どんな本?
“転生したらスライムだった件”とは、伏瀬 氏による日本のライトノベルで、異世界転生とファンタジーのジャンルに属す。
主人公は、通り魔に刺されて死んだ後、スライムとして異世界に転生。
そこで様々な出会いと冒険を繰り広げながら、魔物や人間との交流を深めていく。
小説は2014年からGCノベルズから刊行されており、現在は21巻まで発売されている。
また、小説を原作とした漫画やアニメ、ゲームなどのメディアミックスも展開されており。
小説のタイトルは「転生したらスライムだった件」だが、略称として「転スラ」と呼ばれることもある。
読んだ本のタイトル
転生したらスライムだった件17
著者:伏瀬 氏
イラスト:みっつばー 氏
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あらすじ・内容
『転スラ』の世界を別角度から切り取った珠玉の短編集。
転生したらスライムだった件 17
本編では見られないあのキャラたちの活躍が詰まった『転スラ』初の短編集!
魔国連邦の幹部では珍しくも人間であるミョルマイルが西方諸国で暗躍する
――『ミョルマイルの野望』
愛する人の残滓を求め世界を旅するヴェルグリンドが関わった、とある国の物語
――『遠い記憶』
帝国再建に向けて動き出すカリギュリオは、己の過去とも向き合い始める
――『激動の日々』
魔王ギィ・クリムゾンのメイドにして原初の青レイン。そんな彼女も周りが異常ならボヤキたくもなるよね
――『青い悪魔のひとり言』
他、特別収録の1本を加えた『転スラ』本編とは違った視点で描かれる珠玉のSS集!
感想
本編とは別の視点から描かれる短編集である。主要なキャラクターたちが異なる場面で活躍する五つの物語が収められている。
最初の話「ミョルマイルの野望」では、魔国連邦の幹部でありながら人間であるミョルマイルが、西方の国々で影から手を回す。彼の野望というよりも受難のような道のりが描かれる。
エルフの皇帝、新生のスライムの魔王と飲み友になるミョルマイルの巻き込まれ体質には爆笑。
次に、「遠い記憶」では、愛する人の残滓を追い、世界を旅するヴェルグリンドの話が展開される。彼女が関わった国の物語が語られ、彼女の旅の意味が深く掘り下げられる。
あの一瞬で戻って来たヴェルグリンドの旅路は本当に永かったようだ。
その集大成が旧日本帝国のような国、その世界ではヴェルグリンドがルドラの魂のカケラを集めるために彼等の人生に寄り添って看取る。
それまでの過程が垣間見えるシーンが印象的。
「激動の日々」では、帝国再建に動き出すカリギュリオが自身の過去と向き合いながら、新たな道を模索する姿が描かれる。
この物語では、彼の内面と帝国の未来に焦点が当てられる。
最後の妻と寄りを戻すのがなかなかに良い。
マサユキと次期皇帝と呼ばれていた皇族が意気投合する話は凄く面白かった。
あ、この国うまく行くわ。
「青い悪魔のひとり言」は、魔王ギィ・クリムゾンのメイドであり原初の青レインが主人公である。
周りの異常さにボヤキつつも、彼女なりの日常が描かれる。
いや、コレを日常と呼んで良いのだろうか?
特別収録された「ベスターの相談」では、報告の重要さを説く話が展開され、ベスターがガゼル王に報告する方法について悩む姿が描かれる。
ベスターはテンペストで充実してるのが良い。
この短編集は、本編では見られないキャラクターたちの新たな一面や、魔国連邦や帝国など『転スラ』の世界をより深く理解するための貴重な物語を提供する。各話は、それぞれが『転スラ』の世界観を豊かにし、ファンならずとも楽しめる内容となっていた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
転生したらスライムだった件 シリーズ
小説版
漫画版
その他フィクション
コミックス(外伝含む)
『「転生したらスライムだった件~魔物の国の歩き方~」(ライドコミックス)』
『転生したらスライムだった件 異聞 ~魔国暮らしのトリニティ~(月刊少年シリウス)』
『転スラ日記 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス)』
『転ちゅら! 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス)』
『転生したらスライムだった件 クレイマンREVENGE(月刊少年シリウス)』
TVアニメ
転生したらスライムだった件 3期(2024年4月から)
劇場版
PV
OP
ED
備忘録
第一章(ミョルマイル)
ミョルマイルは自らを幸運な男と考えている。その幸運は、ジュラ・テンペスト連邦国の国家元首である魔王リムルに誘われて以降、更に強固なものとなった。リムルは、天空竜を一瞬で倒し、ミョルマイルを救った英雄であり、後に八星魔王の一柱となる。伝説の魔王ミリムや竜種ヴェルドラとも友情を育んでいる。
ミョルマイルの野望は大商人になることであり、ブルムンドとイングラシアで商店を開き、成功を収める。リムルとの出会いがきっかけで、魔国の財務大臣として働くことになり、膨大な富を管理する重責を担う。かつて商人として働いていた時の報酬は、現在の給料と比べると微々たるもので、現在は月に金貨五十枚を税金引き後で受け取っている。さらに賞与や各種手当もあり、住居支給や家政婦の無料提供など、破格の待遇を受けている。
給与以外にも、ミョルマイルは商会が収益を上げるなど、複数の収入源を持っている。リムルのアイデアを形にしたファーストフード店などの経営を通じて、毎月金貨百枚がミョルマイルの懐に入ってくる。これらの店舗は拡大中で、各国からの支店出店要望も寄せられている。これにより、ミョルマイルの年収は今後も増え続けることが予想される。一年足らずで一生遊んで暮らせるほどの金が貯まっており、その収入源の一つに「三賢酔」があるという。
「三賢酔」とは、リムル、魔導王朝サリオンの天帝エルメシア、そしてガルド・ミョルマイルの三名から成る組織である。エルメシアは天上人であり、サリオンの国力は西側諸国の総力に匹敵し、その影響力は絶大である。リムルがエルメシアと気軽に飲み仲間になれることから、ミョルマイルはリムルの恐ろしさを感じている。ミョルマイルもこの関係によってエルメシアを姉御と呼べるようになった。
この組織に関する事は秘密であり、魔国ではほとんど知られていない。魔国で知っているのはベニマルとソウエイのみである。リムルはベニマルに結婚後の小遣い貯蓄の重要性を説いているが、ミョルマイルはその会話を適切ではないと感じている。
「三賢酔」の計画は、暴力装置としての秘密結社を完全に支配し、表舞台ではクリーンな争いを推奨することにある。これにより、組織が腐敗するのを予防し、商いの活性化を目指している。ミョルマイルは組織の片方を纏め上げる役目を担っている。
計画の実行部隊として、リムルは直属の部下であるテスタロッサを呼び、人手不足の問題に対処するための秘密の作戦を立てる。テスタロッサは外交武官として優秀であり、その協力を得て計画は順調に進んでいる。
数ヶ月で、「四ヶ国通商連盟」の支部が評議会加盟国全てに設立された。ミョルマイルは連盟の代表に選ばれ、ガゼル王からの激励を受ける。ドワーフの文官達からの反対意見はなく、ヨウムはミョルマイルに対して共感を示す。ブルムンド王との交渉は難航し、ブルムンド王は農業を全て廃止し、食糧支援を求める。ミョルマイルは、ブルムンド王国の全国民を雇い入れ、食糧支援をすることを約束する。
ブルムンド王は、リムルの計画に全てを賭け、ミョルマイルを信頼し、友としての関係を求める。ミョルマイルはブルムンド王国が本気であることを悟り、ブルムンド王と良好な関係を築くことを望む。ブルムンド王国は、四ヶ国通商連盟に全力投資して国家存亡を賭けたことが明らかになる。
ベルヤードが子爵に昇進し、食糧備蓄や教育の進捗状況をミョルマイルに報告する。ミョルマイルは「魔導列車」の開発や軌道敷設工事の進捗を共有し、ブルムンド王国との具体的な計画を説明する。ブルムンド王国では、農業放棄地を物流拠点にする計画が立てられ、国家所有の土地に「四ヶ国通商連盟」の支部建設を検討している。ベルヤードからは、ブルムンド王国が土地を国家所有とし、新たな形態に移行したことが明かされる。
