小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 8.5巻」感想・ネタバレ

小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 8.5巻」感想・ネタバレ

どんなラノベ?

薄幸系男子の異世界成り上がりファンタジー! 

え?
そうだっけ?
薄幸系男子は頷けるけど、成り上がってるか?

そんな彼に惚れ込んだ人(?)達が織りなす異世界道中。

彼は穏便に事を運びたいのに、全てが大袈裟になってしまう。

そこが笑いどころ。

読んだ本のタイトル

#月が導く異世界道中    8.5
著者:#あずみ圭 氏
イラスト:#マツモトミツアキ  氏

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 8.5巻」感想・ネタバレBookliveで購入gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 8.5巻」感想・ネタバレBOOK☆WALKERで購入

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1巻から8巻までの流れ

普通に生活して寝たら。
いきなり両親の都合で異世界の女神に呼び出されて、顔がブサイクだから要らないと言われて見知らぬ土地にポイ捨てされた主人公。

荒野を彷徨っていたら、オーク(♀)と出会い、彼女を生贄に求めた上位竜を覚えたての魔法で倒して従者にする。

上位竜を配下にした結果、亜空と呼ばれる異空間を手に入れた主人公。

荒野で出会ったオーク達を亜空に移住させて彼等も配下に置く。

その直後、空腹で正気を失ってる災厄の黒蜘蛛がエルダードワーフを追って襲ってきたので撃退。

その結果、黒蜘蛛が正気を取り戻して従者になる。

上位龍を巴、黒蜘蛛を澪と名付けて、亜空の住民の投票結果で主人公は【若】と呼ばれる事になる。

その後にエルダードワーフ、巴の眷属ミスティオリザード、澪の眷属アルケーが合流して街を造る。
それでも人に会いたい主人公はベースキャンプ絶野に行くが、、

魔王のような魔力が駄々洩れのせいで魔獣と間違われて総攻撃されてしまう。

1ヶ月文字と魔力を抑える術を手に入れてベースキャンプ絶野に行くが、、、
ヒューマンは色々と悪どかった。

巴と澪が悪乗りしてベースキャンプ絶野は壊滅する。(1巻)

遂に大きなヒューマンのツイーゲの街に着いた一行。

そこで、呪病に苦しむレンブランドの依頼を目にして、彼の妻、娘2人を癒す。

そして、暗躍していたライムを懲らしめて配下に加える。(2巻)

レンブランドの家族を癒した薬の原料アンブロシアを手に入れるため、群生地に行ったらアンブロシアを守護している森鬼が襲って来た。

それらをアッサリと捕獲して、森鬼の村に潜伏していたリッチを秒殺で押さえ込んで、主人公の魔力を蓄積した指輪13個を彼に装備させ、下駄を履かせて3人目の従者にして終わる。

かなりイケメンの 主人公待望の同性の従者登場!(3巻)

そんな同性の従者と学園都市に行く途中で、主人公が転移魔法の使用中に突然戦場に拉致られた。

目の前には、大剣を振りかぶってる、王都攻略を目論むヒューマン最強のソフィア。

2人の勇者は連合軍を率いてステラ砦に進攻していたが、魔族の罠にハマってほぼ壊滅。

主人公、勇者達はそれぞれの戦場で何とか生き残る。(4巻)

突然戦争に巻き込まれ負傷してやっとたどり着いたのに、入学試験ではなく、臨時教員の試験だった。

その試験に主人公だけが合格して教職に就く。

週に1枠の授業を設けると、あまりのハイレベルな授業に上昇志向の強い数名しか残らなかった。

授業以外の日は店を開く準備をして、従業員を亜空から呼んで、、

来たのはアクエリアスコンビ。

波乱の予感しかないw(5巻)

ライムがとある組織に捕まった。

そこに図書館の書士であるエヴァも居た。

その原因は、冒険者ギルドのマスタールトの横槍。

そうなった原因は、かつての勇者の嫁であり、冒険者ギルドのギルドマスターなルト。

巴の知己で、主人公の事には興味津々。
それを威嚇する澪。

そして、店の名前で異世界人を保護する国。

ローレルに目を付けられる。(6巻)

葛の葉商会の存在感が増し、安価な薬品の秘密を知りたがる連中があの手この手で主人公に迫って来る。

そして、商人ギルド長からは輸送手段の技術を公表しろと高圧的に迫られ、金銭で解決しようとしたら売り上げの9割を寄越せと凄まれる。

そんな世間の荒波に打ちのめされた主人公は・・・(7巻)

あらすじ・内容

累計32万部! 薄幸系男子の異世界ファンタジー、完全書き下ろし番外編!

薄幸系男子の異世界成り上がりファンタジー、完全書き下ろしの番外編! ロッツガルドが夏休みに入ったのを機に、真は自身の魔力の出力アップの訓練に取り組んでいた。そんな折、ふと手にした「魔力の物質化」に関する論文に着想を得て、真は亜空を守る新たなる力を手にする。真の圧倒的な魔力量と精神集中によって実体を帯びた変幻自在の魔力、その名も「魔力体」! 亜空の猛者達も唖然とさせるその力とは!?

月が導く異世界道中8.5

感想

亜空編、主人公の防御主体の新技術の魔力体の開発の話。 

表紙の主人公を覆う物体のような魔力の塊。

 銅貨を造る為に金貨を使うアホな技術らしい。

普通のヒューマンは複数人が全力で魔力を振り絞って砂粒一つを作るのがやっとだった。

 でも、魔力が無尽蔵にあり出力が無い主人公からしたら必要な技術だった。 

さらに、この頃から主人公の浮世離れが加速しはじめた印象。

 学園編ではジン達が亜竜にリベンジする話。 

何気にエリスが美味しい役になってるw 

ソフィアとジンの意外な関係が最後に来た。

裏話

extra16 その頃ツィーゲ ~夏休みに起こっていた事①~

extra17 その頃ツィーゲ ~夏休みに起こっていた事②~

extra18 その頃ツィーゲ ~夏休みに起こっていた事③~

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備忘録

MBSアニメ&ドラマ

亜空編
1(アニメ第二幕11話)

夏休み前の目標設定

ロッツガルド学園は夏休みを迎えようとしていた。深澄真は商会の運営と学園での講師業に忙しくしていたが、休みに入ることで新たな目標に取り組もうと考えていた。その一環として、魔術の出力向上を目指し、冒険者ギルドにいるルトを訪ねることにした。

ルトとの対話

ルトは、真が魔力の出力を増やしたいと考えていることに驚きを見せた。一般的に魔術師はレベルを上げたり、装備を整えることで術の威力を高めるが、真にはどちらも当てはまらなかった。ルトは魔術の基礎理論を説明し、真が使用する術が常識を逸脱していることを指摘した。さらに、魔力の最大値や出力は生まれつきの才能であり、一生をかけても変化は微々たるものだと語った。しかし、真の魔力は増大しており、ルト自身もその理由を知りたがった。

修練法の提案と弓道の影響

ルトは真に魔力出力を上げるための修練法をいくつか渡した。ただし、即効性のある方法ではなく、長期間の積み重ねが必要だと念を押した。真はこれを受け取る一方で、自身の魔力が増加している理由として弓道の影響を示唆した。ルトは疑問を抱きながらも、真が弓を引くことで魔力を増やしている可能性を考慮し、その方法を知りたがった。しかし、真は人前で弓を引くのを好まず、具体的な実演は避けた。

図書館での新たな発見

ギルドを後にした真は、学園の図書館へ向かった。司書のエヴァから魔力の運用に関する論文を薦められる。その論文は「魔力の物理干渉と可視化」に関する独自性の高い研究であり、魔術ではなく魔力そのものに焦点を当てた珍しい内容だった。真はその論文に興味を抱き、夏休みの課題の一つとして読むことを決めた。

