小説「神統記(テオゴニア)」カイ、神の加護を受ける 感想・ネタバレ

小説「神統記(テオゴニア)」カイ、神の加護を受ける 感想・ネタバレ

どんな本?

『神統記(テオゴニア)』は、谷舞司 氏によるダークファンタジー小説である。物語は、人族の土地に攻め入る亜人種との戦いが続く戦乱の時代を舞台に、ラグ村の少年・カイが突如として前世の記憶を思い出し、この世界の『仕様』に気付き、神の加護のもとで成長していく姿を描く。

主要キャラクター

  • カイ:ラグ村に住む少年。前世の記憶を思い出し、神の加護を受けて成長する。
  • ジョゼ:ラグ村領主の一人娘で、カイの秘密を知り、共に訓練を行う。

物語の特徴

本作は、亜人種との熾烈な戦いと、前世の記憶を持つ主人公が神の加護を受けて成長する過程を描く壮大な叙事詩である。
広大な世界観と深い謎、そして少年の成長物語が読者を引き込む。

出版情報

  • 出版社:主婦と生活社
  • レーベル:PASH!ブックス
  • 発売日:2018年03月30日
  • ISBN:9784391151695
  • 電子書籍版も発売中
  • コミカライズ版も刊行されており、2025年4月より放送開始予定

読んだ本のタイトル

神統記(テオゴニア)
著者:谷舞司 氏
イラスト:河野紘一郎 氏

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あらすじ・内容

辺土の少年は神に抱かれ、生きる術を研ぎ澄ます。

その日も、果てもなく殺し合いが続いていた…。

灰猿人(マカク)、豚人(オーグ)、蜥蜴人(ラガート)…亜人種らの度重なる侵攻に苦しむ辺境の地。
戦いのさなか、命の危機に瀕した少年カイの脳裏に突如甦えった前世の記憶。

「おにぎりが食いてえなぁ…」
この世の『仕様』に気付きを得たカイは、神の加護のもと、
抗い、這いずり、戦乱を生きる力を磨くーー。

広漠たる世界と深き謎、そしてひとりの少年の成長を綴る一大叙事詩。

神統記(テオゴニア)

感想

著者さんのホームページで現代の陶器製造業者が幕末にタイムスリップした物語を読んでいた時から彼の作品は好きだったが、この話がなかなか更新されなかった。
それら自身も忙しくて読むのを辞めた後に、書籍化を知り3巻まで購入。
だが、打ち切りされてしまった。
小説家になろうでも数年更新されていない。

さらにこの作品、神統記(テオゴニア)も小説版は3巻以降は出版されず”小説家になろう”でたまに読む程度であった。
ただ、漫画版が好調とは知っていたが読む気になれず読まなかったがアニメ化を機に再度読んでみようと思い読んでみた。

濃厚なファンタジー世界

物語は人族と亜人族が土地神を巡って争う世界を描いていた。
この設定により、暴力と死、そして生き残る意志が鮮明に描かれており、読み応えがあった。
戦場や村での緊張感に溢れた描写が魅力的であった。

主人公カイの成長

主人公カイが偶然手に入れた加護を隠しながらも、その力を活かして戦う姿は痛快であった。
また、彼が戦場や日常で経験を積みながら成長していく様子がリアルに感じられた。
強力な加護を得ても決して無敵ではなく、経験や知識の不足から苦境に陥る場面が多い点が物語に緊張感を与えている。

前世の記憶とのバランス

カイが断片的に持つ前世の記憶は、物語に新たな味わいを加えていた。
記憶を完全には活用できないもどかしさがありつつも、戦闘や生活で少しずつ役立つ場面があり、そのバランスが絶妙であった。

世界観とキャラクターの魅力

人族や亜人族、それぞれの思惑が絡み合う世界観が非常に深く、物語に引き込まれた。
さらに、カイと出会う個性的なキャラクターたちが物語を彩り、続きが気になる展開が続いた。

この物語は、飽きさせない濃密なストーリーと深い世界観を持ち、ファンタジー好きにはぜひおすすめしたいら作品である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

第一章  ラグ村の少年


泥濘の戦場と少年の試練

雨上がりを思わせる泥濘の中、少年カイは仲間と共に灰猿人族と対峙していた。この泥濘は雨ではなく死者の血と体液によるものであった。カイは直感で身を投げ出し、巨大な石礫の直撃を回避した。仲間たちと共に槍を構え、敵の足元を狙う戦術で灰猿人族と戦ったが、敵の攻撃により体勢を崩し、槍を手放すこととなった。それでもナイフを手に取り、必死の覚悟で灰猿人族の喉を突き上げたが、敵に跳ね飛ばされてしまった。

勝利と援軍の到来

カイが地に伏している間、隣村からの援軍が到着し、戦況が人族に有利に傾いた。強力な領主家の戦士オルハが現れ、灰猿人族の名高い戦士と対峙した。壮絶な戦いの末、灰猿人族は撤退を余儀なくされた。ラグ村の軍勢は勝利を収めたものの、多くの犠牲を払った。