ブルムンド王国は、土地を国家所有物と定め、国民に貸与する新たな形態を採用している。ミョルマイルは、賃料が景気に応じて変動すると聞き、租界設定の提案を受ける。租界では永代借地契約を結び、治外法権を認める計画がドラム王の発案であることが判明する。ブルムンド王国は「四ヶ国通商連盟」の本部を設置し、ブルムンドを世界経済の中心にする計画に賛成し、ミョルマイルもこれに大きく頷いて了承する。
ミョルマイルは、ベルヤードと契約の締結後、互いの権益を守る内容の契約に満足感を持ちつつも、ベルヤードの本音について問いかける。ベルヤードは、貴族として交渉時に本音を見せない立場を説明し、反対だったことを示すが、実際には賛成の立場であったと伝える。ミョルマイルは、この結果がベルヤードの狙い通りだったことを理解し、貴族相手の交渉の難しさを再確認する。
その後、ミョルマイルはベルヤードに部下としての働き手になることを提案する。ベルヤードは、ブルムンド王国の現状と将来予想について説明し、小国であるブルムンドでは貴族の地位が将来的に揺らぐことを示唆する。ベルヤードは、利益が大きいから反対しなかったと述べ、転職を考えていることを明かす。最終的に、ベルヤードはミョルマイルに雇用されることを望み、相談役としての扱いで合意する。二人は、未来の協力関係を確認しながら握手を交わす。
ベルヤードがミョルマイルの相談役になることで、「四ヶ国通商連盟」は更に成長し、大商人たちとの対立が生じた。ミョルマイルはビッドとゴブエモンを護衛にイングラシア王国へ向かう。ビッドはDランクからBランクへ、ゴブエモンはAランクオーバーの鬼人族へと進化している。ミョルマイルはこの会合で西側諸国を牛耳る大商人たちと会い、自身の身の安全が保障されていると信じている。
ホテルでの身分確認と武器のチェックを経て、ミョルマイルたちは会場に入る。会場には既に多くの大物が集まっており、ミョルマイルに対する関心が高い。ロッゾ派の大物や裏社会を牛耳る者たちが、ロッゾの失墜をチャンスと捉えており、ミョルマイルはその情報網と欲望の凄さに警戒を強める。
アルレキオ、ドン・ガバーナの用心棒であり元Aランク冒険者で、ミョルマイルと会合場所で遭遇する。アルレキオはミョルマイルに対して挑発的な態度をとり、周囲はこのやり取りを見守っている。ミョルマイルは「四ヶ国通商連盟」の代表としての立場を守るため、アルレキオに対して強気に出る。しかし、アルレキオがミョルマイルに暴力を振るおうとすると、ゴブエモンが介入してミョルマイルを守る。ビッドも巻き込まれてしまい、緊張が高まる中、ドン・ガバーナが現れる。
ベルヤードがミョルマイルの相談役となり、四ヶ国通商連盟が発展。イングラシア王国で開催された会合にて、ミョルマイルはドン・ガバーナの用心棒アルレキオと遭遇し、彼から挑発を受ける。しかし、ドン・ガバーナが介入し、アルレキオの行動を止める。周囲はドン・ガバーナの態度に感心し、その財力と影響力を賞賛するが、ミョルマイルは魔物の国で見慣れた完全回復薬による治療を見て、自分たちの恵まれた環境を再認識する。ドン・ガバーナの胸元に輝く紋章が、ミョルマイルが知る「三賢酔」の紋章であることを確認し、彼とその組織が「三賢酔」に吸収されたことに気づく。この発見により、ミョルマイルは自信を取り戻し、ドン・ガバーナとアルレキオに堂々と対峙する。
ミョルマイルがドン・ガバーナの用心棒、アルレキオから挑発を受けるも、ドン・ガバーナが介入し、状況を収束させようとする。しかし、ミョルマイルは強気の態度で対応し、ドン・ガバーナに謝罪を要求する。ドン・ガバーナが渋々謝罪し、ミョルマイルを認めざるを得なくなったことで、ミョルマイルは会場の大商人たちの前で優位に立つ。会場内はミョルマイルの行動によって盛り上がり、彼の提案する「ブルムンド流通拠点計画」に興味を示すも、ドン・ガバーナへの喧嘩を売ったミョルマイルが短期間内に始末されると考え、計画に即座に参加する者はいなかった。しかし、ミョルマイルは「三賢酔」の一員として自信を持ち、計画の成功を確信し、会合を盛り上げる。
ミョルマイルたちは、アルレキオによって黒塗りの馬車である場所へと連れて行かれる。目的地は高級住宅街にある館で、ミョルマイルはここが「緑の使徒」の拠点だった場所であることを認識して安堵する。彼らを待っていたのは、秘密結社「三賢酔」の幹部たちであり、アルレキオはミョルマイルがその一員であることに気づいていなかった。館の地下室で、ミョルマイルはドン・ガバーナを含む幹部たちの前で自身が「三賢酔」の一員であることを明かし、場は驚きに包まれる。ドン・ガバーナはミョルマイルに対して驚愕し、ミョルマイルは権威を確立し、グレンダという女性が代わりにボスを演じていたことも判明する。会合は大成功に終わり、ミョルマイルはその成果を讃えられる。
ミョルマイルが首領であることに異議を唱える者はおらず、ドン・ガバーナとアルレキオに対する処分を決める場面があった。幹部たちは残酷な意見を述べるが、ミョルマイルは二人の罪を問うべきでないと判断し、処分を見送ることを決定する。これに対し不満を持つ幹部もいたが、ミョルマイルは権威を示し、自らの決定に服従させる。また、ミョルマイルは組織の根本規律として、仲間を裏切らないこと、他人の失敗を許すこと、誰かを不幸にしないことの三つを制定する。これらの規律により、組織の方針を正々堂々としたものへと変化させようとする。ミョルマイルは、この機会に組織の意識改革を図り、リムル様の願いにも応えようと考える。
ガバーナファミリーは解散され、ガバーナはミョルマイルの部下としてブルムンド本部で働くことになった。アルレキオはゴブエモン殿の弟分として受け入れられた。これらの処遇は穏健であり、〝三賢酔〟と〝四ヶ国通商連盟〟が痛み分けという噂を流し、騒動は決着した。〝四ヶ国通商連盟〟の稼働後、収益は想像以上に大きく、ミョルマイルはその成功に驚きながらも、さらなる挑戦を誓った。リムル様との出会いが運命を変え、挑戦は死の間際まで終わらないと決意している。
第二章(ヴェルグリンド)
ヴェルグリンドは異界の狭間で究極能力『炎神之王』を完全に自分のものとし、ルドラの魂の欠片を追跡できるようになった。この能力により、時間と空間を超えて愛するルドラの魂の欠片を宿す者を探し出し、文明の初期段階にある星でルドラの魂の欠片を宿す蛮族の長と出会った。ヴェルグリンドは彼らの発展を助け、最終的には王国を築くに至った。ルドラの魂の欠片を宿す者の望みを尊重し、直接的な介入を避けながら、その一生を見守り続けた。王国はやがて帝国へと発展し、ヴェルグリンドは創世の女神として崇められるようになった。これはヴェルグリンドにとっては、ルドラの魂の欠片を追い求める長い旅のほんの始まりに過ぎなかった。
ヴェルグリンドは様々な世界を渡り歩き、多種多様な文明とルドラの魂の欠片を宿す者たちと出会い、別れを繰り返した。ヴェルグリンドには、異なる次元世界が存在することが理解され、その中でルドラの魂の欠片を追い求めた。これらの世界は異なる法則で営まれており、魔法が主流の世界から科学文明が発展した世界まで多岐にわたる。ヴェルグリンドはルドラの魂の欠片を宿す者が危機に陥った瞬間に呼ばれ、助けを求めるが、時には助けが間に合わず、悲しい出来事もあった。集めた魂の欠片は膨大な数になり、美しい形を取り戻していった。ヴェルグリンドは残る魂の欠片が僅かであることを直感し、次かその次が最後の跳躍になるだろうと感じていた。
皇国と呼ばれる地で、ヴェルグリンドは時空を超えて皇帝の居室に現れた。老いた皇帝とその護衛、荒木幻世と皆本三郎は、ヴェルグリンドの突然の出現に驚くが、彼女の圧倒的な力の前では何もできなかった。幻世の剣もヴェルグリンドには効かず、皆本も彼女の視線だけで動けなくなる。皇帝は、ヴェルグリンドから懐かしさを感じ、彼女を警戒する気になれず、彼女を信じることに決める。皇国は強大な敵との戦争中であり、皇帝はヴェルグリンドに事情を打ち明け、味方になってもらおうと考えた。
