小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 8巻」感想・ネタバレ

小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 8巻」感想・ネタバレ

どんなラノベ?

薄幸系男子の異世界成り上がりファンタジー! 

え?
そうだっけ?
薄幸系男子は頷けるけど、成り上がってるか?

そんな彼に惚れ込んだ人(?)達が織りなす異世界道中。

彼は穏便に事を運びたいのに、全てが大袈裟になってしまう。

そこが笑いどころ。

読んだ本のタイトル

#月が導く異世界道中  8
著者:#あずみ圭 氏
イラスト:#マツモトミツアキ  氏

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 8巻」感想・ネタバレBookliveで購入gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 8巻」感想・ネタバレBOOK☆WALKERで購入

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1巻から8巻までの流れ

普通に生活して寝たら。
いきなり両親の都合で異世界の女神に呼び出されて、顔がブサイクだから要らないと言われて見知らぬ土地にポイ捨てされた主人公。

荒野を彷徨っていたら、オーク(♀)と出会い、彼女を生贄に求めた上位竜を覚えたての魔法で倒して従者にする。

上位竜を配下にした結果、亜空と呼ばれる異空間を手に入れた主人公。

荒野で出会ったオーク達を亜空に移住させて彼等も配下に置く。

その直後、空腹で正気を失ってる災厄の黒蜘蛛がエルダードワーフを追って襲ってきたので撃退。

その結果、黒蜘蛛が正気を取り戻して従者になる。

上位龍を巴、黒蜘蛛を澪と名付けて、亜空の住民の投票結果で主人公は【若】と呼ばれる事になる。

その後にエルダードワーフ、巴の眷属ミスティオリザード、澪の眷属アルケーが合流して街を造る。
それでも人に会いたい主人公はベースキャンプ絶野に行くが、、

魔王のような魔力が駄々洩れのせいで魔獣と間違われて総攻撃されてしまう。

1ヶ月文字と魔力を抑える術を手に入れてベースキャンプ絶野に行くが、、、
ヒューマンは色々と悪どかった。

巴と澪が悪乗りしてベースキャンプ絶野は壊滅する。(1巻)

遂に大きなヒューマンのツイーゲの街に着いた一行。

そこで、呪病に苦しむレンブランドの依頼を目にして、彼の妻、娘2人を癒す。

そして、暗躍していたライムを懲らしめて配下に加える。(2巻)

レンブランドの家族を癒した薬の原料アンブロシアを手に入れるため、群生地に行ったらアンブロシアを守護している森鬼が襲って来た。

それらをアッサリと捕獲して、森鬼の村に潜伏していたリッチを秒殺で押さえ込んで、主人公の魔力を蓄積した指輪13個を彼に装備させ、下駄を履かせて3人目の従者にして終わる。

かなりイケメンの 主人公待望の同性の従者登場!(3巻)

そんな同性の従者と学園都市に行く途中で、主人公が転移魔法の使用中に突然戦場に拉致られた。

目の前には、大剣を振りかぶってる、王都攻略を目論むヒューマン最強のソフィア。

2人の勇者は連合軍を率いてステラ砦に進攻していたが、魔族の罠にハマってほぼ壊滅。

主人公、勇者達はそれぞれの戦場で何とか生き残る。(4巻)

突然戦争に巻き込まれ負傷してやっとたどり着いたのに、入学試験ではなく、臨時教員の試験だった。

その試験に主人公だけが合格して教職に就く。

週に1枠の授業を設けると、あまりのハイレベルな授業に上昇志向の強い数名しか残らなかった。

授業以外の日は店を開く準備をして、従業員を亜空から呼んで、、

来たのはアクエリアスコンビ。

波乱の予感しかないw(5巻)

ライムがとある組織に捕まった。

そこに図書館の書士であるエヴァも居た。

その原因は、冒険者ギルドのマスタールトの横槍。

そうなった原因は、かつての勇者の嫁であり、冒険者ギルドのギルドマスターなルト。

巴の知己で、主人公の事には興味津々。
それを威嚇する澪。

そして、店の名前で異世界人を保護する国。

ローレルに目を付けられる。(6巻)

葛の葉商会の存在感が増し、安価な薬品の秘密を知りたがる連中があの手この手で主人公に迫って来る。

そして、商人ギルド長からは輸送手段の技術を公表しろと高圧的に迫られ、金銭で解決しようとしたら売り上げの9割を寄越せと凄まれる。

そんな世間の荒波に打ちのめされた主人公は・・・(7巻)

あらすじ・内容

2021年TVアニメ化決定! 学園都市ロッツガルドの学園祭を彩る一大イベント、闘技大会決勝戦の直後、激闘を制した真の教え子達の前に、敗北したはずのイルムガンドが化け物へと変異して再び立ちふさがった。彼の変貌を皮切りに街は化け物で溢れ返り、壊滅の危機に瀕するロッツガルド。学園の講師である真は、事態の収束と原因の究明を目指し、従者と共に行動を開始した――。残念風雲児・深澄真、混迷を極める学都防衛に奔走する!!

月が導く異世界道中8

感想

試合終了後に対戦相手がバケモノに変身してしまう。

 それは街中にも発生し大混乱となる。

 街の兵士では歯が立たず、対応出来るのはクズノハ商会のメンバーのみ。

どうやら魔族の将軍ロナが仕込んだ罠が炸裂して人々が魔物に変わり、学園都市ロッツガルドが大混乱に陥る。

その混乱を自身の地位を盤石にするため、すぐ鎮圧できるが敢えてせず。

ある程度被害が出てから颯爽と鎮圧して復興にも協力する。

それによって葛の葉商会の軍事力を見せつけ、さらに物資調達能力、再建能力を認めさせる。

そして、住民の支持を得て、権力を盾に力を差し出せと言う既得権益層を黙らせる。

そんなエグい計画を主人公と従者達は企画する。

でも、目の前で殺されそうな人は全員助けるのが主人公らしい。

あと、アクエリアスコンビもやらかすw

女神アテネに教えて貰ったようで、聖闘士星矢のキグナスのような結界技を炸裂させるが、穴を掘ったら通れちゃったww

それに悔しがるエリスがツボ。

裏話

ざわめく闘技場の真

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備忘録

MBSアニメ&ドラマ

1(アニメ第二幕17話)

闘技大会の決勝戦と予期せぬ異変

決勝戦では、真の教え子たちであるジン、イズモ、ユーノが、リミア王国の貴族イルムガンド率いるチームと対決した。ジンたちは異世界の常識からかけ離れた戦闘スタイルで相手を圧倒し、イルムガンドはほとんど活躍できずに敗北した。最後の槍の一撃が彼の額を直撃し、意識を失ったことで試合は終わった。観戦していた巴と澪は、戦闘の内容に興味を持ちつつも、それを娯楽として捉えていた。

試合後の異変と異質な魔力

試合終了後、ジンたちは武器を構えたままイルムガンドを注視し続けていた。巴は、彼の体から異質な魔力が放出されていることを指摘し、澪もそれが過去の感情と結びつきながら増幅していると感じ取った。その魔力は「色付き」となり、水色を帯びた回復系の特性を示していた。真は、この異常な事態に対して介入するべきか迷っていたが、学園が運営する大会であるため、判断を保留した。

イルムガンドの変異と識の推測

やがてイルムガンドはゆっくりと起き上がり、ジンたちは本格的な戦闘体制に入ろうとした。しかし、アベリアの声に反応し、控え室へ武器を取りに走った。識は彼らの意図を見抜きつつ、イルムガンドの変異が既に手遅れの段階にあると指摘した。彼は長期間にわたり投薬を施されており、人ならざる存在へと変貌しつつあったという。識の分析によれば、これを計画したのは魔族である可能性が高かった。

魔族の関与と真の迷い

真は、学園都市ロッツガルドに潜入していた魔族たちを事前に退去させるよう、ロナに頼んでいた。そのため、彼は魔族が今回の事件の黒幕であるとは考えにくかった。しかし、識は、ロナが真の依頼を受け入れたとしても、明確に「ロッツガルドで何もしない」とは言っていないと指摘した。魔族が事前に計画を進めていた可能性は否定できず、ロナが真を試している可能性さえあった。

真の葛藤と従者たちの反応

巴は、魔族の行動を「面倒な連中」と評し、澪は真を利用しようとする者たちへの怒りを露わにした。従者たちはそれぞれ異なる反応を示したが、真は誰にも言葉を返せなかった。魔族との関係を築こうとしたものの、その判断が甘かったのではないかと自問した。そして、クズノハ商会がすでに大国や魔族の勢力圏内にあることを痛感し、自身の立場の不確かさに焦燥感を抱いた。

