どんな本?
物語の概要
本作は、SFとラブコメディを融合させた作品である。主人公・山田西南は、極度の不運体質を持つ少年である。
ある日、彼は墜落した宇宙船に衝突するという出来事をきっかけに、銀河警察組織「ギャラクシーポリス(GXP)」に入隊し、宇宙へと旅立つことになる。
彼の行く先々では、数々の冒険と多くの美女たちとの出会いが待ち受けている。
主要キャラクター
- 山田西南:極度の不運体質を持つ少年で、本作の主人公。ひょんなことからGXPに入隊し、宇宙での冒険を繰り広げる。
- 正木霧恋:西南の幼馴染であり、彼を陰ながら支える存在。GXPの職員としても活躍する。
- 雨音・カウナック:GXPの二級刑事で、西南をGXPにスカウトした張本人。明朗快活な性格で、西南の冒険に深く関わる。
- リョーコ・バルタ:宇宙海賊「ダ・ルマー」の幹部。温和な性格で、西南たちと関わる中で重要な役割を果たす。
- ネージュ・ナ・メルマス:宗教国家メルマスの元最高権力者。幼生固定により外見は少女だが、約2000歳の女性。西南を「お兄ちゃん」と慕う。
物語の特徴
本作は、『天地無用!』シリーズのスピンオフ作品であり、シリーズ10周年を記念して制作された。主人公・山田西南の視点から描かれる物語は、彼の不運体質が引き起こす数々のトラブルや、それを乗り越える成長が魅力である。また、多彩なキャラクターとの交流や、宇宙を舞台にした壮大な冒険が展開される点も特徴的である。
出版情報
- 出版社:KADOKAWA
- レーベル:富士見ファンタジア文庫
- 刊行開始:2003年4月
- 既刊数:17巻(2018年6月現在)
- 関連メディア展開:本作はテレビアニメ『天地無用! GXP』として、2002年4月から9月にかけて日本テレビほかで放送された。
読んだ本のタイトル
真・天地無用!魎皇鬼外伝 天地無用!GXP 4
著者&イラスト:梶島 正樹 氏
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あらすじ・内容
お年に一度のお楽しみ! 人気シリーズ最新刊!!
雨音・霧恋・エルマの美女三人と同居生活が始まった山田西南。うれし恥ずかし一つ屋根の下コメディに加え、『天地無用!』の生みの親・梶島正樹ならではの裏設定・裏エピソード満載で贈る完全無欠ノベライズ第四弾!
感想
生体強化を受けた山田西南は、リハビリとして雨音、霧恋、エルマと同居生活を始めることになり、さらに瀬戸から派遣された女官たちも加わって、にぎやかな日々がスタートする。美女たちに囲まれたコメディ満載の生活が展開する中、霧恋の葛藤や新キャラクター・美希の登場など、アニメでは描かれなかった設定が加わり、物語に深みが増していく。ところが、物語の終盤で西南の先輩が海賊に襲われて死亡するという衝撃的な展開が訪れ、物語は新たな局面を迎える。
本巻は、裏設定が随所に盛り込まれ、登場キャラクターたちの内面が掘り下げられることで、アニメ版とは異なる魅力を放っている。特に、霧恋の過去や複雑な心情が描かれることで、西南との関係がより深く感じられる。美女たちとの多層的な関係性は、単なるハーレム展開ではなく、登場人物同士の対比が丁寧に描かれており、作品に奥行きをもたらしている。
さらに、本巻はコメディとシリアスのバランスが絶妙で、読者を飽きさせない。コミカルな同居生活に和みつつも、終盤の衝撃的な事件が西南の成長に影響を与える予感があり、次巻への期待が高まる。天地無用シリーズの豊かな世界観と複雑な人間関係が描かれた本巻は、新鮮な読後感を残す作品である。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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その他フィクション
