どんな本?
学校の屋上で弁当を食べようとしていたらいきなり異世界に召喚された高校生の御子柴亮真。
ただ彼はマトモじゃ無かった。
召喚した魔術師を殺し。
逃亡途中で双子姉妹を仲間にして大国の帝国から逃亡。
帝国から逃げれたと思ったら、ローゼリア王国の跡目争いに巻き込まれてしまう。
それにも勝利させて女王ルピスを誕生させ。
そのまま解放されると思ったら。
住民は皆無で、沿岸部に海賊がおり、強力な魔物が跋扈するウォルテニア半島を領地に与えられ貴族にされてしまう。
読んだ本のタイトル
#ウォルテニア戦記 X
著者:保利亮太 氏
イラスト:bob 氏
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あらすじ・内容
ウォルテニア戦記Ⅹ御子柴亮真の働きによって、オルトメアと三王国連合軍との戦いは終結に向かい、亮真はザルーダ国王・ユリアヌス1世と有力なパイプを作りつつ、しばらくぶりに自分が経営するウォルテニア半島へと帰還を果たす。
いっぽう西方大陸に混乱を広めるため暗躍する須藤たちの組織は、亮真の存在価値を改めて思い知らされ、新たな謀略を企てるが――。
「小説家になろう」発の王道ファンタジー戦記、新章開幕の第10巻!
感想
地球人の組織にも派閥があり、50年ぶりに帰って来た浩一郎に50年分の情報を鄭と劉大人が説明する。
世代交代も進んでいてかなり複雑そうだ、、
さらに敵対している光神教団が関わって来るから、政情的にはもっと複雑になりそうだ。
オルトメア帝国軍を退却させザルーダ国王と知己を得た亮真は王国の自身の領地に帰還した。
そこで戦争での結果を総括するのだが、戦争特需で稼ぐつもりが、、
思った以上に稼げなかった。
どうやら同じ事をしていた組織と利益を分け合った結果になったようだ。
ただ、亮真はその組織の事を知らないので不気味に思っているようだが、その組織が帝国が勝ち過ぎないように暗躍していた事も朧げながら探れても来たが、、
まだ詳細は掴めない状態。
そんな亮真達を組織の思惑とは別に、須藤が独自に引っ掻き回しそうで不気味。
この辺りから須藤が独自に動いていたんだよな、、
最初は、くたびれたオッサンって感じだったのに、、
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備忘録
プロローグ
早朝の修練
まだ夜の帳が下りた時間帯、鄭孟徳は站椿と呼ばれる鍛錬を続けていた。肩幅ほどに足を広げ、腰を落として微動だにしない姿勢は、一見すると単なる筋力強化のように見えるが、その本質は内功の鍛錬にあった。鄭は長時間の修行にも関わらず、苦痛の表情を浮かべることなく、むしろ静かな満足を感じていた。彼の背に刻まれた九匹の龍の刺青が、呼吸に合わせて脈動し、鍛錬の成果を示していた。
武術と内功の極意
鄭の修行は単なる体力強化ではなく、呼吸と意識、筋肉の連動を極めるものだった。中国武術における内功は、身体の合理的な使い方を習得する技術であり、武術における基盤となる。鄭は長年の経験を経て、正しい師に巡り合うことの重要性を理解していた。武術の世界では、真の達人に出会うことが稀であり、多くの者が形式だけの技術に終始する。しかし、鄭は劉大人という希少な武人に師事することで、本物の武の道を歩む機会を得ていた。
異世界の厳しさと鄭の過去
この大地世界に召喚された鄭は、戦場で生き抜くためにあらゆる手段を講じてきた。かつての彼は、自暴自棄になり、暴力と酒に溺れる日々を送っていた。しかし、劉大人との出会いが鄭の人生を変えた。彼は本物の武を学ぶことで、新たな生きる意味を見出し、鍛錬を積むことこそが自身の唯一の喜びとなった。鄭は、ただ力を振るうだけの戦士ではなく、真に実戦で活きる技を持つ武人へと成長していた。
微かな気配と警戒心
修行の最中、鄭は僅かな視線を感じ取った。最初は気のせいかと思われたが、次第にその感覚は確信へと変わる。誰かが闇の中から彼を見つめ、慎重に様子を伺っているのだ。鄭は屋敷の周囲にいる警備の者たちではないことを察し、すぐに暗殺者の可能性を考えた。組織は西方大陸全土に影響力を持つが、同時に多くの敵を抱えていた。特に光神教団との対立は深く、屋敷が襲撃される危険性は常にあった。
襲撃者との対峙
鄭は敵の存在を確かめるべく、闇の中を疾走した。気配のする方角へ向かうと、再び殺気を感じ取る。これはただの刺客ではなく、高度な技術を持つ者であることが明白だった。鄭は戦闘態勢に入り、全力で攻撃を繰り出した。しかし、その拳は目の前の人影によって見事に受け流された。単なる武法術による防御ではなく、高度な化勁によるものだった。鄭は驚愕し、その技術の高さに即座に警戒心を強めた。