夏休みの準備と今後の展望

真は、ルトから得た修練法とエヴァから借りた論文を夏の課題とし、亜空での研究に取り組む決意を固めた。さらに、商会の業務や学生たちの成長にも気を配りながら、自身の能力向上を目指すことを決めた。ジンたちの成長次第では、学園の模擬戦でも新たな展開が期待されるかもしれないと考えながら、真は亜空へ戻る準備を進めた。

亜空の管理者としての役割

亜空は深澄真の所有物とされていたが、実際には巴の能力によって生み出された異空間が変質したものであった。しかし、現在では巴の能力と切り離され、真が最大の干渉権を持つ領域となっていた。そのため、住民たちは何か問題があると真に裁可を求め、彼は半ば王のような立場に置かれていた。夏休みの間、亜空に滞在することを決めた真は、実務を統括するエマに伝えた途端、連日のように報告と相談が舞い込むこととなった。

日々の雑務と修練の進捗

真は亜空の統治業務に追われながらも、論文の読解と魔力の出力向上の修練を継続していた。しかし、ルトから教わった修練法を三倍の量こなしても、目に見える効果は得られなかった。そのため、修練が即効性のあるものではないことを痛感し、地道に続けるしかないと悟った。そんな折、エマが訪れ、翼人との模擬戦を行う予定を伝えた。彼女によると、翼人はこれまでの対戦で無敗を誇る強力な種族だったが、真との相性が極端に悪く、実力を適正に評価するのが難しいかもしれないと懸念していた。

翼人との模擬戦

模擬戦が始まると、翼人たちは空中戦を得意とし、雲を利用した奇襲や連携を駆使して戦った。しかし、真のブリッドの精度と威力の前では、彼らの戦術はほとんど通用しなかった。高高度からの攻撃も命中精度が低く、真にとっては容易に回避可能なものだった。特に問題だったのは、遠距離攻撃への耐性が皆無であり、ブリッドの直撃を受けた翼人が次々と墜落していったことである。戦闘の終盤、族長のカクンと補佐のショナが切り札として巨鳥への変身を行い、強化を施した突撃を試みた。しかし、真はそれすらも軽々と防ぎ、反撃で彼らを制圧した。

戦力評価と課題の指摘

模擬戦後、翼人たちは自分たちの戦力不足を痛感していた。真は彼らに対し、空を飛ぶ利点に頼りすぎ、攻撃手段の多様化や威力向上を怠っていると指摘した。加えて、防御が脆弱であるため、空に上がる際のリスクを見直す必要があると助言した。族長のカクンは、翼人たちも亜空の開拓や調査、戦力ランキングへの参加を希望したが、真は現状の実力では不適切であるとして許可しなかった。ただし、戦力強化のための訓練を推奨し、改善の余地があれば将来的な参加を検討することを約束した。

今後の模擬戦の活用

翼人との模擬戦は、彼らの鍛錬の場であるだけでなく、真にとっても有益な修練となる可能性があった。特に、魔術の行使状態を維持し続ける訓練として適しており、ルトから学んだ修練法の一環として活用できると考えた。そのため、真は今後も翼人との模擬戦を継続することを決め、より実践的な訓練の場として利用することにした。

2(アニメ第二幕11、12話)

森の警戒と調査隊の動き

広葉樹が生い茂る森の中で、調査隊の一員である戦士アガレスは、直感的に何かの存在を察知して足を止めた。調査隊の他の戦士たちも警戒態勢を取りつつ、慎重に進む。ハイランドオークによる開拓が進められているが、未知の生物や環境に対する警戒は怠れない。彼らは未知を既知に変えるため、探索を続けていた。

突然の襲撃と圧倒的な力

アガレスの直感は的中し、ナニカが彼らを襲撃した。瞬く間に仲間たちは意識を刈り取られ、隊は壊滅状態に陥った。敵の爪痕が鋭く、圧倒的な速さで動く何者かがいた。アガレス一人がまだ無傷だったが、状況は絶望的であった。彼は、これほど強力な存在が単なる魔獣とは考えられず、以前遭遇したオオカミとは異なる強大な何かであると悟る。

森の脅威と真の警告

アガレスは、以前真から聞いた「狼」と「熊」に関する警告を思い出した。真は特に狼との交戦を避けるよう助言していたが、目の前の存在は、ただの獣とはかけ離れた力を持っていた。彼は自身の認識の甘さを痛感し、今ここでの戦闘は無謀であることを理解する。しかし、戦士として、何もせずにやられるわけにはいかないと覚悟を決め、槍斧を握り直した。

狼の咆哮と圧倒的な威圧感

突然、森に響く遠吠えがアガレスを襲った。その咆哮は彼の全身を貫き、身体の自由を奪った。狼の殺気は竜の咆哮をも凌ぐほどの威圧感を持ち、アガレスは自らが捕食者と被捕食者の関係にあると直感する。それでも、戦士としての誇りを捨てることなく、倒れた仲間たちを守るために立ち上がる決意を固めた。

熊の出現とさらなる絶望

狼が姿を消した直後、アガレスは別の存在に気づく。巨大な黒い毛並みの獣──熊が背後に立っていた。威圧感に圧倒されながらも、アガレスは体当たりを試みるが、熊は微動だにしない。逆に、無造作に振り下ろされた熊の一撃を受け、彼は意識を失った。致命傷こそ免れたものの、戦闘は圧倒的な敗北であった。

狼の介入と熊の撤退

意識を失ったアガレスを連れ去ろうとする熊に対し、再び狼の声が響く。「その者は我が赦しを与えた者」との言葉に従い、熊は渋々ながらもアガレスを解放し、森の奥へと消えていった。狼もまた姿を消し、調査隊の仲間たちが目を覚まし始める。こうして、アガレスたちは満身創痍の状態で森を後にし、「狼と熊に遭遇」との報告を上げることとなった。

魔力の研究と論文の考察

深澄真は、魔力の物質化に関する論文を夜ごと読み進めていた。論文によれば、大量の魔力を放出すると色を帯び、さらにごく弱い障壁を形成することがあるという。著者は、魔力が視認でき、触れる可能性があることから、物質化の理論を探求していた。真もまた、より多くの魔力を術に込める手法を模索しており、論文の内容を実験することにした。

魔力の外部利用の実験

真は自身の魔力を外部に放出し、それを直接活用する試みを始めた。通常、魔術は体内の魔力を消費するが、彼は周囲に放出した魔力を術に用いることで、内外の魔力を均等に活用できる可能性を見出す。試行錯誤の末、外の魔力も術の発動に寄与していることを確認し、この技術を発展させることを決意した。

夜通しの修練と異常事態

真は集中を切らさず、魔力の制御を続けた。次第に内と外の魔力の均衡が取れ、消費を抑えつつ威力を増す感覚を掴み始めた。しかし、気づけば夜を徹して実験を続けており、明け方になっても自覚がなかった。巴と澪の声で正気を取り戻した彼は、自身が一晩中魔力を放出し続けていたことを理解し、その危険性に気づく。

朝食と今後の修練の決意

巴と澪の案内で家へ戻ることになった真は、自身の疲労のなさに違和感を覚える。かつての虚弱な体を思い出し、鍛錬を怠ることの危険性を再認識する。そして、さらなる修行を計画しながら、澪が準備した朝食を楽しみに家路を急ぐのだった。