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備忘録
1「林檎の恩返し」
銀河アカデミーの外周リング
銀河アカデミーの外周リングは、太陽系が収まるほどの巨大な構造物で、技術や経済、政治の中心地であった。ここには銀河連盟やGPの本拠地もあり、リングには多くの企業や人が集まり、敷地不足が常態化していた。そのためリングは次々に増設され、完全な球体構造になるという冗談も現実味を帯びていた。
スラム街の様子と林檎の歩み
立木林檎はスラム街を歩いていた。廃材やゴミに囲まれたスラムには、夢破れた者たちが集まり、彼女の通過を見つめていた。林檎の高貴な雰囲気に圧倒された住人たちは、追いかけるも間合いを乱され、襲撃の機会を逃していた。彼女は住人に威圧感を放ち、追跡者たちを退散させたものの、恐怖に怯える彼らの様子に複雑な心境を抱いていた。
イアン・ノーザンと彼の焦燥
スラムの支配者であるイアン・ノーザンは、自らの計画が失敗に終わりかけていることに悔しさを覚えていた。彼はウィドゥーの報告書と一部の精子や卵子標本を手に入れ、これを利用して大金を得る計画を立てていたが、その幸運が危うくなっていた。
林檎の来訪とその威圧感
イアンのもとに林檎が来訪することが知らされ、彼の部下たちはその威圧感に驚きを隠せなかった。林檎が「樹雷の鬼姫」の経理担当であり、アカデミーの権力者としての影響力を持っていることに気づいたイアンは、彼女の意図に対する不安を募らせていた。
林檎との対面への準備
受付から林檎の到着が伝えられ、緊張を抑えきれない受付嬢の様子が映し出された。イアンは緊張の面持ちで彼女と対面する準備を整えた。
林檎の到着直前のスラム街
林檎がイアンの会社に到着する少し前、彼女が歩いていたスラム街で、バリー、コーン、アランの三人が質素な食事を囲んでいた。かつての豪華な暮らしを懐かしむ彼らは、少ない肉片を巡って口論し、テーブルをひっくり返してスープをこぼしてしまった。落胆していた彼らは、周囲が林檎に注目する様子に気付いた。
三人の林檎への期待
三人は林檎が裕福な樹雷の皇族と気付き、彼女に助けを求めようと考えた。自己評価が高いアランは、林檎に恩人として迎えられると信じ込み、浮かれた三人は彼女に近づこうとした。しかし、林檎の威圧感に恐れをなし、悲鳴を上げながら逃げ出し、その後ファンクラブ員に捕まった。
林檎の到着とイアンとの対面
林檎がイアンの会社に到着し、案内された部屋の空気が彼女の存在感で一変した。彼女の優雅で圧倒的な雰囲気にイアンを含む社員全員が魅了された。イアンは林檎に商談の席に着くよう勧めたが、彼女の一挙手一投足に緊張を感じ、部屋全体が林檎の存在感に圧倒されていた。
林檎の要求とイアンの対応
林檎は、イアンの会社が保有している遺伝子コレクションの譲渡を要求する契約書を提示した。契約内容は的確で、イアンも交渉の余地がないことを認識した。交渉を手早く終えるため、イアンは林檎に譲渡を約束した。
推薦状の贈呈とイアンの考え
商談終了後、林檎はイアンにMM財団への推薦状を贈呈し、今後の付き合いに期待すると告げて退出した。イアンはこの推薦状に一瞬高揚したが、林檎の真意に気づき、推薦状を入会試験のように捉えた。そして林檎が残していった営業先の情報を活用することを決意し、社員たちに営業の指示を与えた。
老執事との会話と経費管理
林檎は、転送ポッドから降り立ち、執事の東堂からウィドゥーレポートに関する報告を受けた。林檎は、先の作戦が樹雷と銀河連盟にもたらした恩恵と、その費用対効果の高さを説明し、西南が報奨金を得ることで他者からの妬みを買う恐れがあると懸念を示した。また、彼女は西南の安全を守るためにも、慎重に行動するよう東堂に念を押した。
ウィドゥーレポートの受け取りと推薦状の反応
