小説【わた婚】「わたしの幸せな結婚 4」感想・ネタバレ

小説【わた婚】「わたしの幸せな結婚 4」感想・ネタバレ

どんな本?

わたしの幸せな結婚』は、顎木あくみ 氏による日本の小説で、富士見L文庫(KADOKAWA)から2019年1月から刊行されている。

物語は大正時代を舞台に、名家に生まれながらも継母と義母妹に虐げられて育った主人公・美世が、冷酷無慈悲と噂の若き軍人・清霞との婚約者となり、彼との生活を通じて少しずつ心を通わせていく様子を描いている。

この物語は、美世が愛されて幸せになるまでの過程を描いており、美世が清霞との関係を深めていく中で、自身の立場や感情について考え直す機会を得る。
また、物語は美世の視点から描かれ、彼女の内面的な変化や成長が詳細に描写されている。

なお、この作品はメディアミックスとして展開されており、高坂りと 氏によるコミカライズがガンガンONLINEで連載され、映画化アニメ化もされている。

読むきっかけは、2023年7月にアニメ化することは知っていたが、、
タイトルでは全く興味を持っていなかったが、当時読んだ「「若者の読書離れ」というウソ」という本を読み。
人気の作品であり、異能の力がある大正ロマンスだと知り購入して読んでみた。

毒親に育児放棄され虐待されていた美世が、異能最強と呼ばれる久堂清霞の妻となるシンデレラストリー。

読んだ本のタイトル

#わたしの幸せな結婚 4
著者:#顎木あくみ 氏
イラスト:#月岡月穂  氏

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あらすじ・内容

旦那さまの元婚約者候補、現る――。

清霞の両親が住む別邸からの帰りを敵に狙われた美世。 何事も無かったものの、美世は日中を清霞の職場である屯所内で過ごすことに。だけど紹介された女性軍人、薫子と清霞の仲の良さに美世の心は揺らいで……?

わたしの幸せな結婚 四

小説 PV

KADOKAWAanime
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感想

薄刃家が貧困に窮していた時に家から離れた男。

甘水直が美世を「我が娘よ」と言って近付いて来た。
そして、清霞には手土産と言って一斉摘発に動いた特異特務小隊を罠に嵌め副隊長の五道に重傷を負わせる。

そして美世に甘水は”美世、ぼくの娘。きっとまた、迎えにくるよ”と言って去って行ってしまう。

甘水に”ぼくの娘”と呼ばれ。
実の父が甘水なのかと思い、戸惑う美世だったが。
薄刃と久堂で調べた結果。

美世は斎森の娘である事は確かだと確定する。
それに安心する美世だったが、自身を冷遇した斎森の娘だと知って安心するのに苦笑いする美世。

甘水や異能心教から美世を護るために、清霞は彼女を職場の対異特務小隊の屯所に連れて来てしまう。

さらに美世のために女性の異能者、陣之内薫子を旧都から帝都に呼び寄せて護衛に付けてしまった。

美世の護衛になった薫子は、剣道道場の道場主の娘で剣術は一般の男性隊員より強く、男性隊員しかいない中でも彼女は対異特務小隊員として活躍していたが、、

何故か旧都へと異動していた。

プライベートでは薫子は、清霞の婚約者候補にもなっていた。
それを知って動揺する美世だったが、それは薫子からしてもそうだった。
何故、美世が清霞の婚約者になったのか、、

それに忸怩たる想いを押し殺していた薫子でもあったが数少ない同年代の女性。
2人は内心を抑えながらも友人として付き合い始める。

そして、2人で屯所の清掃を始めるのだが、男性社会の屯所に突然女性が居て反発する隊員達。

最初は屯所に戻って来た薫子を邪険にしていたが、そのうち美世も邪険にする始末。
女は大人しく家庭で家事をしていろと、、

いや、屯所をこんなに汚しておいて何を言ってるだコイツら?