調査隊の報告と狼と熊の存在

深澄真は、朝食後に巴からの報告を受けた。それによると、ハイランドオークの調査隊がついに狼と熊に遭遇したという。隊長であるアガレスたちは、調査中にこれらの強力な獣と出会い、戦闘不能にされながらも命を奪われることなく退けられた。森には日本の動物が存在することもあるが、それらは異様に強く、ただの野生動物とは思えないほどの力を持つという。特に狼と熊は、この亜空においても特別な存在とされていた。

狼に対する真の特別な思い

真は、狼に対して特別な憧れを抱いていた。日本ではすでに絶滅したニホンオオカミは、彼にとって神秘的な存在であり、森の王のように感じられた。狼は単なる猛獣ではなく、信仰や文化の中で神聖視されてきた歴史がある。彼は、今回の調査隊の報告を聞き、遭遇した狼こそがまさにその「オオカミ」に相応しい存在だと考えた。そして、調査隊を殺さずに退けたことから、単なる獣ではなく、ある種の理性を持つ存在かもしれないという期待を抱いた。

狼と熊への対応策の検討

巴は調査隊の報告を受け、狼と熊の力を確認するため、自らが指揮をとって再調査を行うことを提案した。しかし、真はそれを却下した。アガレスたちは一度警告を受け、命を助けられていた。再び森へ足を踏み入れれば、それは警告を無視する行為となり、狼たちとの関係を悪化させかねないと考えた。さらに、狼は念話に近い方法で意志を伝えてきたようであり、無闇に敵対するのではなく、まずは対話の手段を探るべきだと主張した。

真の我が侭と巴の納得

真は、巴や澪ではなく、まず自分が狼と接触することを希望した。それは単なる我が侭であり、彼自身の特別な感情によるものだった。巴は不満げな様子を見せつつも、最終的には真の意志を尊重し、彼の計画を受け入れた。真は、自らの考えを実現するために準備を進めることを決意し、森の狼と熊に備える新たな術の開発に取り組むことを誓った。

外に出した魔力の制御と新たな可能性

七日後、真は自身の体の外にある魔力を、内の魔力と同じように認識し、術に活用できるようになった。さらに、魔術の発動地点も手元だけでなく、自由に変えられるようになっていた。これにより、魔力の運用の幅が大きく広がり、実戦での応用も見えてきた。論文の目指した「魔力の物質化」とは異なるかもしれないが、彼にとっては十分な成果だった。

魔力の物質化の実験

真は、論文の詠唱をロストチャントに置き換え、内と外の魔力を同時に用いて魔力の物質化を試みた。詠唱の結果、彼の周囲に薄い膜のようなものが現れ、それは触れることのできる実体を持っていた。さらに、その膜は彼の外に出した魔力そのものであり、これを利用して魔術を発動することにも成功した。これにより、彼は自身の魔力を貯蔵し、必要な時に引き出して使うという、新たな戦術を手に入れた。

防御力の強化と日常生活への影響

物質化した魔力は、ある程度の防御力を備えていた。真は試しに木に突進し、スライム状の魔力膜が衝撃を吸収することを確認した。しかし、この魔力は展開したままだと周囲の物体に干渉し、握手やハグができず、狭い場所では行動が制限されるという欠点もあった。彼はこれをどう日常生活と両立させるか、新たな課題として考え始めた。

戦闘と防御の新たな戦略

魔力の物質化は、戦闘において大きな利点をもたらす可能性があった。もし常時展開できれば、外部からの攻撃を防ぎつつ、内部から自在に魔術を発動できる強力な防御術になり得る。しかし、まだ改良の余地が多く、耐久性の向上や制御の精度を高める必要があった。特に狼や熊との対話を目指す上で、防御を万全にしておくことは重要であり、彼はこの新たな術の完成を急ぐ必要があった。

今後の展望と学園の講義

魔力の物質化は、彼の戦闘能力を大きく向上させる可能性があるが、完全な制御にはまだ時間がかかる。彼はさらなる改良のために、知識を深める必要があると考え、巴が管理する書庫で新たな手がかりを探すことを決意した。しかし、その前に学園の講義を控えていることを思い出し、急いで帰宅することになった。時間の余裕はなかったが、彼の頭の中には、新たな術の可能性が広がっていた。

3(アニメ第二幕11話)

ミスティオリザードとの模擬戦と成長

夏休みの間、ミスティオリザードと学園の生徒たちは「お楽しみ講義」と称した模擬戦を続けていた。最初は全く歯が立たなかった生徒たちであったが、数回の戦闘を経て、ついにジンたちがミスティオリザードに勝利した。これにより、生徒たちは学園祭に向けて順調に成長を遂げていることが明らかとなった。

一方で、ミスティオリザードたちもまた、生徒たちの成長に刺激を受け、自らの訓練に励んでいた。その中には、素手での戦闘、すなわち格闘技に目覚め始めた者も現れた。素手で戦うという戦闘スタイルはこの世界では珍しく、ジンたちにとっても新たな経験となる可能性があった。しかし、彼らは最近亜竜と遭遇し、総崩れになったばかりであったため、格闘型ミスティオリザードとの対戦は学園祭後に持ち越されることとなった。

亜空の発表会の開催

この日、亜空に住む様々な種族が集まり、新技の披露を行う発表会が開かれた。種族間の交流を通じて進化した戦闘技術を披露する場として、巴が開催を決定したものである。各種族はこの機会を活かし、戦闘技術の研鑽に励んでいた。

発表会では、攻撃技を披露する者は巨大な岩球に攻撃を加え、その威力を数値化する方式が採られた。巴と識が協力して作り上げたこの岩球は、攻撃の威力を測定するために特別な魔術が施されており、直径二十メートルにも及ぶ巨大なものだった。なお、ゴルゴン族はまだ新技を完成させていなかったため、今回は石化能力の披露にとどまることとなった。

アガレスとエマの連携技

発表会の最初の出場者は、ハイランドオークのアガレスとエマであった。アガレスは、狼との遭遇を経て、戦闘スタイルを変化させていた。それまで自己完結型の戦士であった彼が、エマの補助魔術を完全に受け入れ、仲間との連携を強化した姿を見せたのは大きな成長であった。

エマの強力な補助魔術を受けたアガレスは、鈍器を構え、全力で岩球に攻撃を加えた。その結果、威力は七十八点を記録した。これは、識にダメージを与えられる水準であり、驚異的な数値であった。この数値を基準として考えれば、巴を傷つけるには百点が必要であり、澪に対しては五十点ほどで十分であるとされた。

アガレスの一撃は、発表会の中でも突出した威力を誇り、その後の挑戦者たちの誰もが彼の記録を超えることはできなかった。

各種族の新技披露

ミスティオリザードの戦士たちは、対空攻撃を強化した技を披露した。高密度のブレスを上空に放ち、雲を貫通させることでその威力を示した。この技は、翼人たちへの対策として開発されたものであり、地上戦においても有効な技術となる可能性を秘めていた。

エルダードワーフのベレンは、サイズを自在に変化させる斧「山斬り」を披露した。最初は小型の手斧だったが、振り下ろす直前に巨大化し、最終的には七十点の威力を記録した。彼はさらなる改良を目指しており、この技の完成度を高めることを誓った。

澪の眷属であるアルケーの戦士は、糸を用いた攻撃を披露した。鋭い斬撃を放つだけでなく、拘束技としても応用可能であり、多様な戦闘スタイルに対応できる技であった。

翼人たちは、新たな連携技を発表した。地上にいる仲間が上空の味方とリンクし、位置情報を共有することで、狙撃の精度を向上させる技術である。この戦術により、高高度からの攻撃精度が飛躍的に向上し、地上の目標を正確に射抜くことが可能となった。

