その日常は波乱続きであった。
元戦友のナタリーや幼馴染、謎の令嬢たちに振り回されながら、思い描いていた穏やかな生活は遠ざかる一方であった。
さらに、戦場時代の仲間たちが訪日し、新たな混乱が。
最強の力を持つタカシが望む「普通の学園生活」とは何なのか――そんな問いを投げかける物語であった。
「明るい主人公が織りなす爽快な日常」
普通を望む彼が非日常に巻き込まれるギャップが魅力であった。
彼の底抜けの明るさは、戦地帰還兵という重い背景を感じさせず、むしろ、理不尽を力でねじ伏せる姿勢が爽快感を与えた。
特にナタリーの無邪気さや、友人たちとの掛け合いが物語を軽快に進めており、読む者を笑顔にさせる力を持っていた。
「個性豊かなキャラクターたち」
登場人物たちの個性が際立っており、特にナタリーや幼馴染たちの存在感が強い。
タカシにベッタリなナタリーの存在がクラスメイトとの誤解を生み、タカシを孤立させるが、その一方で彼女の愛情深さが際立つ。
謎の令嬢雲雀巴の異常な執着や、他のキャラクターたちの奔放な行動も含め、どの場面も目が離せない展開であった。
「軽やかなテンポと安心感」
物語全体のテンポが良く、重くなりがちな題材を明るく描いている点が印象的であった。
タカシの圧倒的な力が物語に安心感を与え、どんな困難が訪れても気楽に見守れた。
「細部の描写と今後への期待」
戦場から帰還したという設定が新鮮であり、細かな描写がその緊張感を補強している。
一方で、平和な日常への憧れと現実とのギャップが面白かった。
続巻では、このギャップがさらなる混乱を引き起こすのか、期待せずにはいられない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
フィクション
備忘録
プロローグ
定期報告の開始
ガーネット・ステルヴィアは、統合特殊コマンド・生体兵団総監として、タカシとの定期報告を開始した。彼女の情けない声が電話越しに響く一方で、かつて戦場で活躍した指揮官としての彼女の手腕が振り返られる。ガーネットは戦場で的確な判断と采配を行い、数多くの窮地を乗り越えてきた人物である。
ガーネット総監の情けなさと信頼
普段は冗談めいた態度や抜けた部分が目立つが、彼女は生体兵と一般兵の橋渡し役として重要な役割を果たしてきた。生体兵たちとの確執を和らげるため、彼女が尽力した結果、現在の平和が築かれた。タカシを含む部下たちが彼女を慕う理由がここにある。
誤解と許し
ガーネットは以前、シェリーに対して嘘をついたためタカシの怒りを買い、その結果無視されていた。彼女は泣きながらタカシに弁解し、シェリーへの振り込みを証明しようとした。その後、タカシは「二度とシェリーを泣かせるな」と彼女に警告し、彼女も一応反省した様子を見せた。
タカシとの会話と揺れる関係
ガーネットはタカシの高校生活の始まりを祝いつつ、過去の嘘について話題を逸らそうとする。しかしタカシに見透かされ、話は続く。彼女はタカシがシェリーやナタリーに甘いと指摘し、結果的にタカシの寛大さが二人を穏やかにしたと述べた。
通話後の安堵と未解決の問題
通話を切った後、ガーネットはタカシとの関係修復に成功したことで安堵した。彼女は肩をほぐしながら机上の山積みの書類に目を向け、問題解決に取り掛かろうとするものの、その背中にはどこか気の抜けた雰囲気が漂っていた。
1.戦地から帰ってきたタカシ君。普通に友達を作りたい
登校前の平穏な日常
タカシはナタリーと姉と共に学校への道を歩いていた。戦場から離れ、こうして穏やかに登校する日常を取り戻せたことを改めて実感していた。ナタリーとシェリーにも、この平和な空気感を早く共有させたいと考えていた。
新たな注意事項