神石の収穫と再生の希望

戦場で倒した灰猿人族から「神石」を回収する作業が始まった。カイたちはその神石の髄を体内に取り込み、力を得た。この世界では「神石」の摂取が強さの象徴であり、兵士たちの疲弊した心と体を癒す大切な行為である。

帰還と失われた命

戦いを終えたラグ村の軍勢は、仲間の亡骸を伴い村へ戻った。カイもまた荷車に乗せられ、その揺れの中で戦場の疲労と喪失感を噛み締めた。13歳の少年カイは、何度も繰り返される殺し合いの中で心がすり減りながらも、生き延びる希望を見いだしていた。

ラグ村の概要と領主モロク家

ラグ村は人口約1000人の貧しい辺土の村であり、周囲には痩せた農地と家畜が点在していた。村を囲む高い石壁は、亜人種族からの攻撃を防ぐために祖先たちが築き上げたものである。領主モロク・ヴェジンは「鉄の牡牛」と呼ばれる武勇に優れた人物で、訓練場で兵士たちの模範を示し、統治者として村の防衛に貢献していた。

訓練と領主による模範

訓練場では壮年の兵士バスコが指導を務め、若い兵士たちの目標となっていた。ある日、領主モロクが自ら模擬訓練の相手を名乗り出た。モロクの力は圧倒的であり、バスコは渾身の攻撃を繰り出すも歯が立たなかった。モロクは「加護持ち」として異常な耐久力を持ち、訓練場の兵士たちに戦術の重要性を説いて見本を示した。

兵士カイの日常と飢え

13歳の少年カイは病気で一時的に訓練を免除されていたが、食事は兵士として十分に与えられず、空腹に苦しんでいた。仲間のマンソから岩苺を分け与えられるが、それでもカイの栄養不足は深刻であった。彼は訓練を見学しながら、次なる戦いに備える必要性を感じていた。

試みた魔法と危機

夜、眠れないカイは井戸水を飲みに外へ出た。そこで「火魔法」を試すべく集中すると、指先に小さな炎を灯すことに成功した。しかしその代償は大きく、体力を著しく消耗したうえに火を消すことができなかった。水で消火を試みたが、炎は水中でも燃え続け、カイは追い詰められた。

白姫ジョゼの登場と秘密の発覚

窮地の中、ジョゼが現れ、光る水桶を抱えるカイに疑問を投げかけた。彼女の問いにより、カイの試みた魔法の存在が露見しかけたが、カイはその場をどう切り抜けるかを模索しながら緊張に包まれていた。

白姫ジョゼとの遭遇と魔法の発覚

ジョゼが井戸近くに現れ、カイの火魔法を不審に思い近づいてきた。カイは必死に火を消そうと念じ、水路を閉じるようなイメージで生命力の流れを遮断した。その瞬間、火は消えたが、彼の動きで桶が転倒し、水が飛び散った。倒れた拍子に骨折の痛みがぶり返し、カイは大声で叫んだ。その声は城館中に響き渡り、大騒ぎとなった。

騒動の収束と叱責

城館の大人たちは夜襲と誤解し、兵士たちを叩き起こしたが誤報と判明。怒り心頭の彼らはカイに体罰を加え、折檻部屋へと閉じ込めた。ジョゼは自ら責任を感じ、カイに謝罪したうえで火魔法についての注意を促した。魔法の使用は危険であり、命を縮める可能性があると警告した。

魔法の実験と治癒の試み

折檻部屋でカイは「治癒魔法」を試みることを決意。生命力の消費を最小限に抑えるため、水が滴る時間を基準に施術時間を制限した。口内の傷を治癒するため、「細胞の活性化」を念じ、ついに柔らかな熱を感じることに成功した。ただし完全な治癒には至らず、さらなる修練が必要であった。

新たな戦いへの出発

ラグ村はバルター辺土伯からの招集命令を受け、救援部隊を編成した。傷が癒えぬカイも部隊に加わり、強行軍でバーニャ村近郊へ到着。侵入してきた豚人族との戦いを控え、雑兵たちは不安を隠せなかった。連合軍は700人を超え、豚人族を討つために森の中へ進軍した。

豚人族との壮絶な戦闘

豚人族との戦闘は予想通り凄惨を極めた。森という不利な地形の中、槍衾を活かしきれない連合軍は苦戦を強いられた。特に豚人族の巨大な体と圧倒的な力が兵士たちを圧倒し、多くの犠牲を出した。カイは苦境の中でも生き延びるために奮闘し、この過酷な戦場で自らの成長を模索していた。

豚人族の策略と領主連合軍の大敗

豚人族は狡猾な策略を用い、領主連合軍を湿地帯へ誘い込んだ。湿地に足を取られた連合軍は蜥蜴人族の縄張りに追いやられ、背後を脅かされる形で混乱に陥った。その間隙を縫い、豚人族の主力が襲撃を開始。戦場は混乱を極め、加護持ちのオルハも判断を誤り、雑兵たちは散り散りに逃走した。