予想外の人物の登場
相手の技量に驚きを隠せない鄭であったが、次の瞬間、その人物が発した声に聞き覚えがあることに気付いた。そして、闇の中から現れたのは、劉大人の賓客として屋敷に滞在している御子柴浩一郎だった。浩一郎はニヤリと笑いながら鄭を見つめ、その戦いぶりを評価していた。鄭は自身の警備の責任を思い、非礼を詫びつつも、屋敷内での軽率な行動を慎むよう浩一郎に伝えた。彼の言葉には、警備を預かる者としての誇りと、浩一郎への敬意が込められていた。
第一章 久世昭光という男
庭の東屋でのもてなし
鄭は浩一郎と共に庭の東屋へ戻り、用意していた魔法瓶からハーブティーを注いで差し出した。それは屋敷のメイドが趣味で育てたミントの葉を使い、蜂蜜を加えた一杯であった。鄭にとっては日々の鍛錬後の安らぎの飲み物であるが、浩一郎という賓客に出すには気が引ける品であった。しかし、浩一郎はそんな気遣いを意に介さず、美味そうに飲み干した。彼は未知の味に対する興味が強く、自家製や限定品に特に惹かれる性格であった。
鄭の戸惑いと浩一郎の余裕
鄭は浩一郎の賓客としての立場を意識しながらも、自身の状態を気にしていた。全身汗まみれのまま目上の人物と対話することに抵抗があった。しかし、浩一郎の要望を断ることもできず、東屋での会話に応じた。彼はつい先ほどまで浩一郎と命をかけた戦いをしていたが、浩一郎からはその余韻が一切感じられなかった。まるで湖面のような静けさ。力の差は明らかであり、鄭は自身がまだ到達者の域に至らないことを痛感した。
武術の極みと浩一郎の評価
浩一郎は鄭の一撃を称賛した。武術家として熟練の域に達していることを認めながらも、鄭の攻撃には明確な欠点があった。明勁に頼りすぎ、暗勁の活用が不足していること。そして、一撃必殺を狙うあまり、戦術の柔軟性を欠いていることを指摘した。浩一郎は鄭の攻撃がもしも当たれば致命的であったと評価しつつ、しかしその一撃が防がれた際の鄭の動揺こそが、最大の課題であると指摘した。
鄭の成長への導き
鄭は自らの技に絶対の自信を持っていたが、それを容易く防がれたことで強い悔恨を抱いていた。浩一郎はその姿を見て、彼が次の段階へ進むきっかけを得たことを確信した。劉仲健が浩一郎に求めたのは、鄭に新たな壁を提示することであった。その意図を悟った鄭は、劉大人の想いを正しく受け止め、静かに跪いた。
久世昭光の存在
話は転じ、浩一郎は鄭から現在の組織の情勢について聞き出した。急進派を率いるのは久世昭光。その名を聞き、浩一郎は驚きを隠せなかった。久世はかつて浩一郎にとって最も信頼する戦友であり、共に組織の黎明期を支えた仲間であった。しかし、地球への帰還を巡る対立によって二人の道は決定的に分かれた。久世が今もこの大地世界に怒りを抱いていることは明白であり、浩一郎は彼と直接会う必要を感じた。
急進派と須藤秋武
さらに、鄭は急進派の内部で権力を握る須藤秋武という男について語った。彼は組織の実働部隊を動かす力を持ちながらも、亮真に対する対応が不自然であった。亮真の行動が須藤の計画を幾度も妨げたにもかかわらず、須藤は彼を排除しようとしない。浩一郎は、須藤が何か意図を持って亮真の動きを容認しているのではないかと推測した。
久世との再会に向けて
浩一郎は久世と会うための手立てを求めたが、現在の久世は表に出ることが少なく、簡単には接触できない状況であった。しかし、年に一度の総会の場では確実に顔を合わせることができる。幸運なことに、今年の開催地はローゼリア王国の隣国であり、亮真との再会や飛鳥の救出にも適した機会となる。
組織の未来と浩一郎の決意
浩一郎は鄭との会話を終え、劉大人のもとを訪れた。劉大人は久世との対立に心を痛めていたが、浩一郎は彼の決断を責めるつもりはなかった。過去の対立は避けられないものであり、組織の再建のためには必要な選択だったと理解していた。
酒を交わす二人
久しぶりに親友と語らい、浩一郎は今後の道筋を定めた。久世との再会、須藤の意図の探求、そして亮真の行く末。やるべきことは山積していた。そんな中、劉大人は静かに紹興酒を取り出し、浩一郎に盃を差し出した。二人は無言のまま酒を酌み交わし、五十年の時を超えて再び交わる運命と、失われた仲間たちに想いを馳せた。
第二章 ユリアヌス一世の忠告
密室での呼び出し