アクアとエリスの氷結界

発表会のトリを飾るのは、森鬼のアクアとエリスであった。彼女たちは、魔法少女のような礼装を身にまとい、新たな結界魔術を披露した。氷の神殿のような結界が岩球を完全に包み込み、外部からの攻撃を受け付けない強固な防御技術を実現していた。

しかし、この結界には重大な欠陥があった。地面に隙間があり、そこを掘ることで内部に侵入できたのである。真はこの欠陥を利用し、こっそりと内部に侵入して結界を解除させた。観客たちは驚きの声を上げ、アクアとエリスは愕然としていた。

識の新技「十三階梯」

識は「十三階梯」と呼ばれる技を披露した。この技では、四つの指環を用いて魔力を強化し、黒い杖を巨大な大剣に変化させた。その一撃は岩球を完全に両断し、百点以上の威力を示した。この技は、竜に対する特効を持つ魔剣であり、識は巴にすらダメージを与えるほどの力を獲得した。

彼の剣技は、これまでの魔術師としての戦い方とは一線を画すものであり、巴ですら驚嘆するほどの進化を遂げていた。

真の魔力体の披露

最後に、真が自身の新たな魔力の応用技を披露した。彼は魔力を体外に放出し、それを実体化させることで「魔力体」と呼ばれる鎧のようなものを生成した。この魔力体は、魔術の威力を増幅させ、防御力を向上させる効果を持っていた。

しかし、その過程で放出された魔力の密度があまりにも高すぎたため、観客の多くが気絶する事態となった。識や巴は言葉を失い、会場には静寂が広がった。最終的に、真の魔力体は実用化にはまだ課題があるものの、大きな可能性を秘めた技術であることが示された。

こうして発表会は幕を閉じ、各種族は新たな課題と成果を胸に、さらなる鍛錬へと向かうこととなった。

魔力体の改良のヒント

発表会が終わり、夕食も済ませた後、真は弓の訓練とルトから教わった修練をこなす予定であった。しかし、彼は未だに発表会での皆の反応を引きずっていた。特に、アクアとエリスでさえ驚愕し、沈黙したことが気にかかっていた。彼女たちのふざけた技の数々と比べても、自分の魔力体が異質に映ったのかもしれない。

気を紛らわそうと考えた真は、巴に水の上を走らせてみるのも面白いかもしれないとふと思った。その瞬間、彼の脳裏に奇妙な映像が浮かび上がった。それは、水槽に白く濁った水が満たされ、白衣を着た人間がその上を歩いている光景であった。そして、ようやく思い出した。「あの白いやつだ!」と、夜にもかかわらず声を上げてしまった。

エリスの何気ない発言が、彼の中で求めていた魔力体の性質を思い出させた。もし次回、エリスが氷の上を走ることがあれば、彼は惜しみない拍手を送ると心に決めた。

記憶を頼りにロッツガルドへ

真は急いで書庫へと向かい、記憶を探る作業に没頭した。そして、ついに求めていた情報を見つけた。それはテレビのバラエティー番組で紹介されていた科学実験の一つであった。「走って渡れる不思議な水」の正体は、水と片栗粉を混ぜたものであった。比率はおおよそ一対一。単純な原理ではあったが、これこそが彼の魔力体に求めていた特性そのものであった。

確かめるため、真はロッツガルドへと向かった。すでに夜遅い時間だったが、学園に品を卸している商人の一人がまだ店を開けていた。彼はそこで片栗粉を大量に購入したが、商人は売れ残っていた片栗粉に突然価値が生じたことを悟り、値段を釣り上げようとした。交渉が面倒になった真は、提示された額の倍を置き、さっさと買い取ってしまった。

夏休みに入り、学生の数が減ったロッツガルドの街は普段よりも落ち着いていた。それでも、観光客や近隣都市の学生たちで飲食店街は賑わっていた。そんな中、大量の粉袋を積んだ荷車を引いて歩く真の姿は、明らかに浮いていた。

実験の成功と新たな防御手段の確立

クズノハ商会に戻った真は、すぐさま地下室へ向かった。そこには大型の水槽があり、魔術を使って水と片栗粉を一対一の比率で混ぜた。しばらくすると、水槽は真っ白な液体で満たされた。手を入れてみると、通常の液体のように感じられたが、わずかな抵抗があった。

真は手で強く水面を叩いてみた。すると、瞬間的に固くなった。ならば、今度は実際に走ってみるべきだと考えた。思い切って足を踏み出し、ダッシュする。結果は――成功であった。彼は水槽の端から端まで、沈むことなく走り切ったのである。

この現象こそが、魔力体に必要な性質であった。攻撃を受けた際には固まり、通常時には柔軟に変化する。これならば、戦闘時の防御としても活用できる上に、日常生活でも障害とならない。さらに、魔力体の形状を自在に変えられるため、内部からの攻撃の発動も可能となる。戦闘時においては、魔力体の特性を利用して、敵の攻撃は防ぎながら自分の魔術だけを通すことができる。これにより、かつて魔力体の外側からの攻撃が問題視された欠点も克服された。

彼は確信した。ついに求めていた防御手段を手に入れたのだ。

魔力体の最終調整と亜空への帰還

真はそのまま地下室で調整を続けた。条件付けを行い、魔力体にこの「白い水」の性質を付与する作業に取り掛かった。彼の詠唱の構成を見直し、魔力体の変形時に新たな属性が正しく働くよう細かく調整を加えた。

気づけば朝になっていた。店の上ではすでに商人たちが動き始め、慌ただしい物音が響いていた。しかし、時間などどうでもよかった。真はついに、自分自身を守り、そして亜空の人々を守る手段を手に入れたのだから。

もう、不安に思うことはない。これで、狼と対話する準備が整った。彼らがどれだけ攻撃してこようとも、この魔力体があれば恐れることはない。戦わずして、安全を確保しながら接触することができる。

彼は早速、亜空へ戻ることを決めた。

エリスとの遭遇と再確認

地下室の入口に現れたのは、森鬼のエリスであった。彼女は真の姿を見つけると、興味津々な様子で水槽を覗き込んでいた。「おはようございます、若様。昨日はよくも見せ場を奪った挙句、とんでも超人展開催してくれやがりまして、大感謝の次第です」と、皮肉交じりに言った。

しかし、真は満面の笑みを浮かべていた。「あれは試作型に過ぎない」と答え、「お前のおかげでようやく完成に辿り着いた」と感謝を述べた。

エリスは驚愕し、「試作型!? たった一晩で何を完成させたんだ!?」と叫んだ。そんな彼女に向かい、真は「後で森鬼の皆に、お前の功績としてバナナ一山送る」と言い残した。

「バナナ、一山っ!?」と目を輝かせるエリスを後目に、真は亜空へ戻るための準備を整えた。

彼はもう迷いはなかった。準備は万端であり、ついに狼との邂逅へと向かう時が来たのである。

MBSアニメ&ドラマ

4(アニメ第二幕12話)

森の探索と熊との遭遇

真は巴と澪を伴い、アガレスから報告のあった森へ向かった。途中で魔力体を展開してみたが、二人とも気づいた様子はなかった。改良が成功したことを確信し、内心で歓喜する。

森の入口で巴と澪を待機させ、真は一人で森の奥へ進んだ。アガレスの報告によれば、それほど奥深くない場所で狼の気配を感じたという。しかし、真には未だにその気配が捉えられなかった。探索に魔力を割くことも考えたが、狼に警戒される可能性を考慮し、そのまま進むことにした。

