小説【わた婚】「わたしの幸せな結婚 1」感想・ネタバレ

小説【わた婚】「わたしの幸せな結婚 1」感想・ネタバレ

どんな本?

わたしの幸せな結婚』は、顎木あくみ 氏による日本の小説で、富士見L文庫(KADOKAWA)から2019年1月から刊行されている。

物語は大正時代を舞台に、名家に生まれながらも継母と義母妹に虐げられて育った主人公・美世が、冷酷無慈悲と噂の若き軍人・清霞との婚約者となり、彼との生活を通じて少しずつ心を通わせていく様子を描いている。

この物語は、美世が愛されて幸せになるまでの過程を描いており、美世が清霞との関係を深めていく中で、自身の立場や感情について考え直す機会を得る。
また、物語は美世の視点から描かれ、彼女の内面的な変化や成長が詳細に描写されている。

なお、この作品はメディアミックスとして展開されており、高坂りと 氏によるコミカライズがガンガンONLINEで連載され、映画化アニメ化もされている。

読むきっかけは、2023年7月にアニメ化することは知っていたが、、
タイトルでは全く興味を持っていなかったが、当時読んだ「「若者の読書離れ」というウソ」という本を読み。
人気の作品であり、異能の力がある大正ロマンスだと知り購入して読んでみた。

こりゃまた凄いシンデレラストリートだ。

本人の預かり知らない事で、実家の斎森家から冷遇され虐待されたせいで、心に傷を抱えている美世。

病気をして会社から切られ放逐された経験のある社畜の私は美世に共感してしまった。
いや、今の会社も酷いけどね、、

だけど、理不尽さは美世の方が遥かに上、、

こんなに理不尽な仕打ちを受けていた子は、優しい人に心を癒されながら幸せになって欲しい、、

せめて物語の中だけでもそうあって欲しい。
本当に美世は幸せになって欲しいわ、、

清霞?
美世ちゃんを大切にしろよ!

美世ちゃんを傷付ける奴等に災いを!!
って感じでハマってます。

第一巻の仇役は斎森家の毒親と異母妹。
辰石家の当主。

この人達がザマァされますが死者は出ません。

本当、あのまま全員焼けちゃえば良かったのに、、

読んだ本のタイトル

#わたしの幸せな結婚
著者:#顎木あくみ 氏
イラスト:#月岡月穂  氏

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あらすじ・内容

この嫁入りは黄泉への誘いか、奇跡の幸運か――

 この嫁入りは黄泉への誘いか、奇跡の幸運か――

 名家に生まれた美世は、実母が早くに儚くなり、継母と義母妹に虐げられて育った。
 嫁入りを命じられたと思えば、相手は冷酷無慈悲と噂の若き軍人、清霞(きよか)。
 数多の婚約者候補たちが三日と持たずに逃げ出したという悪評の主だった。

 斬り捨てられることを覚悟して久堂家の門を叩いた美世の前に現れたのは、色素の薄い美貌の男。
 初対面で辛く当たられた美世だけれど、実家に帰ることもできず日々料理を作るうちに、少しずつ清霞と心を通わせていく――。

 これは、少女があいされて幸せになるまでの物語。

わたしの幸せな結婚

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感想

皇族が恐れる薄刃という特殊な血筋の母と、特殊な血筋だが力が発現しにくいと判定された名家、斎森の父。

その間に産まれて来た娘の美世だったが。

彼女に期待された能力は危険なため母に封印されてしまい発現せず。

能力を持つ子を産めなかったと斎森家から攻められて母は美世が2歳の時に病死。

その後、父が元々付き合っていた継母と再婚して異母妹の香耶が誕生。

異母妹には家由来の能力が弱小ながら発現。

そして泥棒ネコと思っている前妻の子で、無能な美世は継母に疎まれて使用人のように扱われしまう。
扱いはご飯が満足に食べれない、使用人の扱いだが給与は出ないので、服など買えないし、支給もされない。
気の毒に思った斎森の使用人から古着を貰って繕って着ていた始末。

そして、美世が19歳。
異母妹の香耶が17歳になると、辰石幸次と婚約して幸次は斎森家に婿養子となる事が決まる。

幸次は美世に唯一普通に接してくれる人で。
美世への仕打ちに斎森家に文句を言ったら、辰石の当主から関わるなと言われてしまい。
気の弱い幸次は黙ってしまう。

そして、幸次は己の立場を守りながら美世を気にしていたが、、

そんな幸次は香耶の婚約者となってしまった。

邪魔となった美世は、以前から薄刃の異能に興味を持っていた辰石から長男の嫁にと言われていたが。。

たまたま打診が来たが非常に評判の悪い名家の久堂家の当主、清霞へ嫁ぐように斎森家当主から命じられる。

その久堂清霞は、どんな令嬢も3日で逃げ出すという悪評があり。

斎森家では美世は、久堂家から追い出され。
その辺で野垂れ死ぬ事を期待されて送り出されてしまう。

そして、プロローグの挨拶となる。
清霞は美世をいつものような地位にしか興味のないお嬢様が来たと思い、美世に辛く当たってしまうが、斎森家より優しく言われているので美世からしたら何て事無い。