御子柴亮真はザルーダ王国の王城の一室に呼び出された。国王ユリアヌス一世からの密談のためであったが、呼び出しの理由は告げられず、周囲には厳重な警備が施されていた。案内役のメイドは亮真を部屋に通すとすぐに姿を消し、影護衛と思われる熟練の兵士たちが周囲を固めていた。使いの者は亮真一人のみを指名し、側近であるローラやサーラの同席は許されていなかった。厳重な警備の理由が分からぬまま、亮真は慎重に状況を分析した。
水差しと焼き菓子の違和感
亮真は卓上の水差しから水を注ぎ、一口含んだ。その水は柑橘系の果汁が加えられ、氷で冷やされていた。大地世界では氷が貴重であり、文法術師を用いた特殊な技術によるものと推測された。この待遇が単なるもてなしなのか、別の意図があるのかを考察しつつ、焼き菓子にも目を向けた。それは砂糖をふんだんに使った甘いもので、大地世界では高価な品である。亮真はこのもてなしの意図を読み取ろうとしながら、ユリアヌスの到着を待った。
ユリアヌスの謝罪と感謝
やがてユリアヌス一世が現れ、遅れたことを詫びた。彼はグラハルトを退出させ、亮真と二人きりで話すことを選んだ。王としての威厳を保ちながらも、謝罪と感謝を述べた。ノティス砦の攻略によりオルトメア帝国軍の補給路を断った亮真の功績を称えつつ、王国が勝手に停戦を決断したことについて謝罪した。ユリアヌスは自ら頭を下げ、国を代表して亮真に感謝の意を表した。この行動に、亮真は驚きつつも、王の覚悟を感じ取った。
王国の存続期間の見解
ユリアヌスはザルーダ王国の未来について亮真の見解を求めた。亮真は交渉次第ではあるが、王国に残された時間は十年以内であり、最悪の場合五年程度と見積もった。その予想に対し、ユリアヌスは「せいぜい五年」と笑いながら同意した。凡庸と見られていた王であったが、数十年にわたり国を守り続けた老練な統治者であることが垣間見えた。
裏大地の知識と本題
ユリアヌスは亮真が「裏大地」の出身であることに触れ、エレナ・シュタイナーからその事実を聞いたと語った。彼は、裏大地の豊かさについて興味を持ち、亮真に問いかけた。亮真はそれが本題であると直感し、エレナが意図的に情報をユリアヌスへ伝えた可能性を考えた。ユリアヌスは戦乱の続く大地世界に違和感を抱くかと問い、亮真にこの世界の本質について考えさせた。その問いの意図を探る中で、ユリアヌスはゆっくりと口を開き、亮真に真相を伝え始めた。亮真の表情は次第に険しくなっていった。
深夜の鍛錬
ユリアヌスとの会談から数時間が経過し、王城は深い静寂に包まれていた。厚い雲に覆われた空の下、中庭では一つの影がじっと動かずにいた。その前には鋼鉄の鎧を纏った人形が立っていた。やがて雲の隙間から一瞬だけ月の光が差し込むと、影の手から銀色の光が放たれた。それは左脇腹から右肩へと走る神速の抜刀術であった。だが、人形に目立った変化はなかった。しかし、影は満足げに頷き、人形を軽く叩いた。すると、その瞬間、人形は鎧と共に音を立てて崩れ落ちた。
鬼哭の力
亮真はかがり火に刀を翳し、その刃を見つめた。それは「鬼哭」と呼ばれる戦場刀であり、伊賀崎衆の主の証として受け継がれたものであった。刀身には刃こぼれ一つなく、まるで新しく鍛え上げられたかのような美しさを保っていた。しかし、亮真は以前の戦闘で生じたはずの刃こぼれが完全に消えていることに違和感を覚えた。鬼哭は、主と認めた者の生気を吸収し、自らの状態を常に最善に保つ性質を持っていた。グレッグ・ムーアとの戦いを経て、亮真を仮の主として認識し始めたものの、まだ完全には認めてはいないようだった。
付与法術の力
大地世界には三種類の法術が存在する。武法術は肉体の強化を目的とし、文法術は超自然的存在に生気を捧げて発動する。一方、付与法術は武具や防具に刻印を施し、術者の生気を流し込むことで効果を発揮する技術である。鬼哭もその一つであり、生気を吸収しながら自己修復を行うことができた。たとえ刀身が完全に折れたとしても、一日も経たずに元の姿へと戻る。そのため、戦場での信頼性は極めて高かった。
真なる主への道
鬼哭は未だに亮真を真なる主とは認めていなかった。伊賀崎衆の初代が命と引き換えに打ち上げたこの刀は、己の主と認める者と出会うまで長い年月を神棚で眠っていたという。亮真はその真価に興味を抱きつつも、当面は手入れの不要な刀として重宝していた。一般的な刀はわずかな違いで使い勝手が異なり、熟練の剣士ほど道具にこだわるものである。だが、鬼哭のように自己修復機能を持つ武器は、その問題を克服した理想の一振りであった。
忍び寄る殺意