姉がタカシの肩を叩き、彼に注意すべき人物について話を始めた。雲雀巴という財閥令嬢が同学年に在籍しており、彼女を怒らせると社会的に抹殺される可能性があると警告した。タカシは姉の話を聞きながら、学校側の対応に不満を感じていた。
ナタリーの反応と釘刺し
ナタリーは雲雀に関わることに興味を示し、冗談めいた態度で絡む意思を見せた。タカシはそれを制止し、彼女に近づかないよう説得した。ナタリーは表向きそれに応じたが、彼女の性格を考えると安心しきれなかった。
雲雀との遭遇の可能性
タカシは雲雀の在籍クラスや特徴について姉に尋ねたが、具体的な情報は得られなかった。それでも名前を知るだけで十分と前向きに考え、先生や同級生から情報を収集すれば問題ないと結論付けた。
姉の決意とナタリーの甘え
ナタリーが雲雀に絡まれた場合の対処法を尋ねると、姉が「先生に相談する」と力強く約束した。ナタリーはその言葉に感激し、姉に甘えるような態度を見せた。一方、タカシは二人のやり取りを冷静に眺め、万が一雲雀とトラブルが起きた場合に備えた。
未来への楽観と進行
タカシはこれからの高校生活において、雲雀に絡まれる可能性について深く考え込むことは避けた。まだ何も起きていない以上、心配する必要はないと判断した。姉とナタリーの絡み合う姿を見ながら、日常を大切にしたいという思いを胸に抱いて歩みを進めた。
クラスでの期待と編入生の噂
私立水蓮寺高校一年D組では、編入生の話題で盛り上がっていた。特に留学生のナタリーの美貌について、生徒たちの期待が高まっていた。一方で、クラスの人気者である天乃京介は「興味がない」と淡々と答えつつ、内心では編入生に対する関心を隠しきれなかった。
編入生の登場と教室の興奮
担任教師に伴われ、ナタリーと四分咲タカシが教室に現れた。ナタリーの美しさにクラス全体が魅了され、歓声が上がった。その親しみやすい態度と整った容姿のギャップに生徒たちは完全に心を掴まれた。一方でタカシの自己紹介はほとんど注目されなかった。
タカシと天乃の対立
タカシはクラスで唯一話しかけられた天乃に積極的に接触したが、天乃はこれを快く思わず、反発した。さらに、天乃はクラスメイトにタカシを無視するよう指示し、タカシは孤立していった。その状況にもかかわらず、タカシは楽天的な態度を保ち続けた。
ナタリーの人気とトラブルの芽生え
ナタリーはクラスの中心的存在となり、休み時間には生徒たちが彼女を囲んだ。一方、タカシは天乃やクラスメイトからの敵意を感じつつも、ナタリーとの親しい関係を築こうとしていた。その後、ナタリーの軽口が原因でタカシはさらに誤解を受け、彼の悪評が広まった。
誤解の拡大と新たな問題
ナタリーが「事実婚している」と冗談を言ったことで、タカシはさらに孤立を深め、クラス中に誤解が広がった。この噂は放課後までに学年全体に伝わり、結果としてタカシは周囲から非難されることとなった。最終的に、別のクラスにいる幼馴染までもが怒りを露わにして現れた。
トラブルの余韻
ナタリーの無邪気な発言が引き起こした混乱と誤解は、タカシの学園生活に波乱をもたらした。それでも彼は楽観的であり、ナタリーとの関係を通じてこの状況を乗り越えようとしていた。
放課後の騒動と美少女たちの登場
放課後、タカシがカバンを整理していると、桔梗原凛子と春椿文香が教室に怒鳴り込み、彼に詰め寄った。凛子はトップモデルとして知られる美少女で、文香は母性あふれる小柄な少女であった。二人はタカシとナタリーの関係に激怒しており、それぞれ自分の立場を主張した。タカシは弁解しつつも、事態を収められず混乱が広がった。
ナタリーの無邪気さと対立の激化