皇帝の居室でヴェルグリンド、皇帝、そしてその護衛たちとの間で会話が交わされる。ヴェルグリンドは自己紹介をし、その場にいる皇帝と護衛たちも名乗る。ヴェルグリンドは、皇帝が自分の愛する者ルドラの魂の一部を宿していることに興味を持ち、その他の者たちにはそれほど関心を示さない。皇帝はヴェルグリンドを受け入れ、彼女がルドラと呼ぶことを許容する。その後、皇帝とその護衛たちは現在の状況をヴェルグリンドに説明する。
現在、皇国は大日本征覇帝国として、周辺勢力との間で戦争状態にある。戦争の原因は、中華群雄共和国の大規模な日照りとそれに伴う食糧危機、それが引き起こした一連の連鎖反応である。さらに、中華群雄共和国とアゼリア合衆国、大ロシアム王朝、神聖アーシア帝国がそれぞれ戦争に巻き込まれる。この戦争の背後には、異形の存在である妖魔が関与していることが明らかになる。妖魔は人に憑依し、強大な力を持っており、世界中で暗躍している。
ヴェルグリンドは、この戦争に関わることを決意し、ルドラの魂の一部を宿す皇帝やその他の人々の危機を救うために行動を開始する。その過程で、近藤中尉という人物が特攻を敢行し、敵の首魁の正体を暴くが命を落とす。ヴェルグリンドは近藤の最期と彼の忠誠を知り、彼の心残りを晴らすことを決意する。
皇帝、ヴェルグリンド、そしてその護衛たちとの情報交換を通じて、ヴェルグリンドは侵略者による脅威の大きさを理解する。現状では人類側が不利であり、侵略者が人に憑依する能力を持つことから、既に人間の軍部が暴走している。侵略者の動向は不明で、皇国の残存艦隊も連絡途絶の状態にある。侵略者による拿捕や憑依の可能性が高く、これにより人類側の戦力が大きく削がれている。この事態を受け、ゲンセイたちは帝都防衛に注力し、信頼できる者に敵の動向を探らせ、世界の最高戦力を集結させる計画を立てる。しかし、これは成功率が低い作戦であり、敵の首魁が一人以上いる可能性もあるため、状況は非常に厳しい。
ヴェルグリンドは、自身も戦いに参加する意向を示し、まずはゲンセイとその護衛たちの実力を確かめることにする。ゲンセイは、自身が近藤の師匠であり技量的に上であることを認め、ヴェルグリンドの提案に応じる。ヴェルグリンドはこの世界に来たばかりで強さの基準がわからないため、ゲンセイを通じて敵の強さを知りたいと考えている。この提案により、ヴェルグリンドは皇国側の力と侵略者の脅威に対する理解を深めようとする。
修練場での一幕において、ゲンセイとヴェルグリンドが実力を示す場が設けられた。ゲンセイは、自らの流派の最高奥義を用いてヴェルグリンドに攻撃を仕掛けるが、彼女の指一本で阻止されてしまう。この結果から、ゲンセイとヴェルグリンドの間には計り知れない実力差があることが明らかになった。ヴェルグリンドは、この世界における敵の強さを測るための基準としてゲンセイとの戦いを利用し、彼女自身の強さを確かめるとともに、侵略者たちの潜在的な強さについて仮説を立てた。
ヴェルグリンドは、この世界の魔素が薄いために物質世界の人間が界を渡ると強靭な存在へと生まれ変わること、そして、妖魔族が半精神生命体の侵略種族であり、魔素が少ないこの世界では人に憑依することでエネルギー効率を保っていると推測した。彼女は、もし妖魔族が本気になればこの世界の住民では勝ち目がないと結論付けるが、自分がいることでどうにか対処できる自信を持つ。そして、侵攻中の妖魔軍は三妖帥コルヌ麾下の先遣部隊であり、世界が完全に支配されるまでにはまだ猶予があると理解する。
ゲンセイは、自らの最強と信じる剣技がヴェルグリンドに通用しなかったことで落ち込んでいる。しかし、ヴェルグリンドは彼の努力を認め、彼の世界では希少な強さに達していることを称賛し、彼の打刀を魔素を使って鍛え直すことを提案する。ヴェルグリンドは、自らの『物質創造』の能力を用いて、ゲンセイの愛刀を神話級相当の武器へと進化させる。この特別な武器は、ゲンセイ自身や彼の子孫が剣を認められる場合、その力を貸すことになるだろうとヴェルグリンドは述べる。この一連の出来事は、ゲンセイが自らの理解を超えた存在であるヴェルグリンドを信じ、彼女に愛刀を託すことで、最高の武器を手に入れたことを示している。
夕食時、桜明はヴェルグリンドを招き、二人で食事を共にする。ヴェルグリンドは桜明のそばにいて守ると宣言し、桜明が望むならこの世界を平和にすることも躊躇わないと語る。その発言に場の全員が驚き、侍女がスープをこぼすほどであった。しかし、桜明はそれを冗談として流し、ヴェルグリンドの気持ちを受け入れる。桜明はヴェルグリンドの存在によって、これまでの人生で経験したことのない困惑と新たな視点を得る。彼はヴェルグリンドの自由な精神と、彼一人に対する忠誠に感銘を受け、穏やかな夕餉を楽しむ。
翌朝、大本営による会議の準備中、ヴェルグリンドの扱いと服装が問題となる。外見が異国人であるヴェルグリンドをどのように会議に参加させるか、桜明とその側近たちは悩む。ゲンセイや皆本の意見を聞きながら、ヴェルグリンドの身分をどうするかを考えるが、侍女や護衛としての参加は難しいと結論づける。そこでヴェルグリンドが自らの見た目を変える提案をし、実際に見た目を変化させる。これにより、ヴェルグリンドは日本人に近い外見になり、桜明はヴェルグリンドを「近衛」として会議に参加させることに決める。桜明はヴェルグリンドに「皇帝守護者」という地位を与え、ヴェルグリンドは軍服を纏い、臣下として振る舞うことを約束する。この準備により、ヴェルグリンドは会議に参加することが決定される。
大本営会議が開催される日、桜明はヴェルグリンドの扱いについて考える。会議には、海軍と陸軍の大臣が参加し、帝国海軍の大敗について報告される。ヴェルグリンドは会議場で陸軍所属の将校から女性が参加することへの非難を受けるが、迅速に制圧し、自身の力を示す。その後、ゲンセイがヴェルグリンドを「同僚」として紹介し、彼女は「龍凰」という偽名を名乗る。この名前が大問題となるが、桜明が登場し、ヴェルグリンドが自分の手札であることを宣言することで、状況は収束する。こうしてヴェルグリンドは「龍凰」として会議に参加することになる。
大本営会議が開催され、海軍所属の情報将校から敵連合艦隊がアトランティス大陸へ寄港したことが報告される。帝国海軍の艦艇が拿捕され、敵の戦力が増大したことに対する不満が噴出する。会議はピリピリとした雰囲気に包まれ、皇国の将来に対する不安が高まる。そこに、ヴェルグリンドが参加し、帝国海軍の将兵が妖魔に操られている可能性を示唆し、これが希望となる。彼女は、妖魔が人に憑依する理由と、憑依が完全ではない限り、帝都を守る結界で見抜けることを説明する。会議はヴェルグリンドの存在により、一時的に安堵するが、妖魔の序列と階級に関する説明により再び緊張が走る。ヴェルグリンドは、最下級の兵士が天妖級に相当すると明かし、完全同化した妖魔の脅威を説明する。しかし、彼女は自信を持って対処する様子を見せ、会場の空気を変える。ゲンセイは、ヴェルグリンドの言葉に勇気付けられ、再び自信を取り戻すが、ヴェルグリンドは彼女がいる限り負けることはないと断言する。
大本営会議では、ヴェルグリンドが妖魔族の階級についての説明を行い、会議の流れが変わる。彼女は妖魔族が上位になるほど強くなるが、この世界に出現するのは困難で、現在来ているのは上級下位の「将官」級までだと推測する。参加者たちは、妖魔族の階級や、敵の「将官」級個体がどれほどの強さなのかについて激しい不安を感じる。ヴェルグリンドは、妖魔族がこの世界に出現する方法は「冥界門」を通るか上官から召喚されるかの二つだけだと説明し、召喚された「将官」級なら一万体以上は呼べたはずと軽く言う。
会議の参加者は、ヴェルグリンドに妖魔族との戦いで勝つことができるか尋ねるが、彼女は「出ないわよ。だって、私の身は一つだもの」と回答し、自分が去った後のことを考え、この国や人類をまだ見捨てていないことを示唆する。しかし、彼女は自ら動かないと宣言し、皇帝の護衛に専念することを表明する。ヴェルグリンドは、困った時に他人に頼るだけでは成長できないと考え、自分が去った時に遺された者たちが何もできなくならないよう配慮しているのである。
