小説【わた婚】「わたしの幸せな結婚 五」感想・ネタバレ

小説【わた婚】「わたしの幸せな結婚 五」感想・ネタバレ

どんな本?


わたしの幸せな結婚 』は、顎木あくみ氏によるライトノベルシリーズの第5巻である。本作は、名家に生まれながらも虐げられて育った斎森美世が、冷酷と噂される軍人・久堂清霞との婚約を通じて、自らの幸せを見つけていく物語である。

第5巻では、美世が清霞への想いに気づき、彼との関係を深めようとする一方、帝都では異能心教の侵入が進み、二人の周囲に不穏な影が差し迫る。皇太子・堯人の提案で宮城に身を寄せるが、過去の記憶から変化を恐れる美世は、想いを告げられずにいる。そんな中、清霞から思わぬ本心を告げられ、物語は新たな展開を迎える。

本作は、和風シンデレラストーリーとして多くの読者から支持を受けており、2023年には実写映画化もされるなど、幅広いメディア展開が行われている。 

読んだ本のタイトル

わたしの幸せな結婚 5
著者:#顎木あくみ 氏
イラスト:#月岡月穂  氏

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あらすじ・内容

清霞への想いに気がついた美世。帝都では異能心教の侵出が進み、美世たちは皇太子、堯人の提案で宮城に身を寄せる。過去の記憶から変化を怖れ、想いが告げられない美世は、ある夜、清霞から思わぬ本心を告げられる。

わたしの幸せな結婚 五

小説 PV

KADOKAWAanime
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感想

心を通わせる二人

美世は、清霞への強い想いを自覚し始めた。しかし、その不器用さゆえに自分の心を伝えられずにいたが、清霞との会話を通じ、少しずつ理解し合えるようになったのは心温まる場面であった。
物語が進む中、甘水の異能心教の暗躍がひしひしと感じられ、二人の未来がどうなるか不安が募る。
甘水はいったい美世に何がしたいのか疑問に思う。
謎の執念の結果、内通者が増え、状況が悪化していく展開は厳しく、美世にはさらなる試練が待ち受けているであろう。
彼女の幸せを祈りつつ、次の巻での希望を感じたいものである。

胸の奥にある後悔

今巻の物語では、美世が温かな生活に安住していた自分を責め、過去の甘さを悔いる姿が印象的であった。
物語は甘水による巧妙な計略で進展し、清霞が囚われの身となり、美世が立ち上がる決意を固めるまでが描かれている。
甘水の罠にはまった清霞の状況に胸が痛むが、美世がその失敗を糧に変えて進む姿は感動的であった。
美世には今後も強くあってほしいものである。

清霞と美世の試練

異能心教から守られるため、宮城に避難した美世たちであるが、内通者が多く、思いもよらぬ危険にさらされることとなった。
義姉の葉月やゆり江との時間は心の安らぎを与えてくれたが、清霞の囚われの報告により状況が一変した。
終盤、美世が自分の力で清霞を救おうと決意するシーンは心打たれたが、虐げられ心を粉々に折られていた彼女を考えると、、
本当に彼女には幸せになってほしいと切実に願ってしまう。
次巻での彼女の行動に注目したい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション ( Novel ) あいうえお順

備忘録

序章

堯人の決意と隠された真実

師走の夜、静寂に包まれる宮廷

年の瀬も迫る師走の夜、堯人は軍の要職である大海渡征と内大臣の鷹倉とともに、静かな部屋で話し合いをしていた。彼らの周囲は冷え冷えとした冬の闇に包まれ、時折冷たい風が吹き込んでいた。堯人は今上帝が拉致された事実を国民に伏せ、あえて騒動を避けて力を蓄える方針を選んでいた。

今上帝の失踪と堯人の本音

堯人は帝が拉致されたことが国政に与える影響を考慮し、民には知らせない判断を下していた。また、帝が殺害される可能性が低いことから、一部では帝の失踪による混乱がむしろ事態の収拾に役立つかもしれないとの本音も漏らした。しかし、この発言に大海渡は驚き、堯人の冷徹さを指摘する。堯人はその指摘に応じつつ、情の薄さに葛藤する自分自身を見つめ直していた。

