どんなラノベ?
薄幸系男子の異世界成り上がりファンタジー!
え?
そうだっけ?
薄幸系男子は頷けるけど、成り上がってるか?
そんな彼に惚れ込んだ人(?)達が織りなす異世界道中。
彼は穏便に事を運びたいのに、全てが大袈裟になってしまう。
そこが笑いどころ。
読んだ本のタイトル
#月が導く異世界道中 11
著者:#あずみ圭 氏
イラスト:#マツモトミツアキ 氏
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1巻から11巻までの流れ
普通に生活して寝たら。
いきなり両親の都合で異世界の女神に呼び出されて、顔がブサイクだから要らないと言われて見知らぬ土地にポイ捨てされた主人公。
荒野を彷徨っていたら、オーク(♀)と出会い、彼女を生贄に求めた上位竜を覚えたての魔法で倒して従者にする。
上位竜を配下にした結果、亜空と呼ばれる異空間を手に入れる。
荒野で出会ったオーク達を亜空に移住させて彼等も配下に置く。
その直後、空腹で正気を失ってる災厄の黒蜘蛛がエルダードワーフを追って襲ってきたので撃退。
その結果、黒蜘蛛が正気を取り戻して従者になる。
上位龍を巴、黒蜘蛛を澪と名付けて、亜空の住民の投票結果で主人公は【若】と呼ばれる事になる。
その後にエルダードワーフ、巴の眷属ミスティオリザード、澪の眷属アルケーが合流して街を造る。
それでも人に会いたい主人公はベースキャンプ絶野に行くが、、
巴と澪が悪乗りしてベースキャンプ絶野は壊滅する。(1巻)
遂に大きなヒューマンのツイーゲの街に着いた一行。
そこで、呪病に苦しむレンブランドの依頼を目にして、彼の妻、娘2人を癒す。
そして、暗躍していたライムを懲らしめて配下に加える。(2巻)
レンブランドの家族を癒した薬の原料アンブロシアを手に入れるため、群生地に行ったらアンブロシアを守護している森鬼が襲って来た。
それらをアッサリと捕獲して、森鬼の村に潜伏していたリッチを秒殺で押さえ込んで、主人公の魔力を蓄積した指輪13個を彼に装備させ、下駄を履かせて3人目の従者にして終わる。
イケメンの 従者、識登場!(3巻)
識と学園都市に行く転移魔法の使用中に突然戦場に拉致られた。
目の前には、大剣を振りかぶってる、王都攻略を目論むヒューマン最強のソフィア。
2人の勇者は連合軍を率いてステラ砦に進攻していたが、魔族の罠にハマってほぼ壊滅。
主人公、勇者達はそれぞれの戦場で何とか生き残る。(4巻)
突然戦争に巻き込まれ負傷してやっとたどり着いたのに、入学試験ではなく、臨時教員の試験だった。
その試験に主人公だけが合格して教職に就く。
週に1枠の授業を設けると、あまりのハイレベルな授業に上昇志向の強い数名しか残らなかった。
授業以外の日は店を開く準備をして、従業員を亜空から呼んで、、
来たのはアクエリアスコンビ。
波乱の予感しかないw(5巻)
突然上位龍が主人公達を尋ねる。
過去の勇者の嫁であり、冒険者ギルドのギルドマスター。
ルト、主人公の境遇をよく理解しておりサポートすると言ってるが、対価が、、
そして、店の名前で異世界人を保護する国。
ローレルに目を付けられる。(6巻)
大繁盛している葛の葉商会が認知され。
目玉商品の安価な薬品の秘密を知りたがる連中があの手この手で主人公に迫って来る。
そして、商人ギルド長からは輸送手段の技術を公表しろと高圧的に迫られ、金銭で解決しようとしたら売り上げの9割を寄越せと凄まれる。
そんな世間の荒波に打ちのめされた主人公は・・・(7巻)
魔族の謀略により都市に魔物が多く発生して大混乱に陥る。
それをある程度放置して、学院長から命令されて渋々と主人公達は鎮圧にかかりアッサリと鎮圧する。(8巻)
通信が回復したら急報で、帝国と王国が魔族軍の襲撃に遭っていると連絡が来た。
勇者の危機なので、また女神からの召喚があり、勇者の助太刀へと王都へ飛ばされる。(9巻)
魔族の策略で混乱したロッツガルドの再建に尽力するクズノハ商会。
目論見通り誰も無視出来ない存在となり、主要国の重鎮達も注目されて利権問題も有耶無耶になる。
コレで落ち着くかなと思ったら、亜空に地球の神達が訪ねて来た。(10巻)
あらすじ・内容
2021年TVアニメ化決定! 変異体騒ぎに端を発する混乱から各国が立ち直りつつある中、真は帝国や王国のお偉方から呼び出しを受けて、挨拶回りに奔走していた。そんな中、以前から打診されていた魔族の王との会談に応じることを決めた彼は、ヒューマン未踏の魔族の都に招かれ、魔王から直々に歓待を受ける事に。一介の商人に対しては異例の待遇に、真もタジタジ!?
(月が導く異世界道中11)
感想
遂に勇者、響と再会しお互いの近況を報告し合う。
同郷、同校の先輩後輩なので気安く話をしていたが、、
根底は全くの別モノと判明。
ここで、主人公のヒューマン嫌いが露呈する。
まぁ、あれだけ差別して好き勝手する種族に好意的でいろとか無理じゃね?