大本営会議では、ヴェルグリンドが妖魔族の階級についての説明を行い、会議の流れが変わる。彼女は妖魔族が上位になるほど強くなるが、この世界に出現するのは困難で、現在来ているのは上級下位の「将官」級までだと推測する。参加者たちは、妖魔族の階級や、敵の「将官」級個体がどれほどの強さなのかについて激しい不安を感じる。ヴェルグリンドは、妖魔族がこの世界に出現する方法は「冥界門」を通るか上官から召喚されるかの二つだけだと説明し、召喚された「将官」級なら一万体以上は呼べたはずと軽く言う。
会議の参加者は、ヴェルグリンドに妖魔族との戦いで勝つことができるか尋ねるが、彼女は「出ないわよ。だって、私の身は一つだもの」と回答し、自分が去った後のことを考え、この国や人類をまだ見捨てていないことを示唆する。しかし、彼女は自ら動かないと宣言し、皇帝の護衛に専念することを表明する。ヴェルグリンドは、困った時に他人に頼るだけでは成長できないと考え、自分が去った時に遺された者たちが何もできなくならないよう配慮しているのである。
敵の強さを把握し、ヴェルグリンドの協力で皇帝の安全が約束された後、大本営会議は今後の対策に移行する。会議で、敵艦隊の動向を厳しく監視すること、妖魔が人間に完全に同化するまでに最低でも二ヶ月の猶予があることが明らかにされる。ヴェルグリンドの助言に基づき、大まかな作戦指針が定まり、討って出て敵首魁を滅ぼすべきだという意見が一致する。しかし、ヴェルグリンドは参加者たちに自分たちだけで敵に挑むことの危険性を指摘し、他国からの協力を求めるべきだと提案する。参加者たちは、外交担当官を通じて他国との共闘を模索することに同意し、協定の通じない妖魔との戦いに全力を尽くす決意を固める。ヴェルグリンドは、彼らが行動に移すことを促し、失敗した場合は何とかすると内心で誓う。こうして、皇国の最後の抵抗が始まる。
アトランティス大陸に位置するアゼリア合衆国の最大の軍事拠点には、異界と通じる「冥界門」が存在しており、妖魔族が侵略のために使用していた。その中で、天理正彦と名乗る妖魔族の一員は、かつては天界時代のコルヌの副官であり、現在は妖魔族として活動している。天理正彦は、異界からの完全顕現を目指している妖魔族にとって最高の素材である「気闘法」で強化された肉体を持ち、現世でも十全な力を発揮している。一方、プルチネルラなど他の妖魔族も人間に憑依し、肉体と名前を得ることで自我を確立し、強力な力を手に入れていた。妖魔族は、冥界門の拡張作業を進め、コルヌを含む三妖帥の顕現を目指しており、そのためには最低でも百万レベルのサイズの門が必要であった。天理正彦とその仲間たちは、人類の抵抗を軽視しながらも油断せずに最後の仕上げに取り組んでいたが、ヴェルグリンドの出現を想定することはできていなかった。
大本営会議後、ヴェルグリンドは大図書室で過去の情報を調査しました。特に、神聖アーシア帝国の成り立ちや、アゼリア合衆国大統領ジョージ・ヘイズとその父親ローラン・ヘイズについての情報が彼女の関心を引きました。ローランはヴェルグリンドと深い関係があった人物で、ジョージはローランの息子で現在大統領であることが判明しました。ヴェルグリンドはこの世界が彼女がかつて関わったアーシア王国の流れを受け継いでいることを確認し、ジョージが大統領になっていることに感慨深く思いました。
また、ヴェルグリンドは図書室での調査を通じて、ローランの結婚が遅れたのは彼女の存在が原因であると記載されているのを発見し、不満を感じました。しかし、その後彼女は皇后とその付き従いの女性たちに、肌を若返らせる秘術を施し、彼女たちからの信頼を得ることに成功しました。ヴェルグリンドが提供した呼吸法により、皇后をはじめとする女性たちは見た目を若返らせることができ、彼女たちはヴェルグリンドを尊敬し、彼女に呼吸法を教わることを切望しました。
ヴェルグリンドは数日間、女性たちに呼吸法を指導したり、お茶の時間を楽しんだりしながら、自由に過ごしていました。一方で、軍部では各国首脳部との交渉が難航し、国際会談の開催が見送られていました。これに不満を感じたヴェルグリンドは、外務省情報部を訪れ、自ら交渉の手助けをすることにしました。アゼリア合衆国と神聖アーシア帝国への直接的なアプローチを試み、特にアーシア帝国には「神器」の提供をちらつかせることで、彼女の要求に応じさせようとしました。しかし、その手法は情報部の官僚たちからは不満を買い、彼女の行動が大問題に発展する可能性を懸念させました。
ヴェルグリンドは外務省情報部での交渉を自ら進め、アゼリア合衆国のジョージ大統領と神聖アーシア帝国との連絡を取り、彼らの協力を得ることに成功した。ジョージ大統領とは古い知り合いであり、彼が大統領になったことを祝福する一方で、重要な用件を先に話し合った。神聖アーシア帝国からの連絡では、〝七神器〟第一席のブライトから、ヴェルグリンドが女神であるかの確認があり、彼女が真の女神であることを認めさせた。ヴェルグリンドの圧倒的な存在感と言葉によって、ブライトは彼女の要求に応じることを約束した。これにより、ヴェルグリンドは外交的な成功を収め、両国からの協力を確実なものとした。
ヴェルグリンドは大ロシアム王朝に連絡を試みたが、妖魔による妨害が原因で通信が途絶えていた。状況を確認した後、彼女は自身の魔力を用いて通信障害を解消し、大ロシアムの対外情報庁との通信を回復させた。通信が繋がると、王宮に妖魔が攻め込んできたことが報告され、外部との連絡が断たれていた状況が明らかにされた。ヴェルグリンドは、大ロシアムからの即時の助けの要求を一蹴し、自らの要求を伝えた。それは世界意思を確認する国際会談の開催への参加であり、応諾することを条件に大ロシアムを助けると申し出た。
大ロシアム王朝のマゼラン大帝は、ヴェルグリンドの要求に応じ、会談への参加を決断した。ヴェルグリンドは約束通り、大ロシアム王朝を救出するために、王宮の場所に直接繋がる『門』を出現させた。この『門』は異なる空間を繋ぐ『時空連結』という超常現象であり、その場にいた全員がヴェルグリンドの力の前に驚愕した。これにより、大ロシアム王朝の命運はヴェルグリンドに託されることになった。
ヴェルグリンドが大ロシアム王朝の人々を自らの力で別の空間へ転移させた後、外務省情報部の官僚たちは彼女の能力に驚愕し、敬意を表した。ヴェルグリンドはこれにより、三国が国際会談に同意したことを確認し、中華との交渉も官僚たちに任せた。混乱から立ち直ったセルゲイはヴェルグリンドに感謝し、マゼラン大帝も礼を述べ、ヴェルグリンドの要求に協力することを約束した。ヴェルグリンドはその後、客室の準備と接待を手配する外務省情報部の官僚たちの動きに微笑み、山本莞爾という高官が差し出した玉露と茶菓子に満足した。最終的に、中華からも会談への応諾が得られ、五ヶ国首脳会談の実現が決定した。
ヴェルグリンドが国際会談の実施を桜明に報告し、彼が驚愕した。桜明はヴェルグリンドの力に依存する関係の歪さに懸念を感じつつも、彼女への感謝と協力を約束する。会談の日時は翌日の昼食後に設定され、桜明は時差や相手国の都合を考慮せずに進める。ヴェルグリンドは外務省情報部の官僚たちに会場の準備と通信設備の移動を命じる。特に山本莞爾は、ヴェルグリンドの要求を喜んで受け入れ、彼女の指示に従って準備に取り掛かる。ヴェルグリンドの提案により、会議は通信ではなく、直接各国の代表者を空間転移させて行うことになり、外務省情報部は大忙しの夜を迎える。
人類存亡をかけた運命の日、ヴェルグリンドは第二会議室の準備に満足し、山本莞爾の努力を称賛した。アゼリア合衆国のジョージ大統領との会話を通じて、ヴェルグリンドが過去の思い出を語り合い、ジョージの息子エミールの状況についても触れた。ジョージは息子が妖魔に乗っ取られたことを告白し、ヴェルグリンドに助けを求めた。ヴェルグリンドは自信を持ってジョージとエミール、さらにはアゼリア合衆国を助けることを約束した。その後、会談の準備が進められ、ヴェルグリンドの計画と支援により、国際的な危機への対処が進められた。