翌朝、斎森の時のように早く起きてしまい、家政婦のゆり江と共に朝食を作り清霞に出したら、、

斎森家の暗殺を警戒していた清霞は”毒を盛ったかもしれない”と言って食べてくれなかった。

若くして名門の久堂家の当主になった清霞は、他家からの暗殺の毒を気を付けないといけない。

それなのに美世は何も考えずに朝食を作ってしまった。

それを気に病む美世。

清霞はゆり江からネチネチと”アレは無い”と小言を言われてしまう。

でも斎森家を警戒していた清霞は、母と同じくらい世話になってるゆり江に何を言われようが譲る気は無かった。

その後、美世が真摯に謝るので、清霞は自身も言い方が悪かったと誤り。
翌朝に朝食を作ってくれと言う。

翌朝にゆり江と食事を作り清霞と朝食を摂る。
それで清霞から”美味い”と言われて泣いてしまう美世。

そんな彼女を見て清霞は、美世は普通の名家の令嬢として育てられてないのではと思ってしまう。

そして調査をするのだが、、
斎森家から酷い扱いをされていた事が判る。

ゆり江からも美世は、まともな服を持っておらず古着を少しか持っておらず。

化粧の仕方も知らない。

そんな美世に清霞は、都内に一緒に買い物に行くようになった。

呉服屋に寄り彼女用の服を作る。
呉服屋の女主人から清霞は、美世は磨けば光る原石だと言われるが、、
経験が無い清霞からは、また変なこと言っている程度しか思われていなかった。

だけど服が無くてどうしようと悩んでいた美世は、大変喜び清霞に髪に結ぶ飾り紐を作って贈ろうとしたが、、
材料が足りずに街に買い物にいくと、、

異母妹の香耶と彼女の婚約者の幸次と街中で再会。

香耶から”まだ野垂れ死にしてないんだ”と言われてしまう。

この再会で、やっと斎森家の呪縛から解放されかけていた美世だったが、長年の虐待で癒えかけていた彼女の心の傷は元に戻ってしまう。

そんな事があったとは知らず清霞が斎森家に訪問。
斎森家の美世への仕打ちは調査済みで、美世と結婚しても久堂家は斎森家を援助する気は無いと宣言。

それでも多少色を付けた結納金が欲しければ、美世に当主が謝れと言うが、、
斎森家当主は、返事を保留してしまう。

そんな会談の後、斎森家から出てきた清霞を見た異母妹の香耶は、清霞の美しさに見惚れ。

あんなに美しい人の伴侶は自身が相応しいと言い出す始末。

斎森家当主に言っても暖簾に腕押し、それならと辰石の当主に話を持って行く香耶を軽蔑しながらも黙って付いてくる幸次。

そして辰石家当主は、美世に流れている薄刃家の血筋を欲しており。
香耶に美世から婚約者を降りると言わせれば良いと香耶を唆す。

そして、式神で久堂家を監視していた辰石家の当主はずっと久堂家と軍から妨害され続けていたが。

美世が新しい着物を着て、清霞特製の護符を忘れてしまった時に美世な辰石家当主に誘拐されてしまう。

そして、斎森家の土蔵に閉じ込められ香耶と継母に久堂清霞の婚約者を降りろと折檻されながら強要されてしまう。

それを頑なに断り続ける美世。
そんな美世を救出するために斎森家に突入する清霞と幸次。

それに対抗する辰石の当主。

辰石当主の異能で燃え上がる斎森家の家屋。。

結果、斎森家はお取り潰し。
辰石家は当主は引退させられ家督を長男が継ぎ。

幸次は他所に修行に出されてしまう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション ( Novel ) あいうえお順

備忘録

序章

斎森美世の初対面

美世の初対面の礼儀

斎森美世は新たな縁談の相手である久堂清霞に対し、最大限の礼を尽くして畳の上で自己紹介をした。藺草の香りと他家の独特の匂いが混ざり合う空間で、美世は歓迎されていないことを感じながらも、礼儀正しく振る舞おうと心掛けていた。

婚約者の無関心

美世が頭を下げて待つ中、清霞は文机で書物を広げ、彼女には一瞥もくれなかった。美世は無視されることに慣れており、初対面の人の前で不用意に動かないほうが良いと判断して静かに待ち続けた。

清霞の指示

しばらくして、清霞から低く冷たい声で「いつまでそうしているつもりだ」と声がかけられた。美世はその言葉に従い、再び深く頭を下げて謝罪の意を示したが、清霞は「謝れとは言っていない」と言い、顔を上げるよう指示した。

初めて見る婚約者の容姿

顔を上げた美世は、清霞の美しい容姿に驚嘆した。真っ白な陶器のような肌、薄茶色の長髪、青みがかった瞳など、まるで儚い美しさをもつように見えた。その反面、軍では冷酷無慈悲と噂される彼の内面には、美世はある種の警戒心を抱いていた。

美世の覚悟

美世は清霞について、外見に反して内面に毒を持つ人物かもしれないと考えた。過去に多くの女性が清霞との縁談から三日と持たず去っていった話を耳にしていたからである。しかし、帰る家も頼る場所もない美世には、この場所で生き抜く決意しか残されていなかった。どんな試練が待ち受けようとも、彼女はここでの生活を受け入れる覚悟をしていた。