堯人の未来への策と未完成の天啓

二人への指示と改革への困難

堯人は異能心教の動向を警戒しつつ、政治と軍内部の改革を進めようとしていた。しかし、軍や政界からは反発が強く、計画は困難に直面している状況だった。堯人は大海渡と鷹倉に対し、この方針が最善と信じているため、反対を押し切ってでも推進するよう指示を出した。

不完全な異能と未来への不安

堯人の異能「天啓」は未完成であり、帝位に就かなければ完全な力を得ることはできないとされていた。彼の予知は不安定であり、見える未来も断片的であったため、堯人は見えた断片から最適な策を模索するしかなかった。彼は自らの策が成功するかどうか不確かであり、不安を抱えながらも進むべき道を考え続けた。

一章  年明け、ざわめき

清霞と美世の初詣の朝

新年の朝、初詣へ

美世は雪景色の美しさに心を奪われ、幸せを感じていたが、昨晩の清霞との口づけを思い出し、恥じらいを感じていた。二人はそれぞれ正装し、元旦の遅い朝に初詣に出かけた。清霞は冷静に振る舞っていたが、美世はまだ彼との距離感に戸惑っていた。

神社での願い

参拝のために賑わう神社に到着した美世は、清霞と手を繫ぎ、行列に並んだ。美世は神に「旦那さまと一緒にいたい」という願いを内心で伝えたが、その想いを形にするのが恐ろしいと感じていた。清霞もまた、美世と共に平穏を願い、彼女に優しい言葉をかけた。

異能心教の出現と異形の脅威

異能心教の活動

参道を歩いていると、人混みの中で異能心教が活動している場面に遭遇する。異能心教は異形を籠に収めて見せつけ、異形を退治できる力を持つと喧伝し、周囲の人々の恐怖を煽っていた。清霞はその異形が一般人にも見えていることに疑問を抱き、異能心教が新たな技術を持っている可能性を考えた。

五道と対異特務小隊の登場

五道率いる対異特務小隊が駆けつけ、異能心教の者たちを迅速に捕縛した。五道は美世と清霞に感謝の言葉を述べながらも、対異特務小隊が異能心教の活動の拡大に対処しきれなくなる可能性を示唆した。清霞も五道の意見に同意し、異能心教の脅威が増していることを認識した。

美世と清霞の覚悟

清霞の指示と別れ

清霞は美世に護身用の紙片を渡し、万が一のために使うよう指示を出した。彼は部下たちとともに異能心教の活動を取り締まるために行動を開始し、美世は一人残された。心細さを感じつつも、清霞の気遣いに感謝しながら、彼を支える覚悟を決めていた。

新聞報道と異能心教の影響

異能心教と異形の報道

元日早朝、新聞各紙が『元日、神社に異形現る』との見出しで異能心教の活動を詳細に報じた。記事には、異能心教の異形や異能について紹介する内容が多く、政府や軍の非公開姿勢を批判するものも見られた。清霞はこの内容に不快感を示しつつも、世間の認識を受け入れていた。

軍と世論の対立

記事の内容から、異能者や異形に対する一般人の理解不足が浮き彫りになった。科学が主流となった現代では、異能者や異形の存在は信じがたいものとなり、政府や軍への不信が高まっていた。美世はこの状況を憂いていたが、清霞はそれに対し冷静に対応していた。

堯人の保護計画と宮城への移動

堯人と美世の保護計画

異能心教からの脅威を受け、堯人と美世の安全を守るため、両者を宮城に集め、対異特務小隊が守備を固めるという計画が進行していた。堯人の意向によるこの計画は、政府や宮内省の許可を得て、現実味を帯び始めていた。