しかし、静寂を破る冷たい殺気が亮真を囲んだ。鋭い舌打ちと共に警戒を強めた彼は、敵が複数であることを悟る。普段ならばマルフィスト姉妹が影のように護衛についていたが、今夜は一人で考え事をするために城を歩いていた。ユリアヌスの忠告の内容を反芻していた矢先の襲撃であった。暗闇から矢が放たれ、毒が塗られていることに気付いた亮真は即座に反撃の構えを取った。
暗殺者たちとの戦い
亮真は瞬時に第二チャクラを解放し、超人的な速度で間合いを詰めた。左右の茂みから次々と矢が射られたが、全てを回避し、囮役の暗殺者へ斬撃を放った。刃が閃き、一つの影が崩れ落ちる。残る敵たちも亮真の圧倒的な力に恐れをなし、撤退を選んだ。中庭には血の臭いと倒れた敵の亡骸が残るのみであった。鬼哭は血を吸い、さらなる生気を求めるように震えていた。亮真は刀を納めると、これから起こるであろう騒ぎにどう対応するべきか考えた。
黒幕の焦り
一方、ペリフェリアの城下町にある屋敷では、一人の男が失敗の報告を受けていた。影のような存在が主の前に跪き、命令を果たせなかったことを悔いていた。男は部下を責めることなく、計画の見直しを迫られていた。亮真の暗殺を試みたのは、ザルーダ王国をオルトメア帝国に売り渡そうとする八人の売国奴の一人であるこの男だけに課せられた使命であった。
計画の変更
当初の予定では、亮真がローゼリア王国との国境付近に向かう際を狙う手筈であった。しかし、ユリアヌスとの会談の情報を聞き、急ぎ襲撃を実行することを決めたのが裏目に出た。ユリアヌスの才覚を甘く見ていた男は、王が何か重大な情報を亮真に伝えたことを確信し、それを阻止しようとしたのである。だが、結果として作戦は失敗し、次の一手を考える必要に迫られていた。
新たな決断
男はグラスに注いだ酒を一息に呷る。彼にとって、亮真の存在は今後の計画において最大の障害となることは明白であった。シャルディナ殿下への忠節のためにも、何としてでも亮真の首を取らねばならなかった。しかし、一度失敗した以上、次の機会は慎重に選ばなければならない。男は次なる策を練りながら、静かにグラスを置いた。
第三章 英雄の帰還
凱旋の歓声
ローゼリア王国の王都ピレウスに、剣に巻き付いた双頭の蛇の紋章が掲げられた。黒の甲冑に身を包んだ一団が大通りを進むと、群衆は歓声を上げ、手を振った。御子柴亮真を称える声が響く中、彼の顔には浮かない表情があった。マルフィスト姉妹が誇らしげに語る言葉に耳を傾けながらも、亮真の胸中には複雑な思いが渦巻いていた。英雄視されることに違和感を覚えつつも、貴族としての体面を守るため、亮真は表情を整えた。
隠された意図
群衆の歓声の裏には、別の思惑があった。王宮の近衛騎士が随所に配置されていることからも、その意図は明白であった。表向きは警備とされていたが、実際には王都の民衆を意図的に扇動するための策であった。咲夜の報告を通じて、亮真はこの熱狂が作られたものであることを理解していた。ザルーダ王国の救援という成果によって、王国の現状から民衆の目を逸らそうとする勢力が動いていたのである。
ルピス女王の欠点
王都を覆う影は、ルピス女王の統治の問題点を象徴していた。亮真は彼女の改革が成功するとは考えていなかった。その理由は、ルピスの性格にあった。彼女は確かに教養があり、平民への差別意識も薄い。しかし、その情の深さが判断の甘さに繋がっていた。特に側近であるミハイル・バナーシュに対する寛容さは顕著であった。二度の致命的な失態にもかかわらず、彼を処罰せずに庇い続けた結果、彼女の指導力に対する不信感を招いた。
王国の混乱
内乱の終結後、王国の状況は悪化の一途を辿っていた。改革は貴族たちの妨害によって遅れ、地方の治安は悪化し、農民は重税に耐えかねて王都へと流れ込んでいた。表向きの華やかさとは裏腹に、裏路地では流民たちの争いが絶えず、治安の悪化が進んでいた。ルピスは民を愛し、国のために尽くそうとしていたが、統治者としての冷徹さを持ち合わせていなかった。その結果、改革の意図は貴族たちの横暴によって掻き消されていた。
ウォルテニア半島と亮真の視点
亮真は、王都の現状を目の当たりにしながら、自らの領地であるウォルテニア半島のことを考えていた。そこは人の住まぬ魔境でありながら、新たな可能性を秘めた地であった。既存の街では改革のための工事も困難を極めるが、未開の地であれば自由に発展させることができる。亮真は、ウォルテニア半島を開拓することで、新たな勢力を築く道を模索していた。ザルーダ王国への遠征中、彼は厳翁やボルツらを領地の管理に残しており、着実に整備が進んでいるはずであった。