一章  出会いと涙と

斎森家での苦悩

斎森家での朝の出来事

帝都にある歴史ある斎森家の屋敷で、朝食の時間は他の名家と同様に静かに始まるが、異母妹の香耶が美世が淹れたお茶を「渋くて飲めない」と声を荒げ、熱いお茶を美世にかける事件が起こった。美世は謝罪し、召使いのように再びお茶を淹れ直したが、継母と異母妹の嘲笑を耐え忍び、父もこの状況に関心を持たない様子であった。

美世の家庭環境と異能の背景

美世は、異形を討伐する異能を代々受け継いできた斎森家の長女として生まれた。しかし、母が早くに病で亡くなり、父は再婚相手である継母に影響され、美世への愛情を失っていた。異母妹の香耶は異能を持ち、美世とは対照的に家族からも愛されている存在であった。こうして美世は、家庭内で召使いのように扱われ、家の一員として認められない日々を送っていた。

辰石幸次との会話

美世は幼なじみの辰石幸次と再会し、久しぶりに心安らぐ会話を交わした。彼は美世を斎森家の娘として大切に思っており、過去にも彼女を助けようとしたが、家の規則により阻まれていた。幸次は美世に菓子を渡し、彼女を励ましたが、彼の来訪の目的が何か重要なものであることを感じさせるものであった。

美世への縁談と絶望

父から美世に対して新たな縁談が告げられた。その内容は、家の後継ぎとして異母妹の香耶が辰石幸次と結婚し、美世は久堂家に嫁ぐというものであった。久堂家は名家であるが、当主の久堂清霞は冷酷な性格で有名で、多くの女性が短期間で結婚生活を放棄していた。美世は、この縁談が自分にとって不幸な運命であると悟り、斎森家を出ていく覚悟を決めた。

幼なじみ・幸次との別れ

美世が縁談の話を受け入れざるを得ない状況に直面した際、幸次は彼女に謝罪し、力になれなかったことを悔やんでいた。美世は幸次に感謝の意を述べ、彼に別れを告げたが、その別れは長年の苦しみと悲しみがこもったものであった。

絶望に包まれる夜

その晩、美世は荷物を整理し、最低限の持ち物だけをまとめた。母の形見もなく、すべてを奪われた美世の部屋には、何も残っていなかった。夜更けに薄い布団に身を横たえ、過去の辛い記憶が蘇り、明日からの未来に対する希望も持てず、ただ命の尽きる時を待つのみであった。

久堂家への訪問と新たな生活

久堂家の名家としての地位

久堂家は異能持ちの名家であり、財産と権威において全国に知られる存在であった。その当主である久堂清霞は二十七歳で、帝国大学を卒業し、軍の少佐として部隊を率いる立場にあった。家柄や財を持つ清霞は豪勢な暮らしをしていると噂されていたが、彼が住んでいたのは郊外の静かな一軒家であった。

美世の到着と家政婦の歓迎

美世は久堂家の住居にたどり着き、使用人である老女・ゆり江に迎え入れられた。彼女の柔らかな態度に、美世は戸惑いを覚えつつも書斎に案内される。ゆり江は清霞に関する悪評を和らげようと、「本当は優しい方」と語り、美世の緊張を解そうとしていた。

初対面と清霞の冷淡な態度

美世は清霞と初対面し、丁寧に挨拶をしたが、彼は冷たく「ここでは私の言うことに従え」と命じた。彼の厳しい指示に美世は従う意志を示し、書斎を後にした。美世は清霞の美しい容姿に驚嘆したが、冷淡な態度には戸惑いを覚えていた。

過去の記憶と父への失望

美世は幼少期のつらい記憶が夢となって甦り、母の形見を継母に奪われた上に、倉に閉じ込められたことを思い出した。この出来事によって、美世は父が自分の味方でないことを悟り、それ以来、使用人以下の扱いを受けてきた。

新しい部屋と朝食の準備

清霞の住居で与えられた部屋は斎森家でのものより広く、最低限の家具も揃っていたが、美世には使用人のように炊事を手伝うことが普通に思われた。ゆり江の手助けも考え、美世は朝食の準備を始めた。

清霞の疑念と美世の失敗

美世が用意した朝食を見た清霞は、彼女に料理の先食を指示し、美世が自分を毒殺しようとしているのではと疑った。彼の疑いに美世は驚き、誤解を生んでしまったことを痛感した。彼女は期待に応えられず、冷めたご飯を一人で食べながら、自分の無力さと孤独を感じた。

対異特務小隊の隊長・久堂清霞

対異特務小隊の設立と清霞の役割

帝国陸軍の「対異特務小隊」は、怪異に関する事件を処理するために設立された特別部隊であった。隊員は見鬼の才や異能を持つ者で構成され、危険を伴う任務に対応する精鋭であった。しかし、常に人手不足の問題を抱えていた。少佐であり隊長である久堂清霞は、基本的に書類処理に追われており、現場にはあまり出ることがなかった。

清霞の疑念とゆり江の助言

清霞は、朝の美世とのやり取りに心を乱されていた。ゆり江から「美世さまは毒など入れる方ではない」と諭されるも、清霞はまだ斎森家に対する警戒心を拭えなかった。彼は過去の縁談で多くの女性が彼の生活に不満を持ち、何かと問題を起こした経験があったため、美世についても一定の距離を置くべきだと考えていた。