そんな陰険な事をしていたと上役に知られたらどうなるのか、、

って百足山も同じ事を言ってるし、、
あまりにも短慮。

そんな中、帝が失踪する事件が起きる。

帝都で甘水を捕らえようと躍起になっていた新が宮城に入ると、痩せ細った老人を複数人で抱えて歩く集団を目撃する。
痩せ細った老人が帝だった。

甘水の認識させない異能で帝を連れ出す。

その集団は車に乗り宮城から出て行ってしまった。

帝失踪の知らせが清霞に届き、清霞は百足山を屯所に残して帝失踪の捜査に出ざるおえない。

一応、結界が張られているが安心は出来ないが清霞は、心配しながらも屯所を出て行ってしまう。

その直後、結界が破壊され甘水直が屯所に侵入して来た。

帝の乗った車が別荘に入ったのを確認した新は、追ってきた清霞を屯所に戻れと言うが清霞は動けないと答え、そこに大海が急行して来て、僥人の天啓で清霞を屯所に戻すが、、

新はこの後、帝を見失う。

その時には甘水は屯所に侵入しており美世を迎えに来ていた。

どうやって結界を破って入ったと聞く百足山に、甘水は内通者に結界を弄ってもらったと言う。

内通者を屯所の隊員の前で暴露する甘水。
その内通者は薫子だった、、
彼女は実家の道場と父親を甘水に人質されていると騙されて、甘水の言う事を聞いてしまった。
実際は薫子の父親に何もしておらず、ただ薫子に父親を人質にしたと言われただけだった。

それを屯所の隊員達の前で暴露される薫子。。

人の心を弄ぶ甘水に激昂する百足山。
それでも異能に対して強い薄刃の異能を持つ甘水には敵わない。
百足山の武器は折られ、百足山が殺されてしまうと思った美世は甘水の前に進み出て、甘水を拒絶する。

それを見て甘水は美世の母、澄美も同じく他人のために犠牲になろうとしていると言う。

反吐が出るほどの自己犠牲だと、、

そんな美世を見て甘水は、美世を通して母の澄美を救おうとしており、私は母の澄美ではないと言うが甘水には通じていない。

甘水は異能を使って美世を誘拐しようと、彼女を拘束して連れ出そうとしたら、、
清霞が間に合って甘水を退ける事が出来たが、次は無いと言ってる清霞に対して甘水は始まったばかりだと言う。

そして、屯所の襲撃は終わるが百足山に清霞は、護衛対象の素人を矢面に立たせて庇われるとは何事だと叱責。

家族を人質に取られたと騙され裏切ってしまった薫子は大海立ち会いの下で釈放される。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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フィクション ( Novel ) あいうえお順

備忘録

序章

帝都への訪問と再会

薫子の帝都訪問

薫子が帝都を訪れたのは、秋の終わりから冬の初めにかけての頃であった。久々の帝都は、かつて住んでいた場所とはいえ、喧騒が少し気が滅入るほどであり、彼女は忙しなく行き交う人々に圧倒されつつも、大きな革製の鞄を手に駅の歩廊を進んでいた。

不意の呼びかけ

駅を抜けて冷たい風に身を震わせながら、バス停に向かって歩き始めた薫子は、背後からのか細い声に気づいた。周囲のざわめきにかき消されそうなその声は、「お嬢さん」と彼女に呼びかけていた。彼女は最初、勘違いかと思ったが、再び間近で聞こえる声に驚いて振り向いた。

不審な男との邂逅

振り向いた先には、四十歳前後の眼鏡をかけた男性が立っており、穏やかな笑顔を浮かべつつも、その目には異様な輝きがあった。その目が疑いようもなく彼女に向けられていることに気づいた薫子が問いかけると、男は「陣之内薫子さん」と彼女の名を口にし、驚く薫子に「甘水直」と名乗り、「どうしても頼みたいことがある」と告げた。

一章  爪痕と警戒

対異特務小隊での新たな決意

清霞との出発準備

初冬の早朝、斎森美世は自室の鏡で身支度を整えていた。彼女は婚約者である久堂清霞と共に対異特務小隊の屯所へ向かう予定で、緊張しつつも清霞を支えたいと心を奮い立たせていた。出発前、久堂家の使用人であるゆり江の見送りに励まされ、冷たい朝の空気の中、自動車で屯所へと向かった。

駅での甘水直との邂逅

数日前、帝都駅で美世たちを出迎えたのは、異能心教の祖師・甘水直であった。彼は美世を「娘」と呼び、自身の危険な異能の力で駅の人々の認識を操作しながら、堂々と対峙してみせた。清霞と新が彼に対し身構えるも、甘水は挑発的な態度を崩さず、去り際に「迎えにくる」と美世に告げてその場を立ち去った。この出来事が、美世と清霞の対異特務小隊への訪問の契機となった。

護衛のための陣之内薫子との出会い

対異特務小隊に到着した美世は、護衛を任される陣之内薫子と紹介された。薫子はかつて清霞の婚約者候補だったことが明かされ、美世は驚きと複雑な感情を抱いた。しかし、薫子の親しみやすい人柄に心の中で協力を誓い、彼女との握手を交わした。

異能心教との戦略会議

会議室にて、異能心教の活動についての戦略会議が始まった。出席者の中には、かつて清霞と仕事を共にした者もおり、異能心教の脅威について話し合われた。異能心教の異能者である甘水の力は「人の五感を歪ませる」というものであり、彼の異能の影響で監視されるべき者の存在も曖昧にされていることが判明した。