清霞の指示と美世の準備

清霞は美世に対し、宮城に数日間滞在する準備を整えるよう指示し、加えて美世の付き添いとして葉月とゆり江も同行することを伝えた。この予想外の配慮に、美世は安堵し、感謝の意を抱いていた。

清霞と美世の絆と感謝

美世の謝意と清霞の支え

美世は、清霞に自身が引き起こした問題に対する負担をかけていることを詫びた。清霞は美世の謝罪をやんわりと制し、手を重ねて彼女を励ました。この行為により、美世は自分が清霞によって人としての温もりを取り戻したと感じ、改めて深い感謝を抱いていた。

想いを秘めて

清霞の温かな支えにより、美世は自身の想いを心の奥に留める決意をした。この新たな局面を前に、彼女はその想いに名を付けず、静かに隠し続ける道を選んだ。

二章  宮城と落ち着かない日

正月の特務小隊出勤と清霞の思い

清霞の正月出勤と美世の気遣い

三が日が明けぬ朝、清霞は婚約者である美世の弁当の差し入れを受けつつ、対異特務小隊の屯所に出勤していた。新聞により異能心教の活動が広く報じられ、多くの隊員が休暇返上で出勤していたが、実際の対応には限界がある状況であった。

大海渡との打ち合わせと清霞の決意

清霞は副官の五道と共に、大海渡少将を迎え、応接室で堯人の計画について話し合った。堯人の身を異能心教から守るため、宮城での保護が決定し、清霞も準備を進めることを承知した。しかし、清霞の内心には、背水の陣のような状況に対する不安があった。

異能心教と異形の報道への対処

新聞報道と情報統制の問題

異能心教が異形や異能に関する情報を広めたことで、世間には政府や軍に対する不信感が広がりつつあった。大海渡は、異形や異能の情報統制が緩んだ原因に疑念を抱き、政府に近い立場の者による意図的な働きかけを懸念していた。清霞もまた、異能心教の巧妙な宣伝活動に対する対策が急務であると感じていた。

異能心教の真の目的と清霞の危機感

清霞は、異能心教の最終目的が薄刃家を頂点とする異能者優位の新体制構築であると推測した。そのために、甘水は現行の政府体制を崩壊させ、異能心教が国を掌握する道筋を立てている可能性が高いと考えた。甘水の目的達成は、現行の秩序を破壊する大きな政変をもたらすだろう。

内乱への覚悟と清霞の葛藤

大海渡からの忠告と清霞の葛藤

大海渡は清霞に対し、「心の準備」をしておくよう忠告した。それは内乱の可能性を示唆するものであり、清霞も軍人としての覚悟を求められる重い言葉であった。しかし、清霞は異能者としての使命と共に、婚約者である美世を守ることを何よりも優先したいという思いが膨らみ、自らの内心に葛藤を抱いた。

美世の夢と甘水直の計画

薄刃家の夢の中で

美世は夢の中で、かつて母澄美が住んでいた薄刃家の古い庭に立っていた。そこで、澄美が甘水直に励まされている場面を目にした。甘水は澄美を苦しませるものを壊すと誓い、彼の瞳には不気味な冷たさが宿っていた。この光景を目撃した美世は、夢でありながらも恐怖を感じ、異能心教の背後にある意図が一層明らかになった。

宮城への出発と清霞の慰め

宮城への準備と道中

宮城に赴く日の朝、清霞と美世は連泊の準備を整え、自動車で出発した。宮城での緊張感に包まれた美世に対し、清霞は「堂々としていればよい」と励まし、葉月やゆり江も合流する予定を確認した。途中、宮城の厳かな門を潜り、多くの護衛たちに迎えられる中、美世は自らの置かれた立場の重さを実感した。

宮城での滞在と護衛の打ち合わせ

滞在中の規則と甘水への警戒

宮城での生活が始まり、清霞は美世に滞在中の注意事項を説明した。特に、甘水が侵入する可能性を考慮し、知り合いであっても予告なく訪れる者を迎えないことが強調された。また、護衛として新が美世に付き添うことが確認されたが、甘水の強力な異能に対抗するためにはさらなる準備が必要であることが話し合われた。