東堂の疑問に対し、林檎はイアンが賢明であることを確認し、今後も西南を助ける存在として機能する可能性があると話した。ウィドゥーレポートが美守の管轄に移行したことも確認し、林檎は次の任務へ進む決意を固めた。
ウィドゥーの証言とその影響
林檎はウィドゥーの証言が西南の人生に大きな影響を与えることを自覚していた。ウィドゥーの言葉が西南の純粋さを「凶器」と評し、それが他者にとっての猛毒であると表現した点に驚きと共感を感じた。
ネーネの錯乱と林檎の対処
突如現れたネーネは、スラムの臭気を敏感に察知し錯乱状態に陥った。林檎は彼女を落ち着かせようとしたが、結局は柑橘系の香水を使って鎮静し、東堂に引き取らせた。その後、林檎は急いで自室に戻り、次の任務に備えた。
鷲羽との対話とMMDの由来
温泉でくつろぐ林檎に対し、鷲羽がモニター越しに接触。林檎は鷲羽へMMD財団の由来を尋ね、鷲羽から「みんな無駄遣いしちゃ駄目だぞ」がその元となったと聞き驚愕した。林檎はその単純な由来に理解を示しつつ、財団の設立背景と夷隈教授の倫理観に関する逸話を聞き、哲学士たちの独特な価値観に触れた。
穂野火との別れと次の任務へ
鷲羽との対話が終わると、林檎は穂野火と軽くやり取りを交わし、次の任務に向けて露天風呂を後にした。
2「ガッチリ買いまショウ」
クルーザー内での議論と西南の後悔
クルーザーのコアブロックで、西南とその仲間たちは霧恋から過去の出来事の説明を聞いた。西南は、寮を脱走した夜の出来事が引き起こした騒動が自分のせいであったことに衝撃を受け、自責の念に駆られていたが、雨音とエルマがその責任は古いシステムを放置していた人々にもあると慰めた。霧恋は、一度西南を支えると決意した立場から、彼を励ますために自らの内心を押し殺した。
パトカー騒動の真相と霧恋の気恥ずかしさ
エルマは霧恋がパトカーを遠隔操作して西南を守ろうとした事実を暴露した。霧恋は照れくさくなり、大仰な動作で言い訳を始めたが、西南はこれ以上追及するのを控え、霧恋の気持ちを尊重して話題を収束させた。
巨大ショッピングモールでの買い物
霧恋は、買い物に夢中になりながら、西南に必要な生活用品を次々と選び始めた。西南が慎重に商品を選んでいる様子を見た霧恋は彼のつつましい姿勢に感銘を受けた。雨音とエルマは西南をからかいながらも、彼と一緒に商品を選ぶ時間を楽しんでいた。
新婚夫婦風のやりとりと霧恋の困惑
西南と霧恋の新婚夫婦のような様子を見た雨音とエルマが、次々と西南に対して親密な態度を取る場面が続いた。霧恋はそれに対して恥ずかしさを隠せず、感情が高ぶった様子で反応したが、彼女の様子はさらに二人の興味を引き、西南へのからかいが加速した。
静竜との遭遇と緊張の高まり
その時、静竜が現れ、雨音が西南と親密であることに異議を唱えた。雨音はさらに静竜を挑発し、西南とのキスを暗示する発言をしたため、霧恋やエルマ、さらには西南までもが驚愕した。雨音は静竜を冗談交じりに挑発し、ついには蹴り飛ばして追い払った。
霧恋の怒りと西南の困惑
霧恋は西南と雨音の「キス」に関する発言に動揺し、西南に対して厳しく問い詰めた。西南は身の潔白を証明しようとしたが、言い訳も追いつかず、焦りを募らせるばかりであった。そんな彼の姿を見て、霧恋の心には疑念が残りつつも、最終的に雨音の説明により事態は収束した。
霧恋の怒りと仲間のフォロー
霧恋は店での騒ぎに対して怒りを示し、雨音に対して強い不満を抱いていた。エルマが仲直りを勧め、霧恋はようやく怒りを収めたものの、雨音に対しては節度ある行動を求めた。霧恋とエルマ、雨音との間には和解のムードが広がり、食事を共に楽しむことになった。
アイリとの思わぬ遭遇
食事中、西南は厨房で割烹着姿のアイリに気付き、「おばさん」と呼びかけてしまった。アイリは怒りの表情で西南に近づき、冷たく優しい声で彼を諭し、その場の空気を一変させた。