異能心教の狙いと「夢見の力」

議論の中で、甘水の異能とその目的が再度確認された。彼の最終的な目標は、美世の「夢見の力」を手中に収めることであるとされた。美世の持つ力が、異能心教にとって極めて重要な存在であると認識され、彼女の保護が対異特務小隊の最優先課題とされた。

対異特務小隊での美世の保護決定

会議の結果、清霞の指揮のもと、美世は対異特務小隊で保護されることが決定した。隊員たちはこの決定に同意し、各自異能心教との戦いに備えるため、速やかに行動を開始するよう命じられた。

新の決意と戦略

甘水への危機感と薄刃家の責任

対異特務小隊の屯所を出た新は、帝都の市街を足早に進みながら、甘水直の圧倒的な力を改めて実感していた。彼は、自身がいかに甘水に敵わないかを理解し、薄刃家の一員としての責任に苦悩していた。甘水家は薄刃家の分家でありながら、彼の異能は異常なほど強力であり、薄刃の異能者でも対抗が難しい状況にあった。このままでは、清霞のような異能者でなければ甘水に勝てる見込みはなく、さらに異能心教には複数の異能者が従っていることが判明し、危機感を募らせた。

美世を守るための覚悟

新は、自分の役目が斎森美世を守ることであると確信し、彼女を危険から守り抜く決意を固めていた。甘水の標的が美世である以上、彼女を守り、薄刃家の誇りを守ることが新の使命であると心に刻んだ。祖父の義浪からも、新が過去の事件の責任を負うことはないと言われるだろうが、それでも夢見の巫女を守る役目を果たす覚悟を抱き、最悪の場合、刺し違える覚悟まで示していた。

甘水を斃すための行動計画

新は決意を新たにし、甘水と異能心教の弱点を探ることを最優先とした。そのためには一時的に美世の側を離れる必要があったが、清霞が共にいる限り美世の安全は確保されると考えていた。この間に甘水を斃す手立てを見つけ、できる限り早く行動に移すべく、新は冷たい冬の街を進みながら、ただ前を見据えて歩みを進めた。

二章  初めての友人

美世の夢と気づき

澄美と甘水の記憶

美世は夢の中で見知らぬ古風な家に立ち、若き日の母・斎森澄美と甘水直が穏やかに会話する場面を目撃した。澄美は若々しく活発な姿で甘水を諌め、甘水も穏やかな態度で応じていた。二人のやりとりから、互いに特別な感情を抱いていたことが美世に伝わり、彼らがかつて恋仲だったのではないかと推測させられた。しかし、美世はこの夢が何を意味するのか、夢見の力がなぜこれを見せたのかに困惑していた。

対異特務小隊での美世の悩みと決意

初めての屯所での戸惑い

会議の翌日、美世は対異特務小隊の屯所で清霞とともに一日を過ごす生活を始めた。しかし、清霞の執務室でただ座っているだけの美世は、居心地の悪さと無力感を感じていた。護衛として薫子がついているが、特に役立つこともできず、ただ見守られることに負い目を感じていた。

清霞への申し出と薫子の支援

美世は清霞に何か仕事をしたいと申し出たが、清霞は彼女の安全を最優先に考え、反対した。しかし、薫子が美世を護衛しながら案内することを提案したため、清霞も最終的には許可を出した。美世はただ守られるだけでなく、自分の力でできることを少しでも行いたいという強い意志を持っていた。

清霞の保護と美世の自覚

清霞の注意と美世の覚悟

執務室を出る前、清霞はしつこいほどに美世の安全に関する注意を繰り返した。美世はその心配に感謝しつつも、自身がただの守られる存在ではなく、自らの力で行動する決意を固めていた。

清霞の葛藤と決意

美世への愛と葛藤

清霞は、美世に対して抱く愛情について考えを巡らせ、彼女を大切に思い続ける決意を改めてしたが、それが恋愛感情であることを自覚してから、彼女を手放したくないという願望も心に芽生えていた。しかし、そうした思いが自己中心的であることを感じ、甘水の存在から彼女を守るために、甘水を捕らえる決意を固めた。

美世の実父の可能性と対策

清霞は美世の実父が甘水である可能性についても考慮していたが、現時点では斎森真一が父親である可能性が高いと判断した。ただし、真実がどうであれ、甘水の存在は美世を危険にさらすものであり、いかなる状況でも彼女を守り抜く必要があると自分に言い聞かせた。

薫子との交流と友情の芽生え

薫子との交流

美世は薫子の案内で屯所を見学しながら、彼女から「友だちになりたい」との申し出を受け、薫子と友人関係を築くことを決意した。薫子の明るく屈託のない性格に触れたことで、美世も彼女に心を開くことができ、初めての友人に対する喜びと共に、薫子を名前で呼ぶようになった。