新と美世の会話と今後の学習

新は護衛としての役割を果たすことを約束し、美世に対し異能についての指導を再開する旨を告げた。薄刃家の血筋を持つ新は甘水の異能に対抗する手段を模索しているが、明確な策が見つかっていないため、美世にとっても不安が残った。

新たな環境での生活と再会

宮城での生活開始と葉月・ゆり江の助け

宮城での生活は宮人の手厚い配慮によって始まった。美世は広大な部屋と格式の高さに圧倒されつつも、葉月とゆり江の励ましによって新しい環境に慣れる努力をした。また、葉月から清霞の幼少期の話が語られることで、清霞に対する新たな親しみと支えの気持ちが芽生えた。

宮城での昼食と葉月との会話

昼食の際、葉月や新とともに宮城の格式高い食事を味わいながら、彼らの過去について話が弾んだ。葉月が久堂家の過去を語る中、美世は家柄と歴史が彼女に与える重みを感じ取ったが、同時に自らの立場を再確認し、今後も清霞を支える決意を新たにした。

今後の生活への準備と新の護衛

新たな生活と勉強の計画

葉月は美世にとって宮城での日々がどのようなものになるかを簡潔に説明し、勉強と自制を重視するよう助言した。また、新は護衛役として美世のそばにいることを確認し、異能に関する知識を教えることが約束された。これからの生活において、美世は宮城の格式と制約の中で慎重に過ごす覚悟を固めた。

対異特務小隊の布陣と清霞の訪問

宮城内の二重防衛線

対異特務小隊は、宮城の周辺に二つの陣営を設置した。一つは門に近い前衛、もう一つは堯人の宮近くの後衛である。清霞はまず後衛に赴き、五道に配置状況を確認した。後衛は特に警備が厳しく、侵入を防ぐための結界が張られていた。

五道のからかいと清霞の苛立ち

五道は清霞に「美世に会いたいだろう」と茶化したが、清霞は苦笑しつつもその指摘を否定しなかった。彼は美世を守るための護衛任務を他人に任せることに対して複雑な思いを抱いていた。

異能心教の異形増加と防衛対策

五道から「異能心教が『よく見える異形』を増やしている」との報告が入った。その異形には術が効きにくく、対抗策が必要とされた。清霞は調査と分析を急がせ、対異特務小隊が不利な状況に陥らないよう指示を出した。

清霞と陣之内薫子の対話

薫子との再会と裏切りの背景

清霞は前衛の天幕前で元部下の陣之内薫子と再会した。薫子はかつて異能心教に加担していたが、それは父親が人質に取られていると信じ込まされていたためであった。清霞は異能心教が政府内部に潜り込んでいる可能性を示唆し、薫子の立場を理解しつつも再び異能心教に関わらないよう忠告した。

未遂の縁談と清霞の回答

薫子は私的な質問として、かつて清霞との縁談があった際に断られた理由を尋ねた。清霞は「職務に私情を持ち込みたくなかったため」と冷静に答え、彼女を軍人以上の関係に置くことに抵抗があったことを告げた。薫子は清霞の言葉に納得し、最後に感謝の言葉を述べて別れた。

三章  夜

撫子の間の会議:堯人と国政における議論

撫子の間の構成と堯人の立場

宮殿の一室である撫子の間は、国政会議の場として設けられていた。皇太子堯人が帝の代理として出席し、各省の大臣や軍、政府の要職者たちが集まっていた。帝の不在が続くなか、堯人の独断での対異特務小隊の配置についての質疑が主題となり、堯人の判断を巡って議論が紛糾していた。

堀りのない言い争いと鷹倉内大臣の介入

対異特務小隊の配置に対して反対する派閥があり、堯人を支持する派閥と意見が衝突した。中には鷹倉内大臣の立場に意見する文部相も現れ、鷹倉は冷静に応じたが、堯人の周囲には敵意が渦巻いていた。