エヴァとの対話と驚愕の提案

闘技大会の終了後、真はエヴァと話す機会を設けた。彼女は学園の図書館司書であり、亡国ケリュネオンの復興を目指すアーンスランド姉妹の一人であった。彼はルリアには秘密にすることを条件に、エヴァにある提案を持ちかけた。その内容は、彼女の予想を遥かに超えるものであり、彼女の長年の思惑さえも揺るがすほどの衝撃をもたらした。エヴァは、真の提案が確かに自身の望みを叶えるものであると理解しつつも、それがアーンスランドの名とケリュネオンの運命を大きく変えてしまうものであることに動揺した。

この提案に対する決断の猶予は二日間。エヴァは、試合の観戦どころではなくなり、一夜を悩み続けることとなった。

街の混乱とアーンスランド姉妹の報告

エヴァとルリアが慌ただしく駆け込んできた。彼女たちは、街に突如として現れた怪物が各地で暴れており、ゴテツやクズノハ商会周辺も混乱に陥っていると伝えた。街の状況を知らせるために来たのか、それともこの会場が最も安全だと判断したのかは定かではなかったが、タイミングは絶妙であった。真は彼女たちの報告を受け、すぐに状況の把握と対処を決意した。

魔族への不信と真の決意

この騒動の背後に魔族の関与があることは明白だった。ロナが事前に魔族の撤退を約束していたにもかかわらず、こうした事態が発生したことで、真は彼女に騙されたと確信した。契約や約束がどうであれ、結果として魔族が関与している以上、今後は自らの手で問題を収束させることを決意した。信頼を一方的に寄せていた自分の甘さを痛感しながらも、今は冷静に対処するべき時であった。

アーンスランド姉妹の決断

真は、エヴァとルリアに改めて自身の提案を確認した。エヴァは即座に「アーンスランドの名も家も、ケリュネオンの地も差し出す」と答え、ルリアもそれに同意した。彼女たちに迷いはなく、過去を捨てて未来を託す覚悟を決めていた。真は二人の決断を受け入れ、必ず約束を果たすことを誓った。

イルムガンドの変異と識の分析

突如として、イルムガンドの体から絶叫が響き渡った。その姿は人間のものではなくなりつつあり、異様に伸びた首や灰色の肌が異形の怪物を思わせた。識は、彼の変異が周囲の仲間たちから魔力を吸収することで進行していることを指摘し、これが計画的に仕組まれたものである可能性を示唆した。巴もまた、この仕組みを利用すれば強力な怪物を量産できることに気付き、その危険性を警戒した。

対処方針の決定

真は巴に、亜空からモンドを呼び寄せ、ライムと共に街の騒動を鎮圧するよう指示した。また、変異体のサンプルを捕獲し、識が分析できるようにするため、樹刑の使用も許可した。識は、変異を元に戻すことは「不可能ではないが非常に困難で、気乗りしない」と述べた。真もそれを理解し、対処の優先度を変異体の制圧に置くことを決めた。

商会の立場と戦略

識は、商会の立場を考慮し、無償で街を救うことは避けるべきだと進言した。もしも完全に無償で救済を行えば、クズノハ商会は単なる便利な道具として扱われる危険性があった。巴もまた、街の住民が本当に助けを求めるまで待ち、絶望の中で救いを与えることで商会の影響力を高めるべきだと提案した。真はこの提案を受け入れ、慎重に行動することを決めた。

魔族との関係と今後の対応

真は、今回の件で魔族と完全に敵対するつもりはなかった。ケリュネオンを平和的に確保する意向も持っていたが、巴の調査によれば、現時点でケリュネオンの重要度はそれほど高くないと判断された。そのため、魔族側の動向を慎重に見極めながら行動する余地は残されていた。ロナが今後接触してくる可能性も考慮し、彼女の意図を探る必要があった。

イルムガンドとの決戦とレンブラントの来訪

舞台では、完全に変異したイルムガンドと、武器を手に戻ってきた学生たちが対峙していた。その様子を見守る中、レンブラント夫妻が真の元へと駆け寄ってきた。彼の心配そうな表情を見た真は、彼が何も知らないがゆえに心配していることを察した。巴は、その姿を見て僅かに嫉妬の念を抱きながらも、今回の騒動を商会の利益につなげるための動きを進めることを決めた。

ロナとイオの会話

ステラ砦での作戦会議の最中、ロナは席を立ち、砦の見張り台へ向かっていた。そこに現れたのは、砦に常駐するもう一人の魔将、イオであった。彼は、ロナが作戦会議を途中で抜けたことを指摘しながらも、その理由を察していた。ロナは、真との念話を交わしたことを明かし、ロッツガルドでの動向について話し始めた。

ロッツガルドでの状況と真への対応

ロナは、真が魔族の動きに気づいていたことを認めたが、彼との交渉は問題なく終わったと語った。真は、ロッツガルドに潜んでいる魔族の撤退を求めてきたが、それを受け入れたとしても、自身が何かを仕掛けることに支障はないと考えていた。イオは、真がただの交渉相手ではないことを理解しつつも、計画に影響が出ないかを確認した。ロナは、自分の動きは約束には含まれないため、問題はないと笑いながら答えた。

勇者との再戦と魔族の戦略

話題は、次の戦いへと移った。イオは、リミアの勇者ヒビキとの再戦に向けて準備を整えていた。彼は、勇者が成長していようとも、それを打ち砕くのみと語った。ロナは、女神の力を封じる指環について確認し、すでに初期試作型から中期試作型に更新済みであることを確認した。魔族は、この指環を使って勇者の力を無力化し、ヒューマンを荒野へと追いやる計画を進めていた。

魔族の策略とヒューマンへの罠

魔族は、指環の存在を意図的に一部のヒューマンに漏らし、それが女神の耳に入るよう情報操作をしていた。初期型の指環が使われたことにより、女神陣営が対策を練ることは予測済みであり、すでにその対策を無効化できる中期型を準備していた。さらに、魔族に味方する上位精霊から得た情報をもとに、女神がどのように対応するかを見極め、その上で計画を進めるという周到な罠を仕掛けていた。

魔族の策謀は着実に進行し、ヒューマンたちに牙を剥こうとしていた。

2(アニメ第二幕17話)

レンブラント夫妻との再会

レンブラント夫妻が真を探し、無事を確認した。真は申し訳なさを覚えながらも、夫妻の無事を喜んだ。レンブラントは冷静に状況を尋ね、真は異変とイルムガンドだった存在のことを伝えた。最初は落ち着いていたレンブラントだったが、娘たちが戦いに関わると知ると、途端に動揺し始めた。彼は娘を戦わせたくない一心で慌てふためいたが、奥方は冷静であり、真がいるなら最悪の事態にはならないと確信していた。

レンブラントの決断と商人ギルドへの出発

奥方の言葉でようやく落ち着きを取り戻したレンブラントは、商人ギルドへ向かう決意を固めた。混乱の収拾を手伝うという名目だが、彼の本心は不明であった。奥方も同行を申し出たが、レンブラントは彼女を留めようとする。しかし、彼女は自らの判断で行動を決め、共にギルドへ向かうことになった。真は二人の安全を考え、ミスティオリザードを護衛として召喚し、夫妻に同行させることにした。

ロッツガルドの危機と学園の防衛力

真が闘技場に戻ると、イルムガンドだった存在がさらに異形へと変貌していた。彼のチームメイトだった者は既に彼の餌となっていた。学園側の対応として、紫色の装備を纏った戦力が投入されたが、彼らは魔術師ばかりであり、実戦経験も乏しく見えた。さらに、イルムガンドは基本四属性のうち三つを無効化し、学園側の攻撃はほぼ効果がなかった。彼らは女神の祝福を受けたことで一時的に戦力を強化したが、結局、イルムガンドの突進により壊滅した。

街の状況と真の決断

巴と識の調査によって、ロッツガルドのみならず周辺都市でも同様の異変が起こっていることが判明した。転移陣や補助転移陣が破壊され、念話も一部妨害されていた。市街地では防衛戦力がまるで機能しておらず、未だに一体の変異体も倒せていなかった。このままでは街の防衛が崩壊する可能性が高かった。さらに、学園の戦力があまりに脆弱であることを確認した真は、クズノハ商会としての対応を決めた。