屯所内の男性陣との緊張感

屯所内の見学中、美世は男性隊員からの無遠慮な視線を感じ、不安を抱いた。特に、薄刃の血を引く美世に対しては異能者でありながら異能者の敵として認識されることもあると百足山から指摘され、異能者としての立場や軍内部での微妙な立場を改めて実感した。

薫子の実力と美世の葛藤

薫子の戦闘力と隊員たちの反応

道場での訓練試合で薫子が青年隊員と対戦し、圧倒的な実力を見せつけたが、その後の男性隊員たちの反応は険悪で、薫子に対する偏見が根強く残っていることが示された。しかし、薫子自身はそうした偏見に動じることなく、試合を楽しんでいた。

美世の無力感と清霞への思い

美世は薫子のように頼りにされる存在になれない自分に歯痒さを感じつつ、軍の役に立ちたいとの思いを胸に秘めていた。清霞への愛情と忠誠を胸に、自分にできる限られた役割を果たす覚悟を新たにしたが、薫子のように頼られる存在への憧れも抱かずにはいられなかった。

帰宅後の美世と清霞

ゆり江のもてなしと美世の気疲れ

清霞と美世が帰宅すると、ゆり江が温かく迎え入れ、美世に甘酒を差し出した。美世はゆり江の気遣いに心を癒され、わずかながら心の重さが解けた。その間、ゆり江は清霞が着替えを終えるのを待ちつつ、温かな家庭の空気を作り出していた。

清霞の護衛意識と美世の感情

清霞はゆり江を送る際、美世に同行を求めた。美世は清霞の厳しい口調に従ったが、薫子への信頼感と比較してしまい、複雑な感情を抱いた。清霞の意図は美世の安全を確保することであり、そのための護衛体制を重視していたが、美世は自分への対処と薫子への信頼との違いを感じていた。

夜道での心の交流

弁当についての誤解と清霞の思い

夜道を歩く中、美世が弁当の件について清霞に尋ねると、彼は驚愕と悲嘆を示した。清霞は美世が作る弁当を強く望んでおり、負担でなければ今後も続けてほしいと伝えた。これにより美世は、自身の弁当が清霞にとって大切であることを知り、深い喜びを感じた。

手をつなぐ清霞の優しさ

清霞は暗い夜道の安全を考え、美世に手を差し出した。二人は手をつなぎながら静かな心の交流を続け、清霞は「嫌わないでほしい」という思いを内に秘めた。美世は清霞の手の温もりに安心し、彼への信頼と愛情を新たに感じながら夜道を進んでいった。

三章  友人との過ごし方

雑用としての掃除と美世の複雑な心情

清掃を選んだ美世

美世は、清霞から与えられた二つの選択肢のうち、掃除を選んだ。資料室での作業に対する気後れから、清掃が自身に適していると判断し、荒れ果てた給湯室の掃除に取り掛かることを決意した。

清霞と薫子の過去への興味と不安

掃除をしながらも、美世は清霞と薫子の過去に対する複雑な感情を抱えていた。彼らが恋仲であったのかと想像するたびに、自身の心の揺れを感じつつも、それが清霞にとって過去の話であることを理解しようと努めていた。

給湯室の清掃と隊員たちの冷ややかな態度

給湯室の惨状と掃除への意欲

荒れ放題の給湯室を目の当たりにし、美世と薫子は息を飲んだ。しかし、二人は協力して手近なものを整理し、片付けを進めることで次第に部屋の片付けに集中した。

隊員たちの冷淡な態度と薫子への心配

廊下を通りかかる男性隊員たちが薫子に対して露骨に侮辱的な言葉を放つ場面に、美世は憤りを覚えた。しかし、薫子はあくまで明るく振る舞い、彼女なりにその場をやり過ごした。美世は内心で彼女の境遇に同情しつつも、薫子の意図を察して言葉を控えた。

掃除後の夕食と美世の感情

清掃完了と喜びの共有

掃除を終えた後、美世と薫子は清掃した給湯室を見て達成感を感じ、共に喜びを分かち合った。美世はこの仕事にやりがいを見出し、薫子との連帯感を高めた。

清霞との夕食と五道への見舞いの話

夕食後、美世は清霞と五道の容態について話した。五道が負傷により未だ面会できないことに美世は心を痛めつつも、回復を祈って見舞いを望んでいた。

美世と清霞の感情のすれ違い

よそよそしさに気づいた清霞

清霞は、美世が以前よりも距離を感じると指摘した。美世は、清霞に対する自身の感情が整理できず、彼との距離感に戸惑っていた。別邸での出来事や、薫子に対する清霞の態度が頭から離れず、自分がどう行動すべきかに悩んでいた。