ナタリーが無邪気にタカシを擁護しつつ甘える一方で、凛子と文香の怒りは収まらなかった。二人はタカシを巡る主導権争いに拍車をかけ、家に連れて帰ろうとするなど、その対立はエスカレートしていった。ナタリーはその状況を楽しんでいるように見えたが、タカシは完全に翻弄されていた。
錬児の登場と天乃の動揺
その場に錬児が現れ、タカシへの強い友情を示したことで状況がさらに複雑化した。錬児は他の生徒とは異なる立場でタカシを支えたが、その存在に天乃は動揺を隠せなかった。タカシの人気の高さがさらに浮き彫りとなり、周囲の視線が彼に集中した。
スタジアムでの緊張と絆
放課後、タカシたちは野球観戦のためスタジアムに向かった。ナタリーはタカシと親密な様子を見せ、凛子と文香はその関係を見過ごせず、間接的にタカシとの絆を主張し続けた。スタジアムでは牛丼や応援歌を通じてそれぞれがタカシとの思い出やつながりをアピールし、見えない戦いが繰り広げられた。
野球観戦と新たな火種
試合が進む中で、タカシと錬児はプロ野球の話題で盛り上がり、ナタリーや凛子、文香との温度差が浮き彫りとなった。凛子と文香はタカシを巡る主導権争いを続けつつも、観戦を楽しむナタリーに微妙な優越感を抱いていた。タカシはそれらの思惑を感じ取ることなく、能天気な態度を崩さずに過ごしていた。
帰宅後の騒動とタコ焼き
タカシが帰宅すると、シェリーが怒りながら出迎えた。彼女は一日中家にいて退屈だったため不機嫌であったが、タカシが持ち帰ったタコ焼きを口にすると、機嫌が直った。ナタリーもその様子に満足そうであった。一方でシェリーはタカシの学校生活について興味を示し、友達ができなかったことをナタリーがからかった。
軍の仲間の不安と編入の提案
シェリーは、タカシが孤立していることが軍の仲間に知られた場合の問題を指摘した。特に生体兵たちが行動を起こす可能性を懸念し、シェリー自身も早急に編入すべきだと提案した。タカシは平穏な高校生活を守るため、クラスメイトの誤解を解く努力をすることを決意した。
雲雀との初接触
翌朝、タカシが登校すると、雲雀巴という生徒が彼に接触してきた。雲雀はタカシの過去を調査し、彼が戦場での英雄であることを知っていた。彼女は彼の素性を明かすよう迫り、会話の場を変えることを提案した。
視聴覚室での対話
雲雀に案内された視聴覚室には屈強な男たちが待ち構えており、異様な雰囲気に包まれていた。雲雀はタカシの功績を賞賛しつつ、彼の普通の生活を疑問視した。さらに、彼女は自分の家柄や情報網を用いてタカシを徹底的に調査していたことを明かした。
雲雀の告白と異常な執着
雲雀はタカシを「探し求めていた完璧な存在」と評し、彼を自分のものにすると宣言した。その執着は常軌を逸しており、彼女はタカシを自分の「お婿さん」にすると断言した。タカシは彼女の異常な言動に困惑しつつ、状況を静観するしかなかった。
雲雀巴の突飛な求婚
巴は四分咲タカシを自分の家に連れて行き、両親に紹介したいと提案した。彼女はすでにタカシを「お婿さん」として扱い、新婚生活の計画を語り始めた。しかしタカシはその場で結婚を断り、他を当たってほしいと返答した。これにより、巴の機嫌は一変し、激しい感情を露わにした。
雲雀家の権威と脅し
巴は雲雀家の権威を盾に取り、彼女が管理する武装部隊「涅槃の審判」の存在を誇示した。しかしタカシはその脅しを意に介さず、逆に部隊名の由来を尋ねるなど、話を逸らしながら冷静に対応した。このやり取りは巴をさらに苛立たせた。
涅槃の審判とタカシの忠告
タカシは巴の提案を再度否定し、ナタリーとシェリーという二人の存在を挙げた。彼は、巴がこの二人に手を出すことは無謀であり、返り討ちに遭うだけだと忠告した。巴はタカシの言葉に納得せず、嫉妬からさらに状況を悪化させようと試みた。
タカシの力の実演