ルピスの迷い
その夜、亮真との謁見を終えたルピス女王は、王城の自室で憂いに満ちた表情を浮かべていた。メルティナ・レクターは、そんな主君の姿に胸を痛めながらも、彼女の選択を肯定した。ルピスの決断が最善であったかどうかは疑問だったが、それを否定することはメルティナにはできなかった。王国内の混乱が続く中、ルピスの孤立は深まっており、彼女にはもはや確固たる支えがなかった。
御子柴亮真という存在
ルピスとメルティナにとって、御子柴亮真という男の存在は脅威であった。彼はルピスの王位確立に貢献しながらも、常に王国の枠を超えた視点で動いていた。貴族派に敵視されながらも、一般の民衆からは英雄視されており、その影響力は計り知れない。これまで王国は彼を利用し、遠ざけようとしたが、彼はむしろ力を増して帰還した。もはや彼を都合よく扱うことはできず、新たな対応が求められていた。
今後の選択肢
メルティナは、亮真との関係を修復するための方法を模索した。懐柔策を取るには、相応の恩賞と謝罪が必要であり、それを実行すれば貴族たちの反発を招く。一方で、彼を排除するには暗殺が必要だが、その成功率は極めて低かった。知略、軍事、戦闘のいずれにおいても、亮真はルピスの側近たちを圧倒していた。唯一対抗できるのは武術の分野であったが、それも決して確実なものではなかった。
ザルツベルグ伯爵への期待
最終的に、メルティナはザルツベルグ伯爵を利用するしかないと考えた。ウォルテニア半島に隣接する彼の領地には、亮真を監視する役割が課せられていた。今後の動向を探るためには、彼の協力を得ることが必要不可欠であった。ローゼリア王国の未来を守るため、メルティナは決断を迫られていた。彼女の心には迷いがあったが、それでもルピスを支えるために行動するしかなかった。
第四章 影の存在
逃亡者の絶望
森の奥深く、若者は荒い息を吐きながら走り続けていた。武法術によって強化された身体も、限界に近づいていた。水場の位置を把握していたものの、追跡者は意図的に彼を水源とは逆の方向へ追い込んでいた。疲労と焦燥が募る中、彼の心を占めるのは仲間を失った悔恨と、この仕事を選んだ自分への怒りだった。高額の報酬に惹かれた結果、彼は生き延びることすら難しい状況に追い込まれていた。
ウォルテニア半島の真実
若者が請け負ったのは、貴族からの密偵依頼だった。ウォルテニア半島は長らく危険な魔境とされてきたが、近年、御子柴男爵による開拓が進んでいた。多くの者は彼を愚かな貴族と嘲笑していたが、若者が目にしたのは、それを覆す光景だった。巨大な城壁に守られた都市と壮大な港、中央にそびえ立つ城――それはまさに強固な要塞であり、単なる辺境ではなかった。若者は、この情報を持ち帰ることが生き延びる唯一の理由だと考えた。
逃亡の終焉
森を抜け、ザルツベルグ伯爵領の境が近づいた。疲労困憊の身体に最後の力を込め、若者は走り続けた。しかし、突如として木の上から影が落ち、鋭い刃が喉を掠めた。喉元に流れる温かい血を感じながら、彼はゆっくりと崩れ落ちた。黒い影が無機質な視線で彼を見下ろし、冷静に状況を確認した。侵入者の排除は完了していた。
伊賀崎衆の狙い
影の一人、竜斎はこの結果に満足していなかった。侵入者のうち四人は訓練生が始末していたが、最後の一人は想定以上の手練れだった。お梅と共に、彼は今後の対策を話し合った。ウォルテニア半島の情報封鎖のため、侵入者を意図的に深部まで引き入れたうえで抹殺する策が取られていた。実戦経験を積ませるための訓練でもあったが、最近になって侵入者の質が上がりつつあった。もはや単なる訓練では済まされない状況になりつつあった。
情報戦の危機
侵入者の増加は、ウォルテニア半島への関心が高まっている証拠だった。初めは腕の立たない者が送り込まれていたが、次第にBランク相当の実力者が現れるようになっていた。いずれAランクの冒険者が送り込まれる可能性もあり、封鎖が破られる危険性が増していた。竜斎とお梅は、亮真が帰還した後にこの問題について相談する必要があると考えていた。
エルフとの取引
会話の中で、竜斎はエルフとの交易についても言及した。エルフたちはもともと人間を嫌っていたが、嗜好品の供給を受けるうちに交易を受け入れつつあった。酒や煙草の魅力に抗えず、彼らは次第に依存し始めていた。この取引が続く限り、いずれ彼らは秘匿してきた法術の知識を対価として提供するしかなくなるだろう。亮真の計画は、着実に成果を上げていた。
亮真の帰還を待つ者たち