正義の味方としての介入

真は、巴に住民の救助と戦闘の指揮を任せた。さらに、来賓席の要人たちを守ることで商会の評価を高めることを狙い、自ら巴と共に行動することを決めた。来賓の安全を確保しつつ、クズノハ商会の影響力を広げる方針をとったのである。戦力としての暴力を利用することの重要性を認識し、商会の立ち回りをより戦略的に進める決意を固めた。そして、真は冷静な思考のもと、来賓席へと向かった。

3(アニメ第二幕17話)

来賓席での邂逅

巴が来賓席に足を踏み入れると、彼女の存在に注目が集まった。豪奢な調度品に囲まれたその空間で、学園長が巴を咎めたが、彼女は動じることなく、自らの目的を説明した。その際、彼女は一人の高貴な女性を見やった。巴の視線の先には、グリトニア帝国の皇女リリがいた。彼女が単独でいることに違和感を覚えつつも、真はその可能性を推測した。

さらに、真は背後からの視線を感じ、振り返ると銀髪の青年ルトがいた。彼は愉快そうに微笑みながら、真に向かって軽く手を振った。ルトの存在がこの場における状況を複雑にする可能性を考えつつ、真は周囲を見渡し、知り合いの顔をいくつか見つけた。

学園長との対峙

学園長は巴に名乗るよう求めた。巴は冷静に名を告げ、真を紹介した。筆談で挨拶した真は、臨時講師としての証明書を提示した。学園長は一瞬驚いたが、すぐにそれを認めた。巴は来賓の避難について提案したが、学園長は安全な場所の確保を課題とし、その誘導が困難であると主張した。

その言葉を受けた巴は、不敵に微笑み、転移による避難を提案した。しかし、学園長はそれを荒唐無稽な話だと一蹴した。転移魔法が一般的でないことを理解しつつ、真は巴の冷静な態度に何か策があると感じた。

ルトの介入と実験

その時、ルトが巴と学園長の会話に割って入った。彼は、転移の実験として自身を客席の一角に移動させるよう提案した。リリ皇女もルトの提案を支持し、学園長を説得した。ルトが転移に成功すると、来賓席の面々は驚きと感嘆の声を上げた。

ルトは巴の力を称賛しつつ、転移が刀の能力によるものだと推測した。巴はそれに同意するかのように頷き、刀の力として説明した。このやり取りによって、巴の刀に注目が集まり、学園長は言葉を失った。

来賓たちの決断

ルトの実験成功を受け、リリ皇女が真の行動を称え、支援を申し出た。これにより、多くの来賓が巴の提案を受け入れることとなった。しかし、一部の者はその場に残ることを選んだ。リミア王は、自らの責任として戦いの行方を見届ける意向を示した。

巴はまず避難を優先し、真に脇差を預けた。彼女は笑みを浮かべながら、霧の中へ消えていった。真は残された王たちの説得に向かうこととなった。

王家との対話とイルムガンドの真相

真は筆談を通じてリミア王と対話を始めた。王は、クズノハ商会の存在を把握しており、商会についての調査が進められていたことを明かした。その調査を担当していたのは、イルムガンドの父ホープレイズであった。彼は闘技大会に干渉していたが、今回の事態には関与していないと必死に弁明した。

リミア王は、イルムガンドが真に執着する理由を尋ねたが、ホープレイズもそれを理解していなかった。王は、国に戻った後に詳しく調査を行うことを決定し、ホープレイズに責任を問う意向を示した。

真の講師としての立場

王は、学園での戦いに加わっている生徒たちについて質問した。真は、彼らが自身の指導を受けた学生であることを説明し、ツィーゲの冒険者たちの戦闘技術を伝えたことを明かした。リミア王はその戦闘力に関心を示し、勇者がツィーゲの冒険者を連れてきたことに言及した。

その後、王は真に対し、自身をイルムガンドの元へ転移させるよう依頼した。王子はそれに強く反対したが、王は国の責任として直接対話する必要があると述べた。

転移と新たな局面

真は王の要請を受け入れ、王や護衛と共に舞台近くの観客席へ転移させる準備を整えた。騎士たちも無言で従い、王は感謝の意を示しながら霧の中へと消えていった。こうして、リミア王たちはイルムガンドと向き合う場へと導かれた。

4(アニメ第二幕17話)

来賓の観察と商会の影響

真は観客席に目を向け、先ほど転移させたリミアの来賓一行を確認した。彼らは静かに舞台上の戦闘を見守っていた。学園長、グリトニア、ローレル連邦、リミア、アイオン、神殿と、各国の権力者たちが無事に救出されたことで、真の頭には商会の名声が広がる可能性が浮かんだ。これまで商会を敵視していた者たちの後ろ盾を逆に抑え込む力として利用できるかもしれないと考え、思わず微笑んだ。

リミア王との対話

転移を終えてリミア王の元へ向かった真は、遅れたことを詫びた。リミア王はその必要はないと返し、転移の精度に感嘆の声を漏らした。彼の国でも転移技術には自信があったが、真の技術は次元が違うと評価し、後ほど詳しい話を聞きたいと述べた。しかし、今は戦闘の行方を見守ることを優先すると語った。

王の視線の先では、ホープレイズが沈黙していた。彼は唇を噛み、震えていた。イルムガンドの運命は既に決まっているかのように見えた。王子もまた、変異したイルムガンドを憐れむような声で語った。

ホープレイズの懇願

突然、ホープレイズが真に問いかけた。彼の目には隠しきれない敵意が宿っていた。「店で扱う薬の中に、息子を元に戻すものはないのか」と問い詰める彼に対し、真は慎重に答えた。識の分析を参考にしながら、変異の複雑さを説明し、通常の薬では治療が難しいことを伝えた。ホープレイズは言葉を失い、その表情には怒り、悲しみ、後悔が交錯していた。

戦況の分析と生徒たちの奮闘

リミア王と王子は戦況を冷静に観察していた。王は、学園の精鋭であるパープルコートを壊滅させたイルムガンドと戦えている学生たちの力量に驚いていた。しかし、戦力は拮抗し、決定打が見えなかった。

王は戦場の脇で指示を出している二人に気付き、真に彼らの正体を尋ねた。真は識と澪の存在を説明し、どちらも商会の重要な従業員であると述べた。また、生徒たちが自らの力で戦おうとしているため、二人には直接の介入を控えるよう指示していることも伝えた。

ホープレイズは真の言葉に怒りを露わにし、「息子を生徒の踏み台にするな」と声を荒げた。だが、真は冷静に、同じ学び舎で過ごした仲間だからこそ、イルムガンドが正気を取り戻す可能性もあると説明した。王はそれを評価し、ホープレイズを静かに諭した。

魔術的分析と戦闘の膠着

王子は、生徒たちが火属性のみで戦っていることに疑問を抱いた。真は、イルムガンドが土・水・風の三属性を無効化しており、唯一効果のある火を用いるしかない状況であることを説明した。また、生徒たちは本来持っている属性以外の術も学んでおり、それが戦術に活かされているとも述べた。

しかし、イルムガンドは周囲の魔力を吸収し、体力の回復能力も備えていたため、戦いは長期化していた。そこに、真の懸念が的中する事態が起こった。イルムガンドの腕が再生し、戦意を保っていた生徒たちにも動揺が広がった。

その時、識から念話が届いた。識は、イルムガンドを生徒たちが倒すのは困難であり、最悪の場合は識が介入すると告げた。また、観客席近くに別の変異体が出現したことを報告した。

観客席への脅威

騎士たちが急に警戒を強め、武器を抜いて後方へ駆け出した。彼らの視線の先には、観客席の出入り口付近に現れた新たな変異体がいた。それは異様な姿をしており、異常に発達した脚と巨大な頭部、鳥の嘴のような口を持っていた。その嘴には無数の牙が生えており、長い触手が頭部からうねっていた。

騎士たちは変異体と距離を取ろうとしたが、その怪物は突如として恐るべき速度で接近し、脇腹を鎧ごと噛み千切った。さらに、触手で別の騎士の身体を貫いた。王の護衛であるにもかかわらず、彼らは一瞬のうちに戦闘不能となった。

変異体は、次の標的として王へ向かって跳躍した。真はすぐに行動を起こそうとしたが、その前にヨシュア王子が立ちはだかった。彼は剣を抜き、王を守るために突撃した。しかし、相手の動きに対抗できる力は明らかになかった。

変異体の撃退と王子の正体

真は魔力の手を伸ばし、王子と変異体の間に障壁を作った。さらに変異体を弾き飛ばし、王子を抱えながら安全な位置へ移動した。だが、その際に奇妙な違和感を覚えた。

ヨシュア王子の衣服は衝撃で裂け、腹部が露わになっていた。そして、そこに触れた真の手は、予想外に柔らかな感触を得た。驚いて顔を上げると、王子は羞恥に染まった表情で「今は父上を守ることを優先してください」と静かに告げた。