巴と彼女の武装部隊に対し、タカシは自らの力を示すため、彼らの武器を強制的に放棄させた。さらに自ら銃を使って命の危険を演出し、その頑丈さを実演した。これにより巴と彼女の部下たちは完全に戦意を喪失し、タカシの実力を理解した。
タカシの思いと別れ
タカシはナタリーとシェリーが自分にとって特別な存在であり、命を何度も救われた恩義があると語った。そして、彼らのために生きていきたいという決意を述べ、巴に別れを告げて視聴覚室をあとにした。彼の言葉と行動は巴に深い印象を残したが、再び彼女がタカシに関わる可能性は低いと予想された。
ナタリーの疑念とタカシの説明
休み時間にナタリーはタカシに声をかけ、ルッカを使ったことを問い詰めた。彼女はタカシを守ろうとする一方で、状況に納得がいかず不満を露わにしていた。しかし、タカシが軽い冗談を交えながら求婚の話だと説明すると、ナタリーは安堵して笑顔を取り戻した。
巴の予想外の反応
五分遅れて教室に現れた巴は、虚ろな表情でタカシに話しかけた。彼女は先ほどの出来事を「初めての衝撃」と称し、奇妙な興奮を見せていた。タカシが見せた行動は、巴の趣味や性癖に直撃し、彼女の興奮を引き起こしたのだという。ナタリーもその様子に驚き、二人は巴の反応を理解できず困惑していた。
巴の新たな一面とクラスメイトの誤解
巴は、ナタリーと話を弾ませるなど和やかな雰囲気を見せたが、その後の奇行がクラスメイトに誤解を与えた。優しくクールな巴が突如として様子を変えたことで、タカシが彼女を壊したと受け取られたのである。この結果、タカシのクラスでの評価はさらに悪化した。
友達計画の崩壊と新たな決意
タカシは友達百人計画が破綻したことを嘆き、ナタリーや巴の励ましを受けたものの納得しきれなかった。しかし彼は他のクラスから友達を増やし、評価を取り戻す計画を立て始めた。その時、銀髪で三白眼のシェリーが教室に現れ、タカシは驚きの表情を見せた。
2.戦地から帰ってきたタカシ君。普通に内申点を稼ぎたい
タカシの噂を巡る姉と菫の訪問
花梨は弟タカシの悪い噂を払拭するため、友人の菫とともに一年生の教室を訪れた。道中、菫はタカシという名前を聞いて動揺し、過去の記憶と結びつけるような仕草を見せた。教室でタカシの姿を見つけた菫は、彼に強い関心を抱き、花梨に紹介を懇願した。しかし、花梨はタカシの名誉を守ることを優先し、菫の頼みを冷たく拒否した。
シェリーの編入とクラスでの騒動
教室ではタカシとシェリー、ナタリーが言い争いをしていた。シェリーは突如、水蓮寺高校に編入した理由を説明し、買収による「フライング入学」であることを明かした。ナタリーはその行動を非難したが、シェリーは無邪気に胸を張った。制服のサイズが合わないことや資金の使い方を巡って議論が続く中、タカシは彼女の行動に呆れながらも諦めた様子を見せた。
菫の暴走とタカシへの思い
一方で、菫はタカシに対する強い想いを爆発させ、花梨の制止も聞かずにアプローチを仕掛けた。大胆な行動にタカシも困惑し、花梨と菫は口論に発展した。騒ぎが大きくなり、教室内の注目を集める事態となった。最終的に昼休みが終わるまで二人の争いは収まらず、タカシに関する新たな誤解を招く結果となった。
巴の疑問とナタリーたちの説明
一方、巴はナタリーとシェリーに戦闘能力について問いただした。巴はタカシが「二人のほうが強い」と言っていたことを根拠に話を進めたが、ナタリーとシェリーはその真意を説明した。戦闘力だけで見れば二人のほうが上だが、タカシの特殊能力を考慮すれば勝負にならないと語った。特にルッカの強制力を例に挙げ、タカシの力がいかに圧倒的であるかを改めて強調した。巴はその説明に驚き、タカシの能力の本質を理解した様子であった。