竜斎とお梅は、南の空を見上げた。王都での報告を終えた亮真は、間もなく帰還するはずだった。ウォルテニア半島の行く末を決める重大な局面が、迫りつつあった。
執務室での報告書整理
セイリオスの夜は静かだったが、その中心にある屋敷では灯りが消えることはなかった。ローゼリア王都での祝賀会を終え、領地に戻った亮真は、一息つく間もなく報告書に目を通していた。伊賀崎厳翁とボルツによる防諜活動の計画は、武骨な文体ではあったが実に実用的な内容であり、彼の期待を上回る出来だった。組織運営には、短期と中長期の目標を明確化し、優先順位をつけることが求められる。この基本的な考え方を実践できる二人の存在は、亮真にとって大きな財産であった。
信頼と管理の狭間
亮真は部下たちを信用していたが、無条件に信頼しているわけではなかった。管理と放任のバランスを取ることは、組織運営において不可欠であり、彼はこの点に細心の注意を払っていた。日本での経験が、この異世界でも生かされることを実感しつつ、彼は書類整理を続けた。そして、自らの最終目標を思い描いた瞬間、胸の内に湧き上がる激情を抑えながら、目の前の課題に集中する決意を新たにした。
資金調達の問題
報告書の中で、資源確保や情報網の構築は順調に進んでいた。しかし、領内開発のための資金調達は、予定していた金額の半分にも達していなかった。さらに、その理由についての説明が報告書には記載されていなかった。亮真は、シモーヌの経営手腕に問題があるとは思えなかったため、彼女が意図的に詳細を省いた可能性を疑った。問題は、「書けなかった」のか「書かなかった」のかという点だった。
シモーヌとの対話
亮真は、深夜にもかかわらずシモーヌを呼び出した。彼女もこの件について話すつもりだったが、思ったより早く召集されたことに驚いていた。彼女は報告書に資金不足の詳細を記載しなかった理由を説明し、亮真の問いに慎重に答えた。交易の進展は順調であり、資金は確保できる見込みだったが、それでも何かしらの問題が生じているのは確かだった。
会議での疑念
翌朝、亮真は側近たちを集め、資金問題について議論を始めた。リオネは、亮真が戦争を利用して資金を稼ぐつもりだったのではないかと疑問を呈した。実際、彼はザルーダ戦争を利用し、金貨十万枚を目標に資金を集める計画を立てていた。しかし、その進捗は芳しくなかった。シモーヌは、それでも計画が破綻しているわけではないと説明したが、何かが予想外の形で動いていることは明白だった。
ユリアヌス王の警告
会議の最中、亮真はザルーダ王ユリアヌス一世から受けた忠告について話し始めた。彼は、「西方大陸の戦争の多くが、ある特定の集団の意志によって左右されている」という話を聞かされていた。最初は荒唐無稽な話だと思ったが、オルトメア帝国の軍事行動を分析すると、不自然な点が多かった。ジョシュア・ベルハレスの防衛戦が成功し続けた背景には、オルトメア側からの情報提供があった可能性が浮上した。
オルトメア帝国の内部対立
亮真は、オルトメア帝国の内部で権力闘争が起きており、シャルディナの足を引っ張ろうとする勢力が存在すると推測した。戦争を長引かせることで利益を得る者がいる可能性を考慮し、資金調達の遅れもこの勢力と関係があるのではないかと考えた。シモーヌの説明を聞きながら、亮真は確信を深めた。この状況を放置すれば、ウォルテニア半島の未来にとって重大な影響を及ぼしかねない。
決断の時
亮真は、事態を打開するために積極的に動く必要があると判断した。敵は戦争そのものを操る存在であり、単なる地方領主では対抗できない規模の影響力を持っていた。戦争を利用した資金調達は有効だったが、それを阻む力が働いていることは明白だった。彼は冷静に状況を整理し、次の一手を打つための準備を進めることを決意した。
第五章 尽きぬ策謀
帝都オルトメアの現状
帝都オルトメアは、西方大陸中央部の覇者として強大な軍事力を誇り、多くの民が流入していた。ザルーダ王国への遠征が失敗に終わったとはいえ、帝国内部は平穏であり、人々は変わらず強者に従っていた。街の治安は良好で、経済も活発であった。帝都の歓楽街では娼婦たちが客引きをし、金の匂いに群がる者が後を絶たなかった。そんな中、斉藤英明は指定の場所へ急いでいた。
歓楽街への到着
斉藤は歓楽街の喧騒を避け、目的の娼館へと向かった。帝都最大級のこの娼館は、組織が管理する重要拠点であり、貴族や皇族までもが訪れる場所であった。門番は厳格に入場者を確認し、斉藤は会員証を提示して中へ入った。彼はすでに顔見知りの門番とのやり取りに多少の煩わしさを感じながらも、この施設の重要性を理解し、慎重な管理を肯定していた。