財政の問題と堯人の決断

大蔵大臣が財政面での利点を指摘し、賛成派の支持を得たが、逓信大臣は情報統制の問題に関して追及を受けていた。堯人は情報の不備を補いつつも、宮内の守りを固める策の重要性を再度強調した。反対派もいたが、堯人の意志は揺るがなかった。

異能心教の脅威と未来の予見

堯人は、未来の予見から異能心教の脅威が差し迫っていることを語り、自身と斎森美世の両方が守られる必要があることを示した。堯人が清霞の存在を頼りにしている一方で、異能心教の勢力が直接的な攻撃を仕掛ける可能性に対する備えも欠かせなかった。

会議の結論と堯人の決意

堯人は会議を通して、宮城の守りを一箇所に集める方針を改めて示した。宮内大臣らが反発する中、堯人は必要な説明を尽くしたうえで方針を変えなかった。宮中の伝統を維持しつつも、国の安全を守るために堯人の決断は揺るがず、会議は堯人の指示のもと終了した。

婦女子の会の夜:美世の迷いと支え

美世の訪問と堯人の登場

美世は入浴後、葉月の部屋に呼ばれ、寝間着姿で訪れた。部屋には葉月、ゆり江、そして堯人が揃っていた。堯人が葉月の部屋にいることに驚いた美世だったが、葉月の促しで座り、「婦女子の会」が始まった。

参加者紹介と薫子の登場

葉月は鏡を通して遠方にいる薫子も参加させるという趣向を見せ、薫子の姿が映し出された。薫子は軍服姿ながら酒を飲んで酔っており、和やかな雰囲気が一層強まった。

婦女子の会の始まりと恋愛話

葉月の発案で「婦女子の会」が正式に始まった。集まった女性たちは恋愛について話し始め、葉月は美世にも恋愛について尋ねた。話の中で薫子は清霞に対する複雑な感情を吐露し、次第に泣き崩れて眠りに落ちた。

美世の迷いとゆり江の支え

美世は自分の心中の迷いや恐れを抱え込んでいたが、ゆり江の優しい言葉で少しずつ自分の気持ちと向き合い始めた。美世は清霞に対する強い想いを表に出すことに戸惑いを感じ、過去の経験から変化を恐れていた。

堯人の未来視と穏やかな場の余韻

堯人は未来視の力で得た不安を語り、雪が降るまでは安全だと考えていることを示唆した。堯人の言葉により、美世は異能心教の襲撃に備えている今の厳しい状況を再確認した。だが、場は依然として穏やかで、葉月も和やかに堯人に酌をし続けた。

美世の心の葛藤と葉月の助言

葉月は、美世の清霞に対する気持ちを尋ね、進展を恐れる美世に「気持ちを伝えるかどうかは美世次第」と伝えた。さらに、「気持ちを告げないことで傷つく人がいるかもしれない」として清霞の心情を示唆した。美世は葉月の言葉に感銘を受け、真剣に自分の気持ちを伝えるかどうか考える決意を固めた。

支えてくれる人々への感謝

会が終わりに近づき、美世は葉月とゆり江に支えられ、自分がどれほど恵まれているかを感じた。温かい支えと愛情を噛みしめ、心を揺らす想いに向き合う覚悟を新たにした。

婚約者と従兄:清霞と新との対話

清霞との別れ際の会話

美世は清霞が仕事に向かう背を見送りながら、彼の体調を心配し、いつものように健康を確認した。清霞は苦笑を浮かべて答えたが、美世は不安を拭い去れず、彼の首に襟巻きをかけて寒さを防いだ。清霞はその優しさに感謝しつつ、再び陣地へと向かっていった。

新との会話と異能への疑念

玄関口に戻った美世に、新が声をかけ、清霞に対する心配を和らげようとした。美世は清霞が薄刃の異能を持つ甘水直に対して無防備である可能性に不安を感じていたが、新は異能が「思いの強さ」によって左右される可能性があると話し、暗に美世に勇気を与えた。