美世の帰宅時の謝罪

夜、清霞が帰宅すると、美世が丁寧に出迎え、朝の件について謝罪した。彼女は自らの無礼を詫び、再び清霞に信頼されることを願った。清霞は彼女がここまで謝罪する姿に、むしろ自分が悪役のように感じ、居心地の悪さを覚えた。

美世の貧しい暮らしの痕跡

清霞は美世の様子から、彼女が名家の令嬢とは思えないほど貧相な生活をしてきたことを見抜いた。彼女の衣服や瘦せ細った手足、傷んだ髪からは、日々の苦労が伺えた。さらに、美世が自分の分の食事を取らないことに清霞は驚き、彼女が家庭や人間関係においてどのような教育を受けてきたのか、疑問を抱いた。

清霞の疑念とため息

清霞は美世が極度に謙虚で、家族としての扱いを受けることに馴染んでいない様子に気づき、ため息をついた。美世は名家の令嬢でありながら、これまで使用人のように扱われてきたのだと理解し、彼女の状況について再考を促された。

美世の不安と謝罪

朝食の失敗と不安

美世は、毒を警戒する清霞に無思慮に食事を用意してしまった自分の行動を悔やんでいた。清霞が冷酷な人物なら、今頃自分は追い出されていたかもしれないと考え、不安に駆られていた。家を追い出された場合に帰る場所もなく、住み込みの仕事先を探すべきかと思い詰めていた。

清霞の食事に対する疑問

帰宅した清霞は、美世の食事が用意されていないことに疑問を抱いた。美世は「食欲がない」と答えたが、実際には食べる習慣がなく、空腹を我慢していた。清霞はそんな美世の体調を気遣うような態度を見せ、不安定な彼女の生活環境に疑問を持ち始めた。

優しさと警戒心

清霞は冷たい態度を取っていたが、美世が自分を思いやるように接しているのを知り、その純粋さに気づいた。一方で、彼は美世が本当に自分にとって安全な存在かどうかを確かめようと警戒心を持ち続けた。

清霞と美世の距離感

食事の準備と清霞の複雑な思い

夕食の場で清霞が食事の冷たさについて呟いたとき、美世は反射的に謝罪した。謝罪が口癖となっている美世に対して、清霞は「謝罪はしすぎると軽くなる」と忠告し、彼女の習慣を改めようとした。清霞は、名家の令嬢として扱われるべき美世がなぜか常に謝罪を繰り返す姿に違和感を抱き始めた。

朝食を作る依頼

入浴後、清霞は美世に翌朝の食事を再び作るよう依頼した。美世は再度の依頼に戸惑いながらも、誠意を尽くして対応しようと決心した。清霞の本心が見えないまま、彼女は自分の料理が受け入れられるかどうか、心の中で不安を抱えていた。

過去の傷と新たな希望

過去の辛い記憶

夜に夢見た過去の記憶が、美世の心を再び苦しめた。父や継母、異母妹から受けた冷遇と差別、そして異能を持たない自分への失望を思い出し、彼女は自分が必要とされない存在だと深く感じていた。花という使用人が自分を庇ってくれたが、その後は会うこともなく、彼女が孤独であったことを痛感していた。

朝食の成功と涙

翌朝、美世はゆり江と協力して朝食を準備した。清霞が食事を口にし、「美味い」と言ってくれた一言に、美世は自分の努力が報われたと感じ、思わず涙をこぼした。清霞のさりげない褒め言葉が、美世にとっては長年の孤独と劣等感から救い出される一歩となり、彼女の心に温かな希望が芽生えた瞬間であった。

清霞と美世の朝食と心境の変化

美世の涙と清霞の戸惑い

清霞は朝食中、美世が突然泣き出したことに驚き、困惑していた。彼が料理を褒めただけで涙を流す美世の姿が、彼の心に焼きついた。清霞は、自身の言葉が美世を傷つけたのかと考えたが、実際には彼女が感動して泣いたことを知り、彼女の生い立ちに何か深い事情があるのではと疑い始めた。

美世の過去に対する疑問

清霞は、美世が普通の名家の娘として育っていないのではないかという疑念を抱いた。ゆり江に確認したところ、彼女もその疑問に同意したため、清霞は斎森家の過去を調査することを決意した。美世の謙虚さや純粋な反応から、彼女には特別な事情があることを確信した。

斎森家と辰石家の対話と対立

辰石家当主・実の疑念

一方、斎森家では、辰石家の当主・実が斎森家の当主・真一に対して、美世を久堂家に嫁がせた理由について不満を示していた。実は、美世が薄刃家の異能を継ぐ可能性を持つことから、彼女を自家に迎えたいと考えていたが、真一はそれを軽視し、家格が上の久堂家とのつながりを重視して美世を送り出したことを明かした。

美世の価値をめぐる対立

真一は、美世が異能を持たないため価値がないと断言し、久堂家に送り出したことに満足していた。一方、実は美世の潜在的な力を評価し、辰石家としても彼女の異能がもたらす価値を重要視していた。実は、美世が久堂家で捨てられた場合、彼女を辰石家に迎え入れることを決意し、斎森家の軽率な判断に憤りを感じていた。