混乱しながらも、真はすぐに変異体への対応に集中した。無詠唱のブリッドで牽制しつつ接近し、魔力を込めた拳で変異体の頭部を殴りつけた。勢いで吹き飛ばされた怪物を観客席に押し付けるようにし、最後の一撃として無属性のブリッドを放った。

変異体はそれを受けると内部から膨張し、最後には爆発して四散した。戦いは終わり、識が騎士の治療に取り掛かっていた。

新たな脅威の兆し

騒動が収束したかに思われたが、舞台上からこれまでにない絶叫が響いた。真は再び視線を向け、新たな異変に備える必要があることを悟った。

5(アニメ第二幕17話)

戦場の葛藤と仲間たちの奮闘

アベリアは識が負傷した騎士の治療へ向かうのを見送りながら、戦闘の行方を眺めていた。イルムガンドだった存在との戦いは想像以上に厳しく、仲間たちは迷いを抱えながらも懸命に応戦していた。特にジンは急所を狙わず、彼を無力化しようと試みていたが、敵の再生能力がそれを許さなかった。

澪は既に必要な助言を与え終えており、後は自分たちで何とかしろという姿勢を見せていた。その助言がなければ、パープルコートと同じ運命を辿っていたことは間違いなかった。アベリアは自らの不甲斐なさを噛み締めながら、戦況を見極めていた。

迷いと覚悟の狭間

イルムガンドは異形の力を得たことで、かつての学園時代よりも圧倒的に強くなっていた。アベリアは、彼を超えたと思っていた自分の成長が、一瞬にして無意味になったかのような喪失感を覚えた。しかし、その感情を表に出せば戦局が崩壊することも理解していた。

仲間たちもまた、それぞれの限界に近づいていた。ジンは本来の攻撃力を発揮できず、イズモも火属性の魔法に慣れておらず、徐々に魔力を失っていた。ミスラは前線を維持していたが、識の回復なしでは長くは持たない。ダエナとユーノは疲弊しながらも攻撃を続けていたが、イルムガンドは要所でそれを防ぎ、決定打には至らなかった。

シフは火属性の強力な魔術を準備していたが、長期戦に持ち込めば魔力の消耗で戦えなくなる。アベリアは、このままでは無力化など不可能であり、決着をつけるためには急所を狙うしかないと確信した。

イルムガンドの咆哮と戦況の転換

戦闘の最中、イルムガンドは突如として口を開き、異様な魔力を発した。アベリアは、それが亜竜の咆哮に似ていることに気付き、即座に防壁を展開した。しかし、その咆哮は仲間たちに威圧の効果を及ぼし、ジンやミスラを含めた前衛が硬直してしまった。

この瞬間、アベリアの中に残っていた迷いが完全に消えた。自らが戦局を変えなければならないと覚悟を決め、シフに魔術の付与を依頼した。シフは戸惑いながらも、高火力の火属性魔法をアベリアの矢に付与した。

決死の一撃

イズモの速力増加の魔法を受け、アベリアは一気に駆け出した。空中へ跳躍し、矢を番えようとしたその時、イルムガンドが放置されていた自身の腕を武器として投げつけてきた。予測不能な攻撃だったが、シフの精霊魔術がわずかに軌道を逸らし、アベリアは致命傷を避けることができた。

彼女は脇腹に激痛を感じながらも、矢を射ることに集中した。イルムガンドは両腕を交差させて防御しようとしたが、強化された矢はそれを貫通し、額から首へと深く突き刺さった。

戦いの終焉

イルムガンドの体が崩れ落ちるのを確認し、アベリアは勝利を確信した。しかし、その直後に父であるホープレイズの悲痛な叫びが耳に届いた。運命の皮肉を感じながらも、彼女の意識は徐々に遠のいていった。

浮遊の術が解け、脇腹の痛みが再び襲ってきた。落下する中、イルムガンドの断末魔の叫びが響き渡った。激しい爆発と共に、彼の姿は完全に消滅した。

アベリアは、その光景を最後に意識を手放した。

6(アニメ第二幕18話)

シェルターの護衛と情報収集

巴は、学園長の指示でリミア王国以外の来賓をシェルターへ避難させた。その後、彼らの護衛を名目に入口の警備を行っていたが、実際には各国の来賓の動きを探りつつ、商会のメンバーに念話で指示を送るための都合が良かったからである。また、真が各勢力に対してどのように動くのかを決めかねていたため、彼らと極力接触しないよう、シェルター内での滞在時間を最小限に抑えていた。

その場に姿を現したルト──いや、ファルスと名乗る男が現れると、巴は彼との会話を交わすことになった。彼は、現在の騒動の状況を尋ねると見せかけ、実は真についての情報を探っていた。

真の進む道と巴の見解

ルトは、巴が酒の力を借りてまで真の本心を探ろうとしたことをからかった。しかし、巴はすでに彼の胸の内の一端を知ることができたため、今はそれで十分だと答えた。

さらに、ルトは真がどのような道を選ぶかについて推測を述べた。勇者と共にヒューマンの希望となる道、グリトニアの狂気に身を委ねる道、ローレルの庇護を受け静かに暮らす道、さらにはツィーゲの独立や、果ては魔王に加担してヒューマン社会を滅ぼす道まで示唆した。巴はそれらを一蹴しつつも、真が自らの選択肢の多さに気付き始めていることを明かした。

ルトの警戒と真の潜在能力

ルトは、真が世界に干渉を始める段階に入ったのかと問うた。しかし、巴は明言を避け、彼の成長について話すに留めた。ルトは真が「化ける」可能性について興味を抱き、その変化を確かめようとする。巴は、真の精神的な変化は未だないが、能力の面では完全に開花したと断言した。

ルトは驚きを隠せなかった。彼にとって、真はすでに自分の相手になりうる存在だったはずだ。しかし、巴は「もはや戦いにはならない」とまで言い切った。それほどまでに、真は強大な力を手にしていたのである。

ヒューマンの切り札と女神の意図

ルトは巴に対し、ヒューマン側の「切り札」が動き始めたことを告げた。巴はそれを竜殺しのソフィアかと推測したが、ルトは否定し、女神に次ぐ特別な存在がいることを示唆した。その者は、女神でさえ扱えない属性を使いこなす特殊な血統を持つ者であり、今代の個体は特に優秀であるという。

ルトは、念話の傍受や転移の技術が各国に広まれば、魔族との戦争が長引くことを指摘しつつ、巴に転移の扱いを上手く収めるように求めた。巴は、情報の交換が済んだところで、彼を追い払うように退けた。

ルトの独白

シェルターを離れたルトは、壁に寄りかかりながら、真の成長について思索を巡らせた。巴の言葉によると、真はすでに自分を凌駕する力を持っている。しかし、それを知ったルトは恐れるどころか、むしろ歓喜していた。

彼は、真がやがて女神を討つ存在になりうると考え、彼の持つ不運は、実は信じられないほどの幸運なのかもしれないと呟いた。そして、彼の成長を間近で見届ける日を楽しみにしながら、不敵な笑みを浮かべた。

7(アニメ第二幕18話)

アベリアの決断と戦いの評価

アベリアがイルムガンドを討ったことを知った真は、彼女の決断に思いを巡らせた。識から無理をしないように伝えていたはずだったが、実際の戦いでは明らかに迷いがあった。特にジンの動きからは、イルムガンドを助けようとする意識が見え隠れしていた。最初から討つつもりで戦えば、もっと短時間で戦闘を終わらせられたはずだが、彼らはそうしなかった。そのため、戦闘の評価としては及第点を与えられなかった。

しかし、それでも彼らは生き残った。初めて命を賭した戦いを経験したことは、彼らにとって大きな意味を持つ。真は戦場に横たわるイルムガンドの亡骸と、疲れ果てた生徒たちを見つめながら、その現実を受け止めた。

リミア王の評価と王子の申し出

識が報告に訪れ、騎士の一人は救えたが、もう一人は手遅れだったと伝えた。リミア王は一人でも助かったことを喜び、改めて礼を述べた。さらに、生徒たちの戦いぶりを称賛し、彼らをリミア王国に召抱えたいとまで言った。その評価は生徒たちにとって朗報であり、彼らの未来を大きく広げるものであった。