その後帝国の勇者、智樹とも会談するが此方は巴を寄越せと脅迫して来たので、反撃してボコボコにしたので完璧に関係は決裂。
竜の卵配達が癒しになるほど主人公の心は荒んでしまう。
その後、魔族の国へ赴き魔王と会談。魔族の首都へ行くだけでも大変で、魔獣に襲われ魔族の兵士に犠牲が出てしまう。
そして、首都ではパレード(表紙)の後、魔王との対面は比較的に和やかに終わる。
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備忘録
プロローグ
勇者との交渉と商人ギルドの新たな挑戦
響との出会いと要請の背景
学園都市ロッツガルドの商人ギルド代表ザラは、リミア王国の勇者、音無響と会食を行った。響はリミア王国の復興支援と投資を求め、具体的には王都南東部の橋と市場の再建を提案した。ザラはその要請の非常識さに驚きつつも、響の強い意志と交渉術に感銘を受けた。
響の巧妙な提案とギルドへの恩恵
響の提案には、復興支援に見合う商人ギルドへの利益が含まれていた。復興期間中の市場出店権を限定し、選ばれた商会に利権を与えるという内容は、商人ギルドの力を強化するものだった。また、響は自国の利を守りつつ、巧妙にリミアの影響力を拡大しようとしていた。
交渉を通じたザラの評価
ザラは響の資料をもとに交渉を進め、リミア王国が提示する条件に隠された利点を見出した。同時に響の鋭い洞察力と計算された交渉術に恐れを抱き、彼女の成長を予見した。ザラにとって響は、単なる勇者ではなく優れた戦略家でもあった。
ライドウとの比較と不思議な存在感
ザラは、響と新米商人ライドウを比較し、その対照的な印象に思いを巡らせた。響の明確な目標と巧妙な提案に対し、ライドウの存在は曖昧で計り知れないものだった。それでも、彼はレンブラントがライドウに賭けた理由を理解しようとしていた。
商談の結論と響の手土産
交渉の最終段階で響が渡した高品質な紙は、リミアの新たな輸出品となり得る可能性を示唆していた。ザラはこの手土産を見逃さず、商談を進める中でリミアとの関係を強化し、同時に商人ギルドの影響力を高める機会を得た。
今後の展望と新たな挑戦
響との交渉を終えたザラは、リミアの提案を受け入れつつ、ロッツガルド商人ギルドの新たな挑戦に向けて準備を始めた。その背後には、響の巧妙な戦略と、ライドウがもたらした不思議な影響力が交錯していた。ザラは、響のもたらした情報と提案を活かしつつ、リミアとの関係を深化させる決意を固めていた。
1
勇者との再会と新たな出会い
ロッツガルドの復興と新店舗の始動
学園都市ロッツガルドは、変異体事件の惨劇を乗り越え、驚異的な速さで復興を進めていた。魔術を活用した効率的な建築作業により、街は活気を取り戻していた。真が営むクズノハ商会も新たな店舗で営業を再開し、順調に発展を遂げていた。店舗の移転に伴い広い土地を購入し、学園に近い場所へと拠点を構えた結果、学生を含む新たな客層が訪れるようになった。
店員と商品の評判
クズノハ商会は珍しい果物や高品質な薬品を扱うことで、特に学園の学生たちに人気を博していた。また、店員であるジンやアベリア、さらには亜人であるアクアやエリスも話題の中心となっており、接客の良さが客足を引き寄せる要因となっていた。店員目当てに来店する客が増え、真はその評判を少し複雑な気持ちで見守っていた。
食事中の若者たちの会話
昼食を取っていた真は、近くのテラス席でクズノハ商会を話題にする若者たちの会話を耳にした。彼らは店の商品の良さや店員の魅力について熱く語り合い、看板娘としてアクアやエリスの名を挙げていた。その議論は次第に白熱し、店内にいた他の客も巻き込む騒ぎとなった。
音無響との再会
帰路につこうとした真は、偶然にも音無響と再会した。響は学園都市には寄らない予定だったが、クズノハ商会を訪ねるために立ち寄ったという。先輩と後輩としての関係で再会した二人は、互いに驚きつつも、これまでの経緯や状況について語り合った。真は自らがクズノハ商会の代表「ライドウ」であることを明かし、響を店へ案内することとなった。
再会の中に潜む違和感
響は仲間を伴わず一人で現れ、武器を背負いながら街を歩いていた。その姿に真は違和感を覚えつつも、先輩との会話や今後の展開に思いを巡らせていた。二人の再会は、新たな物語の始まりを予感させるものであった。
音無響との対話と武器の修復依頼
響の訪問と剣の修理依頼
音無響はクズノハ商会を訪れ、エルダードワーフの職人に剣の修理を依頼した。その剣は以前ベレンが製作したもので、響が荒野で数々の戦いを経た大切な武器であった。修理が可能と判断された剣は、丁重に扱われ、ベレンのもとへ送られることとなった。響は修理の期間中、クズノハ商会での丁寧な対応に感謝の意を示していた。
日本での過去と響の懐かしみ
応接室で真と響は、かつて日本で過ごした日々について語り合った。響は真の弓道部での活躍を思い出し、彼が副部長として部を支えた姿に感心していた。また、真が部活動で受けた「勇者」という異名に触れ、その背景について尋ねるなど、和やかな雰囲気が広がった。
先輩後輩としての会話の再開
響は真に対し、日本の話題を通じて親しみを込めた対話を続けた。響が提案した「昔話」は真をリラックスさせ、二人は同郷者としての絆を深めた。響の自然な笑顔と気配りに、真はかつての先輩としての姿を懐かしむとともに、彼女の勇者としての堂々とした態度を改めて感じ取っていた。
思い出話に花を咲かせる二人
二人の会話は、響の持つ知的で温かい魅力と、真の慎ましやかな態度が交差する形で進んだ。同郷の懐かしさを共有しつつ、彼らは互いの過去や現在を振り返った。応接室に響いた笑い声とともに、真と響の間には一層の信頼が芽生えたと言えた。
2
響との会話と澪の乱入
響との日本や仲間の話
響は真の隣に移動し、彼との会話を楽しんだ。話題は日本や荒野、ツィーゲのこと、さらには響の仲間たちに及んだ。彼女は仲間たちの成長や性格を誇らしげに語り、特に男性騎士の頼もしさや少女巫女への尊敬を述べた。また、異世界でも夫を尻に敷く魔術師を見て、状況が異なっても変わらない人間模様に気づいたと笑った。
澪の乱入と緊張の場面