薫子との友情と新たな計画

美世は、清霞に対する感情を整理しつつ、薫子との関係を深める方法を考え始めた。清霞からの期待も感じ、薫子を励ますために自身ができることを模索し、新たな計画を思いついた。

清掃活動の進展と美世の内なる葛藤

給湯室から始まる清掃活動の日々

美世と薫子は給湯室の清掃を終えた後、倉庫や廊下、窓などの掃除に取り組み、数日にわたって屯所の隅々まで整理整頓を行った。美世は、日々の清掃活動に慣れつつあり、屯所での生活にも適応していった。

隊員たちの心ない言葉と美世の憤り

ある日、屯所の水汲み場の掃除中に、男性隊員たちの心無い陰口を耳にした美世は、薫子に対する偏見と侮辱に対して激しい憤りを覚えた。隊員たちは、女性に対する偏見に基づいた発言を繰り返し、薫子の努力を認めず、侮辱的な態度を取っていた。これに対し、美世は勇気を振り絞り、彼らに対して「実力主義」を尊重するよう訴えた。

美世の反論と薫子の登場

美世の反論と薫子の介入

美世は隊員たちの発言に対し、「努力することが筋ではないか」と諭したが、逆に彼らから「何も知らない」と非難された。さらにその場の緊張が高まった瞬間、薫子が現れ、隊員たちを制止した。彼女は微笑みながら、穏やかに美世を守りつつ、隊員たちの態度を咎めたため、彼らは不満げにその場を去った。

給湯室でのひとときと美世の饅頭

隊員たちが去った後、美世は薫子を給湯室に誘い、手作りの饅頭を振る舞った。薫子は喜び、饅頭を口にしながら、美世の優しさに感謝の意を表した。美世もまた、実家での苦しい経験を薫子に話し、自身が受けた小さな支えの大切さを共有した。

友人としての絆と薫子の感謝

薫子の涙と感謝

饅頭を食べながら、薫子は自分の抱える苦しみを吐露し、美世の優しさに感動した。会って間もないにも関わらず、美世が自分を気遣い、寄り添ってくれることに感謝し、涙ながらに「本当に元気が出る」と笑顔を見せた。この瞬間、二人の間には確かな友情の絆が芽生えた。

四章  本当の心の奥は

甘水への備えと五道見舞いの決意

五道見舞いの計画

寒さが増す中、清霞は夕食の席で翌日の午前中に五道を見舞うための休みを取ったと美世に提案した。面会の許可が出たことを喜ぶ美世に対し、清霞は心中の狭さを自嘲し、美世の無意識の配慮に感謝の意を伝えた。

甘水への不安と清霞の支え

美世は自らの外出が周囲に迷惑をかけるのではと不安に思っていたが、清霞は彼女の手を握り、不安を解消するためなら何でもすると誓った。そして、甘水が表立った行動を取る可能性は低いと安心させた。

軍附属病院での五道の見舞い

軍附属病院への道中と思い出

清霞の運転する車で軍附属病院に向かう途中、美世は清霞と初めて出かけた日のことを思い出し、二人の関係の変化を感じた。清霞の問いかけに緊張を和らげられながら、彼女は軍本部での視線にも動じることなく清霞とともに病院へ向かった。

五道の病室での再会と辰石一志の登場

病室に着くと、五道の見舞いに来ていた辰石一志と遭遇した。一志は軽妙な言葉で五道をからかい去っていったが、清霞もそれに対して呆れた様子を見せた。五道は清霞の花束を見てからかうが、清霞は無表情で美世に花を生けるよう指示し、一度外に出た。

五道の過去と清霞の苦悩

五道の過去と父親の殉職

美世は花を生け終えた後、五道から自身の父親がかつて対異特務小隊の隊長であり、任務中に殉職したことを聞く。清霞がその任務で間に合わなかったことが、五道が抱く自責の念の一因であると語られた。

清霞の過去への関心と五道の助言

美世は清霞の過去について聞きたい気持ちを五道に伝えると、彼は清霞が美世に全てを話したいと思っているのではないかと助言した。美世はその言葉に励まされ、清霞への理解と信頼を深める決意をした。

五道との別れと清霞の思い

五道の冗談と清霞の再出発

見舞いを終え、五道と別れる際に、彼は冗談を交えながら美世に再訪を頼んだ。清霞も彼の元気な姿に安堵しつつ、冗談を交わして病室を後にし、再び美世とともに日常へと戻った。