不審な訪問者と対峙

宮殿の前に停車した自動車から、文部相と秘書官が降りてきた。新は美世を背にかばい、彼らに対して冷静に対応した。文部相は美世と新を挑発し、異能者としての証明を求めたが、新は挑発に乗らず毅然とした態度を貫いた。その後、鷹倉や五道らが駆けつけ、状況は収束した。

新の謎めいた態度

事件が解決し、自動車が去った後、新は美世に対して「自分が永遠には守れない」と言い、何か寂しげな心境を吐露した。美世はその言葉に引っかかりを感じ、新の心中を察しようとしたが、彼の意図を完全には理解できなかった。新は最後に「美世は強くなった」と言い、遠くない未来で別の道を歩む可能性を示唆した。

清霞と美世:ふたりの静かな夜の対話

異様な布団の存在と混乱

美世と清霞は、美世の部屋で布団がふたつ並べられている異様な光景を前に戸惑った。義姉とゆり江に促される形で清霞がしばらく美世と共に過ごすことになり、この部屋で休むように段取りが整えられていた。しかし、二人で一緒に寝る意図を感じる布団の準備に、美世は動揺し、清霞も不審を抱いた。

清霞の譲歩と美世の固い決意

清霞は、美世の負担を考え、自分は畳の上で寝ると提案したが、美世は彼の疲れを案じて布団を使うよう懇願した。清霞も譲歩を余儀なくされ、結局、ふたりで布団を共にすることになった。美世は清霞に対する自分の気持ちに戸惑いながら、共に寝ることの緊張感で心臓が高鳴った。

静寂の中の質問のやりとり

緊張で眠れない美世に気づいた清霞は、眠れるように互いに質問をすることを提案した。清霞が「困ったことがないか」と尋ねると、美世は守られていることに感謝し、不安はないと答えた。一方で、美世は清霞に仕事の辛さについて尋ね、彼が後悔なく仕事を全うしている姿勢を知った。

恋と恐れについての対話

美世が「恋の経験」について問うと、清霞は自身の感情に鈍感であったと振り返り、恋愛感情を持たないまま過ごしてきたと述べた。そして、清霞は美世が何かを恐れていると気づき、彼女にその不安を尋ねた。美世は心中の葛藤を抱えつつも、清霞のことを頼りにしていると伝えた。

深まる清霞の想い

清霞は、美世との関係をさらに深めたいという率直な思いを明かした。清霞の告白に美世は戸惑いながらも、自身もまた清霞と向き合いたい気持ちが芽生えていることを実感する。静かな対話の中で互いの距離が少しずつ縮まり、ふたりは安らかな眠りについた。

四章  夢の中に在る過去

対異特務小隊の新たな戦略:異形の実体化問題

陣営に集う面々と辰石一志の登場

灰色の雲が垂れ込めた冷たい風の中、帝国の貴族たちが住む宮城の一角にある対異特務小隊の臨時陣営には、隊長の清霞をはじめとする数名の隊員が集まっていた。そこへ遅れて登場したのは、派手な着流し姿で軽薄な態度の辰石家当主、辰石一志であった。隊員の五道が苦言を呈すも、一志は気にする素振りも見せず、緊張感に欠ける様子であった。

雲庵雀児による結界の発見とその解説

隊員の雲庵雀児は、異形が実体を持って見えるようになった原因について「結界」によるものであると説明した。彼は異形の中に透明な球体の結界が埋め込まれ、その中に「人の爪」が入っていることを発見していた。この結界が異形に実体を持たせ、人間の目にも見えるようにする役割を果たしていると解説した。

解術による対応策と辰石一志の役割

一志は解術の専門家として、球体状の結界を解く役割を担うことになった。雲庵の説明によると、結界を解術することで異形の実体化を解消でき、従来の見えない異形に戻せる可能性がある。一志が実際に結界を解くと、球体が消滅し、爪の欠片だけが残った。