ヴェルグリンドは神聖アーシア帝国の一行を『時空連結』で呼び出した。その驚異的な能力に困惑するアーシア勢だが、特に帝王ザングはヴェルグリンドを女神カルディナと呼び、彼女の真の力を疑った。ヴェルグリンドの力を示すために神話級の青龍刀を創り出すと、ザングはその力の真実に驚愕する。しかし、彼はさらに勘違いを深め、ヴェルグリンドを正妃に迎えるという愚かな提案をする。
この提案にはヴェルグリンドも困惑し、ザングの失態に周囲は緊張する。しかし、山本莞爾が場を収めようと、帝王ザングの発言を冷静に否定し、ヴェルグリンドの怒りを抑えるために努力する。皇帝桜明が現れて事態を収束させ、ヴェルグリンドの怒りを鎮め、アーシア帝国の一行を控室に案内する。
後に、山本はアーシア帝国で親日家として、特に高い人気を得ることとなり、彼の名前はアーシアの歴史の中で高く評価されるようになる。
アーシア帝国の一行が去った後、中華群雄共和国の代表たちがヴェルグリンドと会うことになる。彼らはヴェルグリンドを妖魔と疑い、強い敵意を持って接する。しかし、ヴェルグリンドは彼らの反応を「またか」と受け止め、彼らの主張を静かに聞く。中華からの護衛たちは、ヴェルグリンドが自分たちの尊敬する〝龍拳〟の開祖、ロンの名を冒涜していると非難し、戦闘態勢をとる。
しかし、その場を仲裁する〝拳聖〟仙華が登場し、ヴェルグリンドとの対決を望む。ヴェルグリンドは彼女の挑戦を受け、圧倒的な力で仙華を下す。しかし、ヴェルグリンドは仙華の力を認め、彼女とロンの弟子たちに対して好意的な感情を持つ。対決の結果、ヴェルグリンドは中華群雄共和国の人々にも本物であることを証明し、彼らの尊敬を勝ち取る。仙華は敗北を認めるが、ヴェルグリンドの真の姿を見て清々しい気持ちになる。ヴェルグリンドはロンの望みが彼の弟子たちによって継承されていることを喜び、彼らに対して非常に好意的になる。
色々あったが、各国首脳が勢ぞろいし、中華からの指導者たちは妖魔の罠による偽者であることが判明し、本物と入れ替わっていた。彼らは妖魔族による国家的な人質の取り扱いにより、不本意ながらアゼリア合衆国への侵攻が可決された事情を明かし、謝罪する。ジョージ大統領をはじめとする各国首脳は、互いの事情を理解し合い、謝罪を受け入れる。その後、大ロシアム王朝と神聖アーシア帝国からも事情が語られ、各国首脳はお互いに謝罪し合う。
戦力を結集し、妖魔の本拠地に対する大反撃の準備が始まる。ヴェルグリンドは、参加を表明した戦士たちの武器を神話級へと強化し、彼らの戦力を高める。しかし、ヴェルグリンドは仙華以外の戦士たちが神話級の力のほんの一部しか引き出せていないことを指摘し、彼らにもっと頑張るよう促す。
最終的に、人類最高戦力として結集したチームが、妖魔に対して大反撃を開始することになる。ヴェルグリンドは人類を見捨てることなく、戦士たちの覚悟に応え、手助けを約束する。
デリアは元々「七神器」第四席として活躍していたが、エミールと名乗る妖魔に敗北し、妖魔として完全に生まれ変わった。デリアとエミールは同格の「将官」級の妖魔として、大ロシアム壊滅作戦に従事していた。妖魔の目的は人類の隷属化と強靭な肉体を持つ依代の確保であり、不向きな大ロシアムは破棄対象とされた。デリアとエミールは大ロシアム王族が見つからず、彼らの行方不明に困惑する。
エミールはデリアの槍を見て何かを感じつつも、具体的な記憶は思い出せない状態である。一方でデリアは自信満々であったが、プルチネルラからの「念話」で中華からの報告を受け、大ロシアムと同じ状況にあることを知る。両者はこの事態を深刻に捉え、プルチネルラは天理正彦と相談した結果、撤退と作戦の中断を決定する。
結局、妖魔たちは予期せぬ状況に直面し、不測の事態に備えて本拠地に集結することになった。
天理正彦は、妖魔としての自分と人間だった頃の自分との間での矛盾に苦悩している。人類を支配し、コルヌを顕現させ、この惑星を侵略の足掛かりとする計画が、予期せぬ事態に直面し中断された。大ロシアムや中華からの指導者が行方不明になるという不可解な現象が発生し、他の国々でも同様の状況が報告される。天理正彦はこの事態を深刻に捉え、全ての情報を集めるよう指示を出す。
天理正彦は自らの存在について深く考察し、自分が妖魔であると同時に、人間の精神が妖魔の自我を乗り越える可能性についても悩んでいる。自分自身が妖魔族の秩序を失わせる可能性を含め、自分が真に何者であるかについて疑問を持つ。また、この世界の統治は人類によるものであるべきだという考えに至る。
全ての妖魔が集結したところで、今後の作戦についての議論が行われる予定であるが、天理正彦は最善の行動方針についての結論を出せずにいる。自分の存在や役割についての答えが出せないまま、彼は判断を保留し、状況の変化を見守ることにする。
妖魔たちは、各国首脳が姿を消したという事実に直面し、人類が本格的に反攻の姿勢を見せていると考える。天理正彦は、この世界に本当に強者がいないのか疑問を持ち、再確認を指示する。李金龍は、唯一の脅威である仙華について言及し、その背景に「龍凰」という女傑がいたと伝える。また、デリアは「カルディナ」という女神の神話がアーシアに存在することを思い出す。
天理正彦は、この情報から女神カルディナが実は「灼熱竜」ヴェルグリンドである可能性を強く感じる。妖魔として憑依したエミールは、自分の中に残る人間の記憶から、ヴェルグリンドがこの世界に存在することに気づき、彼女に助けを求める。
この一連の発見とエミールの行動は、妖魔たちの間で不安と恐怖を引き起こし、彼らの支配がヴェルグリンドによって崩される可能性が示唆される。天理正彦は妖魔たちに情報収集を指示し、この世界の真の状況を把握しようとするが、解決策には至らないまま、全員が集結するところで物語は続く。
ヴェルグリンドが妖魔の拠点に突如現れ、エミールを救出しようとする場面から始まる。妖魔たちはその突然の出現に驚愕し、常に冷静な天理正彦もこの想定外の事態に戸惑う。ヴェルグリンドは妖魔たちにこの世界への侵略を諦めるよう提案し、拒否されると戦闘の構えを見せる。天理正彦はヴェルグリンドの言葉から、彼女が異なる時間軸から来たことを推理し、妖魔と人類の共存共栄を望むが、ヴェルグリンドにはその望みが理解されない。最終的に、ヴェルグリンドはエミールと妖魔を分離する作業を進め、最終決戦へと話が進む。
妖魔勢と人類最高戦力たる戦士たちが意図せず同じ場所に集結し、互いに困惑する。この突然の事態は、ヴェルグリンドの『瞬間移動』能力によって引き起こされた。戦士たちは、知り合いの妖魔に自我の回復を促すことで対峙する。特に天理正彦は、ゲンセイからの呼びかけに心が揺れ、自分が本当に妖魔なのか、人間なのかという問いに苦悩する。一方、仙華は李金龍との対決を再び迎え、ビリーはデビットに挑む。デリアは自分に対する六名の戦士たちの攻撃を回避しながら、人間としての自我が甦りつつあることに気付く。妖魔の作戦は人間の名前を奪うことで弱点を生じさせ、ヴェルグリンドの出現がその狂いを加速させた。
妖魔の拠点の作戦会議室は、ヴェルグリンドとエミール、そしてプルチネルラを除き、侵入者たちとの戦いで混乱していた。プルチネルラは聖人とされながら邪悪な本性を持ち、自分の欲望を優先させていた。彼はヴェルグリンドに関する知識が欠けており、彼女への対策を軽視していた。プルチネルラは、混乱を利用して天理正彦を排除し自らが王になる計画を立てていたが、そのためには〝冥界門〟を破壊する必要があった。彼の欲望はユニークスキル『即身仏』を昇華させ、弱った相手から力を奪う能力を持っていた。プルチネルラは、仙華と李金龍の戦いに注目し、戦いが接戦であることを利用して、強者から力を奪う機会を狙っていた。
仙華と李金龍は互いに戦いながらも、相手と戦える喜びを感じていた。李金龍は仙華に対する劣等感を抱きつつも、彼女の才能に憧れ、自分が超えたいと思っていた。一方の仙華は、自分の力が先代の継承者たちの知識と経験に支えられていることを明かし、自分だけの力で戦っているわけではないことを強調した。このやり取りから、李金龍は自分の修行が足りなかったことを認識する。