ファミレスでの相談と乙女達の策略
放課後、大塚錬児は文香と凛子にファミレスへ呼び出された。二人は思い詰めた表情で、タカシをめぐる策略を相談し始めた。凛子は「タカシを寝込みで襲う」と冗談めかして提案したが、錬児は呆れた様子で断った。最終的に、幼馴染としての特権を生かし、タカシの気持ちを引き寄せるため、海でのイベントを企画することが決まった。錬児の提案により、文香と凛子の雰囲気は和らぎ、計画に意気込んでいた。
ナタリーとシェリーのネイル披露
翌日、ナタリーとシェリーは凛子の手で施されたカラフルなネイルをタカシに披露した。二人とも嬉しそうに笑顔を浮かべ、陽キャのような雰囲気を見せていた。タカシも一緒にネイルをしようかと提案したが、巴が「イメージが崩れる」として猛反対した。その後、タカシや仲間たちは「陰キャ」と自称しながらも笑い合い、和やかなひとときを過ごした。
体育の授業と男子生徒の疑念
体育の授業前、タカシは男子生徒たちに囲まれた。天乃をはじめとする男子生徒は、ナタリーたちが自分たちを無視する理由をタカシに問いただした。タカシはその理由を知らず困惑したが、天乃はタカシの鍛え抜かれた体に驚き、その場は混乱のまま収束した。男子生徒たちはタカシの存在に複雑な感情を抱きながらも、彼の体力や存在感に圧倒されていた。
編入生の体力測定と美波の指導
体育の時間、タカシたち編入生は担任教師である美波の指導で体力測定を受けた。美波は緊張しつつも、規定に従い記録を取ると説明した。一方、巴は授業を抜けて勝手に参加していた。タカシたちはタイムを調整して測定に挑み、不自然さを避けるため計算し尽くした結果を残した。タカシの走行タイムは6.3秒、ナタリーとシェリーはともに7.5秒という絶妙な記録を出し、美波は大いに驚いていた。
巴の期待と失望
測定を見守っていた巴は、タカシたちが本気を出さず、目立たないように振る舞ったことに憤慨した。巴は彼らに「世界記録を塗り替え、イキり散らかしてほしい」と熱望していたが、タカシは断固としてそれを拒否した。巴は地団駄を踏んで抗議したが、彼らの冷静な態度にさらに不満を募らせた。
ナタリーとシェリーの怒りと測定機器の破壊
その後、ナタリーとシェリーは握力や背筋測定に挑んだが、クラスメイトへの苛立ちから無意識に力を込めてしまい、測定機器を壊してしまった。タカシは急場を凌ぐため、美波に嘘をついて時間を稼ぐよう二人に指示した。巴は興奮し、再び「イキる」ことを要求したが、タカシたちは必死に状況の収拾を図るだけであった。
巴の満足と三人の困惑
結果として、巴は彼らの非常識な身体能力を垣間見て歓喜したが、タカシたちはただただ困惑するばかりであった。この一件で巴の中二病的な夢は一部叶ったが、タカシたちは平穏な日常を保つための苦労を実感した。
喫茶店の謎の外国人たち
田舎の喫茶店に現れた四人の外国人たちは、圧倒的な美貌で周囲の注目を集めていた。黒いロングドレスを纏った双子の女性、関西弁を話す美少年、そして少女漫画の王子のような長身の男性は、静かに時を待っていた。そして、「生の終着点」と「死への分岐点」を連れ戻すという決意を胸に、行動を開始した。
壊れた測定機器と巴のフォロー
体育の授業で壊れた測定機器は、美波の善良な性格もあり、タカシたちの説明で簡単に誤魔化せた。壊した機器の費用は巴が「感謝の意」として弁償したが、その理由はタカシには理解できなかった。同時に、ナタリーたちがクラスメイトを無視している理由が明確にならず、タカシはその問題に頭を悩ませていた。
幼馴染たちの海への誘い