突然、澪が巴と共に応接室に現れた。澪は真と響が肩を触れ合いながら話している姿に怒りを露わにし、「右腕と左腕、どちらが不要か」と物騒な言葉を口にした。巴は冷静に場を和ませようとするが、澪の怒りは収まらず、真は懸命に状況を取り繕った。
響の謝罪と澪の態度
響は澪に対して「気はない」と弁明し、慎ましく頭を下げた。真もまた澪に対して深く謝罪し、先輩後輩としての関係であることを改めて強調した。しかし澪は納得しない様子で、「同じ学校の関係」といった響の言葉に冷淡な視線を向けた。
巴の助言と一時的な収束
巴が場を和ませる言葉を発し、澪を宥めたことで、ようやく緊張が和らいだ。澪は真に対し、急ぎ屋敷へ向かうよう指示し、響にも軽い別れの挨拶を残した。響は真に連絡を頼みつつ、再び訪れることを予告してその場を去った。
巴の護送提案と真の不安
巴は響を安全に送ると申し出たが、真は巴が響の記憶を探る可能性を懸念した。最終的に巴に任せる判断を下し、真は澪と共に屋敷へ向かった。真は澪の怒りを収めることに成功したものの、響との再会が残した余韻と、澪との間に生じたわだかまりを感じていた。
巴
巴と響の対話と剣術の挑戦
響との対話と情報収集
巴は真が去った後、響と共に街を歩きながら会話を続けた。響が真と話し合った内容を確認しつつ、彼女が得た情報を探った。響は商会の運営方針や真の考え方に感銘を受けたようだったが、一方で亜人とヒューマンの関係性に対する自身の立場を「黙認」と表現した。その言葉には冷静な計算と現実的な判断が窺えた。
イルムガンドの話題と響の反応
巴は響にリミアのホープレイズ家の次男であるイルムガンドの話を切り出した。イルムガンドが勇者としての響を崇拝していた一方で、学園祭後に怪物化し討たれた事実を伝えると、響は深い困惑を見せた。彼女にとってイルムガンドは理想的な青年であり、その変貌は信じがたいものだった。
剣術への興味と挑戦の提案
響の記憶から日本刀の技術に触れていたことを知った巴は、彼女に手合わせを提案した。響は戸惑いながらも巴の強引な誘いに応じることになった。巴はその場で学園の施設を手合わせの場として提案し、響を無理やり連れて行く形となった。
剣術への期待
巴は響の剣術への知識と実力に大きな期待を抱いていた。特に日本刀の技術について、彼女自身がその真髄を目の当たりにすることを楽しみにしていた。響は困惑しつつも、巴の熱意に押される形で手合わせに臨むことを決意した。
響
響の葛藤と思考
予想外の合流と疲労
響は予定より早くパーティに合流した。幼い巫女チヤとの短い会話の後、響は急遽取った部屋に身を投げ出し、ロッツガルドでの出来事を思い返していた。特に真との再会やクズノハ商会の影響力に圧倒され、頭の中は混乱していた。
真の存在とリミア王国への影響
響は真が女神と対立する可能性や、その影響がリミア王国に与える危険性を考慮していた。彼の力は魅力的であるが、戦争後の不安定要素となり得るため、慎重に付き合うべきだと判断した。商会との関係を維持しつつ、無理のない範囲で協力を求める方針を固めた。
巴との手合わせ
巴に誘われ、響は学園で小一時間、刀を用いた手合わせを行った。結果は響が十戦中九勝と圧倒的だったが、巴の身体能力や回復魔術の技術に驚きを覚えた。特に回復魔術は見事で、響はその再現を目標とした。一方で、巴の剣技の未熟さに、魔術を主体とする戦闘が彼女の本質だと推測した。
複雑に絡む問題への思考
響は巴との手合わせで感じた違和感や、澪や真の行動を振り返りながら、魔族との戦争や帝国の動向などの課題に思考を巡らせた。次々に浮かぶ案件に追われ、結局その夜は眠ることができなかった。
真
冬の開拓とエマの不満
エマはケリュネオンの農地開拓が遅れていることに不満を抱いていた。真は雪深い冬の状況を考慮し、無理は避けるべきだと考えたが、エマは魔術を併用すれば問題ないと断言していた。真は亜人や冒険者の現状も踏まえ、慎重に対応を決めるべくアーンスランド姉妹に意見を聞くことを決めた。
巴と響の手合わせ
巴は響との手合わせで服をボロボロにして帰宅した。真剣での斬り合いにも関わらず、巴は満足そうな表情を浮かべていた。真は彼女の軽率な行動を叱責し、響への危害がないことを確認した。巴は反省しつつも、響の剣技に感嘆していた。
澪の乱入と料理の話題
澪が乱入し、巴の状態に抗議したが、真が場を取りなした。澪は新しいタコ料理を披露するために準備を進めていたが、巴の「茹でるだけ」という発言が澪の怒りを買った。真は巴に澪へ謝罪させ、場の雰囲気を和らげた。
タコ料理への挑戦
澪がタコ料理のアイデアを披露する中、真はタコしゃぶとタコ焼きを作ることを提案した。過去にタコ焼きを作れなかった苦い経験を払拭するため、真は再挑戦への意気込みを見せた。キッチンに向かい、彼は新しい料理への挑戦を開始した。
3
響
勇者と巫女の帰還
ローレル連邦の巫女であるチヤと勇者響の一行が、彩律の歓迎を受けて連邦に到着した。彩律は丁寧に応対しつつも、響に対してわずかに冷ややかな態度を見せたが、すぐにその表情を取り繕った。巫女チヤは久々の帰還に安堵した様子を見せ、響との同行を彩律に説明していた。
彩律の疑念と策略
彩律はチヤの帰還を歓迎しながらも、リミア王国が巫女の帰還を長らく渋った経緯を思い返していた。彼女は部下にリミアへの敵意を抑えるよう諭し、チヤが自らの意思で戻ったことを確認した。一方で、彩律はロッツガルドでの出来事と、ライドウの発言に関心を寄せていた。ライドウが竜騎士の復興協力を引き合いに出し、チヤとの関わりを匂わせたことが、彼女に新たな疑念を抱かせたのである。
クズノハ商会への関心
彩律はライドウが一介の商会代表とは思えない影響力を持つと考え、クズノハ商会への興味を強めた。彼女はチヤの見識を活かし、ライドウの真意を探るべく、巫女にロッツガルドへの寄り道を提案することを計画していた。この動きがローレル連邦に新たな展開をもたらす可能性を含んでいると感じていた。
心の中の葛藤
巫女の帰還という大事が成し遂げられたにもかかわらず、彩律はクズノハ商会とライドウという存在を無視できなかった。彼の言葉が単なる気休めでないと感じている彼女は、リミアとローレルの均衡が崩れる可能性を懸念しつつ、対応を練っていた。
真