清霞と美世の見舞いと薫子との再会

五道と美世の見舞い後の独白

五道は美世と清霞の見舞いに感謝しつつも、自身の体力の低下に焦りを感じていた。早く復帰したいという願望が強く、じっとしていることに歯痒さを覚えていた。

薫子との再会

そこへ訪れたのは、五道の古い同僚である陣之内薫子であった。彼女は美世の護衛を務めており、久しぶりの再会に五道は少なからず驚いたが、二人は軽く近況を語り合った。五道は、薫子がかつて清霞に好意を寄せていたことを思い出し、彼女の心情を暗に問いただした。

五道の忠告と薫子の揺らぎ

五道は、薫子が未だに清霞に心を寄せていると察し、二人の仲を引っ掻き回さないよう忠告した。薫子はその指摘に動揺しつつも、言い返すことができず、病室を後にした。

美世と清霞の散策と対話

二人の散策と清霞の不安

五道の見舞いを終えた後、清霞は美世を連れ出し、少し外を歩こうと提案した。公園で休憩を取り、美世は清霞の過去を知りたいと願いを口にした。清霞は一瞬驚いたが、彼女の気持ちを受け入れ、自らの過去を知ることに対する不安や躊躇を語った。

過去を共有したいという美世の決意

美世は清霞に対して、自分も彼と同じように彼のことを知りたいと強く訴え、二人の間に信頼が深まった。清霞は美世に、今後も疑問があれば遠慮なく聞いてほしいと約束した。

薫子の心の葛藤と美世との和解

薫子の孤独と嫉妬

病院を後にした薫子は、屯所の食堂で五道の言葉に深く傷つき、清霞への未練や自分の行動に対する後悔に悩んでいた。美世への嫉妬を抑えられず、自らの醜さに嫌悪感を抱き、涙を流していた。

美世の謝罪と薫子の葛藤

その後、美世が薫子に謝罪し、かつて清霞と薫子が特別な関係であると誤解していたことを打ち明けた。薫子はその謝罪に動揺し、自分のほうが悪いと感じながらも、自分が美世に抱いた嫉妬や羨望の気持ちを正直に吐露した。

友情の再確認

美世は薫子に、互いに持たないものを持っているからこそ、嫉妬やもどかしさが生まれると語り、再び友人として関係を築きたいと提案した。薫子は自らの罪悪感を抱えながらも、美世の手を握り、再び友情を誓った。

五章  おそれを知らず

新の帝都探索と甘水直の動向

甘水直の足取り追跡

新は、帝都内の関連地を単独で巡りながら、甘水直の居場所を追っていた。甘水の目指すものは帝国の支配であり、そのためには帝の身柄が重要であると推測していた。美世の守りは堯人と同様、結界で強化されていたため、狙われる可能性が低いと考え、警戒していた。

異能者の異変と帝の出現

宮城の門付近で異様な気配を察知した新は、門の外に現れた帝の姿を目撃した。門衛や通行人は異能で視界を操作され、帝が宮城を出ていく異常事態に気づいていなかった。新は式を使い、帝を追跡させると同時に対異特務小隊へ支援を要請した。

清霞と美世の屯所での待機

美世と薫子の不安定な日常

一方、屯所では美世が薫子と日々の雑用をこなしていたが、薫子は時折不安げな表情を見せていた。美世も、甘水の脅威と隊員からの冷たい視線に不安を抱きながらも、日々の生活を続けていた。

清霞への連絡と緊急の知らせ

清霞の執務室にて美世と薫子が給湯の準備をしていたところ、紙の式が届き、同時に百足山が緊急報告に現れた。清霞が受け取った報告によると、甘水がついに帝へ手を出した可能性が高まった。

美世と清霞の別離と屯所での警戒態勢

清霞の出撃準備と百足山への指示

清霞は部下である百足山に屯所の守りを任せ、美世に見守られるなか出撃を決意した。清霞と美世はお互いの無事を祈りつつ抱き合い、別れを惜しんだ。

待機中の美世と結界の破綻

美世は薫子や百足山の班員たちとともに道場に待機し、清霞が戻るのを待つことにした。道場内で静かな緊張感が漂う中、突如として結界が解かれた。警戒が乱れる中、美世は異変の主が甘水であることを察し、不安に襲われた。

帝誘拐の報告と出撃

帝の失踪と出撃

清霞は新からの報告により、帝が宮城から連れ去られたことを知り、部隊を率いて指定された場所に急行した。現場には新も待機しており、帝が海に近づく様子がないことから皇家の別荘が目的地と推測された。清霞は帝の誘拐を囮とした陽動作戦の可能性も考慮し、屯所には百足山を残していた。