3「メイド・イン・雨音邸」
雨音邸への到着とメイドたちの歓迎
西南と霧恋らがクルーザーから降り立つと、メイド姿の珀蓮、玉蓮、火煉、翠簾の四人が彼らを迎えた。驚く霧恋をよそに、西南は美しいメイドたちに感嘆していたが、雨音は冷静に「自分よりも美しい」とさえ称賛した。その後、霧恋は家事の役割分担について話し合うため、メイドたちを台所へと連れ込んだ。
霧恋と玉蓮の衝突
台所に入った霧恋は、玉蓮に対して強い不信感を示し、彼女が西南への影響を及ぼさないように警告した。玉蓮は毅然と応対するも、珀蓮が間に入り、事態を収めようとした。結局、霧恋は「男性との不適切な関係は避けるように」と玉蓮に厳重に注意を与え、彼女の動きに目を光らせることを決意した。
ナーシスの厨房とアイリの仕事
一方、アイリはナーシスの厨房で特注の弁当を確認し、宅配の準備をしていた。彼女は最近の注文の急増に苦労していたが、それでも丁寧に仕事をこなしていた。その後、自室で大量のメールを処理しつつ、水穂から西南への祝い品が届けられたことを知り、それを西南に届ける手配を行った。
アイリと美守の会話
その後、アイリの部屋を訪れた美守とアイリは、互いの近況について軽く談笑し、冗談を交えながらも、水穂と西南の関係についての話題で盛り上がった。美守は若かりし頃を思い出しながら、親しげな会話を続けた。
西南の部屋での新生活と鷲羽の調査
西南は自室で新しい環境に慣れようとしつつ、アカデミーの著名な存在である白眉鷲羽について調べ始めた。しかし、膨大な情報量に驚き、途中でエルマに助けを求めた。エルマは西南に、白眉鷲羽の情報を効率よく調べるためのサイトを教えようとしつつも、ふとした弾みで西南の「友情フォルダー」に気付き、笑いながら年齢制限付きのデータを整理した。
雨音邸の居間での新たな任務
居間に集まった霧恋や雨音の指示に従い、珀蓮、玉蓮、火煉、翠簾が西南とエルマに正式に挨拶した。玉蓮の迂闊な発言で場が緊張したものの、霧恋が彼女を厳しく牽制した。緊張が解けた後、霧恋とメイドたちは任務を再確認し、玉蓮は改めて節度ある行動を誓った。
訓練の開始
最後に、雨音は西南に訓練用の積み木のような道具を用意し、テーブル上での組み立て訓練を命じた。最初の負荷は50%からであったが、西南はこの訓練が思ったよりも地味であると感じ、意外に拍子抜けしていた。
玉蓮の霧恋への警戒
霧恋に顔を摑まれた玉蓮は控え室で寝ており、火煉は彼女に対して霧恋を刺激しないよう注意した。しかし、玉蓮は西南の顔を見て思わず心が揺らいだと述べ、火煉はその発言に恐怖を感じた。珀蓮も玉蓮に霧恋を怒らせないよう促し、四人の間に緊張感が漂った。
西南の訓練と霧恋の見守り
西南は積み木のような訓練用具を組み立てており、霧恋は彼の訓練の様子を見守っていた。西南は複雑な動きに苦戦したが、雨音は気楽に取り組むように促した。霧恋は彼の確率異常に注目していたが、訓練が終わると安堵して去っていった。
霧恋の部屋整頓と内面の葛藤
霧恋は西南の部屋を整えながら、自身が抱える感情に気付いた。彼女は西南への思いと自己嫌悪に悩み、自分の行動が西南を守るためでなく、むしろ自分の願望に基づいていると理解した。この発見は霧恋にとって大きな衝撃であったが、彼女は再び西南のそばにいる決意を固めた。
雨音の指導と西南の入浴
雨音は西南を風呂場に誘い、リハビリのためのマッサージを試みた。西南は困惑しつつも雨音に従い、エルマもその場に加わっていた。しかし、その様子を知った霧恋が激怒し、突如浴場に現れた。霧恋は木桶を投げ、西南に当たってしまったが、怒りを収めて立ち去った。
霧恋の自己嫌悪と来客
霧恋は自分の行動に激しい自己嫌悪を抱き、霧恋は西南に対する態度を反省していた。その時、玄関の呼び鈴が鳴り、アイリと美守が訪問した。アイリは明るく挨拶し、夕食の支度に向かったが、霧恋の心中は複雑であった。