二章  初めてのデヱト

清霞の配慮と美世の不安

ゆり江からの裁縫道具の提供

美世はゆり江から裁縫道具を受け取った。美世は道具を使わせてもらうことに恐縮していたが、ゆり江の励ましにより、安心して受け取ることができた。さらに、ゆり江は泣くことを許すよう優しく諭し、日々の苦労を溜め込まないよう美世を気遣った。

清霞の質問と外出の提案

清霞は、美世の日中の過ごし方について尋ねた後、次の休日に共に出かける提案をした。美世は驚きと戸惑いを感じながらも、清霞の提案を受け入れることにした。外出に対する緊張感と不安、そして少しの楽しみが入り混じる中、美世は清霞との街歩きに向けて準備を整えた。

美世の夢と過去の記憶

母との夢の再会

夜、美世は夢の中で桜の木の下に立つ母と再会した。美世の母は優雅で美しい姿をしており、彼女が生きていた頃の温かな思い出が蘇った。しかし、夢の中の母の言葉は風にかき消され、何を伝えようとしていたのかは最後までわからなかった。美世は、母との記憶が断片的にしか残っていないことに寂しさを覚えた。

外出の日:清霞の職場訪問と街の散策

清霞の職場訪問

清霞と美世は共に外出し、清霞の仕事場である対異特務小隊の本拠地を訪れた。途中で出会った隊員の五道が美世に興味を示すも、清霞は彼の詮索を遮った。清霞は美世に、緊張せずに街を楽しむようにと優しく促し、美世は心の中で感謝の念を抱いた。

呉服店「すずしま屋」への訪問

清霞は、美世に新しい着物を贈るため、老舗の呉服店「すずしま屋」に立ち寄った。美世は、自分に贅沢が似合わないと思い遠慮したが、清霞の意図を知り喜びと恐縮を覚えた。清霞は、美世に合う色や柄の反物を選び、特に桜色の反物に興味を示した。美世がその色に母の形見を思い出したことを告げると、清霞は彼女の過去に一抹の哀れみを抱きつつ、彼女の遠慮を理解した。

清霞の思いやりと未来の展望

美世を離さない決意

呉服店の主人・桂子は、美世が成長すれば美しくなり、清霞の妻としてふさわしい存在になると断言した。清霞はそれに対し、「愛」のような感情ではないと否定しつつも、美世に対して特別な感情が芽生えていることを認め始めた。彼は美世の繊細な心を守りながら、彼女を大切にする決意を新たにした。

美世と清霞の甘味処での時間

清霞の優しさと美世の緊張

美世と清霞は呉服店を出た後、甘味処に立ち寄った。清霞が無言で勧めたため、美世はあんみつを注文したが、清霞が近くにいることや周囲の視線に気づいてしまい、味を十分に楽しむ余裕がなかった。彼の注目を集める美しさが原因で、特に女性からの嫉妬の視線が彼女をさらに落ち着かない気持ちにさせた。

清霞の期待と美世の素直な反応

清霞は美世に「笑顔を見てみたい」と告げたが、美世はそれを恥じてしまい、遠慮がちに謝罪する。清霞は怒ることなく、むしろ素直な気持ちを話してほしいと伝え、結婚に向けて信頼関係を築きたいとの思いを口にした。美世は異能を持たない自分には不釣り合いだと感じつつも、彼と一緒に過ごしたいという願いを密かに抱いた。

清霞の贈り物と美世の反応

櫛の贈り物

その夜、清霞は美世のために櫛を贈ることを決め、彼女の部屋の前にそっと置いた。美世は戸惑いながらも清霞の意図を理解し、彼に感謝を伝えた。その際、美世が微笑む姿を初めて目にした清霞は、その純粋な笑顔に胸を打たれ、強い愛おしさを感じた。

美世の過去と清霞の決意

美世の過去を知る調査

数日後、清霞は情報屋から受け取った美世の過去についての報告書を確認した。美世は継母と異母妹に虐げられ、斎森家では過酷な環境で育ったことが明らかになった。清霞はその不遇な過去に強い怒りを感じ、美世を支えたいと改めて決意した。

薄刃家と異能の背景

美世の母が属する薄刃家は、異能者の中でも特異な能力を持つ家系であり、人の心に干渉する危険な力を隠して暮らしていることを知る。清霞はその得体の知れない背景に不安を覚えつつも、美世を手放すことは考えていなかった。

清霞の葛藤と決意

清霞の心の変化

清霞は、美世と過ごすことで帰宅時間を早めるようになり、自分の変化に驚きつつも、美世に対して特別な感情を抱いていることを認め始めた。彼の中で芽生えた新たな感情が、彼女を守りたいという強い思いに繋がっていた。

襲来する不穏な気配

式の襲撃と清霞の対処

帰路に着いた清霞は、不穏な気配を察知し、何者かが放った式に尾行されていることに気づいた。清霞は異能を駆使して式を焼き払うが、その正体が不明であることに不安を覚えた。

三章  旦那さまへ贈り物

美世の贈り物への想い

清霞への贈り物の相談

美世は、清霞への感謝の気持ちを形にしたいと考え、ゆり江に相談した。美世の気持ちにゆり江も共感し、「手作りのもの」を贈ることを提案した。ゆり江から渡された本を参考に、美世は自室で贈り物を考え始め、最終的に清霞に似合う組み紐を髪紐として贈ることを決めた。