カイの逃走と生死を賭けた戦い

カイは追っ手を振り切れず、豚人兵に脇腹を刺された。絶体絶命の状況で魔法を行使し、豚人兵を倒すことに成功するも、崖から落下して意識を失った。奇跡的に湖の水に助けられた彼は、傷を治癒魔法で癒そうと試みたが、霊力の不足に直面し、豚人兵の神石を利用して生命力を補った。

バーニャ村の裏切りと領主会合

戦闘後、バーニャ村の領主ピニェロイが豚人族との取引のために連合軍を罠にはめた事実が発覚した。領主会合でピニェロイは処刑され、その加護は娘に引き継がれるべきであったが失敗。バルター伯はバーニャ村を後見する隣村に委ねることを決定した。

豚人族の残虐行為と新たな戦闘

豚人族は村に女性たちの首を投げ込み、村人たちを激昂させた。直後に豚人族との戦闘が再開され、人族と亜人族の間でさらなる血の応酬が繰り広げられる運命が決定づけられた。

霧の晴れた谷とカイの目覚め

カイは大木の根元で目を覚ました。身体の傷がすっかり癒えており、奇跡的な回復に驚く。霧が晴れた谷底は美しく、澄んだ湖と古びた墓所の存在が明らかになった。カイはその碑文を掃除しようと火魔法を使ったが、予想以上の威力で燃え広がり、碑文を煤だらけにしてしまった。魔法の消費量が以前と比べ大幅に増えていることに気づき、成長の要因を考察する中で、自身が土地神の「加護」を受けた可能性を思い至った。

豚人族との激戦と人族の勝利

同じ頃、バーニャ村では人族と豚人族の凄惨な戦いが続いていた。互いに多くの犠牲を出しながらも、人族は豚人族の加護持ちを倒し、戦況を優位に進めた。最終的に豚人族が撤退し、人族の勝利が確定。バルター辺土伯の勝利宣言が響き渡り、戦場には歓声が広がったが、多くの兵士たちは仲間の捜索と死者の回収に追われた。

ラグ村兵士たちの苦境とカイの帰還

ラグ村の兵士たちは、戦闘で大きな損害を被り、多くの行方不明者を抱えていた。戦いの責任を巡る不満がオルハに向けられる中、仲間たちは次第に厳しい現実に疲弊していた。そんな中、行方不明だったカイが笑顔で仲間の元に戻った。豚人族の手斧を軽々と振り回し、仲間たちに明るく声をかけた彼の姿は、一瞬の安堵と希望を皆にもたらした。

鳥の声と畑仕事

カイは鳥の声を聞き、空を見上げてその主を探したが、姿は見当たらなかった。同僚たちに叱られながらも、心に谷で聞いた鳥の声が蘇り、衝動的に谷へ行きたいという思いに駆られた。その高揚感を鋤で土を掘り返す作業にぶつけ、急激に進化した力を見せつけた。村人たちはその働きぶりを称賛したが、カイ自身は得意げに鼻を鳴らしつつも特に不満を感じていなかった。

戦場で得た成長

カイの怪力は、戦場での経験と「神石」を食べたことで得た急成長によるものだった。彼はそれを咎められることもなく、村の中で有望株として認識され始めた。一方、カイはまだ若く、周囲から向けられる異性の視線や変化に気付かないままであった。

兵士としての訓練

午後の槍の調練では、カイの成長した技量が目立つようになった。彼の鋭い動作は上級者の目にも留まり、直接指導を受ける機会が増えた。班内では実力者マンソと並ぶ存在となったが、彼自身はその立場を心地よく受け入れ、控えめに振る舞うことでバランスを保った。

谷への衝動

夜、カイは衝動に駆られ、村を抜け出して谷を目指した。驚異的な身体能力を駆使し、谷に到着するとそこに広がる絶景に感動した。湖に飛び込んで自由に泳ぎ、谷の静寂と自然の美しさに心を癒された。

谷での祈りと決意

谷底にある土地神の墓を磨き、花を供えたカイは、この場所への深い愛着を感じていた。帰還前に墓前で祈りを捧げ、谷を自分の「特別な場所」とする決意を固めた。

日常への帰還

夜明けとともに村に戻ったカイは、普段通りの仲間たちとの生活に溶け込んだ。食事の準備や日常の会話に参加しつつ、心の一部はまだ谷にあるような感覚を抱きながら、日々を過ごしていた。

第二章  小楽園

谷での日々と探索

カイは毎夜、村を抜け出して谷へ通うようになった。谷に着くと土地神の墓石を磨き、祈りを捧げた後、谷底の探索やマイホーム用の土地探しを楽しんだ。谷底には山林檎や山菜、キノコなど豊富な自然の恵みがあり、カイはその豊かさを満喫していた。彼は探索中に発見した洞窟や丘、小川などに名前を付け、自らの領域として親しみを深めていた。

材木の伐採と魔法の試行錯誤

小屋建築に必要な材木を求めて、カイは谷外の森林で伐採を始めた。道具を持たない彼は魔法を試しながら木を切る方法を模索し、最終的に「概念の剣」を用いて木を倒すことに成功した。しかしその過程で大きな音を立て、周囲に迷惑をかけてしまった。