アイリの登場と祝賀会の始まり
アイリは霧恋の不満をよそに、蕎麦とうどんを用意して霧恋たちにふるまった。西南への入学祝いを兼ねた集まりであり、少し堅苦しかったが、アイリが雰囲気を和ませ、西南も感謝の意を述べた。
西南の入学祝いとアイリの騒動
アイリはお酒を飲みながら気楽に振る舞い、西南に絡む場面もあった。美守はアイリを西南の部屋に連れて行き、霧恋らには部屋を離れるよう伝えた。アイリの気まぐれな行動に西南は困惑したが、彼女の騒ぎも徐々に収まっていった。
美守によるNBの調整
美守はNBの起動と調整を開始し、アイリはその手順を手伝った。作業は滞りなく進み、NBは西南のための秘書機能も備えていることがわかり、西南もそれを受け入れる準備をした。
西南の思いと夜の静寂
アイリと美守が退出し、西南はようやく一人になった。NBの起動を確認してからベッドに倒れ込み、長い一日に感謝しつつ安らかな眠りに就いた。部屋は静寂に包まれ、NBはそっと彼を見守り続けた。
瀬戸たちの秘密会議
アイリが退出した後、美守、瀬戸、鷲羽らが集まり、アカデミーのスパイに関する調査結果を共有した。彼らは潜入者の増加に対する対策を協議し、アカデミーの秩序維持のために、今後も監視体制を強化する方針を固めた。
結論とさらなる決意
鷲羽はスパイの目的が不明瞭であることを指摘し、全員が危機感を共有した。瀬戸は西南を守るための新たな体制構築を提案し、彼らは今後の活動に向けて、アカデミー内外での連携を図ることを誓い合った。
深夜の邂逅と静かな対話
雨音は深夜の月明かりが差し込むホールでワインを飲みつつ考え事をしていた。エルマが現れ、彼女と共に小さな親睦会を開くことにした。そこに珀蓮と翠簾も加わり、雨音は和やかに歓迎の意を示した。彼女は、自身とエルマに仕える彼女たちの目的を穏やかに問うが、職務としての彼女たちは詳細を明かさず、会話は軽く流された。
西南との出会いの回想
珀蓮の提案で、雨音は西南との出会いについて語り始めた。初めて会った時、シャトルの衝撃で気絶した彼を救助し、人工呼吸を施した過去が明かされる。エルマと珀蓮は、雨音がその出来事を回想しながら見せた表情に少し驚き、彼女の思いがにじむ場面であった。雨音は、その出会いが西南の宇宙での運命を決定づけたと認識していた。
西南の運命と護衛の意図
エルマの質問により、雨音は西南が宇宙に来た背景をさらに詳しく述べた。特区で出会い、偶然にもGPアカデミーの入学案内を手渡したことで、西南の宇宙での人生が動き出したことを振り返る。さらに、珀蓮は西南の能力に期待しつつも、彼を護る任務が自分たちの役割であると表明した。彼女たちの言葉からは、樹雷としてのバックアップ意識が伝わってきた。
親睦会の終わりと雨音の気付き
会話の流れの中で、雨音は彼女たちの行動に微妙な意図を感じ、樹雷の策略を推測した。しかし、これ以上詮索することはせず、親睦会を終えることにした。珀蓮に支えられながら部屋へ向かう雨音の姿は、護衛の意図が単なる監視ではなく、深い信頼と使命感に基づいていることを象徴していた。
4「つかの間の平穏」
朝の光と霧恋の躊躇
朝の光が差し込む中、霧恋と火煉は台所で朝食の準備をしていた。霧恋は西南を起こしに行くが、彼の部屋に入ることに躊躇していた。成長しつつある西南を意識するようになり、ためらいながらも意を決して部屋に入った。
西南の目覚めと二人の介入
霧恋が西南を起こすと、彼の無防備な寝姿に微笑みつつも、彼の朝の生理現象に動揺した。その場にアイリと玉蓮が現れ、西南にからかうような態度を見せ、霧恋の怒りを買った。彼女は二人を連れ出し、台所で説教を始めた。
朝食の気まずい空気
霧恋と西南が無言のまま朝食をとり、気まずい空気が漂った。火煉が西南の給仕をする中で霧恋の態度を見て、霧恋も彼女の気配りに気付き、複雑な気持ちを抱いた。