異形への対処法と隊員への指示

清霞は異形が実体を持って現れた際の対処法を確認し、解術が可能な者には解術を、解術ができない場合は力づくで結界を破壊、または捕獲を指示した。五道は指示を了承し、配下の隊員へ伝達する準備を整えた。

辰石一志と五道の軽妙なやりとり

最後に、一志が五道をからかうような発言をし、五道は苛立ちながらも応酬した。清霞は二人の不毛なやりとりを制し、冷静に作戦行動に戻るよう促した。その後、五道と一志は天幕を後にし、外には湿気を含む冷たい風が吹き始めていた。

過去の薄刃家の庭にて:夢の中での甘水との邂逅

澄美の幻影と甘水直の出現

美世は、緑の香りと共に過去の薄刃家の庭の木陰で目覚め、母・澄美の若き姿が幻影として現れた場面を目にした。しかし、突如として甘水直が現れ、彼が夢の中で美世を認識していることに驚愕した。甘水は美世に対し、この夢は過去の出来事ではなく、彼自身の夢であり、そこに美世が入り込んでいたことを告げた。

甘水の理想と新世界の構想

甘水は、異能者が支配する新しい世界を築くことを目指していると語った。彼は、現状の帝国の構造が正しくないとし、薄刃の異能が頂点に立つべきだと主張した。しかし、美世はその考えに同意せず、甘水の行動が母を救えなかったことへの八つ当たりに過ぎないと指摘した。甘水は微笑みながらも、美世を新世界の女王にすることが合理的だと述べた。

清霞への脅威

甘水は、自分の理想を妨げる清霞を排除し、美世を手に入れると宣言した。美世は清霞が最愛の存在であることを自覚し、甘水の脅迫に恐怖を感じたが、甘水は自信に満ちた様子で笑い、異能心教の力を誇示した。その場で、美世は清霞を守る決意を固めた。

現実への帰還と対異特務小隊の支援

緊急連絡と衛兵の拒絶

美世は夢から覚め、甘水の狙いが清霞であることを清霞に伝えなければならないと焦った。しかし、護衛である新は姿を見せず、宮内の衛兵も協力を拒否するという不審な対応を見せた。葉月の助力で清霞へ連絡を飛ばし、美世と葉月は玄関で待機することに決めた。

秘書官の襲撃と異形の登場

そこへ現れたのは、文部大臣の秘書官であったが、その正体は異能心教の信徒であり、彼の瞳は異能心教の特徴である赤色に変わっていた。彼は異形を引き連れ、美世を捕えようとしたが、対抗策として清霞から預かった式を放つも効果はなく、異形の襲撃が始まった。

清霞と対異特務小隊の到着

危機的状況の中で清霞が到着し、秘書官を制圧した。さらに対異特務小隊と辰石一志も加勢し、異形を次々と一掃した。秘書官は甘水と繫がっていることを明かし、異能心教が政府内部に浸透していると告白した。清霞は冷静に対処し、美世と葉月は無事救出された。

清霞への報告と新たな疑念

甘水の狙いと今後の警戒

美世は清霞に夢で見た甘水の計画を伝え、甘水が清霞を狙っていることを警告した。清霞は予想していたとしながらも、今後の甘水の手段に警戒を示した。しかし、ふと護衛である新がいまだに戻ってこないことに気づき、一同は不自然な状況に疑念を抱く。最後に、静寂の中で小雪が舞い落ち、緊張感が漂うままに場面は終わりを迎えた。

異能心教の台頭と甘水直の策略

文部大臣との密談

甘水直は、文部大臣を利用して国家転覆の計画を進めていた。文部大臣は異能心教への協力を誓い、甘水のもとで力を握ろうとする欲望をあらわにした。軍本部も密かに異能心教の支配下に置かれ、賛同しない者は排除される一方、賛同者は国民を欺くように軍を動かしていた。甘水はこの状況を悪行と見做されることも気にかけず、勝利によって正義と変わると確信していた。