新の提案と清霞の判断

新は清霞に屯所へ戻るよう提案したが、清霞は現場の責任者として離れることはできないと断った。新も清霞に美世が狙われている可能性を示唆し、決断を迫った。そこへ大海渡少将が現れ、堯人からの命により清霞に屯所への帰還が命じられた。

甘水の襲撃と薫子の裏切り

甘水の襲撃と百足山の応戦

一方、屯所では甘水直が姿を消して突然現れ、美世を狙って襲撃した。百足山と薫子が美世を守るべく前に出るが、甘水の異能による侵入に対抗することができなかった。薫子が結界を内部から操作し、甘水が侵入できるように手引きしたことが明かされ、百足山たちは動揺した。

薫子の告白と仲間たちの動揺

薫子は甘水に家族を人質に取られ、結界に細工を施して甘水の侵入を許してしまったことを認めた。彼女が裏切りを強いられていた理由を知り、美世は胸を痛めたが、百足山たちは甘水の嘲笑とともに深い怒りと動揺に包まれた。

美世の決意と清霞の救出

美世の自己犠牲と甘水の策略

甘水が隊員たちを圧倒し、美世を連れ去ろうとする中、美世は自ら前に出て甘水に立ち向かう決意を固めた。彼女は清霞を守り、仲間たちを犠牲にすることを拒み、甘水と対峙したが、甘水の脅威に対抗する術はなかった。

清霞の帰還と甘水の撤退

そのとき、清霞が現れ、美世を守りながら甘水と対峙した。甘水は一時的に退却したが、清霞の帰還が堯人の天啓によるものであったことを理解し、次なる策を匂わせながら姿を消した。

後始末と百足山・薫子の処遇

清霞の叱責と百足山の責任

清霞は、百足山の不備によって美世を危険にさらしたとして厳しく叱責した。百足山は自らの力不足を認め、反省を述べたが、清霞の命令に従い今後の懲罰に備えることとなった。

薫子の行方と美世の祈り

薫子は裏切り行為により処罰を受ける運命にあり、美世はその結果に心を痛めつつも、彼女の命が尽きぬよう静かに祈りを捧げた。

帝の行方を追う

拉致された帝と皇家の別荘への追跡

新は大海渡と対異特務小隊の隊員たちと共に、拉致された帝を追跡して皇家の別荘を訪れた。新が追跡していた式による自動車は別荘の方向へ向かっていたが、途中でその姿を消してしまった。道が一本道であることから、意図的に消された可能性が高いと推測され、別荘へ向かうことにした。

宮内省の管理区域への到着と不審の高まり

皇家の別荘に到着した新と大海渡は、門衛に尋ねたが、誰もそこを通過していないと聞かされた。敷地内を調査したが、帝やその一行が訪れた形跡はまったく見当たらず、異能心教による偽装の可能性も考えられた。対異特務小隊の隊員たちは不信感を抱き始め、薄刃への疑念も口にし始めた。

単独での調査

新の調査継続の決意と苛立ち

大海渡の命令で他の隊員たちは撤収することになったが、新は単独での調査継続を申し出て許可を得た。ひとり取り残された新は、苛立ちと焦燥感の中、皇家の敷地を徹底的に探索し続けたが、何の手がかりも得られなかった。日が暮れるにつれて、調査は無駄に終わったと感じ、新は失意に沈んだ。

甘水直との対峙

甘水直の登場と挑発

そのとき、背後から甘水直が現れた。新は即座に銃を構えて敵意を示したが、甘水は冷静な態度で応じ、新の怒りを逆手に取りつつ、薄刃への偏見や対立を煽った。甘水は新の焦りと苛立ちを見透かし、挑発的な言葉を投げかけた。

異能心教への勧誘

甘水は、新に対して「異能心教に入らないか」と誘いをかけた。馬鹿げた提案であったが、新は一瞬その言葉に心が揺れ動いた。

六章  これからの気持ち

甘水の襲撃後の日々

屯所での日常と行動制限

甘水による襲撃後、美世は再び清霞と共に屯所へ通っていたが、以前のように自由な行動は許されなくなっていた。軍上層部からの指示により、美世は屯所内での移動が制限され、清霞の執務室で編み物をしながら過ごしていた。窮屈さを感じる日々の中、美世は失った友人・薫子を思い出し、寂しさが募るばかりであった。

百足山との対話

百足山からの謝罪と許しの選択

ある日、百足山が清霞のもとを訪れ、美世を少しの間借りたいと願い出た。清霞の許可を得て、美世は百足山に従い道場へ向かった。そこで百足山は、自分が今まで美世に対し偏見を抱き、敵視していたことを謝罪し、彼女の勇気を称賛した。清霞は美世に、百足山を許すかどうかの決定を任せ、美世は彼の真摯な姿勢を受け入れて、許しを与えた。