買い物の計画と清霞の心配

贈り物に必要な材料を購入するため、美世はゆり江とともに外出する許可を清霞に求めた。清霞は心配しつつも美世の外出を許可し、さらに「お守り」を渡して安全を祈った。美世は彼の優しさを感じ、感謝と緊張の入り混じった気持ちで出かける準備を整えた。

香耶との再会と心の動揺

街での買い物と糸の選定

美世とゆり江は街の手芸店で清霞に似合う糸を探し、深い紺色の糸を選んだ。美世は清霞に喜んでもらえるようにと、贈り物を作ることへの期待で心を浮き立たせた。

妹・香耶との再会

糸の買い物を終えた美世は、ゆり江が塩を買いに行くためにひとりで待つことになった。その際、美世は偶然にも異母妹の香耶と再会する。香耶は高慢で辛辣な言葉を投げかけ、美世を貶めた。香耶の悪意に対し、美世は恐怖と屈辱を感じ、反論することもできずただ耐え忍んだ。

ゆり江の支えと美世の不安

ゆり江の励ましと香耶の撤退

買い物を終えたゆり江が戻り、美世に寄り添いながら香耶に対して毅然とした態度を見せた。ゆり江は清霞の婚約者として美世を誇りに思っていると香耶に告げ、香耶を退けた。美世は心の中で安堵したが、自分が言い返せなかったことへの悔しさを感じ、自己嫌悪に陥った。

帰宅後の内なる葛藤

帰路についた美世は、香耶に対して何も言い返せなかった自分に対する情けなさを感じた。家に着いた後も、ゆり江に顔を合わせることができず、自室に閉じこもり自らの無力さを痛感した。

清霞、斎森家を訪問し、結婚の条件を提示

斎森家への訪問

清霞は、美世の実家である斎森家を訪問し、結婚について話し合うことにした。帝都の一等地にある和風の屋敷で、斎森真一が清霞を出迎えた。表面上は丁重に接する真一であったが、清霞にはその態度が胡散臭く見えた。

結婚の条件と謝罪の要求

清霞は、美世との結婚を正式に考えていることを伝え、斎森家が美世に対して心から謝罪するならば結納金を増額すると提案した。しかし、斎森家が美世に行った仕打ちを知っていることを告げ、謝罪がなければ縁を切ると厳しい条件を提示した。真一は沈黙の末、少し考えさせてほしいと答えた。

美世、異母妹と遭遇し再び心の葛藤を抱える

街での香耶との遭遇

その頃、街に出ていた美世は偶然、異母妹の香耶と遭遇した。香耶は冷笑的な態度で美世を辱め、美世は何も言い返せず心に大きな傷を負った。ゆり江に支えられたが、美世は深く落ち込んでしまった。

帰宅後の清霞の慰め

清霞が帰宅すると、美世は憔悴した様子で自室に閉じこもっていた。清霞は何があったのかを察しつつも、無理に話を聞くことはせず、彼女が話す準備ができるのを待つことにした。

美世の心の支えとなる再会と自分を見つめ直す時間

花との再会

美世は、かつて斎森家で世話になっていた使用人の花と再会した。花は清霞が手配したものであり、美世の境遇を心配して訪れたのだった。花の温かい励ましを受け、美世は自分が清霞に対して本心を伝えきれていなかったことを認識し、再び勇気を奮い立たせた。

清霞への真実の告白

美世は清霞に対し、自分には異能がないこと、斎森家での過去、そして本当の気持ちを正直に打ち明けた。清霞は彼女を責めることなく、逆に「正式な婚約」を提案し、美世を温かく受け入れた。清霞の思いやりに触れた美世は、心からの喜びを感じ、彼のために作った髪紐を贈った。

二人の新たな絆と未来への一歩

清霞の受け入れと美世の決意

清霞は、美世が贈った髪紐を喜び、美世に感謝を伝えた。二人の絆が深まるなか、美世はこれからも清霞と共に歩む決意を固めた。

花との別れと感謝

美世と清霞、そしてゆり江は、花を見送りに玄関へ出た。花は美世に会えた喜びを語り、互いに感謝の言葉を交わして別れた。美世は清霞の手厚い配慮に感謝し、彼に「ありがとう」と心からの気持ちを伝え、穏やかな笑みを浮かべた。

辰石実の計画と清霞の行動

辰石実の策略

辰石実は、清霞を監視する鳥型の式が戻ってきた際、その成果に不満を抱き、式を握り潰した。彼は美世の状況を探ろうとしたが、清霞に巧妙に隠されていたため、何も得られなかった。美世が未だに久堂家にいると知った実は、彼女が清霞に迷惑をかけ、いずれ追い出されると期待しほくそ笑んだ。

美世の成長と新たな挑戦

新たな着物と自己肯定感の向上

美世は清霞が用意した新しい桜色の着物を着ることで、自分の外見が健康的に見えるようになったことを喜び、自信が芽生え始めた。清霞が自身のために選んだ色の着物を贈られたことで、美世は彼の思いやりを感じ、大きな感動を覚えた。

五道を招いてのもてなし

美世は、清霞の部下である五道をもてなすために準備を進め、彼に感謝の気持ちを伝える場を設けた。清霞は、彼女が他人と接することに積極的になったことに驚きつつも喜び、二人の間に穏やかな空気が流れた。五道も料理や美世の心遣いに感動し、宴は和やかに進行した。