蜥蜴人との遭遇と対話

伐採中に発生した音が原因で、近隣の蜥蜴人族が現れた。蜥蜴人たちは初め、警戒しながらも敵意を示さず、カイと対話を始めた。彼らは谷を恐ろしい神「***」の住処と信じており、その話を聞いたカイは驚きを隠せなかった。やがて蜥蜴人のリーダー「ゴレ」とカイの間で友好的な交流が生まれ、カイは谷の新たな住人として認められる形となった。

村への帰還と白姫様との出会い

谷での作業を終えたカイは村へ戻り、朝方に城館の井戸で白姫様と遭遇した。白姫様は訓練中で、彼女の意外な一面を見たカイは少し驚いた。二人のやり取りの中で、白姫様は「加護持ち」としての覚悟を語り、カイに訓練への参加を求めた。最初は気乗りしないカイであったが、彼女の説得に折れ、翌朝から付き合うことを約束した。

谷の恵みと変化

カイは谷の豊かな恵みにより、飢えとは無縁の生活を送るようになった。その変化により肌艶が良くなり、以前の飢えからくる沈んだ表情も消えた。このことは女性たちの目に留まり、配膳時にカイを贔屓する動きが見られるようになった。その結果、カイの皿に盛られる料理の量が他と比べて明らかに多くなり、仲間からは気まずい視線を向けられることとなった。

墓所掃除の選抜戦と護衛任務

ラグ村では、モロク家に仕える土地神の墓所を掃除するための「選抜戦」が行われていた。特に白姫班の護衛役は人気が高かったが、カイは参加を見送るつもりであった。しかし、白姫様からの逆指名により、彼は護衛役を務めることになった。道中、白姫様は自らの力を誇りながらも、土地神の加護の衰えに悩む心情を吐露した。

廃村エダの墓所掃除

カイたちは白姫様の土地神「エダ」の墓所がある廃村エダへ向かった。村の遺跡に眠る墓所は荒れ果てており、掃除のため地下通路を進んだ。墓石を磨きながら、カイは碑文の一部を読み取ることに成功し、土地神同士の従属関係を示す内容を理解した。しかし、それ以上の詳細を調べる機会は得られなかった。

灰猿人の襲撃と白姫様の危機

掃除中に灰猿人が襲撃し、カイたちは急いで墓所を隠した。戦闘が始まり、白姫様は自ら戦おうとしたが、灰猿人に狙われ窮地に陥った。彼女を守ろうとした兵士たちも防戦一方となる中、カイは加護持ちの速さを活かし、背後から灰猿人の戦士を槍で仕留めることに成功した。

白姫様の危機とカイの救援

白姫様は灰猿人の戦士に囲まれながら、土地神の衰えた加護の中で奮闘を試みた。しかし、その攻撃は震える槍と共に効果を発揮せず、敵の脅威に晒されていた。カイは背後から灰猿人を槍で仕留め、白姫様を救出した。間一髪の状況を乗り越えた白姫様は動揺しつつも、カイの実力に驚きながら礼を述べた。

兵士間の軋轢とカイの計算

白姫様の護衛を任された若い兵士たちは、カイの活躍に対して嫉妬と苛立ちを見せた。しかし、カイはその反発を意に介さず、周囲に気を配りつつ戦場での立ち回りを計算した。灰猿人を倒すことで手柄を仲間と共有し、無用な波風を立てないよう行動した。

戦場での実力差と神石の収穫

戦闘が終わると、兵士たちは倒した灰猿人から神石を回収した。カイは手際よく神石を収集し、その一部を自らの成長に利用した。神石の髄を食らい、力を高める行為は兵士間の実力差を広げる要因となっていた。カイはその成長を楽しみつつも、周囲への影響を考慮した行動を続けた。

ご当主様との手合わせ

灰猿人退治の話が広がり、カイの名声は村中に知れ渡った。それを聞いたご当主様は、カイの実力を確かめるべく模擬訓練を提案した。カイはご当主様との立ち合いで見事な防御と一撃を見せたものの、最後には膝蹴りを受けて倒れた。しかし、その戦いぶりはご当主様に高く評価され、彼自ら鍛えることを約束された。

予想外の昇進と新たな挑戦

ご当主様からの評価は、カイが最上位の兵士グループに加わることを意味していた。帳尻を合わせようと手を抜いたつもりであったカイであったが、逆に頭角を現し、さらなる成長の機会を得ることとなった。彼はこれからの訓練に向け、新たな挑戦を受け入れる覚悟を決めた。

ご当主様からの称賛と仲間たちの反応

カイはご当主様に評価され、仲間たちから祝福を受けた。しかし、その中には追い抜かれたことへのやっかみや「案山子役」を励ます皮肉も含まれていた。班のリーダーであるマンソからは、近い内に実力を試す旨を告げられ、カイの村での立ち位置は確実に変化を続けていた。