すると、突然森の中で獣と遭遇する。しかし、それは狼ではなく熊であった。真の前に堂々と現れ、無造作に近づいてくる巨体の熊。普通なら恐怖に駆られるはずの状況だが、真は動じることなく、熊の接近を受け入れた。至近距離で立ち上がる熊の巨大な体躯に見惚れながら、その毛皮にそっと手を触れる。

毛皮は驚くほど滑らかで柔らかく、アガレスの「恍惚とするような極上の毛皮」という報告に偽りはなかった。その感触に思わず圧倒される。しかし、熊は吠え猛り、鋭い爪を振り上げ、牙を剥いた。

魔力体による拘束と狼の気配

熊の攻撃が振り下ろされる寸前、真は魔力体を拡大し、熊を完全に包み込んだ。攻撃の意志を持つ動きには魔力がまとわりつき、そのまま拘束する仕組みである。熊は空気だった場所が突如として底なし沼に変わったような感覚に陥り、暴れながらも身動きを封じられた。

熊はなおも敵意を示し、逃げようとはしなかったが、その時、周囲の空気が一変した。緊張感が走り、張り詰めた気配が漂う。

「いるんだね、狼も」

真は森にいる狼に向けて語りかけたが、返答はなかった。代わりに、首筋を狙った鋭い攻撃が魔力体に阻まれた。アガレスの報告通り、その攻撃は恐ろしく速い。視線を向けた頃にはすでに影も残っていなかった。

続く連撃が魔力体に加えられる。もし魔力体が破られれば、熊も自由になり、一気に窮地に陥る。しかし、真は魔力体の再展開を先に詠唱して備えることで、万が一の状況にも対応できるようにしていた。

その間も真は反撃せず、ひたすら狼へ語りかけ続ける。

狼との対話と友人としての提案

長時間にわたる攻撃の末、突然すべての動きが止まった。次の瞬間、真の頭の中に威厳ある低い声が響く。そして、草を掻き分け、数頭の狼が現れた。その中の一頭、明らかに群れのリーダーと思われる狼がゆっくりと真に近づく。

「昨日も異様なまでの力の奔流を感じた。それもお前か?」

狼の言葉に真は肯定する。

「森に入らぬならと放置してきたが、お前はどうやらこの地の王たる一族のようだな。ならば我らもお前達を無視はできぬ」

しかし、真はこれを否定した。

「僕らはここに住んでいるけど、支配を望んでいるわけではない。君達やこの森を侵略するつもりもない。ただ、ご近所として挨拶に来たんだ」

狼は静かに聞き入るが、「この森を削り、恵みを持ち去る行為こそ強者の王としての自覚の現れではないか?」と指摘する。

真は即座に反論した。

「違う。この亜空は広い。僕たちは必要以上に森を損なうことはしないし、何か問題があれば相談してほしい。君たちと共存したいだけだ」

「……それほどまでに我らと対等の関係を望むか?」

「望む。僕は君たちと、友達になりたい」

狼は驚愕し、一瞬沈黙した後、笑い声を上げた。

森の盟約と新たな関係

突然、もう一つの声が割り込んだ。

「がはははは! これはもう笑うほかないな、狼の」

真が振り向くと、そこには先ほどの熊よりも遥かに巨大な熊が立っていた。その巨体は明らかに通常の熊の規模を超えており、二メートルを優に超える貫禄を持つ。

「この森の長が久々に戦うところを見物しようと思ったんだが、とんでもねえもんを見ちまったな!」

狼は真を見据えながら、改めて言葉を紡いだ。

「亜空の王、深澄真。我らはお前の厚意を受け入れ、友となろう。ただし、我らはお前の支配を受けぬ。この森は我らのもの。しかし、お前がこの亜空の王であることは認め、相談事には応じよう」

「もちろん!」

真は満面の笑みで応じた。こうして、狼たちとの間に新たな関係が築かれた。その瞬間から、この森は「狼の森」として聖域となり、以後、無断での侵入は厳禁とされた。

狼の本音と真の力の謎

真が森を去った後、狼と熊は森の奥深くに移動し、岩場で休んでいた。熊は真をあっさりと王と認めた狼に疑問を投げかける。

「お前ならまだ戦えただろうに、何故止めた?」

狼は静かに答えた。

「確かに、我はかつてなく強大な力を奴に向けた。しかし、その最中、我の力が際限なく高まっていくのを自覚したのだ」

「……ほぅ?」

「攻撃する度に、あの男が笑う度に、まるで何者かに力を与えられているかのように、我の力は増大していった。そして、気づいた。我はあの者に認められた瞬間、その力の一部になったのだと」

熊は神妙な顔で沈黙し、しばしの間、静寂が続いた。

「つまり、お前もあいつの支配下にある、と?」

「かもしれんな。しかし、今のところは我らに何の害もない。あの者が必要ならば、再び姿を見せるであろう」

狼と熊は夜空を見上げながら、これまでと変わらぬ風を感じていた。新たな王を認めながらも、日常はそのまま続いていく。彼らは、これからの変化を静かに見守ることを決めた。

木守柿の教えと柿狩り

真は巴とコモエを連れ、集落近くの森で柿狩りをしていた。しかし、巴とコモエは木になった柿を手当たり次第に収穫していたため、真は彼女たちを諭す。

「木守柿」という言葉を引き合いに出し、すべてを取り尽くさず来年の実りを願うこと、他の生き物にも恵みを残す考え方を説明した。日本ではこの習慣が古くから伝わっており、柿だけでなく山菜やキノコ採りでも同じ精神があると語る。

巴はその考えに感銘を受け、コモエと共に今後は木守柿を残すことを約束した。しかし、真の意図とは異なり、彼女たちは「一つだけ残せばよい」と解釈し、再び柿を取ろうとしたため、真は慌てて制止する。

柿の種類と好みの違い

巴とコモエは柿の品種について語り合い、目の前の木が「富有柿」に似ていると判断した。幹や葉の逞しさから、この木は神社などに植えられているものに近いと真は考えた。

さらに、柿の食べ方についても話が及ぶ。真はカリッとした食感を好み、巴は果肉が柔らかくなった頃を好み、コモエはスプーンで食べられるほど熟したものが好きだという。それぞれの好みがありながらも、干し柿は巴とコモエが好む一方で、真は甘すぎるため苦手だった。

また、収穫した柿の中に渋柿が混ざっていることが判明し、渋抜きを手伝うよう促される。コモエは意欲的に取り組むが、巴はしぶしぶと承諾した。

巨大な影と未知の存在

柿狩りを終えた一行は、突如として空が暗くなる異変に気付く。上空を覆う巨大な影に目を凝らすと、それは異常なほど巨大な鳥の姿であった。

その巨影は辺りを覆い尽くし、羽ばたきもせず空に静止していた。その威容を見た巴は感嘆しつつも、怒りを滲ませた声で「若の天を塞ぐ不敬は許せぬ」と発し、刀に手をかけた。

しかし、巴の言葉を遮るように、頭の中に声が響く。

岩鳥との対話

その声の主は「岩鳥」と名乗り、真を「王」と呼びながら挨拶に来たと告げた。先に狼が真と接触していたことも知っており、遅ればせながら謁見に来たという。

岩鳥は姿を変え、巨大な鳥の姿から文鳥ほどの大きさに縮小した。その姿を見た巴は、変化の能力を持つことから幻獣の類だと推測した。

岩鳥は、今後は真の統治する秩序に従い、空を監督する役目を担うつもりであると語る。しかし、真は「これまで通りで構わない」と答えつつ、なぜ初対面のはずの岩鳥が自分を王として扱うのか疑問を抱く。