美世と清霞の絆の深化

五道との会話と美世の告白

五道の軽口に清霞はやきもちを焼いたが、美世が「清霞と一緒にいたい」と答えたことで、彼の心は安らいだ。美世が清霞の選んだ着物を喜んで着てくれることや、彼に対する好意を明らかにしたことから、清霞は彼女の成長を感じ、満足した。

美世の悪夢と清霞の支え

美世の悪夢と清霞の優しさ

夜遅く、清霞は居間で眠る美世が悪夢に苦しむ様子を目にし、彼女を優しく抱きしめて励ました。美世は、過去の辛い出来事や心の傷に苛まれ続けていたが、清霞の言葉により少しずつ心を開き、頼れる存在として彼に信頼を寄せ始めた。

新たな日々への意欲

美世の努力と清霞への感謝

翌朝、清霞に弁当を手渡し、彼のためにもっと頑張ろうと決意を新たにした美世。清霞もまた、彼女の成長と献身に感謝し、その努力に応えるように微笑みを返した。

四章  決意の反抗

辰石実の計画と香耶の嫉妬

辰石実の策略と香耶の呼び出し

辰石実は清霞の監視を続けていた際、偶然にも変わり果てた美世の姿を目にした。美世が上等な着物をまとい、使用人を従えていることに驚愕し、これを機に香耶を呼び出して挑発することで、自分の目的を達成しようとした。

香耶の嫉妬と行動

香耶は異母姉である美世が清霞と共にいることを知り、その状況に我慢ができなくなった。彼女は異母姉が持つものをすべて自分のものとしなければならないという強迫観念に駆られ、辰石家の協力を得ようと式を作って美世を監視したが、その事実に耐えられず、行動に出ることを決意した。

香耶の無謀な提案と幸次の苦悩

香耶の提案と幸次の戸惑い

香耶は幸次に対し、美世との婚約を取り替えることを提案したが、幸次はその無謀な提案を即座に否定した。彼女の利己的な要求に対し、幸次は自分の立場を疑問視しつつ、香耶の身勝手な行動に怒りを覚えた。

幸次の反発と異能の暴走

幸次は実が自身の都合で美世の状況を放置していたことを知り、怒りのあまり異能が暴走した。彼は家族への怒りと無力感に苛まれたが、その異能は実に封じ込められてしまい、自身の無力さを痛感することとなった。

美世の誘拐と清霞の決断

美世の差し入れと警戒

美世は清霞の屯所へ差し入れを持参し、彼を少しでも支えたいという思いを抱いていた。しかし、帰路で彼女は自動車により無理やり拉致されてしまう。清霞はゆり江からその報告を受け、激しい怒りと焦燥に駆られた。

幸次の協力要請

その後、幸次が清霞の元を訪れ、美世を助け出すために協力を求めた。幸次は自分の過去の無力さに苦悩しつつも、彼女の安全を第一に願って行動を共にすることを決意した。

救出への決意と清霞の覚悟

清霞の冷静な判断と幸次の決意

清霞は冷静に幸次を伴い、美世を救出するために行動を開始した。一方、幸次は清霞の冷静さを見て不安を覚えたが、彼自身も美世のために最悪の事態に備える覚悟を固めていた。この決意は、彼が美世に対して抱く真剣な思いを示していた。

美世の監禁と恐怖

目覚めと閉じ込められた場所

美世が目を覚ましたのは、かつての忌まわしい記憶が残る斎森家の蔵であった。手足を縛られたまま、埃まみれの床に横たわっており、逃げ場もなく、再びこの場所に閉じ込められたことに恐怖と後悔が募った。

香耶と継母の現れ

蔵の扉が開き、香耶と継母が現れた。香耶は、美世の清霞との婚約に嫉妬し、美世を見下しながらもその立場を奪おうとしていた。継母もまた、美世を責め立て、清霞との婚約を辞退するよう迫った。

美世の決意

二人から屈辱を受けながらも、美世は清霞との婚約を守り抜く決意を固めた。かつてのように従順に従うことを拒み、彼女は「久堂清霞の婚約者の座を譲らない」と強く訴えた。その意志の強さに二人はさらに激昂し、攻撃を続けた。

清霞と幸次の救出行動

清霞の斎森家への突入

清霞と幸次は斎森家の門前に到着した。清霞は一切の躊躇なく異能で門を破壊し、堂々と敷地内へ足を踏み入れた。その強大な力は、周囲の者に恐怖を与えるほどであった。

斎森家の抵抗

斎森真一と実が清霞の進行を阻もうとしたが、彼の異能の前では無力であった。清霞は冷静かつ圧倒的な力で彼らを制圧し、まるで止められることなく美世の居場所へ向かった。

美世の所在確認と障害の克服

美世の監禁場所の推測

幸次は美世の閉じ込められている可能性が高い蔵を思い出し、清霞と共に向かおうとした。しかしその途上で実が異能の炎で二人を襲った。清霞は結界を用いて幸次を守り、炎の広がりに対して冷静に対処した。

実との決別

実は息子である幸次さえ犠牲にする覚悟で攻撃を続けたが、清霞の防御によって阻止された。幸次はその行為を目の当たりにし、父親との決別を決意し、清霞と共に美世の救出へ急いだ。