その後、プルチネルラが介入し、仙華を襲った。彼は仙華の心臓を抉り出し、彼女の死を確定させかけるが、ヴェルグリンドが介入して仙華を治療し、さらに竜の気を与えて彼女を強化した。これにより、仙華は「仙人」として完全に覚醒し、開祖でさえも至れなかった高みに立つことになった。一方で、プルチネルラは自分の計画を推し進めようとするが、予期せぬ激痛に襲われる。この間、李金龍は仙華への憧れを新たにし、仙華は「龍拳師」としてこの世界の管理者の役割を担うことになる。
ヴェルグリンドによって一時的な激痛を味わったプルチネルラは、自分が絶対的な力を手に入れたと信じ込んでいたが、ヴェルグリンドの真紅の覇気によって痛みを感じることとなった。プルチネルラはヴェルグリンドへの不意打ちを試みるが、彼女の圧倒的な力によって容易く阻止され、自身がどれほど優位に立っていると勘違いしていたかを悟る。デリアから奪った槍を使ってヴェルグリンドを倒すと考えたプルチネルラは、最後の攻撃を仕掛けるが全く効果がなく、絶望する。
その間、デリアは元の仲間たちに慰められ、人間としての自我を取り戻す。プルチネルラの最終攻撃はヴェルグリンドに全く効かず、彼女の反撃によって彼の企みは完全に失敗に終わる。ヴェルグリンドはプルチネルラが自分に勝てないことを示し、彼がどれだけ勘違いしていたかを示す。
最終的に、ヴェルグリンドはプルチネルラの処遇についてゲンセイたちに相談し、彼らはプルチネルラを始末することを決定する。プルチネルラは自身の最強の攻撃をヴェルグリンドに仕掛けるが、彼女には何の効果もなく、彼は自分の絶望的な状況を悟る。ヴェルグリンドの圧倒的な力によって、プルチネルラの反乱は終息する。
プルチネルラは自らが不敗であると過信していたが、ヴェルグリンドに対しては何の脅威もならなかった。彼はヴェルグリンドを焦らせるために話を引き延ばし、新型爆弾を盗出し、各国の首都上空で爆発させる計画を暴露する。この計画は、多くの無辜の民を犠牲にし、国家の秩序を崩壊させるものであった。ヴェルグリンドはこの計画を止めるために行動を起こし、プルチネルラの計画を未然に防ぐ。彼が「瞬間移動」を使って、配下の妖魔と新型爆弾を各国から一掃した。
プルチネルラは自分の計画が失敗したことに絶望し、ヴェルグリンドに命乞いをするが、ヴェルグリンドは彼の魂を砕き、永劫の苦しみを与えることを決定する。彼の背後でヴェルグリンドが発動した「灼熱竜覇加速励起」は超新星爆発のような威力を持ち、プルチネルラだけでなく、この大陸の三分の一を消失させるほどの被害を引き起こす。さらに、この攻撃の余波は次元を超え、プルチネルラに憑依していた妖魔の親玉であるコルヌにも届き、彼は重傷を負い、快癒に数十年かかるほどの打撃を受ける。
ヴェルグリンドの行動によって、プルチネルラの計画は完全に阻止され、彼自身も消滅させられた。周囲の者たちは、ヴェルグリンドの恐ろしい力を目の当たりにし、彼女がどれほどの存在であるかを改めて認識することになる。
桜明の最期の時が訪れると、彼女は自分が女神に愛され、平和な生涯を送れたことに満足していた。彼女は争いを避け、常に対話を求めるようにとの遺言を残す。桜明は、争いが愛する者たちの名誉まで失わせることを恐れ、平和を願っていた。彼女の死後、その身体から放たれた光は小さな結晶になり、ヴェルグリンドが持つ〝魂〟の欠片に吸い込まれた。ヴェルグリンドは桜明の貢献を称え、彼女を誇りに思いながら愛おしく思った。
桜明が亡くなり、ヴェルグリンドにこの地に留まる理由はなくなった。彼女は別れを告げ、新たな旅に出た。仙華はヴェルグリンドに再会する希望を持ち続け、彼女の言葉に励まされた。数十年後、人類は再び平和を享受していた。ジョージはアゼリア合衆国の大統領としての任期を全うし、息子のエミールは芸能事務所を設立して社会を明るくすることに貢献した。エミールと天理正彦は協力して、芸能事務所を世界的な企業に成長させた。仙華はヴェルグリンドから受けた竜気により不老の肉体を得て、芸能界で「龍華」として活躍を続けた。自力で妖魔に打ち勝った者たちは、〝仙人〟として覚醒し、荒木幻世や皆本三郎などによって新たな強者が育てられた。これらの者たちは超国家規模の対妖組織を形成し、未来に向けての戦いを続けていくことになる。
第三章(カリギュリオ)
カリギュリオは東の帝国内で最大勢力を誇る機甲軍団の軍団長であった。彼は若くして軍団長に昇進し、大出世を果たしたが、妻に裏切られ、離縁された過去を持つ。この出来事が彼の原動力となり、出世を目指して様々な手段を使って成果を上げた。ミニッツやカンザスといった有能な部下を得て、彼らを利用しながら信頼関係を築いていった。カリギュリオの話は、自分の野心のためには手段を選ばなかった過去と、その結果としての出世、そして人生の転換点についての反省が含まれている。
カリギュリオは三十代前半にして将官まで上り詰め、軍部の支配を強化し、帝国三大「大将」の一人に任命された。彼は若い頃に経験した裏切りから、出世を通じて復讐を果たすことになる。彼の出世により、かつて彼を追い出した者達は困窮し、カリギュリオはこれが自分の部下によるものと気づく。しかし、彼はこれだけで満足せず、より高い地位を目指すことで、彼を裏切った者達を完全に破滅させる計画を立てる。彼の目標は、自分を不幸にした全ての敵を滅ぼし、誰にも勝る力を手に入れることにあった。
カリギュリオとミニッツは、特別会員専用の「エルフのお店」で反省会を行い、過去の行動や現状について語り合う。この店は、頂上会談後に帝国幹部に開放された場所である。二人は、世界征服を目論んだ過去を振り返りつつ、現在の自分たちの役割と未来について考える。特に、ミニッツは新体制の宰相として、マサユキを支えることになり、カリギュリオは軍務大臣として帝国の安定化と強化に努めることになる。二人は、リムルの計画や魔王リムルによる未来の発展への寄与を評価しながらも、侵略種族との争いに対する不安を感じつつ、それに対する準備と協力の重要性を認識する。カリギュリオは、国内の安定化と魔国連邦との友好関係維持を優先し、未来の発展に向けたリムルの構想に協力する決意を新たにする。
カリギュリオは帝都に戻り、治安維持を優先するため、生き返った将兵たちに新たな任務を与える。幸い、将兵たちは彼に忠実で、魔物の国への移住希望者も協力的であった。リムルの配慮により、将兵たちはゆっくり考える時間を持ち、多くがやる気を示す。しかし、貴族たちの面会要求が業務を圧迫し、大きな問題となる。この問題に対処するため、リムルはテスタロッサを派遣し、彼女は人心掌握に成功する。テスタロッサの穏健な手段で、臣民の不安や恐怖を取り除き、治安を保つことに貢献する。
その後、新皇帝マサユキの戴冠式が計画され、臣民への御披露目が行われる。ヴェルグリンドとテスタロッサの計画により、マサユキは臣民から熱烈に受け入れられ、ナスカ・ナムリウム・ウルメリア東方連合統一帝国の神命皇帝として、世界各国に認知される。この戴冠式では、帝国の治安維持や、リムルとの和睦、ドワーフ王国との国交樹立などが発表され、マサユキの支持基盤が固まることになる。
帝都の臣民たちは新たな希望を得て活気を取り戻し、貴族たちも新皇帝の任命により活発な動きを見せ始める。貴族たちの動向は主にミニッツが対処していたが、カリギュリオにも面会依頼が絶えず、テスタロッサの助けを借りることになる。テスタロッサは貴族たちが問題にならないと断言し、実際に数日で面会依頼が減る。彼女は帝国の貴族たちが三大派閥に分かれており、それぞれの派閥に対して異なるアプローチを取ったことをカリギュリオに説明する。
軍閥貴族はミニッツが掌握しており、地方貴族は自由取引が認められることやリムルの計画による地方の発展に対する約束で帰順を示す。テスタロッサは、帝国の経済が闇取引にも依存していることをカリギュリオに説明し、近藤などがその実情を理解し、必要悪として容認していたことを明かす。この話から、カリギュリオは帝国の運営について新たな認識を得る。