谷への訪問とカイの計画

夜、カイは谷へ向かうことを決めた。治癒魔法で負傷を隠し、包帯を外してこっそり兵舎を抜け出した。村を抜け、50ユルドの距離を走り抜けたカイは、バーニャ村を経由して森へ進入した。彼は蜥蜴人族の縄張りを避け、谷へ最短ルートを探しながら進んだ。

谷への突入と新たな発見

カイは岩場や大木を巧みに利用し、驚異的な速度で谷へ到達した。谷を見渡していたカイは、対岸に見慣れない小人族の群れを発見した。彼らは谷底に向かって泣き叫び、何かを捧げた様子だった。カイは状況を確認するため、群れに近づいた。

小人族の請願と「調停の神」

小人族の長老ポレックは、カイを「調停の神」と呼び、追われた土地を取り戻すための仲立ちを請願した。カイは関わるつもりはないと一蹴したが、谷への侵入者を防ぐため、仕方なく彼らの「捧げ物」を確認することにした。

谷底での邂逅と治癒魔法の行使

谷底に降りたカイは、血まみれの小人族の少女「アルゥエ」を発見した。彼女は転落による重傷を負っていたが、カイは治癒魔法を用いて彼女を応急処置した。魔法の力に感動したアルゥエは、カイに感謝しつつも、自分を「いらない捧げ物」として差し出そうとした。

少女の拒絶とカイの決断

アルゥエは自らの価値を否定し、カイに執拗にしがみついた。最終的に、彼女は自殺を試みるが、カイに止められる。彼はアルゥエを肩に担ぎ、小人族のもとへ返すため谷の崖を登り始めた。時間が限られる中での予期せぬ事態に、カイは苛立ちながらも冷静に行動した。

バレン杉を使った小屋作り

カイはバレン杉を輪切りにし、それを縦に切ることで板材を作った。手作りの壁で囲いを完成させたが、屋根や床の作り方に苦労し、村で建築を学ぶ必要を感じていた。一方でその不完全な小屋は秘密基地のようで、彼を少し満足させた。

アルゥエとの再会

眠りから覚めたカイは、小人族の少女アルゥエが小屋の中にいることに気付いた。彼女は「神に捧げられた」と主張し、帰る場所がないと言った。カイは彼女を追い返そうとしたが、最終的に彼女を受け入れることにした。

アルゥエの働き

アルゥエは小人族手製の道具を使い、火を起こし、簡易なかまどで食事を用意した。彼女の手際の良さにカイは感心し、食事の美味しさに満足した。アルゥエは「神様のお世話をする」と言い、積極的に行動を始めた。

小人族の新たな生活

小人族は谷の縁にテントを張り始め、カイに「谷で暮らしてもよいか」と尋ねた。カイは谷に入らなければ構わないと許可を出し、彼らは新しい生活を始めた。その光景を見たカイは、自分も移動可能なテントを手に入れることを考えた。

新たな関係と出発

朝日が差し込む中、カイはアルゥエに「出かけてくる」と告げた。帰りたくなれば自由に帰っていいと伝えたが、アルゥエは涙ぐみながら「帰らない」と答えた。その姿にカイは彼女の決意を感じつつ、出発した。

第三章  谷の神様

麦と『ごはん』への憧れ

カイは目の前の麦種子を眺めながら、『ごはん』や『おにぎり』への憧れを抱いていた。中央の国でしか手に入らない贅沢品を想像しつつ、それが叶わない現実を受け入れた。仲間に促され、麦種子を運ぶ作業に戻った。

巡察使への準備

ラグ村では、巡察使を迎えるための準備が進められていた。村人たちは種芋や麦種子を地下倉庫に隠し、領主ヴェジンは巡察使セベロを迎えるべく家族総出で整列した。オルハは食糧の備蓄が発見されないよう指示を出していたが、父との意見の食い違いに葛藤を見せていた。

巡察使の到着

巡察使の一行は、亜人族に襲撃された痕跡を残した馬車で村に到着した。セベロは高圧的な態度で村の防備状況を尋ね、ヴェジンは慎重に対応した。一方、馬車に同乗していた僧官ナーダは、新たな土地神の探索を目的としており、村の調査への協力を求めた。

亜人族への対応

巡察使一行が襲われた原因である灰猿人族の討伐が決定された。オルハの指揮のもと、カイを含む30名の兵士が狩り立てを開始した。森に潜む敵を発見すると、勢子が位置を知らせ、本隊が敵に突進するという手法で次々と亜人族を仕留めていった。

辺土での生存の現実

亜人族との戦いは、村を守るために欠かせないものであった。村の安全を確保するため、敵を倒す必要があるという不毛な生存のサイクルが、その日もまた繰り返されたのである。

お坊様との手合わせ

真理探究官ナーダは、中央から派遣された僧官であった。巡察使セベロの代わりに手合わせをしたナーダは、加護持ちであるオルハを引き分けに持ち込み、兵士たちを驚かせた。加護を持たず神紋のみを得たナーダの武術は、僧院で培われた技術によるものであり、彼の実力が示された場面であった。