隊員意識の改善に向けて

百足山は、美世に感謝を述べ、今後は隊員たちの意識を改善し、実力主義を謳える組織に変えていく決意を示した。美世は彼の誓いにうなずき、彼のリーダーシップがその変革を成し遂げると信じた。

薫子への思い

薫子の安否と美世の葛藤

執務室に戻る道中、美世は薫子のことが気がかりでたまらず、彼女の安否について清霞に尋ねた。薫子は現在、軍本部で拘束され、処遇を待つ身であり、異能心教への内通が発覚したことから厳しい罰が避けられない状況であった。

清霞との対立と無力感

美世は清霞に対し、薫子の救済を願い出たが、清霞は軍規を重視し、その願いを断った。美世は自分のせいで薫子が巻き込まれたと感じ、彼女を見捨てることができなかったが、清霞の冷静な忠告に押し黙るしかなかった。

年の瀬の集い

久堂家の催し

年末が近づき、久堂家の本邸で小規模な集まりが催され、美世と清霞も参加した。葉月が提案したこの集まりは、清霞が年末年始も家族と接触しないまま過ごすのを避けるためのものだった。清霞と葉月の軽妙なやり取りに、美世は温かさを感じ、二人の和やかな様子に微笑を浮かべていた。

美世と清霞の静かな時間

談話室で清霞と二人きりになった美世は、今年一年の慌ただしさを振り返っていた。実家を離れ、久堂家での新たな生活を始めてからまだ一年も経っていないが、その充実した日々に感謝していると心の内を語った。二人の静かな時間が続く中で、美世は穏やかな幸福感を覚え、満ち足りたひとときを過ごしていた。

招かれた客たち

やがて談話室に次々と客が到着し、賑やかさが増していった。大怪我から回復した五道が元気に挨拶に現れ、続いて新も到着した。新は表面上は普段と変わらないが、薄刃家の評判を守るために奮闘している様子が伝わり、美世は彼の心中に思いを巡らせた。その後も一志が加わり、談話室はさらに活気を帯びていった。

薫子との再会

薫子の到着と大海渡の立ち会い

最後に到着したのは薫子であった。薫子は拘束されていたが、大海渡の立ち会いのもとで久堂家に姿を見せた。美世は友人との再会に心を震わせ、薫子のもとへ駆け寄った。薫子は過去の裏切りについて深い罪悪感を抱え、泣きながら謝罪したが、清霞は「閣下に叱責されたことで十分」と述べ、彼女を責めなかった。

美世と薫子の友情

清霞の計らいにより、薫子は集いに加わり、美世も手を引いて共に移動するよう促した。薫子は自身の過ちを悔い、美世に友人でいることを許してもらえるのか不安を抱えていたが、美世は迷わず友情を確認し、今後も仲良くしたいと告げた。二人は涙を浮かべつつ、再び友人としての絆を深め、和やかに食事会の会場へと向かった。

終章

年越しの支度と清霞への感謝

美世の年越し蕎麦の準備

久堂家本邸での昼餐会から帰宅した美世は、日が沈む頃、台所で年越し蕎麦を作り始めた。蕎麦の茹で具合を確認しつつ、天ぷらや薬味を添えて完成させた料理は、ゆり江の教えを受け継いだ味付けで、色鮮やかに並べられた。美世はこの大晦日と三が日を、穏やかに過ごしたいと心から願っていた。

清霞への感謝の表明

夕食の準備が整い、美世は清霞を呼びに行った。彼は書類に目を通していたが、美世の呼びかけに応じて食卓に向かった。美世は清霞に、薫子を助けてくれたことへの感謝を述べた。清霞はその行為が薫子を許すものではなく、戦力としての価値があるためと冷静に説明したが、美世は薫子が救われたことに安堵していた。

異能心教の脅威と清霞の慰め

異能心教への不安と対策

清霞は異能心教の動向について話し、現時点で帝の行方も異能心教の拠点も不明であることを美世に伝えた。彼はその報告の中にわずかな手がかりを探しているが、甘水の襲撃以降も静かであるため、逆に不気味さが増していた。美世は清霞の言葉に不安を感じながらも、彼の優しい言葉と手に励まされ、微笑んでその不安を和らげていった。

静かな年越しと互いの想い

除夜の雪と二人の時

食事を終え、ふと外を見ると雪が舞い始め、居間の灯りが薄く積もる雪景色を照らしていた。清霞は美世を自分のそばに呼び寄せ、今年が良い年であったことを伝え、美世と出会えたことに感謝した。美世も同じ気持ちを抱いていると告げ、二人はそっと唇を重ねた。静かに響く除夜の鐘とともに、雪の降る年の瀬が二人を包み、穏やかに流れていった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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