岩鳥は「今は答えられない」としながらも、「狼は決して王に向けた牙を引っ込めはしない」とだけ告げた。その言葉に、巴は考え込むが、真はまだ自分の中で答えを見つけられずにいた。

岩鳥の名と新たな盟約

岩鳥は、真がふと口にした「ロック鳥」という名を気に入り、それを自らの名とすることを望んだ。真が了承すると、岩鳥は「これよりロック鳥と名乗る」と宣言し、巨大な姿に戻りながら遠くの山脈へと飛び去った。

その様子を見送った真は、「また従者が増えたような感じだな」とつぶやいた。しかし、巴はこれを否定し、従者とは真と契約を交わした者だけであり、ロック鳥はせいぜい臣下に相当すると主張した。

巴の言葉を受け、真は「確かに」と納得し、契約した巴・澪・識の三人だけが特別な存在であると再確認した。

帰路と新たな課題

帰路につく中、コモエは自ら柿の入ったカゴを持とうとし、器用に運んでいた。その様子を見た真は安心しつつ、識にロック鳥のことを話し、翼人たちに紹介する機会を作るべきだと考えた。

ロック鳥は落ち着いた性格をしていたため、翼人たちがパニックを起こすことはなさそうだった。しかし、それでもなお、亜空には未知の存在が多く潜んでいる。

真は改めて、この世界の奥深さを感じながら、帰路についた。

5(アニメ第二幕12話)

学生たちの再戦計画

ロッツガルドに戻った真を待っていたのは、エリスからの報告であった。ジンたちは、以前遭遇した亜竜にリベンジを果たそうとしており、それも真には秘密で進められていたという。

ジンたちは以前、レベル上げの最中に亜竜に襲われ、咆哮で全員が行動不能に陥り敗北していた。その際、エリスが助けに入り、樹を操って亜竜の動きを封じ、氷の槍で仕留めていた。

エリスによると、彼らは恥ずかしさもあって真に相談できなかったらしい。しかし、レンブラント家の姉妹もこの計画に加わっており、二人だけでも討伐に向かいかねないとライムから報告があった。

識もこの件を確認しており、レンブラント姉妹の成長について詳細を伝えた。シフは果ての荒野で魔族の女性に師事し、精霊魔術と属性魔術の合成を習得。ユーノは執事のモリスから格闘術を学んでいた。結果として、彼女たちはジンたちを凌ぐほどの実力を身につけていた。

亜竜の異変と新たな脅威

生徒たちの成長を確認した真は、彼らの挑戦を静観することに決めた。しかし、エリスが探知した情報が状況を一変させた。

エリスは試しに亜竜を探してみたところ、驚くほど簡単に見つかったという。そして、その亜竜は以前の湖の近く、二つ隣の水場に群れで集まっていた。

識はこの情報を受け、生息地を離れた地で二度も亜竜が発見されたこと、さらに単独行動が基本の亜竜が群れを形成していることから、ただの偶然ではなく何かの影響があると推測した。

真もまた、エリスが「あいつら」と複数形で語ったことに疑問を抱いた。亜竜は単独で行動するはずであり、群れでいること自体が異常だった。

エリスはジンたちが向かう場所と、亜竜の群れがいる場所をすれ違うように手配していた。しかし、真は万全を期すため、自ら亜竜の群れを討伐することにした。

識の調査と竜群王笏の影

識は以前ジンたちが遭遇した湖の周辺を調査し、奇妙な魔力の痕跡と大量の血痕を発見した。彼はこの痕跡が伝説の神器「竜群王笏」によるものであると推測する。

竜群王笏はかつてエリュシオン王国が護国のために用いた神器で、竜を呼び寄せる力を持っていた。しかし、エリュシオンの滅亡と共に行方不明となっていた。

識はこの事件の背後にロナの関与を疑う。彼女は魔王に忠誠を誓い、目的のためなら手段を選ばない人物であった。彼女なら竜群王笏を使い、必要な贄を調達することも躊躇わないはずだった。

しかし、今回の動きはあまりにも突発的で、ロナの狡猾さとは異なる点が多かった。そのため、識は真にも協力を求め、二人で証拠を突き合わせながら真相を追うことにした。

亜竜の討伐と魔力体の実戦

真は夜明けとともに行動を開始し、亜竜の群れを討伐するため水場へ向かった。彼はまず一匹を亜空を介してジンたちのもとへ転移させ、彼らの戦闘を観察しながら、残る群れを掃討することにした。

真は新たに習得した魔力体を活用し、視認できない拳で亜竜を次々と仕留めていく。亜竜のブレスや咆哮も、魔力体によって完全に防ぎ、攻撃を一切受けることなく圧倒した。

魔力体の強度が向上したことで、防御と攻撃の両面が強化され、戦闘効率が大幅に上がっていた。戦いの中で、真は魔力体の形状を自在に変えながら運用する技術を磨いた。

最終的に、真はすべての亜竜を討伐し、その素材を回収。澪の依頼でドラゴンの肉を熟成させるため、亜空へと転移させた。

生徒たちの成長と新たな課題

一方、ジンたちは転移させた亜竜と戦っていた。真は遠隔で彼らの戦いを観察し、その成長を確認する。

ジンは二刀流を習得し、ダエナは強化魔術の重ね掛けに適応。シフは強力な魔術を使いこなし、アベリアも精度の高い狙撃を見せた。

彼らの戦いは順調に進み、亜竜を撃破。戦闘後、ユーノは戦術についてイズモと語り合い、シフとアベリアは互いの成長を称え合っていた。

その様子を見た真は、生徒たちが確実に力をつけていることを実感し、満足げに観察を終えた。

こうして亜竜の討伐は完了し、ジンたちは無事に帰還。識は引き続き竜群王笏の調査を続け、真は魔力体の更なる習熟を目指すことになった。

学園祭を控え、すべての準備は整った。

魔族のレジスタンス

識が向かった洞穴には、魔王の支配に反発する魔族たちが潜んでいた。彼らは魔族ではあるが、魔王に忠誠を誓う者ではなく、反乱分子として活動していた。

洞穴内には戦闘の痕跡が残り、識が確認した時点で既に多くの魔族が倒れていた。生存者はおらず、識が知る限りの情報を引き出した後、全員始末された。だが、最も重要な竜群王笏はすでに持ち去られており、魔族領へと運ばれた後だった。

識は、この一件が魔族内の内紛である可能性を強く感じた。反魔王派の組織が神器のテストを行っていたことは判明したものの、詳細な目的までは掴めなかった。この地点で情報の糸は途切れ、さらなる追跡も困難となった。

魔王への影響と識の懸念

識にとって最も頭を悩ませる問題は、これをどう真に報告するかであった。

真は現在、ヒューマンよりも魔族に対して好感を抱いている。そのため、今回の事件を魔族の内紛として伝えれば、真の中で魔王の評価がさらに上がる可能性があった。そして、もし真が魔王に直接連絡を取るようなことになれば、その影響は計り知れない。

識はロナの意図を警戒していた。彼女は明らかに真と魔王を結びつけようとしており、もし二人が今出会えば、真はその強大なカリスマに大きく影響を受けるだろう。

識自身、真がどの勢力に与するかを決める時が来れば、それを受け入れる覚悟はあった。しかし、今はまだ時期尚早であると判断した。真には、より多くの経験を積み、慎重に選択できるだけの力と知識を身につけてほしいと願っていた。

隠された真実と識の決断

洞穴に沈黙が広がる中、識は決断を下した。

翌日、真に対して識が報告した内容は、術者が死亡したため追跡不可能、亜竜の異常行動は何らかの召喚系アイテムのテストによるものと推測される、という簡潔なものだった。

魔族の内紛については一切触れず、真の耳には入れないという選択をしたのである。

こうして識は、一つの真実を伏せたまま、学園が迎える新たな季節へと向かうこととなった。

クズノハ商会と真にとって、大きな転機となる秋が、すぐそこに迫っていた。

学園都市編
1(アニメ第二幕12話)