兵士たちの議論と挑戦

兵士たちはナーダの戦術に感銘を受け、どのように戦えば勝てるのかを熱心に議論した。カイは仲間たちの考察を聞きつつも、ナーダの光る目に注目し、それが霊力や魔法の一種ではないかと推測した。さらに、多くの兵士がナーダの護衛として選ばれることを希望し、教えを得ようと意気込んでいた。

ナーダの探索と予言の実現

ナーダは村周辺を探索し、灰猿人族の大規模な集落を発見した。その数は村の数倍に及び、今後の侵攻の可能性を示唆していた。この情報は村人に衝撃を与え、森の脅威がいかに深刻かを改めて認識させた。

アルゥエの奮闘と小屋の完成

カイの小屋はアルゥエによって改良され、より快適な居住空間へと変貌した。彼女は氏族の助けを借りず、独力で作業を行い、カイを驚かせた。カイはアルゥエの努力を評価し、小屋の新たな姿に満足した。

豚人族の襲撃と小人族の窮地

夜、小人族の集落が豚人族に襲撃された。彼らは土地神の恩寵を奪うため、小人族を狙っていた。カイは小人族を守る義務はないとしつつも、アルゥエの期待する眼差しに抗えず、行動を決意した。彼の中には、豚人族への怒りと、自身の谷を侵されたことへの不快感が募っていた。

戦いへの出発

カイは迷いを捨て、谷を守るために走り出した。その背中には、土地神の加護を受けた者としての強い意志と、自らの信念が宿っていた。

豚人族との戦闘開始

カイは谷で小人族が襲われている現場に駆けつけ、豚人族の兵士を迎え撃った。無手で挑むカイに豚人族は嘲笑したが、彼は巧みに敵の攻撃をかわし、手斧を奪って反撃した。迅速かつ力強い攻撃により次々と敵を倒し、小人族たちを守った。

谷の危機とカイの決意

カイは豚人族の襲撃を通じて、谷の平穏が脅かされていることを痛感した。彼は「血で躾けよ」との内なる声に従い、谷を守るために敵を殺す決意を固めた。小人族への許可が豚人族を引き寄せる原因になったことを悔い、今後の侵入を防ぐための行動に出た。

ポレック老との共闘

小人族唯一の加護持ちであるポレック老が加勢し、豚人族の雑兵を一掃した。老人の鮮やかな剣技は敵を震え上がらせ、カイに指揮官への道を開いた。カイは老人の言葉を受け入れ、小人族と協力して敵を排除する決意を新たにした。

豚人族指揮官との対決

豚人族の指揮官は加護持ちであり、威圧的な存在感を示した。彼はカイと対峙し、降伏を申し出たが、カイはそれを拒否した。戦闘は激しさを増し、カイは霊力を用いて「不可視の剣」を生み出し、指揮官の武器を破壊した。

最終的な勝利と神石の獲得

カイは豚人族指揮官を仕留め、その身体から大きな「神石」を引き抜いた。カイは谷を守るために戦い抜き、最後に神石を封印するよう内なる声に従った。その決意と行動は谷と小人族に新たな秩序をもたらした。

巨大な神石の発見

カイは豚人族の指揮官を倒し、赤子の頭ほどもある巨大な「神石」を手に入れた。ポレック老は、この神石が宿主を失い霊的保護を失った状態であると説明し、カイに早急に使用するよう促した。カイは神石を霊力で封じつつ、その利用方法を模索した。

神石の活用についての選択

ポレック老は、神石を用いて他者に加護を与えることや、自らの力を高めることが可能だと助言した。カイは信頼できる同族がいないことから、神石を自らの力に変える決断を下した。土地を守る責務を感じ、カイはさらに強くなる必要性を理解した。

神石の摂取と力の解放

カイは神石を剣で割り、中の琥珀色の髄を食した。その味わいと力の感覚に驚嘆しつつも、完全には土地神の御霊を取り込むことはできなかった。摂取後、カイの体は激しい熱を発し、力が全身を駆け巡るように変化した。

谷への帰還と仲間への信頼

消耗したカイは、谷へと戻る途中でアルゥエの祈る姿を目撃した。彼女が自身に対する忠誠を示していることを感じ取り、信頼できる存在であると考えるようになった。谷の湖水に身を委ねたカイは、アルゥエの迎えを受けながら思考を巡らせた。

村の食糧事情と巡察使の問題

村の食糧事情が逼迫する中、巡察使一行の贅沢な要求が村人たちに負担を強いていた。村の兵士たちは少ない配給に不満を抱きつつも、状況を受け入れていた。一方で、巡察使による女性への要求や傲慢な態度が、村全体に不安と不満をもたらしていた。

森の深部への調査とカイの班の選抜

村の領主は、真理探究官ナーダの調査要請に応じ、森の深部への調査を命じた。カイの班は危険な任務に選ばれたが、仲間たちは明るく準備を進めた。カイは、リーダーとして糧食を確保するため食料庫を訪れるが、そこで予期せぬ展開に巻き込まれる。

少女たちとの邂逅と予想外の告白

カイは食料庫で配膳係の少女エルサに出会う。彼女は巡察使に目をつけられたことに怯え、カイに助けを求めた。突然の状況に困惑するカイだったが、少女たちの恐怖を目の当たりにし、事態の深刻さを理解した。