美世の救出と清霞の怒り

斎森邸での異変

斎森邸に轟音と衝撃が響き、蔵の中でもその振動が伝わった。美世を監禁し、圧迫していた継母と異母妹の香耶は、この音に動揺し、使用人に様子を見に行かせた。この一瞬の隙に、美世は再び膝から倒れ、意識がぼんやりと遠のき始めた。

美世の抵抗と継母の脅迫

継母と香耶は、美世に久堂家との婚約を放棄させるため執拗に迫り続け、最終的に継母は美世の首を絞め始めた。美世は死の恐怖を感じながらも、清霞との未来を守るため、決して屈しないという強い意志を示し続けた。

清霞の救出

清霞が駆けつけ、蔵の中で美世の名を叫んだ。美世は安堵し、清霞が縄を解き、傷ついた彼女の身体を抱きしめた。清霞の到着で状況は一変し、継母と香耶も驚愕し、美世は初めて救いの手を受け取った。

香耶と継母の自己正当化

清霞の怒りと香耶の主張

清霞は冷静ながらも怒りを込めて二人に尋問し、香耶は自分が美世よりもふさわしいと断言して清霞に自らを正当化しようとした。しかし清霞は、その傲慢な態度に厳しく「黙れ」と一蹴し、香耶を激しく睨みつけた。

斎森家の崩壊

ちょうどその時、屋敷の火事が迫っているという報告が入り、斎森家は混乱に包まれた。継母と香耶も外へ避難するよう幸次に促され、家族としての誇りを守ろうとする香耶も、最終的には脱出を余儀なくされた。

幸次の決断と香耶との決別

幸次の怒りと決意

幸次は、美世への強い想いから、香耶を強引に避難させようとした。香耶の反発に対し、「君たち家族が美世を苦しめた」と声を荒げ、二度と美世を傷つけさせないという決意を示した。

脱出と沈黙

最終的に、香耶は幸次に従い、無言で燃え盛る屋敷を後にした。

五章  旅立つ人

再出発の桜

夢の中で母と再会

美世は夢の中で母が手招きする桜の木の下にいた。しかし、母のもとへ行こうとする気持ちを抑え、美世は振り返って目覚めを迎えた。

久堂家での安静

目を覚ますと、自室で安静を命じられていた。清霞が世話を焼き、ゆり江は涙ながらに安堵しつつも、清霞と美世を支え続けた。斎森家が全焼し、清霞は両親が地方での貧しい生活に追いやられ、香耶も厳しい奉公に出されたと伝えた。

斎森邸の訪問と桜の切り株

後片付け前に実家を訪れたいと頼んだ美世は、清霞と共にかつての斎森家を訪れた。焼け残った桜の切り株に触れると、儚く崩れ、母との思い出がまたひとつ消え去った。これを機に、過去を胸に秘め、新たな人生を歩む決意を固めた。

幸次との再会と決意

感謝と決意の表明

美世は救出に協力してくれた幸次に感謝を伝えた。幸次も自分を鍛え直し、異能者として成長する決意を告げた。美世もまた、久堂家の嫁として成長し、彼に負けない努力を誓った。

心の整理と別れ

幸次はかつて言いかけた言葉について話を持ちかけたが、美世は「覚えていない」と答え、彼の心を軽くした。二人はそれぞれの道を進む決意を固め、晴れやかな表情で別れを告げた。

清霞との再出発

美世は清霞の待つ自動車に乗り込み、振り返り、幸次に最後の別れの挨拶をした。

終章

美世と清霞の婚約と決意

簡素な婚約手続きと背景

美世と清霞の婚約は、書面上の手続きだけで簡潔に済んだ。美世の実家である斎森家が没落した状態であるため、結納も不要であった。清霞の両親も隠居生活に入っており、挨拶も結婚前のみ必要とされた。ここで初めて美世は、この縁談が清霞の父である先代当主から持ち込まれたものだと知った。斎森家の令嬢と聞き、香耶を対象にしていたと考えられるが、結果的に美世が選ばれたことで、先代が失望するのではと不安に思った。しかし、清霞は軽い口調で先代の干渉を拒む意向を示した。

過去の清算と家族との別れ

その日、斎森家は地方の別邸へ移り、香耶も奉公先へ向かった。見送りに行かなかった二人だが、清霞は、斎森家への謝罪要求が過剰だったのではと自省した。しかし、美世にとっては、家族との縁を清算するために必要な行動であった。彼女は、再び過去の重荷に縛られることなく、前を向いて歩むために清霞の行動を感謝の気持ちで受け止めた。

清霞の真摯なプロポーズ

街中を歩く中、清霞は美世に向き合い、これからも苦労をかけるかもしれないと告げた。彼は軍人としての使命や自身の性格もあり、簡単な相手ではないが、美世と共に歩みたいと真剣な言葉で伝えた。これに対し、美世も微笑みながら「不束者ですが、よろしくお願いします」と応え、二人は心からの誓いを交わした。

新たな生活への歩み

街の雑踏の中、彼らの結婚の約束は静かに、だが確かに交わされた。仰々しい儀式も証人もないが、二人の間には揺るぎない絆があった。互いに微笑み合いながら、温かい日常が待つ小さな家へと歩みを進めた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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