娼館の役割と社会の仕組み
娼館は単なる売春宿ではなく、大陸における娯楽産業の一翼を担っていた。識字率が低く、娯楽の限られた世界では、賭博と並ぶ主要な娯楽であった。オルトメア帝国内の公娼制度は、一定の保護と教育を提供するものであり、他の地域の娼館と比べて待遇ははるかに良かった。しかし、それでも完全な自由があるわけではなく、公娼になれなかった者たちは私娼として街角に立ち、過酷な現実を生き抜いていた。
会合への出席
娼館の最上階にある部屋に到着した斉藤は、既に待っていた二人の男の姿を見て驚愕した。そこにいたのは、帝都の情報網を束ねるジェームス・カーターと、組織の上級幹部である菊川敦也であった。特に菊川の存在は予想外であり、斉藤の背筋に冷たいものが走った。彼は組織の急進派を率いる久世の側近であり、通常であればこのような場に現れることはなかった。
戦争と資金調達の計画
菊川は、オルトメア帝国のザルーダ王国侵攻を利用して巨額の利益を得たことを語った。戦争は一大消費であり、武器や食料、医薬品などが高値で取引されるため、戦況を適度にコントロールすることで莫大な収益を上げていた。斉藤は、シャルディナの軍事行動を巧みに操り、物資の流れを操作することで戦争を長引かせる役割を果たしていた。
服従の術式と復讐の念
斉藤がオルトメア帝国で活動できているのは、召喚された地球人に施される「服従の術式」が解除されていることを誰も知らないためであった。通常、この術式は反抗を防ぐための強制的な呪いであり、地球人を従順な駒として扱うためのものであった。しかし、組織の力によってそれが解除された今、彼は自由に動ける状態にあった。それでも、オルトメア帝国の人間に対する憎悪を押し殺し、組織の目的のために動いていた。
新たな任務
菊川は、戦争によって組織の資金が十分に蓄えられたことを明かし、新たな計画を打ち出した。斉藤に与えられた新たな任務は、「オルトメア皇太子とシャルディナを対立させる」ことであった。その指示を受けた瞬間、斉藤の顔は歓喜に満ちた笑みに歪んだ。
娼館の密室での待機
娼館の奥に設けられた秘密の部屋で、一人の男が客の到着を待ちわびていた。彼は壁に掛けられた時計を見ながら、ゆっくりと盃の中の赤い液体を口に運んだ。芳醇な香りが広がる至福の時間も、扉を叩く音によって中断された。舌打ちをしながらも、男は普段の表情に戻り、入室を許可した。
菊川との会話
入ってきたのは菊川敦也であった。彼は斉藤英明との話を終えたことを報告し、予定より時間がかかった理由を説明した。斉藤の抱く復讐の念は深く、それを押し殺して帝国に仕えている彼にとって、現状を冷静に受け入れるのは容易ではなかった。須藤はそれを当然と理解しつつ、菊川を誘って酒を勧めた。
取引と報告書の確認
菊川は須藤の誘いを受け、卓上に置かれた盃を手にした。酒の香りを楽しんだ後、彼は持参した報告書を差し出した。須藤はそれに目を通し、シモーヌ・クリストフと御子柴亮真の動きを確認した。特に、御子柴が敵対するオルトメア帝国にまで影響を及ぼそうとしている点について、須藤は関心を示した。
戦争と経済の影響
ザルーダ王国とオルトメア帝国の戦争によって、西方大陸全体の物価が上昇していた。戦争は物資の消費を促し、商人にとっては大きな利益を生む機会となる。しかし、御子柴亮真はこの戦況を利用し、両国に商売を仕掛けていた。彼の行動は一見すると無謀に思えるが、巧妙な策によって自らの立場を強化していた。
ウォルテニア半島の情報封鎖
御子柴亮真の本拠地であるウォルテニア半島について、組織は情報を得ることができていなかった。ギルドの支部を設置しようと試みるも、彼の留守役によって拒絶された。さらに、送り込んだ探索者も消息を絶ち、近隣の冒険者たちも半島関連の依頼を避けるようになっていた。須藤は、これは意図的な情報封鎖であると推察した。
対応策の検討
菊川は、御子柴の動きを封じるために、組織の戦力を派遣する案を提案した。しかし、須藤はそれを却下した。現在、組織は光神教団と対立しており、戦力を分散させるのは危険であった。代わりに須藤は、御子柴を放置するという選択を示唆した。彼の行動が組織とつながっているように見せることで、光神教団やキルタンティア皇国の注意を彼に向けさせる狙いであった。
策略と判断