エルマと雨音の乱入
エルマが加わり、場を和ませたが、続いて下着姿の雨音が現れ、霧恋を驚かせた。雨音は西南に親しげに接し、さらに場の緊張を高めた。霧恋は再び怒り、雨音をエプロンで隠したが、その姿が逆に挑発的であり、彼女たちのやりとりが続いた。
アイリの制止と新たな提案
アイリが真面目な口調で場を収めたが、続けて「裸エプロン」の話題に加わり、再び場を混乱させた。霧恋の制止にも関わらず、アイリは西南に「神髄」を教えるとふざけ、霧恋の怒りを買って部屋から追い出された。
アイリの出発と霧恋の懇願
アイリが出勤する際、霧恋は火煉に雨音の監視を頼み、さらに玉蓮に西南に近づかないよう念押しした。アイリは名残惜しそうに見送りを拒むが、クルーザーに押し込まれ去っていった。
NBの登場と設定の変更
西南が持つAIデバイス「NB」が起動し、アイリの声で話し出した。雨音がその機能を調整し、さらに面白いキャラクター設定を追加しようとするが、西南はアイリの声が残ることを嫌がり、設定を男性の声に変更するよう求めた。
アイリを交えた談笑
霧恋とエルマは、クルーザーのキャビンでアイリと共に会話を交わし、西南の「友情フォルダー」の削除について話題にした。アイリは西南の未熟さと生理現象に関して軽口をたたき、霧恋はそれに赤面してしまった。また、アイリは西南が抱える問題を挙げ、彼のプライバシーや生活空間に配慮する必要があると指摘した。
スパイの潜入とアカデミーの対応策
アイリは霧恋とエルマに、アカデミー内に複数のスパイが潜入している可能性があることを報告した。調査を進めるため、アカデミーの設備を改修し、保護職員として珀蓮たちを常駐させる方針が決定された。スパイの活動が同時多発的に行われる可能性が示唆され、全銀河連盟での摘発が計画された。
ダ・ルマーの最高幹部との会話
暗闇の中で、ダ・ルマーの幹部コマチとリョーコが対話を交わした。リョーコはタラント組織の動きについて懸念を示し、コマチは組織の内部でその影響力を警戒する声があると述べた。リョーコは情報の収集を引き続き行うことを承諾した。
瀬戸との接触
コマチは瀬戸と接触し、タラントの制御を巡る相互利益について話し合った。瀬戸は海賊の逮捕者リストを樹雷で拘留することを提案し、コマチもこれを了承した。この決定により、捕らえられた者たちは処刑されず、樹雷の施設で生活できるようになった。
霧恋の散歩と林檎の訪問
霧恋はブリーフィング後に時間ができたため、控え室までの道を散歩していた。控え室に戻ると、そこには林檎が訪れており、彼女は西南と話したいという理由でここに来たと告げた。霧恋は林檎の提案を受け入れつつも、西南の生活に新たな影響を与えないよう、配慮を心に決めた。
林檎の財産分配と霧恋の葛藤
林檎は霧恋に、ウィドゥーが残した財産の分配金を伝え、霧恋はその高額さに驚愕した。しかし、西南のためには安易に資産や異性関係を増やすべきではないと判断し、林檎の訪問には複雑な心境を抱いた。
美希・シュタインベックとの遭遇
霧恋が控え室を出ると、美希・シュタインベックに遭遇した。美希は霧恋の行動に疑念を抱き、霧恋を追い詰めるような言動を見せた。美希の指摘により、霧恋は西南の生活に無関係であることを確約し、微妙な対立が生じた。
浴場での騒動
一方、雨音の家では西南と火煉が入浴していた。霧恋と美希はその状況に不満を抱き、火煉の行動に対して鋭い視線を向けた。さらに、突然現れた天南静竜が浴室に突入し、雨音と激しい衝突が発生した。静竜は最終的に霧恋のエアカーに跳ね飛ばされ、海に落下した。
雨音の両親との対面
雨音の家には、突然彼女の両親である真清とナテュールが訪れ、雨音と対立した。真清は雨音が家に戻るよう懇願するが、雨音は断固として拒否した。その会話の中で、雨音の過去の写真が披露され、一同はその幼少期の可愛らしい姿に驚愕した。