薄刃家への憎しみと計画の動機

過去に澄美と逃亡を試みたが拒絶された経験から、甘水は異能者が支配する新しい国家を作り上げることを決意した。彼は異能を持ちながらも、国の現体制に抑圧される異能者たちの不遇を解消し、自分と澄美が自由に生きられる世界を夢見ていた。しかし、澄美が他界し、彼の計画は美世に対する愛憎を交えたものへと変わっていった。

捕らえられた仲間の解放

甘水は特別留置施設を訪れ、異能妨害の祭壇を破壊して異能心教の信徒たちを解放した。解放された異能者たちは歓声を上げ、異能心教の信念のもとで集結する。甘水は戦力が整ったことを喜び、この勢力をもって帝国の現体制を覆そうと決意を新たにした。

堯人の宮の騒動と美世の不安

騒動の後片付けと新の不在

堯人の宮では昼間の異形の騒動の後片付けが行われていたが、美世は新が戻らないことに不安を募らせていた。護衛であるはずの新がいないことに加え、清霞のそばから離れることへの恐怖が美世の心に渦巻いていた。

異変の報告と新たな陰謀

対異特務小隊が捕らえた異能心教の協力者たちが次々と釈放されているという報告が清霞に届き、異能心教の陰謀がさらに明らかになった。清霞は甘水直の策略であると推測し、警戒を強めたが、異常事態は止まることなく進展していく。

薄刃新の裏切りと清霞の拘束

新の登場と清霞への告発

美世たちの前に、従兄である薄刃新が現れたが、その顔には冷酷な表情が浮かんでいた。新は清霞に対し、帝を拉致し国家転覆を図った容疑で拘束を命じた。驚愕する美世と清霞に、新は容赦なく容疑を告げ、軍人たちは清霞に手鎖をかけた。

美世の絶望と清霞の愛の言葉

清霞は最後に美世へ愛を告げ、戻ることを誓ったが、美世はどうすることもできずにただ涙を流した。清霞の逮捕は、美世の無力さと後悔を痛烈に突きつけ、彼女は清霞を守れなかった自分を責め続けた。

終章


雪の決意と美世の旅立ち

雪の季節の到来と出発の準備

美世は冷たい冬の朝、白い雪に覆われた久堂家の玄関に立ち、清霞を迎えに行く決意を固めた。彼女は動きやすい服装に身を包み、義母から譲られた白いリボンで髪をまとめ、決意の書置きを部屋に残して出発した。

堯人の宮からの移動と異能心教の支配

清霞の連行から四日が経過し、美世と葉月、ゆり江は堯人の宮を出て久堂家本邸に移動していた。堯人の制止を振り切っての移動は、堯人の宮での護衛が拒否されたことが要因であり、宮内大臣からの非公式な謝罪があったものの、不信感は拭えなかった。さらに、甘水の影響で帝国の秩序は崩壊し、異能心教が支配する新たな体制が進行していた。

清霞を迎えに行く決意

美世は堯人の宮を去った後、自ら清霞を迎えに行くことを決意した。清霞の「家で待っていてほしい」という言葉に反し、異能心教が美世を待っていると察した彼女は、自らの意志で危険に挑む覚悟を固めた。裏切りと捕縛により動けない仲間たちの状況を見つめ、今回はただ待つことはせず、自身で行動する必要性を感じたのである。

葉月への別れと覚悟

美世は、葉月には何も告げずに出発した。葉月を巻き込むわけにはいかないと判断し、久堂家を守る人が必要であると考えたためである。美世は、必ず清霞を連れて無事に帰ることを葉月の笑顔を思い浮かべながら誓い、出発前に一人、玄関に向かって「絶対に、帰ります」と決意を口にした。

決意の一歩と過去の後悔

清霞の連行を見送った後悔を胸に、美世は自身の甘い考えを反省し、清霞への想いを伝えなければ後悔が残ると痛感した。雪道を一歩一歩踏みしめながら、躊躇わず、弱さに打ち勝つよう自らを叱咤し、美世は清霞に対する愛を伝えるため、決意の道を進み始めた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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