須藤の提案に、菊川は一瞬戸惑ったが、やがてその有効性を理解した。御子柴亮真を囮として利用し、敵の目を逸らすことで組織の動きをより自由にするという計画であった。最終的に、菊川はこの方針を久世に報告することを決めた。
須藤の本心
会話を終えた菊川が去った後、須藤は一人ソファーに身を預け、満足げに笑った。彼にとって組織の理想や目的はもはやどうでもよく、ただ自身の欲求を満たすことだけが関心事であった。そして、御子柴亮真がどのように動くかを楽しみにしながら、彼は娼館の女を呼び寄せる準備を進めた。しかし、その頃、御子柴の新たな策はすでに動き出していた。
エピローグ
ペリフェリアの現状
ザルーダ王国の首都ペリフェリアは、鉄鉱石をはじめとする鉱物資源に恵まれていたが、山岳国家であるため交通の便は悪く、活気に欠ける都市であった。つい数ヶ月前には、オルトメア帝国の侵略を防ぎ、一時的な平和を手にしたことで国民は歓喜に包まれた。しかし、その熱狂も時間とともに冷め、現在は虚脱感と諦めが街を覆っていた。
この停滞感は王城にも伝播し、かつての士気は薄れていた。特に二週間前、ミスト王国の援軍がエクレシア・マリネールと共に帰国したことは、大きな衝撃を与えた。停戦が成立したとはいえ、オルトメア帝国が再び侵攻する可能性は否定できず、王国は自力での防衛を余儀なくされていた。この不安が王都の沈黙を生み出していたのである。
深夜の鍛錬
王城の一角にある練兵室だけは異様な熱気を帯びていた。時刻はすでに深夜零時を回り、大半の者が眠りについていたが、その部屋には今も明かりが灯され、空気を切り裂く音が響いていた。エレナ・シュタイナーはその音を聞き、深い溜息をついた。彼女は冷やしたお茶を水筒に入れて持参していたが、それを無駄にしたいと思うほど、ここで鍛錬を続ける者がいることを残念に感じていた。
部屋に足を踏み入れたエレナは、クリス・モーガンに鍛錬を止めるよう声をかけた。クリスは驚いた表情を浮かべながら、水筒を受け取ると深々と礼をした。彼の額には大量の汗が浮かび、足元は池のようになっていた。エレナはタオルを差し出し、汗を拭くよう促した。
クリスの焦り
エレナはクリスの異常なまでの鍛錬の背景に、何らかの焦りがあることを察していた。クリスは朝から晩までほぼすべての時間を鍛錬に費やし、周囲の騎士たちすら恐れをなして彼の訓練に付き合わなくなっていた。その理由を尋ねると、クリスは言葉を濁し、何もないと否定した。しかし、エレナには彼の心の内が見えていた。
クリスの祖父フランク・モーガンは、かつてエレナを支えた名将であったが、ホドラム・アーレベルクに疎まれ、腐肉病の治療を妨害された末に死を待つ身となっていた。クリス自身も、エレナの現役復帰までは下級騎士に甘んじていた。そんな彼にとって、今回の戦争は自らの才覚を示す機会であったが、その活躍の場は期待通りにはならなかった。
御子柴亮真への対抗心
エレナが「そんなに彼が憎い?」と問いかけると、クリスは顔を背けた。彼が指す「彼」が誰なのか、説明するまでもなかった。クリスは御子柴亮真を憎んではいなかったが、その存在が妬ましかった。彼はエレナに認められたい一心で、御子柴に勝ちたいと願っていた。
クリスにとって、エレナは幼少期から憧れの存在であり、彼女の下で戦えることは誇りであった。しかし、御子柴亮真という若い指導者が現れ、彼女と対等に並び立つ姿を見せつけられたことで、クリスの心には焦燥が生まれた。御子柴は内乱を早期に収束させ、ザルーダ王国の戦局でも主導権を握っていた。その姿を目の当たりにしたクリスは、自分の立場が揺らぐことを恐れていた。
エレナの提案
クリスの内心を見抜いたエレナは、彼に御子柴亮真と話をするよう提案した。クリスが御子柴を苦手としていることを察しつつも、彼を御せるくらいでなければエレナと並び立つことはできないと伝えた。クリスは黙り込み、激しく葛藤したが、最終的に小さく頷いた。
エレナは彼の反応を見て優しく微笑んだ。彼女にとって、クリスの成長は個人的な問題ではなく、ローゼリア王国の軍部にとっても重要な課題であった。彼が持つ感情は、毒にも薬にもなり得る。だからこそ、エレナは彼を正しい方向へ導こうとしたのである。
こうして、クリスは己の心と向き合い、新たな一歩を踏み出す決意を固めた。
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ウォルテニア戦記シリーズ





























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