最後に残る門閥貴族に対する説得は、テスタロッサが主導する会談で行われる予定であり、カリギュリオもその会談に参加することになる。テスタロッサの計画と行動により、帝国内の貴族たちの問題が効率的に解決されていく様子が描かれている。
会談には、宰相のミニッツ、軍務大臣のカリギュリオ、魔国からの外交武官テスタロッサ、そして交渉相手である門閥貴族の長、ミスラ・ヒルメナード公爵の四名が参加する。ミスラは30代前半の若さでありながら、門閥貴族の長としての重責を担う。彼の母は前々皇帝の皇妃であり、ルドラの生母であるため、ミスラはルドラの異父弟にあたる。帝国では皇帝の子を産んだ女性が高い地位に就く制度があり、ミスラの母はその制度のもとでルドラを産み、名声を手に入れた。彼女は後宮を出てヒルメナード公爵に嫁ぎ、ミスラを産む。ミスラはその血筋から絶大な権威を持ち、見る者を威圧する酷薄な雰囲気を纏う。カリギュリオは、ミスラが裏で悪事を働いていると疑い、彼の前では逆らえないと感じる。しかし、テスタロッサが以前言っていた「大半の貴族は問題にならない」という言葉を思い出し、ミスラも実は悪事を働いていないのではないかと考え直す。会談の始まりを告げる鐘の音が鳴り、カリギュリオは会談に臨む。
(マサユキとミスラ)
ミスラ・ヒルメナード公爵は、帝位を簒奪する意図を疑い、ミニッツ宰相らと会談を行う。ミニッツは簒奪の疑いを否定し、すべてが皇室典範に則った正式な手続きであると説明する。カリギュリオとミニッツは、ヴェルグリンドが帝国の味方ではなく、マサユキの意向にのみ従っており、マサユキが帝国を滅ぼすことも可能であると強調する。ミニッツは、帝国の安定化が最優先であり、ミスラに帝国の支配を譲ることも検討していることを明かす。ミスラは、マサユキが皇帝になることでヴェルグリンドを帝国に留めることが最も重要であることを理解し、政治を行う人間が誰であっても構わないと納得する。テスタロッサも、マサユキが皇帝となれば魔王リムルから最大限の援助が得られると加勢する。ミスラは、提示された選択肢以外に自由があるものの、それを勝ち取ることは難しいと考えている。
ミスラ・ヒルメナード公爵は、政治を主導することに対して興味がなく、絵を描いて過ごしたいという願いを持っている。外見からは支配者と目されていたが、実際には大人しい性格で、政治よりも個人的な趣味に関心がある。ミスラの母は前々皇帝に愛された美貌の持ち主であり、ミスラの父バルサ・ヒルメナード公爵との間に愛情深い関係があった。ミスラには人望があり、過去には肩がぶつかった伯爵を失脚させるなどの影響力を持っていたが、これらはすべてミスラの意図しない結果であった。
現在、ミスラはルドラの失踪後、ヴェルグリンドが「勇者」マサユキを新皇帝として推戴する状況に対し、どのような態度を取るべきか考えている。政治に深く関わることは避けたいが、周囲の期待や帝国の未来についても考慮しなければならない。ミスラは愛娘や生まれたばかりの息子、そして妻との関係にも気を配っており、家庭の幸せを最優先に考えている。
ミスラの前に提示された選択肢は、帝国を支配するか、ミニッツらと協力するかの二択であるが、彼にとってはどちらも望ましい選択ではない。ミスラは政治から距離を置きつつ、貴族達への影響力を維持することが理想であると考え、帝都からの追放を狙う策を立てる。しかし、ミニッツから意外な提案を受け、彼は自身の立場と帝国の未来について深く思案することになる。
ミスラ・ヒルメナード公爵は、帝国の国内事情に関して魔国の外交武官であるテスタロッサに厳しい言葉を投げかけるが、予想外に冷静に対応される。ミスラは自身がルドラ帝の異父弟であることを強調し、未知の人物マサユキを新皇帝とする計画に反発する。しかし、テスタロッサからの反応は、ミスラの期待を裏切り、彼の賭けは最悪の形で結果が出てしまう。マサユキも現れ、自身が帝位を望んでいなかったが、帝国民のために最善の選択として皇帝になることを決意したと語る。ミスラはこの状況をどう受け止めれば良いのか混乱する。
ミスラはマサユキに対して、自身の見解を正直に述べる。マサユキはそれを肯定的に受け止め、ミスラが自分の本当の姿を理解してくれたことに感謝する。このやり取りを通じて、二人の間に友情が芽生える。ミスラとマサユキは互いに困難を共有し、理解しあうことで絆を深める。この過程で、ミスラは自分と同じように他人の誤解に苦しむマサユキの真の姿を理解し、二人は笑顔で語り合う。
この会話を通じて、ミスラは政治的な策略や権力闘争から距離を置き、個人的な関係を重視する価値観を持つことが明らかになる。また、マサユキもまた、自身が直面する政治的な責任や期待に対して悩みを抱えていることが示される。最終的に、ミスラとマサユキの間には、政治的な立場を超えた真の友情が芽生えるのであった。
マサユキとミスラが友情を結んだことで、全ての誤解が解消され、ミスラは政治への直接の関与はせず、裏方として帝国を支えることを約束する。ミスラの持つユニークスキル『悪人面』が明らかにされ、彼の交渉力を高めることが示唆される。一方、テスタロッサからの指摘を受け、ミスラは家族への感謝の気持ちを伝えることの重要性を認識する。その結果、家庭内の誤解を解き、関係を修復することに成功する。そして、ミスラは新皇帝マサユキの支援者として、帝国貴族の統一を図り、支配体制の安定化に大きく貢献する。この一連の出来事により、帝国内の政治的安定が迅速に達成されるのであった。
ミスラが協力を約束した夜、彼とミニッツは料亭で祝杯を挙げていた。貴族の問題が解決し、残る課題は侵略種族だけとなっていた。ミニッツは封筒を渡し、中身はミスラの過去に関する報告書だった。内容を読んだミスラは、自分の元妻と関わりがあるブルダフ伯爵に復讐する決意を固める。報告書には、伯爵が地方貴族を束ねており、その中にはミスラの元妻の家も含まれていた。さらに、これらの貴族家が不正に家督を乗っ取られている可能性が示唆されていた。ミスラは慌てて自宅を出て、直属護衛隊と情報局の局員を集めることにした。
夜の内に、証拠を固めた。ブルダフ伯爵が自らの罪を認めずに抵抗するが、帝国皇帝近衛騎士団の一員であり情報局員であるカリギュリオによって、彼の罪状は確認済みであった。ブルダフ伯爵が言い逃れする余地はなく、カリギュリオは彼を帝国大審院に送ることを決定する。ブルダフが罪を認めようとも、帝国大審院での処遇は厳しいものであり、彼の未来は暗いものであった。カリギュリオは被害者たちの恨みを実感するようブルダフに言い放つ。
カリギュリオは騎士団を飛空船で帰らせ、個人用の魔導二輪で辺境の小さな町にある昔住んでいた館へ向かう。懐かしい館に着いた彼は、かつて自分を捨てたと思っていた元妻、マミアに会うために来たが、既に彼女を恨むことはなくなっていた。マミアとの再会で、彼女が緊張していることに気づき、彼女が自分を処罰するために来たと思っていることを知る。しかし、カリギュリオはマミアに自分の愛情が変わっていないことを告げ、彼女の罪について話し合う。マミアは自分が犯した過ちを悔いて涙を流し、カリギュリオは過去の勘違いを認め、彼女を再び守ると誓う。二人は再び絆を深めることに成功し、カリギュリオはマミアとの関係を修復する。
カリギュリオはヒース家に仕える使用人たちを集めて事情聴取を行い、過去に彼らが彼に薬を盛った事情を聞き出す。彼らは家を守るために闇組織の脅しに従ったこと、そしてカリギュリオを守りたいという想いからそのような行動に出たことを明かす。カリギュリオは使用人たちに対し、過去は水に流し、これからも共に支え合うよう呼びかける。また、彼は元妻マミアに再び夫婦関係を修復することを提案し、彼女からの同意を得る。その後、カリギュリオは部下たちにヒース男爵家の乗っ取りに関わったネストとズック子爵を捕縛し処分するよう指示する。この一連の行動で、カリギュリオはマミアとの関係を修復し、ヒース男爵家の当主としての地位を取り戻す。