戦場での奇妙な邂逅
夢の中で、真は黒騎士と呼ばれる人物と対峙していた。黒騎士は腹に大穴を開けながらも執念深く戦いを挑んでおり、その姿はヒューマンでも亜人でもない異形の存在であった。黒騎士は自らを「イルムガンド=ホープレイズ」と名乗り、過去の学園祭での変異体事件に関わる人物であると告げた。彼の攻撃を素手で防ぐ真の異常な力が示された。
電子レンジのたとえと冷酷な結末
黒騎士に向けた真の言葉は奇妙なほど冷静で、電子レンジの仕組みにたとえた非人道的な技術を口にした。その直後、イルムガンドの体は膨れ上がり、鎧ごと弾け飛んだ。凄惨な光景を目の当たりにした巫女と響先輩は激しく動揺し、怒りを露わにした。
先輩への殺意と夢の終わり
真は先輩と巫女に向き直り、彼女らにも容赦のない態度を見せた。先輩を狙うその様子に、夢の中の真は必死に止めようとしたが、結末を見る前に目が覚めた。目覚めた場所は亜空の寝室であり、そこが現実であることを確認した。
弓道で心を落ち着ける夜
鮮明な夢の内容に動揺を隠せない真は、寝直すことを諦めて弓道場へ向かった。夢の嫌な後味を忘れるため、朝日が昇るまで無心で弓を引き続けた。
4
真
上位竜ルトからの依頼
真は冒険者ギルドの一室で上位竜ルトと対面し、竜の卵を渡された。その卵は希少価値が高く、竜研究者なら命を懸けても欲しがるものだという。ルトからの依頼は、この卵を帝国領バニラ砂漠のグロントに届けることだった。ルトは報酬として情報提供やケリュネオンへの援助を約束した。
リミア王国と帝国への準備
真はリミア王国のヨシュア王子や帝国のリリ皇女とのやり取りを進め、両国への訪問が決定していた。ルトは帝国の勇者智樹が巴に興味を持っていることに触れ、同行者の巴と識への注意を促した。また、帝国の「ワルキューレ」と呼ばれる智樹の支持者たちについても言及しつつ、真にはそれほど心配する必要がないと述べた。
竜社会と配達の背景
ルトは竜社会の現状について簡単に説明した。現在生存する上位竜は3体で、他の竜は卵の状態で各地に預けられているとのことだった。真はその卵を届けるという任務を与えられ、戦争中の勢力間を移動する不穏な旅路が始まることを予感していた。
出発前の雑談と別れ
ルトとの会話の中で、真は帝国への訪問や竜卵配達の重責を感じつつも、ルトの奇行や軽口に疲れを覚えた。会話の終わりには、ルトを「変態」と呼びつつ立ち去ったが、ルトはそれを気にする様子もなく真を見送った。
帝国への旅立ち
帝国グリトニアへ向けた朝、真は旅への不安と期待を抱きつつ出発した。リリ皇女への苦手意識や初めて訪れる地への警戒心を抱えながらも、真は任務を全うする決意を固めていた。
帝国の雪景色と旅路
帝国の厳しい寒さに触れ、真はその雪景色に驚嘆していた。巴と識の案内で進む旅路は、黄金街道を経てロビンの街を目指すものであった。防寒具の準備が功を奏したが、それでも旅の過酷さを感じていた。巴は帝国の勇者、智樹との接触について話し、真はその記憶の破棄を悔やむ彼女の様子に複雑な思いを抱いていた。
帝都ルイナスの外観
ロビンから転移陣を経由し、帝都ルイナスを一望できる高所に到着した真は、その期待とは異なる城塞都市の姿に失望していた。幻想的な雪や氷の都市を想像していたが、現実は雪を排除した機能的な都市であった。識と巴に調査を任せることにした真は、グロントへの卵の配達という任務を再確認しながら、再び転移陣を利用して移動した。
リリ皇女との再会
帝都に到着した真は、リリ皇女と再会した。彼女の柔らかな物腰に警戒心を抱きつつ、真は自分の任務について説明した。皇女は商会の出店を促す含みを持たせつつ、帝国の繁栄を誇示した。対面の間、巴と識は皇女の案内役に連れられて別の場所に移動した。
勇者智樹との初対面
智樹は真を異世界からの同郷人と見抜き、直接的な物言いで問いかけてきた。真は智樹の態度に困惑しつつも、同じ日本人としての立場を明かした。智樹の無遠慮な言動や他者に対する態度が真には違和感として映ったが、彼の社会的立場がそれを許容させている様子であった。
智樹の要求
智樹は唐突に巴を自分によこせと要求した。その発言は真にとって予想外であり、驚愕を隠せなかった。唐突な要求とその無神経な態度に、真は一瞬思考を停止し、場の異様な空気に呆然とするしかなかった。
5
真
智樹の要求と巴への執着
智樹は真に対し、自身の魅了の力で支配している「ワルキューレ」と呼ばれる三人の女性を差し出し、見返りとして巴を要求した。彼は巴の能力を評価し、自身の手中に収めようと画策していた。しかし真はこれに断固として拒否の姿勢を示し、巴が自身にとって大切な存在であり、交換などあり得ないと明言した。
智樹の威圧と真の冷静な対応
智樹は自らの優位を誇示し、部下に真を威嚇させたが、真は冷静に対応した。彼女らの刃が魔力体で阻まれることを察しながらも、智樹の挑発には動じなかった。智樹の一方的な決めつけに対しても、真は冷静に受け流しつつ、自身の立場と意志を堅持した。
真の反撃と智樹の失墜
真は智樹の挑発に応じる形で行動を起こした。ワルキューレたちを眠らせた後、智樹を力で制圧し、その驕りを粉砕した。防音と硬化の結界を強化し、智樹が逃れる余地を与えず、彼を完全に屈服させた。真は自らの行動を制御しつつ、智樹に二度とクズノハ商会や巴に手を出さないよう釘を刺した。
智樹との決着と今後の決意
智樹を癒した後、真は彼をソファに戻し、冷静に状況を収めた。その際、智樹に再び関与しないよう念を押し、自身の行動と態度を改めて示した。真は智樹との対立を通じて、自身の立場と価値観を再確認し、今後の行動における指針を得た。皇女や帝国との接触を通じて得た教訓を胸に、真は新たな旅路へと向かう準備を整えた。
6
真
白の砂海の驚嘆と挑戦
壮大な景観との出会い
真はグリトニア帝国の秘境「白の砂海」に到着し、その白と青の対比が織り成す壮大な景観に感嘆していた。この砂海は帝国が厳重に管理し、立ち入りを制限している場所である。案内役として同行した女性騎士ギネビアは、この地の美しさだけではなく、潜む危険についても言及した。
案内人ギネビアと真の関係