放課後、幼馴染の文香と凛子がタカシを水着選びに誘った。夏休みに海へ行く計画のためだった。文香と凛子の提案を快諾したタカシだが、会話を聞きつけたナタリーが計画に加わると宣言し、シェリーや巴も次々に同行を申し出た。最初は戸惑いながらも、最終的に全員で海を楽しむことが決まった。
戦友からの突然の通信
その矢先、タカシの脳内に直接響く声が現れた。軍時代の戦友ポートマンからのテレパシー通信であった。久しぶりに聞く彼の声に、タカシは懐かしさを覚えつつも警戒を滲ませた。この通信が新たな展開の予兆となることを、タカシは予感していた。
3.戦地から帰ってきたタカシ君。普通に事情を聞き出したい
軍事演習場への招集
夕暮れ時、タカシたちはポートマンに呼び出され、近くの軍事演習場に向かった。ポートマンはナタリーとシェリーも必ず連れてくるよう依頼していたが、二人は彼の意図を訝しんでいた。ナタリーに対する恐怖心や誤解を抱えていた彼が、突然連絡をしてきた理由について議論が交わされた。
演習場での再会
演習場にはポートマンだけでなく、カーソン姉妹や飛龍の姿もあった。久しぶりの再会に喜びを見せる者もいれば、新しい外見や口調に驚きを隠せない者もいた。特に飛龍は、少年の姿に変わったことで周囲を困惑させたが、過去の仕草や特徴から本人であることが確認された。
ポートマンの提案
ポートマンは静かに、ナタリーとシェリーを軍に連れ戻すことが目的であると告げた。しかし、具体的な理由を明かさないままの要求は、二人からの強い拒絶を招いた。彼の説得もむなしく、話は平行線をたどった。
緊張の高まる場面
帰ろうとするタカシたちを引き留めるため、カーソン姉妹が砲身を展開して威嚇した。この行動にナタリーは激怒したが、タカシが彼女をなだめたことで事態は一旦収束した。一方で、ポートマンや飛龍が理由を話せない事情を抱えていることが示唆された。
軍の命令という可能性
最後に、タカシは飛龍の態度や発言から、この一連の行動が軍の命令である可能性に気付いた。飛龍は明言を避けつつも、消え入りそうな声でその可能性を否定しきれなかった。タカシたちは、これが単なる友人間の問題ではないことを悟った。
型式と戦闘準備
生体兵の間では、自身の改造具合や能力を示すために「型式」を名乗る習慣があった。これにより、自分の特性を簡潔に伝えることができ、戦闘前の鼓舞にも使われた。ナタリーとシェリーは型式を名乗り、タカシも「混合全種・絶種特殊生体兵」として戦闘準備を整えた。
飛龍の挑発とシェリーの激怒
飛龍はシェリーを挑発し、「ペチャパイ」という禁忌の言葉を放ったことで彼女を激怒させた。シェリーは彼を攻撃しようとしたが、タカシが彼女をなだめた。一方、飛龍とポートマンの間で口論が始まり、状況の切迫感が次第に明らかになった。
カーソン姉妹の遠距離攻撃
カーソン姉妹は遠距離攻撃を得意とし、陽電子砲を準備していた。しかし、タカシは特殊能力「O種オトヒメ」を発動し、目視可能な範囲で姉妹の砲身を遠隔で破壊した。この能力により、姉妹は戦闘不能に追い込まれた。
ポートマンと飛龍の敗北
ナタリーとシェリーは本気を出し、ポートマンと飛龍を瞬時に無力化した。二人は苦痛に呻きながら地面に倒れ込んだ。ナタリーとシェリーは彼らを踏みつけつつ挑発を続け、戦闘の優位性を完全に掌握した。
カーソン姉妹の降伏
カーソン姉妹は陽電子砲を失い、戦闘継続が不可能となった。タカシの誘導により二人は降伏を表明し、地上に降りることを選んだ。これにより、全員が無力化され、戦闘は終息した。
戦闘の余韻
タカシはナタリーとシェリーをなだめつつ、ポートマンや飛龍に対しても状況を整理する姿勢を見せた。カーソン姉妹の敗北を待ちながら、タカシは戦友たちの中にある複雑な事情を感じ取り、次の行動を考えていた。
戦闘後の事情聴取