一方、王子であるヨシュアは、後で話があると真に申し出た。真は、以前の接触時に生じた問題が関係しているのではないかと考えたが、詳しい内容はわからなかった。

ホープレイズ当主の沈黙と避難計画

ホープレイズ氏は、息子の亡骸の前で膝をつき、沈黙していた。無理もないことではあったが、彼の心情を察しながらも、今は避難を優先するべき時だった。

真はリミア王たちを安全な場所へ移動させようとしたが、王はまだこの街の住民を見捨てることに躊躇していた。しかし、真が学園長をはじめとする有力者たちがすでに指揮を執っていることを説明すると、最終的に避難を受け入れた。王子は、国境に待機しているリミア軍をロッツガルドへ派遣するよう手配を進め、王国の対応を急ぐこととなった。

その一方で、ホープレイズ氏は深い悲しみに沈み、真の支援を拒絶した。彼は真を憎々しげに睨みつけ、ふらふらと霧の中へと消えていった。

イルムガンドの最後の言葉

真は、イルムガンドが変異体として最期に放った叫びを思い出した。「俺はただ、謝りたかっただけなのに」。その言葉の意味を考えたが、今更どうすることもできなかった。謝罪したい相手がいたなら、もっと早く伝えるべきだったのに、と苦い思いを抱いた。

だが、その余韻を引きずる間もなく、澪が駆け寄ってきた。彼女の心配を受け、真は無事を伝えた。

生徒たちの戦いと今後の課題

識と澪の報告によれば、アベリアは魔術を矢に付与するという無謀な戦術を選び、何とか勝利を収めた。しかし、識がやるならともかく、アベリアでは五分五分で自爆だったという。彼女の憔悴ぶりからも、戦いの重さが伝わってきた。

真は戦闘後の生徒たちに近づき、ジンに声をかけた。ジンは自分の甘さを悔やみ、イルムガンドを殺す決断ができなかったことを苦しんでいた。真は彼に対し、「お前の長所でもある」と慰めつつ、今後の成長につなげるよう促した。

レンブラント姉妹にも声をかけ、両親が無事であることを伝えた。彼女たちは納得しながらも、どこか悔しさを滲ませていた。生徒たちは皆、戦う意志を持っていたが、今は休息を優先させるべきだった。

次なる動きへの準備

真は識と澪に生徒たちの避難を任せ、自身は巴と合流するために動いた。来賓たちと接触するのは避けたかったため、こっそりと状況を確認し、店の様子を見に行くつもりだった。

変異体の脅威はまだ終わっていない。戦いは長引く可能性が高く、次なる動きを見極める必要があった。

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8(アニメ第二幕18話)

クズノハ商会の崩壊と真の動揺

真は、自身が初めて持った店舗「クズノハ商会」が瓦礫と化している光景を前に、力なく崩れ落ちた。巴からは「屋号の看板だけを取り外し、建物は放棄した」と淡々と説明され、その合理的な判断に納得はしたものの、心の整理はついていなかった。商品はすべて亜空に収納しており、土地の権利も失われていないため、再建は可能であった。しかし、店が破壊された現実を前にすると、どうしようもない喪失感がこみ上げた。

周囲の建物も同様に破壊されており、火の手が上がっている場所もある。変異体の襲撃による被害は避けられなかったようだ。転移陣の影響を考慮し、店の無事をわずかに期待していたが、その淡い希望は完全に打ち砕かれた。溜息をつきながらも、再建を前向きに考えようと気持ちを切り替えた。

娼館通りの悲鳴と変異体の発見

その時、真は近くから複数の悲鳴を耳にした。場所を特定しようと耳を澄ませると、どうやら娼館通りの方向からのようであった。避難誘導がクズノハ商会の重要な役割の一つであり、破壊の跡がそちらへ続いている可能性を考えると、変異体がまだ付近にいる可能性もあった。

すぐに防具を速度重視に切り替え、瓦礫を避けながら悲鳴の方向へと駆け出した。その道中、魔族が変異体を使って学園都市を襲撃している目的について考えを巡らせた。変異体の暴走を完全にコントロールできているわけではないとしたら、この騒動には別の意図が絡んでいる可能性があった。

娼館での戦闘と変異体の正体

悲鳴の発生源に到着すると、そこは娼館であった。比較的建物の損壊は少なかったが、一角からは激しい音が響き続けていた。慎重に店内へ足を踏み入れると、そこには巨大なタコのような変異体がいた。

変異体に対峙していたのは、戦闘向きとは思えない小さな刃物を持った女性であり、その後方には怯える娼婦たちが身を寄せ合っていた。ほとんどの者が衣服を乱しており、中には布を巻いて裸を隠す者もいた。視線のやり場に困る状況ではあったが、まずは敵を倒すことが最優先であった。

変異体はすぐに標的を真へと変え、投石を試みた。しかし、その攻撃はすべて魔力障壁によって弾かれた。元冒険者を名乗る女性は、変異体の強さを警戒し、逃げる時間を稼ぐために自分が囮になると言った。しかし、真は娼婦たちを避難させる役割を彼女に任せ、自身が変異体を討つ方が合理的だと判断した。

変異体の投擲攻撃を軽く牽制し、その間に戦闘態勢を整えた。タコの異様な再生能力について情報を得た真は、無属性の術を連射し、変異体の動きを封じた。ブリッドを連射し続けた結果、変異体は壁に縫い付けられ、最後には体が異様に膨れ始めた。爆発の兆候を察した真は、周囲を土壁で覆い、肉片が飛散するのを防いだ。

やがて、大きな音とともに変異体は四散し、悪臭が立ち込めた。処理が完了したことを確認し、真は娼館の外へと向かった。

避難計画とスラムへの誘導

店の外には、助かったことを喜ぶ大勢の人々がいた。娼館の利用客も含め、多くの者が行き場を求めていたため、真はスラムへの避難を提案した。スラムの治安を危惧する声もあったが、クズノハ商会の影響力を示し、既に受け入れの準備が整っていることを説明した。

元冒険者の女性は、真の正体がクズノハ商会の代表であることを知ると、態度を変え、避難の説得を買って出た。彼女の名はエステルといい、商会の商品を利用したことがあるらしい。彼女の協力を得て、住民の避難が円滑に進むこととなった。

澪の静かな制裁

一方、闘技場では、澪が識や生徒たちと別行動を取っていた。彼女は変異体と化したイルムガンドの残骸を見つめ、その動きに僅かな「兆し」を感じ取った。そして、肉塊は再び蠢き始め、やがて人の形を成した。

イルムガンドの記憶を持ったその肉塊は、自らの過去と現状を嘆いた。そして、自らを響という勇者の盾とすることを決意し、戦う意志を示した。しかし、その言葉を聞いた澪は、冷淡な笑みを浮かべながら「制裁」と称して彼を討つことを決めた。

澪の攻撃は的確であり、肉塊の膝から下を切断し、再生を封じた。イルムガンドは、ライドウが自分を憎んでいるのかと問うたが、澪は「若様はお前に何の興味もない」と冷たく告げた。彼女がこの場で動いた理由は、あくまでも個人的な感情によるものであった。

イルムガンドの記憶を持つ肉塊は、最後まで抗おうとしたが、澪の攻撃によって徐々に崩れ落ちていった。彼の再生能力が機能しないことを確認した澪は、最後に「果たせぬ願いを抱いて消え去りなさい」と告げ、完全に息の根を止めた。

彼女はその場を後にする前に、「リミアの勇者が響とは、同名の娘も哀れなものですね」と呟いた。記憶にある「響」とリミアの勇者が同一人物ではないことを確認しつつ、軽く皮肉を漏らしながら、彼女は闘技場を後にした。

9(アニメ第二幕19話)

学園都市の混乱と通信妨害

学園都市の混乱は三日目に突入し、魔族の目的が不明なまま、変異体騒動は続いていた。初日は亜人のスラムで一夜を過ごし、その後、亜空で情報交換を行ったが、新たな情報はほとんどなかった。唯一、ルトが商会の転移手段に対して何か手を打つ予定であるという報告を受けた程度であった。

二日目には事態がさらに悪化した。まず、学園都市の通信ネットワークが完全に機能しなくなり、外部との連絡が途絶えた。通信の範囲が極端に狭まり、隣接する都市との情報交換すら困難になった。その原因は、都市内外に仕掛けられた魔術装置であった。識が調査した結果、装置はペットボトル程度の大きさで、事前には探知が困難だったことが判明した。魔族が長期間をかけてこの妨害工作を仕込んでいたと考えられる。

興味深いことに、魔族式の念話はこの妨害の影響を受けなかった。巴からは「この装置を壊したくても今は我慢してくれ」と言われたが、実際、クズノハ商会の者たちが唯一連絡を取れる状態になっており、利点が多かったため、破壊を控えることとした。