案内人であるギネビアは、リリ皇女の直属の部下であり、同時に勇者智樹のパーティの一員でもあった。彼女は過去に上位竜グロントの試練を乗り越え、祝福を受けた実力者である。彼女が真に同行した理由は、案内だけでなく監視も兼ねていると巴と識は推測した。
砂漠の試練への挑戦
砂漠の中央に進むため、「迷わず直進する」という言葉を胸に真は進んだ。ギネビアの制止を振り切り、真は魔力体を駆使して砂の中を進行し、途中で現れたアリ地獄の魔物とも遭遇した。真は魔物の鋏を掴み上げ、進路を妨げないよう遠くに投げ飛ばした。
砂漠の中心とグロントの気配
真は砂漠を跳躍で進みつつ、界でグロントの気配を探知した。白い円錐状の砂嵐にたどり着き、その猛威を前にしても真は怯むことなく進行した。魔力体を用いて砂嵐を切り裂きながら、ついにその中心へと突入した。
グロント
砂々波と呼ばれる竜、グロントの試練
白の砂海を越えた挑戦者の登場
上位竜グロントは、千年を超える生涯の中でかつてない驚きを体験していた。白の砂海を圧倒的な速度で踏破し、魔物や罠を軽々と突破したヒューマンが現れたのである。その挑戦者は砂漠をわずか一時間で通り抜け、記録を大幅に塗り替えた。これまでの最速記録が三日であることを考えると、その規格外さは驚愕に値した。
強力な障壁の構築と崩壊
グロントは、この挑戦者に試練として強力な障壁を仕掛けた。砂と白炎が混ざり合い、どんな防御も貫く円錐状の障壁である。しかし、その挑戦者は巨大な魔力の腕を障壁に突き入れ、力任せに引き裂きながら進んだ。グロントの全力の術式さえも通じず、障壁は瞬く間に消滅した。
異常な魔力を持つヒューマンの出現
挑戦者はヒューマンでありながら、その魔力の量と制御力は竜や神をも凌ぐものだった。グロントはこの存在を「叛逆者」や「天敵」と呼び、これまでの常識が崩れるのを感じた。試練の域を超えた圧倒的な力の前に、彼女は上位竜としての誇りをかけて迎え撃つことを決意した。
グロントと挑戦者の対峙
祠にたどり着いた挑戦者は、赤いコートをまとい、簡素な装備で現れた。彼は緊張感のない態度でグロントと対話を始め、ルトからの預かり物を渡しに来たと伝えた。しかし、会話の中でグロントを「叔母さん」と呼ぶ失礼な言葉が飛び出し、彼女の怒りを買う結果となった。
竜の作法を教える試練の開始
怒りに燃えるグロントは、挑戦者に竜の作法を教えると宣言し、祠の外で対峙することとなった。彼女は全力で砂と炎を操り、竜族の力を存分に発揮して挑戦者に試練を与えた。陽光の下、砂と炎が荒れ狂う中、上位竜グロントと規格外の挑戦者は対峙したのである。
巴&織
従者たちの帝都での調査
真を送り出した後の会話
巴と識は、真を白の砂海へ送り出した後、帝都ルイナスの街中を歩いていた。識は真を一人で行かせて大丈夫なのかと問うたが、巴は砂々波ことグロントが温厚な性格であるため心配無用と断じた。また、真が「禁句」を口にすることもないだろうと笑い飛ばしていた。
巴の上機嫌な理由
識は巴が上機嫌である理由を尋ねた。巴は、昨日真がグリトニアの勇者である岩橋智樹に一喝を入れたことに喜んでいる様子を見せた。内容については語られなかったが、巴はその行動を評価し、真の成長を感じたようであった。
帝都での調査計画
二人は帝都の雰囲気を調べるという真の指示を受け、情報収集の計画を立てた。具体的には、銃の開発状況や勇者の戦果などの情報を集めることに焦点を当てた。識は料理にも興味を示しており、その発想が亜空の料理に役立つかもしれないと語った。
尾行を撒き、調査開始
巴と識は尾行者の存在を認識しながら、瞬時に姿を消し、それぞれ別の場所で調査を開始した。二人は再会の時刻と場所を確認し、帝都での任務に挑むべく散った。
巴
巴の帝都での密かな任務
帝国の宴席での観察
巴は帝国の皇帝を見て、その存在が飾り物であると即座に見抜いた。帝国が実質的に勇者智樹とリリ皇女によって動かされている現状にも驚くことはなかった。この夜の宴席には帝国の要人たちが集まったが、智樹の姿はなく、緊急任務を理由に欠席していた。クズノハ商会の面々は、帝国との協力を示すこともなく、礼節を守りつつ必要な顔見せだけを行った。
皇帝と諸侯の情報収集
巴は宴席の合間に皇帝や貴族たちから情報を収集し、特に勇者智樹の影響力や帝国の内情を探った。宴の終盤、リリ皇女が見せた悔しげな表情は、この場でクズノハ商会が優位に立ったことを示していた。
帝国の技術開発の現状
宴が終わると巴は識と共に情報を交換した。識によれば、帝国の銃の開発はクズノハ商会の想定よりも遅れており、完成には10年以上を要する見込みであった。しかし皇女は銃の開発から火薬や爆弾の研究に舵を切っており、魔力を干渉させて威力を高める方向へと進んでいるという。
魅了の力と帝国の危険性
巴は、智樹の魅了の力が爆弾の起爆装置として利用される可能性を指摘した。智樹の魅了は彼を盲信する者を生み出し、危険な行為を躊躇なく実行させる力を持つ。この力が帝国の戦略に組み込まれれば、計り知れない脅威となることを憂慮した。
智樹と響の性格分析
巴は智樹が力を欲するあまり、自ら努力することを放棄してきたことを批判した。一方、響についても、過去の成功体験から現実を自らの望む形に変えようともがく姿が、真とは正反対であると分析した。巴は二人の勇者がいずれも真の良き友となる可能性が低いことを嘆いた。
今後への警戒
巴と識は、智樹と響が真にとって脅威となる可能性が低いことを確認しつつ、もし二人がクズノハ商会や真に対して敵対行動を取れば、断固として対抗する覚悟を共有した。二人の密談は灯りが消えると共に静かに終了した。
真
真の帝国訪問と帰路
グロントとの試練と対話
真は帝国の秘境、白の砂海で上位竜グロントと対峙した。竜の年齢に触れた発言がきっかけで激昂したグロントは、ブレスや魔術、砂漠地形を駆使して攻撃を仕掛けた。真はこれらの攻撃を全て躱し、グロントを無力化した後に謝罪を行い、話し合いの場を設けた。グロントは長寿にも関わらず年齢を気にする姿を見せ、精神的には年若い女性のような一面を持っていた。竜の社会や歴史、砂海が人と竜の血で染まった地であることなど、彼女から多くの話を聞いた。
リリ皇女との別れ