騒動の収束と新たな緊張感
雨音の家の混乱は次第に収束に向かったものの、場に残された緊張感が漂った。霧恋や美希、そして雨音の両親によって引き起こされた事件は、今後の彼らの関係に複雑な影響を残すこととなった。
エルマの捜索と霧恋への連絡
エルマは霧恋が控え室にいないことに気づき、教室から戻る学生に霧恋の行方を尋ねた。学生たちから美希と共にアカデミー敷地外へ向かったと聞き、エルマは急いで管理システムを用いて二人の居場所を調べた。
霧恋と美希の対立
美希と共に西南のいる雨音邸にいた霧恋は、仕事の集合時間を忘れていた。アイリからの叱責を受け、霧恋は西南を心配する美希をアカデミーに戻るよう説得した。霧恋の説得に美希は一旦従うが、二人の間には不信感が残った。
雨音と西南の庭での訓練
一方、庭に出た雨音と西南は煉瓦の基礎を作る訓練を始めた。雨音の両親は窓越しにその様子を見守り、雨音が西南に対して穏やかな表情を浮かべていることに気づいた。特に父、真清は娘が自分から巣立っていることを実感し、涙を浮かべた。
雨音の家族の帰宅と西南の励まし
雨音の両親が帰宅すると、西南は去りゆく両親を見送る雨音に声をかけた。雨音は少し驚いたが、互いに地球とアカデミーの生活に共通点を感じることができた。これにより、二人の間には新たな理解が生まれた。
静竜との対決
静竜が突然現れ、西南に決闘を申し込んだが、雨音が怒りを抑えきれず、静竜をレールガンで撃退した。静竜はボロボロの状態でケースに詰められ、玉蓮たちによって海に沈められることになった。
アカデミーでの霧恋とエルマの業務
霧恋とエルマは校長室でデータ整理を行っていた。エルマは美希との会話の内容を尋ねたが、霧恋は当人同士の問題として深く関与するつもりはないと答えた。二人は業務に集中し、翌日のカリキュラム開始に向けた準備を整えた。
林檎の意識回復と瀬戸の再会
瀬戸の元で目を覚ました林檎は、霧恋が飲み物に細工をしていたことを知り、自分がアカデミーから移送されていたことを理解した。瀬戸に対して、林檎は冷静に受け入れながらも、経理担当としての強い態度を見せた。瀬戸は林檎の豹変に驚き、狼狽する姿を見せた。
6「美希と西南・余波」
久々の登校準備
西南は三週間ぶりに制服を着用し、アカデミー通学を再開した。西南の体力問題も解消され、雨音や霧恋らの指導により授業に遅れることなく学び続けていた。自宅からの見送りを受け、エルマが運転するエアカーでアカデミーに向かった。
エルマとの会話と家族のような家
道中、エルマと西南は、生活を共にしていた家での思い出を語り合った。エルマは自らの過去を話し、友人たちとの生活を楽しんでいることを告げ、西南もその家を自分の「家」と感じていた。
アカデミーでの生徒たちとの再会
アカデミー近くで下車した西南は、友人たちと再会した。しかし、同時に雨音や霧恋のファンクラブ員にも見つかり、三週間分の生活を追及されそうになった。その最中、偶然にも野生の芝猪が集団で暴走し、生徒たちは巻き込まれて負傷した。
芝猪の暴走による負傷者の対応
芝猪の暴走により、多くの生徒が怪我を負い、急遽グラウンドに設置された医療ユニットで治療が行われた。美守校長は、命に別状がなかったことに安堵し、西南もその場で軽傷ながら無事であった。
美希との昼食と浮遊島の探索
西南は美希と浮遊島に向かい、美しい庭園や秘密の場所について話し合った。美希は自分の研修について話し、囮部門での研修が決まっていることを明かした。西南は驚いたが、美希は平然とした様子で研修について語り、西南を安心させようとした。
友人たちとの再会とウィドゥーの話題
昼食後、西南はケネスやミランダと共にウィドゥーの事件について話した。西南はその時の状況を正確には覚えていなかったが、友人たちの関心を引き、興奮した様子の彼らに応えていた。