変異体の増加と避難所の危機

さらに、避難していた住民の中からも変異体が発生し始めた。これは、魔族が供給した薬を摂取した者たちが変異したためであった。無差別に薬がばら撒かれたのか、それとも特定の対象を狙っていたのかは不明であったが、学園都市に甚大なダメージを与える意図があったのは明白であった。

避難所の環境はストレスが溜まりやすく、不安定な精神状態が変異を促進した可能性もあった。念話が遮断されていることも、住民の不安を増幅させた要因となっていた。これを受け、イルムガンドがつけていた首飾りと類似した波長を持つアクセサリーを所有している者を特定し、隔離する措置を取ることとなった。

また、レンブラント夫妻が無事であることが確認され、商人ギルドは用心棒や傭兵を集めて変異体討伐部隊を編成していた。夫妻の影響もあり、守勢ではなく攻勢に転じた形であった。市街地では略奪が発生し、無事な店舗が標的となるなど、混乱が広がっていた。

夜の報告では、都市内の変異体の残存数が八十体程度であることが判明した。クズノハ商会の者がいなかった避難所では変異体が発生し、壊滅した場所もあった。学園は変異体討伐に集中しており、避難所の安全確保は後回しとなっていた。これにより、新たに変異が起こった場合、避難所内で自衛できなければ崩壊する危険があった。

学園側の戦力としては、パープルコートや一部の講師が部隊を編成し、学園長の指示で動いていたが、完全に制圧するには至っていなかった。しかし、戦況は少しずつ持ち直しつつあり、変異体の討伐効率が上がる兆しも見え始めていた。

転移に関する交渉と各国の援軍

各国からの援軍と軍隊の派遣は、最速で翌日に周辺都市へ到着し、その翌日には学園都市に入る予定であった。しかし、念話が使えないため、予定通り進行しているかは不明であった。

その中、巴にはお偉方から転移による兵員と物資の輸送を依頼する要請があった。巴とルトは転移の長距離移動には制約があると説明し、難しいと納得させた。また、転移の使用制限を口実にすることで、無理な要求を回避した。竜である巴の機転の良さが際立った場面であった。

巴の話では、この日からクズノハ商会も本格的に動き出す予定であった。この騒動が終われば、商人ギルドやリミアのヨシュア王子との交渉など、新たな課題が待ち受けていた。しかし、停滞している状況よりも、行動を起こせる方が気が楽であった。

亜人のスラムとヒューマンの関係

スラムの中では亜人とヒューマンの間の摩擦が少しずつ減少していた。スラムのまとめ役であるボウルは、ヒューマンの意識が大きく変わることはないと考えていた。彼らは女神に愛された種族であり、亜人を奉仕者と見なす価値観が根付いているため、騒動が落ち着けば元に戻る可能性が高いと語った。

しかし、一部の亜人は騒動をきっかけに新たな仕事を見出そうとしていた。ヒューマンとの利害関係を築くことで、単なる被害者で終わらずに未来を切り開こうと考えていたのだ。

学園都市への移動とエステルの提案

その後、真はアクアとエリスと共に学園へ向かうこととなった。エステルからは、回収した装飾品を今後も集めるべきか尋ねられ、学園での調査を待つように伝えた。また、娼館のボスにクズノハ商会のことを伝えておくと言われ、何らかの形で今後の利益に繋がる可能性が示唆された。

学園長との対面と北東区画の討伐任務

学園に到着した真は、学園長に厳しく叱責された。学園の戦力として期待されながら、住民の避難に奔走していたことが学園長の不興を買ったのであった。しかし、リリ皇女と彩律の介入により、学園長の怒りは鎮まり、最終的に北東区画の変異体討伐を任されることとなった。

その後、レンブラント夫妻がいる商人ギルドを訪れ、彼らと合流することとなった。クズノハ商会としての役割を果たしながら、騒動の鎮圧に動き出す決意を固めた。

学生寮の様子とジン達の決断

学生寮では、生徒たちが疲弊していた。識の報告では、変異体が発生した影響で、学生たちのストレスが限界に達していたという。特にジンやレンブラント姉妹、ダエナは外へ出て戦いたいという意思を見せたが、真は彼らを説得し、学生寮の防衛を任せることとした。

また、識はすでにダエナの家族を安全な場所へ匿っており、事前の対策が功を奏していた。真は識の機転に感謝しつつ、商人ギルドへ向かうため、澪や巴と共に学園を後にした。

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反撃の開始

こうして、変異体討伐の主導権を握るべく、真たちは行動を開始した。三日間の混乱の末、クズノハ商会の本格的な動きが始まり、学園都市の戦況に影響を与える転機が訪れようとしていた。

変異体の殲滅戦

ギルドへ向かう道はまさに殲滅戦となった。澪と識が変異体を次々と蹴散らし、巴と真が会話を交わしながら進軍した。識は変異体の顎を食いちぎるような勢いを評し、復讐の女神の裁きを持ち出したが、真がその解釈を訂正し、話はカラシニコフへと及んだ。

道中で討伐した変異体の数は十五体に及び、識の感知ではギルド付近で商人ギルドの部隊が交戦中であることが判明した。北東区画の変異体の残存数は六体であり、ギルドに到着するのが先となりそうだった。

途中、巴がリザードマンとレンブラントの出迎えを告げた。澪にギルドの代表には手を出さないよう釘を刺しつつ、ギルドへと進んだ。

商人ギルドでの再会

ギルド前でレンブラントとギルド代表ザラと合流した。レンブラントは真を見るなり抱きつき、娘たちが戦闘に巻き込まれていないかを確認した。真は彼に安心するよう伝え、娘たちは安全な場所にいることを報告した。

ザラは真の店が無事か尋ねたが、すでに破壊されていたことが伝えられた。避難所での混乱を考え、代表も予想外に穏やかな反応を見せた。しかし、街の惨状を前にした彼の疲労は濃く、従来の図太い性格とは異なる姿を見せた。

レンブラントはザラが変わったことをからかいながら、学園の部隊の対応が遅れた理由を真に問うた。真は避難所の安全確保を優先し、学園長の命令で討伐に参加することになった経緯を説明した。

その後、商人ギルドの被害状況が明らかとなり、店や商品はほぼ壊滅状態であることが伝えられた。兵力不足が深刻で、金はあっても雇える傭兵が尽きかけている状況だった。

討伐の計画と巴の派遣

真はすでに十五体の変異体を討伐しており、ギルド周辺にはあと九体が残っていることを識が報告した。学園が変異の原因となる装飾品を特定したため、それを回収するために巴をギルドに残すことを決定した。レンブラントとザラも協力を約束し、ギルド内部の混乱を抑える対策を進めることになった。

討伐を続行するため、真たちはギルドを後にし、北東区画へと向かった。

澪と識の競争

真は澪と識に討伐の競争を持ちかけた。交戦中の変異体は三人で処理し、残りの六体を二人で競い合う形を提案した。勝者には真がお願いを一つ聞くという条件を付けたことで、二人は意気込んで討伐へと向かった。

レンブラントとザラの会話

真たちが去った後、レンブラントとザラは商人ギルドの状況について話し合った。ザラはクズノハ商会の実力に驚き、十五体もの変異体を軽々と倒してきた事実に戸惑いを隠せなかった。レンブラントは彼らの実力を高く評価し、クズノハ商会がツィーゲの発展に寄与していることを語った。

ザラはクズノハ商会の存在を異常だと感じ、商売の常識を覆す彼らのやり方に不安を覚えた。レンブラントは、彼らを敵に回すよりも利用する方が賢明だと主張し、ザラに協力を促した。

二人の会話は過去の戦争にも及び、それぞれが命のやり取りを経て商人として成り上がった経緯を振り返った。最終的にレンブラントは、クズノハ商会の行動が未来の商売の在り方を変える可能性について語り、ザラにその影響を見極めるよう勧めた。

真の帰還と新たな動き

三十分後、討伐を終えた真がギルドに戻ってきた。彼の姿を見たザラは小さく「クズノハ商会か……」と漏らし、それを聞いたレンブラントは満足げに笑った。

10(アニメ第二幕19話)

討伐完了と次の指示

北東区画の変異体を殲滅し、商人ギルドで巴と再合流した後、学園のシェルターにある司令室へ定時報告を行った。真は直接話さず、識が学園側と交信し、次の行動指示を受けた。学園の指示により、次の討伐対象は北西区画となり、併せて念話障害の原因調査を行うことになった。日没頃には学園へ戻り、状況報告を行う手筈が整えられた。