帝都に戻った真は、巴と識と合流し、帝都での用事を無事に終えた。その後、転移陣まで見送りに来たリリ皇女と別れの挨拶を交わした。真は社交辞令を交えつつ、帝国への出店を検討する姿勢を見せたものの、実際にはその意思はなかった。リリ皇女の微笑みには真意が読み取れず、彼女が勇者智樹を真に会わせた意図も不明のままであった。
帝国訪問の収穫
今回の訪問で、帝国が真やクズノハ商会をどう見ているのかを把握できたことが最大の収穫であった。帝国の複雑な動きには謎が残るが、真は今後の対応方針を明確にした。巴と識と共に転移陣を通じて帝国を後にした。
帰路での次なる予定
帰路の中で、真は次の予定について思案した。ロッツガルドに戻った後、魔王の側近である魔将ロナとの会談が控えており、その場でケリュネオンに関する話題も取り上げる見込みであった。今回の帝国訪問がもたらした疲労を感じつつも、真は新たな任務に向けて備える姿勢を見せた。
リリ皇女
リリ皇女の策略と智樹の葛藤
砂海でのライドウの行動
リリ皇女は、ライドウが砂海で何をしたのかをギネビアから聞き出したが、その詳細は明らかにならなかった。ライドウは砂漠を疾走し、グロントとの接触後に無事に戻ってきたが、行動の真意は不明であった。ギネビアは彼を監視する役目を果たせなかった事に悔しさを滲ませ、リリはライドウの存在に得体の知れない脅威を感じていた。
ライドウの正体と異世界人の背景
リリは智樹の推測から、ライドウが異世界人であると知った。これにより、彼が女神の力を持たない存在である可能性を見抜き、勇者とは異なる背景を持つ人物として慎重に分析を進めた。ローレルの賢人に似た存在として彼を捉えつつ、その目的や本質を探ろうとした。
智樹の苦悩と決意
リリは智樹の私室を訪れ、ライドウとの対立後に彼が深く落ち込んでいる様子を目にした。智樹は自分の力不足を痛感し、ライドウを圧倒できなかったことに強い屈辱を抱いていた。リリは彼を巧みに励ましつつ、更なる力を追い求めるよう仕向けた。智樹は最終的に、自らの命を削ってでも新たな力を手に入れる決意を固めた。
リリの策略と狂気
リリは智樹の決断を引き出した事で目的を達成し、心の中でほくそ笑んだ。智樹を更なる力の獲得へ導き、その先で彼が戦争を激化させる存在となるよう仕組んでいた。彼女は智樹に対する愛情と狂気の間で揺れ動きつつも、その裏で冷徹な策略を巡らせ続けた。智樹を戦争の駒として使い倒しつつ、最終的には彼を破滅へと導く可能性を含ませていた。
独白と内なる葛藤
智樹を見送り、自室に戻ったリリは、狂気に満ちた笑いと涙を繰り返した。彼女は智樹を愛しいと感じる一方で、彼を操る計画を冷静に遂行していた。女神の存在に問いかけるような虚ろな視線を見せつつも、リリは己の思惑が成功する未来を確信していた。
真
夢に現れた未来の戦争と葛藤
帝国の研究と火薬の転用
真は巴と識から帝国に関する詳細な報告を受けた。銃の再現は失敗に近い形で終わり、リリ皇女は火薬の研究を爆弾の開発へと転換していた。魔力を利用して威力を増幅する技術が進展しており、その執念深い研究姿勢が真を警戒させた。銃よりも爆弾の危険性に対し、真は複雑な思いを抱いた。
謎の夢と壮年の自分
真は亜空で眠りについた後、不思議な夢を見た。夢の中で壮年の「自分」が砂漠を背景に智樹と対峙していた。砂漠はかつてローレル連邦だった土地を破壊して生じたものであり、壮年の「真」がそれを引き起こしたことが示唆された。智樹は魅了の力に固執しており、二人の間で激しい言葉の応酬が展開された。
智樹の魅了と支配への執着
夢の中で智樹は、魅了を強化し周囲を支配する行為に固執していた。それに対し壮年の「真」は、その行為が他者を道具化するものであり、真の相互理解を拒絶するものだと指摘した。智樹はそれに怒りを露わにしつつも、自らの行為を正当化し続けた。
リリ皇女の真意と智樹の裏切り
リリ皇女が智樹を利用していたという衝撃的な事実が夢の中で明らかになった。壮年の「真」は、リリが智樹を駒として戦争を激化させ、最終的には帝国をも滅ぼす計画を抱いていたと述べた。智樹はその真意を受け入れられず、リリへの想いと裏切りへの葛藤に苦しんでいた。
戦いの予感と夢の終わり
夢の最後、壮年の「真」は智樹との決戦を宣言し、二人は対峙した。しかしその瞬間、真の意識は夢から引き離され、現実へと戻った。夢の内容を反芻しながら、真は未来の自分の姿や起こり得る状況に対する不安を抱えつつも、再び眠りについた。
7
真
ケリュネオンでの改革と試練
若様を見送る朝の光景
霧深い冬の朝、真を含む三名がケリュネオンを離れた。見送る人々にはヒューマン以外の種族も多く含まれ、厳しい寒さの中でも整然と並んでいた。真の従者であるエマとエヴァは、彼の帰還までに準備すべき事項を話し合っていた。
エヴァとエマの対立
エヴァは亡国からの再興を果たした新たな国家ケリュネオンの運営を任されていたが、彼女が設定した税率や政策はエマに厳しく非難された。エマは七公三民の税率を常識外れと断じ、五公五民への見直しを指示した。エヴァは当初反論したが、エマの確かな知識と正論に押されて謝罪し、改めて改革に取り組むことを決意した。
各種族の報告と現状の課題
エマを中心に、リザードマン、翼人、ドワーフらが現状を報告した。魔獣への対策や国民の農作業適応の遅れ、人員不足など、多くの課題が山積していた。特に鍛冶や道具生産を担うドワーフの不足は深刻であり、新たな人材の確保が急務とされた。エヴァはこれらの問題に対応すべく努力を続ける必要があると認識した。
エヴァへの厳しい指導
エヴァは新国家の代表としての責任を果たすため、エマを始めとする亜人たちから厳しい指導を受けていた。特にエマはエヴァの未熟さを指摘しつつ、彼女を鍛え上げるべく一切の甘えを許さなかった。エヴァは肉体的にも精神的にも追い詰められながらも、彼らの期待に応えようと決意を新たにした。
未来への不安と覚悟
エヴァは国家運営の重圧に苛まれながらも、自らが背負うべき責任を理解しつつあった。周囲の期待と現実の厳しさに挟まれながら、彼女は正気を保ちながらも時折狂気にすがりたい思いを抱えた。それでもケリュネオンの未来のため、エヴァは前を向いて歩き続ける覚悟を固めた。
ロナ
霧深い朝の出発
霧に包まれた待ち合わせの場