学園都市ロッツガルドの夏

ロッツガルドは世界中から優秀な学生が集う学園都市であり、その活気は辺境都市ツィーゲとは異なり「現代の街に近い」と評されるほどであった。平和で豊かな環境が整っており、魔族との戦争の影響もほとんど感じられない。

しかし、長期休暇期間には多くの学生が帰省し、街の賑わいがやや落ち着く。この時期には普段見かけない分校の生徒たちが街を訪れ、本校の臨時講義を受けるために集まる。分校からの「昇格」を目指す者もいれば、単に本校の教育水準を体験したい者もいた。

本校と分校の間には明確なヒエラルキーが存在し、本校の生徒は分校の生徒を見下し、分校の生徒は本校の生徒に羨望と嫉妬を抱いていた。この関係は長年続いており、学園の理念とはかけ離れた状況になっていた。

ジン一行の出発準備

本校の北門近く、七人の学生が完全武装の状態で装備の点検を行っていた。彼らの目的はレベル上げであり、今回は識が提案したルートを使用することになっていた。

リーダーのジンが皆の体調を確認するが、誰もまともに返答しない。隣で書類を整理していたアベリアは、転移陣の使用許可や地図を確認しながら、ジンの呼びかけに無関心な様子だった。

姉妹であるシフとユーノは、戦闘とは無関係な会話をしながらポーチの中身を確認していた。彼女たちの装備は中堅冒険者レベルのもので、学生としては破格の質を誇っていた。資金力のある家の出身であることは明白であった。

ダエナは妻子を持つ唯一の学生であり、彼らの帰省のために転移陣を利用したため、懐事情が厳しくなっていた。イズモやミスラは彼をからかいながらも、レベル上げの準備を進めていた。

ようやく全員の準備が整い、転移陣へと向かうことになった。

分校の生徒との衝突

転移陣の建物に到着したジンたちは、勢いよく扉を開けて飛び出してきた分校の生徒と衝突した。ジンは特に問題なく体勢を立て直したが、相手の方はよろめき、にもかかわらず「気を付けろ」と怒鳴る始末だった。

ジンたちは分校の制服の刺繍を見て、相手が戦士育成校のロパ、魔術師育成校のマズル、精霊魔術育成校のブリトーの出身者であることを把握した。分校の生徒たちは本校の生徒であるジンたちを敵視しつつ、レベルを尋ねた。

ジンたちはライドウの指導を受けた影響でレベルの概念に対して鈍感になっていたため、イズモが無邪気に「全員四十台」と明かした。しかし、分校の生徒たちはこれを本校の落ちこぼれと解釈し、自分たちのレベルが五十台後半であることを誇示し始めた。

「どっちが強いか、分かんだろうが!」と挑発する分校生徒に対し、ユーノは純粋に「私たちだね」と答えた。これに怒りを募らせた分校生徒は、街中にもかかわらず魔術の詠唱を開始し、戦闘態勢に入った。

ジンの圧倒的勝利

ユーノの提案でジンが一人で相手をすることになった。分校の剣士二人がスキルの詠唱を始めたが、ジンはスキルを使わずに接近し、一人の柄頭を押さえて抜刀を阻止し、逆手で柄を顎に打ち込んだ。もう一人も顔を鷲掴みにし、地面に叩きつけて戦闘不能にした。

後衛から放たれた矢もジンの剣で容易く弾かれ、魔術の詠唱もことごとく妨害された。剣士だけでなく、斧や鈍器を構えた分校の戦士たちも瞬く間に倒され、術師たちの魔法さえも剣で斬り払われた。

「嘘よ……」「こんなの、夢だ……」

戦闘が終わった頃には、分校の生徒たちは全員倒れ、呻き声を上げるばかりだった。

ジンは「こんな雑魚ども、疲れもしねえ」と呆れたように吐き捨て、仲間たちと共に転移陣へと向かった。

レベル上げの旅立ち

転移陣を通じて目的地へ向かうジンたちは、識が提案したルートでレベル上げを行う予定だった。彼らは、自分たちの実力が想像以上に向上していることに気付くことになるだろう。

しかし、その後訪れる湖畔での亜竜との戦闘が、再び彼らの自信を打ち砕くことになる。

この時、彼らはまだ知らなかった。自分たちを密かに見守る影が存在し、その存在が後に彼らの命を救うことになることを。

暑い夏の、一幕であった。

◇ジン ◇

ロッツガルドの夏休みと学園祭の準備

夏休みが終盤に差し掛かり、帰省していた学生たちが徐々に戻り始めていた。学園祭に向けた準備が本格化し、運営や研究発表、礼法の実演に携わる者たちが忙しく動いていた。ジンもまた、戦闘技術の習熟度を競う闘技大会への出場を見据え、鍛錬を続けていた。彼の心には、かつて亜竜に敗北した苦い記憶が今も棘のように残っていた。エリスの助けがなければ命を落としていたであろうその戦いを、彼は忘れられずにいた。

アベリアとの食事と相談

訓練を終えたジンは、アベリアに誘われて食事を共にすることとなった。寮での支度を済ませ、落ち着いた雰囲気のバー「ラヴィドール」へと向かう。食事と酒を楽しみながら、二人は互いの過去や目標について話し合った。アベリアもまた、亜竜に敗北した悔しさを抱えており、ジンの「再戦したい」という思いに強く共感した。こうして、二人は他の仲間たちにも相談し、再戦の準備を進めることを決意する。

仲間たちとの合流と決意の共有

店を出たジンとアベリアは、偶然にもダエナ、ミスラ、イズモの三人と遭遇した。彼らもまた、酒を交えながら夏休みの締めくくりについて語り合っていたという。やがて話題は亜竜との戦いへと移り、全員が同じ悔しさを抱えていたことが判明する。

「このまま夏休みを終わらせるわけにはいかない」

ダエナがそう口にしたことで、皆の意志は固まった。しかし、再戦のためには亜竜の居場所を突き止める必要があった。そこで、まずはエリスに相談し、最終的にはライドウに許可を得るという方針が決まる。

ジンの過去と強くなりたい理由

食事の席では、ジンの過去についても語られた。彼は閉鎖的な農村の出身であり、そこで出会った少女ミランダの影響を強く受けていた。彼女は村を守るために戦い続けていたが、ある日、魔物を討伐した直後にジンが放った「バケモノ」という一言によって、村を去ることになった。ジンはそれを後悔し続け、いつか彼女と肩を並べて謝るために強くなりたいと願っていた。

アベリアはその話を聞き、「それがジンの強くなりたい理由なのね」と静かに受け止めた。そして、仲間として彼の目標を支えることを誓う。

夏の終わりと新たな挑戦

亜竜との再戦を決意した仲間たちは、翌日からエリスを通じて情報を集め、準備を進めることになった。シフとユーノが戻り次第、すぐに出発できるよう手筈を整える。アベリアの指揮のもと、全員がその計画に賛同し、夏休みの最後を勝利で飾るべく、新たな戦いへと向かう準備を始めた。

エリスによる亜竜の捜索

亜竜の捜索を依頼したところ、エリスは即答で引き受けると答えた。ジンはライドウまで話が上がると予想していたため、拍子抜けしたが、望ましい展開であったため何も言わなかった。アベリアも同じく、識に迷惑をかけずに済むと安堵していた。