北西区画への進軍

北西区画は低所得層の住宅街と職人の仕事場が多く存在する地域だった。識の分析によれば、学園側は富裕層や学園施設の解放を自力で成し遂げ、影響力を確保しようとしている可能性が高かった。また、学園長の失脚は確実視されており、次の権力争いを見据えた動きが表面化していた。しかし、学園の主力部隊が壊滅的被害を受けたことで派閥争いすら満足に進められず、学園の対応は混乱を極めていた。

商人ギルドへの牽制と物資提供

巴はギルド代表のザラに対し、大量の食料と水、寝具を提供した。施しを商人ギルドの名義で行うことで、商会の影響力を抑えつつ、結果的にクズノハ商会の存在感を示す策を取った。物資は事前に別の街で調達したもので、亜空の食料は極力使用せず、一部の果物だけを混ぜることで商会の関与を明確にした。巴は商人ギルドに「クズノハ商会の名を出すこと」と「余計な詮索をしないこと」を条件に援助を提案し、ザラはこれを受け入れた。

転移の公然化と交渉術

巴は商人ギルドの代表に対し、物資を目の前に積み上げることで交渉を有利に進めた。転移を利用した仕入れはすでにザラに伝えており、ギルド名義での施しである以上、問題視されることはないと判断した。さらに、ザラが「知らないふり」をせざるを得ない状況を作り出し、公然の秘密として扱わせることで、情報統制を逆手に取る交渉術を駆使した。

澪と識の競争と巴の反応

討伐の効率を上げるため、真は澪と識に競争を提案した。変異体の討伐数を競わせ、勝者には真が一つ願いを叶えるという条件を提示した。結果は澪の勝利となり、彼女は明らかに上機嫌だった。一方、巴はこの競争の賞品を知ると強く反応し、自身も参加を求める姿勢を見せた。真は彼女をなだめながら北西区画へ向かった。

北西区画の戦況とライム、モンドの活躍

北西区画ではライムとモンドが変異体の討伐を進めていた。モンドは森鬼の能力「樹刑」を駆使し、変異体を樹木に変えることで迅速に処理した。二人は職人街や避難所の安全を確保しつつ、討伐を続行していた。すでに八体を討伐し、周辺の避難所も適切に管理されており、住民のストレスは他の区域よりも低く抑えられていた。

変異体を送り込んだ者の目的は不明であり、真がこの街にいることを知りながら無意味な攻撃を仕掛けているようにも見えた。ライムとモンドはその意図を測りかねながらも、クズノハ商会の一員として忠実に討伐を続けた。

学生寮の危機とアクア、エリスの対応

学生寮は避難所として利用されていたが、澪と識の不在により不安が広がっていた。ジンらが護衛役を務めていたものの、変異体と戦えるほどの実力を証明する機会はなく、生徒たちの不安は拭えなかった。その中で、護衛を任されていた森鬼のアクアとエリスは学園長の動向を察知し、学生寮を守るための策を講じた。

エリスは学園長が生徒たちを動員しようとしていると直感し、寮ごと防衛する手段を提案した。アクアは彼女の突飛な発想に反対したが、最終的にエリスの術式に巻き込まれる形で協力せざるを得なくなった。二人は大規模な防衛魔法「献花氷牢」を発動し、学生寮を氷の檻で覆った。

学生寮の封鎖と脱出の問題

防衛魔法は成功し、学生寮の安全は確保された。しかし、エリスは重大な問題を見落としていた。それは「自分たちがどうやって脱出するか」という点である。アクアはその事実に気づき、エリスに詰め寄ったが、すでに術は発動しており、修正は不可能だった。こうして、アクアとエリスは学生寮ごと封鎖され、事実上の「軟禁」状態となった。

モンドがこの事態を知れば、確実に天を仰ぐことになるだろう。

学生寮の異変とモンドの謝罪

モンドは学生寮の方角に輝く氷のピラミッドを目にし、すぐに真の前に出て跪いた。その異変を察知した彼は、学生寮の異常を報告しに駆けつけたのだった。真たちが北西区画の掃討を終え、学園に戻る旨を念話で伝えた際、学生寮が突如氷に包まれ、誰も手出しできない状況に陥っていると知らされた。念話の相手は動揺し、調査を依頼してきたが、寮内の状況が把握できないため、何の手も打てない状況だった。

モンドはその報告を聞くなり、同行を申し出た。ライムが残留することで北西区画の安全は確保されると判断した真は、彼の同行を許可した。しかし、モンドが責任を感じているのは、学生寮の異変がアクアとエリスによるものだと察したからだった。

氷の結界と学生たちの隔離

試しにジンやアクア、エリスに念話を送るも、すべて遮断されていた。この氷の結界は、エリスが誇らしげに「完全なる隔離結界」と自慢していた術だった。物理的にも魔術的にも極めて強固で、巴や澪が相手でも容易には破壊できないものだった。しかし、披露した翌日には欠陥が見つかっていたものの、真はアクアの苦い経験を思い出し、それを指摘することは控えた。

彼は結界を施した理由を推測し、学生たちを統率するのが難しいため、あえて隔離した可能性が高いと判断した。識も食料が数日は持つと説明し、大きな問題にはならないと見ていた。

モンドの責任感と真の判断

モンドは深く頭を下げ、責任を感じていたが、真は彼に「責任ではない」と諭した。そして、モンドがライムの元へ戻るよう促した。しかし、彼は食い下がり、最後まで同行を希望した。そこへ巴が楽しげに口を挟み、モンドに「彼の罰は任せるが、森鬼の者たちには褒美を与えろ」と告げた。その言葉にモンドはようやく納得し、ライムの元へ戻ることとなった。

結界の扱いと学園の動向

結界を破壊するかどうかを話し合う中で、澪、識、巴の三人は破壊に反対した。澪は「無駄に堅くて面倒」と言い、識は「学生を戦いに駆り出されるのを防げる」と主張し、巴も「数日間はそのままで問題ない」と判断した。真も、アクアとエリスが寮内に留まったまま結界を展開していることを考え、事情を確認することにした。

識の話では、学園の主導で北西区画の解放や施しの継続が進められる予定だった。どの国が最初に援助を送るか不明だったが、それらの作業が移行すれば、クズノハ商会の仕事は終わる見込みだった。巴は、復興支援については元々この街にいた者たちに任せ、ルトがどのように交渉をまとめるかを見守るべきだと考えていた。

商人ギルドとの駆け引き

商人ギルドからの呼び出しが次の問題となったが、レンブラントは動くつもりがないようだった。巴はザラ次第では楽に済むと考えていたが、真は「ザラは厳しい人物で、楽観できない」と警戒していた。しかし、巴はザラが「非常時における流通手段としてクズノハの転移輸送を確保したいと考えるはず」とし、状況を利用する姿勢を見せた。

澪もまた「恩には恩を、仇には仇を」と語り、協力する相手には支援を惜しまないが、敵対する者には容赦しない考えを示した。識は「この事件を通じて、学園や商人ギルドも戦争の現実を理解せざるを得ない」と見通し、学園側が独自に魔族の関与を突き止めるよう仕向けたと説明した。

魔族の関与とクズノハ商会の立場

澪と識は、回収した装飾具の一部に細工を施し、それを学園側が解析することで魔族の関与を明確に示す証拠とした。これにより、学園が独自に魔族の仕業だと突き止め、報告する流れを作った。しかし、真は「クズノハ商会の魔族との関係も疑われるのでは」と懸念を示した。

識は「事件後の街の状況を見れば、そんな噂は通用しない」と断言し、澪も「この状況でなおクズノハ商会を疑う者がいれば、その話を街に広め、逆に相手を窮地に追い込む手もある」と提案した。巴は楽しげに笑い、「もし商人ギルドが圧力をかけてくるようなら、首をすげ替えればよい」と冷徹に語った。

学園への帰還と今後の展望

学園が見えてきた頃、真は「今日で変異体の数を半分ほど減らせた」と確認した。そして、明日、明後日にはこの街でクズノハ商会がどのような立場になっているかが明らかになると考え、歩みを進めた。

11(アニメ第二幕19話)

氷の結界とエリスの暴走

学園は突如現れた氷のオブジェの影響で騒然としていた。巴はルトの動向を確認するため学園へ向かい、澪と識も同行して時間を稼ぐことになった。一方、真は結界の内側へ入り、エリスとアクアがこの術を使用した理由を聞くために行動していた。