深い霧が立ち込める中、ロナとイオは客人を待っていた。魔将のイオは冷静で、ロナは情報収集の才を持つが、二人とも現れる「客人」に対して緊張を隠せなかった。霧の中に浮かぶ三つの影が徐々に姿を現し、それがライドウとその従者、澪と識であることを確認した。
ライドウと魔将たちの初対面
ライドウはクズノハ商会の代表として挨拶し、従者の澪と識もそれぞれ軽く礼を取った。イオは形式張った挨拶をし、ロナは柔和な態度で久しぶりの再会を喜んだ。彼らは魔王の元へ向かうべく、都までの長い道のりに出発する準備を整えた。
ケリュネオンへの疑念と魔族の動き
イオとロナは道中、ケリュネオンの異常について話し合った。ケリュネオンでの異変や部下の全滅がライドウたちと関係している可能性に触れ、クズノハ商会の底知れない力を警戒していた。具体的な証拠は得られなかったが、彼らの動きが不気味であると認識した。
魔族の未踏の領域へ
ライドウたちはイオとロナに案内され、魔族の未踏の地へ向かった。この地は十数年もの間、ヒューマンが足を踏み入れたことのない場所であった。ライドウは一行を率い、一歩を踏み出し、新たな地へ向かう覚悟を決めていた。
8
真
極寒の地を進むライドウたち
魔族領での道中の始まり
ライドウとその従者たちは、魔将イオとロナに迎えられ、数日間に及ぶ道のりを進んだ。初日は吹雪の中で魔族の兵が魔物の襲撃を華麗に撃退し、彼らの実力が示された。寒さの厳しい中、防寒結界が展開され、進行が滞ることはなかった。
極夜の到来と異常な環境
二日目には空が突然暗くなり、極夜に突入した。昼間でも太陽が出ず、雪と強風が地表を叩きつける環境に驚かされた。凍結した地面と吹雪の中、魔族たちは慣れた様子で進んでいき、極寒の地での適応力が見られた。
強力な魔物の襲来
三日目、魔物の襲来が頻発した。その中には、真っ白な体毛と巨躯を持つライオンや、氷の鱗を持つ竜といった強力な敵が含まれていた。魔族の兵には被害が出たが、イオとロナが指揮を取り、見事に撃退された。ライドウは自ら戦おうとしたが、識に制止され、その背景にロナの策略があると推測された。
識の分析とロナの策略
識は、ロナが意図的に強力な魔物を誘導し、ライドウから協力の申し出を引き出そうとしたと分析した。魔族側が防寒結界を維持しつつ迅速に対応したことや、戦闘中にライドウたちを注視していた様子から、その可能性が示唆された。ロナの目的は、ライドウとクズノハ商会の実力を探ると同時に、連帯感を生み出すことだった。
集落での休息と食文化への期待
一行は休息のために集落に滞在することになった。識が用意したテントは極寒の環境に対応しており、魔族の用意した物を辞退する形となった。テント内で、魔族の食文化や宴についての会話が交わされ、氷料理や独特な食材への期待が膨らんだ。外では氷と闇が広がり、過酷な環境を象徴する風景が広がっていた。
竜たちの再会と対話
再会の場での騒動
グロントは冒険者ギルドの一室で、旧知のルトと再会した。彼女は激昂しながらランサーの卵をヒューマンに預けたことに抗議したが、ルトは悠然と受け流した。巴もそこに同席し、穏やかに状況を見守っていた。ルトの軽快な返答により、グロントはさらに苛立ちを募らせた。
ランサーの卵を巡る真実
ルトは上位竜たちが次々と倒され卵となった事実を明かし、犯人を倒したのがライドウであると説明した。グロントはその話に驚愕しつつ、ライドウが持つ圧倒的な力について聞き及んだ。ルトはその間も冗談めいた態度を崩さず、場の空気をさらに混沌とさせた。
巴とライドウの契約
巴がライドウとの支配の契約について語り、自らが彼の従者であると明かしたことで、グロントは驚きと混乱に陥った。彼女はこの事実に困惑しながらも、ライドウの力に対する興味と畏怖を募らせた。
グロントの怒りとルトへの追及
グロントは怒りに駆られ、ルトに対して詰め寄った。巴もまたルトに対して含みのある態度を取り、二人の竜姫が彼を追及する構図となった。ルトは軽妙な言い訳を試みたが、グロントと巴の怒りを収めるには至らなかった。
酒宴とその余韻
その夜、巴が持参した日本酒を共に酌み交わし、グロントと巴は酒で喉を潤しつつ、ルトに対して「お話」をした。ルトは深く反省することを余儀なくされ、その傷は酒の力もあって一層沁みる結果となった。
9
真
魔族の都での歓迎と謁見
パレードという壮大な歓迎
魔族の都に到着したライドウたちは、盛大なパレードで迎えられた。装飾が施された馬車に乗せられ、多くの魔族たちが街道沿いで歓声を送った。澪と識は堂々とその状況を受け入れていたが、ライドウ自身は困惑しながらもその役割を全うした。パレードを通じて、魔族が力を重んじる価値観を垣間見ることとなった。
都での滞在と魔王の配慮
パレードの後、彼らは広々とした部屋に通された。識は、魔族の歓迎の意図について、魔王の統治の正当性と民衆からの支持を示すためのアピールであると推測した。魔族の社会が亜人と共存し、善政を敷いている事実に驚きながらも、ライドウはその裏に隠された意図を探ろうとした。
魔王ゼフとの謁見
謁見の場では、魔王ゼフが自ら階段を下りてライドウを迎えた。王としての風格と圧倒的な存在感を持つゼフは、ライドウの手を握り、親しみと敬意を込めて挨拶をした。ライドウは緊張しながらも、クズノハ商会の代表として丁寧に応じた。ゼフはライドウの従者である識と澪にも興味を示し、彼らの力を認めつつ、謁見の形式に捉われない柔軟な対応を見せた。
王とのさらなる対話の場へ
ゼフは謁見の形式を解き、より自由な場で会話をする提案をした。さらに、自身の子供たちも同席させ、ライドウから直接話を聞かせたいとの意向を示した。ゼフ自らの案内で次の場へ移動する中、ライドウは彼の大らかさと配慮に驚きつつも、魔族との対話に向けて気を引き締めて歩みを進めた。
魔王ゼフ
クズノハ商会を巡る魔族の議論
ライドウの危険性とその影響
魔王ゼフの問いかけに応じ、魔族たちはそれぞれの見解を述べた。ロシェは、ライドウを危険な存在としながらも、必要以上の関与を避けるべきと主張した。一方、ルシアは、ライドウの「身内を傷つけたら報復する」という発言を問題視し、明確な立場を示さない限り友好的な関係を築くべきではないと述べた。
経済的な価値と協力の可能性