エリスは「その程度は朝飯前」と言い、依頼の翌日には亜竜を発見した。あまりの早さに、ジンたちは驚愕した。さらに、レンブラント姉妹が戻り次第、現地への転移まで手配すると申し出た。彼女の頼もしさに、ジンは思わず惚れそうになったという。エリスと行動を共にしていたアクアもこの話を耳にしたが、彼らの決意を汲んで不問にした。クズノハ商会の人々は、強くて格好良いとジンは改めて実感するのだった。

レンブラント姉妹の帰還と再戦の決意

翌日、タイミングよくレンブラント姉妹がロッツガルドに帰還した。すべてが順調に進んでいく中、シフの第一声は「あのトカゲはいつ狩りに行くのか?」という、再戦への強い意志を示すものであった。ユーノも隣で期待に満ちた様子を見せていた。

彼女たちもまた、ジンたちと同じ仲間であった。ツィーゲに帰省していた間も、ただ遊んでいたわけではなく、それぞれ鍛錬を積んでいたという。荒野にも出て実戦経験を積んでいたことから、二人は以前よりもさらに強くなっているようであった。ジンは彼女たちの成長を頼もしく感じ、いよいよ亜竜との再戦に向けて準備が整ったことを確信した。

2(アニメ第二幕12話)

決戦への準備と出発

ジンたちは装備と体、そして心の準備を整え、決戦の日を迎えた。西門でエリスと待ち合わせると、彼女は転移陣の担当者と短く話した後、ジンたちに向かって言い放った。

「今回は見守ってやらない。自分の尻は自分で拭いてこい、ひよっこども」

その言葉を残し、腰の辺りを軽く叩いた後、エリスは立ち去った。クールな対応に、ジンたちは気を引き締める。転移先は以前の湖畔ではなく、荒涼とした原野だった。土がむき出しで強風が吹きすさぶ場所に、亜竜は潜んでいた。

亜竜との遭遇と開戦

イズモが最初に亜竜の存在を察知し、距離を縮めながら慎重に接近した。シフも位置を特定し、風を操りながら最適なルートへ誘導する。奇襲は難しいが、慎重に準備を整えるのが当然だった。

アベリアが咆哮への対策を施し、ユーノは槍を主軸に戦うことを選択した。中衛と後衛はそれぞれ役割を確認し、ジンとミスラが最前線、ダエナが遊撃として配置された。

亜竜の警戒が強まり、気配を察知された瞬間、ジンは開戦を宣言する。アベリアの防御魔術が展開され、シフの火線が亜竜を襲う。イズモの魔術で全員の速度が強化され、戦闘が本格的に始まった。

連携と進化する戦術

ミスラとユーノが同時に斬り込み、ダエナが背後から攻撃を仕掛けた。亜竜は反撃を試みるが、後衛の支援が機能し、戦闘は順調に進む。シフの火炎魔術は亜竜に有効であり、彼女の成長が明らかだった。

しかし、亜竜は咆哮ではなくブレスを放とうとしていた。アベリアの警告を受け、全員が即座に退避する。だが、障壁は持ちこたえず、ブレスの炎が押し寄せた。その瞬間、ミスラが剣を振るい、炎を切り裂くと同時に吸収した。剣が紅く輝き、彼の固有スキル「ディ・バリエ」が発動したのだった。

ユーノとダエナも新技を繰り出し、イズモの魔術が亜竜の動きを封じる。シフの魔術が追撃し、アベリアの矢が亜竜の口を封じた。戦局はジンたちの完全優位に傾いた。

シフの一撃と勝利の瞬間

シフが精霊魔術と火属性魔術を融合させた大技を準備し、空中に巨大な岩塊を浮かせる。やがて内部が紅く染まり、熔岩と化した塊が亜竜めがけて落下した。

轟音と熱気が辺りを包み、衝撃が走る。イズモの障壁がギリギリで防ぎ切り、視界が晴れた時、亜竜は完全に絶命していた。

仲間たちは戦いの余韻に浸りながら、確かな成長を実感した。

戦利品の回収と帰還

亜竜の角や鱗を回収し、換金のため学園に戻ることを決めた。ミスラの固有スキルは強力だが、ダメージが後で襲い掛かる仕様であり、アベリアは驚きを隠せなかった。

ダエナは「ミスラに完全に抜き去られたかと思ったがギリギリセーフ」と安堵し、ジンは「自分だけ大したことがなかった」とぼやいた。しかし、ダエナは彼を「剣一本増やして戦うだけでバケモノだ」と評した。その言葉は、ジンにとって最高の褒め言葉だった。

こうして、ジンたちの夏は幕を閉じた。次は学園祭。さらなる成長を目指し、彼らの戦いは続く。

竜殺しと上位竜の同行

ヒューマンと魔族の勢力圏の狭間を、青髪の女と少年が歩いていた。女は背に巨大な剣を背負い、少年は武装すらしていない。この二人は保護者と子どもではなく、同じ目的を持つ同志だった。

「ライドウとの遭遇を除けば、順調に進んでいる」

御剣と呼ばれる少年がそう語ると、女――竜殺しのソフィアはわずかに目を細めた。ライドウへの言及に対し、御剣は「今のお前なら問題ない」と断言する。

彼らの次なる目的は、上位竜の討伐だった。ソフィアが次に狙うのは蜃と砂々波。御剣は帝国内に協力者がいることを明かし、準備は着々と進んでいた。

村を通過し、森へ向かう

道中、大きな村――ビルロアン村が近いと御剣が言ったが、ソフィアは寄るつもりはなかった。

「それより、お目当ての場所がある」

そう言い、彼女は進む方向を決めた。御剣はソフィアの土地勘に違和感を覚え、「以前来たことがあるのか」と尋ねる。ソフィアは昔、森で異形のキメラを狩ったとだけ答えた。

そのキメラはスペルハンドキメラ――術師の工房を守護する魔獣だった。ソフィアは幼少期にこの魔獣と死闘を繰り広げ、生死の境を彷徨ったのだった。

過去と工房の記憶

ソフィアは工房へ案内し、御剣は探索を開始した。彼が結界を解除し、内部へ消えると、ソフィアは静かに腰を下ろし、昔を振り返る。

――ミランダ・ブルガ。

それがかつての彼女の名だった。

親を知らず、村に拾われ、魔物と戦わされながら育った。村人からは恐れられ、力を利用されるだけの存在。それでも、戦うことに疑問は持たなかった。

ただ一人、彼女に寄り添った少年がいた。

彼もまた戦闘の才を持ち、村では異質な存在だった。ソフィアは彼とともに戦い、時折心の温かさを感じていた。しかし、工房での戦いが彼女の運命を変えた。

キメラとの戦闘中、ソフィアは己の秘めた力を解放し、異質な力に覚醒する。同時に、自身の素性も知ることとなった。工房で見つけた識別番号――それが彼女の真の名前だった。

ミランダ・ブルガではなく、ソフィア。

彼女は己の過去を断ち切り、己の存在を受け入れた。そして、新たな目標を見据えた。万色のルト――彼女の力の源であり、上位竜の長を喰らうこと。それが彼女の生きる目的となった。

上位竜狩りへの布石

やがて御剣が戻り、探索の成果を報告する。

「手がかりは得た。次はグロント狩りの準備だ」

しかし、その前に彼らは招集を受けていた。

「断れないものか?」

ソフィアは少し考えた後、了承した。

「いいわ。勇者とも遊べるかもしれないしね」

そう言い残し、二人は森を後にした。

学園都市が秋を迎え、学園祭の準備が進む頃、かつてライドウと戦った竜殺しもまた、新たな力を蓄えつつあった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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