主犯がエリスであることは明白だったが、彼女は屋根の上で膝を抱え込み、床を指でなぞるようにして項垂れていた。アクアもまた困惑しつつ、真の突然の侵入に驚いていた。エリスが気づいていた通り、彼は地中を通って内部に潜り込んでいたのだった。

エリスは当初、説明を拒んだが、真が冷静に問いかけると、ついに口を開いた。彼女は「変異体の動きが時折組織的になっている」と述べ、網を張ることで豪勢な家々が集まる区域に指揮を執る存在がいる可能性を示唆した。アクアはその情報を知らされておらず、少し動揺していた。

変異体の統率と富裕層への危機

エリスの観察によると、何者かが特殊な道具を用いて変異体を不完全ながら統率しているという。彼女が指し示したのは、学園が最も力を入れている富裕層の居住区域だった。巴たちはこの区域にあまり手をかけていなかったが、手っ取り早く支持を得るには有力者たちに好印象を与えるのが一番の方法だったはずだった。

しかし、巴が意図的にこの区域への関与を控えていたことを考えると、単なる後回しではない理由があると真は推測した。エリスは「富裕層が危険にさらされるぷろせす」と述べ、そこに変異体が集結しつつあることを報告した。

結界の解除とアクアの反応

真はエリスの報告に感謝を伝えつつ、彼女の目的についても確認した。エリスは「学園長の手に生徒が渡るのを防ぐための緊急措置」だったと説明し、アクアの暴走は許してほしいと懇願した。しかし、真は特に怒っているわけではなく、むしろ彼女たちを外へ連れ出す提案をした。

アクアはそれを断り、結界の解除まで寮に留まる意向を示した。彼女はモンドの存在を意識しており、外に出たくないという事情があるようだった。真はその点を察し、彼女の判断を尊重した。

彩律との対話と各国の動向

結界を抜けた真は、学園の中庭で彩律と対面した。彼女はやや疲労の色を見せながらも、真に対して学園の動向と各国の意向について語った。ローレル、リミア、グリトニアといった主要国が今回の事件を重大視しており、クズノハ商会の介入を既に察知していることを示唆した。

彼女はまた、「念話の回復を出来る限り早急にお願いしたい」と要請し、それに対する謝礼も用意する考えを示した。真は即答を避け、巴と相談した上で対応すると伝えた。

巴とルトの策謀

一方、巴とルトは念話の回復と事件の裏に潜む存在について話していた。巴は富裕層の救出を後回しにしていた理由について、「彼らが減ることで復興がスムーズになること、そして不満を発散させる必要があるから」と語った。また、魔族と協力関係にある者が今回の事件に関与している可能性を指摘し、澪がその排除を担当することになっていた。

巴はまた、「魔族に協力する者を真に見せるには時期尚早」と考え、事前に処理するつもりでいた。ルトはその判断を面白がりつつ、巴の策略を評価していた。

念話の復旧と魔族の装置の破壊

真は念話の復旧について巴に確認を取り、巴は問題ないと判断した。しかし、ルトは「運命というものを感じる」と意味深な発言をした。そして、その直後、空に光の球が上がり、街全体を覆うように炸裂した。それは真が念話の妨害装置を破壊するために放った術だった。

ルトは「魔族が数ヶ月かけて仕込んだ装置が、一瞬で破壊された」と苦笑し、巴もまた「若は一芸を極めるタイプだ」と感心していた。こうして、念話の回復は成功し、街の状況も大きく動くこととなった。

エリスの失敗と隔離結界の終焉

一方、結界内ではアクアとエリスが落胆していた。エリスは「完全なる隔離」と誇っていた術が、真の掘った地下道によって簡単に突破されたことを知り、嘆いていた。アクアも「二度と手伝わん」と呆れ、結界術はその日をもって封印されることとなった。

12(アニメ第二幕19話 20話)

彩律の動揺とライドウの評価

彩律は、念話の妨害が解除された瞬間に広がる光景を目の当たりにし、冷や汗を流していた。魔族が仕掛けた高度な術式を、ライドウが「できればやってみます」と言っただけで解決してしまったことに驚愕していた。

彼女は、ライドウの力を改めて分析し、その能力の異常性を認識した。変異体を容易く駆逐し、魔族の仕掛けを打ち破る知識、さらには彼の従者・巴が持つ転移能力を備えた剣。これらが組み合わさったとき、国を滅ぼすほどの力を持つと判断した。

そのため、ライドウの取り込みを強引な手段ではなく、情を利用する方法に切り替えようと決意した。彼を懐柔し、ローレルに呼び込むことを第一に、他国との接触を減らしながら親しみを持たせる策を考えるべきと結論づけた。

魔族の影響とローレルの危機感

彩律は、魔族がどのような手段で念話を妨害したのか分からず、ヒューマンには理解できない魔術か、長い時間をかけた計画によるものかと考えていた。しかし、それをいとも簡単に打破するクズノハ商会の存在が、彼女の想定を超えていた。

ライドウの力が、もし特定の亜人種に肩入れする形で振るわれたらどうなるのかを想像し、彼が新たな亜人国家を生み出し、ヒューマンの大国と並ぶ五大国の形成を許す可能性を恐れた。それどころか、彼が魔族側についた場合、世界が統一されるかもしれないという悪夢すら浮かんだ。

彼女は、ライドウを刺激することが如何に危険かを理解しつつも、ローレルの未来を守るためにどのように動くべきかを模索していた。

緊急事態の報告と学園都市の混乱

そんな中、彩律の元に部下が慌てた様子で駆け寄り、シェルターへ戻るように伝えた。彩律は戸惑いながらも部下の後を追い、学園都市のシェルターに戻ると、そこには緊迫した空気が漂っていた。

リミア王は荒々しく指示を出し、王子と騎士が忙しく動いていた。グリトニアのリリ皇女も部下に指示を与えつつ、苛立ちを隠せない様子だった。

彼らの焦燥感が尋常でないことを察し、彩律は直接二人に尋ねた。「何が起こったのか」と。

王都と帝都への襲撃

リミア王とリリ皇女から告げられたのは、衝撃的な事実だった。

「魔族が王都と帝都を襲撃した」と。

彩律は一瞬息を飲んだ。変異体事件が魔族の策略であることは分かっていたが、それがただの陽動であり、本命がリミアとグリトニアの首都襲撃だったことを知り、言葉を失った。

リミア王は「ライドウの力を借りなければならない」と述べ、リリ皇女もまた彼の転移能力を利用し、急ぎ帝都へ戻る必要があると語った。

彩律は、戦況の急変がローレルにとっても悪影響を及ぼすことを悟った。リミアとグリトニアが崩れれば、次に前線となるのはアイオンとローレルである。さらに、巫女チヤが王都で戦っていることを知り、焦りを隠せなくなった。

彼女は、変異体事件そのものが魔族の囮だった可能性を指摘し、王と皇女も同意した。援軍を学園都市へ送ることで戦力を分散させた上で、王都と帝都への奇襲を成功させるための計画だったのではないかと考えた。

ライドウへの交渉と緊迫する場面

状況を整理した王と皇女は、シェルターの入り口でライドウの到着を待つことにした。そしてついに、巴、識、冒険者ギルド長ファルスを伴ったライドウが現れた。

「ライドウ、話がある」
「とても大事な話です」
「先ほどに続いて恐縮なのですが」

王と皇女、そして彩律は、切迫した声でライドウに呼びかけた。ライドウは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに表面上は落ち着きを取り戻し、彼らの前へと進み、一礼した。

彼が状況を聞いていく中で、その表情は徐々に歪んでいった。

王たちは、それを魔族への怒りからくる感情だと解釈していた。しかし、ライドウ、つまり真の本当の動揺は別のところにあった。

彼は、漠然といつか会うだろうと考えていた二人の日本人に、もう会えなくなるかもしれないという不安と、ロナがこの街で画策していた計画が、単なる陽動に過ぎなかったことへの衝撃によって、その表情を崩していたのだった。

こうして、戦局が一気に動き出した長い夜が、更けていく。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

2件のコメント

グビグビ(コーヒー 投稿日:00:06 - 2024年4月16日

ちょっとすっきり。
アニメの終わり方が後味悪すぎ。闘技だけで済ませとけばいいのに。

    こも 投稿日:06:15 - 2024年4月16日

    コメントありがとうございます。
    ザラ代表の圧迫面接は、真の人族嫌いを促進させるための一手なので、どうしても必要なんだと思います。
    ただ、ザラ代表のアレは私のトラウマを刺激するので飛ばして読んでます。
    アニメも多分、飛ばします。

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