カリギュリオとミニッツは帝都の料亭で再び会い、彼らの関係や最近の出来事について話す。カリギュリオはマミアとの関係修復に感謝を表し、ミニッツはその手続きの困難さを語る。さらに、テスタロッサから渡された資料の出所について話し合い、その情報の詳細さに驚愕する。カリギュリオは魔国との関係を維持する重要性を強調し、未来の帝国のために魔国と争わない仕組みを築く必要性を感じている。彼らはこれからも大変な仕事があると認識しつつ、その責任を受け入れている。
第四章(レイン)
レインは魔王ギィ・クリムゾンの忠実なメイドであり、原初の闇から派生した存在である。彼女は長い間ギィ様に仕えており、自身と姉妹のミザリーが過去にギィ様に挑んで敗北した経緯を語る。敗北後、レインとミザリーはギィ様に従属することになり、この経験から悪魔間のパワーバランスが変動したことを明かす。彼女は悪魔についての秘密情報、特に「原初」を滅ぼすことは不可能であるが、従属させることは可能であると説明する。また、悪魔の眷属や派閥について詳細を提供し、悪魔の不滅性と転生についても触れる。レインは自分たちの敗北が悪魔の秘密を明らかにした意義があったと肯定的に評価する。
レインは魔王ギィ・クリムゾンに仕える忠実なメイドであり、原初の闇から派生した存在である。彼女はギィ様の下での生活を楽しんでおり、自己犠牲の精神で仕えている。ギィ様が冥界の覇権争いを離れ、地上での活動を選んだ後も、レインと同僚のミザリーは彼に従属し続けている。レインは勝ち組であり続けたいという願望を持ち、ギィ様への忠誠を誓っている。一方で、ミザリーとのライバル心を抱きつつも、互いに信頼し合っている関係である。レインは悪魔であるために極寒の地でも生活でき、様々な仕事をこなし、趣味として絵画を楽しんでいる。彼女はギィ様やミザリーからの評価も高く、自分の趣味を仕事に活かしている。
レインは魔王ギィ・クリムゾンのメイドであり、魔王たちの宴の案内人も務めている。ギィ様、ミリム様、ラミリス様などの魔王たちとの関わりの中で、彼らを支える役割を担っている。魔王たちの宴では、人類の管理というギィ様の仕事を手助けする新たな魔王が増えた。ダグリュール様、ルミナス様、そしてディーノ様がそれであり、レインはこれらの魔王たちとのやり取りの中で、様々なエピソードを経験している。特に、ディーノ様に対しては、働かない態度や仕事を押し付けられることに不満を持っている。レインは魔王たちとのやり取りを通して、自分の立場や役割について考え、時にはその中で発生する問題や矛盾に直面しながらも、ギィ様への忠誠心を持ち続けている。
魔王たちの宴は当初のお茶会から業務報告会へと変化し、ギィ様をはじめとする魔王たちは人類を管理するという重要な仕事に忙しく取り組んでいる。レインは案内人として、この宴における魔王たちの動向を見守っている。新たに魔王となった六名の魔王たちは、それぞれに忙しい日々を過ごしており、その中でディーノの働かない態度に不満を持つレインの姿が描かれている。魔王たちの宴の趣旨が変わり、魔王間での条約や協定を定める会合としての役割を果たすようになり、新たな魔王の承認もこの会議で決められるようになった。ギィ様がこの新たな制度に納得しているため、レインもそれに従う姿勢を見せている。
魔王たちの宴の案内人として、レインは多くの魔王たちが就任し、去っていく様子を見てきた。その中で、魔王リムルの出現は特筆すべき出来事だった。当初の宴が業務報告会へと変わり、魔王の数が増えていく中で、リムルの登場は多くの変化をもたらした。レインはリムルを迎えに行ったミザリーからの報告を受け、クレイマンの宴でリムルとの直接対面を果たす。リムルの強大な力と、ラミリスの従者との関連についての疑問が持ち上がる。
レインはリムルとの対話を通じて、リムルが他の原初たちを配下に加えていることを知り、魔王としての力の大きさに驚愕する。特に、原初の黒であるディアブロ(クロ)とのやり取りから、リムルの勢力の拡大を実感する。このことから、レインはリムルを新たな最大の脅威と見なし、全力で警戒することを決意する。これまでの厄介者リストに魔王リムルが加わり、リムルに対する敵対を避け、良好な関係を保つことを目指すことになった。
ギィ様とレインたちは、特定の出来事の対処をリムル様に任せる珍しい決定を下した。ギィ様の真の目的は、ある強大な力の発動に対処することだったが、ディアブロ(原初の黒)の豪語により、その場はリムル様に任せることに。レインはこの決断に疑問を感じたが、ギィ様の判断に従った。結果的にそれが正解だったと安堵し、ギィ様のルミナス様への心配を理解する。リムル様とラミリス様の従者、特に原初の白ことテスタロッサの進化と力についての議論が交わされ、リムル様の勢力下に厄介者リストの上位メンバーが集まっていることが明らかになる。これにより、レインたちはリムル様に一目置くようになり、彼に喧嘩を売らないようにしようと決意する。レインは過去の行動を振り返り、成長した自分を認め、同じ過ちは犯さないと自覚する。
リムル様がレインたちに進化の力を与えたことで、彼女らは「悪魔王」へと進化した。この出来事は、レインにとって非常に印象深いものであり、リムル様への感謝の気持ちとともに、彼の力の大きさに驚愕し、その「ヤバさ」を強調している。進化によりレインたちはギィ様の役に立てるようになり、リムル様への恩返しを誓っている。しかし、リムル様の国にはテスタロッサなどの強力な存在もおり、彼女たちの力が必要とされる場面があるかは不確かだ。模擬戦の準備中に、結界内に何者かが侵入してきたことが明らかになり、レインとミザリーはその対応に追われることになった。
第五章(ベスター)
ベスターは、かつて偉大なる英雄王ガゼルに仕え、研究を行うことを夢見ていたが、父の跡を継ぎドワルゴンの大臣になった。しかし、カイジンという平民出身の優秀な技術者に対する嫉妬から、彼がリーダーを務める「魔装兵計画」の重要な実験を強引に進め、その失敗によって計画は中断された。この失敗の責任をカイジンが一手に引き受け、軍を去ることになった。ベスターは大臣の地位を得るが、自身の行動を後悔し、カイジンへの嫌がらせで日々を送るようになる。彼は政治家としての才能に欠け、自身がガゼル王の役に立つことはないと感じていた。
ベスターは過去の過ちを反省し、謝罪の意を再度カイジンに伝える。カイジンは既に謝罪を受け入れており、ベスターの気に病む必要がないと応じる。ベスターはリムルの下での新たな仕事に忙殺される日々を過ごし、魔物たちへの基礎教育やマナー指導に携わり、彼らの向学心に驚かされる。研究施設での仕事やガビルとの友情など、多くの充実した経験をする。しかし、封印の洞窟での研究所で行われた、悪魔族への受肉実験について、ガゼル王に報告すべきか悩んでカイジンに相談を持ちかける。カイジンは最初は逃げ腰だが、結局はベスターの相談に乗ることを決める。ベスターは、忙しくも新しい環境での生活に幸せを感じており、ガゼル王への感謝の気持ちを持っているが、リムルの研究所での出来事についてどう対処すべきか、カイジンと共に考えることになる。
ベスターはカイジンと共に高級酒場で重要な相談をする。ベスターはリムル陛下の研究所での秘密をガゼル王に報告する義務があると考えているが、どのように報告するかで悩んでいる。カイジンはベスターが侯爵の立場を保持していることを指摘し、報告することを支持する。話はベスターの研究所での体験やドワルゴンでの生活へと移り、ベスターは現在の生活に満足しているが、リムル陛下の研究所での出来事をどうガゼル王に報告するかで悩んでいる。そこに魔王ディーノが登場し、責任を他者に投げることを提案し、その場は酒を飲み明かすことで悩みを忘れることにする。ベスターはディーノの提案を採用することにし、三人で乾杯を交わす。
ベスターが責任を感じて報告した内容は、当初信じられなかった。しかし、酔いが覚めて現実に直面した彼は、後悔の感情をすでに使い果たしていた。報告後、彼の話が真実であることが判明し、当初の責任追及は名も知らぬ担当者に転嫁された。ベスターはこの結果に、ディーノ様の提案を受け入れて良かったと感じている。
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