戦闘後、タカシ達はポートマンとカーソン姉妹を正座させて事情を問い詰めた。飛龍が「守ろうとしていたのはタカシの日常だ」と告げ、戦争中のタカシの願いを思い出させた。軍ではタカシの帰還を噓で伝え、暴動を収めていたが、シェリーやナタリーの離脱が疑惑を招き、軍の兵士達は日本への移住を計画し始めていた。
軍のカモフラージュ作戦
ナタリーとシェリーを軍に戻すことで、タカシがいずれ帰還すると信じさせる作戦が明かされた。ポートマン達は理由を隠したのは、タカシが事情を知れば全てを受け入れてしまうと考えたためであった。彼らの行動は、タカシの日常を守るためのものだったが、結果的にはタカシに疑念を抱かせる結果となった。
疑念と皮肉
シェリーは作戦の不自然さを指摘し、日本語を覚えたことや複雑な計画に疑問を呈した。ナタリーも同調し、直接的な方法を取らなかったことを批判した。その結果、タカシは彼らが裏で日本で暮らす準備を進めていた可能性に気づいた。
タカシの怒りと飛龍達の反応
タカシは自身を利用した彼らの計画に怒り、真意を問い詰めた。しかし、飛龍達は肩を震わせながら笑いを堪えており、真剣に謝罪する様子はなかった。タカシは彼らの態度にさらに憤りを募らせたが、彼らの反応はどこか親しげで和やかであった。
エピローグ
帰路での会話とスキンシップ
家へ向かう途中、タカシは軍に戻るべきか悩んでいたが、ナタリーとシェリーは彼を励ました。ナタリーは彼に甘えつつ、スキンシップを試みるもシェリーとの間で冗談交じりの競り合いが始まった。タカシは二人の行動を止めるためにアイアンクローを再度使った。
ニュースの内容とオリヴィアの新曲
自宅に戻ったタカシを迎えた姉は、緊急ニュースについて話し始めた。画面に映るのは国際的歌姫オリヴィアであり、彼女の新曲が大々的に報じられていた。歌詞にはタカシの名前が含まれており、彼が戦場で彼女を救ったエピソードや愛の告白が含まれていた。この内容にタカシは驚愕し、嫌悪感を露わにした。
姉の警告とタカシの動揺
姉はこの曲が引き起こした騒動について語り、世界中で「シブサキ・タカシ」が注目されている現状を説明した。タカシは事態の深刻さに肩を落とし、日常を守るという願いがさらに遠のくことを実感した。
ナタリーとシェリーの反応
ナタリーとシェリーはタカシの状況をからかいながらも楽しんでいる様子を見せた。二人は英雄であるタカシが平凡な生活を送るのは不可能であり、さらに騒がしい日々が訪れると指摘した。タカシは二人の態度に憤慨しつつ、状況を打開する方法を模索し始めた。
番外編 彼らの夕食
夕食の計画とシェリーの告白
ナタリーが夕食を提案し、タカシは歓迎会を兼ねて外食を決めた。しかし、シェリーが手持ちがほぼゼロであることを告白した。彼女が食費を家の購入資金に使ったと知り、タカシは呆れながらも叱責した。シェリーは軍のレーションとカロリーブロックで飢えをしのいでいたことを誇らしげに語ったが、その無計画さにタカシはさらに深いため息をついた。
焼肉屋での大宴会
焼肉屋に到着すると、家族と合流して豪勢な食事が始まった。タカシは大量の肉や料理を次々と注文し、ナタリーとシェリーもそれに乗じてさらに追加注文を繰り返した。店長はタカシ達を特別な客として扱い、対応に追われた。一方で、父親は注文の多さに青ざめ、母親は毅然とした態度で支払いを見守るよう指示した。
食材不足と父親の安堵
大量の注文により店の食材が尽き、店長が注文の終了を伝えた。タカシは腹八分目で納得したが、父親は明らかな安堵の表情を浮かべた。その後、店長が伝票を差し出すと、父親はその金額に驚愕した。会計は120万円に達し、父親は涙目でその額を家族に伝えた。
書き下ろし番外編 彼らのショッピング
ナタリーとシェリーの変化