美希の実務研修出発
美希が明日から実務研修に出発することが判明し、別れを惜しむ西南にケネスが励ましの言葉をかけた。西南もまた、半年後の再会を楽しみにして見送りを準備することを決意した。
囮部門の詳細とケネスの説明
西南は囮部門の仕事内容についてケネスから詳しく聞き、安全性についても理解した。実務研修中の危険は最小限に抑えられており、美希の安全を確信し、安心することができた。
午後の授業と予期せぬ妨害計画
午後の最初の授業が終わると、西南は短い休憩を利用しメールを確認していた。その直後、雨音や霧恋、アイリたちが西南と美希の接触を阻止する作戦を開始していた。西南は周囲の注目を避けつつ、迅速に転送ゲートへと向かい、追手を振り切った。
妨害の失敗と焦り
アイリは西南の予測外の行動に苛立ち、作戦の失敗に落胆していた。霧恋と雨音も西南の行動に気付き、彼を阻止する計画を練り直したが、西南は美希の手助けを受けて逃げ延びた。その後、霧恋はアイリに冷静になるよう促し、西南の行動を見守るべきとの提案に同意した。
美希との秘密の場所探訪
西南は美希の案内で、アカデミーの外れにある美しい花園と秘密の場所へと導かれた。美希はここを「特別な場所」として西南に紹介し、その景観の中で互いの距離を縮めていった。彼女は西南に父親のことを頼み、少し心細さを見せつつも新たな生活に対する決意を示した。
アカデミーへの帰還と家族のような再会
美希と別れた西南はアカデミーへ戻り、仲間やメイドたちと再会した。霧恋は西南の帰還を喜んだが、彼が美希との時間を過ごしていたことに複雑な感情を抱きつつ、家族のように温かく迎え入れた。
見送りの準備と安堵
食事を終え、家の居間に集まっていた一同に、普段の静けさが戻っていた。その中で雨音が西南に、美希の見送りについて尋ねた。西南は、美希のチームメイトや友人たちと共に見送りへ行く予定であると答えた。これにより、霧恋や珀蓮たちは安堵し、明るい雰囲気が再び漂った。その後、翌日の出発が早いため、早めに休むよう霧恋から勧められ、西南は自室に戻った。
西南の休息とNBの思い
一日の疲れから深い眠りに落ちた西南のもとで、NBは人型に変形し、彼に布団をかけてその寝顔を眺めていた。そしてキルシュの声で、「今日は、ゆっくりと寝て下さい」と西南に語りかけた後、再び球形に戻り、静かな室内へと戻った。部屋は再び静寂に包まれ、穏やかな夜が続いた。
7「暗転」
美希の見送りと日常の変化
美希の見送りから一週間が経過した。美希との別れは意外とあっさりとしたものであり、実務研修もカリキュラムの一環であるため、生徒たちにとってはさほど深刻なものではなかった。二年生たちはそれぞれの部署へ旅立ち、西南は寮への引っ越し準備を進めていた。そんな中、美希から無事の報告と初任務の開始を知らせるメールが届き、西南は安堵した。
不穏な兆候とNBの異常
出発準備が整い、西南が部屋を離れる直前に、NBが異常を起こし、美希の姿と声へと変化してしまう。突然の事態に動揺する西南を残し、霧恋と雨音は無言で部屋を去った。エルマも何も説明せずにNBを回収し、急ぎ西南を寮へと送るためにエアカーへと連れ出した。
エルマからの衝撃的な事実
エアカー内で、エルマは西南に囮部門の研修生を乗せたステーション艦が襲撃され、全滅したことを告げた。さらに、その中に美希も含まれていたと知らせる。エルマの話を聞いた西南は、全身の血が沸騰するような怒りと喪失感に襲われるも、理性が徐々に冷静さを取り戻していった。
西南の悲しみと涙
西南は美希の言葉を思い出し、彼女の父、博司が感じるであろう深い悲しみを思い起こしたことで、抑えきれない涙が溢れ出した。隣でエルマもまた、苦悩を抑えながら静かに西南を見守っていた。
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