巡察使の標的とされた少女

カイは配膳係の少女エルサが巡察使に目をつけられていると知り、衝撃を受けた。アデリアの計らいにより、カイは彼女を守る役目を押し付けられる。エルサは不安げにカイへ想いを打ち明け、カイもまた彼女を守りたいという衝動に駆られていた。

森への遠征隊の出発

翌朝、村を発った遠征隊は真理探究官ナーダを中心に4班20人の兵士で構成されていた。カイの班は先頭を任され、カイ自身はナーダの護衛役となった。道中、ナーダの尽きぬ質問攻めに閉口しつつも、カイたちは灰猿人族の縄張りに足を踏み入れた。

灰猿人族と豚人族の対立

遠征隊は灰猿人族と豚人族が激しい争いを繰り広げる戦場に到着した。灰猿人族が劣勢に追い込まれ、豚人族が勝利する様子を確認した後、ナーダは戦いが落ち着く頃合いを見計らって墓所への潜入を提案した。

墓所への潜入

豚人族が集落を占拠する中、カイたちは慎重に隙を突いて墓所への侵入を試みた。坊さんであるナーダの巧みな戦闘技術により、守りについていた豚人族の歩哨を無力化し、塔の中へと進んだ。

墓所内部の探索

墓所内には血と死臭が満ちており、ナーダは碑文の解読を始めた。カイは碑文の裏面に記された神名「ナゼルカゼェル」を読み取り、土地神の運命を思いやった。その瞬間、微かな気配を察知し、ナーダが背後に迫る様子に警戒した。

碑文の発見と脱出

カイは坊さんに気づかれぬよう物を探すふりをして合流した。坊さんは碑文から墓所に眠る土地神の名を「ナゼルカゼェル」と読み取ったが、探している預言の神ではないと判断した。その後、隊は迅速に墓所を脱出し、豚人族の追跡を振り切りながら安全地帯を目指した。運よく警備が手薄であったため、被害を最小限に抑えられた。

行方不明者の捜索

野営地で仲間たちと再合流するも、班員のガンズとエレが行方不明であることが判明した。リーダーたちは協議を行い、カイを含む3人が捜索班として選ばれた。明るい星空の下、捜索班は疲労を抱えながらも森の奥へ進んだが、途中で豚人族の山狩りの気配を察知し、状況は緊迫した。

豚人族との遭遇

捜索の途中、カイたちは豚人族の鎧武者と遭遇した。その巨体と異様な威圧感から、相手が「加護持ち」であると即座に悟った。隊員たちは散開して逃げる作戦をとるも、鎧武者の圧倒的な力に次々と追いつかれる。カイは短槍で応戦を試み、相手の注意を引きながらも無傷では済まなかった。

カイと鎧武者の対峙

鎧武者の動きを観察したカイは、手斧を奪うことに成功し、戦況をわずかに有利に進めた。さらに、自らの「隈取り」を発現させることで、鎧武者に自分が「谷の神」の加護を受けた存在であることを示した。その姿に鎧武者は反応し、両者の間に緊張が高まった。

鎧武者の挑発

鎧武者はカイを見定めると、自らを「六頭将」と称する存在であることを暗に示し、「谷の神」の弱体化を嘲笑した。その挑発的な態度に、カイの戦意はさらに煽られた。

侮辱に対する覚悟

カイは相手の鎧武者に侮られていると感じ、その熱が心に燃え上がっていた。「自分は未熟な新参者だ」と認識しつつ、谷の神に見られているような感覚が彼を奮い立たせた。相手が自分よりも遥かに強いことを承知しながら、何としても侮辱を覆すための勝利を模索し続けた。

短槍と魔法の攻防

カイは短槍を構え、ズーラ流の円の歩法を用いて鎧武者の隙を探った。巧みに動きを変えながら相手の防御を崩そうとするが、鎧武者の技量と堅牢な身体がそれを許さなかった。短槍の鋭い突きも効果を得られず、魔法の力を試すべきと考えたカイは、「火魔法」を使う決断を下した。

火魔法の成功とその代償

火魔法が発動すると、鎧武者の手首に激しい炎が巻き付いた。炎の熱量は彼の頑丈な皮膚すら焼き焦がし、鎧武者は悲鳴を上げた。しかし、鎧武者はその場で自らの癒着した皮膚を引き剥がし、なおも戦意を失わなかった。カイもまた、鎧武者の反撃を受けて重傷を負いながら立ち上がり、さらなる一撃を考え続けた。

魔法への対抗と敗北の兆し

鎧武者は火魔法を「呪」と呼び、それを侮辱するかのように笑った。その後、神の加護によって魔法の効果を無効化した。カイは自らの力が通用しない現実を悟りつつ、再び不可視の剣を使うべきか思案した。しかし鎧武者の連続攻撃は重く、次第にカイの体力を奪っていった。