ナタリーとシェリーはこの一年で大きく変わり、穏やかで普通の女の子らしい性格になっていた。彼女たちは以前のような喧嘩やいたずらを控え、日常生活を楽しむ姿が目立っていた。この変化は彼女たちを知る人々に驚きを与え、過去の過激なイメージは完全に払拭されていた。
二人きりの買い物
シェリーとタカシは、日用品を買いにデパートへ向かった。道中、シェリーは機嫌よく青空を見上げながらはしゃぎ、初めての二人だけの外出を「デート」と称して楽しんでいた。タカシはシェリーの無邪気な振る舞いに少し戸惑いながらも、その明るさに引き込まれていた。
服選びでのシェリーの変身
デパートでの服選びでは、タカシがシェリーに似合うフリル付きのスカートやブラウスを提案した。シェリーは初めは戸惑っていたが、タカシの説得に応じ試着を決意。試着室から現れた彼女は、見違えるように可愛らしい姿に変わり、周囲の店員たちをも驚かせた。タカシはその姿に内心感心しながらも、彼女の調子に乗る発言に軽く突っ込みを入れつつ、次々と服を選び続けた。
フードコートでのトラブル
昼食を取るためフードコートを訪れると、店員に対して大声で怒鳴るチンピラを目撃した。タカシとシェリーはその様子を冷静に観察しながら、挑発的な言葉を投げかけた。激昂したチンピラはタカシに詰め寄ったが、タカシは冷静に対応し、瞬時に男を取り押さえた。その後、チンピラを説得しつつ、握り潰したナイフとフォークを見せつけて黙らせた。
店員への優しさ
トラブルを解決した後、タカシは女子大生の店員を励まし、追加で注文したドリンクを差し出した。その態度は優しさに満ちており、彼の飾らない人柄に店員は感動していた。一方、彼女に気を引こうと後から近づいた他の男性たちは、タイミングを逃し空回りしていた。
シェリーとの絆
一連の出来事を通して、タカシとシェリーの絆が深まった。シェリーはタカシの支えを得て日常生活を楽しみ、彼との買い物や食事を通じてさらに親密になっていった。タカシもまた、彼女の無邪気さや明るさに触れつつ、彼女のために行動する自分を受け入れていた。
失った彼女のプロローグ
初戦の圧勝と深まる乖離
改造された一般兵たちは初めてデブリとの戦闘を経験し、数時間の戦闘の末、死者を出すことなく圧勝した。この結果に軍上層部は沸き立ち、人類の未来に希望を見出したと評価していた。しかし、改造兵たち自身は安堵こそあれ、喜びや希望はなく、ノーマルと呼ばれる改造されていない人間たちとの乖離を深く感じていた。未来への展望も持てない中、彼らはただ虚しさに浸るだけであった。
戦闘後の宿舎での恐怖と絶望
戦闘を終えて宿舎へ戻った改造兵たちは、異形のデブリ「ベヨネッタ純種」との戦いの恐怖に苛まれ、涙を流していた。恐怖で震える者、泣き叫ぶ者、自暴自棄になる者が続出し、絶望的な空気が漂っていた。宿舎内はまさに地獄の様相を呈していた。
逃亡者への警告と金髪少女の冷徹な言葉
宿舎から逃げ出そうとする者たちに、金髪の少女が冷静に警告を与えた。敵前逃亡は死罪であり、宿舎を出れば体が爆散する仕掛けが施されていると彼女は断言した。その達観した態度と濁った瞳が、彼女の言葉に妙な説得力を与えた。男たちは逃亡を諦め、絶望の中で泣き叫び始めた。
明るい少年少女の登場と新たな出会い
宿舎内の暗い雰囲気を一変させるように、明るい声で笑い合う少年少女が現れた。六花と呼ばれる少女と二人の少年は、改造兵の一人であるシエル・アイスランドに声をかけた。彼らの底抜けに明るい笑顔と会話は、絶望に沈む彼女にとってあまりにも場違いで、不思議な感覚を抱かせた。このときが、シエルと四分咲タカシが初めて出会った瞬間であった。
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