セムは、クズノハ商会の物流能力に着目し、彼らとの協力が魔族領の物流問題を解消する可能性があると主張した。彼はライドウの側近である識との対話を通じて、商会の圧倒的な輸送能力を確信した。また、魔族領の特産品がヒューマン市場での価値を持つとし、経済的な観点からも彼らを重要な協力者と見なした。
制御不能な力としての懸念
サリはライドウを「制御不能な不安定な力」と評し、魔族にとっての潜在的な脅威であると指摘した。彼女は、ライドウが魔族の敵に回った場合、その力がもたらす破壊的な影響を懸念した。さらに、彼を完全に制御することは不可能であり、魔族に危害を加えないように導く「首輪」のような抑制が必要であると提案した。
魔王ゼフの総括と決断
ゼフは、部下たちの意見を聞き、ライドウを眠れる竜と評した。その一方で、ライドウとの関係構築が魔族にとっての最善策である可能性を示唆した。ライドウの圧倒的な力を認識しつつも、彼との協力の道を模索する必要性を感じ、最終的な結論を出すことを保留した。
魔王の独白とライドウへの評価
会議後、ゼフは一人部屋に残り、ライドウという存在の脅威と可能性について考えを巡らせた。彼は、ライドウが神に迫る存在である可能性に触れつつ、その力をどのように魔族の未来に活かすべきか悩み続けていた。
EXTRAエピソード
ケリュネオン黎明期 ~冒険者編 ~
ロッツガルド冒険者ギルドの特位召喚
特位召喚状による冒険者たちの招集
ロッツガルド冒険者ギルドでは、全国各地から冒険者たちを招集する特位召喚状が発行された。召喚された者は現役冒険者や引退した者も含み、全国規模で波紋を呼んだ。召喚対象者には、迅速にロッツガルドへ向かうよう手配がなされ、ギルド費用負担で転移陣も使用可能とされた。今回、特に選ばれた七人の冒険者たちは、召喚状の威圧感に圧倒されながらもギルド本部へと集まった。
冒険者ギルドマスター、ファルスとの対面
集められた七人は、ギルドマスターであるファルスとの面談に臨んだ。小柄で若々しい外見のファルスに最初は戸惑う者もいたが、彼が放つ強者の気配により一瞬で緊張感が漂った。ファルスは冒険者たちに選択肢を提示し、提案に対する即日決断を求めた。その内容はケリュネオンという復興した国への協力と移住であった。
ケリュネオンの復興と冒険者への期待
ファルスは滅びたはずのケリュネオンが魔族を排除し、再び国として復興した事実を伝えた。同時に、ケリュネオンが多くの犠牲を払いながらも国を維持しようと努力している現状を説明した。そして、冒険者たちにはその国を支えるための住民兼協力者として、ケリュネオンに参加するか否かを問うた。
冒険者たちの選抜基準
召喚された冒険者たちは、寒冷地での活動経験、亜人との関わり方、戦闘能力など多岐にわたる基準で選抜されていた。ファルスは冒険者一人一人に対して、その特性を考慮し、ケリュネオンでの適性を見極めた上で提案を行った。
ギルドマスターの計画と商会の関与
ケリュネオンへの協力依頼は、ファルスが深く関わりを持つ特定の商会からの要請によるものであった。秘書とのやり取りの中で、商会の能力に言及されるも、ファルスはその詳細を伏せるよう指示し、詮索を厳しく禁じた。この商会がケリュネオン復興の影響力を持つことを暗に示した。
冒険者たちの決断への準備
冒険者たちは別室でケリュネオンへの協力を決断する機会を与えられた。ファルスは、決断に必要な情報と報酬条件を提示し、どの選択をしても不利益はないと保証した。彼らの選択はケリュネオンの未来を大きく左右するものであり、ギルドと商会双方にとって重要なものとされた。
ケリュネオンの雪国生活と冒険者たちの適応
雪国の厳しい環境への挑戦
ケリュネオンは他地域と比べ物にならない厳しい豪雪地帯であった。日常的に1メートル以上の積雪があり、住民は日々雪かきに追われていた。帝国東部の豪雪地帯出身のティエリは、この環境の厳しさに驚きつつも、ここでの日々の暮らしに挑んでいた。戦闘や日常生活での雪国特有の困難が語られ、多くの冒険者がその環境に適応するため苦心していた。
冒険者ギルドの活動とケリュネオンの再建
冒険者ギルドの本部から呼び出され、ケリュネオンへの移住を決めたティエリを含む冒険者たちは、雪国の厳しい環境下での生活に奮闘していた。彼らは家族と共に移住し、街の再建や開拓、そして住民たちとの共同作業を進めていた。特にティエリは、家族と濃密な時間を過ごしながら、かつての自分の限界を超える活躍をしていた。
食堂を拠点としたコミュニティの形成
中央食堂は、ケリュネオンの人々にとって心の癒しとなる場所であり、多種多様な種族が集う拠点であった。そこで人々は情報を共有し、酒を酌み交わしながら励まし合っていた。食堂の管理を担うルリア =アーンスランドは、料理や内政の管理を通じて住民たちの支えとなり、その姉エヴァと共に街を指導する中心人物となっていた。
クズノハ商会の貢献と謎
ケリュネオンの生活を支える重要な存在として、クズノハ商会が挙げられた。この商会は厳しい雪国で必要不可欠な物資を届ける物流能力を持ち、低価格での提供や支援活動を行っていた。その活動の裏には謎が多いものの、住民たちはその恩恵を受けながら信頼を寄せていた。
冒険者たちの新たな使命と繋がり
ケリュネオンに移住した冒険者たちは、雪国の環境に適応しつつ、新たな戦術や技能を身につけていった。中でも斧剣ジオナは独自の戦い方を編み出し、その方法を仲間に伝えたことで、冒険者全体の戦力強化に貢献していた。ティアは種族間の架け橋として活躍し、住民との繋がりを強化していた。
英雄たちの奮闘と未来への期待
ケリュネオンでは、英雄姉妹や冒険者たちがそれぞれの役割を全うし、街の未来を切り開こうとしていた。彼らの尽力によって、厳しい環境の中でも希望が生まれ、人々は明日をより良い日にするために力を合わせていた。その背後には、クズノハ商会やギルドの支援という大きな柱が存在していた。
アニメ
PV
OP
【オープニング主題歌】 syudou「ギャンブル」ED
同シリーズ
小説版 月が導く異世界道中 シリーズ
漫画版 月が導く異世界道中 シリーズ
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