絶望の中での戦い

鎧武者の攻撃力と体格、そして経験の差は圧倒的であった。カイは懸命に攻撃を避け続けたが、その一撃一撃が岩のように重く、次第に追い詰められていった。「谷の神」を侮辱しながら繰り出される鎧武者の猛攻の中、カイは生き延びるための手段を模索し続けたが、勝機は見いだせず、絶体絶命の状況に立たされていた。

追い詰められるカイ

カイは鎧武者の猛攻に圧倒され、木に追い詰められた状態で致命的な攻撃を受け続けていた。意識は絶え間ない痛みに満たされながらも、最後の希望を胸に、確実な反撃の機会を探り続けた。その強い眼差しに狂気じみた笑みを浮かべた鎧武者は、より鋭く危険な攻撃を繰り出し始めた。

防御の崩壊と肉を喰らう鎧武者

鎧武者はカイの皮膚を指先で引き裂き、肉片を口に運んで咀嚼した。その光景はカイに衝撃を与え、彼の体皮が鎧武者に劣る柔らかさである現実を突きつけた。信じていた防御力が崩壊したことで、カイは混乱しながらも隙を見つけることに集中した。

「不可視の剣」の一撃

カイは背後に隠した右手で「不可視の剣」を形成し、鎧武者に向かって突進した。その剣は鎧武者の腕を断ち切り、さらに胸部に深い傷を刻んだ。鎧武者は予期せぬ攻撃に驚愕し、明らかに劣勢となったが、なおも反撃を試みた。

鎧武者の「神石」を奪う

カイは鎧武者の「神石」を狙い、最後の力を振り絞って突進した。激しい戦いの末、ついにその神石を引き抜くことに成功した。神石を失った鎧武者は命を落とし、その周囲の豚人兵たちは恐怖と悲嘆の叫びを上げた。

豚人兵との死闘

神石を手に入れたカイに対し、豚人兵たちは狂乱状態で襲いかかった。カイは圧倒的な体力と「不可視の剣」を駆使して戦い続け、死体の山を築き上げた。しかしその間にも疲労は極限に達し、ついに彼は動けなくなった。

静寂の中の光景と新たな同行者

戦闘後、森には静寂が戻り、カイは倒れ込んだ死体の山の中で無防備に眠りについた。その姿を見つめる鹿人族の少女ニルンは、彼の力を目の当たりにし、次なる意趣返しのため彼に同行する決意をした。静かな夜の中、彼女は彼の傍らに座り、新たな未来を考え始めた。

僧官への食事の提供

マンソは塩漬け肉を煮出したスープを僧官に差し出した。僧官は礼を述べ、木椀を受け取って静かにスープを飲み干した。マンソは、カイたちの安否を心配していることを僧官に伝えたが、僧官は微笑みを浮かべながら「カイならば、きっと大丈夫ですよ」と答えた。その言葉には、僧官の秘伝の力による確信が込められているようであった。

僧官の言葉とマンソの反応

僧官はさらに何かを言いかけたが、その内容をはっきりとは伝えず、再び頭巾で顔を隠した。マンソは怪訝に思いつつも、それ以上は追及しなかった。僧官からの指示で、追っ手が迫っていないことと、捜索隊の帰還を翌朝まで待つようにと伝えられたマンソは、その内容を兵士たちに伝えた。

野営地の静寂

僧官の言葉により、疲労していた兵士たちは安心して眠りについた。僧官自身は野営地の片隅で瞑想を始め、その姿をマンソはしばらく見守った後、疲労から浅い眠りに落ちた。静かな野営地には、瞑想する僧官の姿がひっそりと残っていた。

赤鼻の工房長

赤鼻親方の厳しい指摘

赤鼻親方は鍛冶屋街で名の知れた存在であった。彼はふいご屋の弟子が持ち込んだ鉄塊の質が落ちていることを指摘し、不満を露わにした。弟子がコスト削減のために泥炭を使用していると言い訳を始めたところ、赤鼻は激怒し、泥炭の使用を強く非難した。

鍛冶屋街の現状と資源の枯渇

豚人族の国では鉄を精錬するために大量の木材を消費した結果、国内の山々は禿山と化していた。植林の試みも貧民による伐採で失敗に終わり、燃料不足が深刻化していた。この状況により、鉄の品質低下や鍛冶屋全体の経営悪化が避けられない問題となっていた。

赤鼻親方と武器製作の現場

赤鼻は不良品の鉄材に不満を抱きながらも、工房内での製作に集中していた。工房では東部のフォス氏族の族長アドゥーラからの特注品である旋風斧の製作が進められており、その品質には細心の注意が払われていた。弟子たちは赤鼻の指導のもと、効率的に武器を作り続けていた。

フォス氏族と赤鼻親方の期待

赤鼻が製作する武器と防具は、アドゥーラ族長にとって欠かせないものであった。特に赤鼻が手掛けた鋼の鎧は、どんな攻撃も通さない傑作であった。赤鼻は新たな大斧の完成を目前に控え、アドゥーラの喜ぶ姿を想像しながら鼻を鳴らして笑った。彼の技術と情熱は、鍛冶屋街と豚人族の軍勢にとって大きな支えとなっていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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